(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記第1フレームが受信された場合、少なくとも前記第1チャネルと前記第1リソースユニット以外のリソースユニットでは、前記待ち受け動作を行わないように制御する
請求項1に記載の無線通信装置。
前記制御部は、前記第1フレームに、前記無線通信装置を特定する情報が含まれるか否かを検査し、前記情報が含まれる場合に、前記第1リソースユニットでの待ち受け動作を行うよう制御する
請求項1または2に記載の無線通信装置。
前記制御部は、前記第1リソースユニットの信号が抽出され、前記第1リソースユニット以外のリソースユニットの信号を遮断するように、アナログフィルタの帯域を設定する
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の無線通信装置。
前記開始時刻は、前記第1フレームの受信時刻に、前記第1リソースユニットでの待ち受け動作を開始するまで要するセットアップ時間を加算した時刻よりも後の時刻である
請求項7に記載の無線通信装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について、説明する。無線LANの規格書して知られているIEEE Std 802.11
TM−2012およびIEEE Std 802.11ac
TM−2013は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る無線通信基地局と無線通信端末とを備えた無線通信システムの構成図である。この無線通信システムは、IEEE802.11規格に従って通信ンする。ただし、IEEE802.11規格は一例であり、他の無線通信方式に従って通信してもかまわない。以下、無線通信基地局を基地局、無線通信端末を端末と呼ぶ。基地局も端末の一形態であり、中継機能を有する点が非基地局の端末と主に異なる。
【0010】
基地局(AP:Access Point)101に、端末(STA:STAtion)201、202、203、204が接続して、1つの無線通信システムもしくは無線通信グループを形成している。接続とは、無線リンクを確立した状態を意味している。端末は、基地局とのアソシエーションプロセスを経て、通信に必要なパラメータの交換が完了することで、無線リンクが確立される。この状態では、基地局および端末は、互いの能力を把握している。
図1では4台の端末が示されるが、5台以上の端末が存在してもよいし、3台以下の端末が存在してもよい。
【0011】
基地局101は、所定の周波数帯域内の複数の無線チャネル(以下、チャネル)を用いて、複数の端末と同時に受信または送信することができる。基地局は、各端末にチャネルを1つまたは複数割り当て、これらの端末と同時に受信または同時に送信する。このような通信方式をチャネルベースのOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式またはマルチユーザーマルチチャネル(Multi−user Multi−Channel:MU−MC)通信方式と呼ぶ。チャネルベースのOFDMAまたはMU−MC通信方式に対応した端末は、MU−MC対応端末(またはIEEE802.11ax対応端末)と呼ぶことがある。無線通信システムには、MU−MCに対応しないレガシー端末が存在してもよい。レガシー端末は、例えば、IEEE802.11b/g/n/ac等の規格に従って通信を行う。
【0012】
本実施形態では、所定の周波数帯域内に存在する複数のチャネルとして、周波数の低い側から順に、チャネル1からチャネル8までの8個のチャネルがあるとする。チャネル1〜8の1〜8までの数字は、チャネル番号を表す。例えば、チャネル1は、チャネル番号1のチャネルのことである。なお、図では、基地局および各端末は1本のアンテナを備えているかのように描かれているが、実際には1本または複数のアンテナを備えていてもよい。なおここでのチャネル番号は、想定する単位チャネル幅(例えば20MHz幅)のチャネルが互いに重複しないように配置されている場合にこれらのチャネルを便宜的に定義した番号である。本実施形態では、中心周波数が高くなるほどチャネル番号も高くなる場合を想定するが、これは一例であり、中心周波数の順序とチャネル番号の順序が一致している必要はない。
【0013】
本実施形態では、このようにチャネルベースのOFDMA方式(MU−MC通信)を利用するが、連続する周波数領域内で、1つまたは連続する複数のサブキャリアを一単位とするリソースユニットを端末に各々割り当てて同時に通信する、リソースユニットベースのOFDMA方式でもよい。
【0014】
例えば、
図19に示すように、周波数領域に複数のチャネルが配置されており、1つ1つのチャネルの幅(例えば20MHz)をそれぞれ連続する周波数領域とする。1つのチャネル内には、周波数的に連続する複数のサブキャリアが互いに直交している。1つまたは連続する複数のサブキャリアを一単位とするリソースユニット(サブチャネル、リソースブロックなど、別の呼び方でも良い)を定義し、各端末には、1つまたは複数のリソースユニットを割り当てる。このようにリソースユニットを各端末に割り当てて同時に通信する方式を、リソースユニットベースのOFDMA方式と呼ぶ。
図19では、1つのチャネル(ここではチャネルMと記述している)内の連続した周波数領域に確保したリソースユニット(RU#1、RU#2、・・・RU#K)が示されている。リソースユニット間には、1つ以上のサブキャリア(ガードサブキャリア)が配置されてもよいが、ガードサブキャリアは必須ではない。ガードサブキャリアの個数は2に限定されず、1以上であれば任意でよい。
【0015】
本実施形態におけるチャネル1〜8のうちの1つまたは複数を用いて、、各端末に、リソースユニット単位での割り当てを行ってもよい。このとき、各チャネルで1リソースユニット当たりのサブキャリア数は同じとするが、チャネル間で1リソースユニットのサブキャリア数が異なることを許容してもよい。また、同じチャネルに属する各リソースユニット内のサブキャリア数は同じとするが、各リソースユニットでサブキャリア数が異なることを許容してもよい。端末には、1つのチャネルの中の1つまたは複数のリソースユニットを割り当ててもよいし、複数のチャネルに属する複数のリソースユニットを割り当ててもよい。また、リソースユニットベースのOFDMA通信で使用するチャネル数に応じて、チャネル内のサブキャリア数が変わってもよい。例えばリソースユニットベースのOFDMA通信で1つのチャネルを使用するときは、チャネル内のサブキャリア数はX本、2つのチャネルを使用するときは1チャネル当たりのサブキャリア数はX/2本などとしてもよい。この場合、サブキャリア数が少なくなると、それに応じて、サブキャリアの帯域幅が大きくなり、逆にサブキャリア数が多くなると、それに応じて、サブキャリアの帯域幅が小さくなる。なお、リソースユニットを1つのチャネル内の全サブキャリアであるように定めた場合、リソースユニットベースのOFDMAの動作は、チャネルベースのOFDMAと実質的に同じになるといえる。
【0016】
以下の説明では、チャネル単位で端末に割り当てを行うチャネルベースのOFDMA方式を前提とするが、リソースユニット単位で端末に割り当てを行う、リソースユニットベースのOFDMA方式を用いる場合は、以下の説明のチャネルをリソースユニットに置き換えて読み、チャネルベースのOFDMA(MU−MC)をリソースユニットベースのOFDMAに置き換えて読むなどすることで実施可能である。なお、リソースユニットベースおよびチャネルベースを問わずOFDMA方式の通信を行っていない通常の動作期間では、システムとして共通認識のプライマリチャネルを基本チャネルとして通信を行ってもよい。プライマリチャネルは、リソースユニットベースのOFDMA方式の通信を行っている間も、監視および送受信を行ってもよい。なお、チャネルベースまたはリソースユニットベースのOFDMAで、データ送信する際の通信の方向には、基地局から各端末へのダウンリンクと、各端末から基地局へのアップリンクがあるが、本実施形態では主としてダウンリンクの場合を想定する。ただし、アップリンクの場合も本実施形態と同様にして実施可能である。
【0017】
図1における基地局および各端末には、互いに通信を行うための無線通信装置が搭載されている。端末に搭載される無線通信装置は、基地局に搭載される無線通信装置と通信を行う。基地局に搭載される無線通信装置は、端末に搭載される無線通信装置と通信を行う。
【0018】
図2は、各端末に搭載される無線通信装置のブロック図である。
【0019】
端末の無線通信装置は、1つまたは複数のアンテナ、PHY処理部及び無線部20、MAC処理部30及び上位層処理部40を備える。MAC処理部30は、送信部31、受信部32、第1制御部33、第2制御部34およびタイマー35を含む。ここでは制御部を第1制御部33と第2制御部34に分けているが、これらをまとめて1つの制御部としてもよい。MAC処理部30、またはMAC処理部30とPHY処理部及び無線部20の組は、本実施形態の無線通信用集積回路に対応する。各部のデジタル領域の処理の全部または一部、あるいは無線通信用集積回路の処理は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。端末は、各部の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えてもよい。
【0020】
PHY処理部及び無線部20は、1つもしくは複数の送受信処理部を有する。Xを1以上の整数として、第1〜第Xの送受信処理部を備える。各送受信処理部には、それぞれアンテナが接続されている。1チャネル毎に1つの送受信処理部が配置されてもよいし、複数チャネルを纏めて処理する場合には、複数チャネルで1つの送受信処理部が配置されてもよい。1チャネル毎に1つの送受信処理部が配置される場合には、本無線通信装置が8チャネルまで対応可能とした場合、1チャネル毎に処理を行うため、送受信処理部を8個備えることになる。また、図示の例では、送受信処理部ごとにアンテナが接続されているが、複数の送受信処理部に1つのアンテナが接続されていてもよい。この場合、1つのアンテナが共通に接続された複数の送受信処理部では、それぞれ自処理部に割り当てられたチャネルの信号を抽出すればよい。各送受信処理部は、すべてまたは複数のチャネルをカバーするアナログフィルタで全チャネル帯域分の信号を抽出し、デジタルフィルタで自処理部のチャネルの信号を抽出してもよいし、自処理部のチャネル帯域にのみ対応するアナログフィルタで信号を抽出してもよい。また、アナログフィルタは、第2制御部34の指示でその動作帯域が可変になっていてもよいし、予め固定された帯域の信号のみに対応したアナログフィルタであってもよい。各送受信処理部は、送信に関しては、各々が別個のチャネルに対応していてもよいし、すべてまたは複数のチャネルに対応していてもよい。各送受信処理部が処理するチャネルに関する情報は、第2制御部34が管理する。第2制御部34が、各送受信処理部に処理すべきチャネルを割り当て、割り当てたチャネルを各送受信処理部に指示する。各送受信処理部は、第2制御部34から指示されたチャネルを処理する。
【0021】
第1制御部33は、チャネルのアクセスを管理し、所望タイミングにて、フレームの送信を制御する。所望タイミングでフレーム送信を行うため、タイマー35を利用してもよい。所望タイミングの時刻までの時間をタイマー35に設定し、タイマー35がタイムアウトしたら、フレーム送信を実行する。送信部31は、フレームの生成および送信を行う。送信部31は、第1制御部33からフレームの送信が指示されると、送信部31は、指示されたフレームを生成し、生成したフレームを、PHY処理部及び無線部20へ出力する。PHY処理部及び無線部20は、送信部31から入力されたフレームを、該当するチャネルの送受信処理部へ入力する。各送受信処理部では、送信部31から入力されたフレームに対し、所望の物理層の処理を行って、D/A変換や周波数変換等を行い、アンテナから信号を空間に電波として送信する。なお、本実施形態のフレームは、例えばIEEE802.11規格でフレームと呼ばれているもののみならず、パケットと呼ばれているものであってもよい。
