(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記独立開口型処理ガス生成・噴出部と前記単一開口型処理ガス生成・噴出部とが、供給されるガスを処理ガスとする処理ガス生成部を共通とし、その共通の処理ガス生成部に対して、前記独立開口列を有する独立開口型噴出部と、前記単一の開口を有する単一開口型噴出部とが択一的に取り付けられることにより構成される請求項1に記載のプラズマ処理装置。
前記独立開口型処理ガス生成・噴出部と前記単一開口型処理ガス生成・噴出部とが択一的に前記生成・噴出部保持体に取り付け可能である請求項1に記載のプラズマ処理装置。
前記処理ガス噴出口および前記加熱気体噴出口が、前者から噴出した処理ガスと後者から噴出した加熱気体とがそれぞれ被処理面に到達する両到達領域の中心間距離が25mm以下となる状態に互いに近接させられた請求項1ないし4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
前記加熱気体生成・噴出部が前記加熱気体噴出口から加熱気体を噴出させる方向と、前記処理ガス生成・噴出部が前記処理ガス噴出口から処理ガスを噴出させる方向とが、両噴出口の中心間距離より処理ガスと加熱気体とが被処理面にそれぞれ到達する両到達領域の中心間距離が小さくなる向きに、互いに交差させられた請求項1ないし5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
前記加熱気体生成・噴出部が前記加熱気体噴出口から噴出させる加熱気体の流量が、前記処理ガス生成・噴出部が前記処理ガス噴出口から噴出させる処理ガスの流量より少ない請求項1ないし6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
前記相対移動装置が、前記生成・噴出部保持体と前記被処理物保持体とを、概して被処理物の被処理面に平行な平面上において、互いに交差する2方向に相対移動可能なものである請求項1ないし11のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
加熱気体生成・噴出部の前記加熱気体噴出口が前記処理ガス生成・噴出部の前記処理ガス噴出口の両側に設けられ、それら両側に設けられた加熱気体噴出口の各々が前記処理ガス噴出口に先行して被処理面に対向することとなる向きに、前記相対移動装置が前記生成・噴出部保持体と前記被処理物保持体とを選択的に移動させる請求項1ないし12のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のいくつかの実施形態を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本発明は、下記実施形態の他、当業者の知識に基づいて種々の変更を施した態様で実施することができる。
【0009】
図1に、本発明の一実施形態である大気圧プラズマ処理装置(以後、プラズマ処理装置と略称する)が概略的に図示されている。本プラズマ処理装置は、
図1に示すように、処理装置本体10,独立開口型処理ガス生成・噴出装置12,スリット型処理ガス生成・噴出装置14(
図6参照),加熱空気生成・噴出装置16,被処理物搬送装置18,生成・噴出装置昇降装置20,制御装置22を含む。本プラズマ処理装置は大気圧雰囲気中に配設され、処理装置本体10等、プラズマ処理装置の構成要素は大気圧雰囲気中にあり、被処理物の搬送,被処理面の加熱および処理ガスの噴付け等が大気圧雰囲気中において行われる。
【0010】
被処理物搬送装置18は、本実施形態においてはローラコンベヤ30により構成されている。ローラコンベヤ30は、処理装置本体10に回転可能に設けられた複数のローラ32を備え、被処理物34を一方向、本実施形態においては水平な一方向に搬送する。被処理物34は、被処理物保持体たる位置決め保持部材36に収容されて搬送される。ローラ32上には複数の位置決め保持部材36が被処理物搬送方向において隙間なく一列に並べられ、複数の被処理物34が連続的に一方向に搬送される。位置決め保持部材36は、本実施形態においては絶縁材料、例えば、アルミナにより作られている。ローラコンベヤ30には、その被処理物搬送方向の一方の側から、未処理の被処理物34が載せられた位置決め保持部材36が投入され、処理済みの被処理物34が載せられた位置決め保持部材36が被処理物搬送方向の他方の側において取り出される。被処理物搬送方向をX軸方向、複数のローラ32により構成される搬送平面であって、水平面な一平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向およびY軸方向と直交する方向であって、鉛直方向をZ軸方向とする。被処理物34は、本実施形態においてはローラコンベヤ30への投入側から取出し側へ搬送され、被処理物搬送方向において投入側が上流側、取出側が下流側となる。
【0011】
本プラズマ処理装置においては、被処理物34として、例えば、
図8(a-1),
図8(c-1)に例示する金型34a,34cおよび
図8(b)に例示する液晶基板34bが処理される。金型34aの凹部39内には、成形する製品の形状に対応する凹部41が設けられ、金型34aの表面である被処理面38aは凹凸を有する。凹部41は、横断面積は広いが浅いものである。液晶基板34bは平板状を成し、その被処理面38bは一平面状を成す。金型34cの凹部43内には、成形する製品の形状に対応する凸部45が設けられ、金型34cの表面である被処理面38cは凹凸を有する。凸部45は、凹部41より横断面積が小さいものである。
【0012】
処理装置本体10には、
図1に示すように被処理物搬送装置18より上方に生成・噴出装置昇降装置20が設けられている。生成・噴出装置昇降装置20は、本実施形態においては、可動部材たる昇降部材40と昇降部材駆動装置42とを含む。昇降部材駆動装置42は、駆動源たる電動モータ44と送りねじ機構46とを含み、送りねじ機構46は送りねじ48およびナット(図示省略)を含む。送りねじ48が電動モータ44によって回転させられることにより、昇降部材40が案内装置52を構成するガイドレール54により案内されつつ昇降させられ、Z軸方向において任意の位置へ移動させられ、位置決め保持部材36に接近,離間させられる。電動モータとしては、回転角度の正確な制御が可能な回転電動モータの一種であるエンコーダ付のサーボモータが好適であり、送りねじとしてはボールねじが好適である。
【0013】
昇降部材40には、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12とスリット型処理ガス生成・噴出装置14との一方および加熱空気生成・噴出装置16が搭載される。
図1には、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12が搭載された状態が図示されている。
【0014】
