特許第6360044号(P6360044)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6360044向上した絶縁抵抗を有するハロゲンを含まない難燃性の熱可塑性エラストマー組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360044
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】向上した絶縁抵抗を有するハロゲンを含まない難燃性の熱可塑性エラストマー組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20180709BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20180709BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20180709BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20180709BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20180709BHJP
   H01B 3/42 20060101ALI20180709BHJP
   H01B 3/00 20060101ALI20180709BHJP
   C08G 63/66 20060101ALN20180709BHJP
【FI】
   C08L67/00
   C08K5/3492
   C08K5/52
   C08L63/00 A
   H01B7/295
   H01B3/42 E
   H01B3/00 A
   !C08G63/66
【請求項の数】16
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-516105(P2015-516105)
(86)(22)【出願日】2013年6月4日
(65)【公表番号】特表2015-525272(P2015-525272A)
(43)【公表日】2015年9月3日
(86)【国際出願番号】US2013044016
(87)【国際公開番号】WO2013184631
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年6月6日
(31)【優先権主張番号】61/656,226
(32)【優先日】2012年6月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エレーニ カラヤニ
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス アリソン ピーコック
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−233311(JP,A)
【文献】 特開平11−315193(JP,A)
【文献】 特開2004−010694(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2009−0066379(KR,A)
【文献】 特開平09−143350(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0023887(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと;
b)難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも10重量パーセントのメラミンシアヌレートと;
c)少なくとも1つのエポキシ含有化合物と;
d)芳香族ホスフェートエステル難燃剤と
任意選択的に、ホスファイトと
を含む難燃性ポリマー組成物であって、
前記ホスファイトの量は、前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0〜2重量パーセントであり、
但し、i)前記難燃性ポリマー組成物が芳香族ホスフェートエステル難燃剤およびホスファイトを含む場合に、前記エポキシ含有化合物は、全エポキシ官能基当量が前記1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと前記芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも32ミリ当量であるような量で存在しており、そしてii)前記難燃性ポリマー組成物がホスファイトの不在下に芳香族ホスフェートエステル難燃剤を含む場合に、前記エポキシ含有化合物は、前記全エポキシ官能基当量が前記1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと前記芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも56ミリ当量であるような量で存在しているとする、難燃性ポリマー組成物。
【請求項2】
a)1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと;
b)難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも10重量パーセントのメラミンシアヌレートと;
c)1つまたは複数のエポキシ含有化合物と;
d)前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0〜2重量パーセントのホスファイトと、
e)前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として〜15重量パーセントの芳香族ホスフェートエステル難燃剤と、
f)前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0.05〜10重量パーセントの添加剤と
からなる難燃性ポリマー組成物であって、
但し、i)前記難燃性ポリマー組成物が芳香族ホスフェートエステル難燃剤およびホスファイトを含む場合に、前記エポキシ含有化合物は、全エポキシ官能基当量が前記1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと前記芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも32ミリ当量であるような量で存在しており、そしてii)前記難燃性ポリマー組成物がホスファイトの不在下に芳香族ホスフェートエステル難燃剤を含む場合に、前記エポキシ含有化合物は、前記全エポキシ官能基当量が前記1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと前記芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも56ミリ当量であるような量で存在しているとし、
成分a)〜f)の合計が100重量パーセントになる難燃性ポリマー組成物。
【請求項3】
前記1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが、エステル結合によって頭尾結合した多数の繰り返し長鎖エステル単位および短鎖エステル単位を有するコポリエーテルエステルエラストマーであって、前記長鎖エステル単位が式(A):
【化1】
で表され、前記短鎖エステル単位が式(B):
【化2】
で表され、
式中、
Gは、400〜6000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールからの末端ヒドロキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;
Rは、300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;そして
Dは、250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価ラジカルであるコポリエーテルエステルエラストマーである、請求項1または2に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項4】
前記1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールまたはポリ(トリメチレンオキシド)グリコールおよびそれらの混合物と;(2)イソフタル酸、テレフタル酸およびそれらの混合物からなる群から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造されるコポリエーテルエステルエラストマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つのコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーが、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールと;(2)テレフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造されるコポリエーテルエステルエラストマーであり、そしてここで、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールのレベルが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として25重量パーセント未満である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項6】
(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールと;(2)イソフタル酸およびテレフタル酸の混合物からなる群から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造される少なくとも1つのコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーをさらに含み、そしてここで、前記コポリエーテルエステルエラストマーのレベルが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として5〜50重量パーセントである、請求項5に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項7】
