特許第6360062号(P6360062)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6360062増進された活性を有する担持水素化処理触媒
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360062
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】増進された活性を有する担持水素化処理触媒
(51)【国際特許分類】
   B01J 31/34 20060101AFI20180709BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20180709BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20180709BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20180709BHJP
   B01J 37/20 20060101ALI20180709BHJP
   C10G 45/08 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   B01J31/34 M
   B01J37/02 101A
   B01J37/02 101D
   B01J37/00 D
   B01J37/08
   B01J37/20
   C10G45/08 Z
【請求項の数】21
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2015-536084(P2015-536084)
(86)(22)【出願日】2013年10月7日
(65)【公表番号】特表2015-532203(P2015-532203A)
(43)【公表日】2015年11月9日
(86)【国際出願番号】EP2013070826
(87)【国際公開番号】WO2014056846
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2016年9月27日
(31)【優先権主張番号】61/712,108
(32)【優先日】2012年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508375653
【氏名又は名称】アルベマール・ユーロプ・エスピーアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フオーヘラー,バストラーン・マールテン
(72)【発明者】
【氏名】ベルグベルフ,ヤコブ・アリー
(72)【発明者】
【氏名】フアン・ウーネ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】トロンプ,ヘンク・ヤン
【審査官】 壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0145600(US,A1)
【文献】 国際公開第2012/022850(WO,A2)
【文献】 特開2005−254083(JP,A)
【文献】 特開平09−155197(JP,A)
【文献】 特開昭50−124887(JP,A)
【文献】 特表2009−523597(JP,A)
【文献】 特表2010−510064(JP,A)
【文献】 特表2003−530208(JP,A)
【文献】 米国特許第07446075(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C10G1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体とリンと少なくとも1つの第VIB族金属と少なくとも1つの鉄族金属とポリマーとを含む担持触媒であって、
リンの第VIB族金属に対するモル比が1:1.5から1:12未満であり、
第VIB族金属の鉄族金属に対するモル比が1:1〜5:1であり、
ポリマーが炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含み、ポリマーローディングが触媒の他の成分の合計重量に対して1.5重量%以上である、水素化処理、水素化脱硫および/または水素化脱窒素のための担持触媒。
【請求項2】
前記ポリマーの官能基がカルボン酸基である、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
リンの第VIB族金属に対するモル比が1:2.5から1:12未満である、請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
ポリマーがポリマレイン酸、ポリフマル酸、またはポリアクリル酸である、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記第VIB族金属がモリブデンおよび/もしくはタングステンであり、前記鉄族金属がニッケルおよび/もしくはコバルトである、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
【請求項6】
前記担体がシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナがその中に分散されたアルミナ、アルミナでコーティングされたシリカまたはシリカでコーティングされたアルミナである、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
【請求項7】
担体、水素化金属、およびリンの合計重量に対して、担体が40重量%〜80重量%の触媒であり、水素化金属およびリンがそれらの酸化物として表される、請求項1〜4のいずれかに記載の触媒。
【請求項8】
水素化処理、水素化脱窒素、および/または水素化脱硫のための方法であって、炭化水素フィードと請求項1〜7のいずれかに記載の触媒とを接触させることを含む、方法。
【請求項9】
水素化処理、水素化脱硫および/または水素化脱窒素のための担持触媒を形成するための過程であって、
I)以下の組み合わせ:
・a−i)担体、1以上のモノマー種、および極性溶媒、
・b−i)担体、1以上のモノマー種、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VIB族金属化合物、および少なくとも1つの鉄族金属化合物、または
・c−i)担体および含浸溶液で含浸された担体を形成し、続いて含浸された担体を1以上のモノマー種と混合する
のいずれかで成分を一緒にしてモノマー含有混合物を形成すること、ここで、前記モノマー種は極性溶媒中に可溶性であり、炭素−炭素不飽和と少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基とを有する;
II)前記モノマー種の少なくとも一部をモノマー含有混合物中で重合させて重合産物を形成すること;
III)I)のモノマー含有混合物が組み合わせa−i)から形成される場合、
・a−iia)II)の重合中に含浸溶液およびモノマー含有混合物を接触させる、または
・a−iib)重合産物および含浸溶液を接触させて、
担持触媒を形成することを含み、ここで、リンの第VIB族金属に対するモル比は1:1.5から1:12未満であり、第VIB族金属の鉄族金属に対するモル比は1:1から5:1であり、前記含浸溶液が極性溶媒、リン、少なくとも1つの第VIB族金属、および少なくとも1つの鉄族金属を含み、ここで、ポリマーは重合中に形成され、前記ポリマーは炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含み、ポリマーローディングは触媒の他の成分の合計重量に対して1.5重量%以上である、過程。
【請求項10】
触媒を硫化することをさらに含む、請求項9に記載の過程。
【請求項11】
1つの含浸ステップを
a)担体、1以上のモノマー種、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VIB族金属化合物、および少なくとも1つの鉄族金属化合物を合わせる場合はI)で;
b)担体および含浸溶液を合わせる場合はI)で;または
c)含浸溶液とモノマー含有混合物または重合産物のいずれかとを合わせる場合はIII)で実施する、請求項9に記載の過程。
【請求項12】
担体、1以上のモノマー種、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VIB族金属化合物、および少なくとも1つの鉄族金属化合物をI)で合わせる、請求項9に記載の過程。
【請求項13】
モノマー種の官能基のヘテロ原子が窒素、酸素、リン、またはイオウである、請求項9に記載の過程。
【請求項14】
モノマー種の官能基が、カルボン酸基、エステル基、またはアミド基である、請求項9に記載の過程。
【請求項15】
モノマー種がマレイン酸、フマル酸、アクリル酸、2−カルボキシエチルアクリレート、またはN−ヒドロキシエチルアクリルアミドである、請求項9に記載の過程。
【請求項16】
前記第VIB族金属化合物が酸化物またはオキソ酸であり、前記鉄族金属化合物が炭酸塩、水酸化物、またはヒドロキシ炭酸塩である、請求項12に記載の過程。
