【文献】
Hayes ME, et al.,Genospheres: self-assembling nucleic acid-lipid nanoparticles suitable for targeted gene delivery,Gene Therapy,2006年 4月,vol.13 no.7,p.646-651
【文献】
Naokazu Murahashi, et al.,Synthesis and evaluation of neoglycolipid for liposome modification,Drug Delivery System,1996年 3月10日,vol.11 no.2,p.91-97
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
例えば、薬剤、例えば、核酸ベースの薬剤(例えば、RNAベースのコンストラクト)を細胞または対象に送達するものとして使用することができる改善された脂質製剤を本明細書に記載する。また、RNAベースのコンストラクトを含む改善された脂質製剤を動物に投与し、かついくつかの実施形態では、標的遺伝子の発現を評価する方法を本明細書に記載する。いくつかの実施形態では、改善された脂質製剤は、ターゲッティング脂質(例えば、GalNAc含有脂質またはフォラート含有脂質などの本明細書に記載のターゲッティング脂質)を含む。
【0034】
脂質
本発明は、式Iのカチオン性脂質、中性脂質、ステロールおよびPEGまたはPEG修飾脂質を含む改善された脂質製剤を提供し、ここで、式Iは、
【化2】
である。
【0035】
一実施形態では、脂質はラセミ混合物である。
【0036】
一実施形態では、脂質は1つのジアステレオマーが濃縮されており、例えば、脂質は、少なくとも95%、少なくとも90%、少なくとも80%または少なくとも70%ジアステレオマー過剰である。
【0037】
一実施形態では、脂質はキラル的に純粋であり、例えば、単一の異性体である。
【0038】
一実施形態では、脂質は1つの異性体に濃縮されている。
【0039】
一実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも90%封入されている。一実施形態では、製剤は、モル基準で約25%〜約75%、例えば、モル基準で約35%〜約65%、約45%〜約65%、約60%、約57.5%、約50%または約40%の式Iのカチオン性脂質を含む。
【0040】
一実施形態では、製剤は、モル基準で約0.5%〜約15%、例えば、モル基準で約3%〜約12%、約5%〜約10%または約15%、約10%、または約7.5%の中性脂質を含む。
【0041】
一実施形態では、製剤は、モル基準で約5%〜約50%(例えば、モル基準で約15%〜約45%、約20%〜約40%、約40%、約38.5%、約35%、または約31%)のステロールを含む。一実施形態では、ステロールはコレステロールである。
【0042】
一実施形態では、製剤は、モル基準で約0.5%〜約20%(例えば、モル基準で約0.5%〜約10%、約0.5%〜約5%、約1.5%、約0.5%、約1.5%、約3.5%、または約5%)のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0043】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で25〜75%式Iの脂質、0.5〜15%の中性脂質、5〜50%のステロール、および0.5〜20%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0044】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で35〜65%の式Iのカチオン性脂質、3〜12%の中性脂質、15〜45%のステロール、および0.5〜10%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0045】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で45〜65%の式Iのカチオン性脂質、5〜10%の中性脂質、25〜40%のステロール、および0.5〜10%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。
【0046】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約60%の式Iのカチオン性脂質、約7.5%の中性脂質、約31%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMG(本明細書ではPEG−C14またはC14−PEGとも表す)である。一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、平均分子量2,000DaのPEG分子を含む。他の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、2,000未満(例えば、約1,500Da、約1,000Da、または約500Da)の平均分子量のPEG分子を含む。一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、平均分子量2,000DaのPEG分子を含む、以下の式VI:
【化3】
の化合物である。一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、PEG−ジステアロイルグリセロール(PEG−DSG、本明細書ではPEG−C18またはC18−PEGとも表す)である。
【0047】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約50%の式Iのカチオン性脂質、約10%の中性脂質、約38.5%のステロール、および約1.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMG(本明細書ではPEG−C14またはC14−PEGとも表す)である。一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、PEG−ジスチリルグリセロール(PEG−DSG、本明細書ではPEG−C18またはC18−PEGとも表す)である。一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質はPEG−DPG(PEG−ジパルミトイルグリセロール)である。一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、平均分子量2,000DaのPEG分子を含む。
【0048】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約50%の式Iのカチオン性脂質、約10%の中性脂質、約35%のステロール、約4.5%のPEGまたはPEG修飾脂質、および約0.5%のターゲッティング脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、PEG脂質はPEG−ジステアロイルグリセロール(PEG−DSG、本明細書ではPEG−C18またはC18−PEGとも表す)であり、かつターゲッティング脂質はGalNAc3−PEG−DSGである。
【0049】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約50%の式Iのカチオン性脂質、約10%の中性脂質、約35%のステロール、約4.5%のPEGまたはPEG修飾脂質、および約0.5%のターゲッティング脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、PEG脂質はPEG−DMG(本明細書ではPEG−C14またはC14−PEGとも表す)である。
【0050】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約40%の式Iのカチオン性脂質、約15%の中性脂質、約40%のステロール、および約5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、PEG脂質はPEG−DMG(本明細書ではPEG−C14またはC14−PEGとも表す)である。
【0051】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約50%の式Iのカチオン性脂質、約10%の中性脂質、約35%のステロール、および約5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、PEG脂質はPEG−DMG.(本明細書ではPEG−C14またはC14−PEGとも表す)である。
【0052】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約57.2%の式Iのカチオン性脂質、約7.1%の中性脂質、約34.3%のステロール、および約1.4%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDPPCであり、ステロールはコレステロールであり、PEG脂質はPEG−cDMAである(PEG−cDMAは、Heyesら(J.Controlled Release,107,276−287(2005)でさらに論じられている)。
【0053】
一実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質は、式VIの化合物またはPEG−DSGであり、ここで、PEG分子の平均分子量は2,000Daである。
【0054】
一実施形態では、本発明の製剤は、モル基準で約57.5%の式Iのカチオン性脂質、約7.5%の中性脂質、約31.5%のステロール、および約3.5%のPEGまたはPEG修飾脂質を含む。好ましい一実施形態では、カチオン性脂質は式Iの化合物であり、中性脂質はDSPCであり、ステロールはコレステロールであり、かつPEG脂質はPEG−DMGである。
【0055】
一実施形態では、脂質:siRNAの比は、少なくとも約0.5:1、少なくとも約1:1、少なくとも約2:1、少なくとも約3:1、少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約10:1、少なくとも約11:1、少なくとも約12:1、少なくとも約15:1までである。一実施形態では、脂質:siRNA比は、約1:1%〜約20:1、約3:1%〜約15:1、約4:1%〜約15:1、約5:1%〜約13:1である。一実施形態では、脂質:siRNA比は、約0.5:1%〜約15:1である。
【0056】
一態様では、改善された脂質製剤はターゲッティング脂質も含む。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、GalNAc部分(すなわち、N−ガラクトサミン部分)を含む。例えば、GalNAc部分を含むターゲッティング脂質としては、2008年4月12日に出願された米国特許出願第12/328,669号に開示されているものを挙げることができ、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ターゲッティング脂質としては、例えば、米国特許出願第12/328,669号または国際公開第2008/042973号に記載されているような当該技術分野で公知の任意の他の脂質(例えば、ターゲッティング脂質)を挙げることもでき、これらの文献の内容は各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、複数のGalNAc部分、例えば、2つまたは3つのGalNAc部分を含む。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、複数の、例えば、2つまたは3つのN−アセチルガラクトサミン(GalNAc)部分を含む。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質中の脂質は、1,2−ジ−O−ヘキサデシル−sn−グリセリド(すなわち、DSG)である。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、PEG部分(例えば、少なくとも約500Da、例えば、約1000Da、1500Da、2000Daまたはそれよりも大きい分子量を有するPEG部分)を含み、例えば、ターゲッティング部分は、PEG部分を介して脂質に接続されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、葉酸部分を含む。例えば、葉酸部分を含むターゲッティング脂質としては、2008年4月12日に出願された米国特許出願第12/328,669号に開示されているものを挙げることができ、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、葉酸部分を含むターゲッティング脂質としては、式Vの化合物を挙げることができる。
【0058】
例示的なターゲッティング脂質は、下記の式L:
(ターゲッティング基)
n−L−脂質
式L
式中、
ターゲッティング基は、当業者に公知のおよび/または本明細書に記載の任意のターゲッティング基(例えば、細胞表面受容体)であり、
nは1〜5の整数(例えば、3)であり、
Lは結合基であり、かつ
脂質は、本明細書に記載の脂質(例えば、DSGなどの中性脂質)などの脂質である。
【0059】
いくつかの実施形態では、結合基はPEG部分を含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、下記に示すような式2、3、4または5
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
の化合物である。
【0061】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、モル基準にして約0.001%〜約5%(例えば、約0.005%、0.15%、0.3%、0.5%、1.5%、2%、2.5%、3%、4%、または5%)の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、約0.005%〜約1.5%の量で製剤中に存在する。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、本明細書に記載の製剤に含まれる。
【0062】
いくつかの実施形態では、脂質製剤は、抗酸化剤(例えば、ラジカルスカベンジャー)も含む。抗酸化剤は、例えば、約0.01%〜約5%の量で組成物中に存在することができる。抗酸化剤は、疎水性または親水性である(例えば、脂質に溶けるか、または水に溶ける)ことができる。いくつかの実施形態では、抗酸化剤は、フェノール化合物、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、レスベラトロール、補酵素Q10、または他のフラボノイド類、あるいはビタミン、例えば、ビタミンEもしくはビタミンCである。他の例示的な抗酸化剤としては、リポ酸、尿酸、β−カロテンまたはレチノール(ビタミンA)などのカロテン、グルタチオン、メラトニン、セレン、およびユビキノールが挙げられる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質(例えば、GalNAc含有脂質)の受容体は、アシアロ糖タンパク質受容体(すなわち、ASGPR)である。
【0064】
一実施形態では、本発明の製剤は、押出法またはインライン混合法によって産生される。
【0065】
押出法(事前形成法またはバッチプロセスとも表す)は、まず空のリポソーム(すなわち、核酸なし)を調製し、次いで、核酸を空のリポソームに添加する方法である。リポソーム組成物を小孔性ポリカーボネート膜または非対称セラミック膜に通して押し出すことにより、比較的明確な径分布が得られる。通常、所望のリポソーム複合体径分布が達成されるまで膜に通して1回以上懸濁を繰り返す。リポソームを連続的により小さくなる膜に通して押し出し、リポソーム径の段階的な減少を達成してもよい。場合によっては、形成される脂質−核酸組成物をサイジングなしで用いることができる。これらの方法は、米国特許第5,008,050号;米国特許第4,927,637号;米国特許第4,737,323号;Biochim Biophys Acta.1979 Oct 19;557(1):9−23;Biochim Biophys Acta.1980 Oct 2;601(3):559−7;Biochim Biophys Acta.1986 Jun 13;858(1):161−8;およびBiochim.Biophys.Acta 1985 812,55−65に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
インライン混合法は、脂質と核酸の両方を混合チャンバーに同時に添加する方法である。混合チャンバーは、単純なT型コネクターまたは当業者に公知の任意の他の混合チャンバーであることができる。
【0067】
これらの方法は、米国特許第6,534,018号および米国特許第6,855,277号;米国特許公開第2007/0042031号ならびにPharmaceuticals Research,Vol.22,No.3,Mar.2005,p.362−372に開示されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
本発明の製剤を当業者に公知の任意の方法によって調製することができることがさらに理解される。
【0069】
さらなる実施形態では、式Iの化合物を含む代表的な製剤を表1に示す。
【表1】
【0070】
一実施形態では、式Iの化合物を含む特定の製剤を以下に記載する。
脂質の比率(単位はモルパーセンテージ)
脂質:siRNA比
50/10/38.5/1.5(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA 約 11
40/15/40/5(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA比 約11
50/10/35/4.5/0.5%(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DSG(C18−PEG):GalNAc3−PEG−DSG)
脂質:siRNA比 約11
50/10/30/9.5/0.5%(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DSG:GalNAc3−PEG−DSG)
脂質:siRNA比 約11
50/10/35/5%(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DSG
脂質:siRNA比 約11
50/10/38.5/1.5(MC3:DPPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA 約11
40/15/40/5(MC3:DPPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA比 約11
50/10/35/4.5/0.5%(MC3:DPPC:コレステロール:PEG−DSG:GalNAc3−PEG−DSG)
脂質:siRNA比 約11
50/10/30/9.5/0.5%(MC3:DPPC:コレステロール:PEG−DSG:GalNAc3−PEG−DSG)
脂質:siRNA比 約11
50/10/35/5%(MC3:DPPC:コレステロール:PEG−DSG
脂質:siRNA比 約11
50/10/38.5/1.5(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA 約7
50/10/38.5/1.5(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DSG)
脂質:siRNA 約10
50/10/38.5/1.5(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA 約12
50/10/35/5%(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA比 約8
50/10/35/5%(MC3:DSPC:コレステロール:PEG−DMG)
脂質:siRNA比 約10
【0071】
一実施形態では、本発明の製剤は、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも75%、少なくとも80%または少なくとも90%封入されている。
【0072】
一実施形態では、本発明の製剤は、アポリポタンパク質をさらに含む。本明細書で使用される場合、「アポリポタンパク質」または「リポタンパク質」という用語は、当業者に公知のアポリポタンパク質とその変異体および断片、ならびに下記のアポリポタンパク質アゴニスト、その類似体または断片を指す。
【0073】
好適なアポリポタンパク質としては、ApoA−I、ApoA−II、ApoA−IV、ApoA−VおよびApoEと、活性のある多型形態、アイソフォーム、変異体および突然変異体ならびにそれらの断片または切断形態が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、アポリポタンパク質はチオール含有アポリポタンパク質である。「チオール含有アポリポタンパク質」は、少なくとも1つのシステイン残基を含むアポリポタンパク質、変異体、断片またはアイソフォームを指す。最も一般的なチオール含有アポリポタンパク質は、1つのシステイン残基を含むApoA−Iミラノ(ApoA−I
M)およびApoA−Iパリ(ApoA−Ip)である(Jia et al.,2002,Biochem.Biophys.Res.Comm.297:206−13;Bielicki and Oda,2002,Biochemistry 41:2089−96)。ApoA−II、ApoE2およびApoE3もチオール含有アポリポタンパク質である。その組換えで産生された形態を含む、単離されたApoEおよび/またはその活性断片およびポリペプチド類似体は、米国特許第5,672,685号;同第5,525,472号;同第5,473,039号;同第5,182,364号;同第5,177,189号;同第5,168,045号;同第5,116,739号に記載されており、これらの文献の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。ApoE3は、Weisgraber,et al.,“Human E apoprotein heterogeneity:cysteine−arginine interchanges in the amino acid sequence of the apo−E isoforms”, J.Biol.Chem.(1981) 256:9077−9083;およびRail,et al.,“Structural basis for receptor binding heterogeneity of apolipoprotein E from type III hyperlipoproteinemic subjects”, Proc.Nat.Acad.Sci.(1982) 79:4696−4700に開示されている。GenBankアクセッション番号K00396も参照されたい。
【0074】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、成熟形態、プレプロアポリポタンパク質形態またはプロアポリポタンパク質形態であることができる。プロApoA−Iおよび成熟ApoA−Iのホモ二量体およびヘテロ二量体(実現可能な場合)(Duverger et al.,1996,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.16(12):1424−29)、ApoA−I Milano(Klon et al.,2000,Biophys.J.79:(3)1679−87;Franceschini et al.,1985,J.Biol.Chem.260:1632−35)、ApoA−I Paris(Daum et al.,1999,J.Mol.Med.77:614−22)、ApoA−II(Shelness et al.,1985,J.Biol.Chem.260(14):8637−46;Shelness et al.,1984,J.Biol.Chem.259(15):9929−35)、ApoA−IV(Duverger et al.,1991,Euro.J.Biochem.201(2):373−83)、およびApoE(McLean et al.,1983,J.Biol.Chem.258(14):8993−9000)を本発明の範囲内で利用することもできる。
【0075】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の断片、変異体またはアイソフォームであることができる。「断片」という用語は、天然のアポリポタンパク質のアミノ酸配列よりも短いアミノ酸配列を有し、かつその断片が、脂質結合特性をはじめとする、天然のアポリポタンパク質の活性を保持する任意のアポリポタンパク質を指す。「変異体」とは、アポリポタンパク質のアミノ酸配列の置換または改変を意味し、アミノ酸残基の置換または改変、例えば、付加および欠失は、脂質結合特性をはじめとする、天然のアポリポタンパク質の活性を消失させない。したがって、変異体は、1つ以上のアミノ酸残基が化合的に類似したアミノ酸と保存的に置換されている本明細書で提供される天然のアポリポタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはペプチドを含むことができる。保存的置換の例としては、少なくとも1つの疎水性残基(例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニン)の別の疎水性残基への置換が挙げられる。同様に、本発明は、例えば、少なくとも1つの親水性残基の置換、例えば、アルギニンとリジンの間、グルタミンとアスパラギンの間、およびグリシンとセリンの間の置換を企図する(米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号および同第6,046,166号を参照されたい)「アイソフォーム」という用語は、同じか、より大きいかまたは部分的な機能と、同様か、同一かまたは部分的な配列とを有するタンパク質を指し、同じ遺伝子の産物で、かつ通常は組織特異的であってもよいし、そうでなくてもよい(Weisgraber 1990,J.Lipid Res.31(8):1503−11;Hixson and Powers 1991,J.Lipid Res.32(9):1529−35;Lackner et al,1985,J.Biol.Chem.260(2):703−6;Hoeg et al.,1986,J.Biol.Chem.261(9):3911−4;Gordon et al.,1984,J.Biol.Chem.259(l):468−74;Powell et al.,1987,Cell 50(6):831−40;Aviram et al.,1998,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.18(10):1617−24;Aviram et al.,1998,J.Clin.Invest.101(8):1581−90;Billecke et al.,2000,Drug Metab.Dispos.28(11):1335−42;Draganov et al.,2000,J.Biol.Chem.275(43):33435−42;Steinmetz and Utermann 1985,J.Biol.Chem.260(4):2258−64;Widler et al.,1980,J.Biol.Chem.255(21):10464−71;Dyer et al.,1995,J.Lipid Res.36(1):80−8;Sacre et al.,2003,FEBS Lett.540(1−3):181−7;Weers,et al.,2003,Biophys.Chem.100(1−3):481−92;Gong et al.,2002,J.Biol.Chem.277(33):29919−26;Ohta et al.,1984,J.Biol.Chem.259(23):14888−93および米国特許第6,372,886号を参照されたい)。
【0076】
特定の実施形態では、本発明の方法および組成物は、アポリポタンパク質のキメラ構築の使用を含む。例えば、アポリポタンパク質のキメラ構築は、虚血再灌流保護特性を含むアポリポタンパク質ドメインと関連する高い脂質結合能を有するアポリポタンパク質ドメインから構成される可能性がある。アポリポタンパク質のキメラ構築は、アポリポタンパク質(すなわち、相同な構築)内部に別々の領域を含む構築であることができるし、またはキメラ構築は、異なるアポリポタンパク質間の別々の領域を含む構築(すなわち、異種の構築)であることができる。キメラ構築を含む組成物は、アポリポタンパク質変異体である部分または特定の特性(例えば、脂質結合、受容体結合、酵素特性、酵素活性化特性、抗酸化特性または還元酸化特性)を有するように設計された部分を含むこともできる(Weisgraber 1990,J.Lipid Res.31(8):1503−11;Hixson and Powers 1991,J.Lipid Res.32(9):1529−35;Lackner et al.,1985,J.Biol.Chem.260(2):703−6;Hoeg et al.,1986,J.Biol.Chem.261(9):3911−4;Gordon et al.,1984,J.Biol.Chem.259(l):468−74;Powell et al.,1987,Cell 50(6):831−40;Aviram et al.,1998,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.18(10):1617−24;Aviram et al.,1998,J.Clin.Invest.101(8):1581−90;Billecke et al.,2000,Drug Metab.Dispos.28(11):1335−42;Draganov et al.,2000,J.Biol.Chem.275(43):33435−42;Steinmetz and Utermann 1985,J.Biol.Chem.260(4):2258−64;Widler et al.,1980,J.Biol.Chem.255(21):10464−71;Dyer et al.,1995,J.Lipid Res.36(l):80−8;Sorenson et al.,1999,Arterioscler.Thromb.Vase.Biol.19(9):2214−25;Palgunachari 1996,Arterioscler.Throb.Vase.Biol.16(2):328−38:Thurberg et al.,J.Biol.Chem.271(11):6062−70;Dyer 1991,J.Biol.Chem.266(23):150009−15;Hill 1998,J.Biol.Chem.273(47):30979−84)。
【0077】
本発明で利用されるアポリポタンパク質には、組換え、合成、半合成または精製アポリポタンパク質も含まれる。本発明で利用されるアポリポタンパク質またはその等価物を得るための方法は当該技術分野で周知である。例えば、アポリポタンパク質は、例えば、密度勾配遠心分離もしくは免疫親和性クロマトグラフィーによって血漿もしくは天然産物から分離することができるし、または合成、半合成で、もしくは当業者に公知の組換えDNA技術を用いて産生することができる(例えば、Mulugeta et al.,1998,J.Chromatogr.798(1−2):83−90;Chung et al.,1980,J.Lipid Res.21(3):284−91;Cheung et al.,1987,J.Lipid Res.28(8):913−29;Persson,et al.,1998,J.Chromatogr.711:97−109;米国特許第5,059,528号、同第5,834,596号、同第5,876,968号および同第5,721,114;ならびにPCT国際公開第86/04920号および同第87/02062号を参照されたい)。
【0078】
本発明で利用されるアポリポタンパク質には、ApoA−I、ApoA−Iミラノ(ApoA−I
M)、ApoA−Iパリ(ApoA−I
P)、ApoA−II、ApoA−IV、およびApoEの活性を模倣するアポリポタンパク質アゴニスト(例えば、ペプチドおよびペプチド類似体)もさらに含まれる。例えば、アポリポタンパク質は、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号、同第6,046,166号、および同第5,840,688号に記載されているもののいずれかであることができ、これらの文献の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
アポリポタンパク質アゴニストペプチドまたはペプチド類似体は、例えば、米国特許第6,004,925号、同第6,037,323号および同第6,046,166号に記載の技術をはじめとする、当該技術分野で公知のペプチド合成の任意の技術を用いて合成または製造することができる。例えば、ペプチドは、Merrifield(1963,J.Am.Chem.Soc.85:2149−2154)によって最初に記載された固相合成技術を用いて調製し得る。他のペプチド合成技術は、Bodanszky et al.,Peptide Synthesis,John Wiley & Sons,第2版(1976)および当業者に容易に入手可能な他の参考文献に見出し得る。ポリペプチド合成技術の概要は、Stuart and Young,Solid Phase Peptide.Synthesis,Pierce Chemical Company,Rockford,Ill.,(1984)に見出すことができる。ペプチドは、The Proteins,Vol.II,第3版,Neurath et.al.,編,p.105−237,Academic Press,New York,N.Y.(1976)に記載されているような溶液法でも合成し得る。様々なペプチド合成で使用される適切な保護基は、上述のテキストおよびMcOmie,Protective Groups in Organic Chemistry,Plenum Press,New York,N.Y.(1973)に記載されている。本発明のペプチドは、例えば、アポリポタンパク質A〜Iのより大きい部分からの化学的または酵素的切断によっても調製し得る。
【0080】
特定の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の混合物であることができる。一実施形態では、アポリポタンパク質は、均質な混合物、すなわち、1種類のアポリポタンパク質であることができる。別の実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質の不均質な混合物、すなわち、2種以上の異なるアポリポタンパク質の混合物であることができる。アポリポタンパク質不均質な混合物の実施形態としては、例えば、動物源由来のアポリポタンパク質と半合成源由来のアポリポタンパク質の混合物を挙げることができる。特定の実施形態では、不均質な混合物としては、例えば、ApoA−IとApoA−Iミラノの混合物を挙げることができる。特定の実施形態では、不均質な混合物としては、例えば、ApoA−IミラノとApoA−Iパリの混合物を挙げることができる。本発明の方法および組成物において使用される好適な混合物は当業者に明白であろう。
【0081】
アポリポタンパク質を自然源から得る場合、それを植物または動物源から得ることができる。アポリポタンパク質は動物源から得られ、アポリポタンパク質は任意の種由来であることができる。特定の実施形態では、アポリポタンパク質を動物源から得ることができる。特定の実施形態では、アポリポタンパク質をヒト源から得ることができる。本発明の好ましい実施形態では、アポリポタンパク質は、アポリポタンパク質が投与される個体と同じ種に由来する。
【0082】
一実施形態では、標的遺伝子は、第VII因子、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb−B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL−2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT−1遺伝子、β−カテニン遺伝子、c−MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、腫瘍抑制遺伝子の突然変異、p53腫瘍抑制遺伝子およびそれらの組合せからなる群から選択される。一実施形態では、標的遺伝子は、肝臓で発現される遺伝子、例えば、第VII因子(FVII)遺伝子である。標的遺伝子、例えば、FVIIの発現の効果は、血清または組織試料などの、生物学的試料におけるFVIIレベルの測定によって評価される。例えば、例えば、FVII活性のアッセイによって測定されるような血液中のFVIIのレベルを決定することができる。一実施形態では、肝臓におけるmRNAのレベルを評価することができる。別の好ましい実施形態では、少なくとも2種類の評価、例えば、(例えば、血液中の)タンパク質レベルの評価と(例えば、肝臓中の)mRNAレベルの測定を両方とも行なう。
【0083】
一実施形態では、作用剤は、二本鎖RNA(dsRNA)などの核酸である。
【0084】
別の実施形態では、核酸剤は一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドである。例えば、二本鎖DNAは、構造遺伝子、制御および終結領域を含む遺伝子、または自己複製系(例えば、ウイルスもしくはプラスミドDNA)であることができる。二本鎖RNAは、例えば、dsRNAまたは別のRNA干渉試薬であることができる。一本鎖核酸は、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、または三重鎖形成オリゴヌクレオチドであることができる。
【0085】
さらに別の実施形態では、候補作用剤を投与した後の様々な時点で、流体試料(例えば、血液、血漿、もしくは血清)、または組織試料(例えば、肝臓試料)などの生物学的試料を試験対象から採取して、標的タンパク質またはmRNAの発現レベルに対する作用剤の効果を試験する。特に好ましい一実施形態では、候補作用剤は、FVIIを標的とするdsRNAであり、生物学的試料を第VII因子タンパク質またはmRNAのレベルに対する効果について試験する。一実施形態では、例えば、免疫組織化学アッセイまたは発色アッセイを用いて、FVIIタンパク質の血漿レベルをアッセイする。別の実施形態では、肝臓におけるFVII mRNAのレベルを、分岐DNAアッセイ、またはノーザンブロットもしくはRT−PCRアッセイなどのアッセイで試験する。
【0086】
一実施形態では、作用剤、例えば、改善された脂質製剤を含む組成物を毒性について試験する。さらに別の実施形態では、モデル対象を、例えば、体重または臨床的挙動の変化により、身体的影響についてモニタリングすることができる。
【0087】
一実施形態では、本方法は、作用剤、例えば、改善された脂質製剤を含む組成物をさらなる評価にかけることをさらに含む。さらなる評価としては、例えば、(i)上記の評価の繰返し、(ii)異なる数の動物もしくは異なる用量を用いた上記の評価の繰返し、または(iii)異なる方法、例えば、別の動物モデル(例えば、非ヒト霊長類)における評価によるものを挙げることができる。
【0088】
別の実施形態では、肝臓タンパク質もしくはmRNAのレベルに対する候補作用剤の観察された効果に応じて、さらなる研究(例えば、臨床試験)において作用剤と改善された脂質製剤を含めるかどうかに関する決定を行なう。例えば、候補dsRNAがタンパク質またはmRNAレベルを少なくとも20%、30%、40%、50%、またはそれより大きく減少させることが観察される場合、この作用剤には臨床試験が考慮される。
【0089】
さらに別の実施形態では、肝臓タンパク質、mRNAのレベルに対する候補作用剤とアミノ脂質の観察された効果に応じて、薬学的組成物中に作用剤と改善された脂質製剤を含めるかどうかに関する決定を行なう。例えば、候補dsRNAがタンパク質またはmRNAレベルを少なくとも20%、30%、40%、50%、またはそれより大きく減少させることが観察される場合、この作用剤には臨床試験が考慮される。
【0090】
別の態様では、本発明は、治療剤を細胞に送達するその好適性について改善された脂質製剤を評価する方法を特色とする。いくつかの実施形態では、本発明は、RNAべースのコンストラクト、例えば、FVIIを標的とするdsRNAを送達するその好適性について改善された脂質製剤を評価する方法を特色とする。本方法は、FVIIを標的とするdsRNAと候補アミノ脂質とを含む組成物を提供すること、この組成物を齧歯類(例えば、マウス)に投与すること、FVIIの発現を血液中のFVIIのレベルまたは肝臓におけるFVII mRNAのレベルのうちの少なくとも1つの関数として評価し、それにより候補アミノ脂質を評価することを含む。
【0091】
脂質含有成分(例えば、リポソーム)を含む組成物、かつこれらは以下でさらに詳細に記載されている。例示的な核酸ベースの作用剤としては、dsRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、または三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。これらの作用剤も以下でさらに詳細に記載されている。
【0092】
「LNP」組成物(例えば、LNP01、LNP02など)と表される組成物は、「AF」組成物(例えば、AF01、AF02など)としても知られている。
【0093】
「アルキル」は、1〜24個の炭素原子を含む直鎖または分岐、非環状または環状飽和脂肪族炭化水素を意味する。代表的な飽和直鎖アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシルなどが挙げられ、一方、飽和分岐アルキルとしては、イソプロピル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、イソペンチルなどが挙げられる。代表的な飽和環状アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどが挙げられ、一方、不飽和環状アルキルとしては、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニルなどが挙げられる。
【0094】
「アルケニル」は、隣接炭素原子間に少なくとも1つの二重結合を含む、上で定義されたようなアルキルを意味する。アルケニルには、シス異性体とトランス異性体の両方が含まれる。代表的な直鎖および分岐アルケニルとしては、エチレニル、プロピレニル、1−ブテニル、2−ブテニル、イソブチレニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2−メチル−2−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニルなどが挙げられる。
【0095】
「アルキニル」は、隣接炭素原子間に少なくとも1つの三重結合をさらに含む、上で定義されたような任意のアルキルまたはアルケニルを意味する。代表的な直鎖および分岐アルキニルとしては、アセチレニル、プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−メチル−1ブチニルなどが挙げられる。
【0096】
「アシル」は、結合点の炭素が、以下で定義するようなオキソ基で置換されている任意のアルキル、アルケニル、またはアルキニルを意味する。例えば、−C(=O)アルキル、−C(=O)アルケニル、および−C(=O)アルキニルがアシル基である。
【0097】
「アリール」という用語は、任意の環原子が置換され得る、芳香族単環式、二環式、または三環式炭化水素を指す。アリール部分の例としては、限定するものではないが、フェニル、ナフチル、アントラセニル、およびピレニルが挙げられる。
【0098】
「複素環」は、飽和、不飽和、または芳香族のいずれかであり、かつ窒素、酸素および硫黄から独立に選択される1または2個のヘテロ原子を含む5〜7員単環式、または7〜10員二環式の複素環式環を意味し、ここで、この窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、かつこの窒素ヘテロ原子は四級化されていてもよく、これには、上記の複素環のいずれかがベンゼン環に融合している二環式環が含まれる。複素環は、任意のヘテロ原子または炭素原子を介して結合し得る。複素環としては、以下で定義するようなヘテロアリールが挙げられる。複素環としては、モルホリニル、ピロリジノニル、ピロリジニル、ピペリジニル(piperidinyl)、ピペリジニル(piperizynyl)、ヒダントイニル、バレロラクタミル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロプリミジニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロピリミジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロチオピラニルなどが挙げられる。
【0099】
「任意に置換されたアルキル」、「任意に置換されたアルケニル」、「任意に置換されたアルキニル」、「任意に置換されたアシル」、および「任意に置換された複素環」 という用語は、置換されるときに、少なくとも1つの水素原子が置換基と置き換えられることを意味する。オキソ置換基(=O)の場合、2個の水素原子が置き換えられる。そういう意味では、置換基は、オキソ、ハロゲン、複素環、−CN、−OR
x、−NR
xR
y、−NR
xC(=O)R
y、−NR
xSO
2R
y、−C(=O)R
x、−C(=O)OR
x、−C(=O)NR
xR
y、−SO
nR
xおよび−SO
nNR
xR
yを含み、その場合、nは0、1または2であり、R
xおよびR
yは同じものまたは別のもので、かつ独立に水素、アルキルまたは複素環であり、アルキルおよび複素環置換基は各々、オキソ、ハロゲン、−OH、−CN、アルキル、−OR
x、複素環、−NR
xR
y、−NR
xC(=O)R
y、−NR
xSO
2R
y、−C(=O)R
x、−C(=O)OR
x、−C(=O)NR
xR
y、−SO
nR
xおよび−SO
nNR
xR
yのうちの1つまたは複数でさらに置換されていてもよい。
【0100】
「ヘテロアリール」という用語は、単環式の場合1〜3個のヘテロ原子を、二環式の場合1〜6個のヘテロ原子を、または三環式の場合1〜9個のヘテロ原子を有する、芳香族5〜8員の単環式、8〜12員の二環式、または11〜14員の三環式の環系を指し、ヘテロ原子は、O、N、またはSから選択され(例えば、単環、二環、または三環であるならば、炭素原子と、それぞれ、1〜3個、1〜6個、または1〜9個のN、O、またはSのヘテロ原子)、その場合、任意の環原子は置換され得る。本明細書に記載のヘテロアリール基は、共通の炭素−炭素結合を共有する融合環も含み得る。「アルキル複素環」という用語は、環原子の少なくとも1つが、アルキル、アルケニルまたはアルキニルで置換されているヘテロアリールを指す。
【0101】
「置換された」という用語は、所与の構造中の1つ以上の水素ラジカルと、限定するものではないが、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロシクリル、チオール、アルキルチオ、オキソ、チオキシ、アリールチオ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルスルホニル、アルキルスルホニルアルキル、アリールスルホニルアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ハロアルキル、アミノ、トリフルオロメチル、シアノ、ニトロ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アルキルアミノアルキル、アリールアミノアルキル、アミノアルキルアミノ、ヒドロキシ、アルコキシアルキル、カルボキシアルキル、アルコキシカルボニルアルキル、アミノカルボニルアルキル、アシル、アラルコキシカルボニル、カルボン酸、スルホン酸、スルホニル、ホスホン酸、アリール、ヘテロアリール、ヘテロサイクリック、および脂肪族をはじめとする特定の置換基のラジカルとの置換を指す。置換基をさらに置換し得ることが理解される。「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを意味する。
【0102】
「アルキルアミン」および「ジアルキルアミン」という用語は、それぞれ、−NH(アルキル)および−N(アルキル)
2ラジカルを指す。
【0103】
「アルキルホスファート」という用語は、−O−P(Q’)(Q”)−O−R(式中、Q’およびQ”は各々独立にO、S、N(R)
2、任意に置換されたアルキルまたはアルコキシであり、かつRは、任意に置換されたアルキル、ω−アミノアルキルまたはω−(置換)アミノアルキルである)を指す。
【0104】
「アルキルホスホロチオアート」という用語は、Q’またはQ”の少なくとも1つがSであるアルキルホスファートを指す。
【0105】
「アルキルホスホナート」という用語は、Q’またはQ”の少なくとも1つがアルキルであるアルキルホスファートを指す。
【0106】
「ヒドロキシアルキル」という用語は、−O−アルキルラジカルを意味する。
【0107】
「アルキル複素環」という用語は、少なくとも1つのメチレンが複素環によって置換されているアルキルを指す。
【0108】
「ω−アミノアルキル」という用語は、−アルキル−NH
2ラジカルを指す。「ω−(置換)アミノアルキル」という用語は、N上のHの少なくとも1つがアルキルで置換されているω−アミノアルキルを指す。
【0109】
「ω−ホスホアルキル」という用語は、−アルキル−O−P(Q’)(Q”)−O−R(式中、Q’およびQ”は各々独立にOまたはSであり、かつRは任意に置換されたアルキルである)を指す。
【0110】
「ω−チオホスホアルキル」という用語は、Q’またはQ”の少なくとも1つがSであるω−ホスホアルキルを指す。
