特許第6360059号(P6360059)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360059
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法及びガラス板
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20180709BHJP
   C03B 18/20 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C03C15/00 A
   C03B18/20
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-534008(P2015-534008)
(86)(22)【出願日】2014年9月1日
(86)【国際出願番号】JP2014004478
(87)【国際公開番号】WO2015029455
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2017年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-181390(P2013-181390)
(32)【優先日】2013年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-262284(P2013-262284)
(32)【優先日】2013年12月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100143236
【弁理士】
【氏名又は名称】間中 恵子
(72)【発明者】
【氏名】田中 智
(72)【発明者】
【氏名】釣 慶子
(72)【発明者】
【氏名】小用 広隆
(72)【発明者】
【氏名】三谷 一石
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 靖弘
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/175362(WO,A1)
【文献】 特開2005−067974(JP,A)
【文献】 特開2013−087043(JP,A)
【文献】 特開2002−201043(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/104303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00 − 23/00
C03B 18/00 − 18/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)少なくともナトリウムを成分として含み、ガラス転移点以上かつガラス転移点+300℃以下の範囲内の温度を有し、かつ、板状に成形されたガラス材料の少なくとも一方の表面に、フッ素元素(F)を含む酸Aと塩素元素(Cl)を含む酸Bとを含み、かつ酸Aに対する水のモル比(水のモル濃度/酸Aのモル濃度)が5未満である混合ガスを接触させて、ヘイズ率の変化量が5%以上となるまで、前記ガラス材料の表面に高低差が0.1〜3μmの凹凸を形成して表面形状を変化させる工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前記ガラス材料を冷却して、ガラス板を得る工程と、
を含む、ガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)は、
溶融したガラス材料を溶融金属上で板状に成形する成形工程と、
前記溶融金属上の板状の前記ガラス材料であって、ガラス転移点以上かつガラス転移点+300℃以下の範囲内の温度を有する前記ガラス材料の表面に、前記混合ガスを接触させて、ヘイズ率の変化量が5%以上となるまで、前記ガラス材料の表面に高低差が0.1〜3μmの凹凸を形成して表面形状を変化させる、混合ガス接触工程と、
を含む、請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記工程(I)において、前記混合ガスを複数回に分けて前記ガラス材料の前記表面に接触させる、
請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記混合ガスにおいて、前記酸Aがフッ化水素(HF)である、
請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
前記混合ガスにおいて、前記酸Bが塩化水素(HCl)である、
請求項1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項6】
少なくとも一方の表面に不規則的な凹凸が設けられている平板状のガラス板であって、
5%以上のヘイズ率を有し、