【0022】
第1制御部33および第2制御部34は、基地局に送信する情報を記憶装置にアクセスして情報を読み出してもよいし、または基地局から受信した情報を記憶装置に格納してもよい。記憶装置は、第1制御部33または第2制御部34またはこれらの両方が備えるバッファ(内部メモリ)でも、第1制御部33または第2制御部34の外に備えられたバッファ(外部メモリ)でもよい。記憶装置は、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、記憶装置は、メモリ以外に、SSD、ハードディスク等でもよい。
【0023】
PHY処理部及び無線部20の各送受信処理部は、アンテナを介して受信した信号を無線周波数からベースバンドへ変換し、ベースバンド信号から該当するチャネルの信号を抽出する。抽出した信号に受信処理を行ってフレームを取得し、フレームを受信部32へ出力する。受信処理としては、例えば、A/D変換や、復調処理および物理ヘッダの解析などの物理層処理が含まれる。
【0024】
受信部32は、PHY処理部及び無線部20から入力されたフレームのMACヘッダの解析等を行う。受信部32は、受信したフレームのMACヘッダの解析結果から、受信フレームがデータフレームであると判断した場合は、必要に応じて、データフレームを上位処理部40へ出力する。また、受信フレームが管理フレームまたは制御フレームであれば、当該フレームを第1制御部33に出力する。また、受信したフレームがACK(Acknowledgement)応答の必要なフレームか否か、およびフレームの受信成功の可否に応じて、ACKフレームの生成指示を第1制御部33に出力、または送信部31に直接出力する。ACKフレームの代わりに、BlockAckフレーム(BAフレーム)の生成指示を出力する構成も可能である。ACKフレームおよびBlockAckフレームは、送達確認応答フレームの一形態である。BAフレームは、受信した各フレームの成功可否を表す情報を含む。
【0025】
なお、管理フレームは、他の端末との間の通信リンクの管理のために用いられるフレームである。一例として、ビーコンフレーム、アソシエーション要求フレーム(基地局への接続を要求する接続要求フレーム)、アソシエーション応答フレーム(接続要求フレームの応答フレームである接続応答フレーム)等がある。その他、後述する本実施形態で新たに定義する管理フレームもある。制御フレームは、管理フレーム及びデータフレームを、他の無線通信装置との間で送受信(交換)するときの制御のために用いられるフレームである。一例として、RTSフレーム、CTSフレーム、ACKフレーム等がある。これらデータフレーム、管理フレーム、制御フレームの詳細は、他の実施形態で後述する。
【0026】
また受信部32は、PHY処理部及び無線部20の各送受信処理部を介して、キャリアセンス情報の管理を行う。このキャリアセンス情報には、PHY処理部及び無線部20から入力する媒体(CCA)のビジーおよびアイドルに関する物理的なキャリアセンス情報と、受信フレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス情報とがある。いずれか一方のキャリアセンス情報がビジーを示すならば、媒体がビジーであるとみなされ、その間、信号の送信が禁止される。なお、IEEE802.11規格では、媒体予約時間は、MACヘッダの中のDurationフィールド(後述する
図4参照)に記載されことが定められている。受信部32は、他の端末宛ての(すなわち自端末宛てでない)フレームを受信した場合に、フレームに記載された媒体予約時間の間、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体ビジーを判定する仕組み、或いは、仮想的な媒体ビジーの期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。
【0027】
端末は、基地局101に接続する場合は、第1制御部33の制御の下、送信部31において、接続要求フレーム、すなわち、アソシエーション要求(Association Request)フレームを生成する。アソシエーション要求フレームの送信方法としては、一例として、例えばIEEE802.11acのように、システムとして共通認識のプライマリチャネルにてアソシエーション要求フレームを送信する。プライマリチャネルを含む複数のチャネルでアソシエーション要求フレームを送信してもよい。プライマリチャネルは、例えばチャネル1など、事前に定められていてもよいし、基地局が複数のチャネルの中からプライマリチャネルを選択して決定することも可能である。プライマリチャネルを示す情報が、ビーコンフレームによって、基地局101から各端末に通知されてもよい。
【0028】
端末の受信部32は、基地局101からアソシエーション要求フレームへの応答であるアソシエーション応答フレームを受信する。これにより基地局101へ接続され、基地局101が形成する無線通信グループに属する。
【0029】
端末は、基地局101から、MU−MC通信で使用するチャネルとして基地局により割り当てられたチャネルの通知を受ける。この通知は、例えば、基地局101から送信されるビーコンフレーム、前述したアソシエーション応答フレーム、その他別途定義される管理フレームで行われる。管理フレームに、MU−MC通信で使用するチャネルを指定する情報が含まれる場合、当該情報は第1制御部33に通知される。第2制御部34は、通知されたチャネルを、MU−MC通信で使用するチャネルとして把握する。端末に割り当てたチャネルを通知する情報の構成は、チャネルの番号を特定可能な限り、任意でよい。
【0030】
端末は、自端末が使用を希望するチャネルの情報(使用希望チャネル情報)をアソシエーション時またはその後の任意のタイミングで、管理フレームなどで基地局101に通知し、基地局101は使用希望チャネル情報に基づいて、各端末が使用するチャネルを決定してもよい。
【0031】
この場合、端末は、自端末が使用を希望するチャネルを、キャリアセンスを行うことで決定してもよい。例えば、PHY処理部及び無線部20を介して、チャネル1からチャネル8までのキャリアセンスを行う。PHY処理部及び無線部20から、受信部32に各チャネルでのキャリアセンス結果が通知され、第1制御部33は、各チャネルのキャリアセンス結果に基づき、使用を希望するチャネルを選択する。例えば、チャネル1及び2がビジーであり、チャネル3〜8がアイドルであれば、チャネル3からチャネル8の中から、チャネルを選択する。使用するチャネル数など、チャネルの選択条件は任意でよい。なお、リソースユニットベースのOFDMA方式の場合もキャリアセンスはチャネル単位で行ってもよく、その場合、キャリアセンスがアイドルであるチャネルの中から、使用を希望するリソースユニットを選択すればよい。また、プライマリチャネルの監視についても、リソースユニットベースのOFDMA方式の場合でも、チャネルでの監視で行ってもよい。
【0032】
第1制御部33は、基地局から受信されるMU−MC通信の開始通知フレームに従って、MU−MC通信用のチャネルで待ち受け動作を行うように、各送受信処理部を制御する。開始通知フレームは、ビーコンフレームまたは別途定義される管理フレーム、あるいは制御フレームの形態を有する。待ち受け動作とは、基地局101から送信されるフレームを受信可能な状態で待機することである。具体的に、該当するチャネルでのキャリアセンスを行うことを含み、また該当するチャネルでのフレームの信号の受信および復調等の受信処理を行えるように送受信処理部および受信部の動作を設定することも含んでよい。開始通知フレームは、MU−MC通信がこれから開始することを予告するものであり、MU−MC通信が可能な期間であるMU−MC有効期間を通知する機能を有していてもよい。
【0033】
なお、端末は、MU−MC通信を実行可能であり、かつMU−MC通信の機能が有効(オン)になっていることを、アソシエーション時またはその後の任意のタイミングで、基地局に通知してもよい。基地局は、当該通知を行った端末を、MU−MC通信可能な端末として認識してもよい。
【0034】
本実施形態では、MU−MC通信用のチャネルを待ち受け動作させる時間を抑制して消費電力の低減を図ることを特徴の1つとしている。一例として、MU−MC有効期間の全部または一部の期間、MU−MC通信用のチャネルの待ち受け動作させ、それ期間以外は、基本的に、プライマリチャネルのみ待ち受け動作させる。
【0035】
具体例として、MU−MC有効期間の開始時刻(MU−MC通信の開始時刻と呼ぶこともある)に、MU−MC通信用のチャネルの待ち受け動作を開始し、MU−MC有効期間の終了時刻(MU−MC通信の終了時刻と呼ぶこともある)で待ち受け動作のチャネルを元(プライマリチャネル)に戻す。開始時刻を特定する情報は、基地局から開始通知フレーム(ビーコンフレームまたは管理フレームなど)で通知されてもよい。開始時刻は具体的な時刻を特定する値でもよいし、開始通知フレームの送信からの経過時間で特定されてもよい。また、開始時刻は、開始通知フレームの送信時刻とし、開始時刻を特定する情報の通知を省略してもよい。この場合、開始通知フレームの受信後、即時にMU−MC通信用のチャネルの待ち受け動作を開始すればよい。また終了時刻を特定する情報を、基地局から開始通知フレームで通知してもよい。終了時刻は、具体的な時刻を特定する値でもよいし、開始通知フレームからの経過時間で特定してもよい。
【0036】
また、開始通知フレームの送信後、X回目に送信するビーコンフレームの直前のビーコンインターバルの終了時刻など、ビーコンフレームの送信回数で、MU−MC有効期間の終了時刻が特定されてもよい。また、開始通知フレームの送信後、連続するX回のビーコンインターバルの間、MU−MC有効期間とし、当該Xの値を通知してもよい。このとき、開始通知フレームがビーコンフレームの場合、開始フレームの送信時刻がMU−MC有効期間の開始時刻に一致し、最後のビーコンインターバルの終了時刻(当該ビーコンフレームの送信時刻)がMU−MC有効期間の終了時刻に相当してもよい。
【0037】
また、開始通知フレームの受信後、MU−MC有効期間の間に別の開始通知フレームを受信した場合は、MU−MC有効期間は終了したと判断し、待ち受け動作チャネルを元のチャネル(プライマリチャネル)に戻してもよい。ただし、別の開始通知フレームでも自端末が指定されている場合は、MU−MC通信用のチャネルに変更が無い限り、待ち受け動作チャネルを維持してもよい。
【0038】
ここで、待ち受け動作するチャネルを変更するには、チャネルを変更または起動するためのセットアップ時間が必要になる。例えば変更後のチャネルに合わせてアナログフィルタの動作帯域を調整する時間が必要になり、新たにアナログフィルタを起動する必要がある場合は、電源供給および帯域調整を行って、動作可能な状態にする時間が必要になる。また、デジタフフィルタを起動する必要がある場合には、デジタルフィルタをメモリから読み出して適用可能にするための時間が必要になる。したがって、開始時刻にMU−MC通信用のチャネルで待ち受け動作を開始可能にするためには、開始時刻より前に起動動作を開始し、開始時刻までには待ち受け動作が可能な状態にしておく必要がある。そこで、MU−MC通信の対象となる端末が開始通知フレームを受信してから開始時刻までに待ち受け動作チャネルの変更が完了できるように、MU−MC有効期間の開始時刻を定める必要がある。チャネル変更のための最大の時間が事前に定められている場合は、開始時刻は、開始通知フレームの送信から一定時間(>=最大の時間)後の時刻として、システムで事前に定められていてもよい。また、各端末から自端末でのチャネル変更に要する時間を表す情報(セットアップ時間情報)を基地局に通知し、基地局は、MU−MC通信の対象となる端末のうち最大の時間に基づいて開始時刻を決定してもよい。各端末のセットアップ時間情報は、セットアップに要する時間の値を通知してもよいし、例えば500μs以下、あるいは1μs以下といったように、複数の値範囲のうち該当する値範囲に応じて段階(レベル)を通知してもよい。
