特許第6359971号(P6359971)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359971
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】イバブラジン塩酸塩の形態IV
(51)【国際特許分類】
   C07D 223/16 20060101AFI20180709BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C07D223/16 ZCSP
   A61K9/30
   A61K9/36
   A61K31/55
   A61P9/00
   A61P9/10
【請求項の数】33
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-539268(P2014-539268)
(86)(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公表番号】特表2014-532673(P2014-532673A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2012068615
(87)【国際公開番号】WO2013064307
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年8月3日
【審判番号】不服2017-7762(P2017-7762/J1)
【審判請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】11382339.7
(32)【優先日】2011年11月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514111115
【氏名又は名称】ウルキマ,ソシエダッド アノニマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】プロエンス ロペス,ラフェル
(72)【発明者】
【氏名】プイグハネル バリェト,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】バルバス カニェロ,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】デル リオ ペリカチョ,ホセ ルイス
(72)【発明者】
【氏名】マルティ ビア,ジュゼップ
【合議体】
【審判長】 佐藤 健史
【審判官】 守安 智
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/125006(WO,A1)
【文献】 特開平5−213890(JP,A)
【文献】 特開2005−298480(JP,A)
【文献】 特開2006−241154(JP,A)
【文献】 特開2006−241155(JP,A)
【文献】 特開2006−241156(JP,A)
【文献】 特開2006−241157(JP,A)
【文献】 特開2007−112796(JP,A)
【文献】 特開2007−112797(JP,A)
【文献】 特表2010−528103(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/098582(WO,A2)
【文献】 中国特許出願公開第101805289(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101768117(CN,A)
【文献】 国際公開第2008/065681(WO,A2)
【文献】 芦澤一英 他,医薬品の多形現象と晶析の科学,日本,丸善プラネット株式会社,2002年9月20日,p3−16
【文献】 調剤学−基礎と応用−,株式会社南山堂,1977年 9月20日,p142−145
【文献】 新製剤学,株式会社南山堂,1984年4月25日,p102−103,p232−233
【文献】 新・薬剤学総論(改訂第3版),株式会社南江堂,1987年4月10日,p111
【文献】 実験化学講座(続)2 分離と精製,丸善株式会社,1967年1月25日,p159−178,p186−187
【文献】 International Journal of Pharmaceutics,2004年,Vol283,p117−125
【文献】 高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,2007年1月15日,Vol.6,No.10,p20−25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D223/
REGISTRY/STN
CAPLUS/STN
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折が、以下の2シータ(±0.2)のピーク:8.74、15.55、17.17、19.89、および24.29を含み、ここで、X線回折は、CuKα線を用いて測定される、イバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶
【請求項2】
粉末X線回折が、以下の2シータ(±0.2)のピーク:8.11、8.74、15.55、17.17、19.18、19.89、21.82、22.49、24.29、および24.53を含み、ここで、上記X線回折は、CuKα線を用いて測定される、請求項1に記載のイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶
【請求項3】
示差走査熱量測定のサーモグラムが、153℃〜157℃において1つの吸熱ピークを有している、請求項1または2に記載のイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶
【請求項4】
a)20〜25℃の温度でイバブラジン塩酸塩を溶媒系においてスラリー化するステップを包含し、ここで、上記溶媒系は、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物を含み、上記スラリー化するステップが1、2、3または4日間である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を調製するための製造方法。
