(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
【0010】
(第1実施形態)
1.杭打機
図1は本発明の第1実施形態に係る杭打機の外観構成を示す側面図である。本実施形態において、
図1中における左側及び右側を杭打機の前後、紙面直交方向手前側及び奥側を杭打機の右左とする。
【0011】
図1及び
図2に示した杭打機は車体A及び杭打作業機Bを備えている。車体Aは油圧ショベルと共通するベースマシンであり、走行体1及び車体本体20を備えている。
【0012】
走行体1は、トラックフレーム2及び左右のクローラ22を備えている。左右のクローラ22は、トラックフレーム2の前後に取り付けた従動輪4及び駆動輪3と、これら従動輪4及び駆動輪3に掛け回した履帯5とをそれぞれ備えている。駆動輪3には油圧モータ等の走行モータ(不図示)が連結され、走行モータによりクローラ22をそれぞれ駆動することで杭打機が走行する。但し、走行体1はクローラ式ではなくホイール式であっても良い。
【0013】
車体本体20は、走行体1に対して旋回する旋回体であり、旋回フレーム7、運転室8、動力室9及びカウンタウェイト18を備えている。旋回フレーム7は、走行体1のトラックフレーム2上に旋回装置6を介して連結されており、前部にフロントフレーム10が取り付けられている。このフロントフレーム10には、前後方向に延在する軸(不図示)を支点として左右の油圧シリンダ11により左右に傾動可能なリーダ取り付けフレーム12が取り付けられている。運転室8、動力室9及びカウンタウェイト18は、旋回フレーム7の上部に前側からその順に搭載されている。動力室9には、エンジンや油圧駆動装置等が収容されている。上記の旋回装置6には油圧モータ等の旋回モータ(不図示)が設けられており、旋回モータによって走行体1に対して車体本体20が旋回駆動される。フロントフレーム10は、旋回フレーム7に連結されて旋回フレーム7の前方に延在している。フロントフレーム10の左右の前端部アウトリガー13aが、旋回フレーム7の左右の後端部にはアウトリガー13bが、それぞれ設けられている。
【0014】
2.杭打作業機
杭打作業機Bは、フロントフレーム10に連結されたリーダ14、リーダ14に支持された打設装置15、リーダ14を前後に傾斜させるバックステーシリンダ19を含んでいる。
【0015】
リーダ14は、打設装置15を昇降可能に装着するものであり、下部リーダ14a及び上部リーダ14bを含む中折れ構造をしている。具体的には、下部リーダ14aの上部の背面側が上部リーダ14bの下部に一体に設けたブラケット16に対して左右に延びる枢着ピン39を介して連結されていて、下部リーダ14aに対して上部リーダ14bが後方に倒伏するように構成されている。また、下部リーダ14a及び上部リーダ14bは着脱可能な中折れ連結ピン40により枢着ピン39より前側の位置で連結されており、中折れ連結ピン40を装着することによって下部リーダ14aに対して一直線な姿勢で上部リーダ14bが拘束される。
【0016】
バックステーシリンダ19は、上部リーダ14bを後方に倒した輸送姿勢と鉛直に起立させた起立姿勢との間で起伏させる油圧シリンダである。このバックステーシリンダ19は、一端が上部リーダ14bに左右に延びるピン21により連結され、他端がリーダ取り付けフレーム12に左右に延びるピン(不図示)により連結されている。
【0017】
なお、上部リーダ14bの背面にはウインチ23が取り付けられている。このウィンチ23は、杭等を吊り上げるために上部リーダ14bの頂部フレーム14cから垂下するワイヤロープ(不図示)の巻取り及び繰出しをするものである。
【0018】
図2は杭打作業機Bの拡大側面図である。打設装置15はスクリューオーガ(不図示)等を回転駆動させて地面を掘削する装置を例示している。但し、杭(鋼材等)の外周部を把持し、把持した杭を回転させて地面に圧入することで杭を打設する回転圧入式等の他のタイプの打設装置を採用する場合もある。この打設装置15はガイドギブ27を介してリーダ14に沿って昇降可能に装着されている。ガイドギブ27は、リーダ14の前面の左右に設けたガイド部材26に沿って上下に摺動可能に嵌合した部材である。
【0019】
