特許第6359958号(P6359958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6359958ねじれ抑制機構およびそれを備えた空気調和機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359958
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ねじれ抑制機構およびそれを備えた空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 13/14 20060101AFI20180709BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   F24F13/14 H
   F24F13/14 G
   F24F1/00 401C
【請求項の数】9
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-237833(P2014-237833)
(22)【出願日】2014年11月25日
(65)【公開番号】特開2016-99081(P2016-99081A)
(43)【公開日】2016年5月30日
【審査請求日】2016年12月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208640
【氏名又は名称】第一化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】松本 泰明
(72)【発明者】
【氏名】中沼 三雄
(72)【発明者】
【氏名】西田 晃
(72)【発明者】
【氏名】高橋 啓司
(72)【発明者】
【氏名】水落 明
【審査官】 関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−113243(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/054537(WO,A1)
【文献】 特開平07−055246(JP,A)
【文献】 実開平06−051745(JP,U)
【文献】 特開平11−264602(JP,A)
【文献】 特開2008−190809(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/079167(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/08−13/18
F24F 13/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸を有し、支持軸を中心に回転することにより、吹出口を閉じる閉じ位置と吹出口を開く開き位置との間で、風向を上下方向に偏向する上下風向偏向羽根と、
上下風向偏向羽根の支持軸の一端に接続され、支持軸を回転させるように駆動するモータと、
上下風向偏向羽根の支持軸の他端に接続され、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構と、を備え、
ねじれ抑制機構は、支持軸の他端に接続されるとともに支持軸の回転に伴って回転する回転部材と、回転部材の回転中心から偏心した位置にて回転部材に接触して、回転部材を上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクを減少させる方向に付勢する付勢部材とを備え、
付勢部材が回転部材に付与する回転部材の回転方向の力成分は、回転部材が上下風向偏向羽根の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される、空気調和機。
【請求項2】
回転部材の回転に伴い、回転部材と付勢部材との接触角度が変化することにより、付勢部材によって回転部材に付与される回転部材の回転方向の力成分が変化するように、付勢部材が配置される、請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
回転部材の回転に伴い、付勢部材と回転部材が接触する位置が付勢部材の支点から遠くなるほど、付勢部材が回転部材に付与する力は大きくなる一方で、その力のうちの回転部材の回転方向の力成分は小さくなるように、付勢部材が配置される、請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
上下風向偏向羽根が閉じ位置にあるときに、上下風向偏向羽根の自重により支持軸にかかるトルクよりも、付勢部材によって回転部材に付与される回転部材の回転方向の力成分により生じるトルクの方が前記自重によるトルクに対抗する向きで大きくなるように、回転部材および付勢部材が配置される、請求項1から3のいずれか1つに記載の空気調和機。
【請求項5】
上下風向偏向羽根は、上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクが、閉じ位置にあるときに最大となるように配置される、請求項1から4のいずれか1つに記載の空気調和機。
【請求項6】
付勢部材はねじりコイルばねであり、らせん状に巻かれたコイル部と、コイル部から延びて回転部材に接触するように延びた延出部とを備える、請求項1から5のいずれか1つに記載の空気調和機。
【請求項7】
延出部は、回転部材の回転中心の反対側から回転部材の先端に接触するように延びており、延出部の先端は、回転部材に近づく方向に湾曲している、請求項6に記載の空気調和機。
【請求項8】
回転部材は付勢部材と接触するローラをさらに備える、請求項1から7のいずれか1つに記載の空気調和機。
【請求項9】
空気調和機が備える上下風向偏向羽根の支持軸に接続され、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構であって、
支持軸に接続され、支持軸の回転に伴って回転する回転部材と、
回転部材の回転中心から偏心した位置にて回転部材に接触して、回転部材を付勢する付勢部材とを備え、
