(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359741
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】フロントスポイラー
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20180709BHJP
B29C 47/06 20060101ALI20180709BHJP
B29L 9/00 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
B62D37/02 A
B29C47/06
B29L9:00
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-175537(P2017-175537)
(22)【出願日】2017年9月13日
(62)【分割の表示】特願2014-41262(P2014-41262)の分割
【原出願日】2014年3月4日
(65)【公開番号】特開2018-16308(P2018-16308A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2017年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100098752
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 吏規夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宗春
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 実律
【審査官】
畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−118518(JP,A)
【文献】
特開2010−137672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 37/02
B29C 47/06
B29L 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントバンパーへの取付部と、前記取付部から下方へ形成された本体部とよりなるフロントスポイラーにおいて、
前記取付部と前記本体部は共押出成形によって一体に成形されたものであり、
前記取付部は前記本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂から形成され、
前記本体部は前記取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂から形成され、
前記本体部には、前記取付部から延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部が、前記本体部の下方途中まで前記本体部内の前記硬度の低い樹脂内に形成されていることを特徴とするフロントスポイラー。
【請求項2】
フロントバンパーへの取付部と、前記取付部から下方へ形成された本体部とよりなるフロントスポイラーにおいて、
前記取付部と前記本体部は共押出成形によって一体に成形されたものであり、
前記取付部は前記本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂から形成され、
前記本体部は前記取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂から形成され、
前記本体部には、前記取付部から延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部が、前記本体部の下部まで前記本体部内の前記硬度の低い樹脂内に形成され、前記硬質部は下部側の厚みが上部側よりも薄くされていることを特徴とするフロントスポイラー。
【請求項3】
フロントバンパーへの取付部と、前記取付部から下方へ形成された本体部とよりなるフロントスポイラーにおいて、
前記取付部と前記本体部は共押出成形によって一体に成形されたものであり、
前記取付部は前記本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂から形成され、
前記本体部は前記取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂から形成され、
前記本体部には、前記取付部から延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部が、前記本体部の下部まで前記本体部内の前記硬度の低い樹脂内に形成され、前記硬質部は下部側の後面に前記本体部の横幅方向に沿う溝が複数本形成されていることを特徴とするフロントスポイラー。
【請求項4】
前記本体部は、前記硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂からなることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のフロントスポイラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロントバンパーの下端に取り付けられるフロントスポイラーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフロントスポイラーを
図5に示す。