【0039】
なお、本実施形態で述べるフレームは、例えばIEEE802.11規格でフレームと呼ばれているもののみならず、パケットと呼ばれているものを指してもよい。
【0040】
図3は、基地局101に搭載される無線通信装置のブロック図である。
【0041】
基地局101の無線通信装置は、1つまたは複数のアンテナ、PHY処理部及び無線部70、MAC処理部80及び上位層処理部90を備える。MAC処理部80は送信部81、受信部82、第1制御部83、第2制御部84及びタイマー85を含む。ここでは制御部を第1制御部83と第2制御部84に分けているが、これらをまとめて1つの制御部としてもよい。MAC処理部80、またはMAC処理部80とPHY処理部及び無線部70の組は、本実施形態の無線通信用集積回路に対応する。各部のデジタル領域の処理の全部または一部、あるいは無線通信用集積回路の処理は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。端末は、各部の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えてもよい。
【0042】
PHY処理部及び無線部70は、1つもしくは複数の送受信処理部を有する。Xを1以上の整数として、第1〜第Xの送受信処理部を備える。各送受信処理部にはそれぞれアンテナが接続されている。1チャネル毎に1つの送受信処理部が配置されてもよいし、複数チャネルを纏めて処理する場合には、複数チャネルに対して1つの送受信処理部が配置されてもよい。1チャネル毎に1つの送受信処理部が配置される場合には、本無線通信装置が8チャネルまで対応可能とした場合、1チャネル毎に処理を行うため、送受信処理部を8個備えることになる。また、図示の例では、送受信処理部ごとにアンテナが接続されているが、複数の送受信処理部に1つのアンテナが共通に接続されていてもよい。この場合、1つのアンテナが共通に接続された複数の送受信処理部では、それぞれ自処理部に割り当てられたチャネルの信号を抽出すればよい。各送受信処理部は、すべてまたは複数のチャネルをカバーするアナログフィルタで全チャネル帯域分の信号を抽出し、デジタルフィルタで自処理部のチャネルの信号を抽出してもよいし、自処理部のチャネル帯域にのみ対応するアナログフィルタで信号を抽出してもよい。また、アナログフィルタは、第2制御部34の指示でその動作帯域が可変になっていてもよいし、予め固定された帯域の信号のみに対応したアナログフィルタであってもよい。各送受信処理部は、送信に関しては、各々が別個のチャネルに対応していてもよいし、すべてまたは複数のチャネルに対応していてもよい。各送受信処理部に割り当てるチャネルに関する情報は、第2制御部84が管理する。第2制御部84が、各送受信処理部に処理すべきチャネルを割り当て、割り当てたチャネルを各送受信処理部に指示する。各送受信処理部は、第2制御部84から指示されたチャネルを処理する。
【0043】
PHY処理部及び無線部70の各送受信処理部は、アンテナを介して受信した信号を無線周波数からベースバンドへ変換し、ベースバンド信号から該当するチャネルの信号を抽出する。抽出した信号に受信処理を行ってフレームを取得し、フレームを受信部82へ出力する。受信処理としては、例えば、A/D変換や、復調処理および物理ヘッダの解析などの物理層処理が含まれる。
【0044】
受信部82は、PHY処理部及び無線部70から入力されたフレームのMACヘッダの解析等を行う。受信部82は、受信したフレームのMACヘッダの解析結果から、受信フレームがデータフレームであると判断した場合は、必要に応じて、データフレームを上位処理部90へ出力する。また、受信フレームが管理フレームまたは制御フレームであれば、当該フレームを第1制御部83に出力する。また、受信したフレームがACK応答の必要なフレームか否か、およびフレームの受信成功の可否に応じて、ACKフレームの生成指示を第1制御部83に出力、または送信部81に直接出力する。また、受信部82では、端末の受信部32と同様に、キャリアセンス情報の管理を行う。前述したように、キャリアセンス情報は、物理的なキャリアセンス情報と、仮想的なキャリアセンス情報との両方を包含してもよい。
【0045】
第1制御部83は、チャネルのアクセスを管理し、所望タイミングにて、フレームの送信を制御する。所望タイミングでフレーム送信を行うため、タイマー85を利用してもよい。所望タイミングの時刻までの時間をタイマー85に設定し、タイマー85がタイムアウトしたら、フレーム送信を実行する。また、第1制御部83は、MU−MC通信用に各端末にチャネルを割り当てる割り当て手段を備える。割り当て手段を用いて、各端末にチャネルの割り当てを行う。第1制御部83は、各端末に割り当てたチャネルを管理する。第1制御部83は、各端末に任意の方法でチャネルを割り当ててよい。例えば、各端末から使用要求チャネル情報を受信する場合は、当該情報に基づき、各端末にチャネル割り当てを行う。基本的には、重複しないように各端末にチャネルを割り当てるが、端末間で割り当てるチャネルが重複してもよく、実際のMU−MC通信時には、端末間で重複したチャネルを使用しないように制御してもよい。使用要求チャネル情報を利用しない方法として、各端末宛のデータ量に基づいて、各端末に割り当てるチャネルを決定してもよい。
【0046】
第1制御部83は、端末に割り当てたチャネルを通知する情報を含むフレームの生成及び送信を送信部81に指示する。前述したように、当該情報を通知するフレームは、アソシエーション応答フレーム、ビーコンフレームおよびその他の管理フレームなどがある。また第1制御部83は、複数端末宛のデータが存在するなどとして、MU−MC通信の開始を決定したら、MU−MC通信の対象となる端末を決定する。自局の待ち受け動作チャネルをMU−MC通信で使用するチャネルに変更するよう第2制御部64に指示する。なお、プライマリチャネルは、MU−MC通信で使用しなくとも、待ち受け動作しておいてもよい。第1制御部83は、MU−MC通信の開始を通知するフレーム(開始通知フレーム)の生成を送信部81に指示し、開始通知フレームをプライマリチャネルで送信するよう指示する。開始通知フレームには、例えば、指定した端末を特定する情報を含める。また、端末に割り当てたチャネルを特定する情報を開始通知フレームに含めることも可能である。その他、MU−MC有効期間の開始時刻を特定する情報、または、終了時刻を特定する情報、または、これらの組み合わせを含めてもよい。
【0047】
第1制御部83および第2制御部84は、端末に送信する情報を記憶装置にアクセスして読み出してもよいし、また端末から受信した情報を記憶装置に格納してもよい。記憶装置は、第1制御部83または第2制御部84またはこれらの両方が備えるバッファ(内部メモリ)でも、第1制御部83または第2制御部84の外に備えられたバッファ(外部メモリ)でもよい。記憶装置は、DRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、記憶装置は、メモリ以外に、SSD、ハードディスク等でもよい。
【0048】
送信部81は、第1制御部83の制御の下、フレーム(管理フレーム、制御フレーム、データフレーム)の生成および送信を行う。送信部81は、第1制御部83からフレームの生成および送信が指示されると、指定されたフレームを生成し、生成したフレームを、PHY処理部及び無線部70へ出力する。送信するフレームがデータフレームの場合、データフレームのボディフィールドに格納するデータは、上位層処理部40から取得したデータである。PHY処理部及び無線部70は、送信部81により生成されたフレームを、該当する送受信処理部へ入力する。各送受信処理部では、送信部81から入力されたフレームに対し、所望の物理層の処理を行って物理パケットを生成し、物理パケットをD/A変換および周波数変換等して無線周波数の信号を生成し、アンテナから当該信号を空間に電波として送信する。
【0049】
図4に、本実施形態におけるフレームの基本的なフォーマット例を示す。
【0050】
図4のフレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、フレームボディ(Frame body)及びFCS(Frame Check Sequence)の各フィールドを含む。データフレーム、管理フレーム、制御フレームは、基本的にこのフォーマットをベースとし、適宜、一部フィールドが省略されることもある。前述したアソシエーション要求フレーム、アソシエーション応答フレーム、ビーコンフレーム等も、管理フレームであるため、このフレームフォーマットを有する。
【0051】
MACヘッダはFrame Control、Duration、Address1、Address2、Address3、Sequence Control、Address4、QoS Control、HT(High Throughput) control、MU−MC Informationの各フィールドを含む。Address 1のフィールドには宛先アドレス(Receiver Address;RA)が、Address 2のフィールドには送信元アドレス(Transmitter Address;TA)が入り、Address 3のフィールドにはフレームの用途に応じてBSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)(全てのビットに1を入れて全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSID場合もある)か、TAが入る。Address4フィールドは、基地局間通信の場合などに使用される。
【0052】
管理フレームでは、フレームボディに挿入する情報を、情報エレメントとして管理される。
図5(A)に情報エレメントのフォーマット例を示す。情報エレメントは、Element IDフィールド、Lengthフィールド、Informationフィールドを有する。Element IDは、情報エレメントを識別する値を格納する。Informationフィールド(以下、情報フィールド)は、通知する情報を格納する。Lengthフィールドは、情報フィールドの長さ情報を格納する。フレームボディフィールドには、このような構成を有する情報エレメントを、1つまたは複数格納することができる。
【0053】
MU−MC Informationフィールドは、MU−MC通信の開始の有無を通知するフィールドであり、本実施形態で新たに定義されたフィールドである。一例として、MU−MC通信の開始を通知するときはビット“1”、それ以外のときはビット“0”を設定する。ビット“1”のフレームは開始通知フレームに相当する。ビットの意味をこの逆にしてもよい。また、MU−MC通信の開始を通知するときは、フレームボディフィールドに、MU−MC通信の対象となる端末を特定する情報(端末特定情報)を設定する。具体的には、MU−MC通信の開始通知用の新たな情報エレメントを定義し、この情報エレメントで端末特定情報を通知する。この情報エレメントを、MU−MC通信開始通知エレメントと呼び、ElementID用に新規の番号を付与する。
【0054】
