(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359964
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】遠隔操作式の作業機械
(51)【国際特許分類】
B60R 16/033 20060101AFI20180709BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20180709BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
B60R16/033 P
B60R16/02 645D
E02F9/20 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-255627(P2014-255627)
(22)【出願日】2014年12月17日
(65)【公開番号】特開2016-113119(P2016-113119A)
(43)【公開日】2016年6月23日
【審査請求日】2017年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 一晶
【審査官】
菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−099946(JP,U)
【文献】
特開2012−091707(JP,A)
【文献】
特開平04−274944(JP,A)
【文献】
特開平10−219748(JP,A)
【文献】
米国特許第05479909(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/02
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行移動するための走行体と、
前記走行体の上部に旋回可能に搭載され運転室及びエンジン室を有する旋回体と、
前記旋回体の前部に俯仰の動作が可能に設けた多関節型の作業装置と、
前記エンジン室に収容されたエンジンと、
前記エンジンによって駆動される発電機と、
前記発電機から供給される電力を蓄電すると共に前記発電機の出力端子の電圧が下がると放電状態に切り換わるバッテリーと、
キーオン時に前記バッテリーに接続されるキーオン端子を有するキースイッチと、
第1給電ラインを介して前記キーオン端子に接続された燃料ポンプと、
第2給電ラインを介して前記キーオン端子に接続された警告装置と、
前記発電機に設けられアースラインを介して前記警告装置に接続されたレギュレータと、
遠隔操作装置からの操作信号を受信する受信装置と、
前記受信装置で受信した操作信号に応じて制御対象機器を制御するコントローラとを備え、
前記エンジン及び前記発電機が停止又はその回転数が設定値を下回ると前記レギュレータによって前記アースラインがアースされて前記警告装置に電流が流れ、前記バッテリーが放電状態にあることを前記警告装置によって報知する遠隔操作式の作業機械において、
前記警告装置を作動させた前記アースラインを流れる電流で励磁されて前記第1給電ラインを遮断するリレーを備え、前記エンジン及び前記発電機が停止又はその回転数が前記設定値を下回って前記警告装置が作動すると前記第1給電ラインを遮断して前記燃料ポンプを停止させることを特徴とする遠隔操作式の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、遠隔操作式の作業機
械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械にはリモコン等で遠隔操作することができるものがある(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−168778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遠隔操作に対応した作業機械であっても、作業機械本体の電源を入り切りするには運転室でキースイッチを操作しなければならない場合が多い。従って、遠隔操作中に何らかのトラブルでエンジンが停止して作業不能に陥っても、キースイッチがオンのままであるため作動し続ける電気機器が存在し得る。作業機械に直ぐには近付けないような現場では、作業機械のバッテリー上がりが懸念される。
【0005】
本発明の目的は、エンジンが停止又は設定値を下回って回転数が低下したときのバッテリーの持続時間を延長させることができる
