(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、図面に示されたいくつかの図に渡り、同様の参照文字が同様のまたは対応する部品を指している。別記しない限り、「上部」、「下部」、「外方」、「内方」などの用語は、便宜上の単語であり、制限用語と考えるべきではないことも理解すべきである。その上、ある群が、要素の群の少なくとも1つのおよびその組合せを含むと記載されているときはいつでも、その群は、個別または互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつを含んでも、から実質的になっても、またはからなってもよいことが理解されよう。同様に、ある群が、要素の群の少なくとも1つのおよびその組合せからなると記載されているときはいつでも、その群は、個別または互いとの組合せのいずれかで、列挙されたそれらの要素のいくつからなってもよいことが理解されよう。別記しない限り、値の範囲は、列挙されている場合、その範囲の上限と下限の両方、並びにそれらの間の任意の範囲も含む。ここに用いたように、単数形の用語は、別記しない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。また、明細書および図面に開示された様々な特徴は、どの組合せで、また全ての組合せで使用しても差し支えないと理解されよう。
【0010】
ここに用いたように、「ガラス」という用語は、ガラスとガラスセラミックの両方を含む。「ガラス物品」という用語は、ガラスおよび/またはガラスセラミックから全てがまたは部分的に製造された任意の物体をも含むために、最も広い意味で使用される。ここに用いたように、「極薄ガラス」という用語は、別記しない限り、0.4mm、または400マイクロメートル(μm)未満の厚さを有するガラスおよびガラス物品を称する。別記しない限り、全ての濃度はモルパーセント(モル%)で表されている。
【0011】
「実質的に」および「約」という用語は、任意の量的比較、値、測量、または他の表現に起因するかもしれない不確かさの固有の程度を表すために、ここに使用されることがあることに留意されたい。これらの用語は、問題となっている主題の基本的機能に変化を生じずに、量に関する表現が述べられたものからそれによって変化するかもしれない程度を表すためにも使用される。
【0012】
一般に図面を、詳しくは
図1を参照すると、説明図は、特定の実施の形態を説明する目的であって、本開示または付随の特許請求の範囲をそれに制限することは意図されていないことが理解されよう。図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、図面の特定の特徴および特定の図が、明瞭さと簡潔さのために、尺度と図式において誇張されて示されていることがある。
【0013】
電子機器の透明なディスプレイ窓などの用途のための化学強化ガラスの需要が増加し続けており、この分野内の研究は、ガラスの表面での高い圧縮応力(CS)およびイオン交換による深い圧縮層の深さ(DOL)を同時に提供するためにガラス組成を最適化することに焦点を当ててきた。これらのガラスは、従来、0.5mmから1.3mmに及ぶ厚さで製造されており、約0.4mmの厚さを有する民間品質のガラスがいくつか製造されている。
【0014】
しかしながら、装置設計におけるごく最近の傾向のために、より薄い化学強化ガラスを使用する必要が生じた。極薄ガラスの化学強化は特別な難題をもたらす。何故ならば、ガラス表面の積分圧縮応力は、ガラス内部の等しい大きさの積分引張応力により釣り合わされなければならないからである。引張応力が高すぎると、このいわゆる「中央張力」により、ガラス物品が壊滅的に破損することがある。したがって、極薄ガラス(すなわち、0.4mmすなわち400マイクロメートル(μm)未満の厚さを有するガラス)の特徴付けおよび破損態様を理解する必要がある。また、極薄用途に最適化された性質および製造可能性(例えば、損傷抵抗)を有するガラス組成物も必要とされている。特に、極薄ガラスの製造を容易にするために、高温液体状態と低温ガラス状態との間の熱膨張係数における差(ΔCTE)を減少させなければならない。
【0015】
極薄成形、および極薄ガラスを必要とする用途に最適化された性質を有するガラス組成物がここに記載されている。これらの性質は、ガラスの液体状態(「高温CTE」とも称される)とガラス状態の両方の熱膨張係数(CTE)、液相線粘度などの成形関連特性、およびガラスの機械的性能に影響を与える性質(CS、DOL、弾性率またはヤング率)の両方を含む。
