特許第6360021号(P6360021)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360021
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】発電設備
(51)【国際特許分類】
   H02P 9/30 20060101AFI20180709BHJP
   H02P 103/20 20150101ALN20180709BHJP
【FI】
   H02P9/30 J
   H02P9/30 K
   H02P103:20
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-177809(P2015-177809)
(22)【出願日】2015年9月9日
(65)【公開番号】特開2017-55559(P2017-55559A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2017年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000235
【氏名又は名称】特許業務法人 天城国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 貴明
【審査官】 池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−158896(JP,A)
【文献】 特開平11−234921(JP,A)
【文献】 特開2005−354759(JP,A)
【文献】 特開平8−286704(JP,A)
【文献】 米国特許第6130523(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 9/30
H02P 103/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷条件が互いに異なる複数の負荷へ個別に発電電力を供給可能な発電機と、
この発電機の発電機電圧信号を入力し、発電機電圧を予め定めた基準電圧に保つために、前記発電機の励磁系をフィードバック制御する自動電圧調整器とを備え、
この自動電圧調整器は、
前記互いに異なる負荷条件に対応したフードバック制御用の制御定数をそれぞれ有する制御定数テーブルと、
前記発電機電圧信号を入力し、所定の制御定数によりフィードバック制御し、前記励磁系への制御信号を出力する制御手段と、
前記負荷を現状とは異なる負荷へ切換える負荷条件切換信号が入力されると、この負荷条件切換信号の入力前に前記制御手段から出力された制御信号を現状出力保持手段に保持させると共に、入力後の負荷条件に適応する制御定数を前記制御定数テーブルから前記制御手段に与える負荷切換手段と、
前記現状出力保持手段に保持された制御信号と前記負荷条件切換信号の入力後に前記制御手段から出力される制御信号との差が予め設定された許容値以下になると前記現状出力保持手段に保持された制御信号から前記負荷切換後の前記制御手段の制御信号に切り換える制御信号選択手段と、
を備えた発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電機出力を制禦する自動電圧調整器を備えた発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、同期発電機を備えた発電設備では、同期発電機の励磁は、その回転軸に直結した交流励磁機が発電した交流電力を、回転子上に取付けた主界磁整流器により直流に変換し、回転子に構成された主界磁を励磁している。一方、交流励磁機に対しては、その励磁巻線へ励磁入力を与える励磁機界磁整流器が設けられている。同期発電機の発生電力は、上述した交流励磁機への励磁入力(励磁機界磁整流器の出力)を、自動電圧調整器にて自動調整することにより制御される。
【0003】
自動電圧調整器は、同期発電機が発生する発電機電圧を入力し、この発電機電圧を、予め定めた基準電圧に等しく保つためのフィードバック制御を行う。すなわち、励磁機界磁整流器の出力を制御して交流励磁機への界磁電流を調整し、発電機電圧が基準値に等しくなるように制御する。一般的には、発電機電圧の精度向上の為、自動電圧調整器は、PID制御などのフィードバック制御によって、発電機の電圧制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−285196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同期発電機に対する自動電圧調整器のPID制御の制御定数は、あらかじめ発電機の製造者での運転試験の中で定められる。すなわち、定格負荷や各種負荷投入及び遮断条件で電圧変動が許容範囲に適合するように調整したものを使用する。しかし、同じ定格負荷でも、一定負荷の場合と短時間の間欠負荷があるなど、複数の負荷条件を持つ電源系統の場合、1つの制御定数では対応できない場合がある。その場合は、厳しい負荷条件にあわせ発電機容量を大きくするなどの対策を講じることがある。しかし、発電機容量を必要以上に大きくすることは、設置場所の占有面積の増大や採用時のコストが多くなるなどの問題があった。
