特許第6360066号(P6360066)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360066
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】糖誘導体を得るためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/14 20060101AFI20180709BHJP
   C13K 13/00 20060101ALI20180709BHJP
   C07D 307/33 20060101ALI20180709BHJP
   C07H 3/02 20060101ALI20180709BHJP
   C07C 59/105 20060101ALI20180709BHJP
   C07C 51/16 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C12P19/14 A
   C13K13/00
   C07D307/33 335
   C07H3/02
   C07C59/105
   C07C51/16
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-542228(P2015-542228)
(86)(22)【出願日】2013年11月8日
(65)【公表番号】特表2016-501016(P2016-501016A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】EP2013073411
(87)【国際公開番号】WO2014076012
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2016年11月1日
(31)【優先権主張番号】A50511/2012
(32)【優先日】2012年11月14日
(33)【優先権主張国】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】511259474
【氏名又は名称】アニッキ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】ANNIKKI GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100114465
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルツ,デルテ エンドリケ
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,ベルンド
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−500305(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/046417(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/124312(WO,A1)
【文献】 特開2001−245657(JP,A)
【文献】 特開2012−147728(JP,A)
【文献】 Norman J. Novick, et al,,L-Arabinose Metabolism in Azospirillum brasiliense.,J Bacteriology,1982年,149,1,364-367
【文献】 ALVARO L.MATHIAS,et al,,L-Arabinose Metabolism in Herbaspirillum seropedicae.,J Bacteriology,1989年,171,9,5206-5209
【文献】 Ulrike Johnsen,et al,,D-Xylose Degradation Pathway in the Halophilic Archaeon Haloferax volcanii.,J Biological Chemistry,2009年,284,40,27290-27303
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘミセルロース含有材料由来の糖を、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物の形態に変換するためのプロセスであって、ヘミセルロース含有材料は、酵素的または非酵素的に加水分解され、得られた加水分解産物は、少なくとも1つの酵素的工程を含む変換に供され、ここで、糖が遊離され、遊離された糖は、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物に変換されることを特徴とし、
加水分解産物が遊離された糖としてアラビノースおよびキシロースを含み、
アラビノースがオキシドレダクターゼによってアラビノ−γ−ラクトンに変換され、該アラビノ−γ−ラクトンはアラボン酸に脱水され、
酸化還元補酵素はオキシドレダクターゼによってNADHおよび/またはNADPHに還元され、
酸化還元補酵素はキシロースレダクターゼによる同じ反応バッチにおいて、酸化された形態のNADおよび/またはNADPに変換されることを特徴とする、
プロセス。
【請求項2】
少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物に変換される遊離された糖は
−アラビノースとD−キシロースとの混合物を構成することを特徴とする、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
得られたアラボン酸は、2−ケト−3−デオキシアラボン酸に脱水されることを特徴とする、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
アラボン酸はデヒドラターゼによって、脱水されることを特徴とする、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