前記表面において、前記凹凸の凸部の前記ガラス板の厚さ方向における基準高さを表す凸部基準位置と、前記凹凸の凹部の前記ガラス板の厚さ方向における基準深さを表す凹部基準位置とが特定された場合、前記ガラス板の厚さ方向に沿った断面において、前記凹凸が前記凸部基準位置を跨ぐ頻度が0.1〜10回/μmの範囲内であり、かつ、前記凸部基準位置と前記凹部基準位置との間の距離が0.1〜3μmの範囲内である、
ガラス板。
ただし、前記凸部基準位置とは、前記ガラス板の前記表面側から、前記ガラス板の厚さ方向に沿って前記ガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が90%に達する最初の位置と空隙率が減少から増加へ転じる位置との中間の位置である。また、前記凹部基準位置とは、前記ガラス板の前記表面側から、前記ガラス板の厚さ方向に沿って前記ガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が10%となるより深い位置である。
【請求項7】
前記凸部基準位置と前記凹部基準位置との間において、前記ガラス板の前記表面に、高さが0.02〜0.5μmの範囲内の微小凸部が不規則的に複数形成されている、
請求項6に記載のガラス板。
【請求項8】
請求項6に記載のガラス板である、温室用ガラス板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板の製造方法とガラス板とに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、薄膜型太陽電池の前面ガラス板に用いられるガラス板には、入射光を散乱させて光の利用効率を高めるために、入射光に対して高いヘイズ率を有することが求められる。また、建造物又は移動体の窓、及び、パーティション等として用いられるガラス板にも、光散乱特性を持たせるために、入射光に対して高いヘイズ率を有することが求められる場合がある。ガラス板のヘイズ率を高める方法として、従来、以下のような方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ガラス板の表面に、サンドブラストによって、突条と条溝との周期的な繰り返し構造(凹凸構造)を形成する方法が提案されている。また、特許文献2には、高ヘイズ率を有する膜をガラス板の表面上に形成する方法が提案されている。特許文献3には、エッチング液を用いてガラス板の表面をエッチングして、ガラス板の表面に凹凸を形成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−96367号公報
【特許文献2】特開2001−278637号公報
【特許文献3】特開2013−40091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3において提案されているような従来の方法では、光散乱特性を有するガラス板を製造するために、公知の方法でガラス素板を製造した後に、そのガラス素板に対してヘイズ率を高めるための煩雑な工程を別途実施しなければならなかった。したがって、従来の方法は、製造工程が煩雑で、大幅な製造効率の低下及び製造コストの上昇を招くという問題を有していた。
【0006】
そこで、本発明は、製造効率を大幅に低下させることなく、かつ製造コストの上昇を低く抑えながら、より簡便に、光散乱特性を有するガラス板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(I)少なくともナトリウムを成分として含み、ガラス転移点以上かつガラス転移点+300℃以下の範囲内の温度を有し、かつ、板状に成形されたガラス材料の少なくとも一方の表面に、フッ素元素(F)を含む酸Aと塩素元素(Cl)を含む酸Bとを含み、かつ酸Aに対する水のモル比(水のモル濃度/酸Aのモル濃度)が5未満である混合ガスを接触させて、光散乱特性を変化させる程度まで前記ガラス材料の表面形状を変化させる工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前記ガラス材料を冷却して、ガラス板を得る工程と、
を含む、ガラス板の製造方法を提供する。
【0008】
本発明は、さらに、
少なくとも一方の表面に不規則的な凹凸が設けられている平板状のガラス板であって、
5%以上のヘイズ率を有し、
前記表面において、前記凹凸の凸部の前記ガラス板の厚さ方向における基準高さを表す凸部基準位置と、前記凹凸の凹部の前記ガラス板の厚さ方向における基準深さを表す凹部基準位置とが特定された場合、前記ガラス板の厚さ方向に沿った断面において、前記凹凸が前記凸部基準位置を跨ぐ頻度が0.1〜10回/μmの範囲内であり、かつ、前記凸部基準位置と前記凹部基準位置との間の距離が0.1〜3μmの範囲内である、
ガラス板を提供する。
【0009】
