特許第6359743号(P6359743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359743鉄筋用保持具及び複数の鉄筋の固定保持方法
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  • 特許6359743-鉄筋用保持具及び複数の鉄筋の固定保持方法 図000002
  • 特許6359743-鉄筋用保持具及び複数の鉄筋の固定保持方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6359743
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】鉄筋用保持具及び複数の鉄筋の固定保持方法
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/18 20060101AFI20180709BHJP
   E04C 5/20 20060101ALI20180709BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   E04C5/18 103
   E04C5/20
   E04G21/12 105E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-191074(P2017-191074)
(22)【出願日】2017年9月29日
【審査請求日】2018年1月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504000177
【氏名又は名称】株式会社 天野ミューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】天野 則英
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−217103(JP,A)
【文献】 特開2012−041808(JP,A)
【文献】 特開2001−349002(JP,A)
【文献】 特開2004−232373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/16
E04C 5/18
E04C 5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する2本の鉄筋をこれらの交差点で固定保持するための鉄筋用保持具であって、
前記2本の鉄筋のうちの一方をその長手方向に沿って内側に収容保持する断面略C字状の屈曲部と、前記屈曲部から同一方向に略平行に延びる一対の板状部と、からなり、
前記屈曲部には、貫通穴が形成されており、
前記一対の板状部は、その先端に向けて開口するとともに、前記2本の鉄筋のうちの他方を内側に収容する収容穴と、前記収容穴に連通する切欠部と、をそれぞれ備える
ことを特徴とする鉄筋用保持具。
【請求項2】
前記一対の板状部は、前記収容穴の開口する間隔を狭める一対の突出部がそれぞれ形成されており、
前記一対の突出部は、前記収容穴に収容される鉄筋の抜け止めとして機能する
ことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋用保持具。
【請求項3】
交差する2本の鉄筋をこれらの交差点で固定保持する複数の鉄筋の固定保持方法であって、
前記2本の鉄筋のうちの一方をその長手方向に沿って内側に収容保持する断面略C字状の屈曲部と、前記屈曲部から同一方向に略平行に延びる一対の板状部と、からなり、前記屈曲部には、貫通穴が形成されており、前記一対の板状部は、その先端に向けて開口するとともに、前記2本の鉄筋のうちの他方を内側に収容する収容穴と、前記収容穴に連通する切欠部と、をそれぞれ備える鉄筋用保持具を準備する工程と、
前記複数の鉄筋を交差させる工程と、
前記複数の鉄筋のうちの2本の鉄筋の交差点に、前記鉄筋用保持具を前記一対の板状部の前記開口が形成された側から押し込む工程と、
を含む複数の鉄筋の固定保持方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの基礎に埋入される複数の鉄筋を固定保持する鉄筋用保持具に関し、特に、複数の鉄筋の交差点において簡易にこれらを固定保持できる鉄筋用保持具、及びこれを用いた複数の鉄筋の固定保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物等に適用されるコンクリートの基礎に複数の鉄筋を埋入させる場合、まず所定の方向に略平行に並ぶように複数の鉄筋を配置し、これらの並べられた鉄筋と交差する方向に、別の複数の鉄筋を略平行に並ぶように配置して互いの位置決めをした後、これらの鉄筋の交差点に針金等の線材を巻き付けて結束して固定保持する手法が知られている。そして、このように鉄筋を結束した後、型枠内にコンクリートを打ち込んで乾燥させることにより、鉄筋とコンクリートとを一体化して構造物とする。
