特許第6360003号(P6360003)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360003
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】医療用立体モデルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 23/32 20060101AFI20180709BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G09B23/32
   A61B6/03 360G
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-114133(P2015-114133)
(22)【出願日】2015年6月4日
(65)【公開番号】特開2017-3616(P2017-3616A)
(43)【公開日】2017年1月5日
【審査請求日】2017年8月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518087269
【氏名又は名称】入江 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(73)【特許権者】
【識別番号】000181826
【氏名又は名称】社会福祉法人兵庫県社会福祉事業団
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】入江 満
(72)【発明者】
【氏名】陳 隆明
(72)【発明者】
【氏名】島 直子
(72)【発明者】
【氏名】本田 雄一郎
【審査官】 前地 純一郎
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/132463(WO,A1)
【文献】 特開2002−014610(JP,A)
【文献】 特開昭63−300280(JP,A)
【文献】 特開2007−328325(JP,A)
【文献】 実開昭57−170162(JP,U)
【文献】 実公昭48−011113(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B23/00−29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨または臓器の少なくとも一部を含む生体の対象部位の医療用立体モデルであって、
前記対象部位の複数の断面の形状をそれぞれ表す形状構成部および連結用の補助部をそれぞれ有する複数のスライス板と、
前記複数のスライス板が積層された状態で前記複数のスライス板を連結する第1の連結軸とを備え、
前記複数のスライス板の前記形状構成部は、積層された状態で前記対象部位の形状を表し、
前記複数のスライス板のうち少なくとも一部のスライス板の前記補助部は、積層された状態で前記第1の連結軸が一定のクリアランスをもって挿通される第1の貫通孔を有し、前記少なくとも一部のスライス板が他のスライス板に対して前記第1の連結軸を中心として回転可能に構成された、医療用立体モデル。
【請求項2】
前記複数のスライス板のうち少なくとも一部のスライス板は、積層された状態で第2の連結軸が挿通される第2の貫通孔をさらに有する、請求項記載の医療用立体モデル。
【請求項3】
前記第2の貫通孔は、少なくとも一部のスライス板の前記形状構成部に形成される、請求項2記載の医療用立体モデル。
【請求項4】
前記複数のスライス板のうち一部のスライス板は、他のスライス板とは異なる材料で形成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【請求項5】
前記複数のスライス板の外周端面は、母材の色とは異なる色を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【請求項6】
前記複数のスライス板のうち一部のスライス板は互いに固着されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【請求項7】
前記複数のスライス板の各々は、互いに離間した複数の前記補助部を有し、
前記複数の補助部は、前記第1の連結軸が挿通される前記第1の貫通孔をそれぞれ有し、前記複数の補助部の前記第1の貫通孔に複数の前記第1の連結軸が挿通される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【請求項8】
前記補助部の少なくとも一部は、最上段のスライス板から最下端のスライス板にかけて上下方向に平行な軸に沿って直線状に並ぶ、請求項1〜7のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【請求項9】
前記補助部は、生体の対象部位のうち実際の手術において切削されない部分に対応する位置に設けられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【請求項10】