得られた2−ケト−3−デオキシアラボン酸、さらにα−ケトグルタル酸セミアルデヒドに脱水されることを特徴とする、請求項3または4に記載のプロセス。
【請求項6】
2−ケト−3−デオキシアラボン酸は、デヒドラターゼによって、脱水されることを特徴とする、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
得られたα−ケトグルタル酸セミアルデヒドは、α−ケトグルタル酸に酸化されることを特徴とする、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
α−ケトグルタル酸セミアルデヒドはオキシドレダクターゼによって脱水されることを特徴とする、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
得られたイオン結合部位を有する化合物は、反応混合物から分離されることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
イオン結合部位を有する化合物の分離は、イオン交換クロマトグラフィーおよび/または電気透析によって達成されることを特徴とする、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
ヘミセルロース含有材料は、リグノセルロース系材料から得られたものであることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
ヘミセルロース含有材料は、リグノセルロース系材料をアルカリ性アルコール水溶液を用いて処理することによって得られたものであることを特徴とする、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
リグノセルロース系材料の処理は、50から100℃の温度で実施される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
リグノセルロース含有材料は、リグノセルロース含有バイオマスに由来することを特徴とする、請求項11〜13のいずれかに記載のプロセス。
【請求項15】
リグノセルロース含有材料が、一年生植物、ワラ、エネルギーグラス、サイザル麻、バガス、または殻などの特殊なリグノセルロース基質に由来することを特徴とする、請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
リグノセルロース含有材料が、ワラまたはバガスに由来することを特徴とする、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
リグノセルロース含有材料からアラボン酸、2−ケト−3−デオキシアラボン酸、α−ケトグルタル酸セミアルデヒドおよび/またはα−ケトグルタル酸を得るための、請求項1から16のいずれかに記載のプロセスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘミセルロース含有材料から糖誘導体を得るためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生可能な原料に関し再考がなされている。エネルギーおよび化学製品の供給源として化石原料から再生可能な原料に切り換える試みがなされている。再生可能な原料(以下「Nawaro」と略す)としては、食糧または飼料として使用されない植物または動物由来の農業および林業原料が挙げられる。再生可能な原料は、物質面だけでなく、エネルギー的に利用されることもある。Nawaroには、限られた範囲内でしか得られない化石原料の保護、十分な利用可能性および余剰な農産物に対する新たな市場の機会などの多くの利点がある。
【0003】
リグノセルロースは、Nawaroとしても重要性が増している(KammおよびKamm、2004、Appl Microbiol Biotechnol.64(2):137〜45ページ)。リグノセルロースは、以下の異なる3つの化学的基幹部分からなる:グルコース単位でできたC6重合体であるセルロース;例えばキシロースなどの、各種C5糖からなるヘミセルロース;およびフェノール重合体としてのリグニン。リグノセルロースを利用する可能性の1つはガス化であり、その結果、いわゆる「合成ガスプラットフォーム」が提供される。CO、CO、H2、CHおよびNが豊富な合成ガスならびにタールを生成するために酸素の供給が制限された状態で原料を燃焼させる(Bridgwater、2003)。この合成ガスは、その後、さらに、例えばフィッシャートロプシュ合成により、燃料および化学薬品を生成するために使用することができる(Tijmensenら、2002)。第2の可能性は、いわゆる「糖プラットフォーム」である。それでは、リグノセルロースが最初に主要な3つの構成成分に分解され、その後、生成物にさらに変換される。キシロースは、例えば、キシリトールあるいはフルフラールに変換されることもある。グルコースは、発酵に使用されるか、またはヒドロキシメチルフルフラール(HMF)に変換されることもある。リグニンは、エネルギー産生のために使用されることが多く、または単に燃やされる(SaakeおよびLehnen、2007、Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry.Wiley−VCH Verlag GmbH&Co)。
【0004】
リグノセルロース中の糖は、部分的に結晶化したセルロースおよびセルロースを取り囲む非結晶性のヘミセルロースの形態で高度に架橋した高分子構造でもたらされる。細胞壁の合成過程で空隙がリグニンで満たされ、これにより、極めて密な複合体が形成される。構造が緊密であることにより、セルラーゼまたはヘミセルラーゼなどの酵素が近づくことができない。それは、こうした酵素が相対的に高分子量であるため、孔に入ることができないことによる(Himmelら、2007、Science.315(5813):804〜7ページ)。したがって、酵素処理に先立って、リグノセルロースの間隙率を増加させる化学的工程が行われる必要がある。この工程は、「前処理」(分解)と呼ばれる。この分解では、高分子量のリグノセルロースマトリックスが細断され、それにより、セルロース繊維が露出し、その結果、セルロース繊維に酵素が接触しやすくなる。この分解は、バイオリファイナリーにおいて最も費用のかかる工程の1つと評される重要な工程である(Mosierら、2005、Bioresour Technol.96(6):673〜86ページ)。一方、それに続く加水分解、発酵、下流プロセスなどの工程およびこのプロセスから出る廃棄物にも非常に大きな影響がある(Alviraら、Bioresour Technol.101(13):4851〜61ページ)。
