(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従って、解決すべきさらなる問題は、酵素的な過酸の生成を口腔表面に対して標的化するのに適した組成物および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
口腔表面に対して過酸ベースの有益剤を酵素的に生成および送達するための成分を含む方法および組成物が提供される。
【0021】
一実施形態では、口腔表面の漂白、歯のホワイトニング、消毒、脱染、脱臭、う歯の処置、う歯の予防、う歯に関連する口腔細菌の低減、および口腔バイオフィルム(例えば、歯垢)の処置または除去などの口腔ケア用途で使用するための過酸有益剤を酵素的に生成するためにCE−7ペルヒドロラーゼを使用する口腔ケア組成物および方法が提供される。
【0022】
一実施形態では、
1)a)i)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有するエステル、
【0023】
ii)構造
【化1】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
【0024】
iii)式
【化2】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、ならびに
iv)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
【0025】
b)過酸素源と、
c)過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、前記シグネチャーモチーフが、
i)配列番号2の位置118〜120に相当する位置のRGQモチーフと、
ii)配列番号2の位置179〜183に相当する位置のGXSQGモチーフと、
iii)配列番号2の位置298〜299に相当する位置のHEモチーフと
を含む酵素触媒と
を含む反応成分のセットを提供するステップと、
2)(1)の反応成分を適切な反応条件下で混ぜ合わせ、それにより、少なくとも1つの過酸が酵素的に生成されるステップと、
3)口腔表面を少なくとも1つの過酸と接触させ、それにより、口腔表面が、漂白、歯のホワイトニング、消毒、脱染、脱臭、バイオフィルムの低減または除去、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される過酸ベースの利益を受けるステップと
を含む方法が提供される。
【0026】
一実施形態では、口腔表面は、歯のエナメル質、歯のペリクル(pellicle)、口腔内の軟組織(例えば、歯肉、舌)、または口腔バイオフィルム(例えば、口腔プラーク)である。
【0027】
別の実施形態では、過加水分解酵素と、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分とを含む融合タンパク質(すなわち、「標的化ペルヒドロラーゼ」)の使用を含む組成物および方法が提供されており、ここで2つの成分は、場合により、ペプチドスペーサーによって分離されていてもよい。
【0028】
一実施形態では、
1)a)i)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有するエステル、
【0029】
ii)構造
【化3】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
【0030】
iii)式
【化4】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、ならびに
【0031】
iv)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
b)過酸素源と、
c)過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記酵素触媒が、以下の一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
(式中、PAHは、過加水分解活性を有する酵素であり、
OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さの任意的なペプチドリンカーであり、
yは0または1である)
を有する融合タンパク質を含む酵素触媒と
を含む反応成分のセットを提供するステップと、
2)(1)の反応成分を適切な反応条件下で混ぜ合わせ、それにより、少なくとも1つの過酸が酵素的に生成されるステップと、
3)口腔表面を少なくとも1つの過酸と接触させ、それにより、口腔表面が、漂白、歯のホワイトニング、消毒、脱染、脱臭、バイオフィルムの低減または除去、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される過酸ベースの利益を受けるステップと
を含む方法が提供される。
【0032】
融合タンパク質は、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される過加水分解酵素を含むことができる。
【0033】
一実施形態では、融合タンパク質は、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)からの過加水分解アリールエステラーゼ(ArE)を含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号460として提供されるS54Vマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)アリールエステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0034】
一実施形態では、融合タンパク質は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)からの過加水分解エステラーゼを含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号477として提供されるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)エステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0035】
別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号424、425、426、427、428、429、430、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、476、477、478、および479からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0036】
別の実施形態では、融合タンパク質は、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有するCE−7ペルヒドロラーゼを含み、前記シグネチャーモチーフは、
i)配列番号2の位置118〜120に相当する位置のRGQモチーフと、
ii)配列番号2の位置179〜183に相当する位置のGXSQGモチーフと、
iii)配列番号2の位置298〜299に相当する位置のHEモチーフと
を含む。
【0037】
別の実施形態では、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分は、好ましくは、少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含む単鎖ペプチドである。またさらなる実施形態では、口腔表面結合ペプチドは、歯のエナメル質、歯のペリクルまたは歯のエナメル質および歯のペリクルの両方に対する親和性を有するペプチドである。
【0038】
別の実施形態では、以下の一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
を含む融合タンパク質が提供されており、式中、
1)PAHは、過加水分解活性を有する酵素であり、
2)OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
3)Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さの任意的なペプチドリンカーであり、
4)yは0または1である。
【0039】
別の実施形態では、一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
を含む融合タンパク質が提供されており、式中、
a)PAHは過加水分解活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼであり、PAHは、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有し、前記シグネチャーモチーフは、
i)配列番号2の位置118〜120に相当する位置のRGQモチーフと、
ii)配列番号2の位置179〜183に相当する位置のGXSQGモチーフと、
iii)配列番号2の位置298〜299に相当する位置のHEモチーフと
を含み、
b)OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
c)Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さの任意的なペプチドリンカーであり、
d)yは0または1である。
【0040】
別の実施形態では、
1)上記の過加水分解融合タンパク質のいずれかを含む酵素触媒と、
2)a)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有するエステル、
【0041】
b)構造
【化5】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
【0042】
c)式
【化6】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、ならびに
d)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
3)過酸素源と、
4)経口的に許容可能なキャリア媒体と
を含む口腔ケア製品が提供される。
【0043】
別の実施形態では、
1)過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、前記シグネチャーモチーフが、
a)配列番号2の位置118〜120に相当する位置のRGQモチーフ、
b)配列番号2の位置179〜183に相当する位置のGXSQGモチーフ、および
c)配列番号2の位置298〜299に相当する位置のHEモチーフ
を含む酵素触媒と、
2)a)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有するエステル、
【0044】
b)構造
【化7】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
【0045】
c)式
【化8】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、ならびに
d)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
3)過酸素源と、
4)経口的に許容可能なキャリア媒体と
を含む口腔ケア製品が提供される。
【0046】
別の実施形態では、口腔表面に対する親和性を有する単離ポリペプチドが提供されており、前記ポリペプチドは、配列番号399、400、401、402、403、404、405、406、407、408、409、410、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、および422からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0047】
別の実施形態では、口腔ケア製品において、有効濃度の少なくとも1つの過酸を生成して、口腔材料/表面を漂白、ホワイトニング、消毒、脱染、脱臭する、あるいは口腔材料/表面からバイオフィルムを除去するための、過加水分解活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼの使用も提供される。
【0048】
別の実施形態では、
a)過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、前記シグネチャーモチーフが、
i)配列番号2の位置118〜120に相当する位置のRGQモチーフ、
ii)配列番号2の位置179〜183に相当する位置のGXSQGモチーフ、および
iii)配列番号2の位置298〜299に相当する位置のHEモチーフ
を含む酵素触媒と、
b)1)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有するエステル、
【0049】
2)構造
【化9】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
【0050】
3)式
【化10】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、ならびに
d)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
c)過酸素源と
を含み、(a)、(b)、および(c)を同時または段階的(ただし、特定の順番ではない)に混合したときに過酸が形成される過酸発生組成物の、う歯、歯肉炎、口腔カンジダ症、または歯周炎の処置または予防のための使用が提供される。
【0051】
別の実施形態では、以下の一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
を含む融合タンパク質の口腔製品における使用が提供されており、式中、
1)PAHは、配列番号460に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有する、過加水分解活性を有する酵素であり、
2)OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
3)Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さのペプチドリンカーであり、
4)yは0または1である。
【0052】
本明細書(表20)に記載されるエステル基質のいくつかは、過酢酸を生成するために過酸化水素と反応される際に、化学的な過加水分解の影響を特に受けやすかった。別の実施形態では、1,2,3,5−テトラ−O−アセチル−リボフラノース、1,2,3,4−テトラ−O−アセチル−リボピラノース、2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,4,6−テトラアセチル−β−D−グルコピラノース、β−D−グルコピラノース,1,2,3,4−テトラアセテート、2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−グルコピラノース、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−マンノピラノース、およびα−D−マンノピラノースペンタアセテートからなる群から選択される過酸前駆体を含むパーソナルケア製品が提供される。好ましい実施形態では、パーソナルケア製品は口腔ケア製品である。
【0053】
別の実施形態では、
a)i)1,2,3,5−テトラ−O−アセチル−リボフラノース、1,2,3,4−テトラ−O−アセチル−リボピラノース、2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,4,6−テトラアセチル−β−D−グルコピラノース、β−D−グルコピラノース,1,2,3,4−テトラアセテート、2,3,4,6−テトラアセチル−β−D−グルコピラノース、1,3,4,6−テトラ−O−アセチル−マンノピラノース、およびα−D−マンノピラノースペンタアセテートからなる群から選択される過酸前駆体と、
ii)過酸素源と
を含む反応成分のセットを提供するステップと、
b)体表面を、反応成分のセットを水の存在下で混ぜ合わせることによって生成される有効量の過酢酸と接触させ、それにより、過酢酸が体表面に利益を提供するステップと
を含む方法も提供される。好ましい態様では、上記方法における体表面は、歯および/または歯肉などの口腔組織である。
【0054】
生物学的配列の簡単な説明
以下の配列は、37C.F.R.§§1.821−1.825(「ヌクレオチド配列および/またはアミノ酸配列の開示を含む特許出願の要件−配列規則(Requirements for Patent Applications Containing Nucleotide Sequences and/or Amino Acid Sequence Disclosures−the Sequence Rules)」)に従い、世界知的所有権機関(WIPO)標準ST.25(2009年)、ならびに欧州特許条約(EPC)および特許協力条約(PCT)の規則5.2および49.5(aの2)および実施細則の208項および付録Cの配列表の要件と一致する。ヌクレオチドおよびアミノ酸配列データのために使用される記号および形式は、37C.F.R.§1.822に記載される規則に従う。
【0055】
配列番号1は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954(商標)からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。
【0056】
配列番号2は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954(商標)からのセファロスポリンCデアセチラーゼのアミノ酸配列である。
【0057】
配列番号3は、バチルス・スブチリス亜種スブチリス(Bacillus subtilis subsp.subtilis)株168からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。
【0058】
配列番号4は、バチルス・スブチリス亜種スブチリス(Bacillus subtilis subsp.subtilis)株168からのセファロスポリンCデアセチラーゼのアミノ酸配列である。
【0059】
配列番号5は、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633(商標)からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。
【0060】
配列番号6は、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)6633(商標)からのセファロスポリンCデアセチラーゼの酸配列である。
【0061】
配列番号7は、B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580(商標)からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。
【0062】
配列番号8は、B.リケニホルミス(B.licheniformis)ATCC(登録商標)14580(商標)からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0063】
配列番号9は、B.プミルス(B.pumilus)PS213からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0064】
配列番号10は、B.プミルス(B.pumilus)PS213からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0065】
配列番号11は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405(商標)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0066】
配列番号12は、クロストリジウム・サーモセラム(Clostridium thermocellum)ATCC(登録商標)27405(商標)からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0067】
配列番号13は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0068】
配列番号14は、サーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0069】
配列番号15は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0070】
配列番号16は、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0071】
配列番号17は、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)種JW/SL YS485からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0072】
配列番号18は、サーモアナエロバクテリウム(Thermoanaerobacterium)種JW/SL YS485からのアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0073】
配列番号19は、バチルス(Bacillus)種NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼの核酸配列である。GENBANK(登録商標)受入番号ZP_01168674において報告されるようなバチルス(Bacillus)種NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列は、他のセファロスポリンCデアセチラーゼとの配列アライメントと、他のCAH酵素の観察される長さ(通常は、318〜325のアミノ酸長さ、参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2010−0087528−A1号明細書を参照)に対する報告される長さ(340のアミノ酸)の比較とに基づいて恐らく誤りである、15アミノ酸N−末端付加をコードすると思われることに注意すべきである。従って、本明細書で報告される核酸配列は、GENBANK(登録商標)受入番号ZP_01168674で報告されるN−末端15アミノ酸を含まないバチルス(Bacillus)種NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼ配列をコードする。
【0074】
配列番号20は、配列番号19の核酸配列によってコードされるバチルス(Bacillus)種NRRL B−14911からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0075】
配列番号21は、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。
【0076】
配列番号22は、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)C−125からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0077】
配列番号23は、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16からのセファロスポリンCデアセチラーゼをコードする核酸配列である。
【0078】
配列番号24は、バチルス・クラウジイ(Bacillus clausii)KSM−K16からのセファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0079】
配列番号25は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)29233(商標)セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)をコードする核酸配列である。
【0080】
配列番号26は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)29233(商標)セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH)の推定アミノ酸配列である。
【0081】
配列番号27は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書(参照によってその全体が本明細書中に援用される)からのサーモトガ・ネアポリタナ(Thermotoga neapolitana)アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277のXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0082】
配列番号28は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書からのサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277のXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0083】
配列番号29は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書からのサーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277のXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0084】
配列番号30は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書からのサーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277のXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0085】
配列番号31は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書からの「RQ2(a)」に由来するサーモトガ(Thermotoga)種RQ2アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置277のXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0086】
配列番号32は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書からの「RQ2(b)」に由来するサーモトガ(Thermotoga)種RQ2アセチルキシランエステラーゼ変異体の推定アミノ酸配列であり、ここで、位置278のXaa残基は、Ala、Val、Ser、またはThrである。
【0087】
配列番号33は、サーモトガ・レティンガエ(Thermotoga lettingae)アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0088】
配列番号34は、サーモトガ・ペトロフィラ(Thermotoga petrophila)アセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0089】
配列番号35は、本明細書において「RQ2(a)」と記載されるサーモトガ(Thermotoga)種RQ2からの第1のアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0090】
配列番号36は、本明細書において「RQ2(b)」と記載されるサーモトガ(Thermotoga)種RQ2からの第2のアセチルキシランエステラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0091】
配列番号37は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)セファロスポリンCデアセチラーゼをコードするコドン最適化核酸配列である。
【0092】
配列番号38は、サーモアナエロバクテリウム・サッカロリティカム(Thermoanearobacterium saccharolyticum)セファロスポリンCデアセチラーゼの推定アミノ酸配列である。
【0093】
配列番号39は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(GENBANK(登録商標)受入番号EU255910)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0094】
配列番号40は、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(GENBANK(登録商標)受入番号ABX75634.1)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0095】
配列番号41は、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)(GENBANK(登録商標)受入番号NC_002678.2)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0096】
配列番号42は、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)(GENBANK(登録商標)受入番号BAB53179.1)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0097】
配列番号43は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(GENBANK(登録商標)受入番号AF038547.2)からのアセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0098】
配列番号44は、ゲオバチルス・ステアロサーモフィルス(Geobacillus stearothermophilus)(GENBANK(登録商標)受入番号AAF70202.1)からのアセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0099】
配列番号45は、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼアミノ酸配列に対する以下の置換:(F24I/S35T/Q179L/N275D/C277S/S308G/F317S)を有する変異体アセチルキシランエステラーゼ(変異体「A3」)をコードする核酸配列である。
【0100】
配列番号46は、「A3」変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0101】
配列番号47は、N275D/C277S変異体アセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0102】
配列番号48は、N275D/C277S変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0103】
配列番号49は、C277S/F317S変異体アセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0104】
配列番号50は、C277S/F317S変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0105】
配列番号51は、S35T/C277S変異体アセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0106】
配列番号52は、S35T/C277S変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0107】
配列番号53は、Q179L/C277S変異体アセチルキシランエステラーゼをコードする核酸配列である。
【0108】
配列番号54は、Q179L/C277S変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0109】
配列番号55は、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼアミノ酸配列に対する以下の置換:(L8R/L125Q/Q176L/V183D/F247I/C277S/P292L)を有する変異体アセチルキシランエステラーゼ843H9をコードする核酸配列である。
【0110】
配列番号56は、843H9変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0111】
配列番号57は、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼアミノ酸配列に対する以下の置換:K77E/A266E/C277Sを有する変異体アセチルキシランエステラーゼ843F12をコードする核酸配列である。
【0112】
配列番号58は、843F12変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0113】
配列番号59は、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼアミノ酸配列に対する以下の置換:F27Y/I149V/A266V/C277S/I295T/N302Sを有する変異体アセチルキシランエステラーゼ843C12をコードする核酸配列である。
【0114】