打設装置15を昇降させる打設装置昇降用モータ29は本実施形態では油圧モータであり、下部リーダ14aに取り付けられている。打設装置昇降用モータ29の出力軸は、下部リーダ14a内に配置した駆動スプロケット31aに連結されている。このとき、下部リーダ14a内の下部には駆動スプロケット31aと共に従動スプロケット31bが、下部リーダ14a内の上部には従動スプロケット31c,31dが、上部リーダ14b内の上部には従動スプロケット31eが設けられており、これら駆動スプロケット31a及び従動スプロケット31b−31eにはチェーン30が掛け回してある。このチェーン30は打設装置15に連結していて、打設装置昇降用モータ29を駆動するとチェーンが循環駆動されて、打設装置15がリーダ14に沿って昇降する。
【0020】
また、上部リーダ14内にはテンションシリンダ33が上下に延びる姿勢で配置されている。このテンションシリンダ33は、チェーン30の張力を調整する張力調整装置37を構成する油圧シリンダであり、上部リーダ14b内に配置した上記の従動スプロケット31eを上部リーダ14bに沿って上下動させるものである。テンションシリンダ33は、下端がピン34により上部リーダ14bに連結してある。テンションシリンダ33の上端(本実施形態ではロッド先端)には軸受35が設けてあり、この軸受35を介して従動スプロケット31eがテンションシリンダ33に設けられている。
【0021】
図3はリーダ14のリーダ取り付けフレーム12との連結部一帯の拡大図である。
図3に示したように、リーダ14は、左右に延びるリーダ取り付けピン17により上部リーダ14bのブラケット16がリーダ取り付けフレーム12に連結されると共に、下部リーダ14aの背面側(リーダ取り付けフレーム12側)がスライドステー53によりリーダ取り付けフレーム12に連結されることによって、車体30に連結されている。スライドステー53はリーダ起伏用の伸縮可能なアームであり、リーダ取り付けフレーム12の左右両側に1本ずつ取り付けられる。このスライドステー53の一端はリーダ取り付けフレーム12に左右に延びるピン54を介して連結され、他端は下部リーダ14aに左右に延びるピン55を介して連結されている。
【0022】
図4はスライドステー53の側面図、
図5はその分解側面図である。
図4及び
図5に示すように、スライドステー53は、筒状の外ステー56及び筒状又はロッド状の内ステー57からなり、外ステー56に内ステー57を挿し込んだ構成である。これらステー56,57の端部には、それぞれピン54,55(
図3参照)を挿着するピン孔56a,57aが設けられている。また、ステー56,57には、これらを組み合わせて最収縮状態にした際にロックピン(不図示)を挿し込むピン孔56b,57bが設けられている。
【0023】
3.油圧駆動装置
図6は本実施形態の杭打機に備えられた油圧駆動装置の要部を表す油圧回路図である。
図6に示した油圧駆動装置60はテンションシリンダ33の駆動系を抜き出して表したものであり、油圧ポンプ61、第1コントロールバルブ62、第1リリーフ弁63及び駆動圧力設定装置64を備えている。
【0024】
油圧ポンプ61は、テンションシリンダ33の駆動系の専用のポンプでも良いが、バックステーシリンダ19等の他の油圧アクチュエータの駆動系と共用のポンプとしても良い。可変容量型でも良いが、本実施形態の油圧ポンプ61は固定容量型とする。第1コントロールバルブ62は、油圧ポンプ61の吐出ライン61aをテンションシリンダ33に接続するポンプシリンダライン65に設けられ、油圧ポンプ61からテンションシリンダ33に供給される圧油の方向及び流量を制御する。ポンプシリンダライン65は、テンションシリンダ33のロッド側油室に接続するロッドライン65r、及びテンションシリンダ33のボトム側油室に接続するボトムライン65bを含む。本実施形態では第1コントロールバルブ62として電磁作動式又は電磁比例式の3位置切換弁を例示しているが、パイロット作動式の切換弁であっても良い。この第1コントロールバルブ62が図中右側の位置に切り換えられた場合には、吐出ライン61aがボトムライン65bに接続してテンションシリンダ33が伸長する。第1コントロールバルブ62が図中左側の位置に切り換えられた場合には、吐出ライン61aがロッドライン65rに接続してテンションシリンダ33が収縮する。第1コントロールバルブ62が中央の中立位置に切り換えられた場合には、ポンプシリンダライン65が遮断され、テンションシリンダ33が保持される。上記第1リリーフ弁63は吐出ライン61aに設けられ、吐出ライン61aの最大圧力を設定の回路保護圧P0に規定する。吐出ライン61aの圧力が回路保護圧P0を超えると、第1リリーフ弁63が開いて吐出ライン61aがタンクライン66に接続する構成である。第1リリーフ弁63は減圧弁等の他の圧力制御弁でも代替し得る。
