(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359973
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】交換可能座板を備える自動弁
(51)【国際特許分類】
F04B 39/10 20060101AFI20180709BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20180709BHJP
F16J 15/24 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
F04B39/10 B
F04B39/10 L
F16J15/10 W
F16J15/10 D
F16J15/24 Z
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-545312(P2014-545312)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-503692(P2015-503692A)
(43)【公表日】2015年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2012075060
(87)【国際公開番号】WO2013087615
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月7日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】バッビーニ,アルベルト
(72)【発明者】
【氏名】バガグリ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】トグナレーリ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】プラッテリ,グイド
【審査官】
所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−202461(JP,A)
【文献】
特開平01−104984(JP,A)
【文献】
特開2010−144820(JP,A)
【文献】
特開2008−274958(JP,A)
【文献】
特表平10−512945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/10
F16J 15/10
F16J 15/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座(2、52)を貫通して延び、同心円に沿って配列され円周状に配置された第1ガス流路(58)の組を備える前記弁座(2、52)と、
弁押さえ(3、54)を貫通して延び、同心円に沿って配列され円周方向に延びる第2ガス流路(66)の組を有する単一の前記弁押さえ(3、54)と、
前記弁押さえ(3、54)と前記弁座(2、52)との間に設けられた少なくとも1つの可動シール要素と、
前記弁座(2、52)に取り外し可能に接続され、第1ガス流路(58)に整合する開口部(74)を備える取り外し可能な座板(68)と、
を備え、
前記少なくとも1つの可動シール要素は、前記第1ガス流路(58)を閉じるために弾性部材によって前記取り外し可能な座板(68)に対して弾力的に付勢され、
前記座板(68)および前記少なくとも1つの可動シール要素は、非金属材料製である、
自動弁(1)。
【請求項2】
前記座板(68)および前記少なくとも1つの可動シール要素は、複合材料製である、請求項1に記載の自動弁(1)。
【請求項3】
前記複合材料は、強化繊維または補強材を含む合成樹脂マトリックスを含む、請求項1または2に記載の自動弁(1)。
【請求項4】
前記合成樹脂マトリックスは、熱可塑性樹脂製である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動弁(1)。
【請求項5】
前記強化繊維は、炭素繊維およびガラス繊維を含む群より選択される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動弁(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの可動シール要素の非金属材料および前記座板(68)の非金属材料は、実質的に同じ熱膨張係数を有する、請求項1〜5の少なくとも一項に記載の自動弁(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの可動シール要素の非金属材料および前記座板(68)の非金属材料はそれぞれ、20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下の互いに異なる熱膨張係数を、前記弁の作用温度の範囲内で有する、請求項1〜6の少なくとも一項に記載の自動弁(1)。