前記添加剤が、安定剤、加工剤、金属不活性化剤、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤、染料および/または顔料からなる群から選択される、請求項2に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項8】
メラミンシアヌレートb)の量が、前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として10〜30重量パーセントである請求項1〜7のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項9】
エポキシ含有化合物c)の量が、エポキシ含有化合物c)が前記難燃性ポリマー組成物の総重量の百グラムを基準として2.4〜10ミリ当量の全エポキシ官能性を提供するような量である請求項1〜8のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項10】
ホスファイトの量が、前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0.1〜1重量パーセントである請求項1〜9のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項11】
芳香族ホスフェートエステルの量が、前記難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として2〜12重量パーセントである請求項1〜10のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項12】
前記エポキシ含有化合物c)が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−エピクロロヒドリンコポリマーおよびテトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテルならびのそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1〜11のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項13】
前記ホスファイトがペンタエリスリトールジホスファイトである請求項1〜12のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項14】
前記芳香族ホスフェートエステルが、レゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)およびビスフェノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1〜13のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物。
【請求項15】
請求項1〜12のいずれか一項に記載された前記難燃性ポリマー組成物でできたコーティングを含むワイヤーまたはケーブル。
【請求項16】
絶縁ワイヤーおよび/またはケーブルを製造するための請求項1または12のいずれか一項に記載の難燃性ポリマー組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーを含むハロゲンを含まない難燃性組成物の分野ならびにケーブルおよびワイヤーでのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
優れた機械的特性(たとえば、破断点伸び、引裂強度、引張強度、屈曲寿命、および耐摩耗性)のために、コポリエーテルエステルエラストマーをベースとするポリマー組成物は、自動車、ワイヤーおよびケーブル、流体動力、電気/電子、ホースおよびチュービング、ならびに電化製品分野での使用のための物品の製造などの広範囲の用途に使用されてきた。
【0003】
特に、コポリエーテルエステルエラストマーは、自動車、建築および建設業界におけるワイヤーおよびケーブル用途向け絶縁層の製造に使用されている。ワイヤーおよびケーブルコーティングは、電気絶縁を提供するが、機械的、化学的および物理的防護をまた与える。125℃を超える温度が多くの場合、自動車のアンダーフード区画においてまたは建物内で達せられるので、乾燥および湿潤環境条件の両方でのワイヤーおよびケーブル絶縁材に対する温度規格は絶えず高まりつつある。さらに、これらの非常に要求が厳しい用途においては、絶縁材が、難燃性、耐熱性、耐加水分解性および高い伸びを含む追加要件を満たすことが必要である。
【0004】
ポリ塩化ビニル(PVC)は、ワイヤーおよびケーブル絶縁のための最も幅広く使用されている材料である。しかし、多くの場合に、PVCは、環境上の脅威として認識されている。代替ワイヤーおよびケーブル絶縁材として高温および加水分解への耐性を示す可撓性材料を要求するワイヤーおよびケーブル用途での使用のために利用可能な代わりのハロゲンを含まない難燃性の熱可塑性材料を有することが望ましいであろう。
【0005】
様々な難燃性システムが、それらの難燃性を向上させるために、開発され、ポリマー材料、たとえば、ポリエステルに使用されている。しかし、毒性懸念のために、ハロゲンを含まない難燃剤がよりいっそうの注目を集めつつある。様々なハロゲンを含まない難燃剤の中で、リン化合物(ホスフィン酸またはジホスフィン酸の塩などの)が、それらの安定性および難燃有効性のために広範囲に使用されている。先行技術はまた、様々なタイプの相乗化合物がリン化合物と組み合わせてそれの難燃有効性をさらに最大限にするために使用できることを実証している。たとえば、米国特許第6,547,992号明細書は、難燃相乗剤としてのケイ素の酸素化合物、マグネシウム化合物、周期表の第2主族の金属の金属炭酸塩、赤リン、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、またはそれらの組み合わせなどの合成無機化合物の使用を開示しており;米国特許第6,716,899号明細書は、難燃相乗剤としての有機リン含有化合物の使用を開示しており;米国特許第6,365,071号明細書は、難燃相乗剤としての窒素含有化合物(たとえば、メラミンシアヌレート、メラミンホスフェート、メラミンピロホスフェート、またはメラミンジボレート)の使用を開示しており;米国特許第6,255,371号明細書は、難燃相乗剤としてのリン酸とメラミンとの反応生成物またはメラミンの縮合生成物(たとえば、メラミンポリホスフェート(MPP))の使用を開示している。さらに、米国特許出願公開第2008/0039571号明細書は、主要な難燃剤または難燃相乗剤としての金属水酸化物、アンチモン化合物、ホウ素化合物、リン化合物(たとえば、有機ホスフェートエステル、ホスフェート、ハロゲン化リン化合物、無機リン含有塩など)、または他の金属化合物の使用を開示している。
【0006】
特に、欧州特許出願公開第1883081号明細書ならびに国際公開第2009/047353号パンフレットおよび国際公開第2010/094560号パンフレットはそれぞれ、絶縁層ならびに/またはワイヤーおよびケーブルのジャケットを形成するのに有用な難燃性エラストマー組成物を開示している。それらの開示において、(i)ホスフィン酸および/またはジホスフィン酸の金属塩と、(ii)窒素含有化合物(たとえば、メラミンポリホスフェート)と、(iii)無機化合物(たとえば、ホウ酸亜鉛)との組み合わせが、好ましい難燃剤パッケージとして教示されている。ポリマー組成物中の、難燃性添加剤などの、高いレベルの添加剤の存在は、ある種の特性の悪化を引き起こす可能性があることが当該技術分野で知られている。そのようなポリマー組成物が、他の機械的特性を依然として維持しながら低い燃焼性、高い熱安定性および良好な電気絶縁性を有することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乾燥ならびに高温および多湿条件下に良好な機械的性能、良好な難燃性および良好な電気絶縁抵抗を示す組成物ならびにそれから作られるワイヤーおよびケーブルを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
a)1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと;
b)メラミンシアヌレートと;
c)少なくとも1つのエポキシ含有化合物と;
d)i)難燃性ポリマー組成物が芳香族ホスフェートエステル難燃剤およびホスファイトを含むときに、存在するエポキシ含有化合物の量が、全エポキシ官能基当量(total epoxy functional group equivalent weight)が1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも約32ミリ当量であるようなものである、そしてii)難燃性ポリマー組成物がホスファイトの不在下に芳香族ホスフェートエステル難燃剤を含むときに、存在するエポキシ含有化合物の量が、全エポキシ官能基当量が1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも約56ミリ当量であるようなものであるという条件で、
任意選択的に、ホスファイト、芳香族ホスフェートエステル難燃剤およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物と
を含む難燃性ポリマー組成物を指向する。
【0009】
好ましい実施形態においては、難燃性ポリマー組成物は、
a)1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと、
b)難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として少なくとも10重量パーセントからであるかまたは10重量パーセントに等しい量のメラミンシアヌレートと;
