(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359918
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】果菜用簡易ハウス
(51)【国際特許分類】
A01G 13/04 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
A01G13/04
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-168142(P2014-168142)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-42811(P2016-42811A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】504154894
【氏名又は名称】中川原 秀己
(74)【代理人】
【識別番号】100139206
【弁理士】
【氏名又は名称】戸塚 朋之
(74)【代理人】
【識別番号】100094488
【弁理士】
【氏名又は名称】平石 利子
(72)【発明者】
【氏名】中川原 秀己
【審査官】
門 良成
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−205904(JP,A)
【文献】
特開昭61−081446(JP,A)
【文献】
特開2010−075101(JP,A)
【文献】
特開2012−024024(JP,A)
【文献】
特開平08−000107(JP,A)
【文献】
特開平04−058832(JP,A)
【文献】
国際公開第2004/028241(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 13/00
A01G 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三角以上の多角形、円形または、楕円形の合成樹脂製シートの一端から中心に向けて切り込みを設け、該切り込みの両サイド近傍部に固定手段を設け、
前記合成樹脂製シートの周縁の少なくとも一部に、該シート同志を結合する固定手段を設けてなることを特徴とする果菜用簡易ハウス。
【請求項2】
合成樹脂製シートが、厚さ0.09〜0.17mmで、全光線透過率85〜93%、散乱光率38〜48%、保湿率88〜93%であることを特徴とする請求項1記載の果菜用簡易ハウス。
【請求項3】
合成樹脂シートの少なくとも一部に、紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムを積層してなることを特徴とする請求項1又は2記載の果菜用簡易ハウス。
【請求項4】
紫外線及び/又は赤外線遮蔽シートが、合成樹脂製シートの周縁の少なくとも一部に設けられた該シート同志を結合する固定手段を使用して、着脱自在に積層されることを特徴とする請求項3記載の果菜用簡易ハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜や草花等用の簡易ハウスに関し、特に、高価な資材はもとより、人手や期間を要する煩雑な施工が不要であり、また広い設置面積も不要であって、高齢者をはじめ、未熟者や素人であっても極めて容易に、しかも必要とするときに何時でも何処にでも、取り付けることができる果菜や草花等の栽培に適した簡易ハウスに関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ビニルハウスは、一般に、広大な敷地に、金属製のパイプや板状体からなる骨材をハウス状に組み立てて骨組みを作り、該骨組みに沿って合成樹脂シート(フィルム)を張設したものが多数知られている(例えば、特開2010−68780等)。
また、近年、簡易なビニルハウスの要請が高まり、上記合成樹脂シートの固定手段が改良されたり、該シートの風によるばたつきを防止するための手段が工夫されたりしている(例えば、特開2005−176654等)。
これらの他にも、温度制御システムが組み込まれた農業用ビニルハウス(特開2011−205948等)や、骨組みに改良が施されたハウス(特開2012−23969等)が知られている。
【0003】
これら従来の農業用ハウスは、いずれも大がかりな設備であり、膨大な資材はもとより、広大な敷地が必要であり、勿論、専門の設備組立業者により、長期間を要して組み立てられ、資金も膨大となる。
【0004】
