【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、
清掃装置のためのノズル構成であって、
ブラシ軸のまわりに回転可能なブラシであって、前記ブラシの回転の間、清掃されるべき面に接触し、前記面から埃及び/又は液体粒子を拾い上げるための先端部を持つ柔軟なブラシ要素を備え、前記ノズル筐体により少なくとも部分的に囲まれ、少なくとも部分的にノズル筐体の底側から突出した、ブラシと、
前記ブラシを回転させるための駆動ユニットと、
前記ブラシから離隔され、前記ブラシの回転の間に前記ブラシ要素が前記ノズル筐体に入る前記ブラシの第1の側において前記ノズル筐体の底側に装着されたスクイージー要素であって、前記清掃装置の動きの間に、前記清掃されるべき面から埃及び/又は液体粒子を拭き取るよう構成された、スクイージー要素と、
前記ブラシの回転の間、前記ブラシと接触し、前記ブラシ要素の向きを変えるための偏向部と、
前記ブラシ要素が前記ノズル筐体から離れる前記ブラシの第2の側において、空気が前記ノズル筐体に吸い込まれることを少なくとも部分的に制約する制約要素と、
を有し、前記制約要素は、前記ブラシの回転方向でみて、前記偏向部よりも後に配置され、前記ブラシ要素は、前記ブラシの回転の間、前記制約要素を通過する前に前記偏向部と接触し、次いで前記底側において前記ノズル筐体から離れる、ノズル構成において、
前記制約要素が、前記ブラシの回転の間、柔軟性により前記ブラシの外側面に追従し前記先端部に接触するよう構成された、力学的に柔軟な要素を有する、ノズル構成を提供する。
【0013】
上述した目的は更に、本発明の第2の態様により、上述したノズル構成と、ノズル筐体とブラシとの間の吸い込み領域において減圧を生成するための掃除機集合体と、を有する清掃装置により達成される。
【0014】
本発明の好適な実施例は、従属請求項において定義される。請求項に記載されたノズル構成は、従属請求項において定義されたような、請求項に記載された清掃装置と同様の及び/又は同一の好適な実施例を持つことは、理解されるべきである。
【0015】
国際特許出願公開WO2010/041184A1において提案されたものと同様に、本発明により用いられるブラシは、薄く柔軟な毛を備え、ここで全体として柔軟なブラシ要素と呼ばれる。これら柔軟なブラシ要素により、該ブラシは、硬い/剛性のブラシ要素を備えたアジテータとは異なり、埃粒子を持ち上げるのみならず、液体を持ち上げることが可能である。
【0016】
国際特許出願公開WO2010/041184A1において提供される方法とは異なり、本発明によれば、単一のブラシ(2つの反対に回転するブラシではなく)のみが備えられる。これに加え、本発明による清掃装置は更に、単にスクイージーとも呼ばれる、スクイージー要素を備える。該スクイージー要素は好適には、清掃されるべき面の上を滑動するように構成され、それにより清掃装置の動きの間に床面に亘って埃及び/又は液体を拭き取るよう構成された、柔軟なゴムのリップとして実現される。柔軟な毛を備えた単一の回転ブラシと、スクイージーと、ノズル内の減圧を生成する掃除機集合体との組み合わせは、埃及び/又は液体粒子を同時に容易に吸い込むことを可能とする。斯かる清掃装置を用いると、面から粗い埃が清掃され、同時に液体でモップがけされることができる。
【0017】
該スクイージー要素は好適には、ブラシの回転の間にブラシ要素がノズル筐体に入るブラシの前側に配置される。該スクイージー要素は斯くして、埃粒子及び液滴がブラシから放出されるブラシの側に配置される。ブラシ要素の柔軟性のため、該ブラシ要素は、回転の間に埃及び/又は液体粒子が清掃されるべき面から離されるとすぐに、これら埃及び/又は液体粒子を粉砕する一種の鞭のように機能する。このことは、該柔軟なブラシ要素が清掃されるべき面と接触するとすぐに該柔軟なブラシ要素が曲げられ又は窪めさせられ、床から離れるとすぐに真っ直ぐにされるという事実に依存する。この原理は、以下に詳細に説明される。
【0018】