【0005】
確立された分解法は、本質的にヘミセルロースを液化すること(例えば、水蒸気爆砕前処理、希酸前処理)またはリグニンを液化することによって間隙率を増加させる(例えば、石灰前処理、アンモニア前処理)ことのいずれかを目的とする。こうした方法には、以下のいずれか1つの重大な不利益がある:多量のエネルギーを消費するか、または大部分が200℃をわずかに下回る温度で進行する。あるいは、必要な分解用化学薬品の回収が高価である。前処理の種類が、次の生体触媒プロセス中の酵素活性および収率に強い影響を与える可能性がある。反応温度が高いと、毒性の分解生成物(例えば、フルフラール)が生じることが多く、エタノール発酵に直結する場合には、これが酵母を抑制することもある(Chandraら、2007、Adv Biochem Eng Biotechnol.108:67〜93ページ;Mansfieldら、1999、Biotechnol Prog.15(5):804〜816ページ)。
【0006】
ヘミセルロースとしてのキシランは不均質な重合体である。ヘミセルロースは、主に、D−キシロースおよびL−アラビノースなどのペントース(C5)を含むが、D−グルコース、D−マンノースおよびD−ガラクトースなどのヘキソース(C6)ならびにグルクロン酸および4−O−メチル−D−グルクロン酸などの糖酸も含む。ヘミセルロースの重合度は通常200未満である(Jorgensenら、2007)。ヘミセルロースは、構成される糖の名から命名され、例えば、コムギのワラに含まれるアラビノグルクロノキシランは、キシロース骨格からなり、アラビノースおよびグルクロン酸の側鎖を含む。キシロース単位は、さらに、アセテートとフェルラ酸またはクマル酸のそれぞれとともにエステル化されることもある(Polizeliら、2005、Appl Microbiol Biotechnol.67(5):577〜91ページ)。キシランの酵素分解のためには、エンドキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、α−グルクロニダーゼ、α−L−アラビノフラニダーゼ(Arabinofuranidasen)およびエステラーゼが必要とされる(Polizeliら、2005、同書)。エンドキシラナーゼは、キシラン骨格にあるグリコシド結合を切断し、それにより基質の重合度を低下させる。加水分解の主生成物は、β−D−キシロピラノシルオリゴマーであるが、少量の単糖、二糖および三糖もある。β−キシロシダーゼは、キシロオリゴ糖をモノマーのキシロースに切断する。残りの酵素は、側鎖に対して活性を示し、それらを切り離す。α−グルクロニダーゼは、骨格からグルクロン酸残基を分離させ、α−L−アラビノフラニダーゼは、アラビノース側鎖を分離させる。エステラーゼは、キシランのエステル結合を切断し、それぞれ、アセテートまたはp−クマル酸あるいはフェルラ酸などの側鎖に分ける(Collinsら、2005、FEMS Microbiol Rev.29(1):3〜23ページ)。エンドキシラナーゼおよびβ−キシロシダーゼがキシランを完全に分解できるようにするためには、側鎖を切断することは非常に重要である。
【0007】
先行技術
キシランの加水分解は、糖重合体を糖オリゴマーまたは糖モノマーに切断するのに役立つ。その点で、それぞれの目的が差別化されてもよい。一部の用途では、セルロースおよびキシロースの両方の糖重合体をモノマーに切断することが適当である。特に、これには、バイオマスから発酵性糖を生成する場合が当てはまる。一方、他の用途では、セルロースは重合体として維持されるべきであるが、キシランは、オリゴマーまたはモノマーに切断されるべきである。キシランの加水分解は、化学的または酵素的に行うことができる。さらに、キシランの加水分解は、リグノセルロース系材料の分離と同時に行われてもよく、または別個の工程で行われてもよい。
【0008】
US3,523,911には、化学的方法について記載されており、その方法では、バイオマスが100から150℃の温度の酸性蒸気を用いて処理され、それによって、その後、濃縮の過程で、材料から出た糖が溶解される。しかしながら、前記方法では、非常に多量の酸が消費され、非常に低濃度でしかキシロースを含まない加水分解産物が得られる。例えば、バガスの乾燥物に基づき15%のキシランが加水分解されると、加水分解産物はキシロースを3%しか含まないことになり、これは、プロセスの間に吸収された大量の水に起因する可能性がある。酸の大量消費および糖溶液を濃縮するためのコストがこのプロセスを採算のとれないものにする。
【0009】
US7,932,063には、最初にアンモニア含有水溶液を用いてバイオマスが分解される方法について記載されている。得られた生成物は、その後、発酵性糖を得るために糖切断酵素である「糖化酵素」と反応させられる。酵素は、グリコシダーゼ、ペプチダーゼ、リパーゼ、リグニナーゼおよびエステラーゼなどのいくつかの活性を含むこともある。この方法では、可能であれば、存在する全ての糖重合体が確実にモノマーに分解される。それにより、高い糖濃度の加水分解産物の高い糖収率が実現する。欠点は、加水分解の非特異性である。この方法は、セルロースを重合体として維持しながら、リグノセルロース系材料中のキシランのみを切断することができない。
【0010】