【請求項17】
前記第VIB族金属化合物がモリブデン化合物および/もしくはタングステン化合物であり、前記鉄族化合物がニッケルおよび/もしくはコバルト化合物である、請求項16に記載の過程。
【請求項18】
担体が方法のステップI)の前に焼成および/または押出されている、請求項9〜17のいずれかに記載の過程。
【請求項19】
炭化水素フィードおよび触媒を接触させることからさらに成る、請求項9〜18のいずれかに記載の過程。
【請求項20】
前記担体がシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナがその中に分散されたアルミナ、アルミナでコーティングされたシリカまたはシリカでコーティングされたアルミナである、請求項9〜18のいずれかに記載の過程。
【請求項21】
前記極性溶媒が水であり、前記リン化合物が水溶性酸性リン化合物である、請求項12に記載の過程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第VI族金属、第VIII族金属、およびリンを含む濃縮溶液から形成される担持触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
水素化処理、水素化脱硫、および/または水素化脱窒素用の様々な触媒が公知および/または市販されている。そのいくつかはモリブデン、ニッケルまたはコバルト、およびリンを含む、これらの触媒の多くは、担体上に担持され、通常は細孔容積含浸(pore volume impregnation)によって調製される。当該技術分野は、より良好な様々な触媒、特に水素化処理、水素化脱硫、および/または水素化脱窒素のためのさらに高い活性を有する触媒を作製するために絶えず努力している。
【0003】
水素化処理触媒は、典型的には活性金属を含有する溶液を多孔質担体材料に含浸させ、続いて乾燥または焼成のいずれかを行うことによって調製される。焼成触媒は強力な金属−支持体相互作用を示す傾向があり、その結果、高い金属分散が得られる。しかしながら、焼成触媒における強力な金属−支持体相互作用の結果、触媒の固有活性は低くなると理論化される。非焼成触媒は、典型的には低い金属−支持体相互作用、および本質的に高い活性を示す。非焼成触媒における低い金属−支持体相互作用のために、金属は凝集する傾向がある(金属分散が不良である)。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、第VI族金属と第VIII族金属とリンとを含む濃縮溶液から担持触媒を調製するための方法、およびそのような方法によって調製される触媒を提供する。本発明にしたがって調製される触媒は水素化脱硫および水素化脱窒素において高い活性を示す。ポリマーで修飾された本発明の触媒中で、水素化金属は、ポリマー修飾の非存在下での類似の触媒よりも分散されることが示唆されている。
【0005】
本発明の1つの実施形態は担持触媒である。担持触媒は、担体、リン、少なくとも1つの第VI族金属、少なくとも1つの第VIII族金属、およびポリマーを含む。触媒において、リンの第VI族金属に対するモル比は、約1:1.5から約1:12未満であり、第VI族金属の第VIII族金属に対するモル比は、約1:1〜約5:1である。触媒中のポリマーは炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含む。
【0006】
本発明の他の実施形態は、上述の担持触媒を形成するための方法、ならびに上述の担持触媒を使用する水素化処理、水素化脱窒素、および/または水素化脱硫のための方法を包含する。
【0007】
本発明のこれらや他の実施形態および特性は、以下の説明、図面、および添付の特許請求の範囲からさらに明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例5で調製された触媒における重合の証拠を提供するラマンスペクトルを示す。
図2】実施例8および9で調製した試料のいくつかにおける重合の証拠を提供するラマンスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この文書全体を通して、「水素化金属」という表現は、第VI族金属および第VIII族金属の総称である。この文書全体を通して用いられる場合、「第VI族金属」という用語は、第VIB族の金属を指す。この文書全体を通して用いられる場合、「第VI族金属三酸化物として」、「第VI族金属三酸化物として報告される」、「第VI族金属三酸化物として算出される」、「それらの酸化物として表される」という表現、ならびにそれらの一酸化物としての第VIII族金属および五酸化リン(P25)としてのリンについての類似の表現は、第VI族金属、第VIII族金属、もしくはリンの量または濃度を指し、ここで数値は特に断りのない限り各々の酸化物についてである。例えば、炭酸ニッケルを用いてもよいが、ニッケルの量は酸化ニッケルについての値として記載する。
【0010】
本発明の実施で使用される含浸溶液は、極性溶媒、リン、少なくとも1つの第VI族金属、および少なくとも1つの第VIII族金属を含み、ここでリンの第VI族金属に対するモル比は約1:1.5から約1:12未満であり、第VI族金属の第VIII族金属に対するモル比は約1:1〜約5:1である。
【0011】
第VI族金属は、モリブデン、タングステン、および/またはクロムであり;好ましくはモリブデンまたはタングステンであり、さらに好ましくはモリブデンである。第VIII族金属は鉄、ニッケルおよび/またはコバルトであり、好ましくはニッケルおよび/またはコバルトである。金属の好ましい混合物としては、ニッケルおよび/またはコバルトとモリブデンおよび/またはタングステンとの組み合わせが挙げられる。触媒の水素化脱硫活性が重視される場合は、コバルトとモリブデンとの組み合わせが有利かつ好ましい。触媒の水素化脱窒素活性が重視される場合は、ニッケルとモリブデンおよび/またはタングステンの組み合わせが有利かつ好ましい。水素化金属の別の好ましい組み合わせはニッケル、コバルトおよびモリブデンである。
【0012】
第VI族金属化合物は、酸化物、オキソ酸、またはオキソもしくはポリオキソアニオンのアンモニウム塩であり得る;これらの第VI族金属化合物は、金属がモリブデンまたはタングステンである場合に、形式上+6酸化状態にある。酸化物およびオキソ酸が好ましい第VI族金属化合物である。本発明の実施で好適な第VI族金属化合物としては、酸化クロム(III)、クロム酸アンモニウム、重クロム酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、パラモリブデン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸、メタタングステン酸アンモニウム水和物、パラタングステン酸アンモニウム、およびその他が挙げられる。好ましい第VI族金属化合物としては、酸化クロム(III)、三酸化モリブデン、モリブデン酸、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステンおよびタングステン酸が挙げられる。いずれか2以上の第VI族金属化合物の混合物を使用できる。
【0013】
第VIII族金属化合物は、通常、酸化物、炭酸塩、水酸化物、または塩である。好適な第VIII族金属化合物としては、限定されるものではないが、酸化鉄、水酸化鉄、硝酸鉄、炭酸鉄、ヒドロキシ炭酸鉄、酢酸鉄、クエン酸鉄、酸化コバルト、水酸化コバルト、硝酸コバルト、炭酸コバルト、ヒドロキシ炭酸コバルト、酢酸コバルト、クエン酸コバルト、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、硝酸ニッケル、炭酸ニッケル、ヒドロキシ炭酸ニッケル、酢酸ニッケル、およびクエン酸ニッケルが挙げられる。好ましい第VIII族金属化合物としては、水酸化鉄、炭酸鉄、ヒドロキシ炭酸鉄、水酸化コバルト、炭酸コバルト、ヒドロキシ炭酸コバルト、水酸化ニッケル、炭酸ニッケル、およびヒドロキシ炭酸ニッケルが挙げられる。2以上の第VIII族金属化合物の混合物を使用できる。
【0014】
本発明の実施では、リン化合物は極性溶媒中に可溶性であり、典型的には酸性リン化合物、好ましくは水溶性酸性リン化合物、特に酸素化無機リン含有酸である。好適なリン化合物の例としては、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、オルトリン酸、トリリン酸、テ
トラリン酸、およびリンの酸の前駆体、例えばリン酸水素アンモニウムが挙げられる。2以上のリン化合物の混合物を使用できる。リン化合物を液体または固体形態で使用することができる。いくつかの実施形態では、リン化合物は好ましくは水溶性化合物である。好ましいリン化合物はオルトリン酸(H3PO4)である。
【0015】
