(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360027
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ロボットローラヘミングの装置と方法
(51)【国際特許分類】
B21D 39/02 20060101AFI20180709BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20180709BHJP
B21D 19/04 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
B21D39/02 F
B25J13/00 Z
B21D19/04 B
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-222351(P2015-222351)
(22)【出願日】2015年11月12日
(65)【公開番号】特開2016-117095(P2016-117095A)
(43)【公開日】2016年6月30日
【審査請求日】2016年10月27日
(31)【優先権主張番号】10 2014 223 313.5
(32)【優先日】2014年11月14日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515315521
【氏名又は名称】フェルロボティクス コンプライアント ロボット テクノロジー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Ferrobotics Compliant Robot Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】特許業務法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナデレア ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】フェッラーラ パオロ
【審査官】
貞光 大樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−060370(JP,A)
【文献】
特開2001−062530(JP,A)
【文献】
特開2005−014069(JP,A)
【文献】
特開2011−240400(JP,A)
【文献】
特開平07−132327(JP,A)
【文献】
特開2007−152391(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第01447155(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/02
B21D 19/04
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マニュピレータ(100)とローラヘミング装置を有するロボットローラヘミング装置であって、前記ローラヘミング装置は、
フレーム(107)と、
前記フレーム(107)に対して移動可能に設けられ、動作中に、ワーク(301)の互いに対向する側面に接触する第1のローラ(201a)及び第2のローラ(201b)と、
前記フレーム(107)と前記2つのローラ(201a、201b)の少なくとも1つのローラとに機械的に結合され、前記2つのローラを介して、ほぼ、力の実効線に沿う対向するプロセス力(FN、FN’)が前記ワーク(301)の前記互いに対向する側面に印加されるように制御される少なくとも1つの第1のアクチュエータ(202,202a、202b)と
を具備し、
前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)の前記フレーム(107)への搭載により、前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)が前記フレーム(107)に対して動くことにより、前記ローラヘミング装置の前記ワーク(301)に対する位置の不正確さが補償されることを特徴とするロボットローラヘミング装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアクチュエータ(202,202a、202b)によって生成される前記対向するプロセス力(FN、FN’)が同じ大きさであり、前記アクチュエータ(202、202a、202b)によって前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)を介して前記ワーク(301)に与えられる少なくとも合成力及び/又は合成トルクがほぼ零であることを特徴とする請求項1に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項3】
前記マニュピレータ(100)は、前記ローラヘミング装置を所定の所望の輪郭に沿って動かすことを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項4】
前記ローラヘミング装置は、第1のアクチュエータ(202a)と第2のアクチュエータ(202b)とを具備し、
