特許第6359991号(P6359991)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6359991-燃焼装置の詰り検査方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6359991
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】燃焼装置の詰り検査方法
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/24 20060101AFI20180709BHJP
   F23N 5/18 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   F23N5/24 104
   F23N5/18 101D
   F23N5/18 101G
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-34772(P2015-34772)
(22)【出願日】2015年2月25日
(65)【公開番号】特開2016-156567(P2016-156567A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年9月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】木村 遇
(72)【発明者】
【氏名】岡本 英男
(72)【発明者】
【氏名】赤木 万之
(72)【発明者】
【氏名】小代 卓史
【審査官】 岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−310418(JP,A)
【文献】 特開2000−304253(JP,A)
【文献】 特開平8−210633(JP,A)
【文献】 米国特許第6401708(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/24
F23N 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナとバーナで加熱される熱交換器とを内蔵する燃焼筐と、燃焼筐内に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼ファンの吸込み側に連なる給気筒と燃焼筐の排気口に連なる排気筒との少なくとも一方とを備える燃焼装置の詰り検査方法であって、
給気筒と排気筒とのうち燃焼装置が具備するものを付属筒として、付属筒を取付けた状態でバーナを燃焼させずに燃焼ファンを作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して、この空気量と燃焼ファンの回転数との関係から付属筒を含む燃焼装置全体の通気抵抗を算定する第1検査工程と、
付属筒を取外した状態でバーナを燃焼させずに燃焼ファンを作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して、この空気量と燃焼ファンの回転数との関係から付属筒以外の燃焼装置の部分の通気抵抗を算定する第2検査工程とを備え、
燃焼装置の設置後の所定時期に第1の検査工程を実行して、第1検査工程で算定された通気抵抗が燃焼装置全体の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第1上限値を上回るときは、第2検査工程を実行して、第2検査工程で算定された通気抵抗が付属筒以外の燃焼装置の部分の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第2上限値を上回るときは、燃焼装置本体部分での詰りを生じていると判断し、第2検査工程で算定された通気抵抗が第2上限値以下のときは、付属筒の詰りを生じていると判断することを特徴とする燃焼装置の詰り検査方法。
【請求項2】
請求項1記載の燃焼装置の詰り検査方法であって、燃焼装置が付属筒として給気筒と排気筒の両者を備えるものにおいて、
給気筒と排気筒の一方の筒のみを取付けた状態でバーナを燃焼させずに燃焼ファンを所定回転数で作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して、この空気量と燃焼ファンの回転数との関係から前記一方の筒を含む燃焼装置の通気抵抗を算定する第3検査工程を備え、
