特許第6359867号(P6359867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359867
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ミシンの水平回転釜
(51)【国際特許分類】
   D05B 57/14 20060101AFI20180709BHJP
   D05B 57/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   D05B57/14 B
   D05B57/20
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-90424(P2014-90424)
(22)【出願日】2014年4月24日
(65)【公開番号】特開2015-208400(P2015-208400A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2017年4月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】小池 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】長内 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小宮 靖彦
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−094905(JP,A)
【文献】 特開2010−115376(JP,A)
【文献】 特開2006−141800(JP,A)
【文献】 特開2005−034383(JP,A)
【文献】 特開2003−236278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の吸着部材を外側下面部に備えた内釜と、該内釜を吸引する永久磁石と、該永久磁石を収納する径の中心位置に装着のための孔を設けたマグネット台板と、該マグネット台板を収納する収納凹部を有し、内側底部の径の中心位置に軸孔を有する非金属性の外釜と、前記マグネット台板の孔に挿入すると共に前記外釜の軸孔に挿入して前記外釜と前記マグネット台板を回転自在に軸支するため上端部にフランジ部を有した釜支持軸とを具備し、前記マグネット台板は、前記収納凹部に対して係止固定するための部材を具備せず、前記マグネット台板の主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定され、前記マグネット台板は前記外釜の回転と共に回転することを特徴とするミシンの水平回転釜。
【請求項2】
前記釜支持軸のフランジ部と前記マグネット台板の間に摩擦係数を低減するための低摩擦部材が配置されて、前記マグネット台板の前記主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの水平回転釜。
【請求項3】
前記釜支持軸のフランジ部と前記マグネット台板の間の摩擦係数を低減するための表面処理をフランジ部に施して前記マグネット台板の前記主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定されたことを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載のミシンの水平回転釜。
【請求項4】
前記釜支持軸のフランジ部と前記マグネット台板の間の摩擦係数を低減するための表面処理を前記マグネット台板の前記フランジ部が当接する面に施して前記マグネット台板の前記主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1に記載のミシンの水平回転釜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
底部に金属板を有する内釜を、外釜に内装させるための永久磁石を外釜底部に固定するための構成を備えると共に極めて簡単な構成にできるミシンの水平回転釜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般のミシンでは、ボビンを収納するための水平釜装置が備わっている。水平釜装置は、外釜と内釜とからなり、外釜下端面には歯車軸部が一体的に取り付けられており、歯車軸部に係合する下軸に装着固定された歯車により、下軸の回転と共に外釜が回転させられるようになっている。
【0003】