【0025】
駆動圧力設定装置64は、バックステーシリンダ19(
図1参照)による上部リーダ14bの倒伏動作に伴ってチェーン30(
図2参照)からテンションシリンダ33に作用する収縮力よりもテンションシリンダ33の伸長力が小さくなるように、テンションシリンダ33のボトム側油室に供給される圧油の圧力を回路保護圧P0よりも低い第1設定圧力P1(P1<P0)以下に設定する装置であり、本実施形態ではバイパスライン71、第2コントロールバルブ72、切換弁73、第3リリーフ弁74、第4リリーフ弁75及びカウンターバランス弁76を備えている。
【0026】
バイパスライン71は、ポンプシリンダライン65と並列に吐出ライン61aをテンションシリンダ33に接続する油路であり、バイパスライン71によって第1コントロールバルブ62をバイパスして吐出ライン61aとテンションシリンダ33とが接続される。バイパスライン71は、テンションシリンダ33のロッド側油室に接続するロッドライン71r、及びテンションシリンダ33のボトム側油室に接続するボトムライン71bを含んでいる。
【0027】
第2コントロールバルブ72は第1コントロールバルブ62と同様のものであり、バイパスライン71に設けられ、油圧ポンプ61からバイパスライン71を介してテンションシリンダ33に供給される圧油の方向及び流量を制御する。第2コントロールバルブ72が右側の位置に切り換えられた場合には吐出ライン61aがボトムライン71bに接続し、左側の位置に切り換えられた場合には吐出ライン61aがロッドライン71rに接続し、中立位置に切り換えられた場合にはバイパスライン71が遮断される。
【0028】
切換弁73は、ポンプシリンダライン65及びバイパスライン71を選択的にテンションシリンダ33に接続する電磁切換弁である。切換弁73が図中右側の位置にある場合には(図示した状態では)ポンプシリンダライン65を介して吐出ライン61aがテンションシリンダ33に接続し、切換弁73が図中左側の位置に切り換わるとバイパスライン71を介して吐出ライン61aがテンションシリンダ33に接続する。
【0029】
カウンターバランス弁76は、バイパスライン71のうちのボトムライン71bに設けられ、テンションシリンダ33のボトム側油室から押し退けられてボトムライン71bを流れる圧油に第1設定圧力P1の背圧を与えるものである。具体的には、並列回路を構成するチェック弁76a及び第2リリーフ弁76bを備えており、切換弁73が図中左側の位置に切り換わった場合、第2コントロールバルブ72が図中右側の位置にあるときにボトムライン71bを通ってテンションシリンダ33に向かう圧油はチェック弁76aを自由に通過し、第2コントロールバルブ72が図中左側の位置にあるときにボトムライン71bを通ってタンクライン66に向かう圧油に第2リリーフ弁76bによって第1設定圧力P1に相当する背圧が与えられるようになっている。
【0030】
第3リリーフ弁74は、バイパスライン71のうちのロッドライン71rに設けられ、ロッドライン71rの最大圧力を第1設定圧力P1よりも低い第2設定圧力P2(P2<P1<P0)に規定する役割を果たす。この第3リリーフ弁74は減圧弁等の他の圧力制御弁でも代替し得る。第1設定圧力P1が、上部リーダ14bの倒伏動作に伴って緊張するチェーン30がテンションシリンダ33を収縮させようとする力よりもテンションシリンダ33の伸長力が小さくなる程度の圧力であるのに対し、第2設定圧力P2は、チェーン30に付勢されてテンションシリンダ33が収縮した場合にボトム側油室から押し退けられた分の圧油がロッド側油室に補充され、ロッドライン71rが負圧になることを防止する程度の圧力である。
【0031】
第4リリーフ弁75は、バイパスライン71のボトムライン71bに設けられ、テンションシリンダ33のボトム側油室に供給される圧油の最大圧力を回路保護圧P0よりも低い第3設定圧力P3(P3<P0)に規定するものである。この第4リリーフ弁75も減圧弁等の他の圧力制御弁で代替し得る。第3設定圧力P3は、上部リーダ14bの起立動作時にテンションシリンダ33を伸長させる際、テンションシリンダ33の伸長に伴ってチェーン30に過度なテンションが掛からない程度の圧力であり、例えば第1設定圧力P1又は第2設定圧力P2と同程度でも良い。
【0032】
4.動作
(1)チェーン30の張力調整
チェーン30の張力調整をする場合、リーダ14が起立した状態(
図1に示した状態)で、運転室8にある張力調整用の図示しない操作装置(例えばスイッチ)を操作してテンションシリンダ33を伸縮させる。チェーン30を張る場合、切換弁73は圧縮ばねの付勢力によって
