(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明のタッチセンサユニットを備えた車両の側面図を、
図2は車両に設けられる自動開閉装置の構造を説明する説明図を、
図3はタッチセンサユニットの構造を示す断面図を、
図4は
図3の破線円A部の拡大断面図を、
図5はケーブルセンサの構造を示す斜視図を、
図6はセンサホルダの射出成形後の形状を説明する説明図を、
図7は本発明のタッチセンサユニットの構造と従来技術のタッチセンサユニットの構造とを比較した断面図を、
図8は本発明のタッチセンサユニットの特性と従来技術のタッチセンサユニットの特性とを比較したグラフをそれぞれ示している。
【0018】
図1に示すように、車両10は、エンジンルームおよび車室(詳細図示せず)を備えた所謂ミニバンタイプの乗用車である。車両10を形成する車体11の側部12には、開口部13が設けられている。開口部13は、図中太線矢印に示すように、車体11の前後方向にスライド(移動)するスライドドア(開閉体,固定対象物)14によって開閉される。
【0019】
図2に示すように、スライドドア14にはローラアッシー15が設けられている。ローラアッシー15は、車体11の側部12に固定されたガイドレール16に案内され、これによりスライドドア14は、図中実線で示す「全開位置」と図中二点鎖線で示す「全閉位置」との間でスライドする。また、ガイドレール16の車体前方側には、車内側(図中上側)に湾曲した湾曲部16aが設けられている。これにより、ローラアッシー15が湾曲部16aに案内され、スライドドア14は、車体11の側部12に対して同一面となるよう車内側に引き込まれて閉じられる。
【0020】
ここで、ローラアッシー15は、図示した箇所以外にスライドドア14の前端寄りの上下部分にもそれぞれ設けられ、これらに対応して車体11の開口部13の上下部分にもそれぞれガイドレールが設けられている。このように、スライドドア14は、合計3箇所で車体11に支持されており、したがって、スライドドア14は安定したスライド動作が可能となっている。
【0021】
図2に示すように、車体11にはスライドドア14を自動で開閉させる自動開閉装置20が搭載されている。自動開閉装置20は、ガイドレール16の車体前後方向の略中央部に隣接して車体11に固定される駆動ユニット21を備えている。駆動ユニット21からは、車体前方側と後方側とに向けてケーブル22,23がそれぞれ引き出されている。
【0022】
駆動ユニット21から車体前方側に引き出されたケーブル22は、ガイドレール16の前端部分に設けられた反転プーリ24を介して車体前方側からローラアッシー15に接続されている。一方、駆動ユニット21から車体後方側に引き出されたケーブル23は、ガイドレール16の後端部分に設けられた反転プーリ25を介して車体後方側からローラアッシー15に接続されている。
【0023】
そして、駆動ユニット21によりケーブル22,23が駆動されると、スライドドア14は、車体前方側または車体後方側にあるケーブル22,23に引っ張られて、自動的に開閉動作される。つまり、自動開閉装置20は、所謂ケーブル式の自動開閉装置となっている。
【0024】
駆動ユニット21は減速機構付きの電動モータであって、その駆動源には、例えば、ブラシ付きの直流モータやブラシレスの直流モータ等、正逆両方向に回転し得るものが用いられる。駆動ユニット21の内部には、各ケーブル22,23が巻き掛けられたドラム(図示せず)が収容されている。これにより、駆動ユニット21が正方向に駆動されると、ドラムが一方向に回転してケーブル22がドラムに巻き取られ、スライドドア14がケーブル22に引っ張られて閉じる。これとは逆に、駆動ユニット21が逆方向に駆動されると、ドラムが他方向に回転してケーブル23がドラムに巻き取られ、スライドドア14がケーブル23に引っ張られて開く。
【0025】