【0111】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は、保護基の使用を必要とする場合がある。保護基に関する方法論は当業者に周知である(例えば、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,Green,T.W.et.al.,Wiley−Interscience,New York City,1999を参照されたい)。簡潔に述べると、本発明との関連における保護基は、官能基の望ましくない反応性を低下または消失させる任意の基である。保護基を官能基に付加して、特定の反応の間のその反応性をマスクし、その後、除去して、もとの官能基を暴露することができる。いくつかの実施形態では、「アルコール保護基」を使用する。「アルコール保護基」は、アルコール官能基の望ましくない反応性を減少または消失させる任意の基である。保護基は、当該技術分野で周知の技術を用いて付加および除去することができる。
【0112】
脂質粒子
本明細書で取り上げられる肝臓スクリーニングモデルで試験するための作用剤および/またはアミノ脂質を脂質粒子中に製剤化することができる。脂質粒子としては、リポソームが挙げられるが、これに限定されない。本明細書で使用される場合、リポソームは、水性内部を封入する脂質含有膜を有する構造である。リポソームは1つ以上の脂質膜を有し得る。本発明は、単一膜と呼ばれる単層リポソームと、多重膜と呼ばれる多層リポソームの両方を企図している。核酸と複合体を形成する場合、脂質粒子は、例えば、Feigner,Scientific Americanに記載されているような、DNA層とDNA層の間に挟まれたカチオン性脂質二重層から構成されるリポプレックスでもあり得る。
【0113】
脂質粒子は、1つ以上の追加の脂質および/または他の成分(例えば、コレステロール)をさらに含み得る。脂質酸化の防止またはリガンドのリポソーム表面への付着などの種々の目的のために、他の脂質をリポソーム組成物中に含め得る。両親媒性脂質、中性脂質、カチオン性脂質、およびアニオン性脂質を含む、いくつかの脂質のうちのどれが存在してもよい。このような脂質を単独でまたは組み合わせて使用することができる。存在し得る追加の脂質成分の特定の例を以下に記載する。
【0114】
脂質粒子中に存在し得る追加の成分としては、ポリアミドオリゴマー(例えば、米国特許第6,320,017号を参照されたい)、ペプチド、タンパク質、洗剤、脂質誘導体(例えば、ホスファチジルエタノールアミンと結合したPEGおよびセラミドにコンジュゲートしたPEG)(米国特許第5,885,613号を参照されたい)などの二重層安定化成分が挙げられる。いくつかの実施形態では、脂質粒子は、本明細書に記載のターゲッティング脂質などのターゲッティング剤を含む。
【0115】
脂質粒子は、第2のアミノ脂質またはカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、および形成時の脂質粒子の凝集を低下させるために選択される脂質のうちの1つまたは複数を含むことができる。この形成は、形成時の電荷誘導性凝集を防ぐ粒子の立体安定性によって生じ得る。
【0116】
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」という用語は、1つまたは2つの脂肪酸または脂肪アルキル鎖と、生理的pHでプロトン化して、カチオン性脂質を形成し得るアミノ頭部基(アルキルアミノ基またはジアルキルアミノ基を含む)とを有する脂質を含むことが意図される。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、「アミノ脂質」とも表される。
【0117】
他のカチオン性脂質としては、別の脂肪酸基と他のジアルキルアミノ基(アルキル置換基が異なるもの(例えば、N−エチル−N−メチルアミノ−、N−プロピル−N−エチルアミノ−など)を含む)とを有する脂質が挙げられる。一般に、飽和度の低いアシル鎖を有する脂質(例えば、カチオン性脂質)は、特に、滅菌濾過のために、複合体を約0.3マイクロメートル未満の大きさに揃える場合、より簡単に大きさを揃えられる。C
10〜C
20の範囲の炭素鎖長の不飽和脂肪酸を含むカチオン性脂質が好ましい。アミノ基(例えば、カチオン性脂質のアミノ基)とカチオン性脂質の脂肪酸または脂肪アルキル部分を分離するために、他のスキャフォールドを使用することもできる。好ましいスキャフォールドは当業者に公知である。
【0118】
特定の実施形態では、カチオン性脂質は、脂質が、生理的pH(例えば、pH7.4)またはそれ未満のpHで正の電荷を帯び、かつ好ましくは生理的pHまたはそれを上回る第2のpHで中性となるように、少なくとも1つのプロトン化可能または脱プロトン化可能な基を有する。このような脂質もカチオン性脂質と表される。当然、pHの関数としてのプロトンの付加または除去は平衡過程であること、および帯電脂質または中性脂質に対する言及は、優勢種の性質を指すのであって、脂質の全てが帯電した形態または中性の形態で存在する必要があるわけではないことが理解されるであろう。2つ以上のプロトン化可能もしくは脱プロトン化可能な基を有するか、または双性イオン性である脂質を本発明での使用から排除するものではない。
【0119】
特定の実施形態では、プロトン化可能な脂質(すなわち、カチオン性脂質)は、約4%〜約11の範囲のpKaのプロトン化可能な基を有する。これらの脂質がより低いpH製剤段階でカチオン性となる一方で、粒子は(完全にではないが)ほとんどの場合、pH7.4付近の生理的pHで表面が中性化するので、約4%〜約7のpKaが最も好ましい。このpKaの利益の1つは、粒子の外部表面と会合する少なくとも一部の核酸が、生理的pHでその静電相互作用を失い、簡単な透析で除去されること、したがって、粒子のクリアランスに対する感受性が大いに低下することである。
【0120】
形成中の粒子の凝集を低下させる脂質の例としては、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、モノシアロガングリオシドGm1、および例えば、米国特許第6,320,017号に記載されているようなポリアミドオリゴマー(「PAO」)がある。PEG、Gm1またはATTAのような、製剤化の間の凝集を防ぐ、電荷のない、親水性の、立体障害部分を有する他の化合物を用いて、本発明の方法および組成物に示すように使用される脂質に結合させることができる。ATTA−脂質は、例えば、米国特許第6,320,017号に記載されており、PEG−脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許第5,820,873号、同第5,534,499号および同第5,885,613号に記載されている。通常、凝集を低下させるために選択される脂質成分の濃度は、(脂質のモルパーセントで)約1〜15%である。
【0121】
凝集を低下させ、および/または肝臓スクリーニングモデルで使用可能な核酸剤にコンジュゲートするのに好適である脂質の例は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾脂質、モノシアロガングリオシドGm1、および例えば、米国特許第6,320,017号に記載されているようなポリアミドオリゴマー(「PAO」)がある。PEG、Gm1またはATTAのような、製剤化の間の凝集を防ぐ、電荷のない、親水性の、立体障害部分を有する他の化合物を用いて、本発明の方法および組成物に示すように使用される脂質に結合させることができる。ATTA−脂質は、例えば、米国特許第6,320,017号に記載されており、PEG−脂質コンジュゲートは、例えば、米国特許第5,820,873号、同第5,534,499号および同第5,885,613号に記載されている。通常、凝集を低下させるために選択される脂質成分の濃度は、(脂質のモルパーセントで)約1〜15%である。
【0122】
本発明において有用なPEG修飾脂質(または脂質−ポリオキシエチレンコンジュゲート)の具体例は、PEG部分を脂質小胞の表面に固定するための種々の「アンカリング」脂質部分を有することができる。好適なPEG修飾脂質の例としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジン酸、参照により本明細書に組み込まれる同時係属の米国特許出願第08/486,214号に記載されているPEG−セラミドコンジュゲート(例えば、PEG−CerC14またはPEG−CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミンおよびPEG修飾1,2−ジアシルオキシプロパン−3−アミンが挙げられる。特に好ましいのは、PEG修飾ジアシルグリセロールおよびジアルキルグリセロールである。いくつかの実施形態では、粒子内のPEG脂質の総mol%は約1.5mol%である。例えば、粒子が、本明細書に記載の複数のPEG脂質(例えば、上記のPEG修飾脂質)と、PEGを含むターゲッティング脂質とを含む場合、PEG含有脂質の総量はまとめて約1.5mol%である。
【0123】
立体的に大きい部分(例えば、PEGまたはATTA)が脂質アンカーにコンジュゲートしている実施形態では、脂質アンカーの選択は、コンジュゲートが脂質粒子とどのような種類の関連を有することになるかによって決まる。mePEG(分子量:2000)−ジアステアロイルホスファチジルエタノールアミン(PEG−DSPE)は、粒子が循環から除去されるまで、おそらくは数日間、リポソームと関連し続けることがよく知られている。PEG−CerC20などの他のコンジュゲートには同様の滞留能がある。しかしながら、PEG−CerC14は、血清に暴露されると、製剤外に速やかに入れ替わり、いくつかのアッセイでは、T
1/2は60分未満となる。米国特許出願第08/486,214号に示されているように、少なくとも3つの特徴、すなわち、アシル鎖の長さ、アシル鎖の飽和、および立体障害頭部基のサイズが交換速度に影響を与える。これらの特色の好適なバリエーションを有する化合物は本発明に有用であり得る。いくつかの治療用途のために、PEG修飾脂質がインビボで核酸−脂質粒子から速やかに失われることが好ましい場合があり、それにより、PEG修飾脂質が比較的短い脂質アンカーを保有することになる。他の治療用途では、核酸−脂質粒子がより長い血漿循環寿命を示すことが好ましい場合があり、それにより、PEG修飾脂質は比較的長い脂質アンカーを保有することになる。例示的な脂質アンカーとしては、約C
14〜約C
22、好ましくは約C
14〜約C
16の長さを有する脂質アンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG部分(例えば、mPEG−NH
2)のサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000または20,000ダルトンである。
【0124】
凝集を防ぐ化合物が、適切に機能するために、必ずしも脂質コンジュゲーションを必要とするわけではないことに留意すべきである。凝集を防ぐのに、溶液中の遊離PEGまたは遊離ATTAで十分な場合がある。製剤化した後に粒子が安定である場合、対象に投与する前にPEGまたはATTAを透析して除去することができる。
【0125】
中性脂質は、脂質粒子中に存在する場合、生理的pHで電荷のないまたは中性の両性イオン形態として存在するいくつかの脂質種のいずれかであることができる。このような脂質としては、例えば、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、およびセレブロシドが挙げられる。本明細書に記載の粒子中で使用される中性脂質の選択は、通常、例えば、リポソームサイズや血流中のリポソームの安定性を考慮して判断される。好ましくは、中性脂質成分は、2つのアシル基を有する脂質(すなわち、ジアシルホスファチジルコリンおよびジアシルホスファチジルエタノールアミン)である。様々な鎖長および飽和度の種々のアシル鎖基を有する脂質が利用可能であるかまたは周知の技術により単離もしくは合成可能である。一群の実施形態では、炭素鎖長がC
14〜C
22の範囲の飽和脂肪酸を含有する脂質が好ましい。別の群の実施形態では、炭素鎖長がC
14〜C
22の範囲の単不飽和脂肪酸または二不飽和脂肪酸を有する脂質を用いる。さらに、飽和脂肪酸鎖と不飽和脂肪酸鎖の混合物を有する脂質を用いることができる。好ましくは、本発明で使用される中性脂質は、DOPE、DSPC、POPC、または任意の関連ホスファチジルコリンである。本発明において有用な中性脂質はまた、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、または他の頭部基(例えば、セリンおよびイノシトール)を有するリン脂質から構成されていてもよい。
【0126】
脂質混合物のステロール成分は、存在する場合、リポソーム、脂質小胞または脂質粒子調製の分野で従来使用されているステロールのうちのいずれかであることができる。好ましいステロールはコレステロールである。
【0127】
上で具体的に記載したものに加えて、生理的pH付近で正味の正電荷を担持する他のカチオン性脂質もまた本発明の脂質粒子に含まれ得る。このようなカチオン性脂質としては、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル−N,N−N−トリエチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);1,2−ジオレイルオキシ−3−トリメチルアミノプロパンクロリド塩(「DOTAP.C1」);3β−(N−(N’,N’−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N−2−(スペルミンカルボキサミド)エチル)−N,N−ジメチルアンモニウムトリフルオロアセタート(「DOSPA」)、ジオクタデシルアミドグリシルカルボキシスペルミン(「DOGS」)、1,2−ジレオイル−sn−3−ホスホエタノールアミン(「DOPE」)、1,2−ジオレオイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(「DODAP」)、N,N−ジメチル−2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」)、およびN−(1,2−ジミリスチルオキシプロプ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、例えば、リポフェクチン(GIBCO/BRLから入手可能なDOTMAおよびDOPEを含む)、ならびにリポフェクトアミン(GIBCO/BRLから入手可能なDOSPAおよびDOPEを含む)などの、カチオン性脂質のいくつかの市販の調製物を用いることができる。特定の実施形態では、カチオン性脂質はアミノ脂質である。
【0128】
本発明の脂質粒子において使用するのに好適なアニオン性脂質としては、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、N−ドデカノイルホスファチジルエタノールアミン、N−スクシニルホスファチジルエタノールアミン、N−グルタリルホスファチジルエタノールアミン、リジルホスファチジルグリセロール、および中性脂質に結合した他のアニオン性修飾基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
多くの実施形態では、両親媒性脂質が本発明の脂質粒子に含まれる。「両親媒性脂質」とは、脂質物質の疎水性部分が疎水性相に向けられている一方で、親水性部分が水性相に向けられている任意の好適な物質を指す。このような化合物としては、リン脂質、アミノ脂質、およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なリン脂質としては、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、またはジリノレイルホスファチジルコリン(DLPC)が挙げられる。スフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質ファミリー、ジアシルグリセロール、およびβ−アシルオキシ酸などの、他のリンを欠く化合物を使用することもできる。さらに、このような両親媒性脂質は、トリグリセリド類やステロール類などの他の脂質と容易に混合することができる。
【0130】
プログラム可能な融合脂質も本発明の脂質粒子中に含めるのに好適である。このような脂質粒子は、細胞膜と融合する傾向がほとんどなく、所与のシグナル事象が起こるまで、その積み荷を送達する。これにより、脂質粒子は、生物または疾患部位に注射された後、より均一に分布し、その後に細胞と融合し始めることが可能になる。このシグナル事象は、例えば、pH、温度、イオン環境の変化、または時間であることができる。最後の場合、ATTA−脂質コンジュゲートまたはPEG−脂質コンジュゲートなどの、融合遅延成分または「クローキング」成分は、時間とともに脂質粒子膜外に単に入れ替わることができる。例示的な脂質アンカーとしては、約C
14〜約C
22、好ましくは約C
14〜約C
16の長さを有する脂質アンカーが挙げられる。いくつかの実施形態では、PEG部分(例えば、mPEG−NH
2)のサイズは、約1000、2000、5000、10,000、15,000または20,000ダルトンである。
【0131】
体内に適切に分布するまでに、脂質粒子は、融合するのに十分なクローキング剤を失っている。他のシグナル事象の場合、疾患部位または標的細胞と関連するシグナル(例えば、炎症部位での温度上昇)を選択することが望ましい。
【0132】
核酸剤にコンジュゲートした脂質粒子は、ターゲッティング部分、例えば、細胞型または組織に特異的なターゲッティング部分を含むこともできる。リガンド、細胞表面受容体、糖タンパク質、ビタミン類(例えば、リボフラビン)およびモノクローナル抗体などの、種々のターゲッティング部分を用いた脂質粒子のターゲッティングがこれまでに記載されている(例えば、米国特許第4,957,773号および同第4,603,044号を参照されたい)。例示的なターゲッティング部分としては、本明細書に記載のターゲッティング脂質などのターゲッティング脂質が挙げられる。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質は、本明細書に記載のGalNAc3−DSGやGalNAc3−PEG−DSGなどのGalNAc含有ターゲッティング脂質である。ターゲッティング部分は、タンパク質全体またはその断片を含むことができる。ターゲッティング機構は、通常、ターゲッティング部分が標的(例えば、細胞表面受容体)との相互作用に利用可能となるような形で、ターゲッティング剤が脂質粒子の表面に位置付けられることを必要とする。例えば、Sapra,P.and Allen,TM,Prog.Lipid Res.42(5):439−62(2003)およびAbra,RM et al.,J.Liposome Res.12:1−3(2002)に記載されているものをはじめとする、種々の異なるターゲッティング剤およびターゲッティング方法が当該技術分野で知られており、かつ利用可能である。
【0133】
ターゲッティングのために、親水性ポリマー鎖(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)鎖)の表面コーティングを有する脂質粒子、すなわち、リポソームを使用することが提案されている(Allen,et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1237:99−108(1995);DeFrees,et al.,Journal of the American Chemistry Society 118:6101−6104(1996);Blume,et al.,Biochimica et Biophysica Acta 1149:180−184(1993);Klibanov,et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334(1992);米国特許第5,013556号;Zalipsky,Bioconjugate Chemistry 4:296−299(1993);Zalipsky,FEBS Letters 353:71−74(1994);Zalipsky、Stealth Liposomes 第9章(Lasic and Martin編) CRC Press,Boca Raton Fl(1995)。1つのアプローチでは、脂質粒子を標的とするリガンド(例えば、抗体)を、脂質粒子を形成する脂質の極性頭部基に結合する。別のアプローチでは、ターゲッティングリガンドを、親水性ポリマーコーティングを形成するPEG鎖の遠位末端に結合させる(Klibanov,et al.,Journal of Liposome Research 2:321−334(1992);Kirpotin et al.,FEBS Letters 388:115−118(1996))。
【0134】
標的薬剤を結合させるための標準的な方法を用いることができる。例えば、標的薬剤の結合のために活性化することができるホスファチジルエタノールアミン、または誘導体化された親油性化合物(例えば、脂質誘導体化ブレオマイシン)を用いることができる。例えば、プロテインAを組み込んだリポソームを用いて、抗体をターゲッティングするリポソームを構築することができる(Renneisen,et al.,J.Bio.Chem.,265:16337−16342(1990)およびLeonetti,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA),87:2448−2451(1990)を参照されたい)。抗体コンジュゲーションの他の例は、米国特許第6,027,726号に開示されており、この文献の教示は参照により本明細書に組み込まれる。ターゲッティング部分の例としては、新生物または腫瘍と関連する抗原を含む、細胞成分に特異的な他のタンパク質を挙げることもできる。ターゲッティング部分として用いられるタンパク質は、共有結合によってリポソームに結合させることができる(Heath,Covalent Attachment of Proteins to Liposomes,149 Methods in Enzymology 111−119(Academic Press,Inc.1987)を参照されたい)。他のターゲッティング方法としては、ビオチン−アビジンシステムが挙げられる。
【0135】
例示的な一実施形態では、脂質粒子は、本発明のカチオン性脂質、(カチオン性脂質以外の)中性脂質、ステロール(例えば、コレステロール)およびPEG修飾脂質(例えば、PEG−DMGまたはPEG−cDMA)の混合物を含む。特定の実施形態では、脂質混合物は、本発明のカチオン性脂質、中性脂質、コレステロール、およびPEG修飾脂質からなるかまたはこれらから本質的になる。さらに好ましい実施形態では、脂質粒子は、DLin−M−C3−DMA約20〜70%:中性脂質5〜45%:コレステロール20〜55%:PEG修飾脂質0.5〜15%というモル比の上記の脂質混合物からなるかまたはこれらから本質的になる。
【0136】
特定の実施形態では、脂質粒子は、例えば、DLin−M−C3−DMA 約20〜60%:DSPC 5〜25%:Chol 25〜55%:PEG−DMGまたはPEG−cDMA 0.5〜15%というモル比のDLin−M−C3−DMA、DSPC、Chol、およびPEG−DMGまたはPEG−cDMAからなるか、またはこれらから本質的になる。特定の実施形態では、モル脂質比は、約40/10/40/10(mol%DLin−M−C3−DMA/DSPC/Chol/PEG−DMGもしくはPEG−cDMA)、35/15/40/10(mol%DLin−M−C3−DMA/DSPC/Chol/PEG−DMGもしくはPEG−cDMA)または52/13/30/5(mol%DLin−M−C3−DMA/DSPC/Chol/PEG−DMGもしくはPEG−cDMA)である。
【0137】
別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質であるDSPCは、POPC、DPPC、DOPEまたはSMと置き換えられる。
【0138】
治療剤−脂質粒子組成物および製剤化
本発明は、本発明の脂質粒子と活性剤とを含む組成物を含み、その場合、この活性剤は、脂質粒子と関連している。特定の実施形態では、活性剤は治療剤である。特定の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の水性内部に封入されている。他の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の1つ以上の脂質層の内部に存在する。他の実施形態では、活性剤は、脂質粒子の外部または内部脂質表面に結合している。
【0139】
本明細書で使用される「完全に封入された」とは、粒子中の核酸が、血清への暴露または遊離のDNAを相当に分解するヌクレアーゼアッセイの後にそれほど分解されないことを示す。完全に封入された系では、通常は遊離の核酸の100%を分解する処理において、好ましくは粒子核酸の25%未満が分解され、より好ましくは10%未満、および最も好ましくは粒子核酸の5%未満が分解される。あるいは、完全な封入は、Oligreen(登録商標)アッセイにより決定され得る。Oligreen(登録商標)は、溶液中のオリゴヌクレオチドおよび一本鎖DNAを定量するための超高感度蛍光核酸染色剤である(Invitrogen Corporation,Carlsbad,CAから入手可能)。
【0140】
完全に封入されたとは、粒子が血清安定である、すなわち、インビボ投与によって、粒子がすぐにはその構成部分に分解されないことも示唆する。
【0141】
本明細書で使用される活性剤としては、細胞、組織、器官、または対象に所望の効果を及ぼすことが可能な任意の分子または化合物が挙げられる。このような効果は、例えば、生物学的、生理学的、または美容的であり得る。活性剤は、例えば、核酸、ペプチドならびにポリペプチド(例えば、抗体、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、抗体断片、ヒト化抗体、組換え抗体、組換えヒト抗体、および霊長類化(Primatized)(商標)抗体、サイトカイン、増殖因子、アポトーシス因子、分化誘導因子、細胞表面受容体およびそのリガンド、ホルモンを含む)ならびに小分子(小さい有機分子または化合物を含む)をはじめとする、任意のタイプの分子または化合物であり得る。
【0142】
一実施形態では、活性剤は、治療剤、またはその塩もしくは誘導体である。治療剤誘導体は、それ自体に治療活性があってもよく、またはさらに修飾されたときに活性を持つようになるプロドラッグであってもよい。したがって、一実施形態では、治療剤誘導体は、未修飾の薬剤と比較したときに、治療活性の一部または全てを保持しているが、別の実施形態では、治療剤誘導体は治療活性を欠いている。
【0143】
様々な実施形態では、治療剤としては、例えば、抗炎症性化合物、抗鬱薬、刺激剤、鎮痛薬、抗生物質、受胎調節剤、解熱薬、血管拡張薬、抗血管新生薬、細胞血管剤(cytovascular agent)、シグナル伝達阻害剤、心臓血管薬(例えば、抗不整脈剤、血管収縮薬)、ホルモンおよびステロイドが挙げられる。
【0144】
特定の実施形態では、治療剤は抗癌薬であり、これは、抗腫瘍剤、抗癌剤、腫瘍薬、抗新生物剤などとも呼ばれる。本発明に従って使用可能な抗癌薬の例としては、アドリアマイシン、アルケラン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、araC、三酸化ヒ素、アザチオプリン、ベキサロテン、biCNU、ブレオマイシン、ブスルファン静注、ブスルファン経口、カペシタビン(Xeloda)、カルボプラチン、カルムスチン、CCNU、セレコキシブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロスポリンA、シタラビン、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、シトキサン、ダウノルビシン、デキサメタゾン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドキソルビシン、DTIC、エピルビシン、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシドおよびVP−16、エキセメスタン、FK506、フルダラビン、フルオロウラシル、5−FU、ゲムシタビン(Gemzar)、ゲムツズマブ−オゾガミシン、酢酸ゴセレリン、ハイドレア、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン(Camptostar、CPT−111)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイスタチン、ロイプロリド、レバミゾール、リトレチノイン、メガストロール、メルファラン、L−PAM、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、ナイトロジェンマスタード、パクリタキセル、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペントスタチン、ポルフィマーナトリウム、プレドニゾン、リツキサン、ストレプトゾシン、STI−571、タモキシフェン、タキソテール、テモゾロミド、テニポシド、VM−26、トポテカン(Hycamtin)、トレミフェン、トレチノイン、ATRA、バルルビシン、ベルバン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、VP16、およびビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に従って使用可能な抗腫瘍薬の他の例は、エリプチシンおよびエリプチシン類似体または誘導体、エポチロン、細胞内キナーゼ阻害剤ならびにカンプトテシンである。
【0145】
核酸−脂質粒子
特定の実施形態では、本発明の脂質粒子は核酸と関連して、核酸−脂質粒子を生じさせる。特定の実施形態では、核酸は、脂質粒子中に完全に封入されている。本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、任意のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含むことが意図されている。最大50個のヌクレオチドを含む断片を通常オリゴヌクレオチドと呼び、それよりも長い断片をポリヌクレオチドと呼ぶ。特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドは20〜50ヌクレオチド長である。
【0146】
本発明との関連において、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、天然に存在する塩基、糖および糖間(骨格)結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシドモノマーのポリマーまたはオリゴマーを指す。「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、同様に機能する天然に存在しないモノマー、またはその部分を含むポリマーまたはオリゴマーも含む。このような修飾または置換されたオリゴヌクレオチドは、例えば、細胞取込みの強化やヌクレアーゼの存在下における安定性の増加などの特性のために、天然の形態よりも好ましいことが多い。
【0147】
オリゴヌクレオチドは、デオキシリボオリゴヌクレオチドまたはリボオリゴヌクレオチドと分類される。デオキシリボオリゴヌクレオチドは、この糖の5’炭素と3’炭素においてリン酸と共有結合して、交互の非分岐状ポリマーを形成するデオキシリボースと呼ばれる5炭糖からなる。リボオリゴヌクレオチドは、5炭糖がリボースである同様の反復構造からなる。
【0148】
本発明による脂質−核酸粒子中に存在する核酸には、既知の核酸の任意の形態が含まれる。本明細書で使用される核酸は、一本鎖DNAもしくはRNA、または二本鎖DNAもしくはRNA、またはDNA−RNAハイブリッドであることができる。二本鎖DNAの例としては、構造遺伝子、制御領域および終結領域を含む遺伝子、ならびに自己複製系(例えば、ウイルスまたはプラスミドDNA)が挙げられる。二本鎖RNAの例としては、siRNAおよび他のRNA干渉試薬が挙げられる。一本鎖核酸としては、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、マイクロRNA、および三重鎖形成オリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0149】
本発明の核酸は、通常、核酸の特定の形態に依存して様々な長さであり得る。例えば、特定の実施形態では、プラスミドまたは遺伝子は、約1,000〜100,000ヌクレオチド残基長であり得る。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約10〜100ヌクレオチド長の範囲であり得る。様々な関連実施形態では、一本鎖、二本鎖、および三本鎖のオリゴヌクレオチドの長さの範囲は、約10〜約50ヌクレオチド長、約20〜約50ヌクレオチド長、約15〜約30ヌクレオチド長、約20〜約30ヌクレオチド長であり得る。
【0150】
特定の実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチド(またはその鎖)は、標的ポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイスするかまたは標的ポリヌクレオチドに相補的である。「特異的にハイブリダイズ可能」および「相補的」は、DNAまたはRNA標的とオリゴヌクレオチドの間で安定かつ特異的な結合が起こる程度の十分な相補度を示すために用いられる用語である。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能となるためにその標的核酸配列と100%相補的である必要はないことが理解される。オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドが標的に結合することで、標的分子の正常な機能が妨げられて、それからの有用性または発現が失われ、かつ特異的結合が望ましい条件下で、すなわち、インビボアッセイもしくは治療的処置の場合は、生理的条件下で、またはインビトロアッセイの場合は、アッセイが行なわれる条件下で、オリゴヌクレオチドが非標的配列に結合するのを妨げるほどの十分な相補度があるときに特異的にハイブリダイズ可能である。したがって、他の実施形態では、このオリゴヌクレオチドは、それが標的としているまたはそれが特異的にハイブリダイズする遺伝子またはmRNA配列の領域と比較したとき、1、2、または3つの塩基置換を含む。
【0151】
RNA干渉核酸
特定の実施形態では、本発明の核酸−脂質粒子は、RNA干渉(RNAi)分子と関連している。RNAi分子を用いたRNA干渉法を用いて、目的の遺伝子またはポリヌクレオチドの発現を妨害し得る。この5年の間に、低分子干渉RNA(siRNA)は、基本的には、開発中の次世代のターゲッティングオリゴヌクレオチド薬物としてアンチセンスODNやリボザイムに取って代わった。siRNAは、RNAi誘導型サイレンシング複合体(RISC)として知られる細胞質の多タンパク質複合体と会合することができる通常21〜30ヌクレオチド長のRNA二重鎖である。siRNAを搭載したRISCは、相同なmRNA転写産物の分解を仲介し、それゆえ、高い特異性をもってタンパク質発現をノックダウンするよう、siRNAを設計することができる。他のアンチセンス技術とは異なり、自然な機構によるsiRNA機能は、非コードRNAを介して遺伝子発現を制御するよう進化した。これは、その活性が、アンチセンスODNまたはリボザイムよりもインビトロおよびインビボで強力である理由であると一般に考えられている。臨床的に意義のある標的を標的とするsiRNAをはじめとする種々のRNAi試薬は現在、例えば、de Fougerolles,A.et al.,Nature Reviews 6:443−453(2007)に記載されているように、医薬品として開発されているところである。
【0152】
最初に記載されたRNAi分子は、RNAセンス鎖とRNAアンチセンス鎖の両方を含むRNA:RNAハイブリッドであったが、現在、DNAセンス:RNAアンチセンスハイブリッド、RNAセンス:DNAアンチセンスハイブリッド、およびDNA:DNAハイブリッドがRNAiを仲介することができることが証明されている(Lamberton,J.S.and Christian,A.T.,(2003) Molecular Biotechnology 24:111−119)。したがって、本発明は、これらの異なるタイプの二本鎖分子のいずれかを含むRNAi分子の使用を含む。さらに、RNAi分子を種々の形態で用いて、細胞に導入し得ることが理解される。したがって、本明細書で使用される場合、RNAi分子は、限定するものではないが、2つの別々の鎖、すなわち、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖ポリヌクレオチド、例えば、低分子干渉RNA(siRNA)と、二本鎖領域を形成する相補配列のヘアピンループを含むポリヌクレオチド、例えば、shRNAi分子と、単独でまたは別のポリヌクレオチドと組み合わせて二本鎖ポリヌクレオチドを形成することができる1つ以上のポリヌクレオチドを発現する発現ベクターとを含む、細胞内でRNAi応答を誘導することができる任意のおよび全ての分子を包含する。
【0153】
本明細書で使用される「一本鎖siRNA化合物」は、単一分子から構成されるsiRNA化合物である。これは、鎖内対形成によって形成された二重鎖領域を含んでもよく、例えば、ヘアピン構造もしくはパン・ハンドル構造であってもよいし、またはこのような構造を含んでもよい。一本鎖siRNA化合物は、標的分子に関してアンチセンスであってもよい。
【0154】
一本鎖siRNA化合物は、RISCに入り、RISC媒介性の標的mRNAの切断に関与することができるくらい十分に長くてもよい。一本鎖iRNA化合物の長さは、少なくとも14ヌクレオチド、および他の実施形態では、少なくとも15、20、25、29、35、40、または50ヌクレオチドである。特定の実施形態では、一本鎖siRNA化合物の長さは、200、100、または60ヌクレオチド未満である。
【0155】
ヘアピンsiRNA化合物は、17、18、19、29、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチド対に等しいか、または少なくとも17、18、19、29、20、21、22、23、24、もしくは25ヌクレオチド対の二重鎖領域を有する。二重鎖領域の長さは、200、100、または50以下である。特定の実施形態では、二重鎖領域の範囲の長さは、15〜30、17〜23、19〜23、および19〜21ヌクレオチド対である。ヘアピンは、一本鎖突出または末端不対領域を有していてもよい。特定の実施形態では、突出の長さは、2〜3ヌクレオチドである。いくつかの実施形態では、突出は、ヘアピンのセンス側に、いくつかの実施形態では、ヘアピンのアンチセンス側にある。
【0156】
本明細書で使用される「二本鎖siRNA化合物」とは、鎖間ハイブリダイゼーションによって二重鎖構造の領域が形成され得る、2つ以上の、場合によっては2つの、鎖を含むsiRNA化合物である。
【0157】
二本鎖siRNA化合物のアンチセンス鎖の長さは、14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドに等しくてもよく、または少なくとも14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドであってもよい。二本鎖siRNA化合物のアンチセンス鎖の長さは、200、100、または50ヌクレオチド以下であってもよい。範囲の長さは、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチドであってもよい。本明細書で使用される場合、「アンチセンス鎖」という用語は、標的分子、例えば、標的RNAに十分に相補的なsiRNA化合物の鎖を意味する。
【0158】
二本鎖siRNA化合物のセンス鎖の長さは、14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドに等しくてもよく、または少なくとも14、15、16、17、18、19、25、29、40、もしくは60ヌクレオチドであってもよい。二本鎖siRNA化合物のセンス鎖の長さは、200、100、または50ヌクレオチド以下であってもよい。範囲の長さは、17〜25、19〜23、および19〜21ヌクレオチドであってもよい。
【0159】
二本鎖siRNA化合物の二本鎖部分の長さは、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40、もしくは60ヌクレオチド対に等しくてもよく、または少なくとも14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、29、40、もしくは60ヌクレオチド対であってもよい。二本鎖siRNA化合物の二本鎖部分の長さは、200、100、または50ヌクレオチド対以下であってもよい。範囲の長さは、15〜30、17〜23、19〜23、および19〜21ヌクレオチド対であってもよい。
【0160】
多くの実施形態では、siRNA化合物は、内在性分子によって(例えば、Dicerによって)切断されて、より小さいsiRNA化合物(例えば、siRNA剤)を産生することができるくらいに十分大きい。
【0161】
二本鎖siRNA化合物が、分子の一方または両方の末端で一本鎖領域または不対領域を含むように、センス鎖とアンチセンス鎖を選択し得る。したがって、二本鎖siRNA化合物は、突出、例えば、1つもしくは2つの5’突出もしくは3’突出、または1〜3ヌクレオチドの3’突出を含むように対合した、センス鎖とアンチセンス鎖を含み得る。突出は、一方の鎖が他方の鎖よりも長いこと、または同じ長さの2つの鎖がジグザグ状なっていることの結果として生じ得る。いくつかの実施形態は、少なくとも1つの3’突出を有する。一実施形態では、siRNA分子の両方の末端が3’突出を有する。いくつかの実施形態では、突出は2ヌクレオチドである。
【0162】
特定の実施形態では、二重鎖領域の長さは、例えば、上で議論されたssiRNA化合物の範囲において、15〜30ヌクレオチド長、または18、19、20、21、22、および23ヌクレオチド長である。ssiRNA化合物は、天然のDicerによって長いdsiRNAからプロセッシングされた産物と長さや構造が類似していることもある。ssiRNA化合物の2つの鎖が結合(例えば、共有結合)している実施形態も含まれる。ヘアピン、または必要とされる二本鎖領域、および3’突出を与える他の一本鎖構造も本発明の範囲内にある。
【0163】
二本鎖siRNA化合物および一本鎖siRNA化合物を含む、本明細書に記載のsiRNA化合物は、標的RNA、例えば、mRNA(例えば、タンパク質をコードする遺伝子の転写産物)のサイレンシングを仲介することができる。便宜上、このようなmRNAを、本明細書では、サイレンシングされるmRNAとも表す。このような遺伝子を標的遺伝子とも表す。一般に、サイレンシングされるRNAは、内在性遺伝子または病原体遺伝子である。さらに、mRNA以外のRNA(例えば、tRNA)、およびウイルスRNAを標的することもできる。
【0164】
本明細書で使用される場合、「RNAiを仲介する」という語句は、配列特異的な様式で、標的RNAをサイレンシングする能力を指す。理論に束縛されることを望まないが、サイレンシングでは、RNAiの機構またはプロセスとガイドRNA(例えば、21〜23ヌクレオチドのssiRNA化合物)とが使用されると考えられている。
【0165】
一実施形態では、siRNA化合物は、siRNA化合物が標的mRNAによってコードされるタンパク質の産生をサイレンシングするように、標的RNA、例えば、標的mRNAに「十分に相補的」である。別の実施形態では、siRNA化合物は、標的RNAに「厳密に相補的」であり、例えば、標的RNAとsiRNA化合物は、例えば、厳密に相補的な領域でワトソン−クリック型塩基対のみからできたハイブリッドを形成するようにアニールする。「十分に相補的な」標的RNAは、標的RNAに厳密に相補的な(例えば、少なくとも10ヌクレオチドの)内部領域を含むことができる。さらに、特定の実施形態では、siRNA化合物は、単一ヌクレオチドの違いを特異的に区別することができる。この場合、siRNA化合物は、厳密な相補性が、単一ヌクレオチドの違いがある(例えば、7ヌクレオチド以内の)領域に見られる場合のみにRNAiを仲介する。
【0166】
RNA干渉(RNAi)を用いて、標的ポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害し得る。二本鎖RNAを介する遺伝子および核酸発現の抑制は、dsRNA、siRNAまたはshRNAを細胞または生物に導入することにより、本発明に従って達成し得る。siRNAは、二本鎖RNA、またはRNAとDNAの両方、例えば、1つのRNA鎖と1つのDNA鎖を含むハイブリッド分子であり得る。siRNAを細胞に直接導入することにより、哺乳動物細胞内でRNAiを誘発することができることが証明されている(Elshabir,S.M.,et al.,Nature 411:494−498(2001))。さらに、哺乳動物細胞内での抑制はRNAレベルで起こり、標的とされた遺伝子に特異的で、RNAとタンパク質抑制の間に強い相関があった(Caplen,N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 98:9746−9747(2001))。さらに、HeLa S3、COS7、293、NIH/3T3、A549、HT−29、CHO−K1およびMCF−7細胞をはじめとする、多種多様な細胞株は、ある程度siRNAサイレンシングに感受性があることが示された(Brown,D.et al.,TechNotes 9(1):1−7、www.dot.ambion.dot.com/techlib/tn/91/912.html(9/1/02)のワールドワイドウェブ上で入手可能)。
【0167】
特定のポリヌクレオチドを標的とするRNAi分子は、当該技術分野で公知の手順に従って容易に調製することができる。効果的なsiRNA分子の構造的特徴が同定されている。Elshabir,S.M.et al.(2001) Nature 411:494−498およびElshabir,S.M.et al.(2001),EMBO 20:6877−6888。したがって、当業者であれば、多種多様な異なるsiRNA分子を用いて、特異的な遺伝子または転写産物を標的し得ることを理解するであろう。特定の実施形態では、本発明によるsiRNA分子は二本鎖であり、16〜30または18〜25ヌクレオチド長(その間にある各々の整数を含む)である。一実施形態では、siRNAは、21ヌクレオチド長さである。特定の実施形態では、siRNAは、0〜7ヌクレオチドの3’突出または0〜4ヌクレオチドの5’突出を有する。一実施形態では、siRNA分子は、2ヌクレオチドの3’突出を有する。一実施形態では、siRNAは、21ヌクレオチド長であり、2ヌクレオチドの3’突出を有する(すなわち、siRNAは、センス鎖とアンチセンス鎖の間に19ヌクレオチドの相補領域を含む)。特定の実施形態では、突出はUUまたはdTdTの3’突出である。
【0168】
1塩基対のミスマッチですらサイレンシングを低下させることが示されているので、通常、siRNA分子は、標的DNA分子の一方の鎖に完全に相補的である。他の実施形態では、siRNAは、例えば、2’−デオキシ−または2’−O−メチル修飾などの修飾された骨格組成を有し得る。しかしながら、好ましい実施形態では、siRNAの鎖全体は、2’デオキシまたは2’−O−修飾塩基のいずれかを含んで作製されない。
【0169】
別の実施形態では、本発明は、細胞内で遺伝子の発現を阻害するためのベクターを含む細胞を提供する。ベクターは、本発明のdsRNAのうちの1つの少なくとも一方の鎖をコードするヌクレオチド配列に機能的に連結された調節配列を含む。
【0170】
一実施形態では、siRNA標的部位は、標的mRNA転写産物配列をAAジヌクレオチド配列の存在についてスキャンすることによって選択される。3’隣接の約19ヌクレオチドと組み合わされた各々のAAジヌクレオチド配列は、潜在的なsiRNA標的部位である。一実施形態では、調節領域に結合するタンパク質がsiRNPエンドヌクレアーゼ複合体の結合を妨害し得るので、siRNA標的部位は、選択的に、5’および3’非翻訳領域(UTR)内または開始コドン付近の領域内(約75塩基以内)には位置しない(Elshabir,S.et al.,Nature 411:494−498(2001);Elshabir,S.et al.,EMBO J.20:6877−6888(2001))。さらに、潜在的標的部位を、適当なゲノムデータベース(例えば、NCBIサーバー(www.ncbi.nlm)上で入手可能な、BLASTN 2.0.5)、および除外された他のコード配列とかなりの相同性を有する潜在的標的配列と比較し得る。
【0171】
特定の実施形態では、短いヘアピンRNAは、本発明の核酸−脂質粒子の核酸成分を構成している。短いヘアピンRNA(shRNA)は、配列特異的に標的遺伝子の発現を低下させることができるヘアピンRNAの形態である。短いヘアピンRNAは、通常、細胞環境においてより安定でかつ分解されにくいので、遺伝子発現を抑制するときにsiRNAに優る利点を提供し得る。このような短いヘアピンRNA媒介性の遺伝子サイレンシングは、種々の正常細胞株および癌細胞株において、ならびにマウス細胞およびヒト細胞をはじめとする哺乳動物細胞において機能することが立証されている。Paddison,P.et al.,Genes Dev.16(8):948−58(2002)。さらに、改変されたshRNAをコードする染色体遺伝子を担持するトランスジェニック細胞株が作製されている。これらの細胞は、shRNAを構成的に合成し、それにより、子孫細胞に受け継がれ得る長時間持続型のまたは構成的な遺伝子サイレンシングを促進することができる。Paddison,P.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99(3):1443−1448(2002)。
【0172】
shRNAはステムループ構造を含む。特定の実施形態では、shRNAは、変えられるステムの長さ、通常、19〜29ヌクレオチド、またはその間の任意の数の長さを含み得る。特定の実施形態では、ヘアピンは、19〜21ヌクレオチドステムを含むが、他の実施形態では、ヘアピンは、27〜29ヌクレオチドステムを含む。特定の実施形態では、ループサイズは4〜23ヌクレオチドの長さであるが、ループサイズは、サイレンシング活性にそれほど影響を及ぼすことなく、23ヌクレオチドより大きいことがあり得る。shRNA分子は、効力を低下させることなく、ミスマッチ、例えば、shRNAステムの2つの鎖の間のG−Uミスマッチを含み得る。実際、特定の実施形態では、例えば、細菌中で増殖させる間、ヘアピンを安定化するために、ヘアピンステム中に1個または数個のG−U対を含むようにshRNAを設計する。しかしながら、通常、標的mRNAに結合するステムの部分(アンチセンス鎖)とmRNAの相補性が必要とされるので、この領域中の1塩基対ミスマッチでさえもサイレンシングを無効にする可能性がある。5’および3’突出は、shRNA機能に重要であるようには見えないので、必要とはされないが、これらが存在していてもよい(Paddison et al.(2002) Genes & Dev.16(8):948−58)。