縫い作業が行われているときには、外釜内に収納された内釜がふらついたり、不規則に乱れた動作を行う状態となる場合があり、このように内釜の不規則な動きは、騒音の発生や縫い調子にも影響を及ぼす。そのための対策として、磁石を用いて、縫製中の外釜に収納された内釜の浮きを規制する構成が種々存在し、具体的な内容が開示されたものとして特許文献1が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−94905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、外釜内における内釜を極めて安定した状態にすることができるようになり、内釜の不規則な動作による種々の問題が解決された。ところで外釜は、それ自体が磁性体材料である金属製とした場合には、内釜を磁力による吸引にて固定する構成は容易にできるが、近年では、コストなどの問題等から外釜の材料が非磁性体材料の合成樹脂製が多く使用されるようになった。そのために、磁石を合成樹脂製の外釜の底面に固着するには、接着剤や粘着テープ等が使用されるようになった。
【0006】
しかし、接着剤や粘着テープにより固定する手段では、磁石と内釜との接着を良好にするために、相互の接着面に対して汚れを除去したり、外釜の底面に付着した汚れを取り除き、さらには油分を除去する脱脂処理が必要である。このような処理が念入りに行われなければ、接着剤による接着性は弱くなり、ミシンの稼動時において、外釜の底面から磁石が外れてしまうおそれが十分にある。ところが、前述したような外釜の底面の汚れの除去や、油分の除去(脱脂処理)によって、作業工程が増え、しかもその作業性は悪く、組み付け作業は煩雑となるにいたった。
【0007】
そこで、特許文献1では、外釜の底部に磁性体からなるヨーク部材が装着され、該ヨーク部材にマグネット片を吸着固定させる構成としている。ところで、ヨーク部材は皿形状のものであり、円形状の周壁部を備えたものである。この周壁部は、周方向に連続して形成されたものではなく、周壁部の一部を等間隔となるように切り欠いて、複数の突起部を形成し、該突起部が外釜のリブ片に係合し、ヨーク部材が外釜と空転することなく、安定した状態で固定できるようにしている〔図5(A)参照〕。
【0008】
ところが、前記ヨーク部材の突起部によって形成された周壁部の切欠き部や、突起部とリブ片との係合箇所に、ボビンの糸nが引っ掛かり易くなり〔図5(B)参照〕、ミシンの縫い作業において支障が生じるおそれがある(図5参照)。また、ヨーク部材に、突起部等を形成するために、ヨーク部材の製造工程が増えて、単価が上昇することもある。
【0009】
さらにヨーク部材の周壁部に切欠きが形成されることで、ヨーク部材に内装されるマグネット片の磁力も強力にならないという欠点も存在する。本発明が解決しようとする技術的課題(目的)は、複数の突起部による回転止めによらず極めて簡単な構造にて、外釜に永久磁石を固定するための固定台座を安定した状態で外釜に対して固定し且つボビンから引き出される糸が釜内で引っ掛かることを防止することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、本発明を請求項1の発明を、金属製の吸着部材を外側下面部に備えた内釜と、該内釜を吸引する永久磁石と、該永久磁石を収納する径の中心位置に装着のための孔を設けたマグネット台板と、該マグネット台板を収納する収納凹部を有し、内側底部の径の中心位置に軸孔を有する非金属性の外釜と、前記マグネット台板の孔に挿入すると共に前記外釜の軸孔に挿入して前記外釜と前記マグネット台板を回転自在に軸支するため上端部にフランジ部を有した釜支持軸とを具備し、前記マグネット台板は、前記収納凹部に対して係止固定するための部材を具備せず、前記マグネット台板の主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定され、前記マグネット台板は前記外釜の回転と共に回転するミシンの水平回転釜としたことにより、上記課題を解決した。
【0011】