ただし、前記凸部基準位置とは、前記ガラス板の前記表面側から、前記ガラス板の厚さ方向に沿って前記ガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が90%に達する最初の位置と空隙率が減少から増加へ転じる位置との中間の位置である。また、前記凹部基準位置とは、前記ガラス板の前記表面側から、前記ガラス板の厚さ方向に沿って前記ガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が10%となるより深い位置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のガラス板の製造方法では、板状に成形された、高温状態(ガラス転移点〜ガラス転移点+300℃の範囲内の温度を有する状態)のガラス材料の表面に、特定の混合ガスを接触させるという非常に簡便な処理を実施するだけで、光散乱特性を有するガラス板を製造できる。また、ガラス材料を混合ガスと接触させる工程は、成形されたガラス材料が高温の状態のときに実施されるので、ガラス板の公知の製造方法において、溶融したガラス材料を板状に成形した後、その成形されたガラス材料を冷却するまでの間に、本発明のガラス板の製造方法の工程(I)における混合ガスの接触を実施することも可能である。したがって、本発明のガラス板の製造方法は、予め製造されたガラス素板に対して表面処理を行う従来の方法とは異なり、例えばフロート法等の公知の方法でガラス板を製造しながら、その製造工程の途中で光散乱特性を付与するための処理(工程(I))を実施することもできる。このように、本発明の製造方法によれば、従来の方法と比較して、製造効率を大幅に低下させることなく、かつ製造コストの上昇を低く抑えながら、より簡便に、光散乱特性を有するガラス板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明のガラス板の製造方法を実施できる装置の一例を示す模式図である。
図2A】実施例1のガラス板の厚さ方向に沿った断面を2値化した図である。
図2B】実施例2のガラス板の厚さ方向に沿った断面を2値化した図である。
図2C】実施例3のガラス板の厚さ方向に沿った断面を2値化した図である。
図3A図2Aの結果に基づき算出された空隙率を表す図である。
図3B図2Bの結果に基づき算出された空隙率を表す図である。
図3C図2Cの結果に基づき算出された空隙率を表す図である。
図4A】実施例1のガラス板を斜め上方から観察した状態を示すSEM写真である。
図4B】実施例2のガラス板を斜め上方から観察した状態を示すSEM写真である。
図4C】実施例3のガラス板を斜め上方から観察した状態を示すSEM写真である。
図5A】比較例2のガラス板を斜め上方から観察した状態を示すSEM写真である。
図5B】比較例3のガラス板を斜め上方から観察した状態を示すSEM写真である。
図5C】比較例6のガラス板を斜め上方から観察した状態を示すSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
本発明のガラス板の製造方法の実施形態について説明する。本実施形態のガラス板の製造方法は、光散乱特性を有するガラス板を製造する方法であり、
(I)少なくともナトリウムを成分として含み、ガラス転移点以上かつガラス転移点+300℃以下の範囲内の温度を有し、かつ、板状に成形されたガラス材料の少なくとも一方の表面に、フッ素元素(F)を含む酸Aと塩素元素(Cl)を含む酸Bとを含み、かつ酸Aに対する水のモル比(水のモル濃度/酸Aのモル濃度)が5未満である混合ガスを接触させて、光散乱特性を変化させる程度まで前記ガラス材料の表面形状を変化させる工程と、
(II)前記工程(I)で得られた前記ガラス材料を冷却して、ガラス板を得る工程と、
を含む。
【0013】
なお、ここでいう「光」とは、主として、380〜780nmの波長域の光のことを指す。本発明のガラス板は、可視光領域の光に対する散乱特性の発現が求められる。そのような理由により、可視光領域(380〜780nmの波長域)の光が選択されている。本明細書においてはC光源を用いた。また、ここでいう「光散乱特性を変化させる程度」とは、ヘイズ率の変化量を5%以上とすることである。
【0014】
工程(I)において、混合ガスを複数回に分けてガラス材料の表面に接触させてもよい。
【0015】
本実施形態のガラス板の製造方法は、例えばフロート法によるガラス板の製造に適用することが可能である。すなわち、本実施形態のガラス板の製造方法では、前記工程(I)が、
溶融したガラス材料を溶融金属上で板状に成形する成形工程と、
前記溶融金属上の板状の前記ガラス材料であって、ガラス転移点以上かつガラス転移点+300℃以下の範囲内の温度を有する前記ガラス材料の表面に、前記混合ガスを接触させて、光散乱特性を変化させる程度まで前記ガラス材料の表面形状を変化させる、混合ガス接触工程と、
を含んでいてもよい。この方法は、例えば図1に示す装置を用いて実施できる。以下、本実施形態のガラス板の製造方法について、フロート法によるガラス板の製造方法を例に挙げて説明する。
【0016】