【請求項5】
上記ステップ(a)における溶媒系が、少なくとも2つの溶媒を含んでいる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
上記ステップ(a)における溶媒系が、トルエンと、エタノール、アセトンおよび酢酸エチルから選択される第2の溶媒とを含んでいる、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
上記ステップ(a)における溶媒系が、トルエンである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項8】
上記ステップ(a)における、イバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶のキログラムに対する上記溶媒系のリットルの比が、5〜50である、請求項4〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
上記ステップ(a)における、イバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶のキログラムに対する上記溶媒系のリットルの比が、8〜12である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
さらに、b)イバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶の単離のステップを包含する、請求項4〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
c)減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、単離した上記イバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶の乾燥するステップを包含する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
i)溶媒系においてイバブラジン遊離塩基の溶液を撹拌するステップと、
ここで上記溶媒系が、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物を含み;
ii)60℃よりも低い温度において上記溶液を保持するステップと;
iii)イバブラジン塩酸塩を得るために塩酸の溶液を添加するステップと;
iv)バブラジン塩酸塩の形態IVの結晶の種晶を入れるステップと;
v)バブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を単離するステップと;
vi)減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、単離したイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を乾燥するステップと;を一連のステップとして包含する、請求項のいずれか1項に記載のイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を調製するための製造方法。
【請求項13】
上記ステップ(ii)における温度が、10℃〜60℃の間で保持される、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
上記ステップ(ii)における温度が、40℃よりも低く保持される、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
上記ステップ(ii)における温度が、10℃〜40℃の間で保持される、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
i’)溶媒系においてイバブラジン遊離塩基の溶液を撹拌するステップと、
ここで、上記溶媒系は、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物であり;
ii’)60℃よりも低い温度において上記溶液を保持するステップと;
iii’)バブラジン塩酸塩の形態IVの結晶の種晶を入れるステップと;
iv’)イバブラジン塩酸塩を得るために塩酸の溶液を添加するステップと;
v’)バブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を単離するステップと;
vi’)減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、単離したイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を乾燥するステップと;を一連のステップとして包含する、請求項のいずれか1項に記載のイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を調製するための製造方法。
【請求項17】
上記ステップ(ii’)における温度が、10℃〜60℃の間で保持される、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
上記ステップ(ii’)における温度が、40℃よりも低く保持される、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
上記ステップ(ii’)における温度が、10℃〜40℃の間で保持される、請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶と、少なくとも薬学的に認容可能な賦形剤とを含んでいる、薬学的組成物。
【請求項21】
経口投与のための、請求項20に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
組成物が、錠剤の形態である、請求項20または21に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
組成物は、フィルムコートされた錠剤の形態である、請求項20〜22のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項24】
コーティング剤が、セルロースの誘導体、ポリ(メチルメタクリレート)の誘導体、ポリビニルアルコール、および、ポリビニルアルコールの誘導体から選択される、請求項23に記載の薬学的組成物。