第2検査工程で算定された通気抵抗が第2上限値以下になって付属筒の詰りを生じていると判断されたときは、第3検査工程を実行して、第3検査工程で算定された通気抵抗が前記一方の筒を含む燃焼装置の基準通気抵抗に基づいて定められる第3上限値を上回るときは、前記一方の筒の詰りを生じていると判断し、第3検査工程で算定された通気抵抗が第3上限値以下であるときは、前記一方の筒以外の給気筒又は排気筒の詰りを生じていると判断することを特徴とする燃焼装置の詰り検査方法。
【請求項3】
請求項1記載の燃焼装置の詰り検査方法であって、前記第1と第2の各検査工程では、燃焼ファンを所定回転数で作動させたときに燃焼ファンに流れる空気量から、または、燃焼ファンに流れる空気量が所定量になるように回転数を制御しつつ燃焼ファンを作動させたときの燃焼ファンの回転数から対応する通気抵抗を算定することを特徴とする燃焼装置の詰り検査方法。
【請求項4】
請求項2記載の燃焼装置の詰り検査方法であって、前記第1〜第3の各検査工程では、燃焼ファンを所定回転数で作動させたときに燃焼ファンに流れる空気量から、または、燃焼ファンに流れる空気量が所定量になるように回転数を制御しつつ燃焼ファンを作動させたときの燃焼ファンの回転数から対応する通気抵抗を算定することを特徴とする燃焼装置の詰り検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーナとバーナで加熱される熱交換器とを内蔵する燃焼筐と、燃焼筐内に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼ファンの吸込み側に連なる給気筒と燃焼筐の排気口に連なる排気筒との少なくとも一方とを備える燃焼装置の詰り検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給気筒と排気筒とのうち燃焼装置が具備するものを付属筒として、バーナを燃焼させない状態で燃焼ファンを所定回転数で作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して表示し、表示された空気量から付属筒の長さ(通気抵抗)を判別し、付属筒の通気抵抗を可変するダンパーを付属筒の長さに合わせて調節し、付属筒の通気抵抗を所定範囲に収めるようにした燃焼装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、燃焼装置をある程度使用すると、付属筒の詰りや、付属筒以外の燃焼装置の部分(例えば、熱交換器)の詰りを生ずることがある。ここで、上記従来技術を利用し、バーナを燃焼させない状態で燃焼ファンを所定回転数で作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出すれば、この空気量から付属筒を含む燃焼装置全体の通気抵抗を算定することができる。そして、付属筒や付属筒以外の燃焼装置の部分の詰りを生ずると、燃焼装置全体の通気抵抗が増加するから、上記の如く算定する通気抵抗に基づいて付属筒や付属筒以外の燃焼装置の部分の詰りの有無を判別できる。
【0004】
然し、この方法では、付属筒と付属筒以外の燃焼装置の部分の何れで詰りを生じているかは判別できず、詰りを解消するのに手間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−64232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、付属筒と付属筒以外の燃焼装置の部分の何れで詰りを生じているか判別できるようにした燃焼装置の詰り検査方法を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、バーナとバーナで加熱される熱交換器とを内蔵する燃焼筐と、燃焼筐内に燃焼用空気を供給する燃焼ファンと、燃焼ファンの吸込み側に連なる給気筒と燃焼筐の排気口に連なる排気筒との少なくとも一方とを備える燃焼装置の詰り検査方法であって、給気筒と排気筒とのうち燃焼装置が具備するものを付属筒として、付属筒を取付けた状態でバーナを燃焼させずに燃焼ファンを作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して、この空気量と燃焼ファンの回転数との関係から付属筒を含む燃焼装置全体の通気抵抗を算定する第1検査工程と、付属筒を取外した状態でバーナを燃焼させずに燃焼ファンを作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して、この空気量と燃焼ファンの回転数との関係から付属筒以外の燃焼装置の部分の通気抵抗を算定する第2検査工程とを備え、燃焼装置の設置後の所定時期に第1検査工程を実行して、第1検査工程で算定された通気抵抗が燃焼装置全体の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第1上限値を上回るときは、第2検査工程を実行して、第2検査工程で算定された通気抵抗が付属筒以外の燃焼装置の部分の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第2上限値を上回るときは、付属筒以外の燃焼装置の部分での詰りを生じていると判断し、第2検査工程で算定された通気抵抗が第2上限値以下のときは、付属筒の詰りを生じていると判断することを特徴とする。
