(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2記載の弁において、前記弁体が設けられている前記分割軸部材は、前記弁本体部の他端部付近に端部があり、前記弁体が設けられている前記分割軸部材は、その移動が前記弁本体部の外部から検出可能に構成されている弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術によれば、上述したように軸の両端部に受圧部を設け、受圧部の外径と弁座の内径とをほぼ一致するように構成しているので、流路を流れる流体が高圧であっても、その圧力による軸の上方向にかかる力と、軸の下方向にかかる力とが互いに相殺されることによって、軸線方向の上下いずれか一方に偏った力が作用することが軽減される。しかし、特許文献1の技術によれば、軸は1本で構成されており、その上部がアダプターによって案内され、下部が軸通路の下部(下部孔)によって案内され、かつ弁座が軸通路の弁座保持部に保持されることによって軸のアダプターや軸通路の下部孔とは独立した構成である。そのため軸のアダプターの中心軸と軸通路の下部孔の中心軸と弁座の中心軸の3つの中心軸を一致させる必要があり、また、軸も軸の両端と、弁体の中心軸を一致させる必要がある。特に、使用される流体の圧力が高い場合は、本体のアダプター収容部内径、アダプターの外径と内径、本体下部の下部孔の中心軸を高精度に一致させる必要があり、さらに弁座部品の外径、内径の中心軸も高精度に一致させる必要がある。軸の両端部と弁座の中心軸に傾き、ズレがあるなど精度が低い場合、軸の両端を支持された状態で弁体を弁座に完全に着座させるのは困難である。弁体及び弁座が金属製の場合は、例えば弁座及び弁体の一方または双方がゴムや樹脂等の弾性体でできている場合に比べ変形が少ないので特に高精度が必要になるが困難である。また、軸の両端の中心軸がずれている場合は、軸の摺動抵抗も大きくなり、またシール性も良くない。
【0005】
本発明は、高圧流体を使用する場合でも、軸の両側の一方に偏って流体圧による力が作用することを防止したうえで、弁体の弁座に対するシート性が良好で、軸の摺動性及びシール性も良好な弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の弁は、弁本体部を有し、この弁本体部の一端部と他端部との間に形成された軸通路に、
軸が配置されている。本体部における軸通路から離れたそれぞれの位置に少なくとも2つのポートが設けられている。これら2つのポートは、弁本体部の外界にそれぞれが連通している。少なくとも2つのポートは、例えば流体の流入口及び流出口である。前記少なくとも2つの流体のポートを軸通路と連通するように、本体部内に少なくとも2つの流路が設けられている。軸通路における前記少なくとも2つの流路間に少なくとも1つの弁座が設けられている。軸に設けられた少なくとも1つの弁体が、前記軸の進退に応じて、前記少なくとも1つの弁座に着座及び離座する。この軸の一端部に軸進退手段が結合され、軸進退手段は、軸とは別個に形成され、前記弁本体部の外部から前記軸を前記軸通路に沿って手動または自動で軸を進退させる。軸は、複数の分割軸部材によって構成されている。前記複数の分割軸部材は、それぞれが前記軸通路内に前記軸通路に沿って連続的に位置している。前記軸の一端部の側にある前記軸分割部材と前記軸の他端部の側にある前記軸分割部材にそれぞれ対応してシール部材が設けられ、これらシール部材が、これらシール部材の間にある前記軸の部分の間をシールしている。シール部材は、弁本体部側に設けることもできるし、軸側に設けることもできる。前記一端部の側と前記他端部の側とのシール部材によってそれぞれシールされている前記軸の部分の径と、前記弁座の内径とがほぼ等しく形成されている。複数の分割軸部材は、分割軸部材同士の傾き及び軸の半径方向への移動の一方または双方を許容するように結合されている。さらに、複数の分割軸部材は、前記弁本体部内に前記複数の分割軸部材それぞれに対応して設けられた複数の案内部材によって案内されている。
【0007】
