(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ワイヤの方向を転換させるためのワイヤガイドがそれぞれ取り付けられる第1ワイヤガイド取付部と第2ワイヤガイド取付部を横並びで近接して備え、ワイヤ径路が外側のワイヤを上下方向から前後方向にガイドする第1ワイヤガイドが取り付けられる第1ワイヤガイド取付部を、ワイヤ径路が内側のワイヤを上下方向から前後方向にガイドする第2ワイヤガイドが取り付けられる第2ワイヤガイド取付部よりも室外側または室内側に設けてあるワイヤ式ウィンドウレギュレータ用ワイヤガイドブラケットを備えるワイヤ式ウィンドウレギュレータであって、
前記第1ワイヤガイドによってガイドされ前後方向に配置された前記外側のワイヤは、前記第2ワイヤガイドに接しておらず、車幅方向視において前記第2ワイヤガイドと重ねて配置されていることを特徴としたワイヤ式ウィンドウレギュレータ。
【背景技術】
【0002】
自動車の窓ガラスを開閉するワイヤ式ウィンドウレギュレータは、
図12に示すように、窓ガラスGの前後端部に設けたキャリアCをガイドする前後2本のガイドレールRを備え、ガイドレールRの上下端部にワイヤガイドP(ワイヤガイド)を装着し、キャリアCが取り付けられたワイヤWをドラムDと各ワイヤガイドPの間に張り、ドラムDを駆動してワイヤWを往復移動させることにより、窓ガラスGを開閉するのが一般的である。
このウィンドウレギュレータは、ワイヤWが自動車用ドアのパネル空間に交差して張られているので、パネル空間の有効利用が難しい。
【0003】
そこで、従来、ワイヤを自動車用ドアの後フレーム、上フレーム、及び前フレーム内に通して配索し、パネル空間を有効に利用しようとするウィンドウレギュレータが特許文献1に記載されている。
しかし、このウィンドウレギュレータは、後フレーム、上フレーム、及び前フレームの内側という狭い空間に、ほぼ全長に亘ってワイヤを通す必要があり、作業が非常に面倒である。
この問題を回避するために、ワイヤをパネル空間の前後端部及び下端部に沿って張ることが考えられる。ところが、このようにワイヤを張るには、パネル空間の下端に沿って延びたワイヤの前部と後部を、例えば前部を前方のガイドレールの下端部に設けたワイヤガイドで方向転換して上方に延ばし、その上端のワイヤガイドで折り返して下降させ、そのワイヤを前記下端部のワイヤガイドで前後方向へ転換させるので、前方のガイドレールの下部に設ける一つのワイヤガイドブラケットに2個のワイヤガイドを装着する必要が生じる。後部についても同様であるが、ワイヤガイドの一方はドラムになる。
そして、2個のワイヤガイドに係合したワイヤの軌道どうしが干渉しないようにするためには、ワイヤガイドブラケットの面内でワイヤガイドを離れた位置に装着しなければならない。すると、ワイヤガイドブラケットが大きくなって、パネル空間が狭まると共に、ウィンドウレギュレータの重量が増えてしまう。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の自動車用ドアは、
図1に示すように、窓ガラス1とドアフレーム2とドアパネル3及びウィンドウレギュレータ4を備える。
ドアフレーム2は前フレーム5と後フレーム6及びこれらの上端部を連結した上フレーム7とからなる。
ドアパネル3は、パネル空間Sを形成する外パネル8と内パネル9(鎖線で示している)から成り、外パネル8と内パネル9の間に前フレーム5と後フレーム6の下部が固定されている。また、パネル空間Sの上方において、前フレーム5と後フレーム6と上フレーム7で囲まれた部分が窓Wになっている。
【0010】
窓ガラス1は、前縁が前フレーム5で案内され、後縁が後フレーム6で案内されて上下方向に移動可能に装着されている。
窓ガラス1を昇降させるウィンドウレギュレータ4は、
図2に示すように、ワイヤ10と、ドラム駆動装置11と、ワイヤ10を係合してその方向を転向させるワイヤガイドa〜eと、前フレーム5及びガイドレール12で構成される。ワイヤガイドa,b,d,eは回動可能なプーリーなどによるワイヤガイドであり、ワイヤガイドcはワイヤ10をガイドする湾曲面を持ち、固定的に取り付けられる部材である。
ドラム駆動装置11は、ワイヤ10を巻回したドラム13とモータ14を有し、モータ14でドラム13を回転駆動することにより、ワイヤ10を一端側で巻き取るとともに他端側で巻き戻すものである。