【0173】
マイクロRNA
マイクロRNA(miRNA)は、植物および動物のゲノム中のDNAから転写されるが、タンパク質には翻訳されない高度に保存された小RNA分子群である。プロセッシングされたmiRNAは、RNA誘導型サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれるようになる約17〜25ヌクレオチド(nt)の一本鎖RNA分子であり、発生、細胞増殖、アポトーシスおよび分化の重要な調節因子として同定されている。これらは、特定のmRNAの3’−非翻訳領域に結合することによって、遺伝子発現の調節に役割を果たしていると考えられている。RISCは、翻訳阻害、転写産物切断、またはその両方によって、遺伝子発現の下方調節を仲介する。RISCは、広範囲にわたる真核生物の核内での転写サイレンシングにも関与する。
【0174】
これまでに同定されたmiRNA配列の数は多く、かつ増加しており、その実例は、例えば、“miRBase:microRNA sequences,targets and gene nomenclature” Griffiths−Jones S,Grocock RJ,van Dongen S,Bateman A,Enright AJ.NAR,2006,34,Database Issue,D140−D144;“The microRNA Registry” Griffiths−Jones S.NAR,2004,32,Database Issue,D109−D111に、また、microrna.dot.sanger.dot.ac.dot.uk/sequences/におけるワールド・ワイド・ウェブ上でも見られる。
【0175】
アンチセンスオリゴヌクレオチド
一実施形態では、核酸は、標的ポリヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。「アンチセンスオリゴヌクレオチド」または単に「アンチセンス」という用語は、ターゲッティングポリヌクレオチド配列に相補的なオリゴヌクレオチドを含むことが意図される。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、選ばれた配列に相補的な一本鎖のDNAまたはRNAである。アンチセンスRNAの場合、相補的なRNA鎖に結合することによって、その翻訳を妨げる。アンチセンスDNAは、特異的で、相補的な(コードまたは非コード)RNAを標的するために用いることができる。結合が起こる場合、このDNA/RNAハイブリッドを酵素のRNアーゼHで分解することができる。特定の実施形態では、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、約10〜約50ヌクレオチド、より好ましくは約15〜約30ヌクレオチドを含む。この用語は、所望の標的遺伝子と正確には相補的ではない場合があるアンチセンスオリゴヌクレオチドも包含する。したがって、本発明は、非標的特異的活性がアンチセンスで見られる場合に、または標的配列との1つ以上のミスマッチを含むアンチセンス配列が特定の用途で最も好ましい場合に利用することができる。
【0176】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、タンパク質合成の効果的でかつ標的を定めた阻害剤であることが示されており、それゆえに、これを用いて、標的とされた遺伝子によるタンパク質合成を特異的に阻害することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドがタンパク質合成を阻害する効力は、よく確立されている。例えば、ポリガラクタウロナーゼおよびムスカリンおよびムスカリン2型アセチルコリン受容体の合成は、そのそれぞれのmRNA配列に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドによって阻害される(米国特許第5,739,119号および米国特許第5,759,829号)。さらに、アンチセンス阻害の例が、核タンパク質サイクリン、多剤耐性遺伝子(MDG1)、ICAM−1、E−セレクチン、STK−1、線条体GABA
A受容体およびヒトEGFについて示されている(Jaskulski et al.,Science.1988 Jun 10;240(4858):1544−6;Vasanthakumar and Ahmed,Cancer Commun.1989;1(4):225−32;Peris et al.,Brain Res Mol Brain Res.1998 Jun 15;57(2):310−20;米国特許第5,801,154号;米国特許第5,789,573号;米国特許第5,718,709号および米国特許第号5,610,288)。さらに、種々の異常な細胞増殖(例えば、癌)を阻害し、かつこれらを治療するために使用可能なアンチセンスコンストラクトもまた、記載されている(米国特許第5,747,470号;米国特許第5,591,317号および米国特許第5,783,683号)。
【0177】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを作製する方法は、当該技術分野で公知であり、任意のポリヌクレオチド配列を標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドを作製するために容易に適応することができる。所与の標的配列に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド配列の選択は、選択された標的配列の解析、ならびに二次構造、T
m、結合エネルギーおよび相対的な安定性の決定に基づく。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ダイマー、ヘアピン、または宿主細胞における標的mRNAへの特異的結合を減少させるかもしくは妨げる他の二次構造を相対的に形成することができないことに基づいて選択され得る。mRNAの極めて好ましい標的領域は、AUG翻訳開始コドンにおける領域またはその付近の領域、およびmRNAの5’領域に実質的に相補的な配列を含む。これらの二次構造解析および標的部位の選択の考慮は、例えば、OLIGOプライマー解析ソフトウェアのv.4(Molecular Biology Insights)および/またはBLASTN 2.0.5アルゴリズムソフトウェア(Altschul et al., Nucleic Acids Res. 1997, 25(17):3389−402)を用いて行なうことができる。
【0178】
アンタゴmir
アンタゴmirは、RNアーゼからの保護ならびに薬理学的特性(例えば、組織および細胞への取込みの増強)のための様々な修飾を有するRNA様オリゴヌクレオチドである。アンタゴmirは、例えば、糖の完全な2’−O−メチル化、ホスホロチオアート骨格、および例えば、3’−末端のコレステロール部分によって、普通のRNAとは異なる。アンタゴmirは、アンタゴmirと内在性miRNAとを含む二重鎖を形成することによって内在性miRNAを効率的にサイレンシングし、それによってmiRNA誘導性の遺伝子サイレンシングを妨害するために使用し得る。アンタゴmir媒介性のmiRNAサイレンシングの例は、Krutzfeldt et al,Nature,2005,438:685−689(これは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載されている、miR−122のサイレンシングである。アンタゴmir RNAは、標準的な固相オリゴヌクレオチド合成プロトコルを用いて合成し得る。米国特許出願第11/502,158号および同第11/657,341号を参照されたい(これらの内容の開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0179】
アンタゴmirは、リガンドにコンジュゲートしたモノマーサブユニットやオリゴヌクレオチド合成用のモノマーを含むことができる。例示的なモノマーは、2004年8月10日に出願された米国特許出願第10/916,185号に記載されている。アンタゴmirは、2004年3月8日に出願されたPCT出願PCT/US2004/07070号に記載されているような、ZXY構造を有することができる。アンタゴmirは、両親媒性部分と複合体化させることができる。オリゴヌクレオチド剤とともに使用される例示的な両親媒性部分は、2004年3月8日に出願されたPCT出願PCT/US2004/07070号に記載されている。
【0180】
アプタマー
アプタマーは、対象となる特定の分子に高い親和性および特異性で結合する核酸またはペプチド分子である(Tuerk and Gold,Science 249:505(1990);Ellington and Szostak,Nature 346:818(1990))。大きいタンパク質から小さい有機分子まで多くの異なる実体に結合するDNAまたはRNAアプタマーの産生に成功している。Eaton,Curr.Opin.Chem.Biol.1:10−16(1997)、Famulok,Curr.Opin.Struct.Biol.9:324−9(1999)、およびHermann and Patel,Science 287:820−5(2000)を参照されたい。アプタマーは、RNAベースでも、DNAベースでもよく、かつリボスイッチを含んでいてもよい。リボスイッチは、小さい標的分子に直接結合することができ、かつ標的へのその結合が遺伝子の活性に影響を及ぼす、mRNA分子の一部である。したがって、リボスイッチを含むmRNAは、その標的分子の有無によって、それ自体の活性の調節に直接関与する。通常、アプタマーは、小分子、タンパク質、核酸などの様々な分子標的、さらには細胞、組織および生物に結合するように、インビトロ選択を何回も繰り返すことによって、または同等にSELEX(指数関数的濃縮によるリガンドの系統的進化)によって人工的に作製される。アプタマーは、合成法、組換え法、および精製法をはじめとする、任意の既知の方法によって調製されてもよく、単独でまたは同じ標的に特異的な他のアプタマーと組み合わせて使用してもよい。さらに、本明細書でより十分に記載したように、「アプタマー」という用語には、特に、2つ以上の既知のアプタマーと所与の標的との比較から得られるコンセンサス配列を含む「2次アプタマー」が含まれる。
【0181】
リボザイム
本発明の別の実施形態によれば、核酸−脂質粒子は、リボザイムと会合する。リボザイムは、エンドヌクレアーゼ活性を有する特定の触媒ドメインを有するRNA−タンパク質複合体である(Kim and Cech,Proc Natl Acad Sci USA.1987 Dec;84(24):8788−92;Forster and Symons,Cell.1987 Apr 24;49(2):211−20)。例えば、多数のリボザイムが、しばしばオリゴヌクレオチド基質内のいくつかのリン酸エステルのうちの1つだけを切断する高度の特異性によって、リン酸エステル転移反応を加速させる(Cech et al.,Cell.1981 Dec;27(3 Pt 2):487−96;Michel and Westhof,J Mol Biol.1990 Dec 5;216(3):585−610;Reinhold−Hurek and Shub,Nature.1992 May 14;357(6374):173−6)。この特異性は、基質が化学反応前に特異的な塩基対形成相互作用を介してリボザイムの内部のガイド配列(「IGS」)に結合する必要があることに起因している。
【0182】
天然に存在する酵素的RNAの少なくとも6つの基本的な種類が現在知られている。各々は、生理的条件下においてトランスで(in trans)RNAホスホジエステル結合の加水分解を触媒することができる(したがって、他のRNA分子を切断することができる)。一般に、酵素的核酸は、まず標的RNAに結合することによって作用する。このような結合は、標的RNAを切断するように作用する分子の酵素的部分に近接して保持されている酵素的核酸の標的結合部分を介して生じる。したがって、酵素的核酸は、まず、標的RNAを認識し、次に、相補的な塩基対形成によってそれに結合し、一旦正確な部位に結合したら、標的RNAを切断するように酵素的に作用する。このような標的RNAの戦略的な切断は、コードされるタンパク質の合成を指示する能力を破壊する。酵素的核酸は、そのRNA標的に結合し、それを切断した後、そのRNAから放出されて、別の標的を捜し、そして、新しい標的への結合とその切断を繰り返すことができる。
【0183】
酵素的核酸分子は、例えば、ハンマーヘッド型、ヘアピン型、δ肝炎ウイルス、グループIイントロンまたはRNaseP RNA(RNAガイド配列と会合した状態)またはアカパンカビVS RNAモチーフとして形成され得る。ハンマーヘッド型モチーフの具体的な例は、Rossi et al.Nucleic Acids Res.1992 Sep 11;20(17):4559−65に記載されている。ヘアピンモチーフの例は、Hampel et al.(欧州特許第EP0360257号)、Hampel and Tritz,Biochemistry 1989 Jun 13;28(12):4929−33;Hampel et al.,Nucleic Acids Res.1990 Jan 25;18(2):299−304および米国特許第5,631,359号に記載されている。δ肝炎ウイルスモチーフの例は、Perrotta and Been,Biochemistry.1992 Dec 1;31(47):11843−52に記載されており、RNasePモチーフの例は、Guerrier−Takada et al.,Cell.1983 Dec;35(3 Pt 2):849−57に記載されており、アカパンカビVS RNAリボザイムモチーフは、Collins(Saville and Collins,Cell.1990 May 18;61(4):685−96;Saville and Collins,Proc Natl Acad Sci USA.1991 Oct 1;88(19):8826−30;Collins and Olive,Biochemistry.1993 Mar 23;32(11):2795−9)に記載されており、グループIイントロンの例は、米国特許第4,987,071号に記載されている。本発明に従って使用される酵素的核酸分子の重要な特徴は、それらが、標的遺伝子のDNA領域またはRNA領域の1または複数に相補的である特異的な基質結合部位を有すること、およびその分子にRNA切断活性を付与するヌクレオチド配列を基質結合部位内または基質結合部位周辺に有することである。したがって、リボザイムコンストラクトは、本明細書中で述べられる特定のモチーフに限定される必要はない。
【0184】
任意のポリヌクレオチド配列を標的とするリボザイムを作製する方法は、当該技術分野で公知である。リボザイムは、各々参照により本明細書に明確に組み込まれる、国際公開第93/23569号および国際公開第94/02595号に記載されているように設計され、かつ合成されて、それらに記載されているようにインビトロおよびインビボで試験され得る。
【0185】
リボザイム活性は、リボザイムの結合アームの長さを変更すること、または血清リボヌクレアーゼによる分解を防ぐ修飾を有するリボザイムを化学的に合成すること(例えば、国際公開第92/07065号;国際公開第93/15187号;国際公開第91/03162号;欧州特許出願公開92110298.4号;米国特許第5,334,711号;および国際公開第94/13688を参照されたい。これらの文献は、酵素的RNA分子の糖部分になされ得る様々な化学修飾を記載している)、細胞内でのそれらの効力を高める修飾、およびRNA合成時間を短縮し、化学的必要性を低下させるステムII塩基の除去によって、最適化することができる。
【0186】
本発明の組成物および方法において使用するのに好適なオリゴヌクレオチド(ODN)の追加の特定の核酸配列は、米国特許出願第60/379,343号、米国特許出願第09/649,527号、国際公開第02/069369号、国際公開第01/15726号、米国特許第6,406,705号およびRaney et al.,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,298:1185−1192(2001)に記載されている。ある特定の実施形態において、本発明の組成物および方法において使用されるODNは、CpGモチーフ内にホスホジエステル(「PO」)骨格もしくはホスホロチオアート(「PS」)骨格および/または少なくとも1つのメチル化されたシトシン残基を有する。
【0187】
核酸修飾
1990年代、DNAベースのアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(ODN)およびリボザイム(RNA)が、薬物のデザインおよび開発に対して興奮させる新しいパラダイムをもたらしたが、それらのインビボでの適用は、エンド−およびエキソ−ヌクレアーゼ活性ならびに首尾よい細胞内送達の欠如によって妨げられた。この分解の問題は、オリゴヌクレオチド(オリゴ)薬物がヌクレアーゼ酵素によって認識されるのを妨げるが、それらの作用機構を阻害しない化学修飾に対する大規模な研究の後、効果的に克服された。この研究は非常に成功したので、現在開発過程のアンチセンスODN薬物は、未修飾分子の場合の数分間と比較して、インビボで数日間インタクトな状態である(Kurreck,J.2003.Antisense technologies.Improvement through novel chemical modifications.Eur J Biochem 270:1628−44)。しかしながら、細胞内送達および作用機序の問題は、これまで、アンチセンスODNおよびリボザイムが臨床的な製品になることを制限している。
【0188】
RNA二重鎖は、本質的に、一本鎖のDNAまたはRNAよりもヌクレアーゼに対して安定であり、かつアンチセンスODNとは異なり、未修飾siRNAは、一旦細胞質に到達すると良好な活性を示す。そうであっても、アンチセンスODNやリボザイムを安定化させるために開発された化学修飾もまた、どれくらいの化学修飾が許容され得るか、薬物動態学的および薬力学的な活性を高めることができるかどうかを明らかにするために、siRNAに体系的に適用されている。siRNA二重鎖によるRNA干渉には、異なる機能を有するアンチセンス鎖およびセンス鎖が必要である。両方とも、siRNAのRISCへの侵入を可能にするために必要であるが、一旦装填されると、2本の鎖は分離し、センス鎖は分解されるのに対し、アンチセンス鎖は残留して、RISCを標的mRNAに導く。RISCへの侵入は、標的mRNAの認識および切断よりも構造的に厳格性の低いプロセスである。結果として、センス鎖の多くの異なる化学修飾が可能であるが、限られた変化しかアンチセンス鎖によって許容されない(Zhang et al.,2006)。
【0189】
当該技術分野で公知の通り、ヌクレオシドは、塩基と糖の組合せである。ヌクレオチドは、ヌクレオシドの糖部分に共有結合されたリン酸基をさらに含むヌクレオシドである。ペントフラノシル糖を含むヌクレオシドの場合、リン酸基は、その糖の2’、3’または5’ヒドロキシル部分のいずれかに結合させることができる。オリゴヌクレオチドを形成する際、リン酸基は、隣接するヌクレオシドを互いに共有結合して、線状のポリマー化合物を形成する。次に、この線状のポリマー構造のそれぞれの末端がさらに結合されて、環状構造を形成することができる。オリゴヌクレオチド構造内において、リン酸基は、一般にオリゴヌクレオチドのヌクレオシド間骨格を形成すると言われる。RNAおよびDNAの通常の結合または骨格は、3’−5’ホスホジエステル結合である。
【0190】
本発明による脂質−核酸粒子において使用される核酸は、公知である任意の形態の核酸を含む。したがって、この核酸は、ヌクレアーゼ耐性および血清安定性を高めるために以前に使用されたタイプの修飾された核酸であり得る。しかしながら、驚くべきことに、許容可能な治療的な生成物は、天然の核酸ポリマーのホスホジエステル結合に対する修飾を有さない核酸から脂質−核酸粒子を製剤化する本発明の方法を用いても調製することができ、未修飾のホスホジエステル核酸(すなわち、全ての結合がホスホジエステル結合である核酸)を使用することが、本発明の好ましい実施形態である。
【0191】
骨格修飾
本発明において有用なアンチセンス、siRNAおよび他のオリゴヌクレオチドとしては、修飾された骨格または非天然のヌクレオシド間結合を含むオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これに限定されない。修飾された骨格を有するオリゴヌクレオチドには、骨格内にリン原子を保持するオリゴヌクレオチドと骨格内にリン原子を有さないオリゴヌクレオチドが含まれる。ヌクレオシド間骨格内にリン原子を有さない修飾されたオリゴヌクレオチドもまた、オリゴヌクレオシドと考えることができる。修飾されたオリゴヌクレオチド骨格としては、例えば、ホスホロチオアート、キラルホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリ−エステル、メチルホスホナートおよび他のアルキルホスホナート(3’−アルキレンホスホナートおよびキラルホスホナートを含む)、ホスフィナート、ホスホルアミダート(3’−アミノホスホルアミダートおよびアミノアルキルホスホルアミダートを含む)、チオノホスホルアミダート、チオノアルキルホスホナート、チオノアルキルホスホトリエステル、ホスホロセレナート、メチルホスホナートまたはO−アルキルホスホトリエステル結合、ならびに通常の3’−5’結合を有するボラノホスファート、これらの2’−5’結合類似体、および反転した極性を有するもの(ヌクレオシド単位の隣接する対では、3’−5’と5’−3’または2’−5’と5’−2’とが結合する)が挙げられる。本発明による核酸内に存在し得る特定の修飾の特定の非限定的な例を表2に示す。
【0192】
様々な塩、混合塩および遊離酸形態もまた含まれる。上記結合の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第3,687,808号;同第4,469,863号;同第4,476,301号;同第5,023,243号;同第5,177,196号;同第5,188,897号;同第5,264,423号;同第5,276,019号;同第5,278,302号;同第5,286,717号;同第5,321,131号;同第5,399,676号;同第5,405,939号;同第5,453,496号;同第5,455,233号;同第5,466,677号;同第5,476,925号;同第5,519,126号;同第5,536,821号;同第5,541,306号;同第5,550,111号;同第5,563,253号;同第5,571,799号;同第5,587,361号;および同第5,625,050号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0193】
特定の実施形態では、その中にリン原子を含まない修飾オリゴヌクレオチド骨格は、短鎖アルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルのヌクレオシド間結合の混合、または1つ以上の短鎖のヘテロ原子もしくは複素環式のヌクレオシド間結合によって形成される骨格を有する。これらとしては、例えば、モルホリノ結合を有するもの(ヌクレオシドの糖部分から部分的に形成される);シロキサン骨格;スルフィド、スルホキシドおよびスルホン骨格;ホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;メチレンホルムアセチルおよびチオホルムアセチル骨格;アルケン含有骨格;スルファメート骨格;メチレンイミノおよびメチレンヒドラジノ骨格;スルホネートおよびスルホンアミド骨格;アミド骨格;ならびに混合されたN、O、SおよびCH
2構成部分を有するその他のものが挙げられる。上記のオリゴヌクレオシドを記載している代表的な米国特許としては、米国特許第5,034,506号;同第5,166,315号;同第5,185,444号;同第5,214,134号;同第5,216,141号;同第5,235,033号;同第5,264,562号;同第5,264,564号;同第5,405,938号;同第5,434,257号;同第5,466,677号;同第5,470,967号;同第5,489,677号;同第5,541,307号;同第5,561,225号;同第5,596,086号;同第5,602,240号;同第5,610,289号;同第5,602,240号;同第5,608,046号;同第5,610,289号;同第5,618,704号;同第5,623,070号;同第5,663,312号;同第5,633,360号;同第5,677,437号;および同第5,677,439号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0194】
ホスホロチオアート骨格修飾(表3、#1)(ホスホジエステル結合内の非架橋酸素が硫黄で置換されている)は、ヌクレアーゼ分解に対して核酸薬物を安定化させるために配置された最も古く最も一般的な手段の1つである。通常、PS修飾は、活性に対して大きく影響せずに、両方のsiRNA鎖に対して広範になされ得るようである(Kurreck,J.,Eur.J.Biochem.270:1628−44,2003)。しかしながら、PSオリゴは、タンパク質と非特異的に貪欲に会合することが知られており、その結果、特にi.v.投与の際に毒性が生じる。それゆえに、PS修飾は、通常、3’および5’末端における1つまたは2つの塩基に制限される。ボラノホスファートリンカー(表3、#2)は、PSよりも明らかに安定であり、siRNA活性を高め、そして低毒性を有する、最近の修飾である(Hall et al.,Nucleic Acids Res.32:5991−6000,2004)。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0195】
他の有用な核酸誘導体としては、架橋酸素原子(リン酸エステル結合を形成するもの)が−S−、−NH−、−CH
2−などで置換されている核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、使用されるアンチセンス、siRNAまたは他の核酸に対する改変は、核酸と会合する負電荷に完全には影響を及ぼさないであろう。したがって、本発明は、結合の部分が、例えば、中性のメチルホスホナートまたはホスホルアミダート結合で置換されている、アンチセンス、siRNAおよび他の核酸の使用を企図する。中性の結合が使用されるとき、ある特定の実施形態において、80%未満の核酸結合が、そのように置換されるか、または50%未満の結合がそのように置換される。
【0196】
塩基修飾
塩基修飾は、骨格および糖に対する修飾よりも一般的ではない。0.3−6に示す修飾の全てが、ヌクレアーゼに対してsiRNAを安定化させ、活性に対してほとんど効果がないようである(Zhang,H.Y.,Du,Q.,Wahlestedt,C,Liang,Z.2006.RNA Interference with chemically modified siRNA.Curr Top Med Chem 6:893−900)。
【0197】
したがって、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオ塩基(当該技術分野では単に「塩基」と表されることが多い)の修飾または置換も含み得る。本明細書中で使用されるとき、「未修飾の」または「天然の」ヌクレオ塩基は、プリン塩基であるアデニン(A)およびグアニン(G)ならびにピリミジン塩基であるチミン(T)、シトシン(C)およびウラシル(U)を含む。修飾されたヌクレオ塩基としては、他の合成および天然のヌクレオ塩基(例えば、5−メチルシトシン(5−me−Cまたはm5c)、5−ヒドロキシメチルシトシン、キサンチン、ヒポキサンチン、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、2−チオウラシル、2−チオチミンおよび2−チオシトシン、5−ハロウラシルおよびシトシン、5−プロピニルウラシルおよびシトシン、6−アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5−ウラシル(プソイドウラシル)、4−チオウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−ハロ、特に、5−ブロモ、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニンおよび7−メチルアデニン、8−アザグアニンおよび8−アザアデニン、7−デアザグアニンおよび7−デアザアデニン、ならびに3−デアザグアニンおよび3−デアザアデニンが挙げられる。
【0198】
特定のヌクレオ塩基は、本発明のオリゴマー化合物(5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびにN−2、N−6およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシンを含む)を含む)の結合親和性を増加させるのに特に有用である。5−メチルシトシン置換は、核酸二重鎖の安定性を0.6〜1.2℃増加させることが示されている(Sanghvi,Y.S.,Crooke,S.T. and Lebleu,B.,編,Antisense Research and Applications 1993,CRC Press,Boca Raton,pages 276−278)。これらは、特定の実施形態では、2’−O−メトキシエチル糖修飾と組み合わせ得る。これらの修飾されたヌクレオ塩基ならびに他の修飾されたヌクレオ塩基の特定のものの調製を教示する米国特許としては、上で述べた米国特許第3,687,808号ならびに米国特許第4,845,205号;同第5,130,302号;同第5,134,066号;同第5,175,273号;同第5,367,066号;同第5,432,272号;同第5,457,187号;同第5,459,255号;同第5,484,908号;同第5,502,177号;同第5,525,711号;同第5,552,540号;同第5,587,469号;同第5,594,121,5,596,091号;同第5,614,617号;および同第5,681,941号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0199】
糖修飾
糖基におけるほとんどの修飾は、好都合に化学的に反応性の部位を提供する、RNA糖環の2’−OHにおいて生じる。(Manoharan,M.2004.RNA interference and chemically modified small interfering RNAs.Curr Opin Chem Biol 8:570−9;Zhang,H.Y.,Du,Q.,Wahlestedt,C,Liang,Z.2006.RNA Interference with chemically modified siRNA.Curr Top Med Chem 6:893−900)。2’−Fおよび2’−OME(0.7および8)が、一般的であり、その両方が、安定性を高め、2’−OME修飾は、1本の鎖あたり4ヌクレオチド未満に制限される限り、活性を低下させない(Holen,T.,Amarzguioui,M.,Babaie,E.,Prydz,H.2003.Similar behaviour of single−strand and double−strand siRNAs suggests they act through a common RNAi pathway.Nucleic Acids Res 31:2401−7)。修飾塩基がその分子の中央領域に限定されるとき、2’−O−MOE(0.9)は、siRNAにおいて最も有効である(Prakash,T.P.,Allerson,C.R.,Dande,P.,Vickers,T.A.,Sioufi,N.,Jarres,R.,Baker,B.F.,Swayze,E.E.,Griffey,R.H.,Bhat,B.2005.Positional effect of chemical modifications on short interference RNA activity in mammalian cells.J Med Chem 48:4247−53)。活性を失わせることなくsiRNAを安定化させることが見出されている他の修飾を、0.10−14に示す。
【0200】
修飾オリゴヌクレオチドは、1つ以上の置換された糖部分も含み得る。例えば、本発明は、以下のうちの1つを2’位に含むオリゴヌクレオチドを含む:OH;F;O−、S−もしくはN−アルキル、O−アルキル−O−アルキル、O−、S−もしくはN−アルケニル、またはO−、S−もしくはN−アルキニル(ここで、このアルキル、アルケニルおよびアルキニルは、置換または非置換のC
1−C
10アルキルまたはC
2−C
10アルケニルおよびアルキニルであり得る)。O[(CH
2)
nO]
mCH
3、O(CH
2)
nOCH
3、O(CH
2)
2ON(CH
3)
2、O(CH
2)
nNH
2、O(CH
2)
nCH
3、O(CH
2)
nONH
2およびO(CH
2)
nON[(CH
2)
nCH
3)]
2(ここで、nおよびmは1〜約10である)が特に好ましい。他の好ましいオリゴヌクレオチドは、以下のもののうちの1つを
2’位に含む:C
1−C
10低級アルキル、置換低級アルキル、アルカリール、アラルキル、O−アルカリールまたはO−アラルキル、SH、SCH
3、OCN、Cl、Br、CN、CF
3、OCF
3、SOCH
3、SO
2CH
3、ONO
2、NO
2、N
3、NH
2、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリール、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノ、置換シリル、RNA切断基、レポーター基、インターカレーター、オリゴヌクレオチドの薬物動態学的特性を改善するための基またはオリゴヌクレオチドの薬力学的特性を改善するための基および同様の特性を有する他の置換基。1つの修飾としては、2’−メトキシエトキシ(2’−O−(2−メトキシエチル)または2’−MOEとしても知られる2’−O−CH
2CH
2OCH
3)(Martin et al.,Helv.Chim.Acta 1995,78,486−504)、すなわち、アルコキシアルコキシ基が挙げられる。他の修飾としては、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2’−DMAOEとしても知られるO(CH
2)
2ON(CH
3)
2基、および2’−ジメチルアミノエトキシエトキシ(2’−DMAEOE)が挙げられる。
【0201】
修飾が、オリゴヌクレオチド上の他の位置、特に、3’末端ヌクレオチド上または2’−5’結合したオリゴヌクレオチド上の糖の3’位および5’末端ヌクレオチドの5’位においても行われ得る。オリゴヌクレオチドは、ペントフラノシル糖の代わりに、シクロブチル部分などの糖模倣物も有し得る。このような修飾された糖構造の調製を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第4,981,957号:同第5,118,800号:同第5,319,080号:同第5,359,044号:同第5,393,878号:同第5,446,137号:同第5,466,786号:同第5,514,785号:同第5,519,134号:同第5,567,811号:同第5,576,427号:同第5,591,722号:同第5,597,909号:同第5,610,300号:同第5,627,053号:同第5,639,873号:同第5,646,265号:同第5,658,873号:同第5,670,633号:および同第5,700,920号が挙げられるが、これらに限定されない。
【0202】
他のオリゴヌクレオチド模倣物において、ヌクレオチド単位の糖とヌクレオシド間結合の両方(すなわち、骨格)は、新規の基で置換されるが、塩基単位は、適切な核酸標的化合物とのハイブリダイゼーションのために維持される。1つのこのようなオリゴマー化合物である、優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴヌクレオチド模倣物は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれる。PNA化合物において、オリゴヌクレオチドの糖−骨格は、アミド含有骨格、特に、アミノエチルグリシン骨格で置換される。ヌクレオ塩基は保持され、骨格のアミド部分のアザ窒素原子に直接または間接的に結合される。PNA化合物の生成を教示する代表的な米国特許としては、米国特許第5,539,082号;同第5,714,331号;および同第5,719,262号が挙げられるが、これらに限定されない。PNA化合物のさらなる教示は、Nielsenら(Science,1991,254,1497−1500)に見られる。
【0203】
本発明の特定の実施形態は、ホスホロチオアート骨格を有するオリゴヌクレオチドならびにヘテロ原子骨格、特に、上で参照された米国特許第5,489,677号の−CH
2−NH−O−CH
2−、−CH
2−N(CH
3)−O−CH
2−(メチレン(メチルイミノ)またはMMI骨格と称される)、−CH
2−O−N(CH3)−CH
2−、−CH
2−N(CH
2)−N(CH
3)−CH
2−および−O−N(CH3)−CH
2−CH
2−(ここで、天然のホスホジエステル骨格は、−O−P−O−CH
2−と表現される)および上で参照された米国特許第5,602,240号アミド骨格を有するオリゴヌクレオシドである。上で参照された米国特許第5,034,506号のモルホリノ骨格構造を有するオリゴヌクレオチドも好ましい。
【0204】
糖基は、リボース中の対応する炭素の立体化学的配置とは反対の立体化学的配置を有する1つ以上の炭素を含むこともできる。したがって、オリゴヌクレオチドは、糖として、例えば、アラビノースを含むヌクレオチドを含むことができる。モノマーは、糖の1’位にα結合(例えば、α−ヌクレオシド)を有することができる。オリゴヌクレオチドは、C−1’にヌクレオ塩基を欠く「無塩基」糖を含むこともできる。これらの無塩基糖は、1つ以上の構成成分の糖原子にさらに修飾を含むこともできる。オリゴヌクレオチドは、L型である1つ以上の糖(例えば、L−ヌクレオシド)を含むこともできる。
【0205】
キメラオリゴヌクレオチド
所与の化合物における全ての位置が均一に修飾される必要はなく、実際に、上述の修飾のうちの2つ以上が、1つの化合物、またはオリゴヌクレオチド内の1つのヌクレオシドにさえ組み込まれ得る。本発明の特定の好ましいオリゴヌクレオチドは、キメラオリゴヌクレオチドである。「キメラオリゴヌクレオチド」または「キメラ」は、本発明との関連において、各々が少なくとも1つのヌクレオチドで構成されている2つ以上の化学的に異なる領域を含むオリゴヌクレオチドである。これらのオリゴヌクレオチドは、通常、1つ以上の有利な特性(例えば、高いヌクレアーゼ耐性、細胞への高い取り込み、RNA標的に対する高い結合親和性)を付与する修飾ヌクレオチドの少なくとも1つの領域、およびRNaseH切断に対する基質である領域を含む。
【0206】
一実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、標的結合親和性を増加させるために修飾された少なくとも1つの領域を含む。その標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性は、オリゴヌクレオチド/標的対のTm(オリゴヌクレオチドと標的が解離する温度であり;解離は、分光光度的に検出される)を測定することによって通例の通りに決定される。Tmが高いほど、標的に対するオリゴヌクレオチドの親和性が高い。一実施形態では、標的mRNA結合親和性を増加させるために修飾されたオリゴヌクレオチドの領域は、糖の2’位において修飾された少なくとも1つのヌクレオチド、最も好ましくは、2’−O−アルキル、2’−O−アルキル−O−アルキルまたは2’−フルオロ−修飾ヌクレオチドを含む。このような修飾は、オリゴヌクレオチドに通例の通りに組み込まれ、これらのオリゴヌクレオチドは、所与の標的に対して2’−デオキシオリゴヌクレオチドよりも高いTm(すなわち、より高い標的結合親和性)を有することが示されている。このような高い親和性の効果は、標的遺伝子発現のオリゴヌクレオチド阻害を大いに高めることになる。
【0207】
別の実施形態では、キメラオリゴヌクレオチドは、RNアーゼHに対する基質として作用する領域を含む。当然、オリゴヌクレオチドが、本明細書に記載の様々な修飾の任意の組合せを含み得ることが理解される。
【0208】
本発明のオリゴヌクレオチドの別の修飾は、オリゴヌクレオチドの活性、細胞分布もしくは細胞取込みを高める、1つ以上の部分またはコンジュゲートをオリゴヌクレオチドに化学的に結合させることを含む。このようなコンジュゲートおよびそれを調製する方法は、当該技術分野で公知である。
【0209】
治療効力などのインビボでの有用性について、合理的な経験則は、チオ化されたバージョンの配列が遊離形態で働く場合、任意の化学成分の、同じ配列の封入された粒子も有効であるということを当業者は理解するだろう。封入された粒子は、アンチセンス治療に別段応答性であることが知られていない状態およびモデルにおいて有効性を示す、より広範囲のインビボ有用性も有し得る。本発明を適用することにより、現在アンチセンス治療に応答する古いモデルを見出し得ることを当業者は知っている。さらに、当業者は、本発明を使用することにより、見捨てられたアンチセンス配列または化学成分を再考し、効力を見出し得る。
【0210】
本発明に従って使用されるオリゴヌクレオチドは、周知の固相合成技術によって、好都合にかつ通例の通りに、作製され得る。このような合成のための装置は、Applied Biosystemsを含むいくつかのベンダーによって販売されている。このような合成のための任意の他の手段も使用され得る。オリゴヌクレオチドの実際の合成は、十分に、業務従事者の能力の範囲内である。ホスホロチオアートおよびアルキル化された誘導体などの他のオリゴヌクレオチドを調製するために同様の技術を使用することも周知である。
【0211】
免疫刺激性オリゴヌクレオチド
本発明の脂質粒子と会合する核酸は、免疫刺激性であってもよく、これには、対象(哺乳動物であっても、または他の患者であってもよい)に投与されたときに、免疫応答を誘導することができる免疫刺激性オリゴヌクレオチド(ISS;一本鎖または二本鎖)が含まれる。ISSには、例えば、ヘアピン二次構造を生じさせる特定のパリンドロム(Yamamoto.,et al.(1992) J.Immunol.148:4072−4076参照)、またはCpGモチーフ、および他の既知のISS特徴(例えば、多重Gドメイン、国際公開第96/11266号参照)が含まれる。
【0212】
免疫応答は、先天性免疫応答または適応免疫応答であり得る。免疫系は、より先天性の免疫系と、脊椎動物の後天性の適応免疫系に分けられ、後者は、液性の細胞成分にさらに分けられる。特定の実施形態では、免疫応答は、粘膜によるものであってもよい。
【0213】
特定の実施形態では、免疫刺激性核酸は、脂質粒子と組み合わせて投与された場合にのみ免疫刺激性であり、その「遊離形態」で投与された場合には、免疫刺激性ではない。本発明によれば、このようなオリゴヌクレオチドが免疫刺激性であると考えられる。
【0214】
免疫刺激性核酸は、免疫応答を誘発するために標的ポリヌクレオチドに特異的に結合し、その発現を低下させる必要がない場合には、配列非特異的であるとみなされる。したがって、特定の免疫刺激性核酸は、天然に存在する遺伝子またはmRNAの領域に対応する配列を含み得るが、それでも配列非特異的な免疫刺激性核酸とみなされる場合がある。
【0215】
一実施形態では、免疫刺激性核酸またはオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチドまたはCpGジヌクレオチドは、メチル化されていなくても、メチル化されていてもよい。別の実施形態では、免疫刺激性核酸は、メチル化シトシンを有する少なくとも1つのCpGジヌクレオチドを含む。一実施形態では、核酸は、単一のCpGジヌクレオチドを含み、その場合、CpGジヌクレオチド中のシトシンはメチル化されている。特定の実施形態では、核酸は、5’TAACGTTGAGGGGCAT 3’という配列を含む。代わりの実施形態では、核酸は、少なくとも2つのCpGジヌクレオチドを含み、その場合、このCpGジヌクレオチド中の少なくとも1つのシトシンはメチル化されている。さらなる実施形態では、配列中に存在するCpGジヌクレオチド中の各々のシトシンはメチル化されている。別の実施形態では、核酸は、複数のCpGジヌクレオチドを含み、その場合、CpGジヌクレオチドのうちの少なくとも1つは、メチル化シトシンを含む。
【0216】
特定の一実施形態では、核酸は、5’TTCCATGACGTTCCTGACGT 3’という配列を含む。別の特定の実施形態では、核酸配列は、5’TCCATGACGTTCCTGACGT 3’という配列を含み、その場合、太字で示した2つのシトシンはメチル化されている。特定の実施形態では、ODNは、以下に示すような、ODN #1、ODN #2、ODN #3、ODN #4、ODN #5、ODN #6、ODN #7、ODN #8、およびODN #9からなるODNの群から選択される。
【表3】
「Z」はメチル化シトシン残基を表す。ODN 14は15merのオリゴヌクレオチドであり、ODN 1は、ODN 1を16merにするチミジンが5’末端に付加された同じオリゴヌクレオチドである。ODN 14とODN 1の間に生物学的活性の差は検出されておらず、両者ともよく似た免疫刺激活性を示す(Mui et al.,2001)。
【0217】
本発明の組成物および方法での使用に好適なオリゴヌクレオチド(ODN)のさらなる特定の核酸配列は、Raney et al,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,298:1185−1192(2001)に記載されている。特定の実施形態では、本発明の組成物および方法で使用されるODNは、ホスホジエステル(「PO」)骨格もしくはホスホロチオアート(「PS」)骨格、および/またはCpGモチーフ中の少なくとも1つのメチル化シトシン残基を有する。
【0218】
デコイオリゴヌクレオチド
転写因子は、周囲のゲノムDNAがない場合でも、それらの比較的短い結合配列を認識することができるので、特定の転写因子のコンセンサス結合配列を持つ短いオリゴヌクレオチドを、生きた細胞における遺伝子発現を操作するための道具として使用することができる。この戦略では、このような「デコイオリゴヌクレオチド」が細胞内に送達され、その後、標的因子によって認識および結合されることが必要になる。デコイによって転写因子のDNA結合部位が占められると、転写因子が後に標的遺伝子のプロモーター領域に結合することができなくなる。デコイは、転写因子によって活性化される遺伝子の発現を阻害するために、または転写因子の結合によって抑制される遺伝子を上方調節するために、治療剤として使用することができる。デコイオリゴヌクレオチドの利用例は、Mann et al.,J.Clin.Invest.,2000,106:1071−1075に見出すことができ、これは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0219】
スーパーmir(Supermir)
スーパーmirは、miRNAと実質的に同一であり、かつその標的に対してアンチセンスとなる、ヌクレオチド配列を有する、リボ核酸(RNA)もしくはデオキシリボ核酸(DNA)もしくは両方またはそれらの修飾物の一本鎖、二本鎖または部分的二本鎖オリゴマーまたはポリマーを指す。この用語には、天然に存在するヌクレオ塩基、糖および共有結合的ヌクレオシド間(骨格)結合から構成されるものであって、同様に機能する少なくとも1つの天然には存在しない部分を含む、オリゴヌクレオチドが含まれる。例えば、細胞取込みの増強、核酸標的に対する親和性の増強およびヌクレアーゼ存在下での安定性の増大などの望ましい特性のために、このような修飾または置換オリゴヌクレオチドが天然の形態よりも好ましい。好ましい実施形態では、スーパーmirはセンス鎖を含まず、別の好ましい実施形態では、スーパーmirは、それほど大きく自己ハイブリダイズしない。本発明で取り上げられるスーパーmirは二次構造を有することができるが、生理的条件下では実質的に一本鎖である。実質的に一本鎖のスーパーmirは、スーパーmirの約50%未満(例えば、約40%未満、30%未満、20%未満、10%未満、または5%未満)がそれ自体と二重鎖を形成する程度に一本鎖である。スーパーmirはヘアピン部分を含むことができ、例えば、好ましくは3’末端の配列が自己ハイブリダイズし、二重鎖領域、例えば、少なくとも1、2、3、または4および好ましくは8、7、6、またはnヌクレオチド未満(例えば、5ヌクレオチド)の二重鎖領域を形成することができる。二重鎖を形成した領域は、リンカー、例えば、ヌクレオチドリンカー(例えば、3、4、5、または6つのdT、例えば、修飾dT)によって接続することができる。別の実施形態では、スーパーmirは、例えば、スーパーmirの3’末端と5’末端のうちの一方もしくは両方において、またはスーパーmirの一方の末端と非末端もしくは中央において、例えば、5、6、7、8、9、または10ヌクレオチド長のより短いオリゴと二重鎖を形成する。
【0220】
miRNA模倣体
miRNA模倣体は、1つ以上のmiRNAの遺伝子サイレンシング能を模倣するために使用することができる一群の分子を表す。したがって、「マイクロRNA模倣体」という用語は、RNAi経路に侵入し、遺伝子発現を調節することができる合成非コードRNAを指す(すなわち、miRNAは、内在性miRNAの源からの精製によって得られない)。miRNA模倣体は、成熟分子(例えば、一本鎖)または模倣体前駆体(例えば、プリ−もしくはプレ−miRNA)として設計することができる。miRNA模倣体は、限定するものではないが、RNA、修飾RNA、DNA、修飾DNA、ロックされた核酸、もしくは2’−O,4’−C−エチレン架橋核酸(ENA)、または上記の任意の組合せ(DNA−RNAハイブリッドを含む)を含むオリゴヌクレオチドを含む核酸(修飾または修飾核酸)から構成され得る。さらに、miRNA模倣体は、送達、細胞内区画化、安定性、特異性、官能性、鎖の用法、および/または効力に影響を及ぼし得るコンジュゲートを含むことができる。ある設計では、miRNA模倣体は、(例えば、約16〜約31ヌクレオチド長の二重鎖領域を有する)二本鎖分子であり、かつ所与のmiRNAの成熟鎖との同一性を有する1つ以上の配列を含む。修飾は、分子の一方または両方の鎖上の2’修飾(2’−Oメチル修飾および2’F修飾を含む)ならびに核酸の安定性および/または特異性を高めるヌクレオチド間修飾(例えば、オスホロチオアート修飾)を含むことができる。さらに、miRNA模倣体は突出を含むことができる。突出は、どちらかの鎖の3’末端または5’末端のどちらかにある1〜6個のヌクレオチドからなることができ、かつ安定性または官能性を高めるように修飾することができる。一実施形態では、miRNA模倣体は、16〜31ヌクレオチドの二重鎖領域と、以下の化学的修飾パターンのうちの1つまたは複数を含む。すなわち、センス鎖は、(センスオリゴヌクレオチドの5’末端から数えて)ヌクレオチド1および2と、CおよびUの全ての、2’−O−メチル修飾を含み、アンチセンス鎖修飾は、CおよびUの全ての2’F修飾と、オリゴヌクレオチドの5’末端のリン酸化と、3’突出の2ヌクレオチドと関連する安定化したヌクレオチド間結合とを含むことができる。