スクイージー要素の位置により、ブラシから放出され粉砕された埃及び/又は液体粒子は、スクイージー要素に当たり、該スクイージーとブラシとの間で跳ね、最終的には掃除機集合体により吸い込まれる。しかしながら、埃及び/又は液体粒子の幾つかは、再び床に吹き付けられる。しかしながら、スクイージー要素が一種のワイパとして機能し、これら再吹き付けされた粒子を集め、これら粒子も掃除機集合体によって吸い込まれるようにするため、この再吹き付けの影響は本発明により克服される。
【0019】
本発明による清掃装置の中心的な特徴のひとつは、偏向部及び制約要素の使用である。国際特許出願公開WO2010/041184A1において提案されたように、該偏向部は、ブラシの回転の間、ブラシと接触しブラシ要素を偏向させる。当該偏向部は、国際特許出願公開WO2010/041184A1において提案されたように、ブラシ要素を偏向させることにより、ブラシ要素を共に押す機能を持つ。このようにして、ブラシ要素間の空間に存在する空気が、該空間から押し出される。ブラシ要素が、該偏向部から離れ、再び互いから離れるよう動くときには、ブラシ要素間の空間が増大し、空気がブラシに吸い込まれ、埃及び/又は液体粒子を吸い込む減圧が生成される。それ故、該偏向部は、床に接触する直前のノズル筐体から離れる位置において、ブラシを回転させることにより生成されるブラシの上述した吹き飛ばし効果を補償する。
【0020】
国際特許出願公開WO2010/041184A1において提案された方法とは異なり、偏向部に加えて制約要素が備えられる。当該制約要素は、ブラシ要素がノズル筐体を離れるブラシの第2の側において、ノズル筐体に吸い込まれる空気を少なくとも部分的に制約するよう構成される。当該第2の側は、スクイージー要素が配置された、ブラシの第1の側とは反対の側である。当該ブラシの第2の側において、過度の空気がノズル筐体に吸い込まれると、少ない減圧に帰着する、即ちノズル筐体におけるいわゆる吸い込み領域内の絶対圧を増大させてしまうため、過度の空気がノズル筐体に吸い込まれることを防止するべきである。それ故、上述したブラシの第2の側において、空気がノズル筐体に吸い込まれることを少なくとも部分的に制約することにより、該制約要素は、埃及び/又は液体粒子を吸い込むために減圧が必要とされるノズル筐体の領域において減圧の損失を防止する。
【0021】
それ故、該制約要素は、ブラシの第2の側における一種の封止として機能し、掃除機集合体に対する要件を最小化する。それ故、比較的に小さな掃除機集合体が、ノズル筐体内の十分に高い減圧を適用するように機能し得る。斯かる小さな掃除機集合体は、あまり空間を浪費しないだけでなく、安価であり、製造コストが節約され得る。他方、小さな掃除機集合体は、大型の強力な掃除機集合体に比べてノイズが小さい。
【0022】
この事実に関して、ブラシ要素がノズル筐体を離れるブラシの第2の側において、ノズル筐体を略完全に封止することが、勿論最適となり得る。しかしながら、この場合には、当該側(ブラシの第2の側)において吹き飛ばし効果に逆らう空気がノズル筐体に全く入らないため、床接触の間にブラシの窪みにより引き起こされる上述した吹き飛ばし効果が克服されない。
【0023】
他方、国際特許出願公開WO2010/041184A1において提案された偏向部のみを備えることは、単一のブラシとスクイージーとの組み合わせ(ここで提案されたような)の場合においては、ノズル筐体内の減圧の望ましくない損失を防止する上述した封止特性を果たすことができない。付加的な制約要素なしでは、偏向部は、一方では、ブラシの第2の側においてノズル筐体に十分な空気が吸い込まれるようにして、望ましくない吹き飛ばし挙動を相殺するが、このことは他方では、ノズル筐体内の減圧をかなり低減させてしまう。制約要素のみでは、後者の問題を克服するように機能し得るが、望ましくない吹き飛ばし効果を抑制することができない。斯くして、本発明による清掃装置を価値あるものとするものは、偏向部と制約要素との組み合わせなのである。
【0024】
偏向部により偏向/窪ませられる前にブラシに空気が即座に入るよう、偏向部のみが備えられた状況とは異なり、該制約要素が、伸長したブラシ要素に追従し、当該領域におけるノズル筐体を少なくとも部分的に封止する制約壁を形成する。このことは、ブラシが該制約要素を通過する領域において、ブラシにおいて局所的な減圧を生成する。当該減圧により、ブラシ要素が床に接触する前に制約壁が終了するとすぐに空気がブラシに入る。当該減圧は、ブラシの上述した吹き飛ばし効果を相殺する空気の流れを生成する。
