特許第6360071号(P6360071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360071
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】自動化された眼内レンズ注入器の制御
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20180709BHJP
【FI】
   A61F2/16
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-549460(P2015-549460)
(86)(22)【出願日】2013年12月10日
(65)【公表番号】特表2016-501103(P2016-501103A)
(43)【公表日】2016年1月18日
(86)【国際出願番号】US2013074097
(87)【国際公開番号】WO2014099487
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2016年11月15日
(31)【優先権主張番号】61/739,058
(32)【優先日】2012年12月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/096,083
(32)【優先日】2013年12月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】マーティン アンソニー マクニーラ
(72)【発明者】
【氏名】ミハイル ボウクニー
(72)【発明者】
【氏名】クルト ディー.レウカネッヒ
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0264102(US,A1)
【文献】 特表2009−530049(JP,A)
【文献】 特表2012−505066(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0022548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/14 − 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の状態を治療するために、水晶体嚢の中に眼内レンズを埋め込むためのシステムであ
って、
ハウジングの前と後ろの端の間に延在した主軸を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部に長手方向に設置され、かつ第1と第2の端を有するプランジャーであって、前記第1端が前記ハウジングの前記前端に向かって置かれているプランジャーと、
前記ハウジングの前記主軸に沿って長手方向にプランジャーの移動をさせる様に構成された電気モーターと、
前記ハウジングの前記前端または近くに設置される挿入カートリッジであって、前記挿入カートリッジの中に置かれた眼内レンズは、前記プランジャーが前記ハウジングの前記前端に向かって移動すると、前記挿入カートリッジから移動するように、前記プランジャーと一直線上で、取り外し可能な挿入カートリッジを収納するように構成された挿入カートリッジと、
前記電気モーターと電気的に連絡し、前記プランジャー及び前記眼内レンズを移動させるために、前記電気モーターに電力を供給するように構成された制御器であって、前記制御器は前記制御回路の中で、モーター電流フィードバックを検出するように形成され、及び、前記検出されたモーター電流フィードバックと、貯蔵された電流プロファイルを比較するように構成され、及び前記電流レベルが、前記貯蔵された電流プロファイルと、予め貯蔵した量だけ偏位すると、前記プランジャーの移動を修正するように構成された制御器を含む制御回路
とを備えるシステム。
【請求項2】
前記検出されたモーター電流フィードバックが、前記貯蔵された電流プロファイルから偏位していると、ユーザーに警告を出す様に構成された可聴指示器をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記可聴指示器は可変ピッチで連続した音を発生させ、前記ピッチは前記検出されたモーター電流フィードバックの変化に応じて変化する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記ピッチが、前記検出されたモーター電流フィードバックに基づいたモーター負荷の変化に基づいて変化するように構成された、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記ピッチは、前記検出されたモーター電流フィードバックに基づく実際の負荷、前記貯蔵されたモーター負荷プロファイルからの偏位に基づいて変化するように構成された、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記可聴指示器が可変レートで音を発生させ、前記レートは前記検出されたモーター電流フィードバックの変化に基づいて変わる、請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記可聴指示器は執刀医に対し、負荷の変化に関するリアルタイムのフィードバックを提供するように構成された、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記プランジャーを移動し及び前記眼内レンズを移動させる時の前記貯蔵された電流プロファイルが、モーターの期待