本発明では、極性溶媒はプロトン性または非プロトン性であり得、概して極性有機溶媒および/または水である。非プロトン性溶媒およびプロトン性溶媒を含む混合物を包含する極性溶媒の混合物を使用できる。好適な極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、およびその他、ならびにそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、極性溶媒はプロトン性溶媒であり;さらに好ましくは、極性溶媒は水またはエタノールもしくはイソプロピルアルコールなどのアルコールである。水が好ましい極性溶媒である。
【0016】
モノマーおよび担体を合わせて、モノマーを含浸溶液と接触させる前に重合させる場合、モノマーだけが重合前に使用される極性溶媒中に可溶性である必要がある。モノマーを溶解させるため、そして含浸溶液を形成するために同じ極性溶媒を用いることが好ましいが、所望により異なる溶媒を用いることができる。含浸溶液および担体を合わせて、モノマーと接触させる前に含浸された担体を形成する場合、モノマーは、含浸溶液の極性溶媒と同じであってもまたは異なっていてもよい極性溶媒中に可溶性である必要がある;モノマーを溶解させるため、そして含浸溶液を形成するために同じ極性溶媒を使用することが好ましいが、所望により異なる溶媒を使用できる。
【0017】
含浸溶液を形成する極性溶媒は、本発明の実施で使用される含浸溶液の形成で使用されるリン化合物、第VI族金属化合物、および第VIII族金属化合物を溶解することができなければならない。
【0018】
モノマー種および少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、少なくとも1つの第VIII族金属化合物を重合前に合わせる場合、モノマー種は、極性溶媒、リン、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物を含有する溶媒中に可溶性でなければならない。概して、モノマー種のこの溶解特性は、溶液中、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物を含まない極性溶媒中のモノマー種の溶解度に類似している。重合の間に含浸溶液を担体およびモノマー種と接触させる場合、同じ溶解度の考察が適用される;すなわち、存在するモノマー種は、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物の存在下で極性溶媒中に可溶性でなければならない。
【0019】
この文書全体を通して、「モノマー」という用語は、「モノマー種」という表現と同義である。モノマー種は、重合性部分として炭素−炭素不飽和と、少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基とを有する。結合または相互作用の形成は必要ではないが、ヘテロ原子(複数可)は金属イオンと結合または相互作用を形成することができると理論化される。好ましいモノマーには、1以上の孤立電子対を有する官能基が含まれる。好ましくは、モノマー種の官能基は、窒素、酸素、リン、および/またはイオウを含む。好適な官能基の例としては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、アミン基、アミド基、ニトリル基、アミノ酸基、ホスフェート基、チオール基、スルホン酸基、およびその他が挙げられる。好ましい官能基としては、ヒドロキシル基およびカルボキシル含有基、特にカルボン酸基、エステル基、アミド基、およびヒドロキシル基が挙げられ;さらに好ましいのはカルボン酸基である。
【0020】
したがって、好適なモノマー種としては、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、ペンテン酸、メタクリル酸、2,3−ジメタクリル酸、3,3−ジメタクリル酸、アリルアルコール、2−スルホエチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−カルボキシエチルアクリレート、3−エトキシ−3−オキソプロピルアクリレート、メチルカルバミルエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N−ビニルピロリドン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、ビニルスルフェート、ビニルスルホン酸、2−プロペン−1−スルホン酸、ビニルホスフェート、ビニルホスホン酸、ジメチルアリルホスフェート、ジエチルアリルホスフェート、およびその他が挙げられる。好ましいモノマー種としては、アクリル酸、マレイン酸、2−カルボキシエチルアクリレート、およびN−ヒドロキシエチルアクリルアミド、特にアクリル酸が挙げられる。2以上のモノマー種の混合物を使用できる。
【0021】
本発明の触媒を形成するために使用されるモノマーの量は、極性溶媒を除く、触媒を形成するために使用される他の成分の合計重量に対する重量%として表される。この文書全体を通して用いられる場合、「触媒を形成するために使用される他の成分」および「他の触媒成分」という表現は、担体ならびに水素化金属およびリンを触媒に提供する化学物質を指す。例えば、触媒の他の成分(極性溶媒以外)の合計重量が100グラムである場合、10重量%のモノマーは10グラムである。本発明の実施では、モノマーの量は概して極性溶媒を除く触媒の他の成分の合計重量に対して約1.5重量%以上、好ましくは約1.5重量%〜約35重量%の範囲内であるが、この範囲外の量も本発明の範囲内に含まれる。さらに好ましくは、モノマーの量は、極性溶媒を除く触媒の他の成分の合計重量に対して約3重量%〜約27重量%の範囲内であり、さらに好ましくは約5重量%〜約20重量%の範囲内である。
【0022】
モノマー種の早期重合を防止するために阻害剤(例えば、ラジカルスカベンジャー)をモノマーに含めることができる。好適な阻害剤は特定のモノマーによって異なる。適切な阻害剤は、重合開始前に混合物中に存在する場合、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物に悪影響を及ぼさない。望ましくは、重合反応を開始することが望まれるときに(例えば、蒸発または反応開始手段の導入により)阻害剤を中和または除去する。
【0023】
含浸溶液の形成で用いられる成分は任意の順序で組み合わせることができるが、1つの成分を極性溶媒中に懸濁または溶解させた後、他の成分を導入するのが推奨され、好ましい。好ましくは、第VIII族金属化合物をまず導入する;さらに好ましくは、第VI族金属化合物を第VIII族金属化合物の後に導入する。リン化合物を任意の時点で導入してもよいが、好ましくは第VI族化合物および第VIII族化合物を導入した後に導入する。溶液を形成する際に撹拌を用いてもよいが、溶液が均一になったら停止することができる。モノマーと、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物とを合わせる場合に同様の検討事項が当てはまる;水素化金属の化合物を極性溶媒と組み合わせ、次いでリン化合物、続いてモノマーを添加するのが好ましい。
【0024】
含浸溶液の成分を組み合わせることは、周囲条件、すなわち室温および周囲圧力で実施できる。成分、特に第VI族化合物および第VIII族化合物の溶解を支援するために高温が必要な場合もある。そのような高温は、通常は約50℃〜約95℃、好ましくは約60℃〜約95℃の範囲内である。約95℃を上回る温度および/または高圧を適用するこ
とができる(例えば、熱水調製)が、必要ではない。重合が熱により開始されるモノマーが溶液中に含まれる場合、溶液が加熱される温度を重合が開始される温度以下に保持するか、または好ましくは、溶液の加熱が完了した後にモノマー種を添加する。
【0025】
溶液のさらに意図される使用のために現実的な濃度を有する溶液を調製することが好都合である。本発明で例示されるように、これらの溶液を用いて、担持触媒を形成することができる。第VI族金属(または組成物中に複数の第VI族金属が存在する場合はその合計)に基づく好適な濃度は、通常は約1.39mol/L〜約6mol/Lの範囲内であり、好ましくは約2.1mol/L〜約4.2mol/Lの範囲内である。
【0026】
より濃厚な含浸溶液を調製するための方法は公知であり、たとえば国際公開第2011/023668号で記載されている。
【0027】
上述のように形成される本発明の含浸溶液は、第VI族金属、第VIII族金属、およびリンを極性溶媒中に含む溶液である。第VI族金属、第VIII族金属、およびリンの濃度、ならびにその優先傾向は上述のとおりである。これらの溶液では、リンの第VI族金属に対するモル比は約1:1.5から約1:12未満、好ましくは約1:2.5から約1:12未満であり、第VI族金属の第VIII族金属に対するモル比は約1:1〜約5:1である。
【0028】
理論により拘束されることを望まないが、種の混合物が本発明の含浸溶液中に存在すると考えられる。現時点で、すべての種が充分に特性化されているわけではない。これに関連して、モリブデンおよびリンを含有する溶液中に存在する種の例については、J. Bergwerff, Ph.D. thesis, Utrecht University, The Netherlands, 2007, Chapter 2Cを参照のこと。
