(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態1について図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明のホーン装置を示す斜視図を、
図2は
図1のホーン装置の内部構造を示す断面図を、
図3は
図2の破線円A部を拡大した拡大断面図を、
図4は
図2の共鳴器の内部構造を示す断面図を、
図5(a)は吸い込み時の圧力分布を示すシミュレーション図,(b)は吐き出し時の圧力分布を示すシミュレーション図,(c)は空気振動室から共鳴器に吐き出される空気の流速を示すシミュレーション図を、
図6(a),(b),(c)は従来技術の
図5に対応したシミュレーション図を、
図7(a)は音圧レベル[dB(A)]のばらつき改善を説明する比較グラフ,(b)は電圧幅[Vt]のばらつき改善を説明する比較グラフをそれぞれ示している。
【0014】
図1に示すように、ホーン装置10は、自動車等の車両の前方側に搭載され、警報音を発生するものである。ホーン装置10には取り付けステー11の基端側が固定されており、取り付けステー11の先端側は、車両の前方側の骨格を形成するクロスメンバー等に固定ボルトにより固定されるようになっている。ここで、ホーン装置10は電磁式の渦巻き形ホーンであって、ステアリング等に設けられたホーンスイッチを操作することで作動し、警報音を発生するようになっている。
【0015】
ホーン装置10は、ホーン本体20と共鳴器40とを備えている。共鳴器40はホーン本体20に取り付けられ、当該ホーン本体20が発生する音を共鳴させて、外部に発音するものである。ここで、仕様の異なるホーン本体20および共鳴器40を複数準備し、それぞれを任意に組み合わせることで、周波数が異なる音を発生させることができる。ここで、普通乗用車等においては、490Hzの高音用(High)のホーン装置10と、410Hzの低音用(Low)のホーン装置10との2つが組み合わせて搭載される。
【0016】
図2に示すように、ホーン本体20はケース21を備えており、当該ケース21は、金属板(導電板)をプレス加工等することで段付きの有底筒状に形成されている。ケース21の底部側には円形底部21aを有する小径収容部21bが設けられ、ケース21の開口側には環状底部21cを有する大径収容部21dが設けられている。大径収容部21dは、小径収容部21bよりも大径となっており、その直径寸法は小径収容部21bの略2倍の大きさに設定されている。
【0017】
ケース21の小径収容部21b内には、固定鉄心としてのポール22が設けられている。ポール22は、磁性材料よりなる丸棒を切削加工等することで段付きに形成され、大径の本体部22aと当該本体部22aよりも小径の雄ねじ部22bとを備えている。本体部22aは円形底部21aの内側に接着剤等によって固定され、雄ねじ部22bは円形底部21aを貫通してケース21の外部に延出されている。そして、雄ねじ部22bには、取り付けステー11の基端側が固定ナット12により固定されている。
【0018】
小径収容部21b内で、かつポール22を形成する本体部22aの周囲には、環状のコイルボビン23が設けられている。このコイルボビン23は、プラスチック等の絶縁材料により所定形状に形成され、断面が略U字形状に形成されたその内側には、導電材料よりなるコイル24が所定の巻数で巻装されている。これにより、コイル24に電流を流すことで、当該コイル24の中心に配置されたポール22が電磁石となって磁力を発生する。ここで、コイル24およびポール22は電磁石を形成している。コイルボビン23は、環状固定部23aを備え、当該環状固定部23aは、金属製の第1リベット25および第2リベット26により、環状底部21cにがたつかないように強固に固定されている。
【0019】
ここで、第1リベット25の長さ寸法は、第2リベット26の長さ寸法よりも短い長さ寸法に設定され、第1リベット25は、環状固定部23aを環状底部21cに固定する機能のみを有している。一方、第2リベット26は、環状固定部23aを環状底部21cに固定する機能に加えて、コネクタ接続部27および給電機構28を環状底部21cに固定する機能を有している。なお、コネクタ接続部27はプラスチック等の絶縁材料により略箱形状に形成され、当該コネクタ接続部27には、車両側の給電コネクタ(図示せず)が接続されるようになっている。
【0020】
