特許第6360061号(P6360061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360061
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】電気化学セルのための弾性フロー構造
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20180709BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20180709BHJP
【FI】
   H01M8/0247
   H01M8/10 101
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-535716(P2015-535716)
(86)(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公表番号】特表2015-530726(P2015-530726A)
(43)【公表日】2015年10月15日
(86)【国際出願番号】US2013062641
(87)【国際公開番号】WO2014055416
(87)【国際公開日】20140410
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】61/710,073
(32)【優先日】2012年10月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505163578
【氏名又は名称】ヌヴェラ・フュエル・セルズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】ドミット,エド
(72)【発明者】
【氏名】ブランシェ,スコット
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−250958(JP,A)
【文献】 特開2005−317416(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0144898(US,A1)
【文献】 特開2006−070322(JP,A)
【文献】 特表2004−510311(JP,A)
【文献】 特開2013−120657(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00 − 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一のフロー構造、第二のフロー構造、および第一のフロー構造と第二のフロー構造との間に配置された膜電極接合体を含む電気化学セルであって、
第一のフロー構造が、第二のフロー構造より低い弾性係数を有する材料で構築され、 第一のフロー構造の長さが、第二のフロー構造の長さより長く、ここで第一のフロー構造の長さおよび第二のフロー構造の長さは、第一のフロー構造の中心から第二のフロー構造の中心に向かう縦軸に沿って測定され、
第二のフロー構造は、第一のフロー構造より大きい剛性を有し、第一のフロー構造および第二のフロー構造の剛性が、前記縦軸に実質的に平行な方向で測定され、
膜電極接合体において、第一のフロー構造はカソード側に配置され、第二のフロー構造はアノード側に配置され、
電気化学セルの作動時にカソード側とアノード側とで圧力差が存在するとき、第一のフロー構造が第二のフロー構造よりも高い流体圧力に晒される、上記電気化学セル。
【請求項2】
第一のフロー構造と第二のフロー構造との圧力差によって引き起こされる膜電極接合体の移動に対して弾性的に拡張するように第一のフロー構造が設計されており、それにより第一のフロー構造の膜電極接合体との物理的な接触が維持される、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
第一のフロー構造が、第一の層および第二の層を含み前記第一の層は、第二のフロー構造の材料の剛性より小さい剛性を有する、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記第二の層が、第二のフロー構造より長い長さを有するか、または第二のフロー構造の弾性係数より小さい弾性係数を有する、請求項3に記載の電気化学セル。
【請求項5】
第一のフロー構造が、スチールウールを含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項6】
第一のフロー構造が、ニッケルクロムを含む金属発泡体を含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項7】
第一のフロー構造が、炭素繊維で作製されたクロス、紙、およびウールのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項8】
最大14,000psi(96.527MPa)の差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値が、0psi(0MPa)の差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満である、請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項9】
電気化学セルを構築する方法であって、該方法は:
弾性係数、断面積、および長さを有する第一のフロー構造を選択すること;
弾性係数、断面積、および長さを有する第二のフロー構造を選択すること、ここで第一のフロー構造は第二のフロー構造より低い弾性係数を有する材料で構築され、第一のフロー構造の長さは第二のフロー構造の長さより長く、第一のフロー構造の長さおよび第二のフロー構造の長さは第一のフロー構造の中心から第二のフロー構造の中心に向かう縦軸に沿って測定され、第二のフロー構造は第一のフロー構造より大きい剛性を有し、第一のフロー構造および第二のフロー構造の剛性は前記縦軸に実質的に平行な方向で測定される;