【0029】
溶液を形成する際に試薬の混合物を使用する場合、上述のように、異なる金属を有する種の混合物が溶液中に存在する。例えば、モリブデン化合物およびタングステン化合物を使用する場合、生成物溶液はモリブデンおよびタングステンを含む。別の例では、コバルト化合物およびニッケル化合物を使用する場合、溶液はコバルトおよびニッケルを含む。化合物の第VI族金属が異なる第VI族金属化合物および化合物の第VIII族金属が異なる第VIII族金属化合物を所望により溶液組成物の形成で使用できるような試薬の混合物。
【0030】
本発明の触媒形成過程は、I)担体、1以上のモノマー種、極性溶媒、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物、ならびに場合によって反応開始手段を、以下の組み合わせ:
・担体、1以上のモノマー種、極性溶媒、および場合によって反応開始手段、
・担体、1以上のモノマー種、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物、ならびに場合によって反応開始手段、または
・担体および含浸溶液のいずれかで合わせ、含浸された担体を形成し、続いて含浸された担体を1以上のモノマー種および場合によって反応開始手段と混合して、
モノマー含有混合物を形成することを含み、前記モノマー種は極性溶媒中に可溶性であり、炭素−炭素不飽和と、少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの官能基とを有する。ステップII)は、モノマー含有混合物中のモノマー種を重合して重合産物を形成することを含む。ステップIII)は、I)が少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物を含まない場合に実施され、
・II)での重合中に含浸溶液およびモノマー含有混合物を接触させること、または
・重合産物および含浸溶液を接触させること
のいずれかを含む。
担持触媒が形成される。この方法では、リンの第VI族金属に対するモル比は約1:1.5から約1:12未満であり、第VI族金属の第VIII族金属に対するモル比は約1:1〜約5:1である。この方法で用いられる含浸溶液は、極性溶媒、リン、少なくとも1つの第VI族金属、および少なくとも1つの第VIII族金属を含む。過剰の溶媒を担持触媒から、例えば乾燥によって除去することが、推奨されるさらなるステップである。
【0031】
本発明の特長は、本発明の触媒形成法において担体粒子の凝集がないことである。言い換えれば、担体粒子は本発明の触媒形成法によってサイズおよび形状が変わらない。例えば、約2mmの平均粒子サイズを有する担体粒子は約2mmの平均粒子サイズを有する触媒粒子になる。
【0032】
本発明の触媒形成法では、含浸溶液中の成分すべてを含浸ステップ開始前に溶解させなければならない。少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物がモノマー含有混合物の一部を形成する場合、モノマー種を好ましくは混合物の加熱が完了した後に混合物と組み合わせる。熱により開始した重合のモノマーについて、モノマー含有混合物の形成中の温度を重合の開始温度より低く維持する。
【0033】
モノマー含有混合物は少なくとも1つの担体と少なくとも1つのモノマー種とを含む。少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物、または含浸溶液は、場合によって、担体および1以上のモノマー種とともにモノマー含有混合物の形成で含まれていてもよい。少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物(場合によって含浸溶液として)がモノマー含有混合物中に含まれることが推奨され、好ましい。少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物(場合によって含浸溶液として)がモノマー含有混合物中に含まれない場合、含浸溶液をモノマー含有溶液の重合産物と混合することができる;あるいは、含浸溶液を重合中にモノマー含有混合物と接触させることができる。
【0034】
本発明の過程では、ポリマーを形成するためのモノマー種の重合は、通常は少なくとも1つの反応開始手段を利用する。反応開始手段には、熱、放射線(例えば、UV)、化学物質、およびこれらの組み合わせが含まれる。反応開始手段が化学物質である場合、それは通常、担持触媒とともに残留し、触媒性能に影響を及ぼす可能性がある。したがって、複数の反応開始手段を選択できる場合、反応開始手段および選択されたモノマーのどの組み合わせが最適触媒性能を可能にするかを判定する試験を実施することが有用であり得る。別の検討事項は、選択された反応開始手段およびモノマーが(例えば、沈殿を引き起こすことによって)リン、第VI族金属、および/または第VIII族金属化合物の含浸溶液中の溶解度に悪影響を及ぼしてはならないことである。例えば、反応開始手段として過硫酸塩を用いたアクリル酸の重合では、ニッケル、モリブデン、およびリンを含有する触媒にとって、過硫酸カリウムが過硫酸アンモニウムよりも良好な反応開始手段であることが判明した。特定の反応開始手段の効果は、触媒中に存在する水素化金属の濃度、モノマー、および触媒作用が起こる条件で変わり得る。
【0035】
好適な反応開始手段は選択されたモノマー(複数可)の(重合)反応性にも依存する。例えば、室温から80℃までの温度の上昇と組み合わせた過硫酸アンモニウムまたは過硫酸カリウムがアクリル酸の重合に好適な反応開始手段の組み合わせである。しかしながら、あまり容易に重合しないモノマーについては、異なる種類の反応開始手段または反応開
始手段の異なる組み合わせが必要とされる可能性がある。
【0036】
この文書全体を通して使用する場合、「担体」という用語は触媒支持体という意味で用いられ、「担体」という用語は「支持体」という用語と交換可能に使用できる。この文書全体を通して「担体」という用語は、固体形態であるか、またはあらかじめ成形された担体を指す。そのような担体は極性溶媒と接触する場合に主に固体形態のままである。この用語は、極性溶媒中にほぼ完全に溶解するアルミン酸ナトリウムなどの前駆体塩を意味しない。担体は概して粒子状多孔質固体である無機酸化物であり、担体は、従来の酸化物、例えばアルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナがその中に分散されたアルミナ、アルミナでコーティングされたシリカ、シリカでコーティングされたアルミナ、マグネシア、ジルコニア、ボリア、およびチタニア、ならびにこれらの酸化物の混合物から構成され得る。好適な担体には、遷移アルミナ、例えばエータ、シータ、またはガンマアルミナも含まれる。好ましい担体としては、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−アルミナがその中に分散されたアルミナ、アルミナでコーティングされたシリカ、またはシリカでコーティングされたアルミナ、特にアルミナ、または約20重量%までのシリカ、好ましくは約12重量%までのシリカを含有するアルミナが挙げられる。遷移アルミナ、例えばエータ、シータ、またはガンマアルミナを含有する担体が特に好ましく、ガンマ−アルミナ担体が最も好ましい。
【0037】
担体は通常、従来どおりに球または、好ましくは押出物の形状で用いられる。好適な種類の押出物の例は文献で開示されている;例えば米国特許第4,028,227号を参照のこと。円筒形粒子(中空であっても中空でなくてもよい)ならびに対称および非対称多葉(polylobed)粒子(2、3または4葉)が使用に非常に好適である。担体粒子を典型的には約400℃〜約850℃の範囲内の温度で焼成した後、本発明の触媒の形成で使用する。
【0038】
本発明の実施では特定の孔寸法は要求されないが、担体の孔容積(N2吸着によって測定)は概して約0.25〜約1mL/gの範囲内である。比表面積は概して約50〜約400m2/g、好ましくは約100〜約300m2/g(BET法を使用して測定)の範囲内である。概して、触媒はN2吸着によって測定して約7nm〜約20nmの範囲内、好ましくは約9nm〜約20nmの範囲内のメジアン孔径を有する。好ましくは、総孔容積の約60%以上がメジアン孔径から約2nmの範囲内である。上記孔サイズ分布および表面積の数値は担体を約500℃で1時間焼成した後に測定する。
【0039】
担体粒子は通常、約0.5mm〜約5mm、さらに好ましくは約1mm〜約3mm、そしてさらに好ましくは約1mm〜約2mmの平均粒子サイズを有する。担体のサイズおよび形状は触媒の形成法によって変更されないので、触媒は概して約0.5mm〜約5mm、さらに好ましくは約1mm〜約3mm、一層好ましくは約1mm〜約2mmの平均粒子サイズを有する。
【0040】
本発明の触媒を形成するために使用される担体の量は、担体、水素化金属、およびリンの合計重量に対して約40重量%〜約80重量%、好ましくは約50重量%〜約70重量%であり、さらに好ましくは約60重量%〜約70重量%であり、ここで、水素化金属およびリンはそれらの酸化物として表される、すなわち極性溶媒およびモノマー種を除外する。