付勢部材が回転部材に付与する回転部材の回転方向の力成分は、回転部材が上下風向偏向羽根の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される、ねじれ抑制機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の有する上下風向偏向羽根のねじれを抑制するねじれ抑制機構およびそれを備えた空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気調和機として、吹出口から吹き出す風の風向を上下に偏向する上下風向偏向羽根を有するものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1の空気調和機は、上下風向偏向羽根に加えて、上下風向偏向羽根を吹出口を閉じる方向に付勢する付勢手段を備えている。このような付勢手段を設けて、上下風向偏向羽根の自重を打ち消し合うように作用させることで、上下風向偏向羽根の自重によるねじれや撓み等を抑制するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2013/054537号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、昨今では、上下風向偏向羽根の更なる大型化が進んでいる。これにより、上下風向偏向羽根の自重はさらに重くなる傾向にある。このような傾向下においては、上下風向偏向羽根の自重によるねじれが発生しやすくなるため、特許文献1のように単に付勢手段を設けるだけでは、そのねじれを精度良く抑制することができない場合がある。
【0006】
従って、本発明の目的は、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを精度良く抑制することができるねじれ抑制機構およびそれを備えた空気調和機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
【0008】
本発明の一態様によれば、支持軸を有し、支持軸を中心に回転することにより、吹出口を閉じる閉じ位置と吹出口を開く開き位置との間で、風向を上下方向に偏向する上下風向偏向羽根と、上下風向偏向羽根の支持軸の一端に接続され、支持軸を回転させるように駆動するモータと、上下風向偏向羽根の支持軸の他端に接続され、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構と、を備え、ねじれ抑制機構は、支持軸の他端に接続されるとともに支持軸の回転に伴って回転する回転部材と、回転部材の回転中心から偏心した位置にて回転部材に接触して、回転部材を上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクを減少させる方向に付勢する付勢部材とを備え、付勢部材が回転部材に付与する回転部材の回転方向の力成分は、回転部材が上下風向偏向羽根の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される、空気調和機を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを精度良く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態にかかる空気調和機の断面図
図2】実施の形態にかかる空気調和機の断面図
図3】実施の形態にかかる空気調和機の上下風向偏向羽根、モータ、ねじれ抑制機構の斜視図
図4】実施の形態にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の拡大斜視図
図5】実施の形態にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の分解斜視図
図6】実施の形態にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の側面図
図7】実施の形態にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の動作・作用を説明する断面図
図8】実施の形態にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の動作・作用を説明する断面図
図9】実施の形態にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の動作・作用を説明する断面図
図10】実施の形態にかかる空気調和機の上下風向偏向羽根に生じるトルクの関係を示す図
図11】実施の形態の変形例にかかる空気調和機のねじれ抑制機構の側面図
図12】従来の空気調和機を示す部分拡大斜視図
図13】従来の空気調和機を示す部分拡大断面図
図14】従来の空気調和機の上下風向偏向羽根に生じるトルクの関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明の基礎となった知見)
本発明者らは、前記従来の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を見出した。
【0012】
まず、本発明者らは、従来の空気調和機に関する考察を行った。図12、13に、従来の空気調和機100の構成を示す。図12、13は、空気調和機100における上下風向偏向羽根101の支持端部の周辺図を示す。図12、13に示すように、従来の空気調和機100は、上下風向偏向羽根101と、吹出口102と、ねじりコイルばね103と、支持軸104と、本体105とを備える。図13は、空気調和機100において、上下風向偏向羽根101が吹出口102(図13参照)を閉じた閉じ位置にある状態を示す。
【0013】
図12、13に示すように、従来の空気調和機100には、上下風向偏向羽根101を吹出口102を閉じる方向(図13において反時計回りの方向)に付勢する付勢手段として、ねじりコイルばね103が設けられている。ねじりコイルばね103は、本体105に固定されるとともに、上下風向偏向羽根101を支持する軸である支持軸104に連結されている。支持軸104は、上下風向偏向羽根101の回転中心である。支持軸104は、回転可能な状態で本体105に軸支されている。
【0014】
図13に示される閉じ位置においては、上下風向偏向羽根101の回転中心である支持軸104と、上下風向偏向羽根101の重心106とが略同じ高さ位置にあり、互いの水平方向における距離が最も長くなっている。このような状態では、上下風向偏向羽根101の自重によって支持軸104にかかるトルクTa(図13において時計回りの矢印)も最大となる。図13では、このように上下風向偏向羽根101が閉じ位置にあるときに、上下風向偏向羽根101の自重によって支持軸104にかかるトルクTaが最大となる形態を例にとり、説明を行う。
【0015】
図13に示される閉じ位置から、上下風向偏向羽根101が吹出口102を開く方向に回転移動する、すなわち、図13において支持軸104を中心に時計回りに回転すると、上下風向偏向羽根101の重心106は、支持軸104に対して水平方向に近づく。これにより、上下風向偏向羽根101の自重によって支持軸104にかかるトルクTaも徐々に小さくなる。
【0016】