c)1つまたは複数のエポキシ含有化合物と;任意選択的に
d)難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0〜2重量パーセントのホスファイトと、
e)i)難燃性ポリマー組成物が芳香族ホスフェートエステル難燃剤およびホスファイトを含むときに、存在するエポキシ含有化合物の量が、全エポキシ官能基当量が1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも約32ミリ当量であるようなものである、そしてii)難燃性ポリマー組成物がホスファイトの不在下に芳香族ホスフェートエステル難燃剤を含むときに、存在するエポキシ含有化合物の量が、全エポキシ官能基当量が1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも約56ミリ当量であるようなものであるという条件で、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0〜15重量パーセントの芳香族ホスフェートエステル難燃剤と、
f)難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0.05〜10重量パーセントの添加剤と
からなり、
ここで、成分a)〜f)の合計は100重量パーセントになる。
【0010】
好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物に使用される添加剤は、安定剤、加工剤、金属不活性化剤、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤、染料および/または顔料からなる群から選択される。
【0011】
好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在するメラミンシアヌレートb)の量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として10もしくは約10〜30重量パーセントであり、本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在するエポキシ含有化合物c)の量は、それが、難燃性ポリマー組成物の総重量の百グラムを基準として2.4もしくは約2.4〜約10ミリ当量の全エポキシ官能性を提供するようなものである。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明の難燃性ポリマー組成物は、ホスファイトおよび/または芳香族ホスフェートエステルをさらに含み、ここで、ホスファイトd)の量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0.1もしくは約0.1〜1重量パーセントであり、そしてここで、芳香族ホスフェートエステルe)の量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として2もしくは約2〜12重量パーセントである。
【0013】
本発明の難燃性ポリマー組成物に使用される好ましいエポキシ含有化合物c)は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−エピクロロヒドリンコポリマー、テトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテルおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0014】
本発明の難燃性ポリマー組成物に使用される好ましいホスファイトd)は、ペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0015】
本発明の難燃性ポリマー組成物に使用される好ましい芳香族ホスフェートエステル難燃剤は、レゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)およびビスフェノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
本発明の難燃性ポリマー組成物でできたコーティングを含むワイヤーまたはケーブルならびに絶縁ワイヤーおよび/またはケーブルを製造するための本発明の難燃性ポリマー組成物の使用が本明細書にまた記載される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の定義は、本説明において議論され、そして特許請求の範囲において列挙される用語の意味を解釈するために用いられるべきである。
【0018】
本明細書で用いるところでは、冠詞「1つの(a)」は、1つならびに2つ以上を示し、その指示対象名詞を単数形に必然的に限定しない。
【0019】
本明細書で用いるところでは、用語「約」および「でのもしくは約」は、問題になっている量または値が、指定された値かまたはおおよそもしくは約同じものであるある他の値であってもよいことを意味する。この語句は、類似の値が本発明によれば等価の結果または効果を推進することを伝えることを意図する。
【0020】
本明細書に記載される難燃性組成物での使用に好適な1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーは好ましくは、50もしくは約50〜80もしくは約80重量パーセントの量で本発明の組成物中に存在し、この重量百分率は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準とする。
【0021】
本発明のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーは、エステル結合によって頭尾結合した多数の繰り返し長鎖エステル単位および短鎖エステル単位を有し、前記長鎖エステル単位は式(A):
【0022】
【化1】
【0023】
で表され、前記短鎖エステル単位は式(B):
【0024】
【化2】
【0025】
で表され、
式中、
Gは、約400〜約6000、または好ましくは約400〜約3000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールからの末端ヒドロキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;
Rは、約300未満の分子量を有するジカルボン酸からのカルボキシル基の除去後に残る二価ラジカルであり;
Dは、約250未満の分子量を有するジオールからのヒドロキシル基の除去後に残る二価ラジカルである。
【0026】
本明細書で用いるところでは、用語「長鎖エステル単位」は、ポリマー鎖中の単位に適用されるとき、長鎖グリコールとジカルボン酸との反応生成物を意味する。好適な長鎖グリコールは、末端の(またはできるだけほぼ末端の)ヒドロキシ基を有し、そして約400〜約6000、好ましくは約600〜約3000の数平均分子量を有するポリ(アルキレンオキシド)グリコールである。好ましいポリ(アルキレンオキシド)グリコールとしては、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(トリメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、これらのアルキレンオキシドのコポリマーグリコール、およびエチレンオキシド封止ポリ(プロピレンオキシド)グリコールなどのブロックコポリマーが挙げられる。これらのグリコールの2つ以上の混合物を使用することができる。
【0027】
本明細書で用いるところでは、用語「短鎖エステル単位」は、コポリエーテルエステルのポリマー鎖中の単位に適用されるとき、約550未満の分子量を有する低分子量化合物またはポリマー鎖単位を意味する。それらは、上記の式(B)で表されるエステル単位を形成するために低分子量ジオールまたはジオール(約250よりも下の分子量)の混合物をジカルボン酸と反応させることによって製造される。コポリエーテルエステルを製造するための使用に好適な短鎖エステル単位を形成するために反応する低分子量ジオールの中に、非環式、脂環式および芳香族ジヒドロキシ化合物が含まれる。好ましい化合物は、エチレン、プロピレン、イソブチレン、テトラメチレン、1,4−ペンタメチレン、2,2−ジメチルトリメチレン、ヘキサメチレンおよびデカメチレングリコール、ジヒドロキシシクロヘキサン、シクロヘキサンジメタノール、レゾルシノール、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレンなどの約2〜15個の炭素原子のジオールである。とりわけ好ましいジオールは、2〜8個の炭素原子を含有する脂肪族ジオールであり、1,4−ブタンジオールがより好ましいジオールである。使用することができるビスフェノールの中に、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、およびビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンが含まれる。ジオールの等価エステル形成誘導体もまた有用である(たとえば、エチレンオキシドまたはエチレンカーボネートを、エチレングリコールの代わりに使用することができるまたはレゾルシノールジアセテートをレゾルシノールの代わりに使用することができる)。
【0028】
本明細書で用いるところでは、用語「ジオール」には、述べられたものなどの等価エステル形成誘導体が含まれる。しかし、あらゆる分子量要件が相当するジオールには言及されるが、それらの誘導体には言及されない。
【0029】
コポリエーテルエステルを生成するために前述の長鎖グリコールおよび低分子量ジオールと反応することができるジカルボン酸は、低分子量の、すなわち、約300未満の分子量を有する脂肪族、脂環式または芳香族ジカルボン酸である。用語「ジカルボン酸」には、本明細書で用いるところでは、コポリエーテルエステルポリマーを形成するのにグリコールおよびジオールとの反応においてジカルボン酸のように実質的に機能する2個のカルボキシル官能基を有するジカルボン酸の機能性等価物が含まれる。これらの等価物としては、エステルならびに酸ハロゲン化物および酸無水物などのエステル形成誘導体が挙げられる。分子量要件は、酸に関係し、その等価エステルまたはエステル形成誘導体には関係しない。
