(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359975
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ヒートシール可能なナイロンフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20180709BHJP
B32B 27/28 20060101ALI20180709BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20180709BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
B32B27/34
B32B27/28 101
A23L5/00 G
C09K3/10 Z
C09K3/10 E
【請求項の数】18
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-561063(P2014-561063)
(86)(22)【出願日】2013年3月6日
(65)【公表番号】特表2015-516312(P2015-516312A)
(43)【公表日】2015年6月11日
(86)【国際出願番号】US2013029254
(87)【国際公開番号】WO2013134335
(87)【国際公開日】20130912
【審査請求日】2016年2月3日
(31)【優先権主張番号】61/607,212
(32)【優先日】2012年3月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505077426
【氏名又は名称】デュポン・テイジン・フィルムズ・ユー・エス・リミテッド・パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】フェンファ・デン
(72)【発明者】
【氏名】モイラ・タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ニール・ロビンソン
【審査官】
相田 元
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2007/012805(WO,A1)
【文献】
特表2008−520815(JP,A)
【文献】
特開平09−272180(JP,A)
【文献】
米国特許第05763095(US,A)
【文献】
特開2000−246843(JP,A)
【文献】
特開平05−077861(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00447988(EP,A1)
【文献】
国際公開第00/044560(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
A23L 5/00
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナイロン系フィルムと、一以上のポリマーを含む接着剤組成物の同延の層とを含む複合フィルムであって、一緒にされた前記一以上のポリマーは重合された形態で、
(a)エチレン;
(b)前記一以上のポリマーの5〜50wt%の範囲を構成する、一以上のエステル含有モノマー、及び;
(c)前記一以上のポリマーの0.5〜20wt%の範囲を構成する、一以上のカルボン酸含有モノマー及び任意にその塩、を含み、
前記接着剤組成物の同延の層が、前記ナイロン系フィルムの表面の直上のヒートシール層であり、
前記複合フィルムは最大で三層を含む、複合フィルム。
【請求項2】
前記一以上のカルボン酸含有モノマー及び任意にその塩が、前記一以上のポリマーの2〜5wt%の範囲を構成する、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記一以上のエステル含有モノマーが、前記一以上のポリマーの15〜30wt%の範囲を構成する、請求項1から2のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項4】
前記一以上のポリマーが、
(a)ビニルアセテートを5〜35wt%の範囲で有するエチレンビニルアセテートコポリマーと、
(b)(メタ)アクリル酸を2〜15wt%の範囲で有する、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー及び任意にその塩と、を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