フロート窯11で溶融されたガラス材料(溶融ガラス)は、フロート窯11からフロートバス12に流れ出し、ガラスリボン(板状に成形されたガラス材料)10となって溶融錫(溶融金属)15上を移動して半固形となった後、ローラ17により引き上げられて徐冷炉13へと送り込まれる。徐冷炉13で固形化したガラスリボンは、図示を省略する切断装置によって所定の大きさのガラス板へと切断される。
【0017】
溶融錫15上の高温状態のガラスリボン10の表面から所定距離を隔てて、所定個数の吹付部16(図示した装置では3つの吹付部16a,16b,16c)が、フロートバス12内に配置されている。これらの吹付部16a〜16cの少なくとも1つの吹付部から、ガラスリボン10上に連続的に、フッ素元素(F)を含む酸Aと塩素元素(Cl)を含む酸Bとを含む混合ガスが供給される。この混合ガスをガラスリボン10の表面に接触させることにより、光散乱特性を変化させる程度までガラスリボン10の表面形状を変化させることができる。具体的には、光を効果的に散乱させることができる凹凸を、ガラスリボン10の表面に形成することができる。溶融錫15上のガラスリボン10の温度はガラス転移点以上の高温である。混合ガスとの接触時のガラスリボン10の温度は、ガラス転移点以上で、かつガラス転移点+300℃以下の範囲内となっている。ガラスリボン10がこのような高温の状態であるので、ガラス表面の改質が効果的に実施される。
【0018】
混合ガスに含まれる酸Aとしては、例えば、フッ化水素(HF)が好適に用いられる。酸AとしてHFが用いられる場合、混合ガスに含まれるHFの濃度は1〜10モル%が好ましく、3〜5モル%がより好ましい。なお、反応途中でHFとなる酸、すなわち結果としてHFを生成する酸も、酸Aとして用いることができ、例えば、トリフルオロ酢酸、4フッ化炭素(CF)などのフロンガス、四フッ化ケイ素、五フッ化リン、三フッ化リン、三フッ化ホウ素、三フッ化窒素、三フッ化塩素などが挙げられる。
【0019】
混合ガスに含まれる酸Bとしては、例えば、塩化水素(HCl)が好適に用いられる。酸BとしてHClが用いられる場合、混合ガスに含まれるHClの濃度は0.1〜10モル%が好ましく、1〜4モル%がより好ましい。また、次亜塩素酸なども酸Bとして使用可能である。
【0020】
高温のガラスリボン10の表面に混合ガスを接触させることによって、可視光を効果的に散乱させることができる凹凸を有するように、ガラスリボン10の表面形状を変化させることができる理由について、本発明者らは次のように考察している。ここでは、酸AとしてHFを含み、酸BとしてHClを含む混合ガスを例に挙げて説明する。
【0021】
HFは、ガラスリボン10の表面に接触すると、ガラスの基本構造であるSi−O結合を切断したり(以下の反応式(1))、脱アルカリ反応を生じさせたりする(以下の反応式(2)及び(3))。
≡Si−O−Si≡ + HF ⇔ ≡Si−OH + F−Si≡ (1)
HF + HO ⇔ H + F (2)
≡Si−ONa+ H + F ⇔ ≡Si−OH + HO + NaF (3)
【0022】
さらに、HClがガラスリボン10の表面に接触すると、HClとガラス中に含まれるナトリウムとが反応し、局所的にNaCl結晶が形成される(以下の反応式(4))。
≡Si−ONa+ HO−Si≡ + HCl ⇒ ≡Si−O−Si≡ + NaCl + HO(4)
【0023】
NaClの存在する箇所では、NaClが存在しない箇所と比べて、HFによるガラスのエッチング反応(以下の反応式(5))が遅くなり、ガラスリボン10の表面においてHFによるガラスのエッチング反応の速度に差が生じると考えられる。ガラスリボン10は高温であるので、NaCl形成速度及びエッチング反応速度が大きい。したがって、ガラスリボン10の表面に、凹凸の高低差が0.1〜3μm程度と大きい、不規則的な凹凸を形成することができる。
SiO(glass) + 4HF ⇒ SiF + 2HO (5)
【0024】
また、反応式(4)に示された反応によりNaClが形成され、局所的にガラス中のSi−O−Si結合が増大してHFによるエッチング反応が抑制されて、ガラスリボン10の表面においてHFによるガラスのエッチング反応の速度に差が生じることも考えられる。このようなメカニズムによっても、ガラスリボン10の表面に、凹凸の高低差が0.1〜3μm程度と大きい不規則的な凹凸が形成されると考えられる。
【0025】
さらに、ガラスリボン10の表面近傍では、混合ガスはプロトン(H)、水(HO)及びオキソニウムイオン(H)等の種々の状態になっている。このような混合ガスがガラス中に入り込み、例えばガラス中に入り込んだ水が脱水縮合によって抜け出したり、式(6)に示すように脱アルカリ反応により発生したシラノール基が徐冷過程において脱水縮合したりすることにより、上記の凹凸を有する表面上にさらに微小凸部が形成される場合もある。この微小凸部は、例えば0.02〜0.5μm程度の高さを有する。
≡Si−OH + HO−Si≡ ⇔ HO + ≡Si−O−Si≡ (6)
【0026】