本実施形態においては、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12とスリット型処理ガス生成・噴出装置14とは、処理ガス生成部たる処理ガス生成装置70を共通とし、装置コストの増大が抑制される。そして、
図3に示すように独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は固有の噴出部であって、独立開口型噴出部たる独立開口型噴出装置72を含み、
図6に示すように、スリット処理ガス生成・噴出装置14は固有の噴出部であって、スリット型噴出部たるスリット型噴出装置74を含む。
【0015】
処理ガス生成装置70は、その本体である処理ガス生成装置本体80(
図1参照)において昇降部材40に、固定手段の一種である複数のボルトにより着脱可能に取り付けられている。
図3に示すように処理ガス生成装置本体80内には複数、例えば、2本の電極84,86がZ軸方向に延びる姿勢で、Y軸方向に間隔を隔てて設けられ、それら電極84,86の間に放電空間88が設けられている。放電空間88には、処理ガス生成装置本体80の上部に設けられた供給口(図示省略)および処理ガス生成装置本体80内に設けられた供給通路を経てガスが供給される。ガスは、例えば、窒素およびドライエアを含むガスとされる。
【0016】
電極84,86への電圧の印加により放電空間88にプラズマが発生させられ、放電空間88に供給されるガスが、プラズマ内に生成された反応種たる酸素ラジカルを含む処理ガスとされる。プラズマとは、放電、すなわち、絶縁破壊により発生させられるものであり、正イオンおよび負イオン等の荷電粒子、ラジカル等の中性粒子、電子等を含み、全体として、電気的に中性のものをいう。反応種とは、本実施形態においては、励起原子、分子等の電気的に中性な中性粒子をいい、例えば、ラジカル等の反応性の高い励起種等をいう。励起とは、エネルギの低い基底状態からエネルギの高い状態に遷移させることをいい、例えば、放電によって原子や分子が励起させられたり、原子や分子とプラズマ中の荷電粒子とが衝突することによって励起させられたりする。また、放電に起因して励起させられることによって得られた反応種は、プラズマ内で生成された反応種である。ラジカルとは、不対電子を有する化学種をいい、遊離基ともいう。
【0017】
処理ガスは処理ガス流出通路90によって放電空間88から流出させられる。処理ガス流出通路90は、少なくとも1本、例えば複数、本実施形態においては4本、Y軸方向において適宜の間隔を隔てて、本実施形態においては等間隔を隔てて一列に設けられている。各処理ガス流出通路90は、放電空間88からX軸方向に平行に、被処理物搬送方向において上流側へ延び出させられ、処理ガス生成装置本体80の外側面に開口させられるとともに、その途中で下方へ鉛直に延び出させられ、処理ガス生成装置本体80の下面に開口させられている。
【0018】
処理ガス生成装置本体80には、処理ガス流出通路90が開口させられた上記外側面に放熱部92が設けられ、処理ガス流出通路90の開口を閉塞している。
図2に示すように、放熱部92は、本実施形態においては、Y軸方向に間隔を隔てて設けられた複数の板状のフィン94を含む。処理ガス生成装置本体80にはまた、
図4に示すようにアース部材96が取り付けられ、接地されている。
【0019】
図5に示すように、独立開口型噴出装置72の本体である独立開口型噴出装置本体100はブロック状を成し、ボルト102によって処理ガス生成装置本体80の下面に着脱可能に固定される。独立開口型噴出装置72の取付け,取外しは作業者により行われる。
図3に示すように、独立開口型噴出装置本体100内には接続部104および処理ガス流出通路106が設けられている。接続部104は、独立開口型噴出装置本体100の上面に開口し、Y軸方向に平行に延びる長手形状の凹部状を成し、独立開口型噴出装置本体100の被処理物搬送方向において上流側の端部に設けられている。
【0020】
処理ガス流出通路106は、少なくとも1本、例えば複数、本実施形態においては6本設けられている。これら処理ガス流出通路106は、Y軸方向に適宜の間隔を隔てて、本実施形態においては等間隔に一列に設けられ、
図4に示すように接続部104のX軸方向において被処理物搬送方向の上流側の部分からZ軸方向において下向きに延び出させられ、独立開口型噴出装置本体100の下面に開口させられている。これらの開口は互いに独立した処理ガス噴出口たる独立開口108を構成し、
図3に示すように6個の独立開口108がY軸方向に平行な一直線上に等間隔を隔てて並び、独立開口列110を構成している。本実施形態においては、独立開口108の直径は1.2mmとされ、6個の独立開口108の形成ピッチ(隣接する2個の独立開口108の中心間距離)は4mmとされている。
【0021】
図3に示すように独立開口型噴出装置72が処理ガス生成装置本体80に固定された状態では、4本の処理ガス流出通路90の全部が接続部104の被処理物搬送方向において下流側の部分に開口する状態となる。処理ガスは処理ガス流出通路90,接続部104および処理ガス流出通路106を通り、6個の独立開口108から鉛直方向において下方へ噴出され、
図4に示すように、独立開口型噴出装置72の被処理物搬送方向において上流側の部分から噴出される。
【0022】
図7に示すように、スリット型噴出装置74の本体であるスリット型噴出装置本体120は、本実施形態においては、複数、例えば2つの本体構成部材122,124が一体的に組み付けられて成り、
図6に示すように、接続部130およびスリット状通路132が形成されている。接続部130は、スリット型噴出装置本体120の上面に開口し、Y軸方向に延びる長手形状の凹部状を成す。スリット状通路132は、Y軸方向に長く、上端が接続部130の、被処理物搬送方向において上流側の端部に開口し、下端がスリット型噴出装置本体120の下面の、被処理物搬送方向において上流側の端部に開口させられている。スリット状通路132の下面開口が、Y軸方向に平行な一直線に沿って延びる処理ガス噴出口たるスリット状開口144を構成している。
【0023】
スリット型噴出装置本体120は独立開口型噴出装置本体100と同じ形状,寸法を有し、接続部130は接続部104と同じ形状,寸法を有し、スリット型噴出装置本体120に、接続部104の独立開口型噴出装置本体100に対する位置と同じ位置に形成されている。また、本実施形態においては、スリット状開口144の開口面積は、6個の独立開口108の各開口面積の和より大きくされている。スリット型噴出装置本体120は処理ガス生成装置本体80の下面にボルト102により、独立開口型噴出装置本体100と同じ位置に固定される。スリット型噴出装置72の取付け,取外しは、作業者により行われる。スリット型噴出装置本体120の固定により4本の処理ガス流出通路90は接続部130に連通させられ、処理ガスはスリット状通路132を通ってスリット状開口144から下方(鉛直方向真下)へ、Y軸方向に延びる帯状に噴出される。