請求項2の発明を、前記釜支持軸のフランジ部と前記マグネット台板の間に摩擦係数を低減するための低摩擦部材が配置されて、前記マグネット台板の前記主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定された請求項1に記載のミシンの水平回転釜としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項3の発明を、前記釜支持軸のフランジ部と前記マグネット台板の間の摩擦係数を低減するための表面処理をフランジ部に施して前記マグネット台板の前記主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定された請求項1に記載のミシンの水平回転釜としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項4の発明を、前記釜支持軸のフランジ部と前記マグネット台板の間の摩擦係数を低減するための表面処理を前記マグネット台板の前記フランジ部が当接する面に施して前記マグネット台板の前記主板部と前記外釜の前記収納凹部の底面との間の摩擦係数を、前記マグネット台板の前記主板部と前記釜支持軸の前記フランジ部との間の摩擦係数よりも大きく設定された請求項1に記載のミシンの水平回転釜としたことにより、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明では、外釜の底部の下端面(収納凹部の底面)とマグネット台板との間の摩擦抵抗力は、釜支持軸のフランジ部とマグネット台板との間の摩擦抵抗力よりも大きく設定し、摩擦抵抗力の差を設けたものである。したがって、マグネット台板は、外釜の回転と共に回転する。
【0015】
これによって、マグネット台板は、単なる円形状にすることができ、外釜の底部(又は底部に形成された収納凹部)に対して係止固定するための部材を具備することなく、マグネット台板は、外釜の底部に周方向に固定することができる。さらに、マグネット台板は、外釜と共に回転することができ、永久磁石も外釜と共に回転することができる。
【0016】
そのために、マグネット台板及び永久磁石は、外釜に対して極めて安定した状態で固定され、外釜が回転動作している際に、マグネット台板及び永久磁石には、ガタツキが生じないようにすることができる。よって、外釜に安定した状態で装着された永久磁石によって、内釜も極めて安定した状態で外釜に装着され、ガタツキの発生を防止できる。
【0017】
さらに、マグネット台板と、外釜の底部との間には、相互に係止,嵌合固定するための突起物,切欠き或いは窪み等が存在しない。したがって内釜に内装されたボビンの上糸がミシンの縫い作動中に外釜内部で引っ掛かり縫い作業に支障をきたすことを防止できる。
【0018】
請求項2,請求項3及び請求項4の発明では、極めて簡単な構成により、摩擦抵抗力の差を設けて、マグネット台板を、外釜と共に回転することができ、永久磁石も外釜と共に回転する構成にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は本発明の第1実施形態のマグネット台板を備えた縦断側面図、(B)は本発明における水平釜の分解した斜視図、(C)は(A)の(α)部拡大図である。
図2】(A)は本発明において外釜,マグネット台板,釜支持軸及び永久磁石を分解した状態の要部拡大縦断側面図、(B)は(A)の(β)部拡大図である。
図3】本発明において外釜の底部に上糸が引っ掛からない状態を示す斜視図。
図4】(A)は本発明の第2実施形態のマグネット台板を備えた要部拡大縦断側面図、(B)は突出条が形成されない収納凹部にマグネット台板を載置した実施形態の要部拡大縦断側面図である。
図5】(A)は従来技術において上糸が低部に引っ掛かる状態の斜視図、(B)は(A)の(γ)部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明における水平釜は、主に、図1図2及び図3に示すように、外釜Aと,マグネット台板2と、釜支持軸3と、永久磁石5と、内釜Bとから構成される。前記外釜Aは、主に外釜本体部1、歯車軸部15等から構成されている(図1参照)。
【0021】
前記歯車軸部15は、前記外釜本体部1に一体的に取り付けられており、歯車軸部15に噛合する(図示しない)駆動歯車によって、外釜Aが回転させられるようになっている。前記外釜本体部1は、扁平円筒カップ形状に形成され、材質はプラスチック等の合成樹脂である。外釜本体部1の上部は、開口が設けられ、下部は底部11が形成されている。該底部11は、略円形状である〔図1(A)参照〕。
【0022】
底部11には、収納凹部13が形成されている(図1参照)。該収納凹部13は、前記底部11を構成する一部で、底部11の一部に含まれるものである。そして、収納凹部13は、前記底部11の中心箇所を直径中心として形成された、扁平且つ円周形状のスペースであり、マグネット台板2及び永久磁石5が収容される部位である。前記収納凹部13の平面形状は、マグネット台板2及び永久磁石5の外周形状と略同等の内周側壁面13bを有する扁平円筒形状の凹部である。また該収納凹部13の底面13aは平坦状に形成されている。
【0023】