なお、混合ガスには、水が含まれていないか、含まれている場合でも酸Aに対する水のモル比(水のモル濃度/酸Aのモル濃度)が5未満となるように少なく抑えられている。混合ガスに含まれる水の量が多すぎると、可視光を効果的に散乱させることができる凹凸が得られなくなる。望ましくは、混合ガスにおいて、酸Aに対する水のモル比を3未満とすることである。
【0027】
混合ガスとガラスリボン10との接触時間は、特には限定されないが、例えば3〜20秒が好ましい。接触時間が3秒未満であれば、所望の凹凸を形成できない場合がある。また、本実施形態の製造方法で用いられる混合ガスによれば、当該混合ガスを接触させるガラス材料の温度が高いこともあり、20秒程度の接触時間で十分に所望の凹凸を形成することができる。混合ガスを複数回に分けてガラス材料の表面に接触させる場合は、その処理の合計時間を例えば3〜20秒とするとよい。
【0028】
図1に示す装置においては、工程(II)のガラス材料を冷却する工程は徐冷炉13で実施される。冷却方法は、特には限定されず、公知のガラス板の製造方法によって実施される冷却方法を用いることができる。
【0029】
ガラス材料には、フロート法が適用可能なガラス組成を有する公知のガラス材料を用いることができる。例えば一般的なソーダライムガラス及びアルミノシリケートガラス等を用いることができ、ナトリウムを成分として含んでいる限りその組成は特には限定されない。例えば、一般的なクリアガラスや低鉄ガラスなどを用いることができる。また、工程(I)において成形される板状のガラス材料の厚さは、製造するガラス板の厚さに応じて適宜決定されるため、特には限定されない。最終的に得られるガラス板の厚さは、特には限定されないが、例えば0.3〜25mmの厚さとできる。
【0030】
本実施形態の製造方法によれば、板状に成形されたガラス材料の表面に、特定の混合ガスを接触させるという非常に簡便な処理を実施するだけで、光散乱特性を有する(ヘイズ率5%以上を有する)ガラス板を製造できる。また、本実施形態の製造方法は、上述のとおり、ガラス板の連続製造方法であるフロート法の製造ラインを利用して実施することも可能である。このように、本発明の製造方法によれば、従来の方法と比較して、製造効率を大幅に低下させることなく、かつ製造コストの上昇を低く抑えながら、より簡便に、光散乱特性を有するガラス板を提供することができる。
【0031】
(実施形態2)
本発明のガラス板の実施形態について説明する。本実施形態のガラス板は、実施形態1の製造方法で製造することが可能である。
【0032】
本実施形態のガラス板は、少なくとも一方の表面に不規則的な凹凸が設けられている平板状のガラス板である。この凹凸は、当該凹凸が設けられた表面において、凹凸の凸部のガラス板の厚さ方向における基準高さを表す凸部基準位置と、前記凹凸の凹部の前記ガラス板の厚さ方向における基準深さを表す凹部基準位置とが特定された場合に、以下の条件を満たしている。
(1)ガラス板の厚さ方向に沿った断面において、凹凸が凸部基準位置を跨ぐ頻度が0.1〜10回/μmの範囲内である。
(2)凸部基準位置と凹部基準位置との間の距離が0.1〜3μmの範囲内である。
【0033】
まず、凸部基準位置及び凹部基準位置について説明する。凸部基準位置とは、ガラス板の表面(凹凸が設けられている表面)側から、ガラス板の厚さ方向に沿ってガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が90%に達する最初の位置と、空隙率が減少から増加へ転じる位置との中間の位置である。また、凹部基準位置とは、ガラス板の表面(凹凸が設けられている表面)側から、ガラス板の厚さ方向に沿ってガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が10%となるより深い位置である。ここで、「空隙率が減少から増加へ転じる位置」とは、「空隙率が減少から増加へ転じると認められる位置」、すなわち「減少から増加へ転じる空隙率の谷部の位置」を意味している。「空隙率が減少から増加へ転じる位置」は、後述のベアリング曲線を利用して特定できるのだが、ピクセル数が多すぎるとベアリング曲線がガタガタとした曲線になり、ごく微小な範囲だけを見ると空隙率が減少から増加へと転じたとみなせる部分が存在する。ここでの、「空隙率が減少から増加へ転じる位置」とは、このようなごく微小な範囲内で空隙率が減少から増加へ転じる位置を意味するのではなく、空隙率0〜100%の範囲全体におけるベアリング曲線の全体形状から決定される「空隙率が減少から増加へ転じる位置」を意味する。なお、望ましくは、滑らかなベアリング曲線を得て、そのベアリング曲線を用いて「空隙率が減少から増加へ転じる位置」を特定することである。滑らかなベアリング曲線を得るためには、望ましくは、ピクセル数を100〜200ピクセル/nmとするとよい。
【0034】