される負荷を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記プランジャーの長手方向位置を検出するために配置されたセンサーをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御器は前記貯蔵された電流プロファイルを貯蔵するメモリー部分で形成され、前記貯蔵された電流プロファイルは、前記モーターの期待される負荷を表し、そこで前記制御器は前記検出されたモーター電流フィードバックに基づく実際の負荷を、前記貯蔵された期待負荷と比較するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記貯蔵された電流プロファイルが上限と下限を有する受け入れ可能な範囲を表す、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
眼の状態を治療するために、眼の水晶体嚢の中に眼内レンズを埋め込むためのシステムであって、
前記ハウジングの前端と後端の間に延在した主軸を有するハウジングと、
前記ハウジングの内部に長手方向に設置され、かつ第1と第2の端を有するプランジャーであって、前記第1端が前記ハウジングの前記前端に向かって置かれているプランジャーと、
前記ハウジングの前記主軸に沿って長手方向にプランジャーの移動をさせる様に構成された電気モーターと、
前記ハウジングの前記前端または近くに取り付けた挿入カートリッジであって、及び前記ハウジングの前記前端に向かって前記プランジャーが移動するにつれ、前記挿入カートリッジから前記挿入カートリッジに置かれた眼内レンズが移動するように前記プランジャーと一直線上に置かれた取り外し可能な前記挿入カートリッジを収納するように構成された挿入カートリッジと、
前記電気モーターと電気的に連絡し、前記プランジャー及び前記眼内レンズを移動させるために、前記電気モーターに電力を供給するように構成された制御器であって、前記制御器は、前記制御回路の中でモーター電流フィードバックを検出するように構成され、及び前記検出されたモーター電流フィードバックを貯蔵された電流プロファイルと比較するように構成され、及び前記検出されたモーター電流フィードバックの指針の感覚信号を執刀医に向けて発することを含む制御回路
とを備えるシステム。
【請求項13】
前記制御回路は、電流レベルが前記貯蔵された電流プロファイルから、予め貯蔵された量が偏位すると、前記プランジャーの移動を修正するように構成された、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記感覚信号は連続して可変ピッチで連続して音を発生する可聴指示器で、前記ピッチは前記検出されたモーター電流フィードバックの変化に応える、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記ピッチは、前記検出されたモーター電流フィードバックに基づくモーター負荷の変化に基づいて変わるように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記ピッチは、前記検出されたモーター電流フィードバックに基づく実際の負荷の、前記貯蔵されたモーター負荷プロファイルからの偏位に基づいて変化するように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項17】
前記可聴指示器は可変レートで音を発生し、前記レートは前記検出されたモーター電流フィードバックの変化に応えて変化する、請求項14に記載のシステム。
【請求項18】
前記可聴指示器は、執刀医に、負荷の変化に関連するリアルタイムのフィードバックを提供するように構成された、請求項14に記載のシステム。
【請求項19】
眼の状態を治療するために、眼の水晶体嚢の中に眼内レンズを埋め込むための、制御器によってシステムを制御する方法で、
モーター負荷プロファイルをメモリーの中に貯蔵し、前記眼内レンズを前進させるように構成されたモーターを有する、電気駆動の手持ち眼内レンズ(IOL注入装置の中に置かれた眼内レンズを前進させるための入力信号を受け取り、前記眼内レンズを前進させ、
モーター電流フィードバックを監視する事により、前記レンズを前進させるのに要求される実際の負荷を検出し、
前記実際の負荷を前記貯蔵されたモーター負荷プロファイルと比較し、そして、
前記実際の負荷が前記貯蔵されたモーター負荷プロファイルから、予め貯蔵された量が偏位している場合は、前記眼内レンズの動きを修正すること
を含む、方法。
【請求項20】
前記実際の負荷の変化を示すリアルタイムで変化する感覚信号を提供することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、眼科治療に用いる自動化された眼内レンズ注入器のための、制御システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
注入器ハンドピースを用いる眼内レンズ(IOL)の手作業での挿入は、ユーザーに注入速度の正確な制御と配置を可能にする。片手でハンドピースを配置し、もう片方の手でリードスクリューを捩じって、またはシリンジと類似のプランジャーを前進させることにより、レンズを前進させる。手作業という性質のために、これらの挿入技術は執刀医に触覚でフィードバックを提供するので、執刀医らは装着するカートリッジの中への不適切なレンズの配置、または欠陥のあるハンドピースの操作などによるレンズの損傷のような悪い結果に対して認識することが出来る。ある場合には、レンズの損傷または欠陥のある操作は、レンズを前進させるための抵抗力の変化として反映され得る。従ってある条件下では、執刀医は、レンズを眼の中に前進させる前に、レンズの損傷や欠陥の可能性のある操作を検知出来る。