【0030】
したがって、300超の分子量を有するジカルボン酸のエステルまたは300超の分子量を有するジカルボン酸の機能性等価物は、相当する酸が約300よりも下の分子量を有するという条件で含められる。ジカルボン酸は、コポリエーテルエステルポリマー形成および本発明の難燃性組成物でのこのコポリエーテルエステルポリマーの使用を実質的に妨げないあらゆる置換基または組み合わせを含有することができる。
【0031】
本明細書で用いるところでは、用語「脂肪族ジカルボン酸」は、それぞれが飽和炭素原子に結合した2個のカルボキシル基を有するカルボン酸を意味する。カルボキシル基が結合している炭素原子が飽和であり、かつ、環中にある場合、この酸は脂環式である。共役不飽和を有する脂肪族または脂環式酸は多くの場合、ホモ重合の故に使用することができない。しかし、マレイン酸などの、幾つかの不飽和酸は使用することができる。
【0032】
本明細書で用いるところでは、用語「芳香族ジカルボン酸」は、炭素環芳香環構造中の炭素原子にそれぞれ結合した2つのカルボキシル基を有するジカルボン酸を意味する。両方の官能性カルボキシル基が同じ芳香環に結合していることは必要ではなく、2つ以上の環が存在する場合には、それらは、脂肪族もしくは芳香族二価ラジカルまたは−O−もしくは−SO−などの二価ラジカルによって結合することができる。使用することができる代表的な有用な脂肪族および脂環式酸としては、セバシン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸;1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;アジピン酸;グルタル酸;4−シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸;2−エチルスベリン酸;シクロペンタンジカルボン酸、デカヒドロ−1,5−ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビシクロヘキシルジカルボン酸;デカヒドロ−2,6−ナフタレンジカルボン酸;4,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)カルボン酸;および3,4−フランジカルボン酸が挙げられる。好ましい酸は、シクロヘキサンジカルボン酸およびアジピン酸である。
【0033】
代表的な芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸;ビ安息香酸;ビス(p−カルボキシフェニル)メタンなどの2つのベンゼン核を持った置換ジカルボキシ化合物;p−オキシ−1,5−ナフタレンジカルボン酸;2,6−ナフタレンジカルボン酸;2,7−ナフタレンジカルボン酸;4,4’−スルホニルジ安息香酸ならびに、ハロ、アルコキシ、およびアリール誘導体などの、それらのC〜C12アルキルおよび環置換誘導体が挙げられる。p−(ベータ−ヒドロキシエトキシ)安息香酸などのヒドロキシ酸はまた、芳香族ジカルボン酸がまた使用されるという条件で使用することができる。
【0034】
芳香族ジカルボン酸は、本発明にとって有用なコポリエーテルエステルエラストマーを製造するための好ましいクラスである。芳香族酸の中で、8〜16個の炭素原子のもの、特に、単独のまたはフタル酸および/またはイソフタル酸の混合物と一緒のテレフタル酸が好ましい。
【0035】
コポリエーテルエステルエラストマーは好ましくは、15もしくは約15〜99もしくは約99重量パーセントの上記の式(B)に相当する短鎖エステル単位を含み、残りは上記の式(A)に相当する長鎖エステル単位である。より好ましくは、コポリエーテルエステルエラストマーは、20もしくは約20〜95もしくは約95重量パーセント、さらにより好ましくは50もしくは約50〜90もしくは約90重量パーセントの短鎖エステル単位を含み、ここで残りは長鎖エステル単位である。より好ましくは、上記の式(A)および(B)においてRで表される基の少なくとも約70%は、1,4−フェニレンラジカルであり、上記の式(B)においてDで表される基の少なくとも約70%は、1,4−ブチレンラジカルであり、1,4−フェニレンラジカルではないR基と1,4−ブチレンラジカルではないD基との合計は30%を超えない。第二のジカルボン酸がコポリエーテルエステルを製造するために使用される場合、イソフタル酸が好ましく、第二の低分子量ジオールが使用される場合、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジメタノール、またはヘキサメチレングリコールが好ましい。
【0036】
2つ以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンドまたは混合物を、使用することができる。このブレンドに使用されるコポリエーテルエステルエラストマーは、個別の基準でエラストマーについて本明細書で前に開示された値内に入る必要はない。しかし、2つ以上のコポリエーテルエステルエラストマーのブレンドは、加重平均基準でコポリエーテルエステルについて本明細書に記載された値に従わなければならない。たとえば、等量の2つのコポリエーテルエステルエラストマーを含有する混合物において、1つのコポリエーテルエステルエラストマーは60重量パーセントの短鎖エステル単位を含有することができ、他の樹脂は、加重平均45重量パーセントの短鎖エステル単位のための30重量パーセントの短鎖エステル単位を含有することができる。
【0037】
好ましいコポリエーテルエステルエラストマーとしては、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールと;(2)イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの混合物から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、およびそれらの混合物から選択されるジオールとを含むモノマーから、または(1)ポリ(トリメチレンオキシド)グリコールと;(2)イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの混合物から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、およびそれらの混合物から選択されるジオールとを含むモノマーから、または(1)エチレンオキシド封止ポリ(プロピレンオキシド)グリコールと;(2)イソフタル酸、テレフタル酸、およびそれらの混合物から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、およびそれらの混合物から選択されるジオールとを含むモノマーから製造されるコポリエーテルエステルエラストマーが挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
好ましくは、本明細書に記載されるコポリエーテルエステルエラストマーは、テレフタル酸および/またはイソフタル酸のエステルまたはエステルの混合物と、1,4−ブタンジオールとポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールまたはポリ(トリメチレンエーテル)グリコールまたはエチレンオキシド封止ポリプロピレンオキシドグリコールとから製造されるか、またはテレフタル酸のエステル、たとえばジメチルテレフタレートと、1,4−ブタンジオールとポリ(エチレンオキシド)グリコールとから製造される。より好ましくは、コポリエーテルエステルは、テレフタル酸のエステル、たとえばジメチルテレフタレートと、1,4−ブタンジオールとポリ(テトラメチレンエーテル)グリコールとから製造される。
【0039】
好ましい実施形態においては、本発明による難燃性ポリマー組成物は、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールまたはポリ(トリメチレンオキシド)グリコールおよびそれらの混合物と;(2)イソフタル酸、テレフタル酸およびそれらの混合物からなる群から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造されるコポリエーテルエステルエラストマーを含む。
【0040】
より好ましくは、本発明による難燃性ポリマー組成物は、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールと;(2)テレフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造されるコポリエーテルエステルエラストマーであって、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールのレベルが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として約25重量パーセント未満であるコポリエーテルエステルエラストマーを含む。
【0041】
別の実施形態においては、本発明による難燃性ポリマー組成物は、(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールと;(2)テレフタル酸からなる群から選択されるジカルボン酸と;(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造される少なくとも1つのコポリエーテルエステルエラストマーであって、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールのレベルが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として約25重量パーセント未満であるコポリエーテルエステルエラストマーの、ならびに(1)ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールと;(2)イソフタル酸とテレフタル酸との混合物からなる群から選択されるジカルボン酸と、(3)1,4−ブタンジオール、1,3−プロパンジオールおよびそれらの混合物からなる群から選択されるジオールとを含むモノマーから製造される少なくとも1つのコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーであって、前記コポリエーテルエステルエラストマーのレベルが、コポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準として約5〜約50重量パーセントであるコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーのブレンドを含む。