前記第1のアクチュエータ(202a)は、前記フレーム(107)と前記第1のローラ(201a)との間で動作し、前記第2のアクチュエータ(202b)は、前記フレーム(107)と前記第2のローラ(201b)との間で動作し、
前記2つのアクチュエータ(202a、202b)は、前記2つのローラ(201a、201b)の前記力の実効線(400)に沿う移動を許すことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアクチュエータ(202)は、前記2つのローラ(201a、201b)の間で動作し、
前記アクチュエータ(202)と前記2つのローラ(201a、201b)は、前記フレーム(107)上に移動可能に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項6】
前記アクチュエータ(202)と前記2つのローラ(201a、201b)は、前記フレーム(107)に沿ってガイドされるベース部材(108)上に配置されていることを特徴とする請求項5に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項7】
前記アクチュエータ(202)と、前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)は、スプリング又は他のアクチュエータによって前記フレーム(107)に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項8】
前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)の少なくとも1つのローラを駆動するモータを具備することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つのローラ(201a)は、その回転速度が前記マニュピレータ(100)のパス速度に調整されることを特徴とする請求項8に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つのアクチュエータ(202)を、前記アクチュエータ(202)によって生成される前記プロセス力(FN、FN’)がターゲットの力の大きさに、ほぼ対応するように制御する制御ユニットを具備し、制御又は閉ループ制御された前記プロセス力(FN、FN’)が前記ワーク(301)の各々の面に実質的に垂直に印加されることを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項11】
前記マニュピレータ(100)が、前記ワーク(301)の接合部に沿って前記ローラヘミング装置を移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項12】
前記マニュピレータ(100)が前記ローラヘミング装置の前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)の間に前記ワーク(301)を移動させることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項13】
前記アクチュエータ(202,202a、202b)によって印加される前記プロセス力は、前記ローラヘミング装置の供給方向(v)に垂直となる向きにかかることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項14】
前記ローラヘミング装置の少なくとも1つのローラ(201a、201b)は、動作中にワーク(301)の表面に接触する走行面を有し、前記走行面の硬度は前記ワーク(301)の表面の硬度よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載のロボットローラヘミング装置。
【請求項15】
フレーム(107)と、前記フレーム(107)に対して移動可能に設けられ、動作中に、ワーク(301)の互いに対向する側面に接触する第1のローラ(201a)及び第2のローラ(201b)と、前記フレーム(107)と前記2つのローラ(201a、201b)の少なくとも1つのローラとに機械的に結合される少なくとも1つの第1のアクチュエータ(202,202a、202b)とを具備するローラヘミング装置によりワークにロボット制御ローラヘミングを行う方法であって、
前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)の前記フレーム(107)への搭載により、前記第1のローラ(201a)及び前記第2のローラ(201b)が前記フレーム(107)に対して動くことにより、前記ローラヘミング装置の前記ワーク(301)に対する位置の不正確さが補償されるように、前記ワーク(301)又は前記ローラヘミング装置をマニュピレータ(100)により所望の輪郭に沿って移動させるステップと、
前記ローラヘミング装置の供給方向(v)にほぼ垂直な方向に印加され、1つの力の実効線(400)にほぼ沿う互いに対向するプロセス力が前記ワーク(301)の対向する側面に印加さるように前記少なくとも1つのアクチュエータ(202、202a、202b)を制御するステップと