配列番号60は、843C12変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0115】
配列番号61は、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼアミノ酸配列に対する以下の置換:L195Q/C277Sを有する変異体アセチルキシランエステラーゼ842H3をコードする核酸配列である。
【0116】
配列番号62は、842H3変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0117】
配列番号63は、野生型サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)アセチルキシランエステラーゼアミノ酸配列に対する以下の置換:Y110F/C277Sを有する変異体アセチルキシランエステラーゼ841A7をコードする核酸配列である。
【0118】
配列番号64は、841A7変異体アセチルキシランエステラーゼのアミノ酸配列である。
【0119】
配列番号65〜221、271、および368は、毛髪に対する親和性を有するペプチドのアミノ酸配列の非限定的なリストである。
【0120】
配列番号217〜269は、皮膚に対する親和性を有するペプチドのアミノ酸配列である。
【0121】
配列番号270〜271は、爪に対する親和性を有するペプチドのアミノ酸配列である。
【0122】
配列番号272〜382は、口腔表面に対する親和性を有するペプチドのアミノ酸配列である。配列番号272〜291および312〜382は、歯のペリクルに対する親和性を有する。配列番号292〜311は、歯のエナメル質に対する親和性を有する。
【0123】
配列番号383〜396は、ペプチドリンカー/スペーサーのアミノ酸配列である。
【0124】
配列番号397は、発現プラスミドpLD001の核酸配列である。
【0125】
配列番号398は、配列決定プライマーの核酸配列である。
【0126】
配列番号399〜410は、実施例2からの歯エナメル質結合ペプチドおよび歯ペリクル結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0127】
配列番号411は、表4に示されるようなC−末端リジンを有する歯結合ペプチドDenP03のアミノ酸配列である。
【0128】
配列番号412〜422は、表4に示されるようなC−末端リジンを有する歯エナメル質結合ペプチドおよび歯ペリクル結合ペプチドのアミノ酸配列である。
【0129】
配列番号423は、ペプチドHC263のアミノ酸配列である。
【0130】
配列番号424は、本出願では酵素「EZ−1」とも呼ばれるサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)変異体C277Sのアミノ酸配列である。
【0131】
配列番号425〜430および437〜467および479は、表5および/または表6に開示されるような種々のペルヒドロラーゼ構築物のアミノ酸配列である。
【0132】
配列番号431〜436および468〜475は、実施例4で開示されるような種々の標的配列のアミノ酸配列である。
【0133】
配列番号476は、以下の置換:C277T/R296Pを有するサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)変異体HTS−007−D5のアミノ酸配列である。
【0134】
配列番号477は、過加水分解活性を有するシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)エステラーゼのアミノ酸配列である(米国特許第7,384,787号明細書の「L29P」変異体。置換の番号付けは、初期のメチオニン残基を含まない引用特許に従うことに注意すべきである。初期メチオニンが本配列中に含まれるので、配列番号477は、残基位置番号30におけるL29P置換を含む)。
【0135】
配列番号478は、野生型マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)アリールエステラーゼのアミノ酸配列である(米国特許第7,754,460号明細書)。
【発明を実施するための形態】
【0136】
本開示において、いくつかの用語および略語が使用される。他に具体的に記載されない限り、以下の定義が適用される。
【0137】
本明細書で使用される場合、本発明の要素または成分に先行する冠詞「a」、「an」および「the」は、要素または成分の事例(すなわち、発生)の数に関して非限定的であることが意図される。従って、「a」、「an」および「the」は1つまたは少なくとも1つを含むと解釈されるべきであり、要素または成分の単数の語形は、その数が明らかに単数形であることを意味しない限りは複数形も含む。
【0138】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」という用語は、特許請求の範囲において言及される規定の特徴、整数、ステップ、または成分の存在を意味するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、成分またはそれらの群の存在または付加を排除しない。「含む」という用語は、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。同様に、「から本質的になる」という用語は、「からなる」という用語によって包含される実施形態を含むことが意図される。
【0139】
本明細書で使用される場合、使用される材料または反応物の量を修飾する「約」という用語は、例えば、実際に濃縮物または使用溶液を製造するために使用される典型的な測定および液体処理手順によって、これらの手順における故意でない誤差によって、組成物を製造するためまたは方法を実行するために使用される材料の製造、供給源、または純度の差異によって、および同類のことによって生じ得る数量の変動を指す。また「約」という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物に対する平衡条件が異なるために異なる量も包含する。「約」という用語によって修飾されるかどうかにかかわらず、特許請求の範囲はその量と同等の量を含む。
【0140】
存在する場合、全ての範囲は包括的であり、結合可能である。例えば、「1〜5」の範囲が列挙される場合、列挙される範囲は、「1〜4」、「1〜3」、「1〜2」、「1〜2および4〜5」、「1〜3および5」などの範囲を含むと解釈されるべきである。
【0141】
本明細書で使用される場合、「接触させる」は、所望の結果(標的表面の結合、過酸ベースの効果など)を達成するのに十分な時間、組成物を標的体表面と接触した状態に置くことを指す。一実施形態では、「接触させる」は、所望の結果を達成するのに十分な時間、有効濃度の過酸を含む(または生成することができる)組成物を標的体表面と接触した状態に置くことを指すことができる。別の実施形態では、「接触させる」は、酵素的な過加水分解のために使用される反応成分の1つまたは複数などのパーソナルケア組成物の少なくとも1つの成分を、標的体表面と接触した状態に置くことを指すこともできる。接触には、噴霧、処理、浸漬、フラッシング、注入(上または中に)、混合、混ぜ合わせ、ペインティング、コーティング、適用、付着が含まれ、あるいは、有効濃度の過酸を含む過酸溶液もしくは組成物、有効濃度の過酸を形成する溶液もしくは組成物、または有効濃度の過酸を形成する組成物の成分を体表面と連通させることも含まれる。
【0142】
本明細書で使用される場合、「基質」、「適切な基質」、および「カルボン酸エステル基質」という用語は、具体的には:
(a)構造
[X]
mR
5
(式中、Xは式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6は、場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6がC2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5は、場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または環状5員ヘテロ芳香族もしくは6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有する1つまたは複数のエステル、あるいは
【0143】
(b)構造
【化11】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有する1つまたは複数のグリセリド、あるいは
【0144】
(c)式
【化12】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、あるいは
(d)1つまたは複数のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類、またはアセチル化多糖類、あるいは
(e)(a)〜(d)の任意の組み合わせ
を交換可能に指す。
【0145】
本明細書で使用される場合、「過酸」という用語は、ペルオキシ酸(peroxyacid)、ペルオキシカルボン酸、ペルオキシ酸(peroxy acid)、過カルボン酸およびペルオキソ酸(peroxoic acid)と同義である。
【0146】
本明細書で使用される場合、「過酢酸」という用語は「PAA」と略され、ペルオキシ酢酸、エタンペルオキソ酸、およびCAS登録番号79−21−0の全ての他の同義語と同義である。
【0147】
本明細書で使用される場合、「モノアセチン」という用語は、グリセロールモノアセテート、グリセリンモノアセテート、およびグリセリルモノアセテートと同義である。
【0148】
本明細書で使用される場合、「ジアセチン」という用語は、グリセロールジアセテート、グリセリンジアセテート、グリセリルジアセテート、およびCAS登録番号25395−31−7の全ての他の同義語と同義である。
【0149】
本明細書で使用される場合、「トリアセチン」という用語は、グリセリントリアセテート、グリセロールトリアセテート、グリセリルトリアセテート、1,2,3−トリアセトキシプロパン、1,2,3−プロパントリオールトリアセテート、およびCAS登録番号102−76−1の全ての他の同義語と同義である。
【0150】
本明細書で使用される場合、「モノブチリン」という用語は、グリセロールモノブチレート、グリセリンモノブチレート、およびグリセリルモノブチレートと同義である。
【0151】
本明細書で使用される場合、「ジブチリン」という用語は、グリセロールジブチレートおよびグリセリルジブチレートと同義である。
【0152】
本明細書で使用される場合、「トリブチリン」という用語は、グリセロールトリブチレート、1,2,3−トリブチリルグリセロール、およびCAS登録番号60−01−5の全ての他の同義語と同義である。
【0153】
本明細書で使用される場合、「モノプロピオニン」という用語は、グリセロールモノプロピオネート、グリセリンモノプロピオネート、およびグリセリルモノプロピオネートと同義である。
【0154】
本明細書で使用される場合、「ジプロピオニン」という用語は、グリセロールジプロピオネートおよびグリセリルジプロピオネートと同義である。
【0155】
本明細書で使用される場合、「トリプロピオニン」という用語は、グリセリルトリプロピオネート、グリセロールトリプロピオネート、1,2,3−トリプロピオニルグリセロール、およびCAS登録番号139−45−7の全ての他の同義語と同義である。
【0156】
本明細書で使用される場合、「アセチル化糖」および「アセチル化糖類」という用語は、少なくとも1つのアセチル基を含む単糖類、二糖類および多糖類を指す。例としては、グルコースペンタアセテート、キシローステトラアセテート、アセチル化キシラン、アセチル化キシラン断片、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、およびトリ−O−アセチル−グルカールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビル基」、および「ヒドロカルビル部分」という用語は、炭素−炭素の単結合、二重結合、もしくは三重結合および/またはエーテル結合によって結合され、それに応じて水素原子により置換された炭素原子の直鎖、分枝状または環状配置を意味する。このようなヒドロカルビル基は、脂肪族および/または芳香族であり得る。ヒドロカルビル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ベンジル、およびフェニルが挙げられる。好ましい実施形態では、ヒドロカルビル部分は、炭素−炭素単結合および/またはエーテル結合によって結合され、それに応じて水素原子により置換された炭素原子の直鎖、分枝状または環状配置である。
【0158】
本明細書で使用される場合、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール(1,5−pentandiol)、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよびこれらの混合物の「モノエステル」および「ジエステル」という用語は、式RC(O)Oの少なくとも1つのエステル基を含む前記化合物を指し、式中、RはC1〜C7線状ヒドロカルビル部分である。一実施形態では、カルボン酸エステル基質は、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、エチレングリコールジアセテート(EDGA)、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0159】
本明細書で使用される場合、「プロピレングリコールジアセテート」という用語は、1,2−ジアセトキシプロパン、プロピレンジアセテート、1,2−プロパンジオールジアセテート、およびCAS登録番号623−84−7の全ての他の同義語と同義である。
【0160】
本明細書で使用される場合、「エチレングリコールジアセテート」という用語は、1,2−ジアセトキシエタン、エチレンジアセテート、グリコールジアセテート、およびCAS登録番号111−55−7の全ての他の同義語と同義である。
【0161】
本明細書で使用される場合、「適切な酵素反応混合物」、「その場での(in situ)過酸の発生に適した成分」、「適切な反応成分」、「適切な水性反応混合物」、「反応混合物」、および「過酸発生成分」という用語は、反応物と過加水分解酵素触媒とが接触される材料および水を指す。過酸発生成分は、少なくとも、過加水分解活性を有する酵素(好ましくは、過加水分解酵素は少なくとも1つのCE−7ペルヒドロラーゼ(場合により体表面に標的化された融合タンパク質の形態)である)と、少なくとも1つの適切なカルボン酸エステル基質と、過酸素源と、水(過酸素源、例えば、過酸化水素を含む水溶液)とを含むであろう。ただし、一実施形態では、炭水化物エステラーゼのCE−7クラスに属さない過加水分解酵素はどれも、標的表面、好ましくは口腔表面に対する親和性を有する少なくとも1つのペプチド成分を有する融合タンパク質の形態で使用されるであろう。
【0162】
本明細書で使用される場合、「過加水分解」という用語は、過酸を形成するための、選択された基質と過酸化物との反応であると定義される。通常、無機過酸化物が触媒の存在下で選択された基質と反応されて、ペルオキシカルボン酸を生成する。本明細書で使用される場合、「化学的な過加水分解」という用語は、基質(ペルオキシカルボン酸前駆体)が過酸化水素源と混ぜ合わせられる過加水分解反応を含み、この場合、ペルオキシカルボン酸は酵素触媒の非存在下で形成される。本明細書で使用される場合、「酵素的な過加水分解」という用語は、カルボン酸エステル基質(過酸前駆体)が過酸化水素源および水と混ぜ合わせられる過加水分解反応を含み、この場合、酵素触媒が過酸の形成を触媒する。
【0163】
本明細書で使用される場合、「ペルヒドロラーゼ活性」という用語は、タンパク質の単位質量(例えば、ミリグラム)、乾燥細胞重量、または固定化触媒重量あたりの触媒活性を指す。
【0164】
本明細書で使用される場合、「酵素活性の1単位」または「活性の1単位」または「U」は、特定の温度で1分あたり1μmolのペルオキシカルボン酸生成物を生成するために必要とされるペルヒドロラーゼ活性の量であると定義される。
【0165】
本明細書で使用される場合、「酵素触媒」および「ペルヒドロラーゼ触媒」という用語は過加水分解活性を有する酵素を含む触媒を指し、全微生物細胞、透過処理された微生物細胞、微生物細胞抽出物の1つまたは複数の細胞成分、部分精製酵素、または精製酵素の形態であり得る。また酵素触媒は化学修飾されていてもよい(ペグ化、あるいは架橋試薬との反応などによる)。またペルヒドロラーゼ触媒は、当業者によく知られている方法を用いて可溶性または不溶性の担体に固定化されていてもよく、例えば、「Immobilization of Enzymes and Cells」,Gordon F.Bickerstaff,Editor,Humana Press,Totowa,NJ,USA,1997が参照される。一実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、口腔ケアストリップ(例えば、ホワイトニングストリップ)またはデンタルトレイの中または上に、非共有結合的または共有結合的に固定化され得る。固定化酵素は、高分子担体および/または口腔ケアストリップまたはデンタルトレイ内の成分(例えば、二酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、経口的に許容可能な接着剤、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)に直接結合されてもよい。さらなる実施形態では、ストリップまたはデンタルトレイへの非共有結合的な固定化は、ストリップまたはトレイの中または上の材料に対して強い親和性を有するペプチド結合ドメインの使用によるものであってもよい(例えば、任意的なペプチドスペーサーを介してペプチド結合ドメインに結合された過加水分解酵素を含む融合タンパク質)。別の実施形態では、デンタルトレイは変形可能なトレイである。またさらなる実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、歯科印象の形成後に変形可能なトレイの中または上に固定化される。
【0166】
本明細書で使用される場合、「アセチルキシランエステラーゼ」は、アセチル化キシランおよび他のアセチル化糖類の脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.72、AXE)を指す。本明細書において説明されるように、有意な過加水分解活性を有するアセチルキシランエステラーゼとして分類されるいくつかの酵素が提供される。
【0167】
本明細書で使用される場合、「セファロスポリンCデアセチラーゼ」および「セファロスポリンCアセチルヒドロラーゼ」という用語は、セファロスポリンCおよび7−アミノセファロスポラン酸などのセファロスポリンの脱アセチル化を触媒する酵素(E.C.3.1.1.41)を指す(Mitsushima et al.,(1995)Appl.Env.Microbiol.61(6):2224−2229)。有意な過加水分解活性を有するいくつかのセファロスポリンCデアセチラーゼのアミノ酸配列が本明細書において提供される。
【0168】
本明細書で使用される場合、「バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954(商標)」という用語は、国際寄託受入番号ATCC(登録商標)31954(商標)を有する、American Type Culture Collection(ATCC)に寄託された細菌細胞を指す。本明細書に記載されるように、B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)31954(商標)からの有意なペルヒドロラーゼ活性を有する酵素は、配列番号2として提供される(米国特許出願公開第2010−0041752号明細書を参照)。
【0169】
本明細書で使用される場合、「サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8」という用語は、アセチルキシランエステラーゼ活性を有すると報告された細菌細胞を指す(GENBANK(登録商標)NP_227893.1、米国特許出願公開第2008−0176299号明細書を参照)。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)MSB8からのペルヒドロラーゼ活性を有する酵素のアミノ酸配列は、配列番号16として提供される。
【0170】
本明細書で使用される場合、「単離核酸分子」、「単離ポリヌクレオチド」、および「単離核酸断片」は交換可能に使用され、場合により、合成、非天然または改変ヌクレオチド塩基を含有する一本鎖または二本鎖であるRNAまたはDNAのポリマーを指すであろう。DNAのポリマーの形態の単離核酸分子は、cDNA、ゲノムDNAまたは合成DNAの1つまたは複数のセグメントから構成され得る。
【0171】
「アミノ酸」という用語は、タンパク質またはポリペプチドの基本的な化学構造単位を指す。本明細書では、特定のアミノ酸を同定するために以下の略語が使用される。
【0173】
例えば、所与の部位で化学的に等価なアミノ酸の生成をもたらすが、コードされるタンパク質の機能特性に影響を与えない遺伝子の改変が一般的であることは、当該技術分野においてよく知られている。本発明の目的のために、置換は、以下の5つの群:
1. 小さい脂肪族の非極性またはわずかに極性の残基:Ala、Ser、Thr(Pro、Gly)、
2. 極性の負帯電残基およびそのアミド:Asp、Asn、Glu、Gln、
3. 極性の正帯電残基:His、Arg、Lys、
4. 大きい脂肪族の非極性残基:Met、Leu、Ile、Val(Cys)、ならびに
5. 大きい芳香族残基:Phe、Tyr、およびTrp
のうちの1つの中での交換であると定義される。
【0174】
従って、疎水性アミノ酸であるアミノ酸アラニンに対するコドンは、別のあまり疎水性でない残基(グリシン残基)またはより疎水性の残基(バリン、ロイシン、またはイソロイシンなど)をコードするコドンによって置換され得る。同様に、1つの負帯電残基による別の残基(アスパラギン酸によるグルタミン酸など)の置換、あるいは1つの正帯電残基による別の残基(リジンによるアルギニンなど)の置換をもたらす変化も、機能的に等価な産物を生じることが予想され得る。多くの場合、タンパク質分子のN−末端およびC−末端部分の改変をもたらすヌクレオチドの変化も、タンパク質の活性を変更しないと予想されるであろう。提唱される修飾のそれぞれは、コードされる産物の生物活性の保持の決定と同様に、当該技術分野において十分にルーチン的な技能の範囲内である。
【0175】
本明細書で使用される場合、「シグネチャーモチーフ」および「診断モチーフ」という用語は、定義される活性を有する酵素のファミリーの間で共有される保存構造を指す。シグネチャーモチーフは、定義される基質ファミリーに対して同様の酵素活性を有する構造的に関連する酵素ファミリーを定義および/または同定するために使用することができる。シグネチャーモチーフは、単一の連続アミノ酸配列であっても、あるいは一緒にシグネチャーモチーフを形成する不連続の保存モチーフの集まりであってもよい。通常、保存モチーフはアミノ酸配列によって表される。一実施形態では、過加水分解酵素はCE−7炭水化物エステラーゼシグネチャーモチーフを含む。
【0176】
本明細書で使用される場合、種々の宿主の形質転換のための核酸分子の遺伝子またはコード領域に言及する場合の「コドン最適化」という用語は、DNAがコードするポリペプチドを改変することなく宿主生物の典型的なコドン使用を反映するための、核酸分子の遺伝子またはコード領域におけるコドンの改変を指す。
【0177】
本明細書で使用される場合、「合成遺伝子」は、当業者に知られている手順を用いて化学的に合成されるオリゴヌクレオチド構成要素から組み立てることができる。これらの構成要素は連結およびアニールされて遺伝子セグメントを形成し、これは次に酵素的に組み立てられて遺伝子全体を構築する。DNA配列に関する場合の「化学的に合成される」は、ヌクレオチド成分がインビトロで組み立てられたことを意味する。十分に確立された手順を用いて手作業によるDNAの化学合成が達成されてもよいし、あるいはいくつかの市販の機械の1つを用いて自動化学合成が実施されてもよい。従って、ヌクレオチド配列の最適化に基づいて最適な遺伝子発現に合わせて遺伝子を作り、宿主細胞のコドンバイアスを反映することができる。当業者は、コドン使用が宿主によって好まれるコドンに偏っている場合に、遺伝子発現が成功する可能性を認識している。好ましいコドンの決定は、配列情報が利用可能な宿主細胞に由来する遺伝子の調査に基づくことができる。
【0178】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」は特定のタンパク質を発現する核酸分子を指し、コード配列の前(5’非コード配列)およびコード配列の後(3’非コード配列)の制御配列が含まれる。「天然遺伝子」は、その独自の制御配列を有して天然に見出される遺伝子を指す。「キメラ遺伝子」は、天然に一緒に見出されない制御およびコード配列を含む、天然遺伝子でないあらゆる遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる源に由来する制御配列およびコード配列、あるいは同じ源に由来するが天然に見出されるものとは異なった形で配列された制御配列およびコード配列を含むことができる。「内在性遺伝子」は、生物のゲノムにおいてその天然位置にある天然遺伝子を指す。「外来性」遺伝子は、通常は宿主生物中に見出されないが遺伝子導入によって宿主生物中に導入された遺伝子を指す。外来性遺伝子は、非天然生物に挿入された天然遺伝子、またはキメラ遺伝子を含むことができる。「導入遺伝子」は、形質転換手順によってゲノム内に導入された遺伝子である。
【0179】
本明細書で使用される場合、「コード配列」は、特定のアミノ酸配列をコードするDNA配列を指す。「適切な制御配列」は、コード配列の上流側(5’非コード配列)、内部、または下流側(3’非コード配列)に位置し、転写、RNAプロセシングもしくは安定性、または関連コード配列の翻訳に影響を与えるヌクレオチド配列を指す。制御配列は、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステムループ構造を含むことができる。
【0180】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」という用語は、一方の機能が他方によって影響されるような、単一の核酸分子における核酸配列の関連を指す。例えば、プロモーターはコード配列の発現に影響することができる場合にそのコード配列と作動可能に連結されており、すなわち、コード配列はプロモーターの転写制御下にある。コード配列は、センスまたはアンチセンス方向で制御配列に作動可能に連結され得る。
【0181】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、本発明の核酸分子に由来するセンス(mRNA)またはアンチセンスRNAの転写および安定な蓄積を指す。また発現は、mRNAのポリペプチドへの翻訳を指すこともできる。
【0182】
本明細書で使用される場合、「形質転換」は、遺伝的に安定な遺伝形質をもたらす、宿主生物のゲノムへの核酸分子の転移を指す。本発明において、宿主細胞のゲノムは、染色体および染色体外(例えば、プラスミド)遺伝子を含む。形質転換された核酸分子を含有する宿主生物は、「遺伝子導入」、「組換え」または「形質転換」生物と呼ばれる。
【0183】
本明細書で使用される場合、「配列分析ソフトウェア」という用語は、ヌクレオチドまたはアミノ酸配列の分析のために有用な任意のコンピュータアルゴリズムまたはソフトウェアプログラムを指す。「配列分析ソフトウェア」は市販のものでもよいし、あるいは独立して開発されてもよい。典型的な配列分析ソフトウェアには、GCGプログラム一式(Wisconsin Package Version 9.0、Accelrys Software Corp.,San Diego,CA)、BLASTP、BLASTN、BLASTX(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、およびDNASTAR(DNASTAR,Inc.1228 S.Park St.Madison,WI 53715 USA)、CLUSTALW(例えば、バージョン1.83、Thompson et al.,Nucleic Acids Research,22(22):4673−4680(1994))、ならびにSmith−Watermanアルゴリズム(W.R.Pearson,Comput.Methods Genome Res.,[Proc.Int.Symp.](1994),Meeting Date 1992,111−20.Editor(s):Suhai,Sandor.Publisher:Plenum,New York,NY)、Vector NTI(Informax,Bethesda,MD)およびSequencher v.4.05を組み込んだFASTAプログラムが含まれ得るが、これらに限定されない。本出願との関連において、分析のために配列分析ソフトウェアが使用される場合、他に指定されない限り、分析結果が言及されるプログラムの「デフォルト値」に基づくことは理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「デフォルト値」は、最初の初期化の際にソフトウェアと共に最初にロードされた、ソフトウェア製造業者により設定された任意の値またはパラメータのセットを意味するであろう。
【0184】
「体表面」という用語は、過酸有益剤などの有益剤の標的としての役割を果たすことができる人体の任意の表面を指す。本発明の方法および組成物は、口腔ケア用途および製品に関する。従って、体表面は口腔材料/表面を含む。一実施形態では、口腔材料は、歯のエナメル質、歯のペリクル、頬、舌、および歯肉などの軟組織、ならびに口腔バイオフィルム(例えば、口腔プラーク)を含む。
【0185】
本明細書で使用される場合、「生物学的汚染物質」という用語は、1つまたは複数の不要なおよび/または病原性の生物学的実体を指し、微生物、胞子、ウィルス、プリオン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。一実施形態では、生物学的汚染物質の存在を低減および/または排除するために有用な有効濃度の少なくとも1つの過酸を酵素的に生成するための方法が提供される。
【0186】
本明細書で使用される場合、「消毒する」という用語は、生物学的汚染物質を破壊するまたは生物学的汚染物質の増殖を予防するプロセスを指す。本明細書で使用される場合、「消毒剤」という用語は、生物学的汚染物質の破壊、中和または増殖の阻害によって消毒する薬剤を指し、生物学的汚染物質は、う歯、歯肉炎、口腔カンジダ症、または歯周炎と関連する微生物などのヒト口腔内の生物学的汚染物質を含むことができる。本明細書で使用される場合、「消毒」という用語は、消毒の作用またはプロセスを指す。本明細書で使用される場合、「防腐剤」という用語は、疾患を保有する微生物の増殖を阻害する化学物質を指す。1つの態様では、生物学的汚染物質は病原微生物である。
【0187】
本明細書で使用される場合、「衛生」という用語は、通常、健康に有害であり得る作用物質を除去、防止または調節することによる、健康の回復または保持を意味する、またはこれらに関する。本明細書で使用される場合、「衛生化する」という用語は、衛生的にすることを意味する。本明細書で使用される場合、「衛生化剤(sanitizer)」という用語は、衛生化する薬剤を指す。本明細書で使用される場合、「衛生化」という用語は、衛生化の作用またはプロセスを指す。
【0188】
本明細書で使用される場合、「殺生物剤(biocide)」という用語は、微生物を不活性化または破壊する化学物質(通常は広範囲)を指す。微生物を不活性化または破壊する能力を示す化学物質は、「殺生物(biocidal)」活性を有すると説明される。過酸は、殺生物活性を有することができる。典型的な代替の殺生物剤としては、例えば、塩素、二酸化塩素、クロロイソシアヌレート、次亜塩素酸塩、オゾン、アクロレイン、アミン、塩素化フェノール、銅塩、有機硫黄化合物、および第4級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0189】
本明細書で使用される場合、「最小殺生物濃度」という語句は、特定の接触時間に、標的微生物の生存可能な集団において所望の致死的で不可逆的な低減を生じ得る殺生物剤の最小濃度を指す。有効性は、処理後の生存可能な微生物の減少のlog
10によって測定することができる。1つの態様では、標的化される生存可能な微生物の処理後の減少は、少なくとも3−Log
10の減少、より好ましくは少なくとも4−Log
10の減少、最も好ましくは少なくとも5−Log
10の減少である。別の態様では、最小殺生物濃度は、生存可能な微生物細胞の少なくとも6−Log
10の減少である。
【0190】
本明細書で使用される場合、「クリーニング組成物」および「クリーニング製剤」は、歯から望ましくない化合物を除去することに用途を見出す組成物(マウスウォッシュ、歯磨きペーストなど)を指す。この用語は、組成物が組成物中で使用されるペルヒドロラーゼおよび他の酵素と適合性である限り、所望されるクリーニング組成物の特定の種類および製品の形態(例えば、液体、ペースト、ジェル、エマルション、顆粒、またはスプレー組成物)のために選択されるあらゆる材料/化合物を包含する。
【0191】
本明細書で使用される場合、「口腔クリーニング組成物」は、歯磨剤、歯磨きペースト、歯磨きジェル、マウスウォッシュ、マウススプレー、マウスジェル、チューインガム、ロゼンジ、サシェ(sachet)、錠剤、バイオジェル、予防ペースト、歯科処置溶液などを指す。本発明のペルヒドロラーゼと共に用途を見出す口腔ケア組成物は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、米国特許第5,601,750号明細書、同第6,379,653号明細書、および同第5,989,526号明細書が参照され、これらは全て参照によってその全体が本明細書中に援用される)。