【0025】
以上から、清掃装置の正確な機能のため、制約要素が、ブラシの回転方向でみて、偏向部の背後に配置されることが重要であることは、明らかであろう。このようにして、ブラシ要素は、制約要素を通過する前にブラシの回転の間に偏向部に接触し、次いで底側においてノズル筐体から離れる。
【0026】
該制約要素の利用は、更なる正の効果を持つ。該制約要素は、ノズル筐体に入る空気の一定の流量を実現する一種の流れ等化器としても機能する。
【0027】
埃及び/又は液体粒子の主な部分は、ブラシの第1の側即ちブラシとスクイージー要素との間における面から、集められ吸い込まれる。当該ブラシの第1の側は、ここでは吸い込み口とも呼ばれる。流れ等化特性は、スクイージー要素の挙動のため、特に重要である。スクイージー要素の挙動は、該清掃装置の動きの方向に依存して異なる。このことは以下に説明される。
【0028】
本発明の一実施例によれば、スクイージー要素は、該清掃装置が、前方向に面上を動かされているときに、該スクイージー要素が清掃されるべき面の上を又は該面の上から埃及び/又は液体粒子を押し拭き去るよう構成された閉位置へと、該スクイージー要素を切り換え、該清掃装置が、後方向に面上を動かされているときに、該スクイージー要素と清掃されるべき面との間の開口を通して床からの埃及び/又は液体粒子が吸い込み領域に入ることができる開位置に該スクイージー要素を切り換えるための切り換えユニットを有し、前記前方向においては、前記スクイージー要素は、当該清掃装置の動きの方向でみて、ブラシの後に位置し、前記後方向においては、前記スクイージー要素は、当該清掃装置の動きの方向でみて、ブラシの前に位置する。
【0029】
該清掃装置の動きの方向に依存して開位置から閉位置へとスクイージー要素を切り換える能力は、ノズルの前向き及び後向きのストロークのいずれにおいても優れた清掃結果をもたらす。開いた構成は、該スクイージーがブラシの前の埃及び液体に接近するときに埃が入ることを可能とするためのものである。閉位置においては、該スクイージーの前に床における埃又は液体にブラシが接近するときに、該スクイージーは床に対する間隙を閉じ、又は換言すれば、面の上を拭き又は滑動する。
【0030】
切り換えモードを保証するため、スクイージー要素は好適には、柔軟なゴムのリップであって、清掃装置の動き方向に依存して、該ゴムのリップの長手方向のまわりに曲がるよう構成されたリップにより実現される。当該ゴムのリップは好適には、該ゴムのリップが清掃されるべき面に触れるよう意図された、該ゴムのリップの下端の近くに配置された、少なくとも1つのスタッドを有する。該少なくとも1つのスタッドは、該ゴムのリップが、該清掃装置の動きの方向でみたときに、ブラシの前に位置するような、後向きの方向に、該清掃装置が面上を動かされているときに、該面から該ゴムのリップを少なくとも部分的に持ち上げるよう構成される。該ノズルの後向きのストロークにおけるこのゴムのリップの持ち上げにより、スクイージー要素と清掃されるべき面との間に生成された開口を通して、後向きのストロークにおいても、粗い埃がノズルに入ることができる。該清掃装置を反対の前方向に面上を動かしているときには、該スタッドは、床に接触することなく、該ゴムのリップが床の上を自由に滑動し、床から埃及び水粒子を拾い上げる。
【0031】
該スクイージーの入れ替わり挙動により、吸い込み口に入る空気の流量が、ノズルの後向きストロークと前向きストロークとでは異なることが明らかである。前向きストロークにおいては、該スクイージーが吸い込み口を少し閉じ、流量を減少させ、ノズル筐体内の減圧を増大させる(即ちノズル筐体内の絶対圧力を減少させる)。後向きストロークにおいては、他方で該スクイージーが持ち上げられ当該側から吸い込み口を開き、当該領域においてノズル筐体に吸い込まれる空気の流量が増大する。換言すれば、このことは、かなり大きな空気の漏れが、該スクイージーと床との間に形成された開口を通して付加的な空気が吸い込み口に入ることを可能とすることに導く。その結果、ノズル筐体内の減圧が低下する(即ちノズル筐体内の絶対圧力が増大する)。