【0003】
これらの手作業による挿入技術は、執刀医に適切にレンズを前進させるための必要な力の程度、及びレンズ損傷の認識に慣れさせる。しかしそれらの方法はまた、患者の間に一貫性が無く、レンズにかかる力が異なり、執刀医が堅実に及び有能にIOLを挿入し、または負荷の力でレンズが損傷した可能性を決定する前に、大きな習熟曲線を必要とするであろう。
【0004】
モーター駆動の注入器ハンドピースを使用する、動力で補助されたIOLの挿入は、例えば、より予測可能でより着実な手術結果を提供する。しかし経験を積んだ執刀医が依拠するする、手作業を用いる方法の時の、IOLレンズの損傷などの悪い結果を認識するための触覚のフィードバックを執刀医は失う。
【0005】
従って、抵抗力が通常の値からずれた時には、レンズの前進を停止させる決定が出来るような、執刀医に対する力のフィードバックの機構の提供の必要性ある。
【0006】
本明細書に開示されたシステムおよび方法は、従来技術の欠陥の1以上を克服する。
【発明の概要】
【0007】
概要
一つの例示的態様では、本開示は眼症状を治療するために、眼の水晶体嚢の中に眼内レンズを埋め込むためのシステムに対するものである。装置はハウジングの前端と後端の間に延在した主軸を有するハウジングてよく、さらに、ハウジングの中に、長手方向に設置された第1端と第2端を有するプランジャーで形成されている。第1端はハウジングの前端に配置されることがある。電気モーターはハウジングの主軸に沿ってプランジャーに、長手方向に移動させるようにされてよい。ハウジングの前端またはその近くに配置されたカートリッジは、プランジャーがハウジングの前端に移動するにつれ、挿入カートリッジの中に置かれた眼内レンズを挿入カートリッジから移動させるように、取り外し可能な挿入カートリッジを収納し、プランジャーの一直線上に構成されている。システムはまた、電気モーターと電気的に連絡する制御器を含む制御回路を形成してもよく、電気モーターに電力を与えて眼内レンズを移動出来るように構成されている。制御器は制御回路の中でモーター電流のフィードバックを検出するように構成され、及び検出したモーター電流フィードバック電流を貯蔵された電流プロファイルと比較するように構成され、電流レベルが貯蔵した電流プロファイルが予め貯蔵した量を外れると、プランジャーの移動を修正する。
【0008】
一つの態様では、検出されたモーター電流フィードバックが、貯蔵された電流プロファイルから外れると、可聴指示器はユーザーに警告するように構成されている。可聴指示器は可変ピッチで、連続して音を発生させることが出来、ピッチは検出されたモーターフィードバックの変化に応えて変わる。ピッチは検出されたモーターフィードバックに基づくモーター負荷に基づいて変わるように構成されている。ピッチは貯蔵された電流プロファイルから検出されたモーターフィードバックに基づく実際の負荷の偏位に基づいて変わるように構成されている。可聴指示器は可変レートで音を発生し、レートは検出されたモーター電流フィードバックの変化に応えて変わる。可聴指示器は負荷の変化に関するフィードバックをリアルタイムで執刀医に提供するように構成されている。
【0009】
一つの態様では、貯蔵された電流プロファイルは、プランジャーを移動させ、眼内レンズを移動させる時のモーターにかかることが予期される負荷を示している。別の態様では、プランジャーの長手方向の位置を検出するために、センサーが配置されている。別の態様では、制御器は貯蔵された電流プロファイルを貯蔵しているメモリー部分で形成され、貯蔵された電流プロファイルはモーターの予期される負荷を表し、そこで、制御器は検出されたモーター電流フィードバックに基づく実際の負荷と、貯蔵された予期される負荷とを比較するように構成されている。
【0010】
別の例示的態様では、本開示は眼症状を治療するために水晶体嚢の中に眼内レンズを埋め込むためのシステムに対するものである。このシステムはハウジングの前端と後端の間に延在した主軸を有するハウジングで形成され、第1端と第2端を有し、ハウジングの中に長手方向に設置されたプランジャーを有している。第1端はハウジングの前端に向けて配置しても良い。電気モーターはハウジングの主軸に沿ってプランジャーに長手方向への移動をさせるように構成することが出来て、カートリッジの取り付け具はハウジングの前端かその近くに置くことが出来る。プランジャーがハウジングの前端に向かって移動するに連れ、挿入カートリッジの中に置かれた眼内レンズが、挿入カートリッジから移動し、プランジャーの一直線上に取り外し可能な挿入カートリッジが収納されるように構成されている。制御回路は電気モーターと電気的に連絡する制御器を形成し、電気モーターに電力を与えてプランジャーを移動させて眼内レンズを移動させる様に構成している。制御器は制御回路の中でモーター電流フィードバックを検出するように形成されてよく、そして検出されたモーター電流フィードバックを貯蔵された電流プロファイルと比較し、検出された電流フィードバックを示す感覚信号を執刀医に発するように構成されてよい。
【0011】