ここで、空隙率を求める方法について説明する。まず、ガラス板の厚さ方向に沿った断面の投影図を準備する。投影図とは、ガラス板の厚さ方向に沿った断面図を2値化した図である。この2値化した図は、ガラス板の厚さ方向に沿った断面のSEM写真をスキャナーで読み取り後、2値化処理することによって得ることができる。図2A〜2Cは、それぞれ、後述の実施例のガラス板において、凹凸が設けられている表面側の一部について、ガラス板の厚さ方向の断面を2値化した図である。図2A〜2Cにおいて、上面は凹凸が設けられている表面であり、縦方向はガラス板の厚さ方向である。なお、この2値化した図は、ガラスが存在する部分は黒色で表現され、逆に、ガラスが存在しない部分、すなわち、空隙部は白色で表現されるように2値化処理された結果を示している。
【0035】
図3A〜3Cは、一般的にベアリング曲線と呼ばれる図であり、それぞれ、図2A図2Cの結果に基づき算出された図である。ベアリング曲線とは、JIS B 0601に規定される曲線である。図3A図3Cでは、横軸は、ガラス板の最表面(最大凸部)からのガラス板の厚さ方向の距離(深さ)を表し、縦軸は、それぞれの厚さ位置における空隙率を表したものである。それぞれの厚さ位置における空隙率とは、ガラス板の厚さ方向に沿った断面において、それぞれの厚さ位置において空間が占める割合をいう。具体的には、空隙率は、2値化した画像データに対して白色、すなわち空隙のピクセル数をカウントすることによって算出できる。
【0036】
凸部基準位置を求める際に用いられる基準位置の1つとして、ガラス板の表面側からガラス板の厚さ方向に沿ってガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が90%に達する最初の位置が用いられる。すなわち、空隙率が90%を満たす位置のうち、より表面に近い位置が基準位置として用いられる。ガラス板の厚さ方向に対して最も突出している位置(最大凸部)を基準位置としない理由は、ガラス板の表面上に、例えばガラス板のヘイズ率に影響を及ぼさないような大きく突出した突起部が存在する場合、その突起部を基準に用いて凸部基準位置を求めてしまうと、実際の凹凸の形状を適切に表すことができなくなるためである。一方、このようなガラス板のヘイズ率に影響を及ぼさない突起部は、ガラス板のヘイズ率と関係するガラス板の表面の凹凸のノイズとみることができる。このようなノイズが及ぼす空隙率への影響は、せいぜい10%以下である。これらの理由により、ガラス板の表面側からガラス板の厚さ方向に沿ってガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率90%となる位置を、基準位置の1つとする。
【0037】
また、空隙率が減少から増加へ転じる位置をもう一つの基準位置とした理由についても説明する。ガラス板の表面の凹凸における凹部には、ガラス板の内部を大きくえぐったような形状を有する凹部(凹部の内壁において、ある深さ位置の径がそれよりも浅い位置の径よりも大きくなっている部分を有する凹部)が存在する。したがって、空隙率が減少から増加へ転じる位置は、凸部ではなく凹部の位置であると判断できる。
【0038】
そこで、本実施形態では、空隙率が90%に達する最初の位置と、空隙率が減少から増加へ転じる位置との中間の位置を凸部基準位置と特定し、凹凸の高低差を決定する基準に用いている。
【0039】
ガラス板の厚さ方向に対して最も深く窪んだ空隙位置を凹部基準位置としない理由は、凸部基準位置を決定するために空隙率90%の位置を基準位置の1つとしている理由と同様である。すなわち、凹凸のノイズとみなされる凹部を除くためである。
【0040】
本実施形態のガラス板では、ガラス板の厚さ方向に沿った断面において、凹凸が凸部基準位置を跨ぐ頻度が0.1〜10回/μmの範囲内である。これにより、高ヘイズのガラス板が得られる。凹凸の凸部基準位置を跨ぐ頻度がこの範囲よりも大きくなると、入射する光の波長よりも凹凸のピッチが小さくなり、波長の短い光の散乱が支配的となるため、ヘイズは増加しないと考えられる。すなわち、本実施形態で散乱対象としている光の波長領域よりも、本実施形態のガラス板に設けられている凹凸のピッチが小さくなるため、本実施形態で散乱対象としている光の波長領域よりも短い波長を有する光の散乱が大きくなる反面、実施形態で散乱対象としている光の波長を含む長い波長の散乱が小さくなり、ヘイズが増加しないと考えられる。他方、当該頻度がこの範囲よりも小さいガラス板であっても、高ヘイズのガラス板となる場合があると考えられる。しかしながら、本発明で特定するガラス板であって、当該頻度のみがこの範囲よりも小さいガラス板の製造は困難であると認められることから、現実的ではない。ここで、凹凸が凸部基準位置を跨ぐ頻度(回数)は、1つの凸部の頂部が凸部基準位置を超える場合に凹凸が凸基準位置を1回跨ぐと判断される。
【0041】
さらに、本実施形態のガラス板では、凸部基準位置と凹部基準位置との間の距離が0.1〜3μmの範囲内である。このような凹凸のサイズは、可視光の波長と近似している。したがって、本実施形態のガラス板は、光散乱特性を有する(ヘイズ率5%以上を有する)ことができる。凸部基準位置と凹部基準位置との間の距離が0.1〜0.3μmの範囲内を満たすガラス板は、より高い光散乱特性を有することができるので、好ましい。
