特許第6360074号(P6360074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6360074マンノース受容体選択的リシニル化カチオン性両親媒性物質及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360074
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】マンノース受容体選択的リシニル化カチオン性両親媒性物質及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 279/14 20060101AFI20180709BHJP
   C07C 277/08 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20180709BHJP
   C07H 21/00 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20180709BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20180709BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C07C279/14CSP
   C07C277/08
   A61K47/28
   A61K47/24
   A61K45/00
   C07H21/00
   A61K31/7088
   A61K31/7105
   A61K31/711
   A61K31/713
   A61P37/02
   A61P37/04
   A61K48/00
【請求項の数】19
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2015-551256(P2015-551256)
(86)(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公表番号】特表2016-511228(P2016-511228A)
(43)【公表日】2016年4月14日
(86)【国際出願番号】IN2013000806
(87)【国際公開番号】WO2014106856
(87)【国際公開日】20140710
【審査請求日】2016年11月29日
(31)【優先権主張番号】0017/DEL/2013
(32)【優先日】2013年1月3日
(33)【優先権主張国】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】596020691
【氏名又は名称】カウンスィル オブ サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ
【氏名又は名称原語表記】COUNCIL OF SCIENTIFIC & INDUSTRIAL RESEARCH
(74)【代理人】
【識別番号】110002022
【氏名又は名称】特許業務法人コスモ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガル アルプ
(72)【発明者】
【氏名】モク ゴーピクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】アガワン サチン バラード
(72)【発明者】
【氏名】チョウドリー アラビンダ
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−520962(JP,A)
【文献】 特表2011−529912(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035557(WO,A1)
【文献】 Biomaterials,2012年,33,6220−6229
【文献】 J. Med. Chem.,2005年,48,812−820
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 279/14
C07C 277/08
A61K 31/7088〜713
A61K 45/00
A61K 47/24〜28
A61K 48/00
A61P 37/02〜04
C07H 21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるカチオン性両親媒性化合物であって、
式中、Rは、下記化学式(2)で表されるシキモイル又は下記化学式(3)で表されるキノシルであり
及びRはそれぞれ独立して水素又は親油部分であり、R及びRは同時に水素ではなく、
は独立して水素又はC1〜C5アルキルであり、
Xは任意で塩素又は臭素から選択され、
前記親油部分はC8〜24アルキル、モノ−、ジ−及びトリ不飽和アルケニルから成る群から選択される、カチオン性両親媒性化合物。
【請求項2】
下記化学式(4)で表されるC4998
又は、下記化学式(5)で表されるC49100
である請求項1に記載のカチオン性両親媒性化合物。
【請求項3】
DNAワクチンのインビボ送達に使用されるものである請求項1に記載のカチオン性両親媒性化合物。
【請求項4】
下記化学式(1)で表される化合物の調製方法であって、
(式中、Rは、下記化学式(2)で表されるシキモイル又は下記化学式(3)で表されるキノシルであり、
及びRはそれぞれ独立して水素又は親油部分であり、R及びRは同時に水素ではなく、
は独立して水素又はC1〜C5アルキルであり、