一つの例示的な態様では、本開示は眼の症状を治療するために、眼内レンズを水晶体嚢に埋め込むためのシステムを制御する方法に対するものである。方法は、メモリーの中にモーター負荷プロファイルを貯蔵し、眼内レンズを前進させるように構成されたモーターを有する電気駆動の手持ちIOL注入装置内に配置された眼内レンズを前進させるための入力信号を受け取り、眼内レンズを前進させ、前進させるのに必要な実際の負荷をモーター電流フィードバックで監視して検出し、実際の負荷を貯蔵されたモーター負荷プロファイルと比較し、そして実際の負荷が貯蔵されたモーター負荷プロファイルを予め貯蔵された量を外れた場合には眼内レンズの動きを修正することとを含む。
【0012】
別の態様では、方法は、実際の負荷を示す感覚信号の提供すること含んでいる。感覚信号を提供することは、実際の負荷の変化を示すために、リアルタイムで変化する可聴信号の発出を含んでもよい。ある態様では、可聴指示器は断続的なビープ音である。別の態様では、感覚信号を提供することは実際の負荷からの偏位の量を表すリアルタイムで変化する可聴指示器の発出を含んでいる。
【0013】
前述の一般的な記述と後述の詳細な記述の両方は、例示的で説明的な性質のものであり、本開示の範囲を制限することなく理解を提供することを意図していることが理解されるべきである。この点に関するこの開示の更なる態様、特性、及び利点は、下記の詳細な記述から、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
添付の図面は、本明細書に開示される装置および方法の実施形態を例示し、記述と共に本開示の原理を説明するのに寄与する。
図1】本開示の一つの態様に従った、例示的な外科システムの図である。
図2】挿入カートリッジが設置された例示的なIOL注入器具の図である。
図3】挿入カートリッジをより詳細に示す例示的なIOL注入器具の遠位端の図である。
図4】本開示の一つの例示的な態様に従った例示的なIOL注入器具の断面図である。
図5】本開示の一つの例示的な態様に従った例示的なIOL注入器具が、後退状態に有る時の断面図である。
図6】本開示の一つの例示的な態様に従った部分的に延在した例示的なIOL注入器の断面図である。
図7】本開示の一つの例示的な態様に基づく例示的な制御回路の回路図である。
図8】本開示の一つの例示的な態様に従った例示的な方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
本開示の原理の理解を促進する目的のために、図面に説明された実施形態への参照を行い、それを記述するために特定の言葉が使用される。それにもかかわらず、本開示の範囲を制限することを意図するものでないことは理解されるべきである。何らかの記述された装置、器具、方法に対する代替え、及び更なる修正、及び本開示に対する更なる応用は、本開示に関連する当業者には通常起きるものとして完全に予期されているものである。特に、本開示の別の実施形態に関連する、特徴、構成要素及び/または工程と、組み合わされたある実施形態に関して記述された特徴、構成要素、及び/または工程は、完全に予期されたものである。簡略化のために、ある場合には、同じ参照番号が、同じまたは類似の部品に対し、図面を通して使用されている。
【0016】
本明細書に記述されたシステムおよび方法は、予測可能で一貫した手術結果で執刀医に患者の眼のIOLの挿入を可能にし、不都合な状態を確認するためのIOL注入装置による、IOLへの負荷に関連するフィードバックを執刀医に提供する。本明細書に開示する実施形態では、フィードバックはIOL注入装置に送られるモーター電流の監視の結果である。ある実施形態では、可聴形態は、例えば可変ピッチを伴う連続したトーンなどは、モーター電流の変化の指標を執刀医に提供する。執刀医にリアルタイムの可聴フィードバックを提供することで、執刀医は工程に対して、情報に基づく決定をすることが出来る。更に、本明細書に開示されたシステムおよび方法の態様は、電流が許容出来る範囲の外側に落ちると、IOLの前進を停止する自動的な優先順位を提供する。
【0017】
図1は外科コンソールを説明する例示的な実施形態に従っており、通常100で指名され、眼症状を治療する。一つの態様では、外科コンソール100は、執刀医に患者の目の中にIOLを埋め込む手術を可能にする様に特に構成され、配置されている。このコンソール100は処置ユニット104と、それに伴うシステム操作に関連するデーターと、IOL外科処置を行っている間の達成度を表示するディスプレースクリーン106を備えたベースハウジング102を含んでいる。このコンソール100はまた、外科処置を行うのに一緒に用いられる多くの協働的サブシステムを含んでいる。例えばサブシステムは、他の中でも、足ふみペダル108、流体システム110、モーター駆動の手持ち眼内レンズ(IOL)注入装置112を含む注入器サブシステム、モーター駆動のIVポールを含む点滴(IV)ポールサブシステム114を含んでいる。
【0018】
処置ユニット104は、IOL注入工程を適切に遂行するために、異なるサブシステムの間の相互作用と関連を統括する。これを行うために、プロセッサー及びメモリーを含み、及びIOL注入手術手順を行うためのサブシステムを制御するための指令が予めプログラムされている。
【0019】
一つの例示的な実施形態では、モーター駆動の手持ちIOL注入装置112は、足踏みペダル108からの執刀医が制御するコンソール100により駆動される。それはIOLの円滑で一貫性のある注入制御を提供する。ディスプレースクリーン106は手持ち注入IOL装置112の設定と使用の便宜を図る。
【0020】