このように構成された弁では、軸の両端部をシール部材でシールし、シール部材の間に少なくとも1つの弁体を設け、シール部材によってそれぞれシールされている前記軸の部分の径と前記弁座の内径とがほぼ等しく形成されているので、流体の圧力が高い場合でも、その圧力による軸の上方向にかかる力と、軸の下方向にかかる力とが互いに相殺されることによって、軸線方向の上下いずれか一方に偏った力が作用することが軽減される。その上、軸を構成する複数の分割軸部材は、それぞれに設けられた案内部材によって案内されるので、各分割軸部材と対応する案内部材との軸線を一致させられる。しかも、分割軸部材は、分割軸部材同士の傾き及び軸の半径方向に移動の一方または双方を許容するように結合されている。従って、分割軸部材同士の傾きを許容するように両者を結合した場合、弁体が設けられた分割軸部材と結合されている分割軸部材を、弁本体部に配置したとき、仮に傾いていたとしても、弁体が設けられた分割軸部材をその中心軸付近で下方に、傾いている分割軸部材が押すので、弁体が設けられている分割軸部材を傾けること無く、弁体が弁座に確実に着座する。軸の半径方向に移動を許容するように結合した場合、分割軸部材間の中心軸にずれが生じても、そのずれは、半径方向の移動によって吸収される。分割軸部材同士の傾き及び軸の半径方向に移動の双方を許容するように結合されている場合には、分割軸部材の中心軸間のずれを吸収できる上に、弁体を弁座に確実に着座させることができる。従って、本発明の弁によれば、軸線方向の上下いずれか一方に偏った力が作用することが軽減される上に、弁体の弁座に対するシート性が向上するし、軸の摺動性やシール性も向上させることができる。
【0008】
本発明の他の態様の弁も、弁本体部を有し、この弁本体部の一端部と他端部との間に形成された軸通路に、軸が配置されている。軸は、一端部の側と他端部の側とでシール部材によってそれぞれシールされている。シール部材は、弁本体部側に設けることもできるし、軸側に設けることもできる。弁本体部における軸通路から離れたそれぞれの位置に少なくとも2つのポートが設けられている。これら2つのポートは、弁本体部の外界にそれぞれが連通している。少なくとも2つのポートは、例えば流体の流入口及び流出口である。前記少なくとも2つの流体のポートを軸通路と連通するように、本体部内に少なくとも2つの流路が設けられている。軸通路における前記少なくとも2つの流路間に少なくとも1つの弁座が設けられている。軸に設けられた少なくとも1つの弁体が、前記軸の進退に応じて、前記少なくとも1つの弁座に着座及び離座する。少なくとも1つの弁体は、一端部の側と他端部の側とのシール部材の間に設けられている。前記一端部の側と前記他端部の側とのシール部材によってそれぞれシールされている前記軸の部分の径と、前記弁座の内径とがほぼ等しく形成されている。軸は、複数の分割軸部材によって構成され、複数の分割部材は、それぞれが軸通路内に前記軸通路に沿って連続的に位置し、分割軸部材同士の傾き及び軸の半径方向への移動の一方または双方を許容するように結合されている。さらに、複数の分割軸部材は、前記弁本体部内に前記複数の分割軸部材それぞれに対応して設けられた複数の案内部材によって案内されている。前記少なくとも1つの弁体が設けられた前記分割軸部材と、前記少なくとも1つの弁体とを一体に形成し、前記複数の案内部材のうち、前記弁体が設けられた前記分割軸部材に対応するものに、前記弁座を一体に設けることもできる。このように構成すると、弁体が設けられた分割軸部材と弁体とは、一体に形成され、同時加工可能であるので、両者の中心軸は一致させられる。また弁座が設けられた案内部材と弁座とも、一体に形成され、同時加工可能であるので、両者の中心軸は一致させられる。このような弁座が一体に設けられた案内部材に、弁体が一体に設けられた分割軸部材を挿通しているので、弁座の中心軸と、弁体の中心軸とにずれが無いので、シート性がさらに良好になる。
【0009】
前記弁体が設けられている前記分割軸部材は、前記弁本体部の他端部付近に端部があるものとすることができる。前記弁体が設けられている前記分割軸部材は、その移動が前記弁本体部の外部から検出可能に構成されている。このように構成すると、弁体が弁座から離座していることや、離座した距離を精度良く検出することができ、例えば流量制御に使用することもできる。
【0010】