第一のフロー構造と第二のフロー構造との間に膜電極接合体を配置すること、ここで電膜電極接合体において、第一のフロー構造はカソード側に配置され、第二のフロー構造はアノード側に配置され、電気化学セルの作動時にカソード側とアノード側とで圧力差が存在するとき、第一のフロー構造は第二のフロー構造よりも高い流体圧力に晒される;
一対のバイポーラプレートの間に第一のフロー構造、第二のフロー構造、および膜電極接合体を配置すること;および
第一のフロー構造を第一の圧縮状態に圧縮すること、ここで第一の圧縮状態は、作動中に第一のフロー構造が第二の拡張状態に拡張するような弾性係数、長さ、および断面積のうち少なくとも1つに基づく;
を含む、上記方法。
【請求項10】
14,000psi(96.527MPa)より大きい差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値が、0psi(0MPa)の差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
電気化学セルの操作方法であって:
第一の位置から第一の位置と異なる第二の位置に第一のフロー構造を圧縮すること、ここで第一の位置から第二の位置への移行中、第一のフロー構造は実質的に膜電極接合体と接触したままであり、
第一の位置から第二の位置への移行中、膜電極接合体の逆側における第二のフロー構造は実質的に膜電極接合体と接触したままであり、
膜電極接合体において、第一のフロー構造はカソード側に配置され、第二のフロー構造はアノード側に配置され、
電気化学セルの作動時にカソード側とアノード側とで圧力差が存在するとき、第一のフロー構造は第二のフロー構造よりも高い流体圧力に晒される;および
第一のフロー構造を加圧して、第一の位置から第二の位置への第一のフロー構造の移行を引き起こし、膜電極接合体を通じて差圧をもたらすこと、ここで第一のフロー構造は第二のフロー構造より低い弾性係数を有する材料で構築され、
第一のフロー構造の長さは第二のフロー構造の長さより長く、第一のフロー構造の長さおよび第二のフロー構造の長さは第一のフロー構造の中心から第二のフロー構造の中心に向かう縦軸に沿って測定され、
第二のフロー構造は第一のフロー構造より大きい剛性を有し、第一のフロー構造および第二のフロー構造の剛性は前記縦軸に実質的に平行な方向で測定される;
を含む、上記操作方法。
【請求項12】
最大14,000psi(96.527MPa)の差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値が、0psi(0MPa)の差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本出願は、参照により本明細書に組み入れられる2012年10月5日付けで出願された米国仮出願第61/710,073号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
[002]本発明の開示は、電気化学セルを対象とし、より具体的には、電気化学セルで使用するための弾性フロー構造の設計を対象とする。
【背景技術】
【0003】
[003]電気化学セルは通常、燃料電池として分類され、化学反応から電流を発生させるのに使用されるデバイスである。燃料電池技術は、例えば運搬用車両や携帯用の電力供給用途などの様々な技術にとって、従来の電源の有望な代替物を提供する。燃料電池は、燃料(例えば水素、天然ガス、メタノール、ガソリンなど)の化学エネルギーを酸素または他の酸化剤との化学反応を介して電気に変換する。この化学反応は、典型的には電気、熱、および水を生産する。基礎的な燃料電池は、負電荷を有するアノード、正電荷を有するカソード、および電解質と呼ばれるイオン伝導性材料を含む。
【0004】
[004]様々な燃料電池技術において様々な電解質材料が利用されている。プロトン交換膜(PEM)燃料電池は、例えば、電解質として高分子イオン伝導膜を利用する。水素PEM燃料電池において、水素原子は、アノードで電気化学的に電子と陽子(水素イオン)とに分離する。アノードにおける電気化学反応は、2H→4H+4eである。
【0005】
[005]反応によって生産された電子は、電気負荷回路を介してカソードに流れ、直流電流が生じる。この反応によって生産された陽子は電解質膜を介してカソードに拡散する。電解質は、負電荷を有する電子を通過させずに正電荷を有するイオンを通過させるように設計できる。
【0006】
[008]電解質を介して陽子が通過した後、陽子は、カソードで電気負荷回路を通過した電子と反応できる。カソードでの電気化学反応により、O+4H+4e→2HOで示されるように、水および熱が生産される。
【0007】
[007]1つの燃料電池は、作動中、一般的には約1ボルトを生産できる。特定の用途にとって望ましい量の電力を得るには、個々の燃料電池を組み合わせて燃料電池スタックを形成する。各セルがカソード、電解質膜、およびアノードを包含する燃料電池を、連続して一緒にスタックする。各カソード/膜/アノード接合体は、「膜電極接合体」(MEA)を構成し、これは通常、バイポーラプレートの両面上に支持される。プレート中に形成されたチャネルまたは溝(これは、流れ場として知られている)を介してMEAの電極にガス(水素および空気)が供給される。バイポーラプレート(これは、流れ場プレートまたはセパレータープレートとしても知られている)は、機械的な支持を提供することに加えて、スタック中の個々のセルを電気的に連結しつつ物理的に分離する。またバイポーラプレートは、集電装置としても作用し、チャネルを介してそれぞれの電極表面に燃料と酸化剤とを供給し、さらにセル作動中に形成された水を除去するためのチャネルを提供することができる。典型的には、バイポーラプレートは、例えばステンレス鋼、チタンなどの金属、および例えばグラファイトなどの非金属の電気導体から作製される。