前記補助部には最上段のスライス板から最下段のスライス板にかけて直線状に連通するように前記第1の貫通孔が形成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の医療用立体モデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用立体モデルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、生体の骨または臓器等を表す医療用立体モデルが用いられる。医療用立体モデルは、例えば立体造形法により作製することができる。また、特許文献1には、発泡スチロールブロックを切削加工することにより骨実体モデル(医療用立体モデル)を作製する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−253009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療用立体モデルは、例えば生体の実際の手術前における模擬手術に用いることができる。模擬手術の結果を正確に検証することができれば、手術の実用的な訓練が可能となり、実際の手術をより適切に行うことが可能になる。
【0005】
しかしながら、上記の立体造形法または発泡スチロールブロックの切削加工により作製される従来の医療用立体モデルは一体成形品である。そのため、模擬手術による切削部分がその医療用立体モデルの内部にあると、切削部分の形状、寸法および位置を確認することは難しい。この場合、模擬手術の結果を正確に検証することはできない。また、従来の医療用立体モデルの製造には時間およびコストがかかる。
【0006】
本発明の目的は、模擬手術の結果を正確に検証することを可能にするとともに短時間で安価に製造可能な医療用立体モデルおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明に係る医療用立体モデルは、骨または臓器の少なくとも一部を含む生体の対象部位の医療用立体モデルであって、対象部位の複数の断面の形状をそれぞれ表す形状構成部および連結用の補助部をそれぞれ有する複数のスライス板と、複数のスライス板が積層された状態で複数のスライス板を連結する第1の連結軸とを備え、複数のスライス板の形状構成部は、積層された状態で対象部位の形状を表し、複数のスライス板のうち少なくとも一部のスライス板の補助部は、積層された状態で第1の連結軸が一定のクリアランスをもって挿通される第1の貫通孔を有し、少なくとも一部のスライス板が他のスライス板に対して第1の連結軸を中心として回転可能に構成される。
【0011】
この医療用立体モデルによれば、手術の実用的な訓練が可能となる。また、患者への手術の説明に医療用立体モデルを用いることができる。さらに、この医療用立体モデルは安価にかつ短時間で製造することができるので、患者ごとに実際の対象部位と同じ形状を有する医療用立体モデルを製造することも可能となる。
【0012】
加えて、第1の貫通孔が複数のスライス板の補助部に形成されるので、対象部位が複雑な形状を有する場合であっても、複数のスライス板を連結しかつ少なくとも一部のスライス板を他のスライス板に対して回転可能に構成することが容易になる。
【0013】
)複数のスライス板のうち少なくとも一部のスライス板は、積層された状態で第2の連結軸が挿通される第2の貫通孔をさらに有してもよい。
【0014】
この場合、第1の貫通孔に第1の連結軸が挿通されるとともに、第2の貫通孔に第2の連結軸が挿通されることにより、複数のスライス板の回転が阻止される。それにより、対象部位の形状を表す状態で複数のスライス板を容易に保持することができる。
(3)第2の貫通孔は、少なくとも一部のスライス板の形状構成部に形成されてもよい。
【0015】
(4)複数のスライス板のうち一部のスライス板は、他のスライス板とは異なる材料で形成されてもよい。
【0016】
この場合、医療用立体モデルの複数の部分にそれぞれ適した材料を用いることにより、切削の容易化、切削後の状態の確認の容易化、または低コスト化が可能となる。
【0017】
(5)複数のスライス板の外周端面は、母材の色とは異なる色を有してもよい。
【0018】
上記の構成によれば、複数のスライス板が板状部材から切り出して作製される場合に、外周端面の色が母材の色とは異なる。そのため、模擬手術において医療用立体モデルの一部を切削した場合に、切削部分の状態を切削前の状態と比較して明確に確認することができる。したがって、模擬手術中および模擬手術後に、切削部分の状態の良否を容易かつ正確に判断することができる。
【0019】
(6)複数のスライス板のうち一部のスライス板は互いに固着されてもよい。
【0020】
この場合、回転不要な部分のスライス板が固着されることにより、医療用立体モデルの取り扱いが容易になる。
(7)複数のスライス板の各々は、互いに離間した複数の補助部を有し、複数の補助部は、第1の連結軸が挿通される第1の貫通孔をそれぞれ有し、複数の補助部の第1の貫通孔に複数の第1の連結軸が挿通されてもよい。
(8)補助部の少なくとも一部は、最上段のスライス板から最下端のスライス板にかけて上下方向に平行な軸に沿って直線状に並んでもよい。