図5に示すフロントスポイラー60は、車両のフロントバンパーの下端への取付部61と、前記取付部61の前端から下方へ形成された本体部65とで構成されている。符号62はボルト等の固定部品が挿通される取付孔である。
【0003】
前記取付部61は取付性を良好とするために硬度の高いものが好ましい。一方、前記本体部65は、車道と歩道との境界の縁石や駐車場の車止め等にフロントスポイラーの下端が乗り上げたりぶつかったりする場合があるため、その際に前記本体部65が変形可能なように硬度の低いものが好ましい。そこで、前記取付部61を硬度の高い樹脂で構成すると共に、前記本体部65を硬度の低い樹脂で構成することが提案されている。
【0004】
さらに、前記本体部65の下部前面は、車道と歩道との境界の縁石や駐車場の車止め等に擦られて傷つくことがあるため、その傷を目立ちにくくするために、予め上下方向のスジ67を形成しておくことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−118518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記上下方向のスジは、全周に細かい凹凸条が形成された転写ローラを回転させながら本体部の表面に圧接させる表面処理加工を、フロントスポイラーの押出成形後の後工程で行うことにより形成されるため、作業が増加し、コストか嵩む問題がある。
さらに、車両の燃費向上のため、フロントスポイラーは軽量なものが求められている。また、取付部を硬度の高い樹脂で構成すると共に本体部を硬度の低い樹脂で構成したフロントスポイラーは、車両走行時に本体部が風圧で基部(上部)から変形してバタツク問題や、風圧で基部(上部)から変形して空力性能が低下する問題もある。
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、軽量性を向上させたフロントスポイラーの提供を目的とし、さらには車両走行時の風圧による本体部のバタツキを抑え、空力性能を維持することもできるフロントスポイラーの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、フロントバンパーへの取付部と、前記取付部から下方へ形成された本体部とよりなるフロントスポイラーにおいて、前記取付部と前記本体部は共押出成形によって一体に成形されたものであり、前記取付部は前記本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂から形成され、前記本体部は前記取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂から形成され、前記本体部には、前記取付部から延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部が、前記本体部の下方途中まで前記本体部内の前記硬度の低い樹脂内に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、フロントバンパーへの取付部と、前記取付部から下方へ形成された本体部とよりなるフロントスポイラーにおいて、前記取付部と前記本体部は共押出成形によって一体に成形されたものであり、前記取付部は前記本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂から形成され、前記本体部は前記取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂から形成され、前記本体部には、前記取付部から延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部が、前記本体部の下部まで前記本体部内の前記硬度の低い樹脂内に形成され、前記硬質部は下部側の厚みが上部側よりも薄くされていることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、フロントバンパーへの取付部と、前記取付部から下方へ形成された本体部とよりなるフロントスポイラーにおいて、前記取付部と前記本体部は共押出成形によって一体に成形されたものであり、前記取付部は前記本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂から形成され、前記本体部は前記取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂から形成され、前記本体部には、前記取付部から延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部が、前記本体部の下部まで前記本体部内の前記硬度の低い樹脂内に形成され、前記硬質部は下部側の後面に前記本体部の横幅方向に沿う溝が複数本形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記本体部は、前記硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、取付部が本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂からなるため、取付部の剛性が本体部よりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、取付部から延設された硬度の高い樹脂からなる硬質部が、本体部の下方途中まで本体部内の硬度の低い樹脂内に形成されているため、硬質部によって本体部の上部の剛性が高まり、車両走行時の風圧による本体部のバタツキを抑え、空力性能を維持することができる。また、硬質部が存在しない本体部の下部は変形性があり、縁石や車止め等に本体部の下部が衝突した際に、本体部の下部は変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。