を具備することを特徴とするワークにロボット制御ローラヘミングを行う方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット支援ローラヘミングの装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラヘミングは、ロボットの(ロボット支援)工業プロセスの時代にあっても、時間とコストをかけて初めて信頼性高く実現できる要求の厳しい製造プロセスである。しかし、自動車産業などの産業界の多くの部門で、ローラヘミングは、成形シートメタルの連続生産に緊急に必要とされている。特に安定したローラヘミング工程に先行するセットアップ作業は非常に時間がかかる。関係するワーク条件に装置を調整するために、高度に訓練を受けた経験豊富な専門家が必要とされる。形、位置、材料の許容範囲は、経験によって得られた値によって補償されなければならない。このような条件下でのみ良好な結果がプロセスの終了時に期待される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Jens. P. Wulfsberg et al., “Force-regulated Roller Hemming” Zeitschrift fur wissenschaftlichenFabrikbetrieb (Journal for Economic FactoryOperation), No. 3, 2005, pp. 130 - 135
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在のところ、マニピュレータを使用して、ロボットの位置の詳細に基づいて、これらの影響を及ぼす要因について完全に補償することは不可能である。
【0005】
非特許文献1には、力規制ローラヘミング工程が記載されている。この記事では、ローラヘミングに使われる産業ロボットに要求される規制が記載されている。
【0006】
本発明の目的は、ローラヘミングのための改良された装置及び方法を提供することである。安定したローラヘミングプロセスをセットアップするための、コストと時間のかかる調整作業及びローラヘミングプロセスでのワークの位置と形状の影響を削減されるべきものである。
【0007】
この目的は、請求項1の装置及び請求項16の方法によって達成される。種々の実施形態及びさらなる展開は、これらに従属する請求項によってカバーされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下にロボットローラヘミング装置について説明する。本発明の一実施形態では、ロボットローラヘミング装置は、マニュピレータとローラヘミング装置を有する。ローラヘミング装置は、フレームと、第1のローラと第2のローラとを有し、これらのローラは、動作中に、ワークの2つの対向する側面に接触する。ローラヘミング装置は、さらに、フレームと2つのローラの少なくとも1つのローラとに機械的に結合され、ほぼ、力の実効線に沿う対向するプロセス力が、2つのローラを介して、ワークの互いに対向する側面に印加されるように制御される少なくとも1つのアクチュエータを具備する。従って、ワークに対してのローラヘミング装置の不正確な位置が、ローラがフレームに対して移動することで補償される。
【0009】
少なくとも1つの第1のアクチュエータによって生成される対向するプロセス力が同じ大きさであり、ローラを介してワークに与えられる少なくとも1つの合成力及び/又は1つの合成トルクがほぼ零であるように構成される。ローラヘミング装置は、アクチュエータによって印加されるプロセス力が、ローラヘミング装置の供給方向に垂直となる向きにかかるように構成することができる。
【0010】
マニュピレータは、所望の輪郭に沿ってローラヘミング装置又はワークを移動させるように構成することができる。他の実施形態によれば、マニュピレータが、ワークの接合部に沿ってローラヘミング装置を移動させるように構成することができる。またの他の実施形態によれば、ワークがローラヘミング装置のローラ間に供給されるように、マニュピレータがワークを移動させる。
【0011】
ローラヘミング装置は、第1のアクチュエータと第2のアクチュエータとを具備するように構成することができる。この場合には、第1のアクチュエータは、フレームと第1のローラとの間で動作し、第2のアクチュエータは、フレームと第2のローラとの間で動作する。2つのアクチュエータは、これにより、2つのローラを、力の実効線(マニュピレータのツールセンターポイント(TCP)の供給方向にほぼ垂直の方向)に沿って移動させる。
【0012】
他の実施形態では、少なくとも1つのアクチュエータは、2つのローラの間で動作し、アクチュエータと2つのローラは、フレームに(第1の方向に)移動可能に設けられている。アクチュエータと2つのローラは、フレームに設けられたベース部材に配置するようにしても良い。アクチュエータとローラは、フレームに移動可能なように、スプリング又は別のアクチュエータ(例えば、上述のベース部材を介して)により固定してもよい。
【0013】
ローラヘミング装置は、2つのローラのうちの少なくとも1つのローラをドライブするモータを有するように構成することができる。そして、少なくとも1つのローラが、その回転速度がマニュピレータのパス速度にマッチするようにしてもよい。
【0014】
装置は、少なくとも1つのアクチュエータを、アクチュエータによって生成されるプロセス力がターゲットの力の大きさに、ほぼ対応するように制御する制御ユニットを具備し、(力のフィードバックを有し又は有さずに)制御されたプロセス力がワークの各々の面にほぼ垂直に印加されるように構成することもできる。