前記ビニルアセテートの量が15〜25wt%の範囲である、請求項4に記載の複合フィルム。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸及び任意にその塩の量が5〜15wt%の範囲である、請求項4または5に記載の複合フィルム。
【請求項7】
カルボン酸基の50mol%未満が、その金属塩の形態である、請求項1から6のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
前記接着剤組成物がさらに、前記一以上のポリマーの総重量100部に対して1〜30部の粘着付与剤を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
前記粘着付与剤がロジン系粘着付与剤である、請求項1から8のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
前記接着剤組成物がさらに、アンチブロック添加剤を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項11】
前記ナイロン系フィルムの前記同延の層と反対側のポリ塩化ビニリデンの一層をさらに含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記接着剤組成物の同延の層が10μm以下の厚さである、請求項1から11のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の前記複合フィルムから作られる蓋を備えるパッケージであって、前記蓋がトレーにヒートシールされるパッケージ。
【請求項14】
前記パッケージは、調理サイクル中にセルフベントすることができる、請求項13に記載のパッケージ。
【請求項15】
生または加工された肉をパッケージするのに適した、請求項1から12のいずれか一項に記載の複合フィルムから作られる袋。
【請求項16】
前記袋は、調理サイクル中にセルフベントすることができる、請求項15に記載の袋。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の前記複合フィルムを、食品を収容しているトレーにヒートシールするステップを備える、食品のパッケージ方法。
【請求項18】
ヒートシールすることによって、請求項1から12のいずれか一項に記載の前記複合フィルムから作られる袋を閉じるステップを備え、前記袋は食品を収容する、食品のパッケージ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ナイロン(ポリアミド)フィルムは、その優れた穿刺抵抗ゆえに包装用途に広く使用されている。例えば上記フィルムは、肉やその他の食品用の穿刺抵抗袋を作る為に使用され得る。しかし、上記袋の製造プロセスは典型的には高温を必要とし、高温によってナイロンフィルムの表面が溶接されて袋をシールする。従って、ナイロンフィルムは直ちにヒートシール可能ではない。特に、他の基板に対してはヒートシール可能ではない。
【0002】
このヒートシール性の欠如によって、包装用途のナイロンフィルムは通常、複数層構造に組み込まれる。これらの構造はしばしば、ブローフィルムまたは押出コーティング工程で準備されたエチレン(コ)ポリマー層を採用する。残念ながら、これらの工程は比較的厚いエチレン(コ)ポリマー層を形成する傾向があり、これは潜在的に上記複合フィルムのデュアルオーブン可能性を潜在的に破壊し得る。なぜならエチレンコポリマーはしばしば耐熱性が良好ではなく、また、デュアルオーブン可能な調理用途で使用される材料の摘出条件を満足できないかもしれないからである。
【背景技術】
【0003】
ナイロンフィルムは食料製品、特に肉製品を保存及び調理するための袋を作るために使用されてきた。良好なシール性が欠けているので、典型的には上記袋はナイロン表面を高温で溶接して作られる。この高温溶接は、典型的には袋中のリークやピンホールを引き起こす。不十分なシール特性によって、三面がシールされた袋を使用し、食物で満たした後に金属クリップを用いて閉じるのが通常である。その後、食物中の異物を検出するためのX線または金属検出システムを使用することができない。溶接によって、そして金属クリップを用いて作られたナイロン袋は、典型的には調理サイクル中にセルフベントしない。ナイロン−ナイロン溶接部の強度が高いためである。
【0004】