【0003】
このような手法で鉄筋を固定保持する場合、鉄筋どうしを交差点で結束する作業を人手で行うため、所定の位置に正確かつ安定して固定保持するのが困難であり、作業性が悪くなるという問題があった。
【0004】
例えば特許文献1では、このような問題を解決するために、縦向きに配設されるアンカーボルトの長さの途中を抱持するボルト抱持部と該ボルト抱持部のボルト挿通方向に対して直交する向きに鉄筋を通す鉄筋抱持部とを一体に備えたアンカーボルト用保持具が開示されている。このボルト抱持部には横向きに開口する割込み口を、また鉄筋抱持部には下向きに開口する割込み口を形成して、それぞれの割込み口を通してアンカーボルト並びに鉄筋を割込み抱持し、該両者を直交状に連結保持するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−107371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたアンカーボルト用保持具においては、アンカーボルトを抱持するボルト抱持部と鉄筋を抱持する鉄筋抱持部とが一体に形成されているため、ボルト抱持部及び鉄筋抱持部にそれぞれアンカーボルトあるいは鉄筋を抱持した状態で保持具自体をスライドさせることにより、微妙な位置調整も可能となり、作業効率を向上させることができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されたアンカーボルト用保持具は、ボルト抱持部及び鉄筋抱持部に形成されたそれぞれの割込み口の向きが異なるため、アンカーボルトと鉄筋との交差点に保持具を取り付ける際には、アンカーボルト及び鉄筋のいずれか一方を保持具に取り付けた後に他方を取り付けるための2つの工程が必要であり、保持具を取り付ける数が増加すると上記工程数も倍々で増えてしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、交差する鉄筋を別々に取り付ける工程を実施することなく、取り付け動作が容易でかつ位置決めも可能とする鉄筋用保持具、及びこれを用いた複数の鉄筋の固定保持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明による交差する2本の鉄筋をこれらの交差点で固定保持するための鉄筋用保持具は、前記2本の鉄筋のうちの一方を内側に収容保持する断面略C字状の屈曲部と、前記屈曲部から同一方向に略平行に延びる一対の板状部と、からなり、前記一対の板状部は、その先端に向けて開口するとともに、前記2本の鉄筋のうちの他方を内側に収容する収容穴と、前記収容穴に連通する切欠部と、をそれぞれ備えることを特徴とする。
【0010】
上記した発明において、前記一対の板状部は、その端部近傍において、前記開口の幅を狭める一対の突出部がそれぞれ形成されていてもよい。また、前記屈曲部には、前記一対の板状部と対向する位置に、貫通穴が形成されていてもよい。
【0011】
さらに、本発明による交差する2本の鉄筋をこれらの交差点で固定保持する複数の鉄筋の固定保持方法は、前記2本の鉄筋のうちの一方を内側に収容保持する断面略C字状の屈曲部と、前記屈曲部から同一方向に略平行に延びる一対の板状部と、からなり、前記一対の板状部は、その先端に向けて開口するとともに、前記2本の鉄筋のうちの他方を内側に収容する収容穴と、前記収容穴に連通する切欠部と、をそれぞれ備える鉄筋用保持具を準備する工程と、前記複数の鉄筋を交差させる工程と、前記複数の鉄筋のうちの2本の鉄筋の交差点に、前記鉄筋用保持具を前記一対の板状部の前記開口が形成された側から押し込む工程と、を含むことを特徴とする。
【0012】
かかる発明によれば、2本の鉄筋をそれぞれ収容保持する屈曲部と収容穴とを一体に形成し、かつ収容穴の開口の方向を屈曲部から延びる一対の板状部の方向と一致させることにより、交差する鉄筋を別々に取り付ける工程を実施することなく、1度の押し込み動作のみで2本の鉄筋を固定保持できるため、取り付け動作が容易でかつ位置決めも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の代表的な一例による鉄筋用保持具の概要を示す図であって、図1(a)は上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図、をそれぞれ示す。