AT509307A1には、100℃未満の温度でアルカリ性アルコール溶液により分解されたバイオマスが、糖モノマーを得るために炭水化物切断酵素を用いて処理される方法について記載されている。その場合、酵素として純粋なキシラナーゼが使用されると、キシランのみが分解され、セルロースは、重合体として維持される。キシランから得られたキシロースは、その後、必要な加水分解産物からキシロースを分離することなくキシロースレダクターゼを用いてキシリトールに変換できる。それにより、前処理されたヘミセルロース含有バイオマスから高濃度のC5糖が得られる。しかしながら、この方法には、大きな労力を費やした場合にしか、加水分解からのC5糖あるいは還元された次の生成物を、反応溶液から分離できないという欠点がある。それぞれ可溶性キシラン、キシロオリゴ糖および酵素またはタンパク質の残余物が依然として溶液中に存在する。前記溶液からキシロースまたはキシリトールを単離するためには結晶化が必要となる。
【0011】
この文献には、加水分解産物からキシリトールを結晶化させる方法は、低濃度のため難しいと記載されている(Weiら、2010;Frontiers of Chemical Engineering in China 4(1):57〜64ページ;Rivasら、2006、Agric Food Chem.54(12):4430〜5ページ)。さらに、そのような加水分解産物は複雑な組成であるため、結晶化に先立って精製工程を行わなければならない。Rivasら(2006)は、活性炭を用いて精製工程が行われ、その後、溶媒を蒸発させることによってキシリトールの濃度が達成される方法について記載している。Weiらは、活性炭およびイオン交換体を用いた精製工程を利用してから、溶媒を蒸発させることによってキシリトールの濃度を増加させる。両方の場合において、結晶化は、冷所においてエタノールを添加することによって行われる。特に、溶媒を蒸発させることによるキシリトール溶液の濃縮は、非常に多大なコストがかかり、工業規模のプロセスに対して最適ではない。
【0012】
Watanabeらは、リン酸化の独立した5つの工程においてアラビノースがα−ケトグルタレートに変換される微生物のアラビノース代謝経路について記載している(Watanabeら、2005;Nucleic Acids Symp Ser(Oxf).(49):309〜10ページ;WatanabeらJ Biol Chem. 281(44):33521〜36ページ、2006)。最初に、L−アラビノース−1−デヒドロゲナーゼにより糖がL−アラビノ−γ−ラクトンに酸化される。反応の間に、酵素が、電子を基質から、それぞれNADPまたはNADへ移動させる。L−アラビノラクトナーゼにより、L−アラビノ−γ−ラクトンが開環されてL−アラボネートになる。この酵素は、補酵素を必要としない。アラボネートに対して、2つの脱水工程が続く。第1の工程は、L−アラボネートデヒドラターゼによって触媒され、これは、L−アラボネートをL−2−ケト−3−デオキシアラボネート(L−KDA)に変換する。L−KDAデヒドラターゼは、その後、後者をα−ケトグルタル酸セミアルデヒド(α−KGS)に変換する。この2つのデヒドラターゼも、可溶性補酵素がなくても反応を触媒する(Watanabeら、2006、J Biol Chem.281(39):28876〜88ページ)。最終的に、セミアルデヒドは、その後、α−KGSデヒドロゲナーゼによりα−ケトグルタレートに酸化される。前記酵素も、酸化の触媒反応のために、それぞれNADまたはNADPを必要とする(Watanabeら、2006、同書)。しかしながら、この形態の工業規模での適用に前記変換は適していない。それは、5つの工程のうちの2つの工程に化学量論量の補酵素NAD(P)が必要とされ、これがコストを非常に高くするためである。
【0013】
US2006/0234363A1には、微生物中でアラビノースおよびキシロースから1,2,4−ブタントリオールを生成するために、Watanabeら(2006)によって示された通りのアラビノース代謝経路が部分的に使用されている。その際、糖が最初にデヒドロゲナーゼおよびラクトナーゼによってラクトンに酸化され、対応する酸に加水分解される。その後、細胞中でC3に対して脱水が起こり、その結果、使用された糖に応じて、それぞれ、D−またはL−3−デオキシ−グリセロ−ペンツロソン酸が生成される。一方、それに続いて、酸基の脱炭酸化が起こり、その結果、それぞれ、D−またはL−ジヒドロキシブタナールが生成される。それに引き続いて、C1のアルデヒドも還元され、その結果、それぞれD−またはL−1,2,4−ブタントリオールが生成される。この出願では、作用工程が多数の細胞中で行われるため、酸化還元工程に化学量論量の補酵素を加える必要がない。しかしながら、細胞では、一般に無細胞系よりも低い基質濃度で作用する可能性があるという欠点がある。また、この系は、作用工程が多数の細胞中で行われる場合、それほど効率的でないという事実もある。それは、使用された糖の一部が生物の存続に寄与するため、生成物に変換されないためである。
【0014】
US6,284,904には、発酵バッチまたは加水分解産物などの工業溶液から、例えばスクシナートなどの有機酸を除去するのに役立つ方法について記載されている。その際、溶液がアニオン交換体上に流され、それが、有機酸が溶出されない条件下で洗浄される。それに続いて、それより強い無機陰イオンを添加することによって有機酸が溶出される。この方法では、例えば、加水分解産物などの複合溶液から有機陰イオンを単離および濃縮もできる。
【0015】
US6,187,570には、発酵バッチまたは細胞非含有生体触媒バッチからグルコン酸の誘導体を電気透析によって単離できる方法について記載されている。いくつかの陰イオンおよび陽イオン膜が陰極と陽極との間に交互に取り付けられる。陰極、陽極および中間膜で構成されたブロックは電解液で満たされている。「供給流区画」があり、ここに、溶液、発酵バッチまたは細胞非含有生体触媒バッチが投入される。さらに、「濃縮物区画」があり、ここで酸が濃縮される。この2つの区画は、陰イオン膜および陽イオン膜によって相互に分離されている。電圧が印加されると、マイナスに帯電した酸は、陰イオン膜を通って濃縮物区画に移動するのに対して、溶液の帯電していない構成成分は供給流区画にとどまる。この方法では、それぞれ、グルコン酸または前記酸の誘導体が、中性の構成成分から分離され、濃縮される。
【0016】