これらの問題のいくつかを処理する一つの潜在的な方法は、ナイロン上に、ブローフィルムまたは押出工程よりも溶液コーティングでヒートシール層を提供することであろう。溶液コーティングは幅広いコーティングのフィルム厚を達成することを可能にすることも提供し、それはシール性能を調整するのに役立つことができる。しかし溶液コーティングはナイロン基板上で実施するのは困難であった。なぜならナイロン上に良好なコーティングを形成する一方で、良好なヒートシール特性を提供するために必要とされる接着力及び被フィルム引張強さを依然として提供することができる組成物を特定することが困難であると示されたからである。従って、これらの特性を提供することができる組成物は商業的価値を有するであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本発明は、ナイロン系フィルムと、一以上のポリマーを含む接着剤組成物の同延の層とを含む複合フィルムを提供し、一緒にされた上記一以上のポリマーは重合された形態で以下を含む:
(a)エチレン;
(b)上記一以上のポリマーの5〜50wt%の範囲を構成する、一以上のエステル含有モノマー、及び;
(c)上記一以上のポリマーの0.5〜20wt%の範囲を構成する、一以上のカルボン酸含有モノマー及び任意にその塩。
【0006】
別の態様において、本発明は上記複合フィルムから作られる蓋を含むパッケージを提供し、上記蓋はトレーに対してヒートシールされる。
【0007】
また別の態様において、本発明は、生の、または加工された肉をパッケージするのに適した、上記複合フィルムからつくられる袋を提供する。
【0008】
また別の態様において、本発明は、食品を収容しているトレーに本発明の複合フィルムをヒートシールするステップを含む、食品のパッケージ方法を提供する。
【0009】
また更に別の態様において、本発明は、本発明の複合フィルムから作られる袋を閉じるステップを含む食品のパッケージ方法を提供し、上記袋は食品を収容する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明はナイロンフィルム(熱成形可能なナイロンフィルムを含む)上にヒートシール層を溶液コーティングで作るための方法及び組成物を提供する。最終的な複合フィルムは、例えば袋またはトレー容器用の蓋を作るのに用いることができる。特に、上記フィルムは、肉を調理する用途などの、高温での調理及び食品の再加熱に適したパッケージを準備するのに用いられ得る。
【0011】
本発明の溶液コーティング法を用いることで、薄いヒートシールコーティングを達成でき、また、例えば所定のレベルの剥離性を提供することを要求された時など、所定の最終的な使用の要請に対して必要なシール強度を簡単に調整することができる。最大で15μm、最大で10μm、または最大で5μmの厚みを有するコーティングが得られる。上記のようなフィルム厚は、ラミネーション、押出コーティングまたは共押出などの従来の方法では得るのが困難であるか、不可能である。本発明の複合フィルムから作られる蓋を有するパッケージと、上記複合フィルムから作られる袋とは、オーブン内の調理サイクル中にセルフベントする能力を備えて提供され得ることを本発明は見出した。これは単に十分に薄いコーティング厚を使用することで達成することができ、その正確な値は、上記特定のコーティング組成物及び上記複合フィルムがヒートシールされる表面の具体的なコーティング組成を含む、いくつかの要因に依存する。結果的に得られるパッケージまたは袋は、典型的には300F(177℃)から450F(204℃)の範囲の十分な高温に達するとベントする。
【0012】
[接着剤組成物]
本発明の接着剤組成物は一以上のポリマーを含み、一緒にされた上記一以上のポリマーは重合された形態で以下を含む:
(a)エチレン;
(b)一以上のエステル含有モノマー、及び;
(c)一以上のカルボン酸含有モノマー及び任意にその塩。
【0013】
例示的なカルボン酸含有モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びイタコン酸を含む。
【0014】
例示的なエステル含有モノマーは、酢酸ビニル、メチル(メチル)アクリレート、エチル(メチル)アクリレート、プロピル(メチル)アクリレート、ブチル(メチル)アクリレート及び/または他のアルキル(メチル)アクリレートを含む。いくつかの実施形態では、エステル含有モノマー成分の少なくとも一部分は、例えばポリブタンジオール(メタ)アクリレート等のポリブタンジオールエステルによって貢献される。
【0015】
接着剤が、ナイロンフィルムに対する有効な結合のために十分な接着力及び十分な被フィルム引張強さを有し、一方でなお典型的な使用条件下で有効なヒートシールを形成することができるためには、カルボン酸含有モノマー及びエステル含有モノマーの量を適切に選択することが重要である。もしカルボン酸含有モノマーの量が少なすぎると、ナイロンへの接着は弱い。しかしカルボン酸の量が多すぎると、溶け始める温度が適当なヒートシール形成には高温すぎることになり、ナイロン系層がヒートシール中に分解してしまうか、基板が分解してしまう。典型的には、接着剤の溶け始める温度は示差走査熱量測定(DSC)で測定した際に最大でも400Fであるべきである。またエステル量が少なすぎると接着層中の被フィルム引張強さが不十分になり得てしまい、一方で多すぎると溶け始める温度が低すぎてしまい、粘着性の接着層となってしまい、扱いにくくなることが分かった。