一方、果菜、例えばトマトを路地で栽培するに際して、実が生育しつつある途上で、そのままの状態(紫外線の照射を直接受けるなどの状態)にすると、ヘタから割れが発生し、この割れ(いわゆる“ヘタ割れ”)は、実の表面を経てヘタの反対側にまで及んだり、ときには実の内側深部にまで及ぶこともあり、トマトの実の外観を阻害するのみならず、この割れから病原菌が繁殖したり害虫が実内部に入り込むなどの重大な被害が発生する。このような被害が無くても、トマトの皮が硬くなったり、色やけが発生するなどの弊害が生じることもある。
また、例えば、ブドウ、ナシ、リンゴ、メロン等の果物にあっては、実の生育途上で害虫や野鳥の食害がある。
【0005】
これらを防ぐために、前記した農業用ハウスを建設する資金が無い場合等においては、従来から、紙やプラスチックフィルム(シート)を袋状に加工したものを果菜の実に被せることが、広く行われて来た。
但し、近年、このような袋の製造・販売は一般には行われておらず、使用したい場合には、自ら作成し、かつ果菜の1つずつに被せる作業を余儀なくされている。
【0006】
また、一旦、袋を被せてしまうと、上記のような弊害は排除できるものの、例えば、花が咲いた状態で袋を被せる作業を行ってしまうと、虫による受粉は一切不可能になり、人の手のよる受粉を、しかも折角被せた袋を外して行い、受粉後には再度袋の被せ作業を行わねばならず、厄介な手間が掛かることとなる。従って、袋を被せて上記の害を防ぐ場合は、実がある程度生育した状態で行わねばならず、場合によっては、既に病原菌が侵入した後や、害虫の卵が産みつけられた後に袋被せ作業を行うこととなり、袋を被せた状態であっても害虫や病原菌による被害を受けることとなる。
しかも、プラスチック袋の場合は、袋内でムレが発生し、害虫や病原菌の生育を却って助長することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−68780
【特許文献2】特開特開2005−176654
【特許文献3】特開2011−205948
【特許文献4】特開2012−23969
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の農業用ハウスにおける問題はもとより、古くから行われてきた袋被せにある問題を悉く解決し、低コストで、簡易な操作により、誰でも、必要とするときに何時でも何処にでも、取り付けることができる果菜や草花等の栽培に適した簡易ハウスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の果菜や草花等用の簡易ハウスは、(1)三角以上の多角形、円形または、楕円形の合成樹脂製シートの一端から中心に向けて切り込みを設け、該切り込みの両サイド近傍部に着脱自在の固定手段を設け
ると共に、上記合成樹脂製シートの周縁の少なくとも一部に、該シート同志を着脱自在に結合する固定手段を設けてなることを特徴とする。
(2)上記の合成樹脂製シートは、厚さ0.09〜0.17mmで、全光線透過率85〜93%、散乱光率38〜48%、保湿率88〜93%であってよく、(3)上記合成樹脂シートの少なくとも一部には、紫外線及び/又は赤外線遮蔽フィルムを積層してもよく、(4)また
、上記(3)の紫外線
及び/又は赤外線遮蔽シートを、着脱自在に積層するに際しては、上記(4)の固定手段を使用してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の果菜あるいは草花等用の簡易ハウスは、資材は、基本的には、合成樹脂シートと該シートを着脱自在に固定するための手段のみでよく、従って極めて安価に該ハウスを、該ハウスを必要とする果菜に取り付けることができる。
また、本発明の果菜や草花等用簡易ハウスは、上記の固定手段により簡易にハウスを取り付けることができるため、一般的な農業用ビニルハウスを構築する場合の人手や期間を要する煩雑な施工は一切不要であり、また広い設置面積も不要であって、高齢者をはじめ、未熟者や素人であっても極めて容易に、しかも必要とするときに何時でも何処にでも、取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)〜(E)は、本発明の果菜・草花等用簡易ハウスの基本構成の一例を示す説明図である。
【
図2】
図1(A)に示す簡易ハウスの一使用態様例を説明するための図である。
【
図3】
図1(A)に示す簡易ハウスの周辺に、該ハウスの構成材である合成樹脂シート同志を着脱自在に結合するための手段を設ける場合の一例を示す説明図である。