駆動ユニット21には、当該駆動ユニット21を制御するコントローラ30が、接続ケーブル31を介して接続されている。コントローラ30は、CPUやROM,RAMなどのメモリ等(いずれも図示せず)を備え、さらには、後述するケーブルセンサ50(
図5参照)の状態を電流値信号に基づいて判断する判断回路(図示せず)を備えている。ここで、ケーブルセンサ50の状態とは、
図1に示すようにタッチセンサユニット40に障害物DAが接触した状態や、ケーブルセンサ50が断線(故障)した状態のことを言う。
【0026】
スライドドア14には、操作者によって操作されるドアハンドル14aが設けられている。ドアハンドル14aは、スライドドア14を開閉させる開閉スイッチとしての機能を備えている。操作者によってドアハンドル14aが操作されると、当該ドアハンドル14aからコントローラ30に開閉信号が出力される。そして、コントローラ30は、開閉信号等の入力に基づいて駆動ユニット21を制御する。
【0027】
例えば、ドアハンドル14aが操作され、コントローラ30にスライドドア14を閉じる旨の指令信号(閉動作信号)が入力されると、コントローラ30によって駆動ユニット21が正方向に駆動される。よって、スライドドア14は閉じる。これとは逆に、ドアハンドル14aが操作されて、コントローラ30にスライドドア14を開く旨の指令信号(開動作信号)が入力されると、コントローラ30によって駆動ユニット21が逆方向に駆動される。よって、スライドドア14は開く。
【0028】
図3に示すように、スライドドア14の車体前方側には、車体前方に向けて突出されたブラケット部14bが設けられ、当該ブラケット部14bには、タッチセンサユニット40が装着されている。つまり、タッチセンサユニット40は、スライドドア14の閉塞方向に沿う前端部に固定されている。タッチセンサユニット40は、スライドドア14に対する障害物DA(
図1参照)の接触を検出するもので、障害物DAにより弾性変形されるケーブルセンサ50と、当該ケーブルセンサ50を保持しつつ、ケーブルセンサ50をブラケット部14bに固定するためのセンサホルダ60とを備えている。
【0029】
図5に示すように、ケーブルセンサ50は、断面が略円形形状に形成された中空の被覆材51を備えている。被覆材51の中心部分には、断面が略円形形状に形成されたスペーサ部材52が配置され、当該スペーサ部材52は、被覆材51の延在方向に真っ直ぐに延ばされている。また、被覆材51の内部で、かつスペーサ部材52の周囲には、断面が略円形形状に形成された4本の電極53,54,55,56が螺旋状に設けられている。これらの電極53,54,55,56は、それぞれ等間隔となるようスペーサ部材52の周囲に巻かれている。
【0030】
ここで、スペーサ部材52および各電極53,54,55,56は、被覆材51により保持され、4本の電極53,54,55,56は、スペーサ部材52の周囲に接着剤等(図示せず)によって固定されている。なお、接着剤等による固定に限らず、スペーサ部材52の周囲に4本の螺旋溝(図示せず)を形成して、これらの螺旋溝に各電極53,54,55,56を配置することもできる。ただし、この場合における螺旋溝の深さ寸法は、被覆材51に外力が負荷された場合において、隣り合う電極同士が容易に接触できるように、なるべく浅い深さ寸法とするのが望ましい。
【0031】
被覆材51は可撓性を有する絶縁材料により管状に形成され、被覆材51の径方向に沿う厚み寸法は、被覆材51の円周方向の全ての位置において同一の厚み寸法となっている。これにより、ケーブルセンサ50の全方位からの感度が略同一となっている。そして、被覆材51の径方向から外力が負荷されると、被覆材51は弾性変形し、被覆材51への外力を除去すると、被覆材51は元の形状に復元される。ここで、
図3〜
図5に示す状態は、被覆材51に外力が負荷されていない状態を示している。
【0032】
被覆材51の材料としては、復元性ゴムや復元性プラスチック等を用いることができる。復元性ゴムには、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム等が含まれる。復元性プラスチックには、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、オレフィン系あるいはスチレン系の熱可塑性エラストマー等が含まれる。