(9)補助部は、生体の対象部位のうち実際の手術において切削されない部分に対応する位置に設けられてもよい。
(10)補助部には最上段のスライス板から最下段のスライス板にかけて直線状に連通するように第1の貫通孔が形成されてもよい。
【0021】
11)複数のスライス板のうち少なくとも一部のスライス板は透明であってもよい。
【0022】
この場合、使用者は、模擬手術前、模擬手術中および模擬手術後に、透明なスライス板の部分を通して医療用立体モデルの内部の状態を容易かつ正確に確認することができる。
【0023】
12)複数のスライス板は、レーザーカッターを用いて切断されることにより切断面が熱により変色する材料で形成されてもよい。
【0024】
この場合、複数のスライス板を板状部材から切り出して作製する際にレーザーカッターを用いることにより、複数のスライス板の各々の外周端面をレーザーの熱で変色させることができる。したがって、塗装作業を要することなく、安価かつ容易に医療用立体モデルの内表面および外表面の色を各スライス板の母材の色と異ならせることができる。それにより、模擬手術において医療用立体モデルの一部を切削した場合に、切削部分に母材の色が表れる。その結果、低コスト化を妨げることなく、切削部分を視覚的かつ正確に確認することが可能となる。
【0027】
13)第の発明に係る医療用立体モデルの製造方法は、骨または臓器の少なくとも一部を含む生体の対象部位の医療用立体モデルの製造方法であって、対象部位の複数の断面の画像を取得する工程と、複数の断面の画像に基づいて、対象部位の複数の断面の形状をそれぞれ表す形状構成部および連結用の補助部をそれぞれ有する複数のスライス板を板状部材から切り出す工程と、複数のスライス板が積層された状態で連結軸を一定のクリアランスをもって挿通可能となる貫通孔を、少なくとも一部のスライス板の補助部に形成する工程と、複数のスライス板を積層するとともに、貫通孔に連結軸を挿通することにより、少なくとも一部のスライス板を他のスライス板に対して連結軸を中心として回転可能にする工程とを含む。
【0028】
その医療用立体モデルの製造方法によれば、立体造形法を用いることなく、板状部材の切削加工および穿孔加工により第の発明に係る医療用立体モデルを安価にかつ短時間で製造することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、医療用立体モデルにより模擬手術の結果を正確に検証することが可能になるとともに、医療用立体モデルを短時間で安価に製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第1の実施の形態に係る医療用立体モデルの斜視図である。
図2図1の医療用立体モデルにより表される生体の対象部位を説明するための模式図である。
図3図1の医療用立体モデルの一部分解斜視図である。
図4】医療用立体モデルにおいて一部のスライス板を部分的に回転させる例を示す斜視図である。
図5】人工股関節置換術の基本手順を示す説明図である。
図6】切削による模擬手術後の医療用立体モデルの斜視図である。
図7】模擬手術前および模擬手術後のスライス板の一例を示す平面図である。
図8】医療用立体モデルの製造方法を示すフローチャートである。
図9図8に示される医療用立体モデルの製造方法の具体例を説明するための図である。
図10図8に示される医療用立体モデルの製造方法の具体例を説明するための図である。
図11】第2の実施の形態に係る医療用立体モデルの斜視図である。
図12図11の医療用立体モデルを構成する複数のスライス板のうちの一部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の一実施の形態に係る医療用立体モデルおよびその製造方法について図面を参照しつつ説明する。医療用立体モデルは、骨または臓器の少なくとも一部を含む生体の対象部位を表す立体モデルである。以下では、医療用立体モデルの一例として骨盤の一部を表す医療用立体モデルについて説明する。
【0032】
[1]第1の実施の形態
(1)医療用立体モデルの構成
図1は第1の実施の形態に係る医療用立体モデルを示す斜視図であり、図2図1の医療用立体モデル1により表される生体の対象部位を説明するための模式図である。図2では、生体の腰部およびその周辺の骨格として骨盤B0、右大腿骨B3および左大腿骨B4が示される。骨盤B0は右寛骨B1および左寛骨B2を含む。図2にドットパターンで示すように、図1の医療用立体モデル1は、右寛骨B1のうち寛骨臼B11およびその近傍部分を表す。
【0033】
図1ならびに後述する図3図4図6および図11の医療用立体モデル1において、図2の寛骨臼B11を表す部分に符号B11が付される。図1(a)には、図2の寛骨臼B11を有する右寛骨B1の一部を太い点線矢印AR1の方向に見たときの医療用立体モデル1が示される。図1(b)には、図2の寛骨臼B11を有する右寛骨B1の一部を太い点線矢印AR2の方向に見たときの医療用立体モデル1が示される。
【0034】