【0015】
さらに、ローラヘミング装置を用いたワークのロボット支援によるローラヘミングの方法が記載されている。このローラヘミング装置は、フレームと第1のローラと第2のローラ及び少なくとも1つの第1のアクチュエータを有する。ローラは、動作中は、ワークの2つの対向する側面に接触し、少なくとも1つのアクチュエータが機械的にフレームと2つのローラのうちの少なくとも1つのローラに結合している。本方法の一実施形態では、ワーク又はローラヘミング装置をマニュピレータにより所望の輪郭に沿って移動させるステップと、ローラヘミング装置の供給方向にほぼ垂直な方向に印加され、1つの力の実効線にほぼ沿う互いに対向するプロセス力がワークの対向する側面に2つのローラを介して印加されるように少なくとも1つのアクチュエータを制御するステップとを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】対応するベース上のローラヘミングのための取り付けられたアクチュエータを有するマニュピレータを示す図である。
【
図2】
図1に示す装置におけるローラとワークにかかる力を示す図である。
【
図3】ワークのローラヘミングのための、2つのアクチュエータと、互いに対向する2つのローラを有する第1の実施形態に対応する、マニュピレータによってガイドされるローラヘミング装置を示す図である。
【
図4】
図3に対応する装置において、ローラとワークにかかる力を示す図である。
【
図5】ワークのローラヘミングのため、1つのアクチュエータと、互いに対向する2つのローラを有する第2の実施形態に対応する、マニュピレータによってガイドされるローラヘミング装置を示す図である。
【
図6】マニュピレータによってガイドされるワークのローラヘミングのため、1つのアクチュエータと、互いに対向する2つのローラを有するさらなる実施形態に対応する、ローラヘミング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、以下の記載及び図面を参照して、より良く理解される。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明は、それらに示された態様に限定されるものではなく、本発明の基礎となる原理を示すように強調されている。
【0018】
図面においては、同じ参照符号は、同一又は類似の部品であって、各々同一又は類似の意味を有する部品を示す。
【0019】
ローラヘミングは、(元来、製本所で使用される)折り畳み機に類似の装置を用いて、金属又は他の材料の2つのシートを接合するものとして理解される。フランジ成形と同様に、2つの材料はフォームロック(フォームフィット)によって結合される。ここで、金属シートは、鋭く曲げられるのではなく、装置(器具)を用いて、互いの中に丸めて入られる。このようにする利点は、表面が損傷を受けることなく、材料に切り欠き応力がかからないことである。この技術は、もともとは配管工によって使われていたものあり、今日では、例えば、2つの金属シートを結合するために用いられる。フォームロック接続に加え、材料は、摩擦(クランピング)により、フォースロック(フォースフィット)により結合される。
【0020】
ローラヘミングは、また、自動車のボディの製造に用いられ、この製造においては、ロボット(ロボットガイド)ローラ機械が用いられてボディ部品が結合される。ここで、見える方の金属シートの外側エッジが対応する見えない内側部分の周りに1つ又はいくつかの工程で形成される。見える金属シートのエッジが、これにより対応する内側部分のエッジの上で曲げられ、フォームロック接続が形成される。接続部は、ローラヘミングプロセスの前に封止用接着剤を接合部に注入することで封止される。
【0021】
図1は、例えば、自動車産業での連続的生産に用いられるローラヘミングプロセスを示す図である。本実施形態において、機械加工されるワーク301は、例えば、(外側の)金属シート301bと、ローラヘミングプロセスにおいてエッジで結合されるべき(後の内部の)構成要素301aとから構成されている。金属シート301bと構成要素301aとは、付加的に接着によって結合させるようにしても良い。ローラヘミング接続を形成するために、金属シート301bの1つのエッジは、要素301aの上で折り畳まれる。金属シート301bの折り畳みが構成要素301aのエッジに沿って均等となることを確保するために、器具(ローラ201、
図2参照)の押圧力F
Nを規制することが必要とされるようにしても良い。(いわゆるマニュピレータと呼ばれる)産業ロボットは、しかし、しばしば、位置制御され、これにより、幾何学的に正しいパスプラニングにもかかわらず、避けられない許容範囲(と結果として生じる押圧力の変動)が引き起こすフランジ(折り畳み)の欠陥を引き起こす。もし、小さすぎる力が加えられると、フランジはしっかりとは閉まらず、大きすぎる力が加えられると、表面には、視認可能なほどの変形を呈する。
【0022】
この問題(フランジの欠陥)は、例えば、予め張力を与えられたスプリングを有する器具(ローラ201a、201b)をマニュピレータ100に付加することで、(少なくとも部分的に)解決することができる。これにより僅かな位置の偏位がスプリングの変形により補償されうる。スプリングの特性曲線が適切に選択されれば、押圧力F
