(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも非変性ジエン系ゴム及びシリカを混練し、混練物を作製する工程Aと、少なくとも前記混練物及びシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムを混練する工程Bとを含み、
前記官能基は、窒素、酸素、硫黄及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基であり、
前記変性ジエン系ゴムは、主鎖及び末端に前記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴムであるタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
前記官能基がアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、及びポリシロキサン構造からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性能及び耐摩耗性能をバランスよく改善させたタイヤ用ゴム組成物及びこれを用いて作製した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも非変性ジエン系ゴム及びシリカを混練して得られる混練物と、少なくともシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムとを混練して作製されるタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0009】
ゴム成分100質量%中の前記変性ジエン系ゴムの含有量は、10質量%以上であり、前記シリカは、配合量がゴム成分100質量部に対して30〜150質量部、窒素吸着比表面積が30〜500m
2/gであることが好ましい。
【0010】
前記官能基がアミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、及びポリシロキサン構造からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
前記変性ジエン系ゴムは、下記式(1)で表される化合物により変性された変性ブタジエンゴム及び/又は変性スチレンブタジエンゴムであることが好ましい。
【化1】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R
4及びR
5は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基又は環状エーテル基を表す。nは整数を表す。)
【0012】
キャップトレッド用ゴム組成物であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、少なくとも非変性ジエン系ゴム及びシリカを混練し、混練物を作製する工程Aと、少なくとも前記混練物及びシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムを混練する工程Bとを含むタイヤ用ゴム組成物の製造方法に関する。
【0014】
ゴム成分100質量%中、前記工程Bで混練される前記変性ジエン系ゴムの含有量が5質量%以上であることが好ましい。
【0015】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、少なくとも非変性ジエン系ゴム及びシリカを混練して得られる混練物と、少なくともシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムとを混練して作製されるタイヤ用ゴム組成物であるので、低燃費性能と耐摩耗性能をバランスよく向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、少なくとも非変性ジエン系ゴム及びシリカを混練して得られる混練物と、少なくともシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムとを混練して作製されるものである。
【0018】
つまり、先ず、非変性ジエン系ゴムとシリカを混練することで、予めシリカとの相互作用が小さい非変性ゴム中にシリカを充分に分散させた後に、シリカとの相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムを添加して混練することで、該変性ジエン系ゴムだけでなく、非変性ゴム中にもシリカ分散でき、ゴム成分全体にシリカを充分分散させることが可能になる。従って、シリカ分散性が非常に向上し、低燃費性と耐摩耗性の性能バランスを顕著に改善できる。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、例えば、少なくとも非変性ジエン系ゴム及びシリカを混練して混練物を作製する工程Aと、少なくとも該工程Aで作製された混練物及びシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムを混練する工程Bとを含む製造方法などにより作製できる。
【0020】
<工程A>
工程Aでは、少なくとも非変性ジエン系ゴムとシリカとを含む材料を混練して混練物が作製される(ベース練り工程A)。
【0021】
非変性ジエン系ゴムとしては、変性が施されていないジエン系ゴムであれば特に限定されず、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。なかでも、低燃費性能及び耐摩耗性能がバランスよく得られるという理由から、NR、BR、SBRが好ましく、BR、SBRがより好ましい。
【0022】
工程Aにおける非変性ジエン系ゴムの配合量は、ゴム組成物の製造に使用される全非変性ジエン系ゴムの配合量の50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。50質量%未満では、非変性ジエン系ゴム中にシリカを充分に分散できなくなるおそれがある。
【0023】
シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカを配合することにより、低燃費性能、耐摩耗性能をバランス良く改善できる。
【0024】
シリカの窒素吸着比表面積(N
2SA)は、30m
2/g以上が好ましく、110m
2/g以上がより好ましい。30m
2/g未満では、破壊強度、耐摩耗性能が低下する傾向がある。また、シリカのN
2SAは、500m
2/g以下が好ましく、300m
2/g以下がより好ましい。500m
2/gを超えると、低燃費性能、加工性が悪化する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0025】
工程Aにおけるシリカの配合量は、工程Aで配合される、非変性ジエン系ゴム及び必要に応じて配合される後述の変性ジエン系ゴムの合計配合量100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下である。この範囲内に調整することで、工程Aで配合したゴム成分中にシリカを充分に分散できる。
【0026】
工程Aでは、非変性ジエン系ゴム、シリカ以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、後述の変性ジエン系ゴムなどの他のゴム成分、シランカップリング剤、オイル等を混練してもよい。特に、シリカ分散性の点から、シランカップリング剤を混練することが好ましく、配合量はシリカ量に応じて適宜設定すればよい。
【0027】
工程Aのベース練り工程では、例えば、混練機を用いて、非変性ジエン系ゴム、シリカ、及び必要に応じて添加される他の成分を混練する。
【0028】
<工程B>
工程Bでは、少なくとも工程Aで得られた混練物とシリカと相互作用を持つ官能基を有する変性ジエン系ゴムとを含む材料が混練される(ベース練り工程B)。
【0029】