【0042】
それらの優れた引裂強度、引張強度、屈曲寿命、耐摩耗性、および幅広い有用な最終使用温度範囲の結果として、熱可塑性コポリエーテルエステルエラストマーは、たとえばワイヤーおよびケーブルコーティング、自動車用途、家庭電化製品用の部品、建物または機械的デバイス用の構成要素、ならびに流体を搬送するためのチューブおよびパイプなどの、広範囲の用途に使用されている。好適なコポリエーテルエステルエラストマーの例は、E.I.du Pont de Nemours and Company,Wilmington,Delawareから商標Hytrel(登録商標)コポリエーテルエステルエラストマーで商業的に入手可能である。
【0043】
本発明の難燃性ポリマー組成物はまた、メラミンシアヌレートを含む。
【0044】
メラミン−シアヌル酸付加体またはメラミン−シアヌル酸錯体としても知られる、メラミンシアヌレートは、メラミンとシアヌル酸との1:1混合物から形成される結晶性錯体である。メラミンシアヌレートは、たとえば米国特許第4,180,496号明細書に記載されているように2,4,6−トリアミノ−1,3,5−トリアジン(メラミン)と2,4,6−トリヒドロキシ−1,3,5−トリアジンもしくはその互変異性体((イソ)シアヌル酸)との付加体に対する一般に用いられる名称である。
【0045】
好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在するメラミンシアヌレートの量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として10重量パーセント以上である。より少ない量のメラミンシアヌレートは、ポリマー組成物に難燃性を与えるのに十分に有効ではない可能性がある。より好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在するメラミンシアヌレートの量は、10〜30重量パーセント、さらにより好ましくは15〜25重量パーセントであり、この重量パーセントは、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準としている。30重量パーセント超の量は、難燃性ポリマー組成物の機械的特性に有害である可能性がある。
【0046】
当該技術分野で記載されている多くの難燃性ポリマー組成物とは対照的に、本発明の難燃性ポリマー組成物は、米国特許第6,255,371号明細書に記載されているもの(たとえばジエチルホスフィン酸アルミニウム)および米国特許第7,700,680号明細書に記載されているもの(たとえばホスフィン酸アルミニウム)などの有機もしくは無機ホスフィネート難燃性誘導体を含まない。
【0047】
本発明の難燃性ポリマー組成物は、1つまたは複数のエポキシ含有化合物を含む。好適なエポキシ含有化合物の例としては、限定なしに、エポキシ含有ポリオレフィン、他のエポキシ含有ポリマー、ポリフェノールのグリシジルエーテル、ビスフェノールエポキシ樹脂およびエポキシノボラック樹脂が挙げられる。
【0048】
エポキシ含有ポリオレフィンは、エポキシ含有基で官能化されている、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンである。本明細書で用いるところでは、用語「エポキシ含有基で官能化されている」は、エポキシ含有基が、ポリオレフィン上へグラフトされているおよび/またはオレフィンコモノマーと共重合させられている事実を意味する。
【0049】
本発明の実行に有用な一クラスのエポキシ含有ポリオレフィンは、オレフィンコモノマーとエポキシ含有基を含有するコモノマーとのコポリマーを含む。好適なコモノマーの例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルおよびグリシジルイタコネートなどの、4〜11個の炭素原子を含む不飽和エポキシドが挙げられる。グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)が特に好ましい共重合性モノマーである。(メタ)アクリレートとは、化合物がアクリレート、メタクリレート、または2つの混合物のいずれであってもよいことを本明細書では意味する。エチレン/グリシジル(メタ)アクリレートコポリマーは、酢酸ビニルまたは1〜6個の炭素原子を有するアルキル(メタ)アクリレートおよび1〜8個の炭素原子を有するα−オレフィンの共重合単位をさらに含有してもよい。代表的なアルキル(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせが挙げられる。エチルアクリレートおよびブチルアクリレートが注目すべきである。
【0050】
エポキシ含有ポリオレフィンは、使用されるとき、エポキシ含有ポリオレフィンの重量を基準として、約0.5〜約20重量パーセント、好ましくは約1.0〜約10重量パーセントのエポキシ官能基を含有するモノマーに由来する繰り返し単位を含有することが好ましい。エポキシ含有ポリオレフィン中に存在する官能化モノマーに由来する2つ以上のタイプの繰り返し単位があってもよい。
【0051】
上記のエポキシ含有オレフィンコポリマー以外のポリマーもまた、本発明の実行に有用である。たとえば、エポキシ官能基を含有するグラフトポリマーは、周知の材料である。それらは、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテルおよびグリシジルイタコネートなどの、4〜11個の炭素原子を含む不飽和エポキシドを含んでもよく、グリシジル(メタ)アクリレート(GMA)が特に好ましい。そのような不飽和エポキシドは通常、エポキシ含有化合物を既存ポリマーと反応させる(すなわち、小分子を既に存在するポリマー上へグラフトする)ことによってポリマーに「結合させられ」る。そのような不飽和エポキシドはまた、ポリマー分子が共重合によって製造されるときに所望の官能基を含有するモノマーを共重合させることによってポリマー中へ組み入れられてもよい。グラフト化の例として、グリシジルメタクリレートが炭化水素ゴム上へグラフトされてもよい。結果として生じるグラフト化ポリマーは、それに結合したエポキシ官能基を有する。エポキシ含有ポリマーはまた、共重合したエポキシ基含有コモノマーまたはグラフトされたエポキシ含有分子を含有する熱可塑性アクリルポリマーであってもよい。そのような熱可塑性アクリルポリマーは多くの場合、アクリル酸、アクリレートエステル(メチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n ヘキシルアクリレート、およびn−オクチルアクリレートなどの)、メタクリル酸、およびメタクリレートエステル(メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート(BA)、イソブチルメタクリレート、p−オクチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)などの)を重合させることによって製造される。前述のタイプのモノマーの2つ以上から誘導されるコポリマー、ならびに前述のタイプのモノマーの1つまたは複数を、スチレン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどと重合させることによって製造されるコポリマーがまた使用されてもよい。これらのコポリマー中の成分の一部またはすべてが好ましくは、0℃以下のガラス遷移温度を有する。熱可塑性アクリルポリマーの製造のための好ましいモノマーは、メチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、およびn−オクチルアクリレートである。
【0052】
エポキシ基含有熱可塑性アクリルポリマーは、コア−シェル構造を有する熱可塑性アクリルポリマーから製造されることが好ましい。コア−シェル構造は、コア部分が好ましくは0℃以下のガラス遷移温度を有し、一方シェル部分が好ましくはコア部分のそれよりも高いガラス遷移温度を有するものである。コア部分は、シリコーンでグラフトされていてもよい。シェルセクションは、シリコーン、フッ素などの低表面エネルギー物質でグラフトされていてもよい。低表面エネルギー物質が表面にグラフトされたコア−シェル構造のアクリルポリマーは、本明細書に記載される組成物のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーおよび他の成分と混合される間にまたは混合後にそれ自体凝集するだろうし、本組成物中に容易に一様に分散させることができる。
【0053】
存在するとき、難燃性ポリマー組成物中のエポキシ含有ポリオレフィンおよび/または他のエポキシ含有ポリマーの好ましい量は、0.5もしくは約0.5〜30もしくは約30重量パーセント、またはより好ましくは1もしくは約1〜15もしくは約15重量パーセントであり、これらの重量百分率は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準としている。
【0054】
好適なエポキシ含有化合物の他の例としては、ビスフェノールエポキシ樹脂が挙げられる。そのような樹脂は、エポキシ官能基およびビスフェノール部分を有する縮合生成物である。例としては、限定なしにビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの縮合から得られる生成物およびビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの縮合から得られる生成物が挙げられる。
【0055】