Xは任意で塩素又は臭素から選択され、
前記親油部分はC8〜24アルキル、モノ−、ジ−及びトリ不飽和アルケニルから成る群から選択される)
(a)下記化学式IIの化合物をL−リシン誘導体と極性非プロトン性溶媒中で結合させることで下記化学式IIIの化合物を得て、続く酸脱保護により下記化学式IVの化合物を得
るステップと、
(b)前記ステップ(a)で得られた化学式IVの化合物をシキミ酸又はキナ酸と結合させることで下記化学式Vの化合物を得るステップと、
(c)前記ステップ(b)で得られた化学式Vの化合物を脱保護することで下記化学式VIの化合物を得て、続く非プロトン性溶媒中での前記化学式VIの化合物をグアニジニル化して化学式VIIの化合物を得るステップと、
(d)前記ステップ(c)で得られた化学式VIIの化合物をヨウ化メチルで四級化する
ことで下記化学式VIIIの化合物を得て、続く極性プロトン性溶媒中での塩基媒介脱保護により下記化学式IXの化合物を得て、最後の抽出及びイオン交換により下記化学式Iの化合物を得るステップと、を含み、
式中、R及びR’が、下記化学式(2)で表されるシキモイル又は下記化学式(3)で表されるキノシルである調製方法。
【請求項5】
前記化学式IIの化合物が8〜24個の炭素原子を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)及びステップ(c)の前記極性非プロトン性溶媒が、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン及びトリエチルアミンから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が、炭酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド及びカリウムメトキシドから成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(d)における塩基媒介脱保護用の前記極性プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール及び水とメタノールとの混合物から成る群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
請求項1に記載のカチオン性両親媒性化合物、共脂質及びポリアニオン性化合物を生理学的に許容可能な添加剤と共に含む製剤。
【請求項10】
ヘルパー脂質をさらに含み、前記ヘルパー脂質がコレステロール、ホスファチジルエタノールアミン(phosphatidylethanolaine)及びホスファチジルグリセロールから成る群から選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記共脂質が、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルホスホコリン、中性ホスファチジルエタノールアミン、中性ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、コレステロール及び1,2−syn−ジオレオイル−グリセロールホスファチジルエタノールアミン(DOPE)から成る群から選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
前記カチオン性両親媒性化合物の前記共脂質に対するモル比が1:1〜3:1である、請求項9に記載の製剤。
【請求項13】
前記ポリアニオン性化合物が、核酸、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド及び薬剤から成る群から選択される、請求項9に記載の製剤。
【請求項14】
前記核酸が、プラスミド、リボ核酸、リボソームRNA、RNA又はDNAのアンチセンスポリヌクレオチド、ゲノムDNA、cDNA及びmRNAのポリヌクレオチドから成る群から選択される、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
皮膚、皮下、皮内、経鼻、静脈内、筋肉内、腹腔内及び肺経路で投与される、請求項9に記載の製剤。
【請求項16】
25〜100マイクロリットルの範囲で細胞内投与される、請求項9に記載の製剤。
【請求項17】
50000個の細胞に対して0.1〜0.5マイクログラムのDNAの比で細胞に投与される、請求項9に記載の製剤。
【請求項18】
前記カチオン性両親媒性化合物の範囲が9.0〜0.3マイクログラムであり、脂質対DNA比が0.3:1〜9:1である、請求項9に記載の製剤。
【請求項19】
免疫応答を方法において生じさせる方法であって、免疫原をコードするポリヌクレオチドと共に請求項9に記載の製剤を少なくとも1匹のマウスに投与することで少なくとも1匹の免疫化マウスを生み出すことを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子免疫化(genetic immunization)に有用なマンノース受容体選択的リシニル化(lysinylated)カチオン性両親媒性物質に関する。本発明は特には、グアニジン、そしてマンノース模倣シキモイル(shikimoyl)、キノイル(quinoyl)及びマンノシル頭部基の両方を有する新規なリシニル化カチオン性両親媒性物質系列に関する。本発明はさらに、マンノース受容体選択的リシニル化カチオン性両親媒性物質の調製方法に関する。本発明は、遺伝子免疫化において、抗原提示細胞(APC)に対してDNAワクチンをターゲティング可能なカチオン性両親媒性物質のリポソーム製剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