このように、上下風向偏向羽根101が閉じ位置から下方へ回転移動することに伴って、上下風向偏向羽根101の自重によって支持軸104にかかるトルクTaは小さくなり、最終的に、上下風向偏向羽根101が閉じ位置から約90度下方に回転したときに、トルクTaは概ね0となる。
【0017】
これに対して、ねじりコイルばね103による付勢によって支持軸104にかかる反対向きのトルクTb(図13において反時計回り方向)は、上下風向偏向羽根101が閉じ位置から吹出口102を開く方向に回転移動するにつれて大きくなってくる。上下風向偏向羽根101の支持軸104が回転するにつれて、ねじりコイルばね103による元の状態からの変形が大きくなり、元の位置に戻ろうとする力が大きくなるためである。
【0018】
このようなトルクTaとTbの関係を図14に示す。図14では、横軸に上下風向偏向羽根101の閉じ位置からの開き角度(度)をとり、縦軸にトルク(g・cm)をとっている。横軸の開き角度は、閉じ位置を0度として、最大の開き位置が120度である場合について説明する。ライン1が、上下風向偏向羽根101の自重によって支持軸104にかかるトルクTaを示し、ライン2が、ねじりコイルばね103の付勢によって支持軸104にかかる反対向きのトルクTbを示す。ライン3は、ライン1とライン2のトルクの差(合成トルク)を示す。このライン1とライン2の差として示されるライン3は、上下風向偏向羽根101のねじれの原因となるトルクTc(以降、ねじれのトルクTcとする)を表している。図12、13では図示していないが、支持軸104におけるねじりコイルばね103が配置される側とは反対側の端部は、上下風向羽根101を駆動するモータの回転軸に固定されている。モータの回転軸は、モータの内部構造により前述のトルクTaに抗して、上下風向偏向羽根101を所定の開き位置で保持する。一方、支持軸104におけるねじりコイルばね103が配置される側の端部では、前述のトルクTaに抗するトルクは、前述のトルクTbのみとなる。このため、上下風向羽根101の支持軸104における上下風向偏向羽根101の自重によるトルクTaに抗するトルクは、ねじりコイルばね103に連結される側と、モータの回転軸に連結される側とで異なっている。つまり、ねじりコイルばね103が配置される側で生じる前述のトルクTcが、上下風向偏向羽根101のねじれの原因となるトルクとなる。特に、上下風向偏向羽根101は、ねじりコイルバネ103が配置される側が、モータが配置される側に比べて、吹出口102を開く方向に位置しやすくなる。
【0019】
図14のライン3に示すように、上下風向偏向羽根101におけるねじれのトルクTcは、上下風向偏向羽根101の開き角度が概ね45度のときに0となる一方で、開き角度が45度から離れるにつれて大きくなる。特に、上下風向偏向羽根101の開き角度が0度に近い場合や略90度以上の場合において、上下風向偏向羽根101におけるねじれのトルクTcは大きくなっている。
【0020】
このような上下風向偏向羽根101のねじれのトルクTcがかかった状態で、上下風向偏向羽根101が開閉されると、上下風向偏向羽根101で吹出口102を閉じた際に、上下風向偏向羽根101と吹出口102の間に隙間ができる等、精度良く閉じることができなくなる可能性がある。
【0021】
本発明者らはこれを受けて鋭意検討を行った結果、上下風向偏向羽根101の自重によって支持軸104にかかるトルクTaの変化に合わせて、ねじりコイルばねの付勢によって支持軸にかかるトルクTbも同様に変化するように設定することで、トルクTa、Tbを効果的に打消し合い、ねじれのトルクTcを小さくすることができることを見出した。
【0022】
上記知見によって、本発明者らは以下の発明を想到した。
【0023】
第1の発明は、支持軸を有し、支持軸を中心に回転することにより、吹出口を閉じる閉じ位置と吹出口を開く開き位置との間で、風向を上下方向に偏向する上下風向偏向羽根と、
上下風向偏向羽根の支持軸の一端に接続され、支持軸を回転させるように駆動するモータと、
上下風向偏向羽根の支持軸の他端に接続され、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構と、を備え、
ねじれ抑制機構は、支持軸の他端に接続されるとともに支持軸の回転に伴って回転する回転部材と、回転部材の回転中心から偏心した位置にて回転部材に接触して、回転部材を上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクを減少させる方向に付勢する付勢部材とを備え、
付勢部材が回転部材に付与する回転部材の回転方向の力成分は、回転部材が上下風向偏向羽根の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される、空気調和機である。
【0024】
一般的な空気調和機においては、上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクは、上下風向偏向羽根が閉じ位置にあるときに最も大きくなり、最大の開き位置にあるときに最も小さくなる。これを受けて、付勢部材が回転部材に付与する回転部材の回転方向の力成分を、回転部材が上下風向偏向羽根の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定している。このような設定により、上下風向偏向羽根の開き角度に応じて、上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクを付勢部材の付勢によって効果的に減少させることができる。これにより、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを精度良く抑制することができる。
【0025】
第2の発明は、特に第1の発明において、回転部材の回転に伴い、回転部材と付勢部材との接触角度が変化することにより、付勢部材によって回転部材に付与される回転部材の回転方向の力成分が変化するように、付勢部材が配置される。
【0026】
このように、回転部材と付勢部材の接触角度の変化の関係を利用することで、ねじれ抑制機構をより簡易な構成で実現することができる。
【0027】
第3の発明は、特に第2の発明において、回転部材の回転に伴い、付勢部材と回転部材が接触する位置が付勢部材の支点から遠くなるほど、付勢部材が回転部材に付与する力は大きくなる一方で、その力のうちの回転部材の回転方向の力成分は小さくなるように、付勢部材が配置される。
【0028】
このように、付勢部材が回転部材に付与する力とその力のうちの回転部材の回転方向の力成分の増加/減少が逆転するように設定することで、ねじれ抑制機構をより簡易な構成で実現することができる。
【0029】