【0033】
スペーサ部材52は、被覆材51が弾性変形されていない状態のもとで、各電極53,54,55,56同士を、非接触の状態に保持する機能を備えている。スペーサ部材52は、芯材52aと、当該芯材52aの周囲を被覆する被覆層52bとを備えている。芯材52aは、スペーサ部材52の剛性を確保して、容易には延び縮みしないようにするためのものである。被覆層52bは、外力が負荷されると弾性変形し、外力が除去されると元の形状に復元される。なお、被覆層52bの材料としては、被覆材51と同じ絶縁材料を用いることができる。
【0034】
4本の電極53,54,55,56は、それぞれ同じ外径に設定されており、いずれも導電性および可撓性を有している。各電極53,54,55,56は、銅等の導電性に優れた導線53a,54a,55a,56a、およびこれらの導線53a,54a,55a,56aの外周を被覆する外周層53b,54b,55b,56bにより構成されている。
【0035】
各導線53a,54a,55a,56aは、
図5に示すように複数の金属細線を撚り合わせて形成され、これにより各電極53,54,55,56の弾性変形に対して所定の耐久性を得ている。ただし、各導線53a,54a,55a,56aの材料としては、銅等に限らず他の導電材料であっても良く、さらには複数の金属細線を撚り合わせずに1本の導線としても良い。
【0036】
各外周層53b,54b,55b,56bは、被覆材51と同様に復元性ゴムや復元性プラスチック等を用いることができる。ただし、各外周層53b,54b,55b,56bにおいては、導電性を持たせるために、カーボンブラック等の導電性充填剤(図示せず)が所定量配合されている。
【0037】
各電極53,54,55,56の長手方向一端側には、電気部品としての検出抵抗(図示せず)が設けられている。一方、各電極53,54,55,56の長手方向他端側には、
図2に示すように、接続ケーブル32を介してコントローラ30が接続されている。ここで、ケーブルセンサ50に外力が負荷されていない通常状態においては、コントローラ30の判断回路は、検出抵抗を通る小さい値の電流値信号を検出し、これによりケーブルセンサ50に外力が負荷されていないと判断する。
【0038】
一方、ケーブルセンサ50に外力が負荷されて、当該ケーブルセンサ50が弾性変形した場合には、被覆材51の内部で隣り合う電極同士が互いに接触(短絡)する。これにより、コントローラ30の判断回路は、検出抵抗を通らない大きい値の電流値信号(短絡状態)を検出して、ケーブルセンサ50に外力が負荷された、つまり障害物DA(
図1参照)が接触したと判断する。
【0039】
タッチセンサユニット40は、可撓性を有する絶縁ゴム材等により形成されたセンサホルダ60を備えている。センサホルダ60は、スライドドア14の縦方向寸法(
図1の上下方向寸法)に合わせて長尺に形成されている。センサホルダ60の長手方向と交差する方向に沿う断面形状は、センサホルダ60の長手方向に沿う全域において同じ形状となっている。
【0040】
図3および
図4に示すように、センサホルダ60は、断面が略円形形状に形成されたセンサ収容部61と、当該センサ収容部61に一体に設けられ、断面が略U字形状に形成された固定部62と、センサ収容部61と固定部62との間に設けられる衝撃吸収部63とを備えている。
【0041】
センサ収容部61は、固定部62および衝撃吸収部63よりも硬度が低い(柔らかい)絶縁ゴム材により中空状に形成され、固定部62および衝撃吸収部63に比して、外力の負荷により変形し易くなっている。なお、図中符号BLの部分が、硬度が異なる絶縁ゴム材の境界部分を示している。
【0042】
