特許第6359801号(P6359801)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359801
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ドリル螺子
(51)【国際特許分類】
   F16B 25/10 20060101AFI20180709BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   F16B25/10 A
   F16B5/02 V
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-3989(P2013-3989)
(22)【出願日】2013年1月11日
(65)【公開番号】特開2014-134279(P2014-134279A)
(43)【公開日】2014年7月24日
【審査請求日】2015年12月24日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508078824
【氏名又は名称】近江OFT株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】福原 正
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 幸和
(72)【発明者】
【氏名】澤田 正治
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭56−101412(JP,A)
【文献】 特開2010−071313(JP,A)
【文献】 実開昭57−165810(JP,U)
【文献】 特開2007−321930(JP,A)
【文献】 特開2005−127369(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3165929(JP,U)
【文献】 実開昭49−057751(JP,U)
【文献】 特開平07−171654(JP,A)
【文献】 特開昭59−017012(JP,A)
【文献】 実開昭59−144216(JP,U)
【文献】 特表昭62−502557(JP,A)
【文献】 特開平08−082316(JP,A)
【文献】 特開昭58−207515(JP,A)
【文献】 米国特許第03286579(US,A)
【文献】 特表2008−542028(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0136233(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0170985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 25/10
F16B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、ドリル螺子軸部とからなり、前記頭部の座面側で前記ドリル螺子軸部の付根部で且つ螺子山を包囲すると共に前記座面に対して急傾斜とした複数の平坦状壁面と前記ドリル螺子部の軸方向に直交する平坦状奥面とからなり且つ前記付根部箇所の前記螺子山が入り込む多角形環状凹部が形成され、前記螺子山における頭部側のフランク面の傾斜角度は、該フランク面の反対側面の角度よりも小さくし、接合される2枚の金属薄板に前記ドリル螺子軸部によって穿孔された開口部の周縁箇所に膨出形成された扁平円錐状のバーリングが前記ドリル螺子軸部の回転により前記螺子山の前記頭部側のフランク面によって前記多角形環状凹部内に入り込まされ、該多角形環状凹部の前記平坦状壁面に沿うように当接されて多角形の角錐形状に形成することができることを特徴とするドリル螺子。
【請求項2】
請求項1において、前記頭部には直径方向に突出する円板状の座金部が一体形成されると共に、該座金部の裏面側を前記座面とし、該座面に前記多角形環状凹部が形成されてなることを特徴とするドリル螺子。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記多角形環状凹部は六角形に形成されてなることを特徴とするドリル螺子。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記多角形環状凹部は四角形に形成されてなることを特徴とするドリル螺子。
【請求項5】
請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記多角形環状凹部を構成するそれぞれの平坦状壁面は前記多角形環状凹部の奥部に向かって次第に直径方向が小さくなる傾斜面としてなることを特徴とするドリル螺子。
【請求項6】