【0024】
図4は、独立開口型噴出装置72が処理ガス生成装置70に取り付けられた状態を正面から見た状態を示す図であるが、独立開口型噴出装置72,スリット型噴出装置74を処理ガス生成装置70に取り付けた状態において、処理ガス生成装置70に対する接続部104および独立開口列110の位置と接続部130およびスリット状開口144の位置とは同じであり、両方の符号を付して示すこととする。独立開口型噴出装置本体100およびスリット型噴出装置本体120は、処理ガス生成装置本体100にボルト102によって固定されることにより、処理ガス生成装置本体100の下面に密着させられ、それらの間からの処理ガスの漏れが防止される。
【0025】
独立開口型噴出装置72とスリット型噴出装置74とは択一的に処理ガス生成装置70に取り付けられ、処理ガス生成装置70への独立開口型噴出装置72の取付けにより、独立開口型処理ガス生成・噴出部たる独立開口型処理ガス生成・噴出装置12が構成され、スリット型噴出装置74の取付けにより、スリット型処理ガス生成・噴出部たるスリット型処理ガス生成・噴出装置14が構成される。取付状態において独立開口108とスリット状開口144とのZ軸方向における位置は同じになる。
【0026】
図2に示すように加熱空気生成・噴出装置16はヒータ150を備え、加熱気体たる空気を加熱して噴出する。ヒータ150は、ブラケット152,154,156により処理ガス生成装置本体80の、被処理物搬送方向において上流側の外側面に着脱可能に固定されている。ヒータ150は、コイル状の発熱体が管、例えば、石英管に収容されて長手形状を成す発熱部160を有し、発熱部160の長手方向の一端部である下端部に加熱空気噴出部162が設けられている。
図5に示すように加熱空気噴出部162は扁平な板状とされており、その厚さ(X軸方向に沿う方向の寸法)は、発熱部160の外径より小さくされている。加熱空気噴出部162の内部に設けられたスリット状の通路164は、発熱部160に連通させられるとともに、加熱空気噴出部162の下面に開口させられている。この開口が加熱空気噴出口166を構成し、加熱空気が下方へ噴出される。加熱空気噴出口166はY軸方向に長く、Y軸方向において、独立開口型噴出装置72およびスリット型噴出装置74によりそれぞれ噴出される処理ガスの被処理面への到達領域全体を加熱することができる長さを有するものとされている。
【0027】
ヒータ150は、
図2に示すように発熱部160の上端部をホルダ168により保持され、処理ガス生成装置本体80にボルト(図示省略)によって着脱可能に固定されたブラケット152によりホルダ168が保持される。図示は省略するが、ホルダ168から発熱部160内に電源線(図示省略)が挿入され、コイルに電圧が印加される。ヒータ150はまた、その長手方向の中間部において、ボルトにより処理ガス生成装置本体80に着脱可能に固定されたブラケット154,156によって保持されている。なお、ヒータ150は、カバー170,172により覆われている。カバー170,172はボルトによって処理ガス生成装置本体80に固定され、着脱可能である。
【0028】
ヒータ150は、作業者によるブラケット152,154,156の処理ガス生成装置本体80に対する取付け,取外しにより処理ガス生成装置本体80に取付け,取外しされる。加熱空気生成・噴出装置16は、処理ガス生成・噴出装置12,14とは別体に構成され、互いに分離可能であるのであり、処理ガス生成・噴出装置12あるいは14を介して昇降部材40に着脱可能に、独立開口108あるいはスリット状開口144と加熱空気噴出口166とが、被処理物搬送方向に平行な一方向に並ぶ状態で保持され、処理ガス生成・噴出装置12あるいは14と一体的に被処理物34に接近,離間させられる。本実施形態においては昇降部材40が生成・噴出部保持体を構成し、生成・噴出装置昇降装置20が接近・離間装置を構成している。昇降部材40と生成・噴出部保持体とが一体的に設けられていると考えることもできる。
【0029】
図2に示すように、ヒータ150は、その全体が処理ガス生成・噴出装置12(スリット型噴出装置74が処理ガス生成装置70に取り付けられた状態では処理ガス生成・噴出装置14)に対して傾斜した姿勢で取り付けられている。鉛直な処理ガス噴出方向に対して、加熱空気噴出方向が傾斜させられているのであり、
図4に示すように、独立開口108あるいはスリット状開口144と加熱空気噴出口166とのZ軸方向の位置が同じにされるとともに、加熱空気噴出口166からの加熱空気の噴出方向と、開口108,144からの処理ガスの噴出方向とが、開口108,144と加熱空気噴出口166との中心間距離(以後、場合によって、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離と称する。)Xより、処理ガスと加熱空気とが被処理物34の被処理面38にそれぞれ到達する両到達領域の中心間距離(以後、場合によって、到達領域中心間距離と称する。)X´が小さくなる向きに互いに交差させられている。なお、「到達領域の中心」は、独立開口列110の中心あるいはスリット状開口144の中心や、加熱空気噴出口166の中心から、各噴出方向に平行に延びる直線と被処理面38との交点とする。加熱空気噴出方向の処理ガス噴出方向に対する傾斜角度は、本実施形態においては、上記のように中心間距離Xより中心間距離X´が小さくなる向きの傾斜を負として規定される。
【0030】
このように加熱空気噴出方向が処理ガス噴出方向に対して傾斜させられることが望ましい。加熱空気生成・噴出装置に比較して処理ガス生成・噴出装置の方が構造が複雑であり、加熱空気噴出方向を傾斜させる方が容易であり、また、処理ガスは被処理面に対して直角な方向から噴き付けた方が、斜めから噴き付けるよりも片寄りなく噴き付けることができるからである。
【0031】
上記処理装置本体10,処理ガス生成・噴出装置12,14,加熱空気生成・噴出装置16,被処理物搬送装置18,生成・噴出装置昇降装置20等は、
図1に示すようにハウジング174により覆われ、処理時に発生する騒音の漏れや、処理中における作業者と被処理物や装置との接触等が防止されている。本プラズマ処理装置において被処理物の加熱,処理ガスの噴付けは大気圧雰囲気中で行われるため、ハウジング174は、処理が低圧雰囲気中で行われる場合のように気密な空間を形成するものとしなくてよく、プラズマ処理装置の構成、特にハウジング174の構成が簡単になるとともに、被処理物の搬入,搬出が容易となる。
【0032】
前記制御装置22はコンピュータを主体として構成され、駆動回路を介してローラコンベヤ30,電動モータ44,処理ガス生成装置70,ヒータ150等を制御する。