図6中の右側の位置にあり、操作装置の操作に応じて制御装置(不図示)から出力される信号によって第1コントロールバルブ62が中立位置から同図中右側の位置に切り換わると、油圧ポンプ61からの圧油が第1コントロールバルブ62及び切換弁73を介してテンションシリンダ33のボトム側油室に供給され、テンションシリンダ33が伸長する。その際、ロッド側油室から押し退けられた作動油はタンクに戻される。チェーン30を緩める場合、同様に切換弁73は右側の位置にあり、操作装置の操作に応じて制御装置(不図示)から出力される信号によって第1コントロールバルブ62が中立位置から同図中左側の位置に切り換わると、油圧ポンプ61からの圧油が第1コントロールバルブ62及び切換弁73を介してテンションシリンダ33のロッド側油室に供給され、テンションシリンダ33が収縮する。ボトム側油室から押し退けられた作動油はタンクに戻される。
【0033】
(2)上部リーダ14bの倒伏動作
上部リーダ14bを起立させた状態(
図1参照)から輸送姿勢に移行させる場合、まず中折れ連結ピン40を抜き、上部リーダ14bに対して下部リーダ14aが枢着ピン39を中心として回動可能な状態とする。その後、前述したようにテンションシリンダ33を収縮させることにより、チェーン30を緩ませる。すると、下部リーダ14aは打設装置15を装着した状態で
図7に矢印59で示したように自重で下方に回動する。
【0034】
スライドステー53が最収縮状態となるまでテンションシリンダ33を収縮させたら、例えば運転室8内のコンソールに設けた専用スイッチ(不図示)を操作してリーダ14の倒伏作業モードに移行する。この専用スイッチからの操作信号に応じて制御装置(不図示)から出力される信号により、切換弁73が
図6中の左側の位置に切り換わり、第2コントロールバルブ72が中立位置から同図中左側の位置に切り換わる。このとき、チェーン30に一定のテンションが掛かった状態下ではバイパスライン71のロッドライン71rは第2設定圧力P2よりも高く、油圧ポンプ61から吐出された圧油は第3リリーフ弁74を介してタンクライン66に戻る。
【0035】
その後、例えば運転室8内のリーダ起伏用の図示しない操作装置(例えばレバー)を操作してバックステーシリンダ19を収縮させると、リーダ14の屈曲動作(上部リーダ14bの倒伏動作)に伴って緊張するチェーン30によりテンションシリンダ33のロッドが押え付けられ、その力によってバイパスライン71のボトムライン71bの圧力が第1設定圧力P1を超えたときのみ、カウンターバランス弁76の第2リリーフ弁76bが開き、テンションシリンダ33のボトム側油室から押し退けられた圧油がタンクライン66に排出される。このとき、テンションシリンダ33の収縮に伴ってバイパスライン71のロッドライン71rの圧力が第2設定圧力P2以下に下がると第3リリーフ弁74が閉じ、押し退け容積相当の圧油がロッド側油室に補充されると第3リリーフ弁74が再び閉じる。このように、チェーン30の張力を概ね一定にするようにして上部リーダ14bの倒伏動作に追従してテンションシリンダ33が収縮し、最終的に
図8に示したように上部リーダ14bが水平に倒伏した輸送姿勢に移行する。
【0036】
特に図示しないが、上部リーダ14bが水平に倒伏したら、頂部フレーム14cを左側又は右側に倒して上方へ突き出さない姿勢にする。また、スライドステー53のピン孔57b,56bにロックピン58(
図8参照)を挿着し、例えば輸送時の衝撃によってスライドステー53が伸縮しないようにしておく。
【0037】
(3)上部リーダ14bの起立動作
上部リーダ14bを倒伏させた状態(
図8参照)から起立させる場合、まず頂部フレーム14cを起こし、スライドステー53からロックピン58(
図8参照)を抜く。これらの作業は順不同である。
【0038】
その後、前述した専用スイッチを操作して上部リーダ14bの起立作業モードに移行する。この専用スイッチからの操作信号に応じて制御装置(不図示)から出力される信号により、切換弁73が
図6中の左側の位置に切り換わり、第2コントロールバルブ72が中立位置から同図中右側の位置に切り換わる。このとき、チェーン30に一定のテンションが掛かった状態下ではバイパスライン71のボトムライン71bは第3設定圧力P3よりも高く、油圧ポンプ61から吐出された圧油は第4リリーフ弁75を介してタンクライン66に戻る。
【0039】