請求項1において、前記頭部には、該頭部とは別材とした直径方向に突出する円板状の座金部が、前記頭部に固着されると共に、該座金部の裏面側を前記座面とし、該座面に前記多角形環状凹部が形成されてなることを特徴とするドリル螺子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の金属薄板同士を螺子により締結するための(ビス等の)螺子材であって、金属薄板を穿孔しつつ、発生するバーリングに雌軸を形成するものにおいて、形成される雌螺子部の破壊強度を高くすることができるドリル螺子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の金属薄板を穿孔しつつ、穿孔とともに形成されるバーリングに雌螺子を形成するドリルビス,タッピングビス等の螺子多く存在している。そして、この種のねじでは、2枚の金属薄板を強固に締め付けるために、その頭部の座面には螺子軸部の周囲を包囲するように円形の凹部が形成されるのが一般的であり、この種のものが特許文献1乃至3に開示されている。なお、ここでいう2枚の金属薄板の接合の概念は、単に薄板材のみではなく、金属薄板にて形成された構造物等の物体同士の接合も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−125225号公報
【特許文献2】実開昭59−30915号公報
【特許文献2】特開2001−41216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、ねじ部を成形する前のブランクを首太とし、ねじの首下まで完全螺子部となるように構成されたものである。特許文献2では、螺子山を標準の螺子山に比べ高く、且つ、頭部側のフランク面の傾斜角を小さくしたものである。特許文献3では、不完全螺子部が薄板金属板に当たらないように、薄金属板の上向き状に形成されたバーリングを許容するための座金の内径に突条とバーリング許容部を設けたものである。
【0005】
一般(通常)の螺子の頭部座面における螺子の付根箇所(首下部分ともいう)は、螺子加工上において、どうしても不完全な螺子部ができてしまう。そのねじを使用して、2枚の金属薄板を電動式のドライバーで締結すると金属板が薄いため、金属板にねじで形成された雌ねじが破壊され易く、金属板の取替えが必要となり大幅なコスト高となっていた。
【0006】
このような問題を解決すべく、螺子転造前のブランクを首下の部分の径をその他の部分より大きくし転造することによって、できるだけ首下の部分に完全螺子部を形成することができるようにしている。しかし、その効果は十分ではなかった。
【0007】
また、別の方法として金属薄板の上向きバーリングを許容するための座金の内径に突条とバーリングを許容するための座金の内径に突条とバーリング胸部を設けた座金付きドリル螺子が使用されているが雌ねじの破壊強度はほぼ満足するもドリル螺子に座金を組み込む必要があり組込み費用と座金のコストがかかり満足のいくものでなかった。
【0008】
本発明が解決しようとする技術的課題(目的)は、金属薄板に雌螺子が形成されたバーリングの破壊強度を高くすることによって、金属薄板材同士を強固に締結することができ、且つ耐久性に優れたものにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、発明者は前記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、頭部と、ドリル螺子軸部とからなり、前記頭部の座面側で前記ドリル螺子軸部の付根部で且つ螺子山を包囲すると共に前記座面に対して急傾斜とした複数の平坦状壁面と前記ドリル螺子部の軸方向に直交する平坦状奥面とからなり且つ前記付根部箇所の前記螺子山が入り込む多角形環状凹部が形成され、前記螺子山における頭部側のフランク面の傾斜角度は、該フランク面の反対側面の角度よりも小さくし、接合される2枚の金属薄板に前記ドリル螺子軸部によって穿孔された開口部の周縁箇所に膨出形成された扁平円錐状のバーリングが前記ドリル螺子軸部の回転により前記螺子山の前記頭部側のフランク面によって前記多角形環状凹部内に入り込まされ、該多角形環状凹部の前記平坦状壁面に沿うように当接されて多角形の角錐形状に形成することができるドリル螺子としたことにより上記課題を解決した。
【0010】
請求項2の発明を、請求項1において、前記頭部には直径方向に突出する円板状の座金部が一体形成されると共に、該座金部の裏面側を前記座面とし、該座面に前記多角形環状凹部が形成されてなるドリル螺子としたことにより上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記多角形環状凹部は六角形に形成されてなるドリル螺子としたことにより上記課題を解決した。
【0011】
請求項4の発明を、請求項1又は2において、前記多角形環状凹部は四角形に形成されてなるドリル螺子としたことにより上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項の記載において、前記多角形環状凹部を構成するそれぞれの平坦状壁面は前記多角形環状凹部の奥部に向かって次第直径方向が小さくなるように傾斜面としてなるドリル螺子としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明では、請求項1において、前記頭部には、該頭部とは別材とした直径方向に突出する円板状の座金部が、前記頭部に固着されると共に、該座金部の裏面側を前記座面とし、該座面に前記多角形環状凹部が形成されてなるドリル螺子としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明では、本発明のドリル螺子によって、2枚の金属薄板を締め付けると、穿孔作業時に発生するバーリング(ばり)を多角膨出形状部とし、バーリング自体を極めて力学的に強固な構造にすると共に、バーリングに形成される雌螺子も良好なものとすることができる。