【請求項8】
緩衝器が前記座板(68)と前記弁座(2、52)との間に設けられる、請求項1〜7の少なくとも一項に記載の自動弁(1)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの可動シール要素は、前記座板(68)における前記開口部(74)に沿って延びる第2シール面と前記座板(68)上で封止接触して協働する複数の第1シール面を備える、請求項1〜8の少なくとも一項に記載の自動弁(1)。
【請求項10】
前記第1シール面および前記第2シール面は、少なくとも部分的に非平面である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の自動弁(1)。
【請求項11】
前記第1シール面の対は、第1ガス流路(58)を閉じるために、対応する前記第2シール面の対の間に部分的に入り込む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の自動弁(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの可動シール要素はシールリング(8、60)である、請求項1〜11の少なくとも一項に記載の自動弁(1)。
【請求項13】
同心円状に設けられたシールリング(8、60)を備える、請求項1〜12のいずれか一項に記載の自動弁(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの可動シール要素はシール板である、請求項1〜13の少なくとも一項に記載の自動弁(1)。
【請求項15】
前記シール板は、環状のシール面と前記座板(68)上で協働する環状凸部を備える、請求項1〜14のいずれか一項に記載の自動弁(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リング状または環状の弁などの自動弁に関する。本明細書に開示される主題のいくつかの実施形態は、特に往復圧縮機のための自動リングまたは環状弁に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動弁は例えば往復圧縮機において使用される。自動弁は、圧縮機シリンダ内部の圧力制御の下で圧縮機の吸気ポートおよび排気ポートを自動的に開閉するために、圧縮機の吸気側および排気側の両方に設けられる。
【0003】
従来技術の自動リング弁の例示的な実施形態が、
図1に示されている。自動リング弁1は、弁座2と弁押さえ3とを備える。弁座は、弁座2を貫通して延びる、周方向に設けられたガス流路4を備える。弁押さえ3は、同様にガス流路5を備える。中央ねじ6は、弁座2と弁押さえ3とを、間に隙間7を残して互いに連結する。同心円状に設けられた複数のシールリング8は、弁座2と弁押さえ3との間に設けられる。各シールリング8は、弁座2の対応する環状に設けられたガス流路4の対に沿って設けられる。複数の圧縮ばね9は、ガス流路4の対応するシール面4Aとの封止接触によってシールリング8がガス流路4の対のそれぞれを閉じる閉鎖位置にシールリングを付勢するために、各シールリング8を備える。圧縮ばね9は、弁押さえ3に備えられたばね受け10のそれぞれに収容される。
【0004】
自動リング弁1の差圧は、弁の自動開閉を引き起こす。
図2は、圧縮機および所定の1A、1B、1Cおよび1Dの吸気ポートおよび排気ポート上に設けられた4つの自動リング弁1を使用した、往復圧縮機のヘッド11を示している。
【0005】
より具体的には、圧縮機ヘッド11は、ピストン14が往復移動可能である圧縮機シリンダ13を画成する。ピストン14のロッド15は、両方向矢印f14に沿ってピストン14を往復移動させるクランク(図示せず)に接続される。ピストン14は、圧縮機シリンダ13を2つの個別の圧縮室13A、13B内に分割する。
【0006】
圧縮機ヘッド11は、第1自動リング弁1Aを通して第1圧縮室13Aと流体連通する第1吸気ポート17を備える。第2吸気ポート19は、第2自動リング弁1Bを通して第2圧縮室13Bと流体連通する。第1排気ポート21は、第3自動リング弁1Cを通して第1圧縮室13Aと流体連通し、第2排気ポート23は、第4自動リング弁1Dを通して第2圧縮室13Bと流体連通する。
【0007】
ピストン14の往復運動は、第1圧縮室13Aにおける選択的なガスの吸入と、第2圧縮室13Bからの圧縮ガスの放出とを引き起こし、またその逆も引き起こす。自動リング弁1A、1B、1Cおよび1Dは、ガス流路4内の圧力が圧縮ばね9の弾性力を超えると選択的に開く。
【0008】
往復圧縮機のクランクシャフトは、例えば100rpm〜1200rpmの範囲、典型的には200rpm〜1000rpmの間の回転速度で回転することができる。それゆえ、シールリング8は、高速での連続開閉ストロークを受ける。シールリングは一般的に、質量を低減して慣性を小さくするために繊維強化合成樹脂などの複合材料で製造される。弁座2および弁押さえ3は、通常、金属製である。