図1(a),(b)の医療用立体モデル1は、例えば骨盤B0に人工股関節を取り付ける手術(以下、人工股関節置換術と呼ぶ。)の模擬手術に用いることができる。図3は、図1の医療用立体モデル1の一部分解斜視図である。図3に示すように、医療用立体モデル1は、複数のスライス板11および少なくとも1本の連結軸21により構成される。本実施の形態では、医療用立体モデル1は複数本の連結軸21を有する。
【0035】
複数のスライス板11は、一定の厚み(例えば、3mm程度)を有し、生体の対象部位(本例では、右寛骨B1の一部)の複数の断面の形状をそれぞれ表す。また、複数のスライス板11は、予め定められた位置関係に従って積層された状態で生体の対象部位の形状を表す。
【0036】
複数のスライス板11は、一定の厚みを有する木製の板状部材からレーザーカッターを用いて切り出される。ここで、木製の板状部材は例えば淡黄色を有する。木製の板状部材においては、レーザーカッターを用いて切断される場合に、切断面がレーザーの熱により黒色に変色する。それにより、複数のスライス板11の各々の外周端面の色は、図3にハッチングで示すように、スライス板11の母材の色(淡黄色)とは異なる。また、複数のスライス板11の各々には、予め定められた固有の識別番号が付されている。識別番号の詳細は後述する。なお、図3および後述する図4および図7では、識別番号の図示を省略する。
【0037】
さらに、複数のスライス板11の各々には、少なくとも1個の貫通孔Hが形成されている。本実施の形態では、複数のスライス板11の各々に少なくとも2個(図3の例では2個または4個)の円形の貫通孔Hが形成されている。複数の貫通孔Hは共通の内径を有する。複数の連結軸21は円形断面を有する棒状部材である。連結軸21の外径は貫通孔Hの内径よりも小さい。
【0038】
複数のスライス板11が予め定められた位置関係に従って積層された状態で、複数のスライス板11の各貫通孔Hが直線状に連通する。複数のスライス板11の各貫通孔Hに複数の連結軸21が一定のクリアランスをもって挿通される。それにより、複数のスライス板11が予め定められた位置関係を保持するように互いに連結される。
【0039】
図3の例では、上から1段目〜3段目のスライス板11に2個の貫通孔Hが形成され、4段目のスライス板11に4個の貫通孔Hが形成されている。1段目〜4段目のスライス板11を連結するように、1段目〜4段目のスライス板11の2個の貫通孔Hに2本の連結軸21がそれぞれ挿通される。
【0040】
さらに、5段目〜8段目のスライス板11に2個の貫通孔Hが形成されている。4段目〜8段目のスライス板11を連結するように、4段目から8段目のスライス板11の2個の貫通孔Hに2本の連結軸21がそれぞれ挿通される。図3では、9段目以下のスライス板11の連結状態の図示は省略する。
【0041】
複数のスライス板11の各貫通孔Hに連結軸21が挿通されることにより、積層された複数のスライス板11が対象部位の形状を表すように位置決めされる。本実施の形態の医療用立体モデル1は、複数のスライス板11および複数の連結軸21から容易かつ正確に組み立てることができる。
【0042】
本実施の形態の医療用立体モデル1においては、各貫通孔Hに連結軸21が一定のクリアランスをもって挿通されているので、使用者は、各連結軸21を貫通孔Hから容易に引き抜くことができる。
【0043】
また、使用者は、2本の連結軸21のうち1本の連結軸21をスライス板11から引き抜くことにより一部のスライス板11を他のスライス板11に対して1本の連結軸21を中心として相対的に回転させることができる。
【0044】
図4は、医療用立体モデル1において一部のスライス板11を部分的に回転させる例を示す斜視図である。図4の例では、14段目のスライス板11を一のスライス板11Aと呼び、13段目のスライス板11を他のスライス板11Bと呼ぶ。また、一のスライス板11Aと他のスライス板11Bとを連結する2本の連結軸21を連結軸21a,21bと呼ぶ。
【0045】
この場合、図4に太い実線の矢印で示すように、使用者は、連結軸21aを他のスライス板11Bの貫通孔Hから引き抜くことにより、他のスライス板11Bおよびその上部のスライス板11を一のスライス板11Aおよびその下部のスライス板11に対して連結軸21bを中心として相対的に回転させることができる。
【0046】
上記のように、使用者は、一部のスライス板11を他のスライス板11に対して相対的に回転させること、または一部のスライス板11を他のスライス板11から取り外すことにより、複数のスライス板11を部分的に分解することができる。したがって、生体の対象部位における所望の部分の形状、寸法および位置を容易かつ正確に確認することができる。
【0047】
(2)医療用立体モデルを用いた模擬手術の一例
人工股関節置換術の概略を説明する。図5は、人工股関節置換術の基本手順を示す説明図である。図5(a)〜(f)では、生体の腰部およびその周辺の骨格として、右寛骨B1および右大腿骨B3が実線で示される。また、右寛骨B1および右大腿骨B3を覆う皮膚が一点鎖線で示される。
【0048】