【0013】
請求項2の発明によれば、取付部が本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂からなるため、取付部の剛性が本体部よりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、取付部から延設された硬度の高い樹脂からなる硬質部が、本体部の下部まで本体部内の硬度の低い樹脂内に形成されているため、硬質部によって本体部の剛性が高まり、車両走行時の風圧による本体部のバタツキを抑え、空力性能を維持することができる。また、硬質部は下部側の厚みが上部側よりも薄くされているため、硬質部の下部の剛性が低下し、該硬質部の下部が存在する本体部の下部が変形性を有することになり、縁石や車止め等に本体部の下部が衝突した際に、本体部の下部は変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。さらに、本体部の下部まで硬質部が形成されているため、共押出成形時に硬質部の存在部と非存在部との境界位置で生じ易い本体部表面のヒケ(僅かな段差)の発生を防ぐことができ、本体部の外観を良好なものにできる。
【0014】
請求項3の発明によれば、取付部が本体部の樹脂よりも硬度の高い樹脂からなるため、取付部の剛性が本体部よりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、取付部から延設された硬度の高い樹脂からなる硬質部が、本体部の下部まで本体部内の硬度の低い樹脂内に形成されているため、硬質部によって本体部の剛性が高まり、車両走行時の風圧による本体部のバタツキを抑え、空力性能を維持することができる。また、硬質部は下部側の後面に本体部の横幅方向に沿う溝が複数本形成されているため、硬質部の下部の剛性が低下し、該硬質部の下部が存在する本体部の下部が変形性を有することになり、縁石や車止め等に本体部の下部が衝突した際に、本体部の下部は変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。さらに、本体部の下部まで硬質部が形成されているため、共押出成形時に硬質部の存在部と非存在部との境界位置で生じ易い本体部表面のヒケ(僅かな段差)の発生を防ぐことができ、本体部の外観を良好なものにできる。
【0015】
請求項4の発明によれば、本体部は、取付部の樹脂よりも硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂から形成されているために取付部よりも変形性があり、縁石や車止め等に本体部の下部が衝突した際に、本体部の下部は変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。さらに、前記本体部は発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂から形成され、前記発泡剤が発泡しているために軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】参考形態のフロントスポイラーの部分斜視図である。
【
図2】本発明における第1実施形態のフロントスポイラーの部分斜視図である。
【
図3】本発明における第2実施形態のフロントスポイラーの部分斜視図である。
【
図4】本発明における第3実施形態のフロントスポイラーの部分斜視図である。
【
図5】従来のフロンドスポイラーの部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、参考形態と本発明における実施形態について図面を用いて説明する。
図1に示す参考形態のフロントスポイラー10Aは、取付部11Aと本体部21Aが共押出成形によって一体に形成された樹脂製のものであり、該フロントスポイラー10Aが取り付けられる車両のフロントバンパーの下端の横幅と略等しい横幅を有する。前記横幅は車幅と同方向の幅である。なお、前記共押出成形は、2台の押出機から溶融樹脂を押し出す際にダイから一体として押し出す成形方法であり、公知の押出成形技術である。
【0018】
前記取付部11Aは、前記フロントスポイラー10Aをフロントバンパーの下端に取り付けるための部分であり、図示の例では前記本体部21Aの略上端から後側へ突出したプレート状に形成されている。前記取付部11Aには、ボルト等の固定部品が挿入される取付孔13Aが所定間隔で形成されている。なお、前記取付部11Aは、図示のような連続したものに限られず、所定間隔で形成された複数の突出片状のものであってもよい。また、前記取付部11Aの材質は、取付性を良好とするため、前記本体部21Aの樹脂よりも硬度の高い樹脂(単に「硬度の高い樹脂」とも記す)からなる。前記取付部11Aの樹脂は、硬度がショアA硬度(HsA)80〜95のものが好ましく、樹脂の種類はオレフィン系エラストマー(TPO)が好ましい。
【0019】