US5,464,514には、弱酸との結合傾向の違いにより糖が分離される方法について記載されている。分離は、その後、電気透析によって行われる。弱酸としてホウ酸が選択される。各種糖は、ホウ酸と結合する傾向が異なる。糖とホウ酸の化合物は、マイナスに帯電し、電場に移動するのに対して、ホウ酸と結合していない糖は帯電しないままである。電気透析セルは、2つの陽イオン交換膜の間に取り付けられた陰極および陽極からなる。2つの陽イオン交換膜の間に、間の空間を2つの区画に分ける陰イオン交換膜が位置する。区画Iは陰極側に位置し、区画IIは陽極側に位置する。分離対象の糖の溶液が、ここで区画Iに投入され、電圧が印加されると、マイナスに帯電したイオン、すなわち、ホウ酸と結合した糖が陰イオン交換膜を通過して区画IIに移動する。帯電していない糖は、区画Iにとどまる。この方法は、ラクトースおよびラクツロースの分離ならびにグルコースおよびフルクトースの分離について試験された。しかしながら、前記方法は、糖によってホウ酸との結合親和性が違うという事実に基づくものである。しかしながら、ホウ酸に対する親和性が低い一部の糖は酸とも結合することになり、それにより区画IIに移動する。それにより、糖の分離が不可能である、単に、糖間の相互比率が変化する。フルクトースおよびグルコースの場合、移動速度の比率は、1.4対1であった。電気透析のいくつかの工程によって分離を向上させることができる。続いて、電気透析のさらなる工程においてホウ酸および糖を互いから分離できる。この方法には、電気透析の多数の工程によってしか適切な分離ができないという難点がある。さらに、前記方法は、それぞれモノマーおよびダイマーまたはオリゴマーの糖の区別をしない。分離対象の物質同士がホウ酸との結合傾向に関して非常に異なる場合にのみ適切な分離ができる。さらに、ホウ酸を用いる場合、追加の(毒性の)構成成分を利用しなければならないことが難点である。
【0017】
US2003/0172850には、セメントミックスへの添加物として役立ち、
(A)リグノスルホン酸もしくはその塩;アルドヘキソン酸もしくはその塩;ヘキスロン酸もしくはその塩、ヘキサル酸もしくはその塩;またはそれらの混合物;および
(B)少なくとも1つのアルドペントン酸またはその塩、
を含む組成物について記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
リグノセルロース含有(またはそれぞれ、ヘミセルロース含有)材料の加水分解の間に糖生成が直接利用できるプロセスを発見した。
【0019】
一態様において、本発明は、ヘミセルロース含有材料由来の糖を、特にバイオマスから得られた糖を、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物の形態に変換するためのプロセスであって、ヘミセルロース含有材料は、酵素的または非酵素的に加水分解され、得られた加水分解産物は、少なくとも1つの酵素的工程を含む変換に供され、ここで、糖が遊離され、遊離された糖は、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物に変換されることを特徴とする、プロセスを提供する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によって提供されるプロセスは、本明細書中では「本発明の(による)プロセス」とも称される。
【0021】
本発明によるプロセスでは、ヘミセルロース含有材料の加水分解および少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物への遊離された糖の変換の両方が1つの反応バッチで行われてもよい。これは、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物への遊離された糖の変換に先立って、加水分解産物が単離される必要がないことを意味する(ワンポット反応)。
【0022】
本発明によるプロセスに使用できるヘミセルロース含有材料は、例えば、リグノセルロース含有材料の前処理により、リグノセルロース系材料から得られる。
【0023】
本発明によるプロセスにおいて、「リグノセルロース含有材料」には、特にリグノセルロース含有バイオマス、例えば、(乾燥)イネ科植物またはイネ科植物の一部などの一年生植物が含まれ、好ましくは、イネ科植物、ワラ、例えばスイッチグラス、エレファントグラスもしくはアバカなどのエネルギーグラス、サイザル麻、バガス、または殻、例えば、籾殻などの外穎などの特殊なリグノセルロース基質、特に好ましくは、ワラ、エネルギーグラス、バガスまたは殻、より一層好ましくは、ワラまたはバガスである。
【0024】
本発明によるプロセスに使用するためのリグノセルロース含有バイオマスは、例えば、好ましくは50から100℃、例えば100℃以下、好ましくは85℃以下、特に好ましくは71℃の温度での、アルカリ性アルコール水溶液を用いた処理によって、好ましくは前処理される。それにより、水溶液中のリグノセルロース系材料の固体含有量が、好ましくは溶液の1〜40重量%、例えば3〜30重量%になり、固体が、好ましくは1〜40重量%、例えば3〜30重量%、特に5〜20重量%の濃度でもたらされる。脂肪族アルコール、例えばC1〜6−アルコール、特に好ましくは、エタノールまたはイソプロパノールなどのC1〜4−アルコールが、前処理のためのアルコールとして使用されるのが好ましい。アルコール溶液のpH値は、10から14の範囲であることが好ましく、塩基、好ましくは無機塩基、例えば苛性ソーダ液、苛性カリなどの水酸化物により調節されてもよい。反応の間の塩基濃度は、一般に、1から10モルL−1、好ましくは2から6モルL−1、より一層好ましくは4.5から5.5モルL−1の範囲である。本発明によるプロセスに好ましく使用される、リグノセルロース含有材料の前処理の前記の特定の実施形態は、アルコール、特にC1〜6−アルコールを含みかつpH値が10.0から14.0である塩基性水溶液を用いて処理されて、セルロースおよびヘミセルロースが豊富な材料は、異なる実施形態により前処理された材料よりも、炭水化物切断生成物への酵素分解に容易に使用できる材料であるという理解に基づくものである。