センサ収容部61の内径寸法は、ケーブルセンサ50の外径寸法よりも若干大きい寸法に設定されている。これにより、センサ収容部61とケーブルセンサ50との間に若干の隙間が形成され、センサ収容部61へのケーブルセンサ50の収容作業を容易にしている。ここで、ケーブルセンサ50をセンサ収容部61に収容する際に、両者の滑りを良くする潤滑グリス(図示せず)が用いられる。
【0043】
ケーブルセンサ50の長手方向と交差する方向に沿うセンサ収容部61の厚み寸法(肉厚)t1は、ケーブルセンサ50における被覆材51の厚み寸法(肉厚)t2よりも若干厚い寸法に設定されている(t1>t2)。ここで、センサ収容部61を形成する絶縁ゴム材の硬度は、被覆材51を形成する絶縁材料の硬度よりも低い硬度に設定(柔らかく設定)されている。そのため、センサ収容部61は外力の負荷により容易に弾性変形され、小さい外力であってもケーブルセンサ50に確実に伝達させることができる。
【0044】
また、センサ収容部61の厚み寸法t1は、ケーブルセンサ50の長手方向と交差する方向に沿う第1,第2橋渡し部63a,63b(衝撃吸収部63)の厚み寸法(肉厚)t3よりも薄い寸法に設定されている(t1<t3)。これに加えて、センサ収容部61は、第1,第2橋渡し部63a,63bよりも柔らかく設定されている。そのため、外力が負荷されてセンサ収容部61が弾性変形した後に、これに引き続き、衝撃吸収部63が弾性変形するようになっている。
【0045】
図3に示すように、固定部62は、ブラケット部14bに固定されるもので、ブラケット部14bの延在方向と交差する方向に延びる底辺部62aを備えている。底辺部62aの車内側(図中右側)には、ブラケット部14bの延在方向、つまりスライドドア14の移動方向に延びる第1延在部62bが一体に設けられている。また、底辺部62aの車外側(図中左側)には、ブラケット部14bの延在方向、つまりスライドドア14の移動方向に延びる第2延在部62cが一体に設けられている。このように、底辺部62aは、タッチセンサユニット40をブラケット部14bに固定した状態のもとで、スライドドア14の内側(車内側)と外側(車外側)との間を跨ぐようにして設けられる。
【0046】
第1,第2延在部62b,62cは、いずれも底辺部62aから同じ方向に延ばされている。具体的には、第1,第2延在部62b,62cは、ブラケット部14bを挟むことができるように車体後方側に延ばされている。また、タッチセンサユニット40をブラケット部14bに装着した状態のもとで、底辺部62aの第1延在部62b側は車体後方側(図中下側)に配置され、底辺部62aの第2延在部62c側は車体前方側(図中上側)に配置されている。これにより、底辺部62aは、ブラケット部14bの取付中心FCに対して直交せずに傾斜されている。言い換えれば、第1延在部62bは、スライドドア14の閉塞方向(図中上方)に沿う後端部寄りに配置され、第2延在部62cは、スライドドア14の閉塞方向に沿う前端部寄りに配置されている。
【0047】
図3に示すように、底辺部62aの第1,第2延在部62b,62cが延在する側とは反対側(図中上側)で、かつ車内側寄りの部分に、衝撃吸収部63およびセンサ収容部61が配置されている。このように、底辺部62aの第1延在部62b寄りに衝撃吸収部63およびセンサ収容部61を設けることで、センサ収容部61が車体前方側に大きく突出されるのを防止している。つまり、タッチセンサユニット40の車体前後方向に沿う高さ寸法が増大するのを、できる限り抑えている。
【0048】
第1延在部62bには、当該第1延在部62bの延在方向に並ぶようにして、一対の抜け止め片62dが設けられている。これらの抜け止め片62dの先端側は、第2延在部62c側でかつ車体前方側に向けられている。これにより、車体後方側から第1延在部62bと第2延在部62cとの間に差し込まれたブラケット部14bが、確実に抜け止めされる。また、第1延在部62bの先端側(図中下側)には、ケーブルセンサ50とコントローラ30とを電気的に接続する接続ケーブル32(
図2参照)の一部を収容して、タッチセンサユニット40の周囲の見栄えを良くするケーブル収容部62eが一体に設けられている。
【0049】