その後、前述したリーダ起伏用の図示しない操作装置(例えばレバー)を操作してバックステーシリンダ19を伸長させると、上部リーダ14bの起立動作に伴ってチェーン30が弛緩し、これに伴ってボトムライン71bの圧力が第3設定圧力P3以下に下がると第4リリーフ弁75が閉じる。するとボトム側油室に圧油が供給されてテンションシリンダ33が伸び、これによりチェーン30に一定のテンションが掛かると第4リリーフ弁75が再び閉じる。この間、ロッド側油室から押し退けられた作動油はロッドライン71rを介してタンクライン66に排出される。このように、チェーン30の張力を概ね一定にするようにして上部リーダ14bの起立動作に追従してテンションシリンダ33が伸長し、最終的に
図1に示したように上部リーダ14bが鉛直な起立姿勢に移行する。
【0040】
最後に、前述した専用スイッチを操作してリーダ起伏モードを解除し、前述したようにテンションシリンダ33を伸長させることにより、打設装置15を装着した下部リーダ14aを
図7の矢印59と反対向きに回動させ、中折れ連結ピン40を挿し込む。
【0041】
5.効果
本実施形態の場合、前述したように上部リーダ14bの倒伏動作に伴ってチェーン30が緊張すると、チェーン30に付勢されてテンションシリンダ33が収縮する。これにより、単にバックステーシリンダ19を収縮させればリーダ14の屈曲動作の進捗に追従して自動的にテンションシリンダ33が過不足なく収縮し、その間チェーン33が必要以上に緩まることもない。従って、チェーン30の緩み具合を監視する人員を必要とせず、リーダ14を屈曲させて杭打機を輸送姿勢に移行させる作業をオペレータ一人で容易かつ迅速に行うことができる。このように、テンションシリンダ33を操作することなくチェーン30のテンションを適度に保った状態で下部リーダ14aに対して上部リーダ14bを起伏させることができる。加えて、本実施形態の場合は第4リリーフ弁75を設けたことにより、上部リーダ14bを起こす作業でも同様の効果が得られる。
【0042】
本実施形態においては、上部リーダ14bを倒伏させる過程でテンションシリンダ33を伸縮させて下部リーダ14aを回動させる工程があるが、スライドステー53を介して下部リーダ14aとリーダ取り付けフレーム12とを連結する構成としている。上部リーダ14bの起伏作業をするに当たってスライドステー53は着脱する必要がなく、この点も上部リーダ14bの起伏作業の容易化及び迅速化に寄与する。また、スライドステー53の最収縮時にロックピン58をスライドステー53に挿し込むことにより、スライドステー53の伸縮を拘束することができ、輸送時の衝撃によるスライドステー53の収縮を抑制することができる。これらの効果については特願2014−116419に詳しい記載がある。
【0043】
(第2実施形態)
図9は本発明の第2実施形態に係る杭打機に備えられた油圧駆動装置60’の要部を表す油圧回路図で、第1実施形態の
図6に対応する図である。
図9において第1実施形態と同様の要素には
図6と同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、2段リリーフ弁を用いることによってテンションシリンダ33の駆動系のリリーフ圧を上部リーダ14bの起伏動作時に通常時よりも低下させられるようにした点である。
【0045】
図9に示したように、本実施形態における駆動圧力設定装置64’は、カウンターバランス弁81、ベントライン82、切換弁83及び第3リリーフ弁84を備えており、第1実施形態の駆動圧力設定装置64に備えられていたバイパスライン71、第2コントロールバルブ72、切換弁73及び第4リリーフ弁75に相当する要素は省略されている。
【0046】
カウンターバランス弁81は第1実施形態のカウンターバランス弁76に相当する要素であり、ポンプシリンダライン65に設けられていて、チェック弁81a及び第2リリーフ弁81bを備えている。チェック弁81a及び第2リリーフ弁81bは、それぞれ第1実施形態におけるカウンターバランス弁76のチェック弁76a及び第2リリーフ弁76bと同様の態様でポンプシリンダライン65のボトムライン65bに設けられている。つまり、チェック弁81aをボトムライン65bのテンションシリンダ33に向かう圧油を通す一方で、テンションシリンダ33のボトム側油室から押し退けられてボトムライン65bをタンクに向かって流れる圧油に第2リリーフ弁81bによって第1設定圧力P1の背圧を与える。
【0047】