図2及び図3はIOLを眼の前嚢の中に埋め込むための手持ちIOL注入装置112の例示的な図である。図3図2に示された装置の遠位端の単なるクローズアップである。図に示すように、IOL注入装置112は、コンソール100から電力及び/または制御信号を送るケーブル組立体120と、手術のあいだ執刀医により握られるハンドグリップとして機能出来る主ハウジング122を含んでいる。ハウジングは遠位または前端と、近位または後端を含んでいる。実施例に示す様に、ケーブル組立体120は後端に配置されている。ケーブル組立体120を有する代わりに、ある実施形態では、装置及び/または1以上のスイッチ、または装置の運転を制御するための他のユーザー入力装置に電気動力を供給するために、1以上のバッテリーを主ハウジング122の中に含むことも出来る。例示的なIOL注入装置112はまた、ハウジング122の遠位または前端に置かれたカートリッジ取り付け具124を形成し、取り外し可能な形で取り付けられた挿入カートリッジ130を保持している。ある実施形態の挿入カートリッジ130は、使い捨ての重合体構成要素で、折り畳まれていないIOLレンズ126を収納するのに適合し、プランジャー(図4)の先端132がハウジング122の本体から前に移動し、挿入カートリッジ130を通して前進するにつれ、レンズを折り畳んで移動させる。
【0021】
図4〜6は本発明のある実施形態に従ったIOL注入装置112の断面図を示している。最初に図4を参照して、IOL注入装置112はプランジャー先端132、プランジャー134、内側にねじを切った管状継手136、雄継手137及び電気駆動システム138を含んでいる。プランジャー134は駆動システム138の作動の間は、内側にねじを切った管状継手136の内部を長手方向に移動するように構成されている。電気駆動システム138は電気モーター140と、溶接物の内部に設置されて、管状継手136を回転させるように構成されている歯車セット142を含んでよい。ここに示す例示的な実施形態では、管状継手136の内側ねじは雄継手137の外側に切ったねじとプランジャー134の後端で勘合し、プランジャー134及びプランジャー先端132を、駆動システム138の励起に応答して、管状継手136の内部を直線状に移動させる。しかし、プランジャー134を電気モーターで進めるための別の電気駆動システムも考えられる。
【0022】
ある実施形態では、電気駆動システム138は、歯車セット142に回転トルクを与えるブラシレスDCモーター140で形成され順に管状継手136を回転させるように、プランジャー134を延在させ引き込む。歯車セット142は予め決定した減速比、例えば、125:1に従ってモーターの角速度を減少するのに有効である。このことは駆動システム138からの使用可能なトルクを増加させ、そしてIOL注入手順のための適切な速度までプランジャー134の直線的な動きを遅くする。IOL注入装置112の運転に関連する更なる詳細は、参考としてここに組み込まれるBoukhnyら、米国特許出願第12/249,996に見ることが出来る。
【0023】
図5図6はそれぞれ、プランジャー138を備えたIOL注入装置112が完全に引き込まれた位置と、部分的に延在した位置の長手方向の断面図を示す。部分的に伸ばされた位置を示す図6では、プランジャー先端132が丁度挿入カートリッジ130の中へ通過し始めたところで、ここでは挿入カートリッジの中に保持されたIOLに係合し、IOLをカートリッジの遠位端へ向かって前進させ、最終的には患者の中に進める。
【0024】
挿入カートリッジ130は使用可能な位置で、IOL126(図3)を保持している。挿入カートリッジ130は、プランジャー先端132が軸方向に前進し、挿入カートリッジ130の近位端でIOLに係合するようにIOL注入装置112の上に載せられる。プランジャー134が挿入カートリッジ130を通して前進するに連れ、プランジャーはIOLをテーパーになった通路を通して押し、それがIOLを変形させて、狭い幅の伸ばされた状態になる。この形でIOLは挿入カートリッジ130の端部から押し出され、患者の眼の埋め込み場所に入り、ここで再膨張してその本質的に円筒の形を取る。
【0025】
図7はIOLを患者の眼の中に埋め込むための例示的な制御回路190を開示している。制御回路190はモーター140へ掛かる負荷の指標として電気モーター電流を監視し、そして連続して執刀医にフィードバックを提供し、及び/または負荷をベースにして、悪い状態が検出された場合、プランジャー134(図4)の動きを修正または停止する。この制御回路190はモーター電流フィードバックを検出し、そして監視する。電流フィードバックは直接的にモーターのトルクに比例的で、負荷をあらわす。従ってモーターの負荷が増加するにつれ、またはモーターを運転するのに要求される力が増加するにつれ、電流は増加する。同様に、モーターに掛かる負荷が減少するにつれ、またはモーターを運転するのに要求される力が減少するにつれ、電流は減少する。この監視により、モーターの実際の負荷は、挿入手順が期待された基準に基づいているかどうかの指針を提供することが出来る。
【0026】
制御回路190は、制御器200、駆動器202、サンプル回路204、及び可聴指示器206を含んでいる。制御器200は制御処理部分を含むことが出来、及び其処に1以上の、貯蔵された望ましいモーター負荷プロファイルを有するメモリーが含まれているか、備えられていることもある。モーター負荷プロファイルは最適なIOL挿入手順の間の、モーター140の期待される負荷を示すプロファイルであり得る。例えば、眼内レンズの形状と、挿入カートリッジの中に注入される粘弾性の容量に起因して、適度に負荷されたカートリッジは、プランジャーに対し、特別で固有な粘性抵抗を有し、それにより、モーター140へ既知の負荷を掛ける。詰め込んだカートリッジに比べると、空のカートリッジはまた、異なった荷重特性を有している。DCモーターに於けるトルクと負荷の間の関係により、負荷の増加はトルクの増加、及び与えられた駆動レベルに対し、高いモーター電流として反映される。逆に、負荷の減少は、トルクの減少と、モーター電流の減少として反映される。モーター140により引かれる電流は、モータートルクに直接的に比例的なので、電流レベルはトルクと、従って適用される負荷を決定するために監視することが出来る。