図1に示すように、コンピュータには電動モータ44に設けられた回転量検出装置たるエンコーダ180および距離センサ182が接続されている。距離センサ182は、処理装置本体10の被処理物搬送方向において昇降部材40の上流側であって、加熱空気生成・噴出装置16の上流側に設けられ、被処理物34の被処理面38までの距離を検出する。本実施形態においては、距離センサ182は、例えば、レーザ変位センサにより構成されている。レーザ変位センサは、レーザビーム発生器が発生するレーザビームを投光光学系により集光して被処理面38に照射し、その反射光を受光光学系により半導体位置検出素子上に集光し、反射光集光位置をアナログ演算回路において演算するように構成されたものである。被処理面38の高さ方向の位置によって半導体位置検出素子上の集光位置が変わることから、その集光位置の演算により距離センサ182と被処理面38との間の距離が得られる。本実施形態においては、距離センサ182が距離検出部を構成している。
【0033】
以上のように構成されたプラズマ処理装置においては、被処理物34が搬送されつつ、被処理面38の加熱および処理ガスの噴付けが行われる。独立開口型処理ガス生成・噴出装置12あるいはスリット型処理ガス生成・噴出装置14および加熱空気生成・噴出装置16は、ローラコンベヤ30により搬送される被処理物34の上方に位置し、被処理物搬送方向において処理ガス生成・噴出装置12,14の上流側に設けられた加熱空気生成・噴出装置16の加熱空気噴出口166は、独立開口108あるいはスリット状開口144に先行して被処理面38に対向し、処理ガスの噴付けに先立って被処理面38を加熱する。それにより、処理ガスの噴付けによる処理、例えば、被処理面38の汚れの除去や親水性の向上処理の効果が高められる。
【0034】
処理ガスの噴付けには、独立開口型噴出装置72とスリット型噴出装置74とが択一的に使用される。放電空間88において発生させられた処理ガスは、独立開口型噴出装置72においては、6本の処理ガス流出通路106を通り、6個の独立開口108からそれぞれ棒状に噴出させられ、スリット型噴出装置74においてはスリット状通路132を通り、スリット状開口144から帯状に噴出させられる。そして、噴出装置72,74において処理ガスの毎分の使用量は同じにされ、独立開口108から噴出されるプラズマの方が、スリット状開口144から噴出されるプラズマより遠くまで届き、プラズマ到達可能距離が長い。プラズマ到達可能距離は実験により取得され、現実に、独立開口108の方が噴出されるプラズマの到達可能距離が長い。その理由は、前述のように、本実施形態においてはスリット状開口144の開口面積が6個の独立開口108の各開口面積の和より大きくされているため、開口108,144から噴出する処理ガスの流速が独立開口108の方がスリット状開口144より速く、遠くへ飛ぶことによると推定される。
【0035】
プラズマ到達可能距離を取得する実験は、被処理物としてガラス板を使用し、ガラス板の一平面状の表面である被処理面に処理ガスを噴き付け、処理効果を測定することにより行われる。処理効果は、例えば、ガラス板表面の複数個所に水滴を垂らし、各水滴の接触角を接触角計(例えば、協和界面科学株式会社製)により測定し、それらの平均値を求め、濡れ性(親水性)を検出することにより取得する。独立開口型噴出装置72とスリット型噴出装置74との各々について、開口108,144と被処理面との間の距離(以後、場合によって処理ガス噴出口・被処理面間距離と称する)を複数種類に異ならせ、ガラス板を搬送しつつ処理ガスを噴き付けて処理効果を測定し、設定値以下の平均接触角が得られる場合の処理ガス噴出口・被処理面間距離のうちの最大距離をプラズマ到達可能距離とする。また、搬送速度を複数種類に異ならせ、各速度毎にプラズマ到達可能距離を取得する。
【0036】
その結果、ガラス板の搬送速度の大きさに関係なく、独立開口型噴出装置72についてスリット型噴出装置74より長いプラズマ到達可能距離が得られた。また、独立開口型噴出装置72でもスリット型噴出装置74でも、被処理物の搬送速度を遅くした方が長いプラズマ到達可能距離が得られた。さらに、独立開口型噴出装置72により処理ガスを噴き付けるのに先立ってヒータ150により被処理面を加熱したところ、加熱を行わない場合より長いプラズマ到達可能距離が得られ、非加熱時と同じプラズマ到達可能距離であれば、被処理物搬送速度を速くすることができる結果が得られた。
【0037】
したがって、被処理面が凹凸を有する被処理物の処理には独立開口型噴出装置72が適しており、本実施形態においては金型34a,34cの処理には独立開口型噴出装置72が使用される。被処理面に凹凸があり、処理ガス噴出口・被処理面間距離が一定でない場合、プラズマ到達可能距離が短ければ、被処理面に処理ガスが届かない部分が生じるのに対し、プラズマ到達可能距離が長ければ、処理ガス噴出口・被処理面間距離の差の影響が緩和され、処理ガスを噴き付けることができるからである。また、搬送速度を抑えつつ、被処理面38aの加熱が行われてプラズマ到達可能距離が長くされ、凹凸による処理ガス噴出口・被処理面間距離の違いに確実に対応し得るようにされる。さらに、処理ガス噴出口・被処理面間距離が長いため、6個の独立開口108の各々から噴出される処理ガス中のプラズマが拡散により、被処理面近傍において交わり、独立開口108の並び方向において被処理面にほぼ均一な帯状に噴き付けられる。
【0038】
それに対し、被処理面が凹凸のない一平面状を成すのであれば、プラズマ到達可能距離は長くなくてよく、本実施形態においては液晶基板34bの処理にはスリット型噴出装置74が使用される。この際、被処理面38bの加熱は行われない。凹凸による処理ガス噴出口・被処理面間距離の変化に対応しなくてよく、加熱によりプラズマ到達可能距離を延ばさなくてよいからである。スリット型噴出装置74によれば、処理ガスが被処理面38bに帯状に噴き付けられ、スリット状開口144の長手方向において均一に処理ガスが噴き付けられる。
【0039】
前記ヒータ150により被処理面を加熱するに当たり、その噴出方向の傾斜角度θ,処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xおよび到達領域中心間距離X´は、予め実験により得られたデータに基づいて設定されている。実験は、被処理物としてガラス板を使用し、処理ガス噴出装置として独立開口型噴出装置72を使用し、処理ガス噴出口・被処理面間距離Zは、実験により取得した複数種類のプラズマ到達可能距離のうち最大の距離とし、その最大プラズマ到達可能距離が得られる際の搬送速度によりガラス板を搬送して行った。また、加熱空気噴出口166から噴出される加熱空気の流量は、独立開口108から噴出される処理ガスの流量より少なくした。
【0040】
そして、まず、ヒータ150を傾けず、処理ガス噴出方向および加熱空気噴出方向がいずれも鉛直方向において下向きとなる状態で、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを複数種類に異ならせ、それぞれガラス板の被処理面を加熱した後、処理ガスを噴き付け、処理効果を測定した。その結果を
図9のグラフに示す。