【0032】
上述した制約要素が少なくとも部分的にノズル筐体をブラシの第2の側において封止するため、該清掃装置の動き方向とは独立して、吸い込み口(ブラシとスクイージーとの間)に入る空気の一定の流量を実現する。偏向部のみが利用される場合(制約要素がない場合)には、偏向部上での圧力差が比較的高い場合には、特に前向きストロークにおいて、ブラシの第2の側における封止機能が、十分とはならなくなる。斯かる偏向部により提供される比較的短い制約経路は、空気が入るための十分に長い制約を可能とするのに十分に長くないものとなる。それ故、小型で低パワー消費の掃除機集合体は、ノズル筐体内に必要とされる減圧を生成するために用いられない。
【0033】
本発明の好適な実施例によれば、該制約要素は、力学的に柔軟な要素を有する。代替としては、該制約要素は、力学的に柔軟な要素として実現されても良い。柔軟性により、斯かる力学的に柔軟な要素は、略完全にブラシの外側面に追従し、そのためブラシの回転の間、ブラシの先端部分にしか接触しない。
【0034】
それ故、ノズル筐体内に生成される減圧のため、該力学的に柔軟な制約要素は、ブラシに対して略自動的に吸い寄せられる。ブラシ要素を能動的に偏向させる/窪ませる偏向部とは異なり、該ブラシ要素は、該柔軟な制約要素に接触されたときにも窪ませられない。制約要素がブラシの外側面に対して能動的に吸い寄せられるため、該制約要素とブラシとの間において非常に優れた封止効果が実現され得る。
【0035】
該制約要素の力学的な柔軟性は、更なる利点を持つ。該要素は非常に柔らかな態様でブラシの先端部に接触するので、ブラシと該制約要素との間に引き起こされる摩擦は、可能な限り低減される。さもなければ、当該小さな摩擦は保証されず、十分に高い加速度でブラシを回転させるために、大型で強力なモータ(駆動ユニット)が用いられる必要があることになってしまう。
【0036】
ブラシの外側の輪郭に形状を略完全に適合させる制約要素を実現することを可能とするため、本発明の好適な実施例によれば、該制約要素は、布製品、ゴム又はプラスチックのシートからつくられる。斯かる布製品、ゴム又はプラスチックの非常に薄いシートは、力学的な柔軟性によってのみならず、小さな重量のため、減圧がかけられるとすぐにブラシの形状に略完全に適合することが可能である。これらはほとんど摩擦を生成しない。この目的のために用いられ得る布製品の例は、ナイロン、ポリエステル等である。
【0037】
本発明の更なる実施例によれば、該偏向部もまた、力学的に柔軟な材料からつくられる。しかしながら、該偏向部は、前述したようにブラシ要素を偏向させ/窪ませるのに適している必要があるため、制約要素ほど柔軟である必要はない。他方、硬すぎる偏向部はブラシ要素を損傷させ、ブラシの摩耗及び亀裂を増大させ得る。それ故、該偏向部は、ゴムからつくられ、可能な限りブラシ要素の摩耗及び亀裂が最小化されるようにしても良い。
【0038】
更なる実施例によれば、該制約要素は、互いに対して平行に配置され、ブラシ軸に垂直に配置された、複数のスリットを有する。これらスリットは、該制約要素内の小さな長手方向の開口である。これらスリットは、床の上の埃及び液体が、該制約要素を通してブラシに遭遇することを容易化する。この場合、該制約要素は、非常に薄いスリットを介して互いから離隔された、幾つかの柔軟なストリップ又はフラップを持つ。該制約要素のこれら柔軟なストリップは、互いに対して重なっても良い。いずれの場合においても、これらスリットが過度に大きいと、ここでもまたノズル筐体内の減圧の損失に帰着し得るため、これらスリットが過度に大きくないことが保証されるべきである。
【0039】