本実施形態における第1リリーフ弁63’はベントポート(不図示)を有する弁であり、そのリリーフ圧は回路保護圧P0である。減圧弁等の他の圧力制御弁でも代替し得る。上記ベントライン82は、第1リリーフ弁63’のベントポートとタンクライン66とを接続している。このベントライン82には、上記の切換弁83及び第3リリーフ弁84が設けられている。切換弁83はベントライン82を遮断及び連通する電磁弁である。第3リリーフ弁84は、第1実施形態における第3リリーフ弁74に相当する要素で、そのリリーフ圧は第2設定圧力P2であり、切換弁83の下流側に設けられている。この第3リリーフ弁84も減圧弁等の他の圧力制御弁でも代替し得る。従って、切換弁83が閉じている場合は吐出ライン61aの最大圧力は第1リリーフ弁63’による回路保護圧P0に規定される一方で、切換弁83が開いた場合には、ベントライン82が開いて吐出ライン61aの最大圧力は第3リリーフ弁84による第2設定圧力P2(<P1<P0)に規定される。
【0048】
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0049】
本実施形態においてもチェーン30の張力調整の手順及び動作については、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0050】
上部リーダ14bを起立させた状態(
図1参照)から輸送姿勢に移行させる場合も、手順については第1実施形態と同様であり、中折れ連結ピン40の抜き取り、テンションシリンダ33の収縮、上部リーダ14bの倒伏(バックステーシリンダ19の収縮)、ロックピン58の挿し込みの作業を順に実施する。上部リーダ14bを起立させる場合の手順も第1実施形態と同様である。本実施形態における上部リーダ14bの倒伏時及び起立時の回路の動作は次の通りである。
【0051】
(1)倒伏時
テンションシリンダ33を収縮させてスライドステー53が最収縮状態となったら、専用スイッチ(不図示)を操作してリーダ14の倒伏作業モードに移行する。すると制御装置(不図示)からの信号により切換弁83が連通位置に切り換わってベントライン82が開通する。このとき、チェーン30に一定のテンションが掛かった状態下では吐出ライン61aは第2設定圧力P2よりも高く、油圧ポンプ61から吐出された圧油は第3リリーフ弁84を介してタンクライン66に戻る。その後、リーダ起伏用の操作装置(不図示)を操作してバックステーシリンダ19を収縮させると、上部リーダ14bの倒伏動作に伴ってテンションシリンダ33にチェーン30のテンションが掛かり、ポンプシリンダスライン65のボトムライン65bの圧力が第1設定圧力P1を超えたときのみ、カウンターバランス弁81の第2リリーフ弁81bが開き、テンションシリンダ33のボトム側油室から押し退けられた圧油がタンクライン66に排出される。この間、テンションシリンダ33の収縮に伴ってロッドライン65rの圧力が第2設定圧力P2以下に下がると第3リリーフ弁84が閉じ、押し退け容積相当の圧油がロッド側油室に補充されると第3リリーフ弁84が再び閉じる。これにより、第1実施形態と同様にチェーン30の張力を概ね一定にするようにしてリーダ14の屈曲動作に追従してテンションシリンダ33が収縮し、最終的に
図8に示したように上部リーダ14bが水平に倒伏した輸送姿勢に移行する。
【0052】
(2)起立時
前述した専用スイッチを操作して上部リーダ14bの起立作業モードに移行すると、制御装置(不図示)から出力の信号により、切換弁83が連通位置に切り換わる。チェーン30に一定のテンションが掛かった状態下では吐出ライン61aは第2設定圧力P2よりも高く、油圧ポンプ61から吐出された圧油は第3リリーフ弁84を介してタンクライン66に戻る。
【0053】
その後、前述したリーダ起伏用の操作装置(不図示)を操作してバックステーシリンダ19を伸長させると、上部リーダ14bの起立動作に伴ってチェーン30が弛緩し、これに伴ってボトムライン65bの圧力が第2設定圧力P2以下に下がると第3リリーフ弁84が閉じる。するとボトム側油室に圧油が供給されてテンションシリンダ33が伸び、これによりチェーン30に一定のテンションが掛かると第3リリーフ弁84が再び閉じる。この間、ロッド側油室から押し退けられた作動油はロッドライン65rを介してタンクライン66に排出される。このように、チェーン30の張力を概ね一定にするようにして上部リーダ14bの起立動作に追従してテンションシリンダ33が伸長し、最終的に
図1に示したように上部リーダ14bが鉛直な起立姿勢に移行する。
【0054】