さらに、前記弁体が設けられている前記分割軸部材は、前記弁本体部の外部に突出する検出体を有するものに構成することもできる。即ち、弁体が設けられた分割軸部材に検出体を一体に形成することもできるし、分割軸部材と別個に形成した検出体を、弁体が設けられた分割軸部材に取り付けることもできる。このように構成すると、検出体が検出手段を直接に駆動するタイプの検出手段でも、検出体が検出手段の近傍に位置したものが離れたり、近づいたりしたことを検出するタイプの検出手段のいずれでも、使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の弁では、高圧流体を使用する場合でも、軸の両側の一方に偏って流体圧による力が作用することを防止したうえで、弁体の弁座に対するシート性が良好で、軸の摺動性及びシール性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の第1の実施形態の弁は、開閉弁に本発明を実施したもので、高圧流体、例えば高圧気体、具体的には水素ガスを流通、遮断するために配管中に配置される。
【0014】
この開閉弁は、
図1に示すように、弁部2と駆動部4とからなる。弁部2は、弁本体部、例えば弁ハウジング6を有している。弁ハウジング6は、概略筒状に形成され、上下方向の中央の周囲に外方に膨出した膨出部6aを有し、その膨出部6aの上下方向の異なる位置に、例えば弁ハウジング6の一端、例えば下端側に水素ガスのポート8が、弁ハウジング6の他端、例えば上端側に水素ガスのポート10が、それぞれ内部に向かって水平に形成されている。ポート8は、例えば
図1における弁ハウジング6の左側に、ポート10は、弁ハウジング6の右側に、それぞれ位置している。これらポート8及びポート10それぞれに連なって弁本体部2の中央に向かって水平に流路12、14が形成されている。これら流路12、14の内奥端は、軸通路16に連通している。従って、ポート8、10は、流路12、14及び軸通路16を介して通じている。軸通路16は、弁ハウジング6の一端と他端とを繋ぐ直線、例えば上下方向の中心軸線上に直線状に形成されている。軸通路16は、上下両端それぞれで半径方向に拡大され、かつ開口している。
【0015】
この軸通路16内に、その長さ方向、例えば上下方向に沿って軸が配置されている。軸は、金属製で、複数、例えば2本の分割軸部材18、20によって構成されている。
【0016】
下側分割軸部材18は、弁ハウジング6の下側の弁ハウジング6の下端付近から弁ハウジング6の中間付近まで位置している。下側分割軸部材18の上端部には頭部22が形成され、頭部22は、流路14より幾分上部に位置し、頭部22の下側に、頭部22より細径の首部24が形成され、首部24の下端の全域に弁体26が一体に形成されている。
【0017】
下側分割軸部材18の弁体26、円筒状部28及び円筒状部32を覆うように軸通路16内には下側案内部材34が配置されている。下側案内部材34はその下部の外方が、弁ハウジング6の下端の開口に取り付けられた蓋部材36に支持されている。即ち、蓋部材36の上下方向の中心軸線上に形成された支持孔37に挿通されて、支持されている。下側分割軸部材18の円筒状部32は、下側案内部材34の下部から蓋部材36内に進入している。下側案内部材34は、その下部に下側分割軸部材18の円筒状部32とほぼ同一径の孔35を中心に有し、その孔35に円筒状部32が挿通されている。下側案内部材34の下端には、円筒状部32と蓋部材36の支持孔37との間に位置するようにシール部材38aが配置され、その下側にスリーブ39が円筒状部32と蓋部材36の支持孔37との間に位置するように配置され、スリーブ39の更に下側に、円筒状部32と蓋部材38の支持孔37との間に位置するようにシール部材38bが配置されている。蓋部材36の外周と軸通路16の拡大部の内周との間にシール部材40が設けられている。下側案内部材34の下部の孔35の周面に円筒状部32の外周面が接触し、下側分割軸部材18がその長さ方向に摺動する際に案内される。従って、下側分割軸部材18と下側案内部材34との中心軸は一致し、下側分割軸部材18の摺動性及びシール性は、良好である。
【0018】
下側案内部材34の上端部は、流路12、14の間にあり、そこには弁体26が着座可能に弁座42が、下側案内部材34と一体に形成されている。下側案内部材34と弁座42とは金属の同時加工によって形成されており、両者の中心軸は一致している。また、弁座42の内径、例えば
図2に示す弁座42の小径Dは、円筒状部32とほぼ同じに形成されている。
【0019】