【0016】
従ってカルボン酸モノマーユニット及び任意にその塩は典型的には、混合された(combined)一以上のポリマーの少なくとも0.5wt%、少なくとも1wt%または少なくとも2wt%を構成する。それらは典型的には最大で20wt%、最大で10wt%、最大で7%または最大で5wt%を構成する。カルボン酸モノマーユニット及びその塩の重量%は、遊離した中和していない酸を基にして計算される。中和されたカルボン酸モノマーユニット(すなわち塩)についてのカウンターイオンは、もし存在するなら、いかなる種類でもよい。典型的な塩は、例えばナトリウム若しくはカリウム塩、アンモニウム塩、アミンの塩またはこれらの組み合わせのような金属塩を含み得る。本発明のいくつかの実施形態では、50mol%未満のカルボン酸基は金属塩の形態であり、30mol%未満、20mol%未満、10mol%未満または5mol%未満である。本発明のいくつかの実施形態では、50mol%未満のカルボン酸基は何かしらの塩の形態であり、30mol%未満、20mol%未満、10mol%未満または5mol%未満である。いくつかの実施形態では、塩の形態のカルボン酸は存在しない。好ましくは、アニオン界面活性剤が含まれない。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、接着剤組成物中のポリマーが、スルホン酸及び/またはホスホン酸及び/またはそれらの塩を含むモノマーユニットを含まないことが望ましいかもしれない。
【0018】
エステル含有モノマーユニットは典型的には混合された一以上のポリマーの少なくとも5wt%、少なくとも10wt%または少なくとも15wt%を構成する。それらは典型的には最大で50wt%、最大で40wt%または最大で30wt%を構成する。
【0019】
いくつかの実施形態では、同一のポリマー中に、エチレン、エステル含有モノマーユニット及びカルボン含有モノマーユニットの全てが存在する。代替的に、接着剤は二つ(以上)のポリマーを含み得る。例えばエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマー及びエチレン(メタ)アクリル酸(E(M)AA)コポリマーである。適当なEVAポリマーは重合された形態のエチレン及びビニルアセテートを任意の相対量含み得る。典型的には、EVAは少なくとも5wt%または少なくとも15wt%のビニルアセテートを有する。典型的にはビニルアセテート量は最大で35wt%または最大で25wt%である。
【0020】
適当なE(M)AAコポリマーは重合された形態のエチレン及び(メタ)アクリル酸を任意の相対量含み得る。典型的には、E(M)AAコポリマーは少なくとも2wt%または少なくとも5wt%、そして最大で20wt%、最大で15wt%または最大で10wt%の(メタ)アクリル酸を有する。(メタ)アクリル酸はアクリル酸から構成されてもよく、メタアクリル酸から構成されてもよく、それらの組み合わせから構成されてもよい。接着性ポリマーとしてEVA及びE(M)AAが使用されるいくつかの実施形態では、E(M)AAに対するEVAの重量比は少なくとも20:80、少なくとも30:70または少なくとも40:60であり得る。同じ実施形態において、上記重量比は最大で80:20、最大で70:30または最大で60:40であり得る。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、接着剤はさらに粘着付与剤を含有する。典型的には、ポリマー100部に対して、粘着付与剤は少なくとも1部、少なくとも3部または少なくとも5部のレベルで存在する。典型的には、ポリマー100部に対して、粘着付与剤の量は最大で30部、最大で20部または最大で15部である。
【0022】
現在知られている如何なる粘着付与剤でも用いることができ、例えば米国特許第3484405号明細書に開示されている。そのような粘着付与剤は様々な天然の及び合成の樹脂及びロジン物質を含み、組成物に十分で向上した粘着性を提供し得る。粘着付与剤樹脂は液体、半固体から固体、または固体でもよく、一般的には有機化合物の混合物の形態であり明確な融点を持たず結晶化の傾向もない、複合アモルファス材料を含む。そのような粘着付与剤樹脂は水に不溶であり得、植物または動物由来であり得、または合成樹脂であり得る。適当な粘着付与剤は、パラ−クマロン−インデン樹脂、テルペン樹脂、ブタジエン−スチレン樹脂、ポリブタジエン樹脂、炭化水素樹脂、ロジン、およびそれらの2種以上の組み合わせを含むがそれらに限定されない。