図2図1に示した鉄筋用保持具を用いた鉄筋の固定保持方法の概略を示す図であって、図2(a)は第1段階、図2(b)は第2段階、図2(c)は第3段階、図2(d)は第4段階の状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の代表的な一例による鉄筋用保持具と、これを用いた複数の鉄筋の固定保持方法の具体的な構成について図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の代表的な一例による鉄筋用保持具の詳細を示す図であって、図1(a)は上面図、図1(b)は正面図、図1(c)は側面図、をそれぞれ示す。なお、図1(b)は、図1(c)の図示上左側すなわち板状部120の側から見た状態を示しており、図示を省略する板状部130も板状部120と同様の構成を備えるものとして、繰り返しての説明は省略する。
【0016】
図1に示すように、鉄筋用保持具100は、交差する2本の鉄筋(後述する図2の符号10参照)のうちの一方の鉄筋20を内側に収容保持する断面略C字状の屈曲部110と、当該屈曲部110から同一方向に略平行に延びる一対の板状部120、130と、からなっており、これら一対の板状部120、130の一端は開放されている。ここで、鉄筋用保持具100は、例えば金属製の薄板材をプレス成形する手法や、あるいは硬質の樹脂材料を金型で成形する手法等の、任意の手法で製造することができる。
【0017】
図1(c)に示すように、屈曲部110は、内面が直径D1である円の一部となっており、当該円弧の端部から一対の板状部120、130が延びるように構成されている。これにより、一対の板状部120及び130の間の内部空間S1と屈曲部110の内側の内部空間S2が形成されている。ここで、屈曲部110の内面の直径D1は鉄筋20の外径d1と同一であり、一対の板状部120、130の間隔L1は直径D1より小さいものとする。
【0018】
また、図1(a)に示すように、屈曲部110には、一対の板状部120、130が延びる側と反対側の位置に、貫通穴112が形成されていてもよい。この貫通穴112が形成されていると、鉄筋(図2の符号20参照)を位置決め固定した後にコンクリートを打ち込む際に、屈曲部110と鉄筋20との間に空気が残留して強度が低下するのを抑制することができる。
【0019】
図1(b)に示すように、板状部120は、屈曲部110の一端から延びる一対の腕板部121、122を含む。一対の腕板部121、122の中間には、図2に示す鉄筋30を収容する内径D2の収容穴H1が形成されている。そして、収容穴H1には、その幅方向中央部に屈曲部110内に連通して延びる切欠部123が形成されており、一対の腕板部121、122は、上記切欠部123によって幅方向(図1(b)の左右方向)に弾性変形することができる。また、腕板部121及び122には、その端部(すなわち収容穴H1の開口部)近傍に、上記収容穴H1の開口する間隔を狭める方向に、間隔L2となる一対の突出部121a及び122aが、それぞれ形成されていてもよい。
【0020】
これらの構成により、収容穴H1に鉄筋30が収容されると、一対の突出部121a、122aが抜け止めとして機能する。ここで、収容穴H1の内径D2は鉄筋30の外径d2と同一であり、一対の突出部121a、122aの間隔L2はD2より小さいものとする。
【0021】
図2は、図1に示した鉄筋用保持具を用いた鉄筋の固定保持方法の概略を示す図であって、図2(a)は第1段階、図2(b)は第2段階、図2(c)は第3段階、図2(d)は第4段階の状態をそれぞれ示す。なお、図2(c)及び図2(d)は、それぞれ図2(a)に示した配置の図示上左側すなわち板状部120の側から見た状態を示しており、図示を省略する板状部130も板状部120と同様の構成を備えるものとして、繰り返しての説明は省略する。
【0022】
本発明の代表的な一例による鉄筋用保持具100を用いた鉄筋10の固定保持方法は、図1に図示した鉄筋用保持具100を準備する工程と、複数の鉄筋20、30を交差させる工程と、これら複数の鉄筋10の交差点に上記鉄筋用保持具100を一対の板状部120、130の内部空間S1が開放する側から押し込む工程と、を含む。そして、図2(a)〜(d)は、上記押し込む工程における第1段階〜第4段階の状態をそれぞれ示している。
【0023】
図2(a)に示すように、押し込み工程の第1段階では、交差した2本の鉄筋20、30の交差点において、鉄筋用保持具100を、内部空間S1の開放側が上側に配置した鉄筋20と対向するように配置する。このとき、鉄筋用保持具100の一対の板状部120、130が鉄筋20の長手方向と沿う方向となるように配置する。
【0024】