弁体26が弁座42に着座している状態で、下側案内部材34の内外に貫通した貫通孔44を通じて、流路12が下側第1案内部材34の内部の細径の円筒状部28の付近に連通している。
【0020】
下側分割軸部材18の上部にある頭部22と首部24との境界付近の軸通路16に流路14が通じており、弁体26が弁座42に着座している状態から、下側分割軸部材18が弁ハウジング6の上端側に摺動すると弁体26が弁座42から離座し、通路12、14が通じ、例えばポート8が流入口、ポート10が流出口とすると、ポート8に供給された高圧流体がポート10から外部に流出する。
【0021】
下側分割軸部材18の頭部22は、上側の分割軸部材20とT溝結合されている。そのため、頭部22には、
図2に拡大して示すようにT溝46が形成されている。T溝46は、軸通路16の中心と同心の水平溝部46aと、この水平溝部46aの中心に位置し、頭部22の上端まで垂直に伸びた垂直溝部46bとを有し、これら水平溝部46aと垂直溝部46bとの側方に形成された開放部46cとを有している。
【0022】
このT溝46に挿入されるT字状部48が後述する上側分割軸部材20の円筒状部20aの下端に形成されている。T字状部48は、
図2に拡大して示すように垂直溝部46bに挿入される垂直部48aを上側分割軸部材20の円筒状部20aの下端に有し、垂直部48aの下端に、水平溝部46aに挿入される水平部48bを有している。水平部48bの下面48cは、下側分割軸部材18側に凸である球面に形成され、水平溝部46aの平面である底46dに球面接触している。そして、垂直部48aの幅寸法(径方向)は、垂直溝部46bの幅寸法より若干小さく、水平部48bの幅寸法は水平溝部46aの幅寸法より若干小さく、かつ水平部48bの厚さ寸法(上下方向の長さ)は、水平溝部46aの厚さ寸法よりも若干小さく形成されているので、T字状部48とT溝46との間には隙間がある。T溝46とT字状部48とは、球面接触し、かつ隙間が両者の間にあるので、T溝46とT字状部48とは、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20同士の傾きを許容するように結合されている。従って、仮に、上側分割軸部材20が傾いて配置されていたとしても、下側分割軸部材18をその中心軸付近で下方に押すので、下側分割軸部材18を傾けること無く、下側分割軸部材18に一体の弁体26が弁座42に確実に着座する。
【0023】
T溝46とT字状部48とは、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20の半径方向への移動が許容されるようにも結合されている。上述したように垂直部48aの幅寸法は、垂直溝部46bの幅寸法より若干小さく、水平部48bの幅寸法は水平溝部46aの幅寸法より若干小さく、かつ水平部48bの厚さ寸法は、水平溝部46aの厚さ寸法よりも若干小さく形成されている。従って、上側分割軸部材20は、上側分割軸部材20の半径方向及び厚さ方向に若干移動することができる程度にT溝46とT字状部48とによって拘束されている。しかし、上側分割軸部材20の厚さ方向の移動の程度が上側分割軸部材20の半径方向の移動の程度よりも小さくなるように、垂直溝部46bと垂直部48aとの上側分割軸部材20の厚さ寸法及び半径方向の寸法と、水平溝部46aと水平部48bとの上側分割軸部材20の厚さ寸法及び半径方向の寸法とが定められている。このように、T溝46とT字状部48とは、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20の半径方向への移動が許容されるように結合されているので、仮に上側分割軸部材20と下側分割軸部材18との中心軸のずれが生じたとしても、そのずれが吸収される。
【0024】
下側分割軸部材18の上端に下端が結合されている上側分割軸部材20の上端は、弁ハウジング6の上端よりも幾分突出している。上側分割軸部材20は、軸通路16の上部の拡大部に設けられた上側案内部材50によって上下方向に案内される。即ち、上側分割軸部材20の上端と下端との間にある円筒状部20aが挿通可能な孔51が、上側案内部50の中央に上下方向に沿って形成され、この孔に円筒状部20aが挿通されている。円筒状部20aと孔51との間には、上側案内部材50が有するシール部材52a、52bが、円筒状部20aの上下方向に間隔をおいて配置され、その内周面が円筒状部20aの周面と接触して案内している。