【0041】
担体を含浸させるための方法は当業者には公知である。好ましい方法には、少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物の共含浸(co-impregnation)が含まれる。本発明の触媒形成過程では、1つの含浸ステップだけが必要である。単一含浸ステップでは、一旦担体および含浸
溶液を合わせたら、混合物を通常、含浸溶液の実質的にすべてが触媒に取り込まれるまで均質化する。当該技術分野では細孔容積含浸またはインシピエント・ウェットネス含浸(incipient wetness impregnation)として知られるこの技術では、含浸溶液は触媒の孔に実質的に完全に取り込まれ、これは化学物質を有効利用し、生成物中の粉末を回避する。
【0042】
含浸方法に関しては多数の変形が存在し得る。したがって、複数の含浸ステップを適用することが可能であり、使用される含浸溶液は、堆積される1以上の成分前駆体、またはその一部を含む(逐次含浸)。含浸技術の代わりに、浸漬法、噴霧法なども使用できる。複数の含浸、浸漬などのステップを実施する場合、乾燥を含浸ステップ間で実施してもよい。しかしながら、1つの含浸ステップはより迅速でより簡単な方法で、より高い生産率を可能にし、あまり費用がかからないので好ましい。単一含浸はより良好な特性を有する触媒を提供する傾向もある。
【0043】
少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物がモノマー含有混合物の一部を形成する場合、好ましくはモノマー種の重合を含浸ステップ後で実施するが、重合を担体の含浸中に開始することもできる。重合を含浸後に実施する場合、過剰の溶媒の除去を実施する場合は重合を過剰の溶媒の除去前または除去中に実施することができる;好ましくは、重合を過剰の溶媒の除去中に実施する。同様に、含浸溶液および担体を合わせて含浸担体を形成し、これを次いでモノマーと混合する場合、重合を好ましくは、過剰の溶媒除去を実施する場合は過剰の溶媒の除去中に実施する。
【0044】
本発明の過程では、モノマーの少なくとも一部を重合させるために好適な量の反応開始手段にモノマーを暴露することによって通常の方法で重合を実施する。存在する場合、任意の阻害剤を重合反応開始時に不活性化することが必要である。
【0045】
少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物がモノマー含有混合物の一部を形成しない場合、重合を含浸前に担体の存在下で開始し、そして含浸溶液を重合中または重合が終わった後にモノマー含有混合物とあわせる。
【0046】
本発明の触媒の一部として形成されるポリマーの例としては、限定されるものではないが、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリフマル酸、ポリクロトン酸、ポリ(ペンテン)酸、ポリメタクリル酸、ポリジメタクリル酸、ポリ(アリルアルコール)、ポリ(2−スルホエチル)メタクリレート、ポリ(n−プロピル)アクリレート、ポリ(ヒドロキシメチル)アクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチル)アクリレート、ポリ(2−カルボキシエチル)アクリレート、ポリ(3−エトキシ−3−オキソプロピル)アクリレート、ポリ(メチルカルバミルエチル)アクリレート、ポリ(2−ヒドロキシエチル)メタクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリ(N−イソプロピル)アクリルアミド、ポリビニルアセトアミド、ポリビニル−N−メチルアセトアミド、ポリ(N−ヒドロキシメチル)アクリルアミド、ポリ(N−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ポリ(N−メトキシメチル)アクリルアミド、ポリ(N−エトキシメチル)アクリルアミド、ポリビニルスルフェート、ポリビニルスルホン酸、ポリ(2−プロピル)−1−スルホン酸、ポリビニルホスフェート、ポリビニルホスホン酸、ポリ(ジメチルアリルホスフェート)、ポリ(ジエチルアリルホスフェート)、ポリビニルホスホン酸、およびその他が挙げられる。上述のように、2以上のモノマー種の混合物を用いることができ、コポリマーを形成する。
【0047】
担持触媒を形成するために用いられるモノマーは、多くの場合、水などの極性溶媒中に可溶性であるが、モノマー(複数可)から形成されるポリマーは水または他の極性溶媒中
に可溶性である必要はない。
【0048】
本発明の過程は、第VIII族金属が通常、一酸化物として計算して約1〜約10重量%、好ましくは約3〜約8.5重量%の量で存在する担持触媒を産生する。これらの触媒中、リンは通常、P25として計算して、約0.5〜約10重量%、さらに好ましくは約1〜約9重量%の量で存在する。触媒中の第VI族金属がモリブデンである場合、三酸化モリブデンとして計算して、通常、約35重量%以下の量、好ましくは約15〜約35重量%の量で存在する。
【0049】
少なくとも1つのリン化合物、少なくとも1つの第VI族金属化合物、および少なくとも1つの第VIII族金属化合物、または含浸溶液が重合前または重合中に含まれている場合、重合ステップの最後で担持触媒が得られる。その代わりに重合産物が形成され、次いで重合後に含浸溶液と接触させる場合、含浸ステップ(複数可)の最後で担持触媒が得られる。
【0050】
場合によって、過剰の溶媒を担持触媒から除去する。過剰の溶媒の除去は、空気中、真空下、または不活性ガスの存在下で実施することができる。溶媒除去は、好ましくは担持触媒を乾燥することによって達成される。担持触媒の乾燥は、少なくともポリマーの一部が触媒中に残留する、すなわちポリマーが分解によって完全に除去されない条件下で実施される。したがって、適用される乾燥条件は特定のポリマーが分解する温度に依存する;分解は、乾燥を酸素の存在下で実施する場合は燃焼を含み得る。本発明のこれらの方法では、乾燥は、ポリマーの約50%以上、好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約90%以上が乾燥後に依然として触媒中に存在するような条件下で実施すべきである。乾燥中にポリマーのできるだけ多くを担持触媒中に保持することが好ましい;しかしながら、乾燥ステップ中のポリマーの一部の損失は、少なくとも分解しやすいポリマーについては必ずしも回避できるわけではないと理解される。ポリマーによっては、約270℃より低い乾燥温度が必要である可能性がある。
【0051】
上述のように、本発明の担持触媒は、担体、リン、少なくとも1つの第VI族金属、少なくとも1つの第VIII族金属、およびポリマーを含み、ここで、リンの第VI族金属に対するモル比は約1:1.5から約1:12未満であり、第VI族金属の第VIII族金属に対するモル比は約1:1から約5:1未満であり、ポリマーは炭素骨格を有し、少なくとも1つのヘテロ原子を有する官能基を含む。担体およびその好ましい条件は上記のとおりである。本発明の担持触媒中の担体は、担体、水素化金属、およびリンの合計重量(水素化金属およびリンはそれらの酸化物として表される、すなわちポリマーを除く)に対して、約40重量%〜約80重量%、好ましくは約50重量%〜約70重量%、さらに好ましくは約60重量%〜約70重量%の量である。水素化金属およびそれらの好ましい条件は上記のとおりである。ポリマーにおいて、炭素骨格は炭素−炭素骨格と称される場合があり、ここで、骨格はポリマーの主鎖である。担持触媒中のポリマーおよびそれらの好ましい条件は上記のとおりである。
【0052】
場合によって、本発明の触媒を硫化ステップ(処理)に付して金属成分をそれらの硫化物に変えることができる。本明細書の文脈で、「硫化ステップ(sulfiding stepおよびsulfidation step)」という表現は、イオウ含有化合物を触媒組成物に添加し、触媒中に存在する水素化金属成分の少なくとも一部を、直接または水素での活性化処理後のいずれかに硫化物形態(sulfidic form)変える任意の工程段階を含むことを意味する。好適な硫化法は当該技術分野で公知である。硫化ステップは、触媒が炭化水素フィードの水素化処理で使用される反応器に対してエクスサイチュ(ex situ)で、インサイチュ(in situ)で、または反応器に対してエクスサイチュとインサイチュとの組み合わせで起こり得る。
【0053】
エクスサイチュ硫化法は、触媒が炭化水素フィードの水素化処理で使用される反応器の外側で起こる。そのような方法では、触媒をイオウ化合物、たとえば有機もしくは無機多硫化物または元素状イオウと反応器の外側で接触させ、そして必要ならば、好ましくは不活性雰囲気中で乾燥する。第2のステップでは、材料を水素ガスで高温にて反応器中で、場合によってフィードの存在下で処理して、触媒を活性化する、すなわち触媒を硫化状態にする。
【0054】