【0013】
上記効果を詳述すると、2枚の金属薄板同士を本発明のドリル螺子にて穿孔すると、金属薄板にはドリル螺子軸部の周囲からバーリングが形成される。該バーリングは、その先端部分が頭部の座面から多角形環状凹部輪内に案内されながら、バーリングの先端部分から多角形環状凹部を構成する平坦状壁面に沿うようにして挿入される。
【0014】
バーリングの先端部分が多角形環状凹部の平坦状奥面に当接又は近接すると、バーリングの開口部における開口周縁が多角形状に形成されることとなり、本発明のドリル螺子による締付の完了状態に近づくにつれて、バーリングが多角形環状凹部に倣って、多角膨出形状部として形成されることになる。
【0015】
バーリングは、多角形環状凹部によって、多角膨出形状に形成されるため、力学的強度が高くなり、破壊強度を向上させることができる。したがって、バーリングに形成された雌螺子も潰れ難いものとし、2枚の金属薄板同士の締付構造は、極めて耐久性のあるものにできる。
【0016】
請求項2の発明では、頭部には直径方向に突出する円板状の座金部が一体形成されると共に、該座金部を座面として、前記多角形環状凹部が形成されたことにより、座面の面積を増加すると共に、頭部と金属薄板との接触面積も増加させることができ、締付完了状態においてより一層安定した状態にすることができる。
【0017】
請求項3の発明では、多角形環状凹部は六角形に形成されたことにより、バーリングの先端が挿入し易くなり、且つ多角形所のなかで最も安定した形状にすることができる。請求項4の発明では、多角形環状凹部は四角形に形成されたことにより、バーリングの先端部分も最も強固な形状にすることができる。
【0018】
請求項5の発明では、多角形環状凹部を構成するそれぞれの平坦状壁面は前記多角形環状凹部の奥部に向かって次第直径方向が小さくなるように傾斜面としたので、バーリングの形状は多面の角錐形状となり、より一層強固なバーリングを形成することができる。
【0019】
請求項6の発明では、座金部は、前記頭部とは別材として、前記座金部が前記頭部に固着されてなる構成としたので、前記頭部と前記ドリル螺子軸部の部分は通常のビス又はボルトを使用することができ、座金部のみに多角形環状凹部を形成すればよく、本発明のドリル螺子を極めて簡単で且つ低価格にて提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)は本発明の側面図、(B)は(A)の(ア)部拡大断面図、(C)は(A)のX1−X1矢視断面図、(D)は頭部箇所及びその付近の斜視図である。
図2】(A)は穿孔開始段階において本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板に穿孔した直後の状態を示す一部書略した縦断側面図、(B)は(A)のX2−X2矢視端面図、(C)は2枚の金属薄板に穿孔刃部にて貫通孔が穿孔された斜視図である。
図3】(A)は螺子孔形成段階において本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板にドリル螺子部の螺子山が食い込んだ状態の縦断側面図、(B)は(A)のX3−X3矢視端面図、(C)は2枚の金属薄板に螺子山にて開口部が形成され同時にバーリングが形成された状態の斜視図である。
図4】(A)は多角形状バーリング形成開始段階において本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板にドリル螺子部の螺子山が食い込みつつ金属薄板が座面に到達してバーリングの一部が多角形環状凹部に入り込んだ状態の縦断側面図、(B)は(A)のX4−X4矢視端面図、(C)はバーリングが多角形状に形成され始めた状態の斜視図である。
図5】(A)は多角形状バーリング形成途中工程において本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板にドリル螺子部の螺子山が食い込みつつ多角形環状凹部に入り込んだバーリング部分がさらに多角形状に大きく膨出する状態の縦断側面図、(B)は(A)のX5−X5矢視端面図、(C)はバーリングが多角形状に形成された状態の斜視図である。
図6】(A)は多角形状バーリング形成最終工程において本発明のドリル螺子にてバーリング部分の開口部が円形から次第に多角形状に変化する状態の縦断側面図、(B)は(A)のX6−X6矢視端面図、(C)はバーリングの開口部が円形状から多角形状に変化する状態の斜視図である。
図7】(A)は多角形状バーリング完成において本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板の接合締付が完了した状態の縦断側面図、(B)は(A)のX7−X7矢視端面図、(C)は2枚の金属薄板の接合締付が完了した状態におけるバーリングの斜視図である。