前記本体部21Aは、前記取付部11Aの前端から下方へ形成されており、図示の例では、上下方向のプレート状とされている。前記本体部21Aの材質は、前記本体部21Aが縁石や車止め等に衝突した際の本体部21Aの変形性を確保し、かつ軽量性を高め、さらには後述のシボ模様23Aを形成するため、前記取付部11Aの樹脂よりも硬度の低い樹脂(単に「硬度の低い樹脂」とも記す)に発泡剤を含有させた発泡剤含有樹脂からなる。前記発泡剤は前記共押出成形時に発泡しており、該発泡によって本体部21Aの表面(前面と後面)にシボ模様23Aを形成している。前記シボ模様23Aは、微細(例えば高低差が0.5mm以下)でかつ不規則な凹凸模様からなる。前記硬度の低い樹脂は、樹脂の硬度がショアA硬度(HsA)60〜70のものが好ましく、樹脂の種類はオレフィン系エラストマー(TPO)が好ましい。前記発泡剤は、前記取付部11Aと本体部21Aの共押出成形時の温度(例えば130〜190℃)で発泡するものが使用される。前記発泡剤として、炭酸ガス発生系の化学発泡剤等を挙げることができる。また、前記発泡剤の量は、使用する発泡剤の種類によって最適量が異なるが、例として前記硬度の低い樹脂100質量部に対して3〜10質量部を挙げる。
【0020】
前記参考形態のフロントスポイラー10Aでは、前記取付部11Aの剛性が本体部21Aよりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、前記本体部21Aの表面に前記シボ模様23Aを有するため、前記本体部21Aの表面に傷がついても、シボ模様23Aによって傷を目立ち難くできる。さらに、前記本体部21Aの表面のシボ模様23Aは、前記取付部11Aと前記本体部21Aの共押出成形時に、前記発泡剤含有樹脂の発泡剤が発泡して形成されたものであるため、共押出成形後にシボ模様を形成する必要がない。また、前記本体部21Aは、前記取付部11Aの樹脂よりも硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂から形成されているために前記取付部11Aよりも変形性があり、縁石や車止め等に前記本体部21Aの下部が衝突した際に、前記本体部21Aの下部は変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。さらに、前記本体部21Aが発泡剤含有樹脂から形成され、前記発泡剤が発泡しているために前記フロントスポイラー10Aは軽量である。
【0021】
図2に示す第1実施形態のフロントスポイラー10Bは、取付部11Bと本体部21Bが共押出成形によって一体に形成された樹脂製のものであり、該フロントスポイラー10Bが取り付けられる車両のフロントバンパーの下端の横幅と略等しい横幅を有する。前記本体部21Bの表面(前後面)にはシボ模様23Bが形成されている。符号13Bは取付孔である。
【0022】
前記第1実施形態のフロントスポイラー10Bでは、前記取付部11Bから延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部31Bが、前記本体部21Bの下方途中まで前記本体部21B内の硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に形成されている。図示の例では、前記硬質部31Bは、前記取付部11Bの前端から前記本体部21Bの上下略中間位置まで形成され、かつ横方向については前記本体部21Bの横幅方向両端まで形成されて前記本体部21Bの硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に埋設されている。前記硬質部31Bの厚みは、前記本体部21Bの厚みよりも薄ければよく、特に限定されないが、本体部21Bの厚みよりも1〜2mm程度薄い例を挙げる。
【0023】
その他の構成、例えば、前記取付部11Bの構成、前記硬質部31Bを除く前記本体部21Bの構成、前記シボ模様23Bの内容、前記硬度の高い樹脂の内容、前記硬度の低い樹脂の内容、前記発泡剤の内容等については、前記参考形態のフロントスポイラー10Aと同様である。
【0024】
前記第1実施形態のフロントスポイラー10Bでは、前記参考形態のフロントスポイラー10Aと同様に、前記取付部11Bの剛性が本体部21Bよりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、前記本体部21Bの表面のシボ模様23Bによって本体部21Bの表面の傷を目立ち難くできる。さらに、前記本体部21Bの表面のシボ模様23Bは、前記取付部11Bと前記本体部21Bの共押出成形時に、前記発泡剤含有樹脂の発泡剤が発泡して形成されたものであるため、共押出成形後にシボ模様を形成する必要がない。また、前記本体部21Bが発泡剤含有樹脂から形成され、前記発泡剤が発泡しているために前記フロントスポイラー10Bは軽量である。
【0025】
また、前記取付部11Bから延設された硬度の高い樹脂からなる硬質部31Bが、前記本体部21Bの下方途中まで本体部21B内の硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に形成されているため、前記硬質部31Bによって本体部21Bの上部の剛性が高まり、車両走行時の風圧による前記本体部21Bのバタツキを抑え、空力性能を維持することができる。さらに、前記硬質部31Bが存在しない本体部21Bの下部は、前記取付部11Bの樹脂よりも硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂から形成されているために変形性があり、縁石や車止め等に前記本体部21Bの下部が衝突した際に、前記本体部21Bの下部は変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。
【0026】