【0009】
シールリング8および弁座2の両方は、疲労応力のために摩耗を受ける。それゆえ、自動リング弁は維持管理の対象となる。シールリング8は、弁座が環状シール面4Aの加工による再形成を必要とする間に交換される。この操作には、圧縮機からの自動リング弁の取り外しが必要であり、多大な時間を必要とする。弁は、弁座の加工および再形成を必要とするものと交換可能でなければならないので、圧縮機は長期間のシャットダウンまたは交換の対象となる。同様の欠点が、例えば可動シール板などの同心円状に設けられたシールリングと異なる可動シール要素を備える自動弁に生じる。
【0010】
自動弁は、摩擦およびガス圧縮によって発生する熱のために熱応力を受ける。それゆえ、弁の様々な部品は熱膨張しがちである。弁座およびシールリングの製造のための異なる材料の使用は、使用される材料の異なる熱膨張係数が原因で熱膨張差を引き起こす。このことは、平面状のシール面が使用されない限り、圧縮機効率の低減によるガス流路の非効率的な封止およびそれに伴うガス漏れの原因となる。一方、後者は、効率的な封止作用の観点から、完全に満足なものではない。例えば弁座上で環状座部と協働する環状凸部を備える可動シール板が使用される場合、同様の欠点が生じる。
【0011】
シールリング8の開閉または同様に可動シール板の開閉は、閉鎖の間の弁座2に対するシールリング8の衝撃が原因で、弁の構造上で動的応力を繰り返し発生させる。
【0012】
それゆえ、改良された差圧弁、特に、せめて従来技術のリング弁の上述の問題および欠点のうち少なくとも1つを軽減するような、往復圧縮機または同様の機械のための自動リング弁を開発することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5,511,583号明細書
【発明の概要】
【0014】
本明細書に開示される主題のいくつかの実施形態によれば、自動弁は1つ以上の可動シール要素(例えば複数の同心円状に設けられたシールリング)および取り外し可能な座板を備え、可動シール要素および座板のいずれも、非金属材料製であり、好ましくは同じまたは実質的に同じ熱膨張係数を有する。可動非金属製シールリングまたは他の可動シール要素の使用の利点がこのようにして維持されるが、同時に、ガス漏れなどの熱膨張差およびそれによる圧縮機効率の低減に起因する欠点は、少なくとも部分的に軽減されるか、あるいは完全に除去される。取り外し可能かつ交換可能な座板の使用は、弁の維持管理を容易にし、摩耗した弁座の再加工の必要性を取り除く。摩耗し、破損あるいは変形した座板は、維持管理の介入に必要な機械休止時間を長時間かけることなく、短時間で容易に取り外して交換され得る。
【0015】
従って、一実施形態によれば、自動弁は、弁座を貫通して延びる第1ガス流路を備える該弁座と、弁押さえを貫通して延びる第2ガス流路を有する該弁押さえと、弁押さえと弁座との間に設けられた少なくとも1つの可動シール要素と、弁座に取り外し可能に接続され、弁座と可動シール要素との間に設けられ、第1ガス流路に整合する開口部を備える座板とを備える。可動シール要素は、第1ガス流路を閉じるために弾性部材によって取り外し可能な座板に対して弾力的に付勢され、座板および単一または複数の可動シール要素は、非金属複合材料製である。
【0016】
上述の通り、実際には、可動シール要素は、環状で同心円状に設けられた、取り外し可能な座板と協働してシール面を形成するリングによって形成される。リングは、単一の構造を形成するために互いに連結されてもよい。あるいは、リングは互いに離間し、同心円状に配置された環状のアライメントに従って設けられた圧縮ばねなどの各弾性部材によって、個別に座板に向けて付勢されてもよく、複数のばねが、隣接するリングとは独立に各リングを個別に付勢するために提供される。この場合、可動シール要素は互いに離間して、同心円状に設けられたシールリングによって形成される。
【0017】
いくつかの実施形態によれば、座板および単一または複数の可動シール要素は、複合材料製である。2つの部品の複合材料は同一であってもよい。いくつかの実施形態において、単一または複数の可動シール要素および座板のために、例えば設計考察に基づいて異なる複合材料をそれぞれ使用してもよい。好ましい実施形態において、異なる複合材料が座板および単一または複数の可動シール要素のためにそれぞれ使用されたとしても、前記複合材料は実質的に同じ熱膨張係数を有する。
【0018】
類似の、あるいは実質的に同じ熱膨張係数を有する非金属材料製の座板および単一または複数の可動シール要素の使用は、効率的なシール作用と低い圧力損失とをもたらす非平面のシール面の使用を可能にする。実際、2つの部品は、温度上昇を受けると、相互の形状および寸法の整合条件を維持することでシール効率を維持するように、類似の、あるいは実質的に同じ径方向に膨張しがちである。
