(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
反対のことを述べられず、文脈から暗に示されず、または当技術分野において慣例的でない限り、全ての部およびパーセントは重量基準である。米国特許実施の目的で、特に規定の開示(本開示において特に提供されるいかなる規定にも相反しない範囲で)および当技術分野における一般的な知識に関して、参照したいかなる特許、特許出願または出版物の内容も、参照によりその全体が取り込まれる(またはその同等の米国版が参照によりそのように取り込まれる)。
【0009】
元素周期表およびその中の様々な基への全ての参照は、CRC Handbook of Chemistry and Physics, 72nd Ed. (1991−1992) CRC PressのI−10頁において公表された版へのものである。
【0010】
本開示における数の範囲は近似であり、したがって他に指定されない限り、範囲外の値を含んでもよい。数範囲は、任意の低値および任意の高値の間で2単位以上離れているならば、低値および高値を含む、低値から高値の1単位きざみの全値を含む。例として、例えば分子量等の組成、物理または他の性質が100〜1,000であるならば、100、101、102等の全ての個々の値および100〜144、155〜170、197〜200等の部分的な範囲が明白に数え上げられる。1未満の値を含む範囲または1よりも大きい分数(例えば1.1、1.5等)を含む範囲では、1単位は適切であるように0.0001、0.001、0.01または0.1であるとみなされる。10未満の1桁の数(例えば、1〜5)を含む範囲では、1単位は通常0.1であるとみなされる。これらは特に意図することの例にすぎず、本開示においては、数え上げられる最低値および最高値の間の数値の、可能なすべての組合せが明白に述べられるとみなされるべきである。数の範囲は、中でも、ヒドロホルミル化プロセスにおいて使用する触媒の量に対し、本開示内で与えられる。
【0011】
「ヒドロホルミル化」という用語および同様の用語には、1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン化合物または1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒドまたは1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に変換することを含む、全ての許容な不斉および非不斉ヒドロホルミル化プロセスが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
「置換された」という用語および同様の用語には、他に指定されない限り、全ての許容な有機化合物の置換基が含まれる。広範な態様においては、許容な置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環式および複素環式、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。置換基の実例としては、例えば炭素数が1〜20個以上、好ましくは1〜12個の範囲であることができるアルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルが挙げられ、ならびにヒドロキシ、ハロおよびアミノが挙げられる。適切な有機化合物に対し、許容な置換基は1つ以上であることができ、同一または異なることができる。いかなる手段においても、有機化合物の許容な置換基により本発明が限定されることを意図するものではない。
【0013】
「反応液体」、「反応媒体」、および「触媒溶液」という用語は互換的に使用され、これらの用語には(a)金属−二座配位子錯体触媒、(b)遊離二座配位子、(c)反応において生成するアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物、(e)上記の金属−二座配位子錯体触媒および前記の遊離二座配位子用の溶媒、ならびに任意に(f)反応において生成する1つ以上の配位子分解生成物(均一または非均一であってよく、これらの化合物にはプロセス装置表面に付着するものが含まれる)を含む混合物が含まれるが、これに限定されるものではない。反応液体は(a)反応区域における液体、(b)分離区域へ向かう途中の液体蒸気、(c)分離区域における液体、(d)再循環蒸気、(e)反応区域または分離区域から出た液体、(f)反応区域または分離区域へ戻った液体、(h)外部冷却器内の液体、および(i)配位子分解生成物等を包含することができるが、これらに限定されるものではない。
【0014】
「含むこと(comprising)」、「含むこと(including)」、「有すること(having)」等の用語は、任意のさらなる成分、工程または手順が特に開示されているかいないかに関わらず、任意のさらなる成分、工程または手順の存在を除外することを意図するものではない。いずれの不確かさも避けるために、「含むこと」という用語の使用を通して請求される全ての方法は、反対のことを述べられない限り、1つ以上のさらなる工程、装置または構成要素部分、および/または物質を含んでもよい。対照的に、「本質的に〜からなること(consisting essentially of)」という用語は、任意の後に続く記載の範囲から任意の他の成分、工程または手順を除外し、操作性に必要不可欠ではないものを除外する。「〜からなること(consisting of)」という用語は、特に記述されていない、または挙げられていない任意の成分、工程または手順を除外する。「または」という用語は、他に記述されていない限り、個々に挙げられた構成要素、およびその任意の組合せを指す。
【0015】
合成ガス
水素および一酸化炭素は、適切な任意の供給源から得てもよく、この供給源には石油の分解および精製操作が含まれる。合成ガス混合物は、水素およびCOの好ましい供給源である。合成ガス(syngas)(合成ガス(synthesis gas)に由来)は、異なる量のCOおよびH
2を含有するガス混合物に与えられた名前である。その製造方法は周知である。水素およびCOは通常、合成ガスの主成分であるが、合成ガスは二酸化炭素(CO
2)ならびに窒素(N
2)およびアルゴン(Ar)等の不活性ガスを含有してもよい。COに対するH
2の比は大きく変化するが、通常1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1の範囲である。合成ガスは市販されており、しばしば他の化学物質の生成で燃料源としてまたは中間体として使用される。化学物質生成用の最も好ましいH
2:COの比は3:1〜1:3であり、大半のヒドロホルミル化用途では通常約1:2〜2:1になるよう目標とされる。
【0016】
溶媒