大径収容部21d内には、コイル24に電流を流すための給電機構28が設けられている。給電機構28は、金属板により段付き形状に形成された固定給電部材29を備えており、当該固定給電部材29の長手方向一側(図中右側)は、第2リベット26の軸方向一端側(図中上側)に電気的に接続されている。一方、固定給電部材29の長手方向他側(図中左側)には、略円柱形状に形成された固定接点30が固定されている。ここで、第2リベット26の軸方向他端側(図中下側)には、コネクタ接続部27にインサートされたプラス側オス型端子31が電気的に接続されている。これにより、固定接点30には、プラス側オス型端子31,第2リベット26および固定給電部材29を介して電流が流れるようになっている。
【0021】
第2リベット26の軸方向に沿う固定給電部材29の対向部分には、可撓性を有する金属板よりなる可動給電部材32が設けられている。可動給電部材32は、固定給電部材29よりも薄肉となっており、これにより外力を加えることで第2リベット26の軸方向に向けて撓むことができる。
【0022】
可動給電部材32の長手方向一側は、環状固定部23aに一体成形された筒状の絶縁固定部23bに固定されている。これにより、可動給電部材32と第2リベット26とは絶縁された状態となっている。また、可動給電部材32と固定給電部材29との間には、プラスチック等よりなる環状の絶縁シート33が設けられている。これにより、可動給電部材32および固定給電部材29についても、絶縁された状態となっている。なお、可動給電部材32の長手方向一側には、コイル24の一端側が電気的に接続されている(詳細図示せず)。
【0023】
可動給電部材32の長手方向他側には、略円柱形状に形成された可動接点34が固定されている。可動接点34は固定接点30に対向され、可動給電部材32が第2リベット26の軸方向に撓むことで、可動接点34は固定接点30に対して、接触状態(通電状態)および非接触状態(非通電状態)となる。ここで、コイル24の他端側は、導電体であるケース21に電気的に接続されている(詳細図示せず)。これにより、コイル24の他端側は、ケース21および取り付けステー11を介して、車体にアース接続(マイナス接続)されている。
【0024】
すなわち、可動接点34と固定接点30とが接触した状態で、かつホーンスイッチが操作された通電状態になると、車両側の給電コネクタからの電流が、プラス側オス型端子31,第2リベット26,固定給電部材29,固定接点30,可動接点34,可動給電部材32,コイル24,ケース21および取り付けステー11を介して車体に流れる。これにより、ポール22に磁力が発生する。ここで、給電機構28は、固定給電部材29および固定接点30と、可動給電部材32および可動接点34とから形成されている。
【0025】
ケース21の軸方向に沿う小径収容部21b側とは反対側(図中上側)には、開口部21eが形成されており、当該開口部21eは、ダイヤフラム35によって覆われている。ダイヤフラム35は、薄い鋼板をプレス加工等することで略円盤形状に形成され、ダイヤフラム35の中心部分には可動鉄心36が設けられている。
【0026】
ここで、ダイヤフラム35は、可動鉄心36を
図2に示す基準位置に位置させるための板ばねとしての機能を有している。つまり、ダイヤフラム35に外力が加えられていない所謂ばねの自由状態においては、当該ダイヤフラム35は、可動鉄心36をポール22から引き離した状態で保持する。なお、このときの給電機構28の固定接点30および可動接点34は、
図2に示すように互いに接触状態となっている。
【0027】
ケース21内には、ポール22と対向するようにして可動鉄心36が設けられている。
図3に示すように、可動鉄心36は、磁性材料により段付きの円柱形状に形成された本体部36aを備えている。本体部36aの軸方向に沿うポール22側(図中下側)には、給電機構28(
図2参照)を操作する環状の操作リング36bが装着されている。本体部36aの軸方向に沿うポール22側とは反対側(図中上側)には、ダイヤフラム35の組付孔35aが組み付けられる組付部36cが一体に設けられている。組付部36cと本体部36aとの間には段差面STが設けられ、当該段差面STにダイヤフラム35の中心部分が載置されるようになっている。
【0028】
組付部36cには、ダイヤフラム35を本体部36aに固定するための円錐台形状に形成されたワッシャ37が装着されている。ここで、可動鉄心36は、本体部36a,操作リング36b,組付部36cおよびワッシャ37によって構成されている。ワッシャ37は、大径の底面37aと小径の上面37bとを備えており、底面37aが段差面STに向けられている。そして、ダイヤフラム35およびワッシャ37を組付部36cに装着した状態のもとで、組付部36cの先端部分(図中上側)をかしめることにより、ワッシャ37はダイヤフラム35を段差面STに押し付けた状態で組付部36cに強固に固定される。