上側のシール部材52aの上側に、上側案内部材50が有するスリーブ53aが設けられ、シール部材52a、52bの間に、上側案内部材50が有するスリーブ53bがシール部材52bに対する受けとして設けられ、シール部材52bの下側に、上側案内部材50が有するスリーブ53cが設けられている。これらスリーブ53a、53cの内周面も、円筒状部20aの周面と接触して案内している。また案内部材50の外周面と軸通路16の内周面との間にもシール部材54が配置されている。従って、上側分割軸部材20と上側案内部材50との中心軸は一致し、上側分割軸部材20の摺動性及びシール性は良好である。
【0025】
このように、下側案内部部材34と下側分割軸部材18との中心軸を一致させ、上側案内部材50と上側分割軸部材20との中心軸を一致させたうえに、下側分割軸部材18と上側分割軸部材20とは、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20同士の傾き及び下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20の半径方向への移動をそれぞれ許容するように結合しているので、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20からなる軸全体としても、摺動性及びシール性が良好である。
【0026】
円筒状部20aの径は、下側分割軸部材18の円筒状部32の径とほぼ等しく形成されている。また、上述したように、弁座42の内径
図2に示す弁座42の小径Dは、円筒状部32とほぼ同じに形成されている。さらに、下側分割軸部材18の下部である円筒状部32は、シール部材38a、38bに接触しシールされ、上側分割軸部材20の円筒状部20aは、シール部材52a、52bに接触しシールされている。そして、弁体26は、これらシール部材38a、38b、52a、52bの間に配置されている。
【0027】
弁体26が弁座42に着座しているとき、ポート8からの高圧流体の圧力が、弁座42に着座している弁体26と、下側分割軸部材18の円筒状部32とにかかり、弁座42に着座している弁体26に圧力によって上方向に加わる力と、円筒状部32に圧力によって下方向に加わる力とは、弁座42の内径と円筒状部32の径とがほぼ等しいので、互いに相殺され、圧力によって弁体26を上側に押す力は大きく軽減される。弁体26が弁座42から離座したとき、下側分割軸部材18の円筒状部32と上側分割軸部材20の円筒状部20aは、ほぼ同じ径であり、これらの部分に圧力がかかるので、それぞれ上下逆向きの力を受けて、これらの力が互いに相殺されることによって、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20がほぼ平衡状態に保たれ、流体流路を流れる流体が高圧の場合でも、その圧力が下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20に対して、これらの軸線方向のうち上下いずれか一方向にのみ偏って作用することが軽減される。
【0028】
1つの下側分割軸部材18に1つの下側案内部材34が設けられているので、下側分割軸部材18と下側案内部材34との中心軸は、高精度に合わせられる。同様に、1つの上側分割軸部材20に1つの上側案内部材50が設けられているので、上側分割軸部材20と上側案内部材50(詳細には、シール部材52a、52b、スリーブ53a、53c)との中心軸は、高精度に合わせられる。
【0029】
さらに下側分割軸部材18と上側分割軸部材20とは、半径方向に移動が可能にT溝結合されているので、たとえ下側分割軸部材18の中心軸と上側分割軸部材20の中心軸線との間にずれがあっても、そのずれは、半径方向への移動によって吸収される。また、下側分割軸部材18と上側分割軸部材20とは球面接触しているので、下側分割軸部材18、上側分割軸部材20同士は傾き可能であり、下側分割軸部材18の弁体26を弁座42に着座させる際に、上側分割軸部材20が少し傾いていても、上側分割軸部材20が、下側分割軸部材18をその中心軸付近で下方に押すので、下側分割軸部材18を傾けること無く、弁体26が弁座42に確実に着座する。そのうえ、下側案内部材34に同時金属加工によって弁座42が形成されているので、下側案内部材34の中心軸線と弁座42の中心軸線とのずれは無い。