【0192】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容可能な」は、この用語が説明する薬物、薬剤および/または不活性成分が、合理的な損益比に見合って過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー応答などを伴わずにヒトおよび他の動物の組織と接触して使用するのに適していることを意味する。
【0193】
本明細書で使用される場合、「パーソナルケア製品」は、毛髪、皮膚、頭皮、および歯の清浄化、漂白および/または消毒において使用される製品を意味し、シャンプー、ボディローション、シャワージェル、局所保湿剤、歯磨きペースト、歯磨きジェル、マウスウォッシュ、マウスリンス、アンチプラークリンス、および/または他の局所クレンザーが含まれるが、これらに限定されない。いくつかの特定の好ましい実施形態では、これらの製品はヒトにおいて用いられるが、他の実施形態では、これらの製品は非ヒト動物による用途を見出す(例えば、獣医学用途において)。
【0194】
本明細書で使用される場合、「歯のホワイトニング」および「歯の漂白」という用語は、歯(単数または複数)の輝度の改善(例えば、ホワイトニング)を指すために交換可能に使用される。この用語は、本発明、ならびに化学処理、弱酸処理、研磨による歯のホワイトニング、およびレーザーによる歯のホワイトニングを含む、歯を白くするのに適したあらゆる方法を包含することが意図される。特に好ましい実施形態では、本発明は、歯を白くするのに適したペルヒドロラーゼおよびペルヒドロラーゼ含有組成物を提供する。
【0195】
本明細書で使用される場合、歯の「内因性の染み」は、エナメル質および下側の象牙質内の色原体に起因する色を指す。ヒトの歯の内因性の色は、エナメル質の菲薄化および下側の黄色の象牙質の暗色化のために、加齢とともにより黄色くなる傾向がある。内因性の染みの除去は、通常、エナメル質に浸透して内部の色原体を脱色する過酸化物または他の酸化性化学薬品の使用を必要とする。
【0196】
内因性の染みとは対照的に、「外因性の染み」は、通常は歯を自然にコーティングするペリクル内で外因性の発色材料がエナメル質に結合する際に歯の表面に生じる。ほとんどの人は、時間と共にある程度の見苦しい外因性の染みが歯に蓄積している。この染色プロセスは、(1)コーヒー、お茶、または赤ワインなどのタンニン含有食品および飲料の摂取、(2)タバコ製品の使用、および/または(3)特定のカチオン性物質(例えば、スズ、鉄、およびクロルヘキシジン)への暴露などの因子によって促進される。これらの物質はエナメル質のヒドロキシアパタイト構造に付着しやすく、歯の変色と、それに付随する歯の白色度の低下とをもたらす。何年もの期間にわたって、外因性の染みはエナメル質層に浸透し、内因性の染みを生じる。
【0197】
本明細書で使用される場合、「脱臭」という用語は、不快な臭気の除去または予防を意味する。
【0198】
本明細書で使用される場合、「脱染する」または「脱染」という用語は、口腔表面から染みを除去するプロセスを指す。染みは、内因性の染み、外因性の染み、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0199】
本明細書で使用される場合、ペルヒドロラーゼ含有組成物における「増強された性能」は、歯科技術分野において標準的な方法を用いて決定される場合に、他の組成物と比較して漂白剤感受性の染みのクリーニングを向上させることであると定義される。特定の実施形態では、本発明のペルヒドロラーゼは、着色した染みの酸化および除去において増強された性能を提供する。さらなる実施形態では、本発明のペルヒドロラーゼは、染みの除去および/または変色において増強された性能を提供する。
【0200】
本明細書で使用される場合、「ペルヒドロラーゼ酵素の有効量」は、特定の用途で必要とされる酵素活性を達成するために必要なペルヒドロラーゼ酵素の量を指す。このような有効量は当業者によって容易に確認され、使用される特定の酵素変異体、クリーニング用途、クリーニング組成物の特定の組成、そして液体または非液体(例えば、エマルション)組成物のどちらが必要とされるかなどの多数の因子に基づいている。
【0201】
本明細書で使用される場合、「過酸素源」および「過酸素の源」という用語は、水溶液中にある場合に約1mM以上の濃度の過酸化水素を提供することができる化合物を指し、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素−過酸化水素付加物(過酸化カルバミド))、過ホウ酸塩、および過炭酸塩が含まれるが、これらに限定されない。本明細書において記載されるように、水性反応製剤中の過酸素化合物によって提供される過酸化水素の濃度は、反応成分を混ぜ合わせたときに最初は少なくとも0.1mM以上である。一実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は、少なくとも0.5mMである。一実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は少なくとも1mMである。別の実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は、少なくとも10mMである。別の実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は、少なくとも100mMである。別の実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は、少なくとも200mMである。別の実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は、500mM以上である。さらに別の実施形態では、水性反応製剤中の過酸化水素濃度は、1000mM以上である。水性反応製剤中の酵素基質、例えばトリグリセリドに対する過酸化水素のモル比(H
2O
2:基質)は約0.002〜20でよく、好ましくは約0.1〜10、最も好ましくは約0.5〜5でよい。
【0202】
本明細書で使用される場合、「オリゴ糖」という用語は、グリコシド結合によって連結された2個から少なくとも24個の間の単糖単位を含有する化合物を指す。「単糖」という用語は、実験式(CH
2O)
nの化合物を指し、ここで、n≧3であり、炭素骨格は分枝しておらず、各炭素原子は1つを除いてヒドロキシル基を含有し、残りの炭素原子は炭素原子2におけるアルデヒドまたはケトンである。また「単糖」という用語は、細胞内環状ヘミケタール型またはヘミケタール型も指す。
【0203】
本明細書で使用される場合、「賦形剤」という用語は、製剤中の活性成分のキャリアとして使用される不活性物質を指す。賦形剤は、活性成分の貯蔵安定性など、製剤中の活性成分を安定化するために使用されてもよい、また賦形剤は、活性成分を含有する製剤を増量するために使用されることもある。本明細書において記載されるように、「活性成分」は、過加水分解活性を有する酵素、適切な反応条件下で過加水分解酵素により生成される過酸、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0204】
「実質的に水を含まない」という用語は、カルボン酸エステル中に存在する場合に酵素または酵素粉末の貯蔵安定性に悪影響を与えない、製剤中の水の濃度を指すであろう。カルボン酸エステルは非常に低濃度の水を含有し得る。例えば、トリアセチンは、通常、180ppm〜300ppmの水を有する。一実施形態では、過加水分解酵素は、実質的に水を含まないカルボン酸エステル基質中で貯蔵される。さらなる実施形態では、「実質的に水を含まない」は、酵素(または酵素粉末)およびカルボン酸エステルを含む製剤中の、2000ppm未満、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、さらにより好ましくは250ppm未満の水を意味し得る。一実施形態では、過加水分解酵素は、酵素が水溶液中で安定であるように発生系が設計されれば、水溶液中で貯蔵され得る(例えば、貯蔵中に酵素により加水分解されることが可能な有意な濃度のカルボン酸エステル基質を含有しない溶液)。一実施形態では、過加水分解酵素は、実質的に水を含まないカルボン酸エステル基質と、1つまたは複数の緩衝液(例えば、重炭酸、クエン酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、メチルホスホン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、およびマレイン酸のナトリウムおよび/またはカリウム塩)とを含む混合物中で貯蔵され得る。
【0205】
過加水分解活性を有する酵素
過加水分解活性を有する酵素は、酵素が本発明の基質の1つまたは複数に対する過加水分解活性を有する限り、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼに分類されるいくつかの酵素、および組み合わせを含むことができる。例としては、過加水分解プロテアーゼ(スブチリシンカールスバーグ変異体、米国特許第7,510,859号明細書)、過加水分解アリールエステラーゼ(シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、配列番号477、米国特許第7,384,787号明細書)、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)からの過加水分解アリールエステラーゼ/アシルトランスフェラーゼ(配列番号460および478、米国特許第7,754,460号明細書、国際公開第2005/056782号パンフレット、および欧州特許第1689859B1号明細書)、およびペルヒドロラーゼ炭水化物エステラーゼを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい態様では、過加水分解炭水化物エステラーゼはCE−7炭水化物エステラーゼである。
【0206】
一実施形態では、適切なペルヒドロラーゼは、本明細書において報告されるアミノ酸配列のいずれかに対して少なくとも30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む酵素を含むことができるが、ただし、非CE−7ペルヒドロラーゼは標的化ペルヒドロラーゼ用途に限定される(すなわち、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属さない過加水分解酵素は、少なくとも1つのペプチド標的ドメインを含む融合タンパク質の形態で使用される)。
【0207】
別の実施形態では、適切なペルヒドロラーゼは、配列番号460、477、および478に対して少なくとも30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含む酵素を含むことができるが、ただし、非CE−7ペルヒドロラーゼは標的化ペルヒドロラーゼ用途に限定される(すなわち、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属さない過加水分解酵素は、少なくとも1つのペプチド標的ドメインを含む融合タンパク質の形態で使用される)。実質的に類似の過加水分解酵素を同定するために使用される同一性パーセント比較および配列アライメントは、過加水分解酵素を含む融合タンパク質の一部(すなわち、標的ドメインおよびリンカーは含まれない)に対して実行されることが理解される。
【0208】
別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号460として提供されるS54Vマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)アリールエステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0209】
一実施形態では、融合タンパク質は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)からの過加水分解エステラーゼを含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号477として提供されるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)エステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0210】
別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号424、425、426、427、428、429、430、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、476、477、478、および479からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0211】
別の実施形態では、実質的に類似の過加水分解酵素は、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件(0.1×SSC、0.1%のSDS、65℃、そして2×SSC、0.1%のSDSによる洗浄の後、0.1×SSC、0.1%のSDS、65℃の最終洗浄)下で、本発明の過加水分解酵素のいずれかをコードするポリヌクレオチド配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチド配列によってコードされるものを含むことができるが、ただし、非CE−7ペルヒドロラーゼは標的化ペルヒドロラーゼ用途に限定される(すなわち、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属さない過加水分解酵素は、少なくとも1つのペプチド標的ドメインを含む融合タンパク質の形態で使用される)。
【0212】
CE−7ペルヒドロラーゼ
好ましい実施形態では、口腔ケア組成物および方法は、構造的に酵素の炭水化物ファミリーエステラーゼファミリー7(CE−7ファミリー)のメンバーであると分類される過加水分解活性を有する酵素を含む(Coutinho,P.M.,Henrissat,B.「Carbohydrate−active enzymes:an integrated database approach」in「Recent Advances in Carbohydrate Bioengineering」,H.J.Gilbert,G.Davies,B.Henrissat and B.Svensson eds.,(1999)The Royal Society of Chemistry,Cambridge,pp.3−12を参照)。酵素のCE−7ファミリーは、過酸素源と混ぜ合わせられたときに様々なカルボン酸エステル基質からペルオキシカルボン酸を生成するために特に有効であることが実証されている(米国特許第7,794,378号明細書、同第7,951,566号明細書、同第7,723,083号明細書、および同第7,964,378号明細書、ならびに米国特許出願公開第2008−0176299号明細書、同第2010−0087529号明細書、同第2011−0081693号明細書、および同第2011−0236335号明細書(DiCosimoら)、それぞれ参照によって本明細書中に援用される)。
【0213】
CE−7ファミリーのメンバーには、セファロスポリンCデアセチラーゼ(CAH、E.C.3.1.1.41)およびアセチルキシランエステラーゼ(AXE、E.C.3.1.1.72)が含まれる。CE−7エステラーゼファミリーのメンバーは、保存されたシグネチャーモチーフを共有する(Vincent et al.,J.Mol.Biol.,330:593−606(2003))。CE−7シグネチャーモチーフを含むペルヒドロラーゼ(「CE−7ペルヒドロラーゼ」)および/または実質的に類似の構造は、本明細書に記載される組成物および方法において使用するのに適している。実質的に類似の生物分子を同定するための手段は、当該技術分野においてよく知られている(例えば、配列アライメントプロトコール、核酸ハイブリダイゼーション、および/または保存シグネチャーモチーフの存在)。1つの態様では、ペルヒドロラーゼには、CE−7シグネチャーモチーフと、本明細書において提供される配列の1つに対する少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも33%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも42%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性とを含む酵素が含まれる。
【0214】
本明細書で使用される場合、「酵素は構造的にCE−7酵素と分類される」、「CE−7ペルヒドロラーゼ」または「構造的に炭水化物エステラーゼファミリー7酵素と分類される」という語句は、構造的にCE−7炭水化物エステラーゼと分類される過加水分解活性を有する酵素を指すために使用されるであろう。この酵素ファミリーは、シグネチャーモチーフの存在によって定義することができる(上記のVincentら)。CE−7エステラーゼのためのシグネチャーモチーフは、3つの保存モチーフ:
a)Arg118−Gly119−Gln120と、
b)Gly179−Xaa180−Ser181−Gln182−Gly183と、
c)His298−Glu299と
を含む(残基位置の番号付けは、参照配列の配列番号2(B.スブチリス(B.subtilis)ATCC(登録商標)31954(商標)からのCE−7ペルヒドロラーゼ)に対する)。
【0215】
通常、アミノ酸残基位置180のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、またはスレオニンである。触媒トライアドに属する3つのアミノ酸残基のうちの2つは太字である。一実施形態では、アミノ酸残基位置180のXaaは、グリシン、アラニン、プロリン、トリプトファン、およびスレオニンからなる群から選択される。
【0216】
CE−7炭水化物エステラーゼファミリー内の保存モチーフのさらなる分析は、CE−7炭水化物エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼをさらに定義するために使用され得る付加的な保存モチーフ(配列番号2のアミノ酸位置267〜269のLXD)の存在を示す。さらなる実施形態では、上記で定義されたシグネチャーモチーフは、
Leu267−Xaa268−Asp269
と定義される付加的な(第4の)保存モチーフを含むことができる。
【0217】
アミノ酸残基位置268のXaaは、通常、イソロイシン、バリン、またはメチオニンである。第4のモチーフは、触媒トライアド(Ser181−Asp269−His298)に属するアスパラギン酸残基(太字)を含む。
【0218】
CE−7ペルヒドロラーゼは、少なくとも1つの体表面に対する親和性を有する少なくとも1つのペプチド成分を有する融合タンパク質の形態であり得る。一実施形態では、標的化ペルヒドロラーゼ(融合タンパク質)がCE−7シグネチャーモチーフを含むかどうかを決定するために使用される全てのアライメントは、体表面に対する親和性を有するペプチド成分を持たない過加水分解酵素のアミノ酸配列に基づくであろう。
【0219】
いくつかのよく知られているグローバルアライメントアルゴリズム(すなわち、配列分析ソフトウェア)を用いて、ペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を表す2つ以上のアミノ酸配列をアラインさせ、酵素が本発明のシグネチャーモチーフで構成されているかどうかを決定することができる。アラインされた配列は参照配列(配列番号2)と比較され、シグネチャーモチーフの存在が決定される。一実施形態では、参照アミノ酸配列(本明細書で使用される場合、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)ATCC(登録商標)31954(商標)からのペルヒドロラーゼ配列(配列番号2))を用いるCLUSTALアライメント(CLUSTALWなど)を使用して、CE−7エステラーゼファミリーに属するペルヒドロラーゼを同定する。保存アミノ酸残基の相対的な番号付けは、アラインされた配列内の小さい挿入または欠失(例えば、通常は5アミノ酸以下)を考慮に入れるために、参照アミノ酸配列の残基の番号付けに基づく。
【0220】
本発明のシグネチャーモチーフを含む配列を同定する(参照配列と比較したときに)ために使用され得る他の適切なアルゴリズムの例としては、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48,443−453(1970)、グローバルアライメントツール)、ならびにSmith−Waterman(J.Mol.Biol.147:195−197(1981)、ローカルアライメントツール)が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、Smith−Watermanアライメントは、デフォルトパラメータを用いて実行される。適切なデフォルトパラメータの例としては、GAPオープンペナルティ=10およびGAP伸長ペナルティー=0.5と共にBLOSUM62スコアリングマトリックスの使用が挙げられる。
【0221】
ペルヒドロラーゼ間での全体的な同一性パーセントの比較により、配列番号2に対してわずか33%のアミノ酸同一性を有する酵素(シグネチャーモチーフを保持しながら)が有意なペルヒドロラーゼ活性を示し、構造的にCE−7炭水化物エステラーゼと分類されることが示される。一実施形態では、適切なペルヒドロラーゼには、CE−7シグネチャーモチーフと、配列番号2に対する少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のアミノ酸同一性とを含む酵素が含まれる。
【0222】
過加水分解活性を有する適切なCE−7炭水化物エステラーゼの例としては、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476などのアミノ酸配列を有する酵素が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、酵素は、14、16、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0223】
本明細書で使用される場合、「CE−7変異体」、「変異体ペルヒドロラーゼ」または「変異体」という用語は、CE−7シグネチャーモチーフおよび関連の過加水分解活性が保持される限り、変異体が由来する対応する酵素(通常、野生型酵素)と比較したときに少なくとも1つのアミノ酸の付加、欠失、および/または置換をもたらす遺伝子改変を有するCE−7ペルヒドロラーゼを指すであろう。CE−7変異体ペルヒドロラーゼも本発明の組成物および方法において使用することができる。CE−7変異体の例は、配列番号27、28、29、30、31、32、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476として提供される。一実施形態では、変異体は、配列番号27、28、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476を含み得る。
【0224】
当業者は、本発明の組成物および方法において、実質的に類似のCE−7ペルヒドロラーゼ配列(シグネチャーモチーフを保持する)が使用され得ることを認識する。一実施形態では、実質的に類似の配列は、高ストリンジェント条件下で、本明細書において例示される配列に関連する核酸分子とハイブリッド形成するその能力によって定義される。別の実施形態では、配列アライメントアルゴリズムを用い、本明細書において提供されるDNAまたはアミノ酸配列に対する同一性パーセントに基づいて、実質的に類似の酵素を定義することができる。
【0225】
本明細書で使用される場合、核酸分子は、温度および溶液イオン強度の適切な条件下で第1の分子の一本鎖が他の分子にアニールすることができる場合に、cDNA、ゲノムDNA、またはRNAなどの別の核酸分子と「ハイブリッド形成可能」である。ハイブリダイゼーションおよび洗浄条件はよく知られており、Sambrook,J.and Russell,D.,T.「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」,Third Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor(2001)において例示されている。温度およびイオン強度の条件は、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」を決定する。ストリンジェンシー条件を調整して、中程度に類似した分子(遠縁の生物からの相同配列など)から、高度に類似した分子(近縁の生物から機能酵素を複製する遺伝子など)までをスクリーニングすることができる。ハイブリダイゼーション後の洗浄は、通常、ストリンジェンシー条件を決定する。1つの好ましい条件セットは、6×SSC、0.5%のSDSにより室温で15分間の洗浄から始まり、次に、2×SSC、0.5%のSDSにより45℃で30分間の洗浄を繰り返し、そして次に、0.2×SSC、0.5%のSDSにより50℃で30分間の洗浄を2回繰り返すという一連の洗浄を用いる。より好ましい条件セットはより高温を用い、0.2×SSC、0.5%のSDSにおける最後の2回の30分間洗浄の温度を60℃に上昇させたことを除いて、洗浄は上記のものと同一である。別の好ましい高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件セットは0.1×SSC、0.1%のSDS、65℃であり、2×SSC、0.1%のSDSにより洗浄された後、0.1×SSC、0.1%のSDS、65℃の最終洗浄が行われる。
【0226】
ハイブリダイゼーションは2つの核酸が相補的配列を含有することを必要とするが、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに応じて、塩基間のミスマッチが可能である。核酸をハイブリッド形成するために適切なストリンジェンシーは、当該技術分野において周知の変数である核酸の長さおよび相補性の程度に依存する。2つのヌクレオチド配列間の類似性または相同性の程度が大きいほど、これらの配列を有する核酸のハイブリッドのためのTmの値も大きくなる。核酸ハイブリダイゼーションの相対的な安定性(より高いTmに相当する)は、以下の順:RNA:RNA、DNA:RNA、DNA:DNAで低下する。長さが100を超えるヌクレオチドのハイブリッドについては、Tmを計算するための式が誘導されている(上記のSambrookおよびRussell)。より短い核酸、すなわちオリゴヌクレオチドによるハイブリダイゼーションについては、ミスマッチの位置がより重要になり、オリゴヌクレオチドの長さがその特異性を決定する(上記のSambrookおよびRussell)。1つの態様では、ハイブリッド形成可能な核酸の長さは、少なくとも約10ヌクレオチドである。好ましくは、ハイブリッド形成可能な核酸の最小の長さは少なくとも約15ヌクレオチドの長さであり、より好ましくは少なくとも約20ヌクレオチドの長さであり、さらにより好ましくは少なくとも30ヌクレオチドの長さであり、さらにより好ましくは少なくとも300ヌクレオチドの長さであり、最も好ましくは少なくとも800ヌクレオチドの長さである。さらに、当業者は、プローブの長さなどの因子に従って必要であれば、温度および洗浄溶液の塩濃度が調整され得ることを認識するであろう。
【0227】
本明細書で使用される場合、「同一性パーセント」という用語は、配列を比較することによって決定される、2つ以上のポリペプチド配列の間または2つ以上のポリヌクレオチド配列の間の関係である。当該技術分野において、「同一性」は、場合によっては、このような配列のストリング間の一致によって決定されるポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列間の配列関連性の程度も意味する。「同一性」および「類似性」は、「Computational Molecular Biology」(Lesk,A.M.,ed.)Oxford University Press,NY(1988)、「Biocomputing:Informatics and Genome Projects」(Smith,D.W.,ed.)Academic Press,NY(1993)、「Computer Analysis of Sequence Data,Part I」(Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.)Humana Press,NJ(1994)、「Sequence Analysis in Molecular Biology」(von Heinje,G.,ed.)Academic Press(1987)、ならびに「Sequence Analysis Primer」(Gribskov,M.およびDevereux,J.,eds.)Stockton Press,NY(1991)において記載される方法を含むがこれらに限定されない既知の方法によって容易に計算することができる。同一性および類似性を決定するための方法は、公的に利用可能なコンピュータプログラムにおいて体系化されている。配列アライメントおよび同一性パーセントの計算は、LASERGENEバイオインフォマティクスコンピューティングスイートのMegalignプログラム(DNASTAR Inc.,Madison,WI)、Vector NTI v.7.0のAlignXプログラム(Informax,Inc.,Bethesda,MD)、またはEMBOSS Open Software Suite(EMBL−EBI、Rice et al.,Trends in Genetics 16,(6):276−277(2000))を用いて実施され得る。配列の多重アライメントは、アライメントのCLUSTAL法(CLUSTALW、例えばバージョン1.83など)(Higgins and Sharp,CABIOS、5:151−153(1989)、Higgins et al.,Nucleic Acids Res.22:4673−4680(1994)、およびChenna et al.,Nucleic Acids Res 31(13):3497−500(2003))European Bioinformatics Instituteを介してEuropean Molecular Biology Laboratoryから入手可能)を、デフォルトパラメータと共に用いて実施することができる。CLUSTALWタンパク質アライメントのための適切なパラメータには、GAP Existenceペナルティー=15、GAP伸長=0.2、マトリックス=Gonnet(例えば、Gonnet250)、タンパク質ENDGAP=−1、タンパク質GAPDIST=4、およびKTUPLE=1が含まれる。一実施形態では、速いまたは遅いアライメントがデフォルト設定と共に使用されるが、遅いアライメントが好ましい。あるいは、CLUSTALW法(例えば、バージョン1.83)を用いるパラメータを修正して、KTUPLE=1、GAP PENALTY=10、GAP伸長=1、マトリックス=BLOSUM(例えば、BLOSUM64)、WINDOW=5、およびTOP DIAGONALS SAVED=5も使用することができる。
【0228】
1つの態様では、適切な単離核酸分子は、本明細書において報告されるアミノ酸配列と少なくとも約20%、好ましくは少なくとも30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。別の態様では、適切な単離核酸分子は、本明細書において報告されるアミノ酸配列と少なくとも約20%、好ましくは少なくとも30%、33%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするが、ただし、ポリペプチドはCE−7シグネチャーモチーフを保持することを条件とする。適切な核酸分子は上記の相同性を有するだけでなく、通常、約210〜340のアミノ酸長さ、約300〜約340のアミノ酸長さ、好ましくは約310〜約330のアミノ酸長さ、最も好ましくは約318〜約325のアミノ酸長さを有するポリペプチドもコードし、各ポリペプチドは、過加水分解活性を有すると特徴付けられる。
【0229】
標的化ペルヒドロラーゼ
本明細書で使用される場合、「標的化ペルヒドロラーゼ」および「過加水分解活性を有する標的化酵素」という用語は、標的表面、好ましくは標的化体表面に対する親和性を有する少なくとも1つのペプチド成分に融合/結合された少なくとも1つの過加水分解酵素(野生型またはその変異体)を含む融合タンパク質を指すであろう。標的化ペルヒドロラーゼ内の過加水分解酵素は任意の過加水分解酵素でよく、酵素が本発明の基質の1つまたは複数に対する過加水分解活性を有する限り、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼ、および組み合わせを含むことができる。例としては、過加水分解プロテアーゼ(例えば、サブチリシン変異体、米国特許第7,510,859号明細書)、過加水分解エステラーゼ(例えば、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、米国特許第7,384,787号明細書、配列番号477)、および過加水分解アリールエステラーゼ(例えば、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)、米国特許第7,754,460号明細書、国際公開第2005/056782号パンフレット、および欧州特許第1689859B1号明細書、配列番号460[S54V変異体]および478[野生型])を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0230】
一実施形態では、融合タンパク質は、配列番号460として提供されるS54Vマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)アリールエステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0231】