図5(B)に、MU−MC通信開始通知エレメントのフォーマット例を示す。Informationフィールドに、1または複数台の端末の端末特定情報(図ではSTA Info1〜STA Info Nフィールドによって、N台の端末が指定されている)を設定する。端末特定情報は、アソシエーションID(AID)でもよいし、MACアドレスでもよいし、端末を一意に区別可能なその他の値でもよい。ここでAIDは、端末が基地局に接続した際に基地局により割り当てられるIDである。このAIDはアソシエーション応答フレームなどで各端末に事前に通知されている。また、端末特定情報としてグループIDを用いてもかまわない。この場合、基地局は、各端末とのアソシエーション時またはその後の任意のタイミングで、端末をグルーピングし、各端末にそれぞれ属するグループのグループIDを通知しているものとする。端末特定情報に加えて、端末にMU−MC通信で使用させるチャネルを特定する情報を、STA Info1〜STA Info Nフィールドに追加しても構わない。または、当該チャネルを特定する情報は、別の情報エレメントを定義して、この情報エレメントで通知してもかまわないし、その他の方法で通知してもかまわない。
【0055】
図4に示したMU−MC Informationフィールドを用いてMU−MC通信の開始を通知する以外にも、MU−MC Informationフィールドが存在しないフレームフォーマットを用いてMU−MC通信の開始を通知することも可能である。
図6(A)に、このフレームフォーマットを示す。このフレームフォーマットの、例えば、HT Controlフィールドの空ビット(Reservedフィールド内のビット)を利用して、MU−MC通信の開始を通知してもよい。
図6(B)に、HT Controlフィールドのフォーマット例を示す。一例として、HT control Middleサブフィールドの空フィールド内のビットを利用して、MU−MC通信の開始を通知できる。
【0056】
図4〜
図6で説明した例では、MACフレームのMACヘッダおよびボディフィールドを使用してMU−MC通信の開始および端末の指定等を行ったが、MACフレームの先頭側に付加する物理ヘッダ(PHYヘッダ)を利用することも可能である。
図7に示すように、MU−MC Informationフィールドおよび1または複数台分の端末の端末特定情報フィールド(STA Info1〜STA Info N)が物理ヘッダ内に配置されている。PHYヘッダは、これらのフィールドに加え、L−STF(Legacy−Short Training Field)、L−LTF(Legacy−Long TrainingField)、L−SIG(Legacy Signal Field)等を含む。L−STF、L−LTF、L−SIGは、例えば、IEEE802.11aなどのレガシー規格の端末も認識可能なフィールドであり、信号検出、周波数補正、伝送速度などの情報が格納される。
【0057】
以下、
図8〜
図11を用いて、基地局および複数の端末間のMU−MC通信に係る動作シーケンスの例をいくつか示す。
【0058】
図8は、基地局および複数の端末の動作シーケンスの例を示す。基地局は、端末1、2、4宛てのデータを有しており、これらのデータをMU−MC通信を利用して送信する場合のシーケンスである。横軸は、時間を表し、縦軸は、チャネル1〜8を表す。端末1、2、4は、MU−MC通信を実行可能であり、かつMU−MC通信の機能が有効(オン)になっている端末である。
【0059】
斜線の入った矩形は、基地局が送信するフレームを意味し、白抜きの矩形は、基地局以外の端末が送信するフレームを意味する。「B」が入った矩形は、ビーコンフレームを表す。「R」が入った矩形はRTSフレームを表す。「R」の右側の数字は、RTSフレームの宛先となる端末の番号を表し、例えば「R1」は、端末1宛てのRTSフレームを表す。「C」は、CTSフレームを表す。「DATA」はデータフレームを表す。「A」はACKフレーム(送達確認応答フレーム)を表す。
【0060】
なお、基地局が複数の端末に複数のフレームを送信する場合において、当該送信する複数のフレームは、同じものであっても異なるものであってもよい。一般的な表現として、基地局が複数のフレームまたは複数の第Xフレームを送信または受信すると表現する場合、これらのフレームまたは第Xフレームは同じものであっても異なるものであってもよい。Xには状況に応じて任意の値を入れることができる。
【0061】
基地局は、一定の周期でビーコンフレームを送信する。基地局は、MU−MC通信を行う場合、ビーコンフレームを開始通知フレームとして利用して、MU−MC通信の開始を通知する。図の例では、ビーコンフレーム601で、MU−MC有効期間の開始を通知する。ビーコンフレーム601には、MU−MC通信の開始を表す情報と、MU−MC通信を行う端末を特定する情報(端末特定情報)とを含める。ここでは、端末1、2、4がMU−MC通信の対象となるため、端末1、2、4を特定する情報を含む。また、ビーコンフレーム601に、端末1、2、4がMU−MC通信で使用するチャネルを指定する情報を含めてもよく、ここでは当該情報を含めるとする。本例では、端末1はチャネル1〜2,端末2は、チャネル4〜7、端末4は、チャネル5〜7が指定される。ビーコンフレーム601を受信し、ビーコンフレーム601を解析して、MU−MC有効期間の開始時刻と終了時刻を各端末は把握する。本例では、開始時刻はビーコンフレームの受信から一定時間後として事前に定まっているとする。そして、ビーコンフレーム601から、次のビーコンフレーム602の受信前までのビーコンインターバルの間が、MU−MC有効期間であると判断する。つまり、当該ビーコンインターバルの終了時刻がMU−MC有効期間の終了時刻であると把握する。このことは基地局および各端末で事前に共通に認識されているものとする。
【0062】
基地局は、ビーコンフレーム601を送信から、所定時間もしくはそれ以上の長さの時間である期間611待機した後、開始時刻の到来を検出する。基地局は、まず端末1、2、4のうち、端末1、2とMU−MC通信を行うべく、端末1に対応するチャネル1、2と、端末2に対応するチャネル4〜7で、RTSフレームを送信する。この際、チャネル1、2、4〜7で、DIFSとランダムに決定したバックオフ時間との間、キャリアセンスを行い、キャリアセンス結果がアイドルであることを確認することで、アクセス権、すなわち、媒体を占有可能な時間(TXOP)を取得する。端末1に送信するRTSフレームの宛先アドレス(RA)は、端末1のMACアドレスであり、送信元アドレス(TA)は基地局のMACアドレスである。チャネル1、2で送信するRTSフレームはいずれも同じ内容のフレーム(Duplicateフレーム)である。同じ内容のフレームを送信することをDuplicate送信と呼ぶこともある。また、端末2に送信するRTSフレームの宛先アドレスは端末2のMACアドレスであり、送信元アドレスは基地局のMACアドレスである。チャネル4〜7で送信するRTSフレームはDuplicateフレームである。
【0063】
基地局に接続している端末は、通常動作時は、プライマリチャネルであるチャネル1で待ち受け動作しており、チャネル2〜8は、低消費電力化のため、オフにしているものとする。チャネル毎に送受信処理部(
図2参照)が存在する場合は、例えばチャネル1に対応する送受信処理部を電源オン(ON)にし、それ以外の送受信処理部を電源オフ(OFF)にしてもよい。また1つの送受信処理部で複数のチャネルをカバーする場合、チャネル1の帯域をカバーし、それ以外の帯域は遮断するようにアナログフィルタを設定してもよい。例えば、フィルタの中心周波数とそこからの範囲でアナログフィルタの動作を設定する場合、中心周波数をチャネル1の中心周波数に、範囲をチャネル1の幅に応じた値に設定すればよい。また、1つのアナログフィルタで全チャネルをカバーし、デジタルフィルタで個々のチャネルを処理する場合は、チャネル1以外のデジタルフィルタを停止すればよい。これにより、チャネル1以外のフレームを復調等の受信処理をする動作をなくして、低消費電力化を図ることができる。
【0064】
各端末は、待ち受け動作のチャネルを変更するためには、前述したように、セットアップ時間が必要である。端末1、2、4は、それぞれビーコンフレーム601を受信し、ビーコンフレーム601を解析する。これにより、自端末がMU−MC通信の対象として指定されていることを検出し、また自端末に対して指定されたチャネルを、MU−MC通信用のチャネルとして検出する。端末1、2、4は、それぞれMU−MC通信用のチャネルに、待ち受け動作チャネルを切り換える。すなわち、端末1はチャネル1、2、端末2はチャネル4から7、端末4はチャネル5〜7を待ち受け動作チャネルとする。なお、プライマリチャネルであるチャネル1については、常に動作チャネルとして、待ち受け動作させてもよい。
【0065】
ここで、基地局がビーコンフレーム601の送信後、MU−MC有効期間の開始時刻までの時間(端末1、2にRTSフレームを送信可能するまでに待機する時間)は、MU−MC通信を行う端末のセットアップ時間のうち最も長い時間またはそれ以上に設定されている。
【0066】
なお、基地局は、プライマリチャネルであるチャネル1でのRTSフレームを、上記所定時間の待機後、確実に送信できるように、ビーコンフレーム601のDurationフィールドを利用して、少なくとも当該所定時間の間、TXOP(アクセス権)を確保しておいてもよい。
【0067】
端末1、2は、基地局から送信されるRTSフレームを受信し、かつ受信前の固定時間(PIFS)の間、キャリアセンス結果がアイドルであったチャネルで、CTSフレームを送信する。ここで、端末1がチャネル1、2でRTSフレームを受信し、かつ受信前の固定時間(PIFS)の間、キャリアセンス結果がアイドルであったため、チャネル1、2でCTSフレームを送信する。端末2がチャネル4〜7でRTSフレームを受信し、かつ受信前の固定時間(PIFS)の間、キャリアセンス結果がアイドルであったため、チャネル4〜7でCTSフレームを送信する。なお、RTSフレームが受信できなかったチャネル、もしくは、受信前のPIFS時間の間、ビジーであったチャネルがあった場合は、そのチャネルではCTSフレームを返さない。端末1、2から送信するCTSフレームの宛先アドレス(RA)は、基地局のMACアドレスである。なお、端末4は、チャネル5〜7で待ち受け動作しているため、基地局からチャネル5〜7で送信されるRTSフレームを受信し得るが、その宛先が端末2であるため、自端末宛のフレームでないとして、RTSフレームを廃棄する。
【0068】
基地局は、CTSフレームを受信したチャネルで、CTSフレームの受信完了からSIFS経過後に、データフレームを送信する。ここでは、端末1からチャネル1、2でCTSフレームをそれぞれ受信し、端末2からチャネル4〜7でそれぞれCTSフレームを受信する。このため、基地局は、チャネル1,2で端末1にデータフレームを、チャネル4〜7で端末2にデータフレームを同時に送信する。データフレームを送信する時間の長さは事前に決まっているとする。また、複数のフレームを送信してもよいし、複数のデータフレームを含むアグリゲーションフレーム(スーパーフレーム)を送信してもよい。また、チャネル1、2で別々にデータフレームを送信してもよいし、チャネル1、2を束ねて1つの帯域として用いて、1つまたは複数のデータフレーム、またはアグリゲーションフレームを端末1に送信してもよい。同様に、チャネル4〜7を束ねて1つの帯域として用いて、1つまたは複数のデータフレームを端末2に送信してもよい。端末1に送信するデータフレームの送信元アドレス(TA)は基地局のMACアドレスであり、宛先アドレス(RA)は端末1のMACアドレスである。端末2に送信するデータフレームの送信元アドレス(TA)は基地局のMACアドレスであり、宛先アドレス(RA)は端末2のMACアドレスである。
【0069】
端末1、2は、基地局から受信したデータフレームのFCSに基づいて、受信に成功したかを判断し、成功したチャネルでACKフレームを返す。ここでは、端末1はチャネル1、2のいずれでもデータフレームの受信に成功したため、チャネル1、2のそれぞれでACKフレームを返す。端末2もチャネル4〜7のいずれでもデータフレームの受信に成功したため、チャネル4〜7のそれぞれでACKフレームを返す。アグリゲーションフレームを受信した場合などは、ACKフレームに代えて、BA(Block ACK)フレームを送信する。