Nが大幅に変更されることはない。スプリングの代わりに、付加的なアクチュエータ(例えば、リニアアクチュエータ)を用いて、押圧力を調整するよう構成しても良い。
【0023】
図1に示す本実施形態では、ローラ201はマニュピレータ100によってワーク301の接合部の上にガイドされる。マニュピレータ100は、例えば、アームセグメント103、104,及び105を有する標準的な産業ロボットである。第1のアームセグメント103は、回転可能で、台座101(基礎)にしっかりと固定されたベース102上に旋回可能に搭載されている。第2の(中間)アームセグメント104は、旋回可能で、第1のアームセグメント103に接続されている。第3のアームセグメント105は、旋回可能に第2のアームセグメント104に接続され、いわゆるツールセンターポイント(TCP)に、器具(本実施形態の場合には、ローラ201)を供給する。器具201は、一般的に回転可能で、第3のアームセグメント105に旋回可能(第3のアームセグメント105に設けられる2軸ジョイント106を介して)に接続される。マニュピレータ100は、このため、6度の自由度を持ち、器具201をいかなる位置、方向(姿勢)に保持することができる。
【0024】
ローラヘミングのプロセス中に、ワーク301はベース300上に配置され、ベース300は、ローラヘミング中に生じる力を吸収する。フランジ接続の形状に基づいて、ベース300は極めて複雑な形状を有し、非常に高い精度で製造され、この製造には、大変な労力を必要とする。さらに、ワーク301をベース上に固定する取付部材を使う必要があり、これ自体がマニピュレータ100の動作の障害となる可能性がある。
図2には、ローラヘミングプロセス中に生じる力が模試的に描かれている。ローラ201を介してワーク301にかかる力F
N、F
Vはベース300によって吸収される。押圧力F
N(以下、プロセス力F
N、F
N’としても参照される)は、ワーク301の供給方向vに対して垂直(直角)に印加される。ベース300がワーク301に印加する反力は、F
N’、F
V’によって示されている。ワーク301の位置と形状の許容範囲を補償するために、ローラ201は、上述したように、例えば、スプリングを介してマニュピレータ100のTCPに結合するようにしても良い。しかしながら、ワーク301の形状によっては、ローラヘミング中に生じる力を吸収するために複雑なベース300が必要である。
【0025】
図3に模式的に示す実施形態は、上述した複雑なベース300を必要としないものである。この実施形態では、プロセス力F
N、F
N’が互いに打ち消し合うので、(比較的小さい)供給力F
Vがワーク301によって吸収されるだけであるからである。
図3に示すマニュピレータ100の構成は、基本的には、
図1に示す前の例と同様のものである。すなわち、マニュピレータ100は、3つのアームセグメント103,104,105(アームセグメント105は、
図1に示すジョイント106を含む。)を有する。第1のアームセグメント103は、回転可能であり、ベース102に旋回可能に搭載され、ベース102は、台座101(基礎)にしっかりと接続されている。第2の(中間)アームセグメント104は、第1のアームセグメント103に旋回可能に接続されている。第3のアームセグメント105は、旋回可能に第2のアームセグメント104に接続され、いわゆるツールセンターポイント(TCP)上に、ジョイント106を介して器具を供給する。この実施形態の場合には、器具は、単純なローラではなく、より複雑なローラヘミング装置200であり、これについては、以下により詳細に説明する。
【0026】
図面に示されている実施形態のローラヘミング装置は、第1のローラ201aと第2のローラ201bとを有し、これらのローラは、動作時にワーク301の互いに対向する側面に接触する。このローラヘミング装置は、その他に、フレーム107と、フレーム107と2つのローラ201a、201bのうち、少なくとも1つのローラとに機械的に接続されている少なくとも1つのアクチュエータ202a、202bを有している。本実施形態は、2つのアクチュエータ202a、202bを有し、2つのアクチュエータ202a、202bのそれぞれは、2つのローラ201a、201bのそれぞれをフレーム107に機械的に結合させる。少なくとも1つのアクチュエータ(本実施形態では、アクチュエータ202a、202bのうちの1つ又は両方)は、対向するプロセス力F
N、F
N’(押圧力)が2つのローラ201a、201bを介してワーク301の対向する側面に印加されるように制御される。プロセス力F
N、F
N’の大きさは、アクチュエータ202a、202bを制御することにより調整される。プロセス力の合成力F
N+F
N’は、しかしながら、零に近い値となる(F
N’=−F
Nであるため。)。ワーク301の許容範囲及びマニュピレータ100のパス許容範囲は、これにより、プロセス力F
N、F
N’の方向に完全に補償され、ワーク301及びマニュピレータ100は反力の影響を受けることがない。2つのローラ201a、201bは、図面に示す2つのアクチュエータ202a、202bの構成により”浮いた”状態でマニュピレータ100に搭載されている。”浮いた”状態での搭載というのは、ローラ201a、201bが、動作中にワーク301の不規則性に適合できるように搭載されているということである。不規則性というのは、ワーク表面が不均一であることと、位置、形状の許容範囲があることである。