【0029】
ここで、組付部36cの先端部分をかしめて形成されるかしめ部36dは、ワッシャ37の径方向内側を、段差面STに向けて押圧することになる。つまり、ワッシャ37の径方向内側には、ワッシャ37の軸方向に沿う押圧荷重が集中することになる。しかしながら、ワッシャ37の軸方向に沿う厚み寸法は、従前のワッシャ(
図11参照)の略2倍の厚み寸法となっているので、ワッシャ37の剛性は高く、組付部36cのかしめ作業によりワッシャ37が変形するようなことは無い。したがって、従前のワッシャを2枚重ねたもの(
図11参照)に比して、ダイヤフラム35の組付孔35aの周辺の変形を抑制することができ、ダイヤフラム35を可動鉄心36に対してばらつき無く精度良く固定できる。
【0030】
ワッシャ37の外周部分には環状の傾斜面37cが設けられ、当該傾斜面37cは、ワッシャ37の軸方向に沿う底面37aと上面37bとの間に配置されている。そして、傾斜面37cは、可動鉄心36の軸方向にダイヤフラム35から離れるにつれて、徐々に直径寸法が小さくなっている。このように、組付部36cに傾斜面37cを有するワッシャ37を固定することで、可動鉄心36の軸方向に沿うポール22側とは反対側が先細り形状とされている。
【0031】
図2に示すように、可動鉄心36の軸心およびポール22の軸心はそれぞれ一致しており、可動鉄心36およびポール22は互いに同軸上に配置されている。本体部36aの軸方向に沿うポール22側は、コイルボビン23の径方向内側に隙間を介して所定量入り込んでいる。そして、本体部36aとポール22との間の隙間S1の大きさは、操作リング36bと可動給電部材32との間の隙間S2の大きさよりも大きく設定されている(S1>S2)。
【0032】
ダイヤフラム35のケース21側とは反対側には、鋼板をプレス加工等することで略円盤形状に形成されたカバー38が設けられている。カバー38の外周部分には環状のかしめ固定部38aが形成され、当該かしめ固定部38aは、ケース21の外周部分に設けたフランジ部21fと、ダイヤフラム35の外周部分に設けたフランジ部35bとを、突き合わせた状態のもとで挟持している。これにより、ダイヤフラム35およびカバー38の双方が、ケース21に対して強固に固定されている。
【0033】
カバー38は開口部21eを閉塞しており、ダイヤフラム35と共鳴器40との間に気密状態で設けられ、本発明における隔壁部材を構成している。カバー38の中心部分には、可動鉄心36と同軸の出音口(貫通穴)38bが設けられ、当該出音口38bと可動鉄心36との間には、環状の空気流路50が形成されている。空気流路50は可動鉄心36の外周部および出音口38bの内周部により形成され、空気流路50には、ダイヤフラム35の振動により空気が流通するようになっている。より具体的には、
図3に示すように、ワッシャ37の傾斜面37cと出音口38bの内周部とによって、空気流路50が形成されている。
【0034】
ダイヤフラム35が振動することで、カバー38とダイヤフラム35との間に形成される環状の空気振動室(チャンバ)39の容積が増減するようになっている。これにより、空気流路50に空気の流れが発生する。ダイヤフラム35は、高周波数(例えば490Hzや410Hz)で振動し、当該振動が音となって空気流路50から発音される。そのため、空気流路50を流れる空気の流れを良くすることが、ホーン装置10の音響特性の安定化に繋がる。
【0035】
図2に示すように、ホーン本体20のカバー38側には、共鳴器40が装着されている。共鳴器40は、ケース21の開口部21eと対向しており、ケース21のカバー38側の全体を覆っている。共鳴器40は、プラスチック等の樹脂材料よりなるベース部(ベース部材)41と本体部42とから構成されている。ベース部41は、有底筒状に形成され、略円盤状に形成された底壁部41aと、当該底壁部41aから垂直に立ち上げられた壁部41bとを備えている。
【0036】
なお、壁部41bの先端部分(図中下側)には、カバー38のかしめ固定部38aに係合される係合爪41cが設けられている。つまり、ベース部41はケース21に装着されている。また、ベース部41とカバー38との間には、ゴム等の弾性材料により環状に形成されたクッション部材43が設けられている。これにより、共鳴器40をホーン本体20にがたつくこと無く、ワンタッチで装着することができる。