溶媒は、本発明のヒドロホルミル化プロセスにおいて、典型的にかつ有利に使用される。ヒドロホルミル化プロセスを不都合に妨害しない、適切な任意の溶媒を使用することができる。例としては、ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセス用の適切な溶媒には、例えば米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号および同第5,929,289号において開示される溶媒が含まれる。適切な溶媒の非限定例には、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステルおよびアルデヒド縮合生成物が含まれる。溶媒の具体例には、テトラグライム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒドおよびベンゾニトリルが含まれる。有機溶媒は飽和限界以下の溶存水も含有してよい。好ましい溶媒の実例には、ケトン(例えばアセトンおよびメチルエチルケトン)、エステル(例えば酢酸エチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えばトルエン)、ニトロ炭化水素(例えばニトロベンゼン)、エーテル(例えばテトラヒドロフラン(THF)およびスルホラン)が含まれる。
【0017】
ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスにおいては、生成を所望するアルデヒド生成物に対応するアルデヒド化合物ならびに/または例えば米国特許第4,148,380号および同第4,247,486号において記載とおり、例えばヒドロホルミル化プロセス間にその場で生成する可能性のある高沸点アルデヒド液体縮合副生成物に対応するアルデヒド化合物を主溶媒として使用することが好ましくてもよい。連続プロセスの性質に起因し、主溶媒は通常、アルデヒド生成物および高沸点アルデヒド液体縮合副生成物(「重量物」)の両方を最終的に含むであろう。溶媒量は本質的に重要ではなく、所望の量の遷移金属濃度を有する反応媒体を提供するのに十分な量のみ必要である。通常、溶媒量は、反応液体の全重量基準で、約5重量パーセント〜約95重量パーセントである。溶媒の混合物を使用してもよい。
【0018】
触媒
金属成分
本発明の実施において使用される触媒の金属成分には、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、オスミウム(Os)およびそれらの混合物から選択される第8、9および10属金属が含まれる。好ましい金属はロジウム、コバルト、イリジウムおよびルテニウムであり、より好ましくはロジウム、コバルトおよびルテニウムであり、特にはロジウムである。これらの金属の混合物を使用することができる。
【0019】
配位子
本発明の実施において使用される触媒の配位子として役割を果たしてもよい有機リン化合物は、以下の式I、IIおよびIIIの二座配位子である。下記の式中、R
1−R
24はそれぞれ独立して水素、ヒドロカルビル基、芳香環、芳香族複素環もしくはハロゲン原子であるか、またはNR
2、ORおよびSRからなる群より選択されるヘテロカルビル基であって、RはC
1−C
20のヒドロカルビル基であるか、またはCもしくはヘテロ原子からそれぞれ独立して選択される1〜20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基であって、ヘテロ原子はそれぞれ独立してO、S、Si、Ge、PまたはNであり、ヘテロ原子の原子価の必要に応じ、それら自身がそれぞれ置換されていてもいなくてもよい。
【化3】
式I、IIまたはIIIでは、R
1−R
24は任意に、例えば以下のようなビアリール部に縮合した脂環式基またはアリール基を含んでもよく、アリール、ヘテロアリール、ヒドロカルビル、ヘテロヒドロカルビル、ヒドロカルビレンおよびヘテロヒドロカルビレン基はそれぞれ独立して、非置換であるかまたは1つ以上の置換基R
vで置換される。R
vはそれぞれ独立して、ハロゲン原子、ポリフルオロアルキル置換基、非置換C
1−C
18アルキル、F
3C−、FCH
2O−、F
2HCO−、F
3CO−、R
3Si、R
3Ge、RO、RS、RS(O)、RS(O)
2、R
2P、R
2N、R
2C=N、NC、RC(O)O、ROC(O)、RC(O)N(R)もしくはR
2NC(O)であるか、または2つのR
vが共に結合して非置換C
1−C
18アルキレンを形成し、Rはそれぞれ独立して非置換C
1−C
18アルキルである。任意に、2つのR
vが共に結合して環を形成し、この環は環式または多環式であることができる。
【化4】
【0020】
X
1はCH
2またはOであり、X
2はOまたはC(R
25)
2であり、R
25はそれぞれ同じであるかまたは異なってもよく、R
25は水素、脂環式基、芳香環、芳香族複素環もしくはハロゲン原子であるか、またはNR
2、ORおよびSRからなる群より選択されるヘテロカルビル基であって、RはC
1−C
20のヒドロカルビル基であるか、またはCもしくはヘテロ原子からそれぞれ独立して選択される1〜20個の原子を有するヘテロヒドロカルビル基であって、ヘテロ原子はそれぞれ独立してO、S、Si、Ge、PまたはNであり、ヘテロ原子の原子価の必要に応じ、それら自身がそれぞれ置換されていてもいなくてもよい。2つのR
25基が結合して縮合環となってもよい。Yは窒素原子でリンに結合したピロール基であり、アルキル、アルコキシ、アシル、カルボキシル、カルボキシレート、シアノ、−SO
3H、スルホネート、アミノ、トリフルオロメチルおよびハロゲンからなる群より選択される複数の置換基を有してもよい。具体的な実例には以下の構造体が含まれる。配位子は金属と錯体形成することができ、かつ/または反応混合物中で遊離であることができる。
【化5-1】
【化5-2】
【0021】
金属−配位子錯体
金属−配位子錯体を形成する二座配位子および遊離の二座配位子は同じであるかまたは異なってもよい。これらの触媒は、当業者に公知の、一般的に有機リン化合物調製する方法により調製し、この方法には上述の特許において開示される方法が含まれる。一般的に、これらの触媒はあらかじめ形成するかまたはその場で形成してもよく、二座配位子、一酸化炭素および任意に水素との錯体の組合せで金属を含む。配位子錯体種は単核、二核および/またはより多核の形態で存在してもよい。しかしながら、触媒の正確な構造はわかっていない。
【0022】
金属−二座配位子錯体触媒は均一または不均一形態であってもよい。例えば、あらかじめ形成したロジウム二座配位子触媒を調製し、ヒドロホルミル化反応混合物に導入してもよい。より好ましくは、活性触媒をその場形成するために反応媒体に導入してもよいロジウム触媒前駆体から、ロジウム−二座配位子錯体触媒を誘導することができる。例えば、活性触媒をその場形成するために、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh
2O
3、Rh
4(CO)
12、Rh
6(CO)
16およびRh(NO
3)
3等のロジウム触媒前駆体を、二座配位子と共に反応混合物に導入してもよい。好ましい実施形態においては、ロジウム前駆体としてロジウムジカルボニルアセチルアセトネートを使用し、溶媒存在下で二座配位子と反応させ、触媒のロジウム−二座配位子錯体前駆体を形成し、活性触媒をその場形成するために、これを過剰量の(遊離の)二座配位子と共に反応器に入れる。任意のイベントにおいては、一酸化炭素、水素および二座配位子が全て金属と錯体化することができる配位子であり、ヒドロホルミル化反応において使用される条件下、活性金属−二座配位子触媒が反応混合物中に存在することが十分である。カルボニルおよび二座配位子を、ヒドロホルミル化プロセスの前に、またはヒドロホルミル化プロセス中にその場でロジウムと錯体化させてもよい。