【0027】
図3は、模式図である。実際には、ローラ201a、201bとワーク301は、
図3に示すように、ローラヘミングの際の供給方向vが
図3の面に大部分が垂直になるように配置されている。アクチュエータ202a、202bは、例えば、空気圧シリンダなどのリニアアクチュエータ又は(ベローズシリンダと呼ばれる)ピストンフリーの空気圧アクチュエータとして実現される。ダイレクト電磁ドライブ(すなわち、ギアレス電気ドライブ)もまた、(プロセス力がより小さくて良い場合には)考えられる。アクチュエータ202a、202bは、互いに対向し、主に、同軸的に(または、少なくともドライブ方向vに垂直な結果として生ずる力が補償されるように)フレーム107とローラ201a、201bとの間に(例えば、フレーム107の2つの対向するカンチレバー上に)配置される。結果として、アクチュエータ202a、202bによって生ずるプロセス力F
N、F
N’が、ほぼ、共通の力の実効線400に沿うことになる。力の実効線400は、供給方向vに直交するように配置される。従って、プロセス力F
N、F
N’は、完全に互いに補償されることが可能である。この目的のために、アクチュエータ202a、202bは、アクチュエータ202a、202bが力の実効線400に沿う動きを実行することを可能とするリニアートラック(不図示)を有している。動作の時には、ワーク301は、2つのローラ201a、201bの間に位置し、アクチュエータ202aは、上からワーク301に向かってローラ201aを押し(プロセス力F
N)、アクチュエータ202bは、下からワーク301に向かってローラ201bを押す(プロセス力F
N’)。合力F
N、F
N’は、上述したように零となる。アクチュエータ202a、202bは、ほぼ、1本の線にそって動作するので、アクチュエータ202a、202bにより、ワーク301には、零かとても小さいトルクのみがかけられる。結果として、ワーク301の不規則性により、マニピュレータ100に、大きなトルクがかかることがなく、ワーク301の位置及び/又は形の不規則性に関し、ヘミングローラプロセスの正確性及び堅牢性が向上する。完成した、ロールフランジは、参照符号302により示されている。
【0028】
アクチュエータ202a、202bの動作から切り離されて、マニュピレータ100は、ローラヘミングプロセスに必要な駆動(供給)力を生成することができる。プロセス力F
N、F
N’はアクチュエータ202a、202bにより、目標値に制御される一方、マニュピレータ100は、ローラヘミング装置を規定の軌道に沿うように位置制御して、移動させることができる。ワーク301の位置及び形状の不規則性及びローラヘミング装置200が動くべき軌道に関するパスプラニングの不正確性は、アクチュエータ202a、202bによって補償される。アクチュエータ202a、202bは、フレーム107に対してローラ201a、201bの一様な動きへの大きな抵抗となることなく(少なくとも一定の制限内で)、所定のプロセス力F
N、F
N’でワーク301を押圧するように制御される。これは、すでに述べたように、力F
N、F
N’が互いを相殺するように働くからである。このようにして、マニュピレータ100は、これらの補償動作から切り離される。
【0029】
図4は、
図3の構成において、ローラヘミング中のワーク301にかかる力を詳しく描いた図である。すでに述べたように、制御されたプロセス力F
N、F
N’は、同じ大きさで、反対方向に印加される。マニュピレータ100の働きにより、ローラヘミング装置200をワーク301を横切って動かす供給力F
Vが生成される。供給力F
Vのみがワーク301によって吸収される(反力F
V’)。上述したように、所望の位置から(フレーム107に対する)のワーク301の位置の任意の偏位は、アクチュエータ202a、202bの対応のたわみにより補償される。この図の距離dは、ローラヘミング装置200の座標系においてワーク301の理論的に所望の位置からワーク301の実際の位置への偏位を示している。この位置偏位dは、ローラヘミング装置の位置決めの不正確性(例えば、マニュピレータ100のパスプランニングの不正確性)によって、あるいは、ワーク301の位置決めの不正確性、あるいは、ワーク301の形状の偏位によって引き起こされるものである。
【0030】
図5は、ただ1つのアクチュエータ202を有するローラヘミング装置200の実施形態を示す図である。マニュピレータ100は、本質的には、上述の実施形態の場合と同様にセットアップされる。
図3の実施形態と異なるのは、アクチュエータ202がフレーム107とローラ201a、201bの間で動作するのではなく、ローラ201aとローラ201bとの間で動作する。ここで、第1のローラ201aは、カンチレバー207aを介してベース部材108上に動かないように設けられている。第2のローラ201bも、カンチレバー207bを介してリニアトラックによってベース部材108上に設けられ、ローラ201aとローラ201bとの間の距離が調整可能になっている。アクチュエータ202は、上述の実施形態と同様に、空気圧シリンダ、ピストンフリー空気圧アクチュエータ(すなわち、エアーマッスル又はベローズシリンダ)又は、エレクトリックダイレクト・ドライブなどである。ワーク301の位置・形状の偏位及びマニュピレータ100のパスプラニングの不正確性を補償するために、ベース部材108(及びアクチュエータ202とローラ201a、201b)は、フレーム107に(例えば、リニアトラック109によって)、移動可能に設けられている。もし必要ならば、ローラヘミング装置自体の重さは、(アクティブ又はパッシブな)スプリング(不図示)により、ベース108の一方がフラーム107から吊るされるようにして補償することが可能である。従って、もしワーク301の実際の位置が、理論的な所望の位置から偏位していてもプロセス力F