第2延在部62cには、当該第2延在部62cの延在方向に並ぶようにして、一対の支持突起62fが設けられている。これらの支持突起62fは、第2延在部62cとブラケット部14bとの接触面積を減らして、ブラケット部14bの第1延在部62bと第2延在部62cとの間への装着を容易にする役割を果たしている。また、第2延在部62cの先端側(図中下側)には、スライドドア14が閉じられた状態のもとで、フロントドアやセンターピラー等(図示せず)に密着し、開口部13(
図1参照)を密閉するシール片62gが一体に設けられている。
【0050】
固定部62の内部には、当該固定部62を補強して固定部62の剛性を高めるための芯金64が埋設(インサート)されている。芯金64は、固定部62の形状に倣って断面が略U字形状に形成され、底辺部62aに対応した底辺補強部64aと、第1延在部62bに対応した第1補強部64bと、第2延在部62cに対応した第2補強部64cとを備えている。ただし、第1延在部62bのケーブル収容部62eおよび第2延在部62cのシール片62gは、いずれも柔軟性を必要とするため、ケーブル収容部62eおよびシール片62gの内部には、芯金64は埋設されていない。
【0051】
図3および
図4に示すように、センサホルダ60のセンサ収容部61と固定部62との間には、衝撃吸収部63が設けられている。衝撃吸収部63は、一対の第1橋渡し部63aおよび第2橋渡し部63bを備えている。第1,第2橋渡し部63a,63bは、固定部62とセンサ収容部61との間の距離を所定距離に保持し、かつ固定部62とセンサ収容部61との間に衝撃吸収空間(隙間)63cを形成している。
【0052】
第1,第2橋渡し部63a,63bは、いずれもスライドドア14の移動方向に延在されている。そして、第1,第2橋渡し部63a,63bの長手方向一端部は、いずれもセンサ収容部61に連結され、第1,第2橋渡し部63a,63bの長手方向他端部は、いずれも固定部62における底辺部62aに連結されている。第1橋渡し部63aは、スライドドア14の移動方向に沿う第1延在部62bとの対向部分に設けられ、第2橋渡し部63bは、スライドドア14の移動方向に沿う底辺部62aとの対向部分に設けられている。
【0053】
図4に示すように、ケーブルセンサ50の長手方向と交差する方向に沿う第1,第2橋渡し部63a,63bの厚み寸法t3は、タッチセンサユニット40の弾性変形箇所の中でも、一番厚い寸法に設定されている(t3>t1>t2)。これにより、センサ収容部61およびケーブルセンサ50が弾性変形して、コントローラ30(
図2参照)により障害物DA(
図1参照)の接触を検出した後に、衝撃吸収部63(第1,第2橋渡し部63b,63cおよび衝撃吸収空間63c)が弾性変形するため、スライドドア14の慣性力により障害物DAに伝達される衝撃を和らげることができる。
【0054】
タッチセンサユニット40のセンサホルダ60は、
図6に示すような形状に押し出し成形される。以下、センサホルダ60の押し出し成形工程、および押し出し成形後のフォーミング工程について、図面を用いて説明する。
【0055】
[押し出し成形工程]
図6に示すように、センサホルダ60を成形するのに用いる成形金型70には、センサホルダ60の断面形状に倣った断面形状の中空部71が設けられている。中空部71は、第1中空部71aと第2中空部71bとを備えている。第1中空部71aには、芯金64および高硬度の絶縁ゴム材HRが供給され、これにより、固定部62と衝撃吸収部63とが形成される。一方、第2中空部71bには、低硬度の絶縁ゴム材SRが供給され、これにより、センサ収容部61が形成される。
【0056】
ここで、芯金64は、フォーミング工程前の段階においては、
図6に示すように、底辺補強部64aと第1補強部64bとのなす角度、および底辺補強部64aと第2補強部64cとのなす角度が、いずれも同じ角度α°(約107°の鈍角)となっている。これにより、芯金64の周囲に絶縁ゴム材HRを満遍なく行き渡らせて、センサホルダ60の成形精度を向上させている。