抗原をコードしているDNAの投与であるDNAワクチン接種が、がん、感染性疾患、アレルギーを含めた多くの複雑な障害を治療するための新たに登場した治療手法として関心を集めつつある(Ishii,K.J.et al.Nature 2008;451:725−729、Rice,J.et al.Nat.Rev.Cancer.2008;8:108−120)。DNAワクチンは、体液性及び細胞性の両方の免疫応答を誘起することができ、また同等の弱毒ウイルスより安全かもしれないと考えられている(Gurunathan,S.et al.Annu.Rev.Immunol.2000;18:927−974、Liu,M.A.J.Int.Med.2003;253:402−410)。しかしながら、臨床試験により、ネイキッドDNAの局所注射により誘起される免疫応答は不十分であると明らかになった(Roy,M.J.et al.Vaccine,2000;19:764−778、Rosenberg,S.A.et al.Hum.Gene Ther.2003;14:709−714)。研究から、樹状細胞(DC)、マクロファージ等の抗原提示細胞(APC)のトランスフェクション及び続く活性化は遺伝子免疫化に続く免疫の獲得における重要な事象であると判明している(Akbari,O.et al.J.Exp.Med.1999;189:169−178、Chattergon,M.A.et al.J.Immunol.1998;160:5707−5718)。Mountain及び共同研究者は、カチオン性ペプチドと腫瘍関連抗原をコードしている遺伝子との複合体をトランスフェクトした単球由来樹状細胞でマウスの免疫化を行うと、マウスがメラノーマ細胞による致死的な攻撃から保護されることを実証した(Irvine,A.S.et al.Nat.Biotechnol.2000;18:1273−1278)。
【0003】
樹状細胞、マクロファージ等の抗原提示細胞は、抗原タンパク質をそのプロテアソーム複合体を介して小さいペプチド断片へとプロセシングする。次に、これらの小ペプチド断片はMHCクラスI及びMHCクラスII分子を介して免疫細胞(CD8+及びCD4+T細胞)に提示され、その結果として細胞障害性Tリンパ球(CTL)及び体液性応答が誘起される(Steinman,R.M.Annu.Rev.Immunol.1991;9:271−296、Banchereau,R.M.and Steinman,R.M.Nature 1998;392:245−252、Germain,R.N.Cell 1994;76:287−299、Akbari,O.et al.J.Exp.Med.1999;189:169−178、Chattergon,M.A.et al.J.Immunol.1998;160:5707−5718、Banchereau,J.and Steinman,R.M.Nature 1998;392:245−252)。しかしながら、抗原提示細胞のトランスフェクションは困難である。カチオン性マイクロパーティクル(Hedley,M.L.et al.Nat.Med.1998;4:365−368、Singh,M.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2000;97:811−816)、カチオン性リポソーム(Perrie,Y.et al.Vaccine 2001;19:3301−3310)及びカチオン性ペプチド(Irvine,A.S.et al.Nat Biotechnol 2000;18:1273−1278)等をエクスビボでのAPCのトランスフェクションに使用することが過去に報告されている。抗原をコードしているDNAをカチオン性リポソームを介して送達することでAPCの直接トランスフェクションを行って免疫応答の効力を上昇させようとの試みがなされてきた(Gregoriadis,G.et al.FEBS Lett.1997;402:107−110、Klavinskis,L.S.et al.Vaccine 1997;15:818−820,Perrie,Y.et al.Vaccine 2001;19:3301−3310、Hattori,y.et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.2004;317:992−999)。カチオン性リポソームは、その非毒性で生体適合性である性質から、他のDNA送達手段より大いに有利である。
【0004】
DNAワクチン接種の有効性を高めるのに有望なアプローチは、APCに対する、マンノース受容体(細胞表面で発現する180kDaでマルチドメインの独特な膜貫通受容体)を介したDNAワクチンのターゲティングをベースとしている(Sallusto,F.et al.J.Exp.Med.1995;182:389−400)。過去に、Srinivas,R.らは、マンノース模倣キナ酸及びシキミ酸頭部基を有するカチオン性両親媒性物質がDNAを抗原提示細胞にマンノース受容体を介してターゲティングできることを実証した(Srinivas,R.et al.J.Med.Chem.2010;53:1387−1391)。同じ研究において、メラノーマ腫瘍関連抗原(MART1)をコードしているプラスミドDNAとマンノース模倣キナ酸及びシキミ酸頭部基を有する2種の新規な両親媒性物質のリポソームとの静電複合体(リポプレックス)を事前にトランスフェクトした自家DCでの免疫化により、免疫化した同系のマウスにおいて、致死的なメラノーマ腫瘍による攻撃に対する極めて高い防御免疫が得られることが実証された(Srinivas,R.et al.J.Med.Chem.2010;53:1387−1391)。