【0011】
図3に示すように、前フレーム5は、後方が開口したコ字状の断面を有し、窓ガラス1の前縁が上下動可能に挿入される。
前フレーム5の中間部にはワイヤガイドcが取り付けられる。ワイヤガイドcの上端面は緩やかに湾曲し、ワイヤ10を係合するガイド溝17が形成されている。
前フレーム5の下端部にはワイヤガイドブラケット15が装着されている。
【0012】
ワイヤガイドブラケット15は、前後寸法が上下寸法より大きい細長形状であり、
図4及び
図5に示すように、前半部が第1ワイヤガイド取付部30、後半部が第2ワイヤガイド取付部31となっている。第1ワイヤガイド取付部30と第2ワイヤガイド取付部31は段部を介して連続して形成され、第1ワイヤガイド取付部30は第2ワイヤガイド取付部31よりもやや室外側に位置している。また、第2ワイヤガイド取付部31の後端部室外側に筒状のチューブ支持部材16が設けられる(
図3,4)。
第1ワイヤガイド取付部30の上端には第1取付片32が連設され、第1ワイヤガイド取付部30の前端には溶接片33が連設され、第2ワイヤガイド取付部31の上端には第2取付片34が連設されている。
【0013】
第1取付片32は、上方室内側に延びる傾斜部35と、傾斜部35の上端に起立した固定部36と、固定部36の前端から室外側へ直角に延びる溶接部37を一体に形成して成る。
溶接片33は、第1ワイヤガイド取付部30の前端を室外側へ直角に屈曲して形成される。
第2取付片34は、上方室内側に延びる傾斜部35’と、傾斜部35’の上端に起立した固定部36’を一体に形成して成る。
そして、ワイヤガイドブラケット15は、第1取付片32の固定部36及び第2取付片34の固定部36’を貫通するネジにより内パネル9に固定され、また、
図6に示すように、第1取付片32の溶接部37及び溶接片33を前フレーム5の前端面に溶接することにより前フレーム5の下端部に固定される。
【0014】
第1ワイヤガイド取付部30及び第2ワイヤガイド取付部31には固定用孔40と、固定用孔40を同心状に囲んで室外側へ隆起するワイヤガイド受け座41がそれぞれ形成されている(
図5)。
そして、
図3及び
図4に示すように、第1ワイヤガイド取付部30の固定用孔40とワイヤガイドbの中心を貫通する固定具42によって、ワイヤガイドb(第1のワイヤガイド、第1実施例ではプーリーである)が第1ワイヤガイド取付部30の室外側の面に取り付けられて、ワイヤガイド受け座41で支持される。
また、第2ワイヤガイド取付部31の固定用孔40とワイヤガイドaの中心を貫通する固定具42によって、ワイヤガイドa(第2ワイヤガイド、前記同)が第2ワイヤガイド取付部31の室外側の面に取り付けられて、ワイヤガイド受け座41で支持される。
第1ワイヤガイド取付部30は第2ワイヤガイド取付部31より室外側に形成されているので、ワイヤガイドbもワイヤガイドaより室外側に設置される。
【0015】
ガイドレール12は、前フレーム5と対をなし、パネル空間Sの後部に立設される(
図1)。
図2に示すように、ガイドレール12の上端部にはワイヤガイドブラケット18が固定される。ワイヤガイドブラケット18の室外側の面には第1実施例においてプーリーであるワイヤガイドdが取り付けられている。ワイヤガイドdの下方には筒状のチューブ支持部材19が設けられている。
ガイドレール12の下端部にはブラケット20が固定されている。ブラケット20の室外側の面の後部には第1実施例においてプーリーであるワイヤガイドeが取り付けられ、ワイヤガイドeの前方に筒状のチューブ支持部材21が取り付けられている。また、ブラケット20の室外側の面の前上部にドラム13が、同様に、ブラケット20の室内側の面の前上部にモータ14が、ドラム13とモータ14とでブラケット20を挟み付けるようにして取り付けられ、ドラム13の後方及び前方にそれぞれ筒状のチューブ支持部材22とチューブ支持部材23が取り付けられている(
図2)。
そして、ガイドレール12上部のワイヤガイドブラケット18と同下部のブラケット20をドアパネル3の内パネル9に固定することにより、ガイドレール12がパネル空間S内に取り付けられる。
【0016】