【0023】
一般的に、クマロン−インデン樹脂は約500から約5000の範囲の分子量を有する。この種の例示的な樹脂は、テネシー州キングスポートのEastman ChemicalからPICCO(登録商業) A100として市販されている。
テルペン樹脂はスチレン化テルペンを含み、約600から6000の範囲の分子量を有することができる。市販されている樹脂の例は、PICCOLYTE(登録商標) S−100(ジョージア州ブラウンズウィックのPinova)である。例示的なテルペン樹脂系の粘着付与剤はPICCOLYTE(登録商標) C115として市販されており、ポリ−リモネンに由来する。
【0024】
Eastman Chemicalから市販されているPICCOLASTIC(登録商標) A75のような低分子(例えば約1300)のスチレン硬質樹脂も適当である。適当なロジン系粘着付与剤はガム、木材またはトール油ロジンに由来し得る。上記粘着付与剤は、二量化ロジン、水素化ロジン、不均化ロジン、またはロジンのエステル等の変性ロジンをベースとしてもよく、典型的にはロジンを、2〜6個のヒドロキシル基を含有する多価アルコールとエステル化して準備される。例示的なロジン系粘着付与剤はEastman ChemicalからSTAYBELITE ESTER(登録商標) #10として市販されており、水素化ロジンのグリセロールエステルである。
【0025】
例えばワックスなどのアンチブロック添加剤などの、他の添加剤もまた本発明の接着剤組成物に含まれ得る。一つの適当なアンチブロック添加剤はエルカミドである。
【0026】
一つの適当な接着剤組成物は以下の成分を含み、乾燥した固体基準で報告される。この組成物は少量のアンモニアと共に約35wt%の固体のレベルで水中に分散され得る。この組成物中では、アクリル酸が混合されたエチレンアクリル酸(EAA)及びエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーの約3wt%を構成し、ビニルアセテートが約20wt%を構成する。
14% EAAコポリマー、15から20wt%のAA量
63% EVAコポリマー、24wt%のVA量
21% 水素化ロジンエステル粘着付与剤樹脂
2% ジオクチルフタレート可塑剤、ステアリルアミドスリップ添加剤、BHT酸化防止剤
【0027】
凡そこの組成を有する市販されている接着剤は、ADCOTE(商標) 37T77E分散体という商標名でDow Chemical(ミシガン州ミッドランド)から35%固体分散体として入手可能である。
【0028】
[ナイロン基板]
一般的に、適当なナイロン基板はいかなるナイロンまたはナイロンのブレンドでもよい。ナイロンと相性のよい少量のポリマー及び添加材が含まれてもよい。複合フィルムが高々約220Fまでの高温に曝される用途では、いずれのナイロンも十分な熱安定を有し、耐熱性以外の基準を用いて最も望ましいナイロン組成物を選択してもよい。
【0029】
複合フィルムが275F等のレトルトタイプの温度に曝される用途では、全てのナイロンが上記プロセス条件を耐えることができるわけではないので、許容可能なナイロンポリマーは幾分制限される。このような条件用の適当な例示的なナイロンは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン11及びナイロン6とナイロン11とのブレンドを含む。いくつかの好ましいナイロンのブレンドには、例えば熱成形可能なブレンドで、ナイロン12が25wt%まで含まれ得る。本発明のいくつかの実施形態において、例えば当技術分野で公知の溶液または押出コーティング方法を用いて、ポリ塩化ビニリデンの一層がナイロン層に適用されてもよい。典型的には、上記層はナイロン層と同一の広がりである。すなわち、ナイロンフィルムの全表面と同一の形状及びサイズである。そのような層を提供することで、ナイロンとヒートシール層との間またはヒートシール層と反対側上のいずれかが、水分及び酸素に対するバリア性を向上し得る。
【0030】
[接着剤組成物の塗布]
接着剤組成物は水性分散液として塗布され、典型的にはカルボキシル基を含有する接着剤樹脂の溶解及び/または分散を助けるためにアンモニアまたは揮発性アミンを使用する。塗布はマイヤーロッド、グラビアコーターまたはドクターブレードの使用など、当該技術で公知のいかなるコーティング手段に影響されてもよく、続いて乾燥される。いくつかの実施形態ではヒートシールコーティングはナイロンフィルムと同一の広がりを持ち得る。
【0031】
[上記複合フィルムを採用するパッケージ]