【
図4】
図3に示す簡易ハウスの使用態様例を説明するための図である。
【
図5】(A)〜(C)は、
図1(A)に示す簡易ハウスの一部に紫外線及び/又は赤外線遮蔽シートを設ける場合の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1(A)〜(E)は本発明の果菜用簡易ハウスの構成例を示しており、同図(A)は、四角形の合成樹脂シート1の一端1pから該シート1の中心1cに向けて切り込み2を設け、該切り込み2の両サイド近傍部に固定手段(本例では、面ファスナー)3,3を設けたものであり、同図(B)は、六角形の合成樹脂シート11の一端11pから該シート11の中心11cに向けて切り込み12を設け、該切り込み12の両サイド近傍部に固定手段としての面ファスナー3,3を設けたものであり、同図(C)は、円形の合成樹脂シート21の一端21pから該シート11の中心21cに向けて切り込み22を設け、該切り込み22の両サイド近傍部に固定手段としての面ファスナー3,3を設けたものであり、同図(D)は、楕円形の合成樹脂シート31の一端31pから該シート31の中心31cに向けて切り込み32を設け、該切り込み32の両サイド近傍部に固定手段としての面ファスナー3,3を設けたものであり、同図(E)は、三角形の合成樹脂シート41の一端41pから該シート41の中心41cに向けて切り込み42を設け、該切り込み42の両サイド近傍部に固定手段としての面ファスナー3,3を設けたものである。
なお、
図1(A),(B),(E)では、四角形,六角形,三角形の各角部1p,11P,41pから各中心1c,11c,41cに向けて切り込み1c,11c,41cを設けているが、これらの多角形の適宜の辺の一部(一端部)から各中心に向けて切り込みを設けてよいことは言うまでもない。
上記の切り込み2,12,22,32,42は、合成樹脂シートの1,11,21,31,41の一方の面の表面積にもよるが、一般には、最長で一端部1p、11p,21p,31p,41pから中心1c,11c,21c,31c,41cまで、最短でこの最長の1/5程度とするが、取り扱い上や作業上の便宜の観点や強度の面から最長の1/3程度とすることが好ましい。
【0013】
例えば
図1(A)〜(E)に示す本発明の簡易ハウス100における合成樹脂シート1,11,21,31,41は、厚みが0.09〜0.17mmで、全光線透過率85〜93%、散乱光率38〜48%、保湿率88〜93%であることが好ましい。
上記範囲の厚みを有するシートであれば、果菜等への取り付け作業が容易となり、熟練を要することなく、誰でも簡単に目的の箇所へ取り付けることができるのみならず、本発明の簡易ハウスの加工も容易となり、安価に簡易ハウスを製造することができる。
また、上記範囲の全光線透過率および散乱光率を有していれば、果菜や草花が生育する上で必要な光線量を該シートを透過させて果菜や草花に照射すると共に、茎割れや日焼け(例えば、実の色の悪化や果肉の劣化)等の悪影響を及ぼす部分の光を良好に遮蔽することができる。
さらに、上記範囲の保湿性(シート自重の88〜93%重量の水分を保有することができる性質)を有していれば、降雨時等に、本発明のハウス下で生育しつつある果菜あるいは草花等に、該シートを透過して雨が直接当たることがないばかりか、該シートに保持された水分が高温の晴天時等に蒸発するため、本発明のハウス下の雰囲気を果菜や草花等の生育に適した温度に保持することもできる。
【0014】
上記のように構成される本発明の簡易ハウスは、例えば
図1(A)に示す簡易ハウス100の場合、例えば、
図2に示すようにして使用される。
すなわち、先ず、
図2(A)に示すように、ハウス100の切り込み2を開き、この開いた部分に果菜や草花の茎(
図2(B)のK)もしくは果菜や草花の支持柱を挟み、該切り込みの両サイド近傍部に設けられている面ファスナー3,3同志を接触させて固定する。
果菜がトマトの場合は、例えば
図2(B)に示すように、トマトの実T,T・・・を合成樹脂シート1が覆うように、該実T,T,・・・が成っている部分近傍の茎Kを、上記の切り込み2の開いた部分で挟み込み、面ファスナー3,3で固定すればよい。
なお、
図2(B)は、トマトの実T,T・・・がある程度生育した状態を示しているが、本発明の簡易ハウス100を取り付ける時期は、トマトの実T,T・・・が直径1〜2cmぐらいの時に取り付けることが好ましい。2cm以上に生育した後で取り付けるのでは、実T,T・・・が既に紫外線の悪影響を受けて茎割れ等が発生してしまうからである。