本発明の更なる実施例によれば、該制約要素は該偏向部に接続され、該偏向部はノズル筐体に装着される。該偏向部は例えば、ノズル筐体の内部に固定的に配置されても良く、該制約要素は、該偏向部に直接に装着されても良い。しかしながら、該偏向部と該制約要素とは、ノズル筐体の内部に別個に装着され得る又は固定され得る別個の部分として実現されても良いことに、留意されたい。いずれの場合においても、該制約要素が該偏向部の非常に近くに配置され、それにより上述した偏向部と制約要素との組み合わせの特性が実現され得るようにすることが好適である。他の実施例によれば、該偏向部と該制約要素とは共に、ノズル筐体に別個に接続されても良く、該柔軟な制約要素は、該偏向部の上に延在しても良い。この場合、該偏向部の上に延在する制約要素の第1の部分は、偏向部の機能を持ち、該制約要素の他の部分(該偏向部の上に延在しない)は、上述した空気制約特性のため機能する。
【0040】
本発明の更なる実施例によれば、該制約要素及び該偏向部は、ブラシ要素がブラシの回転の間にノズル筐体から離れるブラシの第2の側に配置され、該第2の側は、ブラシ軸に対して第1の側と反対である。
【0041】
該第1の側は、スクイージーが配置されている側である。このことは、該スクイージーが、ブラシの一方の側(第1の側)に配置され、該偏向部及び該制約要素が、ブラシの他方の側(第2の側)に配置されることを意味する。これら3つの要素(スクイージー要素、偏向部、及び制約要素)は全て、好適にはノズル筐体の内部に配置される。ブラシの第1の側、即ちブラシとスクイージーとの間の空間は、吸い込み口が配置された側であり、即ち該側からブラシによって拾い上げられた埃及び/又は液体粒子が持ち上げられ吸い込まれる。
【0042】
以下、(アジテータと対照的に)ブラシが埃及び/又は液体粒子を同時に拾い上げることを可能とする、ブラシの具体的な特性が詳細に説明される。
【0043】
本発明の更なる好適な実施例によれば、複数のブラシ要素の線質量密度は、少なくとも先端部において、150g/10kmよりも小さく、好適には20g/10kmよりも小さい。
【0044】
染みの除去にのみ用いられる(いわゆるアジテータ)先行技術によりしばしば用いられるブラシとは異なり、ここで示された柔軟なブラシ要素を持つ軟らかいブラシは、床から水を拾い上げる能力も持つ。ブラシ要素として好適に用いられる柔軟なマイクロファイバの毛により、ブラシの回転の間にブラシ要素/マイクロファイバの毛が床に接触すると、床から埃粒子及び液体が拾い上げられる。ブラシによって水をも拾い上げる能力は主に、ブラシ要素の選択された線質量密度により起こる毛細管力及び/又はその他の吸着力によりもたらされる。該非常に薄いマイクロファイバの毛は更に、粗い埃に対してブラシを開かせる。該マイクロファイバの毛はまた、これらの毛が制約要素を通過するときに流れの制約部として機能するという利点を持つ。アジテータの剛性の毛は、このようには機能しない。
【0045】
上述した線質量密度、即ち10km毎グラムでの線質量密度は、デシテックス(Dtex)値とも呼ばれる。上述した種類の非常に低いDtex値は、少なくとも先端部において、ブラシ要素が曲げ効果を受けるのに十分に柔軟であり、清掃されるべき面から埃粒子及び液滴を拾い上げることが可能であることを保証する。更に、ブラシ要素の摩耗及び亀裂の程度が、当該線質量密度範囲内では許容可能なものとなると考えられる。
【0046】
本出願人により実行された実験は、上述した範囲内のDtex値が、技術的に実現可能であり、優れた清掃効果が得られることを示した。しかしながら、125、50、20又は5(g/10km)といった更に低いDtex値の上限値を持つブラシ要素を利用することにより、清掃効果は更に改善され得ることが示された。
【0047】
本発明の更なる好適な実施例によれば、該駆動ユニットは、特にブラシの回転の間にブラシ要素が面に接触しない埃放出期間の間、ブラシ要素の先端部において、少なくとも3,000m/s
2、更に好適には少なくとも7,000m/s
2、最も好適には12,000m/s
2の遠心加速度を実現するように構成される。
【0048】
少なくともブラシの回転の間にブラシ要素が面に接触しない埃放出期間の間、先端部分において現れる加速度に関して3,000m/s
2の最小値は、本発明の状況において実行された実験の結果によっても支持される。これら実験は、本発明による装置の清掃性能は、回転の間のブラシ要素の先端部における加速度の増大を意味する、ブラシの角速度の増大と共に、改善されることを示している。