【0008】
[008]加えて、典型的な燃料電池スタックは、燃料および酸化剤をそれぞれアノードおよびカソードの流れ場に向かわせるためのマニホールドおよび注入口ポートを包含する。また燃料電池スタックは、個々のセルの作動中に生成した熱を吸収するための冷却剤流体をスタック内の内部チャネルに向かわせるためのマニホールドおよび注入口ポートを包含する場合もある。また燃料電池スタックは、過量のガスおよび冷却水を追い出すための排気マニホールドおよび出口ポートも包含する。
【0009】
[009]図1は、PEM燃料電池10の様々な構成要素を示す概略的な分解組立図である。示した通り、バイポーラプレート2は、アノード7A、カソード7C、および電解質膜8を含むMEAの両側に配置されている。アノード7Aに供給された水素原子は、電気化学的に電子と陽子(水素イオン)とに分けられる。電子は、電気回路(示さず)を介してカソード7Cに流れその過程で電気を発生させ、それと同時に陽子は、電解質膜8を介してカソード7Cに移動する。カソードでは、陽子は(カソードに供給された)電子および酸素と結合して、水および熱が生産される。
【0010】
[010]加えて、PEM燃料電池10は、燃料電池内のMEAの両側に導電性ガス拡散層(GDL)5を含む。GDL5は、セル内のガス及び液体の輸送を可能にする拡散媒体として機能し、バイポーラプレート2と電解質膜8との間で電気伝導をもたらし、セルから熱やプロセス水を除去するのに役立ち、場合によっては電解質膜8への機械的な支持を提供する。
【0011】
[011]典型的な燃料電池において、電解質膜の両側の反応物であるガスは、流れ場を通って流動し、多孔質GDLを通って拡散して電解質膜に到達する。流れ場とGDLとが隣接して配置されており、内部の流体ストリームで連結されていることから、以降特に他の規定がない限り、流れ場とGDLとを集合的に「フロー構造」と称する。しかしながら、立体的な多孔質金属GDLと組み合わせて従来のチャネルタイプ流れ場を使用すること、従来のGDLと組み合わせて立体的な多孔質金属流れ場を使用すること、または流れ場およびGDLの両方として立体的な多孔質金属基板を使用することは、本発明の開示の範囲内である。
【0012】
[012]電解質膜の両側の反応物であるガスは異なる圧力で存在することが多いため、MEA全体で圧力差が生じる。圧力差は、MEAを高圧から低圧に移動させる力をMEA上にもたらす。この移動の結果、高圧側においてフロー構造とMEAの接触表面との接触圧力の低下とそれらの分離が起こる可能性がある。圧力の低下とそれに続くMEAの接触表面と高圧フロー構造との分離は、電気伝導を低下させ、それら2つの間の接触抵抗を増加させることにより、燃料電池の効率を低下させると考えられる。高圧作動による接触圧力の低下と分離によって、この非効率さを克服するために電気化学セル用フロー構造の設計を改善する継続的な必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
[013]本発明の開示は、電気化学セルで使用するための改善されたフロー構造の設計を対象とする。特に、本発明の開示は、電気化学セルと共に使用するための弾性フロー構造の設計を対象とする。このようなデバイスは、これらに限定されないが、燃料電池、電解セル、水素精製機、水素エキスパンダー(hydrogen expander)、および水素圧縮機などの高差圧下での電気化学セルの作動で使用される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
[014]本発明の開示の一態様は、第一のフロー構造、第二のフロー構造、および第一のフロー構造と第二のフロー構造との間に配置された膜電極接合体を含み得る電気化学セルを対象とし;ここで第二のフロー構造は、第一のフロー構造より大きい剛性(stiffness)を有する。
【0015】
[015]他の実施態様において、第一のフロー構造および第二のフロー構造の剛性は、第一のフロー構造の中心から第二のフロー構造の中心に向かう縦軸に実質的に平行な方向で測定できる。他の実施態様において、第一のフロー構造が膜電極接合体との物理的な接触を維持できるように、第一のフロー構造と第二のフロー構造との圧力差によって引き起こされる膜電極接合体の移動に対して弾性的に拡張するように第一のフロー構造が設計されていてもよい。他の実施態様において、第一のフロー構造および第二のフロー構造は、実質的に同じ特性を有する材料で構築されてもよく、第一のフロー構造の長さは、第二のフロー構造の長さより長くてもよく、ここで第一のフロー構造の長さおよび第二のフロー構造の長さは、前記縦軸に沿って測定される。
【0016】
[016]他の実施態様において、第一のフロー構造は、第一の材料で構築されてもよく、第二のフロー構造は、第一の材料の弾性係数より大きい弾性係数を有する第二の材料で構築されてもよく、第一のフロー構造の長さは、第二のフロー構造の長さより短くてもよく、ここで第一のフロー構造の長さおよび第二のフロー構造の長さは、前記縦軸に沿って測定される。他の実施態様において、第一のフロー構造は、少なくとも2つの材料の層を包含していてもよく、少なくとも2つの材料の層のうち少なくとも1つは、第二のフロー構造材料の剛性より小さい剛性を有する。
【0017】
[017]他の実施態様において、少なくとも1つの第二の層は、第二のフロー構造より長い長さを有していてもよいし、または第二のフロー構造の弾性係数より小さい弾性係数を有していてもよい。他の実施態様において、第一のフロー構造は、第二のフロー構造より低い弾性係数を有する材料で構築されてもよいし、第一のフロー構造の長さは、第二のフロー構造の長さより長くてもよく、ここで第一のフロー構造の長さおよび第二のフロー構造の長さは、前記縦軸に沿って測定される。他の実施態様において、第一のフロー構造は、電気化学セルのカソード側にあってもよいし、第二のフロー構造は、電気化学セルのアノード側にあってもよい。
【0018】