別のクラスの好適なエポキシ含有化合物は、エポキシノボラック樹脂である。これらの樹脂は、たとえばホルムアルデヒドなどの、アルデヒドと、たとえばフェノールまたはクレゾールなどの芳香族ヒドロキシル含有化合物との縮合生成物である。
【0056】
本発明の組成物での使用に好適な好ましいエポキシ含有化合物は、ジフェノール型エポキシ縮合ポリマーである。本明細書で用いるところでは、「ジフェノール型エポキシ縮合ポリマー」は、好ましくは末端基として、エポキシ官能基と、ポリマー内にジフェノール部分とを有する縮合ポリマーを意味する。そのようなジフェノール型エポキシ縮合ポリマーは、当業者に周知である。好ましいジフェノール型エポキシ縮合ポリマーとしては、エピクロロヒドリンとジフェノール化合物との縮合ポリマーが挙げられる。2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび類似の異性体との2,2−ビス(p−グリシジルヒドロキシフェニル)プロパン縮合生成物もまた好ましい。商品名EpikoteTM EP1002FでMomentive Chemical Solutionsによって供給される、600〜700g/当量のエポキシ官能基当量を有する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−エピクロロヒドリンコポリマーが特に好ましい。
【0057】
好ましいエポキシ含有化合物は、化合物の1分子当たり少なくとも2つのエポキシ基、より好ましくは化合物の1分子当たり少なくとも3つのエポキシ基、より好ましくは化合物の1分子当たり少なくとも4つのエポキシ基を含む。さらにより好ましくは、多官能性エポキシ含有化合物は、エポキシ含有化合物の1分子当たり2〜4つのエポキシ基を含む。エポキシ基は好ましくは、グリシジルエーテル、さらにより好ましくは、フェノール化合物のグリシジルエーテルを含む。これらのエポキシ含有化合物は、ポリマーであっても非ポリマーであってもよく、非ポリマーが好ましい。エポキシ含有化合物の例は、テトラ(パラヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテルである。商業的に入手可能なエポキシ含有化合物の特に好ましい例は、Momentive Specialty Chemicals,Inc.から商品名EPON(登録商標)1031で供給される3.5の官能性および195〜230g/当量のエポキシ官能基当量のテトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテルである。本発明の好ましいエポキシ含有化合物の好ましい量は典型的には、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0.5もしくは約0.5〜4重量パーセントのそのような好ましいエポキシ含有化合物である。
【0058】
本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在するエポキシ含有化合物の好ましい量は、それが難燃性ポリマー組成物の総重量の百グラムを基準として2.5もしくは約2.5〜約10ミリ当量の全エポキシ官能性を提供するようなものである。
【0059】
本発明の組成物中に存在する各個々のエポキシ含有化合物についてエポキシ官能基当量は、分子中のエポキシ官能基の数で割ったエポキシ含有化合物の重量である。各組成物について全エポキシ官能基当量はそれ故、組成物の1キログラム当たりのエポキシ官能基の「モル」数またはモル当量によって定義される。
【0060】
メラミンシアヌレートは別として、本発明の難燃性ポリマー組成物は、その開示が参照により援用される、欧州特許第0 947 547号明細書に記載されているものなどの芳香族ホスフェートエステル難燃剤をさらに含んでもよい。
【0061】
好ましい芳香族ホスフェートエステル難燃剤は、特開平9−143350号公報に記載されている、そして大八化学工業株式会社から商品名PX−200で入手可能なレゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)、および大八化学工業株式会社から商品名PX−202で入手可能なビスフェノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)からなる群から選択される。
【0062】
使用されるとき、本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在する芳香族芳香族ホスフェートエステル難燃剤の好ましい量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として15重量パーセント以下である。より好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物中に存在する芳香族芳香族ホスフェートエステル難燃剤の量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として2〜12重量パーセントである。
【0063】
本発明の難燃性ポリマー組成物はまた任意選択的にホスファイトを含んでもよい。本発明による難燃性ポリマー組成物に使用することができるホスファイト化合物は、モノホスファイト、ジホスファイトおよびポリホスファイトであってもよい。
【0064】
好適なモノホスファイトは、たとえば、トリアルキルホスファイト、ジアルキルアリールホスファイト、アルキルジアリールホスファイトおよびトリアリールホスファイトである。これらのホスファイト中のアリール基は、線状ならびに分岐であってもよく、環状および/または芳香族基を含んでもよく、そしてまたヘテロ原子含有置換基を含んでもよい。これらのホスファイト中のアリール基は、非置換アリール基ならびに置換アリール基であってもよく、ここで、置換アリール基は、たとえば、アルキル基および/またはヘテロ原子含有置換基を含んでもよい。
【0065】
好適なトリアルキルホスファイトの例は、トリ−ノニルホスファイトである。好適なジアルキルアリールホスファイトの例は、ジイソ−オクチルオクチルフェニルホスファイトである。好適なアルキルジアリールホスファイトの例は、ジフェニルイソ−オクチルホスファイトであり、好適なトリアリールホスファイトの例は、トリフェニルホスファイトである。
【0066】
好適なジホスファイトは、たとえば、ビフェニレンジホスファイト、ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、およびジプロピレングリコールジホスファイトである。これらのジホスファイト中のホスファイト基は好適には、アルキルおよび/またはアリール基を含み、ここで、アルキルおよびアリール基は好適には、モノホスファイトについて上述のアルキルおよびアリール基から選択される。
【0067】
好適なビフェニレンジホスファイトの例は、テトラキス−(2,4−ジ−第三ブチル−フェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトである。好適なペンタエリスリトールジホスファイトの例は、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトおよびビス−(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトである。好適な4,4’−イソ−プロピリデンジフェノールジホスファイトの例は、テトラキス(イソ−デシル)イソ−プロピリデンジフェノールジホスファイトであり、好適なジプロピレングリコールジホスファイトの例は、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイトである。
【0068】
好ましくは、ホスファイト安定剤は、ジホスファイト化合物であり、より好ましくはペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0069】
使用されるとき、本発明の難燃性ポリマー組成物中の存在するホスファイトの好ましい量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として2重量パーセント以下である。より好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物中の存在するホスファイトの量は、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として0.1〜1重量パーセントである。
【0070】
芳香族ホスフェートエステルが、ホスファイト化合物の存在下か不在下かのどちらかで、難燃性組成物中に存在するとき、エポキシ含有化合物の量は、次の通り調節されるときに最も有効である:i)難燃性ポリマー組成物が芳香族ホスフェートエステル難燃剤およびホスファイトを含むときに、存在するエポキシ含有化合物の量が、全エポキシ官能基当量が1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも約32ミリ当量であるようなものである、そしてii)難燃性ポリマー組成物がホスファイトの不在下に芳香族ホスフェートエステル難燃剤を含むときに、存在するエポキシ含有化合物の量が、全エポキシ官能基当量が1つまたは複数のコポリエーテルエステル熱可塑性エラストマーと芳香族ホスフェートエステル難燃剤との合計重量の1kg当たり少なくとも約56ミリ当量であるようなものである。
【0071】
本明細書に記載される難燃性ポリマー組成物は、次の成分ならびにこれらの組み合わせの1つまたは複数を含むが、それらに限定されない添加剤をさらに含んでもよい:ヒドラジンおよびヒドラジドなどの、金属不活性化剤;熱安定剤;酸化防止剤;改質剤;着色剤、滑剤、充填剤および強化剤、衝撃改質剤、流動性向上添加剤、帯電防止剤、結晶化促進剤、導電性添加剤、粘度改質剤、核剤、可塑剤、離型剤、引っ掻き傷および擦傷改質剤、ドリップ抑制剤、接着改質剤ならびにポリマー配合技術分野において公知の他の加工助剤。好ましくは、添加剤は、安定剤、加工剤、金属不活性化剤、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤、染料および/または顔料からなる群から選択される。使用されるとき、追加の添加剤は好ましくは、難燃性ポリマー組成物の総重量を基準として、約0.05〜約10重量パーセントの量で存在する。