また、ドラム13の後方のチューブ支持部材22とガイドレール12の上部に取り付けたチューブ支持部材19の間にガイドチューブ24aが架設され、ガイドレール12の下部に取り付けたチューブ支持部材21と前フレーム5の下部に取り付けたチューブ支持部材16の間にガイドチューブ24bが架設され、ドラム13の前方に設けたチューブ支持部材23と前記チューブ支持部材16の間にガイドチューブ24cが架設されている。チューブ支持部材16は、ガイドチューブ24bとガイドチューブ24cの端部が共に装着される1個の部材である。
【0017】
ワイヤ10は、ドラム13からガイドチューブ24aを通過してガイドレール12上部のワイヤガイドd
(折り返しガイド)と係合し、ガイドレール12の内部を通ってガイドレール12下部のワイヤガイドe
(外ワイヤガイド)に戻る。次いで、ワイヤガイドeからガイドチューブ24bを通過して前フレーム5下部のワイヤガイドb
(前方ワイヤガイド)に至り、ワイヤガイドbの下面に係合してから前フレーム5の内部を通って前フレーム5上部のワイヤガイドc
(折り返しガイド)に至る。ワイヤガイドcのガイド溝17に係合し転回されたワイヤ10は、前フレーム5の外部を通って前フレーム5下部のワイヤガイドa
(後方ワイヤガイド)に戻り、ワイヤガイドaの下面に係合してからガイドチューブ24cを通過してドラム13に至る。
すなわち、実施例のワイヤ式ウィンドウレギュレータは、自動車ドアのパネル空間に配置されており、パネル空間の前後方向一方側に配置した上下方向のガイド部とパネル空間の前後方向他方側に配置した上下方向のガイド部及び前記一方側のガイド部と他方側のガイド部の下部を接続する連結部を備えている。
図3及び
図4に示すように、同じワイヤガイドブラケット15に
前後方向に近接して横並びで取り付けられたワイヤガイドa及びワイヤガイドbには下部ワイヤ溝にそれぞれワイヤ10が係合される。このとき、
外回りのワイヤ径路のワイヤ10をガイドするワイヤガイドbは、ワイヤ径路が
内回りのワイヤ10をガイドするワイヤガイドaよりも室外側に位置しているので、
連結部において外側のワイヤ10と内側のワイヤ10が交差したり接触したりすることはない。
【0018】
窓ガラス1の下端前部を支持する前キャリア25をワイヤガイドcとワイヤガイドa間のワイヤ10に取り付ける。また、窓ガラス1の下端後部を支持する後キャリア26をワイヤガイドdとワイヤガイドe間のワイヤ10に取り付ける。後キャリア26はガイドレール12に装着されて上下に案内される。
モータ14を駆動してドラム13を回転させると、ワイヤガイドcとワイヤガイドa間のワイヤ10とワイヤガイドdとワイヤガイドe間のワイヤ10は同じ方向に移動するので、前キャリア25と後キャリア26は同時に昇降し、窓ガラス1が開閉する。
【0019】
図7〜
図11は、ワイヤガイドブラケット15に関する他の例である。特にその第1、第2のワイヤガイド取付部30,31とワイヤガイドb(第1のワイヤガイド)およびワイヤガイドa(第2のワイヤガイド)の変形構造に特徴がある。
図7は、前フレーム5の下部を示し、ワイヤガイドブラケット15に前フレーム5の下端部が結合されている。符号36,36’は内パネル9への固定部であり、また、符号10aは、前フレーム5の上部におけるワイヤガイドcからワイヤガイドaに到達し、ついでドラム13に至る開き側ワイヤ(ドラム13に引かれると窓ガラスが開く方向に移動する)であり、符号10bは同趣旨で閉じ側ワイヤである。
【0020】
符号43は、ワイヤ10a,10bのためのワイヤガイドブロックであって、合成樹脂で成形されており、前述の第1実施例における第1ワイヤガイド取付部30のワイヤガイド受け座41に相当する部分とワイヤガイドbに相当する部分(
図4,5)が一体形成された第1部分44、同様に、第2ワイヤガイド取付部31のワイヤガイド受け座41に相当する部分とワイヤガイドaに相当する部分が一体に形成された第2部分45、およびこのワイヤガイドブロック43をワイヤガイドブラケット15へ取り付けるための二つの係合突部53,54とが、ひとつの部品として一体成形された構造となっている(
図9)。
なお、前記の係合突部53,54は、ワイヤガイドブロック43の内側面に突出して形成されており、また、第2実施例においても前記のチューブ支持部材16が一体に成形されている。そして、第2実施例におけるワイヤガイドブラケット15は、段部をもって連続に形成された第1、第2のワイヤガイド取付部30,31が前記のワイヤガイド受け座41は有していない平らな構成であり、前記の係合突部53、54が係合する係合孔53a、54aが形成されている。