【0042】
本実施形態のガラス板には、凸部基準位置と凹部基準位置との間において、ガラス板の表面に、高さが0.02〜0.5μmの範囲内の微小凸部が不規則的に複数形成されていることが好ましい。このような微小凸部がさらに形成されていることにより、可視光に対してより高い光散乱特性を実現できる。
【0043】
なお、前記凹凸は、繰り返し形成されている必要はあるものの、隣り合う凹凸同士が連続している必要はない。
【0044】
本実施形態のガラス板は、上述のとおり高いヘイズ率を有することができるので、例えば温室に使用されるガラス板(温室用ガラス板)として好適に用いることができる。
【0045】
また、このような高いヘイズ率を有するガラス板は、防眩やプライバシー確保を目的とするガラスとして使用でき、有機EL(OLED)用のガラスとしても好適に用いることができる。表面に特徴的な凹凸を有するため、低摩擦であり、指紋がつきにくいという効果も兼ね備える。本実施形態のガラス板は、化学強化、風冷強化などの強化処理を行うことも可能である。
【0046】
本実施形態のガラス板は、実施形態1のガラス板の製造方法において、混合ガスにおける酸A及び酸Bの濃度、並びに、水の濃度を適宜調整し、さらに混合ガスと接触する際のガラス材料の温度を適宜調整することにより、製造することが可能である。
【0047】
ガラス板は、例えば一般的なソーダライムガラスなどを用いることができ、ナトリウムを成分として含んでいることが望ましいが、その組成は特には限定されない。例えば、一般的なクリアガラスや低鉄ガラスなどを用いることができる。また、ガラス板の厚さは特には限定されないが、例えば0.3〜25mmの厚さとできる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について実施例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は、本発明の要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。ガラス板の特性の評価方法は、以下のとおりである。
【0049】
[ヘイズ率]
ガードナー社製「ヘイズガードプラス」を用い、C光源を用いてガラス板のヘイズ率を測定した。
【0050】
[SEM観察結果の2値化]
ガラス板の断面のSEM写真を、スキャナーで読み取り、読み取ったデータに対して2値化処理を行った。スキャナーは、Adobe社製のPhotoshop(CS6)を使用した。なお、ここでは、ガラスが存在する部分は黒色で表現され、逆に、ガラスが存在しない部分、すなわち、空隙部は白色で表現されるように2値化処理された。
【0051】
[凸部基準位置及び凹部基準位置の特定]
まず、ガラス板の表面(凹凸が設けられている表面)側からガラス板の厚さ方向の距離(深さ)に対する、それぞれの厚さ位置における空隙率を求めた。なお、それぞれの厚さ位置における空隙率とは、ガラス板の厚さ方向に沿った断面において、それぞれの厚さ位置において空間が占める割合のことである。具体的には、空隙率は、2値化した画像データに対して白色、すなわち空隙のピクセル数をカウントして算出した。ガラス板の表面(凹凸が設けられている表面)側から、ガラス板の厚さ方向に沿ってガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が90%に達する最初の位置と、空隙率が減少から増加へ転じる位置との中間の位置を、凸部基準位置と特定した。また、ガラス板の表面(凹凸が設けられている表面)側から、ガラス板の厚さ方向に沿ってガラス板の空隙率を求めたときに、空隙率が10%となるより深い位置を凹部基準位置と特定した。
【0052】
[凹凸が凸部基準位置を跨ぐ頻度]
凹凸が凸部基準位置を跨ぐ頻度は、上述の2値化処理を行った画像に対し目視でカウントすることで特定された。具体的に説明する。まず、当該画像を用いて1μmあたりの黒色と白色の境界線と、凸部基準位置との交点の個数をカウントした。次に、カウント結果をn(回)としたとき、x=(n+1)/2で求められたxの値を、凹凸が凸部基準位置を跨ぐ頻度とした。
【0053】
(実施例1〜3)
フロート法によって、ソーダライムガラス板を製造した。ガラス板の製造には、図1に示した装置と同様の構成を有する装置を用いた。まず、主なガラス組成が、70.8wt%SiO、1.0wt%Al、5.9wt%MgO、8.5wt%CaO、及び、13.2wt%NaOとなるように調合したガラス材料(ガラス転移点:558℃)を溶融し、フロートバスの溶融錫上で溶融したガラス材料をガラスリボンへと成形し、吹付部を用いて、混合ガスをガラスリボンの表面に流量20L/minで供給した。混合ガスは、HF、HCl及びHOと、流量を調整するためのNとで構成されていた。混合ガスにおいて、HFの濃度は4モル%、HClの濃度は1モル%及びHOの濃度は3.6モル%であり、残部はNであった。混合ガスと接触する際のガラスリボンの温度は、660℃であった。混合ガスとガラスリボンとの接触時間は、実施例1で3秒、実施例2で6秒、実施例3で12秒であった。その後、徐冷工程を経てガラス板を得た。