【0025】
本発明によるプロセスに使用される、リグノセルロースまたはヘミセルロースをそれぞれ含有する材料は、酵素的または非酵素的、好ましくは酵素的加水分解に供される。糖含有加水分解産物を得るための非酵素的加水分解は、従来の方法に従って、例えば、酸触媒加水分解により行われてもよい。既知の方法に従って行われてもよい酵素的加水分解については、適切な酵素、例えば、エンドキシラナーゼ、β−キシロシダーゼ、α−アラビノフラノシダーゼ、グルクロニダーゼ、セルラーゼおよびそのような酵素の混合物が使用される。
【0026】
本発明によるプロセスにおいて、例えば、上記の通りの前処理の後に得られるヘミセルロース含有材料は、好ましくは、乾燥物の重量に基づき1〜40%の濃度の水溶液の状態で使用される。
【0027】
少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物には、例えば式−(COOn+の酸基などの、塩化に適切な少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物が含まれ、ここで、Rは、水素、または、例えば、アルカリもしくはアルカリ土類陽イオン、例えば、Na、K、Ca++などの陽イオンを指し、nは、陽イオンが呈する、その原子価によって決まる電荷を指す。少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物に変換される、本発明によるプロセスにおいて遊離される糖は、好ましくは、アラビノース、例えば、L−アラビノースおよび/またはキシロース、例えば、D−キシロースである。
【0028】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物に変換される遊離された糖は、
アラビノース、特にL−アラビノース、
キシロース、特にD−キシロースまたは
アラビノース、特にL−アラビノースと、キシロース、特にD−キシロースとの混合物
のいずれかを構成することを特徴とする本発明によるプロセスを提供する。
【0029】
少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物の形態への糖の変換は酵素的に行われ、例えば、以下の反応スキーム1により行われてもよい。反応スキーム1には、酵素的酸化によるアラビノースのアルファ−ケトグルタル酸への変換およびアラボン酸への加水分解、すなわち、酸基がある化合物への糖の変換が示されている。必要に応じて、NaOH、KOH、Ca(OH)などの、例えば、水酸化物の形態の適切な陽イオンを添加することによって、酸基が塩に変換されてもよい。反応スキーム1のRは、水素、または例示のケースの場合はNaもしくはKなどの一価の陽イオンを意味する。
【0030】
【化1】
【0031】
本発明によるプロセスでは、酵素処理により少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物の形態でもたらされる、加水分解によって遊離された糖は、さらなる特定の酵素の適用により、直接、加水分解産物中で所望の最終生成物に変換されてもよいことが利点である。これは、上で示した反応スキームにおいて、それぞれ、アルファ−ケトグルタル酸、または塩としてもたらされる場合にはアルファ−ケトグルタレートへのアラボン酸の変換の例によって示されており、これらは有機化学で有用な生成物を構成する。示したケースでは、この目的のために、それぞれ、アラボン酸またはその副産物に対して特定の脱水反応を触媒する酵素が使用されてもよい。
【0032】
本発明によるプロセスの好適な実施形態において、イオン結合部位を有する化合物への、糖、好ましくはC5糖の酵素的変換は、オキシドレダクターゼによって行われ、対応するラクトン、好ましくはγ−ラクトンになる。対応する酸を得るために、得られたラクトンは加水分解され、ここで、加水分解は、酵素的、非酵素的および/または自発的加水分解によって行われてもよい。
【0033】
例えば、ペントースデヒドロゲナーゼと、例えばラクトナーゼとの組み合わせ、および/または例えばアルカリ性加水分解、好ましくは水酸化物、例えば水酸化ナトリウムを用いたアルカリ性加水分解との組み合わせは、ラクトンを対応する酸に切断することになり、C5糖の酸化のためのオキシドレダクターゼとして適切である。
【0034】
別の態様において、本発明は、遊離された糖、特にC5糖、例えばアラビノースは、オキシドレダクターゼによってラクトン、好ましくはγ−ラクトン、例えばアラビノ−γ−ラクトンに加水分解され、これが、特に、酵素的、非酵素的および/または自発的加水分解により、対応するカルボン酸、例えばアラボン酸に加水分解されることを特徴とする本発明によるプロセスを提供する。
【0035】
特定の所望の化合物を得るために、得られたカルボン酸、例えばアラボン酸は、その後、例えばデヒドラターゼによって、L−アラボン酸の場合は、例えばL−アラボネートデヒドラターゼを用いて、所望の位置、C5カルボン酸の場合は例えばC3の位置で、脱水されてもよく、その結果、対応するケトカルボン酸、例えば(L−)アラボン酸の場合には、(L−)2−ケト−3−デオキシアラボン酸が生成される。必要に応じて、得られたケトカルボン酸は、例えばデヒドラターゼを使用して、例えばC5カルボン酸の場合はC4の位置で、さらに脱水されてもよく、その結果、ケトカルボン酸セミアルデヒドが生成される。例えば、(L−)2−ケト−3−デオキシアラボン酸の場合は、L−2−ケト−3−デオキシアラボネートデヒドラターゼを使用してα−ケトグルタル酸セミアルデヒドが生成される。必要に応じて、ジカルボン酸を得るために、得られたケトカルボン酸セミアルデヒドは、例えばオキシドレダクターゼによって、酸化されてもよい;α−ケトグルタル酸セミアルデヒドの場合は、α−ケトグルタル酸を得るために、例えばα−ケトグルタレートセミアルデヒドデヒドロゲナーゼを用いる。
【0036】