第4の発明は、特に第1から第3のいずれか1つの発明において、上下風向偏向羽根が閉じ位置にあるときに、上下風向偏向羽根の自重により支持軸にかかるトルクよりも、付勢部材によって回転部材に付与される回転部材の回転方向の力成分の方が大きくなるように、回転部材および付勢部材が配置される。
【0030】
このような配置により、上下風向偏向羽根が閉じ位置にあるときに、上下風向偏向羽根をより精度良く閉じることができる。
【0031】
第5の発明は、特に第1から第4のいずれか1つの発明において、上下風向偏向羽根は、上下風向偏向羽根の自重によって支持軸にかかるトルクが、閉じ位置にあるときに最大となるように配置される。
【0032】
このような配置により、上下風向偏向羽根が閉じ位置にあるときに、上下風向偏向羽根をより精度良く閉じることができる。
【0033】
第6の発明は、特に第1から第5のいずれか1つの発明において、付勢部材はねじりコイルばねであり、らせん状に巻かれたコイル部と、コイル部から延びて回転部材に接触するように延びた延出部とを備える。
【0034】
このように、付勢部材としてねじりコイルばねを用いることにより、ねじれ抑制機構をより簡易な構成で実現することができる。
【0035】
第7の発明は、特に第6の発明において、延出部は、回転部材の回転中心の反対側から回転部材の先端に接触するように延びており、延出部の先端は、回転部材に近づく方向に湾曲している。
【0036】
これにより、特に上下風向偏向羽根の閉じ位置からの開き角度が大きくなったときに、上下風向偏向羽根の自重によるねじれをより精度良く抑制することができる。
【0037】
第8の発明は、特に第1から第7のいずれか1つの発明において、回転部材は付勢部材と接触するローラをさらに備える。
【0038】
このようなローラを設けることで、回転部材と付勢部材の接触による摩耗や損傷を抑制することができる。
【0039】
第9の発明は、空気調和機が備える上下風向偏向羽根の支持軸に接続され、上下風向偏向羽根の自重によるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構であって、
支持軸に接続され、支持軸の回転に伴って回転する回転部材と、
回転部材の回転中心から偏心した位置にて回転部材に接触して、回転部材を付勢する付勢部材とを備え、
付勢部材が回転部材に付与する回転部材の回転方向の力成分は、回転部材が上下風向偏向羽根の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される、ねじれ抑制機構である。
【0040】
上下風向偏向羽根の自重によるねじれを精度良く抑制することができる。
【0041】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0042】
(実施の形態)
図1、2は、実施の形態に係る空気調和機1の断面を示す。図1、2に示すように、本実施の形態における空気調和機1は、上下風向偏向羽根2と、左右風向偏向羽根3と、吹出口4と、熱交換器5と、クロスフローファン6と、本体18とを備える。図1は、空気調和機1の上下風向偏向羽根2が吹出口4を閉じた状態(停止状態)を示し、図2は、空気調和機1の上下風向偏向羽根2が吹出口4を開いた状態(運転状態)を示す。
【0043】
上下風向偏向羽根2は、吹出口4から吹き出される風の風向を上下方向に偏向する羽根である。本実施の形態における上下風向偏向羽根2は、2つの板状の羽根により構成されている。具体的には、空気調和機1の前面側に配置された上羽根と、背面側に配置された下羽根により、上下風向偏向羽根2が構成されている。左右風向偏向羽根3は、吹出口4から吹き出される風の風向を左右方向に偏向する羽根である。左右風向偏向羽根3は、吹出口4の内側であって空気調和機1の内部に配置されている。吹出口4は、室内へ風を吹き出すように、本体18に設けられた開口部である。熱交換器5は、周囲を通過する空気を冷媒と熱交換させることで、吹出口4から吹き出す風の温度を調整するものである。クロスフローファン6は、空気調和機1の外部から空気を吸い込んで、吸い込んだ空気を吹出口4から吹き出すファンである。クロスフローファン6は、熱交換器5の下流側に配置されている。本体18は、空気調和機1の筐体を構成する部分である。本体18には、上述した上下風向偏向羽根2、左右風向偏向羽根3、熱交換器5およびクロスフローファン6が直接的又は間接的に取り付けられている。
【0044】
このような構成によれば、クロスフローファン6を運転させて、空気調和機1の外部から空気を吸い込むとともに、吸い込んだ空気を熱交換器5にて熱交換させた上で、上下風向偏向羽根2および左右風向偏向羽根3によって偏向しながら、吹出口4から吹き出すことができる。
【0045】
図1、2では図示されていないが、本実施の形態にかかる空気調和機1はさらに、上下風向偏向羽根2の自重によるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構を備えている。当該ねじれ抑制機構について、図3図6を用いて説明する。図3図6はそれぞれ、本実施の形態にかかる空気調和機1のねじれ抑制機構7の斜視図、拡大斜視図、分解斜視図、側面図を示す。
【0046】
図3には、上下風向偏向羽根2に連結されたねじれ抑制機構7およびモータ8が示されている。図3では、上下風向偏向羽根2のうち下羽根2のみを図示している。図3に示すように、上下風向偏向羽根2は、支持軸Aを備え、支持軸Aの一端と他端に、ねじれ抑制機構7およびモータ8をそれぞれ連結している。支持軸Aは、上下風向偏向羽根2を支持する軸であり、上下風向偏向羽根2の回転中心でもある。上下風向偏向羽根2は、支持軸Aを中心として上下方向に回転可能である。
【0047】
ここで、上下風向偏向羽根2(の支持軸A)には、上下風向偏向羽根2の自重によるトルクが発生する(矢印A1)。ねじれ抑制機構7は、上下風向偏向羽根2の自重によるトルクを減少させる所定の付勢力を、上下風向偏向羽根2の支持軸Aに付与する機構である(矢印A2)。
【0048】
モータ8は、上下風向偏向羽根2を上下方向に回転移動させるように駆動するモータである(矢印A3)。モータ8は、空気調和機1の運転状態に応じて、上下風向偏向羽根2の角度を所定の角度に調整するように駆動する。
【0049】
次に、ねじれ抑制機構7の詳細について、図4図6を用いて説明する。
【0050】
図4図6に示すように、ねじれ抑制機構7は、一対のカバー9a、9bと、回転部材10と、ねじりコイルばね11とを備える。
【0051】
カバー9a、9bは、回転部材10およびねじりコイルばね11を外部の衝撃等から守るように被覆するカバーである。カバー9aは、上下風向偏向羽根2の支持軸Aに近い側に配置され、カバー9bは、支持軸Aから遠い側に配置される。カバー9aは、図1、2に示した本体18に固定されており、これにより、ねじれ抑制機構7が本体18内に固定される。