【0221】
アンチmir(Antimir)またはmiRNA阻害因子
「アンチmir」、「マイクロRNA阻害因子」、「miR阻害因子」、または「阻害因子」という用語は同義的であり、特定のmiRNAの能力に干渉するオリゴヌクレオチドまたは修飾オリゴヌクレオチドを指す。一般に、阻害因子は、本質的に核酸または修飾核酸であり、これには、RNA、修飾RNA、DNA、修飾DNA、ロックされた核酸(LNA)、または上記の任意の組合せを含むオリゴヌクレオチドが含まれる。修飾には、送達、安定性、特異性、細胞内区画化、または効力に影響を及ぼし得る2’修飾(2’−Oアルキル修飾および2’F修飾を含む)ならびにヌクレオチド間修飾(例えば、ホスホロチオアート修飾)が含まれる。さらに、miRNA阻害因子は、送達、細胞内区画化、安定性、および/または効力に影響を及ぼし得るコンジュゲートを含むことができる。阻害因子は、一本鎖、二本鎖(RNA/RNAまたはRNA/DNA二重鎖)、およびヘアピン設計をはじめとする種々の形状を取ることができ、一般に、マイクロRNA阻害因子は、標的とされるmiRNAの成熟鎖(または複数の鎖)と相補的または部分的に相補的な1つ以上の配列または配列の部分を含み、さらに、miRNA阻害因子は、成熟miRNAの逆相補体である配列の5’および3’にある追加の配列も含み得る。追加の配列は、成熟miRNAが由来するプリ−miRNA中の成熟miRNAに隣接する配列の逆相補体であってもよく、または追加の配列は、(A、G、C、またはUの混合物を有する)任意の配列であってもよい。いくつかの実施形態では、追加の配列の一方または両方は、ヘアピンを形成することができる任意の配列である。したがって、いくつかの実施形態では、miRNAの逆相補体である配列は、5’側と3’側にヘアピン構造が隣接している。マイクロRNA阻害因子は、二本鎖を形成したときに、反対鎖のヌクレオチドとの間にミスマッチを含み得る。さらに、マイクロRNA阻害因子を、阻害因子の細胞への取込みを促進するために、コンジュゲート部分に結合させてもよい。例えば、マイクロRNA阻害因子を、マイクロRNA阻害因子の細胞への受動的な取込みを可能にするコレステリル5−(ビス(4−メトキシフェニル)(フェニル)メトキシ)−3ヒドロキシペンチルカルバマート)に結合させてもよい。ヘアピンmiRNA阻害因子をはじめとするマイクロRNA阻害因子は、Vermeulen et al.,“Double−Stranded Regions Are Essential Design Components Of Potent Inhibitors of RISC Function”, RNA 13:723−730(2007)ならびに国際公開第2007/095387号および国際公開第2008/036825号に詳細に記載されており、これらは各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。当業者は、所望のmiRNAのデータベースから配列を選択し、本明細書に開示されている方法に有用な阻害因子を設計することができる。
【0222】
U1アダプター
U1アダプターはポリA部位を阻害し、標的遺伝子の末端エキソン中の部位に相補的な標的ドメインとU1 snRNPの核内低分子RNA構成要素U1に結合する「U1ドメイン」とを有する二官能性オリゴヌクレオチドである(Goraczniak,et al.,2008,Nature Biotechnology,27(3),257−263、これは、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)。U1 snRNPは、プレ−mRNAエキソン−イントロン境界への結合によってスプライソソーム形成の初期段階を指示するように主に機能するリボヌクレオタンパク質複合体である(Brown and Simpson,1998,Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 49:77−95)。U1 snRNA塩基対の5’末端のヌクレオチド2〜11は、プレmRNAの5’ssと結合する。一実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドはU1アダプターである。一実施形態では、U1アダプターは、少なくとも1つの他のiRNA剤と組み合わせて投与することができる。
【0223】
オリゴヌクレオチド修飾
未修飾のオリゴヌクレオチドは、いくつかの用途では最適とは言えない場合があり、例えば、未修飾のオリゴヌクレオチドが、例えば、細胞ヌクレアーゼによる分解を受けやすい可能性がある。ヌクレアーゼは、核酸のホスホジエステル結合を加水分解することができる。しかしながら、オリゴヌクレオチドの化学修飾は、改善された特性を付与することができ、例えば、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドをより安定にすることができる。
【0224】
オリゴヌクレオチドはサブユニットまたはモノマーのポリマーであるので、以下に記載される修飾の多く(例えば、塩基、糖、リン酸部分、またはリン酸部分の非架橋酸素の修飾)は、オリゴヌクレオチド内で繰り返される位置で生じる。所与のオリゴヌクレオチド中の全ての位置が均一に修飾される必要はなく、実際には、前述の修飾の2つ以上が単一のオリゴヌクレオチド、またはさらにはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドに組み込まれてもよい。
【0225】
修飾がオリゴヌクレオチド中の対象位置の全てで生じる場合もあるが、多くの場合、そして実際のところ、そうではない。例として、修飾は、3’末端位置または5’末端位置でのみで生じてもよく、内部領域でのみ生じてもよく、末端領域で、例えば、末端ヌクレオチド上の位置でまたはオリゴヌクレオチドの最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチドでのみ生じてもよい。修飾は、二本鎖領域、一本鎖領域、またはその両方で生じてもよい。
【0226】
修飾は、二本鎖オリゴヌクレオチドの二本鎖領域でのみ生じてもよいし、または二本鎖オリゴヌクレオチドの一本鎖領域でのみ生じてもよい。例えば、非架橋酸素位置でのホスホロチオアート修飾は、一方もしくは両方の末端で生じてもよいし、末端領域で、例えば、末端ヌクレオチド上の位置でもしくは鎖の最後の2、3、4、5、もしくは10ヌクレオチドでのみ生じてもよいし、または二本鎖領域と一本鎖領域において、特に末端で生じてもよい。5’末端をリン酸化することができる。
【0227】
本明細書に記載の修飾は、唯一の修飾、もしくは多数のヌクレオチド上に含まれる唯一のタイプの修飾であってもよく、または修飾を本明細書に記載の1つ以上の他の修飾と組み合わせることができる。本明細書に記載の修飾をオリゴヌクレオチド上に組み合わせることもでき、例えば、オリゴヌクレオチドの異なるヌクレオチドは、本明細書に記載の異なる修飾を有する。
【0228】
いくつかの実施形態では、例えば、安定性を高めるために、突出に特定のヌクレオ塩基を含めるか、または一本鎖突出(例えば、5’突出もしくは3’突出、もしくはその両方)に修飾ヌクレオチドもしくはヌクレオチド代用物を含めることが特に好ましい。例えば、突出にプリンヌクレオチドを含めることが望ましいことがある。いくつかの実施形態では、3’突出または5’突出中の塩基の全てまたはいくつかを、例えば、本明細書に記載の修飾を用いて、修飾する。修飾としては、例えば、リボース糖の2’OH基での修飾の使用、例えば、リボヌクレオチドの代わりとしてのデオキシリボヌクレオチド(例えば、デオキシチミジン)の使用、およびリン酸基での修飾(例えば、ホスホロチオアート修飾)を挙げることができる。突出が標的配列と相同である必要はない。
【0229】
具体的な修飾を以下に詳細に議論する。
【0230】
リン酸基
リン酸基は、負に荷電した種である。電荷は、2つの非架橋酸素原子に均等に分布している。しかしながら、リン酸基は、酸素原子の1つを異なる置換基で置換することによって修飾することができる。RNAリン酸骨格に対するこの修飾の1つの結果は、ヌクレアーゼ分解に対するオリゴリボヌクレオチドの耐性の増大であり得る。したがって、理論に束縛されることを望まないが、いくつかの実施形態では、非荷電リンカーかまたは非対称の電荷分布を有する荷電リンカーのいずれかを生じさせる改変を導入することが望ましい可能性がある。
【0231】
修飾リン酸基の例としては、ホスホロチオアート、ホスホロセレナート、ボラノホスファート、ボラノホスファートエステル、水素ホスホナート、ホスホロアミダート、アルキルホスホナートまたはアリールホスホナートおよびホスホトリエステルが挙げられる。特定の実施形態では、リン酸骨格部分における非架橋リン酸酸素原子の1つは、以下のいずれか:S、Se、BR
3(Rは、水素、アルキル、アリールである)、C(すなわち、アルキル基、アリール基など)、H、NR
2(Rは、水素、アルキル、アリールである)、またはOR(Rは、アルキルもしくはアリールである)に置き換えることができる。未修飾のリン酸基におけるリン原子はアキラルである。しかしながら、非架橋酸素の1つを上記の原子または原子団の1つと置き換えることにより、リン原子はキラルになる。すなわち、このように修飾されたリン酸基におけるリン原子は立体中心となる。ステレオジェニックなリン原子は、「R」形状(本明細書ではRp)かまたは「S」形状(本明細書ではSp)かのいずれかを有することができる。
【0232】
ホスホロジチオアートは、両方の非架橋酸素が硫黄に置換されている。ホスホロジチオアートにおけるリン中心はアキラルであり、アキラルはオリゴリボヌクレオチドのジアステレオマーの形成を妨害する。したがって、理論に束縛されることを望まないが、不斉中心を消失させる両方の非架橋酸素に対する修飾(例えば、ホスホロジチオアート形成)は、ジアステレオマー混合物を生じることができないという点で望ましい場合がある。したがって、非架橋酸素は、独立に、S、Se、B、C、H、N、またはOR(Rは、アルキルもしくはアリールである)のいずれか1つであることができる。
【0233】
リン酸リンカーは、架橋酸素(すなわち、ホスファートをヌクレオシドに結合させる酸素)を、窒素(架橋ホスホロアミダート)、硫黄(架橋ホスホロチオアート)、および炭素(架橋メチレンホスホナート)と置換することによって修飾することもできる。置換は、どちらかの結合酸素または両方の結合酸素で生じることができる。架橋酸素が、ヌクレオシドの3’酸素である場合、炭素と置換することが好ましい。架橋酸素が、ヌクレオシドの5 ’酸素である場合、窒素と置換することが好ましい。
【0234】
リン酸基の置換
リン酸基は、リン以外のものを含有する接続部に置換することができる。理論によって束縛されることを望まないが、荷電したホスホジエステル基はヌクレアーゼ分解における反応中心なので、これを中性の構造模倣体で置換することは、ヌクレアーゼ安定性を増強するはずであると考えられている。再び、理論によって束縛されることを望まないが、いくつかの実施形態では、荷電したリン酸基が中性部分に置換される改変を導入することが望ましい可能性がある。
【0235】
リン酸基を置換することができる部分の例としては、メチルホスホナート、ヒドロキシルアミノ、シロキサン、カルボナート、カルボキシメチル、カルバマート、アミド、チオエーテル、エチレンオキシドリンカー、スルホナート、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノが挙げられる。好ましい置換としては、メチレンカルボニルアミノ基およびメチレンメチルイミノ基が挙げられる。
【0236】
ホスファートに結合している酸素の少なくとも1つが置換されているかまたはリン酸基がリン以外の基に置換されている修飾されたホスファート結合は、「非ホスホジエステル骨格結合」とも表される。
【0237】
リボリン酸骨格の置換
リン酸リンカーおよびリボース糖が、ヌクレアーゼ耐性のヌクレオシドまたはヌクレオチドの代用物に置換されているオリゴヌクレオチド模倣スキャフォールドを構築することもできる。理論によって束縛されることを望まないが、繰り返し荷電した骨格が存在しなければ、ポリアニオンを認識するタンパク質(例えば、ヌクレアーゼ)への結合が減少すると考えられている。再び、理論によって束縛されることを望まないが、いくつかの実施形態では、塩基が中性の代用骨格によって連結される改変を導入することが望ましい可能性がある。例としては、モルホリノ、シクロブチル、ピロリジンおよびペプチド核酸(PNA)というヌクレオシド代用物が挙げられる。好ましい代用物はPNA代用物である。
【0238】
末端修飾
オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端を修飾することができる。このような修飾は、分子の3’末端、5’末端、または両方の末端にあることができる。これらの修飾は、末端リン酸の全体またはリン酸基の原子の1つもしくは複数の修飾または置換を含むことができる。例えば、オリゴヌクレオチドの3’末端および5’末端を、他の機能的分子実体、例えば、標識部分、例えば、フルオロフォア(例えば、ピレン、TAMRA、フルオレセイン、Cy3色素もしくはCy5色素)または保護基(例えば、硫黄、ケイ素、ホウ素もしくはエステルをベースにしたもの)にコンジュゲートすることができる。機能的分子実体は、リン酸基および/またはリンカーを介して糖に付着させることができる。リンカーの末端原子は、リン酸基の結合原子または糖のC−3’もしくはC−5’のO基、N基、S基もしくはC基に接続するかまたはこれらに置き換わることできる。あるいは、リンカーは、ヌクレオチド代用物(例えば、PNA)の末端原子に接続するかまたはこれに置き換わることができる。
【0239】
リンカー/リン酸−機能的分子実体−リンカー/リン酸アレイがdsRNAの2つの鎖の間に挿入されている場合、このアレイは、ヘアピン型RNA剤におけるヘアピンRNAループの代わりになることができる。
【0240】
活性を調節するために有用な末端修飾としては、リン酸またはリン酸類似体による5’末端の修飾が挙げられる。例えば、好ましい実施形態では、dsRNAのアンチセンス鎖は、5’リン酸化されているか、または5’プライム末端にホスホリル類似体を含む。5’リン酸修飾としては、RISC媒介性の遺伝子サイレンシングと適合可能なものが挙げられる。好適な修飾としては、5’一リン酸((HO)
2(O)P−O−5’);5’二リン酸((HO)
2(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’三リン酸((HO)
2(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−グアノシンキャップ(7−メチル化または非メチル化)(7m−G−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’−アデノシンキャップ(Appp)、および任意の修飾または未修飾ヌクレオチドキャップ構造(N−O−5’−(HO)(O)P−O−(HO)(O)P−O−P(HO)(O)−O−5’);5’一チオリン酸(ホスホロチオアート;(HO)
2(S)P−O−5’);5’一ジチオリン酸(ホスホロジチオアート;(HO)(HS)(S)P−O−5’)、5’−ホスホロチオラート((HO)
2(O)P−S−5’);酸素/硫黄置換一リン酸、二リン酸、および三リン酸の任意のさらなる組合せ(例えば、5’−α−チオ三リン酸、5’−γ−チオ三リン酸など)、5’−ホスホロアミダート((HO)
2(O)P−NH−5’、(HO)(NH
2)(O)P−O−5’)、5’−アルキルホスホナート(R=アルキル=メチル、エチル、イソプロピル、プロピルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’、(OH)
2(O)P−5’−CH
2−)、5’−アルキルエーテルホスホナート(R=アルキルエーテル=メトキシメチル(MeOCH
2−)、エトキシメチルなど、例えば、RP(OH)(O)−O−5’−)が挙げられる。
【0241】
末端修飾は、分布をモニタニングするためにも有用であり得るが、このような場合、付加される好ましい基としては、フルオロフォア(例えば、フルオレセイン)またはAlexa色素(例えば、Alexa 488)が挙げられる。末端修飾は、取込みを増強するためにも有用であり得るが、このために有用な修飾としてはコレステロールが挙げられる。末端修飾は、RNA剤を別の部分に架橋するためにも有用であり得るが、このための有用な修飾としてはマイトマイシンCが挙げられる。
【0242】
ヌクレオ塩基
アデニン、グアニン、シトシンおよびウラシルはRNAに見られる最も一般的な塩基である。これらの塩基は、改善された特性を有するRNAを提供するために修飾または置換することができる。例えば、ヌクレアーゼ耐性オリゴリボヌクレオチドは、これらの塩基を用いて、または合成もしくは天然のヌクレオ塩基(例えば、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン(nubularine)、イソグアニシン(isoguanisine)、もしくはツベルシジン(tubercidine))および上記の修飾のいずれか1つを用いて調製することができる。あるいは、上記の塩基、例えば、本明細書に記載の「異常塩基」、「修飾塩基」、「非天然塩基」および「汎用塩基」のいずれかの置換類似体または修飾類似体を利用することができる。例としては、限定するものではないが、2−アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6−メチルおよび他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2−プロピルおよび他のアルキル誘導体、5−ハロウラシルおよび5−ハロシトシン、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、6−アゾウラシル、6−アゾシトシンおよび6−アゾチミン、5−ウラシル(シュードウラシル)、4−チオウラシル、5−ハロウラシル、5−(2−アミノプロピル)ウラシル、5−アミノアリルウラシル、8−ハロ、8−アミノ、8−チオール、8−チオアルキル、8−ヒドロキシルおよび他の8−置換アデニンおよびグアニン、5−トリフルオロメチルおよび他の5−置換ウラシルおよびシトシン、7−メチルグアニン、5−置換ピリミジン、6−アザピリミジンならびにN−2置換プリン、N−6置換プリン、およびO−6置換プリン(2−アミノプロピルアデニンを含む)、5−プロピニルウラシルおよび5−プロピニルシトシン、ジヒドロウラシル、3−デアザ−5−アザシトシン、2−アミノプリン、5−アルキルウラシル、7−アルキルグアニン、5−アルキルシトシン、7−デアザアデニン、N6,N6−ジメチルアデニン、2,6−ジアミノプリン、5−アミノ−アリル−ウラシル、N3−メチルウラシル、置換1,2,4−トリアゾール、2−ピリジノン、5−ニトロインドール、3−ニトロピロール、5−メトキシウラシル、ウラシル−5−オキシ酢酸、5−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メチル−2−チオウラシル、5−メトキシカルボニルメチル−2−チオウラシル、5−メチルアミノメチル−2−チオウラシル、3−(3−アミノ−3−カルボキシプロピル)ウラシル、3−メチルシトシン、5−メチルシトシン、N
4−アセチルシトシン、2−チオシトシン、N6−メチルアデニン、N6−イソペンチルアデニン、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、N−メチルグアニン、またはO−アルキル化塩基が挙げられる。さらなるプリンまたはピリミジンとしては、米国特許第3,687,808号に開示されているもの、Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering,858−859ページ,Kroschwitz,J.I.,編.John Wiley & Sons,1990に開示されているもの、およびEnglisch et al.,Angewandte Chemie,International Edition,1991,30,613に開示されているものが挙げられる。
【0243】
カチオン性基
オリゴヌクレオチドに対する修飾としては、糖、塩基、および/またはホスファートもしくは修飾リン酸骨格部分のリン原子への1つ以上のカチオン性基の付着を挙げることもできる。カチオン性基を天然の、異常なまたは普遍的な塩基上の置換可能な任意の原子に付着させることができる。好まし位置は、ハイブリダイゼーションを妨げない位置、すなわち、塩基対形成に必要な水素結合相互作用を妨げない位置である。カチオン性基を、例えば、糖のC2’位または環式もしくは非環式糖代用物における類似の位置を介して付着させることができる。カチオン性基としては、例えば、プロトン化アミノ基、例えば、O−アミン(アミン=NH
2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ);アミノアルコキシ、例えば、O(CH
2)
nアミン(例えば、アミン=NH
2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ);アミノ(例えば、NH
2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、もしくはアミノ酸);またはNH(CH
2CH
2NH)
nCH
2CH
2−アミン(アミン=NH
2;アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、もしくはジヘテロアリールアミノ)に由来するものを挙げることができる。
【0244】
オリゴヌクレオチド内部での配置
いくつかの修飾が、特定の場所で、例えば、鎖の内部位置で、またはオリゴヌクレオチドの5’末端もしくは3’末端で、オリゴヌクレオチド上に含まれ得ることが好ましい。オリゴヌクレオチド上の修飾の好ましい場所は薬剤に好ましい特性を付与し得る。例えば、特定の修飾の好ましい場所は、最適な遺伝子サイレンシング特性、またはエンドヌクレアーゼ活性もしくはエキソヌクレアーゼ活性に対する増加した耐性を付与し得る。
【0245】
オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは2’−5’結合を有し得る。オリゴヌクレオチドの1つ以上のヌクレオチドは、反転した結合、例えば、3’−3’結合、5’−5’結合、2’−2’結合または2’−3’結合を有し得る。
【0246】
二本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの5’−ウリジン−アデニン−3’(5’−UA−3’)ジヌクレオチド(ここで、ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである)、または末端5’−ウリジン−グアニン−3’(5’−UG−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである)、または末端5’−シチジン−アデニン−3’(5’−CA−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−シチジンは2’−修飾ヌクレオチドである)、または末端5’−ウリジン−ウリジン−3’(5’−UU−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである)、または末端5’−シチジン−シチジン−3’(5’−CC−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−シチジンは2’−修飾ヌクレオチドである)、または末端5’−シチジン−ウリジン−3’(5’−CU−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−シチジンは2’−修飾ヌクレオチドである)、または末端5’−ウリジン−シチジン−3’(5’−UC−3’)ジヌクレオチド(ここで、5’−ウリジンは2’−修飾ヌクレオチドである)を含み得る。これらの修飾を含む二本鎖オリゴヌクレオチドは、エンドヌクレアーゼ活性に対して特に安定化される。
【0247】
一般的な参考文献
本発明に従って使用されるオリゴリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオシドは、固相合成を用いて合成されてもよく、例えば、“Oligonucleotide synthesis, a practical approach”,M.J.Gait編,IRL Press,1984;“Oligonucleotides and Analogues, A Practical Approach”,F.Eckstein編,IRL Press,1991(特に、第1章のModern machine−aided methods of oligodeoxyribonucleotide synthesis、第2章のOligoribonucleotide synthesis、第3章の2’−O−Methyloligoribonucleotides:synthesis and applications、第4章のPhosphorothioate oligonucleotides、第5章のSynthesis of oligonucleotide phosphorodithioates、第6章のSynthesis of oligo−2’−deoxyribonucleoside methylphosphonatesおよび第7章のOligodeoxynucleotides containing modified bases)を参照されたい。他の特に有用な合成手順、試薬、ブロッキング基および反応条件は、Martin,P.,Helv.Chim.Acta,1995,78,486−504、Beaucage,S.L.and Iyer,R.P.,Tetrahedron,1992,48,2223−2311およびBeaucage,S.L.and Iyer,R.P.,Tetrahedron,1993,49,6123−6194、またはそれらの中で参照されている参考文献に記載されている。国際公開第00/44895号、国際公開第01/75164号、または国際公開第02/44321号に記載の修飾を本明細書で使用することができる。本明細書に列挙されている全ての刊行物、特許、および公開されている特許出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0248】
リン酸基に関する参考文献
ホスフィン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,508,270号に記載されている。アルキルホスホン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第4,469,863号に記載されている。ホスホルアミダイトオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,256,775号または米国特許第5,366,878号に記載されている。ホスホトリエステルオリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,023,243号に記載されている。ボラノリン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は、米国特許第5,130,302号および米国特許第5,177,198号に記載されている。3’−デオキシ−3’−アミノホスホルアミダートリボオリゴヌクレオチドの調製は、米国特許第5,476,925号に記載されている。3’−デオキシ3’−メチレンホスホン酸オリゴリボヌクレオチドは、An,H,et al.J.Org.Chem.2001,66,2789−2801に記載されている。硫黄架橋ヌクレオチドの調製は、Sproat et al.Nucleosides Nucleotides 1988,7,651およびCrosstick et al.Tetrahedron Lett.1989,30,4693に記載されている。
【0249】
糖基に関する参考文献
2’修飾に対する修飾は、Verma,S.et al.Annu.Rev.Biochem.1998,67,99−134およびその中の全ての参考文献に見出すことができる。リボースに対する特異的修飾は、以下の参考文献に見出すことができる:2’−フルオロ(Kawasaki et.al.,J.Med.Chem.,1993,36,831−841)、2’−MOE(Martin,P.Helv.Chim.Acta 1996,79,1930−1938)、「LNA」(Wengel,J.Acc.Chem.Res.1999,32,301−310)。
【0250】
リン酸基の置換に関する参考文献
メチレンメチルイミノ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書では、MMI結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、メチレンジメチルヒドラゾ結合オリゴリボヌクレオシド(本明細書では、MDH結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、およびメチレンカルボニルアミノ結合オリゴヌクレオシド(本明細書では、アミド−3結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、およびメチレンアミノカルボニル結合オリゴヌクレオシド(本明細書では、アミド−4結合オリゴリボヌクレオシドとしても識別される)、ならびに例えば、MMIとPO結合またはPS結合を交互に有する混合骨格化合物は、米国特許第5,378,825号、同第5,386,023号、同第5,489,677号、ならびに公開されたPCT出願PCT/US92/04294号およびPCT/US92/04305号(それぞれ、国際公開第92/20822号および国際公開第92/20823号として公開されている)に記載されているように調製することができる。ホルムアセタールおよびチオホルムアセタール結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,264,562号および同第5,264,564号に記載されているように調製することができる。エチレンオキシド結合オリゴリボヌクレオシドは、米国特許第5,223,618号に記載されているように調製することができる。シロキサン置換は、Cormier J.F.et al.Nucleic Acids Res.1988,16,4583に記載されている。カルボナート置換は、Tittensor,J.R.J.Chem.Soc.C1971,1933に記載されている。カルボキシメチル置換は、Edge,M.D.et al.J.Chem.Soc.Perkin Trans.1 1972,1991に記載されている。カルバマート置換は、Stirchak,E.P.Nucleic Acids Res.1989,17,6129に記載されている。
【0251】
リン酸−リボース骨格の置換に関する参考文献
シクロブチル糖代用物の化合物は、米国特許第5,359,044号に記載されているように調製することができる。ピロリジン糖代用物は、米国特許第5,519,134号に記載されているように調製することができる。モルホリノ糖代用物は、米国特許第5,142,047号および同第5,235,033号、ならびに他の関連する特許の開示に記載されているように調製することができる。ペプチド核酸(PNA)はそれ自体公知であり、Peptide Nucleic Acids(PNA):Synthesis,Properties and Potential Applications,Bioorganic & Medicinal Chemistry,1996,4,5−23で参照されている様々な手順のいずれかに従って調製することができる。これらはまた、米国特許第5,539,083号に従って調製してもよい。
【0252】
末端修飾に関する参考文献
末端修飾は、Manoharan,M.et al.,Antisense and Nucleic Acid Drug Development 12,103−128(2002)およびその中の参考文献に記載されている。
【0253】
ヌクレオ塩基に関する参考文献
N−2置換プリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,459,255号に記載されているように調製することができる。3−デアザプリンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,457,191号に記載されているように調製することができる。5,6−置換ピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,614,617号に記載されているように調製することができる。5−プロピニルピリミジンヌクレオシドアミダイトは、米国特許第5,484,908号に記載されているように調製することができる。
【0254】
リンカー
「リンカー」という用語は、化合物の2つの部分を接続する有機部分を意味する。リンカーとしては、典型的には、直接的な結合、または原子(例えば、酸素もしくは窒素)、単位(例えば、NR
1、C(O)、C(O)NH、SO、SO
2、SO
2NH)または原子鎖(例えば、置換アルキルもしくは未置換アルキル、置換アルケニルもしくは未置換アルケニル、置換アルキニルもしくは未置換アルキニル、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルアルケニル、ヘテロシクリルアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキルアリールアルキル、アルキルアリールアルケニル、アルキルアリールアルキニル、アルケニルアリールアルキル、アルケニルアリールアルケニル、アルケニルアリールアルキニル、アルキニルアリールアルキル、アルキニルアリールアルケニル、アルキニルアリールアルキニル、アルキルヘテロアリールアルキル、アルキルヘテロアリールアルケニル、アルキルヘテロアリールアルキニル、アルケニルヘテロアリールアルキル、アルケニルヘテロアリールアルケニル、アルケニルヘテロアリールアルキニル、アルキニルヘテロアリールアルキル、アルキニルヘテロアリールアルケニル、アルキニルヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロシクリルアルキル、アルキルヘテロシクリルアルケニル、アルキルヘテロシクリルアルキニル、アルケニルヘテロシクリルアルキル、アルケニルヘテロシクリルアルケニル、アルケニルヘテロシクリルアルキニル、アルキニルヘテロシクリルアルキル、アルキニルヘテロシクリルアルケニル、アルキニルヘテロシクリルアルキニル、アルキルアリール、アルケニルアリール、アルキニルアリール、アルキルヘテロアリール、アルケニルヘテロアリール、アルキニルヘテロアリール(ここで、1つ以上のメチレンは、O、S、S(O)、SO
2、N(R
1)
2、C(O)、切断可能な結合基、置換アリールもしくは未置換アリール、置換ヘテロアリールもしくは未置換ヘテロアリール、置換複素環もしくは未置換複素環によって中断もしくは終結されることがあり;R
1は、水素、アシル、脂肪族もしくは置換脂肪族である))が挙げられる。
【0255】
一実施形態では、リンカーは、−[(P−Q−R)
q−X−(P’−Q’−R’)
q’]
q”−T−であり、
式中、
P、R、T、P’、R’およびTは、各出現について各々独立に、存在しないか、CO、NH、O、S、OC(O)、NHC(O)、CH
2、CH
2NH、CH
2O;NHCH(R
a)C(O)、−C(O)−CH(R
a)−、NH−、CH=N−O、
【化10】
またはヘテロシクリルであり、
QおよびQ’は、各出現について各々独立に、存在しないか、−(CH
2)
n−、−C(R
1)(R
2)(CH
2)
n−、−(CH
2)
nC(R
1)(R
2)−、−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2−、または−(CH
2CH
2O)
mCH
2CH
2NH−であり、
Xは存在しないかまたは切断可能な結合基であり、
R
aはHまたはアミノ酸側鎖であり、
R
1およびR
2は、各出現について各々独立に、H、CH
3、OH、SHまたはN(R
N)
2であり、
R
Nは、各出現について独立に、H、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチルまたはベンジルであり、
q、q’およびq”は、各出現について各々独立に、0〜20であり、ここで、繰返し単位は同じものまたは異なるものであることができ、
nは、各出現について独立に、0〜20であり、かつ
mは、各出現について独立に、0〜50である。
【0256】
一実施形態では、リンカーは、少なくとも1つの切断可能な結合基を含む。
【0257】
特定の実施形態では、リンカーは分岐状リンカーである。分岐状リンカーの分岐点は、少なくとも三価であってよいが、四価、五価もしくは六価の原子、またはそのような多数の原子価を示す基であってもよい。特定の実施形態では、分岐点は、−N、−N(Q)−C、−O−C、−S−C、−SS−C、−C(O)N(Q)−C、−OC(O)N(Q)−C、−N(Q)C(O)−C、または−N(Q)C(O)O−Cである(式中、Qは各出現について独立にHまたは任意で置換されたアルキルである)。他の実施形態では、分岐点は、グリセロールまたはグリセロール誘導体である。
【0258】
切断可能な結合基
切断可能な結合基とは、細胞外では十分に安定であるが、標的細胞内に入ると切断され、リンカーが結び付けている2つの部分を放出する基のことである。好ましい実施形態では、切断可能な結合基は、対象の血液中、または第2の参照条件(例えば、血液中もしくは血清中に見られる条件を模倣するかもしくはそのような条件に相当するように選択することができる)下よりも少なくとも10倍以上、好ましくは少なくとも100倍以上速く、標的細胞内または第1の参照条件(例えば、細胞内条件を模倣かもしくはそのような条件に相当するように選択することができる)下で分解される。
【0259】
切断可能な結合基は、切断作用因子(例えば、pH、レドックス電位または分解分子の存在)の影響を受けやすい。通常、切断作用因子は、血清中または血液中よりも細胞内により広まっているかまたはより高いレベルもしくは活性で見られる。このような分解作用因子の例としては、特定の基質のために選択されるかまたは基質特異性がないレドックス剤、例えば、酸化酵素もしくは還元酵素または還元剤(例えば、細胞内に存在する、レドックス切断可能な結合基を還元によって分解することができるメルカプタン);エステラーゼ;エンドソームまたは酸性環境を作り出すことができる薬剤(例えば、5以下のpHを生じさせる薬剤);一般酸として作用することによって、酸性の切断可能な結合基を加水分解または分解することができる酵素、ペプチダーゼ(基質特異的である可能性がある)、およびホスファターゼが挙げられる。
【0260】
切断可能な結合基(例えば、ジスルフィド結合)は、pHによる影響を受けやすい可能性がある。ヒト血清のpHは7.4であるが、平均の細胞内pHは、わずかにより低く、約7.1〜7.3の範囲である。エンドソームのpHは、より酸性で、5.5〜6.0の範囲であり、リソソームのpHは、さらにより酸性で、5.0前後である。いくつかのリンカーは、好ましいpHで切断され、それにより、カチオン性脂質をリガンドから細胞内に、または所望の細胞区画中に放出する切断可能な結合基を有する。
【0261】
リンカーは、特定の酵素によって切断される切断可能な結合基を含むことができる。リンカーに組み込まれる切断可能な結合基の種類は、標的とされる細胞によって決まる可能性がある。例えば、肝臓ターゲッティングリガンドは、エステル基を含むリンカーを介してカチオン性脂質に結合させることができる。肝臓細胞はエステラーゼが豊富であり、それゆえに、リンカーはエステラーゼが豊富でない細胞型でよりも効率的に肝臓細胞で切断される。エステラーゼが豊富な他の細胞型としては、肺、腎皮質、および精巣が挙げられる。
【0262】
ペプチド結合を含有するリンカーは、ペプチダーゼが豊富な細胞型(例えば、肝臓細胞および滑膜細胞)を標的とする場合に使用することができる。
【0263】
一般に、候補となる切断可能な結合基の好適性は、候補となる結合基を切断する分解作用因子(または条件)の能力を試験することによって評価することができる。候補となる切断可能な結合基を、血液中でのまたは他の標的以外の組織と接触させた場合の切断に抵抗する能力について同様に試験することも望ましいしたがって、第1の条件と第2の条件の間の切断に対する相対的感受性を決定することができ、その場合、第1の条件は、標的細胞内での切断を示すように選択され、第2の条件は他の組織または生体液(例えば、血液もしくは血清)中での切断を示すように選択される。評価は、無細胞系で、細胞で、細胞培養で、器官もしくは組織培養で、または動物全体で行なうことができる。無細胞条件または培養条件で最初の評価を行ない、動物全体でのさらなる評価によって確認することが有用である場合がある。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液または血清(または細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較したとき、少なくとも2倍、4倍、10倍、または100倍速く細胞内で(または細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下で)切断される。
【0264】
レドックス切断可能な結合基
切断可能な結合基の1つの部類は、還元または酸化によって切断されるレドックス切断可能な結合基である。還元切断可能な結合基の例は、ジスルフィド結合基(−S−S−)である。候補となる切断可能な結合基が、好適で「還元切断可能な結合基」であるかどうか、または例えば、特定のiRNA部分および特定のターゲッティング剤とともに使用するのに好適であるかどうかを明らかにするために、本明細書に記載の方法に目を向けることができる。例えば、候補は、ジチオスレイトール(DTT)、または細胞(例えば、標的細胞)で観察される切断の速度を模倣する、当該技術分野で公知の試薬を用いる他の還元剤とともにインキュベートすることによって評価することができる。候補は、血液条件または血清条件を模倣するように選択される条件下で評価することもできる。好ましい実施形態では、候補化合物は、血液中で多くても10%切断される。好ましい実施形態では、有用な候補化合物は、血液(または細胞外条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)と比較したとき、少なくとも2倍、4倍、10倍または100倍速く、細胞内で(または細胞内条件を模倣するように選択されたインビトロ条件下)分解される。候補化合物の切断の速度を、細胞内媒体を模倣するように選択された条件下で、標準的な酵素動力学アッセイを用いて測定し、細胞外媒体を模倣するように選択された条件と比較することができる。
【0265】
リン酸ベースの切断可能な結合基
リン酸ベースの切断可能な結合基は、リン酸基を分解または加水分解する薬剤によって切断される。細胞内のリン酸基を切断する薬剤の例は、細胞内のホスファターゼなどの酵素である。リン酸ベースの結合基の例は、−O−P(O)(ORk)−O−、−O−P(S)(ORk)−O−、−O−P(S)(SRk)−O−、−S−P(O)(ORk)−O−、−O−P(O)(ORk)−S−、−S−P(O)(ORk)−S−、−O−P(S)(ORk)−S−、−S−P(S)(ORk)−O−、−O−P(O)(Rk)−O−、−O−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−O−、−S−P(S)(Rk)−O−、−S−P(O)(Rk)−S−、−O−P(S)(Rk)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−、−O−P(S)(OH)−O−、−O−P(S)(SH)−O−、−S−P(O)(OH)−O−、−O−P(O)(OH)−S−、−S−P(O)(OH)−S−、−O−P(S)(OH)−S−、−S−P(S)(OH)−O−、−O−P(O)(H)−O−、−O−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−O−、−S−P(S)(H)−O−、−S−P(O)(H)−S−、−O−P(S)(H)−S−である。好ましい実施形態は、−O−P(O)(OH)−O−である。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0266】
酸切断可能な結合基
酸切断可能な結合基とは、酸性条件下で切断される結合基のことである。好ましい実施形態では、酸切断可能な結合基は、pH約6.5以下(例えば、約6.0、5.5、5.0、もしくはそれ未満)の酸性環境において、または一般酸として作用することができる酵素などの薬剤によって切断される。細胞において、特定の低pHのオルガネラ(例えば、エンドソームおよびリソソーム)は、酸切断可能な結合基に対する切断環境を提供することができる。酸切断可能な結合基の例としては、ヒドラゾン、エステル、およびアミノ酸のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。酸切断可能な基は、一般式−C=NN−、C(O)O、または−OC(O)を有することができる。好ましい実施形態は、エステル(アルコキシ基)の酸素に結合した炭素が、アリール基、置換アルキル基、または三級アルキル基(例えば、ジメチル、ペンチルもしくはt−ブチル)である場合である。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0267】
エステルベースの結合基
エステルベースの切断可能な結合基は、細胞内のエステラーゼおよびアミダーゼなどの酵素によって切断される。エステルベースの切断可能な結合基の例としては、アルキレン基、アルケニルレン基およびアルキニレン基のエステルが挙げられるが、これらに限定されない。エステル切断可能な結合基は、一般式−C(O)O−または−OC(O)−を有する。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0268】
ペプチドベースの結合基
ペプチドベースの切断可能な結合基は、細胞内のペプチダーゼおよびプロテアーゼなどの酵素によって切断される。ペプチドベースの切断可能な結合基とは、アミノ酸とアミノ酸の間で形成されて、オリゴペプチド(例えば、ジペプチド、トリペプチドなど)およびポリペプチドを生じさせるペプチド結合のことである。ペプチドベースの切断可能基には、アミド基(−C(O)NH−)は含まれない。アミド基は、任意のアルキレン、アルケニレンまたはアルキニレンの間で形成させることができる。ペプチド結合は、アミノ酸とアミノ酸の間で形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じさせる特殊なタイプのアミド結合である。ペプチドベースの切断可能基は、通常、アミノ酸とアミノ酸の間で形成されて、ペプチドおよびタンパク質を生じさせるペプチド結合(すなわち、アミド結合)に限定され、アミド官能基全体を含むものではない。ペプチドベースの切断可能な結合基は、一般式−NHCHRAC(O)NHCHRBC(O)−(式中、RAとRBは、2つの隣接するアミノ酸のR基である)を有する。これらの候補は、上記の方法と類似の方法を用いて評価することができる。
【0269】
リガンド
多種多様な実体を本発明のオリゴヌクレオチドおよび脂質に結合させることができる。好ましい部分は、介在テザーを介して直接的にかまたは間接的にかのいずれかで、好ましくは共有結合によって結合されるリガンドである。
【0270】
好ましい実施形態では、リガンドは、それが組み込まれる分子の分布、ターゲッティングまたは寿命を変化させる。好ましい実施形態では、リガンドは、例えば、このようなリガンドがない種と比較したときに、選択された標的(例えば、分子、細胞もしくは細胞型、区画(例えば、細胞区画もしくは器官区画)、組織、器官、または身体領域)に対する親和性を増強する。選択された標的に対する親和性を増強するリガンドは、ターゲッティングリガンドとも呼ばれる。本発明の脂質にコンジュゲートするための好ましいリガンドはターゲッティングリガンドである。
【0271】
いくつかのリガンドは、エンドソーム溶解特性を有することができる。エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームの溶解および/または本発明の組成物、もしくはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する。エンドソーム溶解リガンドは、pH依存的な膜活性および融合性を示すポリアニオン性のペプチドまたはペプチド模倣体であり得る。特定の実施形態では、エンドソーム溶解リガンドは、エンドソームpHでその活性型立体構造をとる。「活性型」立体構造とは、エンドソーム溶解リガンドが、エンドソームの溶解および/または本発明の組成物、もしくはその成分のエンドソームから細胞の細胞質への輸送を促進する立体構造のことである。例示的なエンドソーム溶解リガンドとしては、GALAペプチド(Subbarao et al.,Biochemistry,1987,26:2964−2972)、EALAペプチド(Vogel et al.,J.Am.Chem.Soc.,1996,118:1581−1586)、およびこれらの誘導体(Turk et al.,Biochem.Biophys.Acta,2002,1559:56−68)が挙げられる。特定の実施形態では、エンドソーム溶解成分は、pHの変化に応答して電荷またはプロトン化が変化する化学基(例えば、アミノ酸)を含み得る。エンドソーム溶解成分は、線状であってもまたは分岐状であってもよい。ペプチドベースのエンドソーム溶解リガンドの例示的な一次配列を表5に示す。
【表4】
n、ノルロイシン
参考文献
1.Subbarao et al,Biochemistry,1987,26:2964−2972.