【0023】
例として、好ましい触媒前駆体組成物は、可溶化ロジウムカルボニル二座配位子錯体前駆体、溶媒、および任意に遊離の二座配位子から本質的になる。好ましい触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒および二座配位子の溶液を作製することにより調製することができる。一酸化炭素ガスの発生により証明されるように、二座配位子は、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子の1つと容易に置き換わる。
【0024】
したがって、金属−二座配位子錯体触媒は、一酸化炭素および二座配位子で錯体化した金属を有利に含み、この配位子はキレートおよび/または非キレート様式で金属に結合する(錯体化する)。
【0025】
触媒の混合物を使用することができる。反応液体に存在する金属−二座配位子錯体触媒の量は、使用するのに望ましい所定の金属濃度を提供するのに必要な最小量のみ必要であり、それは例えば上述の特許において開示されるような、少なくとも関わる特定のヒドロホルミル化プロセスを触媒するのに必要な金属の触媒量基準を備えるであろう。一般的に、反応媒体中の遊離金属として計算して、10重量百万分率(ppmw)〜500ppmwのロジウム等の触媒金属濃度が大半のプロセスに対し十分であろう。一般的に10〜250ppmwの金属を使用することが好ましく、10〜100ppmwの金属を使用することがより好ましい。
【0026】
金属−二座配位子錯体触媒に加え、遊離の二座配位子(すなわち、金属と錯体化していない配位子)も反応媒体中に存在してよい。遊離の二座配位子は、上で規定された、上記の任意の二座配位子と同一であってもよい。遊離の二座配位子が、使用する金属−二座配位子錯体触媒の二座配位子と同一であることが好ましい。しかしながら、任意の所定プロセスにおいて、この配位子が同一である必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中、金属1モルあたり0.1モル以下〜100モル以上の遊離の二座配位子を含んでもよい。好ましくは、反応媒体中、金属1モルあたり1〜50モルの二座配位子の存在下でヒドロホルミル化プロセスを実施する。より好ましくは、金属1モルあたり1.1〜4モルの二座配位子を使用する。これらの二座配位子の量は、存在する金属に結合した(錯体化した)二座配位子の量と、存在する遊離の二座配位子の量の両方の合計である。所望であれば、任意の時間に、適切な任意の方法で、さらなる二座配位子をヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に供給して、例えば反応媒体中の遊離の二座配位子を所定レベルに維持することができる。
【0027】
したがって、有利に使用されるヒドロホルミル化処理技術は、例えばガス再循環、液体再循環およびそれらの組合せ等の任意の公知処理技術と同一であってもよい。好ましいヒドロホルミル化プロセスは触媒液体再循環を含むものである。
【0028】
ヒドロホルミル化プロセス
ヒドロホルミル化プロセスおよびその実施条件は周知である。それは成分として遷移金属および有機リン配位子を含む触媒の存在下、1つ以上のアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下で、一酸化炭素(CO)、水素(H
2)および1つ以上のオレフィン化合物を接触させることを含む。任意のプロセス成分には、アミンおよび/または水が含まれる。ヒドロホルミル化プロセスは、任意のバッチ様式、連続様式または準連続様式で実施してもよく、所望の任意の触媒液体および/またはガス再循環操作を含んでもよい。エチレンからプロピオンアルデヒドを生成する特定のヒドロホルミル化プロセス、ならびにこのヒドロホルミル化プロセスの反応条件および成分は好都合に変化することができる。
【0029】
再循環方法は通常、触媒およびアルデヒド生成物を含有する液体反応媒体の一部を、ヒドロホルミル化反応器、すなわち反応区域から、連続的または断続的に取り除くこと、および米国特許第5,430,194号および同第5,681,473号において開示されるもの等の複合膜の使用により、またはより慣習的かつ好ましいその蒸留方法、すなわち分離蒸留区域において、必要に応じて常圧、減圧もしくは高圧下の1つ以上の段階での気化分離によりアルデヒド生成物をそこから回収することを含み、残渣を含有する不揮発性金属触媒は、例えば米国特許第5,288,918号において開示されるとおり反応区域に再循環する。揮発性物質の縮合、ならびに例えばさらなる蒸留による揮発性物質の分離およびさらなる再循環を任意の従来方法で実施することができ、所望であればさらなる精製および分離のために粗製のアルデヒド生成物を先へ進ませることができ、例えばオレフィン出発物質および合成ガス等の回収した任意の反応物を、所望の任意の方法で、ヒドロホルミル化区域(反応器)へ再循環させることができる。所望の任意の従来方法で、このような膜分離のラフィネートを含有する回収金属触媒、またはこのような気化分離の残渣を含有する回収不揮発性金属触媒を、ヒドロホルミル化区域(反応器)へ再循環させることができる。所望であれば、当業者に公知のガス再循環方法も使用することができる。
【0030】
好ましい実施形態においては、ヒドロホルミル化反応液体には、少なくとも幾量かの4つの異なる主成分または要素、すなわちアルデヒド生成物、金属−二座配位子錯体触媒、遊離の二座配位子および触媒用溶媒を含有する、対応する任意のヒドロホルミル化プロセスから誘導される任意の液体が含まれる。ヒドロホルミル化反応混合物組成物は、ヒドロホルミル化において計画的に使用されたかまたは前記のプロセス中その場で形成されたもの等のさらなる成分を含有することができ、通常含有するであろう。このようなさらなる成分の例には、未反応オレフィン出発物質、一酸化炭素および水素ガス、ならびに飽和炭化水素および/またはオレフィン出発原料と同一の未反応異性化オレフィン等のその場で形成された副生成物、配位子分解化合物、ならびに高沸点液体アルデヒド縮合副生成物、ならびに使用した場合は他の不活性共溶媒型物質または炭化水素付加物が含まれる。
【0031】
ヒドロホルミル化プロセスの反応条件には、以前にアルデヒドの生成に使用された適切な任意の種類のヒドロホルミル化条件が含まれてもよい。水素、一酸化炭素およびヒドロホルミル化プロセスのオレフィン出発化合物の合計ガス圧は、1〜69,000キロパスカル(kPa)の範囲であってもよい。しかしながら、一般的には、14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満の水素、一酸化炭素およびオレフィン出発化合物の合計ガス圧でプロセスを実施することが好ましい。最小合計圧力は、所望の反応速度を得るのに必要な反応物の量により優位に限定される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧は好ましくは1〜6,900kPa、より好ましくは21〜5,500kPaであり、水素分圧は好ましくは34〜3,400kPa、より好ましくは69〜2,100kPaである。通常、気体のH