【0027】
最適な手順では、IOL挿入手順を通してのモーターの実際の負荷は、モーター負荷プロファイルに設定された期待される負荷を模倣する。モーターの期待される負荷からの実際の負荷の偏位は、眼内IOLカートリッジまたは負荷の予想外の偏位などの他の状態の悪化または欠陥のある状態の表れである場合がある。
【0028】
ある実施形態では、期待される負荷は、1以上の閾値または特定の期待される負荷を包含したもので決められてもよい。これらは期待される負荷の範囲を提供するであろう。実際の負荷が期待した負荷から外れているとすると、システムは執刀医にリアルタイムでフィードバックする。停止の閾値のような修正閾値は、期待される負荷からの実際の負荷の偏位が、修正閾値を越える場合には、停止、またはプランジャーの動きを防ぐ修正を含んでもよい。例えば、修正閾値は予め設定された期待される負荷からの補正である場合もある。ある実施形態では、期待される負荷及び修正閾値は、例えば工場でのキャリブレーションにより予め決められて、メモリーに貯蔵されたまたは制御器200にアクセス可能である。(当業者は、メモリーは、プログラムメモリー、または別の工場で決められた係数を貯蔵するメモリー、または類似のメモリー、ROM(読取専用メモリー)、PROM(プログラム可能読取専用メモリー)EEPROM(電気的に消去可能なプログラム可能読取専用メモリー)フラッシュ、その他を含む何らかの幾つかの従来型のメモリーで形成してもよいことを理解している。)
【0029】
ある実施形態では、修正の閾値は多数の閾値で形成されている。例えば、実際の負荷が第1量だけ期待される負荷から偏位していると、制御器200はプランジャーの速度を落とすかも知れない。実際の負荷がより大きな第2量だけ期待した負荷から外れていると、制御器200はプランジャーを停止させるかも知れない。実際の負荷の偏位が期待された負荷の方に戻ると、速度は当初の速度に増加するかも知れない。多数の閾値が微細な調節と制御のために貯蔵されている。
【0030】
制御器200は、モーター140の整流のためのパルス幅変調(PWM)制御信号を発生し、そして駆動器202はディジタル制御信号を固定子巻き線入力A、B及びCに適用するアナログ駆動信号に変換する。
【0031】
サンプル回路204はモーターの巻き線入力A,B及びCに送る電流を監視する。ある実施形態では、サンプル回路204は、駆動器202でのモーター電流を制御器200で用いるディジタル信号に変換するためのアナログ〜ディジタル変換器を含んでいる。ある実施形態では、サンプル回路204は、制御器200で発生されるPWM制御信号と同調させることが出来る。しかし当業者は他の実施形態でも、モーター入力は全体の負荷サイクルを通して抽出されてもよいこと、及び電流信号は制御器200の中のディジタルプロセッサーで隔離されてもよいことを理解している。
【0032】
サンプル回路204は抵抗器212を含む接続を介して駆動器202に繋がっている。増幅器または調整回路214はサンプル回路204のより正確な検出のための電流値を処理する。その後電流値フィードバックは制御器200に連絡される。
【0033】
ある実施形態では、制御器200、駆動器202、及びサンプル回路204は外科コンソール100(図1)の上に保持され、モーター140への連絡はケーブル組立体120(図2)を介して起こっている。別の実施形態では、回路が手持ちIOL注入装置そのものの上に保持されており、一方さらに別の実施形態では、回路はシステムの周囲の何れかの場所に配置されている。別の態様では、サンプル回路204は制御器200の一部である。制御器200は外科コンソール100の主処理装置ユニット104の一部を形成しているかまたは別である場合がある。
【0034】
可聴指示器206はコンソール100の上、IOL注入装置112の上、または執刀医に聞こえる他の場所でもあり得る。それは検出された負荷に関連する可聴フィードバックを提供することにより、執刀医に感覚信号を提供するために構成されている。ある実施形態では、可聴フィードバックは負荷変化に応じてピッチが変わる連続したトーンである。例えば、負荷が許容出来る範囲内の初期の値であれば、可聴フィードバックは第1ピッチのトーンを発生する。負荷が変わるにつれ、ピッチも対応して変わる。増加するまたはより高いピッチは、増加するまたはより高い負荷を示し、減少するまたはより低いピッチは、減少するまたはより低い負荷を示すことが出来る。ある実施形態では、トーンの変化だけが、期待した負荷からの実際の負荷の偏位を示す。それに応じて、これらの実施形態では、負荷はプランジャーがIOLに係合すると変化することが予想されるので、制御器200は可聴指示器を相対的に一定のピッチを有するように制御する場合がある。同様に、実際の負荷が期待された負荷から偏位すると、執刀医に変化した状態を警告するためにピッチを増加または減少することが出来る。
【0035】
別の態様では、連続したトーンの代わりに、可聴指示器206は断続したトーンを発することも出来、ここでトーンの周波数は負荷が増加すると増加し、負荷が減少すると減少する。それに応じて、執刀医は如何に早くトーンがビープするかで現在の負荷に関連するリアルタイムフィードバックを受け取ることが出来る。