続いて、図2(b)に示すように、押し込み工程の第2段階では、鉄筋用保持具100を屈曲部110側から加圧力Fで下向きに押し込みを開始する。このとき、一対の板状部120、130の間隔L1は鉄筋20の外径d1より小さいため、鉄筋用保持具100を鉄筋20に押し込むと、一対の板状部120、130は、鉄筋20の外周面に接触しつつ、互いに押し広げられる方向(図2(b)の矢印A1及びA2の方向)に弾性変形する。
【0025】
さらに、図2(c)に示すように、押し込み工程の第3段階では、加圧力Fを維持しつつ、鉄筋用保持具100をさらに下向きに押し込む。このとき、板状部120の一対の腕板部121、122にそれぞれ形成された突出部121a、122aの間隔L2が、下側に配置された鉄筋30の外径d2よりも小さくなるように設定されている。このため、鉄筋用保持具100が鉄筋30に押し込まれると、一対の腕板部121、122は、鉄筋30の外周面に接触しつつ、互いに押し広げられる方向(図2(c)の矢印A3及びA4の方向)に弾性変形する。なお、図示を省略するが、板状部130側でも同様の動作が実行されるため、ここでは説明を省略する。
【0026】
続いて、図2(d)に示すように、押し込み工程の第4段階では、加圧力Fを維持しつつ、鉄筋用保持具100をさらに下向きに押し込む。すると、鉄筋20が屈曲部110の内部空間S2に収容されるとともに、鉄筋30が板状部120、130の収容穴H1に収容される。このとき、弾性変形していた板状部120及び130の間隔L1と、腕板部121及び122の間隔L2とが、いずれも元の間隔に戻る。このとき、板状部120、130と腕板部121、122とはいずれも弾性変形して変形前の状態に戻るため、鉄筋20及び30は、いずれも内部空間S2及び収容穴H1に隙間なく保持される。これにより、鉄筋20及び30が鉄筋用保持具100により固定される。
【0027】
ここで、鉄筋用保持具100の屈曲部110に収容される鉄筋20は、その最外周となる節部22が屈曲部110の内面と接触しているため、当該鉄筋20の長手方向に微小にスライドが可能となる。一方、板状部120、130に形成された収容穴H1に収容される鉄筋30は、自重により上記収容穴H1の底部に優先的に接触する。このため、鉄筋30の節部32の側面が板状部120あるいは130の側面に接触することとなり、鉄筋30の長手方向においては、鉄筋用保持具100は隣り合う上記節部32どうしの間隔内でのみスライド自在となる(言い換えれば、鉄筋用保持具100は、鉄筋30の長手方向では節部32がストッパの機能を果たす)。
【0028】
かかる構成では、上記した鉄筋用保持具100は、一方の鉄筋20を収容する屈曲部110と、他方の鉄筋30を収容する収容穴H1を備えた板状部120及び130と、を一体で構成している。また、板状部120及び130の間に形成される内部空間S1の開口する方向を鉄筋20の長手方向と一致するように配置した。これにより、交差する鉄筋20、30を別々に取り付ける工程を実施することなく、1度の押し込み動作のみで2本の鉄筋を固定保持できるため、取り付け動作が容易となる。また、交差する鉄筋のそれぞれにおいて微小なスライドを可能としているため、取付時の正確な位置決めも可能となる。
【0029】
以上、本発明による実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれらの例に限定されるものではない。また、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した特許請求の範囲を逸脱することなく、様々な代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0030】
10 (複数の)鉄筋
20、30 鉄筋
22、32 節部
100 鉄筋用保持具
110 屈曲部
112 貫通穴
120、130 板状部
121、122 腕板部
121a、122a 突出部
123 切欠部



【要約】      (修正有)
【課題】交差する鉄筋を別々に取り付ける工程を実施することなく、取り付け動作が容易でかつ位置決めも可能とする鉄筋用保持具、及びこれを用いた複数の鉄筋の固定保持方法の提供。
【解決手段】交差する2本の鉄筋20、30をこれらの交差点で固定保持するための鉄筋用保持具100である。2本の鉄筋20、30のうちの一方を内側に収容保持する断面略C字状の屈曲部110と、屈曲部110から同一方向に略平行に延びる一対の板状部120、130と、からなり、これら一対の板状部120、130は、その先端に向けて開口するとともに、2本の鉄筋20、30のうちの他方を内側に収容する収容穴と、この収容穴に連通する切欠部123と、をそれぞれ備える。
【選択図】図2
図1
図2