インサイチュ硫化法は、触媒が炭化水素フィードの水素化処理で使用される反応器中で起こる。この場合、触媒を、反応器中、高温にて、硫化水素または一般的な条件下で硫化水素に分解できる化合物(例えば、ジメチルジスルフィド)などの硫化剤と混合した水素ガス流れと接触させる。通常の条件下で硫化水素に分解することができるイオウ化合物を含む炭化水素フィードと組み合わせた水素ガス流れを使用することも可能である。後者の場合、触媒をジメチルジスルフィドなどの添加された硫化剤を含む炭化水素フィード(スパイクされた炭化水素フィード)と接触させることによって触媒を硫化することが可能であり、フィード中に存在するイオウ成分は触媒の存在下で硫化水素に変わるので、硫化剤が添加されていないイオウ含有炭化水素フィードを使用することも可能である。様々な硫化技術の組み合わせも適用できる。スパイクされた炭化水素フィードの使用が好ましい可能性がある。
【0055】
触媒をインサイチュ硫化ステップに付す場合、触媒を、硫化が完了する前の過程中に形成される油および水の存在下で高温にさらす。油および水の存在下での高温へのこのような暴露は触媒活性に対して悪影響を及ぼさないようである。理論により拘束されることを望まないが、ポリマーは低分子量有機添加剤を有する当該技術分野で記載される触媒と比較して浸出または蒸発に対してより耐性であると考えられる。
【0056】
本発明の触媒組成物は、上述の過程が任意の硫化ステップを含むか否かによらず、この過程によって製造されるものである。
【0057】
理論により拘束されることを望まないが、水素化金属の観察されるさらに高度な分散および弱い(低)金属−支持体相互作用が、上述の官能基を有するモノマーを用いて担持触媒においてポリマーを形成することによって達成される。そのようなポリマーは細孔ネットワーク全体にわたって水素化金属を分散させるのを支援すると仮定される。また、理論により拘束されることを望まないが、水素化金属は、水素化金属を支持体の孔隙中に分散させるポリマーと相互作用すると考えられる。硫化雰囲気中での触媒の活性化は、ポリマーの官能基ヘテロ原子の少なくとも一部をイオウで置換するとも仮定され、これは水素化金属がクラスター化または支持体と相互作用するのを最小限に抑えるかまたは防止するのに役立つと考えられ、この最小限に抑えられたクラスター化および/または支持体との相互作用が観察される増強された触媒活性に寄与すると考えられる。加えて、ポリマー(硫化後)は水素化金属の焼結を抑制する可能性があり、担持触媒の改善された安定性に寄与すると理論化される。
【0058】
本発明の触媒組成物を広範囲の炭化水素フィードの水素化処理、水素化脱窒素、および/または水素化脱硫で使用することができる。好適なフィードの例としては、中間留分、灯油、ナフサ、真空軽油、重質軽油、およびその他が挙げられる。
【0059】
本発明の方法は、炭化水素フィードの水素化処理、水素化脱窒素、および/または水素化脱硫のための方法であり、この方法は、炭化水素フィードおよび本発明の触媒を接触させることを含む。炭化水素フィードの水素化処理は、フィードを本発明の触媒組成物の存在下、水素化処理条件にて水素で処理することを含む。
【0060】
従来の水素化処理法条件、例えば約250℃〜約450℃の範囲内の温度、約5〜約250バール(約5×105Pa〜約2.5×107Pa)の範囲内の反応器入口水素分圧、約0.1〜約10体積/体積・時の範囲内の空間速度、および約50〜約2000NL/Lの範囲内のH2/フィード比を適用することができる。
【0061】
実施例で示すように、他の触媒成分に対して少なくとも18重量%までのポリマーローディングが達成された。他の触媒成分に対するモノマーの量を上で定義したのと同様に、担持触媒中に存在するポリマーの量(ポリマーローディング)が定義される。言い換えれば、本発明の触媒中のポリマーの量は、極性溶媒を除く触媒を形成するために使用される他の成分の総重量に対する重量%として表される。例えば、触媒の他の成分の総重量が100グラムである場合、10重量%のポリマーは10グラムである。本発明では、それらの酸化物として表され、極性溶媒を除く、触媒中の他の成分の総重量に対して、ポリマーローディングは概して約1.5重量%以上、好ましくは約1.5重量%〜約35重量%の範囲内であるが、これらの範囲外の量も本発明の範囲内である。ポリマーがポリアクリル酸である場合、ポリマーの量は、触媒の他の成分の総重量に対して、より好ましくは約3重量%〜約27重量%の範囲内であり、なお一層好ましくは約5重量%〜約20重量%の範囲内である。
【実施例】
【0062】
以下の実施例は例示の目的で提示され、本発明の範囲に制限を課すことを意図しない。
【0063】
いくつかの下記実施例では、炭素収率(C収率)を報告する。炭素収率はモノマーによって試料中に導入され、材料の乾燥後も依然として存在していた炭素の%として定義される。
【0064】
以下の表3、5、8、および9では、触媒活性を速度定数kwt,HDSおよびkwt,HDNで報告する。イオウについて、速度定数kwt,HDNは、次式を用いて算出した:
wt,HDS=WHSV*1/(n−1)*(1/Sn-1−1/S0n-1
式中、WHSVは単位時間当たりの重量空間速度(goil/gcat/h)であり;Sは生成物中のイオウのパーセンテージ(ppm wt S)であり;S0はフィード中のイオウのパーセンテージ(ppm wt S)であり;そしてnは水素化脱硫反応の反応次数である。20バール(2.0×106Pa)および45バール(4.5×106Pa)での試験について、1.4のn値を使用した。90バール(9.0×106Pa)での試験については、l.2のn値を使用した。
【0065】
窒素について、速度定数kwt,HDNは次式を用いて算出した:
wt,HDN=WHSV*ln(N0/N)
式中、WHSVは単位時間当たりの重量空間速度(goil/gcat/h)であり;Nは生成物中の窒素のパーセンテージ(ppm wt N)であり;N0はフィード中の窒素のパーセンテージ(ppm wt N)である。WHSVは、空気中600℃にて焼成した後の触媒重量に基づいて算出した。
【0066】
実施例1−比較例
水素化金属の非存在下でのモノマーの重合
アクリル酸(AA;1.8g)を水(40g)中に溶解させることによって溶液を作製した。水(2g)中に溶解させた過硫酸アンモニウム(またはペルオキシ二硫酸塩、APS;0.6g)を溶液に添加した。重合反応を開始するために、溶液を激しく撹拌しながら70℃まで加熱した。70℃に達したら、粘度が著しく増加し、透明なゲルが形成した。結果として得られたゲルを120℃で一晩乾燥し、黄白色ポリマーフィルムを得た。
【0067】
実施例2および3について、炭酸コバルト(Co(OH)X(CO3Y)、MoO3、H3PO4(水溶液、85%)、および水を適切な量で合わせて混合することによって、90g/LのコバルトをCoOとして、491g/LのモリブデンをMoO3として、そして37g/LのリンをP25として含有するストック含浸溶液を調製した。透明な溶液が得られるまで混合物を70℃よりも高い温度で加熱した。このストック溶液中にはモノマーは存在していなかった。
【0068】
実施例2−比較例
水素化金属の存在下でのモノマーの重合
AA(1.58g)を15グラムの上記ストック溶液中に激しく撹拌しながら溶解させた。水(0.53g)中に溶解させたAPS(0.35g)を次いで溶液に添加した。重合反応を開始するために、溶液を激しく撹拌しながら70℃まで加熱した。70℃に達したら、粘度が著しく増加した。冷却すると、ゴム状塊が形成された。ゴム状塊を120℃で一晩乾燥して、多孔質脆性残留物を得た。
【0069】
実施例3
ポリマーで修飾された、CoおよびMoを含有する触媒の調製
上述のストック溶液の一部でアクリル酸(AA)の量を変えて一連の試料を作製した。過硫酸アンモニウム(APS)の量をこれらの試料では一定に保った。試薬の量を表1に記載する;実験C1は、反応開始手段を含むがモノマーを含まない比較例である。ある量の上記ストック溶液を丸底フラスコ中に量り入れた。アクリル酸を添加し、フラスコを旋回させることによって内容物を混合した。過硫酸アンモニウム(APS)を次に添加し、フラスコを旋回させることによって内容物を混合した。
【0070】
253m2/gの表面積を有するガンマ−アルミナの押出物をインシピエント・ウェットネス含浸のために溶液に添加し、フラスコを旋回させることによって内容物を混合した。丸底フラスコを室温で穏やかに回転させながら90分間ロータリーエバポレーター上に置いた。水浴の温度を次いで80℃まで上昇させて重合反応を開始し(10分でこの温度に到達した)、次いで混合物を80℃で60分間保持した;このステップの間、系を閉鎖して、蒸発を防止した。次いで、得られたポリマー修飾含浸押出物をパンに移し、冷気で乾燥し、次いで熱風で乾燥して、生成物温度を約90℃にした。
【0071】
結果として得られた触媒の炭素含有量を、総炭素分析を使用して測定し、炭素収量をグラムおよびモノマー炭素含有量のパーセンテージとして表1に示す。
【表1】
【0072】
実施例4
CoおよびMoを含有する触媒の活性試験
実施例3で形成された触媒を粉砕した;125〜350μmの粉末画分を篩別によって単離した。125〜350μm画分を水素化脱硫および水素化脱窒素におけるそれらの性能について評価した。試験を実施する直前に温度を250℃で8時間、320℃および20バール(2.0×106Pa)で5時間保持する2段階法で、ジメチルジスルフィド(2.5重量%S)でスパイクされた直留軽油(SRGO)と触媒とを接触させることによって触媒を硫化した。