[018]他の実施態様において、第一のフロー構造は、スチールウールを含んでいてもよい。他の実施態様において、第一のフロー構造は、ニッケルクロムなどの金属発泡体を含んでいてもよい。他の実施態様において、第一のフロー構造は、炭素繊維で作製されたクロス、紙、およびウールのうち少なくとも1つを含んでいてもよい。他の実施態様において、最大14,000psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値は、0psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満であってもよい。
【0019】
[019]本発明の開示の別の態様は、第一のフロー構造、第二のフロー構造、および第一のフロー構造と第二のフロー構造との間に配置された膜電極接合体;一対のバイポーラプレート(ここで第一のフロー構造、第二のフロー構造、および膜電極接合体は、一対のバイポーラプレートの間に配置される);ならびにばね機構(a spring mechanism)(ここでばね機構は、第一のフロー構造と第一のフロー構造に隣接するバイポーラプレートとの間に配置され、第一のフロー構造に、実質的に膜電極接合体に向かう方向で圧力をかける)を含み得る電気化学セルを対象とする。
【0020】
[020]他の実施態様において、ばね機構は、プレートおよび少なくとも1つのらせん形の円板ばねを含んでいてもよい。他の実施態様において、ばね機構は、少なくとも1つのリーフ型ばねを含んでいてもよい。他の実施態様において、ばね機構は、少なくとも1つの波型ばねを含んでいてもよい。他の実施態様において、ばね機構は、少なくとも1つのディンプルプレートを含んでいてもよい。他の実施態様において、最大14,000psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値は、0psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満であってもよい。
【0021】
[021]本発明の開示の別の態様は、電気化学セルを構築する方法を対象とし、本方法は、弾性係数、断面積、および長さを有する第一のフロー構造を選択すること;弾性係数、断面積、および長さを有する第二のフロー構造を選択すること;第一のフロー構造と第二のフロー構造との間に膜電極接合体を配置すること;一対のバイポーラプレートの間に第一のフロー構造、第二のフロー構造、および膜電極接合体を配置すること;および
第一のフロー構造を第一の圧縮状態に圧縮すること
を含んでいてもよく、ここで第一の圧縮状態は、作動中に第一のフロー構造が第二の拡張状態に拡張するような弾性係数、長さ、および断面積のうち少なくとも1つに基づく。
【0022】
[022]他の実施態様において、第一のフロー構造および第二のフロー構造を選択することにおいて、第一のフロー構造の弾性係数が、第二のフロー構造の弾性係数と実質的に同じになり、第一のフロー構造の長さが、第二のフロー構造の長さより長くなるように、第一のフロー構造が構成されていてもよい。他の実施態様において、第一のフロー構造および第二のフロー構造を選択することにおいて、第一のフロー構造の弾性係数は、第二のフロー構造の弾性係数より小さくし、第一のフロー構造の長さは、第二のフロー構造の長さより短いかまたはそれに等しくしてもよい。
【0023】
[023]他の実施態様において、第一のフロー構造および第二のフロー構造を選択することにおいて、第一のフロー構造の弾性係数は、第二のフロー構造の弾性係数より小さくし、第一のフロー構造の長さは、第二のフロー構造の長さより長くしてもよい。他の実施態様において、14,000psiより大きい差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値は、0psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満であってもよい。
【0024】
[024]本発明の開示の別の態様は、電気化学セルの操作方法を対象とし、本方法は、第一の位置から第一の位置と異なる第二の位置に第一のフロー構造を圧縮すること、ここで第一の位置から第二の位置への移行中、第一のフロー構造は実質的に膜電極接合体と接触したままであり;ここで第一の位置から第二の位置への移行中、膜電極接合体の逆側における第二のフロー構造は実質的に膜電極接合体と接触したままであり;および第一のフロー構造を加圧して、第一の位置から第二の位置への第一のフロー構造の移行を引き起こし、膜電極接合体全体に差圧をもたらすことを含んでいてもよい。
【0025】
[025]他の実施態様において、最大14,000psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値は、0psiの差圧での作動時における電気化学セルのセル抵抗測定値の6倍未満であってもよい。他の実施態様において、第二のフロー構造は、第一のフロー構造より大きい剛性を有していてもよい。
【0026】
[026]前述の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも単なる例示および説明であり、特許請求された開示を制限しないと理解されるものとする。
【0027】
[027]添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本発明の開示の実施態様を説明と共に例示するものであり、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、プロトン交換膜(PEM)燃料電池の様々な構成要素を示す燃料電池の概略的な分解組立図である。
図2図2は、典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図3A図3Aは、ばね機構を包含する典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図3B図3Bは、典型的な実施態様に係るバイポーラプレートおよびばね機構の一部の図解である。