【0016】
ここに記載されているガラスは、イオン交換可能であるか、または当業者により他の様式で化学強化される。そのガラス組成物は、いくつかの実施の形態において、以下に限られないが、フュージョンドロー法およびダウンドロー法などの当業者に公知のダウンドロー法を使用して極薄成形を可能にするように設計されている。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、ガラスを比較的短い期間で高い圧縮応力にイオン交換できるように設計されている。
【0017】
ここに記載されているガラスおよびガラス物品は、少なくとも約65モル%のSiO
2および少なくとも約6モル%のNa
2Oを含み、400マイクロメートル(μm)、または0.4mm未満の厚さを有する。
【0018】
いくつかの実施の形態において、ガラスは、Al
2O
3と、Li
2O、K
2O、MgO、CaO、およびZnOの少なくとも1つとを含むアルカリアルミノケイ酸塩ガラスであり、Na
2O+K
2O+Li
2O−Al
2O
3≧0モル%である。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、約7モル%から約16モル%のAl
2O
3、0モル%から約10モル%のLi
2O、約6モル%から約16モル%のNa
2O、0モル%から約2.5モル%のK
2O、0モル%から約8.5モル%のMgO、0モル%から約1.5モル%のCaO、0モル%から約6モル%のZnO、および0モル%から約6モル%のZrO
2を含む。いくつかの実施の形態において、3モル%≦MgO+CaO+ZnO≦4モル%である。
【0019】
ここに記載されたガラス組成物において、SiO
2は、主要なガラス形成酸化物として働き、ガラスの少なくとも約65モル%を占める。このガラスは、いくつかの実施の形態において、約65モル%から約75モル%のSiO
2を含む。SiO
2の濃度は、例えば、タッチスクリーンなどの用途に適した高い化学的耐久性を有するガラスを提供するのに十分に高い。しかしながら、純粋なSiO
2またはより高レベルのSiO
2を含有するガラスの溶融温度(200ポアズ温度、T
200)は、清澄気泡などの欠陥がガラス中に現れる傾向があるので、高すぎる。加えて、SiO
2は、ほとんどの酸化物と比べて、イオン交換により生じる圧縮応力を低下させる。
【0020】
ここに記載されているガラスの、いくつかの実施の形態において、約7モル%から約16モル%の、他の実施の形態において、約8モル%から約11モル%を占めるアルミナ(Al
2O
3)も、ガラス形成剤として働くであろう。SiO
2のように、アルミナは一般に、溶融物の粘度を上昇させる。ガラスにおいてアルカリまたはアルカリ土類に対してAl
2O
3を増加させると、一般に、ガラスの耐久性が改善される。アルミニウムイオンの構造的役割はガラス組成に依る。アルカリ金属酸化物R
2Oの濃度がアルミナの濃度よりも高い場合、全てのアルミニウムは、荷電平衡剤として働くアルカリ金属イオンとの四面体の4配位で見つかる。これは、ここに記載されたガラスの全てに当てはまる。二価陽イオン酸化物(RO)も、様々な程度まで四面体アルミニウムを荷電平衡させることができる。カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムなどの元素は、2つのアルカリイオンと同等に挙動するのに対し、マグネシウムイオンの強い電界強度により、それらの元素は、四面体配位においてアルミニウムを完全には荷電平衡させず、その代わりに、5配位および6配位のアルミニウムを形成する。Al
2O
3は、アルカリイオンを比較的速く拡散させつつ、強力な網目構造の主鎖(すなわち、高い歪み点)を可能にし、それゆえ、イオン交換可能なガラスにおいて重要な役割を果たす。しかしながら、高いAl
2O
3濃度は、一般に、ガラスの液相線粘度を低下させる。代替案の1つは、ガラスのイオン交換性能を維持または改善しつつ、Al
2O
3を他の酸化物で部分的に置換することである。
【0021】
ここに記載されたガラスは、少なくとも6モル%のNa
2O、いくつかの実施の形態において、約6モル%から約16モル%のNa
2Oを含み、必要に応じて、Na
2O+K
2O+Li
2O−Al
2O
3≧0モル%となるように、例えば、Li
2OおよびK
2Oなどの少なくとも1種類の他のアルカリ酸化物を含む。アルカリ酸化物(Li
2O、Na
2O、K
2O、Rb
2O、およびCs