【0006】
また、それぞれの負荷に対して自動電圧調整器を設け、負荷ごとに切換える場合がある。しかし、この場合は自動電圧調整器を複数持つこととなり、占有面積の増大などの問題や、切換えるときに制御不安定にならないようにリミッタを搭載したり、調整に時間がかかるという問題がある。
【0007】
この発明は、一つのフィードバック回路で複数の負荷条件に対応する制御定数の切換を安定して実施でき、条件の異なる複数負荷への安定した電力供給が可能な電源設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の形態に係る発電設備は、負荷条件が互いに異なる複数の負荷へ個別に発電電力を供給可能な発電機と、この発電機の発電機電圧信号を入力し、発電機電圧を予め定めた基準電圧に保つために、前記発電機の励磁系をフィードバック制御する自動電圧調整器とを備え、この自動電圧調整器は、前記互いに異なる負荷条件に対応したフードバック制御用の制御定数をそれぞれ有する制御定数テーブルと、前記発電機電圧信号を入力し、所定の制御定数によりフィードバック制御し、前記励磁系への制御信号を出力する制御手段と、前記負荷を現状とは異なる負荷へ切換える負荷条件切換信号が入力されると、この負荷条件切換信号の入力前に前記制御手段から出力された制御信号を現状出力保持手段に保持させると共に、入力後の負荷条件に適応する制御定数を前記制御定数テーブルから前記制御手段に与える負荷切換手段と、前記現状出力保持手段に保持された制御信号と前記負荷条件切換信号の入力後に前記制御手段から出力される制御信号との差が予め設定された許容値以下になると前記現状出力保持手段に保持された制御信号から前記負荷切換後の前記制御手段の制御信号に切り換える制御信号選択手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、負荷条件の異なる負荷への切換に際し、発電電圧をフィードバック制御する制御定数を、負荷条件に適応した負荷定数に切り換えでき、しかも、制御定数の切換時に、制御が安定した後、制御回路を有効化するので、安定した制御定数の切換が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る発電設備の全体構成を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に用いる自動電圧調整器の構成を説明する機能ブロック図である。
図3】本発明の一実施形態の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。始めに、図1により本発明の実施の形態に係る電源設備の全体構成を説明する。
【0012】
図1において、この電源設備は、負荷条件が互いに異なる複数の負荷(図示せず)へ個別に発電電力を供給可能な発電機1を有する。この発電機1に対しては、発電機電圧を予め定めた基準電圧に保つために、自動電圧調整器2を設けている。自動電圧調整器2は、発電機1の発電機電圧信号を入力し、発電機1の励磁系10をフィードバック制御する。
【0013】
上述した励磁系10は、励磁機界磁整流器3、交流励磁機4、主界磁整流器5を有する。
【0014】
交流励磁機4は、発電機1の回転軸に直結しており、図示しない原動機により発電機1と共に回転駆動される。この交流励磁機4の界磁は、励磁機界磁整流器3を介して自動電圧調整器2の出力により励磁される。そして、上述した回転により、交流励磁機4が発電した交流電力を、発電機1の回転子上に取付けた主界磁整流器5により直流に変換して回転子に構成された主界磁を励磁し、発電機1の出力を得る。
【0015】
発電機1の発生電力は図示しない負荷に供給されるが、その発電機電圧は自動電圧調整器2に入力される。自動電圧調整器2は、発電機電圧を、予め定めた基準電圧に等しく保つためのフィードバック制御(一般的にはPID制御)を行う。すなわち、自動電圧調整器2の出力は励磁機界磁整流器3で整流され交流励磁機4へ供給される。このため、交流励磁機4は、その界磁電流が自動電圧調整器2により調整され、発電機1の出力電圧が基準値に等しくなるように制御される。
【0016】
上述した自動電圧調整器2は、具体的には図2で示すように構成される。
【0017】