遠隔操作式の作業機
械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発
明は、走行移動するための走行体と、前記走行体の上部に旋回可能に搭載され運転室及びエンジン室を有する旋回体と、前記旋回体の前部に俯仰の動作が可能に設けた多関節型の作業装置と、前記エンジン室に収容されたエンジンと、前記エンジンによって駆動される発電機と、前記発電機から供給される電力を蓄電すると共に前記発電機の出力端子の電圧が下がると放電状態に切り換わるバッテリーと、キーオン時に前記バッテリーに接続されるキーオン端子を有するキースイッチと、第1給電ラインを介して前記キーオン端子に接続された
燃料ポンプと、第2給電ラインを介して前記キーオン端子に接続された警告装置と、前記発電機に設けられアースラインを介して前記警告装置に接続されたレギュレータ
と、遠隔操作装置からの操作信号を受信する受信装置と、前記受信装置で受信した操作信号に応じて制御対象機器を制御するコントローラとを備え、前記エンジン及び前記発電機が停止又はその回転数が設定値を下回ると前記レギュレータによって前記アースラインがアースされて前記警告装置に電流が流れ、前記バッテリーが放電状態にあることを前記警告装置によって報知する
遠隔操作式の作業機
械において、前記警告装置を作動させた前記アースラインを流れる電流で励磁されて前記第1給電ラインを遮断するリレーを備え、前記エンジン及び前記発電機が停止又はその回転数が前記設定値を下回って前記警告装置が作動すると前記第1給電ラインを遮断して前記
燃料ポンプを停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エンジンが停止又は設定値を下回って回転数が低下したときのバッテリーの持続時間を延長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る電気回路を適用する作業機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
【
図2】
図1に示した油圧ショベルに搭載された電気回路のうち本発明の一実施形態に係る部分を抽出して表した電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
1.作業機械
図1は本発明の一実施の形態に係る電気回路を適用する作業機械の一例である油圧ショベルの側面図である。
【0011】
同図に示した油圧ショベル1は、走行移動するための走行体4、走行体4の上部に旋回可能に搭載した旋回体2、旋回体2の前部に俯仰動可能に設けた作業装置6を備えている。走行体4と旋回体2とで車体を構成する。作業装置6は多関節型の掘削装置であり、旋回体2の支持構造体を形成する梯子状のベースフレーム5の前部側に取付けられている。ベースフレーム5にはまた、運転室9、エンジン室10及びカウンタウェイト3が搭載されている。ベースフレーム5及びこれに支持された運転室9、エンジン室10及びカウンタウェイト3等は旋回体2の構成要素である。運転室9は作業装置6の基部の左側に、カウンタウェイト3は旋回体2の旋回中心を挟んで作業装置6の反対側(後部)に、エンジン室10はカウンタウェイト3及び運転室9の間にそれぞれ位置している。
【0012】
2.電気回路
図2は油圧ショベル1に搭載された電気回路のうち本実施形態に係る部分を抽出して表した電気回路図である。
【0013】
図2に示した電気回路は、バッテリー11、キースイッチ12、発電機13、燃料ポンプ14、操作装置15、受信装置16、コントローラ17、モニタ18及びリレー19を備えている。
【0014】
バッテリー11のマイナス端子はアースされ、プラス端子はキースイッチ12及び発電機13の各B端子に接続されている。バッテリー11は発電機13から供給される電力を蓄電し、放電時にはキースイッチ12を介して電力を電気機器(
図2では燃料ポンプ14、コントローラ17、モニタ18等)に供給する。
【0015】