2.Vogel et al.,J.Am.Chem.Soc.,1996,118:1581−1586.
3.Turk,M.J.,Reddy,J.A et al.(2002).Characterization of a novel pH−sensitive peptide that enhances drug release from folate−targeted liposomes at endosomal pHs.Biochim.Biophys.Acta 1559,56−68.
4.Plank,C.Oberhauser,B.Mechtler,K.Koch,C.Wagner,E.(1994).The influence of endosome−disruptive peptides on gene transfer using synthetic virus−like gene transfer systems,J.Biol.Chem.269 12918−12924.
5.Mastrobattista,E.,Koning,G.A.et al.(2002).Functional characterization of an endosome−disruptive peptide and its application in cytosolic delivery of immunoliposome−entrapped proteins.J.Biol.Chem.277,27135−43.
6.Oberhauser,B.,Plank,C.et al.(1995).Enhancing endosomal exit of nucleic acids using pH−sensitive viral fusion peptides.Deliv.Strategies Antisense Oligonucleotide Ther.247−66.
【0272】
好ましいリガンドは、輸送特性、ハイブリダイゼーション特性、および特異性特性を改善することができ、かつ結果として得られる天然オリゴリボヌクレオチドもしくは修飾オリゴリボヌクレオチド、または本明細書に記載のモノマーおよび/もしくは天然リボヌクレオチドもしくは修飾リボヌクレオチドの任意の組合せを含むポリマー分子のヌクレアーゼ耐性を改善することもあり得る。
【0273】
リガンドとしては、一般に、例えば、取込みを増強するための、治療的修飾物質;例えば、分布をモニタリングするための、診断的化合物またはレポーター基;架橋剤;およびヌクレアーゼ耐性を付与する部分を挙げることができる。一般例として、脂質、ステロイド、ビタミン、糖、タンパク質、ペプチド、ポリアミン、およびペプチド模倣物が挙げられる。
【0274】
リガンドとしては、天然に存在する物質、例えば、タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、もしくはグロブリン);糖質(例えば、デキストラン、プルラン、キチン、キトサン、イヌリン、シクロデキストリンもしくはヒアルロン酸);または脂質を挙げることができる。リガンドは、組換え分子または合成分子、例えば、合成ポリマー(例えば、合成ポリアミノ酸)、オリゴヌクレオチド(例えば、アプタマー)であってもよい。ポリアミノ酸の例としては、ポリリジン(PLL)、ポリL−アスパラギン酸、ポリL−グルタミン酸、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、ポリ(L−ラクチド−コ−グリコライド)コポリマー、ジビニルエーテル無水マレイン酸コポリマー、N−(2−ヒドロキシプロピル)メトアクリルアミドコポリマー(HMPA)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリ(2−エチルアクリル酸)、N−イソプロピルアクリルアミドポリマー、またはポリホスファジンであるポリアミノ酸が挙げられる。ポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリリジン(PLL)、スペルミン、スペルミジン、ポリアミン、シュードペプチド−ポリアミン、ペプチド模倣体ポリアミン、デンドリマーポリアミン、アルギニン、アミジン、プロタミン、カチオン性脂質、カチオン性ポルフィリン、ポリアミンの四級塩、またはアルファへリックスペプチドが挙げられる。
【0275】
リガンドとしては、ターゲッティング基、例えば、細胞ターゲッティング剤または組織ターゲッティング剤(例えば、レクチン、糖タンパク質、脂質またはタンパク質(例えば、腎臓細胞などの特定の細胞型に結合する抗体))を挙げることもできる。ターゲッティング基は、チロトロピン、メラノトロピン、レクチン、糖タンパク質、サーファクタントタンパク質A、ムチン糖質、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、グリコシル化されたポリアミノ酸、多価ガラクトース、トランスフェリン、ビスホスホナート、ポリグルタマート、ポリアスパルタート、脂質、コレステロール、ステロイド、胆汁酸、フォラート、ビタミンB12、ビオチン、RSGペプチド、RSGペプチド模倣体、またはアプタマーであることができる。表6に、ターゲッティングリガンドとその関連受容体のいくつかの例を示す。
【表5】
【0276】
リガンドの他の例としては、色素、インターカレート剤(例えば、アクリジン)、架橋剤(例えば、プソラレン、マイトマイシンC)、ポルフィリン(TPPC4、テキサフィリン、サッフィリン)、多環芳香族炭化水素(例えば、フェナジン、ジヒドロフェナジン)、人工エンドヌクレアーゼ(例えば、EDTA)、親油性分子(例えば、コレステロール、コール酸、アダマンタン酢酸、1−ピレン酪酸、ジヒドロテストステロン、1,3−ビス−O(ヘキサデシル)グリセロール、ゲラニルオキシヘキシル基、ヘキサデシルグリセロール、ボルネオール、メントール、1,3−プロパンジオール、ヘプタデシル基、パルミチン酸、ミリスチン酸、O3−(オレオイル)リトコール酸、O3−(オレオイル)コレン酸、ジメトキシトリチル、もしくはフェノキサジン)およびペプチドコンジュゲート(例えば、アンテナペディアペプチド、Tatペプチド)、アルキル化剤、ホスファート、アミノ、メルカプト、PEG(例えば、PEG−40K)、MPEG、[MPEG]
2、ポリアミノ、アルキル、置換アルキル、放射性標識マーカー、酵素、ハプテン(例えば、ビオチン)、輸送/吸収促進物質(例えば、アスピリン、ビタミンE、葉酸)、合成リボヌクレアーゼ(例えば、イミダゾール、ビスイミダゾール、ヒスタミン、イミダゾールクラスター、アクリジン−イミダゾールコンジュゲート、テトラアザマクロ環のEu3+錯体)、ジニトロフェニル、HRP、またはAPが挙げられる。
【0277】
リガンドは、タンパク質(例えば、糖タンパク質)、またはペプチド(例えば、共リガンドに対する特異的な親和性を有する分子)、または抗体(例えば、癌細胞、内皮細胞、もしくは骨細胞などの特定の細胞型に結合する抗体)であることができる。リガンドには、ホルモンおよびホルモン受容体も含まれ得る。リガンドには、脂質、レクチン、糖質、ビタミン、コファクター、多価ラクトース、多価ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン、N−アセチル−グルコサミン、多価マンノース、多価フコース、またはアプタマーなどの非ペプチド種も含まれ得る。リガンドは、例えば、リポ多糖、p38 MAPキナーゼの活性化因子、またはNF−κBの活性化因子であることができる。
【0278】
リガンドは、例えば、細胞の細胞骨格を破壊することによって(例えば、細胞の微小管、微小フィラメント、および/または中間径フィラメントを破壊することによって)、iRNA剤の細胞内への取込みを増大させる物質(例えば、薬物)であることができる。薬物は、例えば、タクソン(taxon)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、サイトカラシン、ノコダゾール、ジャプラキノリド(japlakinolide)、ラトランクリンA、ファロイジン、スウィンホリドA、インダノシン、またはミオセルビンであることができる。
【0279】
リガンドは、例えば、炎症応答を活性化することによって、iRNA剤の細胞内への取込みを増大させることができる。このような効果を有する例示的なリガンドとしては、腫瘍壊死因子α(TNFα)、インターロイキン−1β、またはγインターフェロンが挙げられる。
【0280】
一態様では、リガンドは、脂質または脂質ベースの分子である。このような脂質または脂質ベースの分子は、血清タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)に結合することが好ましい。HSA結合リガンドは、コンジュゲートが標的組織(例えば、身体の腎臓以外の標的組織)に分布するのを可能にする。例えば、標的組織は、肝臓の実質細胞を含む肝臓であることができる。HSAに結合することができる他の分子もリガンドとして使用することができる。例えば、ネプロキシンまたはアスピリンを使用することができる。脂質または脂質ベースのリガンドは、(a)コンジュゲートの分解に対する耐性を増大させ、(b)標的細胞または細胞膜へのターゲッティングまたは輸送を増大させることができ、および/または(c)血清タンパク質、例えば、HSAへの結合を調節するために使用することができる。
【0281】
脂質ベースのリガンドを用いて、標的組織に対するコンジュゲートの結合を調節するために、例えば、制御することができる。例えば、HSAにより強く結合する脂質または脂質ベースのリガンドは、腎臓にターゲッティングされる可能性が低く、それゆえ、身体から排出される可能性が低い。HSAにあまり強く結合しない脂質または脂質ベースのリガンドを用いて、コンジュゲートを腎臓にターゲッティングすることができる。
【0282】
好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドはHSAに結合する。コンジュゲートが好ましくは腎臓以外の組織に分布するような十分な親和性で、脂質ベースのリガンドがHSAに結合することが好ましい。しかしながら、この親和性はHSAリガンドの結合を取り消すことができないほど強力ではないことが好ましい。
【0283】
別の好ましい実施形態では、脂質ベースのリガンドは、コンジュゲートが好ましくは腎臓に分布するように、HSAに弱く結合するかまたは全く結合しない。腎細胞を標的とする他の部分を、脂質ベースのリガンドの代わりにまたは脂質ベースのリガンドに加えて、使用することもできる。
【0284】
別の態様では、リガンドは、標的細胞(例えば、増殖細胞)によって取り込まれる部分(例えば、ビタミン)である。これらは、例えば、悪性型または非悪性型(例えば、癌細胞)の望ましくない細胞増殖を特徴とする障害を治療するために特に有用である。例示的なビタミンには、ビタミンA、EおよびKが含まれる。他の例示的なビタミンには、ビタミンB(例えば、葉酸、B12、リボフラビン、ビオチン、ピリドキサール)または癌細胞によって取り込まれる他のビタミンもしくは栄養素が含まれる。HAS、低密度リポタンパク質(LDL)および高密度リポタンパク質(HDL)も含まれる。
【0285】
別の態様では、リガンドは、細胞透過剤、好ましくはヘリックス細胞透過剤である。薬剤は両親媒性であることが好ましい。例示的な薬剤は、tatまたはアンテナペディアなどのペプチドである。薬剤がペプチドの場合、修飾可能であり、これには、ペプチジル模倣体、反転異性体(invertomer)、非ペプチド結合または偽ペプチド結合、およびD−アミノ酸の使用が含まれる。ヘリックス剤は、好ましくは親油性相と疎油性相とを有するアルファヘリックス剤であることが好ましい。
【0286】
リガンドは、ペプチドまたはペプチド模倣体であることができる。ペプチド模倣体(本明細書ではオリゴペプチド模倣体とも呼ばれる)は、天然ペプチドと同様の明確な3次元構造に折り畳むことができる分子である。ペプチド部分またはペプチド模倣体部分の長さは、約5〜50アミノ酸、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、または50アミノ酸であることができる(例えば、表7参照)。
【表6】
【0287】
ペプチドまたはペプチド模倣体は、例えば、細胞透過ペプチド、カチオン性ペプチド、両親媒性ペプチド、または(例えば、主にTyr、TrpもしくはPheからなる)疎水性ペプチドであることができる。ペプチド部分は、デンドリマーペプチド、拘束されたペプチド、または架橋されたペプチドであることができる。別の代替において、ペプチド部分は、疎水性の膜転位配列(MTS)を含むことができる。例示的な疎水性MTS含有ペプチドは、アミノ酸配列AAVALLPAVLLALLAPを有するRFGFである。疎水性MTSを含有するRFGF類似体(例えば、アミノ酸配列AALLPVLLAAP)もターゲッティング部分であることができる。ペプチド部分は、細胞膜を横断して、ペプチド、オリゴヌクレオチド、およびタンパク質をはじめとする大きな極性分子を運ぶことができる、「送達」ペプチドであることができる。例えば、HIV Tatタンパク質由来の配列(GRKKRRQRRRPPQ)およびショウジョウバエのアンテナペディアタンパク質(RQIKIWFQNRRMKWKK)由来の配列は、送達ペプチドとして機能することができることが分かっている。ファージディスプレイライブラリー、または1ビーズ1化合物(OBOC)コンビナトリアルライブラリーから同定されたペプチドなどの、ペプチドまたはペプチド模倣体は、DNAのランダムな配列によってコードされることができる(Lam et al.,Nature,354:82−84,1991)。組み込まれたモノマー単位を介してsiRNA剤に連結されたペプチドまたはペプチド模倣体は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、またはRGD模倣体などの細胞ターゲッティングペプチドであることが好ましい。ペプチド部分の長さは、約5アミノ酸〜約40アミノ酸の範囲であることができる。ペプチド部分は、例えば、安定性または直接的な立体構造特性を高めるための、構造的修飾を有することができる。下記の構造的修飾のいずれかを利用することができる。
【0288】
RGDペプチド部分を用いて、内皮腫瘍細胞または乳癌腫瘍細胞などの腫瘍細胞を標的とすることができる(Zitzmann et al.,Cancer Res.,62:5139−43,2002)。RGDペプチドは、肺、腎臓、脾臓、または肝臓をはじめとする、種々の他の組織の腫瘍へのsiRNA剤のターゲッティングを促進することができる(Aoki et al.,Cancer Gene Therapy 8:783−787,2001)。RGDペプチドは、siRNA剤の腎臓へのターゲッティングを促進することが好ましい。RGDペプチドは、線状または環状であることができ、かつ修飾する(例えば、特定の組織へのターゲッティングを促進するためにグリコシル化またはメチル化する)ことができる。例えば、グリコシル化されたRGDペプチドは、α
vβ
3を発現する腫瘍細胞にiRNA剤を送達することができる(Haubner et al.,Jour.Nucl.Med.,42:326−336,2001)。
【0289】
増殖細胞に濃縮されているマーカーを標的とするペプチドを使用することができる。例えば、RGDを含有するペプチドおよびペプチド模倣体は、癌細胞、特に、αvβ3インテグリンを提示する細胞を標的とすることができる。したがって、RGDペプチド、RGDを含有する環状ペプチド、D−アミノ酸を含むRGDペプチド、および合成RGD模倣体を使用することができる。RGDに加えて、αvβ3インテグリンリガンドを標的とする他の部分を使用することができる。通常、このようなリガンドを用いて、増殖細胞および血管新生を制御することができる。この種のリガンドの好ましいコンジュゲートは、PECAM−1、VEGF、または他の癌遺伝子、例えば、本明細書に記載の癌遺伝子を標的とするリガンドである。
【0290】
「細胞透過ペプチド」は、細胞、例えば、微生物細胞(例えば、細菌細胞もしくは真菌細胞)、または哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)を透過することができる。微生物細胞透過性ペプチドは、例えば、α−ヘリックス線状ペプチド(例えば、LL−37もしくはセロピンP1)、ジスルフィド結合含有ペプチド(例えば、α−ディフェンシン、β−ディフェンシン、もしくはバクテネシン)、またはわずか1種もしくは2種の主なアミノ酸を含有するペプチド(例えば、PR−39もしくはインドリシジン)であることができる。細胞透過ペプチドは、核局在化シグナル(NLS)を含むこともできる。例えば、細胞透過ペプチドは、HIV−1 gp41の融合ペプチドドメインとSV40ラージT抗原のNLSとに由来する2つの部分からなる両親媒性ペプチド(例えば、MPG)であることができる(Simeoni et al.,Nucl.Acids Res.31:2717−2724,2003)。
【0291】
一実施形態では、iRNA剤および/または担体オリゴマーに連結されたターゲッティングペプチドは、両親媒性α−ヘリックスペプチドであることができる。例示的な両親媒性α−ヘリックスペプチドとしては、セクロピン、ライコトキシン、パラダキシン、ブフォリン、CPF、ボンビニン様ペプチド(BLP)、カテリシディン、セラトトキシン、エボヤ(S.clava)のペプチド、メクラウナギ腸管の抗菌性ペプチド(HFIAP)、マガイニン、ブレビニン−2、ダーマセプチン、メリチン、プレウロシディン、H
2Aペプチド、アフリカツメガエルのペプチド、エスカレンチン−1、およびカエリンが挙げられるが、これらに限定されない。ヘリックス安定性の完全性を維持するために、いくつかの要因を考慮することが好ましいであろう。例えば、ヘリックス安定化残基(例えばleu、ala、またはlys)を最大数利用し、ヘリックス不安定化残基(例えばプロリン、または環状モノマー単位)を最小数利用する。キャッピング残基も考慮される(例えば、Glyは、例示的なN−キャッピング残基であり、および/またはC末端アミド化を用いて、ヘリックスを安定化するための余分なH結合を提供することができる)。i±3位、またはi±4位離れた、正反対の電荷を有する残基間の塩架橋の形成によって、安定化をもたらすことができる。例えば、リジン、アルギニン、ホモ−アルギニン、オルニチンまたはヒスチジンなどのカチオン性残基は、アニオン性残基のグルタミン酸またはアスパラギン酸と塩架橋を形成することができる。
【0292】
ペプチドリガンドおよびペプチド模倣体リガンドとしては、天然ペプチドもしくは修飾ペプチド、例えば、DペプチドもしくはLペプチド;αペプチド、βペプチド、もしくはγペプチド;N−メチルペプチド;アザペプチド;1つ以上の尿素結合、チオ尿素結合、カルバマート結合、もしくはスルホニル尿素結合で置換された1つ以上のアミド(すなわち、ペプチド)結合を有するペプチド;または環状ペプチドを有するリガンドが挙げられる。
【0293】
ターゲッティングリガンドは、特定の受容体を標的とすることができる任意のリガンドであることができる。例としては、フォラート、GalNAc、ガラクトース、マンノース、マンノース−6P、糖のクラスター(例えば、GalNAcクラスター、マンノースクラスター、ガラクトースクラスター)、またはアプタマーがある。クラスターは2つ以上の糖単位の組合せである。ターゲッティングリガンドとしては、インテグリン受容体リガンド、ケモカイン受容体リガンド、トランスフェリン、ビオチン、セロトニン受容体リガンド、PSMA、エンドセリン、GCPII、ソマトスタチン、LDLリガンドおよびHDLリガンドも挙げられる。リガンドは、核酸をベースにしたもの、例えば、アプタマーであることもできる。アプタマーは、未修飾であることができ、または本明細書で開示される修飾の任意の組合せを有することができる。
【0294】
エンドソーム放出剤としては、イミダゾール、ポリイミダゾールもしくはオリゴイミダゾール、PEI、ペプチド、融合性ペプチド、ポリカルボキシラート、ポリカチオン、マスキングされたオリゴカチオンもしくはマスキングされたポリカチオンまたはマスキングされたオリゴアニオンもしくはマスキングされたポリアニオン、アセタール、ポリアセタール、ケタール/ポリケタール、オルトエステル、マスキングされているかもしくはマスキングされていないカチオン性電荷もしくはアニオン性電荷を有するポリマー、マスキングされているかもしくはマスキングされていないカチオン性電荷もしくはアニオン性電荷を有するデンドリマーが挙げられる。
【0295】
PK調節物質とは、薬物動態調節物質を意味する。PK調節物質としては、親油性物質、胆汁酸、ステロイド、リン脂質類似体、ペプチド、タンパク質結合剤、PEG、ビタミンなどが挙げられる。例示的なPK調節物質としては、コレステロール、脂肪酸、コール酸、リトコール酸、ジアルキルグリセリド、ジアシルグリセリド、リン脂質、スフィンゴ脂質、ナプロキセン、イブプロフェン、ビタミンE、ビオチンなどが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのホスホロチオアート結合を含むオリゴヌクレオチドも、血清タンパク質に結合することが知られており、このため、骨格に多数のホスホロチオアート結合を含む短いオリゴヌクレオチド(例えば、約5塩基、10塩基、15塩基または20塩基のオリゴヌクレオチド)も、リガンド(例えば、PK調節リガンド)として本発明に適している。
【0296】
さらに、血清成分(例えば、血清タンパク質)に結合するアプタマーも、PK調節リガンドとして本発明に適している。
【0297】
本発明に適している他のリガンドは、同時係属出願の米国特許出願:第10/916,185号(2004年8月10日出願);米国特許出願:第10/946,873号(2004年9月21日出願);米国特許出願:第10/833,934号(2007年8月3日出願);米国特許出願:第11/115,989号(2005年4月27日出願)および米国特許出願:第11/944,227号(2007年11月21日出願)に記載されており、これらは、全ての目的のために、その全体が参照により組み込まれる。
【0298】
2つ以上のリガンドが存在する場合、リガンドは、全てが同じ特性を有することも、全てが異なる特性を有することも、またはあるリガンドが同じ特性を有すると同時に、他のリガンドが異なる特性を有することもある。例えば、リガンドは、ターゲッティング特性を有することも、エンドソーム溶解活性を有することも、またはPK調節特性を有することもある。好ましい実施形態では、リガンドが全て、異なる特性を有する。
【0299】
リガンドを、様々な場所で、例えば、3’末端、5’末端、および/または内部位置でオリゴヌクレオチドに結合させることができる。好ましい実施形態では、リガンドを介在テザーを介してオリゴヌクレオチドに付着させる。リガンドまたはテザーリガンドは、モノマーが成長鎖に組み込まれるときにモノマー上に存在し得る。いくつかの実施形態では、「前駆体」モノマーが成長鎖に組み込まれた後に、リガンドを「前駆体」モノマーへの結合を介して組み込み得る。例として、例えば、アミノ末端テザーを有する(すなわち、会合リガンドを有さない)モノマー(例えば、TAP−(CH
2)
nNH
2)を成長するセンス鎖またはアンチセンス鎖に組み込み得る。その後の操作において、すなわち、前駆体モノマーを鎖に組み込んだ後に、求電子基を有するリガンド(例えば、ペンタフルオロフェニルエステルまたはアルデヒド基)を、リガンドの求電子基を前駆体モノマーのテザーの末端求核基と結合させることによって、後で前駆体モノマーに付着させることができる。
【0300】
二本鎖オリゴヌクレオチドの場合、リガンドを一方または両方の鎖に付着させることができる。いくつかの実施形態では、二本鎖iRNA剤は、センス鎖にコンジュゲートされたリガンドを含む。他の実施形態では、二本鎖iRNA剤は、アンチセンス鎖にコンジュゲートされたリガンドを含む。
【0301】
いくつかの実施形態では、リガンドを核酸分子のヌクレオ塩基、糖部分、またはヌクレオシド間結合にコンジュゲートすることができる。プリンヌクレオ塩基またはその誘導体へのコンジュゲーションは、環内原子および環外原子を含む、任意の位置で生じ得る。いくつかの実施形態では、プリンヌクレオ塩基の2位、6位、7位、または8位をコンジュゲート部分に付着させる。ピリミジンヌクレオ塩基またはその誘導体へのコンジュゲーションも任意の位置で生じ得る。いくつかの実施形態では、ピリミジンヌクレオ塩基の2位、5位、および6位をコンジュゲート部分と置換することができる。ヌクレオシドの糖部分へのコンジュゲーションは任意の炭素原子で生じ得る。コンジュゲート部分に付着させることができる糖部分の炭素原子の例としては、2’、3’、および5’炭素原子が挙げられる。例えば、無塩基残基中の、1’位をコンジュゲート部分に付着させることもできる。ヌクレオシド間結合もコンジュゲート部分を担持することができる。リン含有結合(例えば、ホスホジエステル、ホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、ホスホロアミダートなど)の場合、コンジュゲート部分をリン原子に直接、またはリン原子に結合したO原子、N原子、もしくはS原子に付着させることができる。アミンまたはアミド含有ヌクレオシド間結合(例えば、PNA)の場合、コンジュゲート部分をアミンもしくはアミドの窒素原子に、または隣接する炭素原子に付着させることができる。
【0302】
オリゴマー化合物のコンジュゲートを調製するための方法は数多くある。通常、オリゴマー化合物上の反応基(例えば、OH、SH、アミン、カルボキシル、アルデヒドなど)をコンジュゲート部分上の反応基と接触させることによって、オリゴマー化合物をコンジュゲート部分に付着させる。いくつかの実施形態では、一方の反応基は求電子性であり、もう一方の反応基は求核性である。
【0303】
例えば、求電子基はカルボニル含有官能基であることができ、求核基はアミンまたはチオールであることができる。結合基を含むおよび含まない核酸および関連オリゴマー化合物のコンジュゲーションの方法は、例えば、Manoharan in Antisense Research and Applications,Crooke and LeBleu編,CRC Press,Boca Raton,Fla.,1993,第17章などの文献に十分に記載されており、この文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0304】
オリゴヌクレオチドコンジュゲートの調製を教示する代表的な米国特許としては、限定するものではないが、米国特許第4,828,979号;同第4,948,882号;同第5,218,105号;同第5,525,465号;同第5,541,313号;同第5,545,730号;同第5,552,538号;同第5,578,717号;同第5,580,731号;同第5,580,731号;同第5,591,584号;同第5,109,124号;同第5,118,802号;同第5,138,045号;同第5,414,077号;同第5,486,603号;同第5,512,439号;同第5,578,718号;同第5,608,046号;同第4,587,044号;同第4,605,735号;同第4,667,025号;同第4,762,779号;同第4,789,737号;同第4,824,941号;同第4,835,263号;同第4,876,335号;同第4,904,582号;同第4,958,013号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,214,136号;同第5,082,830号;同第5,112,963号;同第5,149,782号;同第5,214,136号;同第5,245,022号;同第5,254,469号;同第5,258,506号;同第5,262,536号;同第5,272,250号;同第5,292,873号;同第5,317,098号;同第5,371,241号;同第5,391,723号;同第5,416,203号;同第5,451,463号;同第5,510,475号;同第5,512,667号;同第5,514,785号;同第5,565,552号;同第5,567,810号;同第5,574,142号;同第5,585,481号;同第5,587,371号;同第5,595,726号;同第5,597,696号;同第5,599,923号;同第5,599,928号;同第5,672,662号;同第5,688,941号;同第5,714,166号;同第6,153,737号;同第6,172,208号;同第6,300,319号;同第6,335,434号;同第6,335,437号;同第6,395,437号;同第6,444,806号;同第6,486,308号;同第6,525,031号;同第6,528,631号;同第6,559,279号が挙げられ、これらは各々、参照により本明細書に組み込まれる。
【0305】
定義
便宜のため、本明細書、実施例、および付随する特許請求の範囲で使用される特定の用語および語句の意味が、以下に提供される。本明細書の他の部分におけるある用語の用法と本節で示されるその定義との間に明白な矛盾がある場合には、本節の定義が優先されるものとする。
【0306】
「G」、「C」、「A」および「U」は各々、通常、塩基としてグアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルをそれぞれ含有するヌクレオチドを表す。しかしながら、「リボヌクレオチド」または「ヌクレオチド」という用語は、以下にさらに詳述するような修飾ヌクレオチド、または代用置換部分を指すこともできるということが理解されるであろう。当業者にはよく知られていることであるが、このような置換部分を有するヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドの塩基対形成特性を実質的に変化させないで、グアニン、シトシン、アデニン、およびウラシルを他の部分に置換することが可能である。例えば、限定するものではないが、その塩基としてイノシンを含むヌクレオチドは、アデニン、シトシン、またはウラシルを含有するヌクレオチドと塩基対を形成し得る。したがって、ウラシル、グアニン、またはアデニンを含有するヌクレオチドは、本発明のヌクレオチド配列中で、例えば、イノシンを含有するヌクレオチドに置換し得る。このような置換部分を含む配列は本発明の実施形態である。
【0307】
本明細書で使用される「第VII因子」とは、第VII因子のmRNA、タンパク質、ペプチド、またはポリペプチドを意味する。「第VII因子」という用語は、当技術分野で、AI132620、Cf7、凝固因子VII前駆体、凝固因子VII、FVII、血清プロトロンビン転化促進因子、FVII凝固タンパク質、およびエプタコグαとしても知られている。
【0308】
本明細書で使用される場合、「標的配列」とは、一次転写産物のRNAプロセッシングの産物であるmRNAを含む、遺伝子の転写の間に形成されるmRNA分子のヌクレオチド配列の連続した部分を指す。
【0309】
本明細書で使用される場合、「配列を含む鎖」という用語は、標準的なヌクレオチド命名法を用いて参照される配列によって説明される、ヌクレオチドの鎖を含むオリゴヌクレオチドを指す。
【0310】
本明細書で使用される場合、および別途示されない限り、ヌクレオチド対との関連で使用される場合の「相補的」という用語は、古典的なワトソン−クリック対、すなわち、GC、AT、またはAUを意味する。この用語は、ヌクレオチドの一方または両方が、例えば、リボース修飾またはリン酸骨格修飾によって、本明細書に記載されるように修飾されている古典的なワトソン−クリック対形成にまでも及ぶ。この用語は、イノシンまたは塩基対形成特性を実質的に変化させない他の実体との対形成を含むこともできる。
【0311】
本明細書で使用される場合、および別途示されない限り、第2のヌクレオチド配列との関連で第1のヌクレオチド配列を説明するのに使用される場合の「相補的」という用語は、当業者に理解されるように、第1のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、第2のヌクレオチド配列を含むオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドとハイブリダイズし、特定の条件下で二重鎖構造を形成する能力を指す。相補性は、生理的条件下での、すなわち、生物内で直面し得るような生理的に関連のある条件下でのハイブリダイゼーションを可能にする完全な相補性、実質的な相補性、および十分な相補性を含むことができる。完全な相補性とは、個々の対について上で定義されるような、第1の配列と第2の配列の対の全てにおける相補性を指す。ある配列が、本明細書中の第2の配列に対して「実質的に相補的」である場合、この2つの配列は、完全に相補的であることができるか、またはこれらの配列は、ハイブリダイズしたときに、1つ以上の、しかし通常は、多くて4つ、3つ、もしくは2つのミスマッチの塩基対を形成しながらも、その最終的な適用に最も関連がある条件下でハイブリダイズする能力を保持し得る。実質的な相補性は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションとして定義することもでき、この場合、ストリンジェントな条件は、以下を含み得る:400mM NaCl、40mM PIPES(pH6.4)、1mM EDTA、50℃または70℃、12〜16時間の後、洗浄。当業者であれば、ハイブリダイズしたヌクレオチドの最終的な適用に従う2つの配列の相補性の試験に最も適当な条件の組を決定することができるであろう。
【0312】
しかしながら、2つのオリゴヌクレオチドが、ハイブリダイズしたときに、1つ以上の一本鎖突出を形成するように設計される場合、このような突出は、相補性の決定に関してミスマッチとはみなされないものとする。例えば、一方の21ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドと、もう一方の23ヌクレオチド長のオリゴヌクレオチドとを含むdsRNAであって、より長いオリゴヌクレオチドが、より短いオリゴヌクレオチドに完全に相補的な21ヌクレオチドの配列を含むdsRNAは、本発明の目的のために、やはり「完全に相補的」と呼ばれ得る。
【0313】
本明細書で使用される「相補的」配列はまた、ハイブリダイズするそれらの能力に関する上記の要件が満たされる限り、非ワトソン−クリック塩基対および/または非天然ヌクレオチドや修飾ヌクレオチドから形成された塩基対を含んでもよく、またはこれらの塩基対から完全に形成されてもよい。
【0314】
生理的条件下での、例えば、生物内で直面し得るような生理的に関連のある条件下でのハイブリダイゼーションを可能にする「相補的」、「完全に相補的」、「実質的に相補的」、および十分な相補性という用語は、これらを使用する文脈から理解されるように、dsRNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の間の、またはdsRNAのアンチセンス鎖と標的配列の間の塩基ミスマッチに関して本明細書で使用され得る。
【0315】
本明細書で使用される場合、メッセンジャーRNA(mRNA)「の少なくとも一部に相補的な、例えば、実質的に相補的な」ポリヌクレオチドとは、目的の(例えば、第VII因子をコードする)mRNAの連続した部分に相補的な、例えば、実質的に相補的なポリヌクレオチドを指す。例えば、ポリヌクレオチドは、その配列が第VII因子をコードするmRNAの中断されていない部分に実質的に相補的である場合、第VII因子のmRNAの少なくとも一部に相補的である。
【0316】
本明細書で使用される「二本鎖RNA」または「dsRNA」という用語は、逆平行で、かつ上で定義されたような、実質的に相補的な2つの核酸鎖を含む二重鎖構造を有するリボ核酸分子、またはリボ核酸分子の複合体を指す。二重鎖構造を形成する2つの鎖は、1つのより大きいRNA分子の異なる部分であってもよく、またはその2つの鎖は、別々のRNA分子であってもよい。2つの鎖が1つのより大きい分子の部分であり、したがって、二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれのもう一方の鎖の5’末端の間の中断されないヌクレオチド鎖によって接続されている場合、接続RNA鎖は「ヘアピンループ」と呼ばれる。2つの鎖が、二重鎖構造を形成する一方の鎖の3’末端とそれぞれのもう一方の鎖の5’末端の間の中断されないヌクレオチド鎖以外の手段で共有結合的に接続されている場合、この接続構造は、「リンカー」と呼ばれる。RNA鎖は、同数または異なる数のヌクレオチドを有し得る。塩基対の最大数は、dsRNAのうち最短の鎖のヌクレオチドの数である。二重鎖構造に加えて、dsRNAは、1つ以上のヌクレオチド突出を含み得る。本明細書で使用されるdsRNAは、「小さい阻害性RNA」、「siRNA」、「siRNA剤」、「iRNA剤」、または「RNAi剤」とも呼ばれる。
【0317】
本明細書で使用される場合、「ヌクレオチド突出」とは、dsRNAの一方の鎖の3’末端がもう一方の鎖の5’末端を越えて伸びるか、またはその逆である場合に、dsRNAの二重鎖構造から突出する不対ヌクレオチドを指す。「平滑」または「平滑末端」とは、dsRNAのその末端に不対ヌクレオチドがないこと、すなわち、ヌクレオチド突出がないことを意味する。「平滑末端の」dsRNAとは、その全長にわたって二本鎖である、すなわち、分子のどちらの末端にもヌクレオチド突出がないdsRNAのことである。
【0318】
「アンチセンス鎖」という用語は、標的配列に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。本明細書で使用される場合、「相補領域」という用語は、本明細書で定義されるように、配列(例えば、標的配列)に実質的に相補的な、アンチセンス鎖上の領域を指す。相補領域が標的配列に完全に相補的ではない場合、ミスマッチは末端領域において最も許容され、かつ存在する場合は、通常、末端領域に、例えば、5’末端および/または3’末端から6、5、4、3、または2ヌクレオチド以内にある。
【0319】
本明細書で使用される「センス鎖」という用語は、アンチセンス鎖のある領域に実質的に相補的な領域を含むdsRNAの鎖を指す。
【0320】
「同一性」という用語は、2つ以上のポリヌクレオチド配列を比較することによって決定される、このような配列間の関係性のことである。同一性はまた、一連のポリヌクレオチド配列間の一致によって決定される、このような配列間の配列関連性の程度を意味する。2つのポリヌクレオチド配列間の同一性を測定するためのいくつかの方法が存在するが、この用語は当業者に周知である(例えば、Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press(1987);およびSequence Analysis Primer,Gribskov.,M. and Devereux,J.,編,M.Stockton Press,New York(1991)を参照されたい)。本明細書で使用される「実質的に同一」とは、dsRNAのセンス鎖と標的遺伝子の対応する部分との間に非常に高い相同性(好ましくは100%の配列同一性)があることを意味する。しかしながら、90%超、または95%の配列同一性を有するdsRNAを本発明で使用してもよく、したがって、遺伝子突然変異、系統多形、または進化的分岐のために見込まれ得る配列のバリエーションも許容することができる。100%同一性が好ましいが、dsRNAは、RNAと標的遺伝子の間に単一または多数の塩基対のランダムなミスマッチを含有してもよい。
【0321】
当業者には理解されるように、「細胞に導入する」とは、dsRNAに関する場合、細胞内への取込みまたは吸収を促進することを意味する。dsRNAの吸収または取込みは、人の手を借りない拡散プロセスまたは能動的な細胞プロセスを通じて、または補助的な薬剤もしくは装置によってなされ得る。この用語の意味は、インビトロの細胞に限定されるものではない。dsRNAは、生きた生物の一部である「細胞に導入される」場合もある。このような例では、細胞への導入は、生物への送達を含むことになる。例えば、インビボ送達については、dsRNAを組織部位に注入することができるし、または全身投与することができる。インビトロでの細胞への導入には、エレクトロポレーションおよびリポフェクションなどの当技術分野で公知の方法が含まれる。
【0322】
「サイレンシングする」および「発現を阻害する」という用語は、これらの用語が第VII因子遺伝子を指すものである限り、本明細書では、第VII因子遺伝子の発現の少なくとも一部の抑制を指し、この抑制は、第VII因子遺伝子が転写される第1の細胞または細胞群であって、第VII因子遺伝子の発現が阻害されるように処理された細胞または細胞群から単離し得る、第VII因子遺伝子から転写されたmRNAの量が、第2の細胞または細胞群であって、第1の細胞または細胞群と実質的に同一であるが、第1の細胞または細胞群のように処理されていない細胞または細胞群(対照細胞)と比較して、低下していることによって明らかにされるようなものである。阻害の程度は、通常
【数1】
で表される。
【0323】
あるいは、阻害の程度は、第VII因子遺伝子の転写に関数関係があるパラメータ(例えば、細胞によって分泌される、第VII因子遺伝子にコードされたタンパク質の量、または特定の表現型(例えば、アポトーシス)を示す細胞の数)の減少という観点から与えられる場合もある。原則として、第VII因子遺伝子のサイレンシングは、構成的にかまたはゲノム工学によるかのいずれかで、標的を発現している任意の細胞において、任意の適当なアッセイによって測定し得る。しかしながら、所与のsiRNAが第VII因子遺伝子の発現を一定の度合いで阻害するかどうか、したがって、このsiRNAが本発明に包含されるかどうかを決定するために参照が必要な場合、以下の実施例に提供されるアッセイが、このような参照としての役割を果たすものとする。
【0324】
例えば、ある例では、第VII因子遺伝子の発現は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって少なくとも約20%、25%、35%、40%、または50%抑制される。一実施形態では、第VII因子遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって少なくとも約60%、70%、または80%抑制される。より好ましい実施形態では、第VII因子遺伝子は、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドの投与によって少なくとも約85%、90%、または95%抑制される。
【0325】
「治療する」、「治療」などの用語は、疾患または障害の緩和または軽減を指す。本発明との関連において、以下に本明細書で記載される他の状態(例えば、血栓疾患以外の第VII因子が仲介する状態)のいずれかに関する限り、「治療する」、「治療」などの用語は、このような状態に伴う少なくとも1つの症状を緩和もしくは軽減すること、またはこのような状態の進行を遅延もしくは逆行させることを意味する。
【0326】
「治療的に有意義な」組成物は、適切な用量で投与されたときに、疾患もしくは障害、または疾患もしくは障害の症状を緩和または軽減することができる。
【0327】
本明細書で使用される場合、「第VII因子が仲介する状態または疾患」という用語ならびに関連用語および関連語句は、不適切な(例えば、正常よりも大きい)第VII因子の活性を特徴とする状態または障害を指す。不適切な第VII因子の機能的活性は、通常は第VII因子を発現しない細胞での第VII因子の発現、または(例えば、ウイルス性出血熱の症状、もしくは血栓を引き起こす)第VII因子発現の増大の結果として生じ得る。第VII因子が仲介する状態または疾患は、不適切な第VII因子の機能的活性によって完全にまたは部分的に仲介され得る。しかしながら、第VII因子が仲介する状態または疾患は、第VII因子の調節によって、根本的な状態または障害にいくらかの影響を及ぼせるものである(例えば、第VII因子の阻害剤によって、少なくとも一部の患者では健康がいくらか改善される)。
【0328】
「出血熱」には、ウイルス感染によって引き起こされる病気の組合せが含まれる。典型的には、発熱と消化管症状に続いて、毛細血管の出血が起こる。
【0329】