最初に、図5(a)に示すように、股関節を覆う皮膚の一部が切開される。切開により形成された開口部B5を通して、右寛骨B1の寛骨臼B11から右大腿骨B3の大腿骨頭B31が外される。その後、図5(b)に示すように、右大腿骨B3のうち大腿骨頭B31が切断され、切断された大腿骨頭B31が除去される。
【0049】
ここで、後述する図5(f)に示すように、人工股関節90は、主としてソケット91、人工骨頭92およびステム93から構成される。ソケット91は、半球形状を有し、寛骨(本例では、右寛骨B1)に固定されることにより人工の寛骨臼B11として機能する。なお、ソケット91は、例えば金属製のアウターカップおよび樹脂製のインナーカップから構成される。ステム93は、略棒形状を有し、大腿骨(本例では、右大腿骨B3)の一部として機能する。
【0050】
図5(b)の右大腿骨B3の大腿骨頭B31が除去された後、右寛骨B1に図5(d)のソケット91を固定するために、図5(c)に示すように、寛骨臼B11がリーマー80により切削される。その後、図5(d)に示すように、切削された寛骨臼B11の部分に必要に応じてねじまたは骨セメント等を用いてソケット91が固定される。
【0051】
続いて、図5(e)に示すように、右大腿骨B3の内部に上方からステム93が挿入される。ステム93は、その上端部が右大腿骨B3の上端部からわずかに突出する状態で固定される。この状態で、ステム93の上端部に人工骨頭92が取り付けられる。その後、図5(f)に示すように、右寛骨B1に固定されたソケット91に人工骨頭92が取り付けられる。それにより、人工骨頭92がソケット91内に摺動可能に収容される。最後に、開口部B5が閉じられることにより人工股関節置換術が終了する。
【0052】
医療用立体モデル1の使用者は、人工股関節置換術の模擬手術として、寛骨臼B11の切削(図5(c)参照)を模擬的に実施することができる。図6は、切削による模擬手術後の医療用立体モデル1の斜視図である。人工股関節置換術の模擬手術により、医療用立体モデル1の寛骨臼B11を表す部分がリーマー(図示せず)により切削される。この場合、図6に白抜きの太い矢印で示すように、リーマーによる切削部分にスライス板11の母材の色(淡黄色)が表れる。
【0053】
図7は、模擬手術前および模擬手術後のスライス板11の一例を示す平面図である。図7(a)に模擬手術前のスライス板11の平面図が示され、図7(b)に模擬手術後のスライス板11の平面図が示される。図7(b)では、スライス板11のうちリーマーによる切削部分が白抜きの太い矢印で示される。
【0054】
上記のように、使用者は、一部のスライス板11を他のスライス板11に対して相対的に回転させること、または一部のスライス板11を他のスライス板11から取り外すことにより、複数のスライス板11を部分的に分解することができる。
【0055】
それにより、使用者は、図7(a)に示すように、模擬手術前の医療用立体モデル1の任意の部分の形状、寸法および位置を容易かつ正確に確認することができる。また、図7(b)に示すように、模擬手術後の医療用立体モデル1の切削部分の形状、寸法および位置を容易かつ正確に確認することができる。例えば、使用者は、切削深さ、切削部分の大きさ、切削部分の向き、切削位置等を容易かつ正確に確認することができる。このように、使用者は、模擬手術の結果を正確に検証することができるので、手術の実用的な訓練が可能になる。
【0056】
(3)医療用立体モデルの製造方法
図8は、医療用立体モデル1の製造方法を示すフローチャートである。図9および図10は、図8に示される医療用立体モデル1の製造方法の具体例を説明するための図である。
【0057】
医療用立体モデル1を製造する場合、まず生体の対象部位について複数の断面の画像が取得される(ステップS11)。複数の断面の画像は、例えばCT(コンピュータ断層撮影)スキャナ、MRI(磁気共鳴画像)スキャナまたは超音波断層検査装置等を用いて対象部位の複数の断面を観察することにより取得することができる。
【0058】
例えば、図9(a)に示すように、右寛骨B1の一部を含む上下方向の範囲Rについて、CTスキャナを用いて生体の複数の断面が観察される。それにより、範囲R内の複数の断面の画像が取得される。図9(b)〜(j)に範囲R内で取得される複数の断面の画像例が示される。図9(b)〜(j)の画像においては、略中央部に右寛骨B1の断面が示される。さらに、図9(i),(j)の画像においては、右寛骨B1の断面とともに右大腿骨B3の断面が示される。
【0059】
次に、図8に示すように、取得された複数の断面の画像に基づいて、対象部位の立体データが生成される(ステップS12)。立体データは、対象部位の外表面および内表面の形状を示す表面形状データである。このような立体データは、例えばOBJ形式またはSTL(Standard Triangulated Language)形式等のフォーマットで作成することができる。
【0060】
次に、対象部位の立体データに基づいて、対象部位の複数の断面の形状を表す複数のスライス板11の形状データがそれぞれ生成される(ステップS13)。このとき、各スライス板11の厚みが適宜設定される。
【0061】