【0057】
また、底辺補強部64aと第1補強部64bとのなす角度、および底辺補強部64aと第2補強部64cとのなす角度を、いずれも同じ角度α°とすることで、フォーミング工程前のセンサホルダ60における抜け止め片62dと支持突起62fとの間に、比較的大きなクリアランスSが形成される。このようにすることで、成形金型70のクリアランスSを成形する部分の強度を十分なものにして、成形金型70の長寿命化(再利用性の向上)を図っている。
【0058】
[フォーミング工程]
押し出し成形工程を終えたセンサホルダ60は、引き続き、
図6に示す形状から
図3に示す形状に整えるフォーミング工程を経る。このフォーミング工程では、底辺補強部64aと第2補強部64cとのなす角度を、角度α°よりも小さい角度(約72°の鋭角)となるように芯金64を折り曲げて、第1延在部62bおよび第2延在部62cを平行にする。これにより、押し出し成形工程を終えたセンサホルダ60のフォーミング工程が完了する。
【0059】
このとき、第2補強部64cの中心線C1と、第2橋渡し部63bの中心線C2とは、距離Lの分だけオフセットされている。そのため、当該フォーミング工程により、第2橋渡し部63bが引っ張られる等して弾性変形されるようなことが無い。つまり、外力を付与したときの衝撃吸収部63が変形する荷重が、上述のフォーミング工程による第2橋渡し部63bの弾性変形により、製品毎にばらつくことを防ぐことができる。また、固定部62に対するセンサ収容部61の位置が、製品毎にばらつくことが無く、歩留まりが向上する。これを実現できるのは、第2橋渡し部63bを、スライドドア14(
図3参照)の移動方向に沿う底辺部62aとの対向部分で、かつ第2補強部64cからオフセットした位置に設けたためである。
【0060】
次に以上のように形成したタッチセンサユニット40の動作について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明においては、従来技術との相違部分を明確にするために、
図9に示す従来技術のタッチセンサユニットaと比較しつつ、本発明のタッチセンサユニット40の動作を説明する。
【0061】
図7に示すように、[本発明]のタッチセンサユニット40の先端部分と、[従来技術]のタッチセンサユニットaの先端部分とが、互いに同じ基準位置BSにある状態を前提とする。
図8は、
図7に示す状態において、スライドドア14の閉塞方向に沿う車体前方側が障害物DA(
図1参照)に触れた状態から、[本発明]および[従来技術]の双方において同じ条件でスライドドア14を閉塞方向に移動させた場合のグラフである。
【0062】
図8に示すように、[本発明]および[従来技術]の双方において、スライドドア14の閉塞方向への移動開始直後に、センサ収容部61およびセンサ保持部g(
図7参照)が撓み始める。そして、センサ収容部61およびセンサ保持部gの弾性変形に伴い、ケーブルセンサ50およびケーブルセンサbも弾性変形する。その後、ケーブルセンサ50およびケーブルセンサbの電極同士が接触して、いずれもセンサ抵抗値が急降下してオン閾値Thを下回る。そして、コントローラ30(
図2参照)は、制御遅延(微小時間)を経て、スライドドア14の移動開始後の約0.034sの時点で、障害物DAの接触を認識(オン認識)する。このように、[本発明]および[従来技術]の双方において、障害物DAが接触したことを認識する時間は略同じである。なお、オン認識時のスライドドア14の位置(ドア位置)は、移動開始直後の移動位置P1となっている。
【0063】
ここで、コントローラ30がオン認識をした後であっても、コントローラ30の制御遅延やスライドドア14の慣性力、さらには駆動ユニット21に内蔵されたテンショナ機構(図示せず)の動作により、実際には、スライドドア14は閉塞方向に若干移動することになる。このとき、[本発明]においては、衝撃吸収部63が弾性変形される。したがって、