【0070】
基地局は、端末1、2とのMU−MC通信が完了した後、続いて、端末1、4とMU−MC通信を行うため、端末1にチャネル1、2でRTSフレームを、端末4にチャネル5〜7でRTSフレームを送信する。前述したように送信前に、DIFSおよびバックオフ時間の間のキャリアセンスに基づきTXOPを獲得する。端末1は、チャネル1、2でRTSフレームを受信するが、チャネル1では受信前のPIFSの間のキャリアセンス結果はアイドルであり、チャネル2ではRTSフレームの受信前のPIFSの間、ビジーであったとする。このため、端末1は、チャネル1のみでCTSフレームを基地局に送信する。端末4は、チャネル5〜7のそれぞれでRTSフレームを受信し、かつ受信前のPIFSの間いずれのチャネルもアイドルであったため、チャネル5〜7のぞれぞれでCTSフレームを送信する。なお、端末2もチャネル5〜7でRTSフレームを受信し得るが、その宛先が端末4であるため、自端末宛のフレームでないとして、RTSフレームを廃棄する。
【0071】
基地局は、端末1からチャネル1でCTSフレームを受信し、端末4からチャネル5〜7でそれぞれCTSフレームを受信する。このため、チャネル1で端末1にデータフレームを、チャネル5〜7で端末2にデータフレームを同時に送信する。データフレームは、複数個送信してもよいし、また、複数のデータフレームを含むアグリゲーションフレームを送信してもよい。また、端末2に、チャネル5〜7で別々にデータフレームを送信してもよいし、チャネル5〜7を束ねて1つの帯域として用いて、1つまたは複数のデータフレーム、またはアグリゲーションフレームを送信してもよい。
【0072】
端末1、4は、基地局から受信したデータフレームのFCSに基づいて受信に成功したかを判断し、成功したチャネルでACKフレームを返す。ここでは、端末1はチャネル1でデータフレームの受信に成功したため、チャネル1でACKフレームを返す。端末4はチャネル5〜7のいずれでもデータフレームの受信に成功したため、チャネル5〜7のそれぞれでACKフレームを返す。アグリゲーションフレームを受信した場合などは、ACKフレームに代えて、BA(Block ACL)フレームを送信する。
【0073】
この後、基地局は、次のビーコンフレーム602を送信する。このビーコンフレーム601の送信直前前のビーコンインターバルの終了時刻で、MU−MC有効期間は終了する。ビーコンフレーム601でMU−MC通信の対象として指定された端末は、ビーコンフレーム601で開始するビーコンインターバルが終了したことにより、待ち受け動作チャネルを元のチャネル(ここではチャネル1)に戻す。ただし、ビーコンフレーム602で、再度MU−MC通信の開始を通知する情報が含まれており、かつ自端末が引き続き指定されている場合は、待ち受け動作チャネルに変更が無いのであれば、待ち受け動作するチャネルを元に戻さず、現在のチャネルを維持してもよい。
【0074】
図8のシーケンスでは、ビーコンフレーム601の送信後の期間611の間、基地局は待機していたが、この間に、別の通信を行ってもよい。
図9に、このシーケンス例を示す。
図8と異なる点は、ビーコンフレーム601を送信後、MU−MC有効期間の開始前(RTSフレームの送信前)に、端末3とユニキャスト通信を行っていることである。端末3は、ビーコンフレーム601でMU−MC通信の対象として指定されておらず、チャネル1のみ待ち受け動作しているとする。
【0075】
基地局はビーコンフレーム601を送信した後、キャリアセンスを行い、アクセス権を獲得して、端末3にデータフレームを送信する。「D3」は、端末3宛のデータフレームを表す。キャリアセンスは、固定時間およびバックオフ時間の間行い、アイドルであれば、アクセス権を獲得して、データフレームを送信する。固定時間は、DIFSまたはAIFSなどであるが、他の値でもよい。基地局は、データフレームの送信後、SIFS後に、端末3からACKフレームを受信する。この後、基地局は、MU−MC有効期間の開始時刻が到来すると、
図8と同様にして、端末1にチャネル1、2で、端末2にチャネル4〜7で、RTSフレームを送信する。これにより、MU−MC通信が実際に開始されるまでの待機時間を有効利用することができ、システム効率を高めることができる。
【0076】
ここではビーコンフレーム601で指定されていない端末3と通信を行ったが、チャネル1を待ち受け動作にしているのであれば、ビーコンフレーム601で指定されている端末1、2、4の少なくとも1つと通信を行うことも可能である。また、ユニキャスト通信でなく、ブロードキャスト通信またはマルチキャスト通信を行ってもよい。また、ここでは、待機時間の間、プライマリチャネルであるチャネル1で通信を行ったが、別のチャネルで待ち受け動作している端末が存在するのであれば、別のチャネルで通信を行ってもよい。
【0077】
ここまではビーコンフレームを利用して、MU−MC通信の開始通知、およびMU−MC通信の対象となる端末の指定等を行った。ビーコンフレームではなく、別途定義した専用の管理フレームを利用する場合のシーケンスを説明する。
図10に、新規に定義した管理フレームを利用する場合の動作シーケンスの例を示す。「M」の入った矩形は、当該管理フレームを表す。なお、管理フレームが、ビーコンフレームであるか、別途定義した新規の管理フレームであるかなどの区別は、Frame Controlフィールドのタイプおよびサブタイプの値で可能である。
【0078】
図10に示すように、基地局は、MU−MC通信の実行を決定すると、MU−MC通信の開始を通知する管理フレーム801を送信する。管理フレームは、DIFSとバックオフ時間の間のキャリアセンスを経て、キャリアセンス結果がアイドルであれば、アクセス権を獲得し、送信する。なお、前述したビーコンフレームの場合も、同様のキャリアセンスを行ってアクセス権を獲得してから送信する。
【0079】
管理フレーム801には、MU−MC通信の対象として指定する端末を特定する情報(端末特定情報)を含める。さらに、各端末に使用させるチャネルを特定する情報を含めてもよい。ここでは、端末5、3、7を指定し、それぞれチャネル1、3〜4、6〜7を指定する。管理フレーム自体が、MU−MC通信の開始を通知する機能を有しているため、
図4のMU−MC Informationフィールドのような通知用のフィールドは管理フレームに含めなくてもよいが、明示的に含めてもかまわない。端末特定情報は、前述したように、AID(AssociationID)でもよいし、MACアドレスでもよいし、グループIDでもよい。グループIDを用いる場合、例えば端末5、3、7が共通に属するグループのグループIDを管理フレーム801に含める。端末個々にAIDまたはMACアドレスまたはこれらの両方を指定する場合よりも、情報サイズが小さくできる利点がある。
【0080】
管理フレームには、ビーコンフレームのときと同様に、MU−MC有効期間の開始時刻または終了時刻を特定する情報を含めても良い。また、開始時刻または終了時刻を明示的に特定する情報を含めず、システムまたは規格で事前に決められていてもよい。例えば管理フレームの送信直後から、次のビーコンフレームの送信前までの期間を、MU−MC有効期間として定義してもよい。基地局および端末間で事前に共通に認識されていれば、どのような方法で定義してもよい。
【0081】
基地局から送信される管理フレーム801を端末5、3、7が受信し、解析することで、自端末がMU−MC通信の対象として指定されていることを認識する。端末5、3、7は、MU−MC通信用のチャネルに、待ち受け動作チャネルを切り換える。端末5は、プライマリチャネルであるチャネル1が、MU−MC通信のチャネルであるため、現状のチャネルを維持する。端末3は、待ち受け動作チャネルを3、4に切り替え、端末7は、待ち受け動作チャネルを6、7に切り換える。なお、端末3、7は、プライマリチャネルであるチャネル1については、待ち受け動作させ続けてもよい。
【0082】
基地局は、端末5、3、7でのチャネルセットアップ時間を考慮した所定の時間だけ待機した後、チャネル1、3〜4、6〜7で、端末5、3、7宛にそれぞれRTSフレームを送信する。端末5、3、7は、チャネル1、3〜4、6〜7でそれぞれRTSフレームを受信し、受信前のPIFSの間、キャリアセンスがいずれもアイドルであったため、チャネル1、3〜4、6〜7でそれぞれCTSフレームを返す。
【0083】
基地局は、端末5、3、7からチャネル1、3〜4、6〜7でCTSフレームを受信したため、チャネル1、3〜4、6〜7で端末5、3、7にデータフレームを同時に送信する。端末1は、基地局からデータフレームをチャネル1で正常に受信し、ACKフレームを返す。端末3は、チャネル3、4のうちチャネル3でデータフレームを正常に受信し、チャネル4では受信に失敗したため、チャネル3のみでACKフレームを返す。端末7は、チャネル6、7のうちチャネル6でデータフレームを正常に受信し、チャネル7では受信に失敗したため、チャネル3のみでACKフレームを返す。
【0084】
なお、前述したビーコンフレームを用いた場合のシーケンス例の場合と同様、複数のチャネルを束ねて1つの帯域として使用してもよく、また複数のデータフレームを含むアグリゲーションフレームを送信してもかまわない。また、ACKフレームの代わりにBAフレームを用いてもよい。
【0085】
図11は、ビーコンフレームと管理フレームの両方を組み合わせて、MU−MC通信を制御する場合の動作シーケンス例を示す。
【0086】
基地局は、まずビーコンフレーム901を、プライマリチャネルであるチャネル1で送信することで、MU−MC通信の開始を通知する。ビーコンフレーム901では、MU−MC通信の対象として端末1、2を指定する。基地局は、端末1、2でのセットアップ時間を考慮した所定期間の待機後、端末1、2にチャネル1〜2、4〜7で、RTSフレームをそれぞれ送信する。この後の端末1、2でのRTSフレームの受信から、CTSフレーム、データフレームおよびACKフレームの送受信は、
図11のシーケンス例と同様である。
【0087】
基地局は、端末1、2との通信後、次に、端末1、4とMU−MC通信を行うため、現在のビーコンインターバルの途中で、管理フレーム903を送信する。管理フレーム903では端末1、4を、MU−MC通信の対象として指定する。ビーコンフレーム901で端末1は既に指定されているため、管理フレーム901では指定を省略してもよい(ビーコンフレーム901で通知したMU−MC有効期間が、次のビーコンフレーム902の送信前まで有効な場合など)。
【0088】
管理フレーム903の送信により、それより前でのビーコンフレーム(または別の管理フレーム)によるMU−MC有効期間は、強制的に終了したものとみなしてもよい。この場合、引き続けて同じ端末を指定する場合は、当該端末(ここでは端末1)を管理フレーム903で再度、指定すればよい。管理フレームで再度指定されなかった端末(ここでは端末2)は、管理フレームで自端末が指定されないことを検出した時点で、待ち受け動作チャネルを、元のチャネル(ここではチャネル1)に戻すように動作してもよい。端末1は引き続き指定されているため、現在のチャネルを待ち受け動作チャネルとして継続して用いればよい。
【0089】
または、ビーコンフレーム901で、管理フレーム903の送信予定時刻より前の時刻をMU−MC有効期間の終了時刻として指定し、その終了時刻で端末1、2はMU−MC有効期間が終了したと判断して、待ち受け動作チャネルを元のチャネルに戻してもよい。この場合、基地局は、元のチャネルに戻すまでに要する時間を考慮し、少なくとも引き続き指定する端末(ここでは端末1)が、元のチャネルに戻った後で、管理フレーム903を送信してもよい。
【0090】