次に、複数のスライス板11の形状データに基づいて、ステップS13で設定された厚みを有する木製の板状部材から複数のスライス板11から切り出される(ステップS14)。また、各スライス板11に、複数の貫通孔Hが形成されるとともに当該スライス板11に固有の識別番号が付される(ステップS15)。ステップS14,S15は、この順で行われてもよいし、逆の順で行われてもよい。または、ステップS14,S15は、同時に行われてもよい。スライス板11の切り出し、貫通孔Hの形成および識別番号の付与は、レーザーカッターを用いて行われる。
【0062】
例えば、図10に示すように、一定の厚みを有する木製の板状部材40が用意される。用意された板状部材40から、複数(本例では24個)のスライス板11が切り出される。また、各スライス板11に少なくとも1個(図10の例では2個または4個)の貫通孔Hが形成される。さらに、各スライス板11に識別番号が付される。図10の例では、点線で取り囲まれた番号が識別番号の例である。識別番号は、例えば複数のスライス板11を予め定められた位置関係に従って積層するための積層の順番を表す。
【0063】
図10の例では、上から1段目で左端から右に6番目までの6個のスライス板11が、図9(b)〜(g)に示される画像の断面をそれぞれ表す。また、2段目で左端から右に3番目までの3個のスライス板11が、図9(h)〜(j)に示される画像の断面をそれぞれ表す。
【0064】
最後に、図8に示すように、複数のスライス板11および複数の連結軸21が識別番号に基づいて組み立てられ、複数のスライス板11が複数の連結軸21により連結される(ステップS16)。それにより、医療用立体モデル1が完成する。
【0065】
(4)効果
本実施の形態に係る医療用立体モデル1によれば、使用者は、生体の対象部位の実際の手術前に、当該医療用立体モデル1に実際の手術と同様の切削による模擬手術を施すことができる。模擬手術後、使用者は、一部のスライス板11を他のスライス板11に対して相対的に回転させること、または一部のスライス板11を他のスライス板11から取り外すことにより、複数のスライス板11を部分的に分解することができる。
【0066】
したがって、切削部分が医療用立体モデル1の内部にある場合でも、使用者は、模擬手術後の切削部分の形状、寸法および位置を容易に確認することができる。また、複数のスライス板11を分解することによりCTスキャナ等により取得される断面の画像と同等の断面の形状を各スライス板11により確認することが可能となる。それにより、模擬手術の結果を正確に検証することができるので、手術の実用的な訓練が可能となる。また、患者への手術の説明に医療用立体モデル1を用いることができる。
【0067】
さらに、上記の医療用立体モデル1は、立体造形法を用いることなく、木製の板状部材40の切削加工および穿孔加工により安価にかつ短時間で製造することができる。したがって、患者ごとに実際の対象部位と同じ形状を有する医療用立体モデル1を製造することも可能となる。
【0068】
本実施の形態においては、各スライス板11は他のスライス板11と少なくとも2本の連結軸21により連結される。この場合、複数のスライス板11が相対的に回転することが阻止される。それにより、対象部位が表された状態で複数のスライス板11を容易に保持することが可能となっている。
【0069】
本実施の形態においては、複数のスライス板11が木製の板状部材からレーザーカッターを用いて切り出されることにより、複数のスライス板11の各々の外周端面の色が母材の色から変色する。したがって、塗装作業を要することなく、安価かつ容易に医療用立体モデル1の内表面および外表面の色を各スライス板11の母材の色と異ならせることができる。それにより、模擬手術において医療用立体モデル1の一部をリーマー80により切削した場合に、切削部分に母材の色が表れる。その結果、低コスト化を妨げることなく、切削部分を視覚的かつ正確に確認することが可能になる。
【0070】
また、使用者は、実際の手術を行う際に模擬手術後の医療用立体モデル1を観察可能な位置に配置することにより、医療用立体モデル1と生体の対象部位とを対比することができる。この場合、使用者は、実際の対象部位の正確な形状を医療用立体モデル1から直感的に認識することができるとともに、対象部位の切削すべき位置および大きさを直感的に認識することができる。その結果、実際の手術にかかる時間を短縮することができるとともに精度の高い手術を実施することができる。
【0071】
[2]第2の実施の形態
(1)医療用立体モデルの構成
第2の実施の形態に係る医療用立体モデルについて、第1の実施の形態に係る医療用立体モデル1と異なる点を説明する。図11は第2の実施の形態に係る医療用立体モデルの斜視図であり、図12図11の医療用立体モデル1を構成する複数のスライス板11のうちの一部を示す平面図である。
【0072】
図11に示すように、本実施の形態に係る医療用立体モデル1は、複数のスライス板11および連結軸211,212を含む。図12(a),(b),(c)には、図11の複数のスライス板11のうち上から1段目、2段目および3段目のスライス板11の平面図がそれぞれ示される。本実施の形態においても、複数のスライス板11の各々には識別番号が付される。図11および図12(a)〜(c)では、識別番号の図示を省略する。