【0072】
本明細書に記載される本難燃性ポリマー組成物は、ブレンドが統合された全体を形成するように、ポリマー成分のすべてが互いの中に十分に分散し、非ポリマー原料のすべてがポリマーマトリックス中に十分に分散し、ポリマーマトリックスによって拘束されている、溶融混合ブレンドである。あらゆる溶融混合法が、本発明のポリマー成分と非ポリマー原料とを組み合わせるために用いられてもよい。
【0073】
本発明の難燃性ポリマー組成物のポリマー成分および非ポリマー原料は、たとえば、単軸もしくは二軸スクリュー押出機;ブレンダー;単軸もしくは二軸スクリュー混練機;またはBanburyミキサーなどの、溶融ミキサーに、単一段階添加によって同時に、段階的にかのどちらかで加えられ、次に溶融混合されてもよい。ポリマー成分および非ポリマー原料を段階的に加えるとき、ポリマー成分および/または非ポリマー原料の一部が先ず加えられ、溶融混合され、残りのポリマー成分および非ポリマー原料がその後加えられ、十分に混合された組成物が得られるまでさらに溶融混合される。
【0074】
本明細書に記載される難燃性ポリマー組成物は、射出成形、ブロー成形、射出ブロー成形、押出、熱成形、メルトキャスティング、真空成形、回転成形、カレンダー成形、スラッシュ成形、フィラメント押出および紡糸などの、当業者に公知の方法を用いて物品へ造形されてもよい。そのような物品としては、フィルム、繊維およびフィラメント、ワイヤーおよびケーブルコーティング;太陽電池ケーブルコーティング、光ファイバーコーティング、チュービングおよびパイプ;繊維およびフィラメントでできた布または織物、たとえば衣類またはカーペットに使用される;フィルムならびに屋根材料およびビルディング/建築物用の通気性膜のような膜;車体パネル、エアバッグドア、ダッシュボード、エンジンカバー、ロッカーパネルまたはエアフィルターカバーなどの動力車部品;洗濯機、乾燥機、冷蔵庫および加熱−換気−エアコン電化製品などの、家庭電化製品用の部品;電気/電子用のコネクタ;コンピュータなどの、電子デバイス用の部品;オフィス、屋内、および屋外の家具用の部品;ならびに履物部品が挙げられてもよい。
【0075】
好ましくは、本発明の難燃性ポリマー組成物は、ケーブルおよびワイヤー用の絶縁層またはジャケットなどの絶縁ワイヤーおよびケーブルコーティングを製造するために使用される。
【0076】
[実施例]
本発明は、本明細書に記載される組成物、使用および方法についてさらなる詳細を提供する以下の実施例におけるある種の実施形態によってさらに例示される。
【0077】
原材料
以下の原材料を、本明細書に記載される難燃性ポリマー組成物および比較例の組成物を調製するために使用した。
【0078】
コポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー1(TPC−1):ポリエーテルブロックセグメントとしての約1000g/モルの平均分子量を有する約7.8重量パーセントのポリ(テトラメチレンオキシド)を含み、この重量百分率がコポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準とし、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がポリブチレンテレフタレートセグメントであるコポリエーテルエステルエラストマー。製造プロセスのために必要とされ、そして当業者に周知であるように、このコポリエーテルエステルエラストマーは、6重量パーセント以下の熱安定性、酸化防止剤および金属不活性化剤を含有した。
【0079】
コポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー2(TPC−2):ポリエーテルブロックセグメントとしての約1000g/モルの平均分子量を有する約26.4重量パーセントのポリ(テトラメチレンオキシド)共重合単位を含み、この重量百分率がコポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準とし、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がポリブチレンテレフタレートセグメントであるコポリエーテルエステルエラストマー。製造プロセスのために必要とされ、そして当業者に周知であるように、このコポリエーテルエステルエラストマーは、6重量パーセント以下の熱安定剤、酸化防止剤および金属不活性化剤を含有した。
【0080】
コポリエーテルエステル熱可塑性エラストマー3(TPC−3):ポリエーテルブロックセグメントとしての約1000g/モルの平均分子量を有する約15.9重量パーセントのポリ(テトラメチレンオキシド)を含み、この重量百分率がコポリエーテルエステルエラストマーの総重量を基準とし、コポリエーテルエステルの短鎖エステル単位がポリブチレンテレフタレートおよびポリブチレンイソフタレートセグメントであるコポリエーテルエステルエラストマー。製造プロセスのために必要とされ、そして当業者に周知であるように、このコポリエーテルエステルエラストマーは、6重量パーセント以下の熱安定剤、酸化防止剤および金属不活性化剤を含有した。
【0081】
メラミンシアヌレート難燃剤(MC−1):Melapur(登録商標)、BASFによって供給される、25μmのD98最大を有する、メラミンシアヌレート。
【0082】
メラミンシアヌレート難燃剤(MC−2):FT−6120 MC15、ICL Industrial Productsによって供給される、15μmのD98最大を有する、メラミンシアヌレート。
【0083】
ホスフィネート難燃剤:Exolit(登録商標)OP935、Clariant Corporationによって供給される、7.506ミクロンのD90最大を有するジエチレンホスフィネートのアルミニウム塩。
【0084】
エポキシ−1:EpikoteTM EP1002F、Momentive Chemical Solutionsによって供給される、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン−エピクロロヒドリンコポリマー;600〜700g/当量のエポキシ官能基当量。
【0085】
エポキシ−2:EponTM 1031、Momentive Chemical Solutionsによって供給される、3.5の官能性のテトラフェノールエタンのテトラグリシジルエーテル;195〜230g/当量のエポキシ官能基当量。
【0086】
ホスファイト:Doverphos(登録商標)S9228T、Dover Chemical Corporationによって供給される、2%以下のトリイソプロパノールアミンを含有するビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト。
【0087】
ホスフェート−1:PX−200、大八化学工業株式会社によって供給される、レゾルシノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)。
【0088】
ホスフェート−2:PX−202、大八化学工業株式会社によって供給される、ビスフェノールビス(ジ−2,6−ジメチルフェニルホスフェート)。
【0089】
表1〜2において、実施例の組成物は「E」と特定され、比較例の組成物は「C」と特定される。
【0090】
調製方法
本発明の難燃性ポリマー組成物および比較組成物は、次の通り調製した:表1および2にリストされる量の、上記の原材料を二軸スクリュー押出機で溶融ブレンドした。比較例C4、C5のおよび全実施例の配合された溶融ブレンド混合物を、レースまたはストランドの形態で押し出し、水浴中で冷却し、切り刻んで顆粒にし、水分吸収を防ぐために密封アルミニウム内張バッグに入れた。
【0091】
いかなる難燃剤もなしに、およびいかなるエポキシ含有化合物もなしに(試料C1)、または表1にリストされる量でエポキシ含有化合物を含有する(試料C2およびC3)、コポリエーテルエステルコポリマーTPC−1およびTPC−2を4:1の重量比で含有する、比較例C1〜C3組成物を、225℃のバレル温度で運転される標準押出機で狭い平らなストリップで溶融押出した。
【0092】
比較例C1〜C3と同じコポリエーテルエステルコポリマーブレンドを含有し、さらに表2に示される量でメラミンシアヌレートMC−1およびホスフェート−1を含有する、比較例C5組成物を、約240℃のバレル温度、約300rpmのスクリュー速度および約1kg/時の押出量で運転される16mm二軸スクリュー押出機(Prism 16)において溶融ブレンドした。
【0093】
比較例C5と同じコポリエーテルエステルコポリマーブレンド、それよりもわずかに少ない量のメラミンシアヌレートMC−1およびホスフェート−1を含有し、さらに表2にリストされる量でエポキシ含有化合物およびホスファイト原材料を含有する、比較例C6〜C8組成物を、225℃のバレル温度で運転される標準押出機で狭い平らなストリップで溶融押出した。
【0094】
比較例C5〜C8と同じコポリエーテルエステルコポリマーブレンド、表1および2にリストされる量でメラミンシアヌレート難燃剤MC−2およびエポキシ−1を含有する、実施例E1〜E9組成物を、230℃のバレル温度、約250rpmのスクリュー速度および13〜17kg/時の押出量で運転され30mm二軸スクリュー押出機(ZSK 30mm)において溶融ブレンドした。さらに、実施例E1〜E9組成物は、表1および2にリストされる量でエポキシ−2および/またはホスファイトを含有した。実施例E3組成物は、TPC−2の代わりにコポリエーテルエステルエラストマーTPC−3を含有した。実施例E1〜E3は、ホスフェート難燃剤をさらに含有した。
【0095】
実施例E1〜E9に類似の組成物を含有するが表1および2にリストされる量で変動するレベルの原材料入りの、実施例E10〜E22および比較例C4組成物を、230℃のバレル温度、約200rpmのスクリュー速度および11〜16kg/時の押出量で運転され30mm二軸スクリュー押出機(ZSK 30mm)において溶融ブレンドした。比較例C4は、メラミンシアヌレート難燃剤を含有しなかったが、代わりにホスフィネート難燃剤を含有した。
【0096】
試験方法