本発明はまた、トレーなど、底部にヒートシールされた、本発明の複合フィルムからなる蓋を備えるパッケージを提供する。包装用途に一般的に使用される例示的なトレー材料は、熱成形ポリエステル、アモルファスPET、耐衝撃性改質PET、ポリプロピレン及びポリスチレンを含む。他の実施形態では、上記複合フィルムは、例えば生または加工された肉をパッケージするための袋へと成形されることができる。
【0032】
[実施例]
[ナイロン6,6フィルム上の接着剤コーティング]
9つの接着剤組成物が評価され、それぞれがナイロン6,6フィルム上にコートされ、乾燥され、ヒートシール強度が評価された。分析方法と商業用の印刷物の組み合わせによって決定された、上記組成物の凡その組成は以下の通りである。
【0033】
ADCOTE(商標) 37T77E−凡そ上述した組成を有する高分子量エチレン共重合体をベースとする水系分散体。
AQUASEAL(登録商標) 2009−カルボン酸モノマーユニットを含まないEVAコポリマーであり、Paramelt BV(Costerstraat 18, P.O. Box 86, NL−1700 AB Heerhugowaard)から市販されている。
MICHEM(登録商標) Emulsion D791−約24wt%のアセテート量を有するEVAコポリマー及びEAAコポリマー分散体であり、Michelman, Inc.(オハイオ州Cincinnati)から市販されている。
MICHEM(登録商標) Emulsion D796−エチレン、カルボン酸含有モノマー及びアクリル酸メチルを含むコポリマーのアニオン分散体であり、約20wt%のアクリル酸メチル量を有する。
MICHEM(登録商標) Emulsion D797−エチレン、カルボン酸含有モノマー及びアクリル酸ブチルを含むコポリマーのアニオン分散体であり、約22wt%のアクリル酸ブチル量を有する。
MICHEM(登録商標) Emulsion D970−エステルまたはカルボン酸モノマーユニットを有さないアニオンポリオレフィン分散体である。
AQUASEAL(登録商標) 2045−エチレン/メタクリル酸コポリマーの金属塩であり、20%のメタクリル酸量を有し、Paramelt BVから市販されている。
AQUASEAL(登録商標) 2200−高ポリプロピレン量を含み、エステルまたはカルボン酸モノマーユニットを含まないポリエチレンコポリマーであり、Paramelt BVから市販されている。
AQUASEAL(登録商標) 2105−エステルモノマーユニットを含まないEAAコポリマーであり、Paramelt BVから市販されている。
【0034】
ADCOTE(商標) 37T77Eの一般的なコート方法が以下で記述される。その他のコーティングは同様に適用された。
【0035】
ADCOTE(商標) 37T77E分散体(Dow Chemicalsより、固形分35%)を、撹拌を伴って脱イオン水を加えることにより、固形分25%に希釈した。この溶液は、#4 Meyerロッドを用いて厚さ1mmのナイロン6,6フィルム(Exopackより、Dartek(登録商標) N201)上にコートされた。上記ウェットコーティングをオーブン中にて180℃で30秒間乾燥した。得られたフィルムは厚さ9μmのドライコーティングを有した。
【0036】
[ヒートシール強度測定]
コートされたナイロンフィルムのA4シートの半分は、Sentinelヒートシーラー(Packaging Industries Group社のモデル12)を用いて、それ自身にシールされた(コートされた側とコートされた側)。上記ヒートシーラーのパラメータは:150℃ (トップジョー)、40℃ (ボトムジョー)/1秒/80psiである。シールされた試料はマークされ、幅25mmのストリップへと切断され、折り重ねられた部分が切り開かれ、ヒートシール強度はINSTRON(登録商標)モデル4464試験機上の剥離強度試験によって決定された。ジョーは約50mm離してセットされた。上方のジョーはシールされた試料の一片をつかみ、250mm/分の速度で上昇し、一方で下方のジョーはシールされた試料の他片をつかんで静止していた。フィルムの二片を分離するのに必要とされた最大の力が記録された。9個のコートされた試料のそれぞれに対して、5個のシールされた試料片が測定された。結果を表1に示す。
【0038】
比較例として上記に載せられた組成物は、エステルモノマーユニット及び/またはカルボン酸モノマーユニットが存在しない。一方、本発明に係る実施例は、分散体中に存在するポリマー中にエチレンと共にこれらの両方を含んでいる。見て分かるように、本発明に係るフィルムの剥離強度は、比較例の剥離強度よりも著しく大きい。
【0039】
本発明は、具体的な実施形態を参照して描写され記載されているが、本発明は示された詳細に限定されるものではない。そうではなく、本発明から逸脱することなく、特許請求の範囲内及び均等の範囲内で、様々な変形を詳細に行うことができる。