一実施形態では、融合タンパク質は、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)からの過加水分解エステラーゼを含む。別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号477として提供されるシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)エステラーゼに対して少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0232】
別の実施形態では、融合タンパク質は、配列番号424、425、426、427、428、429、430、437、438、439、440、441、442、443、444、445、446、447、448、449、450、451、452、453、454、455、456、457、458、459、460、461、462、463、464、465、466、467、476、477、478、および479からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する過加水分解酵素を含む。
【0233】
本明細書で使用される場合、「ペプチド成分」、「口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分」、および「OCBD」という用語は、ペプチド結合によって連結された2つ以上のアミノ酸の少なくとも1つのポリマーを含む、過加水分解酵素の一部ではない融合タンパク質の成分を指し、ここでこの成分は、標的口腔表面に対する親和性を有するであろう。
【0234】
一実施形態では、体表面に対する親和性を有するペプチド成分は、抗体、Fab抗体断片、単鎖可変断片(scFv)抗体、ラクダ科抗体(Muyldermans,S.,Rev.Mol.Biotechnol.(2001)74:277−302)、非抗体スキャフォールドディスプレイタンパク質(種々のスキャフォールド補助によるアプローチの概説については、Hosse et al.,Prot.Sci.(2006)15(1):14−27およびBinz,H.et al.(2005)Nature Biotechnology 23,1257−1268)、または免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ポリペプチドであり得る。別の態様では、体表面に対する親和性を有するペプチド成分は、免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ペプチド(すなわち、口腔表面に対する親和性を有する体表面結合ペプチドまたは少なくとも1つの体表面結合ペプチドを含む体表面結合ドメイン)である。好ましい実施形態では、ペプチド成分は、口腔表面に対する親和性を有する1つまたは複数の体表面結合ペプチドを含む単鎖ペプチドである。
【0235】
口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分は、任意的なペプチドリンカーによって過加水分解酵素から分離され得る。特定のペプチドリンカー/スペーサーは、1〜100または1〜50のアミノ酸長さである。いくつかの実施形態では、ペプチドスペーサーは、約1〜約25、3〜約40、または3〜約30のアミノ酸長さである。他の実施形態では、約5〜約20のアミノ酸長さのスペーサーである。多数のペプチドリンカーが使用されてもよい。一実施形態では、少なくとも1つのペプチドリンカーが存在し、最大10回まで繰り返され得る。
【0236】
1つの体表面に対する親和性を有することが既に確認されたペプチドは、口腔ケア表面に対しても親和性を有し得る。従って、融合ペプチドは、毛髪(配列番号65〜221、271、および368)、皮膚(配列番号217〜269)または爪(配列番号270〜271)などの別の体表面に対する親和性を有することが既に報告されている少なくとも1つのペプチドを含むことができる。一実施形態では、融合ペプチドは、配列番号272〜382および399〜422を含む群からの少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含む。一実施形態では、融合ペプチドは、配列番号272〜382、399〜410、および412〜422からなる群から選択される少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含み、ここで、配列番号272〜291および312〜382は歯のペリクルに対する親和性を有し、配列番号292〜311は歯のエナメル質に対する親和性を有し、そして配列番号399〜410および412〜422は歯のエナメル質またはペリクルに対する親和性を有する。体表面結合ペプチドのいくつかは2つ以上の体表面に対して強い親和性を有することができ、従って、過加水分解酵素を異なる体表面に標的化するために使用され得る。別の実施形態では、融合ペプチドは、標的体表面に対して静電引力を有するように設計された任意の体表面結合ペプチド(例えば、標的体表面に静電的に結合するように操作された体表面結合ペプチド)を含むことができる。
【0237】
別の実施形態では、標的表面は、口腔への送達のパッケージングおよび/または方法の一部である材料である。ペプチド成分は、ポリマー、プラスチックおよびフィルムなどの使用中の材料(単数または複数)に対するその親和性について選択される。標的化ペルヒドロラーゼ融合タンパク質の設計は、限定はされないがマウストレイまたはストリップなどの除去可能なデバイス上にそれを保持することによって、ユーザーからの制御されたペルヒドロラーゼの送達および除去を可能にする。
【0238】
標的化CE−7ペルヒドロラーゼ
好ましい実施形態では、「標的化ペルヒドロラーゼ」は、過加水分解活性を有する標的化CE−7炭水化物エステラーゼである。本明細書で使用される場合、「標的化CE−7ペルヒドロラーゼ」および「標的化CE−7炭水化物エステラーゼ」という用語は、標的化表面、好ましくは標的化体表面に対する親和性を有する少なくとも1つのペプチド成分に融合/結合された少なくとも1つのCE−7ペルヒドロラーゼ(野生型または変異体ペルヒドロラーゼ)を含む融合タンパク質を指すであろう。体表面に対する親和性を有するペプチド成分は、上記で記載されたもののいずれであってもよい。好ましい態様では、標的化CE−7ペルヒドロラーゼ中のペプチド成分は、免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ペプチド(すなわち、口腔表面に対する親和性を有する体表面結合ペプチドまたは少なくとも1つの体表面結合ペプチドを含む体表面結合ドメイン)である。好ましい実施形態では、ペプチド成分は、口腔表面に対する親和性を有する1つまたは複数の体表面結合ペプチドを含む単鎖ペプチドである。
【0239】
口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分は、任意的なペプチドリンカーによってCE−7ペルヒドロラーゼから分離され得る。特定のペプチドリンカー/スペーサーは、1〜100または1〜50のアミノ酸長さである。いくつかの実施形態では、ペプチドスペーサーは、約1〜約25、3〜約40、または3〜約30のアミノ酸長さである。他の実施形態では、約5〜約20のアミノ酸長さのスペーサーである。多数のペプチドリンカーが使用されてもよい。
【0240】
従って、標的化CE−7ペルヒドロラーゼの例としては、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分に結合された配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCE−7ペルヒドロラーゼのいずれかを挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、標的化ペルヒドロラーゼの例として、口腔表面に対する親和性を有する1つまたは複数の体表面結合ペプチドに(場合により、ペプチドスペーサーを介して)結合された配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するCE−7ペルヒドロラーゼのいずれかを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0241】
別の実施形態では、標的化CE−7ペルヒドロラーゼは、1つの体表面に対する親和性を有することが既に確認されており、口腔ケア表面に対しても親和性を有し得るペプチドを含むことができる。従って、融合ペプチドは、毛髪(配列番号65〜221、271、および368)、皮膚(配列番号217〜269)、または爪(配列番号270〜271)などの別の体表面に対する親和性を有することが既に報告されている少なくとも1つのペプチドを含むことができる。一実施形態では、融合ペプチドは、配列番号272〜382および399〜422を含む群からの少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含む。一実施形態では、CE−7ペルヒドロラーゼ融合ペプチドは、配列番号272〜382、399〜410、および412〜422からなる群から選択される少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含み、ここで、配列番号272〜291および312〜382は歯のペリクルに対する親和性を有し、配列番号292〜311は歯のエナメル質に対する親和性を有し、そして配列番号399〜410および412〜422は歯のエナメル質またはペリクルに対する親和性を有する。体表面結合ペプチドのいくつかは2つ以上の体表面に対して強い親和性を有することができ、従って、過加水分解酵素を異なる体表面に標的化するために使用され得る。別の実施形態では、CE−7ペルヒドロラーゼ融合ペプチドは、標的体表面に対して静電引力を有するように設計された任意の体表面結合ペプチド(例えば、標的体表面に静電的に結合するように操作された体表面結合ペプチド)を含むことができる。
【0242】
別の実施形態では、標的表面は、口腔へのパッケージングおよび/または送達の一部である材料である。ペプチド成分は、ポリマー、プラスチックおよびフィルムなどの使用中の材料(単数または複数)に対するその親和性について選択される。標的化CE−7ペルヒドロラーゼ融合タンパク質の設計は、マウストレイまたはストリップなどの除去可能なデバイス上にそれを保持することによってユーザーからの制御されたペルヒドロラーゼの送達および除去を可能にする。
【0243】
体表面に対する親和性を有するペプチド
口腔表面に結合することができる免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ペプチドは「口腔表面結合ペプチド」(OCBP)とも呼ばれ、例えば、歯の表面に結合するペプチド(歯結合ペプチド)、歯肉などの軟組織に対する親和性を有するペプチド、または口腔中で使用しても安全である経口的に許容可能な材料に対する親和性を有するペプチドを含むことができる。歯結合ペプチドは、歯のエナメル質に対する親和性を有するペプチド(「歯エナメル質結合ペプチド」)、および歯のペリクルに対する親和性を有するペプチド(「歯ペリクル結合ペプチド」)を含むことができる。
【0244】
少なくとも1つの体表面に対する親和性を有するペプチドの非限定的な例は本明細書において提供されており、毛髪に対する親和性を有するもの(配列番号65〜221、271、および368からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する毛髪結合ペプチド)、皮膚に対する親和性を有するもの(皮膚結合ペプチドは配列番号217〜269からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む)、および爪に対する親和性を有するもの(爪結合ペプチドは配列番号270〜271からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む)が含まれる。口腔表面に対する親和性を有するペプチド(口腔結合ペプチド)の例は、配列番号272〜382および399〜422からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。好ましい態様では、口腔表面に対する親和性を有するペプチドは、配列番号272〜382、399〜410、および412〜422からなる群から選択され、ここで、配列番号272〜291および312〜382は歯のペリクルに対する親和性を有し、配列番号292〜311は歯のエナメル質に対する親和性を有し、そして配列番号399〜410および412〜422は歯のエナメル質またはペリクルに対する親和性を有する。
【0245】
一実施形態では、口腔表面に対する親和性も有し得るペプチドは、配列番号65〜382、399〜410、および412〜422の1つまたは複数を含むことができる。好ましくは、本発明の組成物および方法において使用されるペプチドは、配列番号272〜382、399〜410、および412〜422からなる群から選択される。別の実施形態では、口腔表面結合ペプチドは、口腔を有するいくつかの表面(例えば、歯肉)に対する皮膚結合ペプチドを含むことができる。別の実施形態では、融合ペプチドは、標的体表面に対して静電引力を有するように設計された任意の体表面結合ペプチド(例えば、標的体表面に静電的に結合するように操作された体表面結合ペプチド)を含むことができる。
【0246】
別の実施形態では、本発明の組成物および方法は、配列番号399〜410および412〜422からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含む。
【0247】
いくつかの実施形態では、口腔表面結合ドメインは、約60までのアミノ酸長さである口腔表面結合ペプチドで構成される。一実施形態では、口腔表面結合ペプチドは、5〜60のアミノ酸長さである。他の実施形態では、表面結合ペプチドは、7〜50のアミノ酸長さ、または7〜30のアミノ酸長さである。さらに他の実施形態では、7〜27のアミノ酸長さである口腔表面結合ペプチドである。
【0248】
口腔表面結合ペプチドを含む融合ペプチドは本発明の特定の実施形態であるが、本発明の他の実施形態では複数の口腔表面結合ペプチドを使用することが有利であり得る。複数、すなわち2つ以上の口腔表面結合ペプチドを包含すると、例えば、単一の口腔表面結合ペプチドを含む結合要素よりもさらにより耐久性であるペプチド成分を提供することができる。いくつかの実施形態では、口腔表面結合ドメイン(すなわち、複数、すなわち2つ以上の口腔表面結合ペプチド)は、2〜約50または2〜約25の口腔表面結合ペプチドを含む。他の実施形態は、2〜約10または2〜5の口腔表面結合ペプチドを含む口腔表面結合ドメインを含む。
【0249】
複数の結合要素(すなわち、口腔表面結合ペプチドまたは口腔表面結合ドメイン)は、直接結合されていてもよいし、あるいはペプチドスペーサーを用いて結合されていてもよい。特定のペプチドスペーサー/リンカーは、1〜100または1〜50のアミノ酸長さである。いくつかの実施形態では、ペプチドスペーサーは、約1〜約25、3〜約40、または3〜約30のアミノ酸長さである。他の実施形態では、1〜約20、または約5〜約20のアミノ酸長さのスペーサーである。
【0250】
口腔表面結合ドメイン、およびこれらを構成するより短い口腔表面結合ペプチドは、例えば、ファージディスプレイ、細菌ディスプレイ、酵母ディスプレイ、リボソームディスプレイ、mRNAディスプレイ、およびこれらの組み合わせなどの任意の既知のバイオパニング技術を含む、当業者に既知のいくつもの方法を用いて同定することができる。通常、ランダムまたは実質的にランダムな(バイアスが存在する場合)ペプチドライブラリーが標的体表面に対してバイオパニングされ、標的体表面に対する親和性を有するライブラリー内のペプチドが同定される。
【0251】
ペプチドのランダムライブラリーの生成は周知であり、細菌ディスプレイ(Kemp,D.J.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78(7):4520−4524(1981)、およびHelfman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80(1):31−35,(1983))、酵母ディスプレイ(Chien et al.,Proc Natl Acad Sci USA 88(21):9578−82(1991))、コンビナトリアル固相ペプチド合成(米国特許第5,449,754号明細書、米国特許第5,480,971号明細書、米国特許第5,585,275号明細書、米国特許第5,639,603号明細書)、およびファージディスプレイ技術(米国特許第5,223,409号明細書、米国特許第5,403,484号明細書、米国特許第5,571,698号明細書、米国特許第5,837,500号明細書)、リボソームディスプレイ(米国特許第5,643,768号明細書、米国特許第5,658,754号明細書、および米国特許第7,074,557号明細書)、およびmRNAディスプレイ技術(PROFUSION(商標)、米国特許第6,258,558号明細書、同第6,518,018号明細書、同第6,281,344号明細書、同第6,214,553号明細書、同第6,261,804号明細書、同第6,207,446号明細書、同第6,846,655号明細書、同第6,312,927号明細書、同第6,602,685号明細書、同第6,416,950号明細書、同第6,429,300号明細書、同第7,078,197号明細書、および同第6,436,665号明細書を参照)を含む様々な技術によって達成することができる。
【0252】
結合親和性
口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分は、10
−5モル濃度(M)以下の口腔表面に対する結合親和性を含む。特定の実施形態では、ペプチド成分は、10
−5モル濃度(M)以下のヒト毛髪、皮膚、爪または口腔に対する結合親和性を有する1つまたは複数の口腔表面結合ペプチドおよび/または結合ドメインである。いくつかの実施形態では、結合ペプチドまたはドメインは、少なくとも約50〜500mMの塩の存在下で10
−5M以下の結合親和性値を有するであろう。「結合親和性」という用語は、結合ペプチドと、そのそれぞれの基質、この場合はヒト口腔表面(歯肉、歯など)との相互作用の強度を指す。結合親和性は、結合ペプチドの解離定数(「K
D」)、または「MB
50」に関して定義または判断することができる。
【0253】
「K
D」は、標的上の結合部位の半分が占有される、すなわち、ペプチド結合を有する標的(結合標的材料)の濃度がペプチド結合を有さない標的の濃度と等しい場合のペプチドの濃度に相当する。解離定数が小さいほど、ペプチドはより堅く結合される。例えば、ナノモル濃度(nM)の解離定数を有するペプチドは、マイクロモル濃度(μM)の解離定数を有するペプチドよりも堅く結合する。本発明の特定の実施形態は10
−5以下のK
D値を有するであろう。
【0254】
「MB
50」は、ELISAに基づいたアッセイにおいて得られる最大シグナルの50%であるシグナルを与える結合ペプチドの濃度を指す。例えば、参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2005/022683号明細書の実施例3を参照されたい。MB
50は、複合体の成分の結合相互作用または親和性の強度の表示を提供する。MB
50の値が低いほど、ペプチドとその対応する基質との相互作用はより強い、すなわち「より良い」。例えば、ナノモル濃度(nM)のMB
50を有するペプチドは、マイクロモル濃度(μM)のMB
50を有するペプチドよりも堅く結合する。本発明の特定の実施形態は、10
−5M以下のMB
50値を有するであろう。
【0255】
いくつかの実施形態では、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分は、K
DまたはMB
50値により測定される場合に、約10
−5M以下、約10
−6M以下、約10
−7M以下、約10
−8M以下、または約10
−9M以下、または約10
−10M以下の結
合親和性を有することができる。
【0256】
いくつかの実施形態では、口腔表面結合ペプチドおよび/または口腔表面結合ドメインは、K
DまたはMB
50値により測定される場合に、約10
−5M以下、約10
−6M以下、約10
−7M以下、約10
−8M以下、約10
−9M以下、約10
−10M以下の結合親和性を有することができる。
【0257】
本明細書で使用される場合、「強い親和性」という用語は、約10
−5M以下、好ましくは約10
−6M以下、より好ましくは約10
−7M以下、より好ましくは約10
−8M以下、約10
−9M以下、または最も好ましくは約10
−10M以下のK
DまたはMB
50値を有する結合親和性を指すであろう。
【0258】
多成分ペルオキシカルボン酸発生系
複数の活性成分を分離および結合するための系および手段の設計は当該技術分野において知られており、通常、個々の反応成分の物理的な形態に依存し得る。例えば、複数の活性流体(液体−液体)系は、通常、反応性流体を混合したときに所望の漂白剤が生成されるいくつかの漂白用途において見出されるような、マルチチャンバディスペンサーボトルまたは2相系を使用する(例えば、米国特許出願公開第2005/0139608号明細書、米国特許第5,398,846号明細書、米国特許第5,624,634号明細書、米国特許第6,391,840号明細書、欧州特許第0807156B1号明細書、米国特許出願公開第2005/0008526号明細書、およびPCT公報の国際公開第00/61713号パンフレット)。ペルオキシカルボン酸を発生させるために使用される多成分系の他の形態には、粉末(例えば、米国特許第5,116,575号明細書)、多層錠剤(例えば、米国特許第6,210,639号明細書)、多数のコンパートメントを有する水溶性パケット(例えば、米国特許第6,995,125号明細書)および水が添加されると反応する固体凝集体(例えば、米国特許第6,319,888号明細書)などの、1つまたは複数の固体成分または固体−液体成分の組み合わせのために設計されたものが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0259】
別の実施形態では、第1の成分中のカルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、第1の成分中のカルボン酸エステルは、アセチル化糖類である。別の実施形態では、第1の成分中の酵素触媒は、微粒子固体、液体またはジェルであり得る。別の実施形態では、第1の反応成分は、固体錠剤または粉末であり得る。
【0260】
ペルオキシカルボン酸は非常に反応性であり、通常、時間が経つと濃度が低下する。これは特に、長期安定性を欠いていることが多い市販の予備成形されたペルオキシカルボン酸組成物に当てはまる。予備成形されたペルオキシカルボン酸の水溶液は、特に、大型容器および/または高度に濃縮されたペルオキシカルボン酸溶液をより長距離にわたって輸送する場合に、取扱いおよび/または輸送の難点も示し得る。さらに、予備成形されたペルオキシカルボン酸溶液は、特定の標的用途に対して所望の濃度のペルオキシカルボン酸を提供することができないことがある。従って、特に液体製剤の場合に、種々の反応成分を分離して保持することが非常に望ましい。
【0261】
所望のペルオキシカルボン酸を生成するために混ぜ合わせられる2つ以上の成分を含む多成分ペルオキシカルボン酸発生系の使用は報告されている。個々の成分は取扱いが安全で、長期間安定(すなわち、混合したときに生成されるペルオキシカルボン酸の濃度により測定される場合に)でなければならない。一実施形態では、多成分酵素ペルオキシカルボン酸発生系の貯蔵安定性は、酵素触媒の安定性に関して評価することができる。
【0262】
所望のペルオキシカルボン酸濃度を有する水性過酸溶液を急速に生成するために酵素触媒を使用する多成分ペルオキシカルボン酸発生製剤を含むパーソナルケア製品が本明細書において提供される。混合は使用の直前に、そして/あるいは適用部位において(その場で)起こり得る。一実施形態では、パーソナルケア製品製剤は、使用されるまで分離して保持される少なくとも2つの成分で構成され得る。成分の混合は、水性過酸溶液を急速に形成する。各成分は、得られる水性過酸溶液が、意図される最終用途に適した効果的な過酸濃度を含むように設計される。個々の成分の組成は、(1)長期の貯蔵安定性を提供するように、そして/あるいは(2)ペルオキシカルボン酸で構成される適切な水性反応製剤の形成を高める能力を提供するように設計されなければならない。
【0263】
多成分製剤は、少なくとも2つの実質的に液体の成分で構成され得る。一実施形態では、多成分製剤は、第1の液体成分および第2の液体成分を含む2成分製剤であり得る。「第1」または「第2」の液体成分という用語の使用は相対的であるが、ただし、特定の材料を含む2つの異なる液体成分は使用されるまで分離して保持されるものとする。最低でも、多成分ペルオキシカルボン酸製剤は、(1)過加水分解活性を有する少なくとも1つの酵素触媒(前記少なくとも1つの酵素は、好ましくは、CE−7エステラーゼに分類される)と、(2)カルボン酸エステル基質と、(3)過酸素源および水とを含み、成分が混ぜ合わせられると製剤は所望の過酸を酵素的に生成する。
【0264】
2成分製剤において使用される種々の原料のタイプおよび量は、(1)各成分、特に酵素触媒の過加水分解活性の貯蔵安定性と、(2)溶解度および/または所望の水性ペルオキシカルボン酸溶液を効果的に形成する能力を増強する物理特性とを提供するように慎重に選択され、バランスがとられるべきである(例えば、水性反応混合物中のエステル基質の溶解度を増強する原料、および/または液体成分[すなわち、酵素的な過加水分解活性に著しい悪影響を与えない少なくとも1つの共溶媒]の少なくとも1つの粘度および/濃度を変更する原料)。
【0265】
酵素的な過酸発生系の性能および/または触媒安定性を改善するために種々の方法が開示されている。米国特許出願公開第2010−0048448A1号明細書には、特定のエステル基質の溶解度および/または混合特性を増強するために少なくとも1つの共溶媒の使用が記載されている。本発明のパーソナルケア組成物および方法も、共溶媒を使用することができる。一実施形態では、カルボン酸エステル基質およびペルヒドロラーゼ触媒を含む成分は、約2未満のLog P値を有する有機溶媒を含む。ここで、Log Pは、P=[溶質]
オクタノール/[溶質]
水で表される、オクタノールと水の間の物質の分配係数の対数であると定義される。酵素活性に著しい悪影響を与えない、2以下のLog P値を有するいくつかの共溶媒が記載されている。別の実施形態では、共溶媒は、カルボン酸エステル基質および酵素を含む反応成分内の約20重量%〜約70重量%である。カルボン酸エステル基質および酵素を含む反応成分は、場合により、1つまたは複数の緩衝液(例えば、重炭酸、クエン酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、メチルホスホン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、およびマレイン酸のナトリウムおよび/またはカリウム塩)を含んでいてもよい。
【0266】
米国特許出願公開第2010−0086534A1号明細書には2成分系の使用が記載されており、第1の成分は、液体カルボン酸エステルおよび固体酵素粉末の製剤を含み、前記酵素粉末は、(a)過加水分解活性を有する少なくとも1つのCE−7エステラーゼ、および(b)少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤の製剤を含み、第2の成分は、過酸素源および過酸化水素安定剤を有する水を含む。本発明のパーソナルケア組成物および方法は、米国特許出願公開第2010−0086534A1号明細書に記載される系と同様の2成分製剤を使用することができる。従って、オリゴ糖賦形剤は、酵素活性の安定化を促進するために使用され得る。一実施形態では、オリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の重量平均分子量を有し得る。別の実施形態では、オリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1700の数分子量および少なくとも約15000の重量平均分子量を有し得る。別の実施形態では、オリゴ糖はマルトデキストリンである。
【0267】
米国特許出願公開第2010−0086535−A1号明細書にも2成分系が記載されており、第1の成分は、液体カルボン酸エステルおよび固体酵素粉末の製剤を含み、前記製剤は、(a)過加水分解活性を有する少なくとも1つのCE−7エステラーゼおよび少なくとも1つのオリゴ糖賦形剤および少なくとも1つの界面活性剤を含む酵素粉末と、(b)少なくとも1つの緩衝液(好ましい実施形態では、緩衝液は別箇の(すなわち、酵素粉末から分離されている)不溶性成分としてカルボン酸エステル基質に添加される)とを含み、第2の成分は、過酸素源および過酸化水素安定剤を有する水を含む。本発明のパーソナルケア組成物および方法は、米国特許出願公開第2010−0086535A1号明細書に記載される系と同様の2成分製剤を使用することができる。一実施形態では、賦形剤は、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の重量平均分子量を有するオリゴ糖賦形剤であり得る。別の実施形態では、オリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1700の数平均分子量および少なくとも約15000の重量平均分子量を有し得る。別の実施形態では、オリゴ糖はマルトデキストリンである。さらなる実施形態では、任意的なpH緩衝液は重炭酸緩衝液である。またさらなる実施形態では、過酸化水素安定剤はTURPINAL(登録商標)SLである。
【0268】
酵素粉末
いくつかの実施形態では、パーソナルケア組成物は、安定化酵素粉末の形態の酵素触媒を使用し得る。酵素粉末を含む製剤を製造および安定化するための方法は、米国特許出願公開第2010−0086534号明細書および同第2010−0086535号明細書に記載されている。
【0269】
一実施形態では、酵素は、酵素粉末の乾燥重量を基準として約5重量パーセント(重量%)〜約75重量%の範囲の量で酵素粉末中に存在し得る。酵素粉末/噴霧乾燥混合物中の酵素の好ましい重量パーセント範囲は約10重量%〜50重量%であり、酵素粉末/噴霧乾燥混合物中の酵素のより好ましい重量パーセント範囲は、約20重量%〜33重量%である。
【0270】
一実施形態では、酵素粉末は、さらに、賦形剤を含むことができる。1つの態様では、賦形剤は、酵素粉末の乾燥重量を基準として、約95重量%〜約25重量%の範囲の量で提供される。酵素粉末中の賦形剤の好ましい重量%範囲は約90重量%〜50重量%であり、酵素粉末中の賦形剤のより好ましい重量%範囲は、約80重量%〜67重量%である。
【0271】
一実施形態では、酵素粉末を調製するために使用される賦形剤は、オリゴ糖賦形剤であり得る。一実施形態では、オリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1250の数平均分子量および少なくとも約9000の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、オリゴ糖賦形剤は、少なくとも約1700の数平均分子量および少なくとも約15000の重量平均分子量を有する。特定のオリゴ糖としては、マルトデキストリン、キシラン、マンナン、フコイダン、ガラクトマンナン、キトサン、ラフィノース、スタキオース、ペクチン、インスリン、レバン、グラミナン、アミロペクチン、スクロース、ラクツロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、ニゲロトリオース、マルトトリオース、メレジトース、マルトトリウロース、ラフィノース、ケストース、およびこれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、オリゴ糖賦形剤はマルトデキストリンである。またオリゴ糖ベースの賦形剤としては、ヒドロキシメチル−セルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにこれらの混合物などの水溶性の非イオン性セルロースエーテルも挙げることができるが、これらに限定されない。またさらなる実施形態では、賦形剤は、以下の化合物:トレハロース、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、セロビオース、α−シクロデキストリン、およびカルボキシメチルセルロースのうちの1つまたは複数から選択することができるが、これらに限定されない。
【0272】
製剤は少なくとも1つの任意選択的な界面活性剤を含んでいてもよく、少なくとも1つの界面活性剤の存在が好ましい。界面活性剤には、エトキシ化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポロキサマー、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン誘導体、モノグリセリドまたはそのエトキシ化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、ナトリウムドクサート、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸またはその誘導体、レシチン、リン脂質、エチレングリコールおよびプロピレングリコールのブロックコポリマー、ならびに非イオン性有機ケイ素(organosilicones)などのイオン性および非イオン性の界面活性剤または湿潤剤が含まれ得るが、これらに限定されない。好ましくは、界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであり、ポリソルベート80がより好ましい。