【請求項25】
上記コーティング剤がヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースである、請求項24に記載の薬学的組成物。
【請求項26】
組成物が、5〜9mgのイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を含んでいる、請求項20〜25のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項27】
上記組成物が、5.390mgのイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を含んでいる、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項28】
上記組成物が、8.085mgのイバブラジン塩酸塩の形態IVの結晶を含んでいる、請求項26に記載の薬学的組成物。
【請求項29】
製造方法が、直接圧縮、乾式造粒および/または湿式造粒の技術を使用することを包含することを特徴とする請求項20〜28のいずれか1項に記載の組成物の製造のための製造方法。
【請求項30】
上記湿式造粒の製造方法が、有機溶媒を使用することを包含することを特徴とする請求項29に記載の製造方法。
【請求項31】
上記有機溶媒が、アセトン、アルコール、および、それらの組み合わせからなる群から選択されることを包含することを特徴とする請求項30に記載の製造方法。
【請求項32】
治療法における使用のための、請求項20〜26のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【請求項33】
徐脈、心筋虚血、上室性調律異常、典型的な洞律動を伴う冠動脈疾患の大人における慢性的に安定な狭心症、心筋梗塞、心不全、および関連する調律異常、の処置における使用のための、請求項20〜26のいずれか1項に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、イバブラジン塩酸塩の形態IV、その調製のための製造方法、治療的に活性な成分としての、その使用、およびそれを含む薬学的組成物に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
イバブラジン、(+)−3−[3−[N−[4,5−ジメトキシベンゾシクロブタン−1(S)−イルメチル]−N−メチルアミノ]プロピル]−7,8−ジメトキシ−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−3−ベンザゼピン−2−オンは、構造式(I)によって表される:
【0003】
【化1】
【0004】
イバブラジン、ならびに、薬学的に認容可能な酸を用いたその付加塩、および、さらに、とりわけ、その塩酸塩は、極めて価値がある薬理的な治療上の性質(特に除脈の性質)を有しており、それらの化合物を、狭心症、心筋梗塞、および関連した調律異常などの心筋虚血の種々の臨床的症状の処置または予防において、および、同様に調律異常に伴って生じる種々の病変、とりわけ上室性調律異常において、および、心不全において、有用にしている。
【0005】
イバブラジンは、典型的な洞律動を伴う冠動脈疾患の患者における慢性的に安定な狭心症処置のためのコーレンター(Corlentor)(登録商標)およびプロコララン(Procolaran)(登録商標)という商品名を用いて、現在、市販されている。
【0006】
イバブラジンと、薬学的に認容可能な酸を用いたそれらの付加塩と、さらに、とりわけ、その塩酸塩の調製および治療上の使用は、欧州特許EP0534859の明細書に記載されている。
【0007】
EP0534859には、イバブラジンおよびその塩酸塩のための合成方法について記載されている。そのEP0534859には、アセトニトリルを用いて再結晶された、融点MP:135〜140℃である生成物が開示されている。
【0008】
EP1589005には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩のα結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0009】
EP1695965には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩の四水和物であるβ結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0010】
EP1695710には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩のβd結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0011】
EP1707562には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩の一水和物である、γ結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0012】
EP1695709には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩のγd結晶形態およびその生成のための方法が開示されている。
【0013】
EP1775288には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩の水和した形態であるδ結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0014】
EP1775287には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩のδd結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0015】
WO2008/125006には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩の結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0016】