図3C図3Cは、リーフ型のばね機構を包含する典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図3D図3Dは、波型ばね機構を包含する典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図3E図3Eは、典型的な実施態様に係るディンプルプレートの図解である。
図4図4は、典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図5図5は、典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図6図6は、典型的な実施態様に係る電気化学セルの一部の概略図である。
図7図7は、典型的な実施態様に係る3種のフロー構造の組み合わせの、セル抵抗対カソードに適用した圧力を例示するグラフである。
図8図8は、典型的な実施態様に係るスチールウールのフロー構造の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[040]以下、開示された本発明の典型的な実施態様について詳細に述べ、その例を添付の図面で例示する。可能な限り、同じまたは類似の部品を指す場合は図面全体にわたり同じ参照番号を使用する。水素、酸素、および水を採用するPEM燃料電池に関して説明するが、本発明の開示のデバイスおよび方法は、高差圧下で作動する電気化学セルなど様々な種類の電気化学セルと共に採用できることが理解されよう。
【0030】
[041]本発明の開示は、電気化学セルで使用するための弾性フロー構造の設計を対象とする。このような電気化学セルにおいて、十分なセルの電気伝導を維持し、圧力差の全範囲にわたりセル抵抗を低下させるために、一般的に各フロー構造とMEAとの間に十分な接触圧力が維持できるように、弾性フロー構造が設計される。
【0031】
[042]図2は、典型的な実施態様に係るPEM燃料電池200の概略的な分解組立図である。燃料電池200は、2つのバイポーラプレート210、220を含んでいてもよい。バイポーラプレート210は、燃料電池200の高圧側に配置され、バイポーラプレート220は、燃料電池200の低圧側に配置される。バイポーラプレートは、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni−Cr合金、または他のあらゆる導電性材料から作製できる。
【0032】
[043]燃料電池200は、バイポーラプレート210、220に加えて、膜電極接合体(「MEA」)230を含んでいてもよく、ここで膜電極接合体230は、右側に第一のフロー構造240および左側に第二のフロー構造250を有していてもよい。示した通り、第一のフロー構造240は、MEA230とバイポーラプレート210との間に配置され、第二のフロー構造250は、MEA230とバイポーラプレート220との間に配置される。バイポーラプレート210、220は、燃料電池スタック中で燃料電池200を隣接する燃料電池(示さず)から隔てている。いくつかの他の実施態様において(示さず)、セルスタック中の2つの隣接する燃料電池は、バイポーラプレートを共有していてもよい。
【0033】
[044]MEA230は、アノード231、カソード232、およびPEM233を含んでいてもよい。PEM233は、アノード231とカソード232との間に配置されて、アノードとカソードとを互いに電気的に絶縁していてもよい。PEM233は、純粋な高分子膜または複合膜を含んでいてもよく、ここで他の材料、例えばシリカ、ヘテロポリ酸、層状の金属リン酸塩、リン酸塩、およびリン酸ジルコニウムが高分子マトリックス中に埋め込まれていてもよい。PEM233は、陽子を透過させることができるが電子を伝達させないものでよい。アノード231およびカソード232は、触媒を含有する多孔質炭素電極を含んでいてもよい。触媒材料、例えば白金は、酸素と燃料との反応の速度を高めることができる。MEA230の寸法は、用途および負荷要件に応じて規模拡張してもよいし、または規模縮小してもよい。MEA230の厚さは、PEM233の厚さ、加えてアノード231およびカソード232における触媒材料の濃度に基づいていてもよい。
【0034】
[045]第一のフロー構造240および第二のフロー構造250は、バイポーラプレート210、220とMEA230との間の電気伝導をもたらし、同時に燃料電池200内のガスおよび液体を輸送するための媒体も供給する。加えて、第一のフロー構造240および第二のフロー構造250は、MEA230に機械的な支持も提供できる。
【0035】
[046]第一のフロー構造240および第二のフロー構造250は、「フリット」タイプの高密度に焼結された金属を含んでいてもよい。加えて、層状のフロー構造(すなわちスクリーンパックおよびエキスパンドメタル)を使用してもよい。金属発泡体から加工された立体的な多孔質基板または他の多孔質金属基板の使用も可能である。多孔質金属材料は、例えばステンレス鋼、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄などの金属、または例えばニッケルクロム合金などの金属合金を含んでいてもよい。高圧または高差圧セルにおいて、金属発泡体または立体的な多孔質金属基板は、従来のチャネルタイプ流れ場の代替物として使用できる。
【0036】
[047]所定の実施形態において、高圧フロー構造は、スチールウールなどの金属製のウールで構成されていてもよい。ウールのフロー構造は、様々なグレードの鋼で作製されていてもよいし、または他の金属、例えばステンレス鋼、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニッケル−クロム、もしくは別の金属合金で作製されていてもよい。加えて、ウールのフロー構造は、炭素、金、窒化チタンなどの耐食性コーティングを有する金属からも作製できる。他の実施態様において、フロー構造は、炭素繊維から、クロス、紙、またはウールのフロー構造の形態で作製できる。