【0052】
回転部材10は、カバー9a、9b内に回転可能に設けられた部材である。回転部材10は、その一端を回転中心として回転可能に配置されている。回転部材10の一端には、接続部12が設けられている。接続部12は、上下風向偏向羽根2の支持軸Aに接続するように延びている。接続部12は、回転部材10の軸方向に延びるとともに、カバー9aに設けられた貫通孔14(図5参照)に挿入された状態で、支持軸Aに連結される。これにより、回転部材10は、上下風向偏向羽根2の支持軸Aに連結される。このように、回転部材10は支持軸Aに連結されることで、上下風向偏向羽根2の回転に応じて、支持軸Aとの接続部12を中心として、上下風向偏向羽根2と同方向かつ同じ角度にて回転可能となる。
【0053】
回転部材10の他端側には、支持軸Aから遠い側に、支持軸Aと略平行に突出する略円柱状の偏心突起部10aが設けられている。偏心突起部10aには、偏心突起部10aの外側面を覆うローラ13が設けられている。偏心突起部10a(ローラ13)は、回転部材10の回転中心である接続部12から、回転部材10の径方向に偏心した位置に取り付けられている。
【0054】
カバー9aには、支持軸Aから遠い側に、支持軸Aと略平行に突出する略円柱状の突起部9cが設けられている。突起部9cは、上下風向偏向羽根2が吹出口4を閉じた状態で、突起部9cとローラ13と接続部12(支持軸A)のそれぞれの中心とが、略直線状に並ぶ位置に設けられている。また、突起部9cは、接続部12(支持軸A)と突起部9cとの中心間距離が、接続部12(支持軸A)とローラ13との中心間距離より長くなる位置に設けられている。
【0055】
ねじりコイルばね11は、上下風向偏向羽根2の自重によるトルクを減少させる付勢力を発生させる付勢手段の一例である。ねじりコイルばね11は、回転部材10のローラ13に接触するように配置されるとともに、カバー9a(突起部9c)に固定されている。ねじりコイルばね11は、回転部材10における回転中心である接続部12から径方向に偏心した位置にて、回転部材10に接触している。ねじりコイルばね11は、回転部材10を付勢することで、回転部材10および支持軸Aを介して上下風向偏向羽根2を付勢可能に構成される。
【0056】
ねじりコイルばね11は、らせん状に巻かれたコイル部15と、コイル部15から延びる第1の延出部16aおよび第2の延出部16bとを備える。コイル部15は、カバー9aにおける突起部9cに巻き付けられて固定されている。第1の延出部16aは、回転部材10のローラ13に接触するように、コイル部15の一端から延びる部分である。第2の延出部16bは、第1の延出部16aとは反対側のコイル部15の他端から延びる部分であり、カバー9aに固定されている。このような構成により、カバー9aに固定された部分であるコイル部15および第2の延出部16bが、ねじりコイルばね11の支点となる。
【0057】
次に、上述した空気調和機1のねじれ抑制機構7における動作および作用について、図7図9を用いて説明する。
【0058】
図7は、上下風向偏向羽根2が吹出口4を閉じた状態を示す(閉じ位置)。図8は、上下風向偏向羽根2が閉じ位置から約45度下方に回転した状態を示す。図9は、上下風向偏向羽根2が閉じ位置から約90度下方に回転した状態、すなわち上下風向偏向羽根2が最も下方に開いた状態を示す(最大の開き位置)。
【0059】
図7に示すように、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にある状態では、上下風向偏向羽根2の重心2gと、上下風向偏向羽根2の回転中心である支持軸Aの高さ位置が略同じであり、重心2gと支持軸Aの互いの水平方向距離D1が略最大となっている。よって、上下風向偏向羽根2の自重Gによって上下風向偏向羽根2(の支持軸A)にかかるトルクT1も略最大となっている。
【0060】
一方で、ねじれ抑制機構7においては、ねじりコイルばね11が回転部材10を付勢することで、トルクT1を減少させる方向(トルクT1の逆方向)に回転部材10を付勢している。具体的には、ねじりコイルばね11の第1の延出部16aが回転部材10のローラ13に接触して、ローラ13を押圧する。これにより、回転部材10に対して、図7に示す方向の外力S1が付与される。
【0061】
図7に示すように、第1の延出部16aは、接触位置P1にてローラ13に接触するとともに、回転部材10に対して所定の接触角度で接触している。ここでの接触角度とは、回転部材10に接触する第1の延出部16aが延びる方向、又は、その方向に対して垂直な外力S1が作用する方向に基づく角度を意味する。回転部材10にこのような外力S1が付与されることにより、接続部12を回転中心とする回転部材10において、図7に示されるようなトルクT1と逆向きのトルクT2が生じる。このようなトルクT2を回転部材10に生じさせることにより、回転部材10の接続部12に連結された支持軸Aに対して、上下風向偏向羽根2の自重によるトルクT1を減少させる(打ち消す)ように作用させることができる。
【0062】
本実施の形態では、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にある状態において、ねじれ抑制機構7による付勢力としてのトルクT2が概ね最大となるように設定されている。具体的には、図7に示す状態において、回転部材10のローラ13にかかる外力S1の方向と、回転部材10における接続部12(支持軸A)の中心からローラ13に向かう方向L1とが概ね垂直(互いに成す角度α1が約90度)となるように、ねじりコイルばね11および回転部材10を配置している。このような配置により、ねじりコイルばね11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分は、外力S1と略等しくなる。これにより、外力S1によって上下風向偏向羽根2の支持軸AにかかるトルクT2が略最大となるようにしている。
【0063】
このように、本実施の形態における空気調和機1では、上下風向偏向羽根2の自重Gにより支持軸AにかかるトルクT1と、ねじれ抑制機構7によるトルクT1を減少させる方向のトルクT2がともに、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にあるときに略最大となるように設定されている。このような設定により、トルクT1とトルクT2を効果的に打ち消すことができる。よって、ねじれ抑制機構7が配置される側での上下風向偏向羽根2に生じるねじれのトルクを小さくすることができ、上下風向偏向羽根2におけるねじれを抑制することができる。
【0064】