CN101768117には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩の結晶形態、およびその生成のための方法が開示されている。
【0017】
CN101805289には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩のω結晶形態およびその生成のための方法が開示されている。
【0018】
WO2011/098582には、PXRDによって特性を明らかにされたイバブラジン塩酸塩の3つの結晶形態およびその生成のための方法が開示されている。
【0019】
WO2008/146308、CN101463008、CN101597261およびCN102050784には、イバブラジン塩酸塩のアモルファス形態およびその生成のための方法が開示されている。
【0020】
薬剤の多形体の挙動は製薬学および薬理学において非常に重要となり得る。同質異像は、相違する結晶の変化の状態で、結晶化するという物質の能力であり、それらの各々は、同じ化学的な構造であるが、結晶格子において異なる分子の配列または立体構造を有している。多形体において示される物理的性質は、保存性、圧縮性、および密度(剤形および製品の製造において重要)、および、溶出速度(生物学的利用性を決定することにおいて重要な要素)などの薬学的な条件に影響する。安定性の相違は、化学的な反応性における変化、または機械的な変化、または両方ともに起因し得る。例えば、ある多形体に由来する剤形は、異なる多形体から別のものに混合したときに、より速く変色し得る。または、動力学的に有利に働く多形体が熱力学的により安定な多形相に自発的に変化するため、錠剤では、保存の状態において粉々に砕け得る。溶解度/溶解の相違の結果として、極端な場合には、幾ばくかの多形転移が、有効性の不足、または、それとは正反対に毒性をもたらし得る。その上、結晶の物理的性質が、処理過程において重要となり得、例えば、ある多形体は溶媒和物をより形成しやすい可能性があり、または不純物の無いものをろ過し、洗浄することが困難であり得る。
【0021】
薬学的な物質の最も重要な固体の状態の性質は、液体における溶解率である。患者の胃液における有効成分の溶解率は、経口で投与された有効成分が血流に達する割合に上限を課すため、治療上の重要性を有し得る。化合物の、固体の状態の多形相は、圧縮および保存性におけるその挙動にも影響を与え得る。
【0022】
これらの実用的な物理的特性は、単位格子における、立体構造および分子の配列によって影響され、物質の特定の多形相を決定する。多形相は、アモルファス材料(または)別の多形相のそれとは異なる形態の温度特性を生じ得る。
【0023】
薬学的に有用な化合物の新しい多形相の発見は、医薬品の性能特性を改善する新しい機会を提供する。その発見が、例えば、製剤の科学者が目的とする特性の開放または他の所望の特性を備えている、薬剤の薬学的な剤形を設計するために持っている物質のレパートリーを拡大する。
【0024】
通常、最も安定な多形相が、販売されている製剤において好まれているのは、その他の多形体は準安定であり、それ故に、より安定な形態に変化し得るためである。最も安定な多形体を見落とすことは、保存の間における相変態によって、販売されている製品の不具合を引き起こし得る。時間が経過してから現れる安定な多形体は、開発の時系列において、大きな影響を与えることができる。多量の活性化エネルギーの障壁が準安定な状態から安定な状態へ移動するときにおいて乗り超えられる必要があれば、準安定な形態は数年存続するにもかかわらず、この活性化エネルギーの障壁は、湿度、触媒、不純物、賦形剤、または温度によって軽減され得、安定した形態への変化が自発的に起こる。安定な形態の種は、変化もまた促進し得る。それゆえ、錠剤の製造において熱力学的に不安定な変形を使用することは、不必要な変化が保存の期間後におけるそのような剤形において起こる理由になることもある。それゆえ、イバブラジン塩酸塩の熱力学的に安定な多形相および、その調製方法に対する必要性がある。
【0025】
ハレブリアン(Haleblian)およびマククローン(McCrone)によって記載された方法は、室温で最も安定な多形体を決定するために使用することができる。この方法は、最も安定な多形体が、特定の温度および圧力において溶け難くもあるという事実を利用する。両方の多形体の結晶が飽和溶液の状態で存在している場合、最も安定な形態はより安定でないものを費やして成長する。この方法は溶液相の転移または溶液媒介相転移と呼ばれている。
【0026】
それゆえ、医薬産業における使用に適し、特に、経口投与のための、錠剤、カプセル、チュアブル錠、および粉剤などといった、厳格な医薬品の規格を満たしている固形の状態でのイバブラジン製品の容易な調製を可能にする、既存のものに代わるイバブラジン塩酸塩の純粋な結晶形態に対する需要がある。
【0027】
アメリカ合衆国の厳しい衛生登録の要件および国際的な衛生登録機関、例えば、FDAの医薬品製造管理および品質管理基準(“GMP”)の要求に従って、哺乳類への投与のためのイバブラジン塩酸塩の形態IVを含む薬学的な組成物を調製するために、可能な限り純粋な形態であり、特に、一定の物理的な性質を有する形態であるイバブラジン塩酸塩の形態IVを製造する必要がある。
【0028】
〔発明の概要〕
発明者らは、製剤原料のイバブラジン塩酸塩が、分離または精製の、特定の実験条件の下で熱力学的に安定な多形相(イバブラジン塩酸塩の形態IV)の状態で存在するということを、現在、発見している。この結晶形態は安定であり扱い易い。上述の安定な結晶形態において改善された物理的な特徴は、技術的に記載されたイバブラジン塩酸塩と比較して、より一層の生産能力、および製薬の処方設計の準備での使用に適した化合物の提供に影響する。
【0029】
発明者らは、イバブラジン塩酸塩が、熱力学的により安定性が低い、多形体または多形体の混合物として存在するということを発見した。このような混合物は、厳格なGMPの要求を考慮したときにおいて容認不可の状態、つまり、可変の物理的な性質を有している可変の組成物(すなわち、多形体の可変のパーセントの量)の可変の混合物として存在するイバブラジン塩酸塩の形態IVの製品の製造につながるということが有り得る。
【0030】
発明者らは、一定の物理的特性を有し、熱力学的に安定で純粋な、新規性のあるイバブラジン塩酸塩の結晶形態(イバブラジン塩酸塩の形態IV)を驚くほど意外に取得した。