【0036】
可聴指示器206は増幅器218とスピーカー220で形成されてよい。可聴指示器206に加えて、システムのある実施形態では、負荷が許容出来る量以上に期待された範囲を越える場合には、自動的にIOLの前進を止めるように設計することが出来る。
【0037】
他の実施形態は、状態が予期された範囲の外側に落ちる、または修正閾値を越えた場合に、執刀医に警告する非可聴指示器を含んでいる。幾つかの指示器は、フラッシュ出来る指示灯のような可視指示器、またはディスプレースクリーンの上のメッセージである。更に他には、足踏みペダルの振動のような触覚指示器を提供する。さらに別の指示器も同じく考えられる。
【0038】
与えられた瞬間の電流レベルをモーター負荷プロファイルの予め決められた閾値と比較することにより、制御器200はモーターがその期待された負荷で運転しているかどうかを検知することが出来る。従って制御器200は運転の欠陥を検知し、そして自動的に応える(例えばシャットダウンすることにより)、及び/またはユーザーへのフィードバックを提供する。
【0039】
例えば、要求される粘弾性より少なく含有している負荷カートリッジは、結果として、少ないトルクになり、対応する電流レベルが期待されるレベルより低くなり、そのような場合には、制御器200はユーザーに通知出来る。逆に、トルクと対応する電流値が期待されるレベルより高い時は、閉塞したカートリッジを示唆している。この場合もやはり、装置の運転は停止出来、ユーザーに適切な警告が提供される。
【0040】
ある実施形態では、プランジャー134の長手方向の位置が追跡出来る。このことは、システムに挿入過程の異なる段階で検出されたトルクを関連付けることを許容する。例えば、プランジャー134の先端がカートリッジに近づくにつれ、プランジャーはより少ない抵抗で動くことが期待される。それに応じて、期待される負荷は、モーターにより引かれる低い電流に基づいて低くなる。一度プランジャーがカートリッジに係合すると、負荷、従って電流は増加する。
【0041】
さらにIOLが前進するにつれ、及び圧縮されてIOLの弾性変形が起こると、負荷は増加し続ける。ある実施形態では、プランジャーの位置はプランジャーの実際の場所に関する情報を提供する、リニアーまたはロータリーエンコーダーを用いて直接計測される。
【0042】
先行する議論を念頭に置いた上で、当業者は図8のプロセスフロー図が眼内レンズ注入装置の制御のための例示的な方法の説明であることを理解する。当業者は、この特定のプロセスフローが本発明の範囲に入る方法の多数の変化形を制限する意図ではないことを理解することは、前述の議論から明らかである。当業者は、さらに図8のプロセスフローは、ソフトウエアの中で、または制御器200の中、または制御器200に付随するプログラムメモリーに貯蔵されたファームウエア、または処理ユニット104で実行出来ることを理解し、例えばメモリーは読取専用メモリー(ROM)、プログラム可能な読取専用メモリー(PROM)、フラッシュメモリー、磁気または光学メモリー装置または類似のものを含む1以上種々の従来型のメモリーを含んでもよい。
【0043】
いずれの場合でも、図8に示すプロセスフローはIOL注入装置112が活性化されていない状態から始まる。この装置112は302に示す様に、プランジャーの活性化がなされるべきことを示すユーザー入力をチェックする。このユーザー入力は、キーパッド、または外科コンソール100のタッチスクリーン、ケーブルでまたはコンソールを介してIOL注入装置に電気的に繋がった足踏みペダルスイッチ108で、またはIOL注入装置それ自身の本体の上の1以上のスイッチ、またはボタンなどの様々な数の従来型のユーザー入力装置で始められることが出来る。いずれの場合でも、ユーザー入力に応えて、プランジャー組立体が動かされることを示し、制御回路190は304に示されるように、表示された方向へのプランジャー134の移動を開始する。
【0044】
プランジャーが動かされるにつれ、前出の何らかの技法に従い、306に示すように電気モーター140への電流が監視される。ある実施形態では、電流レベルは監視され、そして期待される負荷、及び前出のモーター負荷プロファイルの修正閾値などの、1以上の予め決められた電流閾値と比較される。
【0045】
308で、可聴指示器206は執刀医が聞くことが出来る可聴音を発生する。その音は現在の電流レベルを示し、モーター140の負荷を示す。ある実施形態では、その音は執刀医に発せられる連続音で、一方別の実施形態では、トーンは断続ビープ音である。別の可聴指示器もまた考えられる。ある実施形態では、例えばディスプレー上の警告及び足踏みペダルを通した振動などの非可聴指示器もまた考えられる。
【0046】
310で、制御器200は可聴指示器206が発生する音を、監視された電流フィードバックに従って変調する。その際、執刀医はIOL挿入過程の間のプランジャーの相対的な負荷の情報を提供され続ける。一つの実施例では、トーンは期待された負荷からの実際の負荷の偏位の量に基づいて変調される。その結果、可聴トーンは実際の負荷の変化にも係わらず、挿入過程を通して一貫性を保つことが出来る。例えば、プランジャーの負荷はプランジャーがIOLに向かって前進している間は低く、期待される負荷も同様に低い。負荷はプランジャーがIOLと係合すると増加し、期待される負荷も同じく増加する。従って、負荷が変化したにもかかわらず、実際の負荷の期待された負荷からの偏位は、相対的に一定であり得る。それに応じて、記述された実施形態では、トーンは実際の負荷と期待された負荷とが、全く同じ相対的な比率で変化する間は相対的に一定に維持される。別の実施形態では、トーンは期待される負荷からの偏位の量に係わらず負荷の変化につれて変化する。