別の態様において、本発明は、本発明により得られたカルボン酸、例えばアラボン酸が、例えばデヒドラターゼによって、ケトカルボン酸、例えば2−ケト−3−デオキシアラボン酸に脱水されること、別の態様においては、本発明により得られたケトカルボン酸が、例えばデヒドラターゼによって、ケトカルボン酸セミアルデヒド、例えばα−ケトグルタル酸セミアルデヒドにさらに脱水されること、別の態様においては、本発明により得られたケトカルボン酸セミアルデヒドが、例えばオキシドレダクターゼによって、ジカルボン酸、例えばα−ケトグルタル酸に酸化されることを特徴とする本発明によるプロセスを提供する。
【0037】
本発明によるプロセスでは、「ケトカルボン酸セミアルデヒド」は、末端C原子がカルボキシル基としてもたらされ、異なる末端C原子がホルミル基としてもたらされ、残りのC原子のうちの1つがケト基としてもたらされる脂肪族化合物であると理解される。
【0038】
1つまたはいくつかのオキシドレダクターゼによって還元された酸化還元補酵素NADHおよび/またはNADPHは、酸化された形態のNADおよび/またはNADPに、少なくとも1つの別のオキシドレダクターゼ活性によって、好ましくは同じ反応バッチにおいて、変換されてもよい。これに関連して、NADは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの酸化された形態を意味し、NADHは、還元された形態を意味するのに対して、NADPは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の酸化された形態を意味し、NADPHは、還元された形態を意味する。還元された補酵素を酸化された形態に変換するためには、例えば、オキシドレダクターゼ活性として、アルコールデヒドロゲナーゼ、キシロースレダクターゼ、ラクタートデヒドロゲナーゼ、オキシダーゼ、電極に固定された酸化還元酵素、例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ、ラクタートデヒドロゲナーゼ、オキシダーゼまたは電極に固定された酸化還元酵素が適切である。
【0039】
別の態様において、1つまたはいくつかのオキシドレダクターゼによって還元された酸化還元補酵素NADHおよび/またはNADPHは、同じ反応バッチにおいて、少なくとも1つの別のオキシドレダクターゼ活性、特に、アルコールデヒドロゲナーゼ、ラクタートデヒドロゲナーゼ、キシロースレダクターゼ、オキシダーゼまたは電極に固定された1つもしくはいくつかの酸化還元酵素によって酸化された形態のNADおよび/またはNADPに変換されることを特徴とする、本発明によるプロセスが提供される。
【0040】
還元された酸化還元補酵素NADHおよび/またはNADPHを酸化された形態のNADおよび/またはNADPに同じ反応バッチにおいて戻す変換をするために1つまたはいくつかのオキシドレダクターゼ活性を使用することによって、多大なコストがかかる酸化還元補酵素を大量に使用することが避けられ、その結果として、本プロセスは経済的になる。
【0041】
本発明によるプロセスの別の利点は、ヘミセルロース含有バイオマスの加水分解からの加水分解産物が、その精製または濃縮の必要がなくモノマーの糖の変換に直接使用されてもよいことである。モノマーの糖の変換は、糖、例えば各種糖と、任意の加水分解されない糖重合体と、さらに任意の依然として存在している固体との混合物中で、直接行ってもよい。本プロセスの別の利点は、モノマーの糖が、少なくとも1つのイオン結合部位を有する化合物への変換によって加水分解産物から非常に容易に単離および濃縮できることである。この方法では、例えば、変換されていないキシランまたはキシロオリゴ糖である場合もある、他の構成成分からモノマーの糖を容易に分離することができる。適切な酵素を選択することによって、他の全ての糖が溶液中に残るのに対して、特に、C5糖のみまたはC6糖のみを変換および分離することもできる。本発明によるプロセスでは、好ましくはC5糖が変換される。
【0042】
本発明によるプロセスでは、得られたイオン結合部位を有する化合物の混合物中における濃度を、分離法によって低下させることができる。そのような分離法の例としては、イオン交換クロマトグラフィー、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィーおよび/または電気透析が挙げられる。
【0043】
別の態様において、本発明は、生じたイオン結合部位を有する化合物が、特にイオン交換クロマトグラフィーおよび/または電気透析によって、反応混合物から分離される本発明によるプロセスを提供する。
【0044】
それによって、生じたイオン結合部位を有する化合物の混合物中における濃度が低下する。
【0045】
そのような分離は、イオン結合部位を有する化合物がもたらされ次第、本発明によるプロセスのいかなる時点で行われてもよい。
【0046】
本発明によるプロセスにおいて変換されない糖は、例えば、さらなる酵素的および/または非酵素的方法に供されてもよい。
【0047】
別の態様において、本発明は、リグノセルロース含有材料からアラビノース、キシロース、特に、アラビノース、アラビノ−γ−ラクトン、アラボン酸、2−ケト−3−デオキシアラボン酸、α−ケトグルタル酸セミアルデヒドおよび/またはα−ケトグルタル酸を得るための本発明によるプロセスの使用を提供する。
【0048】
以下の実施例では、温度は摂氏温度(℃)で示される。
【実施例1】
【0049】
ヘミセルロース含有材料の酵素的加水分解
キシランをpH4.3で濃度が8%(w/v)の酢酸塩緩衝液に懸濁し、Genencor companyのACCELLERASE(登録商標)TRIO(商標)とキシラン1gあたり酵素溶液1gの濃度で混合する。このバッチを50℃で24時間撹拌する。pH値を確認し、4.5超または4.1未満にずれた場合は再調整する。このバッチをブフナー漏斗によりろ過し、ろ液(加水分解産物)を、モノマーの組成およびそれらの濃度に関してHPLC−LEX−DADにより分析する。このろ液には、濃度が約6%のキシロース、0.43%のアラビノースおよび0.27%のグルコースが含まれる。この方法では、キシランにおいて得られるキシロースの約85%がモノマーの形態で得られる。