【0031】
本発明に係るイバブラジン塩酸塩の形態IVは、高い収率および高い潤沢さで得られた。さらに、使用された乾燥条件は、処理過程の安定性に影響せず、その調製の処理過程は常に再現可能で、堅調であり、それ故に、簡単に産業化が可能である。その上、取得の処理過程の間に使用される、トルエンなどの溶剤は、結果として生じる結晶形態(形態IV)または他の特性における変化を観測することなく取り除かれ得る。
【0032】
その上、発明者らは、イバブラジン塩酸塩の形態IVが適切な溶解の特性を示すということを発見している。イバブラジン塩酸塩の形態IVは即時に解放される錠剤を得るために特に適している。これらの錠剤は、直接圧縮、乾式造粒および/または湿式造粒を含む、公知であり、従来的な製法によって調製することができる。湿式造粒方法は、有機溶媒、アセトンまたはアルコール(例えば、エタノール、メタノールおよびイソプロピルアルコール)または、それらの組み合わせを用いることによって行われる。
【0033】
さらに、それらの錠剤は、異なる従来の賦形剤によって覆うことができる。一般的に使用されるコーティング剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)などのセルロースの誘導体、エウドラジット(Eudragit)(登録商標)などのポリ(メチルメタクリレート)の誘導体、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルアルコールの誘導体である。
【0034】
それゆえ、本発明の一つの態様はイバブラジン塩酸塩の形態IVに関する。
【0035】
他の実施形態において、本発明は、粉末X線回折が、以下の2シータ(±0.2)のピーク:8.74、15.55、17.17、19.89、および24.29を含み、ここで、上記X線回折は、CuKα線を用いて測定される、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVに関する。
【0036】
他の実施形態において、本発明は、以下の2シータ(±0.2)のピーク:8.11、8.74、15.55、17.17、19.18、19.89、21.82、22.49、24.29、および24.53を含み、ここで、上記X線回折は、CuKα線を用いて測定される、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVに関する。
【0037】
他の実施形態において、本発明は、原則的に、図1に示された通りの粉末X線回折である、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVに関する。
【0038】
他の実施形態において、本発明は、示差走査熱量測定のサーモグラムが、153℃〜157℃において1つの吸熱ピークを有している、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVに関する。
【0039】
他の実施形態において、本発明は、原則的に、図2に示された通りの示差走査熱量測定のサーモグラムを有している、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVに関する。
【0040】
他の実施形態において、本発明は、レーザー回折機であるMalvern Mastersizer 2000を使用したレーザー回折によって測定された0.1〜600μm、好ましくは10〜100μmの平均粒径を有している、上記に定義されたイバブラジンIVに関する。
【0041】
本発明の他の態様は、原則的に上記に開示された結晶形態である、イバブラジン塩酸塩の形態に関する。
【0042】
本発明の他の態様は、
a)イバブラジン塩酸塩を溶媒系においてスラリー化するステップを包含し、ここで、上記溶媒系は、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物を含む、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVを調製するための製造方法に関する。
【0043】
他の実施形態において、本発明は、上記溶媒系が少なくとも2つの溶媒を含んでいる、上記に定義された製造方法に関する。
【0044】
他の実施形態において、本発明は、溶媒系が、トルエンと、エタノール、アセトンおよび酢酸エチルから選択される第2の溶媒とを含んでいる、上記に定義された製造方法に関する。
【0045】
他の実施形態において、本発明は、上記ステップ(a)における温度が、60℃よりも低く、好ましくは10℃〜60℃の間であり、好ましくは40℃よりも低く、より好ましくは10℃〜30℃の間であり、最も好ましくは20℃〜25℃の間である、上記に定義された製造方法に関する。
【0046】
他の実施形態において、本発明は、上記ステップ(a)を行なう間の反応時間が48時間未満であり、好ましくは24時間未満である、上記に定義された製造方法に関する。
【0047】
他の実施形態において、本発明は、上記ステップ(a)における、イバブラジン塩酸塩の形態IVのキログラムに対する上記溶媒系のリットルの比が、5〜50であり、好ましくは8〜12である、上記に定義された製造方法に関する。
【0048】
他の実施形態において、本発明は、上記ステップ(a)における溶媒系が、原則的にトルエンである、上記に定義された製造方法に関する。
【0049】
他の実施形態において、本発明は、ステップ(a)を行なった後、さらに、b)イバブラジン塩酸塩の形態IVを単離するステップを包含する、上記に定義された製造方法に関する。
【0050】
他の実施形態において、本発明は、ステップ(b)を行なった後、
c)好ましくは25mmHg〜760mmHg未満、より好ましくは、50mmHg〜200mmHgの圧力における減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、上記単離したイバブラジンの形態IVを乾燥するステップをさらに含む、上記に定義された製造方法に関する。
【0051】
本発明の他の態様は、
a)イバブラジン塩酸塩を溶媒系においてスラリー化するステップと、
ここで、上記溶媒系は、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物を含み;
b)イバブラジン塩酸塩の形態IVを単離するステップと、