より最近では、Srinivas,R.らは、樹状細胞をベースとした遺伝子免疫化で使用するための、マンノース模倣シキミ酸及びキナ酸頭部基を有するマンノース受容体特異的リシニル化カチオン性両親媒性物質を開発した(Srinivas,R.et al。インド国特許出願第2170/DEL/2010号明細書)。しかしながら、樹状細胞をベースとした遺伝子免疫化法では時間がかかり且つ費用効率が悪いステップを数多くたどる。自家樹状細胞(DC)をレシピエントから苦心して単離する必要がある。次に、単離したDCにエクスビボ(生体外)で対象となるDNAワクチンをトランスフェクトする必要があり、最後にエクスビボでトランスフェクションを行ったDCをレシピエントの体内に再度移植し直す必要がある。言い換えると、現在行われている、エクスビボでの樹状細胞のトランスフェクションをベースとした遺伝子免疫化手順は労働集約的であり、大きい規模で行うにはおそらくコストが高くなりすぎる。そのため、DNAを送達するためにエレクトロポレーション技法を用いて、Steinman及び共同研究者は、インビボの環境下でDCに対してDNAワクチンをターゲティングすることにより遺伝子免疫化の有効性を強化することに成功した。このアプローチは、DC限定抗原取り込み受容体DEC205に特異的な抗原タンパク質及び単鎖Fv抗体(scFv)をコードするDNAワクチンの構築をベースとしている(Nchinda,G.et al.J.Clin.Invest.2008;118:1427−1436、Nchinda,G.et al.Proc.Natl Acad.Sci.USA.2010;107:4281)。しかしながら、抗原タンパク質及びscFvの両方をコードするそのようなDNAワクチンの大規模な構築は費用効率が良いものにはなりそうにない。より最近では、Hashida及び共同研究者が、遺伝子免疫化におけるDCのインビボでの形質導入のための、マンノース受容体選択的及び超音波応答性マンノシル化リポソームの開発を報告した(Un K.et al.Biomaterials 2010;31:7813−7826、Un K.et al.Mol Pharm 2011;8:543−554)。
【0005】
モデルDNAワクチンとしてp−CMV−β−gal(β−ガラクトシダーゼ酵素をコード)を使用して、本発明は、p−CMV−β−galと、グアニジン及びマンノース模倣シキモイル頭部基の両方を有する本明細書に記載のマンノース受容体選択的リシニル化カチオン性両親媒性物質のリポソームとの静電複合体のマウスにおける直接インビボ投与(すなわち、自家DCの単離が不要)が、β−gal抗原に対する細胞性及び体液性の両方の免疫応答を引き出すのに極めて効率的であることを開示する。本発明は、グアニジン及びマンノース模倣シキモイル頭部基の両方を有する本明細書に記載のリシニル化カチオン性両親媒性物質の、ヒト悪性メラノーマの大部分で発現する2種のヒトメラニン形成細胞系列特異的抗原であるGp100及びチロシナーゼをコードしているDNAワクチンを使用した遺伝子免疫化における応用例も開示する(Coulie P.G.et al.J Exp Med 1994;180:35−42、Kawakami Y.et al.Proc Natl Acad Sci USA 1994;91:3515−9、Topalian S.L.et al.Proc Natl Acad Sci U S A.1994;91:9461−9465、Brichard V.et al.J.Exp Med.1993;178:489−95)。これらの抗原は、そのマウスカウンターパートとアミノ酸配列同一性をそれぞれ77%、82%共有している(Zhai Y et al.J Immunother 1997;20:15−25、Colella A.T.et al.J.Exp Med.2000;191:1221−1231)。本発明は、DNAワクチンであるp−CMV−gp100及びp−CMV−チロシナーゼ(それぞれメラノーマ抗原gp−100及びチロシナーゼをコード)とグアニジン及びマンノース模倣シキミ酸頭部基の両方を有する本明細書に記載のリシニル化カチオン性両親媒性物質のリポソームとの静電複合体(リポプレックス)での直接インビボ免疫化により、免疫化マウスにおいて、長期間にわたる(腫瘍チャレンジから100日)抗腫瘍効果が侵襲性メラノーマ腫瘍による攻撃に対して得られることを開示する。本明細書に記載の単純で非ウイルス性のインビボDCターゲティング系は、遺伝子免疫化において、長期間にわたる免疫応答の誘起に将来、利用し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】インド国特許出願第2170/DEL/2010号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Ishii,K.J.et al.Nature 2008;451:725−729
【非特許文献2】Rice,J.et al.Nat.Rev.Cancer.2008;8:108−120
【非特許文献3】Gurunathan,S.et al.Annu.Rev.Immunol.2000;18:927−974
【非特許文献4】Liu,M.A.J.Int.Med.2003;253:402−410
【非特許文献5】Roy,M.J.et al.Vaccine,2000;19:764−778