【0037】
[048]典型的な実施態様において、燃料電池200は、高差圧での作動に使用でき、その間、燃料電池200中の第一のフロー構造240は、作動中に、MEA230の反対側の第二のフロー構造250より高い流体圧力に晒される。本発明の開示の目的に関して、第一のフロー構造は、「高圧フロー構造」を構成すると予想され、第二のフロー構造は、「低圧フロー構造」を構成すると予想される。
【0038】
[049]燃料電池200は、最大15,000psiの差圧で作動できると考えられている。このような作動条件によって、燃料電池200中のフロー構造は約15,000psiに等しいかまたはそれより大きい応力レベルに圧縮され得る。高差圧燃料電池の典型的な実施態様において、低圧フロー構造(すなわち、第二のフロー構造250または燃料電池のアノード側)は、高圧フロー構造(すなわち、第一のフロー構造240または燃料電池のカソード側)の密度より大きい密度で形成されてもよい。
【0039】
[050]上記で説明したように、第一のフロー構造240および第二のフロー構造250は、バイポーラプレート210、220とMEA230との間の電気伝導のための媒体として機能することに加えて、MEA230に機械的な支持を提供できる。典型的な実施態様において、高圧側における第一のフロー構造240からのMEA230に作用する高圧流体は、低圧側における第二のフロー構造250によって提供される構造的な支持と対向していてもよい。
【0040】
[051]図3Aは、燃料電池300の典型的な実施態様を例示する。図2で示されるように、燃料電池300は、2つのバイポーラプレート310および320、MEA330、第一のフロー構造340、ならびに第二のフロー構造350を含んでいてもよい。しかしながら、図3Aで開示された実施態様は、ばね機構360をさらに含んでいてもよい。ばね機構360は、第一のフロー構造340と高圧バイポーラプレート310との間に取り付けられてもよい。
【0041】
[052]ばね機構360は、例えば、図3Bで示されるようならせん形の円板ばね365、図3Cで示されるようなリーフ型ばね366、図3Dで示されるような波型ばね367、図3Eで示されるようなディンプルプレート368、またはその他の等価な機構を含んでいてもよい。ばね機構360は、第一のフロー構造340の縦軸380に実質的に平行に力370が加えられるように設計されていてもよい。上記で説明したように、燃料電池300が高圧(すなわち最大15,000psi)で、結果として高差圧で作動する場合、カソード側の圧力の駆動力によってMEA330が低圧側に向かって移動するにつれて、低圧の流れ場は収縮してより薄くなると予想される。接触表面390でのMEA330と第一のフロー構造340との接触圧力の低下とそれらの分離を制限するために、実際にMEA330の移動に続いて第一のフロー構造が燃料電池300の低圧側に向かって移動するように、ばね機構360は、第一のフロー構造に力370を働かせることができる。ばね機構360は、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni−Cr合金、炭素繊維または他のあらゆる等価な構造的な導電性材料で作製できる。
【0042】
[053]図3Bは、ばね機構360の典型的な実施態様を例示しており、ここでばね機構360は、プレート310と少なくとも1つのらせん形の円板ばね365とを含んでいてもよい。複数のらせん形の円板ばね365を使用してもよい。プレート310は、プレート中の少なくとも1つまたは複数の凹部を有する実質的に平坦なプレート310になるように設計されていてもよく、各凹部は、1つのらせん形の円板ばね365を受けるのに好適な形態になっていてもよい。プレート310とらせん形の円板ばね365とが接合体を形成していてもよく、この接合体は、バイポーラプレート310と第一のフロー構造340との間に配置されていてもよい。プレート310は、隣接する第一のフロー構造340上で、1つまたはそれより多くのらせん形の円板ばね365の力を均一に分配させることができる。代替の実施態様において(示さず)、らせん形の円板ばね365または複数のばねは、平坦なプレート310にエッチングされていてもよい。らせん形の円板ばね365およびプレート310の寸法は、燃料電池300全体の厚さが実質的に増加しないような寸法であってもよい。
【0043】
[054]典型的な実施態様においてばね機構360は、接触表面390の分離によるセル抵抗の増加を制限するための、第一のフロー構造340とバイポーラプレート310との間の電気伝導媒体として作用する可能性がある。
【0044】
[055]加えて、ばね機構360は、複数の個々のばねで構成されていてもよいし、または単一のばねを包含していてもよい。ばね機構360は、第一のフロー構造340全体にわたり均一な力がもたらされるように設計されていてもよい。ばね機構360は、一定または可変のばね定数を有していてもよい。ばね機構を弱めて、燃料電池の状態を迅速に平衡に戻すか、または燃料電池圧力の変動によって引き起こされる振動を抑制するようにしてもよい。
【0045】
[056]図3Eは、ばね機構360の典型的な実施態様を例示しており、ここでばね機構は、ディンプルプレート368で構成することができる。ディンプルプレートは、ディンプルの突起でホイルを型押しすることにより形成してもよい。ディンプルプレートは、ばね状の特性を示し得る。ディンプルプレートは、アルミニウム、鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni−Cr合金、または他の導電性材料から作製できる。力370を生産するために、1つまたはそれより多くのディンプルプレートを使用してもよい。
【0046】