本実施の形態ではさらに、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にある状態において、トルクT2がトルクT1よりも若干大きくなるように設定されている(図10を用いて後述する)。このような設定により、上下風向偏向羽根2が吹出口4を閉じる際により確実に精度良く吹出口4を閉じることができる。
【0065】
次に、図8に示される上下風向偏向羽根2が閉じ位置から所定角度(本実施の形態では、45度)開いた位置にある状態について説明する。
【0066】
図8に示す状態では、上下風向偏向羽根2が閉じ位置から下方へ回転移動したことにより、上下風向偏向羽根2における重心2gと、回転中心である支持軸Aの互いの水平方向距離D2が前述のD1よりも短くなっている。これにより、上下風向偏向羽根2の自重Gにより支持軸AにかかるトルクT3は、図7に示される状態でのトルクT1よりも小さくなっている。
【0067】
一方で、ねじれ抑制機構7においては、上下風向偏向羽根2が回転したことに伴って、上下風向偏向羽根2に連結された回転部材10も、接続部12(支持軸A)を中心として同方向(図8で時計回り)へ回転している。これにより、回転部材10のローラ13の位置が変化するとともに、ねじりコイルばね11の第1の延出部16aがローラ13と接触する接触位置P2も前述の接触位置P1から変化しており、接触角度も変化している。
【0068】
このとき、図8に示すように、ねじりコイルばね11からローラ13に対して、第1の延出部16aの延出する方向と垂直な方向に外力S2が付与される。ここで、ねじりコイルばね11と回転部材10が接触する接触位置P2が、図7に示される状態の接触位置P1よりも、ねじりコイルばね11の支点であるコイル部15および第2の延出部16bから遠くなっているため、この外力S2は外力S1よりも若干大きくなっている。その一方で、この外力S2の向きは、接続部12(支持軸A)の中心からローラ13に向かう方向L2に対して、90度よりも小さい所定の角度α2を成している。このため、ねじりコイルばね11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分Fは、外力S2よりも小さくなる。これにより、外力S2によって上下風向偏向羽根2の支持軸AにかかるトルクT4も、図7に示される状態でのトルクT2より小さくなる。
【0069】
このように、本実施の形態では、上下風向偏向羽根2の回転によって、上下風向偏向羽根2の自重Gにより支持軸AにかかるトルクT3が小さくなることに応じて、トルクT3を減少させるためのねじれ抑制機構7によるトルクT4も小さくなるように設定している。このような設定により、トルクT3をトルクT4で効果的に減少させることができるため、ねじれ抑制機構7が配置される側での上下風向偏向羽根2におけるねじれを抑制することができる。
【0070】
次に、図9に示される上下風向偏向羽根2が最大の開き位置にある状態について説明する。
【0071】
図9に示す状態では、上下風向偏向羽根2が図8に示す状態からさらに下方へ回転移動して、閉じ位置から概ね90度回転している。ここでは、上下風向偏向羽根2における重心2gと回転中心である支持軸Aの互いの水平方向距離が略0となっている。これにより、上下風向偏向羽根2の自重Gにより上下風向偏向羽根2の支持軸Aにかかるトルクも同様に略0となっている。
【0072】
一方で、ねじれ抑制機構7においては、上下風向偏向羽根2が回転したことに伴って、上下風向偏向羽根2に連結された回転部材10も、接続部12(支持軸A)を中心として同方向(図9で時計回り)へ回転している。これにより、ねじりコイルばね11の第1の延出部16aがローラ13と接触する接触位置P3およびその接触角度も変化している。このとき、図9に示すように、ねじりコイルばね11からローラ13に対して、第1の延出部16aの延出する方向と垂直な方向に外力S3が付与される。ここで、ねじりコイルばね11と回転部材10が接触する接触位置P3は、図8に示される状態の接触位置P2よりも、ねじりコイルばね11の支点であるコイル部15および第2の延出部16bから遠くなっているため、この外力S3は外力S2よりも若干大きくなる。その一方で、この外力S3の向きは、接続部12(支持軸A)の中心からローラ13に向かう方向L3と略平行(互いに成す角度が略0度)となっている。このため、ねじりコイルばね11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分は略0となる。これにより、外力S3によって回転部材10を介して上下風向偏向羽根2の支持軸Aにかかるトルクも略0となる。
【0073】
このように、本実施の形態では、上下風向偏向羽根2の自重Gにより支持軸Aにかかるトルクが略0となることに応じて、ねじれ抑制機構7によるトルクを減少させるトルクも略0となるように設定されている。このような設定により、上下風向偏向羽根2におけるねじれを精度良く抑制することができる。
【0074】
上述したトルクの関係を示すグラフを図10に示す。
【0075】
図10では、横軸に上下風向偏向羽根2の閉じ位置からの開き角度(度)をとり、縦軸にトルク(g・cm)をとっている。ライン4が、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルク(T1、T3を含む)を示し、ライン5が、ねじりコイルばね11の付勢によって支持軸Aにかかる反対向きのトルク(T2、T4を含む)を示す。ライン6は、ライン4とライン5のトルクの差であり、それぞれのトルクの合成トルクを示す。このライン6は、上下風向偏向羽根2におけるねじれのトルクを表している。
【0076】
図10のライン4に示すように、上下風向偏向羽根2の開き角度が大きくなるほど、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクは小さくなる。これに対して、本実施の形態では、図10のライン5に示すように、ねじりコイルばね11の付勢によって支持軸Aにかかるトルク(上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクを減少させるトルク)も同様に、上下風向偏向羽根2の開き角度が大きくなるほど、小さくなるように設定している。これにより、ライン6に示すように、上下風向偏向羽根2の開き角度にかかわらず、上下風向偏向羽根2にかかるねじれのトルクを0に近づけるように作用させることができる。このような構成により、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれを精度良く抑制することができる。
【0077】