c)好ましくは25mmHg〜760mmHg未満、より好ましくは、50mmHg〜200mmHgの圧力における減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、上記単離したイバブラジン塩酸塩の形態IVを乾燥するステップと、を包含する、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩のIVを調製するための製造方法に関する。
【0052】
本発明の他の態様は、
i)溶媒系においてイバブラジン遊離塩基の溶液を撹拌するステップと、
ここで上記溶媒系が、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物を含み;
ii)60℃よりも低く、好ましくは10℃〜60℃の間であり、より好ましくは40℃よりも低く、最も好ましくは10℃〜40℃の間の温度において上記溶液を保持するステップと;
iii)イバブラジン塩酸塩を得るために塩酸の溶液を添加するステップと;
iv)上記イバブラジン塩酸塩の形態IVの種晶を入れるステップと;
v)上記イバブラジン塩酸塩の形態IVを単離するステップと;
vi)好ましくは25mmHg〜760mmHg未満、より好ましくは、50mmHg〜200mmHgの圧力における減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、単離したイバブラジン塩酸塩の形態IVを乾燥するステップと;を含む、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVを調製するための製造方法に関する。
【0053】
他の実施形態において、本発明は、ステップ(i)における上記溶媒系が、トルエンである、上記に定義された製造方法に関する。
【0054】
他の実施形態において、本発明は、ステップ(iii)における上記塩酸の溶液が、塩酸のエタノール溶液である、上記に定義された製造方法に関する。
【0055】
本発明の他の態様は、
i’)溶媒系においてイバブラジン遊離塩基の溶液を撹拌するステップと、
ここで上記溶媒系が、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、および、それらの混合物を含み;
ii’)60℃よりも低く、好ましくは10℃〜60℃の間であり、より好ましくは40℃よりも低く、最も好ましくは10℃〜40℃の間の温度において上記溶液を保持するステップと;
iii’)イバブラジン塩酸塩の形態IVの種晶を入れるステップと;
iv’)イバブラジン塩酸塩を得るために塩酸の溶液を添加するステップと;
v’)イバブラジン塩酸塩の形態IVを単離するステップと;
vi’)好ましくは25mmHg〜760mmHg未満、より好ましくは50mmHg〜200mmHgの圧力における減圧下で、45℃〜70℃の間の温度において、上記単離したイバブラジン塩酸塩の形態IVを乾燥するステップと;を含む、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVを調製するための製造方法に関する。
【0056】
他の実施形態において、本発明は、ステップ(i’)における上記溶媒系が、トルエンである、上記に定義された製造方法に関する。
【0057】
他の実施形態において、本発明は、ステップ(iv’)における上記塩酸の溶液が、塩酸のエタノール溶液である、上記に定義された製造方法に関する。
【0058】
本発明の他の態様は、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVと、少なくとも薬学的に認容可能な賦形剤と、を含んでいる、薬学的組成物に関する。
【0059】
他の実施形態において、本発明は、経口投与のための、上記に定義された薬学的組成物に関する。
【0060】
他の実施形態において、本発明は、錠剤の形態である、上記に定義された薬学的組成物に関する。
【0061】
他の実施形態において、本発明は、フィルムコートされた錠剤の形態である、上記に定義された薬学的組成物に関する。
【0062】
他の実施形態において、本発明は、好ましくはこれらの物質が、セルロースの誘導体、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(メチルメタクリレート)の誘導体、最も好ましくはエウドラジット(Eudragit)(登録商標)、ポリビニルアルコール(PVA)およびポリビニルアルコールの誘導体である、コーティング剤に関する。
【0063】
他の実施形態において、本発明は、5〜9mgのイバブラジン塩酸塩の形態IVを含んでいる、上記に定義された薬学的組成物に関する。
【0064】
他の実施形態において、本発明は、遊離塩基として、約5mgのイバブラジン(イバブラジン塩酸塩の形態IV、5.390mgに相当する)を含んでいるフィルムコートされた錠剤に関する。
【0065】
他の実施形態において、本発明は、遊離塩基として、約7.5mgのイバブラジン(イバブラジン塩酸塩の形態IV、8.085mgに相当する)を含んでいるフィルムコートされた錠剤に関する。
【0066】
本発明の他の態様は、上記製造方法が、直接圧縮、乾式造粒および/または湿式造粒の技術を使用することを包含することを特徴とする、上記に定義された薬学的組成物を製造のための製造方法に関する。
【0067】
本発明の他の態様は、上記製造方法が、有機溶媒、好ましくはアセトンまたはアルコール(例えば、エタノール、メタノールおよびイソプロパノールなど)または、それらの組み合わせを使用することを包含することを特徴とする湿式造粒の製造方法に関する。
【0068】
本発明の他の態様は、治療法における使用のための、上記に定義されたイバブラジンI塩酸塩の形態IVまたは上記に定義された薬学的組成物に関する。
【0069】
本発明の他の態様は、徐脈、心筋虚血、上室性調律異常、典型的な洞律動を伴う冠動脈疾患の大人における慢性的に安定な狭心症、心筋梗塞、心不全、および関連する調律異常、の処置における使用のための、上記に定義されたイバブラジン塩酸塩の形態IVまたは上記に定義された薬学的組成物に関する。
【0070】
上記の定義において、“減圧下”という用語は、基質を包囲する大気(ガス)が、大気圧より下に低下されている状態を指す。好ましくは、減圧下とは、25mmHg〜760mmHg(ただし、760mmHgは含まれないという条件を伴う)、より好ましくは、50mmHg〜200mmHgの圧力を指す。