【0041】
図9のグラフから明らかなように、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを限界値、すなわち独立開口型処理ガス生成・噴出装置12全体と加熱空気生成・噴出装置16(ヒータ150)全体とを、鉛直な姿勢で、それらの装置構成上、最も近づけ得る位置まで近づけた状態における距離とした場合に平均接触角が最も小さくなり、高い処理効果が得られる。処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを限界値よりやや大きくすれば、平均接触角が急増し、その後は処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを増大させれば平均接触角は増大するが、その勾配は緩やかである結果が得られた。それにより処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xは限界値およびそれに近い距離とすることが望ましいことがわかる。
【0042】
その理由は、本プラズマ処理装置においては、被処理面の加熱および処理ガスの噴付けは大気圧下で(大気中で)行われるため、被処理面の加熱後、処理ガスの噴付けまでの間に被処理面の温度が低下するが、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xが短いほど、加熱から処理ガス噴付けまでの時間が短く、被処理面の温度低下が少なくて済み、処理効果が向上することによると考えられる。
【0043】
また、加熱空気噴出方向の処理ガス噴出方向に対する傾斜角度を複数種類に異ならせ、それぞれガラス板表面の加熱,処理ガスの噴付けを行い、各場合について水滴の平均接触角を取得する実験を行った。なお、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xおよび到達領域中心間距離X´は、上記限界値とは関係なく設定した。この実験により、
図10のグラフに示すように、負の値で規定される傾斜角度が大きい領域において平均接触角が小さく、傾斜角度を小さくすれば、平均接触角が急増する結果が得られた。傾斜角度0は、処理ガス噴出方向と加熱空気噴出方向とが平行な状態であり、傾斜角度が正の状態は、加熱空気噴出方向が処理ガス噴出方向に対して、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xが到達領域中心間距離X´より小さくなる方向に傾斜させられた状態である。
【0044】
この実験の結果から、ヒータ150を傾斜させれば処理効果は向上するが、大きく傾斜させればよいわけではなく、適切な傾斜角度範囲があることがわかる。その理由は、次のように考えられる。加熱空気噴出方向の傾斜角度が0の状態から負となる方向にヒータ150を傾ければ、到達領域中心間距離X´が処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xより短くなり、加熱から処理ガス噴付けまでの時間を短くすることができ、被処理面の温度低下が少なくて済み、処理効果が向上する。しかし、ヒータ150を傾け過ぎれば、加熱空気噴出方向が処理ガス噴出方向に対して直角に近くなって処理ガスを噴き飛ばし、処理ガスの量が不足して処理効果が低下すると考えられるのである。
【0045】
加熱空気は処理ガスに向かって噴出されるため、ヒータ150の傾きが小さくても加熱空気が処理ガスを噴き飛ばす恐れはあるが、加熱空気の流量が処理ガスの流量より少なくされることにより処理ガスの噴飛ばしが回避され、傾斜角度の適切な設定により、到達領域中心間距離X´を小さくすることによる処理効果向上効果が得られる。加熱空気の流量を処理ガスの流量より少なくする特徴は、加熱空気噴出方向と処理ガス噴出方向とを、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xより到達領域中心間距離X´が小さくなる向きに交差させる特徴と組み合わせて特に有効なのである
【0046】
これらの実験結果に基づき、さらに3つの実験を行った。1つは、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを、加熱空気噴出方向を傾斜させない場合の限界値とし、加熱空気噴出方向の傾斜角度θを複数種類に異ならせてガラス板表面の加熱,処理ガスの噴付けを行い、各々の場合について水滴の平均接触角を取得する実験である。傾斜角度θは、先に傾斜角度θを複数種類に異ならされて行った実験の結果、小さい平均接触角が得られる範囲において異ならせた。その結果を
図11のグラフに示す。処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを一定とした場合、傾斜角度θを変えることにより到達領域中心間距離X´が変わり、傾斜角度θを小さくするほど(負の値であるため、絶対値が大きくなるほど)到達領域中心間距離X´が小さくなって平均接触角が小さくなることがわかる。
【0047】
別の1つの実験は、到達領域中心間距離X´を、加熱空気噴出方向を傾斜させない場合における限界値とし、加熱空気噴出方向の傾斜角度θを複数種類に異ならせて行ったものである。その結果も
図11のグラフに示す。この場合、加熱空気噴出方向を大きく傾けるほど、平均接触角が大きくなる。これは、到達領域中心間距離X´が一定であるため、加熱空気噴出方向を傾斜させれば、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xが大きくなり、加熱空気がガラス板表面に届くまでの距離が大きくなって被処理面の加熱が不足して温度が低下することによると考えられる。
【0048】
さらに、別の1つの実験は、傾斜角度θを、
図10のグラフに示す実験の結果、平均接触角が最少となった場合の大きさとし、到達領域中心間距離X´を複数種類に異ならせて行ったものである。その結果を
図12のグラフに示す。このグラフからも、到達領域中心間距離X´が小さいほど処理効果が向上することがわかる。到達領域中心間距離X´の限界値は、加熱空気の噴出が処理ガスの噴付けの邪魔をしない範囲、すなわち加熱空気到達領域が処理ガス到達領域と干渉しない範囲において最少の距離である。加熱空気噴出方向を傾斜させない場合、ヒータ150の独立開口型処理ガス生成・噴出装置12への接近は放熱部92により制限されるのに対し、ヒータ150を傾斜させれば、
図4に示すように、発熱部160より厚さが薄い加熱空気噴出部162が放熱部92の下方に入り込む。そのため、ヒータ150を鉛直に設ける場合より、加熱空気噴出口166を独立開口108に近付けることができる。したがって、到達領域中心間距離X´の限界値は、処理ガス・加熱空気噴出口中心間距離Xを加熱空気噴出方向を傾斜させない場合の限界値とし、ヒータ150を、本実験の傾斜角度θと同じ角度、傾斜させた場合の到達領域中心間距離X´より小さく、上記1つめの実験により得られる最少の平均接触角より小さい平均接触角が得られる。