第1部分44は、ワイヤガイドブロック43の前方部分に位置し前面の周面と底面に閉じ側ワイヤ10bを案内するガイド溝46が形成されている(
図8,9)。このガイド溝46はワイヤガイドブロック43の後方部分である第2部分45の底面に継続されて後方に突き抜けている。
【0021】
第2部分45は、前記のように、ワイヤガイドブロック43の後方側に位置し、前記第1部分44との間に円弧状壁47を備えた凹所47aを介在させて成形されている。第2部分の前面に相当する前記円弧状壁47から底面にわたり、開き側のワイヤ10aが案内されるガイド溝48が形成されている。前記の閉じ側ワイヤ10bのガイド溝46とこの開き側ワイヤ10aのガイド溝48とは、第2部分45の底面箇所ではガイド溝46(閉じ側)が車幅方向で外側に、ガイド溝48が内側にあって平行に配置されている。
チューブ支持部材16は、ワイヤガイドブロック43の後部に位置して閉じ側ワイヤ10bの装着溝51とそのガイドチューブ24bの前端が差込まれる挿入口52、および開き側ワイヤ10aの装着溝49とそのガイドチューブ24cの前端が差込まれる挿入口50とが内外方向で並列に形成されている。
【0022】
そして、ワイヤガイドブロック43の車幅方向内側の面にはワイヤガイドブラケット15へ装着するための係合突部53、54が内方向に突出して形成されている。係合突部53,54は、係合方向を後方に向けて揃えたフック形であり、ワイヤガイドブラケット15に形成した係合孔53a,54a(
図9)へ外側から差込んで後方へ摺動させることで、ワイヤガイドブロック43をワイヤガイドブラケット15へ確実に固定することができる。
【0023】
すでに、理解できるように、ワイヤガイドブラケット15に取り付けられたワイヤガイドブロック43には、第1部分44のガイド溝46に閉じ側ワイヤ10bを掛けまわし、上部は前フレーム5上部のワイヤガイドcに至り、下部はワイヤガイドブロック43の底面をめぐって装着溝51を経由して挿入口52に装着されたガイドチューブ24bに至る。また、第2部分45の円弧状壁47には開き側ワイヤ10aが前フレーム5のワイヤガイドcから底面のガイド溝48及び装着溝49を経由して、挿入口50に装着されたガイドチューブ24cに至る。
構造上、第2実施例のワイヤガイドa,bは、第1、第2のワイヤガイド取付部30、31におけるワイヤガイド受け座41相当部分と一体になった、回転しない、固定型のワイヤガイドということになるが、ワイヤ10の配索とその作動は第1実施例の場合と変わらない。
【0024】
一方、ワイヤガイドブロック43の取り付けは簡単でしかも配索されたワイヤ10に張力がかかると、閉じ側ワイヤ10b、開き側ワイヤ10aからワイヤガイドブロック43を後方へ移動させるような力が作用するので係合突部53、54と係合孔53a,54aとの係合状態が緩むことはない。
前記のように、第2の実施例はワイヤガイドa,bと第1、第2のワイヤガイド取付部30、31を、ワイヤガイドブラケット15へ取り付ける一つの部品として一体化した構造なので、管理すべき部品数が減少し、また、製造手間、ウィンドウレギュレータの組み立て手間を大幅に低減することができる。
【0025】
以上、実施例について説明した。本発明のワイヤ式ウィンドウレギュレータ用ワイヤガイドブラケットの構造は上記実施例に限定されない。
第1ワイヤガイド取付部30が第2ワイヤガイド取付部31に対して車幅の内外方向で室内側または室外側に配置されてこれらの間に段差のあることが重要であり、どちらが車幅方向外側であってもよく、段差をつける手段も段部15aに限らない。
さらに、ワイヤガイドブラケット15は鋼板のプレス成形品の他に合成樹脂の成形品とすることもある。
【0026】
ワイヤガイドaをなくしてドラム駆動装置11を前フレーム5の下端部に取り付け、ガイドレール12の下端部に、ワイヤガイドdに向かうワイヤ10を係合する別のワイヤガイドを設けることもできる。この場合、ガイドレール12の下端部に第1ワイヤガイド取付部30と第2ワイヤガイド取付部31を有する本発明のワイヤガイドブラケット15を装着し、第1ワイヤガイド取付部30にワイヤガイドeを取り付け、第2ワイヤガイド取付部31にワイヤガイドaに相当するワイヤガイドを取り付ける。