【0049】
該駆動ユニットが、上述した範囲内のブラシ要素の遠心加速度を実現するように構成される場合、ブラシ要素が清掃されるべき面とは離れている段階の間、ブラシ要素に接着した液滴が、液滴の噴霧として放出される可能性が高い。
【0050】
柔軟なブラシ要素の線質量密度についての上述したパラメータと、ブラシ要素の先端の加速度についてのパラメータと、の組み合わせは、ブラシにより遭遇される埃粒子及び零れた液体の略全てがブラシ要素によって拾い上げられ、ノズル筐体内の位置において放出される、回転可能なブラシの最適な清掃性能をもたらす。
【0051】
ブラシ要素の先端部における線質量密度と遠心加速度との好適な組み合わせは、Dtex値について150g/10kmの上限と、遠心加速度について3,000m/s
2の下限とを提供する。このパラメータの組み合わせは、面が実用的に粒子を取り除かれ一度に乾かされる、優れた清掃結果を可能とすることが示されている。このパラメータの組み合わせを用いることは、非常に好適な染み除去特性に帰着することも示されている。ブラシにより液体/水をも拾い上げる能力は、主にブラシ要素の選択された線質量密度により起こる毛細管力及び/又はその他の吸着力により、及びブラシが駆動される高い速度により、もたらされる。
【0052】
ブラシ要素の船体における線質量密度及び実現される遠心加速度に関する上述したパラメータの組み合わせは、先行技術の知識に基づいて見出されたものではない。先行技術は、面を清掃するために用いられ、埃及び液体を持ち上げることも可能な、1つの回転可能なブラシのみの自律的な最適な機能を持つ可能性にさえ関心を払っていない。
【0053】
ブラシ要素の先端部において上述した遠心加速度を実現するため、本発明の一実施例によれば、該駆動ユニットは、該装置の動作の間、毎分3,000乃至15,000回転の範囲内、更に好適には毎分5,000乃至8,000回転の範囲内である、ブラシの角速度を実現するよう構成される。本出願人の実験は、ブラシが少なくともは毎分6,000回転である角速度で駆動される場合に、最適な清掃結果が得られることを示している。
【0054】
しかしながら、ブラシ要素の先端部分における望ましい加速度は、角速度にのみ依存するわけではなく、ブラシの半径又は直径にも依存する。
【0055】
それ故、本発明の更なる実施例によれば、ブラシ要素が完全に外に伸びた状態のときに、ブラシが10乃至100mmの範囲内、より好適には20乃至80mmの範囲内、最も好適には35乃至50mmの範囲内である直径を持つことが好適である。ブラシ要素の長さは好適には、ブラシ要素が完全に外に伸びた状態のときに、1乃至20mmの範囲内、より好適には8乃至12mmの範囲内である。
【0056】
更なる実施例によれば、掃除機集合体は、吸い込み領域内において、3乃至70mbarの範囲内、好適には4乃至50mbarの範囲内、最も好適には5乃至30mbarの範囲内の減圧を生成するよう構成される。
【0057】
該掃除機集合体により生成される上述した圧力範囲とは異なり、最新技術による掃除機は、許容可能な清掃結果を得るため、より高い減圧を適用する必要がある。しかしながら、上述した柔軟なブラシ要素を備えた特殊なブラシ、スクイージー要素、偏向部、及び制約要素の組み合わせにより、上述した圧力範囲において既に非常に優れた清掃結果が実現され得る。斯くして、より小型の掃除機集合体が用いられ得る。このことは、真空ポンプの選択の自由度を増大させる。
【0058】
提示される清掃装置は更に、ブラシ要素が完全に外側に伸びたときのブラシの半径よりも小さい、清掃されるべき面からの距離において、ブラシ軸を配置するための配置ユニットを有しても良く、これにより、動作の間に清掃されるべき面に接触するブラシ部分の窪みを実現し、該窪みはブラシ直径の2乃至12%の範囲内である。
【0059】
結果として、ブラシが床に接触すると、ブラシ要素が曲げられる。それ故、ブラシ要素がブラシの動作の間に床と接触するとすぐに、ブラシ要素の外観は、外側に伸びた外観から曲げられた外観へと変化し、ブラシの回転の間にブラシ要素が床と接触しなくなるとすぐに、ブラシ要素の外観は、曲げられた外観から外側に伸びた外観へと変化する。ブラシの先端部分が第1の偏向要素の第1の偏向面に接触したときに、同じブラシの特性が現れる。