2:COのモル比は、1:10〜100:1以上の範囲であってもよく、より好ましいモル比は1:10〜10:1である。
【0032】
一般的に、ヒドロホルミル化プロセスを任意の実施可能反応温度でおこなってもよい。有利に、ヒドロホルミル化プロセスを−25℃〜200℃、好ましくは例えば23℃等の室温〜120℃の反応温度で実施する。
【0033】
ヒドロホルミル化プロセスを、例えば固定層反応器、流動床反応器、連続かくはん槽型反応器(CSTR)またはスラリー反応器等の1つ以上の適切な反応器を使用して行ってもよい。使用する反応区域は単一容器であるか、または2つ以上の別の容器を含むことができる。使用する分離区域は単一容器であるか、または2つ以上の別の容器を含むことができる。本明細書において使用する反応区域および分離区域は同一容器内または異なる容器内に存在してもよい。例えば、反応性蒸留および反応性膜分離等の反応性分離技術が反応区域で行われてもよい。
【0034】
所望であれば未消費の出発物質の再循環と共に、ヒドロホルミル化プロセスを行うことができる。この反応を単一反応区域または複数の反応区域において、直列もしくは並列で行うことができる。反応工程を、他の物質へ1つの出発物質を増やしながら添加することにより行ってもよい。また、反応工程を、出発物質を共同で添加することにより組み合わせることができる。完全な変換が所望でないかまたは可能でない場合、例えば蒸留により出発物質を生成物から分離することができ、次に出発物質を反応区域へ戻して再循環させる。
【0035】
ヒドロホルミル化プロセスを、ガラスで裏打ちした反応装置、ステンレススチール反応装置または同様な種類の反応装置のいずれかにおいて行ってもよい。過度の温度変動を制御するか、または起こり得るいかなる反応温度の「暴走」も防止するために、反応区域に1つ以上の内部および/または外部熱交換器を備えていてもよい。
【0036】
本発明のヒドロホルミル化プロセスを、1つ以上の段階またはステージにおいて行ってもよい。反応段階またはステージの正確な数は、資本コストと触媒の高い選択性、活性、寿命および操作のしやすさ達成の間の最適な折り合い、ならびに当該出発物質の内在的反応性、ならびに反応条件に対する出発物質および所望の反応生成物の安定性によって支配されるであろう。
【0037】
一実施形態においては、本発明において有用なヒドロホルミル化プロセスを、例えば米国特許第5,728,893号において記載されるもの等の多段階反応器において行ってもよい。このような多段階反応容器を、容器1つあたり2つ以上の多い理論的反応段階を作成する内部の物理障壁を備えて設計することができる。
【0038】
連続的プロセスでヒドロホルミル化プロセスを行うことが一般的に好ましい。連続ヒドロホルミル化プロセスは当技術分野において周知である。連続的プロセスを単一通過モードで行うことができる。すなわち未反応オレフィン性出発物質および気化したアルデヒド生成物を含む揮発性混合物を液体反応混合物から除去し、この液体反応混合物からアルデヒド生成物を回収して、未反応オレフィン出発物質を再循環させずに次の単一通過用の補充のオレフィン出発物質、一酸化炭素および水素を液体反応媒体に供給する。このような種類の再循環方法は当技術分野において周知であり、米国特許第4,148,830号に開示されているような所望のアルデヒド反応生成物から分離された金属−有機リン錯体触媒液体の液体再循環、または米国特許第4,247,486号に開示されているようなガス再循環方法、ならびに所望であれば液体およびガス再循環方法の両方の組合せを含んでもよい。最も好ましいヒドロホルミル化プロセスは、連続的液体触媒再循環プロセスを含む。適切な液体触媒再循環方法は、例えば米国特許第4,668,651号、同第4,774,361号、同第5,102,505号および同第5,110,990号において開示されている。
【0039】
一実施形態においては、アルデヒド生成物混合物を粗製反応混合物の他の成分から分離してもよく、アルデヒドは例えば溶媒抽出、結晶化、蒸留、気化、ワイプフィルムエバポレーション、フォーリングフィルムエバポレーション、相分離、ろ過またはそれらの任意の組合せ等の適切な任意の方法により生成する。国際公開第88/08835号において記載されているように捕獲剤の使用により形成するため、粗製反応混合物からアルデヒド生成物を除去することが望ましくてもよい。粗製反応混合物の他の成分からアルデヒドを分離する1つの方法は膜分離であり、例えば米国特許第5,430,194号および同第5,681,473号において記載されている。
【0040】
上記の通り、アルデヒド生成物を反応混合物から回収してもよい。例えば、米国特許第4,148,830号および同第4,247,486号において開示される回収方法を使用することができる。例えば、連続的液体触媒回収プロセスにおいては、反応区域から除去された液体反応混合物(アルデヒド生成物、触媒等を含有する)、すなわち反応流体の一部を例えば気化器/分離器等の分離区域へ通過させることができ、所望のアルデヒド生成物を1つ以上のステージで、常圧、減圧または高圧下、液体反応流体から蒸留により分離し、濃縮し、生成物受取器で回収することができ、所望であればさらに精製する。次に液体反応混合物を含有する、残留の不揮発性触媒を反応容器へ再循環させてもよく、所望であれば、例えば任意の従来方法の蒸留等によって濃縮したアルデヒド生成物から分離後に、液体反応物中に溶解している任意の水素および一酸化炭素と共に、例えば未反応オレフィン等の他の任意の含有されている物質も再循環させてもよい。所望であれば、有機リン配位子および反応生成物の分解を減らすため、減圧下、低温でアルデヒド生成物を触媒含有反応混合物から分離してもよい。
【0041】
より具体的には、反応流体を含有する金属−二座配位子錯体触媒からの所望のアルデヒド生成物の蒸留および分離を所望の適切な任意の温度で行ってもよい。一般的には、150℃未満等の比較的低い温度でこの蒸留を行うことが好ましく、より好ましくは50℃〜140℃の範囲の温度で行うことが好ましい。
【0042】
生成物
エチレンヒドロホルミル化のアルデヒド生成物はプロピオンアルデヒドである。
【0043】
詳細な実施形態
装置および方法
以下の実施例は説明目的のみのものである。他に指定されない限り、全ての部およびパーセントは重量基準である。合成方法は、乾燥溶媒を使用し、窒素でパージしたグローブボックス内またはシュレンク技術を使用して窒素もしくはアルゴン下において行う。市販の試薬はAldrich、StremまたはAcrosから購入し、受け取ったまま使用する。Varian MR−400またはBruker 400 MHz分光器において、多核NMRスペクトル(
1H、
13C、
31P)を収集した。プロトンおよび
13C NMR化学シフトは、残留溶媒ピークと比較した百万分率基準であり;リン−31化学シフトは85% H
3PO
4(0ppm)の外部的な基準であった。
【0044】
2,2’−ビス[(ビス(ジエチル3,4−ピロールジカルボキシレート)ホスフィノ)−オキシ]−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフタレンの調製