本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、第1実施形態に比べて駆動圧力設定装置64’の部品点数が少なく、その分だけ回路が簡素にできる点もメリットである。
【0055】
(第3実施形態)
図10は本発明の第3実施形態に係る杭打機に備えられた油圧駆動装置60”の要部を表す油圧回路図で、第1実施形態の
図6に対応する図である。
図10において第1実施形態と同様の要素には
図6と同一の符号を付して説明を省略する。
【0056】
本実施形態が第1実施形態と相違する点は、上部リーダ14bの倒伏動作時にリリーフ圧の変更ではなくポンプ制御によってテンションシリンダ33の駆動圧力を制御する点である。
【0057】
図10に示したように、本実施形態における油圧ポンプ61’は可変容量型のポンプである。駆動圧力設定装置64”は、サーボポンプ91、レギュレータ92及び切換弁93を備えている。レギュレータ92は、サーボポンプ91と共に油圧ポンプ61’の傾転角を調整する装置であって、サーボシリンダ94及び入力トルク制御弁95を備えている。入力トルク制御弁95はサーボ弁96及びカットオフシリンダ97を含んでいる。第1実施形態の駆動圧力設定装置64の構成要素は本例では共用されておらず、全て省略されている。
【0058】
サーボポンプ91はサーボシリンダ94を駆動する圧油を吐出する固定容量型のポンプであり、その吐出ライン91aはサーボシリンダ94のロッド側油室に接続していて、サーボシリンダ94のロッド側油室にサーボポンプ91からの圧油が導かれる。吐出ライン91aにはその最大圧力を規定するパイロット制御圧設定用のリリーフ弁が設けられている。サーボシリンダ94のロッドは油圧ポンプ61’の斜板に連結されていて、サーボシリンダ94の伸縮に伴って油圧ポンプ61’の傾転角が変化し、油圧ポンプ61’の吐出流量が調整される。
【0059】
サーボ弁96はサーボポンプ91からサーボシリンダ94に入力される圧油を制御する3位置切換弁である。サーボ弁96のスプール96aが図中下側の位置に移動するとサーボシリンダ94のボトム側油室にサーボポンプ91からの圧油が導かれ、図中上側の位置に移動するとサーボシリンダ94のボトム側油室がタンクに連通し、図中中央の中立位置に移動するとサーボシリンダ94のボトム側油室に対する圧油の出入りが遮断される。このスプール96aの一端にはパイロット受圧部が設けられていて、このパイロット受圧部には油圧ポンプ61’の吐出圧力が駆動圧力として作用する。そして、スプール96aの他端には馬力設定ばね96bのばね力が作用している。つまり、スプール96aは油圧ポンプ61’の吐出圧力と馬力設定ばね96bのばね力の大小関係によって移動するようになっている。馬力設定ばね96bのばね力は、油圧ポンプ61’の吐出圧力の制限値(設定値)に等しい。
【0060】
カットオフシリンダ97は、収縮してサーボ弁96の馬力設定ばね96bの支持基点(馬力設定ばね96bの図中下側の端部位置)を移動させるものであり、ロッド先端とサーボ弁96のスプール96aとの間に馬力設定ばね96bを挟持するように構成されている。つまり、馬力設定ばね96bはカットオフシリンダ97のロッドとサーボ弁96のスプール96aとの間に圧縮された状態で介在しているため、カットオフシリンダ97が収縮するとカットオフシリンダ97のロッドとサーボ弁96のスプール96aとの間隔が広がり、馬力設定ばね96bのばね力すなわち油圧ポンプ61’の吐出圧力の制限値が低下する。本実施形態では、カットオフシリンダ97が収縮した際の馬力設定ばね96bのばね力(正確にはサーボ弁96のパイロット受圧部の受圧面積でばね力を割った値)が第1設定圧力P1となるように、馬力設定ばね96bのばね定数やカットオフシリンダ97の伸縮量等が設定されている。
【0061】
カットオフシリンダ97のロッドは、図示したようにボトム室に設けたばねでサーボ弁96側に付勢されている。この付勢力はスプール96aの位置によらず馬力設定ばね96bのばね力よりも常に大きく、通常の状態ではカットオフシリンダ97の最伸長状態が保たれる。カットオフシリンダ97のロッド側油室には圧油(本実施形態ではサーボポンプ91による圧油)が駆動圧力として導かれるようになっていて、圧油による収縮力がばねによる伸長力を上回るとカットオフシリンダ97が収縮するようになっている。カットオフシリンダ97のロッド側油室に導かれる圧油を制御するのが切換弁93である。切換弁93は電磁切換弁(電磁比例弁でも良い)である。
【0062】