2O)は、ガラスの低い溶融温度および低い液相線温度を達成する上で助剤として働く。しかしながら、アルカリ酸化物を添加すると、ガラスの熱膨張係数(CTE)が上昇し、化学的耐久性が低下してしまう。イオン交換を行うために、溶融塩浴からのより大きいアルカリイオン(例えば、K
+)により交換するように、小さいアルカリ酸化物(例えば、Li
2OおよびNa
2Oなど)がガラス中に存在しなければならない。通常は、3つのタイプのイオン交換が行われるであろう:Li
+のNa
+による交換、これにより、層の深さが深くなるが、圧縮応力は低くなる;Li
+のK
+による交換、これにより、層の深さは小さくなるが、圧縮応力は比較的大きくなる;Na
+のK
+による交換、これにより、層の深さおよび圧縮応力が中間になる。ガラスにおいて大きい圧縮応力を生じるには、十分に高濃度の小さいアルカリ酸化物が必要である。何故ならば、圧縮応力は、ガラスから交換されて出されるアルカリイオンの数と比例するからである。したがって、ここに記載されたガラスは、6モル%から約16モル%のNa
2Oを、他の実施の形態において、約11モル%から約16モル%のNa
2Oを含む。少量のK
2Oが存在すると、一般に、拡散性が改善され、ガラスの液相線温度が低下するが、CTEが上昇する。したがって、ここに記載されたガラスは、いくつかの実施の形態において、0モル%から約2.5モル%のK
2Oを、他の実施の形態において、約0モル%から約1.5モル%のK
2Oを含むことがある。いくつかの実施の形態において、ガラスは、0モル%から約10モル%のLi
2Oを、他の実施の形態において、0モル%から6モル%のLi
2Oを、さらに他の実施の形態において、0モル%のLi
2Oを含むことがある。Na
2OをRb
2Oおよび/またはCs
2Oで部分的に置換すると、強化ガラスのCSおよびDOLが両方とも減少してしまう。
【0022】
アルカリ土類酸化物およびZnOなどの二価陽イオン酸化物も、ガラスの溶融挙動を改善する。ここに記載されたガラスは、いくつかの実施の形態において、約8.5モル%までのMgO、約1.5モル%までのCaO、および/または約6モル%までのZnOを含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラスは、約2モル%から約6モル%のMgO、いくつかの実施の形態において、0モル%から約3モル%のZnO、および/またはいくつかの実施の形態において、0モル%から約1.5モル%のCaOを含むことがある。いくつかの実施の形態において、3モル%≦MgO+CaO+ZnO≦4モル%である。あるいは、ここに記載されたガラスに、上述した二価陽イオンのいずれが0モル%であってもよい。しかしながら、イオン交換性能に関して、二価陽イオンの存在により、アルカリの移動性が低下する傾向にある。イオン交換性能に対する二価イオンの影響は、例えば、SrO、BaOなどのより大きい二価陽イオンに関して特に著しい。さらに、より小さい二価陽イオン酸化物は、一般に、より大きい二価陽イオン酸化物よりも、圧縮応力を向上させる。例えば、MgOおよびZnOは、アルカリの拡散性に対する悪影響を最小にしつつ、改善された応力緩和に関するいくつかの利点を提供する。しかしながら、MgOおよびZnOの濃度がより高いと、苦土かんらん石(Mg
2SiO
4)および亜鉛尖晶石(ZnAl
2O
4)、またはケイ酸亜鉛鉱(Zn
2SiO
4)の形成が促進され、それゆえ、MgOおよび/またはZnO含有量の増加により、ガラスの液相線温度が非常に急勾配で上昇してしまう。いくつかの実施の形態において、ZnOおよびZrO
2などの遷移金属酸化物が、ガラスのイオン交換性能を維持または改善しつつ、ガラス中のMgOの少なくとも一部の代わりに使用されることがある。
【0023】
ジルコニア(ZrO
2)は、ガラスの化学的耐久性を改善するのに役立つ。電荷補償陽イオンの存在下で、Si−O−Zr結合を形成することによって、ケイ酸塩網目構造に6配位ジルコニウムが挿入される。いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、6モル%までのZrO
2、いくつかの実施の形態において、3モル%までのZrO
2を含むことがある。したがって、[ZrO
6]
2-基は、2つの正の電荷、すなわち、2つのアルカリイオンまたは1つのアルカリ土類イオンにより電荷補償される。いくつかの実施の形態において、ZrO
2は、ここに記載されたガラスの一部において、SiO
2を部分的に置換し、特定の実施の形態において、MgOはZrO
2により完全に(または実質的に完全に)置換される。ジルコニアの置換により、ガラスの徐冷点、屈折率、および弾性率が上昇するが、液相線粘度は低下する。