【0273】
製剤が酵素粉末を含む場合、粉末を調製するために使用される界面活性剤は、酵素粉末中に存在するタンパク質の重量を基準として約5重量%〜0.1重量%の範囲、好ましくは、酵素粉末中に存在するタンパク質の重量を基準として約2重量%〜0.5重量%の範囲の量で存在し得る。
【0274】
酵素粉末はさらに、1つまたは複数の緩衝液(例えば、重炭酸、クエン酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、メチルホスホン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、およびマレイン酸のナトリウムおよび/またはカリウム塩)と、酵素安定剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸、(1−ヒドロキシエチリデン)ビスホスホン酸))とを含んでいてもよい。
【0275】
酵素粉末を形成するための製剤の噴霧乾燥は、例えば、「Spray Drying Handbook」,5th ed.,K.Masters,John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.(1991)、およびPCT特許公報の国際公開第97/41833号パンフレットおよび国際公開第96/32149号パンフレット(Platz,R.ら)において概略的に記載されるように行われる。
【0276】
一般に、噴霧乾燥は、高度に分散された液体と、十分な体積の温風とを結びつけて、液滴の蒸発および乾燥を生じることからなる。通常、原料は暖かいろ過空気の流れの中に噴霧され、溶媒が蒸発されて、乾燥された生成物がコレクターに搬送される。次に、使用済みの空気は溶媒と共に排出される。当業者は、所望の生成物を提供するためにいくつかの異なるタイプの装置が使用され得ることを認識するであろう。例えば、Buchi Ltd.(Postfach,Switzerland)またはGEA Niro Corp.(Copenhagen,Denmark)によって製造される市販の噴霧乾燥器は、所望のサイズの粒子を効果的に生成するであろう。さらに、これらの噴霧乾燥器、特にそのアトマイザーは、ダブルノズル技術を用いて、2つの溶液の同時噴霧などの特殊な用途のために変更またはカスタマイズされ得ることが認識されるであろう。より具体的には、油中水エマルションを1つのノズルから微粒化し、マンニトールなどの抗接着剤を含有する溶液を第2のノズルから同時に微粒化することができる。他の場合には、高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)ポンプを用いて特注設計のノズルから原料溶液を押出すのが望ましいこともある。正しいモルホロジーおよび/または組成を含む微細構造が生成されるとすれば、装置の選択は重要ではなく、本明細書における教示を考慮すれば当業者には明らかであろう。
【0277】
噴霧される材料を乾燥するために使用されるガスの入口および出口の温度はいずれも、噴霧される材料中の酵素の分解を引き起こさないような温度である。このような温度は通常実験的に決定されるが、一般に、入口温度は約50℃〜約225℃の範囲であり、出口温度は約30℃〜約150℃の範囲であろう。好ましいパラメータには、約20〜150psi(0.14MPa〜1.03MPa)の範囲、好ましくは約30〜40から100psi(0.21〜0.28MPaから0.69MPa)の範囲の微粒化圧力が含まれる。通常、使用される微粒化圧力は、以下の(MPa)0.14、0.21、0.28、0.34、0.41、0.48、0.55、0.62、0.69、0.76、0.83またはそれ以上のうちの1つであろう。
【0278】
一実施形態では、「実質的にその酵素活性を保持する」は、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤において、周囲温度で長い貯蔵期間の後、および/または高温(周囲温度よりも高い)で短い貯蔵期間の後、酵素粉末またはカルボン酸エステル中の酵素粉末の製剤が、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤を調製する前の酵素粉末の初期酵素活性と比較して、酵素粉末または酵素粉末の製剤中の酵素の酵素活性の少なくとも約75パーセントを保持することを意味する。長い貯蔵期間は、周囲温度で約1年〜約2年の期間である。一実施形態では、高温における短い貯蔵期間は、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤が40℃で生成されたときから40℃で約8週間までの期間である。別の実施形態では、高温は、約30℃〜約52℃の範囲である。好ましい実施形態では、高温は、約30℃〜約40℃の範囲である。
【0279】
いくつかの実施形態では、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤において40℃で8週間の貯蔵の後、酵素粉末は、40℃でカルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤を調製する前の酵素粉末の初期酵素活性と比較して、酵素活性の少なくとも75パーセントを保持する。他の実施形態では、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤において40℃で8週間の貯蔵の後、酵素粉末は、40℃でカルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤を調製する前の酵素粉末の初期酵素活性と比較して、少なくとも1つの酵素の酵素活性の少なくとも76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100パーセントを保持する。好ましくは、過加水分解活性は、米国特許出願公開第2010−0086510号明細書の実施例8〜13に記載されるように測定されるが、過加水分解活性の任意の測定方法が使用され得る。
【0280】
規定される期間にわたる酵素活性のさらなる改善は、米国特許出願公開第2010−0086534号明細書に記載されるように、カルボン酸エステルおよび噴霧乾燥された酵素粉末で構成される製剤に、約5.5〜約9.5のpH範囲において緩衝能力を有する緩衝液を添加することによって達成することができる。適切な緩衝液としては、重炭酸、ピロリン酸、リン酸、メチルホスホン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸またはコハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはナトリウムもしくはカリウム塩の混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。カルボン酸エステルおよび噴霧乾燥酵素粉末で構成される製剤において使用するために好ましい緩衝液には、重炭酸、ピロリン酸、リン酸、メチルホスホン酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸塩、マレイン酸またはコハク酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはナトリウムもしくカリウム塩の混合物が含まれる。
【0281】
カルボン酸エステルおよび酵素粉末製剤中に緩衝液が存在し得る実施形態では、緩衝液は、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤中のカルボン酸エステルの重量を基準として、約0.01重量%〜約50重量%の範囲の量で存在することができる。緩衝液は、カルボン酸エステルおよび酵素粉末で構成される製剤中のカルボン酸エステルの重量を基準として、約0.10%〜約10%のより好ましい範囲で存在し得る。さらに、これらの実施形態では、酵素の過加水分解活性間の比較は、カルボン酸エステル、約5.5〜約9.5のpH範囲で緩衝能力を有する緩衝液、および酵素粉末で構成される製剤において40℃で8週間の貯蔵の後、カルボン酸エステル、約5.5〜約9.5のpH範囲で緩衝能力を有する緩衝液、および酵素粉末で構成される製剤を調製する前の酵素粉末の初期過加水分解活性と比較して、少なくとも1つの酵素の過加水分解活性の少なくとも75パーセントを保持する酵素粉末の間で決定される。
【0282】
乾燥酵素粉末は、トリアセチンなどの少なくとも1つの酵素のための基質である有機化合物中の製剤として貯蔵されることが意図される。添加される過酸化水素の非存在下で、トリアセチンは、通常、水溶液中でCE−7炭水化物エステラーゼにより加水分解されて、ジアセチンおよび酢酸を生成し、酢酸の生成は、反応混合物のpHの低下を引き起こす。トリアセチン中の酵素の長期間の貯蔵安定性の1つの要件は、トリアセチンと、トリアセチン中に存在し得る任意の水との有意の反応が存在しないことであり、1つの市販のトリアセチン(Tessenderlo Group,Brussels,Belgiumにより供給される)中の含水量についての仕様は、0.03重量%の水(300ppm)である。トリアセチン中での酵素の貯蔵中に生じるトリアセチンの任意の加水分解は、CE−7ペルヒドロラーゼの活性の低下または不活性化を引き起こし得る酢酸を生成し得る。ペルヒドロラーゼは、通常、5.0以下のpHで不活性化される(米国特許出願公開第2009−0005590号明細書(DiCosimo,R.らを参照)。本出願において使用するために選択される賦形剤は、製剤中の低濃度の水のために酢酸が発生され得る条件下で、酵素のための有機基質中における酵素の安定性を提供しなければならない。製剤が賦形剤および1つまたは複数の緩衝液(例えば、重炭酸、クエン酸、酢酸、リン酸、ピロリン酸、メチルホスホン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、およびマレイン酸のナトリウムおよび/またはカリウム塩)をさらに含む場合、乾燥酵素粉末は、少なくとも1つの酵素のための基質である有機化合物中の製剤として貯蔵することができる。
【0283】
カルボン酸エステルおよび過酸化水素から酵素触媒により過酸を調製するための適切な反応条件
過加水分解活性を有する1つまたは複数の酵素を使用して、本発明のパーソナルケア組成物および方法において、有効濃度の所望の過酸を発生させることができる。所望のペルオキシカルボン酸は、過加水分解活性を有する酵素触媒の存在下で、カルボン酸エステルと、過酸素源(過酸化水素、過酸化亜鉛、過酸化ナトリウム、過酸化尿素、過酸化カルシウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウムまたは過酸化水素の錯体を含むがこれらに限定されない)とを反応させることによって調製され得る。
【0284】
標的化ペルヒドロラーゼ内の過加水分解酵素は任意の過加水分解酵素でよく、酵素が本発明の基質の1つまたは複数に対する過加水分解活性を有する限り、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼ、および組み合わせを含むことができる。例としては、過加水分解プロテアーゼ(サブチリシン変異体、米国特許第7,510,859号明細書)、過加水分解エステラーゼ(シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、米国特許第7,384,787号明細書、「L29P」変異体配列番号477)、および過加水分解アリールエステラーゼ(マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)、米国特許第7,754,460号明細書、国際公開第2005/056782号パンフレット、および欧州特許第1689859B1号明細書、配列番号460[S54V変異体]および478[野生型])を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0285】
一実施形態では、酵素触媒はペルヒドロラーゼ活性を有する少なくとも1つの酵素を含み、前記酵素は、構造的にいくつかのCE−7炭水化物エステラーゼファミリー(CE−7、上記のCoutinho,P.M.およびHenrissat,B.を参照)に分類される。別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、構造的にセファロスポリンCデアセチラーゼに分類される。別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、構造的にアセチルキシランエステラーゼに分類される。
【0286】
一実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒は、過加水分解活性と、
a)配列番号2のアミノ酸残基118〜120とアラインするRGQモチーフ、
b)配列番号2のアミノ酸残基179〜183とアラインするGXSQGモチーフ、および
c)配列番号2のアミノ酸残基298〜299とアラインするHEモチーフ
を含むシグネチャーモチーフとを有する酵素を含む。
【0287】
好ましい実施形態では、参照配列番号2に対するアライメントはCLUSTALWを用いて実施される。
【0288】
さらなる実施形態では、CE−7シグネチャーモチーフはさらに、CLUSTALWを用いて参照配列の配列番号2にアラインされたときに、アミノ酸残基267〜269においてLXDモチーフと定義される付加的な(すなわち、第4の)モチーフを含むことができる。
【0289】
別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒はペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含み、前記酵素は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0290】
別の実施形態では、ペルヒドロラーゼ触媒はペルヒドロラーゼ活性を有する酵素を含み、前記酵素は、配列番号2、4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、424、437、および476からなる群から選択されるアミノ酸配列を有し、ここで、シグネチャーモチーフが保存され、ペルヒドロラーゼ活性が保持される限り、前記酵素は1つまたは複数の付加、欠失、または置換を有していてもよい。
【0291】
上記のように、CE−7ペルヒドロラーゼは、ペルヒドロラーゼが所望の体表面に「標的化される」ように、CE−7ペルヒドロラーゼを含む第1の部分と、標的体表面に対する親和性を有するペプチド成分を含む第2の部分とを有する融合タンパク質であり得る。一実施形態では、任意のCE−7ペルヒドロラーゼ(CE−7シグネチャーモチーフの存在によって定義される)は、酵素を体表面に標的化することができる任意のペプチド成分/結合要素に融合され得る。1つの態様では、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分は、抗体、抗体断片(F
ab)、ならびに単鎖可変断片(scFv、免疫グロブリンの重鎖(V
H)および軽鎖(V
L)の可変領域の融合物)、単一ドメインラクダ科(camelid)抗体、スキャフォールドディスプレイタンパク質、および免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖親和性ペプチドを含むことができる。抗体、抗体断片および他の免疫グロブリン由来の結合要素、ならびに大型スキャフォールドディスプレイタンパク質を含む組成物は、多くの場合、経済的に実行可能ではない。従って、好ましい態様では、ペプチド成分/結合要素は、免疫グロブリンの折り畳みおよび/または免疫グロブリンドメインを欠いた単鎖親和性ペプチドである。短い単鎖体表面結合ペプチドは実験的に生成されてもよいし(例えば、負帯電表面に標的化された正帯電ポリペプチド)、あるいは標的体表面に対するバイオパニングを用いて生成されてもよい。いくつものディスプレイ技術(例えば、ファージディスプレイ、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、リボソームディスプレイ、およびmRNAディスプレイ)を用いて親和性ペプチドを同定する/得るための方法は、当該技術分野においてよく知られている。個々の口腔表面結合ペプチドは、より大きい結合「ドメイン」(本明細書では、結合「ハンド」とも呼ばれる)を形成して過加水分解酵素の標的口腔表面への付着/局在化を高めるために、任意的なスペーサー/リンカーを介して結合されてもよい。
【0292】
融合タンパク質は、CE−7ペルヒドロラーゼ酵素と口腔表面結合ドメインとを分離し、そして/あるいは異なる口腔表面結合ペプチド間を分離する(例えば、より大きい標的口腔表面結合ドメインを形成するために複数の口腔表面結合ペプチドが結合されている場合)、1つまたは複数のペプチドリンカー/スペーサーを含むこともできる。多数のペプチドリンカー/スペーサーが存在してもよく、リンカーの数は最大10回まで繰り返され得る。例示的なペプチドスペーサーの非限定的なリストは、配列番号383〜396のアミノ酸配列および表5に示される配列によって提供される。
【0293】
口腔表面に対する親和性を有する適切なペプチドは、本明細書において上記で記載されている。上記の「ディスプレイ」技術のいずれかを用いて追加の口腔表面結合ペプチドを同定するための方法はよく知られており、追加の口腔表面結合ペプチドを同定するために使用することができる。
【0294】
適切なカルボン酸エステル基質は、以下の式を有するエステルを含むことができる:
(a)構造
[X]
mR
5
(式中、
Xは、式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6は、場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6がC2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5は、場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有する1つまたは複数のエステル、あるいは
【0295】
(b)構造
【化13】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有する1つまたは複数のグリセリド、あるいは
【0296】
(c)式
【化14】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、あるいは
(d)1つまたは複数のアセチル化単糖類、アセチル化二糖類、またはアセチル化多糖類、あるいは
(e)(a)〜(d)の任意の組み合わせ。
【0297】
適切な基質は、アシル化単糖類、二糖類、および多糖類からなる群から選択される1つまたは複数のアシル化糖類を含むこともできる。別の実施形態では、アシル化糖類は、アセチル化キシラン、アセチル化キシランの断片、アセチル化キシロース(キシローステトラアセテートなど)、アセチル化グルコース(α−D−グルコースペンタアセテート、β−D−グルコースペンタアセテート、1−チオ−β−D−グルコース−2,3,4,6−テトラアセテートなど)、β−D−ガラクトースペンタアセテート、ソルビトールヘキサアセテート、スクロースオクタアセテート、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、β−D−リボフラノース−1,2,3,4−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、β−D−キシロフラノーステトラアセテート、α−D−グルコピラノースペンタアセテート、β−D−グルコピラノース−1,2,3,4−テトラアセテート、β−D−グルコピラノース−2,3,4、6−テトラアセテート、2−アセトアミド−2−デオキシ−1,3,4,6−テトルアセチル−β−D−グルコピラノース、2−アセトアミド−2−デオキシ−3,4,6−トリアセチル−1−クロリド−α−D−グルコピラノース、α−D−マンノピラノースペンタアセテート、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。好ましい実施形態では、アセチル化糖類は、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカール、スクロースオクタアセテート、およびアセチル化セルロースからなる群から選択される。
【0298】
別の実施形態では、付加的な適切な基質は、5−アセトキシメチル−2−フルアルデヒド、3,4−ジアセトキシ−1−ブテン、4−アセトキシ安息香酸(acetoxybenezoic acid)、酢酸バニリン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、3−ヒドロキシ酪酸メチル、3−ヒドロキシ酪酸エチル、および2−アセチルクエン酸トリエチルも含むことができる。
【0299】
別の実施形態では、適切な基質は、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、トリブチリン、グルコースペンタアセテート、キシローステトラアセテート、アセチル化キシラン、アセチル化キシラン断片、β−D−リボフラノース−1,2,3,5−テトラアセテート、トリ−O−アセチル−D−ガラクタール、トリ−O−アセチル−D−グルカールと、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオールのモノエステルまたはジエステルと、これらの混合物からなる群から選択される。別の実施形態では、基質は、1つまたは複数のエステル基を含むC1〜C6ポリオールである。好ましい実施形態では、C1〜C6ポリオールのヒドロキシル基の1つまたは複数は、1つまたは複数のアセトキシ基によって置換されている(1,3−プロパンジオールジアセテート、1,2−プロパンジオールジアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,5−ペンタンジオールジアセテートなど)。さらなる実施形態では、基質は、プロピレングリコールジアセテート(PGDA)、エチレングリコールジアセテート(EGDA)、またはこれらの混合物である。
【0300】
さらなる実施形態では、適切な基質は、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、モノプロピオニン、ジプロピオニン、トリプロピオニン、モノブチリン、ジブチリン、およびトリブチリンからなる群から選択される。さらに別の態様では、基質は、ジアセチンおよびトリアセチンからなる群から選択される。最も好ましい実施形態では、適切な基質はトリアセチンを含む。
【0301】
好ましい実施形態では、カルボン酸エステルは、モノアセチン、ジアセチン、トリアセチン、およびこれらの組み合わせ(すなわち、混合物)からなる群から選択される液体基質である。カルボン酸エステルは、酵素に触媒される過加水分解の際に所望の濃度のペルオキシカルボン酸を生成するのに十分な濃度で、反応製剤中に存在する。カルボン酸エステルは反応製剤中に完全に溶解性である必要はないが、ペルヒドロラーゼ触媒によってエステルが対応するペルオキシカルボン酸に転換できるようにするために十分な溶解度を有する。カルボン酸エステルは、反応製剤の0.05重量%〜40重量%の濃度、好ましくは反応製剤の0.1重量%〜20重量%の濃度、より好ましくは反応製剤の0.5重量%〜10重量%の濃度で反応製剤中に存在する。
【0302】
過酸素源としては、過酸化水素、過酸化水素付加物(例えば、尿素−過酸化水素付加物(過酸化カルバミド))過ホウ酸塩、過炭酸塩および過酸化塩を挙げることができるが、これらに限定されない。反応製剤中の過酸素化合物の濃度は、0.0033重量%〜約50重量%の範囲、好ましくは0.033重量%〜約40重量%の範囲、より好ましくは0.1重量%〜約30重量%の範囲であり得る。
【0303】
過酸素源(すなわち、過酸化水素)は、有効量の過酸化水素を生成することができる酵素を用いて、酵素的に発生されてもよい。例えば、グルコースオキシダーゼ、ラクトースオキシダーゼ、炭水化物オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、エチレングリコールオキシダーゼ、グリセロールオキシダーゼ、およびアミノ酸オキシダーゼを含むがこれらに限定されない種々のオキシダーゼを本発明の組成物および方法において使用して、有効量の過酸化水素を生成することができる。
【0304】
多くのペルヒドロラーゼ触媒(全細胞、透過処理された全細胞、および部分精製全細胞抽出物)は、カタラーゼ活性を有することが報告されている(EC 1.11.1.6)。カタラーゼは、過酸化水素から酸素および水への転換を触媒する。1つの態様では、過加水分解触媒にはカタラーゼ活性がない。別の態様では、カタラーゼ阻害剤が反応製剤に
添加され得る。当業者は、必要に応じてカタラーゼ阻害剤の濃度を調整することができる。カタラーゼ阻害剤の濃度は、通常、0.1mM〜約1Mの範囲であり、好ましくは約1mM〜約50mM、より好ましくは約1mM〜約20mMの範囲である。
【0305】
別の実施形態では、酵素触媒は有意なカタラーゼ活性を持たないか、あるいはカタラーゼ活性を低減または除去するように操作され得る。宿主細胞におけるカタラーゼ活性は、トランスポゾン変異誘発、RNAアンチセンス発現、標的化変異誘発、およびランダム変異誘発を含むがこれらに限定されないよく知られた技術を用いて、カタラーゼ活性の原因である遺伝子の発現を破壊することによって下方制御または除去することができる。好ましい実施形態では、内在性カタラーゼ活性をコードする遺伝子は、下方制御または破壊(すなわち、ノックアウト)される。本明細書で使用される場合、「破壊された」遺伝子は、修飾された遺伝子によってコードされるタンパク質の活性および/または機能がもう存在しないものである。遺伝子を破壊するための手段は当該技術分野においてよく知られており、対応するタンパク質の活性および/または機能が存在しなくなる限り、遺伝子への挿入、欠失、または突然変異を含むことができるが、これらに限定されない。さらに好ましい実施形態では、産生宿主は、katGおよびkatEからなる群から選択される破壊されたカタラーゼ遺伝子を含むE.コリ(E.coli)産生宿主である(米国特許出願公開第2008−0176299号明細書を参照)。別の実施形態では、産生宿主は、katGおよびkatEカタラーゼ遺伝子の両方における下方制御および/または破壊を含むE.コリ(E.coli)株である。
【0306】
水性反応製剤中の触媒の濃度は触媒の特定の触媒活性に依存し、所望の反応速度を得るように選択される。過加水分解反応における触媒の重量は、通常、全反応体積の0.0001mg〜10mg/mL、好ましくは0.001mg〜2.0mg/mLの範囲である。また触媒は、当業者によく知られた方法を用いて可溶性または不溶性担体に固定化されていてもよく、例えば、「Immobilization of Enzymes and Cells」,Gordon F.Bickerstaff,Editor,Humana Press,Totowa,NJ,USA,1997が参照される。固定化触媒の使用により、その後の反応における触媒の回収および再利用が可能になる。酵素触媒は、全微生物細胞、透過処理された微生物細胞、微生物細胞抽出物、部分精製または精製酵素、およびこれらの混合物の形態であり得る。
【0307】
1つの態様では、カルボン酸エステルの化学的な過加水分解および酵素的な過加水分解の組み合わせによって発生されるペルオキシカルボン酸の濃度は、選択されるパーソナルケア用途のために有効な濃度のペルオキシカルボン酸を提供するのに十分である。別の態様では、本発明の方法は、所望の有効濃度のペルオキシカルボン酸を生成するための酵素および酵素基質の組み合わせを提供しており、添加される酵素が存在しないと、著しくより低い濃度のペルオキシカルボン酸が生成される。場合によっては、無機過酸化物と酵素基質との直接的な化学反応によって酵素基質の実質的に化学的な過加水分解が起こり得るが、所望の用途において有効な濃度のペルオキシカルボン酸を提供するために十分な濃度のペルオキシカルボン酸は発生されないことがあり、全ペルオキシカルボン酸濃度の著しい増大は、適切なペルヒドロラーゼ触媒の反応製剤への添加によって達成される。
【0308】
少なくとも1つのカルボン酸エステルの過加水分解によって発生されるペルオキシカルボン酸(例えば、過酢酸)の濃度は、過加水分解反応の開始から10分以内、好ましくは5分以内に、少なくとも約0.1ppmであり、好ましくは少なくとも0.5ppm、1ppm、5ppm、10ppm、20ppm、100ppm、200ppm、300ppm、500ppm、700ppm、1000ppm、2000ppm、5000ppmまたは10,000ppmの過酸である。ペルオキシカルボン酸を含む製品製剤は、場合により、標的用途に基づいて所望されるより低い濃度のペルオキシカルボン酸を含む製剤を生成するために、水、または主に水で構成される溶液で希釈されてもよい。明らかに、当業者は、選択されるパーソナルケア製品に対する所望の過酸濃度を達成するために反応成分および/または希釈量を調整することができる。
【0309】
1つの態様では、所望の濃度の過酸を生成するために必用とされる反応時間は、約2時間以内、好ましくは約30分以内、より好ましくは約10分以内、最も好ましくは約5分以内である。他の態様では、口腔表面は、反応成分を混ぜ合わせてから5分以内の間、本明細書に記載される方法に従って形成されるペルオキシカルボン酸と接触される。一実施形態では、標的口腔表面は、前記反応成分を混ぜ合わせてから約5分間〜約168時間以内の間、または前記反応成分を混ぜ合わせてから約5分間〜約48時間以内、または約5分間〜2時間以内の間、またはその中の任意の時間間隔で、本明細書に記載される方法で生成されるペルオキシカルボン酸と接触される。
【0310】
本明細書に記載される方法に従って形成される過酸はパーソナルケア製品/用途において使用され、過酸は標的口腔表面と接触されて、過酸ベースの利益を口腔に提供する。一実施形態では、標的体表面に対して過酸を生成するための方法はその場で実行される。
【0311】
反応の温度は、反応速度および酵素触媒活性の安定性の両方を調節するように選択され得る。特定のパーソナルケア用途では明らかに、標的体表面の温度(例えば、口腔内で37度)が反応の温度であり得る。反応の温度は、反応製剤の氷点(約0℃)のすぐ上の温度から約95℃までの範囲であり得るが、好ましい範囲は5℃〜約75℃であり、さらに好ましい反応温度範囲は、約5℃〜約55℃である。
【0312】
ペルオキシカルボン酸を含有する最終反応製剤のpHは約2〜約9であり、好ましくは約3〜約8、より好ましくは約5〜約8、さらにより好ましくは約5.5〜約8であり、またさらにより好ましくは約6.0〜約7.5である。反応、そして最終反応製剤のpHは、場合により、リン酸、ピロリン酸、重炭酸、酢酸、またはクエン酸を含むがこれらに限定されない適切な緩衝液の添加により調節され得る。緩衝液の濃度は、使用される場合には、通常0.1mM〜1.0Mであり、好ましくは1mM〜300mMであり、最も好ましくは10mM〜100mMである。
【0313】
別の態様では、酵素的な過加水分解反応製剤は、反応製剤中のカルボン酸エステルの溶解速度を高めるために、分散剤としての役割を果たす有機溶媒を含有していてもよい。このような溶媒としては、プロピレングリコールメチルエーテル、アセトン、シクロヘキサノン、ジエチレングリコールブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソプロパノール、エタノール、プロピレングリコール、およびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0314】
単一段階適用方法と多段階適用方法との対比
通常、過酸有益剤を酵素的に生成するための最低限の反応成分のセットは、(1)CE−7ペルヒドロラーゼなどの、本明細書に記載されるような過加水分解活性を有する少なくとも1つの酵素(場合により、標的化された融合タンパク質の形態である)と、(2)少なくとも1つの適切なカルボン酸エステル基質と、(3)過酸素源とを含むであろう。
【0315】
パーソナルケア組成物の過酸発生反応成分は、使用されるまで分離して保持され得る。一実施形態では、過酸発生成分は混ぜ合わせられてから標的体表面と接触され、それにより、得られる過酸ベースの有益剤は、体表面に利益を提供する。成分は混ぜ合わせられてから標的体表面と接触されてもよいし、あるいは標的化体表面上で混ぜ合わせられてもよい。一実施形態では、過酸発生成分は、過酸がその場で生成されるように混ぜ合わせられる。
【0316】
多段階の適用が用いられてもよい。過酸発生系(すなわち、3つの基本的な反応成分の少なくとも1つを体表面に順次適用する)組成物の個々の成分のうちの1つまたは2つは、酵素的な過酸の生成に必要とされる残りの成分を適用する前に口腔表面と接触され得る。一実施形態では、過加水分解酵素は、口腔表面をカルボン酸エステル基質および/または過酸素源と接触させる前に口腔表面と接触される(すなわち、「2段階適用」)。一実施形態では、過加水分解活性を有する酵素は、酵素的な過酸の生成に必要な残り成分を混ぜ合わせる前に口腔表面に適用される標的化ペルヒドロラーゼである。
【0317】
好ましい実施形態では、過加水分解活性を有する酵素は、酵素的な過酸の生成に必要な残りの成分を混ぜ合わせる前に口腔表面に適用される「標的化CE−7ペルヒドロラーゼ」(すなわち、CE−7融合タンパク質)である(すなわち、2段階適用方法)。標的化ペルヒドロラーゼは、融合タンパク質の口腔表面への非共有結合を促進するのに適切な条件下で口腔表面と接触される。任意的なすすぎステップを使用して、残りの反応成分を混ぜ合わせる前に、過剰および/または非結合の融合タンパク質を除去することができる。
【0318】
さらなる実施形態では、過加水分解酵素(場合により、口腔表面に標的化された融合タンパク質の形態である)およびカルボン酸エステルは、過酸素源の添加よりも前に標的口腔表面に適用される。
【0319】
さらなる実施形態では、過加水分解酵素(場合により、口腔表面に標的化された融合タンパク質の形態である)および過酸素源(例えば、過酸化水素を含む水溶液)は、カルボン酸エステル基質の添加よりも前に口腔表面に適用される.