【化6】
5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフトール(1.105g、3.754mmol)を60mLの乾燥THFに溶解し、−30℃で1時間冷却した。溶液を冷凍庫から取り出し、ヘキサン中のn−ブチルリチウムの1.6M溶液(5.0mL、8.0mmol、2.1当量)を撹拌しながらゆっくり添加した。白色沈殿が形成し始めるまで、溶液をゆっくり温めた。2時間の撹拌後、反応混合物を冷凍庫に入れ、30分間冷却した。10mLのTHF中のビス(ジエチルアミノ)クロロホスフィン(1.7mL、8.1mmol、2.2当量)溶液を別に調製し、この溶液も−30℃の冷凍庫に30分間入れた。冷たいリチウム塩溶液に、冷たいホスフィン溶液を撹拌しながら滴下した。反応混合物をゆっくり温め、室温で一晩撹拌した。反応混合物を乾燥するまでポンプ引きし、次に30mLのヘキサンでトリチュエートした。生成した黄色油状物質を60mLのトルエンに溶解し、セライトで濾過した。さらなる精製または特性評価なしで、ろ液を反応の次段階において使用した。
【0045】
2,2’−ビス((ジクロロホスフィノ)オキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフタレンの調製
【化7】
前の工程からのトルエン溶液をグローブボックス冷凍庫内で、−30℃で1時間冷却した。ジエチルエーテル中のHClの2.0M溶液(15.0mL、30.0mmol、8当量)を撹拌しながら約5分かけて冷たい溶液に添加した。添加中、大量の白色固体が形成した。反応混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。混合物をセライトで濾過し、乾燥するまでポンプ引きした。生成した黄色油状物質を、さらなる精製なしで反応の次段階において使用した。
【0046】
配位子1の調製
【化8】
前工程からの2,2’−ビス((ジクロロホスフィノ)オキシ)−5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビナフタレンを80mLの乾燥THFに溶解した。ジエチル3,4−ピロールジカルボキシラート(3.17g、15.0mmol、4当量)を撹拌しながら溶液に添加した。明らかな反応は起こらなかった。溶液をグローブボックス冷凍庫に入れ、−30℃で1時間冷却した。トリエチルアミン(2.4mL、17mmol、4.5当量)を撹拌しながら5分かけて冷たい溶液に滴下した。反応混合物中に大量の白色固体が形成した。反応混合物を室温まで温めた。一晩撹拌後、混合物をセライトで濾過し、濾紙上の固形物をTHFで洗浄した。ろ液を乾燥するまでポンプ引きすると黄色油状物質が生じた。60mLのトルエン中、全物質が溶解するまで粗製物質を60℃で加熱した。温かい溶液を−30℃のグローブボックス冷凍庫内に一晩設置し、その間、溶液からジエチル3,4−ピロールジカルボキシレート結晶が析出した。これらを濾過により除去し、ろ液を乾燥するまでポンプ引きした。固体残渣を60mLのヘキサン中、60℃で2時間加熱し、その後配位子1を細かい白色粉末として回収した。回収した全質量:1.138g(0.9521mmol、25%収率)。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 7.31(s、4H、CH−ピロール)、7.16(s(C
6HD
5ピーク下)、4H、CH−ピロール)、6.90(d、J
HH=8.4Hz、Ar−H)、6.64(d、J
HH=8.0Hz、Ar−H)、4.13−4.21(m、16H、O−CH
2)、2.50−2.83(m、4H、CH
2)、2.00−2.24(m、4H、CH
2)、1.36−1.65(m、8H、CH
2)、1.10(t、12H、CH
3)、1.07(t、12H、CH
3);
13C{
1H} NMR(100.6MHz、CDCl
3)δ 162.9(d、J
PC=3.6Hz、C=O)、147.7(t、J
PC=6.3Hz、C−O−P)、138.2(s、Ar)、136.3(s、Ar)、131.2(s、Ar)、126.7(四重項、J
PC=8.0Hz、CH−ピロール)、125.7(s、Ar)、120.5(d、J
PC=15.0Hz、Ar)、116.6(t、J
PC=4.6Hz、C−ピロール)、60.9(s、O−CH
2)、29.3(s、CH
2)、27.9(s、CH
2)、22.6(s、CH
2)、14.4(s、CH
3);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 108.7(s)ppm。
【化9】
【0047】
配位子2の調製
配位子1について記載した手順と同様の手順を使用して、配位子2を調製した。回収した全質量:0.250g(0.199mmol、7%収率)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ 7.34(s、4H、CH−ピロール)、7.12(s、4H、CH−ピロール)、7.08(s、2H、Ar−H)、4.23−4.32(m、16H、O−CH
2)、1.98(s、6H、Ar−CH
3)、1.58(s、6H、Ar−CH
3)、1.29−1.35(m、24H、CH
2CH
3)、1.15(s、18H、C(CH
3)
3);
13C{
1H} NMR(100.6MHz、CDCl
3)δ 162.9(d、J
PC=4.6Hz、C=O)、150.0(t、J
PC=4.3Hz、C−O−P)、137.7(s、Ar)、136.6(s、Ar)、134.4(s、Ar)、131.1(s、Ar)、127.3(t、J
PC=9.9Hz、CH−ピロール)、126.9(t、J
PC=9.1Hz、CH−ピロール)、120.3(s、Ar)、119.3(s、C−ピロール)、60.8(d、J
PC=5.5Hz、O−CH
2)、34.3(s、Ar−CH
3)、30.2(s、C(CH
3)
3)、20.2(s、Ar−CH
3)、17.3(t、J
PC=2.6Hz、C(CH
3)
3)、14.4(d、J
PC=5.6Hz、CH
2CH
3);
31P{
1H} NMR(162MHz、CDCl
3)δ 100.3(s)ppm。
【0048】
5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノールの調製
【化10】
市販の3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール(rac−BIPHEN)から、わずかに改変した手法(Hua, Z., Vassar, V. C., Ojima, I., “Synthesis of New Chiral Monodentate Phosphite Ligand and Their Use in Catalytic Asymmetric Hydrogenation”, Organic Letters, 5 (2003), 3831−3834)に従って、ビフェノールを調製した。収量:3.428g(14.1mmol、56.1%)。
1H NMR(400MHz、CDCl
3):δ 7.12(d、J
HH=8Hz、2H、Ar−H)、6.81(d、J