【0071】
〔発明の詳細な説明〕
本発明の一実施形態は、熱力学的に安定なイバブラジン塩酸塩の多形相を包含している。この形態は、約:
【0072】
【表1】
【0073】
における、特性ピーク(2度シータ)を示す、銅X線源を用いて測定されたX線回析図によって、および、さらに、示差走査熱量測定(DSC)によって測定されるような、約155℃の一つの吸熱ピークによって、特性を明らかにされ得る。
【0074】
本発明は、トルエン、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸イソプロピルおよび、それらの混合物から選択される懸濁媒において、イバブラジン塩酸塩をスラリー化するステップを包含する、請求の範囲に記載されている、イバブラジン塩酸塩の結晶形態を調製するための製造方法も包含する。トルエンが好ましい懸濁媒で、単一で、または、エタノール、アセトンおよび酢酸エチルから選ばれた第2の溶媒と共に使用することができる。
【0075】
本発明は、760mmHg未満の圧力においてスラリー化するステップの後、単離されたイバブラジン塩酸塩を乾燥するステップをさらに包含し、その温度が約65℃である、イバブラジン塩酸塩の、請求の範囲に記載されている結晶形態を調製するための製造方法も開示している。
【0076】
本発明において開示されたイバブラジン塩酸塩の、請求の範囲に記載されている結晶形態を調製するための製造方法は、本発明において開示されたイバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態の種晶を入れるステップを任意に包含することができる。
【0077】
示差走査熱量計(DMC)分析は、Mettler−Toledo DSC−822e熱量計という手段によって実施した。実験条件:容積40μLのアルミるつぼ、流速50mL/minの乾燥窒素の雰囲気、10℃/minの加熱速度。熱量計は、純度99.99%のインジウムを用いて調整した。機器は、異なるサーモグラムをもたらすことが有り得る。本発明は、DSC機器を用いて得られ、本明細書中に示されたサーモグラムの数値データと同様に、他の形式のDSC機器を用いて得られた同等のサーモグラムの数値データによって特性を明らかにされる。
【0078】
熱重量測定分析(TGA)は、Mettler−Toledo TGA−851e熱天びん上で実行した。実験条件:容積70mLのアルミるつぼ、流速50mL/minの乾燥窒素の雰囲気、10℃/minの加熱速度。
【0079】
イバブラジン塩酸塩の形態IVのPTRD分析:粉末試料を、厚さ20マイクロメートルのポリエステルフィルムの間に挟み、半径240ミリメートルのPANalytical X’Pert PRO MPD θ/θ粉末回折計において、焦点を合わせる鏡と平らな試料の透過構造とを用いた集光の立体配置で、以下に示す:CuKα線(I=1.5418Å);ワークパワー;45kVおよび40mA;0.4ミリメートルのビームの高さを定めた入射線のスリット;入射および回折線0.02ラジアンのソーラースリット;ピクセル検出器:有効長=3.347°;0.026 °2θのステップサイズ、およびステップ当たり75秒の測定時間によって、2θ/θが、2〜40 °2θを走査するという実験条件において分析を行なった。
【式1】
【式2】
【0084】
“約”という用語は、本発明の文脈において使用されるとき、一定の量の±10%を指す。本発明の目的への、X線回折パターンにおいては、調整、試料、または、機器に依存し、2qにおけるピークは、±0.2度(誤差)までシフトすることが有り得る。1つの実施形態において、X線回折パターンにおける全てのピークは、+0.2度まで、または−0.2度までシフトする。その誤差の範囲内のX線回折パターンまたはピークは、同じ、または、実質的に類似であると考慮される。
【0085】
フーリエ変換の赤外線―全反射減衰(FT−IR−ATR)スペクトラムは、一般的な全反射減衰(ATR)の試料採取付属品(UATR1BOUNCEを備えたスペクトラム100)を用いたパーキンエルマースペクトラム1/100FT−IR分光計に記録された。試料を、ATRの板の上に置き、650〜4000cm−1の範囲において測定を実施した。“IRまたはIRスペクトラム/スペクトラ”という用語は、文脈において使用されるとき、上述の条件において記録されたスペクトラムを指す。
【0086】
“MiBK”という用語は、本発明の文脈において使用されるとき、メチルイソブチルケトンを指す。
【0087】
“MEK”という用語は、本発明の文脈において使用されるとき、メチルエチルケトンを指す。
【0088】
発明の目的への、任意に定められた範囲は、その範囲の最低、および最高の終点の両方ともを含んでいる。
【0089】
以下の図面および実施例は、本発明の範囲を例証する。
【0090】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態についてのX線回析図を示している。
【0091】
図2は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態についてのDSCのサーモグラムを示している。
【0092】
図3は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態についてのIRを示している。
【0093】
図4は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態ついてのTGA分析を示している。
【0094】
〔実施例〕
前段階の実施例1.
結晶性のイバブラジン塩酸塩。
【0095】
結晶性イバブラジン塩酸塩を、欧州特許EP0534859に記載された製造方法に従って得た。
【0096】
前段階の実施例2.
イバブラジン塩酸塩のα形態。
【0097】
α形態のイバブラジン塩酸塩を、欧州特許EP1589005に記載された製造方法に従って得た。
【0098】
前段階の実施例3.
イバブラジン塩酸塩のδ形態。
【0099】
δ形態を、欧州特許EP1956005に記載された製造方法に従って得た。
【0100】
前段階の実施例4.
イバブラジン塩酸塩のδd形態。
【0101】
δd形態を、欧州特許EP1775287に記載された製造方法に従って得た。
【0102】
前段階の実施例5.