【0030】
そして、弁体26が設けられた下側分割軸部材18と弁体26とは、一体に形成され、同時機械加工可能であるので、両者の中心軸は一致している。また弁座42が設けられた下側案内部材34と弁座42とも、一体に形成され、同時機械加工可能であるので、両者の中心軸は一致している。このような弁座42が一体に設けられた下側案内部材34に、弁体26が一体に設けられた下側分割軸部材18を挿通しているので、弁座42の中心軸と、弁体26の中心軸とにずれが無く、シート性がさらに良好になる。
【0031】
弁ハウジング6の上端には、上述した駆動部4が設けられている。駆動部4は、弁ハウジング6にねじ結合されている結合板55と結合されている。駆動部4の構成は、例えば特許第6059391号に開示されているアクチュエータとほぼ同一の構造で、駆動部ハウジング56と駆動部カバー58とを有し、これらの内部にシリンダ60が形成されている。このシリンダ60内にピストン62が、上下方向に摺動可能に配置され、ばね64によって下側、即ち弁本体2側に押圧されている。ピストン62には、シリンダ60から、駆動部ハウジング56の下部に形成した軸結合室66内に突出した結合軸68が形成されている。この結合軸68は、分割軸部材18、20とほぼ同軸に配置されている。軸結合室66とシリンダ60との境界の壁が結合軸68の案内部材として機能する。
【0032】
軸結合室66内において、結合軸68は、上側分割軸部材20とT溝結合されている。そのため、上側分割軸部材20の上端にはT字状部70が形成され、結合軸68の下端には、T溝72が形成されている。なお、T字状部70とT溝部72とは、下側分割軸部材18と上側分割軸部材20との結合と同様に、長さ方向の移動の程度が半径方向の移動の程度よりも小さくなるように長さ寸法及び半径方向の寸法が定められている。また、ピストン62の上側の中央には、駆動検出用の円筒状のインジケータ73が、駆動部カバー58から突出可能に設けられており、駆動部4が動作した時、インジケータ73は、駆動部カバー58から突出し、駆動部4が動作を停止した時、駆動部カバー58内に後退する。
【0033】
シリンダ60のピストン62を挟んでばね64とは反対側には、駆動部ハウジング56に形成した駆動流体供給部74及び駆動流体通路76を介して駆動流体の供給が可能で、駆動流体が供給されたとき、ピストン62がばね64の押圧力に抗しながら、上昇し、これにつれて、上側分割軸部材20、下側分割軸部材18が上昇し、弁体26が弁座42から離座し、流体ポート8側の高圧流体が、流体ポート10から排出される。
【0034】
上述したように、この開閉弁は、弁体26が弁座42に着座及び離座しているときのいずれにも、下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20にこれらの軸線方向のうち上下いずれか一方向にのみ偏って流体圧による力が作用することを軽減しているので、駆動部4のばね64に押圧力の大きな大型のものを使用する必要が無く、駆動部4を小型化することができる。また、上述したように下側分割軸部材18及び上側分割軸部材20からなる軸の摺動性及びシール性が良好であるので、駆動部4は大きな駆動力を発生する必要が無く、この観点からも駆動部4を小型化できる。
【0035】
この開閉弁の組み立ては、弁ハウジング6内に下側案内部材34、蓋部材36を配置し、弁ハウジング6の外部で下側分割軸部材18と上側分割軸部材20とをT溝結合する。このとき、上側分割軸部材20のT字状部70は、上側分割軸部材20から外されている。結合された下側分割軸部材18と上側分割軸部材20とを弁ハウジング6内の下側案内部材34に挿通し、その後に上側案内部材50を弁ハウジング6に配置し、次に結合板55を弁ハウジング6の上端に配置する。このとき、T字状部70を上側分割軸部材20に取り付け、上側案内部材50の上面付近にある正規の位置よりもT字状部70を幾分突出させた状態として、軸結合室66内で、T字状部70が駆動部4の結合軸68のT字溝72に挿通されるように、駆動部4を弁ハウジング6の上端の側方からスライドさせる。その後、結合板55を介して弁ハウジング6を駆動部4にボルトによって結合する。
【0036】
なお、上側分割軸部材20と結合軸68との結合においても、上記と同様にT字状部70の頭部を球面に構成し、結合軸68のT字溝72の底に球面接触させることもできる。