キースイッチ12は、B端子の他、BR端子、R1端子、R2端子、C端子及びAcc端子を備えている。キースイッチ12を暖機位置(PRE−HEATING)にすると、B端子、BR端子及びR1端子が接続してBR端子及びR1端子がB端子を介してバッテリー11に接続し、R2端子、C端子及びAcc端子とバッテリー11との接続が遮断される。キースイッチ12をキーオフ位置(OFF)にすると、B端子と他の端子との接続が遮断され、BR端子、R1端子、R2端子、C端子及びAcc端子とバッテリー11との接続が遮断される。キースイッチ12をキーオン位置(ON)にすると、B端子、BR端子、R2端子及びAcc端子が接続してBR端子、R2端子及びAcc端子がB端子を介してバッテリー11に接続し、R1端子及びC端子とバッテリー11との接続が遮断される。本願明細書で「キーオン端子」と記載した場合には、キーオン位置でバッテリー11に接続するBR端子、R2端子又はAcc端子を意味することとする。キースイッチ12を始動位置(START)にすると、B端子、BR端子、R1端子、C端子及びAcc端子が接続してBR端子、R1端子、C端子及びAcc端子がB端子を介してバッテリー11に接続し、R2端子とバッテリー11との接続が遮断される。
【0016】
発電機13は、エンジン室10内に収容されたエンジン(不図示)の出力軸に連結されており、エンジンによって駆動されて発電する。発電機13のB端子はキースイッチ12のB端子及びバッテリー11に接続しており、発電時にはそのB端子を介してバッテリー11及びキースイッチ12に電力を供給する。発電機13のIG端子は、給電ライン28を介してキースイッチ12のBR端子に接続されている。また、発電機13のL端子は、アースライン23を介してモニタ18のチャージランプ24に接続している。チャージランプ24は、給電ライン29を介してキースイッチ12のAcc端子に接続されている。給電ライン28,29の途中にはそれぞれヒューズ20,21が設けられている。モニタ18は、例えば運転室9において運転席(不図示)に搭乗した搭乗者が視認し易い位置に設けられており、特に図示していないがチャージランプ24以外の表示灯やLCD等を備えている。チャージランプ24はエンジン及び発電機13が停止又はその回転数が予め定めた設定値(下限値)を下回ってバッテリー11が放電状態にあることを搭乗者に知らせる警告装置である。本願明細書では、エンジンが停止した状態又はエンジンの回転数が設定値を下回って低下した状態をエンジン停止等という。発電機13にはエンジン停止等を条件にアースライン23をアースするレギュレータ25が備わっている。
【0017】
操作装置15は、運転室9において運転席(不図示)に隣接して設けられていて、操作方向及び操作量に応じた操作信号をコントローラ17に出力する。受信装置16はリモコン等の遠隔操作装置22からの操作信号を受信し、受信した操作信号をコントローラ17に出力する。コントローラ17は、入力された操作信号に応じて指令値を演算し、対応する制御対象機器(不図示)に指令信号を出力する。制御対象機器としては、例えば作業装置6、走行体4、旋回体2をそれぞれ駆動する油圧アクチュエータに供給する圧油の流れを制御するコントロールバルブ等が例示できる。
【0018】
燃料ポンプ14はエンジンに燃料を供給する役割のもので、ヒューズ20を介してキースイッチ12のBR端子に接続している。燃料ポンプ14とキースイッチ12のBR端子とを接続する配線の途中にはリレー19が設けられている。リレー19はコイル26及びスイッチ27を備えている。コイル26は給電ライン28とアースライン23とを接続している。スイッチ27は給電ライン28上に設けられていて、給電ライン28を連通したり遮断したりする。
【0019】
3.動作
キースイッチ12を始動位置(START)にすると、操作装置15による操作を禁止する安全装置としてのロックレバー(不図示)がロック状態(操作禁止状態)にあることを条件にしてスタータモータ(不図示)が回転し、エンジン(不図示)が始動する。エンジンが始動すると発電機13が回転し、発電機13のB端子の電圧が上昇しバッテリー11が充電されると共にキースイッチ12のB端子に発電機13によって電圧がかけられるようになる。その後、キースイッチ12がキーオン位置(ON)になった後もエンジンや発電機13は動作し続ける。
【0020】
キーオン位置では、キースイッチ12の内部でB端子がBR、R2及びAcc端子に接続する。これにより、BR端子に接続した燃料ポンプ14に電圧が掛かる。燃料ポンプ14はアースされているため、BR端子、給電ライン28、ヒューズ20及びリレー19のスイッチ27を介して燃料ポンプ14に電流が流れ、燃料ポンプ14が駆動される。また、発電機13のIG端子にもBR端子、給電ライン28及びヒューズ20を介して電流が流れ、これがレギュレータ25の電源となる。一方、Acc端子に接続したコントローラ17にもAcc端子、給電ライン29及びヒューズ21を介して電流が流れ、これがコントローラ17の電源となる。但し、同じくAcc端子に接続したチャージランプ24にも電圧は掛かるが、エンジン回転中はレギュレータ25により発電機13のL端子がアースされないためチャージランプ24には電流が流れず、チャージランプ24は消灯した状態である。