イバブラジン。
【0103】
イバブラジンを、欧州特許EP0534859に記載された製造方法に従って得た。
【0104】
実施例1.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0105】
1.6%のカール・フィッシャー値を示す前段階準備の実施例1の結晶性イバブラジン塩酸塩15.0gを、750mlのトルエンを用い、20〜25℃の温度において、4日間、スラリー化した。固形の生成物を単離し、減圧下で、45℃の温度において乾燥した。得られた結晶性の生成物は、その構造を確認するPXRDによって、特性を明らかにした(HPLC純度:99.8%、収率:86%)。
【0106】
実施例2〜7.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0107】
実施例2〜7を、実施例1において記載された製造方法に従って実施した。すべての場合において、形態IVの獲得はPXRDによって確認された。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例8.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0110】
15.0gのイバブラジン塩酸塩を、750mlのトルエンを用い、20〜25℃の温度において、1日間、スラリー化した。固形の生成物を単離し、減圧下で、45℃の温度において、乾燥した。得られた結晶性の生成物は、その構造を確認するPXRDによって、特性を明らかにした(収率:85%)。
【0111】
実施例9.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0112】
0.5gのイバブラジン塩酸塩を、25mlの酢酸エチルを用い、20〜25℃の温度において、スラリー化した。実施例1において得られた生成物を用いて種晶を入れた後に、懸濁液を、4日間、スラリー化した。固形の生成物を単離し、減圧下で、45℃の温度において、乾燥した。得られた結晶性の生成物は、その構造を確認するPXRDによって、特性を明らかにした(収率:88%)。
【0113】
実施例10〜20.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0114】
前段階の実施例に従って調製したイバブラジンHClを、溶媒中、室温で懸濁した。当該懸濁液を、20〜25℃の温度においてスラリー化した。固形物を濾過し、減圧下で乾燥し、PXRDによって分析した。
【0115】
【表3】
【0116】
実施例21.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0117】
11.2mgのイバブラジンHClのα形態と、実施例1に従って調製した10.0mgの形態IVとを、MiBK中、室温で懸濁した。当該懸濁液を、3日間、20〜25℃の温度においてスラリー化した。固形物を濾過し、減圧下で乾燥した。PXRDによる分析は、単離された結晶性のイバブラジン塩酸塩は、新しい結晶形態の状態であったことを確認した。
【0118】
実施例22〜24.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0119】
実施例22〜24を、実施例21において記載した製造方法に従って実施した。
【0120】
全ての場合において、新しい結晶形態の獲得を、PXRDによって確認した。
【0121】
【表4】
【0122】
実施例25.
イバブラジン塩酸塩の形態IV。
【0123】
90mLのトルエン中に6.9gのイバブラジンを含んだ溶液を、約40℃より低い温度を保持し、撹拌した。塩酸の1.75Mエタノール溶液16mlを加えた。当該溶液に、実施例1において得られた生成物を用いて種晶を入れた。結晶の成長を、約40℃より低い温度に維持し、20時間、撹拌することによって促進した。得られた固形の生成物を単離し、減圧下、65℃において乾燥した。得られた結晶性の生成物を、その構造を確認するPXRDによって、特性を明らかにした(HPLC純度:99.17%、収率:85%)。
【0124】
実施例26.
イバブラジン塩酸塩の形態IVの錠剤。
【0125】
イバブラジン塩酸塩の形態IVの錠剤を、以下の表に列記した成分を用いて調製した。
【0126】
【表5】
【0127】
ステアリン酸マグネシウムおよび無水コロイダルシリカを除き、全ての成分を混合した。最終的に、無水コロイダルシリカおよびステアリン酸マグネシウムを加え、混合した。当該混合物を、偏心式打錠機械において圧縮した。イバブラジン塩酸塩の結晶形態IVの変形が少しもないことを確認した。
【0128】
実施例27.
イバブラジン塩酸塩の形態IVのフィルムコートされた錠剤。
【0129】
錠剤は、以下の表に記載した、材料の指示された割合で作製した。
【0130】
【表6】
【0131】
ステアリン酸マグネシウムおよび無水コロイダルシリカを除き、全ての成分を、造粒溶媒としてエタノールを用いて、混合し、粒状にした。次に、顆粒の湿式の較正を実行した。得られた顆粒を、その後、顆粒の乾式の較正に続き、で乾燥した。その後、無水コロイダルおよびステアリン酸マグネシウムを加え、混合した。潤滑化した顆粒剤は、偏心式打錠機械において圧縮した。
【0132】
最後に、錠剤を、重量が、およそ3%増加するまで従来のコーティング剤を使用してコーティングした。
【0133】
イバブラジン塩酸塩の結晶形態IVの変形が少しもないことを確認した。
【図面の簡単な説明】
【0134】
図1図1は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態についてのX線回析図を示している。
図2図2は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態についてのDSCのサーモグラムを示している。
図3図3は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態についてのIRを示している。
図4図4は、イバブラジン塩酸塩の新しい結晶形態ついてのTGA分析を示している。
図1
図2
図3
図4