なお、図10のライン5に示すように、少なくとも、上下風向偏向羽根2が最大の開き位置(90度)にあるときよりも、上下風向偏向羽根2が閉じ位置(0度)にあるときの方が、ねじりコイルばね11の付勢によって支持軸Aにかかるトルク(ねじりコイルばね11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分)が大きくなるように設定している。これにより、従来の空気調和機とは異なり、上下風向偏向羽根の自重Gによるねじれを精度良く抑制することができる(図14のライン2参照)。
【0078】
また本実施の形態では、上下風向偏向羽根2が閉じ位置(0度)にあるときにおいて、上下風向偏向羽根2の自重Gにより支持軸Aにかかるトルク(ライン4)よりも、ねじりコイルばね11によって回転部材10に付与される回転部材10の回転方向の力成分(ライン5)の方が大きくなるように設定されている。すなわち、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にあるときに、ライン6で示されるトルクの値が正となっている。このように回転部材10およびねじりコイルばね11を配置することにより、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にあるときに、吹出口4に隙間が生じないように上下風向偏向羽根2をより精度良く閉じることができる。
【0079】
なお、図10に示すようなトルクの関係を成立させるために、本実施の形態のねじれ抑制機構7では、回転部材10とねじりコイルばね11を所定の位置・角度の関係にて配置している。具体的には、図7−9で示したように、回転部材10の回転に伴い、回転部材10とねじりコイルばね11との接触角度が変化することにより、ねじりコイルばね11によって回転部材10に付与される回転部材10の回転方向の力成分(図8のF参照)を変化させるように、回転部材10とねじりコイルばね11を配置している。このように、回転部材10とねじりコイルばね11の接触角度の変化の関係を利用することで、ねじれ抑制機構7をより簡易な構成で実現することができる。
【0080】
さらに、本実施の形態のねじれ抑制機構7では、回転部材10の回転に伴い、ねじりコイルばね11と回転部材10が接触する位置がねじりコイルばね11の支点(コイル部15および第2の延出部16)から遠くなるほど、ねじりコイルばね11が回転部材10に付与する力(S1−S3)は大きくなる。その一方で、その力のうちの回転部材10の回転方向の力成分(図8のF参照)は小さくなるように、ねじりコイルばね11を配置している。このように、ねじりコイルばね11が回転部材10に付与する力(S1−S3)と、その力のうちの回転部材10の回転方向の力成分(F)の増加/減少が逆転するように設定することで、ねじれ抑制機構7をより簡易な構成で実現することができる。
【0081】
また、本実施の形態のねじれ抑制機構7では、回転部材10を付勢する付勢部材としてねじりコイルばね11を用いている。このように、付勢部材としてねじりコイルばねを用いることで、ねじれ抑制機構7をより簡易な構成で実現することができる。
【0082】
また、本実施の形態のねじれ抑制機構7では、回転部材10において、ねじりコイルばね11と接触する位置にローラ13を設けている。このようなローラ13を設けることで、回転部材10とねじりコイルばね11の接触による摩耗や損傷を抑制することができる。
【0083】
上述のように、本実施の形態にかかる空気調和機1は、支持軸Aを有し、支持軸Aを中心に回転することにより、吹出口4を閉じる閉じ位置と吹出口4を開く開き位置との間で、風向を上下方向に偏向する上下風向偏向羽根2を備える。さらに、上下風向偏向羽根2の支持軸Aの一端に接続され、支持軸Aを回転させるように駆動するモータ8を備える。さらに、上下風向偏向羽根2の支持軸Aの他端に接続され、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構7を備える。ねじれ抑制機構7は、支持軸Aの他端に接続されるとともに支持軸Aの回転に伴って回転する回転部材10を備える。さらに、回転部材10の回転中心から偏心した位置にて回転部材10に接触して、回転部材10を上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクを減少させる方向に付勢する付勢部材11(ねじりコイルばね11)を備える。ここで、付勢部材11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分Fは、回転部材10が上下風向偏向羽根2の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根2の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される。
【0084】
一般的な空気調和機においては、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクは、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にあるときに最も大きくなり、最大の開き位置にあるときに最も小さくなることが多い。これを受けて、付勢部材11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分Fを、回転部材10が上下風向偏向羽根2の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根2の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定している。このような設定により、上下風向偏向羽根2の開き角度に応じて、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクを付勢部材11の付勢によって効果的に減少させることができる。これにより、上下風向偏向羽2根の自重Gによるねじれを精度良く抑制することができる。
【0085】
また、本実施の形態にかかる上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれを抑制するためのねじれ抑制機構7は、上下風向偏向羽根2の支持軸Aに接続され、支持軸Aの回転に伴って回転する回転部材10と、回転部材10の回転中心から偏心した位置にて回転部材10に接触して、回転部材10を付勢する付勢部材11とを備える。ここで、付勢部材11が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分Fは、回転部材10が上下風向偏向羽根2の最大の開き位置に対応する位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根2の閉じ位置に対応する位置にあるときの方が大きくなるように設定される。