【0019】
いくつかの実施形態において、座板および単一または複数の可動シール要素を形成する複合材料は、合成樹脂マトリックス、好ましくは、強化繊維および/または異なるタイプの補強材を含む熱可塑性樹脂のマトリックスであってもよい。これらは、ガラス繊維および炭素繊維を含むがこれらに限定されない。単一または複数の可動シール要素は、第2シール面と座板上で封止接触して協働する複数の第1シール面を備えてもよく、前記第2シール面は前記座板における開口部に沿って延びる。好ましくは、第1シール面および前記第2シール面は非平面である。
【0020】
特徴および実施形態を、本明細書に以下の通り開示し、本願の記述の不可欠部分を成す添付の特許請求の範囲においてさらに述べる。以下の詳細な記述をより良く理解できるものにするため、かつ、本願の技術に対する貢献がより高く認識されるために、上述の簡単な記述は本発明の様々な実施形態の特徴を述べている。当然のことながら、以降に記述し、かつ、添付の特許請求の範囲において述べる本発明の他の特徴もある。この点で、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明する前に、この出願において本発明の様々な実施形態が、構成の詳細と、以下の記述に述べるか、あるいは図面に示す部品の配置とに限定されないものと理解される。本発明は他の実施形態とすることが可能であり、様々な方法で実施および実行することが可能である。また、本明細書に採用した表現および用語は、記述を目的としており、限定であるとみなされるべきものではないことが理解される。
【0021】
従って、当業者は、開示に基づく概念が、本発明のいくつかの目的を実行するための他の構造、方法および/またはシステムの設計の基礎として容易に利用され得ることを理解しているであろう。それゆえ、特許請求の範囲が本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、そのような同等の構成を含むとみなされることが重要である。
【0022】
添付の図面に関連して考慮すると、以下の詳細な記述を参照することでより良く理解されるので、本発明の開示された実施形態および多くの付随する利点について容易に、完全な理解が得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】先行技術の自動リング弁の長手面に係る断面図である。
【
図2】自動リング弁を使用した往復圧縮機のヘッドの長手方向断面図である。
【
図5】座板およびシールリングの一実施形態を示す弁の部分拡大断面図である。
【
図6】座板およびシールリングの他の実施形態を示す弁の部分拡大断面図である。
【
図7】座板およびシールリングのその他の実施形態を示す弁の部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の例示的な実施形態の詳細な記述は、添付の図面を参照する。異なる図面における同様の参照番号は、同一または同様の要素を特定する。さらに、図面は必ずしも縮尺に合わせて引いていない。また、以下の詳細な記述は本発明を限定するものではない。代わりに、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0025】
明細書全体を通して、「一実施形態」または「実施形態」あるいは「いくつかの実施形態」に対する言及は、実施形態について記述された特定の特性、構造または特徴が、開示された主題の少なくとも一実施形態において含まれることを意味する。従って、明細書全体を通して様々な個所に出現する「一実施形態において」または「実施形態において」あるいは「いくつかの実施形態において」の句は、必ずしも同じ実施形態を言及していない。さらに、特定の特性、構造または特徴は、1つ以上の実施形態において任意の適切な態様で組み合わされてもよい。
【0026】
本明細書において以下により詳細に記述され、かつ、図面に示された実施形態は、特に自動リング弁、つまり複数の同心円状に設けられた可動シールリングを備える自動弁を言及している。他の実施形態において、図示しないが、単一の可動シール要素を形成するために互いに拘束された1つ以上の部品から製造されるシール板を、可動かつ同心円状に設けられたシールリングに代えて備えることができる。
【0027】
図2および
図3は、本明細書に開示される主題に従う自動リング弁の例示的な実施形態を示している。自動リング弁は、全体的に50として示されている。弁50は、弁座52および弁押さえ54を備える。弁座52および弁押さえ54は、ねじ装置56によって互いに接続されている。以下の通り本明細書により詳細に記述されるように、隙間は、可動シールリングおよび座板が設けられた弁座52と弁押さえ54との間に残される。
【0028】