図2において、自動電圧調整器2は、発電機1で発生した電圧信号を取り込む入力手段11、取り込んだ電圧信号と基準電圧を比較しフィードバック制御を行う制御手段12、制御定数を変更するための負荷条件の切換信号が入力される負荷切換手段13、現状の制御信号を保持する現状出力保持手段14、制御信号を選択する制御信号選択手段15、最終的な励磁電流を出力する出力手段16、及び各負荷条件に応じた制御定数を格納する制御定数テーブル17により構成されている。
【0018】
本発明の実施の形態に係る電源設備は、前述のように、負荷条件が互いに異なる複数の負荷へ個別に発電電力を供給可能であり、制御定数テーブル17は、これら互いに異なる負荷条件に対応したフードバック制御用の制御定数をそれぞれ格納している。
【0019】
制御手段12は、入力された発電機1の電圧信号を、現状の負荷に適応した所定の制御定数によりフィードバック制御し、図1で示した励磁系10への制御信号を生成する。生成された制御信号は、制御信号選択手段15へ出力される。
【0020】
負荷切換手段13は、電力供給対象である負荷を、現状とは異なる負荷へ切換えるための負荷条件切換信号が入力されると、この負荷条件切換信号の入力前の最終時点に制御手段12から出力された制御信号を現状出力保持手段14に保持させる。この現状出力保持手段14に保持された負荷条件切換信号入力前の制御信号は、制御信号選択手段15へ出力される。また、この負荷条件切換信号が入力されると、負荷条件切換信号入力後の負荷条件に適応する制御定数を制御定数テーブル17から選択し、制御手段12に与える。
【0021】
制御信号選択手段15は、負荷の切換がない場合は、制御手段12が出力する制御信号をそのまま選択し、出力手段16を介して励磁電流信号として出力する。これに対し負荷切換が生じる場合は、負荷条件切換信号入力前の最終時点に制御手段12から出力された制御信号が現状出力保持手段14に保持されるので、制御信号選択手段15は、この現状出力保持手段14に保持された制御信号を選択し、出力手段16を介して励磁電流信号として出力する。このとき制御信号選択手段15には、負荷条件切換信号入力後の負荷条件に適応する制御定数を用いた制御信号が制御手段12から入力されているので、現状出力保持手段14に保持された制御信号と負荷条件切換信号入力後に制御手段12から出力された制御信号との差を比較する。そして、これらの差が予め設定された許容値以下になると、自動電圧調整器2としての制御出力を、現状出力保持手段14に保持された制御信号から負荷条件切換信号入力後に制御手段12から入力される制御信号に切り換え、出力手段16を介して励磁電流信号として出力する。
次に、動作について図3のフローチャートを用いて説明する。現状が負荷条件1の場合、これに適応した制御定数で動作しているものとする(F1)。次に、上述した負荷条件1で運転中に、ある特殊な負荷条件(以下、負荷条件2とする)、例えば、負荷率が10%程度であったものが負荷率90%程度に急変する場合や、パルス状に0%と100%が繰り返されるような負荷への切換が生じる場合、特殊な負荷条件が発生することが外部からの切換信号として負荷切換手段13に入力される(F2)。
【0022】
このように特殊な負荷条件が発生することが外部から入力されると、現状出力保持手段14にて入力前の制御定数での制御信号の最終値を保持する(F3)。一方、制御手段12では、制御定数を負荷条件2での制御定数に切り換え(F4)、フィードバック制御信号を計算する(F5)。
【0023】
制御信号選択手段15では、制御手段12で計算された負荷条件2でのフィードバック信号と現状出力保持手段14に保持された制御信号とを比較する(F6)。その結果、許容値以下となったことを条件(F7)に、現状出力保持手段14で保持された制御信号から負荷条件2でのフィードバック信号へ出力を切換える(F8、F9)。
【0024】
上述の動作により、発電機運転中に制御定数を切換えることができ、かつ、フィードバック制御が安定した後に切換えることができるため、切換時に発生する可能性がある制御不安定を発生させず、発電機運転を続けることができる。
【0025】
このように自動電圧調整器2によって、発電機1の電圧信号からフィードバック制御により励磁電流信号を出力する際、制御信号の出力量を保持する現状出力保持手段14を設けたので、切換信号などにより制御定数を変更する場合、制御が安定するまで現状出力保持手段14によって制御信号(励磁電流信号)を保持し、制御が安定した後、制御回路を有効化することで安定的に制御定数を切換えることができる。
【0026】
この発明の実施の形態によれば、制御定数の切換時に、制御が安定した後、制御回路を有効化することができ、安定した制御定数の切換が可能となる。
【0027】
本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1…発電機
2…自動電圧調整器
10…励磁系
12…制御手段
13…負荷切換手段
14…現状出力保持手段
15…制御信号選択手段
17…制御定数テーブル
図1
図2
図3