【0073】
2つの直留軽油フィード(フィードAおよびフィードB)の沸点分布を表2に示す。フィードAは、1.1678重量%のイオウ、94.4ppmの窒素を含み、0.8366g/mLの密度を有していた。
【表2】
【0074】
試料を次いでフィードAの直留軽油(SRGO)での水素化脱硫および水素化脱窒素におけるそれらの性能について試験した。試料を20バールで試験した;温度は345℃であり、H2対油の比は300NL/Lであり、単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)は1.31〜1.42/時(goil/gcat/h)の範囲内であった。様々な反応器中の触媒の実際の重量、適用されたWHSV、ならびに液体生成物試料中のイオウおよび窒素値を表3中で様々な触媒について提示する。イオウおよび窒素値は、フィードAの導入後1〜9日で得られた液体生成物試料の平均をとることによって得られた。使用したHDS次数は1.4であった。
【0075】
結果を表3にまとめ、この表は比較触媒C1に対して実施例3にしたがって作製された触媒を使用するこれらの実験の活性結果を示す。比較触媒はコバルト、モリブデン、およびリンを試験した本発明の触媒と類似した量で含み、比較触媒は過硫酸アンモニウム(反応開始手段)の存在下であるが、モノマーの非存在下で調製した。表3からわかるように、ポリアクリル酸の量が0%から約8重量%まで増加する際に水素化脱硫(HDS)および水素化脱窒素(HDN)活性は約14%まで増加した。
【表3】
【0076】
実施例5
ポリマーで修飾された、NiおよびMoを含有する触媒の調製
100g/LのニッケルをNiOとして、599g/LのモリブデンをMoO3として、そして42g/LのリンをP25として含有するストック含浸溶液を、炭酸ニッケル(Ni(OH)X(CO3Y)、MoO3、H3PO4(85%水溶液)、および水を適切な量で合わせて混合することによって調製した。混合物を透明溶液が得られるまで70℃より高い温度で加熱した。このストック溶液中にはモノマーは存在していなかった。
【0077】
実施例3の手順をおこなって、Ni、Mo、およびPとアクリル酸を含有する触媒試料を、上述のストック溶液、および205m2/gまたは271m2/gのいずれかの表面積を有する押出アルミナ担体を使用して調製した。過硫酸アンモニウム(APS)を反応開始手段として使用した場合、黄色い堆積物が形成された。APSと同じモル量を添加することによってAPSを過硫酸カリウム(KPS)で置換した。試薬の量を表4に記載する;実験C2およびC3は比較例であり、反応開始手段を含んでいたが、モノマーを含んでいなかった。結果として得られる触媒の炭素含有量を、総炭素分析を使用して測定し、炭素収率をグラムおよびモノマー炭素含有量のパーセンテージとして表4で示す。
【表4】
【0078】
実施例3および5で調製した触媒のラマンスペクトルは、重合が起こった明らかな証拠を示す。ラマン測定を532nm励起で実施した;レーザー出力を制御して試料損傷を回避した。スペクトルを10×30秒の収集時間で記録した。図1は実施例5の触媒B(表4)から得られた典型的なラマンスペクトルを示す。スペクトルは2933cm-1付近にポリアクリル酸に特徴的な強力なバンドを示す。3040cm-1および3110cm-1付近には低強度のバンドは、それぞれアクリル酸モノマーのν(CH)およびν(CH2asy振動に起因する。3040cm-1および3110cm-1ピークに対して2933cm-1ピークの高強度は、アクリル酸の重合がこの触媒で起こったことを明らかに示す。様々なピークの帰属の検証については、例えば、C. Murli and Y. Song, Journal of Physical Chemistry B, 2010, 114, 9744-9750を参照のこと。
【0079】
実施例6
NiおよびMoを含む触媒の活性試験
モノマー(ポリマー)なしの試料に対して、アクリル酸を用いて調製した触媒には明らかな活性の利点がある。この実施例では、実施例5で調製した触媒の活性試験を、異なる試験フィードを使用し、反応器を20バールではなく90バール(9.0×106Pa)で作動させたこと以外は実施例4で記載したとおりに実施した。試験フィードはフィードBであり、これは50%のライトサイクルオイル(LCO)および50%直留軽油(SRGO)からなり、1.1317重量%のイオウ、277ppmの窒素を含み、0.8750g/mLの密度を有していた;フィードBの沸点分布は表2にある。温度はHDNについては308℃、HDN試験については315℃であった;H2対油の比は400NL/Lであり、単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)はHDN試験については1.66〜2.04/時の範囲内であり、HDS試験については1.14〜1.22/の範囲内であった。様々な反応器中の触媒の実際の重量、適用されたWHSV、ならびに液体生成物試料中のイオウおよび窒素値を表5で様々な触媒について提示する。イオウおよび窒素値は、HDN試験についてはフィードBの導入後1〜11日で、HDS試験についてはフィードBの導入後14〜22日で得られた液体生成物試料の平均値をとることによって得ら
れた。時期尚早の反応器運転停止のために比較触媒C3のHDSデータは得られなかった。HDS次数は1.3であった。
【0080】
結果を表5にまとめ、この表は、適切な比較触媒と比較した、この実施例で作製した触媒の活性結果を示す。水素化脱硫(HDS)活性および水素化脱窒素(HDN)活性は、触媒中のポリアクリル酸の量が0%から約19重量%まで増加する際に約20%まで増加した。
【表5】
【0081】
実施例7−比較例
水素化金属の非存在下での様々なモノマーの重合
各々異なるモノマーおよび過硫酸カリウム(KPS)を含むいくつかの溶液を水中で調製した。モノマー、ならびにモノマー、KPS、および水の量を表6に記載する。全ての成分を室温で混合することによって透明な溶液が得られた。その後、各溶液を密閉容器中で80℃にて加熱した。高温での各溶液の外観における変化を使用して、重合が起こったかどうかを判定した。これらの観察に基づくと、エチレングリコールビニルエーテルを除く試験したすべてのモノマーについて重合が起こった。
【表6】
【0082】
実施例8
Al23担体の存在下での様々なモノマーの重合
それぞれ異なるモノマー、過硫酸カリウムおよびAl23の押出物(表面積、BET:266g/m2)を含むいくつかの水溶液を0.24gのモノマー/g Al23および0.012gのK228/g Al23の濃度で調製した。モノマーを表7中に記載する。モノマー水溶液で飽和させた結果として得られる押出物を密閉容器中80℃にて16時間加熱した。次に、試料を開放容器中で120℃にて1時間保持して、過剰の水を除去した。このようにして得られた材料の炭素含有量を表7で報告する。
【0083】
水中で重合しない(実施例7を参照のこと)エチレングリコールビニルエーテルをロードした支持体を比較のために同じ調製法を用いて調製した。比較実験C4の炭素重量%およびC収率から、かなりの量のエチレングリコールビニルエーテルが120℃での加熱処理により放出されたことは明らかである。このことは、エチレングリコールビニルエーテルについて重合は起こらなかったかまたは非常に不完全な重合が起こったこと、そしてこのモノマーは120℃での乾燥中にほとんど蒸発してしまったことを示す。
【表7】
【0084】
実施例9
Al23支持体上の様々なモノマーのラマン測定
担体試料を比較目的で調製した。実施例8でのように押し出されたAl23担体をKPSの非存在下で0.24g モノマー/g Al23の濃度のアクリル酸水溶液で飽和させた。モノマー水溶液で飽和させた押出物を密閉容器中80℃にて16時間加熱した。次に、押出物を開放容器中で1時間120℃にて保持して、過剰の水を除去した。これは比較試料C5であった。
【0085】
ラマンスペクトルを比較試料C5について、ならびに実施例8からの担体Dおよび担体F(表7)について記録した;ラマンスペクトルを図2に示す。ラマン測定を514nm励起で実施した;レーザー出力を制御して試料損傷を回避した。スペクトルを10×10秒の収集時間で記録した。
【0086】
比較試料C5のスペクトルは未反応アクリル酸に特徴的なピークを示す。C=C伸縮振動に関連する1640cm-1でのピークは未反応アクリル酸が比較試料C5中に存在したことの明らかな証拠である。担体Dのスペクトルは重合が起こったことを明らかに示す;2929cm-1でのピークはポリアクリル酸に特徴的である。1640cm-1にピークがないことは、担体DにおいてC=C結合が存在しないことを示した。アクリル酸およびポリアクリル酸に特徴的なピークの帰属の検証については、例えば、C. Murli and Y. Song, Journal of Physical Chemistry B, 2010, 114, 9744-9750を参照のこと。担体Fのスペクトルは、未反応マレイン酸およびポリマレイン酸に帰属できるバンドを示す。2931cm-1でのピークは相当量のポリマレイン酸が存在していたことを示し、一方、1657cm-1および3052cm-1でのピークは、担体Fにおいて未反応C=C結合が存在し