【0049】
以上の実験の結果に基づいて、本実施形態においては、前述のように、加熱空気噴出方向の処理ガス噴出方向に対する傾斜角度θは負の値であって、
図12のグラフに示す実験を行った場合の大きさである−20度とされ、中心間距離X´は、その場合の限界値である7.5mmとされている。また、処理ガス噴出口・被処理面間距離Zは、独立開口型噴出装置72に得られる最大のプラズマ到達可能距離とされ、搬送速度は、その最大プラズマ到達可能距離が得られる際の速度とされる。なお、被処理面の温度は加熱時間、すなわち対象物の搬送速度によって変わるため、到達領域中心間距離X´は一概には規定されない。搬送速度が遅ければ加熱時間が長く、被処理物が内部まで加熱されて温度が下がり難く、到達領域中心間距離X´が長くても被処理面が加熱された状態で処理ガスを噴き付けて処理することができる。また、搬送速度が速ければ加熱時間が短いが、到達領域中心間距離X´を短くすることにより、被処理面が加熱された状態で処理することができるのである。
【0050】
金型34a,34cの被処理面38a,38cの処理を説明する。この場合には独立開口型噴出装置72が処理ガス生成装置本体80に取り付けられる。金型34aは位置決め保持部材36に保持されて搬送され、加熱空気生成・噴出装置16から独立開口型処理ガス生成・噴出装置12に向かう向きに搬送される。搬送方向において上流側に位置する加熱空気生成・噴出装置16の加熱空気噴出口166は、独立開口108に先行して被処理面38aに対向し、被処理面38aには処理ガスの噴付けに先立って加熱空気が噴き付けられる。そして、被処理面38aは加熱により温度が高くされた状態で処理ガスが噴き付けられ、汚れが除去される。金型34cについても同様である。
【0051】
図8(a-1)に示すように金型34aは凹部39を備えるとともに、凹部39内には凹部41が設けられ、被処理面38a(金型34aの縁部の端面を含む)が凹凸を有するため、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は被処理面38aの凹凸に沿って昇降させられ、独立開口108と被処理面38aとの間の距離が予め設定された距離とされた状態で処理ガスの噴付けが行われるようにされる。但し、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は被処理面38aの凹凸の全部に逐一沿って昇降させられるのではなく、概ね沿って移動させられる。処理ガスは独立開口108から棒状に噴出され、プラズマ到達可能距離が長いため、小さい凹凸の存在による処理ガス噴出口・被処理面間距離の変化の影響が緩和されるからであり、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12の昇降制御が簡単になる。金型34cについても同様である。
【0052】
そのため、本実施形態においては、被処理面38a,38cのうち、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12を、独立開口108と被処理面38a,38cとの間の距離が設定距離となる位置に位置させる面が予め設定され、基準面ないし目標面としてコンピュータに入力され、記憶させられている。基準面により、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12の被処理物34に対する相対移動経路が接近・離間方向および相対移動装置による相対移動方向において規定される。基準面は、被処理物の形状,寸法に応じてコンピュータにより自動的に設定されるようにすることも可能であるが、ここでは、説明の簡単化のために、作業者により決められるものとし、かつ、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12が金型34a,34cの縁には当たらない高さで昇降させられる。作業者は被処理物の形状,寸法に基づいて基準面を設定するのであり、例えば、金型34aについては、その縁部の端面と、凹部39の底面との高さの差は大きいのに対し、凹部41は横断面積は広いが浅く、凹部41の周囲の部分との高さの差が小さいため、周囲の部分と同様にプラズマが十分届くと作業者が判断し、
図8(a-2)に太線で示すように被処理面38aについては、金型34aの縁部の端面と凹部39の底面の凹部41が形成されていない部分の面とを含む面を基準面184とする。また、金型34cについては、凸部45は横断面積が小さいため、凸部45の周囲の部分と同様にプラズマ処理されると作業者が判断し、
図8(c-2)に太線で示すように被処理面38cについては、金型34cの縁部の端面と凹部43の底面の凸部45が形成されていない部分の面とを含む面を基準面186とする。
【0053】
基準面184,186は、その被処理物搬送方向に平行な方向の位置と、その位置における金型34a,34cの下面に対する高さとが対応付けられた基準面データにより規定される。被処理物搬送方向に平行な方向の位置は、被処理物34の搬送方向において下流側の端を原点として決められる。金型34aの凹部41の底面については、その搬送方向に平行な方向の位置に対して凹部39の底面の凹部41が形成されていない部分の高さが対応付けられ、基準面データとして記憶させられることとなる。また、金型34cの凸部45については、その搬送方向に平行な方向の位置に対して、凹部43の底面の凸部45が形成されていない部分の高さが対応付けられ、基準面データとして記憶させられる。本実施形態においては、位置決め保持部材36の被処理物34の下面を支持する支持面が上下方向の位置の基準とされているのである。
【0054】
金型34aがプラズマ処理装置に搬入されれば、距離センサ182により、距離センサ182と被処理面38aとの間の距離が検出される。この検出距離から、被処理面38aの距離センサ182により距離を検出される部分の金型34aの下面からの高さが得られる。距離センサ182およびローラコンベヤ30は処理装置本体10に設けられて上下方向の位置が不変であり、位置決め保持部材36により保持されて搬送される被処理物34の被処理面38と距離センサ182との間の距離は、被処理面38の高さにより決まるからである。また、距離センサ182と独立開口108とは被処理物搬送方向に平行な方向において離れているが、その離間距離および被処理物搬送速度により、被処理面38aの距離センサ182により距離を検出された部分が、距離センサ182により距離を検出される位置である距離検出位置から独立開口108の下方の位置に至るまでに要する時間が得られ、被処理面38aの距離センサ182により距離を検出された部分の独立開口108の下方への到達がわかる。
【0055】