【0320】
さらなる実施形態では、カルボン酸エステル基質および過酸素源(例えば、過酸化水素を含む水溶液)は、過加水分解酵素(場合により、口腔表面に標的化された融合タンパク質の形態である)の添加よりも前に口腔表面に適用される。
【0321】
さらに別の実施形態では、本明細書に記載される組成物または方法のいずれかを、本発明を実行するためのキットに組み込むことができる。キットは、過酸の酵素的な生成を促進するための材料および試薬を含むことができる。例示的なキットは、基質、過酸素源、および過加水分解活性を有する酵素触媒を含み、ここで、酵素触媒は場合により口腔表面に標的化され得る。その他のキット成分は、以下の:サンプルチューブ、固体担体、教材(instruction material)、および過酸を酵素的に生成する際に有用な許容可能な成分またはキャリアなどの他の溶液または他の化学試薬のうちの1つまたは複数を含むことができるがこれらに限定されない。
【0322】
口腔ケア組成物
経口的に許容可能な成分/キャリア
本発明の組成物および方法は、経口的に許容可能なキャリアおよび付加的な(すなわち、過酸ベースの有益剤に加えて)口腔ケア有益剤を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「口腔ケア有益剤」という用語は、所望の/有益な効果または属性を口腔表面に提供する化合物または物質に適用される一般用語である。一実施形態では、口腔表面のための有益剤は、(過酸ベースの有益剤に加えて)二酸化チタンなどの白色顔料、およびヒドロキシアパタイトまたはジルコンなどの白色鉱物を含むがこれらに限定されない着色剤を含むことができる。別の実施形態では、口腔ケア有益剤は、増白剤、ならびに例えば、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、グリコシダーゼ、エステラーゼ、および多糖類ヒドロラーゼなどの付加的な酵素を含むこともできる。別の態様では、有益剤は、抗プラーク剤、抗染み剤、および抗菌剤を含むことができる。抗菌剤は、抗菌ペプチド、マガイニン、セクロピン、殺微生物剤(microbiocide)、トリクロサン、クロルヘキシジン、塩化セチルピリジニウム、第4級アンモニウム化合物、クロロキシレノール、クロロキシエタノール、フタル酸およびその塩、チモール、ならびにこれらの組み合わせを含むことができるが、これらに限定されない。口腔ケア有益剤は、フッ化ナトリウムまたはモノフルオロリン酸ナトリウムなどの抗う蝕剤、ならびにウィンターグリーン油、ペパーミント油、もしくはスペアミント油、またはサリチル酸メチル、ユーカリプトール、もしくはバニリンなどの風味剤を含むこともできる。口腔ケア有益剤は、いくつか例を挙げると、コハク酸塩ベースの冷却化合物などの冷却剤、および唾液分泌剤(salivating agent)を含むこともできる。本明細書で使用される場合、「唾液分泌剤」という用語は、口腔ケア組成物中に存在する場合にユーザーのより多い唾液分泌を促進する材料を指す。一実施形態では、有益剤は口腔ケア製品中での使用が認可された経口的に許容可能な材料である。別の実施形態では、経口的に許容可能な有益剤は、歯の表面的な外観を改善するために使用される。
【0323】
経口的に許容可能なキャリア媒体中で使用されることが多い成分の非限定的なリストは、Whiteらにより米国特許第6,740,311号明細書において、Lawlerらにより米国特許第6,706,256号明細書において、Fuglsangらにより米国特許第6,264,925号明細書において、そしてIbrahimらにより米国特許出願公開第2005−0069501号明細書において記載されている(これらはそれぞれ、参照によってその全体が本明細書中に援用される)。例えば、口腔ケア組成物は、以下の:研磨剤、界面活性剤、酸化防止剤、キレート剤、フッ化物源、増粘剤、緩衝剤、溶媒、湿潤剤、キャリア、増量剤、抗プラーク剤、抗染色剤、抗菌剤、抗う蝕剤、抗炎症剤、脱感作剤、甘味剤、風味剤、口臭清涼剤、冷却剤、栄養分、および唾液分泌剤のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0324】
口腔ケア組成物が所望の過酸有益剤を酵素的に生成する能力を保持するように混合物中の成分が選択されることは認識されるであろう。本明細書に開示される口腔ケアシステムの適切な混合物は、日常的な実験を用いて当業者によって決定され得る。口腔ケア製剤を有する口腔ケア有益剤の全濃度は、口腔ケア組成物の全重量に対して約0.001重量%〜約90重量%であり得る。
【0325】
口腔ケア組成物は、歯磨きペースト、練歯磨、歯磨きジェルまたは歯磨き粉、マウスウォッシュ、口臭清涼剤、およびデンタルフロスを含むことができるが、これらに限定されない。付加的な実施形態には、マウストレイを介して口腔環境に適用されるペーストまたはジェル中における反応成分の適用が含まれる。反応成分の1つまたは複数を送達して過酸有益剤を発生させるために、反応成分の1つまたは複数はまず、エナメル質に接着されるプラスチックストリップ上に付着させることもできる。ペルヒドロラーゼ融合物をストリップなどの送達デバイス上に付着させる場合、ペルヒドロラーゼ融合物は、デバイスの使用中、および使用後のデバイスの除去中に、ペルヒドロラーゼのストリップへの付着および保持を助けるために、ストリップの材料に対する親和性を有する結合要素を含むように設計され得る。
【0326】
口腔の疾患に関連する微生物の低減または不要なバイオフィルムの除去のための過酸ベースの口腔ケア製品
過酸ベースの口腔ケア製品は、う歯(例えば、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)など)、歯肉炎、口腔カンジダ症、または歯周炎に関連する口腔細菌を低減するために使用され得る。過酸ベースの口腔ケア製品は、口腔バイオフィルムを低減または除去するために使用され得る。
【0327】
一実施形態では、口腔ケア製品において有効濃度の少なくとも1つの過酸を生成するための過加水分解活性を有する酵素の使用は、口腔表面の漂白、ホワイトニング、消毒、脱染、脱臭または口腔表面からのバイオフィルムの除去のために提供される。
【0328】
一実施形態では、過加水分解活性を有する酵素は標的化ペルヒドロラーゼであり、酵素が本発明の基質の1つまたは複数に対する過加水分解活性を有する限り、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼ、および組み合わせを含むことができる。例としては、過加水分解プロテアーゼ(例えば、サブチリシン変異体、米国特許第7,510,859号明細書)、過加水分解エステラーゼ(例えば、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、米国特許第7,384,787号明細書、配列番号477)、および過加水分解アリールエステラーゼ(例えば、マイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)、米国特許第7,754,460号明細書、国際公開第2005/056782号パンフレット、および欧州特許第1689859B1号明細書、配列番号460[S54V変異体]および478[野生型])を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0329】
別の実施形態では、口腔ケア製品において有効濃度の少なくとも1つの過酸を生成するための過加水分解活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼの使用は、口腔表面の漂白、ホワイトニング、消毒、脱染、脱臭または口腔表面からのバイオフィルムの除去のために提供される。
【0330】
別の実施形態では、以下の過酸発生組成物の使用も提供されており、本組成物は、
a)過加水分解活性を有する酵素触媒であって、前記酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、前記シグネチャーモチーフが、
i)配列番号2の位置118〜120に相当する位置のRGQモチーフと、
ii)配列番号2の位置179〜183に相当する位置のGXSQGモチーフと、
iii)配列番号2の位置298〜299に相当する位置のHEモチーフと
を含む酵素触媒と、
b)1)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたは複数のエーテル結合を含んでいてもよく、
Mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中の溶解度を有するエステル、
【0331】
2)構造
【化15】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
【0332】
3)式
【化16】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたは複数のエステル、ならびに
4)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
c)過酸素源と、
を含み、(a)、(b)、および(c)を混ぜ合わせると過酸が形成される。ここで、過酸発生製剤は、う歯、歯肉炎、口腔カンジダ症、または歯周炎の処置または予防のために使用される。
【0333】
ペルオキシカルボン酸および過酸化水素の濃度を決定するためのHPLC検定方法
反応物および生成物を分析するために、滴定、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ガスクロマトグラフィ(GC)、質量分析(MS)、キャピラリー電気泳動法(CE)、U.Pinkernellら(Anal.Chem.,69(17):3623−3627(1997))によって記載される分析手順、ならびに本発明の実施例において記載されるような2,2’−アジノ−ビス−(3−エチルベンゾタゾリン)−6−スルホネート(ABTS)検定(U.Pinkernell et.al.Analyst,122:567−571(1997)およびDinu et.al.Adv.Funct.Mater.,20:392−398(2010))を含むがこれらに限定されない様々な分析方法を、本発明の方法において使用することができる。
【0334】
ペルオキシカルボン酸の最小殺生物濃度の決定
特定のパーソナルケア用途は、いくつか例を挙げると体臭、真菌感染、およびう歯の発生に関連するものなど、不要な微生物の除去と関連し得る。従って、標的パーソナルケア用途のための最小殺生物濃度を測定することが望まれるかもしれない。J.Gabrielsonら(J.Microbiol.Methods 50:63−73(2002))によって記載される方法は、ペルオキシカルボン酸、または過酸化水素および酵素基質の最小殺生物濃度(MBC)を決定するために使用することができる。検定法は、XTTの還元阻害に基づいており、ここで、XTT((2,3−ビス[2−メトキシ−4−ニトロ−5−スルホフェニル]−5−[(フェニルアミノ)カルボニル]−2H−テトラゾリウム、分子内塩、モノナトリウム塩)は、490nmまたは450nmで測定される光学濃度(OD)の変化による微生物の呼吸活性を示す酸化還元色素である。しかしながら、消毒剤および防腐剤の活性を試験するために利用可能な様々なその他の方法が存在し、生存可能なプレートのカウント、直接的な顕微鏡のカウント、乾燥重量、濁度測定、吸光度、およびバイオルミネセンスなどが含まれるが、これらに限定されない(例えば、Brock,Semour S.,「Disinfection,Sterilization,and Preservation」,5th edition,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA、USA;2001を参照)。
【0335】
組換え微生物の発現
本発明の配列の遺伝子および遺伝子産物は、異種宿主細胞において、特に微生物宿主の細胞において産生され得る。本発明の遺伝子および核酸分子の発現のための好ましい異種宿主細胞は、真菌または細菌ファミリーにおいて見出すことができ、広範な温度、pH値、および溶媒耐性にわたって増殖する微生物宿主である。例えば、細菌、酵母、および糸状菌はどれも適切に本発明の核酸分子の発現の宿主となり得ると考えられる。ペルヒドロラーゼは、細胞内、細胞外、または細胞内および細胞外の両方の組み合わせにおいて発現され得るが、ここで、細胞外発現によって、発酵産物からの所望のタンパク質の回収は、細胞内発現により産生されるタンパク質の回収方法よりも容易になる。転写、翻訳およびタンパク質生合成装置は、細胞バイオマスを発生させるために使用される細胞原料に対して不変なままであり、それにもかかわらず機能遺伝子は発現されるであろう。宿主株の例としては、アスペルギルス属、トリコデルマ属、サッカロミセス属、ピキア属、ファフィア属(Phaffia)、クルイベロミセス属、カンジダ属、ハンゼヌラ属、ヤロウィア属、サルモネラ属、バチルス属、アシネトバクター属、ザイモモナス属、アグロバクテリウム属、エリスロバクター属(Erythrobacter)、クロロビウム属、クロマチウム属、フラボバクテリウム属、サイトファーガ属、ロドバクター属、ロドコッカス属、ストレプトミセス属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリア属、マイコバクテリウム属、ディノコッカス属、エシェリキア属、エルウィニア属、パンテア属、シュードモナス属、スフィンゴモナス属、メチロモナス属、メチロバクター属(Methylobacter)、メチロコッカス属、メチロサイナス属、メチロミクロビウム属(Methylomicrobium)、メチロシスティス属(Methylocystis)、アルカリゲネス属、シネコシスティス属、シネココッカス属、アナベナ属、チオバチルス属、メタノバクテリウム属、クレブシエラ属、およびミキソコッカス属などの細菌、真菌または酵母種が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、細菌宿主株には、エシェリキア属、バチルス属、クルイベロミセス属、およびシュードモナス属が含まれる。好ましい実施形態では、細菌宿主細胞は、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)またはエシェリキア・コリ(Escherichia coli)である。
【0336】
大規模の微生物の増殖および機能遺伝子の発現は、様々な単純または複合糖質、有機酸、およびアルコール、またはメタンなどの飽和炭化水素、または二酸化炭素(光合成または化学独立栄養宿主の場合)、窒素、リン、硫黄、酸素、炭素または任意の微量栄養素(小さい無機イオンを含む)の形態および量を使用し得る。増殖速度の制御は、特定の制御分子を培養に添加するか否かによって影響され得るが、これらは通常、栄養分またはエネルギー源とは考えられない。
【0337】
適切な宿主細胞の形質転換のために有用なベクターまたはカセットは当該技術分野でよく知られている。通常、ベクターまたはカセットは、関連の遺伝子の転写および翻訳を指示する配列、選択可能なマーカー、および自己複製または染色体の組込みを可能にする配列を含有する。適切なベクターは、転写開始の調節を包含する遺伝子の5’領域と、転写の終結を調節するDNA断片の3’領域とを含む。両方の調節領域が形質転換宿主細胞に相同および/または産生宿主に天然の遺伝子に由来する場合が最も好ましいが、このような調節領域はそのような由来でなくてもよい。
【0338】
所望の宿主細胞における本発明のセファロスポリンCデアセチラーゼのコード領域の発現を駆動するために有用な開始調節領域またはプロモーターは多数あり、当業者によく知られている。事実上、これらの遺伝子を駆動することができるあらゆるプロモーターが本発明に適しており、CYC1、HIS3、GAL1、GAL10、ADH1、PGK、PHO5、GAPDH、ADC1、TRP1、URA3、LEU2、ENO、TPI(サッカロミセス属における発現に有用)、AOX1(ピキア属における発現に有用)、ならびにlac、araB、tet、trp、lP
L、lP
R、T7、tac、およびtrc(エシェリキア・コリ(Escherichia coli)における発現に有用)、そしてバチルス属における発現に有用なamy、apr、nprプロモーターおよび種々のファージプロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0339】
終結調節領域も、好ましい宿主細胞に天然の種々の遺伝子に由来し得る。一実施形態では、終結調節領域の包含は任意的である。別の実施形態では、キメラ遺伝子は、好ましい宿主細胞に由来する終結調節領域を含む。
【0340】
工業的な産生
ペルヒドロラーゼ触媒を産生するために様々な培養方法を適用することができる。例えば、組換え微生物宿主から過剰発現される特定の遺伝子産物の大規模産生は、バッチ培養、流加培養、および連続培養法によって行うことができる。バッチおよび流加培養法は一般的であり、当該技術分野においてよく知られており、その例は、Thomas D.Brock in 「Biotechnology:A Textbook of Microbiology」,Second Edition,Sinauer Associates,Inc.,Sunderland,MA(1989)およびDeshpande,Mukund V.,Appl.Biochem.Biotechnol.,36:227−234(1992)において見出すことができる。
【0341】
所望のペルヒドロラーゼ触媒の商業的な産生は、連続培養を用いて達成することもできる。連続培養は開放系であり、定義される培地がバイオリアクターに連続的に添加され、同時に、等量の条件培地が処理のために除去される。一般に、連続培養は、細胞が主に対数増殖期にあるときに、細胞を一定の高い液相密度に維持する。あるいは、連続培養は固定化細胞を用いて実施することもでき、ここで、炭素および栄養分は連続的に添加され、価値のある産物、副産物または老廃物は細胞塊から連続的に除去される。細胞の固定化は、天然および/または合成材料で構成される様々な固体担体を用いて実施することができる。
【0342】
バッチ発酵、流加発酵、または連続培養からの所望のペルヒドロラーゼ触媒の回収は、当業者に知られている方法のいずれかによって達成され得る。例えば、酵素触媒が細胞内で産生される場合、細胞ペーストは遠心分離または膜ろ過によって培地から分離され、場合により水または所望のpHの水性緩衝液で洗浄され、次に、所望のpHの水性緩衝液中の細胞ペーストの懸濁液は均質化されて、所望の酵素触媒を含有する細胞抽出物を生じる。細胞抽出物は、場合により、セライトまたはシリカなどの適切なろ過助剤を通してろ過され、酵素触媒溶液から不要なタンパク質を沈殿させるための加熱処理ステップの前に細胞片が除去されてもよい。次に、所望の酵素触媒を含有する溶液は、膜ろ過または遠心分離によって、沈殿した細胞片およびタンパク質から分離されてもよく、得られた部分精製酵素触媒溶液は、付加的な膜ろ過によって濃縮され、次に場合により、適切なキャリア(例えば、マルトデキストリン、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、またはこれらの混合物)と混合され、噴霧乾燥されて所望の酵素触媒を含む固体粉末を生じ得る。
【0343】
量、濃度、またはその他の値またはパラメータが、範囲、好ましい範囲、または好ましい上限値および好ましい下限値の一覧のいずれかで与えられる場合、これは、範囲が別々に開示されているかどうかにかかわらず、任意の範囲の上限または好ましい値と、任意の範囲の下限または好ましい値との任意の対から形成される全ての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。本明細書において数値の範囲が列挙される場合、他に記載されない限り、その範囲は、その両端点ならびに範囲内の全ての整数および分数を含むことが意図される。範囲を定義する場合、本発明の範囲は、列挙される特定の値に限定されることは意図されない。
【0344】
一般的な方法
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を実証するために提供される。実施例において開示される技術が、本発明の実施において十分に機能するための技術に従い、従って、その実施のために好ましいモードを構成すると考えられることは、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本発明の開示を考慮して、開示される特定の実施形態において多くの変化が成され、そしてそれでもなお本発明で開示される方法および実施例の趣旨および範囲から逸脱することなく同様または類似の結果を得ることができると認識すべきである。
【0345】
全ての試薬および材料は、他に指定されない限り、DIFCO Laboratories(Detroit,MI)、GIBCO/BRL(Gaithersburg,MD)、TCI America(Portland,OR)、Roche Diagnostics Corporation(Indianapolis,in)、Thermo Scientific(Pierce Protein Research Products)(Rockford,IL)またはSigma/Aldrich Chemical Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0346】
本明細書における以下の略語は、以下のように、測定、技術、特性、または化合物の単位に相当する:「sec」または「s」は秒を意味し、「min」は分を意味し、「h」または「hr」は時間を意味し、「μL」はマイクロリットルを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、「L」はリットルを意味し、「mM」はミリモル濃度を意味し、「M」はモル濃度を意味し、「mmol」はミリモルを意味し、「ppm」は100万分の1を意味し、「wt」は重量を意味し、「wt%」は重量パーセントを意味し、「g」はグラムを意味し、「mg」はミリグラムを意味し、「μg」はマイクログラムを意味し、「ng」はナノグラムを意味し、「g」は重力を意味し、「HPLC」は高速液体クロマトグラフィを意味し、「ddH
2O」は蒸留および脱イオン水を意味し、「dcw」は乾燥細胞重量を意味し、「ATCC」または「ATCC(登録商標)」はAmerican Type Culture Collection(Manassas,VA)を意味し、「U」はペルヒドロラーゼ活性の単位を意味し、「rpm」は1分間の回転数を意味し、「Tg」はガラス転移温度を意味し、そして「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を意味する。
【0347】
発現ベクターpLD001
プラスミドpLD001(配列番号292)はE.コリ(E.coli)のための適切な発現ベクターであることが既に報告されている(参照によって本明細書中に援用される米国特許出願公開第2010−0158823A1号明細書(Wangら)を参照)。
【0348】
ベクターpLD001は、市販のベクターpDEST17(Invitrogen,Carlsbad,CA)に由来した。これは、酵素ケトステロイドイソメラーゼ(KSI)の断片をコードする、市販のベクターpET31b(Novagen,Madison,WI)に由来する配列を含む。KSI断片は、E.コリ(E.coli)において不溶性封入体へのペプチドの分割を促進するための融合パートナーとして含有された。pET31bからのKSIコード化配列は、標準的な変異誘発手順(QuickChange II、Stratagene、La Jolla,CA)を用いて、野生型KSI配列において見出される1つのCysコドンに加えて、3つの追加のCysコドンを含むように改変した。さらに、コード配列内の全てのAspコドンは、Gluコドンによって置換した。プラスミドpLD001(配列番号397で与えられる)は、当業者によく知られている標準組換えDNA法を用いて構築した。
【実施例】
【0349】
実施例1
歯の漂白剤としての過酢酸の有効性
この実施例では、モデル染色エナメル質表面における漂白効果を達成するための過酢酸の使用が説明される。ウシエナメル質切歯は、SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。ダイヤモンド刃を有するDREMEL(登録商標)回転鋸(Robert Bosch Power Tool Corporation,Chicago,IL)を用いて、歯を両側で約7mmのエナメル質スラブに分割および切断した。エナメル質スラブを清浄化し、軽く研磨して表面屑を除去した。ヒトの染色歯と同様の色に染色するために、エナメル質をコーヒーおよびお茶の混合物により1〜5日間前処理した。
【0350】
各エナメル質ブロックを使用の前に水中で少なくとも1時間水和させた。試験溶液への暴露の前に基質の色測定を得た。500mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中32%のストックから過酢酸の溶液を調製した。同じ緩衝液中で2.5%のH
2O
2の溶液も調製した。複数のエナメル質ブロックを各溶液に1分間暴露した後、さらに5分間、10分間、15分間および30分間暴露した。各処理に対してストック溶液から過酢酸および過酸化水素の新しい溶液を調製した。各処理の後、エナメル質ブロックを水ですすぎ、Konica−Minolta 2600d分光光度計により測定した。各サンプルの白色度は、表1および2に記載されるように決定された。
【0351】
白色度(WI)は国際照明委員会(International Commission on Illumination)(CIE)によって定義され、ASTM法E313−05に記載されており、D65/10入射光に対して:
WI=Y+800
*(0.3138−x)+1700
*(0.3310−y)
として計算され、式中、Y、x、およびyはそれぞれ、エナメル基質の輝度率および色度座標である。
【0352】
【表2】
【0353】
【表3】
【0354】
より正の値への白色度の変化はホワイトニング効果を示した。サンプルの目視検査も、緩衝液および過酸化水素対照と比較して過酢酸で処理したサンプルに対して認知できるホワイトニング効果を示した。このデータは、過酢酸が有効な漂白剤であり、過酸化水素よりも低濃度で優れた性能を提供することを実証する。
【0355】
実施例2
標準的なバイオパニングを用いる歯エナメル質およびペリクル結合ペプチドの選択
この実施例の目的は、標準的なファージディスプレイバイオパニングを用いて、歯のエナメル質およびペリクルに結合するファージペプチドを同定することであった。
【0356】
ウシエナメル質切歯は、SE Dental(Baton Rouge,LA)から入手した。歯を約5平方mmに切断し、研磨して表面屑を除去した。エナメル質ブロックは使用する前に滅菌した。ウェル内にエナメル質表面のみを露出させるように、成形材料を含有するウェルプレート内にエナメル質ブロックを埋め込んだ。口の中で30分間インキュベーションしてペリクル被覆表面を形成するために、ワックス台にブロックを取り付けることによって、追加のエナメル質ブロック上にペリクルを形成した。ペリクル被覆エナメル基質を、COLGATE(登録商標)MAXFRESH(登録商標)歯磨きペースト(Colgate−Palmolive,New York,NY)の1:2スラリーでブラシで磨き、さらに30分間再インキュベートした。ブロックの一部をワックスから取り出してウェルプレートに埋め込み、その他は、再度ブラシで磨いてからウェルプレートに埋め込んだ。埋め込みプロセスは、溶液がエナメル質およびペリクル被覆エナメル質表面だけと接触することを可能にした。
【0357】
次に、基質をブロッキング緩衝液中、室温で1時間インキュベート(約22℃、0.1%のTWEEN(登録商標)20を有するリン酸緩衝食塩水(pH7.2)(Pierce BUPH(商標)#28372)中1mg/mLのウシ血清アルブミン(PBST))した後、PBSTで2回洗浄した。15〜20のアミノ酸長さのランダムペプチドインサート(10
11pfu)を含有するファージのライブラリーを各ウェルに添加した。最終結合溶液は、10
11pfuのファージ、10%のUV処理した全唾液、および0.1%のTWEEN(登録商標)20(PBST)中1mg/mLのBSAを含有した。50rpmで振とうさせながら37℃で30分間インキュベーションした後、各ウェルから液体を吸引することにより非結合ファージを除去してから、1.0mLのPBSTで6回洗浄した。
【0358】
次に、エナメル質ブロックを清浄なチューブに移し、0.2Mのグリシン−HCl中1mg/mLのBSAからなる1mLの溶出緩衝液(pH2.2)を各ウェルに添加し、10分間インキュベートして、結合ファージを溶出させた。次に、1MのTris−HClからなる167μLの中和緩衝液(pH9.1)を各ウェルに添加した。溶出緩衝液中およびエナメル質ブロック上にあるファージ粒子は、LB培地中に1:100で希釈した一晩培養物から20mLの希釈E.コリ(E.coli)ER2738細胞と共に37℃で4.5時間インキュベートすることにより増幅した。その後、細胞培養物を2分間遠心分離し、上澄みの上部15mLを新しいチューブに移し、2.5mLのPEG/NaCl(20%ポリエチレングリコール−800、2.5Mの塩化ナトリウム)を添加し、ファージを4℃で一晩沈殿させた。4℃で10,000×gにおける遠心分離により沈殿物を捕集し、得られたペレットを1mLのPBS中に再懸濁させた。これは1回目の増幅ストックであった。次に、1回目の増幅されたファージストックを標準プロトコルに従って滴定した。次の回のバイオパニングのために、前の回からの2×10
11pfuを超えるファージストックを使用した。1回目の後の追加の回のそれぞれには、ヒト全唾液(室温で2時間UV処理した)による付加的な洗浄、炭酸緩衝液(pH9.4)(Pierce BUPH(商標)炭酸−重炭酸緩衝液#28382)による2回の洗浄、50mMのリン酸緩衝液(pH2.5)による2回の洗浄、そしてその後の通常のPBSTによる2回の洗浄も含まれた。
【0359】
3回目およびその後の各回のバイオパニングの後に、95のランダムな単一ファージプラークを単離し、Illustra Templiphi 500 Amplification Kit(GE Healthcare,Piscataway,NJ)を用いて一本鎖ファージゲノムDNAを調製し、−96gIII配列決定プライマー(5’−CCCTCATAGTTAGCGTAACG−3’、配列番号398)を用いて、DuPont Sequencing Facilityにおいて配列決定した。提示されたペプチドは、遺伝子IIIのシグナルペプチドのすぐ後に位置する。ペプチド配列に基づいて、表3に示されるように、さらなる結合分析のために12のファージ候補を同定した。
【0360】
【表4】
【0361】
実施例3
エナメル質における歯結合候補の特徴付け
この実施例の目的は、合成的に産生されたペプチドを用いて、エナメル質表面におけるペプチド組成物の結合を確認することである。
【0362】
表3から得られる配列を用いて合計11の合成ペプチドを製造した。C−末端にビオチン標識リジンを有するペプチドは、SynBioSci Corp.(Livermore,CA)から入手した。
【0363】