燃焼性試験は、UL 94試験標準、20mm垂直燃焼試験に従って行った。試験検体は、125mm長さ×13mm幅および0.8mmの厚さの寸法を有する試験片の形態に組成物を射出成形することによって本発明の組成物(試料E1〜E22)からおよび比較組成物(試料C4)から形成した。射出成形前に、上記の方法に従って調製された難燃性組成物の顆粒を乾燥させて0.08パーセントよりも下の水分レベルを有する顆粒組成物を提供した。比較組成物C6〜C8については、試験検体は、125mm長さ×13mm幅および1.8mmの厚さの寸法を有する試験片の形態に押し出された平らなストリップから試験検体をカットすることによって形成した。測定前に、試験検体を23℃および50%相対湿度で48時間順化させた。試験検体を、検体の下端が乾燥した吸収性脱脂綿の水平層の上方300mmにあるように、垂直方向に検体の縦軸で固定した。20mm高さの青炎を生成するバーナーを中心で、炎が10秒間検体の底縁の中間点に適用されるように置いた。炎を検体に10秒間適用した後、バーナーを試料から引き離し、残炎時間、t1を測定した。試験検体の残炎が終わったとき、バーナーを再び追加の10秒間検体の下方に置いた。炎を次に試験検体から引き離し、第二の残炎時間、t2を測定した。材料を、燃焼中の材料の挙動に基づいて、試験仕様書に従ってV−0、V−1またはV−2に分類し、V−2は最低要求分類である。組成物がこの最低要求分類(V−2)についての判断基準を満たすことができなかったとき、それは、表中で「不合格」と報告される。
【0097】
機械的特性測定は、次の通り行った。射出成形の前に、上記の方法に従って調製された本発明の難燃性組成物(試料E1〜E22)のおよび比較組成物(試料C4)からの顆粒を、0.08パーセントよりも下の水分レベルを有する顆粒組成物を提供するために乾燥させた。破断点引張応力および破断点伸びは、本発明の組成物(試料E1〜E22)および比較組成物(試料C4)については2mmの厚さの射出成形されたISO引張片5A試料を使用して、または比較組成物C1〜C3およびC6〜C8については押し出された平らなストリップから5A引張片検体をカットして方法ISO 527に従って測定した。引張片の長さは75mmであり、試験速度は50mm/分であった。
【0098】
電気性能測定は、次の通り行った。試験検体は、発明の組成物(試料E1〜E22)からおよび比較組成物(試料C4)から、100mmの直径×100mm幅および1.0mmの厚さの寸法を有するプラークの形態に組成物を射出成形することによって形成した。比較組成物C1〜C3、C5およびC6〜C8については、試験検体は、本発明の組成物についてと同じ寸法を有するプラークの形態に組成物を圧縮成形することによって形成した。成形プラークの体積抵抗率は、プラークを異なる順化処理にかけた後に測定した:
(i)23℃での空気中の体積抵抗率:プラークを、成形後に室温で少なくとも16時間そのままにしておいた。そのようなプラークからの体積抵抗率は、各読み取りの前に60秒間500VのDC電位を加えることによってIEC 60093に従って室温で空気中で測定した。各読み取りの継続時間は60秒であった。
【0099】
(ii)水への浸漬後の体積抵抗率:測定される各ポリマープラークを、ポリマープラークと同じ寸法の銅板と接触させ、それらを、機械的スクリューを用いて押し付けた。ポリマー−銅プラークを、それぞれ1日、7日または14日間75℃での加熱オーブン中に置かれた閉鎖水浴に浸漬した。ポリマープラークからの体積抵抗率は、水浴から取り去るとすぐに測定した。
【0100】
本発明の組成物は、0.8mmの厚さで少なくともV−2の良好な燃焼性性能、少なくとも30%の破断点伸び、および次の通り良好な電気絶縁性能を有する:(i)6000GOhm.m以上の23℃での空気中の体積抵抗率および(ii)500GOhm.m以上の1〜14日のどれにおいても75℃での水中の体積抵抗率。表において、1、7または14日間75℃での水中の500GOhm.mよりも大きい体積抵抗率を有する組成物は、「合格」として報告され、1、7または14日間75℃での水中の500GOhm.m未満の体積抵抗率を有するものは、「不合格」として報告される。
【0101】
組成物のそれぞれについての全エポキシ官能基当量を表に示す。使用される各個々のエポキシ含有化合物について、エポキシ官能基当量(EEW)は、分子中のエポキシ基の数分のエポキシ含有化合物の重量である。計算は、平均のエポキシ官能基当量:エポキシ−1については、650g/当量、そしてエポキシ−2については、210g/当量に基づいた。各組成物について全エポキシ官能基当量は、(A+B)/(wTPC−1+wTPC−2+wTPC−3+wホスフェート−1+wホスフェート−2)[ここで、A=wエポキシ−1/EEWエポキシ−1、B=wエポキシ−2/EEWエポキシ−2であり、wは、難燃性ポリマー組成物の総重量に対する材料iの重量パーセントである]として、TPCとホスフェートとの混合物の重量当たりで提供される。さらにメラミンシアヌレートとホスフェート難燃剤との混合物の重量当たりの全エポキシ官能基当量は、(A+B)/(wMC−1+wMC−2+wホスフェート−1+wホスフェート−2)として提供される。
【0102】
表1に示されるデータは、コポリエーテルエステルエラストマーのみを含む比較組成物(試料C1)が、良好な機械的性能ならびに23℃での空気中の6000GOhm.mよりも大きいおよび14日間の75℃での水中の500GOhm.mよりも大きい体積抵抗率の値に反映されるように良好な体積抵抗率を見せたことを示す。試料C1の組成物へのエポキシ含有化合物の組み入れ(試料C2およびC3)は、良好な性能を保持した。しかし組成物C1〜C3は、燃焼性性能の点で不合格である。比較例C3への類似の組成でのメラミンシアヌレート難燃剤の組み入れ(試料E4)は、それが75℃での加水分解中の良好な体積抵抗率および良好な燃焼性性能を見せながら23℃での空気中の体積抵抗率の向上を意外にももたらした。この試料は、57.2ミリ当量/1kg TPCおよび218ミリ当量/1kg MCの全エポキシ官能基当量を有した。エポキシ官能基当量のさらなる増加(試料E5)は、良好な性能を維持した。E5の組成物へのポリブチレンテレフタレートハードセグメントのみを含有するコポリエーテルエステルエラストマーの代わりにポリブチレンイソフタレートハードセグメントを含有するコポリエーテルエステルエラストマーTPC−3の組み入れ(試料E13)またはより低いTPC−1:TPC−3重量比でさえも(試料E14)、それが75℃での加水分解中に良好な体積抵抗率および良好な燃焼性性能を示しながら23℃での空気中で体積抵抗率の著しい向上を意外にももたらした。ホスフェートをまったくおよびホスファイトをまったく組み入れない実施例E4〜E5およびE13〜E14は、57.2ミリ当量/TPCの1kgよりも大きいおよび218ミリ当量/1kg MCよりも大きい全エポキシ官能基当量を有した。エポキシ含有化合物と組み合わせて0.3重量パーセント〜1重量パーセントのレベルでのホスファイトの組み入れは、良好な機械的性能および燃焼性性能を保持しながらすべての条件下に体積抵抗率のさらなる向上を意外にも提供した(試料E6〜E9およびE15〜E17、E21)。そして32.8ミリ当量/1kg TPCおよび123ミリ当量/1kg MCの低い全エポキシ官能基当量でさえも良好な性能を示した。
【0103】
エポキシ−1およびエポキシ−2と組み合わせてメラミンシアヌレートの代わりに有機ホスフィネートの組み入れ(比較試料C4)は、良好な体積抵抗率および燃焼性性能をもたらしたが、この試料は、組成物を押し出すことの困難さによっておよび約4%の非常に低い破断点伸びによって示されるように、比較的低いレベルのエポキシでさえも不十分な押出性性能を実証した。
【0104】
表2に示されるデータは、メラミンシアヌレートとホスフェート−1との難燃剤混合物のみを含む比較組成物(試料C5)が、500GOhm.m未満の体積抵抗率の値に反映されるように、75℃での水中の1日のみの浸漬時に受け入れられない体積抵抗率を見せたことを示す。単独でまたは0.3重量パーセントのレベルでホスファイトとともにもしくは0.4重量パーセントのレベルでエポキシ−2とともに1.6重量パーセントのレベルでメラミンシアヌレートおよびホスフェート−1を組み入れた難燃性組成物へのエポキシ−1の組み入れ(試料C6〜C8)は、75℃での加水分解中に体積抵抗率を有意に向上させず、電気絶縁試験に不合格であった。比較例C5〜C8は、55.8ミリ当量未満/コポリエーテルエステルエラストマーおよびホスフェート混合物の1kgならびに145.3ミリ当量未満/メラミンシアヌレートおよびホスフェート混合物の1kgの全エポキシ官能基当量を有した。メラミンシアヌレートおよびホスフェート難燃剤を含有する混合物へのより高いレベルの全エポキシ官能基当量の組み入れは、すべての条件下に良好な体積抵抗率を提供した(すべての実施例E1〜E3、E10〜E12)。さらにそのような組成物は、比較例C5〜C8と比べておよびメラミンシアヌレートのみの難燃剤を組み入れた表1のすべての実施例と比べてさえも有利にも良好な燃焼性性能(試料E1〜E3)および有利にも良好な破断点伸び(試料すべての実施例E1〜E3、E10〜E12)を提供した。ポリブチレンテレフタレートハードセグメントのみを含有するコポリエーテルエステルエラストマーの代わりにポリブチレンイソフタレートハードセグメントを含有するコポリエーテルエステルエラストマーTPC−3の組み入れは、それが75℃での加水分解中に良好な体積抵抗率および良好な燃焼性性能を示しながら23℃での空気中の体積抵抗率の著しい向上を意外にももたらした(試料E3、E10〜E12)。ホスファイトをまったく組み入れない実施例E1〜E3およびE10〜E12は、55.8ミリ当量/(TPC+ホスフェート)の1kgよりも大きいおよび145.3ミリ当量/(MC+ホスフェート)の1kgよりも大きい全エポキシ官能基当量を有した。エポキシ含有化合物と組み合わせて0.3重量パーセント〜0.4重量パーセントのレベルでのホスファイトの組み入れは、良好な機械的性能および燃焼性性能を保持しながらホスファイトをまったく組み入れない試料と比べてより低い全エポキシ官能基当量でさえもすべての条件下に体積抵抗率のさらなる向上を意外にも提供した(試料E18〜E22)。
【0105】
【表1】
【0106】
【表2】
【0107】
【表3】
【0108】
【表4】