【0015】
図3は、本発明における簡易ハウスの他の構成例を示す図であり、ここでは、
図1(A)に示す基本的なハウス100の応用(変形)例について説明する。
図3(A)において、
図1(A)と同一符号は
図1(A)と同一機能部を示しており、Jはハウス100の構成材である合成樹脂製シート1の周縁の少なくとも一部(本例では、面ファスナー3,3を設けてある部分を除く四周全て)に、該シート同志を結合する固定手段J,J,J,Jを設けている。
図3(B)は、
図3(A)のハウス100の構成材である合成樹脂シート1と結合する他のハウス100′の構成材である合成樹脂シート1′を示しており、この例では該シート1′の四周全てに固定手段J′,J′,J′,J′を設けている。
固定手段J,J,J,J及びJ′,J′,J′,J′は、例えば、合成樹脂製袋の開口部を開閉自在に閉じる合成樹脂製ジッパー、いわゆるプラスチック袋用チャックで、本発明のハウス100の本体と同程度の光線透過性等を有する合成樹脂製のものが好適に使用でき、シートSとシートS′がこのジッパーJ,J,J,JとJ′,J′,J′,J′により着脱自在に固定される。
なお、
図3(A),(B)の例では、シート1及び1′にそれぞれ4つの固定手段J,J,J,J及びJ′,J′,J′,J′を設けているが、四角形に連続する1つの固定手段であってもよい。
【0016】
また、
図3の例では、面ファスナー3,3付きのシート1と該ファスナーの無いシート1′とを結合する場合を示しているが、面ファスナー3,3付きのシート1,1同志を結合するようにジッパーを設けて該シート1,1を結合してもよいし、あるいは面ファスナー3,3付きシート1の二周、あるいは三又は四周に該ファスナーの無いシート1′を結合してもよいことは言うまでもない。
もちろん、四角形の合成樹脂シート同志の結合に限らず、図示はしないが、四角形と三角形あるいは六角形の合成樹脂シートを結合してもよいし、六角形と三角形の合成樹脂シート、六角形同志や三角形同志の合成樹脂シートを結合するようにしてもよい。
さらには、
図1(C),(D)に示す円形や楕円形、あるいは
図1(B)や(E)に示す六角形や三角形の簡易ハウスの場合も、同様に、周囲に扇形等適宜の形状の合成樹脂シート(図示省略)を結合するようにジッパー等の固定手段を設けることもできる。
【0017】
上記のように構成される
図3の簡易ハウス100は、例えば
図4に示すようにして使用される。本例では、簡易ハウス100,100′を、上下左右方向に計6枚結合させた場合を示しており、本発明に係る簡易ハウス100は上段の両端部に1枚ずつと下段の中央部に1枚の計3枚を使用し、これらのハウス100をハウス100′で結合させて使用している。
本例のように結合することにより、例えば、数本のトマトを本発明のハウスで覆うことができる。
もちろん、覆う対象によっては、面ファスナー3,3を備えた簡易ハウス100を、
図4の例では6枚全てに使用することが便宜な場合もあるし、あるいは
図4の6枚中、どれか1枚のみが面ファスナー3,3を備えた簡易ハウス100であることが便宜な場合もあるし、2枚もしくは4枚が面ファスナー3,3を備えた簡易ハウス100であることが便宜な場合もあり、結合態様は本発明における簡易ハウス100の使用対象に応じて適宜選定することができる。
【0018】
図5は、
図1(A)に示す簡易ハウス100の一部に紫外線及び/又は赤外線遮蔽シートを設ける場合の例を示しており、
図5(A)は縞(ボーダー)状に該シート10を設ける場合の例、
図5(B)は格子(チェック)状に設ける場合の例、
図5(C)は水玉(ドット)状に設ける場合の例を示しているが、もちろん、図示はしないが、簡易ハウス100の全面もしくは切り込み2と面ファスナー3,3の除く部分の全面(以下、単に全面と記す)に上記該シート10を設けても良い(なお、
図5(A)〜(C)では説明の便宜上該シート10を黒塗りで示しているが、実際は可視光線が透過するいわゆる透明シートである)。
【0019】
上記のシート10は、紫外線及び/又は赤外線の10〜90%程度、好ましくは30〜70%程度遮蔽する合成樹脂シートが使用され、該シート10は、ハウス100の構成材である合成樹脂シート1上に、プリント、その他の適宜のラミネート手法により、予め、積層しておいてもよいし、
図3に示すような固定手段Jにより、ハウス100に着脱自在に固定することが好ましい。