【0047】
ある実施形態は、挿入過程の間、連続したトーンを使用し、一方別の実施形態は、断続的なビープ音を採用する。ビープの周波数またはビープの比率は、増加する負荷または減少する負荷を示すことが出来る。例えば、負荷が増加するにつれ、ビープの比率も同様に増加し、負荷が減少するにつれ、ビープの比率も同じく減少する。ビープの比率は、期待された負荷からの偏位、または単純に負荷の変化に基づいていることもある。
【0048】
312に示されているように、欠陥状態が検出された場合、プランジャーの動きは316に示されている様に直ちに中断される。前述のように、検出された欠陥状態は、予め決められた閾値レベルに比べてプランジャーの前進または後退の動きに対する過剰な抵抗、または予め決められた閾値レベルに比べてプランジャーの前進または後退の動きに対する不十分な抵抗であるかもしれない。これらのどの場合に於いても、欠陥を検出するための閾値のレベルは、上に示された様に、プランジャーの追跡された長手方向の位置に基づいて変わってもよい。さらに運転上の閾値レベルは基準抵抗線または無負荷状態の間に決められた運転速度に従って調節出来る。
【0049】
ある実施形態では、プランジャーの動きは欠陥状態に基づいて減少または増加される。ある実施形態は、貯蔵された複数の修正閾値を有し、ここで、中間の修正閾値を越える検出された電流は、プランジャーの動きの速度を減少させる結果となり、及び更なる修正閾値を越える検出された電流は、プランジャーの動きを止める結果となる。検出された電流が中間の修正閾値を越えたところから戻ると、プランジャー速度は当初の速度に増加することが出来る。この中間修正閾値は、従って停止欠陥値は運転閾値の間の値を有することが出来る。
【0050】
ある実施形態では、検出された欠陥に応えるプランジャーの動きの修正は、欠陥を指摘するユーザーに対する追加の警告を伴うか、または欠陥を指摘する追加の警告が続く。例えば、ある場合では、欠陥の特定の形を認定するメッセージ(例えば、「詰まったカートリッジ」、「空のカートリッジ」、または同様のもの)は外科コンソール100のディスプレー106を介してユーザーに提供されることが出来る。欠陥状態が312で検出されない場合は、314に示す様にユーザー入力の状況がチェックされる。ユーザー入力がプランジャーの動きが修正されるべきであることを示しているのであれば、それでモーターを遅くすることが出来、及びプランジャーの移動比率は316に示されるように、それに応じて影響される。ユーザー入力が、修正はプランジャーの動きを停止するべきことを示しているのであれば、モーターは非活性化され、プランジャーの動きは止められる。さもなければ、314に示す様に、プランジャーの動きは続き、そして先行する動きは、欠陥が起こるか、またはユーザー入力がプランジャー組立体の動きが停止されるべきであることを示すかのどちらか迄繰り返される。
【0051】
前述の図8のプロセスフローのなかで、プランジャーの動きは一度始まると、ユーザー入力が停止を指示するかまたは欠陥状態が検出されるまで続くと仮定されていた。当業者は、プランジャー動作は、どちらかのまたは両側の端で、機械的停止で制限されてもよい。ある実施形態では、これらの機械的停止は、上に述べた同じ欠陥検出機構、即ちモーターへの電流レベルの監視で検出され得る。代わりに、ある実施形態は、上に述べたように、プランジャーの長手方向の位置を追跡することにより、プランジャーが機械的停止に到達するのを防ぐことが出来、そして機械的停止に到達する前に自動的にプランジャーの動きを止める。
【0052】
上に述べた様に、ある実施形態では、眼の状態を治療するために、眼の水晶体嚢の中に眼内レンズを埋め込むためのシステムを制御する方法は、(a)メモリーの中にモーター負荷プロファイルを貯蔵し、(b)眼内レンズを前進させるように構成されたモーターを有する電気で駆動される手持ちのIOL注入装置の中に置かれたレンズを前進させるための入力信号を受け取り、(c)眼内レンズを前進させ、(d)モーター電流フィードバックを監視することにより、レンズを前進させるのに要求される実際の負荷を検出し、(e)実際の負荷を貯蔵されたモーター負荷プロファイルと比較し、そして(d)実際の負荷が貯蔵されたモーター負荷プロファイルより、予め貯蔵された量が偏位していれば、眼内レンズの動きを修正することを含めることが出来る。ある実施形態では、実際の負荷の変化を示すリアルタイムで変化する可聴信号の発出を、感覚信号に含めることが出来る。ある実施形態では、可聴指示器は連続したトーンであり得る。ある実施形態では、可聴指示器は断続的なビープ音であり得る。ある実施形態では、提供される感覚的な信号は、実際の負荷からの偏位の量を示すためのリアルタイムで変化する可聴指示器の発出を含むことが出来る。ある実施形態では、眼内レンズの動きの修正は、眼内レンズの動きの停止を含むことが出来る。
【0053】
当業者は、本開示でもたらされた実施形態は、上に述べた特定の例示的な実施形態に限定されないことを理解する。この点で、説明的な実施形態が示され、記述されているとしても、上記の開示の中で、広い範囲の修正、変更、及び代用が予期されている。そのような変更例は本開示の前述の範囲から離れることなく作ることが出来ることが理解されている。それに応じて、添付された請求は広く解釈され、及び本開示に一致すると理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8