収納凹部13の円形状に連続する内周側壁面13bが形成され、該内周側壁面13bに沿って低部11の上方に突出条13cが形成されている(図1図2参照)。該突出条13cは、周方向に連続する環形状の盛上り部分である。さらに、該突出条13cの外周形状は扁平円錐形状に形成されている。収納凹部13は、底面13aと内周側壁面13bのみで、前記突出条13cが形成されない実施形態も存在する〔図4(B)参照〕。
【0024】
底部11の中心には、軸孔12が形成されている。該軸孔12の形成位置は、前記収納凹部13の直径中心とも一致する。軸孔12は、後述する釜支持軸3が貫通する部位である。底部11の下面側には、歯車軸部15が形成されている。該歯車軸部15には、外周に螺子状等の歯車が形成された軸状の部材であり、前記底部11に対して直角に形成されている。
【0025】
また、前記軸孔12は、歯車軸部15の軸芯に沿って形成されたものであり、したがって歯車軸部15は中空管状のものである。収納凹部13の内周側壁面13bの底面13aからの高さは、前記突出条13cの頂部までの高さを含む。また、突出条13cは、形成されず、収納凹部13は前記底部11に対して単に扁平円筒状の凹部として形成される実施形態も存在する〔図4(B)参照〕。
【0026】
マグネット台板2は、複数の実施形態が存在し、盆(扁平円筒カップ)形状に形成されたもので、該マグネット台板2の底となる主板部21の外周に沿って立上り部22が形成されている〔図1図2(A),図4(B)等参照〕。
【0027】
マグネット台板2の外径は、収納凹部13の内径よりも僅かに小さく、マグネット台板2の外径と、収納凹部13の内径との間に僅かな隙間を有する程度の大小関係を有している。マグネット台板2の主板部21の直径中心位置には、軸孔23が形成されている。そして、マグネット台板2を収納凹部13に挿入配置した状態で、マグネット台板2の軸孔23の位置は、外釜Aの軸孔12の位置と一致する。マグネット台板2の第2実施形態としては、主板部21のみから形成されたものも存在する〔図4(A)参照〕。
【0028】
釜支持軸3は、支持軸部31とフランジ部32とから構成され、支持軸部31の軸端にフランジ部32が形成される。該フランジ部32は、支持軸部31の直径よりも大きな直径を有する円板形状に形成されている。釜支持軸3の支持軸部31は、マグネット台板2の軸孔23と外釜Aの軸孔12に挿通し、フランジ部32は前記マグネット台板2の主板部21の軸孔23周辺に当接する。さらに、前記フランジ部32における軸孔23の周辺と当接する当接面には、摩擦抵抗を低減する表面(加工)処理が施されることもある。
【0029】
このようにして、前記マグネット台板2の前記外釜Aとの当接面の摩擦係数を、前記釜支持軸3のフランジ部32の摩擦係数より大きくし、マグネット台板2の外釜Aとの当接部分と、マグネット台板2とフランジ部32との当接部分との間に摩擦抵抗力の差を設け、マグネット台板2が外釜Aと共に回転するようにしたものである。
【0030】
前記フランジ部32と、前記マグネット台板2の主板部21との間には、摩擦抵抗を低減するための低摩擦部材4が配置されることもある。低摩擦部材4は、具体的には両面に摩擦抵抗を低減する表面(加工)処理が施されたワッシャ41が使用される。また、フッ素樹脂やポリアセタール等の低摩擦係数の樹脂製のワッシャ41やシートを使用することも可能である。
【0031】
永久磁石5は、扁平環板状に形成され、前記マグネット台板2に吸着して外釜Aの収納凹部13に配置される。永久磁石5は、鉄材等の金属材或いはゴム材にて形成されている。永久磁石5の中心は貫通孔51が存在する。該貫通孔51の内径は、前記釜支持軸3のフランジ部32の外径よりも大きく形成され、フランジ部32は貫通孔51内に収まる構成となっている。また、永久磁石5の外周はマグネット台板2の立上り部22内に収まる外径となっている。
【0032】
前記内釜Bは、容器形状の容器本体部6と被吸着部材7とから構成されている。その内部はボビン室となっている。内釜Bの容器本体部6の下面部、すなわち底面部61には磁性体の材料からなる被吸着部材7が設けられている。前記容器本体部6は、プラスチック等の合成樹脂によって形成されている。前記被吸着部材7は、具体的には金属薄板材から形成されたものである。該被吸着部材7は、前記内釜Bの下面部側に露出するようにして設けられている。
【0033】
前記被吸着部材7は、前記内釜Bの下面部側、すなわち、前記容器本体部6の底面部61の下面側(すなわち内釜Bの下面)に位置するようにして設けられるものである。具体的には、前記被吸着部材7が内釜Bの底面部61と略同等の役目をなして形成されることもある。
【0034】