【非特許文献6】Rosenberg,S.A.et al.Hum.Gene Ther.2003;14:709−714
【非特許文献7】Akbari,O.et al.J.Exp.Med.1999;189:169−178
【非特許文献8】Chattergon,M.A.et al.J.Immunol.1998;160:5707−5718
【非特許文献9】Irvine,A.S.et al.Nat.Biotechnol.2000;18:1273−1278
【非特許文献10】Steinman,R.M.Annu.Rev.Immunol.1991;9:271−296
【非特許文献11】Banchereau,R.M.and Steinman,R.M.Nature 1998;392:245−252
【非特許文献12】Germain,R.N.Cell 1994;76:287−299
【非特許文献13】Hedley,M.L.et al.Nat.Med.1998;4:365−368
【非特許文献14】Singh,M.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2000;97:811−816
【非特許文献15】Perrie,Y.et al.Vaccine 2001;19:3301−3310
【非特許文献16】Gregoriadis,G.et al.FEBS Lett.1997;402:107−110
【非特許文献17】Klavinskis,L.S.et al.Vaccine 1997;15:818−820
【非特許文献18】Hattori,y.et al.Biochem.Biophys.Res.Comm.2004;317:992−999
【非特許文献19】Sallusto,F.et al.J.Exp.Med.1995;182:389−400
【非特許文献20】Srinivas,R.et al.J.Med.Chem.2010;53:1387−1391
【非特許文献21】Nchinda,G.et al.J.Clin.Invest.2008;118:1427−1436
【非特許文献22】Nchinda,G.et al.Proc.Natl Acad.Sci.USA.2010;107:4281
【非特許文献23】Un K.et al.Biomaterials 2010;31:7813−7826
【特許文献2】Un K.et al.Mol Pharm 2011;8:543−554
【特許文献3】Coulie P.G.et al.J Exp Med 1994;180:35−42
【特許文献4】Kawakami Y.et al.Proc Natl Acad Sci USA 1994;91:3515−9
【特許文献5】Topalian S.L.et al.Proc Natl Acad Sci USA.1994;91:9461-9465
【特許文献6】Brichard V.et al.J.Exp Med.1993;178:489−95
【特許文献7】Zhai Y et al.J Immunother 1997;20:15−25
【特許文献8】Colella A.T.et al.J.Exp Med.2000;191:1221−1231
【発明の目的】
【0008】
本発明の主な目的は、遺伝子材料を抗原提示細胞に効率的に送達するための、グアニジン、そしてマンノース模倣シキミ酸及びキナ酸頭部基を有する新規なリシニル化カチオン性両親媒性物質並びにその調製方法を提供することである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質のリポソームとモデルDNAワクチンとの複合体の細胞取り込みを抗原提示細胞のマンノース受容体が媒介することを示すことである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、マンノース模倣頭部基を有する本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質から調製されたリポソームとモデルDNAワクチンとの複合体が、マンノシル頭部基を有する対応するカチオン性両親媒性物質のリポソームから調製されるリポプレックスにより引き出されるものより高い細胞性及び体液性免疫応答を引き出すことを示すことである。
【0011】
本発明のさらに別の目的は、グアニジン及びマンノース模倣シキモイル頭部基を有する本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質から調製されるリポソームと、gp100及びチロシナーゼメラノーマ抗原をコードしているDNAワクチンとの複合体でのマウスの直接インビボ免疫化が、免疫化マウスにおいて長期間にわたる抗腫瘍(メラノーマ)免疫応答を誘起できることを示すことである。
【発明の概要】
【0012】
したがって、本発明は、カチオン性両親媒性化合物に関し、
式(I):
【0013】
【化1】
【0014】
式中、Rは、シキモイル、キノシル(quinosyl)及びマンノシル基:
【0015】
【化2】
【0016】
から成る群から選択され、
及びRは独立して水素又は親油部分であり、R及びRは同時に水素ではなく、
は独立して水素、C〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシ及びC〜Cアミノであり、
Xは任意で塩素又は臭素から選択され、
親油部分はC8〜24アルキル、モノ−、ジ−及びトリ不飽和アルケニルから成る群から選択される。
【0017】
本発明のある実施形態において、化合物は、
4998
【0018】
【化3】
【0019】
49100
【0020】