基地局が管理フレーム903を送信した後のMU−MC通信を行う動作は、
図8における端末1、4とのMU−MC通信の動作シーケンス例と同様である。
【0091】
図11の動作シーケンス例では、端末4は、管理フレーム903を受信した後に、待ち受け動作チャネルの変更を行えばよい。したがって、
図8のシーケンスのようにビーコンフレーム901を受信した時点で待ち受け動作チャネルの変更を行う場合よりも、チャネル待ち受け動作時間が短くなるため、端末4の消費電力を低減できる。
【0092】
図8〜
図11のシーケンス例において、各端末がMU−MC通信で使用するチャネルをビーコンフレームまたは管理フレームで通知してもよいし、アソシエーション時など、事前に当該チャネルを各端末に通知しておいてもよい。この場合、各端末は、ビーコンフレームまたは管理フレームで自端末が指定されている場合は、事前に把握しているMU−MC通信用のチャネルへ切り換えて待ち受け動作すればよい。なお、プライマリチャネルであるチャネル1は、MU−MC通信用のチャネルでなくても、常に動作させるようにしてもよい。
【0093】
また、各端末は、MU−MC通信で使用するチャネルを、RTSフレームの受信時に把握する構成も可能である。この場合、各端末は、ビーコンフレームまたは管理フレームで、自端末が指定された場合は、MU−MC通信で使用される可能性のある全チャネル(例えばチャネル1〜8のすべて)でフレームを待ち受けるようにする。そして、自端末宛のRTSフレームを受信したチャネルを、自端末のMU−MC通信用のチャネルとして把握し、RTSフレームの受信前のPIFSでアイドルであったチャネルで、CTSフレームを返せばよい。この場合であっても、各端末は、MU−MC通信の開始を通知されるまでは、プライマリチャネルであるチャネル1のみを待ち受け動作チャネルとしておき、開始の通知を受けてから、待ち受け動作チャネルをチャネル1〜8まで広げればよいため、消費電力の削減効果を得ることができる。
【0094】
次に、
図12〜
図16を用いて、MU−MC通信開始通知後の基地局および端末の受信用のフィルタ(アナログフィルタ、デジタルフィルタ)の設定例を示す。端末2を例にフィルタ設定の動作を説明するが、他の端末の場合も同様である。
【0095】
図12(A)は、基地局のアナログフィルタおよびデジタルフィルタの設定例を示す。
図12(B)は端末2のアナログフィルタおよびデジタルフィルタの設定例を示す。なお、この例では、基地局は、端末毎にMU−MC通信用のチャネルを1つに束ねた帯域として用いて1つまたは複数のデータフレーム、あるいはアグリゲーションフレームを送信し、各端末は、BAフレームを各チャネルで送信している(なお1つのデータフレームを送信した場合にBAフレームを返すことも可能である)。端末毎に、各チャネルで送信するBAフレームの内容は同じである。「BA」が入った矩形はBAフレームを表す。「DATA」の文字が入った、複数のチャネルにまたがる矩形は、複数のチャネルを束ねた帯域で送信されるデータフレームまたはアグリゲーションフレームを表す。
【0096】
図12(A)に示すように、基地局では、チャネル1〜8のすべてをカバーするようにアナログフィルタ1001を設定しておく。基地局は、アナログフィルタ1001を通過した信号を、チャネルごとのデジタルフィルタ1001a、1001b、1001c、1001d、1001e、1001fで処理することで、チャネル毎の信号を抽出する。この例では、端末1に対するチャネル1、2、端末2に対するチャネル4、5、端末3に対するチャネル7、8のデジタル信号をチャネル毎に抽出する。
【0097】
図12(B)に示すように、端末2では、チャネル1〜8のすべてをカバーするようにアナログフィルタ1002を設定しておく。端末2は、アナログフィルタ1002を通過した信号を、待ち受け動作チャネル(チャネル4、5)ごとのデジタルフィルタ1002b、1002cで処理することで、チャネル毎のデジタル信号を抽出する。この例では、端末2は、MU−MC有効期間の間も、プライマリチャネルであるチャネル1も監視しており、アナログフィルタ1002を通過した信号を、チャネル1に対応するデジタルフィルタ1002aで処理して、チャネル1のデジタル信号も抽出している。
【0098】
図13(A)は、基地局のアナログフィルタおよびデジタルフィルタの他の設定例、
図13(B)は端末2のアナログフィルタおよびデジタルフィルタの他の設定例を示す。
図12と重複する説明は省略する。
【0099】
図13(A)に示すように、基地局では、端末1に対するチャネル1、2をカバーするアナログフィルタ1101、端末2に対するチャネル4、5をカバーするアナログフィルタ1102、端末3に対するチャネル7、8をカバーするアナログフィルタ1103が設定されている。その他のチャネルに関するフィルタリングはOFFにされている。基地局は、アナログフィルタ1101を通過した信号を、チャネル1、2ごとのデジタルフィルタ1101a、1101bで処理することで、チャネル1、2の信号を抽出する。また、アナログフィルタ1102を通過した信号を、チャネル4、5ごとのデジタルフィルタ1102a、1102bで処理することで、チャネル4、5の信号を抽出する。同様に、アナログフィルタ1103を通過した信号を、チャネル7、8ごとのデジタルフィルタ1103a、1103bで処理することで、チャネル7、8の信号を抽出する。
【0100】
また、
図13(B)に示すように、端末2では、MU−MC通信用のチャネル4、5をカバーするアナログフィルタ1105と、プライマリチャネルであるチャネル1のアナログフィルタ1106を設定しておく。端末2では、アナログフィルタ1105を通過した信号を、チャネル4、5ごとのデジタルフィルタ1105a、1105bで処理することで、当該チャネル4、5の信号を抽出する。また、チャネル1のアナログフィルタ1106で、チャネル1の信号も抽出する。なお、MU−MC有効期間以外では、プライマリチャネルであるチャネル1のアナログフィルタを設定しておき、基地局からビーコンフレーム等を受信する。
【0101】
図14(A)は、基地局のアナログフィルタの他の設定例、
図14(B)は端末2のアナログフィルタの他の設定例を示す。以下、
図13との差分を説明する。
【0102】
図14(A)に示すように、基地局は、MU−MC有効期間において、MU−MC通信で使用するチャネルごとに、アナログフィルタを設定する。具体的に、チャネル1、2、4、5、7、8に対して、それぞれアナログフィルタ1201、1202、1203、1204、1205、1206を設定している。また、
図14(B)に示すように、端末2も、MU−MC通信で使用するチャネル4、5に対し、それぞれアナログフィルタ1207、1208を設定している。また端末2は、プライマリチャネルであるチャネル1に対し、アナログフィルタ1209を設定している。これにより、基地局および端末2とも、デジタルフィルタを用いずに、所望のチャネル毎の信号を抽出する。
【0103】
図15(A)は、基地局のアナログフィルタおよびデジタルフィルタの他の設定例、
図15(B)は端末2のアナログフィルタおよびデジタルフィルタの他の設定例を示す。
【0104】
図15(A)に示すように、基地局は、MU−MC有効期間において、端末1に対するチャネル1、2をカバーするアナログフィルタ1201と、端末2に対するチャネル4〜7をカバーするアナログフィルタ1202を設定している。端末2は、
図15(B)に示すように、MU−MC有効期間において、チャネル4〜7をカバーするアナログフィルタ1204を設定している。なお、この例では、端末2は、MU−MC有効期間以外ではチャネル1に対しアナログフィルタ1203を設定しているが、MU−MC有効期間ではチャネル1のアナログフィルタの設定を解除している(チャネル1では待ち受け動作を行わない)。端末2は、アナログフィルタ1204で信号を抽出し、チャネル4〜7毎のデジタルフィルタ1204a、1204b、1204c、1204dで信号を抽出することで、チャネル毎にRTSフレームを受信する。チャネル6、7ではRTSフレームを正常に受信したが、チャネル5では、受信前のPIFS期間でキャリアセンス結果がビジーであり、チャネル4ではCRC(Cyclic Redundancy Check)検査で受信失敗と判断したとする。このため、端末2は、チャネル6、7のそれぞれでCTSフレームを送信し、チャネル4、5では送信しない。基地局は、チャネル4〜7をカバーするアナログフィルタ1202と、チャネル4〜7毎のデジタルフィルタ1202a、1202b、1202c、1202dにより、チャネル6、7でCTSフレームを正常に受信する。チャネル4、5ではCTSフレームを受信しなかったと判断する。基地局は、チャネル6、7を束ねた帯域で、1つまたは複数のデータフレーム、またはアグリゲーションフレームを送信する。端末はデータフレームを正常に受信したか否かに応じてBAフレームをチャネル6、7で返す。チャネル6、7で返すBAフレームは、同じ内容のものである。なお、チャネル6、7を束ねた帯域で1つのBAフレームを送信してもよい。なお、基地局は、チャネル1、2に対するデジタルフィルタ1201a、1201bで、アナログフィルタ1201を通過した信号からチャネル1、2の信号を抽出する。
【0105】
ここで、端末2では、前述したように、アナログフィルタ1204を通過した信号からデジタルフィルタによりチャネル毎の信号を抽出する。実際には、通過した信号にAGC(自動利得制御)を施し、利得調整後の信号をデジタルフィルタで処理して、チャネル毎の信号を抽出する。アナログフィルタ1204を通過した信号は、チャネル5での干渉信号(ビジー信号)を含み、この信号の振幅は、正常に受信したチャネル4、6、7の所望信号よりも通常非常に大きいものとなる。AGCでは、トータル電力を元に利得制御を行うため、AGC後の信号は、所望信号の振幅がビジーの信号に比べて相対的に非常に小さくなる可能性がある。この場合、ビジーでないチャネルの信号を正常に受信(復調など)できなくなる可能性もある。
【0106】
この問題を抑制するには、
図16のように端末2および基地局において、個々のチャネル毎にアナログフィルタを設定すればよい。これによれば、チャネル毎に分離してAGCが行われるため、ビジーのチャネルに起因して他のチャネルの受信が影響される問題を防止できる。
図16の例では、端末2では、チャネル4、5、6、7に対しそれぞれアナログフィルタ1408、1409、1410、1411が設定される。また、MU−MC有効期間以外では、チャネル1にアナログフィルタ1407が設定される。基地局では、MU−MC有効期間において、チャネル1、2、4、5、6、7にそれぞれアナログフィルタ1401、1402、1403、1404、1405、1406が設定される。なお、基地局では、MU−MC有効期間以外においては、基本的に、チャネル1にのみアナログフィルタを設定して待ち受け動作し、他のチャネルは特に使用しない限り、オフにしておいてもよい。
【0107】
図17は、第1の実施形態に係る端末の動作の一例のフローチャートを示す。
端末は、予め指定されたチャネルであるシステムプライマリチャネルで、待ち受け動作する(S101)。端末は、MU−MC通信の開始を通知する開始通知フレームを受信したら、開始通知フレームで自端末が指定されているかを判断する(S102)。たとえば、開始通知フレームに自端末を特定する情報(端末特定情報)が含まれているかで判断する。自端末を特定する情報としては、自端末のAID、MACアドレス、または自端末が属するグループのグループID等がある。開始通知フレームは、ビーコンフレームまたは別途定義された管理フレーム、あるいは制御フレームなどがある。
【0108】