【0024】
熱膨張係数(CTE)は、互いから区別できる振動寄与と立体配置寄与の合計である。そのガラス状態は主に振動自由度を含むのに対し、過冷却液体状態は、振動自由度と立体配置自由度の両方を含み、全CTEはこれら2つの寄与の合計である。したがって、過冷却液体状態からガラス状態へのCTEの変化は立体配置CTEに相当し、これは、極薄ガラスの形成のために最小にされるべきである。立体配置CTEは、ガラス転移温度(Tg)および液体脆性指数(liquid fragility index)(m)を通じて平衡液体力学と結びつけられる。脆性がより低く、ガラス転移温度がより高いほど、立体配置CTEが低下する。
【0025】
ここに記載されたガラスの各々は、第1の熱膨張係数−すなわち高温CTE−を有する液体状態および室温(約25℃;例えば、25±5℃)での第2の熱膨張係数、またはガラスCTEを有するガラス状態で存在する。第1のCTEと第2のCTEとの間の差(ΔCTE)は、約107×10
-7/℃未満である。いくつかの実施の形態において、第1の、すなわち、高温CTEは多くとも約200×10
-7/℃である。
【0026】
いくつかの実施の形態において、ここに記載されたガラスは、少なくとも約100キロポアズ(kP)の液相線粘度を有し、これにより、ガラスを、当該技術分野で公知のフュージョンドロー法およびスロットドロー法などのダウンドロー技法により形成することができる。
【0027】
いくつかの実施の形態において、ガラス物品がイオン交換される。ここに用いたように、「イオン交換」という用語は、ガラス製造の技術分野で公知の強化プロセスに関する。そのようなイオン交換プロセスは、以下に限られないが、アルカリ金属陽イオンなどの陽イオンを少なくとも1種類含むガラスを、そのガラス中に存在する陽イオンであるが、このガラス中の陽イオンよりもイオン半径が大きい陽イオンと同じ価数(最も一般的に一価)を有する陽イオンを含有する加熱溶液で処理する工程を含む。例えば、溶液中のカリウムイオン(K
+)が、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス中のナトリウムイオン(Na
+)を置換するであろう。あるいは、ルビジウムまたはセシウムなどのイオン半径がより大きいアルカリ金属陽イオンが、ガラス中のより小さいアルカリ金属陽イオンを置換してもよい。
【0028】
そのより大きい陽イオンが、ガラスの外面に隣接した層中のガラス中のより小さい陽イオンを置換し、それによって、その層が圧縮応力(CS)下に置かれる。圧縮下にあるその層は、「圧縮層」と称されることもある。圧縮層の深さ、または「層の深さ(DOL)」は、ガラス内の応力が正の応力(圧縮)から負の応力(引張)に移行し、それゆえ、ゼロの値を有する点である。
【0029】
以下に限られないが、硫酸塩、ハロゲン化物、硝酸塩、亜硝酸塩などのアルカリ金属塩をこのイオン交換プロセスに使用してもよい。いくつかの実施の形態において、ガラスは、そのガラスを、より大きいアルカリ金属の塩を含む溶融塩浴中に入れることによって、化学強化される。例えば、ナトリウム含有ガラスは、所望のレベルのイオン交換を達成するために、所定の期間に亘り、硝酸カリウム(KNO
3)を含有する溶融塩浴中に浸漬されることがある。そのような浴の温度は、いくつかの実施の形態において、典型的に、約410℃から約430℃の範囲にある。溶融塩浴中のガラス物品の滞在時間は、CSおよびDOLの所望の大きさに応じて様々であろうし、いくつかの実施の形態において、約30分間から約16時間に及ぶことがある。
【0030】
ここに記載されたガラスおよびガラス物品は、イオン交換されると、そのガラス物品の表面から該ガラス物品内の層の深さまで延在する圧縮層を有する。この圧縮層は、少なくとも500メガパスカル(MPa)の圧縮応力および少なくとも5μmの層の深さを有する。圧縮応力および層の深さは、当該技術分野で公知の手段を使用して測定される。そのような手段としては、以下に限られないが、株式会社ルケオ(日本国、東京都所在)により製造されているFSM−6000などの市販の装置を使用した表面応力測定法(FSM)が挙げられ、圧縮応力および層の深さを測定する方法は、ここにその内容の全てが引用される、「Standard Specification for Chemically Strengthened Flat Glass」と題するASTM 1422C−99および「Standard Test Method for Non-Destructive Photoelastic Measurement of Edge and Surface Stresses in Annealed, Heat-Strengthened, and Fully-Tempered Flat Glass」と題するASTM 1279.19779に記載されている。表面応力測定法は、応力光学係数(SOC)の正確な測定に依存し、これは、ガラスの応力誘発複屈折に関連付けられる。