N 、F
N’のエラーは起こらない。パッシブスプリングの代わりに、アクティブ部品(すなわち、追加のリニアアクチュエータ)をスプリングとして用いることが可能である。この点において、機械的スプリングと同様な働きをするすべての部品は、スプリングと理解される。
図5に示す実施形態では、ローラ201a、201bによってワーク301に印加されるプロセス力F
N、F
N’は、ほぼ共通の力の実効線400に沿って働く。結果的に、この実施形態では、ワーク301にかかる、結果としての力及び/又はトルクは、ほぼ零となる。
【0031】
前の実施形態では、ローラヘミング装置200は、マニュピレータ100により、ワーク301の接合部に沿って、かつ、前に計画されたパスに沿ってガイドされていた。しかしながら、
図3、5、6に示すローラヘミング装置も、台座に固く搭載されており、この場合には、マニュピレータ100が、ローラヘミング装置のローラ201a、201bを通して接合部に沿ってワーク301をガイドし、ローラ201a、201bによりフランジが閉じるようにしている。この状況は、
図6に示されている。マニュピレータ100は、ほぼ、前の実施形態と同様に組み立てられるが、違いは、ローラヘミング装置200が第3のアームセグメント105(
図1に示すジョイント106を含む)に取り付けられるのでは無く、ワーク301が(例えば、グリッパーにより)取り付けられる。ローラヘミング装置200は、
図5に示す前の実施形態と同様に構成される。この実施形態では、アクチュエータは、ローラ201a、201bの間で動作する。2つのローラ201a、201bは、それぞれ、カンチレバー207a、207bを介してフレーム107に、動くことができるように設けられている。アクチュエータ202の助けにより、ローラ201aとローラ201bとの間の距離(及びローラ201aとローラ201bとの間にかかる力)は影響を受けるが、フレーム107に対するローラ201a、201bの相対距離は、影響を受けない。この相対距離は、ワーク301の形及び位置の偏位によって、また、パスのプラニングの不正確性によって変化する。2つのローラのうちの1つのローラ(例えば、ローラ201b)をスプリングによってフレーム107に結合させるようにすることもできる。このようにすれば、ベース部材108とフレーム107との間のスプリングにより、ほぼ、
図5に示す前の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0032】
別の実施形態では、ローラ201a、201bが供給動作と同期して回転するように能動的に駆動されるようにすることもできる。供給力F
Vとその反力F
V’は、このようにしても補償される。これらは、もはや、マニュピレータ100とベース300によって吸収される必要がなく、ワークの固定具を省略することができる。ローラ201a、201bの速度は、マニュピレータ100のTCPのパス速度に調整される。これは、ローラ201a、201bの周速度がマニュピレータ100のTCPのパス速度に対応していることを意味する。
【0033】
最後に、ローラ201a、201bは、金属(例えば、工具鋼)から作ることができることに注意されたい。一実施形態として、走行面(ローラの周面)は、(例えば、工具鋼よりも硬度が低い金属やエラストマーなど)ワークの表面よりも柔らかい材料でできているか、表面がコートされるようにしても良い。すなわち、ローラ201a、201bの走行面の硬度は、ワークの表面の硬度よりも低い。ローラ201a、201bの少なくとも1つの走行面を柔らかくすることで、粒子(ゴミの粒子、金属チップなど)がワークの表面に押し付けられることがない。
【0034】
本発明の種々の実施形態について説明をしたが、まだ多くの実施形態と実装が本発明の範囲内で可能であることは、当業者には明白である。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲及びそれと同等の範囲以外で、限定的に解釈されるべきではない。上述した部品や構造(アセンブリ、装置、回路、システム等)によって実行される種々の機能については、このような部品等を記述するために用いられる「手段」への参照を含む用語は、そうでないと明示されている場合を除き、ここに示されている発明の例示的な実施において、機能を実行する開示されている構造と等価でない場合であっても、説明されている部品の特定の機能を実行する部品又は構造(すなわち、機能的等価なもの)に対応するものと意図される。
【符号の説明】
【0035】
100…マニュピレータ
107…フレーム
201a、201b…ローラ
202、202a、202b…アクチュエータ
301…ワーク
400…力の実効線
F
N、F
N’…対向するプロセス力
v…供給方向