自端末の端末特定情報が含まれている場合は、MU−MC有効期間の開始時刻に間に合うように待ち受け動作のチャネルを、MU−MC通信用のチャネルに変更する(S103)。MU−MC有効期間の開始時刻は、開始通知フレームで指定されていてもよいし、事前に別のフレームで指定されていてもよい。または、開始通知フレームの受信から一定時刻後など、システムで事前に定められていてもよい。開始通知フレームの送信時刻または受信時刻がMU−MC有効期間の開始時刻の場合は、開始通知フレームの受信直後にチャネル変更を行えばよい。
【0109】
なお、プライマリチャネルがMU−MC通信用のチャネルに含まれない場合、MU−MC通信用のチャネルに加えて、プライマリチャネルで待ち受け動作を行ってもよい。待ち受け動作のチャネルを、MU−MC通信用のチャネルに変更する方法としては、アナログフィルタの設定、デジタルフィルタの設定およびこれらの両方の設定により行うことがある。これらのバリエーションの例については、
図12〜
図16で説明した通りである。
【0110】
端末は、MU−MC通信の開始通知を受けた後、基地局と待ち受け動作チャネルでMU−MC通信を行う(S104)。例えば、待ち受け動作チャネルでRTSフレームを受信し、受信前の固定時間(PIFS等)のキャリアセンス結果がアイドルであったチャネルで、SIFS後に、CTSフレームを返す。CTSフレームを返したチャネルでデータフレーム等のフレームを待機し、当該チャネルでフレームを正常に受信したら、ACK(またはBAフレーム)を返す。
【0111】
MU−MC有効期間が終了したか判断し(S105)、終了した場合は、待ち受けチャネルを、元のチャネル(プライマリチャネルなど)に戻す(S106)。MU−MC有効期間が終了の判断方法としては、開始通知フレーム、またはこれとは別のフレームで、終了時刻が事前に通知されていてもよい。または、次のビーコンフレームで自端末がMU−MC通信の対象として指定されていない場合に、終了したと判断してもよい。あるいは、現在のビーコンインターバル内で、上記ACKフレームの送信後、所定のタイミングまでに、自端末をMU−MC通信の対象として指定した開始通知フレームを受信しない場合に、終了したと判断してもよい。
【0112】
図18は、本実施形態に係る基地局の動作の一例のフローチャートである。
【0113】
基地局は、MU−MC通信の開始を決定したら(S201)、MU−MC通信の対象となる端末を決定し(S202)、自局の待ち受け動作チャネルをMU−MC通信で使用するチャネルに変更する(S203)。ただし、プライマリチャネルは、MU−MC通信で使用しなくとも、待ち受け動作しておいてもよい。基地局は、MU−MC通信の開始を通知するフレーム(開始通知フレーム)を生成し、開始通知フレームをプライマリチャネルで送信する(S204)。開始通知フレームには、例えば、指定した端末を特定する情報を含める。その他、各端末がMU−MC通信で使用するチャネルを特定する情報、または、開始時刻を特定する情報、または、終了時刻を特定する情報、または、これらの組み合わせを含めてもよい。ステップS202とステップS203の順序が逆になってもよい。
【0114】
基地局は、開始通知フレームの送信後、各端末のセットアップ時間を考慮した、MU−MC通信の開始時刻またはそれ以降になったら、各端末とMU−MC通信用のチャネルで同時に通信する(S205)。例えば、各端末にそれぞれのMU−MC通信用のチャネルでRTSフレームを送信し、CTSフレームが返されたチャネルで、SIFS後に、データフレームまたはアグリゲーションフレーム等のフレームを送信する。基地局は、送信に成功したフレームのACKフレームを受信する(またはBAフレームを受信する)。基地局は、送信に失敗したフレームがあれば、フレームの再送を行ってもよい。なお、再送するフレームを、その後のMU−MC通信で送信してもよいし、現在のMU−MC有効期間の終了後に、ユニキャスト通信で送ってもよい。
【0115】
基地局は、MU−MC有効期間が終了したか判断し(S206)、終了した場合は、待ち受け動作チャネルを、元のチャネル(プライマリチャネル)に戻す(S207)。
【0116】
本実施形態では、事前に終了時刻の指定やビーコンインターバルの回数の指定などで、MU−MC有効期間の終了タイミングを事前に定めた。別の方法として、MU−MC有効期間の終了を通知するフレームを定義し、基地局がこのフレームの送信で、MU−MC有効期間を終了させてもよい。例えば、
図4に示したフレームフォーマットのMU−MC Informationフィールドの後または前などに、MU−MC Information2フィールドを追加し、このフィールドに、終了を通知する場合にビット1、そうでない場合はビット0(あるいはこの逆)を設定してもよい。あるいは、
図6に示したHT control Middleサブフィールドの空きビットを利用して、終了を通知することも可能である。終了対象となる端末は、
図5(B)に示したフォーマットの情報エレメントで指定し、当該情報エレメントをフレームのボディフィールドに設定すればよい。終了を通知するフレームを受信した端末は、待ち受け動作チャネルを元のチャネルに戻せばよい。
【0117】
以上、本実施形態によれば、MU−MC通信の開始を通知することにより、各端末は、MU−MC通信開始通知前は、プライマリチャネルで待ち受け動作し、通知後は、MU−MC通信用のチャネルに切り替え、MU−MC通信用のチャネルで待ち受け動作する。これにより、通知前に、使用しないチャネルの待ち受け動作が不要となるため、消費電力を低減できる。また、MU−MC有効期間の開始時刻に合わせて待ち受け動作を行うようにすることで、より一層消費電力を低減できる。基地局も同様に、MU−MC通信の開始の決定または通知前は、プライマリチャネルで待ち受け動作し、決定または通知後は、MU−MC用のチャネルに切り換えることで、MU−MC通信前では使用しないチャネルの待ち受け動作が不要となり、消費電力を低減できる。
【0118】
(第2の実施形態)
第1の実施形態では基地局と複数の端末との間で通信する形態を示したが、基地局を介さずに、端末間でMU−MC通信する場合も、本発明は実施可能である。例えば、複数の端末のうちの1台が送信側、残りの端末のうちの2台以上端末が受信側となり、MU−MC通信を行う場合がこれに相当する。なお、基地局を介さずに、端末同士で通信する規格として、WiFi Direct等が知られている。WiFi Direct対応端末は、その機能を有効にすると、他の端末からは基地局として認識され、1対1または1対多の接続が可能となる。
【0119】
(第3の実施形態)
第1〜第2の実施形態で、所定周波数帯域内のチャネルはチャネル1〜8まであり、これらのチャネルは連続しているとしたが、このチャネルの連続について補足の説明をする。
【0120】
IEEE802.11規格でのチャネル番号は、5MHz間隔であり、20MHzのチャネル幅とした場合に、チャネル同士が被らないチャネル番号の間隔は、4つおきとなる。本明細書でのチャネルセットでの連続するチャネルは、チャネル同士が被らないで連続したチャネルの意味で記載している。明細書中でのチャネル番号とは便宜的なもので、実際はch.1はIEEE802.11規格での5GHz帯のチャネル番号36、ch.2はIEEE802.11規格での5GHz帯のチャネル番号40、というように解釈すればよい。
【0121】
[5GHz帯]
IEEE802.11規格での5GHz帯では、基本的にチャネル番号が20MHz間隔で用いられるので、その使われているチャネル番号に則って考えて問題ない。
【0122】
[2.4GHz帯]
一方、2.4GHz帯では、
図20のように、基準チャネルの選択が、北米や中国などでは25MHz間隔(
図20(A))で、欧州では30MHz間隔(
図20(B))で行われている。そこで、明細書中のch.1は、IEEE802.11規格での2.4GHz帯のチャネル番号1、ch.2はIEEE802.11規格での2.4GHz帯のチャネル番号6、というように、北米や中国に倣って25MHz間隔(
図20(A))のものとするのでもよい。または、明細書中のch.1は、IEEE802.11規格での2.4GHz帯のチャネル番号1、ch.2はIEEE802.11規格での2.4GHz帯のチャネル番号7、というように欧州に倣って30MHz間隔((
図20(B)))のものとするのでもよい。あるいは
図20(C)に示すように、5GHz帯での20MHzチャネル間隔に倣い、明細書中のch.1はIEEE802.11規格での2.4GHz帯のチャネル番号1、ch.2はIEEE802.11規格での2.4GHz帯のチャネル番号5、というようにするのでもよい。
図20(C)は、
図20(A)および
図20(B)以外に、今後考えられるチャネル選択を例示したものである。ただし、北米や中国、欧州のような場合、別の無線通信システムが、2.4GHz帯のチャネル番号6や7を、少なくとも一部のチャネルとして選択していると、チャネル番号5と一部周波数帯域が被ることになる。この場合、互いの無線通信システムが影響する周波数帯域が広がり、チャネル利用効率が下がる。
【0123】
(第4の実施形態)
図21は、端末または基地局の全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末または基地局は、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、第1の実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルと、を含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等でもよい。
【0124】
図22は、無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す。この構成は、無線通信装置が非基地局の端末および基地局のいずれに搭載される場合にも適用可能である。つまり、
図2または
図3に示した無線通信装置の具体的な構成の一例として適用できる。
図22の構成例では、アンテナは1本のみであるが、2本以上のアンテナを備えていてもよい。この場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(232〜235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、本実施形態に係る発振器に対応する。
【0125】
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、一例として、ベースバンドIC、またはベースバンドICとRF IC221との組に対応する。さらにバラン225またはスイッチ245またはアンテナ247またはこれらの任意の組み合わせが含まれてもよい。
【0126】
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Conveter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
【0127】
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
【0128】
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末または基地局に通知する情報、または端末または基地局から通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
【0129】
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
【0130】
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御するMAC処理部または制御部に対応する。
【0131】
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
【0132】