エナメル基質を実施例2に記載されるように調製した。PBST(0.1%のTWEEN(登録商標)20を有するPierce BUpH(商標)#28372)中1mg/mLのBSAからなる1mLのブロッキング緩衝液と共に各基質を室温(約22℃)で1時間インキュベートした。各ウェルから液体を吸引することによりブロッキング緩衝液を除去した。PBSTからなる洗浄緩衝液でチューブを2回すすいだ。ブロッキング緩衝液中に希釈することによって調製した500μLの20μMペプチド溶液をウェルに満たした。サンプルを37℃でゆっくり振とうさせながら30分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄することによって非結合ペプチドを除去した。次に、PBST中に1:1000で希釈した500μLのホースラディッシュペルオキシダーゼ/ストレプトアビジン結合体(Pierce#22127)を添加し、室温(約22℃)で1時間インキュベートした。結合体溶液を除去し、エナメル質ブロックをPBSTで4回洗浄した。
【0364】
各エナメル基質をウェルから取り出し、15mLの試験管中で10mLのPBSTにより再度洗浄した。次に、各エナメル基質を清浄なウェルプレート内に取り付け、エナメル質表面のみを露出させた。200μLのQUANTABLU(商標)基質溶液(Thermo−Fisher,Rockford,IL、#1856187)を各エナメル質ブロックに直接添加した。溶液を室温で20分間インキュベートした。200μLのQUANTABLU(商標)停止溶液(Thermo Fisher)を添加した。混合した後、200μLの溶液を清浄な96ウェルブラック微量遠心プレートに移した。マイクロプレート分光光度計(Molecular Devices,Sunnyvale,CA)を用いて、325nm励起および420nm発光(カットオフ波長なし)によりプレートの蛍光を測定した。得られた蛍光値は表4で与えられる。11のペリクル/エナメル質結合候補の分析を既知の結合ペプチド、DenP03と比較した。3回再現したエナメル基質を用いて各配列を試験した。
【0365】
【表5】
【0366】
実施例4
ペルヒドロラーゼおよびペルヒドロラーゼ融合物の構築
この実施例では、エナメル質結合配列を介してエナメル質に標的化されたペルヒドロラーゼの産生のための発現系の設計が説明される。
【0367】
エナメル質結合ドメインに対する過加水分解活性を有する酵素(「ペルヒドロラーゼ」)の融合物をコードする遺伝子は、種々のアミノ酸可動性リンカー(各リンカーはさらに、表6に記載されるようにエナメル質結合ドメインまたは非結合配列対照に融合される)をコードするヌクレオチド配列に対して3’端部で融合した表5に記載される種々の酵素のポリヌクレオチド配列を有するように設計した。E.コリ(E.coli)における発現のために遺伝子をコドン最適化し、DNA2.0(Menlo Park,California)により合成した。プラスミドを生じるNdeIおよびAscI制限部位の間のT7プロモーター(発現ベクターpLD001(配列番号397))またはpBADプロモーターの後ろでコード配列をプラスミドにおいてクローン化した。融合タンパク質を発現させるために、T7プロモーター下での構築のために適切な発現宿主:E.コリ(E.coli)株BL21AI(Invitrogen,Carlsbad,California)に、あるいはpBADプロモーター下での構築のためにE.コリ(E.coli)MG1655のAraBAD誘導体に、プラスミドを移した。
【0368】
表5に記載される非標的化ペルヒドロラーゼ変異体を同様にクローン化した。サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)変異体の調製および組換え発現は、参照によって本明細書に援用される米国特許出願公開第2010−0087529号明細書においてDiCosimoらにより既に報告されている。
【0369】
ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)(アセチルキシランエステラーゼ、配列番号40)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)(アセチルキシランエステラーゼ、配列番号42)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)(アセチルキシランエステラーゼ、配列番号10)からの付加的なCE−7ペルヒドロラーゼを同様にしてクローン化した。ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)、およびバチルス・プミルス(Bacillus pumilus)からのCE−7ペルヒドロラーゼのクローン化および発現は、米国特許出願公開第2011−0081693号明細書および米国特許第7,951,566号明細書(それぞれ、参照によって本明細書に援用される)においてDiCosimoらにより既に報告されている。
【0370】
ペルヒドロラーゼのCE−7ファミリーに属さない過加水分解酵素も同様にしてクローン化した。過加水分解活性を有するマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)アリールエステラーゼ(「ArE」、野生型配列は配列番号478であり、S54V変異体は配列番号460として提供される)は、米国特許第7,754,460号明細書に記載されている。過加水分解活性を有するシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)エステラーゼ変異体L29P(「Pfl」、配列番号477)は、米国特許第7,384,787号明細書に記載されている。
【0371】
【表6】
【0372】
【表7】
【0373】
【表8】
【0374】
【表9】
【0375】
【表10】
【0376】
【表11】
【0377】
【表12】
【0378】
【表13】
【0379】
【表14】
【0380】
【表15】
【0381】
実施例5
融合タンパク質の産生
この実施例には、口腔表面に結合するための標的配列を有するまたは有さないペルヒドロラーゼの発現および精製が記載される。
【0382】
50mg/Lのスペクチノマイシンを含有する1Lの自己誘導培地(10g/Lのトリプトン、5g/Lの酵母抽出物、5g/LのNaCl、50mMのNa
2HPO
4、50mMのKH
2PO
4、25mMの(NH
4)
2SO
4、3mMのMgSO
4、0.75%のグリセロール、0.075%のグルコースおよび0.05%アラビノース)において、200rpmの攪拌下、株を37℃で20時間増殖させた。非標的化ペルヒドロラーゼの産生は、米国特許出願公開第2010−0087529号明細書(DiCosimoら)において既に記載されている。標的化ペルヒドロラーゼの産生は、同様のプロトコルに従った。細胞を8000rpmの遠心分離により収集し、1mMのDTTを含有する20mLの50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.1)中に細胞ペレットを再懸濁させることにより洗浄した。溶液を8000rpmで再度遠心分離し、上澄みを除去し、DTTを含有するリン酸緩衝液中にペレットを再分散させた。次に、溶液を30秒間均質化して、ペレットを分散させた(Brinkman HomogenizerモデルPCU11)。次に、13,000psi(約89.6MPa)のFrench Press(SLM Instruments)により溶液を処理することによって、細胞を溶解させた。完全な溶解を達成するために、溶液をプレスによりさらに2回処理した。次に、細胞溶液を円錐チューブに移し、8500rpmで5分間遠心分離した。T.マリティマ(T.maritima)構築物については、上澄みを除去し、80℃で30分間加熱した。溶液を再度遠心分離して、上澄みを清浄なバイアルに移した。
【0383】
非好熱性酵素については、汚染細胞成分から酵素を精製するために熱処理は使用しなかった。代わりに、Co−NTAアガロース(HisPur Cobalt Resin,Thermo Scientific、製品番号:89965)を用いる金属キレート化クロマトグラフィによって、酵素のC−末端に融合されたHis6タグを用いてサンプルを精製した。通常、4体積の平衡緩衝液(10mMのTris HCl(pH7.5)、10%のグリセロール、1mMのイミダゾールおよび150mMのNaCl)で平衡化されたCo−NTAアガロースの5〜10mLのカラムに細胞抽出物を負荷した。カラムに負荷される各抽出物の量は、Co−NTAアガロースビーズ1mL当たり5〜10mgのペルヒドロラーゼ融合物を含有するように調整した。樹脂を2ベッド体積の平衡緩衝液で洗浄し、2体積の溶出緩衝液(10mMのTris HCl(pH7.5)、10%のグリセロール、150mMのイミダゾール、500mMのNaCl)で溶出させた。画分を収集し、全長の精製タンパク質の存在をPAGEにより確認した。
【0384】
構築物EZ−19〜EZ−26を製造するために、細胞産生の後、8000rpmの遠心分離により細胞を捕集し、20mLの50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)中に細胞ペレットを再懸濁させることによって洗浄した。溶液を8000rpmで再度遠心分離した。上澄みを除去し、ペレットをリン酸緩衝液中に再分散させた。次に、溶液を30秒間均質化して、ペレットを分散させた(Brinkman HomogenizerモデルPCU11)。次に、13,000psi(約89.6MPa)のFrench Press(SLM Instruments)により溶液を処理することによって、細胞を溶解させた。完全な溶解を達成するために、溶液をプレスによりさらに2回処理した。次に、細胞溶液を円錐チューブに移し、8500rpmで5分間遠心分離した。細胞ライセートペレット50mL当たり3mLの緩衝液で、不溶性ライセートペレットをサルコシル緩衝液(50mMのリン酸緩衝液(pH7.2)、2%のTRITON(登録商標)−X100および1.5%のサルコシル)中に溶解させた。溶液を遠心分離し、上澄みを新しいチューブに移した。Thermo Scientific(Rockford,IL)からのHisPur(商標)Cobalt Resinキットを用いることにより、融合タンパク質を精製した。
【0385】
これらの製造および精製プロトコルのアウトプットは、通常、1mL当たり2〜10mgのタンパク質を生じ、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)分析で推定される場合に、融合ペルヒドロラーゼ純度はタンパク質の90%〜75%である。ウシ血清アルブミン溶液を標準として用いるビシンコニン酸(BCA)検定(Thermo Scientific)によって全タンパク質を定量した。
【0386】
実施例6
エナメル質標的化ペルヒドロラーゼ融合物のヒドロキシアパタイトへの結合
この実施例には、ペルヒドロラーゼのヒドロキシアパタイト粒子への結合が記載される。ヒドロキシアパタイトは、エナメル質の有効な模倣物である。
【0387】
ヒドロキシアパタイトへの結合について、表6に記載されるペルヒドロラーゼ酵素を査定した。ヒドロキシアパタイトナノ粒子(Aldrich677418)の分散体は、10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中0.5%の固形分で作った。ヒドロキシアパタイト分散体に酵素ストック溶液を10μMの最終濃度になるまで添加し、微量遠心管中で穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。各サンプルを10000rpmで5分間遠心分離した。上澄みを除去し、付加的な緩衝液を添加した。粒子を再懸濁させ、新しいチューブに移した。プロセスをさらに2回繰り返した。60μLのサンプル、20μLのLDS緩衝液および8μLの還元剤(Nu−PAGE)を混ぜ合わせることによって、酵素の初期インプット、各洗浄ステップで粒子から除去された上澄み、および最終粒子のサンプルをSDS−PAGE分析のために調製した。サンプルを85℃で10分間加熱した。25μLの各サンプルを4−12%BisTrisゲル(Invitrogen)に負荷し、115ボルトで1.5時間実行した。ゲルを除去し、Simply Blue染色(Invitrogen)の1:1希釈物により一晩染色し、脱イオン水中で4時間脱染した。ゲルを分析し、バンドの存在に基づいて各画分中の酵素の検出を推定した。分析の結果は表7に提供されており、ゲルにおける各バンドの相対強度の表示は、ヒドロキシアパタイト表面と各酵素との間の結合の強度を決定するために酵素インプットと比較される(インプット=1)。
【0388】
【表16】
【0389】
表7のデータは、ペルヒドロラーゼの標的配列との融合物が洗浄後にヒドロキシアパタイト上に保持されていたが、非標的化ペルヒドロラーゼは保持されなかったことを実証する。
【0390】
実施例7
溶液中のそしてヒドロキシアパタイトに結合した酵素ペルヒドロラーゼ活性の定量
この実施例には、過酢酸を発生させるためにトリアセチンおよび過酸化水素を用いて、ペルヒドロラーゼをそのペルヒドロラーゼ活性により検出および定量するための方法が記載される。
【0391】
過酢酸の検出は、過酢酸による2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホネート(ABTS)酸化の比色分析検出を用いるPinkernellら(Analyst,1997,122,567)に記載される方法に従った。トリアセチンおよび過酸化水素の添加により過酢酸を形成した後、90μLの溶液を、ウェルプレート中の10μLの0.1MのH
3PO
4に添加した。50μLの1Mの酢酸、50μLの0.5g/LのABTSおよび50μLの0.002g/LのKIを添加した。溶液を5分間発展させた。マイクロプレートリーダーを用いて溶液の吸光度を405nmで測定した。過酢酸濃度は、過酢酸試薬溶液を用いて同時に発展させた標準曲線に基づいて計算した。
【0392】
溶液中の酵素活性は、50mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中0.625μg/mLの各酵素の溶液を作ることによって測定した。10μLの酵素溶液を、90μLの緩衝液、30μLの3%トリアセチン水、30μLの30mMのH
2O
2と混合した。溶液を5分間インキュベートした。上記のようにABTS酸化による検出のために90μLアリコートを取り出した。結果は表8に記載される。
【0393】
【表17】
【0394】
HAPディスク表面に一旦結合した融合物のペルヒドロラーゼ活性を、同じABTS法で検出した。ヒドロキシアパタイトディスク(HiMed Inc,Old Bethpage,NY、5mm直径×1.8mm厚)を20μMの酵素溶液(50mMのリン酸カリウム緩衝液 pH7.2)中で60分間インキュベートした後、6回洗浄した(50mMのリン酸カリウム緩衝液、pH7.2)。酵素が吸着したディスクを新しいウェルに移し、200μLのリン酸緩衝液(10mM、pH7.2)、30μLの3%トリアセチン(最終濃度0.346%)および30μLの30mMのH
2O
2(最終濃度3.46mM)を添加した。溶液を室温で5分間インキュベートさせた。90μLの溶液を10μLの100mMのH
3PO
4を含有する新しいウェルにピペットで取った。50μLの酢酸、50μLのKI、50μLのABTSを上記のように添加した。溶液を室温で5分間発展させ、A405nmで読み取った。結果は表9に記載される。
【0395】
【表18】
【0396】
この実験は、EZ−5およびEZ−7がヒドロキシアパタイトに結合した場合に活性な酵素であり、トリアセチンおよび過酸化水素の添加により過酢酸を生成することを実証する。EZ−1で検出された過酢酸の値が低いことは、EZ−1がヒドロキシアパタイトに結合せず(実施例6)、過酢酸を発生させるために表面に存在しないという他の観察と一致していた。
【0397】
実施例8
付加的なCE−7ペルヒドロラーゼ構築物に関して、溶液中のそしてヒドロキシアパタイトに結合した酵素ペルヒドロラーゼ活性の定量
この実施例には、過酢酸を発生させるためにトリアセチンおよび過酸化水素を用いて、溶液中およびヒドロキシアパタイトに結合したときの、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)(Bpu)、メソリゾビウム・ロティ(Mesorhizobium loti)(Mlo)およびラクトバチルス・ラクティス(Lactobacillus lactis)(Lla)からのCE−7ペルヒドロラーゼおよびそれぞれの融合タンパク質の過加水分解活性が記載される。
【0398】
表6に記載されるペルヒドロラーゼ酵素を溶液活性について査定した。100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)、100mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2中0.5μMの酵素を含有する500μLの溶液を作ることによる、溶液活性においてペルヒドロラーゼを測定するための方法は、実施例7に記載した。溶液を混合し、37℃で10分間インキュベートした。10μLアリコートを取り出し、実施例7に記載されるように検出のために希釈した。過酢酸濃度は、過酢酸のストック溶液(Aldrich)で作成した標準曲線を用いて決定した。また、対照として酵素を存在させずに実験を実施した。
【0399】
【表19】
【0400】
これらの構築物のヒドロキシアパタイトへの結合を査定するために、33mgのヒドロキシアパタイト粒子(Macro−prep Ceramic Hydroxyapatite TYPE I、80μmサイズのBioRad,Hercules,CA)を10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)で洗浄した。上澄みを除去した後、ヒドロキシアパタイト分散体に酵素ストック溶液を10μMの最終濃度になるまで添加し、微量遠心管中で穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。各サンプルを10000rpmで1分間遠心分離した。上澄みを除去し、付加的な緩衝液を添加した。粒子を再懸濁させ、新しいチューブに移した。プロセスをさらに2回繰り返した。100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中100mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2を含有する500μlの溶液を添加することによって、ヒドロキシアパタイトに結合した酵素活性を測定した。溶液を37℃で30分間インキュベートした。アリコートを取り出し、実施例7に記載されるようにABTS酸化による検出のために適切に希釈したH
3PO
4と混合した。各実験に対して対照として酵素を含まない実験を別の日に実施した。結果は表11に記載される。
【0401】
【表20】
【0402】
実験は、Bpu、MloおよびLlo酵素からの全てのCE−7ペルヒドロラーゼ融合物が、酵素なしの対照と比較して、溶液中でもヒドロキシアパタイト表面に結合した後でも、有意なペルヒドロラーゼ活性を示したことを実証する。B.プミルス(B.pumilus)からの3つのCE−7ペルヒドロラーゼ融合物は全て、M.ロティ(M.loti)またはL.ラクティス(L.lactis)からの融合酵素と比較して、より高い酵素活性を有する。B.プミルス(B.pumilus)からの標的化EZ−29は、非標的化EZ−27と比較して、より高い結合活性を示した。
【0403】
実施例9
標的化C277SペルヒドロラーゼのCXHペプチドとの融合物に関して、溶液中のそしてヒドロキシアパタイトに結合した酵素活性の定量
この実施例には、溶液中でそしてヒドロキシアパタイトに結合したときに過酢酸を発生させるためにトリアセチンおよび過酸化水素を用いて、CE−7 C277SおよびCXHペプチドとの融合物およびそのペルヒドロラーゼ活性が記載される。ヒドロキシアパタイトはエナメル質の有効な模倣物である。
【0404】
表6に記載されるペルヒドロラーゼ酵素EZ−19〜EZ−26を溶液中の酵素活性について査定した。ペルヒドロラーゼを溶液活性において測定するための方法は実施例7で記載した。溶液中の酵素活性は、100mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2および10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中0.5μMの各酵素の500μlのサルコシル緩衝液溶液を作ることによって測定した。溶液を37℃で10分間インキュベートした。H
3PO
4との混合により反応を停止させた後、適切な希釈のために10μLアリコートを取り出し、次に実施例7に記載されるようにABTS酸化により検出した。結果は表12に記載される。
【0405】
同じペルヒドロラーゼ融合酵素を、ヒドロキシアパタイトへの結合についても査定した。水和ヒドロキシアパタイトディスク(5mm直径×1.8mm厚、HiMed Incから)を使用した。ディスクを10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中で10分間平衡化した。200μLの酵素溶液を10mMのリン酸緩衝液中10μMの最終濃度になるまでヒドロキシアパタイトディスクに添加し、微量遠心管中で穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。上澄みを取り出し、非結合酵素活性検定のために使用した。ディスクを新しいチューブに移し、リン酸緩衝液ですすいだ。プロセスをさらに2回繰り返した。酵素が結合したヒドロキシアパタイトディスクの酵素活性は、100mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2および100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)を含有する500μlの溶液をディスクに添加し、37℃で30分間インキュベートすることによって測定した。H
3PO
4との混合により反応を停止させた後、適切な希釈のために10μLアリコートを取り出し、次に実施例7に記載されるようにABTS酸化により検出した。実験は数日にわたって実施し、酵素を含まない溶液を毎日対照として使用した。酵素なし対照を差し引いた後の結果は表12に記載される。
【0406】
【表21】
【0407】
実験は、CXH標的配列を有するC277S変異体がすべて活性であり、溶液中でそしてヒドロキシアパタイトに結合したときに十分な量の過酢酸を発生させることを実証した。
【0408】
実施例10
非CE−7ペルヒドロラーゼ構築物に関して、溶液中のそしてヒドロキシアパタイトに結合した酵素ペルヒドロラーゼ活性の定量
この実施例の目的は、溶液中でそしてヒドロキシアパタイトに結合したときに過酢酸を発生させるための、表6に記載されるM.スメグマチス(M.smegmatis)からの標的化または非標的化アリールエステラーゼ酵素変異体およびP.フルオレッセンス(P.fluorescens)からのペルヒドロラーゼ変異体の使用を実証することである。
【0409】
アリールエステラーゼ構築物に関して、溶液中の酵素活性は、100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)、100mMのトリアセチン、および100mMのH
2O
2中0.5μMの各酵素の1mLの溶液を作ることによって測定した。溶液を混合し、37℃で30分間インキュベートした。実施例7に記載されるように、一部をH
3PO
4に取り出すことによって反応を停止させ、10μLアリコートを取り出して、ABTS酸化による検出のために希釈した。
【0410】
ヒドロキシアパタイトにおける結合および活性を査定するために、10mMのリン酸緩衝液中10μMの溶液を用いて、33mgの緩衝液洗浄したHAP粒子(Macro−prep Ceramic Hydroxyapatite TYPE I、80μmサイズのBioRad、Hercules,CA)を用いて、実施例8に記載されるように、アリールエステラーゼ酵素をヒドロキシアパタイト粒子に暴露した。遠心分離および酵素溶液の除去の後、遠心分離および上澄の除去により粒子をリン酸緩衝液ですすいだ。100mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2および100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)を含有する200μLの溶液を粒子に添加し、37℃で30分間インキュベートした。実施例7に記載されるように、一部をH
3PO
4に取り出すことによって反応を停止させ、10μLアリコートを取り出して、ABTS酸化による検出のために希釈した。溶液および表面結合検定の両方の結果は表13に記載される。
【0411】
【表22】
【0412】
P.フルオレッセンス(P.fluorescens)構築物に関して、1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中2μMの酵素、100mMのH
2O
2を含有する1mLの溶液を混合することによって溶液活性を測定した。溶液を37℃で30分間インキュベートした。実施例7に記載されるように、一部をH
3PO
4に取り出すことによって反応を停止させ、10μLアリコートを取り出して、ABTS酸化による検出のために希釈した。ヒドロキシアパタイトにおける結合および活性を査定するために、100mgの緩衝液洗浄したHAP粒子(Macro−prep Ceramic Hydroxyapatite TYPE I、80μmサイズのBioRad、Hercules,CA)を用いて、実施例8に記載されるように、P.フルオレッセンス(P.fluorescens)酵素を10mMのリン酸緩衝液中20μMでヒドロキシアパタイト粒子に暴露した。遠心分離および酵素溶液の除去の後、遠心分離および上澄の除去により粒子をリン酸緩衝液ですすいだ。1Mの酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)中300mMのH
2O
2を含有する200μLの溶液を粒子に添加し、37℃で10分間インキュベートした。実施例7に記載されるように、一部をH
3PO
4に取り出すことによって反応を停止させ、10μLアリコートを取り出して、ABTS酸化による検出のために希釈した。溶液および表面結合検定の両方の結果は表14に記載される。
【0413】
【表23】
【0414】
これらの実験は、CE−7ファミリー以外のファミリーからのペルヒドロラーゼが、標的配列を含む構築物に関して溶液中でそしてヒドロキシアパタイトに結合したときに活性であることを実証する。
【0415】
実施例11
溶液中のそしてウシエナメル質に結合した、エナメル質標的化C277SおよびC277T変異体ペルヒドロラーゼ融合物の過加水分解活性の定量
この実施例には、ペルヒドロラーゼ融合タンパク質のウシエナメル質への結合、ならびに溶液中およびウシエナメル質に結合したときの酵素活性の測定が記載される。
【0416】
表5に記載されるペルヒドロラーゼ酵素を、実施例7に記載されるように溶液中の酵素活性について査定した。溶液中の酵素活性は、100mMトリアセチン、100mMのH
2O
2および10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中0.5μMの各酵素の500μlの溶液を作ることによって測定した。溶液を37℃で10分間インキュベートした。アリコートをH
3PO
4と混合することによって反応を停止させた後、適切な希釈のために10μLアリコートを取り出し、次に実施例7に記載されるようにABTS酸化により検出した。結果は表15に記載される。
【0417】
ペルヒドロラーゼ酵素は、ウシエナメル基質への結合についても査定した。エナメル基質は、実施例2および3に記載されるように調製した。各エナメル質ブロックを室温(約22℃)において水中で一晩水和させた。次に、エナメル質ブロックを10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)により10分間平衡化した。エナメル基質を緩衝液で3回すすいだ。10mMのリン酸緩衝液中に希釈することにより調製した500μLの10μMの酵素溶液をエナメル質ウェルに満たした。サンプルを37℃でゆっくり振とうさせながら30分間インキュベートした。リン酸緩衝液で4回洗浄することによって非結合酵素を除去した。次に、パテを充填した24ウェルプレートの内部に各エナメル質ブロックを埋め込み、エナメル質の上部表面のみを露出させた。エナメル質結合酵素からのペルヒドロラーゼ活性を実施例8に記載されるように測定した。100μLの反応混合物(100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)および100mMのH
2O
2および100mMのトリアセチン)をエナメル質の上部に添加し、37℃で30分間インキュベートした。実施例8に記載されるようにABTS酸化による検出のために90μLのアリコートを取り出した。結果は表15に記載される。各サンプルデータ点は、3個の独立したエナメル質ブロックの平均を表す。
【0418】
【表24】
【0419】
この実験は、標的配列を含む構築物について、T.マリティマ(T.maritima)配列変異体からのC227SおよびC277Tを用いる融合物が、溶液中でそしてウシエナメル質に結合したときに活性であり、歯を白くするために十分なレベルの過酢酸を発生させることを実証する。
【0420】
実施例12
1段階適用において過加水分解酵素を用いる歯の漂白の効力
この実施例の目的は、1段階適用において酵素的に発生される過酢酸の歯の漂白効果を示し、化学的に誘導される過酢酸で達成される性能と比較することである。過加水分解酵素(CE−7ペルヒドロラーゼ)系を使用して歯の漂白の目標レベルを達成するために2つの方法を開発した。第1の方法(本明細書では、「1段階アプローチ」と呼ばれる)は、モデル染色エナメル基質を用いて、異なる量の少なくとも1つのCE−7ペルヒドロラーゼを、トリアセチン(適切なエステル基質の例)および過酸化水素と混ぜ合わせて、過酢酸を発生させることを含む。実施例1に示されるようにウシエナメル質切歯を調製した。使用前に、染色ウシエナメル質ブロックを水中で少なくとも1時間水和させて、基質の色を安定化させた。水和の後、実験を開始する前に、各エナメル質ブロックの色を測定した。各溶液タイプに対して3つのエナメル質サンプルを処理した。使用した溶液は、緩衝液のみの対照と、2.5%のH
2O
2と、1%の過酢酸と、10μMのEZ−1(C277S、配列番号424)、100mMのトリアセチンおよび250mMのH
2O
2を含むペルヒドロラーゼ組成物と、100mMのトリアセチンおよび250mMのH
2O
2の酵素なしの対照とであった。全ての溶液は、500mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中で調製した。1%の過酢酸溶液を中性pHに保持するために、高い緩衝液強度が必要であった。各処理点に対して、全ての溶液を新しく調製した。酵素−トリアセチン−H
2O
2の組み合わせおよびトリアセチン−H
2O
2の組み合わせは、エナメル質の暴露の直前に混合した。各処理ステップの後、各エナメル質ブロックを水ですすぎ、色測定を得た。全処理時間61分を使用し、暴露時間は1分、5分、10分、15分および30分であった。1分、10分および30分の処理の後の溶液中の過酢酸の濃度を、ABTS酸化の比色分析検出によって評価した。結果は表16および17で提供される。
【0421】
【表25】
【0422】