HH=8Hz、2H、Ar−H)、4.51(s、2H、OH)、2.25(s、6H、CH
3)、1.89(s、6H、CH
3)ppm。
【0049】
配位子3の調製
【化11】
上記で調製した5,5’,6,6’−テトラメチル−2,2’−ビフェノールを使用し、配位子1について記載した手順と同様の手順で配位子3を生成した。収量:2.46g(2.16mmol、50.9%)。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 7.21(dm、J
PH=22Hz、J
NH=1Hz、8H、N−CH)、6.93(d、J
HH=8Hz、2H、Ar−H)、6.67(d、J
HH=8Hz、2H、Ar−H)、4.22−4.09(m、16H、CH
2CH
3)、2.09(s、6H、Ar−CH
3)、1.70(s、6H、Ar−CH
3)、1.10(t、J
HH=7Hz、12H、CH
2CH
3)、1.07(t、J
HH=7Hz、12H、CH
2CH
3);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 108.7ppm。
【0050】
クロロジピロリルホスフィンの調製
【化12】
クロロジピロリルホスフィンは参考文献(van der Slot, S. C., Duran, J., Luten, J., Kamer, P. C. J., van Leeuwen, P. W. N. M., “Rhodium−Catalyzed Hydroformylation and Deuterioformylation with Pyrrolyl−Based Phosphorus Amidite Ligands: Influence of Electronic Ligand Properties”, Organometallics, 21 (2002), 3873−3883)において記載される方法と同様の方法で調製した。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 6.80(m、4H、CHCHNP)、6.18(m、4H、CHCHNP);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 105.3ppm。
【0051】
配位子4の合成
【化13】
クロロジピロリルホスフィン(1.67g、8.42mmol、2当量)および5,5’,6,6’−テトラメチル−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジオール(1.02g、4.21mmol)を80mLのTHFに溶解し、−30℃で1時間冷却した。トリエチルアミン(3.0mL、22mmol、5.2当量)を撹拌しながら冷たい溶液に滴下した。添加中、大量の白色沈殿が溶液中に形成した。反応混合物を室温まで温め、一晩撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、濾紙上の固形物をさらなる20mLのTHFで洗浄した。ろ液を乾燥するまでポンプ引きし、次に160mLのヘキサンで十分トリチュエートした。混合物を濾過し、乾燥するまでろ液をポンプ引きすると、所望の生成物を白色粉末として得た。収量:1.69g(2.98mmol、70.8%)。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 6.82(d、J
HH=8Hz、2H、Ar−H)、6.74−6.69(m、10H、Ar−HおよびCHCHNPに対し信号の重なり)、6.22(m、8H、CHCHNP)、1.96(s、6H、CH
3)、1.78(s、6H、CH
3);
13C{
1H}(101MHz、C
6D
6)150.0(d、
2J
PC=12Hz、C−O−P)、138.1(s、Ar−C)、133.8(s、Ar−C)、130.7(s、Ar−CH)、129.7(t、
3J
PC=2Hz、Ar−C)、121.1(dd、
3J
PC=16Hz、J=3Hz、CHCHNP)、116.4(d、
3J
PC=12Hz、Ar−CH)112.3(dt、
2J
PC=9Hz、J=2Hz、CHCHNP)、19.5(s、CH
3)、16.4(s、CH
3);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 109.5ppm。
【0052】
配位子5の調製
【化14】
配位子4について記載した手順と同様の手順を使用して、配位子5を調製した。収量:1.94g(3.13mmol、81.5%)。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 6.80−6.75(m、8H、Ar−HおよびCHCHNPに対する信号の重なり)、6.68(m、4H、CHCHNP)、6.25−6.21(m、8H、CHCHNP)、2.52(m、6H、CH
2)、2.47−2.39(m、2H、CH
2)、2.20−2.13(m、2H、CH
2)、1.51−1.38(m、8H、CH
2);
13C{
1H}(101MHz、C
6D
6)149.4(d、
2J
PC=12Hz、C−O−P)、138.3(s、Ar−C)、134.6(s、Ar−C)、130.5(s、Ar−CH)、128.7(t、
3J
PC=2Hz、Ar−C)、121.9(dd、
3J
PC=16Hz、J=6Hz、CHCHNP)、117.4(d、
3J
PC=11Hz、Ar−CH)113.0(dt、
2J
PC=18Hz、J=2Hz、CHCHNP)、30.5(s、CH
2)、28.3(s、CH
2)、23.5(s、CH
2)、23.4(s、CH
2);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 109.2ppm。
【0053】
ビス(インドリル)クロロホスフィンの調製
【化15】
100mLのトルエン中で、トリエチルアミン(5.0mL、36mmol)とPCl
3(1.0mL、11.5mmol)を混合すると、淡黄色溶液が形成した。この溶液を、氷/水浴中の250mLシュレンクフラスコに移した。25mLのトルエン中のインドール(2.69g、23.0mmol)溶液を、シリンジポンプを用いて0.5mL/分の分注速度で、冷却したトリエチルアミン/PCl
3溶液に添加した。添加中、黄色溶液中に大量の白色固体が形成した。添加後、反応混合物を室温で週末の間撹拌させた。反応混合物を減圧下、半分の容量まで濃縮し、窒素下においてセライトで濾過した。ろ液を乾燥するまでポンプ引きし、生成した黄色油状物質を30mLのヘキサンでトリチュエートし、減圧下1時間乾燥した。収量:2.77g(9.27mmol、81%)。リンNMRによる純度は約94%であった。δ
31P=104ppm。
【0054】
配位子6の調製
【化16】