図3に示す第2実施形態のフロントスポイラー10Cは、取付部11Cと本体部21Cが共押出成形によって一体に形成された樹脂製のものであり、該フロントスポイラー10Cが取り付けられる車両のフロントバンパーの下端の横幅と略等しい横幅を有する。前記本体部21Cの表面(前後面)にはシボ模様23Cが形成されている。符号13Cは取付孔である。
【0027】
前記第2実施形態のフロントスポイラー10Cでは、前記取付部11Cから延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部31Cが、前記本体部21Cの下部まで前記本体部21C内の硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に形成されている。図示の例では、前記硬質部31Cは、前記取付部11Cの前端から下方へ前記本体部21Cの下端近くまで形成され、かつ横方向については前記本体部21Cの横幅方向両端まで形成されて前記本体部21Cの硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に埋設されている。前記硬質部31Cは、下部側32Cの厚みが上部側33Cよりも薄くされている。図示の例では、前記硬質部31Cの上部から上下中間位置まで略均一の厚みとされ、前記上下中間位置から下端まで徐々に薄くされている。前記硬質部31Cの上部の厚みは、前記本体部21Cの厚みよりも薄ければよく、特に限定されないが、本体部21Cの厚みよりも1〜2mm程度薄い例を挙げる。
【0028】
その他の構成、例えば、前記取付部11Cの構成、前記硬質部31Cを除く前記本体部21Cの構成、前記シボ模様23Cの内容、前記硬度の高い樹脂の内容、前記硬度の低い樹脂の内容、前記発泡剤の内容等については、前記参考形態のフロントスポイラー10Aと同様である。
【0029】
前記第2実施形態のフロントスポイラー10Cでは、前記参考形態のフロントスポイラー10Aと同様に、前記取付部11Cの剛性が本体部21Cよりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、前記本体部21Cの表面のシボ模様23Cによって本体部21Cの表面の傷を目立ち難くできる。さらに、前記本体部21Cの表面のシボ模様23Cは、前記取付部11Cと前記本体部21Cの共押出成形時に、前記発泡剤含有樹脂の発泡剤が発泡して形成されたものであるため、共押出成形後にシボ模様を形成する必要がない。また、前記本体部21Cが発泡剤含有樹脂から形成され、前記発泡剤が発泡しているために前記フロントスポイラー10Cは軽量である。
【0030】
また、前記取付部11Cから延設された硬度の高い樹脂からなる硬質部31Cが、前記本体部21Cの下部まで本体部21C内の硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に形成されているため、前記硬質部31Cによって本体部21Cの剛性が高まり、車両走行時の風圧による本体部21Cのバタツキを抑え、空力性能を維持することができる。
【0031】
また、前記硬質部31Cは下部側32Cの厚みが上部側33Cよりも薄くされているため、前記硬質部31Cの下部の剛性が低下し、該硬質部31Cの下部が存在する前記本体部21Cの下部が変形性を有することになり、縁石や車止め等に本体部21Cの下部が衝突した際に、前記本体部21Cの下部が変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。さらに、前記本体部21Cの下部まで前記硬質部31Cが形成されているため、前記取付部11Cと前記本体部21Cの共押出成形時に、前記硬質部31Cの存在部と非存在部との境界位置で生じ易い前記本体部21Cの表面のヒケ(僅かな段差)の発生を防ぐことができ、前記本体部21Cの外観を良好なものにできる。
【0032】
図4に示す第3実施形態のフロントスポイラー10Dは、取付部11Dと本体部21Dが共押出成形によって一体に形成された樹脂製のものであり、該フロントスポイラー10Dが取り付けられる車両のフロントバンパーの下端の横幅と略等しい横幅を有する。前記本体部21Dの表面(前後面)にはシボ模様23Dが形成されている。符号13Dは取付孔である。
【0033】
前記第3実施形態のフロントスポイラー10Dでは、前記取付部11Dから延設された前記硬度の高い樹脂からなる硬質部31Dが、前記本体部21Dの下部まで前記本体部21D内の硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に形成されている。図示の例では、前記硬質部31Dは、前記取付部11Dの前端から下方へ前記本体部21Dの下端近くまで形成され、かつ横方向については前記本体部21Dの横幅方向両端まで形成されて前記本体部21Dの硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に埋設されている。前記硬質部31Dは、下部側の後面に前記本体部21Dの横幅方向に沿う溝34Dが複数本形成されている。図示の例では、前記硬質部31Dの上下中間位置から下端までの部分に断面波形状の凹凸が形成され、前記凹凸の凹部が前記溝34Dを構成している。なお、前記溝34Dは波形状の凹凸の凹部からなるものに限られず、所定間隔で形成した凹溝であってもよい。前記硬質部31Dにおける前記溝34Dの無い上部側32Dの厚みは、前記本体部21Dの厚みよりも薄ければよく、限定されないが、前記本体部21Dの厚みよりも1〜2mm程度薄い例を挙げる。
【0034】