【0060】
ブラシの窪みの実用的な範囲は、ブラシ要素の完全に外側に伸びた状態に対して、ブラシの直径の2%乃至12%となるよう構成される。実用的な状況においては、上述したようなブラシの直径は、例えばブラシの回転の周波数において動作する高速度カメラ又はストロボスコープを用いることにより、適切な測定を実行することによって決定されることができる。
【0061】
ブラシ要素の変形、又はより正確には、変形が起こる速度も、ブラシ要素の線質量密度に影響を受ける。更に、ブラシ要素の線質量密度は、ブラシを回転させるために必要とされるパワーに影響を与える。ブラシ要素の線質量密度が比較的小さい場合には、柔軟性が比較的大きくなり、ブラシ要素が清掃されるべき面又は第1の偏向面に接触するときにブラシ要素を曲げるために必要とされるパワーが、比較的低くなる。このことはまた、ブラシ要素と床又は第1の偏向面との間に生成される摩擦力が比較的小さく、いずれの損傷も防止されることを意味する。ブラシ要素の比較的小さな線質量密度の他の有利な効果は、摩耗に対する比較的高い耐性、鋭い物体等による損傷の比較的小さな可能性、及び、床における相当な不均一が遭遇された場合であっても接触が維持されるような、清掃されるべき面に追従する能力である。
【0062】
回転可能なブラシの清掃機能に更なる役割を果たし得る因子は、ブラシ要素のパッキング密度である。該パッキング密度が十分に大きい場合には、ブラシ要素間に毛細管力が生じ、清掃されるべき面からの液体の迅速な除去を向上させる。本発明の一実施例によれば、ブラシ要素のパッキング密度は、cm
2当たり少なくとも30房のブラシ要素であり、房あたりのブラシ要素の数は少なくとも500である。
【0063】
ブラシ要素を房状に配置することは、更なる毛細管チャネルを形成し、清掃されるべき面から埃粒子及び液滴を拾い上げるブラシの毛細管力を増大させる。
【0064】
上述したように、提案される清掃装置は、極めて優れた清掃結果を実現する能力を持つ。これら清掃結果は、清掃されるべき面を能動的に濡らすことにより更に改善され得る。このことは特に染みの除去の場合に有利である。ブラシ要素に対する埃粒子の接着を増大させる工程において用いられる液体は、種々の態様で供給されても良い。第一に、回転可能なブラシ及び柔軟なブラシ要素が、清掃されるべき面上に存在する液体によって濡らされても良い。斯かる液体の例は、水又は水と石鹸の混合物である。代替としては、該液体は、例えば該液体をブラシに滲み出させることにより、又は該液体をブラシの中空の芯要素に注入することにより、洗浄液をブラシへと能動的に供給することによって供給されても良い。
【0065】
それ故、一実施例によれば、該清掃装置は、ブラシ軸が延在するブラシの幅のcm毎に毎分6mlよりも少ない割合で液体をブラシに供給するためのユニットを有する。液体の供給は高速で行われる必要はなく、該液体が埃粒子のための担持/輸送ツールとしての機能を果たすには上述した割合で十分であると考えられる。斯くして、清掃されるべき面から染みを除去する能力は、かなり改善され得る。少量の液体のみを用いる利点は、水のような液体に敏感なものと示唆される面のような、脆弱な面を処置することが可能であることである。更に、ブラシに供給されるべき液体を収容する所与のサイズの槽に対し、自律時間が長くなる、即ち該槽が空になり再び充填される必要があるようになるまでの時間が長くなる。
【0066】
意図的に選択され能動的に供給される液体を用いる代わりに、零れた液体、即ち清掃されるべき面から取り除かれるべき液体を用いることも可能であることは、留意される必要がある。例は、零れたコーヒー、ミルク、ティー等である。このことは、ブラシ要素が前述したように清掃されるべき面から液体を除去することが可能であり、該液体は前述した遠心力の影響の下でブラシ要素から取り除かれることができるという事実から、可能である。
【0067】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施例を参照しながら説明され明らかとなるであろう。