図8に示すように、[従来技術]では、約0.095sの時点でスライドドア14から障害物DAに最大荷重が掛かるが、[本発明]においては、約0.110sの時点でスライドドア14から障害物DAに最大荷重が掛かる。このように、[本発明]においては、衝撃吸収部63の弾性変形により、図中網掛矢印(1)に示すように、スライドドア14から障害物DAへの最大荷重の到達時間を遅延させて、この差分時間約0.015sの間に、スライドドア14による衝撃を吸収する。なお、[本発明]においては、衝撃吸収部63が弾性変形する分、スライドドア14の最大移動位置P3は、[従来技術]の最大移動位置P2よりも、若干車体前方寄りの位置となる。
【0064】
このように、[本発明]においては、[従来技術]に比して、駆動ユニット21(
図2参照)の停止時等に作用する反転時荷重を、図中網掛矢印(2)に示すように、176Nから161Nに低減して、障害物DAに掛かる負荷を小さくすることができる。これに加えて、駆動ユニット21やその他の機構に大きな負荷が掛かるのを防止しして保護することができる。
【0065】
以上詳述したように、本実施の形態に係るタッチセンサユニット40によれば、センサ収容部61と固定部62との間に衝撃吸収空間63cを形成するように、外力の負荷により弾性変形される第1,第2橋渡し部63a,63bを設けたので、第1,第2橋渡し部63a,63b(衝撃吸収空間63c)を衝撃吸収部63として機能させることができる。また、センサ収容部61の厚み寸法t1を第1,第2橋渡し部63a,63bの厚み寸法t3よりも薄くしたので、センサ収容部61が弾性変形して障害物DAの接触が検出された後に、第1,第2橋渡し部63a,63bが弾性変形して衝撃を吸収することができる。したがって、従前に比して障害物DAに掛かる荷重を大幅に軽減することができる。このとき、衝撃吸収後に駆動ユニット21を逆転駆動等させるので、駆動ユニット21等への負荷を軽減して焼き付け等の不具合の発生を抑制することができる。
【0066】
また、本実施の形態に係るタッチセンサユニット40によれば、固定部62の底辺部62aを、第1延在部62bがスライドドア14の閉塞方向に沿う後端部寄りに配置され、かつ第2延在部62cがスライドドア14の閉塞方向に沿う前端部寄りに配置されるように傾斜して設け、第1,第2橋渡し部63a,63bおよびセンサ収容部61を、底辺部62aの第1延在部62b寄りに配置した。これにより、センサ収容部61が車体前方側に大きく突出されるのを防止して、タッチセンサユニット40の車体前後方向に沿う高さ寸法が増大することが抑制される。
【0067】
さらに、本実施の形態に係るタッチセンサユニット40によれば、第1橋渡し部63aをスライドドア14の移動方向に沿う第1延在部62bとの対向部分に設け、第2橋渡し部63bをスライドドア14の移動方向に沿う底辺部62aとの対向部分に設けた。したがって、押し出し成形工程後のフォーミング工程において、第2橋渡し部63bが引っ張られる等して弾性変形されることが無く、センサホルダ60が製品毎にばらつくのを抑制して、歩留まりを向上できる。
【0068】
また、本実施の形態に係るタッチセンサユニット40によれば、固定部62に芯金64を埋設したので、固定部62を補強して固定部62の剛性を高めることができ、ひいてはセンサホルダ60のブラケット部14bからの脱落を確実に防止できる。
【0069】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態では、固定部62の底辺部62aを傾斜させたものを示したが、本発明はこれに限らず、大型のセンサユニットに対応できる場合には、スライドドアの移動方向と直交する方向に水平に底辺部を設けることもできる。
【0070】
また、上記実施の形態においては、ケーブルセンサ50を、車体11のスライドドア14に採用した場合を示したが、本発明はこれに限らず、車体11のサンルーフや、車体11の後方にあるリヤハッチに採用することができる。さらには、車体11に設けられる開閉体に限らず、建物の出入り口を開閉する自動ドア等に採用することもできる。