その他の構成、例えば、前記取付部11Dの構成、前記硬質部31Cを除く前記本体部21Dの構成、前記シボ模様23Dの構成、前記硬度の高い樹脂の内容、前記硬度の低い樹脂の内容、前記発泡剤の内容等については、前記参考形態のフロントスポイラー10Aと同様である。
【0035】
前記第3実施形態のフロントスポイラー10Dでは、前記参考形態のフロントスポイラー10Aと同様に、前記取付部11Dの剛性が本体部21Dよりも高くなり、フロントバンパーへの取付強度が高くなる。また、前記本体部21Dの表面のシボ模様23Dによって本体部21Dの表面の傷を目立ち難くできる。さらに、前記本体部21Dの表面のシボ模様23Dは、前記取付部11Dと前記本体部21Dの共押出成形時に、前記発泡剤含有樹脂の発泡剤が発泡して形成されたものであるため、共押出成形後にシボ模様を形成する必要がない。また、前記本体部21Dが発泡剤含有樹脂から形成され、前記発泡剤が発泡しているために前記フロントスポイラー10Dは軽量である。
【0036】
また、前記取付部11Dから延設された硬度の高い樹脂からなる硬質部31Dが、前記本体部21Dの下部まで本体部21D内の硬度の低い樹脂に発泡剤が配合された発泡剤含有樹脂内に形成されているため、前記硬質部31Dによって本体部21Dの剛性が高まり、車両走行時の風圧による本体部21Dのバタツキを抑え、空力性能を維持することができる。
【0037】
また、前記硬質部31Dの下部は前記溝34Dが形成されているために剛性が低下し、該硬質部31Dの下部が存在する前記本体部21Dの下部は変形性を有することになり、縁石や車止め等に本体部21Dの下部が衝突した際に、前記本体部21Dの下部が変形によって縁石や車止めを乗り越えることが可能になる。さらに、前記本体部21Dの下部まで前記硬質部31Dが形成されているため、前記取付部11Dと前記本体部21Dの共押出成形時に、前記硬質部31Dの存在部と非存在部との境界位置で生じ易い前記本体部21Dの表面のヒケ(僅かな段差)の発生を防ぐことができ、前記本体部21Dの外観を良好なものにできる。
【実施例】
【0038】
・参考例
前記参考形態のフロントスポイラー10Aを、以下の内容にて、前記取付部11Aを厚み4mm、前後寸法35mmとし、前記本体部21Aを厚み4mm、上下寸法70mmとして、前記取付部11A及び本体部21Aを共押出成形した。それにより、前記本体部21Aの表面にシボ模様23Aが形成された第1実施例のフロントスポイラーを得た。なお、前記取付孔13Aは共押出成形後にプレスによって形成した。
・硬度の高い樹脂:オレフィン系エラストマー(TPO)樹脂、ショアA硬度(HsA)90
・硬度の低い樹脂:オレフィン系エラストマー(TPO)樹脂、ショアA硬度(HsA)70
・発泡剤:化学発泡剤、発泡温度160〜220℃、品名:ポリスレンEV405D
、永和化学工業製
・発泡剤の量:硬度の低い樹脂100質量部に対して5質量部
・共押出成形時のシリンダー温度:150〜180℃
・共押出成形時のダイ温度:180〜220℃
【0039】
・第1実施例
前記第1実施形態のフロントスポイラー10Bを、前記硬度の高い樹脂、前記硬度の低い樹脂、前記発泡剤、前記押出成形条件、前記取付部11Bの寸法、前記本体部21Bの寸法を前記参考例と同一とし、前記本体部21B内の硬質部31Bを厚み2mm、上下寸法20mmとして、前記取付部11B及び本体部21Bを共押出成形した。それにより、前記本体部21Bの表面にシボ模様23Bが形成された第1実施例のフロントスポイラーを得た。前記本体部21B内には上部から上下中間位置まで前記硬質部31Bが形成されている。なお、前記取付孔13Bは共押出成形後にプレスによって形成した。
【0040】
・第2実施例
前記第2実施形態のフロントスポイラー10Cを、前記硬度の高い樹脂、前記硬度の低い樹脂、前記発泡剤、前記押出成形条件、前記取付部11Cの寸法、前記本体部21Cの寸法を前記参考例と同一とし、前記本体部21C内の硬質部31Cについては上下寸法65mm、上端から30mmまでの厚みを2.5mmとすると共に、その位置から徐々に薄くして下端の厚みを1mmとして、前記取付部11C及び本体部21Cを共押出成形した。それにより、前記本体部21Cの表面にシボ模様23Cが形成された第2実施例のフロントスポイラーを得た。前記本体部21C内には上部から下部まで前記硬質部31Cが形成され、該硬質部31Cは上下中間位置から下端まで厚みが徐々に薄くなっている。なお、前記取付孔13Cは共押出成形後にプレスによって形成した。
【0041】
・第3実施例
前記第3実施形態のフロントスポイラー10Dを、前記硬度の高い樹脂、前記硬度の低い樹脂、前記発泡剤、前記押出成形条件、前記取付部11Dの寸法、前記本体部21Dの寸法を前記参考例と同一とし、前記本体部21D内の硬質部31Dについては上下寸法65mm、厚みを2mmとすると共に、前記硬質部31Dには下端から30mmまでの範囲の後面に深さ1mm、間隔3mmで前記溝34Dを設定して、前記取付部11D及び本体部21Dを共押出成形した。それにより、前記本体部21Dの表面にシボ模様23Dが形成された第3実施例のフロントスポイラーを得た。前記本体部21D内には上部から下部まで前記硬質部31Dが形成され、該硬質部31Dは上下中間位置から下端までの後面に前記溝34Dが形成されている。なお、前記取付孔13Dは共押出成形後にプレスによって形成した。
【符号の説明】
【0042】
10A、10B、10C、10D フロントスポイラー
11A、11B、11C、11D 取付部
21A、21B、21C、21D 本体部
23A、23B、23C、23D シボ模様
31B、31C、31D硬質部
34D 溝