この場合には、該底面部61の中央箇所が略円形状に貫通され、この貫通した孔を塞ぐようにして被吸着部材7が装着される。該被吸着部材7は、前記容器本体部6に対して樹脂鋳込みにより装着される。さらに前記底面部61は、前記容器本体部6の底部を完全に覆うものとし、前記底面部61の下面側に前記被吸着部材7がその一面が露出するようにして埋め込み形成されることもある。
【0035】
次に、本発明における水平釜を組付けについて説明する。外釜Aでは、前述したように底部11に収納凹部13が形成されており、該収納凹部13にマグネット台板2が配置される。該マグネット台板2の外周、又は立上り部22が形成されている場合には該立上り部22と、収納凹部13のとの間には、隙間が生じるように構成されている。したがって、マグネット台板2は、収納凹部13内に簡単に挿入配置することができる。
【0036】
収納凹部13にマグネット台板2が収納された状態で、釜支持軸3の支持軸部31がマグネット台板2の軸孔23と、外釜Aの軸孔12に挿入され、釜支持軸3は、ミシン本体の所定位置に固定される。外釜Aは、釜支持軸3を回転中心として回動自在な構成となる。そして、外釜Aの底部11に形成された収納凹部13の底面13aと、マグネット台板2との間の摩擦抵抗力P1を、前記釜支持軸3のフランジ部32と前記マグネット台板2との間の摩擦抵抗力P2よりも大きく設定されている。
すなわち、
となる。
【0037】
つまり、マグネット台板2は外釜Aの回転に引き摺られ易い構造である。これによって、マグネット台板2は、外釜Aが回転するときには、底部11と共にマグネット台板2が回転する。そして、フランジ部32とマグネット台板2との間には、滑りが生じるものである。このように、マグネット台板2は、外釜Aの回転と共に回転し、マグネット台板2に吸着された永久磁石5も外釜Aと同等の回転速度で回転することができる。
【0038】
前述したように、前記釜支持軸3のフランジ部32と、前記マグネット台板2との間の摩擦抵抗力P2が、外釜Aの底部11に形成された収納凹部13の底面13aと、マグネット台板2との間の摩擦抵抗力P1よりも小さく設定されるためには、以下のような構成とする。
【0039】
まず、マグネット台板2の主板部21の下面側の摩擦係数をμ1とし、上面側の摩擦係数をμ2とし、摩擦係数μ1は摩擦係数μ2よりも大きくなるようにする。
すなわち、
となる。
【0040】
具体的には、主板部21の下面側を粗い面とし、上面を滑らかな面とする。或いは、マグネット台板2の主板部21の上下両面を同一の平坦面とし、収納凹部13の底面13aを粗い面とし、フランジ部32の下面を滑らかな面とする。
【0041】
これによって、前述したように、前記外釜Aの底部11に形成された収納凹部13の底面13aとマグネット台板2との間の摩擦抵抗力P1が、前記釜支持軸3のフランジ部32と前記マグネット台板2との間の摩擦抵抗力P2よりも大きく設定されるように、摩擦抵抗力の差を設けたことにより、マグネット台板2は、外釜Aの回転と共に回転する。
【0042】
また、釜支持軸3のフランジ部32と、マグネット台板2の主板部21との間には、低摩擦部材4として合成樹脂製のワッシャ41が配置され、該ワッシャ41を介してフランジ部32とマグネット台板2との間の摩擦抵抗力P2を、収納凹部13の底面13aと、マグネット台板2との間の摩擦抵抗力よりも小さく設定することもある。
【0043】
このように、マグネット台板2は、単なる円形状とし、収納凹部13に対して係止固定するための部材を具備することなく、収納凹部13に挿入配置された状態で周方向に固定することができる。これによって、マグネット台板2は、外釜Aと共に回転することができ、永久磁石5も外釜Aと共に回転することができる。
【0044】
そのために、マグネット台板2及び永久磁石5は、外釜Aに対して極めて安定した状態で固定され、外釜Aが回転動作している際に、マグネット台板2及び永久磁石5には、ガタツキが生じないようにすることができる。したがって、外釜Aに安定した状態で装着された永久磁石5によって、内釜Bも極めて安定した状態で外釜Aに装着され、ガタツキの発生を防止できる。
【0045】
さらに、前述したように、マグネット台板2及び収納凹部13には、相互に係止,嵌合固定するための突起物,切欠き或いは窪み等が存在しない。したがって、内釜Bに内装されたボビンの上糸nがミシンの縫い作動中に外釜A内部で引っ掛かり縫い作業に支障をきたすことを防止できる。
【符号の説明】
【0046】
A…外釜、B…内釜、12…軸孔、2…マグネット台板、23…孔、3…釜支持軸、
32…フランジ部、4…低摩擦部材、5…永久磁石、7…吸着部材。
図1
図2
図3
図4
図5