【実施例2】
【0050】
HPLCによる加水分解産物の分析
実施例1によるキシランの加水分解のろ液500μlを遠心分離し、その後、上清を0.2μMのPVDF(ポリ−ビニリデン−ジフルオリド)フィルターに通し、HPLC−LEX−RID(Agilent Technologies Inc.)によって分析する。それにより、80℃で流速が0.5ml/分の水(VWR:HPLC Grade)を用いてShodex Denko K.K.の鉛カラム(Shodex(登録商標)Sugar SP0810)により糖が分離される。Agilent RIDによって検出を行う。Agilent Technologies Inc.のインライン式フィルターならびにプレカラムとして、Showa Denko K.K.によって供給された逆相カラム(Axpak−WA−G)、陰イオン交換カラム(Shodex(登録商標)Asahipak(登録商標)ODP−50 6E)および糖プレカラム(Shodex(登録商標)SP−G)を使用する。
【実施例3】
【0051】
アルコールデヒドロゲナーゼによる補酵素の再利用をともなうアラビノースデヒドロゲナーゼによるL−アラビノースのアラボネートへの酸化およびそれに続く苛性ソーダ液によるラクトンの加水分解
バッチ0.5mlには、50mg/mlのアラビノース、5U/mlのBurkholderia vietnamiensis由来の組換え型アラビノースデヒドロゲナーゼおよび0.5mMのNADPと0.5mMのNADPHの混合物を含める。補酵素の再生のために、2.5%(w/v)のアセトンおよび5U/mlのLactobacillus kefir由来の組換え型アルコールデヒドロゲナーゼを添加する。細胞ライセートの形態の酵素を使用する。反応は、40℃、pH10で24時間、連続的に振盪(900rpm)しながら行う。24h後、酵素を不活性化するために反応容器を60℃で10分間インキュベートする。その後、2MのNaOHを5μl添加する。
【0052】
この方法では、L−アラビノースの60%超がL−アラボン酸ナトリウムに変換される。GC−MSを用いて分析を行う。
【実施例4】
【0053】
アルコールデヒドロゲナーゼによる補酵素の再利用をともなうアラビノースデヒドロゲナーゼによるL−アラビノースのアラボネートへの酸化およびそれに続くラクトナーゼによるラクトンの加水分解
バッチ0.5mlには、50mg/mlのアラビノース、5U/mlのBurkholderia vietnamiensis由来の組換え型アラビノースデヒドロゲナーゼならびに0.5mMのNADP+および0.5mMのNADPHの混合物を含める。補酵素の再生のために、2.5%(v/v)のアセトンおよび5U/mlのLactobacillus kefir由来の組換え型アルコールデヒドロゲナーゼを添加する。細胞ライセートの形態の酵素を使用する。反応は、40℃およびpH10で24時間、連続的に振盪(900rpm)しながら行う。24h後、酵素を不活性化するために反応容器を60℃で10分間インキュベートする。冷却後、大腸菌(E.coli)細胞ライセート50μlをAzospirillum brasiliense由来の過剰発現させたL−アラビノラクトナーゼとともに添加し、反応を40℃(900rpm)で、さらに24時間振盪する。その後、酵素を不活性化するために反応容器を60℃で10分間インキュベートする。
【0054】
この方法では、L−アラビノースの65%超がL−アラボネートに変換される。GC−MSを用いて分析を行う。
【実施例5】
【0055】
GC−MSによる酸化反応の分析
GC−MSによる酸化反応の分析のために、基質および生成物を誘導体化しなければならない。バッチを遠心分離し、0.2μMのPVDFフィルターを通過させ、1:30に希釈する。20μlの希釈液を0.5mlのバイアルに移し、Speedvac内で乾燥させる。誘導体化のために、その後、ピリジンを150μlおよびN,O−ビス(トリメチルシリル)−トリフルオロアセトアミドとトリメチルクロロシランの99:1混合物を50μl添加する。内部標準として、ピリジン中に0.1mg/mlの濃度でソルビトールを含ませる。60℃で16時間誘導体化を行う。その後、GC−MSによりサンプルを分析する。その際、ガスクロマトグラフの分離カラムHP−5ms(5%−フェニル)−メチルポリシロキサンによりサンプルを分離し、Shimadzuの質量分析計GCMS QP210 Plusを用いて分析する。
【実施例6】
【0056】
キシロースとアラビノースの混合物中のアラビノースのアラボネート/アラビノラクトンへの変換
D−キシロース180mgおよびL−アラビノース20mgを、2UのBurkholderia vietnamiensis由来のL−アラビノースデヒドロゲナーゼおよび2UのCandida parapsilosis由来のD−キシロースレダクターゼとともに50mMのTris緩衝水溶液(pH=7.0、25℃)に溶解させて総量を500μlにした。反応を密閉反応容器中、40℃で撹拌下(900rpm、Eppendorf Thermomix(登録商標))において行った。30分後、65℃で15分間インキュベーションすることによって酵素を不活性化し、遠心分離(21000g、5分)によって変性タンパク質を分離し、GC−MSによって糖を定量した。使用したL−アラビノースを完全に変換した。そのうちの92%は、L−アラボネートまたはL−アラビノ−γ−ラクトンになり、残りの8%は、L−アラビトールになった。使用したD−キシロースのうち約89.5%が残ったが、10.4%がキシリトールに変換された。使用したD−キシロースのうち0.1%未満がD−キシロネート/D−キシロノ−γ−ラクトンに酸化された。
【0057】
このケースで達成されるように、アラビノースのアラボネート/アラビノラクトンへの変換が比較的選択的なのは、アラビノースに対するアラビノースデヒドロゲナーゼの活性がキシロースと比較してより特異的であること、反応混合物のアラビノースとキシロースの相対的な割合、および制限された酵素活性/反応時間による。
【0058】
本実施例は、とりわけ、本発明によるプロセスによって糖混合物から特定の糖を分離できることを示している。