【0037】
下側分割軸部材18の下端には、外部に設けた検出スイッチ78を動作させるための検出体80が設けられている。従って、弁体26が弁座42から離座して、下側分割軸部材18が上昇したことを、外部から検出することができる。なお、検出スイッチ78は、検出体80によって直接に駆動されるタイプであってもよいし、検出スイッチ78の近傍に位置した検出体80が検出スイッチ78の近傍から離れたり近づいたりしたことを検出するタイプであってもよい。また、このタイプの場合、検出体80を設けなくても、下側分割軸部材18の移動を検出することも可能である。このように、検出スイッチ78の動作によって、この開閉弁が動作したことを電気的に検出することが可能で、さらにインジケータ73の突出により目視によって検出することもできる。また、蓋部材36と検出スイッチ78とをカバーで覆えば、検出体80と検出スイッチ78との間にゴミのような異物が入ることを防止でき、異物によって検出スイッチ78が誤動作することを防止できる。
【0038】
第2の実施形態の開閉弁の一部を
図3に示す。第2の実施形態の開閉弁では、下側分割軸部材18と上側分割軸部材20との結合が、下側分割軸部材18と上側分割軸部材20とのピン結合によって行われている。他の構成は、第1の実施形態の開閉弁と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
具体的には、ピン結合は、上側分割軸部材20の下端部に形成した頭部82を下側分割軸部材18の頭部22内に形成した挿入孔84の上方から挿入し、下側分割軸部材18の直径方向に沿って形成したピン孔86に頭部82を通過するようにピン87を挿通することによって行われている。頭部82の下面82aは、下側分割軸部材18側に凸である球面に形成され、挿入孔84の平面の底84aに球面接触している。即ち、上側分割軸部材20と下側分割軸部材18とは、第1の実施形態のT溝結合と同様に上側分割軸部材20、下側分割軸部材18同士の傾斜を許容するように結合されている。さらに、このピン結合は、第1の実施形態のT溝結合と同様に下側分割軸部材18、上側分割軸部材20の半径方向の移動を許容するようにも拘束され、これら分割軸部材18、20の長さ方向への移動が小さくなるように、即ち、下側分割軸部材18、上側分割軸部材20の半径方向へ、長さ方向よりも移動しやすいように、ピン87の径、挿入孔84、ピン孔86の径などが選択されている。従って、第1の実施形態の開閉弁と同様な効果を奏する。
【0040】
第3の実施形態の開閉弁の一部を
図4に示す。第3の実施形態の開閉弁では、下側分割軸部材18と上側分割軸部20との結合が緩やかなねじ結合によって行われている。他の構成は、第1の実施形態の開閉弁と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0041】
緩やかなねじ結合は、第1の実施形態のT溝結合と同様に下側分割軸部材18、上側分割軸部材20の半径方向の移動が可能なように結合したもので、上側分割軸部材20の下端の周囲に、雄ねじ88を形成し、下側分割軸部材18の頭部22の上端から、その内部に形成した雌ねじ90に完全に螺合させるのではなく、緩やかに螺合させてある。即ち、雄ねじ88の山と雌ねじ90の谷との間に隙間があり、雄ねじ88の谷と雌ねじ90の山との間に隙間がある。このように緩やかにねじ結合させているので、第1の実施形態のT溝結合と同様に下側分割軸部材18、上側分割軸部材20の半径方向の移動が、これら分割軸部材18、20の長さ方向への移動よりも大きくなるし、上側分割軸部材20、下側分割軸部材18同士の傾斜を許容する。従って、下側分割軸部材18、上側分割軸部材20の半径方向へ移動しやすいので、第1の実施形態の開閉弁と同様な効果を奏する。但し、雄ねじ88や雌ねじ90が回ることを防止する回り止め(図示せず)を別途設けている。
【0042】
上記の各実施形態では、駆動部4が非動作状態で、弁座42に弁体26が着座し、駆動部4が動作した時に弁座42から弁体26が離座するように構成したが、逆に、駆動部4が非動作状態で弁座42から弁体26が離座しており、駆動部4が動作した時弁体26が弁座42に着座するように構成することもできる。また、上記の各実施形態では、駆動部4によって軸を駆動するように構成したが、駆動部4を除去し、代わりに手動によって軸を操作する操作部を設けることもできる。上記の各実施形態では、ポート8を流入口、ポート10を流出口として使用する状態を説明したが、逆に、ポート8を流出口、ポート10を流入口として使用することもできる。