【0008】
ここで、付属筒と付属筒以外の燃焼装置の部分の何れで詰りを生じても、第1検査工程で算定される通気抵抗は第1基準値を上回る。そして、詰りの箇所が付属筒以外の燃焼装置の部分であれば、付属筒を取外して行う第2検査工程で算定される通気抵抗は第2基準値を上回り、また、詰りの箇所が付属筒であれば、第2検査工程で算定される通気抵抗は第2基準値以下となる。従って、本発明によれば、付属筒と付属筒以外の燃焼装置の部分の何れで詰りを生じているか判別できる。
【0009】
また、本発明において、燃焼装置が付属筒として給気筒と排気筒の両者を備える場合は、給気筒と排気筒の一方の筒のみを取付けた状態でバーナを燃焼させずに燃焼ファンを作動させ、このときに燃焼ファンに流れる空気量を検出して、この空気量と燃焼ファンの回転数との関係から前記一方の筒を含む燃焼装置の通気抵抗を算定する第3検査工程を備え、第2検査工程で算定された通気抵抗が第2上限値以下になって付属筒の詰りを生じていると判断されたときは、第3検査工程を実行して、第3検査工程で算定された通気抵抗が前記一方の筒を含む燃焼装置の基準通気抵抗に基づいて定められる第3上限値を上回るときは、前記一方の筒の詰りを生じていると判断し、第3検査工程で算定された通気抵抗が第3上限値以下であるときは、前記一方の筒以外の給気筒又は排気筒の詰りを生じていると判断することが望ましい。これによれば、給気筒と排気筒の何れで詰りを生じているかも判別できる。
【0010】
また、本発明において、第1と第2の各検査工程では、また、第3検査工程を備える場合は第3検査工程でも、燃焼ファンを所定回転数で作動させたときに燃焼ファンに流れる空気量から、または、燃焼ファンに流れる空気量が所定量になるように回転数を制御しつつ燃焼ファンを作動させたときの燃焼ファンの回転数から対応する通気抵抗を算定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明方法を実施する燃焼装置の一例を示す模式図。
図2】本発明の実施形態の詰り検査方法の手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、1は、燃焼装置の密閉型ハウジングを示している。ハウジング1内には、複数のバーナ3とバーナ3で加熱される熱交換器4とを内蔵する燃焼筐2と、燃焼筐2内に燃焼用空気を供給する燃焼ファン5とが収納されている。
【0013】
また、燃焼装置は、これに付属する付属筒として、燃焼ファン5の吸込み側にハウジング1の内部空間を介して連なる給気筒6と、燃焼筐2の排気口2aに連なる排気筒7とを備え、更に、バーナ3及び燃焼ファン5を制御する制御手段たるコントローラ8を備えている。また、コントローラ8にはリモコン8aが接続されている。
【0014】
燃焼装置は、更に、燃焼ファン5に流れる空気量を検出する空気量検出手段9を備えている。この空気量検出手段9は、ハウジング1の内圧を検出する第1圧力センサ9aと燃焼ファン5の吸込み側の負圧を検出する第2圧力センサ9bとで構成され、第1圧力センサ9aの検出圧力と第2圧力センサ9bの検出圧力との差圧に基づいて燃焼ファン5に流れる空気量を演算する。尚、燃焼ファン5に流れる空気量は、燃焼ファン5と燃焼筐2との間のダクト部分に配置した風量センサや、空気量に比例して変化する燃焼ファン5のモータ電流から検出することも可能である。
【0015】
ここで、燃焼装置をある程度使用すると、付属筒の詰りや、熱交換器4等の付属筒以外の燃焼装置の部分の詰りを生ずることがある。そこで、本実施形態では、燃焼装置の設置後の所定時期に図2に示す手順で燃焼装置の詰り検査を行うようにしている。
【0016】
詰り検査では、先ず、STEP1において第1検査工程を実行する。第1検査工程では、付属筒、即ち、給気筒6及び排気筒7を取付けた状態でバーナ3を燃焼させずに燃焼ファン5を所定回転数で作動させ、このときに燃焼ファン5に流れる空気量を空気量検出手段9で検出する。そして、コントローラ8に記憶されている空気量と通気抵抗との相関関係に基づいて、空気量検出手段9で検出した空気量から付属筒を含む燃焼装置全体の通気抵抗Aを算出する。