なお、シート10を縞状、格子状、水玉状に積層(すなわちハウス100上に部分的に積層)する場合は、該シート10を積層した状態での本発明のハウスが、紫外線及び/又は赤外線の10〜90%程度、好ましくは30〜70%程度遮蔽できるような積層態様とすればよい。また、シート10の積層は、ハウス100のどちらか一方の面でもよいし、両面でも良よい。一方の面に積層する場合は、果菜や草花が存在する側と反対側(通常、太陽光線が直射する側)とすることが、特に該シート10を着脱自在とする場合に好ましい。
【0020】
図5に示すような、紫外線及び/又は赤外線遮蔽シート10をハウス100の一部あるいは全面に設けたものを使用するのは、生育対象の果菜、例えばトマトの実がある程度大きく生育した時点で、太陽光線が強くなり過ぎた場合等において、いわゆる日焼けを防ぐためである。
日焼け防止以外にも、野鳥による食害を防ぐ目的もある。すなわち、カラス等の野鳥は、赤色光、緑色光、青色光の可視光以外に紫外線を感知すると言われており、紫外線を遮蔽してしまうと、遮蔽下に有る物が識別不能になり、生育対象のトマトや果物等の食害を防ぐことができる。
【0021】
〔実験例1〕
図3(A)に示す本発明の簡易ハウス100を用いて次の実験を行った。
トマトの種を苗床に蒔き、芽が出て、苗木となった後、畑に移植し、トマトの実が直径1〜2cmに成長した時点で、ハウス100を
図2のようにして被せた。
トマトの実が赤色に色づいた時点で、日射がかなり強くなり日焼けが懸念されたので、ハウス100のジッパーJ,J,J,Jを利用して、太陽光線を(少なくとも紫外線と赤外線を50%)カットできるシート10(全面のシートで、該シートにもジッパーJ′,J′,J′,J′を設けたもの)を、ハウス100の外側(内側にトマトの実が生育している)に着脱自在に取り付けた。
この結果、本発明のハウス100(上記のシート10併用品)を使用しなかったトマトの実と比較して、茎割れや日焼けが全くない、しかも形状も美麗なトマトが実っていることが確認できた。また、本発明のハウス100(シート10併用品)使用のトマトと、ハウス100不使用のトマト(茎割れ及び日焼けによる《目視で表面の90%以上の》黒化があった)を収穫し、両者を生で食したところ、本発明のハウス100(シート10併用品)使用トマトは、不使用トマトに比べて、皮が極めて柔らかで、かつ味はかなり濃厚であった。
【0022】
また、上記の太陽光線をカットできるシート10を併用しないハウス100使用のトマトの実は、茎割れ、皮の柔らかさ、味の濃厚さは、該シート10併用のハウス100使用トマトと比べて遜色なかったが、日焼けが生じていたもの、野鳥による食害があったものが、全収穫量の50%程度あった。
【0023】
〔実験例2〕
図3(A)に示す本発明の簡易ハウス100を、
図2に示すようにして、小玉スイカの花(30個)にそれぞれ被せ、該ハウス100の下方から手を入れ、受粉作業を行った。受粉作業の途上で雨が降ってきたが、受粉作業は滞りなく行うことができた。
上記の花30個には、問題なく、小玉スイカの実が付き、収穫できるようになるまで、ハウス100を被せたままとした。また、実の生育状況に応じて、半分の15個に太陽光線カットシート10を実験例1と同様に取り付けた。
結果は、シート10併用のハウス100使用のものと、シート10を併用していないハウス100使用のものとの比較では、食味は同等であったが、シート10を併用していないハウス100使用の小玉スイカでは、日焼け及び野鳥の食害(日焼けで傷んだ部分から食害が発生)が15個中8個あった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明の簡易ハウスは、高価な資材はもとより、人手や期間を要する煩雑な施工、あるいは広い設置面積が不要であるばかりか、高齢者、未熟者や素人でも極めて容易に、かつ必要とするときに何時でも何処にでも、取り付けることができる。
よって、本発明の簡易ハウスによれば、従来は生育途上での上記のような必要項目により市場価格を高騰させていたトマト、カボチャ、茄子、リンゴ、梨、メロン、スイカ、ブドウ等の果菜、あるいは各種の草花の生育において、極めて容易にかつ簡便に有効利用することができ、これら果菜の市場価格を大幅に削減することができ等、産業上における価値は極めて高い。
【符号の説明】
【0025】
1,11,21,31:合成樹脂シート
1p,11p,21p,31p,41p:合成樹脂シート1,11,21,31の一端
2,12,22,32,42:切り込み
3:固定手段
1c,11c,21c,31c,41c:合成樹脂シート1,11,21,31,41の中心