【0021】
本願明細書ではキースイッチ12がキーオン位置にあってエンジンが正常に動作している状態を可動状態といい、可動状態時に操作装置15又は遠隔操作装置22が操作されると、操作信号に応じてコントローラ17から指令信号が出力され、油圧ショベル1が動作する。
【0022】
このとき、可動状態時に何らかのトラブルによってエンジン停止等になると、発電機13に備わったレギュレータ25によって発電機13のL端子がアースされる。これにより、アースライン23がアースされてチャージランプ24に電流が流れ、チャージランプ24が点灯する。同時に、給電ライン28もリレー19及びアースライン23を介してアースされ、リレー19においては給電ライン28を流れる電流がコイル26に流れるため、コイル26が励磁されてスイッチ27が開き、給電ライン28から燃料ポンプ14に供給される電流が遮断される。これにより燃料ポンプ14が停止する。
【0023】
4.効果
仮に
図2の電気回路においてリレー19を省略し、リレー19を介さずに給電ライン28を燃料ポンプ14に接続した場合、何らかのトラブルによってエンジン停止等に陥った場合、発電機13のB端子の電圧が下がり、バッテリー11が放電状態に切り換わる。このとき、キースイッチ12のBR端子と燃料ポンプ14との接続状態が維持されるため、発電機13が作動していないにも関わらず燃料ポンプ14が駆動され、バッテリー11の電力を浪費してしまう。
【0024】
それに対し、本実施形態においては、エンジン停止等を条件に点灯するチャージランプ24に着目し、給電ライン28にリレー19を設け、チャージランプ24の配線に電流が流れた際にスイッチ27で給電ライン28を遮断するように構成した。これにより、エンジン停止等に陥った場合にバッテリー11が放電状態に切り換わっても、燃料ポンプ14への給電が遮断されるのでバッテリー11の電力消費を抑えることができる。従って、エンジン停止等にあるときのバッテリー11の持続時間を大幅に延長させることができる。
【0025】
特に本実施形態のように遠隔操作に対応した油圧ショベル1の場合、遠隔操作によって人が立ち入れない高放射線環境下等で稼働させるとき、仮に通信エラー等によってエンジン停止等に陥ってもレスキューロボットが到着するまでバッテリー11を持続させられる可能性が大きく増す。よって、人が容易に近付けないところで油圧ショベル1を稼働させる場合でも、エンジン停止等に陥った場合にエンジン再始動により可動状態に復帰させられる可能性が増す。
【0026】
5.その他
本実施形態では
、リレー19の駆動電流が流れるアースライン23の駆動対象である警告装置としてチャージランプ24を例に挙げて説明したが、アースライン23に接続する警告装置としては、単なる表示灯ではなく、例えば警告音、音声、その他表示の機能を有する装置(ブザー、スピーカ、LCD等)を適用することも可能である。また、コイル26にアースライン23から電流が流れるようにしたが、要するにチャージランプ24に流れる電流がコイル26に流れるようにすれば良いため、アースライン23ではなく給電ライン29にコイル26を接続する構成とすることも考えられる。
【0027】
また
、1本の作業装置6を備えた油圧ショベル1に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、2本の作業装置を備えたいわゆる双腕型作業機械、或いはホイールローダ等の他種の作業機械にも本発明は適用可能であり、同様の効果を奏することができる。適用対象となる作業機械の大きさ(機械質量)も限定されない。
【符号の説明】
【0028】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 旋回体(車体)
4 走行体(車体)
6 作業装置
11 バッテリー
12 キースイッチ
13 発電機
14 燃料ポンプ(電気機器)
16 受信装置
17 コントローラ
19 リレー
23 アースライン
24 チャージランプ(警告装置)
25 レギュレータ
28 給電ライン(第1給電ライン)
29 給電ライン(第2給電ライン)
Acc,BR,R1,R2 端子(キーオン端子)