図8】(A)は本発明における座金部が存在しない実施形態の要部縦断側面図、(B)は本発明における多角形環状凹部の平坦状壁面が垂直面として形成された実施形態の要部縦断側面図である。
図9】(A)は多角形環状凹部を方形状とした実施形態の座面から見た平面図、(B)は2枚の金属薄板に四角錐状に形成されたバーリングの斜視図、(C)は多角形環状凹部を八角形状とした実施形態の座面から見た平面図、(B)は2枚の金属薄板に八角錐状に形成されたバーリングの斜視図である。
図10】(A)は頭部と座金部とを別部材とした実施形態の一部断面にした要部拡大側面図、(B)は頭部と座金部をが分離された状態の一部断面にした要部拡大側面図、(C)は座金部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、図1に示すように、頭部1と、ドリル螺子軸部2とから構成される。前記頭部1は、略六角柱形状として形成され、通常のボルトの頭部と略等しい形状である。頭部1の頭本体部11でドリル螺子部2が設けられている側を座面12と称する。該座面12は、平坦状の面であり、その直径中心位置には多角形環状凹部13とドリル螺子軸部2が形成されている〔図1(C),(D)参照〕。
【0022】
座面12の表面から頭部1側に向かって窪み状の、多角形環状凹部13が形成されている。該多角形環状凹部13は、ドリル螺子軸部2の座面12における付根部2a部分の周囲を包囲する環状として形成されたものである〔図1(C),(D)参照〕。
【0023】
多角形環状凹部13は、前記ドリル螺子軸部2の付根部を包囲する複数の平坦状壁面13a,13a,…と、ドリル螺子部2の軸方向に直交する面となる平坦状奥面13bとから形成される。
【0024】
多角形環状凹部13は、座面12の表面から浅い窪みとして形成され、多角形環状凹部13を構成するそれぞれの平坦状壁面13a,13a,…は、平坦状の面として形成される。また、略平坦状の面として形成され、僅かに断面が円弧状に形成された面とすることもある。
【0025】
また、平坦状奥面13bは、多角形環状凹部13の奥に位置する面であり、前記座面12と平行で且つドリル螺子部2の軸方向に直交する面として形成される。また、平坦状奥面13bは、多角形環状凹部13の開口側とは反対側に位置し、多角形環状凹部13の終端部となる。前記平坦状壁面13a,13a,…は、多角形環状凹部13の平坦状奥面13bに向かって、多角形環状凹部13の直径が次第に小さくなるように傾斜面として形成されている。
【0026】
つまり、それぞれの平坦状奥面13bは、多角形環状凹部13の開口側から平坦状奥面13bに向かうに従い、次第に座面12の中心部に向かうように傾斜する面となる〔図1(B),(C),(D)参照〕。具体的には、多角形環状凹部13は、略傘形状に近い形状である。また、前記平坦状壁面13a,13a,…は、ドリル螺子部2の軸方向に平行な面となる垂直面として形成されることもある〔図8(B)参照〕。
【0027】
前記多角形環状凹部13は、具体的には、6個の平坦状壁面13a,13a,…を有する六角形状としたものである〔図1(C)参照〕。そして、前述したように、平坦状壁面13a,13a,…は多角形環状凹部13の奥側に向かって傾斜状に形成される。
【0028】
頭部1には、頭部本体11の下端に直径方向に突出する円板状の座金部14が一体形成される。該座金部14は、略扁平裁頭円錐形状に形成され、該座金部14の裏面側を座面12として使用され、該座面12に前記多角形環状凹部13が形成される〔図1(C),(D),(E)参照〕。また、前記座金部14が形成されない実施形態も存在する〔図8(A)参照〕。
【0029】
ドリル螺子部2は、螺子山軸部21の螺子山211における頭部1側の面の傾斜角度をフランク面211aと称し、該フランク面211aの傾斜角度θaは、該フランク面211aの反対側面211bの角度θbよりも小さい〔図1(B)参照〕。また、ドリル螺子部2の先端部は、金属薄板を穿孔するための穿孔刃軸部22が設けられている。該穿孔刃部22は、前記螺子山軸部21に比較すると僅かの長さである〔図1(A)参照〕。

【0030】
図9(A)は本発明のドリル螺子において、多角形環状凹部13の開口の形状として、方形状とした実施形態である。この場合、方形状とは、略正方形となるが、縦横寸法が略等しい長方形も含まれる。この実施形態では、多角形環状凹部13を構成する平坦状壁面13a,13a,…は4個であり、本発明のドリル螺子によって2枚の金属薄板3,3に形成されるバーリング5は略四角錐形状となる〔図9(B)参照〕。
【0031】
また、図9(C)は本発明のドリル螺子において、多角形環状凹部13の開口の形状として、八角とした実施形態である。この実施形態では、多角形環状凹部13を構成する平坦状壁面13a,13a,…は8個であり、本発明のドリル螺子によって2枚の金属薄板3,3に形成されるバーリング5は略八角錐形状となる〔図9(D)参照〕。
【0032】
また、前記座金部14は、前記頭部1とは、別部材とした実施形態も存在する(図10参照)。この実施形態では、座金部14に多角形環状凹部13が形成されたものである〔図10(B),(C)参照〕。多角形環状凹部13は、座金部14の軸方向に対して貫通形成されたものである。
【0033】