弁座52は、一組の第1ガス流路58を備える。いくつかの実施形態において、第1ガス流路58は細長く湾曲した孔または隙間の形状を有する。いくつかの実施形態において、第1ガス流路58は同心円状に配置された円周に沿って設けられる。他の実施形態において、第1ガス流路58は、細長よりもむしろ円形の断面を有することができる。円周状に設けられた第1ガス流路58の各組は、前記可動シールリングによって密閉される。
【0029】
図面に示した実施形態において、弁板は複数の同心円状に設けられたシールリング60から構成される。いくつかの実施形態において、シールリング60は、互いに独立している、つまり、これらは互いに拘束されていない。他の実施形態において、シールリング60は、ユニット内にそこを通るガスの流れを許容する貫通開口部を有する単一のユニットを形成するような、拘束部材によって互いに接続され得る。いくつかの実施形態において、シールリング60を、弁板の形で単一の可動シール要素を形成するために互いに接続することができ、該弁板には、同様に弁板を通るガスの通路を提供するような開口部を備える、前記弁板の一面上に環状凸部が設けられる。
【0030】
以下の通り本明細書においてより詳細に記述されるように、図面において、同じ円周に沿って設けられた第1ガス流路58の各組は、シール面との相互協働によって前記同心円状に設けられたシールリング60のそれぞれ1つによって閉じられる。
【0031】
いくつかの例示的な実施形態において、図面に示すように、各シールリング60は、一組の弾性部材によって弁座52に向けて弾性的に付勢される。弾性部材は、らせん状の圧縮ばね62を備えてもよい。各圧縮ばね62は、弁押さえ54に設けられたばね受け64のそれぞれに部分的に収容されてもよい。弁座52に向けて閉鎖位置にシールリング60を付勢するために、他の異なる弾性装置を設けてもよい。
【0032】
弁押さえ54は一組の第2ガス流路66を備える。第1ガス流路58と同様に、第2ガス流路66もまた、同心円状に延びる円周に沿って設けることができ、細長く湾曲した隙間または孔の形であってもよい。他の実施形態において、第2ガス流路66は、細長よりもむしろ円形の断面を有することができる。第1ガス流路58および第2ガス流路66は、シールリング60が開放位置にある場合にガスが弁50を通して流れることができるように、半径方向に偏っている。
【0033】
いくつかの実施形態において、各シールリング60は、弁座上で第2平面状シール面と協働する第1平面状シール面を有する。しかし、他の実施形態において、図面に示す通り、シールリング60は少なくとも部分的に非平面のシール面60Aを有する。シール面60Aは、凸状の断面形状を有することがある。いくつかの実施形態において、シール面60Aは湾曲した凸状のシール面である。他の実施形態において、
図3A、
図5および
図6に示すように、シール面60Aは、2つの円錐表面部60Bおよび中間平面60Cで構成することができる。
【0034】
他の実施形態において、(例えば
図7参照)シール面60Aは、凸状のトロイダル面の形状をなす中央平面部60Cおよび2つの外側面部60Bで構成することができる。
【0035】
本明細書に開示される主題によれば、シールリング60は、弁座52に取り外し可能に接続される座板68上に形成されるシール面と協働する。座板68は、例えば座板が破損または摩耗した場合に交換できるように、弁座から取り外し可能である。
【0036】
座板68は、開口部または貫通通路70を備える。座板68が弁座52に取り付けられる場合、貫通通路70は、弁座52の第1ガス流路58に位置合わせされる。好ましくは、貫通通路70は第1ガス流路58と同じ断面を有する。従って、貫通通路70は、弁座52の第1ガス流路58のパターンに適合するパターンに従って、つまり、同心円状に設けられた円周線に沿って設けられる。
【0037】
いくつかの実施形態において、座板68は座板68の貫通通路70に沿って延びるシール面70Aを有する。円周方向に並んだ開口部または貫通通路70の各組は、同心円状に延びる2つのシール面70Aの間に設けられる。シール面70Aは、座板68上に形成された円形凸部上に設けられる。
【0038】
シール面70Aの形状は、シールリング60のシール面60Aに適合するように設計される。1つのシールリング60は、一組の開口部または貫通通路70が設けられた、2つの同心円状に設けられたシール面70Aの間を係合する。シールリング60は、対向して設けられた座板のシール面70Aの間を部分的に貫通することができる(特に
図5、
図6および
図7参照)。こうして楔効果が得られ、結果として改善されたシール作用をもたらす。
【0039】
いくつかの実施形態において、周方向に設けられた一組の開口部または貫通通路70に沿って設けられた2つのシール面70Aは、対応するシールリング60の円錐表面部60Bに適合する円錐表面部(
図3、
図5、
図6)を有する。他の実施形態(