【0086】
このような構成により、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれを精度良く抑制することができる。
【0087】
以上、上述の実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されない。例えば、実施の形態では、付勢手段11の一例としてねじりコイルばねを設けた場合について説明したが、このような場合に限らず、その他の付勢手段を用いてもよい。例えば、板ばね、反転ばね、樹脂ばね、スプリングばねなどを付勢手段として用いてもよい。このような場合であっても、付勢手段と回転部材10の互いの位置関係や接触角度の関係を適宜設定することで、実施の形態と同様の効果を奏することができる。具体的には、少なくとも、付勢手段が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分を、上下風向偏向羽根2が最大の開き位置にあるときよりも、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にあるときの方が大きくなるように設定すれよい。これにより、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれを精度良く抑制することができる。さらには、付勢手段の付勢によって支持軸Aにかかるトルクが、上下風向偏向羽根2の開き角度が大きくなるにつれて小さくなるように設定してもよい。このような設定により、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれをより精度良く抑制することができる。
【0088】
また、実施の形態では、上下風向偏向羽根2が閉じ位置にあるときに、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクが略最大となる場合、すなわち、支持軸Aと重心2gが略同じ高さ位置にくる場合について説明したが、このような場合に限らない。具体的には、上下風向偏向羽根2が閉じ位置以外の位置にあるときに、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクが略最大となるように設定してもよい。このような場合であっても同様に、ねじりコイルばね11と回転部材10の互いの位置関係や接触角度の関係を適宜設定することで、上下風向偏向羽根2の自重Gによって支持軸Aにかかるトルクを効果的に減少させるようにすることができる。
【0089】
また、実施の形態では、上下風向偏向羽根2の可動範囲が、閉じ位置での0度から最大の開き位置での90度までである場合について説明したが、このような場合に限らず、これらの角度は適宜設定してもよく、可動範囲はこれに限らない。
【0090】
また、実施の形態では、回転部材10に接触するねじりコイルばね11の第1の延出部16aが湾曲せずに完全な直線状である場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、図11に示すように、途中で湾曲するような延出部26a(第1の延出部26a)をねじりコイルばね21が有してもよい。図11に示す例では、ねじりコイルばね21の延出部26aは、回転部材10の回転中心(接続部12)の反対側(ローラ13側)から回転部材10の先端(ローラ13)に接触するように延びている。換言すると、ねじりコイルばね21の延出部26aは、回転部材10の接続部12が設けられた側と反対側の端部(ローラ13が設けられた側の端部)から、ローラ13に接触するように延びている。また、延出部26aの先端は、回転部材10に近づく方向に湾曲している。このような形状によれば、湾曲点26bを超える位置にて延出部26aがローラ13に接触したときに、ねじりコイルばね21が回転部材10に付与する回転部材10の回転方向の力成分を増加させることができる。これにより、特に上下風向偏向羽根2の開き角度が大きい場合において、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれをより効果的に抑制することができる(図10のライン4、5参照)。よって、上下風向偏向羽根2の自重Gによるねじれをより精度良く抑制することができる。
【0091】
また、実施の形態では、ねじりコイルばね11は、第1の延出部16aにおける第2の延出部16bと対向する側(図6では左側)で、ローラ13と接触する場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、図11に示すように、第1の延出部26aにおける第2の延出部26cと対向する側の反対側(図11では左側)で、ローラ13と接触するように、ねじりコイルバネ21を配置してもよい。このような配置によれば、上下風向偏向羽根2が閉じ位置から開き位置に回転して、回転部材10が同方向に回転するに伴い(図11で時計回りに回転することに伴い)、第1の延出部26aを第2の延出部26bに近付ける方向に押し出すこととなる。すなわち、回転部材10によって、コイルばね21を巻き込む方向へ押し出すこととなる。これにより、図6に示される構成のような、回転部材10によりコイルばね21を広げる方向へ押し出す場合に比べて、コイルばね21の信頼性を維持・向上させることができる。
【0092】
また、実施の形態では、回転部材10の偏心突出部10aにローラ13を設け、ローラ13とねじりコイルばね11が接触するものとして説明しが、ローラ13を設けることなく、偏心突出部10aとねじりコイルバネ11が直接接触するものであってもよい。
【0093】
なお、上記様々な実施の形態のうちの任意の実施の形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、上下風向偏向羽根の自重によるねじれをより精度良く抑制することができるため、家庭用や業務用を含めた各種の空気調和機に適用することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 空気調和機
2 上下風向偏向羽根
3 左右風向偏向羽根
4 吹出口
5 熱交換器
6 クロスフローファン
7 ねじれ抑制機構
8 モータ
9a、9b カバー
10 回転部材
11 ねじりコイルばね(付勢手段)
12 接続部
13 ローラ
14 貫通孔
15 コイル部
16a 第1の延出部
16b 第2の延出部
17 ねじれ抑制機構
18 本体
26 延出部
A 支持軸
G 重心
T1−T4 トルク
S1−S3 外力
L1−L3 方向
P1−P3 接触位置
F 力成分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14