[057]図4は、燃料電池400の代替の実施態様を示す。図2および3Aで示されるように、燃料電池400は、2つのバイポーラプレート410および420、MEA430、第一のフロー構造440、ならびに第二のフロー構造450を含んでいてもよい。しかしながら、図4に開示された実施態様は、図3Aで例示したようなばね機構を利用しない。その代わりに、第一のフロー構造440が、より硬い構造的特性を示す第二のフロー構造450と比べてよりフレキシブルな構造的特性を示すことによってばねと実質的に同じように機能するように、第一のフロー構造440が設計されていてもよい。
【0047】
[058]材料要素の剛性は、その要素の構造の特性である。すなわち剛性(k)は、以下の方程式(1)で示されるように、断面積(A)、要素の長さ(L)、および弾性係数(E)の関数である。
k=(AE)/L (1)
[059]構造または要素の剛性は、設計に影響する可能性があるため、弾性係数は、材料の選択に影響する可能性がある。たわみまたは圧縮が望ましくない場合に、高い弾性係数が求められる可能性があり、一方でフレキシビリティーまたは拡張が必要とされる場合、低い弾性係数が求められる可能性がある。
【0048】
[060]図4で示されるように、第一のフロー構造440は、第二のフロー構造450の長さL2より長い長さL1を有していてもよい。方程式(1)に基づいて、同じ断面積と同じ弾性係数とを有する2つの要素は、剛性(k)における差を有すると予想され、剛性(k)における差は、要素の長さにおける差に依存する。例えば、第一のフロー構造440が、第二のフロー構造450の長さL2の2倍にあたる長さL1を有する場合、結果的に、第二のフロー構造450は第一のフロー構造の2倍「硬い」こととなる。
【0049】
[061]図4で示されるような第一のフロー構造440および第二のフロー構造450は、実質的に同じ断面積と実質的に同じ弾性係数とを有する。それゆえに、第一のフロー構造440および第二のフロー構造450は、燃料電池400内で以下のように作動する可能性がある。MEA430全体に差圧が構築されると、その圧力によって発生した力が、MEA430を第二のフロー構造450に移動させると予想される。図4に示した実施態様のケースにおいて、第二のフロー構造450は、第一のフロー構造440より実質的に「硬い」。「より硬い」第二のフロー構造450は、差圧によって発生した力の結果としてわずかに圧縮して弾性的に変形すると予想される。第二のフロー構造450の圧縮を最小にしながら、「ばね状」の第一のフロー構造440を、MEA430の動きに応答してより顕著に収縮または拡張させることができる。MEA430の動きに対応する第一のフロー構造440の拡張は、燃料電池400の差圧が増加する際のMEA430と第一のフロー構造440との接触圧力および電気伝導を維持することを可能にする。
【0050】
[062]代替の実施態様において、図4で示されるような第一のフロー構造440および第二のフロー構造450は、実質的に同じ断面積を有し、第一のフロー構造440は、第二のフロー構造450の弾性係数より小さい弾性係数を有し、第一のフロー構造440の長さL1は、第二のフロー構造450の長さL2より長い。方程式(1)に基づいて、第一のフロー構造440および第二のフロー構造450の長さおよび弾性係数における差の両方のために、第二のフロー構造450は、第一のフロー構造450より硬くなる。
【0051】
[063]図5は、燃料電池500の代替の実施態様を示す。図4で示されるように、燃料電池500は、2つのバイポーラプレート510および520、MEA530、第一のフロー構造540、ならびに第二のフロー構造550を含んでいてもよい。しかしながら、図5に示される実施態様は、異なる材料組成を有する第一のフロー構造540および第二のフロー構造550を包含する。例えば、第一のフロー構造540は、第二のフロー構造550の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料を含んでいてもよい。方程式(1)に基づいて、第一のフロー構造550の長さL1は、第二のフロー構造550の長さL2と実質的に等しくてもよく、それでもなお第一のフロー構造540および第二のフロー構造550の弾性係数における差に応じて、「より硬い」第二の流れ場550と比べて「ばね状」の物理的特性を示す。例えば、第一および第二のフロー構造540、550の両方が、同じ断面積(A)および同じ長さ(L)を有するが、第一のフロー構造540が、第二のフロー構造550の弾性係数値の半分にあたる弾性係数を有する場合、第二のフロー構造550は第一のフロー構造540の約2倍「硬い」こととなる。
【0052】
[064]方程式(1)に基づいて、第一のフロー構造540の長さL1は、第二のフロー構造550の長さL2より短くてもよく、それでもなお「より硬い」第二のフロー構造550に比べて「ばね状」の物理的特性を示す。例えば、両方のフロー構造の断面積(A)が同じであり、第二のフロー構造550の長さL2が第一のフロー構造540の長さL1の約2倍であり、第一のフロー構造540が第二のフロー構造550の4分の1の弾性係数を有する場合、第二のフロー構造550は、第一のフロー構造540の約2倍「硬い」こととなる。
【0053】
[065]図6は、燃料電池600の代替の実施態様を示す。図4および図5で示されるように、燃料電池600は、2つのバイポーラプレート610および620、MEA630、第一のフロー構造640、ならびに第二のフロー構造650を含んでいてもよい。しかしながら、図5に開示された実施態様のように、第一のフロー構造640は、ラミネートされた、または別の方法で連結された2つの層、すなわち第一の層660および第二の層670を含んでいてもよく、ここで第一のフロー構造640を含む2つの層は、組み合わされると、相対的な「硬い」第二のフロー構造と比較して「ばね状」になる。例えば、第一の層660は、第二のフロー構造650の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で構成されていてもよく、第二の層670は、第二のフロー構造650の長さL2より長い長さL4を有していてもよい。加えて、第一の層660は、第二のフロー構造650の弾性係数より小さい弾性係数を有する材料で構成されていてもよいし、第二の層670は、第二のフロー構造650の弾性係数より大きい弾性係数を有していてもよい。