【0043】
上記の各実施形態では、検出体80を設けたが、場合によっては除去することもできるし、下側分割軸部材18と一体に検出体を形成することもできる。また、蓋部材36と検出スイッチ78とをカバーで覆うことによって、検出体80と検出スイッチ78との間にゴミのような異物が入ることを防止して、検出スイッチ78が誤動作することを
【0044】
第1の実施形態では、
図2に示すように、水平部48bの下面48cを下側分割軸部材18側に凸である球面に形成し、水平溝部46aの底46dを平面に形成したが、逆に、水平部48bの下面48cを平面に形成し、水平溝部46aの底46dを上側分割軸部材20側に凸である球面に形成することもできる。上記の各実施形態では、前記分割軸部材同士の傾き及び前記軸の半径方向の移動双方を許容するように構成したが、いずれか一方のみを許容するように構成することもできる。上記の各実施形態では、軸を下側分割軸部材18と上側分割軸部材20との2本に分割形成したが、さらに多くの本数に分割形成することもできる。
【0045】
また、上記の各実施形態では、1つの弁体が1つの弁座に着座、離座する開閉弁に本発明を実施したが、1つのポートを、2つのポートのうち選択されたポートに接続したり、2つのポートのうち選択されたものを、1つの別のポートに接続したりする三方切換弁に本発明を実施することもできる。例えば次のように構成することもできる。弁本体部の軸通路に、その軸通路よりも細径の軸を配置し、軸通路の内周面と軸の外周面との間を流体の通路として使用する。この軸の両端部側でそれぞれシール部材によって軸通路に対して軸をシールする。これらシール部材の間に位置するように、弁体を軸に設ける。この弁体を軸の長さ方向に挟んで軸の一端側と他端側とにそれぞれ位置するように、一端側弁座と他端側弁座を軸通路に設ける。弁体が一端側弁座に着座しているとき、他端側弁座から弁体は離座し、軸がその長さ方向に摺動して弁体が一端側弁座から離座したとき、他端側弁座に着座する。2つの弁座の間に位置し、軸通路に連通するように第1のポートを弁本体部に設けてある。軸の一端側に軸通路と連通するように第2のポートを設け、第2のポートは、弁体が一端側弁座に着座し、他端側弁座から離座しているとき、第1のポートと遮断され、弁体が一端側弁座から離座し、他端側弁座に着座しているとき、一端側弁座及び軸通路を介して第1のポートと連通する。軸の他端側で軸通路と連通するように第3のポートを本体部に設けてある。第3のポートは、弁体が一端側弁座に着座し、他端側弁座から離座しているとき、他端側弁座及び軸通路を介して第1のポートと連通し、弁体が一端側弁座から離座し、他端側弁座に着しているとき、第1のポートと遮断される。軸の一端側と他端側とのシール部材に接している軸の部分の径は、ほぼ等しく、かつ一端側及び他端側の弁座の内径とほぼ等しく形成されている。軸は、複数の分割軸部材に分割され、各分割軸部材は、それぞれに対応して設けた案内部材によって摺動方向に案内され、各分割軸部材の結合は、分割軸部材同士の傾き及び前記軸の半径方向の移動の一方または双方を許容するように行われている。上記の場合、弁体は、1つだけ設けたが、2つの分割軸部材それぞれに弁体を設け、一方の弁体は一端部の弁座に対して着座及び離座するように構成し、他方の弁体は他端部側の弁座に対して着座及び離座するように構成することもできる。
【解決手段】弁ハウジング6内の上端と下端との間にある軸通路16に沿って分割軸部材18、20からなる軸が配置されている。弁体26が流路12、14間に位置して分割軸部材18に設けられている。分割軸部材18、20は、T溝46とT字状部48とで結合され、この結合は、分割軸部材18、20同士の傾き及び半径方向への移動を許容する。軸部材18に案内部材34が、軸部材20に案内部材50が設けられ、案内部材34に弁体26に対する弁座42が一体に形成されている。軸分割部材18の円筒状部32はシール部材38a、38bでシールされ、軸分割部材20の円筒状部20aはシール部材52a、52bでシールされている。円筒状部32と円筒状部20aとの径及び弁座42の内径は、ほぼ同じに形成されている。