高さの検出により、被処理面38aの被処理物搬送方向において下流側の端であって、金型34aの処理ガス噴付け開始端が検出され、その開始端が独立開口108の下方に到達すれば、以後、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は金型34aに対して上下方向において、基準面データおよび設定された処理ガス噴出口・被処理面間距離により決まる位置に位置させられる。それにより、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は金型34aの凹部39の縁部の上方を通過した後に下降させられ、その縁部より低い位置にある凹部39の底面に接近させられて処理ガスを噴き付け、処理ガス噴付け効果を得ることができる。しかし、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は凹部41に対応して昇降させられることはなく、独立開口108は、
図8(a-2)に二点鎖線で示すように被処理面38aに概ね沿った状態で相対移動させられ、処理ガスを噴き付ける。金型34cについても同様に、独立開口型処理ガス生成・噴出装置12は凸部45に対応して昇降させられることはなく、
図8(c-2)に二点鎖線で示すように被処理面38cに概ね沿った状態で処理ガスを噴き付ける。距離センサ182は、金型34a,34cの下流側端の検出後は、金型34a,34cが通過するまで距離の検出は行わず、通過後、検出を再開し、後続の金型34a,34cの下流側端を検出する。金型34a,34cの通過は、金型34a,34cの寸法によりわかる。
【0056】
独立開口108から棒状に噴出される処理ガスは、プラズマ到達可能距離が長く、凹部39,43内の凹凸いずれの面にも届き、被処理面38が処理される。被処理面38a,38cには凹凸があり、水平な一平面ではなく、鉛直方向において下向きの処理ガス噴出方向は、概して被処理面に沿う方向に直角であることとなる。本実施形態においては制御装置22のコンピュータの距離センサ182の距離検出に基づく被処理物34の処理ガス噴付け開始端の検出,基準面データおよび設定された処理ガス噴出口・被処理面間距離に基づいて電動モータ44を制御する部分が、接近・離間制御部ないし被処理面追従部を構成している。
【0057】
液晶基板34bの被処理面38bの処理を説明する。この場合には、スリット型噴出装置74が処理ガス生成装置本体80に取り付けられる。スリット型処理ガス生成・噴出装置14による処理時には、被処理物の被処理面の加熱は行われない。加熱空気生成・噴出装置16は処理ガス生成装置本体80から取り外してもよく、取り付けたままとしてもよい。処理ガス噴出口・被処理面間距離Zは、スリット型噴出装置74に得られるプラズマ到達可能距離および液晶基板34bの搬送速度に基づいて設定される。そして、昇降部材40の昇降により、スリット状開口144が、処理ガス噴出口・被処理面間距離Zが設定距離となる位置に位置させられる。液晶基板34bは位置決め保持部材36に収容され、搬送されつつスリット型噴出装置74から噴出される処理ガスが噴き付けられ、被処理面38bが処理される。なお、スリット型処理ガス生成・噴出装置14による処理ガスの噴付け時にも、処理ガスの噴付けに先立って被処理面の加熱を行ってもよい。
【0058】
別の実施形態を
図13に基づいて説明する。
本実施形態の大気圧プラズマ処理装置(以後、プラズマ処理装置と略称する)は、
図13に概略的に示すように、生成・噴出装置昇降装置200の生成・噴出部保持体たる昇降部材201に処理ガス生成・噴出装置202が設けられるとともに、その両側にそれぞれ加熱空気生成・噴出装置204,206が設けられている。
【0059】
処理ガス生成・噴出装置202は処理ガス生成装置210および処理ガス噴出装置212を備え、加熱空気生成・噴出装置204,206はそれぞれ発熱部220および加熱空気噴出部222を備えている。各発熱部220は、長手方向が鉛直となり、処理ガス生成・噴出装置202と平行な姿勢で設けられている。また、各加熱空気噴出部222は発熱部220の下端部に設けられ、処理ガス噴出装置212側へ延び出させられた後、鉛直方向において下方へ延び出させられている。本実施形態においては、加熱空気噴出部222が曲げられることにより加熱空気噴出部222が処理ガス噴出装置212に接近させられ、処理ガス噴出方向と加熱空気噴出方向とが平行であって、鉛直方向において下向きとされており、加熱空気が処理ガスを噴き飛ばす恐れがない。また、処理装置本体224には、被処理物搬送方向に平行な方向において加熱空気生成・噴出装置204,206のそれぞれ、処理ガス生成・噴出装置202とは反対側の部分に距離センサ226,228が設けられている。その他の構成は前記実施形態と同じであり、対応する構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。
【0060】
本プラズマ処理装置において、例えば、前記金型34aのように、被処理面が凹凸を有する被処理物230を処理する場合、処理ガス生成・噴出装置202として独立開口型処理ガス生成・噴出装置が使用され、被処理物230が被処理物搬送装置18により往復移動させられて処理が行われる。被処理物230の往方向への移動時、ここでは被処理物搬送方向に平行な方向において被処理物投入装置が設けられた側から被処理物取出装置が設けられた側への移動時には、加熱空気生成・噴出装置204,206のうち、往方向において処理ガス生成・噴出装置202の上流側の加熱空気生成・噴出装置204により、加熱空気噴出部222の加熱空気噴出口から加熱空気が被処理面に噴射され、加熱される。加熱空気噴出部222は、処理ガス噴出装置212に近接させられており、被処理面には加熱後、直ちに処理ガス噴出装置212の処理ガス噴出口から処理ガスが噴き付けられる。また、加熱空気生成・噴出装置204の上流側の距離センサ226による距離の検出に基づいて被処理物230の下流側端が検出され、昇降部材201が基準面データおよび設定された処理ガス噴出口・被処理面間距離に従って昇降させられ、処理ガス噴出装置212が被処理面232に概ね沿って処理ガスの噴付けが行われる。
【0061】
被処理物208の往方向の移動により被処理面全部が処理されたならば、被処理物208は逆方向、ここでは被処理物取出装置側から被処理物投入装置側へ搬送される。この逆方向であって復方向の搬送時には、搬送方向において処理ガス生成・噴出装置202の上流側に位置する加熱空気生成・噴出装置206の加熱空気噴出部222の加熱空気噴出口から加熱空気が噴出され、処理ガスの噴付けに先立って被処理面が加熱される。また、加熱空気生成・噴出装置206の上流側の距離センサ228による距離の検出に基づく被処理物230の下流側端の検出,処理ガス生成・噴出装置202の高さ方向の位置調節が行われる。このように被処理物230が往復移動させられ、被処理面232が2回、処理されることにより、凹凸のある被処理面の全体が漏れなく十分に処理される。被処理物を3回以上、処理することも可能である。また、被処理物搬送方向において処理ガス生成・噴出装置202の下流側の加熱空気生成・噴出装置に加熱空気を噴出させ、処理後の被処理面を加熱し、温度低下を防止して処理ガス噴付けにより起こる化学反応が促進されるようにしてもよい。プラズマの失活を遅らせるためには、噴出されたプラズマを加熱気体、特に不活性ガス、例えば、窒素ガスにより囲むことが理想であるが、被処理物208の搬送方向において処理ガス生成・噴出装置202の両側に加熱空気生成・噴出装置204,206を設け、被処理物208の処理の前後に加熱空気を噴出させれば、プラズマを囲んだ状態に近い状態となり、望ましい。