【0037】
ベース部41は、ダイヤフラム35と共鳴器40を形成する本体部42との間に設けられ、カバー38と同様に、本発明における隔壁部材を構成している。
図3に示すように、ベース部41の中心部分には、可動鉄心36と同軸の出音口(貫通穴)41dが設けられ、当該出音口41dの内径寸法は、カバー38の出音口38bと同じ内径寸法となっている。これにより、出音口41dと出音口38bとの間には段差が形成されず、空気は空気流路50をスムーズに流れることができる。
【0038】
図2に示すように、本体部42は、ベース部41の壁部41b側とは反対側に設けられている。本体部42は、接着剤や超音波溶着等の固定手段によって、ベース部41に固定されている。
図4に示すように、本体部42内には、渦巻き形状に形成された音道42aが設けられている。この音道42aは、ベース部41と本体部42とで形成され、ダイヤフラム35(
図2参照)の振動により発生した音が通過する通路となっている。音道42aの入口側、つまり渦巻きの中心部分には、ダイヤフラム35の振動により発生した音が最初に到達する発音室42bが設けられている。また、音道42aと発音室42bとの間には、入口開口部42c(図中二点鎖線参照)が設けられている。
【0039】
一方、音道42aの出口側、つまり渦巻きの外周寄りの部分には、出口開口部42dが設けられ、当該出口開口部42dから外部に向けて音が発音されるようになっている。ここで、音道42aは入口開口部42cから出口開口部42dに向けて徐々にその開口面積が大きくなっている。これにより、
図4の破線矢印に示すように、ダイヤフラム35の振動により発生した音の音圧レベルを増幅させて、所定音量の音を発音できるようにしている。なお、
図4の破線矢印を、入口開口部42cから出口開口部42dに向かうにつれて徐々に大きく(太く)することで、音圧レベルが増幅される状態を表現している。
【0040】
次に、以上のように形成されたホーン装置10の動作について、図面を用いて詳細に説明する。ホーン装置10は、以下に示す[電磁石吸引動作]と[ダイヤフラムばね力動作]とを極短時間で繰り返すことで、ホーンスイッチの操作中において、継続して警報音が発生するようになっている。
【0041】
[電磁石吸引動作]
運転者等によりホーンスイッチが操作されると、車両側の給電コネクタから、プラス側オス型端子31,第2リベット26,固定給電部材29,固定接点30,可動接点34,可動給電部材32を介してコイル24に電流が供給される。すると、コイル24が通電されて、コイル24およびポール22が電磁石として機能するようになる。これにより、可動鉄心36が、ダイヤフラム35のばね力に抗してポール22に吸引されて、ポール22に向けて移動する。
【0042】
すると、可動鉄心36の操作リング36bが、可動給電部材32を押し下げて、これにより可動接点34が固定接点30から引き離される。したがって、コイル24が非通電状態となり、ひいてはポール22の吸引力がゼロになる。なお、本体部36aとポール22との間の隙間S1の大きさは、操作リング36bと可動給電部材32との間の隙間S2の大きさよりも大きく設定されているので(S1>S2)、可動鉄心36とポール22とが衝突することは無い。
【0043】
[ダイヤフラムばね力動作]
ポール22の吸引力がゼロになった後は、ダイヤフラム35のばね力によって可動鉄心36がポール22から引き離される。その後、可動給電部材32のばね力により可動接点34が固定接点30に再び当接し、これによりコイル24に電流が再び流れる。このように、[電磁石吸引動作]と[ダイヤフラムばね力動作]とが高速で繰り返されて、可動鉄心36の振動によりダイヤフラム35が振動して音を発生するようになっている。
【0044】
そして、ダイヤフラム35の振動により発生した音は、空気振動室39,空気流路50,発音室42b,入口開口部42c,音道42a,出口開口部42dを介して、音圧レベルが増幅された後、共鳴器40の外部に発音される。
【0045】
ここで、本願発明のホーン装置10における空気流路50での空気の流れ易さと、従来技術のホーン装置(
図11参照)における空気流路hでの空気の流れ易さとを、コンピュータを用いてシミュレーションした。以下、
図5および
図6を用いて、それぞれのシミュレーション結果を比較する。
【0046】
なお、今回のシミュレーションには、有限要素法(FEM解析)を用いた。また、
図5および
図6に示す破線の内部は空気流路50,hの周辺を示している。さらに、
図5(a),(b)および