【0031】
極薄ガラスを調製するために、フュージョンドロー法を、例えば、安定な厚さ制御を確実にするために、最適化する必要があり、ガラス組成物自体は、製造プロセスを容易にし、かつ最終的なガラス製品の特質を改善する性質を有するまたはその性質をもらたすべきである。第一に、製造を手助けするために、過冷却液体からガラス状態へのCTEの変化(ΔCTE)はできるだけ小さいべきであり、その変化は、できるだけ広い温度範囲に亘り生じるべきである。液体状態の絶対CTE値は、できるだけ小さいべきである。先に述べたように、CTEと、その結果としてのΔCTEは、組成の変化によってある程度調節されるであろう。第二に、ガラスは、例えば、様々なタイプの衝撃の際の、機械的性能を改善するために、できるだけ高い圧縮応力(CS)を有するべきである。しかしながら、ガラスの厚さが減少するにつれて、大きい層の深さ(DOL)の重要性も低下する。何故ならば、張力を蓄積できるガラスの領域も減少するからである。第三に、極薄ガラス上で表面変形が容易に生じ得るので、ガラスは、できるだけ高い弾性率を有するべきである。ここに記載されたガラス組成物は、基準または「基礎」ガラス組成物と比べて、これら3つの要件の全てを改善する。
【0032】
ここに記載したガラス組成物の非限定的例および選択特性が、表1に列挙されている。列挙された例において、るつぼ溶融基礎ガラス(以下の表における「基礎ガラス」)に様々な添加および/または置換を行った。一連のサンプルにおいて、基礎ガラスに「上乗せして」、追加の量のSiO
2を添加した(例A〜C)。この添加の目的は、CTEを低下させるために、液体脆性指数mを減少させることであった。他のサンプルにおいて、Na
2Oの代わりにLi
2OおよびSiO
2を使用した(例D〜K)。この目的は、CTEの絶対値を低下させ、ガラスの弾性率を上昇させるためであった。他のサンプルにおいて、ZrO
2で、MgOを部分的に置換した(例L〜O、R)か、またはMgOを完全に置き換えた(例V)。例Oにおいて、例Gの組成を、ZrO
2でMgOを部分的に置換して(1.8モル%)、最初にバッチ配合した。例Oにおいて、例Iの組成を、ZrO
2でMgOを部分的に置換して(1.8モル%)、最初にバッチ配合し、例Vにおいて、例Jの組成を、ZrO
2でMgOを完全に置き換えて、最初にバッチ配合した。この置換の目的は、ガラスの弾性率を上昇させ、イオン交換特性(例えば、交換速度、CS、DOLなど)を改善することであった。さらに他のサンプルにおいて、MgOの代わりにZnOを使用した(例J、K)。その目的は、ガラスの弾性率を上昇させるためであった。
【0033】
表に列挙されたガラスの組成は、蛍光X線および/またはICP(慣性結合プラズマ)により分析した。徐冷点、歪み点および軟化点は、ファイバの伸びにより決定した。ガラス状態と液体状態にあるガラスの熱膨張係数(CTE)は、それぞれ、室温(約25℃)と300℃の間の平均値およびガラス転移より上の過冷却液体の値として決定し、2つのCTEの差(ΔCTE)はこれら2つの値から計算した。表1に報告された液相線温度は24時間に関するものである。弾性率は、共鳴超音波スペクトロスコピーにより決定した。表に列挙された屈折率は、589.3nmについて提示されている。応力光学係数(SOC)は直径圧縮法により決定した。
【0034】
表1に列挙された徐冷ガラスを、様々な期間に亘り410℃で純粋な(工業グレード)KNO
3溶融塩浴中でイオン交換した。4時間から16時間に及ぶ期間に亘るイオン交換後に得られた圧縮応力および層の深さが、表2に列挙されている。50μmの固定DOLで計算した圧縮応力値および50μmのDOLを達成するのに要したイオン交換時間が、表3に示されている。表3において、括弧内の値は、ガラスのイオン交換特性が基礎ガラス組成物より劣っていることを示している。括弧の付いていない値は、イオン交換特性が基礎ガラス組成物のものより優れていることを示している。
【0035】
表1に列挙されたガラス組成物に関する高温CTE曲線が、
図1a〜dに示されている。
図2は、ここに記載され、表1に列挙されたガラスの熱膨張係数(CTE)に対する2つのタイプの組成置換の影響を示すグラフである。