「凝固障害」とは、対象の血液凝固機構の任意の欠陥のことである。
【0330】
本明細書で使用される場合、「血栓障害」とは、好ましくは望ましくないFVII発現に起因する任意の障害のことであり、望ましくない血液凝固を特徴とする任意の障害を含む。
【0331】
本明細書で使用される場合、「治療的有効量」および「予防的有効量」という語句は、ウイルス性出血熱、またはこのような障害の明らかな症状(例えば、出血、発熱、衰弱、筋肉痛、頭痛、炎症、もしくは循環性ショック)の治療、予防、もしくは管理において治療効果を提供する量を指す。治療的に有効な具体的な量は、普通の医師により容易に決定可能であり、当技術分野で公知の要因、例えば、血栓障害のタイプ、患者の病歴および年齢、疾患の段階、ならびに他の薬剤の投与などによって変わり得る。
【0332】
本明細書で使用される場合、「薬学的組成物」には、薬理学的有効量のdsRNAと薬学的に許容される担体とが含まれる。本明細書で使用される場合、「薬理学的有効量」、「治療的有効量」、または単に「有効量」とは、意図される薬理学的結果、治療的結果、または予防的結果をもたらすのに有効なRNAの量を指す。例えば、疾患または障害と関連する測定可能なパラメータが少なくとも25%低下したときに、所与の臨床治療が有効であると考えられる場合、その疾患または障害を治療するための薬物の治療的有効量は、そのパラメータの少なくとも25%低下をもたらすのに必要な量である。
【0333】
「薬学的に許容される担体」という用語は、治療剤を投与するための担体を指す。このような担体には、食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそれらの組合せが含まれるが、これらに限定されない。この用語は、細胞培養培地を特に除外する。経口投与される薬物について、薬学的に許容される担体には、薬学的に許容される賦形剤、例えば、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、甘味料、香料、着色剤、および防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。好適な不活性希釈剤には、炭酸ナトリウムおよび炭酸カルシウム、リン酸ナトリウムおよびリン酸カルシウム、ならびにラクトースが含まれ、一方、トウモロコシデンプンおよびアルギン酸は、好適な崩壊剤である。結合剤には、デンプンおよびゼラチンが含まれ得、一方、潤滑剤は、存在する場合には、一般に、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクである。所望の場合には、消化管内での吸収を遅らせるために、錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの材料でコーティングし得る。
【0334】
本明細書で使用される場合、「形質転換細胞」とは、dsRNA分子を発現することが可能なベクターが導入された細胞のことである。
【0335】
核酸−脂質粒子の特徴
特定の実施形態では、本発明は、脂質に封入された核酸粒子を生成するための方法および組成物に関し、この粒子中で、核酸は脂質層内に封入される。siRNAオリゴヌクレオチドを組み込んでいるこのような核酸−脂質粒子は:(1)薬物対脂質比;(2)封入効率;および(3)粒径をはじめとする種々の生物物理学的パラメータを用いて特徴付けられる。高い薬物対脂質比、高い封入効率、良好なヌクレアーゼ耐性および血清安定性、ならびに調節可能な粒径(通常、直径200nm未満)が望ましい。さらに、ヌクレアーゼ耐性を付与するための核酸の修飾が、治療薬のコストに加えられるが、多くの場合、限られた耐性しか提供しないので、核酸ポリマーの性質が重要である。特に記述されない限り、これらの基準は、本明細書中で以下の通りに計算される。
【0336】
核酸対脂質比は、規定容量の調製物中の核酸の量を、同じ容量中の脂質の量で割ったものである。これは、モル当たりのモル基準または重量当たりの重量基準またはモル当たりの重量基準に基づくものであり得る。最終的な投与の準備のできた製剤の場合、透析、クロマトグラフィーおよび/または酵素(例えば、ヌクレアーゼ)消化を用いて、可能な限り多くの外部核酸を除去した後に、核酸:脂質比を計算する。
【0337】
封入効率とは、出発混合物の薬物対脂質比を、最終的な投与に適格な製剤の薬物対脂質比で割ったものを指す。これは、相対的な効率の尺度である。絶対的な効率の尺度については、最終的に投与に適格な製剤になる出発混合物に添加された核酸の総量を計算することもできる。製剤化プロセスの間に失われる脂質の量も計算し得る。効率は、組成物の損失量と費用の尺度である
【0338】
サイズは、形成される粒子のサイズ(直径)を示す。サイズ分布は、Nicomp Model370サブマイクロメートル粒子寸法測定器において準弾性光散乱(QELS)を用いて測定され得る。200nm未満の粒子が、新生物や炎症部位などの新生血管形成された(漏出性)組織への分布のために好ましい。
【0339】
脂質粒子の調製方法
本発明の方法および組成物は、特定のカチオン性脂質を利用し、その脂質の合成、調製および特徴づけは、以下および添付の実施例において説明される。さらに、本発明は、治療剤(例えば、核酸)と会合した脂質粒子をはじめとする脂質粒子を調製する方法を提供する。本明細書で記載される方法において、脂質の混合物は、核酸の緩衝水溶液と組み合わされて、脂質粒子内に封入された核酸を含む中間体混合物を生成し、その場合、この封入された核酸は、約3重量%〜約25重量%、好ましくは5〜15重量%という核酸/脂質比で存在する。この中間体混合物は、脂質に封入された核酸粒子を得るために、場合によって大きさが揃えられてもよく、その場合、この脂質部分は、好ましくは30〜150nmの直径、より好ましくは約40〜90nmの直径を有する単層小胞である。次に、pHを上げて、脂質−核酸粒子上の表面電荷の少なくとも一部を中和し、それにより、少なくとも部分的に表面が中和された、脂質に封入された核酸組成物が提供される。
【0340】
上記のように、これらのカチオン性脂質のいくつかは、アミノ基のpK
a未満のpHにおいて帯電しており、pK
aより高いpHにおいて実質的に中性である、アミノ脂質である。これらのカチオン性脂質は、滴定可能なカチオン性脂質と呼ばれ、2工程プロセスを用いて本発明の製剤において使用することができる。第1に、核酸の存在下において、滴定可能なカチオン性脂質と他の小胞成分を用いて、低pHにおいて脂質小胞を形成することができる。この方法で、小胞が核酸を封入し、捕捉する。第2に、媒体のpHを、存在する滴定可能なカチオン性脂質のpK
aより高いレベルに、すなわち、生理学的pHまたはそれよりも高く上昇させることによって、新しく形成された小胞の表面電荷を中和することができる。このプロセスの特に有利な態様は、表面に吸着された任意の核酸の容易な除去と、中性の表面を有する結果として生じる核酸送達ビヒクルの両方を含む。中性の表面を有するリポソームまたは脂質粒子は、循環からの速やかなクリアランスを回避し、かつカチオン性リポソーム調製物と関連する特定の毒性を回避すると予想される。核酸−脂質粒子の組成物におけるこのような滴定可能なカチオン性脂質のこれらの使用に関するさらなる詳細は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,287,591号および米国特許第6,858,225号に提供されている。
【0341】
この方法で形成された小胞は、高含有量の核酸を含む均一な小胞サイズの製剤を提供することにさらに留意する。さらに、これらの小胞は、約30〜約150nm、より好ましくは約30〜約90nmのサイズ範囲を有する。
【0342】
任意の特定の理論に束縛されるつもりはないが、核酸封入の非常に高い効率は、低pHにおける静電相互作用の結果であると考えられる。酸性pH(例えば、pH4.0)において、小胞表面は帯電しており、静電相互作用を介して核酸の一部に結合する。外部の酸性緩衝液が、より中性の緩衝液(例えば、pH7.5)に交換されると、脂質粒子またはリポソームの表面は中和され、任意の外部の核酸を除去することが可能になる。製剤化プロセスに関するより詳細な情報は、様々な刊行物(例えば、米国特許第6,287,591号および米国特許第6,858,225号)に提供されている。
【0343】
上記のことを考慮して、本発明は、脂質/核酸製剤を調製する方法を提供する。本明細書で記載される方法において、脂質の混合物は、核酸の緩衝水溶液と組み合わされて、脂質粒子内に封入された核酸を含む中間体混合物を生成し、例えば、その場合、この封入された核酸は、約10重量%〜約20重量%という核酸/脂質比で存在する。中間体混合物は、脂質に封入された核酸粒子を得るために、場合によって、大きさを揃えてもよく、その場合、この脂質部分は、好ましくは30〜150nm、より好ましくは約40〜90nmの直径を有する単層小胞である。次に、pHを上げて、脂質−核酸粒子上の表面電荷の少なくとも一部を中和し、それにより、少なくとも部分的に表面が中和された脂質で封入された核酸組成物を提供する。
【0344】
特定の実施形態では、脂質の混合物は、少なくとも2つの脂質成分、すなわち、脂質が、pKaよりも低いpHにおいてカチオン性であり、pKaより高いpHにおいて中性であるようなpKaを有する脂質から選択される本発明の第1アミノ脂質成分と、脂質−核酸粒子形成中の粒子凝集を防止する脂質の中から選択される第2脂質成分とを含む。特定の実施形態では、アミノ脂質は、本発明の新規のカチオン性脂質である。
【0345】
本発明の核酸−脂質粒子を調製する際、脂質の混合物は、通常、有機溶媒中の脂質の溶液である。次に、この脂質の混合物を乾燥させて、薄膜を形成させることができるか、または凍結乾燥させて、粉末を形成させ、その後、水性緩衝液で水和して、リポソームを形成させることができる。あるいは、好ましい方法において、脂質混合物をエタノールなどの水混和性アルコール中に可溶化し、このエタノール性溶液を水性緩衝液に添加して、自発的にリポソームを形成させる。ほとんどの実施形態では、アルコールを市販されている形態で使用する。例えば、エタノールを、無水エタノール(100%)として、または95%エタノール(残りの部分は水である)として使用することができる。この方法は、米国特許第5,976,567号でより詳細に記載されている。
【0346】
例示的な一実施形態では、脂質の混合物は、アルコール溶媒中のカチオン性脂質、(カチオン性脂質以外の)中性脂質、ステロール(例えば、コレステロール)およびPEG修飾脂質(例えば、PEG−DMGまたはPEG−cDMA)の混合物である。好ましい実施形態では、脂質混合物は、アルコール、より好ましくはエタノール中のカチオン性脂質、中性脂質、コレステロールおよびPEG修飾脂質から本質的になる。さらに好ましい実施形態では、第1の溶液は、カチオン性脂質約20〜70%:中性脂質5〜45%:コレステロール20〜55%:PEG修飾脂質0.5〜15%というモル比の上記脂質混合物からなる。またさらに好ましい実施形態では、第1の溶液は、より好ましくはカチオン性脂質約20〜60%:DSPC 5〜25%:Chol 25〜55%:PEG−DMGまたはPEG−DMA 0.5〜15%というモル比の表1から選択される脂質、DSPC、CholおよびPEG−DMGもしくはPEG−cDMAから本質的になる。特定の実施形態では、モル脂質比は、約50/10/38.5/1.5(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMG、PEG−DSGもしくはPEG−DPG)、57.2/7.1/34.3/1.4(mol%カチオン性脂質/DPPC/Chol/PEG−cDMA)、40/15/40/5(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMG)、50/10/35/4.5/0.5(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DSGもしくはGalNAc3−PEG−DSG)、50/10/35/5(カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMG)、40/10/40/10(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGもしくはPEG−cDMA)、35/15/40/10(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGもしくはPEG−cDMA)または52/13/30/5(mol%カチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGもしくはPEG−cDMA)である。別の群の好ましい実施形態では、これらの組成物中の中性脂質をPOPC、DPPC、DOPEまたはSMと置き換える。本発明によって、脂質混合物を、核酸を含み得る緩衝水溶液と組み合わせる。この緩衝水溶液は、通常、緩衝液が脂質混合物中のプロトン化可能な脂質のpK
a未満のpHを有する溶液である。好適な緩衝液の例としては、クエン酸、リン酸、酢酸およびMESが挙げられる。特に好ましい緩衝液はクエン酸緩衝液である。好ましい緩衝液は、封入される核酸の化学成分に応じて1〜1000mMのアニオンの範囲であり、緩衝液濃度の最適化は、高い充填レベルを達成するために重要であり得る(例えば、米国特許第6,287,591号および米国特許第6,858,225号を参照されたい)。あるいは、塩化物、硫酸塩などでpH5〜6に酸性化された純水が有用であり得る。この場合、5%グルコース、または粒子が、エタノールを除去するため、pHを上げるために透析されるか、もしくは通常の食塩水などの薬学的に許容される担体と混合されたときに、粒子膜を超えて浸透ポテンシャルを釣り合わせる別の非イオン性溶質を添加することが好適である場合がある。緩衝液中の核酸の量は、変動し得るが、通常、約0.01mg/mL〜約200mg/mL、より好ましくは約0.5mg/mL〜約50mg/mLである。
【0347】
脂質の混合物と治療用核酸の緩衝水溶液とを組み合わせて中間体混合物を得る。中間体混合物は、通常、封入された核酸を有する脂質粒子の混合物である。さらに、中間体混合物は、負に帯電した核酸のイオン引力および脂質粒子表面上の正に帯電した脂質(アミノ脂質またはプロトン化可能な第1脂質成分を構成している他の脂質は、その脂質上のプロトン化可能な基のpK
a未満のpHを有する緩衝液中で正に帯電している)のために、脂質粒子(リポソームまたは脂質小胞)の表面に付着したいくらかの核酸も含み得る。一群の好ましい実施形態では、脂質の混合物は、脂質のアルコール溶液であり、その溶液の各々の容量は、組み合わせたときに、得られるアルコール含有量が約20容量%〜約45容量%になるように調整される。混合物を組み合わせる方法は、多くの場合、生成される製剤の規模に応じて、種々のプロセスのいずれかを含むことができる。例えば、総容量が約10〜20mL以下であるとき、溶液を試験管内で組み合わせて、ボルテックスミキサーを用いて一緒に撹拌することができる。大規模プロセスを好適な生産規模のガラス製品中で実施することができる。
【0348】
場合により、脂質混合物と治療剤(核酸)の緩衝水溶液とを組み合わせることによって生成される、脂質に封入された治療剤(例えば、核酸)の複合体は、所望のサイズの範囲および比較的狭い分布の脂質粒径を達成するために、大きさを揃えることができる。好ましくは、本明細書で提供される組成物は、約70〜約200nm、より好ましくは約90〜約130nmの平均直径の大きさに揃えられる。所望のサイズにリポソームの大きさを揃えるために、いくつかの技術が利用可能である。大きさを揃える1つの方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,737,323号に記載されている。バスまたはプローブ超音波処理によってリポソーム懸濁液を超音波処理することにより、サイズが約0.05マイクロメートル未満の小型の単層小胞(SUV)まで段階的にサイズが縮小される。均質化は、大きなリポソームをより小さなリポソームに断片化する剪断エネルギーに依存する別の方法である。通常の均質化手順では、選択されたリポソームサイズ(通常、約0.1〜0.5マイクロメートル)が観察されるまで、多層小胞を標準的なエマルジョンホモジナイザーに通して再循環させる。両方の方法において、粒径分布は、従来のレーザービーム粒径測定によってモニタリングすることができる。本明細書中の特定の方法の場合、均一な小胞サイズを得るために、押出しを用いることができる。
【0349】
小孔ポリカーボネート膜または非対称セラミック膜を介するリポソーム組成物の押出しによって、比較的明確に規定されたサイズ分布がもたらされる。通常、所望のリポソーム複合体のサイズ分布が達成されるまで、懸濁液を膜に通して1回以上循環させる。リポソームを連続的により小孔の膜に通して押し出し、リポソームのサイズを徐々に小さくすることを達成し得る。いくつかの例では、形成される脂質−核酸組成物を、サイズを揃えることなく使用してもよい。
【0350】
特定の実施形態では、本発明の方法は、脂質−核酸組成物の脂質部分上の表面電荷の少なくとも一部を中和する工程をさらに含む。表面電荷を少なくとも部分的に中和することにより、封入されていない核酸が脂質粒子表面から解放され、従来の技術を用いて組成物から除去され得る。好ましくは、封入されていない核酸や表面に吸着した核酸は、緩衝溶液を交換することにより、得られる組成物から除去される。例えば、クエン酸緩衝液(pH約4.0、組成物を形成するために使用される)をHEPES緩衝食塩水(HBS pH約7.5)溶液で置換することにより、リポソーム表面の中和と、表面からの核酸の放出とがもたらされる。次に、放出された核酸を、標準的な方法を用いるクロマトグラフィーによって除去した後、使用される脂質のpK
aよりも高いpHを有する緩衝液に切り換えることができる。
【0351】
場合により、脂質小胞(すなわち、脂質粒子)を水性緩衝液中での水和によって形成し、核酸を添加する前に、上記の方法のいずれかを用いて大きさを揃えることができる。上記のように、水性緩衝液は、アミノ脂質のpK
aよりも低いpHであるべきである。次に、核酸の溶液を、これらの大きさが揃えられ、予め形成された小胞に添加することができる。このような「予め形成された」小胞内への核酸の封入を可能するために、混合物は、エタノールなどのアルコールを含むべきである。エタノールの場合、それは、約20%(w/w)〜約45%(w/w)の濃度で存在するべきである。さらに、脂質小胞の組成および核酸の性質に応じて、水性緩衝液−エタノール混合物中の予め形成された小胞と核酸の混合物を約25℃〜約50℃の温度に温める必要があることがある。脂質小胞中の核酸の所望のレベルを達成するための封入プロセスの最適化には、エタノール濃度や温度などの変数の操作が必要であることが当業者に明白であろう。核酸の封入のための好適な条件の例を実施例に提供する。一旦核酸が予め形成された小胞内に封入されたら、外部のpHを上げて、少なくとも部分的に表面電荷を中和することができる。次に、封入されていない核酸や表面に吸着した核酸を上記のように除去することができる。
【0352】
使用方法
本発明の脂質粒子は、インビトロまたはインビボで治療剤を細胞に送達するために使用され得る。特定の実施形態では、治療剤は、本発明の核酸−脂質粒子を用いて細胞に送達される核酸である。本発明の脂質粒子および関連する薬学的組成物を使用する様々な方法の以下の説明は、核酸−脂質粒子に関する説明によって例証されるが、これらの方法および組成物が、そのような治療の恩恵を受ける任意の疾患または障害を治療するための任意の治療剤を送達するために容易に適応され得ることが理解される。
【0353】
特定の実施形態では、本発明は、核酸を細胞に導入するための方法を提供する。細胞に導入するための好ましい核酸は、siRNA、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、プラスミド、アンチセンスおよびリボザイムである。これらの方法は、細胞内送達が生じるのに十分な時間にわたって、本発明の粒子または組成物を細胞と接触させることによって行われ得る。
【0354】
本発明の組成物をほとんど全ての細胞型、例えば、限定するものではないが、HeLa、HCT116、A375、MCF7、B16F10、Hep3b、HUH7、HepG2、Skov3、U87、およびPC3細胞株をはじめとする腫瘍細胞株に吸着させることができる。核酸−脂質粒子は、一旦吸着すると、細胞の一部によってエンドサイトーシスによって取り込まれるか、脂質を細胞膜と交換するか、または細胞と融合することができる。この複合体の核酸部分の移入または取込みは、これらの経路のうちのいずれか1つを介して起こることができる。本発明の範囲に関して限定することを意図するものではないが、エンドサイトーシスによって細胞に取り込まれる粒子の場合、この粒子は、次に、エンドソーム膜と相互作用し、おそらく非二重層の相の形成によってエンドソーム膜の不安定化をもたらし、封入された核酸が細胞質に導入されると考えられる。同様に、粒子と細胞の原形質膜との直接的な融合の場合、融合が起こるとき、リポソーム膜は細胞膜に統合され、リポソームの内容物が細胞内の液体と組み合わされる。インビトロで行われるとき、細胞と脂質−核酸組成物との接触は、生物学的に適合性の媒体中で起こる。組成物の濃度は、特定の用途に応じて広く変動し得るが、通常、約1μmol〜約10mmolである。特定の実施形態では、脂質−核酸組成物による細胞の処置は、一般に、生理学的温度(約37℃)で、約1〜24時間、好ましくは、約2〜8時間行われる。インビトロでの適用では、核酸の送達は、起源が植物であるか動物であるか、脊椎動物あるか無脊椎動物であるか、およびどの組織またはタイプであるかに関係なく、培養で増殖している任意の細胞に対するものであることができる。好ましい実施形態では、細胞は、動物細胞、より好ましくは哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞である。
【0355】
一群の実施形態では、脂質−核酸粒子懸濁液を、約10
3〜約10
5細胞/mL、より好ましくは約2×10
4細胞/mLの細胞密度を有する60〜80%コンフルエントでプレーティングされた細胞に添加する。細胞に添加される懸濁液の濃度は、好ましくは約0.01〜20μg/mL、より好ましくは約1μg/mLである。
【0356】
通常の適用は、周知の手順を用いて、siRNAの細胞内送達をもたらし、特定の細胞標的をノックダウンまたはサイレンシングすることを含む。あるいは、適用は、治療的に有用なポリペプチドをコードするDNAまたはmRNA配列の送達を含む。この方法で、欠損しているかまたは存在しない遺伝子産物を供給することによって、遺伝性疾患に対する治療が提供される(すなわち、デュシェンヌ型ジストロフィーの場合は、Kunkel et al.,Brit.Med.Bull.45(3):630−643(1989)を参照されたく、嚢胞性線維症の場合は、Goodfellow,Nature 341:102−103(1989)を参照されたい)。本発明の組成物に対する他の用途は、細胞内へのアンチセンスオリゴヌクレオチドの導入を含む(Bennett et al.,Mol.Pharm.41:1023−1033(1992)を参照されたい)。
【0357】
あるいは、本発明の組成物は、当業者に公知の方法を用いて、インビボで核酸を細胞に送達するために使用することもできる。DNAまたはmRNA配列を送達するための本発明の適用に関して、参照により本明細書に組み込まれる、Zhu,et al.,Science 261:209−211(1993)には、DOTMA−DOPE複合体を用いたサイトメガロウイルス(CMV)−クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)発現プラスミドの静脈内送達が記載されている。参照により本明細書に組み込まれる、Hyde,et al.,Nature 362:250−256(1993)には、リポソームを用いた、マウスの気道の上皮および肺の中の肺胞への嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子の送達が記載されている。参照により本明細書に組み込まれる、Brigham,et al.,Am.J.Med.Sci.298:278−281(1989)には、細胞内の酵素であるクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする機能性原核生物遺伝子によるマウスの肺のインビボトランスフェクションが記載されている。したがって、本発明の組成物は、感染症の治療で使用することができる。
【0358】
それゆえ、別の態様では、本発明の製剤を用いて、限定するものではないが、FVII、Eg5、PCSK9、TPX2、apoB、SAA、TTR、RSV、PDGFβ遺伝子、Erb−B遺伝子、Src遺伝子、CRK遺伝子、GRB2遺伝子、RAS遺伝子、MEKK遺伝子、JNK遺伝子、RAF遺伝子、Erk1/2遺伝子、PCNA(p21)遺伝子、MYB遺伝子、JUN遺伝子、FOS遺伝子、BCL−2遺伝子、サイクリンD遺伝子、VEGF遺伝子、EGFR遺伝子、サイクリンA遺伝子、サイクリンE遺伝子、WNT−1遺伝子、β−カテニン遺伝子、c−MET遺伝子、PKC遺伝子、NFKB遺伝子、STAT3遺伝子、サバイビン遺伝子、Her2/Neu遺伝子、トポイソメラーゼI遺伝子、トポイソメラーゼIIα遺伝子、p73遺伝子、p21(WAF1/CIP1)遺伝子、p27(KIP1)遺伝子、PPM1D遺伝子、RAS遺伝子、カベオリンI遺伝子、MIB I遺伝子、MTAI遺伝子、M68遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、p53腫瘍抑制遺伝子、p53ファミリーメンバーDN−p63、pRb腫瘍抑制遺伝子、APC1腫瘍抑制遺伝子、BRCA1腫瘍抑制遺伝子、PTEN腫瘍抑制遺伝子、mLL融合遺伝子、BCR/ABL融合遺伝子、TEL/AML1融合遺伝子、EWS/FLI1融合遺伝子、TLS/FUS1融合遺伝子、PAX3/FKHR融合遺伝子、AML1/ETO融合遺伝子、αv−インテグリン遺伝子、Flt−1受容体遺伝子、チューブリン遺伝子、ヒトパピローマウイルス遺伝子、ヒトパピローマウイルス複製に必要とされる遺伝子、ヒト免疫不全ウイルス遺伝子、ヒト免疫不全ウイルス複製に必要とされる遺伝子、A型肝炎ウイルス遺伝子、A型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、B型肝炎ウイルス遺伝子、B型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、C型肝炎ウイルス遺伝子、C型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、D型肝炎ウイルス遺伝子、D型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、E型肝炎ウイルス遺伝子、E型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、F型肝炎ウイルス遺伝子、F型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、G型肝炎ウイルス遺伝子、G型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、H型肝炎ウイルス遺伝子、H型肝炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、呼吸器合胞体ウイルス遺伝子、呼吸器合胞体ウイルス複製に必要とされる遺伝子、単純ヘルペスウイルス遺伝子、単純ヘルペスウイルス複製に必要とされる遺伝子、ヘルペスサイトメガロウイルス遺伝子、ヘルペス・サイトメガロウイルス複製に必要とされる遺伝子、ヘルペス・エプスタイン・バーウイルス遺伝子、ヘルペス・エプスタイン・バーウイルス複製に必要とされる遺伝子、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス遺伝子、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス複製に必要とされる遺伝子、JCウイルス遺伝子、JCウイルス複製に必要とされるヒト遺伝子、ミクソウイルス遺伝子、ミクソウイルス遺伝子複製に必要とされる遺伝子、ライノウイルス遺伝子、ライノウイルス複製に必要とされる遺伝子、コロナウイルス遺伝子、コロナウイルス複製に必要とされる遺伝子、西ナイルウイルス遺伝子、西ナイルウイルス複製に必要とされる遺伝子、セントルイス脳炎遺伝子、セントルイス脳炎複製に必要とされる遺伝子、ダニ媒介性脳炎ウイルス遺伝子、ダニ媒介性脳炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、マリーバレー脳炎ウイルス遺伝子、マリーバレー脳炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、デングウイルス遺伝子、デングウイルス遺伝子複製に必要とされる遺伝子、サルウイルス40遺伝子、サルウイルス40複製に必要とされる遺伝子、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス遺伝子、ヒトT細胞リンパ向性ウイルス複製に必要とされる遺伝子、モロニーマウス白血病ウイルス遺伝子、モロニーマウス白血病ウイルス複製に必要とされる遺伝子、脳心筋炎ウイルス遺伝子、脳心筋炎ウイルス複製に必要とされる遺伝子、麻疹ウイルス遺伝子、麻疹ウイルス複製に必要とされる遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルス遺伝子、水痘帯状疱疹ウイルス複製に必要とされる遺伝子、アデノウイルス遺伝子、アデノウイルス複製に必要とされる遺伝子、黄熱病ウイルス遺伝子、黄熱病ウイルス複製に必要とされる遺伝子、ポリオウイルス遺伝子、ポリオウイルス複製に必要とされる遺伝子、ポックスウイルス遺伝子、ポックスウイルス複製に必要とされる遺伝子、マラリア原虫遺伝子、マラリア原虫遺伝子複製に必要とされる遺伝子、ミコバクテリウム・ウルケランス(Mycobacterium ulcerans)遺伝子、ミコバクテリウム・ウルケランス複製に必要とされる遺伝子、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)遺伝子、結核菌複製に必要とされる遺伝子、ハンセン菌(Mycobacterium leprae)遺伝子、ハンセン菌複製に必要とされる遺伝子、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)遺伝子、黄色ブドウ球菌複製に必要とされる遺伝子、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)遺伝子、肺炎連鎖球菌複製に必要とされる遺伝子、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)遺伝子、化膿連鎖球菌複製に必要とされる遺伝子、クラミジア肺炎菌(Chlamydia pneumoniae)遺伝子、クラミジア肺炎菌複製に必要とされる遺伝子、マイコプラズマ肺炎菌(Mycoplasma pneumoniae)遺伝子、マイコプラズマ肺炎菌複製に必要とされる遺伝子、インテグリン遺伝子、セレクチン遺伝子、補体系遺伝子、ケモカイン遺伝子、ケモカイン受容体遺伝子、GCSF遺伝子、Gro1遺伝子、Gro2遺伝子、Gro3遺伝子、PF4遺伝子、MIG遺伝子、プロ血小板塩基性タンパク質遺伝子、MIP−1I遺伝子、MIP−1J遺伝子、RANTES遺伝子、MCP−1遺伝子、MCP−2遺伝子、MCP−3遺伝子、CMBKR1遺伝子、CMBKR2遺伝子、CMBKR3遺伝子、CMBKR5v、AIF−I遺伝子、1−309遺伝子、イオンチャネルの構成要素に対する遺伝子、神経伝達物質受容体に対する遺伝子、神経伝達物質リガンドに対する遺伝子、アミロイドファミリー遺伝子、プレセニリン遺伝子、HD遺伝子、DRPLA遺伝子、SCA1遺伝子、SCA2遺伝子、MJD1遺伝子、CACNL1A4遺伝子、SCA7遺伝子、SCA8遺伝子、LOH細胞に見られるアレル遺伝子、または多型遺伝子の1つのアレル遺伝子などの標的遺伝子をサイレンシングまたは調節することができる。
【0359】
インビボ投与の場合、薬学的組成物は、好ましくは、非経口的に、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下または筋肉内に投与される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、ボーラス注射によって静脈内または腹腔内に投与される。1つの例として、参照により本明細書に組み込まれる、Stadlerらの米国特許第5,286,634号を参照のこと。細胞内核酸送達は、Straubringer,et al.,METHODS IN ENZYMOLOGY,Academic Press,New York.101:512−527(1983);Mannino,et al.,Biotechniques 6:682−690(1988);Nicolau,et al.,Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.6:239−271(1989)、およびBehr,Ace.Chem.Res.26:274−278(1993)にも論じられている。脂質ベースの治療薬を投与するまた他の方法は、例えば、Rahmanら、米国特許第3,993,754号;Sears,米国特許第4,145,410号;Papahadjopoulosら、米国特許第4,235,871号;Schneider,米国特許第4,224,179号;Lenkら、米国特許第4,522,803号;およびFountainら、米国特許第4,588,578号に記載されている。
【0360】
他の方法では、薬学的調製物は、調製物を組織に直接適用することによって標的組織と接触させ得る。適用は、局所的な「開放系」または「閉鎖系」手順によって行ない得る。「局所的」とは、環境(例えば、皮膚、中咽頭、外耳道など)に露出される組織への薬学的調製物の直接的な適用のことを意味する。「開放系」手順は、患者の皮膚を切開することと、その下にある、薬学的調製物が適用される組織を直接可視化することとを含む手順である。これは、一般に、外科的手順(例えば、肺に到達する開胸術、腹部の内臓に到達する開腹術、または標的組織に対する他の直接的な外科的アプローチ)によって達成される。「閉鎖系」手順は、内部の標的組織を直接可視化しないが、皮膚の小さい創傷から器具を挿入することによって到達する、侵襲的な手順である。例えば、調製物は、洗浄針によって腹膜に投与され得る。同様に、脊髄麻酔または脊髄のメトリザマイドイメージングのために通常行われるような、腰椎穿刺中の注入後に患者を適切な位置にすることによって、薬学的調製物が髄膜または脊髄に投与され得る。あるいは、調製物は、内視鏡デバイスを介して投与され得る。
【0361】
脂質−核酸組成物は、肺に吸入されるエアロゾルとして(Brigham,et al.,Am.J.Sci.298(4):278−281(1989)を参照のこと)または疾患部位における直接的な注射によって(Culver,Human Gene Therapy,MaryAnn Liebert,Inc.,Publishers,New York.pp.70−71(1994))も投与することもできる。
【0362】
本発明の方法は、種々の宿主において実施し得る。好ましい宿主としては、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジなどの哺乳動物種が挙げられる。
【0363】
本発明の脂質−治療剤粒子に対する投薬量は、治療剤と脂質の比と、患者の年齢、体重および状態に基づく投与医師の見解とによって決まる。
【0364】
一実施形態では、本発明は、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を調節する方法を提供する。これらの方法は、一般に、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を調節することができる核酸と会合している本発明の脂質粒子と細胞を接触させることを含む。本明細書で使用される場合、「調節する」という用語、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を変化させることを指す。様々な実施形態では、調節するとは、増加させることもしくは増強することを意味することができるし、または減少させることもしくは低下させることを意味することができる。標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現のレベルを測定する方法は、当該技術分野において公知であり、利用可能であり、これらの方法としては、例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を利用する方法や免疫組織化学的手法が挙げられる。特定の実施形態では、標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現のレベルは、適当な対照値と比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%または50%超、増加しているか、または低下している。
【0365】
例えば、ポリペプチドの発現の増加が望ましい場合、核酸は、所望のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む発現ベクターであり得る。他方、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現の低下が望ましい場合、核酸は、標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズし、それにより標的ポリヌクレオチドまたは標的ポリペプチドの発現を妨げるポリヌクレオチド配列を含む、例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはマイクロRNAであり得る。あるいは、核酸は、このようなアンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNAまたはマイクロRNAを発現するプラスミドであり得る。
【0366】
特定の一実施形態では、本発明は、細胞によるポリペプチドの発現を調節する方法であって、式Iのカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、PEGもしくはPEG修飾脂質からなるかもしくはこれらから本質的になる脂質粒子を、例えば、約20〜65%の式Iのカチオン性脂質、3〜25%の中性脂質、15〜55%のステロール、および0.5〜15%のPEGまたはPEG修飾脂質というモル比で、細胞に提供することを含み、ここで、この脂質粒子は、ポリペプチドの発現を調節することができる核酸と会合している、方法を提供する。特定の実施形態では、モル脂質比は、約60/7.5/31/1.5、57.5/7.5/31.5/3.5、57.2/7.1/34.3/1.4、52/13/30/5、50/10/38.5/1.5、50/10/35/5、40/10/40/10、40/15/40/5、または35/15/40/10(mol% 式Iのカチオン性脂質/DSPCまたはDPPC/Chol/PEG−DMGまたはPEG−cDMA)である。いくつかの実施形態では、脂質粒子は、本明細書に記載のターゲッティング脂質などのターゲッティング部分も含む(例えば、脂質粒子は、式Iのカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、PEGまたはPEG修飾脂質およびターゲッティング部分からなる)。別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質をDPPC、POPC、DOPEまたはSMと置き換える。別の群の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質をPEG−DSG、PEG−DMGまたはPEG−DPGと置き換える。
【0367】
特定の実施形態では、治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができるプラスミドから選択され、その場合、このsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNAは、ポリペプチドの発現を低下させるような、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合するポリヌクレオチドまたはその相補物を含む。
【0368】
他の実施形態では、核酸は、ポリペプチドまたはその機能的な変異体もしくは断片の発現を増加させるような、ポリペプチドまたはその機能的な変異体もしくは断片をコードするプラスミドである。
【0369】
関連する実施形態では、本発明は、培養されている細胞のトランスフェクションに有用な試薬を提供する。例えば、本明細書に記載の脂質製剤を用いて、核酸を培養細胞(例えば、付着細胞、懸濁細胞など)に送達することができる。
【0370】
関連する実施形態では、本発明は、対象におけるポリペプチドの過剰発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に本発明の薬学的組成物を提供することを含み、ここで、この治療剤は、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、およびsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができるプラスミドから選択され、かつこのsiRNA、マイクロRNAまたはアンチセンスRNAは、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに特異的に結合するポリヌクレオチドまたはその相補物を含む、方法を提供する。
【0371】
一実施形態では、薬学的組成物は、式Iのカチオン性脂質、DSPC、CholおよびPEG−DMG、PEG−C−DOMGまたはPEG−cDMAからなるかまたはこれらから本質的になる脂質粒子を、例えば、約20〜65%の式Iのカチオン性脂質、3〜25%の中性脂質、15〜55%のステロール、および0.5〜15%のPEGまたはPEG修飾脂質(PEG−DMG、PEG−C−DOMGもしくはPEG−cDMA)というモル比で含み、ここで、この脂質粒子は、治療用核酸と会合している。特定の実施形態では、モル脂質比は、約60/7.5/31/1.5、57.5/7.5/31.5/3.5、57.2/7.1/34.3/1.4、52/13/30/5、50/10/38.5/1.5、50/10/35/5、40/10/40/10、35/15/40/10または40/15/40/5(mol% 式Iのカチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGまたはPEG−cDMA)である。いくつかの実施形態では、脂質粒子は、本明細書に記載のターゲッティング脂質も含む(例えば、脂質粒子は式Iのカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、PEGまたはPEG修飾脂質およびターゲッティング部分(例えば、GalNAc3−PEG−DSG)から本質的になる)。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質がPEG部分を含み、かつ既存のリポソーム製剤に添加される場合、PEG修飾脂質(すなわち、PEG修飾脂質(例えば、PEG−DMG)、およびPEG含有ターゲッティング脂質)の総量を一定のmolパーセンテージ(例えば、0.3%、1.5mol%、または3.5mol%)に保つように、PEG修飾脂質の量を低下させる。別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質を、DPPC、POPC、DOPEまたはSMと置き換える。別の群の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質をPEG−DSGまたはPEG−DPGと置き換える。別の関連する実施形態では、本発明は、対象におけるポリペプチドの過小発現を特徴とする疾患または障害を治療する方法であって、対象に本発明の薬学的組成物を提供することを含み、ここで、この治療剤は、ポリペプチドまたはその機能的な変異体もしくは断片をコードするプラスミドである、方法を含む。