図7)において、シール面70Aは、シールリング60の対応する凸状トロイダル面60Bに適合する凹状のトロイダル面を有する。
【0040】
シール面60Aおよび70Aは、各シール面70Aが対応するシール面60Aに狭い環状接触面に沿って接触するように設計され得る。狭い接触領域は高い接触圧を確保するので、高いシール効果が得られる。シールリング60および座板68の両方の円錐面またはトロイダル面は、座板68の開口部または貫通通路70について、シールリング60のセルフセンタリング効果をもたらす。
【0041】
いくつかの実施形態において、シールリング60は、繊維強化合成樹脂、好ましくは炭素繊維またはガラス繊維で強化された熱可塑性樹脂などの複合材料で製造される。
【0042】
いくつかの実施形態において、座板68はシールリング60と同じ材料で製造される。他の実施形態において、座板68は、シールリング60の材料と実質的に同じ熱膨張係数を有する、別の繊維強化合成樹脂などの異なる材料で製造され得る。「実質的に同じ」熱膨張係数によって、係数は、動作温度範囲内の熱膨張差がシール作用を損なわないような、シールリング60を形成する材料の熱膨張係数と異なるものであると理解される。いくつかの実施形態において、シールリングと座板との熱膨張係数の差は、20%以下、好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0043】
シールリング60および座板68の両方に複合材料を使用することで、自動リング弁の可動部分の質量の低減が可能になり、さらに、これら2つの部品の異なる熱膨張係数がガス漏れを引き起こし、それに伴って、弁が使用される機械(例えば往復圧縮機)の効率の低減を引き起こす、公知の自動リング弁の欠点を軽減または除去する。
【0044】
また、互換性のある、あるいは交換可能な座板68の使用は、弁の維持管理を容易にする。座板68が破損または摩耗した場合、弁が取り付けられた機械からの弁の分解と、弁座の加工の回避とを要することなく、弁を容易に交換することができる。
【0045】
図面に示された例示的な実施形態において、座板68は弁座52に直接的に接触していない。むしろ、緩衝器が座板68と弁座52との間に設けられる。図示した実施形態において、緩衝器は緩衝板72を備える。緩衝板72は74において開口部を備える。開口部74は、座板68の貫通通路70に位置合わせされ、かつ、弁座の第1ガス流路58に位置合わせされ、そして好ましくは、弁座の第1ガス流路58と同じ断面を有する。緩衝板72は、シールリング60に対向する座板68と弁座52の表面との間に保持される。座板68および緩衝板72を弁座52にロックするために、1つ以上のピン73を備えることができる。
【0046】
緩衝板72は、弁上の動的応力を低減させるような閉ストロークの間のシールリング60の運動エネルギーの少なくとも一部を、消散させるかあるいは吸収する。緩衝板72は、適切なエネルギー吸収材料で製造される。緩衝板72の製造に適切な材料は、例えば、炭素繊維またはガラス繊維で強化された熱可塑性樹脂などのプラスチックまたは複合材料である。
【0047】
好ましくは、緩衝板72は、座板68が緩衝板72が位置づけられる弁座52の平面に直接的に接触しないように座板68を弁座52から分離させる、一種のライナを形成する。このことは、シールリング60が第1ガス流路58を閉じる際の弁上の機械的衝撃を低減させるために有効な減衰効果を確保する。
【0048】
本明細書に記載の主題の開示された実施形態が、いくつかの例示的な実施形態に関連して、特殊性および詳細とともに図示され、完全に説明されたが、本明細書に述べた新規の教示、原理および概念、そして添付の特許請求の範囲に列挙した主題の利点から実質的に逸脱することなく、多くの修正、変更および省略が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。従って、開示されたイノベーションの適切な範囲は、このような全ての修正、変更および省略を網羅するように、添付の特許請求の範囲の最も広い解釈によってのみ決定されるべきである。
【符号の説明】
【0049】
1 自動リング弁
1A 第1自動リング弁
1B 第2自動リング弁
1C 第3自動リング弁
1D 第4自動リング弁
2、52 弁座
3、54 弁押さえ
4、5 ガス流路
4A、60A、70A シール面
6 中央ねじ
7 隙間
8、60 シールリング
9、62 圧縮ばね
10、64 ばね受け
11 ヘッド
13 圧縮機シリンダ
13A 第1圧縮室
13B 第2圧縮室
14 ピストン
15 ロッド
17 第1吸気ポート
19 第2吸気ポート
21 第1排気ポート
23 第2排気ポート
50 弁
56 ねじ装置
58 第1ガス流路
60B 円錐表面部、外側面部、凸状トロイダル面
60C 中間平面、中央平面部
66 第2ガス流路
68 座板
70 貫通通路
72 緩衝板
73 ピン
74 開口部
f14 両方向矢印