【0054】
得られた実施例1〜3のガラス板について、ヘイズ率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0055】
さらに、ガラス板の断面のSEM観察し、得られたSEM写真を用いて2値化処理を行った。図2A〜2Cは、それぞれ、実施例1〜3のガラス板の厚さ方向の断面を2値化した図である。図3Aに、図2Aのデータを用いて算出した実施例1のガラス板の表面の空隙率を示す。図3Bに、図2Bのデータを用いて算出した実施例2のガラス板の表面の空隙率を示す。図3Cに、図2Cのデータを用いて算出した実施例3のガラス板の表面の空隙率を示す。図3A〜3Cを用いて実施例1〜3のガラス板の凸部基準位置及び凹部基準位置を特定し、凸部基準位置と凹部基準位置との間の距離を求めた。結果を表1に示す。
【0056】
なお、実施例1〜3のガラス板については、ガラス板を斜め上方から観察した状態のSEM写真(ガラス板の凹凸が形成された表面及び断面を含むSEM写真)も撮影した。図4A〜4Cは、それぞれ、実施例1〜3のガラス板を斜め上方から観察した状態のSEM写真である。これらのSEM写真と、図2A〜2Cの断面を2値化した図とから確認できるように、実施例1〜3のガラス板は、凸部基準位置と凹部基準位置との間において、ガラス板の凹凸が設けられた表面に、さらに微小凸部(高さが0.02〜0.5μmの範囲の凸部)が不規則的に複数形成されている。
【0057】
【表1】
【0058】
HClとHFとを含み、かつHFに対する水のモル比が5未満を満たす混合ガスを、ガラスリボンの表面に接触させるという簡便な方法により、表1に示すように、本発明のガラス板において特定された特徴的な表面形状を有し、かつヘイズ率が5%を超える光散乱特性を備えたガラス板を製造することができた。
【0059】
(実施例4〜15及び比較例1〜8)
製造条件を表2に示すように変更した点以外は、実施例1〜3と同様の方法で、実施例4〜15及び比較例1〜8のガラス板を作製した。得られたガラス板のヘイズ率を測定した。結果を表2に示す。なお、表2には実施例1〜3の製造条件及びヘイズ率の測定結果も併せて示す。比較例2、3及び6のガラス板については、ガラス板を斜め上方から観察した状態のSEM写真(混合ガスが吹き付けられた表面及び断面を含むSEM写真)を撮影した。図5A〜5Cは、それぞれ、比較例2、3及び6のガラス板を斜め上方から観察した状態のSEM写真である。
【0060】
【表2】
【0061】
本発明の製造方法で作製された実施例1〜15のガラス板は、ヘイズ率5%以上の光散乱特性を備えていた。これに対し、HCl又はHFが含まれない混合ガス、あるいは、HOの割合が多すぎる混合ガスを用いて作製された比較例1〜8のガラス板は、1%未満のヘイズ率しか得られず、光散乱特性を有していなかった。図5A及び5Bに示す比較例2及び3のガラス板は、表面に不規則な凹凸が形成されているものの、その凹凸の形状は明らかに図4A〜4Cの実施例1〜3のガラス板のものとは異なっていることが確認できた。また、図5Cに示す比較例6のガラス板は、表面に不規則な凹凸が形成されていなかった。比較例2(図5A)のガラス板は、SEM写真からも判断できるように、凹凸の大きさが0.1μm程度であるため、凸部基準位置と前記凹部基準位置との間の距離は0.1μm未満であると特定できる。
【0062】
(実施例16及び比較例9,10)
混合ガスのフッ素元素を含む酸Aとしてトリフルオロ酢酸(TFA)を用い、製造条件を表3に示すように変更した点以外は、実施例1〜3と同様の方法で、実施例16及び比較例9,10のガラス板を作製した。得られたガラス板のヘイズ率を測定した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
本発明の製造方法で作製された実施例16のガラス板は、ヘイズ率5%以上の光散乱特性を備えていた。これに対し、HClが含まれない混合ガスを用いた比較例9、あるいは、HOの割合が多すぎる混合ガスを用いて作製された比較例10のガラス板は、1%未満のヘイズ率しか得られず、光散乱特性を有していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によって得られるガラス板は、光散乱特性を有する。したがって、太陽電池の前面ガラス板及びディスプレイ用のガラス基板、有機EL用のガラス基板、並びに、建造物又は移動体の窓、及び、パーティション等として用いられるガラス板のうち光散乱特性が要求されるもののほか、低摩擦、指紋のつきにくさが要求されるもの等に利用できる。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C