ていたことを示す。マレイン酸およびポリマレイン酸に特徴的なピークの帰属の検証については、例えば、C. Q. Yang and X. Gu, Journal of Applied Polymer Science, 2001, 81, 223-228を参照のこと。このように、そのそれぞれが反応開始手段を含む担体DおよびFは相当量のポリマーを含み、一方、反応開始手段を含まない試料C5は検出可能な量のポリマーを含んでいなかった。
【0087】
これらの実験は、適切な反応開始手段および/または条件が担体の存在下でモノマーを重合するために必要であるようであることを示す。言い換えれば、担体自体はモノマー(複数可)の重合を誘発しない。
【0088】
実施例10
ポリマーで修飾された、CoおよびMoを含有する触媒の調製
実施例8で調製した材料に細孔容積含浸によって金属をロードした。MoO3、Co(OH)X(CO3Y、およびH3PO4(85%水溶液)、および水を適切な量で混合し、透明溶液が得られるまでこの混合物を70℃以上で撹拌することによって、Moを583g MoO3/Lの濃度で、Coを104g CoO/Lの濃度で、そしてH3PO4を42g P25/Lの濃度で含有するストック溶液を調製した。さらなる比較試料として、同じストック溶液および調製方法を使用して、実施例8で使用したものと同様であるがモノマーを含まないAl23押出物から出発して触媒を調製した。各調製のために、最終触媒試料がそれぞれ600℃で焼成後に測定して28重量%のMoO3を含有するように、ストック溶液を充分な水で希釈した。
【0089】
実施例11
CoおよびMoを含む触媒の活性試験
実施例10で記載されるようにして調製した触媒を粉砕した;125〜350μmの粉末画分を篩別によって単離した。125〜350μm画分を水素化脱硫および水素化脱窒素におけるそれらの性能について評価した。試験を実施する直前に8時間250℃にて、そして5時間320℃にて温度を保持する2段階法で触媒をジメチルジスルフィド(2.5重量%S)でスパイクされたSR−LGOと接触させることによって触媒を硫化した。試料を45バール(4.5×106Pa)にてフィードBの直留軽油(SRGO)での水素化脱硫および水素化脱窒素におけるそれらの性能について試験した。フィードBは7914ppmのイオウ、169ppmの窒素を含み、0.8574g/mLの密度を有していた;フィードBの沸点分布を表2に示す。触媒活性を350℃の温度で評価し、その間、H2対油の比は300NL/Lであり、単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)は2.5〜3.5/時の範囲内であった。様々な反応器中の触媒の実際の重量、適用されたWHSV、ならびに液体生成物試料中のイオウおよび窒素値を表8で様々な触媒について提示する。フィードBの導入後6〜8日で得られた4つの液体生成物試料の平均値をとることによってSおよびN値を得た。使用したHDS次数は1.4であった。
【表8】
【0090】
モノマーが添加されていない触媒C7、および重合が支持体上で起こらなかった触媒C6と比べて触媒H〜KのHDSおよびHDN活性において明らかな利点がある。上記表の結果から、活性金属の導入前にモノマーを担体に導入することは実施可能であり、モノマーの重合が触媒活性の利点を提供することがわかる。
【0091】
実施例12−比較例
24重量%のMoをMoO3として、4重量%のCoをCoOとして、そして2重量%のPをP25として有する商業的に適用されたCoMo/Al23水素化処理触媒を焼成して、コークスを除去し、硫化物を酸化物に変換した。焼成温度はすべてのコークスを除去するために充分高かったが、バルク相およびCoAl24の実質的な形成を防止するために充分低かった。この再生されたCoMo/Al23触媒が試料C8であった。試料C9を形成するために、試料C8の一部をマレイン酸の水溶液と接触させた。マレイン酸水溶液を触媒1gあたり0.10gのマレイン酸の濃度での細孔容積含浸によって適用した。含浸後、材料を3時間50℃にて密閉容器中で放置し、その後、空気中で120℃に加熱して、水を除去した。このマレイン酸と接触させた触媒が試料C9であった。試料C9のラマンスペクトルはポリマレイン酸に特徴的なピークを示さなかった。
【0092】
実施例13−比較例
ポリマーの非存在下でCoおよびMoを含む触媒の活性試験
実施例12で記載する触媒(試料C8およびC9)を粉砕した;125〜350μmの粉末画分を篩別によって単離した。125〜350μm画分を水素化脱硫におけるそれらの性能について評価した。触媒をジメチルジスルフィド(2.5重量%S)でスパイクされたSR−LGOと、試験を実施する直前に温度8時間250℃にて、5時間320℃にて保持する2段階法で接触させることによって、触媒を硫化した。試料を45バール(4.5×106Pa)にてフィードCの直留軽油(SRGO)での水素化脱硫におけるそれ
らの性能について試験した。フィードCは7914ppmのイオウ、169ppmの窒素を含み、0.8574g/mLの密度を有していた;フィードCの沸点分布を表2に示す。触媒活性を350℃の温度で評価し、一方、H2と油の比は300NL/Lであり、単位時間当たりの重量空間速度(WHSV)は2.5〜3.5/時の範囲内であった。様々な反応器中の触媒の実際の重量、適用されたWHSV、および液体生成物試料中のイオウ値を表9で様々な触媒について提示する。SRGOの導入後6〜8日で得られた4つの液体生成物試料の平均値をとることによってS値を得た。使用したHDS反応次数は1.4であった。
【表9】
【0093】
表9中の結果と表8中の実験Jの結果との比較は2点を示す。示された第1点は、水素化処理触媒自体(重合反応開始手段なし)は触媒の存在下でモノマー種の重合を誘発しないことである。示された第2点は、非重合モノマーの存在は触媒の活性をあまり増加させないということである。したがって、モノマーの重合が起こり得ることを確実にするためには適切な反応開始手段および/または条件が必要である。
【0094】
本明細書またはその特許請求の範囲のどこでも化学名または式によって参照される成分は、単数形または複数形で言及されているかどうかにかかわらず、化学名または化学型によって言及される別の物質(例えば、他の成分、溶媒など)と接触する前に存在するとして特定される。どのような化学変化、変換および/または反応が、あったとしても結果として得られる混合物または溶液中で起こるかは重要ではなく、なぜならそのような変化、変換、および/または反応は、本願にしたがって必要とされる条件下で特定の成分を一緒にすることの自然な結果だからである。したがって、成分は、所望の操作の実施に関連して、または所望の組成物の形成で一緒にされる構成要素として特定される。また、本明細書中以下の特許請求の範囲が現在時制で物質、成分および/または構成要素について言及し得るが(「含む(comprises)」、「ある(is)」など)、本願にしたがって1以上の他の物質、成分および/または構成要素と最初に接触、ブレンドまたは混合される直前に存在していたとしてその物質、成分または構成要素について言及する。物質、成分または構成要素が、本願および化学者の通常の技術にしたがって実施する場合、接触、ブレンドまたは混合操作の過程で化学反応または変換によりその元の独自性を失った可能性があるという事実は、したがって実施上何の問題もない。
【0095】
本発明は、本明細書中に記載する材料および/または手順を含み得るか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0096】
本明細書中で用いられる場合、本発明の組成物中または本発明の方法で用いられる成分の量を修飾する「約」という用語は、現実に濃縮液または使用溶液(use solution)を作製するために使用される典型的な測定および液体取扱い手順;これらの手順における偶発的な誤差;組成物を作製するためまたは方法を実施するために用いる成分の製造、供給源
、または純度における差異;およびその他によって起こり得る数量のばらつきを指す。約という用語は、特定の初期混合物から得られる組成物の異なる平衡状態に起因する異なる量も包含する。「約」という用語で修飾されているか否かによらず、特許請求の範囲は量の等価物を包含する。
【0097】
明らかに別段の記載がない限り、冠詞「a」または「an」は、本明細書中で用いられる場合、限定を意図せず、説明または特許請求の範囲をこの冠詞が指す1つの要素に限定すると解釈するべきではない。むしろ、冠詞「a」または「an」は、本明細書中で用いられる場合、特に別段の指示がない限り、1以上のかかる要素を対象とすることが意図される。
【0098】
本明細書の任意の部分で引用されるありとあらゆる特許または他の刊行物または公開された文書は、本明細書中で全文が記載されているかのように、参照により本開示に全体として組み込まれる。
【0099】
本発明はその実施においてかなりの変更を許す。したがって、前述の記載事項は限定を意図せず、本発明を前述の特定の実例に限定すると解釈されるべきではない。
図1
図2