【0017】
次に、STEP2において、第1検査工程で算定した通気抵抗Aが燃焼装置全体の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第1上限値以下であるか否かを判別する。尚、製品試験で各種の長さ、径の付属筒を取付けて燃焼装置全体の通気抵抗を計測しておき、燃焼装置の設置現場で使用した付属筒の長さ、径に合致する燃焼装置全体の通気抵抗を検索して、これを基準通気抵抗に設定する。そして、この基準通気抵抗に所定の抵抗増加許容分を加えた値が第1上限値に設定される。
【0018】
通気抵抗Aが第1上限値以下であれば、STEP3に進んで正常と判断する。一方、通気抵抗Aが第1上限値を上回っていれば、STEP4で第2検査工程を実行する。第2検査工程では、付属筒、即ち、給気筒6及び排気筒7を取外した状態でバーナ3を燃焼させずに燃焼ファン5を所定回転数で作動させ、このときに空気量検出手段9で検出される空気量から付属筒以外の燃焼装置の部分(ハウジング1の給気筒接続口から燃焼筐2の排気口2aまでの部分)の通気抵抗Bを算出する。
【0019】
次に、STEP5において、第2検査工程で算定した通気抵抗Bが付属筒以外の燃焼装置の部分の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第2上限値以下であるか否かを判別する。尚、付属筒以外の燃焼装置の部分の基準抵抗値としては、製品試験で計測した付属筒以外の燃焼装置の部分の通気抵抗が用いられる。そして、この基準通気抵抗に所定の抵抗増加許容分を加えた値が第2上限値に設定される。
【0020】
ここで、付属筒以外の燃焼装置の部分の詰りを生じている場合は、通気抵抗Bが第2上限値を上回る。そこで、通気抵抗Bが第2上限値を上回っていれば、STEP6に進んで付属筒以外の燃焼装置の部分の詰りを生じたと判断し、その旨をリモコン8aに表示する。
【0021】
一方、通気抵抗Bが第2上限値以下になるのは、付属筒の詰りを生じている場合であるが、給気筒6と排気筒7の何れの詰りを生じているかは分からない。そこで、通気抵抗Bが第2上限値以下であれば、STEP7で第3検査工程を実行する。第3検査工程では、排気筒7を取付けた状態でバーナ3を燃焼させずに燃焼ファン5を所定回転数で作動させ、このときに空気量検出手段9で検出される空気量から排気筒7を含む燃焼装置の通気抵抗Cを算定する。
【0022】
次に、STEP8において、第3検査工程で算定した通気抵抗Cが排気筒7を含む燃焼装置の基準通気抵抗に基づいて定められる所定の第3上限値以下であるか否かを判別する。尚、排気筒7を含む燃焼装置の基準通気抵抗値としては、製品試験で計測した排気筒7を含む燃焼装置の通気抵抗が用いられる。そして、この基準通気抵抗に所定の抵抗増加許容分を加えた値が第3上限値に設定される。
【0023】
ここで、通気抵抗Cが第3上限値を上回るのは、排気筒7の詰りを生じている場合であり、通気抵抗Cが第3上限値以下になるのは、給気筒6の詰りを生じている場合である。従って、通気抵抗Cが第3上限値を上回っていれば、STEP9に進んで排気筒7の詰りを生じたと判断し、その旨をリモコン8aに表示する。また、通気抵抗Cが第3上限値以下であれば、STEP10に進んで給気筒6の詰りを生じたと判断し、その旨をリモコン8aに表示する。
【0024】
このように本実施形態の詰り検査方法によれば、詰りの発生箇所を判別でき、詰り解消の修理作業を迅速に行うことができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第3検査工程において、排気筒7に代えて給気筒6を取付けてもよい。また、第1〜第3の各検査工程において、空気量検出手段9で検出される空気量(燃焼ファン5に流れる空気量)が所定量になるように回転数を制御しつつ燃焼ファン5を作動させることも可能である。この場合は、コントローラ8に、空気量を所定量にしたときの燃焼ファン5の回転数と通気抵抗との相関関係を記憶させておき、燃焼ファン5の回転数からこの相関関係に基づいて対応する通気抵抗を算定する。
【0026】
また、上記実施形態は、付属筒として給気筒6と排気筒7の両者を備える燃焼装置を対象としているが、給気筒6と排気筒7との一方のみを備える燃焼装置の詰り検査方法にも本発明を適用できる。この場合は、第2検査工程で算定した通気抵抗BがSTEP5で第2上限値以下と判別されたとき、第3検査工程を実行することなく、給気筒6と排気筒7との一方から成る付属筒の詰りを生じたと判断する。
【符号の説明】
【0027】
2…燃焼筐、3…バーナ、4…熱交換器、5…燃焼ファン、6…給気筒、7…排気筒。
図1
図2