上記変性ジエン系ゴムとしては、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、シリカと相互作用する官能基(好ましくは、窒素、酸素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも1種の原子を含む官能基)を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴムや、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0030】
上記官能基が導入されるジエン系ゴム(変性ジエン系ゴムの骨格を構成するポリマー)としては、前記非変性ジエン系ゴムが挙げられ、なかでも、低燃費性、耐摩耗性の性能バランスの点から、BR、SBRが好ましい。
【0031】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基、ポリシロキサン構造等があげられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。
【0032】
上記変性ジエン系ゴムとしては、下記式(1)で表される化合物により末端変性された変性BR及び/又は変性SBRが好ましい。
【化2】
(式中、R
1、R
2及びR
3は、同一若しくは異なって、アルキル基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜6、更に好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基)、シリルオキシ基、アセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。R
4及びR
5は、同一若しくは異なって、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4のアルキル基)又は環状エーテル基を表す。nは整数(好ましくは1〜5、より好ましくは2〜4、更に好ましくは3)を表す。)
【0033】
R
1、R
2及びR
3としては、アルコキシ基が望ましく、R
4及びR
5としては、アルキル基が望ましい。これにより、優れた低燃費性、耐摩耗性を得ることができる。
【0034】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0035】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるSBR、BRなどのジエン系ゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報、特表2003−514078号公報などに記載されている方法など、従来公知の手法を用いることができる。例えば、SBRやBRと変性剤とを接触させればよく、アニオン重合によりSBRやBRを合成した後、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加し、SBRやBRの重合末端(活性末端)と変性剤とを反応させる方法、SBRやBR溶液中に変性剤を添加して反応させる方法などが挙げられる。
【0036】
また、上記変性ジエン系ゴムとしては、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−(n−プロポキシ)スチレン、p−(tert−ブトキシ)スチレン、m−メトキシスチレンなどのアルコキシスチレン;3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレン、3−または4−(2−アゼチジノエチル)スチレンなどの窒素含有化合物等により主鎖変性された変性BR及び/又は変性SBR、このような主鎖変性と前記式(1)で示される化合物による末端変性とが施された変性BR及び/又は変性SBRなども挙げられる。これにより、フィラーの分散性がより向上し、低燃費性能、耐摩耗性能をより向上できる。
【0037】
上記変性ジエン系ゴムにおけるアルコキシスチレン及び/又は窒素含有化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。0.05質量%未満では、シリカ分散性を充分に改善できないおそれがあり、30質量%を超えると、高コストになる傾向がある。
なお、上記式(1)で表される化合物量は、NMR(例えば、日本電子(株)製のJNM−ECAシリーズの装置)を用いて測定できる。
【0038】
工程Bにおける上記変性ジエン系ゴムの配合量は、ゴム組成物の製造に使用される全変性ジエン系ゴムの配合量の20質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。20質量%未満では、ゴム成分全体にシリカを充分に分散できなくなるおそれがある。上限は特に限定されず、100質量%でもよい。
【0039】
また、工程Bにおける上記変性ジエン系ゴムの配合量は、ゴム組成物の製造に使用される全ゴム成分の100質量%中、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、該変性ジエン系ゴムの配合量は、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましい。この範囲内に調整することで、高いシリカ分散性が得られ、本発明の効果が充分に発揮される。
【0040】
工程Bでは、シリカ分散性を向上するという理由から、シリカを混練することが好ましい。シリカとしては、前記と同様のものなどを使用できる。
【0041】
工程Bにおけるシリカの配合量は、工程Bで配合される、上記変性ジエン系ゴム及び必要に応じて配合される非変性ジエン系ゴムの合計配合量100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下である。この範囲内に調整することで、全ゴム成分中にシリカを充分に分散できる。
【0042】
工程Bでは、上記変性ジエン系ゴム、シリカ以外にも、本発明の効果を阻害しない範囲内で、非変性ジエン系ゴムなどの他のゴム成分、シランカップリング剤、オイル、酸化亜鉛、老化防止剤等を混練してもよい。特に、シリカ分散性の点から、シリカを混練する場合、シランカップリング剤を混練することが好ましく、配合量はシリカ量に応じて適宜設定すればよい。
【0043】
工程Bのベース練り工程では、例えば、前述の混練機を用いて、上記変性ジエン系ゴム、必要に応じてシリカなどの他の成分を混練する。
【0044】
工程A、B共に混練方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。混練機としては従来公知のものを使用でき、例えば、バンバリーミキサー、オープンロール、密閉式混練機などが挙げられる。
【0045】
<工程C>
本発明では、前記工程A〜Bでベース練り工程を行った後、通常、仕上げ練り工程、例えば、工程Bで得られた混練物、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを70〜85℃、2〜4分の条件で混練りする工程が行われ、その後加硫工程を行うことで加硫ゴム組成物が得られる(仕上げ練り工程、加硫工程)。
【0046】
上記製造方法などにより得られる本発明のゴム組成物では、ゴム成分100質量%中の上記変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、充分な低燃費性能、耐摩耗性能が得られない傾向がある。また、該変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%である。90質量%を超えると、耐摩耗性能が得られない傾向がある。
【0047】
上記製造方法などにより得られる本発明のゴム組成物では、ゴム成分100質量%中の非変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。10質量%未満であると、充分な耐摩耗性能が得られない傾向がある。また、該非変性ジエン系ゴムの含有量は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%である。90質量%を超えると、充分な低燃費性能が得られない傾向がある。
【0048】