【0372】
本発明は、対象における免疫応答を誘導する方法であって、対象に本発明の薬学的組成物を提供することを含み、ここで、この治療剤は、免疫刺激性オリゴヌクレオチドである、方法をさらに提供する。特定の実施形態では、免疫応答は、例えば、約20〜65%の式Iのカチオン性脂質、3〜25%の中性脂質、15〜55%のステロール、および0.5〜15%のPEGまたはPEG修飾脂質(PEG−DMG、PEG−C−DOMGもしくはPEG−cDMA)というモル比の、式Iのカチオン性脂質、DSPC、CholおよびPEG−DMG、PEG−C−DOMGまたはPEG−cDMAからなるかまたはこれらから本質的になる液性免疫応答または粘膜免疫応答であり、ここで、この脂質粒子は、治療用核酸と会合している。特定の実施形態では、モル脂質比は、約60/7.5/31/1.5、57.5/7.5/31.5/3.5、57.2/7.1/34.3/1.4、52/13/30/5、50/10/38.5/1.5、50/10/35/5、40/10/40/10、35/15/40/10または40/15/40/5 (mol% 式Iのカチオン性脂質/DSPC/Chol/PEG−DMGまたはPEG−cDMA)である。いくつかの実施形態では、脂質粒子は、本明細書に記載のターゲッティング脂質も含む(例えば、脂質粒子は、式Iのカチオン性脂質、中性脂質、ステロール、PEGまたはPEG修飾脂質およびターゲッティング部分から本質的になる)。いくつかの実施形態では、ターゲッティング脂質がPEG部分を含み、かつ既存のリポソーム製剤に添加される場合、PEG修飾脂質(すなわち、PEG修飾脂質(例えば、PEG−DMG)、およびPEG含有ターゲッティング脂質)の総量を一定のmolパーセンテージ(例えば、0.3%、1.5mol%、または3.5mol%)に保つように、PEG修飾脂質の量を低下させる。別の群の実施形態では、これらの組成物中の中性脂質を、DPPC、POPC、DOPEまたはSMと置き換える。別の群の実施形態では、PEGまたはPEG修飾脂質をPEG−DSGまたはPEG−DPGと置き換える。さらなる実施形態では、薬学的組成物は、ワクチンまたは抗原と組み合わせて対象に提供される。したがって、本発明自体が、免疫刺激性オリゴヌクレオチドを含み、かつ免疫応答が望まれる抗原と会合している、本発明の脂質粒子を含むワクチンを提供する。特定の実施形態では、抗原は、腫瘍抗原であるか、または例えば、ウイルス、細菌もしくは寄生虫などの感染体と関連している。
【0373】
種々の腫瘍抗原、感染体抗原、および他の疾患に関連する抗原が、当該技術分野で周知であり、これらの例は、本明細書に引用される参考文献に記載されている。本発明における使用に好適な抗原の例としては、ポリペプチド抗原およびDNA抗原が挙げられるが、これらに限定されない。抗原の特定の例は、A型肝炎、B型肝炎、痘瘡、ポリオ、炭疽、インフルエンザ、チフス、破傷風、麻疹、ロタウイルス、ジフテリア、百日咳、結核および風疹の抗原である。一実施形態では、抗原は、B型肝炎組換え抗原である。別の態様では、抗原はA型肝炎組換え抗原である。別の態様では、抗原は腫瘍抗原である。このような腫瘍関連抗原の例は、MUC−1、EBV抗原およびバーキットリンパ腫に関連する抗原である。さらなる態様では、抗原は、チロシナーゼ関連タンパク質腫瘍抗原組換え抗原である。当業者は、本発明における使用に好適な他の抗原を知っているであろう。
【0374】
本発明における使用に好適な腫瘍関連抗原は、単一の腫瘍タイプを示し、いくつかのタイプの腫瘍間で共有され、および/または正常細胞と比較して腫瘍細胞においてもっぱら発現されるかもしくは過剰発現される可能性がある、突然変異した分子と突然変異していない分子の両方を含む。タンパク質および糖タンパク質に加えて、炭水化物、ガングリオシド、糖脂質およびムチンの発現の腫瘍特異的パターンも報告されている。本癌ワクチンにおいて使用するための例示的な腫瘍関連抗原としては、癌遺伝子、癌抑制遺伝子、および腫瘍細胞に特有の突然変異または再配列を有する他の遺伝子のタンパク質産物、再活性化された胚性遺伝子産物、癌胎児性抗原、組織特異的な(しかし、腫瘍特異的でない)分化抗原、増殖因子受容体、細胞表面炭水化物残基、外来性ウイルスタンパク質、ならびにいくつかの他の自己タンパク質が挙げられる。
【0375】
腫瘍関連抗原の特定の実施形態としては、例えば、突然変異した抗原(例えば、Ras p21癌原遺伝子、腫瘍抑制因子p53およびBCR−abl癌遺伝子のタンパク質産物ならびにCDK4、MUM1、カスパーゼ8およびβカテニン);過剰発現される抗原(例えば、ガレクチン4、ガレクチン9、炭酸脱水酵素、アルドラーゼA、PRAME、Her2/neu、ErbB−2およびKSA)、癌胎児性抗原(例えば、αフェトプロテイン(AFP)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG));自己抗原(例えば、癌胎児抗原(CEA)およびメラノサイト分化抗原(例えば、Mart1/MelanA、gp100、gp75、チロシナーゼ、TRP1およびTRP2));前立腺関連抗原(例えば、PSA、PAP、PSMA、PSM−P1およびPSM−P2);再活性化された胚性遺伝子産物(例えば、MAGE1、MAGE3、MAGE4、GAGE1、GAGE2、BAGE、RAGEおよび他の癌精巣抗原(例えば、NY−ESO1、SSX2およびSCP1));ムチン(例えば、Muc−1およびMuc−2);ガングリオシド(例えば、GM2、GD2およびGD3)、中性糖脂質および糖タンパク質(例えば、Lewis(y)およびグロボ−H);ならびに糖タンパク質(例えば、Tn、Thompson−Freidenreich抗原(TF)およびsTn)が挙げられる。全細胞および腫瘍細胞ライセートならびにその免疫原性部分、ならびにB細胞リンパ腫に対して使用されるBリンパ球のモノクローナル増殖時に発現される免疫グロブリンイディオタイプもまた、本明細書における腫瘍関連抗原として含められる。
【0376】
病原体としては、感染体、例えば、哺乳動物(より特には、ヒト)に感染するウイルスが挙げられるが、これに限定されない。感染性ウイルスの例としては:レトロウイルス科(Retroviridae)(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(例えば、HIV−1(HTLV−III、LAVまたはHTLV−III/LAVとも呼ばれる)またはHIV−III);および他の分離株(例えば、HIV−LP);ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えば、ポリオウイルス、A型肝炎ウイルス;エンテロウイルス、ヒトコクサッキーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば、胃腸炎を引き起こす株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えば、ウマ脳炎ウイルス、風疹ウイルス);フラビウイルス科(Flaviridae)(例えば、デング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);コロノウイルス科(Coronoviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviradae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス);ラブドウイルス科(Rhabdoviradae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えば、エボラウイルス);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス、耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);オルソミクスウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス);ブンガウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス、ブニアウイルス、フレボウイルスおよびナイロウイルス);アレナウイルス科(Arena viridae)(出血熱ウイルス);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス、オルビウイルスおよびロタウイルス);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス);パルボウイルス科(Parvovirida)(パルボウイルス);パポバウイルス科(Papovaviridae)(パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);アデノウイルス科(Adenoviridae)(ほとんどのアデノウイルス);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)の単純ヘルペスウイルス(HSV)1および2、水痘帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、ヘルペスウイルス;ポックスウイルス科(Poxviridae)(天然痘ウイルス、ワクシニアウイルス、ポックスウイルス);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えば、アフリカブタ熱ウイルス);ならびに未分類のウイルス(例えば、海綿状脳症の病原因子、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの欠損サテライトと考えられる)、非A型、非B型肝炎の病原体(クラス1=内部伝染性;クラス2=非経口伝染性(すなわち、C型肝炎);ノーウォークおよび関連ウイルスならびにアストロウイルス)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0377】
また、グラム陰性細菌およびグラム陽性細菌は、脊椎動物において抗原として働く。このようなグラム陽性細菌としては、パスツレラ(Pasteurella)種、ブドウ球菌(Staphylococci)種および連鎖球菌(Streptococcus)種が挙げられるが、これらに限定されない。グラム陰性細菌としては、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス(Pseudomonas)種およびサルモネラ(Salmonella)種が挙げられるが、これらに限定されない。感染性の細菌の特定の例としては:ヘリコバクターピロリ(Helicobacterpyloris)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borelia burgdorferi)、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、マイコバクテリア属の種(Mycobacteria sps)(例えば、結核菌(M.tuberculosis)、M.アウィウム(M.avium)、M.イントラセルラーレ(M.intracellulare)、M.カンサイイ(M.kansaii)、M.ゴルドナエ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコッカス・アガラクティエ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、ストレプトコッカス(ビリダンス群)、大便連鎖球菌(Streptococcusfaecalis)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、ストレプトコッカス(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター属の種(Campylobacter sp.)、腸球菌属の種(Enterococcus sp.)、インフルエンザ菌(Haemophilus infuenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム属の種(corynebacterium sp.)、豚丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringers)、破傷風菌(Clostridium tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトシダ(Pasturella multocida)、バクテロイデス属の種(Bacteroides sp.)、フゾバクテリウム・ヌクレアートゥム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバシルス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、梅毒トレポネーマ(Treponema pallidium)、トレポネーマ・ペルテヌエ(Treponema pertenue)、レプトスピラ(Leptospira)、リケッチア(Rickettsia)およびアクチノミセス・イスラエリイ(Actinomyces israelii)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0378】
病原体のさらなる例としては、哺乳動物(より特には、ヒト)に感染する感染性真菌が挙げられるが、これに限定されない。感染性真菌の例としては、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラスマ・カプスラートゥム(Histoplasma capsulatum)、コッキディオイデス・イムミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミケス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、クラミディア・トラコマティス(Chlamydia trachomatis)、カンディダ・アルビカンス(Candida albicans)が挙げられるが、これらに限定されない。感染性寄生虫の例としては、プラスモディウム(Plasmodium)、例えば、プラスモディウム・ファルキパルム(Plasmodium falciparum)、プラスモディウム・マラリアエ(Plasmodium malariae)、プラスモディウム・オウァレ(Plasmodium ovale)およびプラスモディウム・ウィウァクス(Plasmodium vivax)が挙げられる。他の感染性生物(すなわち、原生生物)としては、トキソプラスマ・ゴンディイ(Toxoplasma gondii)が挙げられる。
【0379】
薬学的組成物
一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の肝臓スクリーニングモデルで同定された核酸剤を含む薬学的組成物を提供する。組成物は、作用剤(例えば、dsRNA)と薬学的に許容される担体とを含む。薬学的組成物は、遺伝子の発現または活性と関連する疾患または障害を治療するのに有用である。このような薬学的組成物は、送達の様式に基づいて製剤化される。1つの例は、非経口送達を介する全身投与用に製剤化される組成物である。
【0380】
同定された薬剤を含む薬学的組成物を、標的遺伝子(例えば、第VII因子遺伝子)の発現を阻害するのに十分な投薬量で投与する。通常、dsRNA剤の好適な用量は、1日にレシピエントの体重1キログラム当たり0.01〜5.0ミリグラムの範囲、通常、1日に体重1キログラム当たり1マイクログラム〜1mgの範囲である。薬学的組成物を1日1回投与してもよく、またはdsRNAを1日を通して適切な間隔で2回、3回、もしくはよりより多くのサブ用量として、または徐放製剤による連続的な注入もしくは送達すら用いて投与してもよい。その場合、各サブ用量に含まれるdsRNAは、総1日投薬量に到達するために相応により少量でなければならない。投薬単位は、例えば、数日間にわたってdsRNAの持続的放出をもたらす従来の持続放出製剤を用いて、数日間かけて送達されるように調合することもできる。持続放出製剤は当該技術分野で周知であり、かつ本発明の薬剤とともに使用し得るような薬剤の膣送達に特に有用である。この実施形態では、投薬単位は、対応する複数の1日用量を含む。
【0381】
当業者であれば、限定するものではないが、対象の疾患もしくは障害の重症度、過去の治療、全般的な健康および/または年齢、ならびに他の存在する疾患をはじめとする、特定の因子が、対象を効果的に治療するのに必要とされる投薬量およびタイミングに影響を与え得ることを理解するであろう。さらに、治療的有効量の組成物による対象の治療は、1回の治療または一連の治療を含むことができる。本発明によって企図される個々のdsRNAについての有効投薬量やインビボ半減期を、従来の方法を用いて、または本明細書の別の場所に記載されているような、適当な動物モデルを用いたインビボ試験に基づいて、推定することができる。
【0382】
特定の実施形態では、本発明の脂質−核酸粒子を含む薬学的組成物は標準的な技術に従って調製され、かつこれは薬学的に許容される担体をさらに含む。通常、食塩水が薬学的に許容される担体として利用される。他の好適な担体としては、例えば、安定性を増強するために糖タンパク質(例えば、アルブミン、リポタンパク質、グロブリンなど)を含む、水、緩衝水、0.9%食塩水、0.3%グリシンなどが挙げられる。食塩水または他の塩含有担体を含む組成物では、担体が、以下の脂質粒子製剤に添加されることが好ましい。したがって、脂質−核酸組成物を生成した後、これらの組成物を薬学的に許容される担体(例えば、食塩水)中に希釈することができる。
【0383】
得られた薬学的調製物を従来的な周知の滅菌技術によって滅菌してもよい。その後、水性溶液を、無菌条件下で、使用のために包装するかまたは濾過し、凍結乾燥させ、凍結乾燥させた調製物を、投与の前に滅菌水性溶液と組み合わせる。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされる薬学的に許容される補助物質、例えば、pH調節剤およびpH緩衝剤、張性調節剤など(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウムなど)を含んでもよい。さらに、脂質懸濁液は、保存時のフリーラジカルおよび脂質過酸化による傷害に対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでもよい。親油性のフリーラジカルクエンチャー(例えば、α−トコフェロール)および水溶性の鉄特異的キレート剤(例えば、フェリオキサミン)が好適である。
【0384】
薬学的製剤中の脂質粒子または脂質−核酸粒子の濃度は、様々に(すなわち、約0.01重量%未満、通常は、約0.05〜5重量%または少なくとも約0.05〜5重量%から10〜30重量%までにも)異なる可能性があり、主に、選択される特定の投与様式に従う液量、粘性などによって選択される。例えば、治療に伴う流体負荷を下げるために、この濃度を増加させてもよい。これは、アテローム性動脈硬化症に関連する鬱血性心不全または重症高血圧を有する患者で特に望ましい可能性がある。あるいは、投与部位での炎症を緩和するために、刺激性の脂質から構成された複合体を低濃度に希釈してもよい。一群の実施形態では、核酸は、標識が付着しており、(相補的核酸の存在を示すことによって)診断に使用される。この例では、投与される複合体の量は、使用される特定の標識、診断されている病状、および臨床医の判断によって決定されるが、通常、(例えば、核酸剤の)約0.01〜約50mg/kg体重、好ましくは約0.1〜約5mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、投与される複合体は、体重1キログラム当たり約0.004〜約50mgの核酸剤(例えば、約0.006mg/kg〜約0.2mg/kg)を含む。
【0385】
上記のように、本発明の脂質−治療剤(例えば、核酸)粒子は、ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質、PEG−セラミド、もしくはガングリオシドG
M1修飾脂質、または凝集を防ぐかまたは制限するのに有効な他の脂質を含んでもよい。このような成分の添加は、単に複合体凝集を防ぐだけではない。それどころか、これは、循環寿命を増大させ、標的組織への脂質−核酸組成物の送達を増大させる手段も提供する可能性がある。
【0386】
本発明は、キット形態の脂質−治療剤組成物も提供する。キットは、通常、キットの様々な要素を入れるために区画化された容器から構成されている。キットは、好ましくは脱水または濃縮された形態の、本発明の粒子または薬学的組成物を、それらを再水和または希釈および投与するための指示書とともに含む。特定の実施形態では、粒子は活性剤を含むが、他の実施形態では、含まない。
【0387】
肝臓スクリーニングモデルによって同定された薬剤を含む薬学的組成物を、局所的処置が望ましいかまたは全身的処置が望ましいかによって、および治療されるべき面積によって、いくつかの方法で投与し得る。投与は、局所的、肺(例えば、ネブライザーによるものを含む、粉末またはエアロゾルの吸入または吹入);気管内、鼻腔内、表皮および経皮、経口的または非経口的であってもよい。投与はまた、局所送達を通じて、例えば、関節への直接的な関節内注射によって、消化管および腸への直接的な送達のための直腸投与によって、子宮頸部および膣への送達のための膣内投与によって、眼への送達のための硝子体内投与によって、特定の組織への優先的な局在化をもたらすように設計されてもよい。非経口投与としては、静脈内、動脈内、関節内、皮下、腹腔内または筋肉内への注射もしくは注入;または頭蓋内(例えば、髄腔内もしくは脳室内)投与が挙げられる。
【0388】
局所的投与のための薬学的組成物および製剤としては、経皮パッチ、軟膏、ローション、クリーム、ゲル、点滴剤、座薬、スプレー、液剤および粉末剤を挙げることができる。従来の薬学的担体、水性、粉末もしくは油性基剤、増粘剤などが必要であるかまたは望ましい場合がある。コーティングされたコンドーム、グローブなども有用であり得る。好ましい局所製剤としては、本発明のdsRNAが、局所的送達成分(例えば、脂質、リポソーム、脂肪酸、脂肪酸エステル、ステロイド、キレート化剤または界面活性剤)と混合されているものが挙げられる。好ましい脂質およびリポソームとしては、中性(例えば、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン)、陰性(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、すなわちDMPG)およびカチオン性(例えば、ジオレオイルテトラメチルアミノプロピルDOTAPおよびジオレオイルホスファチジルエタノールアミンDOTMA)が挙げられる。本発明のdsRNAはリポソーム内に封入され得るし、またはdsRNAは、リポソームへと(特に、カチオン性リポソームへと)複合体を形成し得る。あるいは、dsRNAを脂質へと(特に、カチオン性脂質へと)複合体化し得る。好ましい脂肪酸およびエステルとしては、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプラート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリンまたはC
1−10アルキルエステル(例えば、イソプロピルミリステートIPM)、モノグリセリド、ジグリセリドまたは薬学的に許容されるそれらの塩が挙げられるが、これらに限られない。局所製剤は1999年5月20日に出願された米国特許出願第09/315,298号に詳細に記載されており、この文献はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0389】
経口的投与のための組成物および製剤としては、粉末剤または顆粒剤、マイクロ粒子剤、ナノ粒子剤、水中もしくは非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、ゲルカプセル、サッシェ、錠剤またはミニ錠が挙げられる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤または結合剤が望ましい場合がある。好ましい経口製剤は、本発明のdsRNAが1つ以上の浸透増進剤界面活性剤およびキレート化剤と組み合わせて投与されるものである。好ましい界面活性剤として、脂肪酸および/またはそれらのエステルもしくは塩、胆汁酸および/またはそれらの塩が挙げられる。好ましい胆汁酸/塩としては、ケノデオキシコール酸(CDCA)およびウルソデオキシケノデオキシコール酸(UDCA)、コール酸、デヒドロコール酸、デオキシコール酸、グルコール酸、グリコール酸、グリコデオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデオキシコール酸、タウロ−24,25−ジヒドロ−フシジン酸ナトリウムおよびグリコジヒドロフシジン酸ナトリウムが挙げられる。好ましい脂肪酸としては、アラキドン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、ジカプラート、トリカプラート、モノオレイン、ジラウリン、グリセリル1−モノカプラート、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン、アシルカルニチン、アシルコリンまたはそれらのモノグリセリド、ジグリセリドもしくは薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム)が挙げられる。浸透増進剤の組合せ、例えば、胆汁酸/塩と組み合わされた脂肪酸/塩も好ましい。特に好ましい組合せは、ラウリン酸のナトリウム塩とカプリン酸とUDCAである。さらなる浸透増進剤としては、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−20−セチルエーテルが挙げられる。本発明のdsRNAを噴霧乾燥した粒子を含む顆粒形態として経口的に送達するか、またはそれを複合体化させてマイクロ粒子もしくはナノ粒子を形成させてもよい。dsRNA複合体化剤としては、ポリ−アミノ酸;ポリイミン;ポリアクリラート;ポリアルキルアクリラート、ポリオキシエタン、ポリアルキルシアノアクリラート;カチオン化ゼラチン、アルブミン、デンプン、アクリラート、ポリエチレングリコール(PEG)およびデンプン;ポリアルキルシアノアクリラート;DEAE誘導体化ポリイミン、ポルラン、セルロースおよびデンプンが含まれる。特に好ましい複合体化剤にはキトサン、N−トリメチルキトサン、ポリ−L−リジン、ポリヒスチジン、ポリオルニチン、ポリスペルミン、プロタミン、ポリビニルピリジン、ポリチオジエチルアミノ−メチルエチレンP(TDAE)、ポリアミノスチレン(例えば、p−アミノ)、ポリ(メチルシアノアクリラート)、ポリ(エチルシアノアクリラート)、ポリ(ブチルシアノアクリレトー)、ポリ(イソブチルシアノアクリラート)、ポリ(イソヘキシルシアノアクリラート)、DEAE−メタクリラート、DEAE−ヘキシルアクリラート、DEAE−アクリルアミド、DEAE−アルブミンおよびDEAE−デキストラン、ポリメチルアクリラート、ポリヘキシルアクリラート、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸(PLGA)、アルギナートおよびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。dsRNA用の経口製剤およびそれらの調製は、米国特許出願第08/886,829号(1997年7月1日出願)、同第09/108,673号(1998年7月1日出願)、同第09/256,515号(1999年2月23日出願)、同第09/082,624号(1998年5月21日出願)および同第09/315,298号(1999年5月20日出願)に詳細に記載されており、これらの文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0390】
非経口、髄腔内または脳室内投与のための組成物および製剤は、緩衝剤、希釈剤および他の好適な添加剤(例えば、限定するものではないが、浸透増進剤、担体化合物および他の薬学的に許容される担体もしくは賦形剤)も含有し得る滅菌水溶液を含み得る。
【0391】
薬学的組成物としては、溶液、エマルジョョンおよびリポソーム含有製剤が挙げられるが、これらに限定されない。これらの組成物を、事前形成された液体、自己乳化性固体および自己乳化性半固体が含まれるが、これらに限定されない種々の成分から生成させ得る。
【0392】
好都合に単位投薬形態で提示し得る本発明の薬学的製剤は、薬学的産業において周知の従来の方法に従って調製され得る。このような技術は、活性成分を薬学的担体または賦形剤と関連させる工程を含む。一般に、製剤は、活性成分を液体担体もしくは微粉砕された固体担体または両方と均一かつ緊密に関連させ、次に、必要ならば、生成物を成形することにより調製される。
【0393】
本発明の組成物を製剤化し、多くの可能な投薬形態、例えば、限定するものではないが、錠剤、カプセル、ゲルカプセル、液体シロップ、軟質ゲル、座薬、および浣腸のいずれかにしてもよい。また、本発明の組成物を、水性、非水性または混合媒体中の懸濁剤として製剤化してもよい。水性懸濁剤は、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランを含む懸濁剤の粘度を高める物質をさらに含んでいてもよい。懸濁剤はまた、安定剤を含んでいてもよい。
【0394】
本発明の一実施形態では、薬学的組成物を泡剤として製剤化し、使用してもよい。薬学的泡剤としては、限定するものではないが、エマルジョン、マイクロエマルジョン、クリーム、ゼリーおよびリポソームなどの製剤が挙げられる。これらの製剤は性質において基本的に類似しているが、成分および最終的生成物の稠度の点で異なる。このような組成物および製剤の調製は、一般に、製薬および医薬の技術分野における専門家に知られており、かつ本発明の組成物の製剤に適用され得る。
【0395】
本発明は、その適用が以下の説明に示される成分の構築および配置の詳細には制限されない。本発明は、他の実施形態であり得、様々な方法で実施または実行され得る。また、本明細書で用いられる表現および技術用語は、説明目的のものであって、制限とみなされるべきではない。「含む(including)」、「含む(comprising)」、または「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」、および本明細書におけるそれらのバリエーションの使用は、以後列挙される項目およびその等価物ならびにさらなる項目を包含することが意図される。
【実施例】
【0396】
以下の実施例は、特許請求された発明を例証するために提供されるのであって、これを限定するために提供されるのではない。
【0397】
本明細書に示す実施例で使用される場合、「ApoE」という用語は、別途特定されない限り、ApoE3を指す。
【0398】
実施例1:LucおよびFVIIのターゲッティングのためのsiRNA二重鎖
下記の表8は、LucおよびFVIIのターゲッティングのための例示的な配列を示す。
【表7】
【0399】
L8は、
【化11】
であり、小文字は2’−O−メチル修飾ヌクレオチドであり、
*はホスホロチオアート骨格結合であり、fNは2’−フルオロヌクレオチドであり、dNは2’−デオキシヌクレオチドであることに留意されたい。
【0400】
実施例2:カチオン性脂質由来のリポソームを用いたFVIIのインビボ評価
インビボでの齧歯類第VII因子およびApoBのサイレンシング実験。C57BL/6マウス(Charles River Labs,MA)とSprague−Dawleyラット(Charles River Labs,MA)に、尾静脈注射によって、0.01mL/gの容量で、食塩水または所望の製剤中のsiRNAのいずれかを投与した。投与後の様々な時点で、動物にイソフルオラン吸入で麻酔をかけ、血液を後眼窩採血によって血清分離チューブ中に回収した。第VII因子タンパク質の血清レベルを、製造元のプロトコルに従って発色アッセイ(Coaset Factor VII,DiaPharma Group,OHまたはBiophen FVII,Aniara Corporation,OH)を用いて試料中で決定した。食塩水処理した動物から回収した血清を用いて標準曲線を作成した。投与後の様々な時点で、肝臓mRNAレベルを評価する実験において、動物を屠殺し、肝臓を摘出し、液体窒素中で瞬間凍結した。凍結した肝臓組織をすり潰して粉末にした。組織ライセートを調製し、第VII因子およびapoBの肝臓mRNAレベルを、分岐DNAアッセイ(QuantiGene Assay,Panomics,CA)を用いて決定した。
【0401】
実施例3.FVIIターゲッティングのためのリポソーム製剤
凝固カスケードの著名なタンパク質である第VII因子(FVII)は、肝臓(肝細胞)で合成され、血漿中に分泌される。血漿中のFVIIレベルは、簡単なプレートに基づく比色アッセイで決定することができる。したがって、FVIIは、siRNA媒介性の肝細胞由来タンパク質の下方調節の決定、ならびに核酸脂質粒子およびsiRNAの血漿濃度および組織分布のモニタリングのための好都合なモデルである。
【0402】
マウスにおける第VII因子ノックダウン
C57BL/6マウスで静脈内(ボーラス)注射した24時間後、FVII活性をFVII siRNA処理動物で評価した。マイクロプレートスケールで、製造元の指示に従って、血清または組織中のタンパク質レベルを決定するための市販キットを用いてFVIIを測定した。FVIIの低下を未処理の対照マウスに対して決定し、結果を残存FVII%として表した。4つの用量レベル(2、5、12.5、25mg/kg FVII siRNA)を各々の新規リポソーム組成物の初期スクリーンで用い、初期スクリーンで得られた結果を基にして、この用量を後の研究で拡大した。
【0403】
認容性の決定
体重変化、臨床観察、臨床化学検査および、場合によって、血液検査をモニタリングすることにより、各々の新規リポソームsiRNA製剤の認容性を評価した。処理前および処理24時間後に、動物の体重を記録した。データを体重変化%として記録した。体重測定に加えて、肝機能マーカーを含む、完全な臨床化学検査パネルを、FVII解析用に採取された血清のアリコートを用いて、注射24時間後に、各用量レベル(2、5、12.5および25mg/kg siRNA)で得た。解析のために、試料をCentral Laboratory for Veterinarians(Langley,BC)に送付した。場合によっては、血液検査解析用の全血の採取が行えるように、治療群に追加のマウスを含めた。
【0404】
治療指数の決定
治療指数(TI)は、毒性と活性の測定値を比較して生成される任意のパラメータである。これらの研究のために、TIを
TI=MTD(最大忍容用量)/ED
50(50%のFVIIノックダウンが得られる用量)
として計算する。
【0405】
これらの研究についてのMTDは、体重の>7%減少および齧歯類の肝臓の損傷に対する良好な特異性を有する臨床的化学マーカーであるアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の>200倍の増加を引き起こす最低の用量として設定された。ED
50は、FVII用量−活性曲線から求められた。
【0406】
実施例1に示したようなAD1661 siRNAを、以下のモル比、すなわち、60:7.5:31:1.5、50:10:38.5:1.5および40:20:38.5:1.5のDLin−M−C3−DMA:DSPC:Chol:PEG−DMG(これらは、実施例2に記載したような方法で調製および試験された)を含む製剤中で投与した。これらのインビボ実験の結果は、試験した製剤のサイレンシング能力を示す
図1に示されている
【0407】
実施例4.1,2−ジ−O−アルキル−sn3−カルボモイルグリセリド(PEG−DMG)の調製
【化12】
IVaの調製
1,2−ジ−O−テトラデシル−sn−グリセリドIa(30g、61.80mmol)およびN,N’−スクシンイミジルカルボナート(DSC、23.76g、1.5当量)をジクロロメタン(DCM、500mL)中に入れ、氷水混合物上で撹拌した。この撹拌溶液中にトリエチルアミン(TEA、25.30mL、3当量)を添加し、その後、反応混合物を周囲温度で一晩撹拌させておいた。反応の進行をTLCでモニタリングした。反応混合物をDCM(400mL)で希釈し、有機層を水(2×500mL)、NaHCO
3(500mL)水溶液で洗浄した後、標準的な後処理をした。得られた残渣を高真空下にて周囲温度で一晩乾燥させた。乾燥後、このようにして得られた粗カルボナートIIaをジクロロメタン(500mL)に溶解させ、氷浴上で撹拌した。この撹拌溶液に、mPEG
2000−NH
2(III、103.00g、47.20mmol、NOF Corporation,Japanから購入)および無水ピリジン(Py、80mL、過剰)をアルゴン下で添加した。次に、反応混合物を周囲温度で一晩撹拌させておいた。溶媒および揮発性物質を真空下で除去し、残渣をDCM(200mL)に溶解させ、酢酸エチル中に詰めたシリカゲルカラムに充填した。カラムを最初に酢酸エチル、その後ジクロロメタン中の5〜10%メタノール勾配で溶出させると、所望のPEG−脂質IVaが白色の固体(105.30g、83%)として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.20−5.12(m,1H),4.18−4.01(m,2H),3.80−3.70(m,2H),3.70−3.20(m,−O−CH
2−CH
2−O−,PEG−CH
2),2.10−2.01(m,2H),1.70−1.60(m,2H),1.56−1.45(m,4H),1.31−1.15(m,48H),0.84(t,J=6.5Hz,6H)。MS範囲実測値:2660−2836。
【0408】
IVbの調製
1,2−ジ−O−ヘキサデシル−sn−グリセリドIb(1.00g、1.848mmol)およびDSC(0.710g、1.5当量)を一緒にジクロロメタン(20mL)中に入れ、氷水混合物中で0℃に冷却した。トリエチルアミン(1.00mL、3当量)を添加し、反応液を一晩撹拌した。反応後、TLCにかけ、DCMで希釈し、水(2回)、NaHCO
3溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、得られたIIbの残渣を高真空下で一晩維持した。この化合物をさらに精製することなく次の反応に直接用いた。MPEG
2000−NH
2 III(1.50g、0.687mmol、NOF Corporation,Japanから購入)およびIIb(0.702g、1.5当量)をアルゴン下でジクロロメタン(20mL)に溶解させた。反応液を0℃に冷却した。ピリジン(1mL、過剰)を添加し、反応液を一晩撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。溶媒および揮発性物質を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー(最初に酢酸エチル、次いで勾配溶出としての5〜10%MeOH/DCM)で精製すると、所要の化合物IVbが白色の固体(1.46g、76%)として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.17(t,J=5.5Hz,1H),4.13(dd,J=4.00Hz,11.00Hz,1H),4.05(dd,J=5.00Hz,11.00Hz,1H),3.82−3.75(m,2H),3.70−3.20(m,−O−CH
2−CH
2−O−,PEG−CH
2),2.05−1.90(m,2H),1.80−1.70(m,2H),1.61−1.45(m,6H),1.35−1.17(m,56H),0.85(t,J=6.5Hz,6H)。MS範囲実測値:2716−2892。
【0409】
IVcの調製
1,2−ジ−O−オクタデシル−sn−グリセリドIc(4.00g、6.70mmol)およびDSC(2.58g、1.5当量)を一緒にジクロロメタン(60mL)中に入れ、氷水混合物中で0℃に冷却した。トリエチルアミン(2.75mL、3当量)を添加し、反応液を一晩撹拌した。反応後、TLCにかけ、DCMで希釈し、水(2回)、NaHCO
3溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、残渣を高真空下で一晩維持した。この化合物をさらに精製することなく次の反応に直接用いた。MPEG
2000NH
2 III(1.50g、0.687mmol、NOF Corporation,Japanから購入)およびIIc(0.760g、1.5当量)をアルゴン下でジクロロメタン(20mL)に溶解させた。反応液を0℃に冷却した。ピリジン(1mL、過剰)を添加し、反応液を一晩撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。溶媒および揮発性物質を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー(酢酸エチル、次いで勾配溶出としての5〜10%MeOH/DCM)で精製すると、所望の化合物IVcが白色の固体(0.92g、48%)として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.22−5.15(m,1H),4.16(dd,J=4.00Hz,11.00Hz,1H),4.06(dd,J=5.00Hz,11.00Hz,1H),3.81−3.75(m,2H),3.70−3.20(m,−O−CH
2−CH
2−O−,PEG−CH
2),1.80−1.70(m,2H),1.60−1.48(m,4H),1.31−1.15(m,64H),0.85(t,J=6.5Hz,6H)。MS範囲実測値:2774−2948。
【0410】
実施例5:DLin−M−C3−DMA(すなわち、(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル4−(ジメチルアミノ)ブタノアート)の調製
(6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−オール(0.53g)、4−N,N−ジメチルアミノ酪酸塩酸塩(0.51g)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(0.61g)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.53g)のジクロロメタン(5mL)溶液を室温で一晩撹拌した。この溶液を希塩酸、次いで希釈重炭酸ナトリウム水溶液で洗浄した。有機画分を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、溶媒をロータリーエバポレーター(ロトバップ)で除去した。残渣を、1〜5%メタノール/ジクロロメタン溶出勾配を用いて、シリカゲルカラム(20g)に通した。精製物を含む画分を組合せ、溶媒を除去すると、無色のオイル(0.54g)が得られた。
【0411】
本発明の化合物を、その全体が参照により本明細書に組み込まれる以下の論文に記載の手順に従って合成することができる。
1.Schlueter,Urs;Lu,Jun;Fraser−Reid,Bert.Synthetic Approaches To Heavily Lipidated Phosphoglyceroinositides.Organic Letters(2003),5(3),255−257.