【0073】
図11および図12(a)〜(c)に示すように、複数のスライス板11の各々は、形状構成部110および補助部120を有する。複数のスライス板11の形状構成部110は、生体の対象部位の複数の断面の形状をそれぞれ表す。また、複数のスライス板11の形状構成部110は、複数のスライス板11が予め定められた位置関係に従って積層された状態で、図11に太い点線で示すように、生体の対象部位の形状を表す。
【0074】
一方、各スライス板11の補助部120は、形状構成部110の一部から予め定められた方向に突出するように形成されている。また、複数の補助部120の少なくとも一部は、複数のスライス板11が予め定められた位置関係に従って積層された状態で、最上段のスライス板11から最下段のスライス板11にかけて上下方向に平行な軸に沿って直線状に並ぶ。これらの補助部120は、生体の対象部位のうち実際の手術において切削されない部分に対応する位置に設けられる。
【0075】
複数のスライス板11の補助部120の各々には、最上段のスライス板11から最下段のスライス板11にかけて直線状に連通するように貫通孔H1が形成されている。また、複数のスライス板11の補助部120の各々には、最上段のスライス板11から最下段のスライス板11にかけて直線状に連通するように貫通孔H2が形成されている。
【0076】
図11に示すように、複数の貫通孔H1に連結軸211が一定のクリアランスをもって挿通され、複数の貫通孔H2に連結軸212が一定のクリアランスをもって挿通される。それにより、複数のスライス板11が予め定められた位置関係を保持するように互いに連結される。
【0077】
本実施の形態においても、医療用立体モデル1は、第1の実施の形態に係る医療用立体モデル1と同じ製造方法により製造される。したがって、複数のスライス板11は、一定の厚みを有する木製の板状部材からレーザーカッターを用いて切り出される。
【0078】
(2)効果
本実施の形態に係る医療用立体モデル1によれば、使用者は、連結軸211,212を引き抜くことにより、複数のスライス板11を分解することができる。また、使用者は、連結軸212(または連結軸211)を引き抜くことにより、図11に太い実線の矢印で示すように、一部のスライス板11を他のスライス板11に対して連結軸211(または連結軸212)を中心として相対的に回転させることができる。したがって、使用者は、生体の対象部位における所望の部分の形状、寸法および位置を容易かつ正確に確認することができる。
【0079】
本実施の形態においては、複数のスライス板11を連結するための貫通孔H1,H2が、形状構成部110ではなく補助部120に形成される。したがって、生体の対象部位が複雑な形状を有する場合であっても、複数のスライス板11を少ない本数の連結軸211,212で連結しかつ少なくとも一部のスライス板11を他のスライス板11に対して回転可能に構成することが容易になる。
【0080】
本実施の形態に係る医療用立体モデル1は、第1の実施の形態に係る医療用立体モデル1と同じ製造方法により製造されるので、安価にかつ短時間で製造することができる。
【0081】
[3]他の実施の形態
(1)上記の実施の形態では、複数のスライス板11は、木製の板状部材を加工することにより作製されるが、本発明はこれに限定されない。複数のスライス板11の材料としては、木に代えてポリウレタン等の樹脂材料を用いることもできる。複数のスライス板11の材料として樹脂材料を用いることにより、軽量かつ加工が容易な医療用立体モデル1を実現することができる。
【0082】
また、複数のスライス板11の材料としては、木に代えて透明なガラスまたは透明な樹脂等の透明材料を用いることができる。この場合、使用者は、模擬手術前、模擬手術中および模擬手術後に、透明なスライス板11を通して医療用立体モデル1の内部の状態を容易かつ正確に確認することができる。特に、医療用立体モデルに人工関節等の他の部材を取り付ける場合には、使用者は、透明なスライス板11の部分を通して他の部材の取り付け状態を容易かつ正確に確認することができる。
【0083】
(2)上記の実施の形態では、複数のスライス板11の全てが木製の板状部材を加工することにより作製されるが、本発明はこれに限定されない。複数のスライス板11のうち一部のスライス板11が他のスライス板11とは互いに異なる材料で形成されてもよい。互いに異なる複数の材料として、木、樹脂材料、透明材料等を用いることができる。
【0084】
この場合、医療用立体モデル1の複数の部分にそれぞれ適した材料を用いることにより、切削の容易化、切削後の状態の確認の容易化、または低コスト化が可能となる。
【0085】
例えば、複数のスライス板11のうち切削対象となるスライス板11を切削が容易なポリウレタン等の低い強度を有する材料により形成し、他のスライス板11を木等の安価な材料により形成してもよい。それにより、切削の容易化とともに低コスト化が可能となる。あるいは、複数のスライス板11のうち切削対象となるスライス板11を透明な材料により形成し、他のスライス板11を木等の安価な材料により形成してもよい。それにより、切削後の状態の確認の容易化とともに低コスト化が可能となる。