ビス(インドリル)クロロホスフィン(2.77g、9.27mmol)を5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフトール(1.36g、4.62mmol)および80mLの乾燥THFと混合すると無色溶液が形成し、これを冷凍庫(−30℃)で冷却した。トリエチルアミン(2.0mL、14.3mmol)を撹拌しながら冷たい溶液に滴下すると、大量の白色沈殿がすぐに形成した。室温で一晩撹拌後、反応混合物をセライトで濾過し、ろ液を乾燥するまでポンプ引きした。生成した黄色油状物質を40mLのヘキサンでトリチュエートし、トルエン(60mL)に溶解し、セライトで濾過した。ろ液を減圧下、20mLの容量になるまで濃縮し、一晩冷凍庫(−30℃)に入れた。少量の白色固体が沈殿し、濾過によりこれを除去した。ろ液を乾燥するまでポンプ引きし、生成した油状固体を60mLのヘキサンでスラリーすると、白色固体の沈殿が生成した。混合物を濾過し、ろ液を乾燥するまでポンプ引きすると、白色粉末を得た。フリットに残った白色油状固体を、別の60mLのヘキサンでスラリーにし、1時間撹拌した。スラリーを濾過し、ろ液を再度乾燥するまでポンプ引きすると、白色粉末の第2生成物を得た。2つの白色粉末の生成物を合わせ、10mLのヘキサンでスラリーにし、濾過し、減圧下で乾燥した。収量:1.14g、 1.39mmol、30%;
31P NMRによる純度93%。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 7.54(t、J
HH=8Hz、4H、インドール−H)、7.47(d、J
HH=8Hz、4H、インドール−H)、7.08−7.03(m、8H、インドール−H)、6.98−6.94(m、4H、インドール−H)、6.73(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、6.57(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、6.38−6.37(m、4H、インドール−H)、2.44−2.33(m、6H、CH
2)、2.16−2.09(m、2H、CH
2)、1.42−1.27(m、8H、CH
2);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 107ppm(130ppmにおいて少量の不純物)。
【0055】
ビス(3−カルボメトキシインドリル)クロロホスフィンの調製
【化17】
ビス(インドリル)クロロホスフィンについて記載した手順と同様の手順を使用して、ビス(3−カルボメトキシインドリル)クロロホスフィンを調製した。収量:4.07g(9.81mmol、85%)。リンNMRによる純度は約98%であった。δ
31P=106ppm。
【0056】
配位子7の調製
【化18】
配位子6について記載した手順と同様の手順を使用して、配位子7を調製した。収量:0.513g、0.488mmol、9.92%。
1H NMR(400MHz、CDCl
3)δ 8.10(t、J
HH=8Hz、4H、インドール−H)、7.78(d、J
PH=24Hz、4H、インドール−H)、7.32−7.20(m、8H、インドール−H)、7.07(dt、J
PH= 24Hz、J
HH=8Hz、4H、インドール−H)、6.80(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、6.61(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、3.85(d、J
HH=6Hz、12H、CH
3)、2.66−2.47(m、4H、CH
2)、2.26−2.06(m、4H、CH
2)、1.63−1.44(m、8H、CH
2);
31P{
1H} NMR(162MHz、CDCl
3)δ 106ppm(100%)。
【0057】
配位子8の調製
【化19】
THF70mL中の5,5’,6,6’,7,7’,8,8’−オクタヒドロ−1,1’−ビ−2−ナフトール(0.845g、2.87mmol)の溶液を冷凍庫で冷却した。ヘキサン中のn−ブチルリチウムの1.6M溶液(3.8mL、6.1mmol)を撹拌しながらゆっくり添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次に再度冷凍庫で30分冷却した。ビス(ジエチルアミノ)クロロホスフィン(1.3mL、6.2mmol)を冷たい混合物に撹拌しながら滴下した。室温で一晩撹拌後、反応混合物を乾燥するまでポンプ引きし、次に30mLのヘキサンでトリチュエートした。生成した黄色油状物質を80mLのトルエンに溶解し、セライトで濾過した。濾液を−30℃の冷凍庫で1時間冷却した。ジエチルエーテル中のHClの2.0M溶液(11.5mL、23.0mmol)を撹拌しながら5分かけて冷たい溶液に添加した。添加中、大量の白色固体が形成した。反応混合物を室温に温め、さらに2時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過し、トルエン濾液を乾燥するまでポンプ引きした。生成した黄色油状物質を30mLのヘキサンでトリチュエートし、減圧下で1時間さらに乾燥した。
【0058】
油状物質を50mLのTHFに溶解し、室温で撹拌した。THF30mL中の3−シアノインドール(1.49g、16.9mmol)の溶液をゆっくり添加した。混合物を−30℃の冷凍庫に入れ、冷却した。トリエチルアミン(2.0mL、14mmol)を撹拌しながら5分かけて冷たい溶液に滴下した。大量の白色沈殿が反応混合物中に形成した。反応混合物を室温に温め、一晩撹拌した。次に反応混合物をセライトで濾過し、ろ液を乾燥するまでポンプ引きした。生成した黄色油状物質を40mLのヘキサンでトリチュエートし、60mLのトルエンに入れ、濾過した。ろ液を乾燥するまでポンプ引きすると白色粉末を得た。この物質の
1H NMRスペクトルは、大量のトルエンが物質中に存在することを示し、これは、繰返しヘキサンでトリチュエートしても減圧下で数時間試料を乾燥しても消失しなかった。白色粉末をEt
2O(10mL)でスラリーにし、濾過により回収し、5mLのヘキサンで洗浄した。Et
2Oおよびヘキサンでの洗浄を2回以上繰り返すと収率は大きく減少し、純度は改善しなかった。試料を減圧下で一晩乾燥したが、幾量かのトルエン(約0.3当量)およびエーテル(約0.1当量)が試料に残った。収量:0.312g(0.340mmol、13%)。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 7.65(d、J
HH=8Hz、1H、インドール−CH)、7.46−7.42(m、2H、インドール−H)、7.39(d、J
HH=8Hz、2H、インドール−H)、7.15−7.13(m、4H、インドール−H)、7.06(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、6.99−6.98(m、2H、インドール−H)、6.89−6.76(m、8H、インドール−H)、6.55(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、2.71−2.64(m、2H、CH
2)、2.51−2.44(m、2H、CH
2)、2.15−1.96(m、4H、CH
2)、1.47−1.24(m、8H、CH
2);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 106(s、94%)ppm(107ppmにおいて不純物)。
【0059】
ビス(3−メチルインドリル)クロロホスフィンの調製
【化20】