2.King,J.F.;Allbutt,A.D.Can.J.Chem.1970,48,1754−1769
3.Mach,Mateusz;Schlueter,Urs;Mathew,Felix;Fraser−Reid,Bert;Hazen,Kevin C.Comparing n−pentenyl orthoesters and n−pentenyl glycosides as alternative glycosyl donors.Tetrahedron(2002),58(36),7345−7354.
【0412】
実施例6:ラットにおける様々なリポソーム組成物を有するMC3リポソームの効力
ラットにおけるMC3含有リポソーム製剤の用量応答を調べるために、以下のリポソーム製剤を本質的に実施例2に記載した通りに調製した。下記の表に示すように、含まれる成分を次の通りに示す:MC3−DSPC−コレステロール−PEG−C14。下記の表9に、試験した例示的な製剤を示す。
【表8】
【0413】
図2に示すように、50mol%のMC3を有するリポソーム製剤は、40mol%のMC3を有するリポソーム製剤のsiRNA濃度よりもわずかに低いsiRNA濃度で効力を有する用量応答曲線を示した。
【0414】
実施例7:MC3リポソームの効力はマウスにおいてApoE依存性を示す。
様々なリポソーム製剤の効力におけるApoEの役割をさらに調べるために、野生型マウスおよびApoEノックアウトマウスに、0.1、0.03、および0.01mg/kgのAD−1661 siRNA組成物を含むMC3リポソームを本質的に実施例2に記載した通りに投与した。ApoEを外から添加することで、マウスにおけるタンパク質の欠如を克服することができるかどうかを明らかにするために、リポソーム製剤の半分を組換えApoEタンパク質と事前混合した。下記の表10に、試験した例示的な製剤を示す。
【表9】
【0415】
図3は、MC3製剤化リポソームを投与したときの、ApoE欠損ノックアウトマウス(左の棒)ではなく、野生型(右の棒)におけるFVIIタンパク質レベルの用量依存的減衰を示し、細胞取込みおよび/または肝臓への送達におけるApoEの役割を示唆している。1661 siRNAとともに上記のように製剤化されたMC3リポソームを、0.1、0.03、および0.01mg/kgの濃度で単独でまたはApoEリポタンパク質と事前混合して投与した。しかしながら、はるかに高い用量(例えば、約1.0mg/kgまたはそれを超える)では、MC3製剤化製剤は、FVIIのmRNAおよびタンパク質のサイレンシングをもたらすことが分かった(図示せず)。
図3に示すように、試験したMC3製剤化リポソーム製剤は、組換えApoEと事前混合しない限り、ApoEノックアウトマウスにおいてFVIIのサイレンシングをもたらすことができない。したがって、MC3(MC3含有リポソーム)をApoEと事前混合することによって、ApoEノックアウトマウスにおいて活性をレスキューすることができる。
【0416】
実施例8:モルパーセンテージおよびホスホコリンのテールの長さが異なるMC3含有リポソーム製剤の効力
モルパーセンテージおよびホスホコリンのテールの長さの変化が様々なリポソーム製剤の効力に及ぼす効果を調べるために、DSPC、DMPCおよびDLPCを含む様々な製剤を0.01または0.03mg/kgでFVIIサイレンシングの効力について試験した。
【0417】
下記の表11に、試験した例示的な製剤を示す。
【表10】
【0418】
図4は、例えば、50モルパーセントと40モルパーセント、また、DMPC含有製剤については、50モルパーセントと40モルパーセントと30モルパーセントを比較した、MC3のモルパーセンテージの変化の効果を示している。
図4は、中性脂質の変化の効果も示し、これは、DSPC、DMPC、およびDLPCを含むMC3リポソーム製剤についての異なる結果を示している。
【0419】
実施例9:リポソーム製剤中へのGalNAc脂質の組込み
潜在的な代替送達機構を探索するために、N−アセチルガラクトサミン(GalNAc)コンジュゲート脂質を含むリポソーム製剤を用いてインビボ実験を行なった。GalNAcをターゲッティングリガンド候補として選んだが、それは、GalNAc受容体が肝臓で高度に発現されると考えられることが知られているからである。それゆえ、マウスおよびラットで研究を行ない、式IIIのGalNAc3−PEG−DSG脂質をさらに含むMC3含有リポソーム製剤の効力を本質的に実施例2に記載した通りに試験した。全ての実験において、PEGコンジュゲート脂質の総量を一定に保った(例えば、0.5%molのGalNAc3−PEGを添加する場合、対応するPEG−DSGの量を0.5%molだけ減らした)。実験では遺伝子型ごとの9つの群の各々について4匹の動物を用いた。
【0420】
下記の表12に、製剤をC57BL6マウスで試験した場合の、5%のPEG脂質濃度を有するMC3含有リポソームを含む方法についての実験詳細を示す。以下の相対モル量、すなわち、50/10/35/5のMC3/DSPC/Chol/PEG−DSGを含むを含むリポソーム。0.5%のGalNAc3−PEGを添加する場合、対応するPEG−DSGの量を4.5%に低下させる。
【表11】
【0421】
下記の表13に、製剤をC57BL6マウスで試験した場合の、10mol%濃度のPEG−DSG脂質を有するMC3含有リポソームを含む方法についての実験詳細を示す。リポソームは、以下の相対モル量、すなわち、50/10/30/10のMC3/DSPC/Chol/PEG−DSGを含んでいた。0.5%のGalNAc3−PEGを添加する場合、対応するPEG−DSGの量を9.5%に低下させる。
【表12】
【0422】
図5は、PEG遮蔽の増大によって、C57BL6マウスにおける非GalNAc媒介性サイレンシングが減少する場合の効果を示している。これは、C57BL6マウスにおいて5%と10%の両方のPEG濃度で証明されている。C18−PEG(すなわち、PEG−DSG)を10mol%で含むことにより、サイレンシングが効果的に阻害され、このサイレンシングは、0.5mol%のPEG脂質を等モル量のGalNAc−脂質(すなわち、式IIIのGalNAc3−PEG−DSG)と置き換えることによって打破することができる。それゆえ、(例えば、5mol%から10mol%への)PEG遮蔽の増大は、非GalNAc媒介性サイレンシングだけでなく、全体的な効力も減少させるようである。
【0423】
ラットにおいても同様の実験を行ない、その場合、5モル%と10モル%の両方でPEG脂質(PEG−DSGも)をリポソームに含めた。下記の表14に、製剤をラットで試験した場合の、5%のPEG脂質濃度を有するMC3含有リポソームを含む方法についての実験詳細を示す。以下の相対モル量、すなわち、50/10/35/5のMC3/DSPC/Chol/PEG−DSGを含むリポソーム。0.5%のGalNAc3−PEGを添加する場合、対応するPEG−DSGの量を4.5%に低下させる。
【表13】
【0424】
下記の表15に、製剤をラットで試験した場合の、10%のPEG脂質濃度を有するMC3含有リポソームを含む方法についての実験詳細を示す。以下の相対モル量、すなわち、50/10/30/10のMC3/DSPC/Chol/PEG−DSGを含むリポソーム。0.5%のGalNAc3−PEGを添加する場合、対応するPEG−DSGの量を9.5%に低下させる。
【表14】
【0425】
図6は、示された投薬量でラットに投与された5mol%および10mol%のC18 PEGを含有するMC3製剤の結果を示している。10mol%のPEG−DSGを含有する製剤は、ラットにおいて、試験した濃度(0.625〜5mg/kg)でサイレンシングがほとんどないことを示している。しかしながら、0.5mol%の式IIIのGalNAc3−PEG−DSGを含ませると(すなわち、0.5mol%のC18−PEGを取り替えると)、FVIIのノックダウンが回復する。それゆえ、マウスと比較したとき、ラットでは、5mol%濃度のPEGと10mol%濃度のPEGとの差に示されるように、より高度に遮蔽された製剤によって、一般により良好に効力が保持される。
【0426】
実施例10:0.5mol%のGalNAc3−PEG−DSGを含むおよび含まないMC3含有リポソーム製剤中の成分のmol%の変化の評価
GalNAc3−PEG−DSGを含むおよび含まない、様々なモルパーセンテージの成分を有するMC3含有リポソームの効力を明らかにするために、以下のリポソーム製剤を、実質的に上記の実施例2に記載した通りに調製し、C57BL6マウスで試験した。表に記載された成分は、次のような順で示されている:MC3/DSPC/Chol/PEG−DSG。0.5%のGalNAc3−PEGを添加する場合、下記の表16に示すように、対応するPEG−DSGの量を4.5%に低下させる。
【表15】
【0427】
図7に示すように、GalNAcをリポソーム製剤に添加すると、各製剤において、すなわち、MC3が50、40、および30mol%で存在する場合に、FVIIのサイレンシングが改善される。
【0428】
実施例11:WTマウスおよびASGPR KOマウスにおけるMC3含有リポソームおよびGalNAc含有リポソームの効力
様々なリポソーム製剤の効力におけるASGPRの役割を調べるために、野生型マウスおよびASGPRノックアウトマウスに、実施例1に記載したような3、1、および0.3mg/kgのAD−1661 siRNA組成物を含有するMC3リポソームを投与した。表に記載された成分は、次のような順で示されている:MC3/DSPC/Chol/PEG−DSG。0.5%のGalNAc3−PEGを添加する場合、下記の表17に示すように、対応するPEG−DSGの量を9.5%に低下させる。
【表16】
【0429】
図8は、これらの実験の結果を示し、これにより、GalNAcターゲッティング部分の予想される受容体であるアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)を欠損するマウス系統に投与されたときに、GalNAc3−PEG−DSG脂質を含めることによる、C18 PEGを含有する製剤におけるFVIIノックダウンの回復が無効になることが証明される。
【0430】
実施例12:オリゴヌクレオチド合成
合成
オリゴヌクレオチドは全て、AKTAオリゴパイロット合成装置で合成する。市販の多孔質ガラス(controlled pore glass)固体支持体(dT−CPG、500A、Prime Synthesis)および標準的な保護基を有するRNAホスホルアミダイトである、5’−O−ジメトキシトリチルN6−ベンゾイル−2’−t−ブチルジメチルシリル−アデノシン−3’−O−N,N’−ジイソプロピル−2−シアノエチルホスホルアミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−N4−アセチル−2’−t−ブチルジメチルシリル−シチジン−3’−O−N,N’−ジイソプロピル−2−シアノエチルホスホルアミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−N2−イソブトリル−2’−t−ブチルジメチルシリル−グアノシン−3’−O−N,N’−ジイソプロピル−2−シアノエチルホスホルアミダイト、および5’−O−ジメトキシトリチル−2’−t−ブチルジメチルシリル−ウリジン−3’−O−N,N’−ジイソプロピル−2−シアノエチルホスホルアミダイト(Pierce Nucleic Acids Technologies)をオリゴヌクレオチド合成に用いた。2’−Fホスホルアミダイト、5’−O−ジメトキシトリチル−N4−アセチル−2’−フルロ−シチジン−3’−O−N,N’−ジイソプロピル−2−シアノエチル−ホスホルアミダイトおよび5’−O−ジメトキシトリチル−2’−フルロ−ウリジン−3’−O−N,N’−ジイソプロピル−2−シアノエチル−ホスホルアミダイトは(Promega)から購入する。
【0431】
ホスホルアミダイトは全て、10%THF/ANC(v/v)中0.2M濃度で用いるグアノシンを除いて、アセトニトリル(CH
3CN)中0.2Mの濃度で用いる。16分のカップリング/リサイクリング時間を用いる。活性化剤は、5−エチルチオテトラゾール(0.75M、American International Chemicals)である。PO酸化の場合は、ヨウ素/水/ピリジンを用い、PS酸化の場合は、2,6−ルチジン/ACN(1:1 v/v)中のPADS(2%)を用いる。
【0432】
対応するリガンドを含有する固体支持体を用いて、3’−リガンドコンジュゲート鎖を合成する。例えば、配列中のコレステロール単位の導入は、ヒドロキシプロリノール−コレステロールホスホルアミダイトから行なわれる。コレステロールを6−アミノヘキサノアート結合を介してtrans−4−ヒドロキシプロリノールに連結させると、ヒドロキシプロリノール−コレステロール部分が得られる。5’末端Cy−3およびCy−5.5(フルオロフォア)標識siRNAは、Biosearch Technologiesから購入される対応するQuasar−570(Cy−3)ホスホルアミダイトから合成される。5’末端または内部位置へのリガンドのコンジュゲーションは、適切に保護されたリガンド−ホスホルアミダイトビルディングブロックを用いて達成される。5−(エチルチオ)−1H−テトラゾール活性化剤の存在下で0.1Mホスホルアミダイトの無水CH
3CN溶液のカップリングを15分間延長して固体支持体結合オリゴヌクレオチドを得る。ヌクレオチド間ホスファイトのホスファートへの酸化は、(1)で報告したような標準的なヨウ素−水を用いることによるか、または酸化待ち時間10分でコンジュゲートオリゴヌクレオチドをtert−ブチルヒドロペルオキシド/アセトニトリル/水(10:87:3)で処理することによって実施される。ホスホロチオアートは、DDTT(AM Chemicalsから購入)、PADSおよび/またはボーケージ(Beaucage)試薬などの硫黄転移試薬を用いて、ホスファイトをホスホロチオアートに酸化することによって導入される。コレステロールホスホルアミダイトは自家合成し、ジクロロメタン中0.1Mの濃度で用いる。コレステロールホスホルアミダイトのカップリング時間は16分である。
【0433】
脱保護I(ヌクレオ塩基脱保護)
合成が終了した後、支持体を100mLガラスボトル(VWR)に移す。オリゴヌクレオチドを支持体から切り離し、塩基とリン酸基を80mLのエタノールアンモニア混合物[アンモニア:エタノール(3:1)]を用いて55℃で6.5時間同時に脱保護する。ボトルを氷上で短時間冷却した後、エタノールアンモニア混合物を濾過して、新しい250−mLボトルに入れる。CPGを2×40mL部のエタノール/水(1:1 v/v)で洗浄する。次に、混合物の容量をロータリーエバポレーター(ロトバップ)で約30mLにまで減らす。次に、混合物をドライアイス上で凍結させ、スピードバックにて真空下で乾燥させる。
【0434】
脱保護II(2’−TBDMSの除去)
乾燥残渣を、トリエチルアミンとトリエチルアミントリヒドロフルオリド(TEA・3HF)またはピリジン−HFとDMSO(3:4:6)26mLに再懸濁し、60℃で90分間加熱して、2’位のtert−ブチルジメチルシリル(TBDMS)基を除去する。次に、反応液を50mLの20mM酢酸ナトリウムでクエンチし、そのpHを6.5に調整する。オリゴヌクレオチドを精製するまでフリーザーで保存する。
【0435】
分析
オリゴヌクレオチドは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析された後に精製され、緩衝液およびカラムの選択は、配列および/またはコンジュゲートされたリガンドの性質によって決まる。
【0436】
HPLC精製
リガンドがコンジュゲートされたオリゴヌクレオチドを逆相分取HPLCで精製する。コンジュゲートしていないオリゴヌクレオチドを自前で詰めたTSKゲルカラム上での陰イオン交換HPLCで精製する。緩衝液は、10%CH
3CN(緩衝液A)中の20mMリン酸ナトリウム(pH8.5)および10%CH
3CN、1M NaBr(緩衝液B)中の20mMリン酸ナトリウム(pH8.5)である。全長オリゴヌクレオチドを含む画分をプールし、脱塩し、凍結乾燥させる。OD約0.15の脱塩オリゴヌクレオチドを150μLになるまで水に希釈した後、CGEおよびLC/MS分析用の特別なバイアルにピペッティングで入れる。次に、化合物をLC−ESMSおよびCGEで分析する。
【0437】
siRNA調製
siRNAを調製するために、等モル量のセンス鎖とアンチセンス鎖を、1×PBS中、95℃で5分間加熱し、ゆっくりと室温まで冷却させる。二重鎖の完全性をHPLC分析で確認する。
【表17】
【0438】
小文字は2’OMe修飾であり、Nfは2’F修飾ヌクレオ塩基であり、dTはデオキシチミジンであり、sはホスホチオアートである。
【0439】
実施例13:mPEG2000−1,2−ジ−O−アルキル−sn3−カルボモイルグリセリドの合成
PEG−脂質(例えば、mPEG2000−1,2−ジ−O−アルキル−sn3−カルボモイルグリセリド)を以下の手順を用いて合成した。
【化13】
【0440】
化合物4a(PEG−DMG)の調製:1,2−ジ−O−テトラデシル−sn−グリセリド1a(30g、61.80mmol)およびN,N’−スクシンイミジルカルボナート(DSC、23.76g、1.5当量)をジクロロメタン(DCM、500mL)中に入れ、氷水混合物上で撹拌した。撹拌溶液にトリエチルアミン(25.30mL、3当量)を添加し、その後、反応混合物を周囲温度で一晩撹拌させておいた。反応の進行をTLCでモニタリングした。反応混合物をDCM(400mL)で希釈し、有機層を水(2×500mL)、NaHCO
3水溶液(500mL)で洗浄した後、後処理した。得られた残渣を高真空下にて周囲温度で一晩乾燥させた。乾燥後、このようにして得られた粗カルボナート2aをジクロロメタン(500mL)に溶解させ、氷浴上で撹拌した。この撹拌溶液に、mPEG
2000−NH
2(3、103.00g、47.20mmol、NOF Corporation,Japanから購入)および無水ピリジン(80mL、過剰)をアルゴン下で添加した。いくつかの実施形態では、このメトキシ−(PEG)x−アミンは、x=45〜49、好ましくは47〜49、およびより好ましくは49を有する。次に、この反応混合物を周囲温度で一晩撹拌させておいた。溶媒および揮発性物質を真空下で除去し、残渣をDCM(200mL)に溶解させ、酢酸エチル中に詰めたシリカゲルカラムに充填した。このカラムを最初に酢酸エチル、その後、ジクロロメタン中の5〜10%のメタノール勾配で溶出させると、所望のPEG−脂質4aが白色の固体(105.30g、83%)として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.20−5.12(m,1H),4.18−4.01(m,2H),3.80−3.70(m,2H),3.70−3.20(m,−O−CH
2−CH
2−O−,PEG−CH
2),2.10−2.01(m,2H),1.70−1.60(m,2H),1.56−1.45(m,4H),1.31−1.15(m,48H),0.84(t,J=6.5Hz,6H)。MS範囲実測値:2660−2836。
【0441】
4bの調製:1,2−ジ−O−ヘキサデシル−sn−グリセリド1b(1.00g、1.848mmol)およびDSC(0.710g、1.5当量)を一緒にジクロロメタン(20mL)中に入れ、氷水混合物中で0℃に冷却した。それにトリエチルアミン(1.00mL、3当量)を添加し、一晩撹拌した。反応後にTLCにかけ、DCMで希釈し、水(2回)、NaHCO
3溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で、および残渣2bを高真空下で一晩除去した。この化合物をさらに精製することなく次の反応に直接用いた。MPEG
2000−NH
2 3(1.50g、0.687mmol、NOF Corporation,Japanから購入)および前の工程2bからの化合物(0.702g、1.5当量)をアルゴン下でジクロロメタン(20mL)に溶解させた。反応液を0℃に冷却した。それにピリジン(1mL、過剰)を添加し、一晩撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。溶媒および揮発性物質を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー(最初に酢酸エチル、その後、勾配溶出としての5〜10%MeOH/DCM)で精製すると、所要の化合物4bが白色の固体(1.46g、76%)として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.17(t,J=5.5Hz,1H),4.13(dd,J=4.00Hz,11.00Hz,1H),4.05(dd,J=5.00Hz,11.00Hz,1H),3.82−3.75(m,2H),3.70−3.20(m,−O−CH
2−CH
2−O−,PEG−CH
2),2.05−1.90(m,2H),1.80−1.70(m,2H),1.61−1.45(m,6H),1.35−1.17(m,56H),0.85(t,J=6.5Hz,6H)。MS範囲実測値:2716−2892。
【0442】
4cの調製:1,2−ジ−O−オクタデシル−sn−グリセリド1c(4.00g、6.70mmol)およびDSC(2.58g、1.5当量)を一緒にジクロロメタン(60mL)中に入れ、氷水混合物中で0℃に冷却した。それにトリエチルアミン(2.75mL、3当量)を添加し、一晩撹拌した。反応後にTLCにかけ、DCMで希釈し、水(2回)、NaHCO
3溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒を減圧下で、および残渣を高真空下で一晩除去した。この化合物をさらに精製することなく次の反応に直接用いた。MPEG
2000−NH
2 3(1.50g、0.687mmol、NOF Corporation,Japanから購入)および前の工程2cからの化合物(0.760g、1.5当量)をアルゴン下でジクロロメタン(20mL)に溶解させた。反応液を0℃に冷却した。それにピリジン(1mL、過剰)を添加し、一晩撹拌した。反応をTLCでモニタリングした。溶媒および揮発性物質を真空下で除去し、残渣をクロマトグラフィー(最初に酢酸エチル、その後、勾配溶出としての5〜10%MeOH/DCM)で精製すると、所要の化合物4cが白色の固体(0.92g、48%)として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.22−5.15(m,1H),4.16(dd,J=4.00Hz,11.00Hz,1H),4.06(dd,J=5.00Hz,11.00Hz,1H),3.81−3.75(m,2H),3.70−3.20(m,−O−CH
2−CH
2−O−,PEG−CH
2),1.80−1.70(m,2H),1.60−1.48(m,4H),1.31−1.15(m,64H),0.85(t,J=6.5Hz,6H)。MS範囲実測値:2774−2948。
【0443】
実施例14:押出法の一般的プロトコル
脂質(式Iのカチオン性脂質、DSPC、コレステロール、DMG−PEG)を可溶化し、所望のモル比に従ってエタノール中で混合する。混合した脂質をpH5.2の酢酸ナトリウム緩衝液に添加するエタノール注入法によって、リポソームを形成させる。これにより、35%エタノール中でリポソームが自然に形成される。リポソームを0.08μmポリカーボネート膜に少なくとも2回通して押し出す。ストックsiRNA溶液を酢酸ナトリウムおよび35%エタノール中に調製し、リポソームに添加して、充填(load)した。siRNA−リポソーム溶液を37℃で30分間インキュベートし、その後、希釈した。エタノールを除去し、透析または接線流濾過でPBS緩衝液に交換した。
【0444】
実施例15:インライン混合法の一般的プロトコル
一方は脂質を含み、もう一方はsiRNAを含む、個々別々のストックを調製する。式Iのカチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG脂質を含む脂質ストックを90%エタノールに可溶化して調製する。残りの10%は低pHクエン酸緩衝液である。脂質ストックの濃度は4mg/mLである。このクエン酸緩衝液のpHの範囲は、利用される融合性脂質の種類によって、pH3〜5であることができる。siRNAを4mg/mLの濃度でクエン酸緩衝液にも可溶化する。小規模用に、5mLの各ストック溶液を調製する。
【0445】
siRNAと組み合わせる前に、ストック溶液は完全に透明であり、かつ脂質は完全に可溶化されなければならない。それゆえに、ストック溶液を加熱して、脂質を完全に可溶化してもよい。このプロセスで使用されるsiRNAは、未修飾オリゴヌクレオチドであっても、修飾オリゴヌクレオチドであってもよく、コレステロールなどの親油性部分とコンジュゲートされていてもよい。
【0446】
各溶液をT字路に汲み上げて、個々のストックを組み合わせる。デュアルヘッド型のWatson−Marlowポンプを用いて、2つのストリームの開始と停止を同時に制御する。線流速を増加させるために、1.6mmのポリプロピレンチューブをさらに小さくして、0.8mmのチューブにする。このポリプロピレンライン(ID=0.8mm)をT字路のどちらかの側に取り付ける。ポリプロピレンTは、4.1mm
3の容積が結果として得られるように、1.6mmの直線状の先端を有する。ポリプロピレンラインの大きい末端(1.6mm)の各々は、可溶化された脂質ストックかまたは可溶化されたsiRNAのいずれかを含む試験管の中に入れられる。T字路の後ろに、組み合わされたストリームが流れるチューブを1本置く。次に、チューブを伸ばして、2×容量のPBSが入った容器中に入れる。PBSを素早く撹拌する。ポンプの流速は、300rpmまたは110mL/分のセッティングとする。エタノールを除去し、透析でPBSに交換する。次に、脂質製剤を、遠心分離または透析濾過を用いて、適当なワーキング濃度まで濃縮する。
【0447】
実施例16:[6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル−4−(ジメチルアミノ)ブタノアート](式Iのカチオン性脂質またはMC3)の合成
【化14】
アルコール2の調製
アルゴン注入口とサーモウェルとが取り付けられたきれいな乾燥した200Lのガラス反応器に60LのTHFと5.73Kg(20.4mol)のリノール酸とを充填した。反応器の内容物をアセトン−ドライアイス浴を用いて0℃未満に冷却した。この冷たい溶液に、トルエン中の13.8Lのビトライド(60%重量/体積)をゆっくりと添加し、反応混合物の内部温度を0℃未満に維持した(注:最初のビトライドの添加は発熱性であり、発泡が観察された。添加してから15分後に発泡は止まった)。ビトライドの添加には3時間45分かかった。添加し終わった後、反応混合物を周囲温度で2時間撹拌した。アリコートを取り、飽和Na
2SO
4でクエンチし、このようにして得られた粗生成物を出発酸の存在についてTLCで分析した。TLCは反応の完了を示しており、この反応混合物を約45分間で再び0℃未満に冷却した。この混合物に(1.1Kgの硫酸ナトリウムを1.5Lの水に溶解させて調製した)飽和硫酸ナトリウム溶液を45分間かけてゆっくりと添加した。添加し終わった後、25Lの酢酸エチルを撹拌しながら30分間かけて添加した。得られた反応混合物を45分間かけてセライトパッドに通して濾過し、セライト床をさらに17Lの酢酸エチルで洗浄して、この残渣から全ての生成物を取り除いた。組み合わせた有機物を減圧下で濃縮した。残渣を15Lの酢酸エチルに溶解させ、有機層を水(2×7L)で洗浄し、硫酸ナトリウム(1.1Kg)上で乾燥させた。濾過後、有機層を減圧下で濃縮し、高真空下で乾燥させると、生成物のリノレイルアルコールがオイルとして得られた。粗収量=5.5Kg(理論収量=5.43Kg)。この生成物をさらに精製することなく次の工程で用いた。
【0448】
リノレイルメシラート3を調製するためのプロセス
アルゴン注入口とサーモウェルとが取り付けられたきれいな乾燥した200Lの全ガラス反応器に、45LのDCMと5.5Kgの工程1からの粗生成物とを充填した。この溶液に、11.5Lのトリエチルアミン、次いで0.252Kg(2.0mol)のDMAPを添加した。この溶液をドライアイス−アセトン混合物を用いて−10℃に冷却し、この冷えた反応塊に、塩化メシル(3.2L、41.3mol)のDCM(10L)溶液を、0℃未満の温度に保持しながら、3時間かけて少しずつ添加した。添加し終わった後、反応混合物を0℃で1時間撹拌し、その後、反応混合物のTLC(DCM中5%EtOAc;PMA染色)により、出発アルコールの完全な消失が示された。この反応混合物に、17Lの氷冷水を添加し、層を分離した。一番上の水性層を10LのDCMで再び洗浄し、この層を分離した。合わせた有機層を(2Lの濃HClを18LのRO水と混合して調製した)2×10Lの希塩酸、2×7.5Lの水および(11KgのNaClを10LのRO水に溶解させて調製した)10Lのブラインで洗浄した。有機層を分離し、Na
2SO
4(2.75Kg)上で乾燥させ、濾過した。有機層を減圧下で蒸発させ、真空乾燥させると、粗メシラートが淡黄色オイルとして得られた。粗収量=7.1Kg(理論収量=7.1Kg)。この材料をさらに精製することなく次の工程で用いた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.42−5.21(m,4H),4.20(t,2H),3.06(s,3H),2.79(t,2H),2.19−2.00(m,4H),1.90−1.70(m,2H),1.06−1.18(m,18H),0.88(t,3H)。
13C NMR(CDCl
3) δ=130.76,130.54,128.6,128.4,70.67,37.9,32.05,30.12,29.87,29.85,29.68,29.65,29.53,27.72,27.71,26.15,25.94,23.09,14.60。MS。C
19H
36O
3Sについて計算された分子量、計算値344.53、実測値343.52(M−H
−)。
【0449】
臭化リノレイル4の調製
アルゴン注入口とサーモウェルとが取り付けられたきれいな乾燥した200Lの全ガラス反応器に、25LのDMFと7.1Kgの工程2からの粗生成物を充填した。この混合物をアセトン−ドライアイス混合物を用いて−10℃に冷却した。この撹拌混合物に、臭化リチウム(2.7Kg、31.0mol)のDMF溶液25Lを、0℃未満の反応温度を保持しながら、1.5時間かけて添加した。添加し終わった後、アリコートのTLC(ヘキサン中10%EtOAc、PMA染色)により、出発メシラートの完全な消失が示されるまで、反応混合物を45℃で18〜20時間撹拌した。反応混合物を70Lの水で希釈し、57Lのヘキサンで抽出した。水性層を2×10Lのヘキサンでさらに抽出し、合わせた有機層(約120L)を2×10Lの水および(14Kgの塩化ナトリウムを10Lの水に溶解させて調製した)1×10Lのブラインで再び洗浄した。得られた有機層(120L)を硫酸ナトリウム(4Kg)上で乾燥させ、減圧下で濃縮すると、粗生成物(6.5Kg)が得られた。この粗生成物を、ヘキサンを溶離液として用いて、60〜120メッシュのシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーで精製した。純粋な生成物の濃縮により、5.5Kg(81%、3工程)の臭化物4が無色の液体として得られた。
1H NMR(CDCl
3,400MHz) δ=5.41−5.29(m,4H),4.20(d,2H),3.40(t,J=7Hz,2H),2.77(t,J=6.6Hz,2H),2.09−2.02(m,4H),1.88−1.00(m,2H),1.46−1.27(m,18H),0.88(t,J=3.9Hz,3H)。
13C NMR(CDCl
3) δ=130.41,130.25,128.26,128.12,34.17,33.05,31.75,29.82,29.57,29.54,29.39,28.95,28.38,27.42,27.40,25.84,22.79,14.28。
【0450】
ジリノレイルメタノール6の調製
アルゴン注入口と還流冷却器とサーモウェルとが取り付けられたきれいな乾燥した200Lの全ガラス反応器を脱気し、アルゴンでパージした。反応器に277g(11.3mol)の活性マグネシウム、次いで1.5Lの無水エーテルを充填した。反応器を再び3回脱気し、アルゴンでパージした。臭化物4(2.5Kg、7.6mol)をアルゴン下で5Lの無水エーテルに溶解させ、この溶液1Lを反応器に添加し、次いで25mL(0.35mol)のジブロモメタンを添加した。反応器の内容物を、水浴を用いて40℃に加熱した(泡立ちが観察された後で還流し、グリニャール試薬生成の開始が示された)。反応開始後、加熱装置を反応器から取り外し、残りの4Lの臭化物を、混合物の穏やかな還流を維持しながら、2時間30分かけてゆっくりと添加した。添加し終わった後、反応混合物を再び1時間加熱還流し(浴温度45℃)、その後、反応混合物のアリコートを水でクエンチして、TLC(ヘキサン、PMA染色)で分析した。これにより、出発臭化物の完全な消失が示された。反応混合物を氷浴を用いて10℃未満に冷却し、ギ酸エチルのエーテル溶液(4Lのエーテル中275mL)を2時間30分かけて添加し、添加し終わった後、反応混合物を室温に温めて、1時間撹拌した。反応混合物を冷却して10℃に戻し、この混合物にアセトン(1.15L)をゆっくりと添加し、次いで、7Lの氷冷水と(3.4Lの硫酸を34Lの氷冷水で希釈して調製した)10%硫酸溶液とを添加した。生成物を3×10Lのエーテルで抽出し、合わせた有機層を10Lのブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム(2Kg)上で乾燥させた。減圧下での有機層の濃縮により、粗生成物(2Kg)が、微量のO−ホルミル化生成物とともに、所要のジリノレイルアルコールの混合物として得られた。この粗生成物をTHF(4L)に再溶解させ、20Lのガラス反応器に充填した。これにNaOH溶液(0.934Kgを8Lの氷冷水に溶解させたもの)を添加し、内容物を65℃で18時間加熱した後、TLC(ヘキサン中10%エーテル)により、O−ホルミル化生成物が所要のジリノレイルメタノールに完全に変換されたことが示された。 反応混合物を冷却し、エーテル(3×4L)で抽出し、合わせた有機層を5Lのブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム(4Kg)上で乾燥させた。濾過後、有機層を濃縮すると、粗生成物が得られた。このようにして得られた粗生成物を、ヘキサン中の4%エーテルを用いて、60〜120メッシュのシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーで精製した。純粋な生成物画分の濃縮により、純粋な6(1.45Kg、80%)が無色の液体として得られた。NMR(400MHz,CDCl
3) δ5.47−5.24(m,8H),3.56(dd,J=6.8,4.2,IH),2.85−2.66(m,4H),2.12−1.91(m,9H),1.50−1.17(m,46H),0.98−0.76(m,6H)。
13C NMR(101MHz,CDCl
3) δ130.41,130.37,128.18,128.15,77.54,77.22,76.91,72.25,37.73,31.75,29.94,29.89,29.83,29.73,29.58,29.53,27.46,27.43,25.89,25.86,22.80,14.30。
【0451】
[6Z,9Z,28Z,31Z)−ヘプタトリアコンタ−6,9,28,31−テトラエン−19−イル−4−(ジメチルアミノ)ブタノアート]MC3(8)の調製:
ジリノレイルメタノール6(144g、272mmol)を1Lのジクロロメタンに溶解させ、それにジメチルアミノ酪酸7(55g、328mmol)の塩酸塩を添加し、次いでジイソプロピルエチルアミン(70mL)とDMAP(4g)とを添加した。周囲温度で5分間撹拌した後、EDCI(80g、417mmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した後、TLC(シリカゲル、CH
2Cl
2中5%MeOH)分析により、出発アルコールの完全な消失が示された。反応混合物をCH
2Cl
2(500mL)で希釈し、飽和NaHCO
3(400mL)、水(400mL)およびブライン(500mL)で洗浄した。合わせた有機層を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、溶媒を真空中で除去した。このようにして得られた粗生成物(180g)をフラッシュカラムクロマトグラフィー[以下の溶離液を用いた、2.5Kgシリカゲル、すなわち、i)0.1%NEt
3を含むDCM 6Lを詰めたカラム;充填後、ii)0.1%NEt
3を含むDCM 4L;iii)2%のMeOHと98%の0.1%NEt
3を含むDCM 16L;iv)2.5%のMeOHと97.5%の0.1%NEt
3を含むDCM 4L;v)3%のMeOHと97%の0.1%NEt
3を含むDCM 12L]で精製すると、純粋な生成物8(MC3、159g、91%)が無色のオイルとして単離された。
1H NMR(400MHz,CDCl
3):δ5.46−5.23(m,8H),4.93−4.77(m,1H),2.83−2.66(m,4H),2.37−2.22(m,4H),2.20(s,6H),2.10−1.96(m,9H),1.85−1.69(m,2H),1.49(d,J=5.4,4H),1.39−1.15(m,39H),0.95−0.75(m,6H)。
13C NMR(101MHz,CDCl
3):δ173.56,130.38,130.33,128.17,128.14,77.54,77.22,76.90,74.44,59.17,45.64,34.36,32.69,31.73,29.87,29.76,29.74,29.70,29.56,29.50,27.44,27.41,25.84,25.55,23.38,22.78,14.27。EI−MS(+ve):C
43H
79NO
2のMW計算値(M+H)
+:642.6、実測値:642.6。
【0452】
実施例17.事前形成小胞を用いたsiRNA製剤
事前形成小胞の方法を用いてカチオン性脂質含有粒子を作製した。カチオン性脂質、DSPC、コレステロールおよびPEG−脂質を、それぞれ、40/10/40/10というモル比でエタノールに可溶化した。この脂質混合物を水性緩衝液(5OmMクエン酸塩、pH4)に添加し、それぞれ、30%(vol/vol)および6.1mg/mLという最終的なエタノールおよび脂質の濃度になるように混合して、押出しの前に室温で2時間平衡化させておいた。Nicomp分析で測定したときに70〜90nmの小胞直径が得られるまで、Lipex Extruder(Northern Lipids,Vancouver,BC)を用いて22℃で2つの積層された80nm孔径フィルター(Nuclepore)に通して、水和した脂質を押し出した。これには通常、1〜3回の通過を要した。小さい小胞を形成しないいくつかのカチオン性脂質混合物の場合、脂質混合物をより低いpHの緩衝液(50mMクエン酸塩、pH3)で水和してDSPC頭部基上のリン酸基をプロトン化することにより、安定な70〜90nmの小胞の形成が促進された。
【0453】
FVII siRNA(30%エタノールを含む50mMクエン酸塩、pH4水溶液に可溶化したもの)を、事前に35℃に平衡化した小胞に、混合しながら約5mL/分の割合で添加した。0.06(重量/重量)という最終的な標的siRNA/脂質比に到達した後、小胞を再組織化させ、FVII siRNAを封入するために、混合物を35℃でさらに30分間インキュベートした。次に、エタノールを除去し、透析かまたは接線流透析濾過のいずれかによって、外部緩衝液をPBS(155mM NaCl、3mM Na
2HPO
4、1mM KH
2PO
4、pH7.5)と交換した。サイズ排除スピンカラムまたはイオン交換スピンカラムを用いて封入されていないsiRNAを除去した後に、最終的な封入siRNAと脂質の比を決定した。用量(mg/kg)に対する残存FVII%を示す用量応答曲線を
図9に示す。
【0454】
実施例18.式Iのカチオン性脂質のpKa測定
式Iのカチオン性脂質のpKaを、水中では非蛍光性であるが、膜に結合したときに感知できるほどに蛍光性になる蛍光プローブである2−(p−トルイジノ)−6−ナフタレンスルホン酸(TNS)を用いて、本質的に記載されている通りに決定した(Eastman et al 1992 Biochemistry 31:4262−4268)。カチオン性脂質/DSPC/CH/PEG−c−DOMG(40:10:40:10モル比)から構成された小胞を、2〜11の範囲の様々なpHの緩衝液(130mM NaCl、10mM CH
3COONH
4、10mM MES、10mM HEPES)に希釈して0.1mMにした。この希釈した小胞にTNS水溶液(最終1μM)のアリコートを添加し、30秒間の平衡化期間の後、TNS含有溶液の蛍光を、それぞれ、321nmおよび445nmの励起波長および放出波長で測定した。測定された蛍光を溶液のpHに対してプロットし、データを市販のグラフ作成プログラムIgorProを用いてシグモイド曲線に対してフィッティングすることによって、カチオン性脂質含有小胞のpKaを決定した。式Iのカチオン性脂質のpKa滴定曲線を
図10に示す。