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。またベースバンド回路212またはCPU215またはこれらの両方は、OFDMAに関する処理を行う。ベースバンド回路212またはCPU215またはこれらの両方は、送信フィルタおよび受信フィルタの動作を、使用するチャネルの設定に応じて、当該チャネルがカバーするチャネルの信号を抽出するように制御してもよい。これらのフィルタを制御する別の制御部が存在し、ベースバンド回路212またはCPU215またはこれらの両方が、その制御部に指示を出すことで、これらのフィルタの制御を行ってもよい。制御の対象とするフィルタは、アナログフィルタ(フィルタ222、232の場合)でも、デジタルフィルタでもよい。
【0133】
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
【0134】
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。
【0135】
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
【0136】
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
【0137】
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側のバラン234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
【0138】
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
【0139】
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
【0140】
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
【0141】
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
【0142】
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
【0143】
(第5の実施形態)
図23(A)および
図23(B)は、それぞれ第5の実施形態に係る無線端末の斜視図である。
図23(A)の無線端末はノートPC301であり、
図23(B)の無線端末は移動体端末321である。それぞれ、端末(基地局を含む)の一形態に対応する。ノートPC301および移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた端末(基地局を含む)に搭載されていた無線通信装置を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等にも搭載可能である。
【0144】
また、端末(基地局を含む)に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を
図24に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、
図24では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
【0145】
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インタフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インタフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る無線通信用集積回路または第1制御部または第2制御部またはこれらの複数の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係る基地局あるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、基地局に搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
【0146】
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
【0147】
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
【0148】
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、例えば、無線通信装置におけるMAC処理部または制御部と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
【0149】
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
【0150】
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、例えば、MAC処理部、送信処理回路、受信処理回路、制御部の少なくとも1つと接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態を、ユーザに容易に通知することが可能となる。
【0151】
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、第1〜第5のいずれかの実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、例えば、MAC処理部、送信処理回路、受信処理回路、制御部の少なくとも1つと接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態を、ユーザに容易に通知することが可能となる。
【0152】
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(アクセスポイントの無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置の第1制御部または第2制御部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0153】
(第14の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
【0154】
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
【0155】
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
【0156】
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockAckフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
【0157】
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std
802.11ac−2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
【0158】
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
【0159】
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
【0160】
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマーを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマー(例えばデータフレーム用の再送タイマー)を起動し、第1のタイマーが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマーは止められる。
【0161】
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマーが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。第1のタイマーと同様、第2のタイマーでも、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
【0162】
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマーを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマーを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマーが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマー(例えば管理フレーム用の再送タイマー)を起動する。この場合も、第2のタイマーが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマーが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマーは、ここでは第2のタイマーとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマーを用いるようにしてもよい。
【0163】
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
【0164】
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。
【0165】
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
【0166】
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
【0167】
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
【0168】
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に発動されるフレーム間隔である。
【0169】
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
【0170】
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を
図25に示す。
【0171】
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
【0172】
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
【0173】
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
【0174】
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを発動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。本実施形態では、このようなフレーム間隔のパラメータを用いる無線通信システムを通信レンジの広い干渉システムとして想定する。
【0175】
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
【0176】
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
【0177】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。