ビス(インドリル)クロロホスフィンについて記載した方法と同様の方法を使用して、ビス(3−メチルインドリル)クロロホスフィンを調製した。収量:3.20g(9.79mmol、85%)。この物質はさらなる精製なしで次の反応において使用した。リンNMRにより純度は約93%であった。δ
31P=102ppm。
【0060】
配位子9の調製
【化21】
配位子6について記載した方法と同様の方法を使用して、配位子9を調製した。収量:3.08g、3.52mmol、71.2%。
1H NMR(400MHz、C
6D
6)δ 7.59(dd、J
PH=24Hz、J
HH=8Hz、4H、インドール−H)、7.41(dd、J
HH=8Hz、J=3Hz、4H、インドール−H)、7.10(td、J
HH=8Hz、J=1Hz、4H、インドール−H)、7.04−6.98(m、4H、インドール−H)、6.87−6.85(m、4H、インドール−H)、6.80(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、6.62(d、J
HH=8Hz、2H、ナフトール−H)、2.50−2.38(m、6H、CH
2)、2.21−2.14(m、2H、CH
2)、2.00(dd、J=4Hz、J=3Hz、12H、CH
3)、1.41−1.33(m、8H、CH
2);
31P{
1H} NMR(162MHz、C
6D
6)δ 104(s、94%)ppm(130ppmにおいて不純物)。
【0061】
配位子10の調製
【化22】
8,8’−ジブロモ−4,4,4,4,6,6’−ヘキサメチルスピロ−2,2’−ビクロマン(0.65g、1.32mmol)をZ. Freixa, M. S. Beentjes, G. D. Batema, C. B. Dieleman, G. P. F. v. Strijdonck, J. N. H. Reek, P. C. J. Kamer, J. Fraanje, K. Goubitz and P. W. N. M. Van Leeuwen., Angew. Chem. 2003, 42, 11, 1322において記載される方法に従って調製し、トルエンとの共沸で乾燥し、THFに溶解した。無色溶液を−78℃で2時間、n−ブチルリチウム(3.3mmol)で処理し、次に低温を維持しながらクロロジピロリルホスフィン(0.44mL、3.3mmol)を添加した。生成した混合物を一晩かけてゆっくり温めた。次に淡黄色溶液を中性アルミナで濾過し、その後、濾液の揮発物を減圧下で除去すると、無色透明の油状物質が得られ、これは最終的に白色の粘性泡状物質となった。この泡状物質を沸騰メタノールに溶解し、−30℃の冷凍庫に2時間入れ、配位子10(0.65g、75%)を白色結晶性固体として得た。
1H−NMR(CDCl
3、25℃、400MHz):δ=7.18(bs、2H)、6.64−6.60(m、4H)、6.51−6.47(m、4H)、6.26−6.23(m、4H)、6.14−6.10(m、4H)、6.06(m、2H)、2.23(s、6H)、1.99(d、J
HH=14.6Hz、2H)、1.94(d、J
HH=14.6Hz、2H)、1.46(s、6H)、1.29(s、6H、H);
31P{
1H}−NMR(CDCl
3、25℃、160MHz):δ=71.2;ESI−MS:[M][Na
+] C
39H
42N
4O
2P
2対する計算値683.27、実測値683.3m/z。
【0062】
【化23】
配位子11の調製
Ahlers, W.; Paciello, R.; Vogt, D.; Hofmann, P. WO02083695 (A1), US2004110960 (A1), 2002において記載される手順に従って、配位子11を調製した。
【0063】
各反応で、ロジウム触媒前駆体(ジカルボニルアセチルアセトナトロジウム(I))および適切な配位子を、ドライボックス内のセプタムで封じた容器に秤量して入れる。固体を脱気した乾燥トルエンに溶解し、窒素下で100mlのParrミニ反応器(30ml実施)またはAMTEC SPR16 15mLステンレススチール反応器(5ml実施)に移す。30mL実施では、約240kPaの1:1の一酸化炭素(CO):水素(合成ガス)下で、20〜30分間、撹拌(1100rpm)しながら反応温度に加熱することにより、触媒の前形成を行う。5mL実施では、2100.8kPaの1:1合成ガス下で、90分間、80℃に加熱することにより触媒の前形成を行う。各場合において、前形成後に容器を排気し、1:1:1の比であらかじめ混合したエチレン、一酸化炭素および水素のシリンダーを使用することにより、最終反応圧に加圧する。各実施を2回以上行い、報告結果は平均とする。他に指定しない限り、圧力はkPaとして報告する。
【0064】
トリフェニルホスフィン(TPP)およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトをそれぞれ比較例配位子1および2として使用する。全ての反応を、1:1:1のCO:H
2:エチレン反応物のモル比を用いて、トルエン中で行う。
ターンオーバー頻度は、最初の30分間のガス取り込みに基づき、ロジウム前駆体1モルあたりの生成物のモルとして計算する。さらなる反応条件を表1に報告する。
【表1】
【0065】
結果および結論
表1の結果は、同様の条件下で、ロジウムおよび本発明の配位子からなる触媒がロジウム−TPPよりもずっと高い活性であることを明らかに示している。例えば、配位子4により促進された触媒を特徴とする反応は、比較例のわずか3分の1の量のロジウム濃度を使用しているのみでありながら、ロジウム−TPP(比較例配位子1)の約50倍高い活性である。同様に、ロジウム−配位子5触媒は、わずか3分の1の量のロジウム濃度を使用し、かつ反応温度が10℃低いにもかかわらず、ロジウム−TPPの約40倍高い活性である。したがって本発明により、ロジウム−TPP触媒と比較してずっと少ないロジウムとより低い温度で実施していながら、工業プロセスが生産目標を満たすことができるであろう。
【0066】
さらに、本発明の配位子により促進された触媒は、エチレンヒドロホルミル化に対し、嵩高いトリアリールホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトにより促進されるロジウムよりもずっと高い活性であることを表1は示している。嵩高いトリアリールホスファイトにより促進された触媒は、多くのオレフィンのヒドロホルミル化に対して非常に高い活性を示すことがよく知られている(例えば、J. Organomet. Chem,. 1983, 258, 343; J. Organomet. Chem., 1991, 421, 121; J. Chem Soc. Chem. Commun., 1991, 1096)。これより、特定の配位子により促進されたロジウム触媒の他のオレフィンのヒドロホルミル化に対する活性は、エチレンのヒドロホルミル化に対して予測的ではないことが示される。
【0067】
本発明は、本明細書において含まれる実施形態および実例に限定されるものではないが、実施形態の一部および異なる実施形態の要素の組合せを含むこれらの実施形態の改変形態を、以下の特許請求の範囲の範囲内であるものとして含むことが特に意図される。