図6(a),(b)において、薄い色の網掛部は圧力(P)が低く、濃い色の網掛部は圧力(P)が高いことを示している。また、
図5(c)および
図6(c)において、薄い色の網掛部は流速(V)が遅く、濃い色の網掛部は流速(V)が高いことを示している。
【0047】
図5(a)および
図6(a)に示すように、空気振動室39,mの容積が増加する[吸い込み時]においては、
図5(a)に示す本願発明の方が、空気振動室39内の圧力(P)が高くなっていることが判る。これは、従来技術の空気流路hよりも本願発明の空気流路50の方が、空気が流れ易いことを示している。つまり、従来技術に比して本願発明の方が、空気振動室39に略抵抗無く多量の空気を吸い込めるため、従来技術の空気振動室mに比して本願発明の空気振動室39の方が、圧力(P)が高くなっている。
【0048】
一方、
図5(b)および
図6(b)に示すように、空気振動室39,mの容積が減少する[吐き出し時]においては、
図6(b)に示す従来技術の方が、空気振動室m内の圧力(P)が高くなっていることが判る。これは、上述の[吸い込み時]と同様に、従来技術の空気流路hよりも本願発明の空気流路50の方が、空気が流れ易いことを示している。つまり、従来技術に比して本願発明の方が、空気振動室39内の空気を素早く吐き出すことができるため、本願発明の空気振動室39に比して従来技術の空気振動室mの方が、圧力(P)が高くなっている。
【0049】
さらに、
図5(c)および
図6(c)に示すように、空気流路50および空気流路hを流れる空気の流速(V)を比較すると、従来技術に比して本願発明の方が、濃い色の網掛部の面積が大きくなっている。これにより、空気振動室39から吐き出された空気の流速(V1)の方が、空気振動室mから吐き出された空気の流速(V2)よりもが速いことが判る(V1>V2)。このように、本願発明の空気流路50の方が、従来技術の空気流路hに比して、空気がよりスムーズに流れることが判る。これは、
図2に示すように、コイル24およびポール22が電磁石として機能したときに、ダイヤフラム35が無理なく振動できることを意味している。
【0050】
図7(a)に示すように、音圧レベル[dB(A)]のばらつきの改善具合について、490Hzの高音用(High)および410Hzの低音用(Low)について、本願発明と従来技術とで比較した。その結果、特に490Hzの高音用のホーン装置において、本願発明の方が、従来技術に比してばらつきの発生が抑えられていることが判る。具体的には、従来技術における音圧レベルのばらつき範囲が107.5〜110.9[dB(A)]であるのに対し、本願発明における音圧レベルのばらつき範囲は109.0〜110.7[dB(A)]となった。
【0051】
これは、本願発明では、円錐台形状のワッシャ37(
図3参照)を用いており、これによりダイヤフラム35の組付孔35aの周辺の変形が抑制され、ダイヤフラム35が可動鉄心36に対してばらつき無く精度良く固定可能となったことに起因している。なお、410Hzの低音用のホーン装置においては、本願発明および従来技術の双方において、ばらつき範囲は略同様となった。
図7(a)の破線は、音圧レベルのばらつきの平均値を示している。
【0052】
さらに、
図7(b)に示すように、ダイヤフラム35,e(
図3および
図11参照)が振動して音を発生し始める電圧幅[Vt]のばらつきの改善具合について、490Hzの高音用(High)および410Hzの低音用(Low)について、本願発明と従来技術とで比較した。その結果、特に410Hzの低音用のホーン装置において、本願発明の方が、従来技術に比してばらつきの発生が抑えられていることが判る。具体的には、従来技術における電圧幅のばらつき範囲が7.5〜9.5[Vt]であるのに対し、本願発明における電圧幅のばらつき範囲は9.0〜10.0[Vt]となった。
【0053】
これは、本願発明では、円錐台形状のワッシャ37(
図3参照)を用いることにより、本願発明の空気流路50(
図5参照)の方が、従来技術の空気流路h(
図6参照)よりも空気が流れ易く、ダイヤフラム35が容易に撓めることに起因している。なお、490Hzの高音用のホーン装置においては、本願発明および従来技術の双方において、ばらつき範囲は略同様となった。
図7(b)の破線は、電圧幅のばらつきの平均値を示している。
【0054】
以上詳述したように、実施の形態1に係るホーン装置10によれば、空気流路50を形成するワッシャ37の傾斜面37cを、可動鉄心36の軸方向にダイヤフラム35から離れるにつれて、徐々に直径寸法が小さくなる傾斜面としたので、従前の垂直面k(