【0086】
また、互いに異なる複数の材料として、互いに異なる色を有する複数の材料が用いられてもよい。例えば、複数のスライス板11の材料として、母材の色が互いに異なる複数の木が用いられてもよい。また、複数のスライス板11の材料として、互いに異なる色を有する複数のアクリル樹脂が用いられてもよい。これらの場合、医療用立体モデル1の複数の部分にそれぞれ適した色のスライス板11を用いることにより、例えば切削箇所の確認の容易化が可能となる。
【0087】
(3)上記の実施の形態では、複数のスライス板11がレーザーカッターにより木製の板状部材40から切り出されるが、本発明はこれに限定されない。複数のスライス板11は、レーザーカッターではなく切削工具を用いた切削加工により切り出されてもよいし、ウォータージェット切断により切り出されてもよい。
【0088】
スライス板11が切削加工またはウォータージェット切断により板状部材40から切り出される場合には、複数のスライス板11の各々の外周端面の色が母材の色から変色しない。このように、板状部材40から複数のスライス板11を切り出す際にそれらの切断面が変色しない場合には、複数のスライス板11を切り出した後、各スライス板11の外周端面(切断面)が母材の色とは異なる色で塗装されてもよい。それにより、模擬手術後の切削部分の状態を視覚的かつ正確に確認することが可能になる。
【0089】
(4)第2の実施の形態では複数のスライス板11の全てが連結軸211,212により連結されるが、本発明はこれに限定されない。第2の実施の形態の医療用立体モデル1において、連結軸211,212のうちのいずれか一方は設けられなくてもよい。この場合、複数のスライス板11の全ては1本の連結軸により連結される。それにより、医療用立体モデル1の部品点数が低減されるとともに、医療用立体モデル1の組み立てが容易になる。
【0090】
(5)上記の実施の形態では、複数のスライス板11の全てが複数の連結軸21,211,212により着脱可能に連結されるが、本発明はこれに限定されない。医療用立体モデル1を構成する複数のスライス板11のうち一部のスライス板11は互いに固着されてもよい。例えば、模擬手術により切削されない一部のスライス板11が、接着剤等を用いて互いに固着されてもよい。この場合、医療用立体モデル1の取り扱いが容易になる。
【0091】
(6)上記の実施の形態では、医療用立体モデル1の全てが主として複数のスライス板11により構成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。医療用立体モデル1のうち、模擬手術により切削されない部分、すなわち模擬手術後に分解する必要のない部分が、一体成形品により構成されてもよい。一体成形品は、例えば立体造形法またはNC(Numerical Control)工作機械を用いた加工方法により作製することができる。この場合、医療用立体モデル1の取り扱いが容易になる。
【0092】
(7)第2の実施の形態においては、複数のスライス板11の各々は1個の補助部120を有するが、本発明はこれに限定されない。複数のスライス板11の各々は、互いに離間する2個の補助部120を有してもよい。この場合、一方の補助部120に貫通孔H1を形成し、他方の補助部120に貫通孔H2を形成してもよい。
【0093】
さらに、複数のスライス板11の各々は、互いに離間する3個以上の補助部120を有してもよい。この場合、各補助部120に1個以上の貫通孔を形成し、各補助部120の各貫通孔に連結軸を挿通してもよい。
【0094】
(8)第2の実施の形態においては、複数のスライス板11の補助部120に貫通孔H1,H2が形成されるが、本発明はこれに限定されない。複数のスライス板11の補助部120に貫通孔H1が形成され、複数のスライス板11の形状構成部110に貫通孔H2が形成されてもよい。
【0095】
(9)上記の実施の形態においては、生体の骨盤B0の一部を表す医療用立体モデル1について説明したが、本発明に係る医療用立体モデル1により表される生体の対象部位は上記の例に限定されない。医療用立体モデル1は、脳、心臓、肝臓または腎臓等の生体の臓器を表すように構成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、骨または臓器の少なくとも一部を含む生体の対象部位を表す医療用立体モデルに有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0097】
1 医療用立体モデル
11,11A,11B スライス板
21,211,212,21a,21b 連結軸
40 板状部材
80 リーマー
90 人工股関節
91 ソケット
92 人工骨頭
93 ステム
110 形状構成部
120 補助部
B0 骨盤
B1 右寛骨
B2 左寛骨
B3 右大腿骨
B4 左大腿骨
B5 開口部
B11 寛骨臼
B31 大腿骨頭
H,H1,H2 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12