なお、本実施形態では、サーボ弁96のスプール96aの外周部を覆うようにスリーブ96cが設けてある。このスリーブ96cには、図示したように、サーボポンプ91からの圧油が導かれる油路、タンクに繋がる油路、及びサーボシリンダ94のボトム側油室に繋がる油路に対応する位置にそれぞれ連通孔が設けられている。また、スリーブ96cはフィードバックレバー98を介してサーボシリンダ94のロッドに連結されていて、サーボシリンダ94が伸長すると図中上側に、サーボシリンダ94が収縮すると図中下側に、スプール96aとは独立して移動するようになっている。スプール96aが中立位置から移動した状態であっても、例えばスリーブ96cがスプール96aに追従して図示した状態から移動すると、スプール96a及びスリーブ96cの位置関係によってはスプール96aと油路との接続がスリーブ96cにより遮断され、その間、サーボシリンダ94が保持される構成である。
【0063】
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0064】
次に本実施形態の動作について説明する。最初にレギュレータ92の動作を説明する。まず、スプール96aが図中上側の移動端にあるとき、油圧ポンプ61’が最大傾転角であるものとする。この状態で油圧ポンプ61’の吐出圧力によるスプール押し付け力が馬力設定ばね96bによるスプール押し付け力より大きくなると、スプール96aが図中下側に移動することによってサーボシリンダ94のボトム側油室がタンクに連通する。このとき、サーボシリンダ94のロッド側油室にはサーボポンプ91からの圧油が導かれているので、サーボシリンダ94が収縮して油圧ポンプ61’の傾転角が減少する。これにより油圧ポンプ61’の吐出流量は減少し吐出圧力も減少する。また、サーボシリンダ94が収縮するとスプール96aを追うようにしてスリーブ96cが図中下側に移動し、停止したスプール96aにスリーブ96cが追い付くと、スリーブ96cによってスプール96aに対する油路の接続が断たれ、サーボシリンダ94も停止してその時の油圧ポンプ61’の吐出流量が保持される。
【0065】
その後、油圧ポンプ61’の吐出圧力によるスプール押し付け力が馬力設定ばね96bによるスプール押し付け力より小さくなると、スプール96aが図中上側に移動してサーボシリンダ94のボトム側油室にサーボポンプ91からの圧油が導かれ、サーボシリンダ94がボトム側油室とロッド側油室の受圧面積差によって伸長する。これにより油圧ポンプ61’の傾転角が増大し吐出流量も増大する。また、サーボシリンダ94の伸長に伴ってスリーブ96cが図中上側に移動し、停止したスプール96aに追い付くとスリーブ96cによってスプール96aに対する油路の接続が断たれ、サーボシリンダ94も停止してその時の油圧ポンプ61’の吐出流量が保持される。スプール96aが図中上側の移動端に復帰すると、油圧ポンプ61’が最大傾転角に復帰する。
【0066】
このようなレギュレータ92の動作により、油圧ポンプ61’の吐出圧力が馬力設定ばね96bにより規定される制限値を超えないように傾転制御される。テンションシリンダ33に供給される圧油の最大吐出圧力がレギュレータ92で制御される点を除き、テンションシリンダ33によるチェーン30の張り調整の手順及び動作については第1実施形態と特に変わりはない。
【0067】
本実施形態においては、前述した専用スイッチの入り切りによって制御装置(不図示)からの信号によって切換弁93が駆動される。具体的には、専用スイッチで通常モードが選択されているときには切換弁93のソレノイド駆動部は励磁されずカットオフシリンダ97への駆動圧力は入力されないが、上部リーダ14bの倒伏モード又は起立モードが選択されると切換弁93のソレノイド駆動部が励磁され、カットオフシリンダ97に駆動圧力が入力される。これによりカットオフシリンダ97が収縮すると、馬力設定ばね96bが第1設定圧力P1まで低下する。加えて、倒伏モード時には第1コントロールバルブ62が
図10中左側の位置に、起立モード時には第1コントロールバルブ62が右側の位置に切り換わる。後はバックステーシリンダ19を伸縮させれば、第1実施形態と同様に上部リーダ14bの起伏に伴ってチェーン30のテンションを一定に保って自動的にテンションシリンダ33が伸縮する。
【0068】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果が得られる。また、油圧ポンプ61’の吐出圧力が制限値を超えないように傾転制御されるので、油圧ポンプ61’の吐出流量が減少する分だけエネルギー効率が向上する。