図2の正方形は、Na
2OのLi
2O+SiO
2による置換に関するデータを表し、立体配置CTE(黒い正方形)および低温CTE(白い正方形)の両方に関する結果を示している。
図2の三角形は、MgOのZrO
2による置換に関するデータを表し、立体配置CTE(黒い正方形)および低温CTE(白い正方形)の両方に関する結果を示している。
図2のx軸は、Na
2OのLi
2O+SiO
2による置換についてはLi
2O濃度に、MgOのZrO
2による置換についてはZrO
2濃度に対応する。
【0036】
図3は、ここに記載され、表1に列挙されたガラスのヤング率に対する2つのタイプの組成置換の影響を示すグラフである。
図3の正方形は、Na
2OのLi
2O+SiO
2による置換に関するデータを表すのに対し、三角形は、MgOのZrO
2による置換に関するデータを表す。x軸は、Na
2OのLi
2O+SiO
2による置換についてはLi
2O濃度に、MgOのZrO
2による置換についてはZrO
2濃度に対応する。
【0037】
図4は、ここに記載され、表1に列挙されたガラスに関する、KNO
3溶融塩浴中の410℃でのイオン交換から生じた特性に対する2つのタイプの組成置換の影響を示すグラフである。
図4の正方形は、Na
2OのLi
2O+SiO
2による置換に関するデータを表し、50μmでの圧縮応力(黒い正方形)および50μmのDOLに到達するのに要したイオン交換時間(白い正方形)の両方に関する結果を示している。三角形は、MgOのZrO
2による置換に関するデータを表し、50μmでの圧縮応力(黒い正方形)および50μmのDOLに到達するのに要したイオン交換時間(白い正方形)の両方に関する結果を示している。x軸は、Na
2OのLi
2O+SiO
2による置換についてはLi
2O濃度に、MgOのZrO
2による置換についてはZrO
2濃度に対応する。
【0038】
基礎ガラス組成物に上乗せしてSiO
2を添加すると、絶対CTE値およびΔCTEの両方が減少する(
図1a)。CSは固定DOLについて減少するのに対し、そのDOLに到達するのに要したイオン交換時間も減少する(表3)。3モル%のSiO
2の添加(サンプルB)により、まだフュージョン成形可能である(液相線粘度=4.3×10
6ポアズ)ガラスが得られ、それゆえ、この組成変化でも、極薄物品が形成されるであろう。
【0039】
Na
2OをLi
2O+SiO
2で置換すると、ガラスの絶対CTE値が著しく減少するが(
図1b)、立体配置CTE値は置換により実質的に影響を受けない(
図2)。しかしながら、弾性率はこの置換の結果として実質的に上昇し、研究した組成範囲内で最大で12%上昇した(
図3)。Na
2O濃度の低下のために、Na
2OがLi
2O+SiO
2で置換されるにつれて、CSは低下し、イオン交換時間は著しく上昇する(表3および
図4)。
【0040】
MgOを少量のZrO
2で置換すると、ΔCTEが減少するが、MgOをさらにZrO
2で置換すると、ΔCTEは上昇する(
図1cおよび2)。その上、ZrO
2が加えられると、弾性率は、最初に上昇し、次いで、わずかに減少する。この置換の結果として、圧縮応力は著しく改善され、イオン交換時間はわずかしか増加しない(表3および
図4)。極薄ガラスの形成の観点から、例Lにより記載された、MgOのZrO
2による置換を具体化したガラスは極薄成形のより望ましい候補である。何故ならば、そのガラスは、低下したΔCTEを、改善されたヤング率、圧縮応力、および液相線粘度(>6×10
6ポアズ)と併せ持つからである。
【0041】
MgOのZrO
2による置換をNa
2OのLi
2O+SiO
2による置換と組み合わせた。しかしながら、MgOのZrO
2による置換をNa
2OのLi
2O+SiO
2による置換と組み合わせたこれらのガラスは、MgOのZrO
2による置換のみに勝るどのような利点も提示しない。何故ならば、CTE値は同じか高く(
図1d)、イオン交換時間は、MgOのZrO
2による置換に観察された値よりも実質的に高い(表3)からである。最後に、MgOのZnOによる部分置換は、表1に示されるように、MgOのみを含有するガラスに勝るどのような利点も提示しない。
【0047】
説明目的で典型的な実施の形態を述べてきたが、先の説明は、本開示または特許請求の範囲への制限と考えるべきではない。したがって、本開示または付随の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱せずに、当業者に、様々な改変、適用、および代替手段が想起されるであろう。