比色分析法による反応混合物中の過酢酸(PAA)濃度の決定は、Dinuら(上記)によって記載される方法に従って実施した。125mMのクエン酸カリウム緩衝液(pH5.0)中、1mMの2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン)−6−スルホネート(ABTS)、50μMのヨウ化カリウムの試薬溶液を調製した。25μLのサンプルを、975μLのこの検出試薬と混合し、5分間インキュベートさせた。マイクロプレートリーダーを用いて、405nmにおける吸光度について溶液を分析した。吸光度値を直接比較することにより、溶液中の過酢酸の相対量の比較を決定した。
【0423】
【表26】
【0424】
表16のデータは、酵素−エステル−過酸化物組成物が歯を白くするのに有効であることを確認する。表17のデータは、EZ−1(C277S、配列番号424)酵素、トリアセチンおよびH
2O
2の組み合わせから過酢酸が生成されることことを実証する。化学的な過酢酸の吸光度データの比較も、意外にも酵素的な漂白系がより優れたホワイトニング性能を示し、検出可能な過酢酸がより低いことを示す。ABTS試薬への1:10希釈物で検出した非酵素含有トリアセチンおよびH
2O
2についても時間と共に低レベルの過酢酸が生成される(表には含まれない)。この結果、検出可能な漂白性能がもたらされるが、酵素触媒による高レベルの過酢酸生成と比較するとはるかにゆっくりとした速度である。
【0425】
実施例13
1段階適用においてエナメル質標的化過加水分解酵素を用いる歯の漂白効力
この実施例の目的は、標的化CE−7ペルヒドロラーゼを用いて1段階適用において酵素的に発生される過酢酸の歯の漂白効果を示し、化学的に誘導される過酢酸で達成される性能と比較することである。
【0426】
実施例1に示されるようにウシエナメル質切歯を調製した。使用前に、染色ウシエナメル質ブロックを水中で少なくとも1時間水和させて、基質の色を安定化させた。水和の後、実験を開始する前に、各エナメル質ブロックの色を測定した。各溶液タイプに対して2つのエナメル質サンプルを処理した。使用した溶液は、緩衝液のみの対照と、0.1%の過酢酸と、0.52μMのEZ−7(エナメル質結合ドメインを有するC277S、配列番号429)、100mMのトリアセチンおよび32.6mMのH
2O
2を含むペルヒドロラーゼ組成物とであった。全ての溶液は、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中で調製した。各処理点に対して、全ての溶液を新しく調製した。酵素−トリアセチン−H
2O
2の組み合わせは、エナメル質の暴露の直前に混合した。各処理ステップの後に、各エナメル質ブロックを水ですすぎ、色測定を得た。エナメル基質の各セットに対して、30分の処理時間を4回繰り返した。30分の処理後の溶液中の過酢酸の濃度を、ABTS酸化の比色分析検出によって評価した。結果は、表18および19で提供される。
【0427】
【表27】
【0428】
【表28】
【0429】
表18のデータは、標的化酵素−エステル−過酸化物組成物が、1段階プロセスで歯を白くするのに有効であることを確認する。表19のデータは、EZ−7酵素、トリアセチンおよびH
2O
2の組み合わせから過酢酸が生成されることを実証する。
【0430】
実施例14
様々なエステル基質に対してCE−7ペルヒドロラーゼを使用した過酢酸の生成
この実施例の目的は、口腔ケアの特定の条件下で幅広いCE−7ペルヒドロラーゼ(エナメル質を標的とするペルヒドロラーゼを含む)が幅広いエステルからの過酢酸の形成を触媒することを実証することであった。
【0431】
サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼの変異体をクローン化し、組換えで発現し、実施例4に記載される方法と同様に精製した。これらのペルヒドロラーゼ変異体の配列変化は表5に記載される。
【0432】
表5に記載されるペルヒドロラーゼ変異体のうちの少なくとも2つまたはそれ以上に対して、種々のエステル基質を試験した。カスタム合成した3つのエステルを除いて、他のエステルは全て、Sigma−Aldrich(St.Louis,MO)、TCI America(Portland,OR)、Alpha Aesar(Ward Hill,MA)またはTessendlo Company(Phoenix,AZ)から入手した。
【0433】
種々の酵素をエステル基質に対して試験するために、個々の反応の開始を0.5〜1分ずらすことにより4つの反応を同時に実行するのが便利であった。個々の反応は、磁気攪拌子を備えたガラス容器(高さ:76mm、外径:33mm、内径:24mm)において実施した。4つの反応容器をまとめて、Thermo NesLab再循環浴(Model#RTE−7 Digital One)によって制御された循環水を有する被覆された1リットルのステンレス鋼製焼き戻しビーカー(KGW IsoTherm、#TSS−G1000w)において一定の温度に保持した。緩衝液(6mL、100mMのリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2)を各反応容器に添加し、37℃まで平衡化させた。100mMの濃度を達成するように対象のエステル基質を添加した。40ppmの酵素および60mMのH
2O
2(37μL、30%の過酸化水素溶液)を同時に添加することによって反応を開始させた。過酢酸の生成を追跡するために、1〜15分の特定の間隔で各反応からの80μLのサンプルを取り出した。酵素反応を停止させ(pHを2〜3に低下させることにより、便利なHPLC分析のためにサンプルを希釈するのに十分な体積および濃度のリン酸溶液を含有する微量遠心フィルタチューブ(NanoSep 30K VWR cat #82031−354)中で、サンプルを直ちに反応停止させた。酸で反応停止させたサンプルを5分間遠心分離し、あらゆる粒子を除去した。ろ過したらすぐに、米国特許第7,829,315号明細書(DiCosimoら)に既に記載されている方法を用いて、各サンプルセットにおいて過酢酸のKarst反応およびHPLC分析をすぐに実施した。各エステル基質により精製される最大過酢酸は表20に記載される。
【0434】
【表29】
【0435】
【表30】
【0436】
【表31】
【0437】
【表32】
【0438】
表20のデータを得るために使用したものと同じ反応条件下で、標的化C277Sペル
ヒドロラーゼ変異体、EZ−7を用いて、これらのエステル基質を過酢酸の生成について試験した。EZ−7ペルヒドロラーゼ系と共にプロピレングリコールジアセテートまたはスクロースオクタアセテートを用いる過酢酸の生成は表21に示される。表示されるデータは、代替のエステルが、実施例5に記載されるようなペルヒドロラーゼの標的化変異体のために有効な基質であることを実証する。
【0439】
【表33】
【0440】
実施例15
様々なエステル基質に対してCE−7ペルヒドロラーゼを用いる歯の漂白
この実施例の目的は、口腔ケア関連条件下で4つのエステルからの過酢酸の形成を触媒するCE−7ペルヒドロラーゼを用いて歯の漂白効力を実証することであった。
【0441】
この実施例のために、サーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)ペルヒドロラーゼのC277S(EZ−1)変異体をクローン化し、組換えで発現し、実施例4に記載されるように精製した。トリアセチン(Tessendlo Company(Phoenix,AZ))を除いて、基質は全てSigma−Aldrich(St.Louis,MO)から購入した。
【0442】
基質のトリアセチン(TA)、α−D−グルコースペンタアセテート(GPA)、スクロースオクタアセテート(SOC)およびプロピレングリコールジアセテート(PGDA)を用いて、EZ−1(C277S、配列番号424)による酵素仲介の歯のホワイトニングを実証した。各基質による過酢酸の発生のために使用される最適な条件は実施例14における研究から誘導され、以下に記載される:40ppmのEZ−1、100mMの基質、XmMのH
2O
2、95mMのリン酸塩(pH7.2)。ここで、Xは基質の同一性に応じて変わり、100mMのH
2O
2(TA)、360mMのH
2O
2(PGDAおよびSOC)、60mMのH
2O
2(GPA)である。
【0443】
実施例1に示されるようにウシエナメル質切歯を調製した。染色エナメル質ブロックを、象牙質側を下に向けて24ウェルプレート内に入れ、リン酸緩衝液(pH7.2)中で一晩水和させた。処理の前に、Konica−Minolta 2600d分光光度計を用いて各歯の色測定を実施し、実施例1で規定されるように白色度を計算した。
【0444】
各酵素溶液を1.5mLの微量遠心管(Eppendorf,#2243102−1)中で調製し、すぐに、予め水和させた歯を含有する24ウェルプレートに1mLの溶液を移した。対照サンプルは、100mMのリン酸緩衝液(pH7.2)、および100mMのクエン酸/リン酸緩衝液(pH5.3)中9%のH
2O
2で構成した。歯を室温で30分間インキュベートし、100mMのリン酸塩(pH7.2)ですすぎ、色測定を行った。歯を24ウェルプレート内に戻し、その時点で、新しい酵素溶液を調製し、各ウェルに添加した。このプロセスを、1回の処理あたり30分、全部で3回のホワイトニング処理のために繰り返した(表22)。
【0445】
【表34】
【0446】
表22において観察されるように、TA、PGDA、SOCおよびGPAを用いて酵素的に発生された過酢酸サンプルは全て、それぞれの連続処理に関してより正の値へのシフトによって示されるように、白色度の有意な変化を示す。緩衝液対照の白色度の変化はわずかであり、ΔWIは11.4である。これらの測定は、各30分処理の後の歯の目視検査とも一致する。このデータは、EZ−1と共に様々な異なる基質を用いて酵素的に発生された過酢酸が、コーヒー−お茶で染色したウシの歯のホワイトニングにおいて有効であることを実証する。
【0447】
実施例16
2段階適用において過加水分解酵素を用いる歯の漂白効力
この実施例の目的は、2段階適用においてペルヒドロラーゼ系の歯の漂白効力を実証することであった。
【0448】
実施例1に示されるようにウシエナメル質切歯を調製した。染色エナメル質ブロックを象牙質の背面を溶液の暴露から保護するように48ウェルプレート中に埋め込んだ。10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中10μMの各酵素の溶液を調製し、500μLの溶液を各エナメル基質と共に60分間インキュベートした。酵素溶液を除去し、各ウェルを付加的な500μLの緩衝液で3回すすいだ。エナメル質ブロックをホワイトニングプロセスのために新しいウェルに入れた。50mMのリン酸(pH7.2)緩衝液中40mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2の最終濃度の溶液を新しく調製し、500μLの溶液を各エナメル質ブロックに添加した。1時間にわたって、エナメル質ブロックを取り出して色測定を得てから、それぞれをウェルプレート内の溶液に戻した。各サンプルの白色度をモニターした。結果は表23に記載される。
【0449】
【表35】
【0450】
この実施例は、エナメル質の表面で過酢酸の形成を触媒することによって歯を白くするために表面結合ペルヒドロラーゼが使用され得ることを実証する。この実施例における漂白性能は、ヒドロキシアパタイト上で観察される各酵素の保持と相関する。非標的化EZ−1(C277S、配列番号424)はヒドロキシアパタイトおよびエナメル質における弱い保持を示し、従って、2段階プロセスで適切なホワイトニングを達成する可能性は低い。酵素をエナメル質上に保持するために有効な標的配列を付加すると、2段階適用プロセスにおける過酢酸の生成が可能になる。
【0451】
実施例17
2段階適用において過加水分解酵素を用いる歯の漂白効力
この実施例の目的は、2段階適用における標的化および非標的化ペルヒドロラーゼ系の歯の漂白効力を実証することであった。
【0452】
実施例1に示されるようにウシエナメル質切歯を調製した。SILLY PUTTY(登録商標)(Crayola LLC,Easton,PA)をウェルに充填した24−ウェルプレートに象牙質の背面を溶液暴露から保護するように染色エナメル質ブロックを埋め込んだ。10mMのリン酸緩衝液(pH7.2)中20μMの各酵素の溶液を調製し、500μLの酵素溶液を各エナメル質ブロックに添加し、37℃で10分間インキュベートした。次に、毎回付加的な500μLの緩衝液によりエナメル質ブロックを3回すすいだ。エナメル質ブロックを、ホワイトニングプロセスのために新しいパテウェルに移して埋め込んだ。100mMのリン酸緩衝液、100mMのトリアセチン、100mMのH
2O
2(pH7.2)を含有する溶液(200μL)をエナメル質に添加し、37℃で10分間インキュベートした。鉗子を用いてエナメル質ブロックをウェルから取り出し、次にすすぎ、色測定のために1.5mLの水を満たしたウェル内に貯蔵した。2段階プロセスを5回(全部で50分間)繰り返した。2段階プロセス後のコーヒー−お茶で染色したウシエナメル質の色測定の結果は、表24に示した。各サンプルデータ点は、独立したエナメル質ブロックの2回の繰り返しを表す。
【0453】
系内で発生された過酢酸のレベルを測定するために、ABTS法を使用し、90μLの反応混合物を、10μLの停止緩衝液(1.33MのH
3PO
4)を含有する新しいウェルに取り出した。サンプルを100mMのリン酸緩衝液により1:100で希釈し、実施例8に記載されるようにABTS検出試薬に添加した。結果は表25に記載される。各サンプルデータ点は独立したエナメル質ブロックの2回の繰り返しを表す。
【0454】
【表36】
【0455】
【表37】
この実施例は、エナメル質の表面で過酢酸の形成を触媒することによって歯を白くするために表面結合ペルヒドロラーゼが使用され得ることを実証する。ウシエナメル質を用いるこの実施例における漂白性能は、ヒドロキシアパタイト上で観察される各酵素の保持と相関する。非標的化EZ−1(C277S)は、ヒドロキシアパタイトおよびエナメル質における弱い保持を示し、従って、2段階プロセスで適切なホワイトニングを達成する可能性は低い。酵素をエナメル質上に保持するために有効な標的配列を付加すると、2段階適用プロセスにおける過酢酸の生成が可能になる。
【0456】
以上、本発明を要約すると下記のとおりである。
1.1)a)i)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6
=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中溶解度を有するエステル、
ii)構造
【化17】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
iii)式
【化18】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたはそれより多いエステル、および
iv)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
b)過酸素源と、
c)ペルヒドロリシス活性を有する酵素触媒であって、該酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、該シグネチャーモチーフが、
i)配列番号2の位置118〜120に対応する位置のRGQモチーフと、
ii)配列番号2の位置179〜183に対応する位置のGXSQGモチーフと、
iii)配列番号2の位置298〜299に対応する位置のHEモチーフと
を含む酵素触媒と
を含む反応成分のセットを備え付けるステップと、
2)(1)の反応成分を適切な反応条件下で組み合わせるステップで、それにより、少なくとも1つの過酸が酵素的に生成される、該ステップと、
3)口腔表面を少なくとも1つの過酸と接触させる工程で、それにより、口腔表面が、漂白、歯のホワイトニング、消毒、脱染、脱臭、バイオフィルムの低減または除去、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される過酸ベースの利益を受けるステップと
を含む方法。
2.反応成分が口腔内で組み合わせられる、上記1に記載の方法。
3.反応成分が口腔表面との接触の前に口腔の外側で組み合わせられる、上記1に記載の方法。
4.ペルヒドロリシス活性を有する酵素が過酸有益剤の生成よりも前に口腔内に存在する、上記1に記載の方法。
5.1)a)i)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中溶解度を有するエステル、
ii)構造
【化19】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
iii)式
【化20】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)、
の1つまたはそれより多いエステル、および
iv)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
b)過酸素源と、
c)ペルヒドロリシス活性を有する酵素触媒であって、以下の一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
(式中、PAHは、ペルヒドロリシス活性を有する酵素であり、
OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さの任意選択的なペプチドリンカーであり、
yは0または1である)
を有する融合タンパク質を含む酵素触媒と
を含む反応成分のセットを備え付けるステップと、
2)(1)の反応成分を適切な反応条件下で組み合わせ、それにより、少なくとも1つの過酸が酵素的に生成されるステップと、
3)口腔表面を少なくとも1つの過酸と接触させ、それにより、口腔表面が、漂白、歯のホワイトニング、消毒、脱染、脱臭、バイオフィルムの低減または除去、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される過酸ベースの利益を受けるステップと
を含む方法。
6.ペルヒドロリシス活性を有する酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼ、およびこれらの組み合わせの群から選択される、上記5に記載の方法。
7.炭水化物エステラーゼが、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有するCE−7炭水化物エステラーゼであり、該シグネチャーモチーフが、
1)配列番号2の位置118〜120に対応する位置のRGQモチーフと、
2)配列番号2の位置179〜183に対応する位置のGXSQGモチーフと、
3)配列番号2の位置298〜299に対応する位置のHEモチーフと
を含む、上記6に記載の方法。
8.口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分が、抗体、F
ab抗体断片、単鎖可変断片(scFv)抗体、ラクダ科抗体、スカフォールドディスプレイタンパク質または免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ポリペプチドである、上記5〜7のいずれかに記載の方法。
9.口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分が免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ポリペプチドである、上記6に記載の方法。
10.単鎖ポリペプチドが、5〜60の範囲のアミノ酸長さであり、口腔表面に対して10
−5M以下のK
D値またはMB
50値を有する少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含む、上記9に記載の方法。
11.単鎖ポリペプチドが2〜50の口腔表面結合ペプチドを含み、口腔表面結合ペプチドが、独立してそして場合により、1〜100の範囲のアミノ酸長さのポリペプチドスペーサーによって分離されていてもよい、上記10に記載の方法。
12.口腔表面が歯の表面である、上記1または5に記載の方法。
13.歯の表面が、歯のエナメル質、歯のペリクルまたはこれらの組み合わせを含む、上記12に記載の方法。
14.口腔表面結合ペプチドが歯エナメル質結合ペプチドである、上記10に記載の方法。
15.口腔表面結合ペプチドが歯ペリクル結合ペプチドである、上記10に記載の方法。16.口腔表面結合ペプチドが皮膚結合ペプチドである、上記10に記載の方法。
17.反応成分のセットを組み合わせてから5分以内に、過酸が500ppb〜10,000ppmの濃度で生成される、上記1または5に記載の方法。
18.過酸を1時間未満の間、口腔ケア表面と接触させる、上記17に記載の方法。
19.過酸が過酢酸である、上記1または5に記載の方法。
20.反応成分を組み合わせてから5分以内に、有効濃度の過酢酸を酵素的に生成させて口腔表面と接触させる、上記19に記載の方法。
21.基質がトリアセチンを含む、上記1または5に記載の方法。
22.以下の一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
(式中、
1)PAHは、ペルヒドロリシス活性を有する酵素であり、
2)OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
3)Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さのペプチドリンカーであり、
4)yは0または1である)
を含む融合タンパク質。
23.ペルヒドロリシス活性を有する酵素が、リパーゼ、プロテアーゼ、エステラーゼ、アシルトランスフェラーゼ、アリールエステラーゼ、炭水化物エステラーゼ、およびこれらの組み合わせの群から選択される、上記22に記載の融合タンパク質。
24.酵素が、ペルヒドロリシス活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼであり、PAHが、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有し、該シグネチャーモチーフが、
1)配列番号2の位置118〜120に対応する位置のRGQモチーフと、
2)配列番号2の位置179〜183に対応する位置のGXSQGモチーフと、
3)配列番号2の位置298〜299に対応する位置のHEモチーフと
を含む、上記23に記載の融合タンパク質。
25.ペルヒドロリシス活性を有する酵素がマイコバクテリウム・スメグマチス(Mycobacterium smegmatis)からのアリールエステラーゼである、上記23に記載の融合タンパク質。
26.口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分が免疫グロブリンの折り畳みを欠いた単鎖ポリペプチドである、上記23〜25のいずれかに記載の融合タンパク質。
27.単鎖ポリペプチドが5〜60の範囲のアミノ酸長さの少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドを含む、上記26に記載の融合タンパク質。
28.少なくとも1つの口腔表面結合ペプチドが10
−5M以下のK
D値またはMB
50値を有する、上記27に記載の融合タンパク質。
29.単鎖ポリペプチドが、2〜50の口腔表面結合ペプチドを含み、口腔表面結合ペプチドが、独立してそして場合により、1〜100の範囲のアミノ酸長さのポリペプチドスペーサーによって分離されていてもよい、上記26に記載の融合タンパク質。
30.口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分が200以下のアミノ酸長さを含む、上記22〜25のいずれかに記載の融合タンパク質。
31.1)上記23に記載の融合タンパク質を含む酵素触媒と、
2)a)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
Mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中溶解度を有するエステル、
b)構造
【化21】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
c)式
【化22】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたはそれより多いエステル、および
c)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
3)過酸素源と、
4)経口的に許容可能なキャリア媒体と
を含む口腔ケア製品。
32.1)ペルヒドロリシス活性を有する酵素触媒であって、該酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、該シグネチャーモチーフが、
a)配列番号2の位置118〜120に対応する位置のRGQモチーフと、
b)配列番号2の位置179〜183に対応する位置のGXSQGモチーフと、
c)配列番号2の位置298〜299に対応する位置のHEモチーフと
を含む酵素触媒と、
2)a)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
Mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中溶解度を有するエステル、
b)構造
【化23】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
c)式
【化24】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(CH
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたはそれより多いエステル、および
d)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
3)過酸素源と、
4)経口的に許容可能なキャリア媒体と
を含む口腔ケア製品。
33.ペルヒドロリシス活性を有する酵素が上記22に記載の融合タンパク質である、上記32に記載の口腔ケア製品。
34.第2の部分が、少なくとも1つの歯エナメル質結合ペプチドまたは歯ペリクル結合ペプチドを含む単鎖ペプチドである、上記33に記載の口腔ケア製品。
35.少なくとも1つの歯エナメル質結合ペプチドまたは歯ペリクル結合ペプチドが5〜60の範囲のアミノ酸長さである、上記34に記載の口腔ケア製品。
36.口腔ケア製品が、粉末剤、ペースト剤、ゲル剤、液剤、軟膏剤、錠剤、リンス剤またはこれらの任意の組み合わせの形態である、上記31〜35のいずれかに記載の口腔ケア製品。
37.口腔ケア製品が、歯磨きペースト、練歯磨、歯磨きゲル、歯磨き粉、マウスウォッシュ、口臭清涼剤、ストリップまたはデンタルフロスである、上記36に記載の口腔ケア製品。
38.口腔ケア製品がホワイトニングストリップまたはデンタルトレイの形態である、上記36に記載の口腔ケア製品。
39.口腔ケア製品の使用前は、酵素触媒が、基質、過酸素源または基質および過酸素源の両方から分離されたままである、上記31または32に記載の口腔ケア製品。
40.配列番号399、400、401、402、403、404、405、406、4
07、408、409、410、412、413、414、415、416、417、418、419、420、421、および422からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する、口腔表面に対する親和性を有する単離ポリペプチド。
41.口腔ケア製品において、有効濃度の少なくとも1つの過酸を生成して、口腔表面を漂白、ホワイトニング、消毒、脱染、脱臭する、あるいは口腔表面からバイオフィルムを除去するための、ペルヒドロリシス活性を有するCE−7炭水化物エステラーゼの使用。42.1)ペルヒドロリシス活性を有する酵素触媒であって、該酵素触媒が、CLUSTALWを用いたときに参照配列の配列番号2とアラインするCE−7シグネチャーモチーフを有する酵素を含み、該シグネチャーモチーフが、
a)配列番号2の位置118〜120に対応する位置のRGQモチーフと、
b)配列番号2の位置179〜183に対応する位置のGXSQGモチーフと、
c)配列番号2の位置298〜299に対応する位置のHEモチーフと
を含む酵素触媒と、
2)a)構造
[X]
mR
5
(式中、X=式R
6C(O)Oのエステル基であり、
R
6=場合によりヒドロキシル基またはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7線状、分枝状または環状ヒドロカルビル部分であり、ここで、R
6=C2〜C7の場合には、R
6は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
R
5=場合によりヒドロキシル基によって置換されていてもよい、C1〜C6線状、分枝状、もしくは環状ヒドロカルビル部分または5員環状ヘテロ芳香族部分または6員環状芳香族もしくはヘテロ芳香族部分であり、ここで、R
5中の各炭素原子は個々に、1個以下のヒドロキシル基または1個以下のエステル基もしくはカルボン酸基を含み、R
5は場合により1つまたはそれより多いエーテル結合を含んでいてもよく、
Mは、1からR
5中の炭素原子の数までの範囲の整数である)
を有し、25℃において少なくとも5ppmの水中溶解度を有するエステル、
b)構造
【化25】
(式中、R
1=場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
3およびR
4は個々に、HまたはR
1C(O)である)
を有するグリセリド、
c)式
【化26】
(式中、R
1は、場合によりヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基によって置換されていてもよい、C1〜C7直鎖または分枝鎖アルキルであり、R
2は、C1〜C10直鎖または分枝鎖アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルキルアリール、アルキルヘテロアリール、ヘテロアリール、(CH
2CH
2O)
n、または(CH
2CH(C
H
3)−O)
nHであり、nは1〜10である)
の1つまたはそれより多いエステル、および
d)アセチル化単糖類、アセチル化二糖類、およびアセチル化多糖類からなる群から選択されるアセチル化糖類
からなる群から選択される少なくとも1つの基質と、
3)過酸素源と
を含み、(1)、(2)、および(3)を混合したときに過酸が形成される過酸発生組成物の、う歯、歯肉炎、口腔カンジダ症、または歯周炎の処置または予防のための使用。
43.ペルヒドロリシス活性を有する酵素が、口腔表面に対する親和性を有する少なくとも1つの部分を含む融合タンパク質の形態である、上記41に記載の使用。
44.以下の一般構造:
PAH−[L]
y−OCBD
または
OCBD−[L]
y−PAH
(式中、
1)PAHは、配列番号460に対して少なくとも95%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を有する、ペルヒドロリシス活性を有する酵素であり、
2)OCBDは、口腔表面に対する親和性を有するペプチド成分であり、
3)Lは、1〜100の範囲のアミノ酸長さのペプチドリンカーであり、
4)yは0または1である)
を含む融合タンパク質の口腔製品における使用。