【0062】
本プラズマ処理装置により前記液晶基板34bのように凹凸のない被処理面を有する被処理物を処理する場合、被処理物は被処理物投入装置側から被処理物取出装置側へ1回、移動させられ、処理ガスの噴付けが1回、行われる。この場合、被処理面38bを加熱するのであれば、設定された被処理物搬送方向において処理ガス生成・噴出装置202の上流側に位置する加熱空気生成・噴出装置204が加熱に使用される。
【0063】
なお、加熱気体生成・噴出装置を1つの発熱部および2つの加熱気体噴出部を有し、発熱部において加熱された加熱気体が2つの加熱気体噴出部の各加熱気体噴出口から択一的に噴出される装置とし、2つの加熱気体噴出口を処理ガス噴出口の両側に設けてもよい。
【0064】
また、処理ガス噴出口の両側に加熱気体噴出口を設ければ、相対移動装置による生成・噴出部保持体と被処理物保持体との相対移動方向を任意に選択できるようにすることも可能である。例えば、相対移動装置が被処理物搬送装置とされ、被処理物搬送方向において一方の側に被処理物投入装置が設けられ、他方の側に被処理物取出装置が設けられる場合、被処理物投入装置および被処理物取出装置が被処理物搬送装置の被処理物搬送方向に隔たった両側のいずれの側に設けられても、それに応じた方向に被処理物を搬送し、被処理面の加熱および処理ガスの噴付けを行うことができる。この場合にも、処理時に処理ガス噴出口の両側の加熱気体噴出口から加熱気体を噴出させれば、処理ガスの噴付け前後における被処理面の加熱により反応が促進され、また、プラズマを加熱気体により囲んだ状態に近い状態が得られることとなり、望ましい。
【0065】
相対移動装置は、生成・噴出部保持体と被処理物保持体とを、概して被処理物の被処理面に平行な平面上において、互いに交差する2方向に相対移動可能なものとしてもよい。それにより、例えば、比較的広い被処理面の処理が可能となる。2方向の一方の相対移動により、移動方向と直角な方向において行われる処理範囲が被処理面より小さい場合、一方の方向の相対移動後、生成・噴出部保持体と被処理物保持体とを他方向に相対移動させて被処理面の未処理部分上に生成・噴出部を位置させ、再び一方の方向に相対移動させて未処理部分に処理を行うことができるからである。相対移動装置は、生成・噴出部保持体と被処理物保持体との一方を2方向に移動させるものとしてもよく、生成・噴出部保持体と被処理物保持体との一方を2方向の一方に移動させ、他方を2方向の他方に移動させるものとしてもよい。
【0066】
生成・噴出部保持体と被処理物保持体との2方向の相対移動と、加熱気体噴出口の処理ガス噴出口の両側における設置とを組み合わせれば、広い被処理面について加熱および処理ガスの噴付けを行う場合、処理を能率良く行うことができる。生成・噴出部保持体と被処理物保持体とを2方向の他方に移動させて未処理部分上に生成・噴出部を位置させた後、2方向の一方において逆向きに移動させる際に被処理面の加熱,処理ガスの噴付けを行うことができるからである。
【0067】
処理ガス生成・噴出部と加熱気体生成・噴出部とは別体に構成され、個々に生成・噴出部保持体に着脱可能に保持されてもよく、処理ガス生成・噴出部と加熱気体生成・噴出部とが一体的に構成されてもよい。この一体の生成・噴出部は、生成・噴出部保持体に対して着脱可能とされてもよく、着脱可能とされなくてもよい。プラズマ処理装置が独立開口型処理ガス生成・噴出部とスリット型処理ガス生成・噴出部との両方を含む場合、それぞれを加熱気体生成・噴出部と一体的に構成してもよく、両処理ガス生成・噴出部が処理ガス生成部を共通とする場合、その共通の処理ガス生成部が加熱気体生成・噴出部と一体的に構成されてもよい。
【0068】
また、独立開口型処理ガス生成・噴出部とスリット型処理ガス生成・噴出部とが択一的に生成・噴出部保持体に取り付けられるようにしてもよい。この場合、両処理ガス生成・噴出部はそれぞれ処理ガス生成部を含むものとされる。
【0069】
接近・離間装置は、生成・噴出部保持体と被処理物保持体とを作業者が手動で段階的あるいは連続的に接近,離間させる装置とされてもよい。
【0070】
駆動源を備えた接近・離間装置は、(1)手動入力に応じて作動するものと、(2)生成・噴出部保持体を予め設定された移動経路に沿って自動的に移動させるものと、(3)被処理面までの距離を計測する距離検出部の検出結果に応じて自動的に作動するものとを含む。(3)の態様は、距離センサの検出値が目標値から設定値以上外れた場合、接近・離間装置が作動するようにすれば、生成・噴出部保持体を被処理面に概ね沿うように移動させることが可能となる。上記(2)および(3)の態様は、独立開口型処理ガス生成・噴出部に適しているが、スリット型処理ガス生成・噴出部に適用してもよい。
【0071】
独立開口型噴出部とスリット型噴出部とは、共通の処理ガス生成部に対して簡易迅速に着脱可能なものであることが望ましい。例えば、噴出部と処理ガス生成部との一方に設けられた係合部と他方に設けられた被係合部とを係合,離脱させることにより着脱されるようにする。ただし、処理ガスの圧力は比較的高いため、その圧力でも処理ガスが漏れないような構造とすることが必要である。
【0072】
加熱気体生成・噴出部および処理ガス生成・噴出部は、処理ガス生成・噴出部全体が加熱気体生成・噴出部に対して傾斜させられてもよく、それらの一方の噴出部のみが傾斜させられてもよい。
【0073】
独立開口型処理ガス生成・噴出部とスリット型処理ガス生成・噴出部とが処理ガス生成部を共通とし、その共通の処理ガス生成部に対して独立開口型噴出部とスリット型噴出部とが択一的に取り付けられる特徴は、加熱気体生成・噴出部を有さないプラズマ処理装置において採用可能である。
【0074】
前記実施形態において放熱部92のフィン94は切り欠かれていなかったが、フィン94の一部を切り欠き、その切欠の中に加熱空気生成・噴出装置16を配設し、処理ガス生成・噴出装置12,14と加熱空気生成・噴出装置16とを互いに近づけるようにしてもよい。
【0075】
被処理物搬送装置は、被処理物を、処理ガス生成・噴出部に対して処理ガス噴出方向に距離を隔てた状態で、処理ガス噴出方向と交差する方向に搬送する装置であればよく、ローラコンベヤに限らず、例えばベルトコンベヤやチェーンコンベヤの採用が可能である。
【0076】
さらに、本発明は、低圧雰囲気中においてプラズマ処理を行う低圧プラズマ処理装置にも適用可能である。