上記製造方法などにより得られる本発明のゴム組成物では、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは45質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。30質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、低燃費性能、加工性が悪化する傾向がある。
【0049】
本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材(特に、キャップトレッド)に好適に使用できる。
【0050】
本発明の空気入りタイヤは、上記製造方法などにより作製したゴム組成物(未加硫)を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤの各部材(特に、キャップトレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成した後、加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【実施例】
【0051】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0052】
以下に、変性BR、変性S−SBRの作製で使用した各薬品について、まとめて説明する。
(変性BR)
シクロヘキサン:関東化学(株)製
ピロリジン:和光純薬工業(株)製
ジビニルベンゼン:和光純薬工業(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液
イソプロパノール:和光純薬工業(株)製
ブタジエン:東京化成工業(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン:アヅマックス(株)製
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製
(変性S−SBR)
n−ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3−ブタジエン:東京化成工業(株)製
p−メトキシスチレン:関東化学(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n−ブチルリチウム:関東化学(株)製
3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン:アヅマックス(株)製
2,6−tert−ブチル−p−クレゾール:大内新興化学工業(株)製
【0053】
(変性BRの作製)
十分に窒素置換した100ml容器に、シクロヘキサン50ml、ピロリジン4.1ml(3.6g)、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にてn−ブチルリチウム0.7mlを加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出・精製を行うことでモノマー(4−(2−ピロリジノエチル)スチレン)を得た。
次に、充分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、ブタジエン71.0ml(41.0g)、上記モノマー0.29g、テトラメチルエチレンジアミン0.11mlを加え、40℃でn−ブチルリチウム0.2mlを加えて撹拌した。3時間後、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(末端変性剤)を0.5ml(0.49g)加えて攪拌した。1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて変性BRを得た。
【0054】
得られた変性BRは重量平均分子量550,000、窒素含有化合物モノマー量2質量%、ビニル含量18質量%であった。
【0055】
(変性S−SBRの作製)
十分に窒素置換した耐熱容器にn−ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3−ブタジエン800mmol、p−メトキシスチレン5mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n−ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間攪拌した。その後、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(末端変性剤)を0.15mmol加えて、0℃で1時間攪拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により変性S−SBRを得た。
【0056】
得られた変性S−SBRは重量平均分子量400,000、アルコキシスチレン成分含有率1.2質量%、スチレン成分含有率19質量%であった。
【0057】
以下に実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
変性BR:上記で作製した変性BR
S−SBR:NS116(日本ゼオン(株)製)、スチレン含有率21%)
変性S−SBR:上記で作製した変性S−SBR
シリカ:EVONIK−DEGUSSA社製のUltrasilVN3(N
2SA:175m
2/g)
シランカップリング剤:EVONIK−DEGUSSA社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
オイル:(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
【0058】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、先ず、工程Aの配合に沿って150℃に達するまで3〜5分間ベース練り工程Aを行い、続いて、工程Aで得られた混練物に工程Bの配合に沿って他の材料を添加し、150℃に達するまで3〜5分間ベース練り工程Bを行った。次に、オープンロールを用いて、工程Bで得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、70℃の条件下で2分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得た。
【0059】
得られた加硫ゴム組成物について下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0060】
(低燃費性能(転がり抵抗試験))
粘弾性スペクトロメーターVES((株)岩本製作所製)を用いて、温度50℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で各配合例(加硫ゴム組成物)の損失正接(tanδ)を測定し、比較例4の損失正接tanδを100として、下記計算式により、各配合例の転がり抵抗を指数表示した(転がり抵抗指数)。指数が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性能が優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例4のtanδ)/(各配合例のtanδ)×100
【0061】
(耐摩耗性能(摩耗試験))
ランボーン摩耗試験機を用いて、温度20℃、スリップ率20%及び試験時間2分間の条件下でランボーン摩耗量を測定した。更に、測定したランボーン摩耗量から容積損失量を計算し、比較例2のランボーン摩耗指数を100とし、下記計算式により、各配合例(加硫ゴム組成物)の容積損失量を指数表示した。ランボーン摩耗指数が大きいほど、耐摩耗性能が優れることを示す。
(ランボーン摩耗指数)=(比較例2の容積損失量)/(各配合例の容積損失量)×100
【0062】
【表1】
【0063】
すべてのゴム成分をベース練り工程Aで混練した比較例に比べ、変性ジエン系ゴムの一部又は全部をベース練り工程Bで混練した実施例では、低燃費性能及び耐摩耗性能を高次元でバランスよく向上させることができた。