【0054】
[066]示された第一のフロー構造と第二のフロー構造との様々な可能性のある構造の例は、単なる典型例であり、本発明の開示は示された例に限定されず、その代わりに本発明の開示は、第一のフロー構造と第二のフロー構造との望ましい剛性の比率が達成されるように第一および第二のフロー構造を構築できるようなフロー構造のあらゆるバリエーションを包含する。
【0055】
[067]方程式(1)に基づく様々な実施態様において、第一のフロー構造および第二のフロー構造の弾性係数および長さを変更して、2つのフロー構造間のコンプライアンス比(compliance ratio)を最適化することが可能である。コンプライアンス比が適正であれば、セル抵抗の増加を制限しつつ全範囲の差次的な作動圧力によってMEAと各フロー構造との接触圧力が確実に維持される。
【0056】
[068]弾性係数をちょうど超えるフロー構造を設計する際に考慮される可能性がある追加の要因としては、材料の細孔サイズ、表面粗さ、熱抵抗率、導電率、耐食性などが挙げられる。
【0057】
[069]方程式(1)に関して上で論じられたように、材料要素の長さ(L)および弾性係数(E)を変化させると、フロー構造の剛性に影響を与えると予想される。他の実施態様において、フロー構造の剛性(k)を変更するために、断面積(A)を改変してもよい。例えば、フロー構造の有益な剛性またはコンプライアンス比を達成するために、フロー構造の長さまたは弾性係数を変化させるよりも、断面積を変更してもよい。断面積(A)を変化させることに加えて、フロー構造は、不均一な断面積(A)を含んでいてもよく、この断面積はフロー構造の長さに沿った領域中で様々であってもよい。例えば、フロー構造の長さに沿って不均一な断面積を有するフロー構造は、凸型の端部を有していてもよく、このような凸型の端部は、加圧下で平らになって各端部でフロー構造と接触する表面積を増加させる。
【0058】
[070]上記で説明した実施態様を適用することにより、電気化学セル、特に高圧条件下で作動する電気化学セルの性能を改善することができる。事前テストから、弾性のカソードフロー構造は、電気化学セル内で作動圧力が増加するときのセル抵抗の増加を制限できることが実証された。図7は、3種の異なるフロー構造の立体配置のテスト結果を例示するグラフである。3種のフロー構造の立体配置は、3種の異なるカソードフロー構造の立体配置と組み合わされた硬いアノードフロー構造を含む。3種の異なるカソードフロー構造の立体配置は、硬いフロー構造、ばね機構、およびばね状フロー構造を含む。硬いフロー構造は、金属発泡体のカソードフロー構造を含む。ばね機構は、典型的な実施態様で説明したようなディンプルプレートを含む。ばね状フロー構造は、アノードフロー構造の弾性係数より小さい弾性係数と、アノードフロー構造の長さより長い長さとを有するフロー構造を含む。セルは、アノード電極、カソード電極、およびプロトン伝導性膜と共に、上記で示されたアノードおよびカソードフロー構造からなる。2つのバイポーラプレートを使用してセルを封入し、構造的な圧縮プレートおよびタイロッドを使用してセルを圧縮し、ガスシールをはめ込んだ。
【0059】
[071]テストでは、電気化学セルのカソード側を少なくとも13,000psiの圧力までガスで加圧することが行われた。各フロー構造の立体配置で、圧力を増加させながら、セル抵抗をACミリオーム−メーターを使用して測定した。図7に、セル抵抗対カソードに適用した圧力のプロットを示すテスト結果を例示する。図7から、約45ミリオームから約465ミリオームに増加させることによってカソードへの圧力を増加させた結果、硬いフロー構造は、最も大きくセル抵抗を増加させたことが示される。ばね状フロー構造は硬いフロー構造より優れた性能を発揮したが、ばね機構と同じではなかった。ばね機構が、テスト中最良の性能を発揮した。ばね機構のテスト中、セル抵抗は約7ミリオームから約38ミリオームに増加した。
【0060】
[072]ばね機構は最も低いセル抵抗の増加を示すことに加えて、ばね機構の初期抵抗は、テストされた他の全てのフロー構造の初期抵抗より小さい。
【0061】
[073]図7は、「硬い」アノードフロー構造と、「ばね状」であるかまたはばね機構と組み合わされたカソードフロー構造との組み合わせは、より優れた電気化学セル性能および効率を達成できる圧力でのセル抵抗の増加を制限できることを例示する。
【0062】
[074]図8は、典型的な実施態様に係るスチールウールのフロー構造800の図画を示す。スチールウールのフロー構造800は、紡糸されて一緒に束になりパッド状になった、複数の微細な軟鋼フィラメントで構成されていてもよい。スチールウールのフロー構造800外縁の形状および厚さは、セルの設計および用途に基づき変更できる。代替の実施態様において、ウールのフロー構造は、様々なグレードの鋼フィラメントで作製してもよいし、または他の導電性フィラメント、例えばステンレス鋼、チタン、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニッケル−クロム、他の金属合金、もしくは炭素繊維で作製してもよい。代替実施態様は、実質的に類似した特性を有する異なる構造を包含していてもよく、例えば、異なる金属合金で構成される金属発泡体を包含していてもよい。
【0063】
[075]本明細書の考察および本明細書において開示された本発明の実施から、当業者には本発明の他の実施態様は明らかであると予想される。本明細書および実施例は単なる典型例とみなされものとし、本発明の真の範囲および本質は以下の特許請求の範囲で示される。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4
図5
図6
図7
図8