図11参照)を有する階段形状の空気流路hに比して、空気流路50を流れる空気の流れをスムーズにできる。したがって、空気流路50を流れる空気の流れに乱れが生じ難くなり、ホーン装置10の音響特性のばらつきを抑制できる。
【0055】
また、実施の形態1に係るホーン装置10によれば、従前の2枚の直径寸法が異なるワッシャc,d(
図11参照)に替えて、円錐台形状の肉厚の1つのワッシャ37(
図3参照)を用いたので、ワッシャ37の剛性を高めることができる。よって、組付部36cのかしめ作業によりワッシャ37が変形することが無い。したがって、従前に比して部品点数を削減しつつ、組み立て工程を簡素化することができる。また、従前のワッシャc,dの剛性がそれぞれ低いことに起因するダイヤフラムの組付孔の周辺の変形を確実に防止して、製品毎の音響特性のばらつきをより抑制できる。
【0056】
次に、本発明の実施の形態2,3について図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図8は実施の形態2のホーン装置の部分拡大図を、
図9は実施の形態3のホーン装置の部分拡大図を、
図10(a),(b),(c)は実施の形態2,3の
図5に対応したシミュレーション図をそれぞれ示している。
【0058】
図8,9に示すように、実施の形態2,3のホーン装置60,70においては、実施の形態1のホーン装置10(
図3参照)に比して、空気流路61,71の形状のみが異なっている。具体的には、実施の形態2のホーン装置60の空気流路61においては、隔壁部材としてのカバー38の出音口(貫通穴)62の内周部に傾斜面63を設けている。つまり、カバー38の内周部が傾斜面63とされ、当該傾斜面63は、可動鉄心36の軸方向にダイヤフラム35から離れるにつれて、徐々に直径寸法が小さくなっている。
【0059】
一方、可動鉄心36には、従前と同様に大径の第1ワッシャ64と小径の第2ワッシャ65とが設けられている。このように、上述の実施の形態1では、空気流路50の径方向内側、つまり可動鉄心36の外周部に傾斜面37c(
図3参照)を設けていたが、実施の形態2では、空気流路61の径方向外側、つまり出音口62の内周部に傾斜面63を設けている。
【0060】
また、実施の形態3のホーン装置70の空気流路71は、実施の形態2の空気流路61と形状は同じであるが、隔壁部材としてのベース部41の出音口(貫通穴)72の内周部に傾斜面73を設けており、この点のみが実施の形態2と異なっている。つまり、ベース部41の内周部が傾斜面73とされ、当該傾斜面73は、可動鉄心36の軸方向にダイヤフラム35から離れるにつれて、徐々に直径寸法が小さくなっている。
【0061】
ここで、ホーン装置60の空気流路61(実施の形態2)およびホーン装置70の空気流路71(実施の形態3)は形状が同じであるため、これらのシミュレーション結果は、
図10(a),(b),(c)に示す同じ結果となる。
【0062】
実施の形態2,3の空気流路61,71においては、
図10(a)に示すように[吸い込み時]においては、実施の形態1の空気流路50(
図5(a)参照)と略同様の圧力分布が得られた。一方、
図10(b)に示すように[吐き出し時]においては、従来技術の空気流路h(
図6(b)参照)に近い圧力分布となった。これは、[吐き出し時]においては、第1ワッシャ64および第2ワッシャ65の垂直面64a,65aが悪影響を与えるためと推測される。したがって、これらのシミュレーション結果から、実施の形態1の良い部分と、実施の形態2,3の良い部分とを組み合わせた形状の空気流路を形成するのが望ましいことが判った。つまり、空気流路の径方向外側および径方向内側の双方に傾斜面を設けるのが望ましいことが判った。
【0063】
なお、実施の形態2,3においては、
図10(c)に示すように、空気流路を流れる空気の流速(V)を高める上で有利であることが判った。つまり、空気流路の径方向外側に傾斜面を設けることで、空気振動室39から吐き出される空気の流速(V3)を、実施の形態1よりも速くすることが可能となる(V3>V1)。
【0064】
以上のように形成した実施の形態2,3のホーン装置60,70においても、上述した実施の形態1のホーン装置10と略同様の作用効果を奏することができる。
【0065】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、自動車等の車両に搭載されるホーン装置であるものを示したが、本発明はこれに限らず、鉄道車両や船舶,建設機械等のホーン装置にも採用することができる。