すなわち、多角形環状凹部13を構成する平坦状壁面13a,13a,…は、座金部14に形成されることになり、多角形環状凹部13を構成する平坦状奥面13bは、頭部1側の座面12をそのまま利用して使用するものである。座金部14は、頭部1に対して溶接等によって固着される〔図10(A)参照〕。したがって、頭部1とドリル螺子軸部2の部分は、通常のビス又はボルトを使用することができる。そして、座金部14のみに多角形環状凹部13を形成すればよい〔図10(B)参照〕。
【0034】
次に、本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板3,3同士を接合する工程を図2乃至図6に基づいて説明する。図2は開口部4の穿孔開始段階であり、図3は開口部4に螺子孔形成段階であり、図4は多角形状バーリング形成開始段階であり、図5は多角形状バーリング形成の途中工程段階であり、図6は多角形状バーリング形成の最終工程段階であり、図6は多角形のバーリングの形成の完了である。
【0035】
まず、穿孔開始段階では、2枚の金属薄板3,3をドリル螺子部2の先端の穿孔刃部22にて穿孔する〔図2(A)参照〕。このとき、2枚の金属薄板3,3には、ドリル螺子部2の穿孔刃部22によって開口部4のみが形成され〔図2(C)参照〕、ドリル螺子の多角形環状凹部13は、金属薄板3にまだ到達していない〔図2(B)参照〕。
【0036】
次に、螺子孔形成段階では、本発明のドリル螺子を回転させることによって、螺子山軸部21が2枚の金属薄板3,3の開口部4に食い込み、前記頭部1が金属薄板3,3に近接してゆく〔図3(A)参照〕。
【0037】
図3(A)は、頭部1が2枚の金属薄板3,3に近接している状態を示すものであるが、座面12に形成された多角形環状凹部13は、まだ金属薄板3に到達していない〔図3(B)参照〕。また、2枚の金属薄板3,3には、ドリル螺子部2による開口部4の周囲は頭部1側に向かって扁平円錐状に膨出し、バーリング5が形成され始めている〔図3(C)参照〕。
【0038】
次に、多角形状バーリングの形成開始段階では、本発明のドリル螺子を回転させることによって、2枚の金属薄板3,3の頭部1側寄りの金属薄板3に前記頭部1の座面12が到達し、穿孔された開口部4の開口周縁41の周囲に形成されたバーリング5が多角形環状凹部13内に入り込み、バーリング5の周縁が多角形環状凹部13の周縁の平坦状壁面13a,13a,…に当接する〔図4(A),(B)参照〕。
【0039】
そして、バーリング5は、多角形環状凹部13の平坦状壁面13a,13a,…に当接した部分が、座面12の位置に残り、開口部4の開口周縁41のみが、平坦状壁面13a,13a,…に沿うようにして案内されながら多角形環状凹部13の平坦状奥面13bに向かって膨出してゆく〔図4(A)参照〕。
【0040】
このとき、2枚の金属薄板3,3の開口部4の開口周縁41の周辺に膨出形成されたバーリング5は、多角形環状凹部13の平坦状壁面13a,13a,…を傾斜面とした場合には、前記バーリング5は多角形の略角錐形状となり、図4(B)に示された実施形態では六角錐として形成される〔図4(C)参照〕。
【0041】
このように、多角形環状凹部13の形状に合わせて、バーリング5の形状が次第に形成されてゆく。また、平坦状壁面13a,13a,…をドリル螺子部2の軸方向に沿って垂直状とした場合には〔図8(B)参照〕、バーリング5は多角形状の扁平筒状となる。
【0042】
次に、多角形状バーリング形成途中工程では、ドリル螺子の回転によって、角錐状のバーリング5はさらに高く膨出し、多角形環状凹部13の平坦状奥面13bに近接する〔図5(A),(C)参照〕。
【0043】
次に、多角形状バーリング形成最終工程では、金属薄板3,3に形成された開口部4の開口周縁41がドリル螺子の多角形環状凹部13の平坦状奥面13bに略到達し〔図6(A)参照〕、バーリング5の開口周縁41は、多角形環状凹部13の平坦状壁面13a,13a,…に倣って、多角形状に近づくように形成されてゆく〔図6(B)参照〕。
【0044】
そして、多角形状バーリングの形成が完了した段階では、ドリル螺子の締付が完了する時であり、バーリング5は略角錐(又は多角形状円筒)となり、その開口周縁41には雌螺子が形成される(図7参照)。
【0045】
このようにして、本発明のドリル螺子にて2枚の金属薄板3,3を締め付けて接合すると、多角形環状凹部13によって、穿孔工程にて発生するバーリング5を多角膨出形状部とし、バーリング5自体を極めて力学的に強固な構造にすることができる。しかも、雌螺子も良好なものに形成することができる。
【0046】
バーリングは、本発明のドリル螺子の多角形環状凹部13によって、多角膨出形状に形成されるため、多角形状のバーリング5は力学的強度が高くなり、破壊強度も向上する。したがって、バーリング5に形成された雌螺子も潰れ難いものとなり、2枚の金属薄板3,3同士の締付構造による接合は、極めて強固で耐久性のあるものにできる。
【符号の説明】
【0047】
1…頭部、11…頭部本体、12…座面、13…多角形環状凹部、
13a…平坦状壁面、13b…平坦状奥面、14…座金部、2…ドリル螺子軸部。
図1
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図7
図8
図9
図10