【化4】
【0021】
50103
【0022】
【化5】
【0023】
から成る群から選択される。
【0024】
本発明のさらに別の実施形態において、化合物は、DNAワクチンのインビボ送達に使用される。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態において、式Iの化合物の調製方法は、以下の:
(a)式IIの化合物をL−リシン誘導体と極性非プロトン性溶媒中で結合させることで式IIIの化合物を得て、続く酸脱保護により式IVの化合物を得るステップと、
(b)ステップ(a)で得られた式IVの化合物をシキミ酸、キナ酸又はマンノースと結合させることで式Vの化合物を得るステップと、
(c)ステップ(b)で得られた式Vの化合物を脱保護することで式VIの化合物を得て、続く非プロトン性溶媒中での式VIの化合物のグアニジニル化により式VIIの化合物を得るステップと、
(d)ステップ(c)で得られた式VIIの化合物をヨウ化メチルで四級化することで式VIIIの化合物を得て、続く極性プロトン性溶媒中での塩基媒介脱保護により式IXの化合物を得て、最後の抽出により式Iの化合物を得るステップ
とを含む。
【0026】
本発明のさらに別の実施形態において、式IIの化合物は8〜24個の炭素原子を有する。
【0027】
本発明のさらに別の実施形態において、極性非プロトン性溶媒は、ジクロロメタン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン及びトリエチルアミンから成る群から選択される。
【0028】
本発明のさらに別の実施形態において、塩基は、炭酸カリウム、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド及びカリウムメトキシドから成る群から選択される。
【0029】
本発明のさらに別の実施形態において、塩基媒介脱保護用の極性プロトン性溶媒は、メタノール、エタノール及び水とメタノールとの混合物を含む群から選択される。
【0030】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、式Iのカチオン性両親媒性化合物、共脂質(co−lipid)及びポリアニオン性化合物を生理学的に許容可能な添加剤と共に含む。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、ヘルパー脂質をさらに含む。
【0032】
本発明のさらに別の実施形態において、共脂質は、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルホスホコリン、中性ホスファチジルエタノールアミン又は中性ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、コレステロール、1,2−syn−ジオレオイル−グリセロールホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びコレステロールから成る群から選択される。
【0033】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤中で使用するカチオン性両親媒性物質の共脂質に対するモル比は1:1〜3:1の範囲である。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤中のカチオン性両親媒性物質の共脂質に対する好ましいモル比は1:1である。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤中で使用するポリアニオン性化合物は、核酸、タンパク質、オリゴヌクレオチド、ペプチド、タンパク質及び薬剤から成る群から選択される。
【0036】
本発明のさらに別の実施形態において、核酸は、プラスミド、リボ核酸、リボソームRNA、RNA又はDNAのアンチセンスポリヌクレオチド、ゲノムDNA、cDNA及びmRNAのポリヌクレオチドから成る群から選択される。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、皮膚、皮下、皮内、経鼻、静脈内、筋肉内、腹腔内(intraperitonial)又は肺経路で投与される。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、25〜100マイクロリットルの範囲で細胞内投与される。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、50000個の細胞に対して0.1〜0.5マイクログラムのDNAの比で細胞に投与される。
【0040】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤中のカチオン性両親媒性物質は9.0〜0.3マイクログラムであり、脂質対DNA電荷比は0.3:1〜9:1である。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、インビトロ、またインビボの両方の環境下で抗原提示細胞をトランスフェクトする。
【0042】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、市販のトランスフェクション試薬Lipofectamine 2000より効率的にmbmDCをトランスフェクトする。
【0043】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、細胞性及び体液性の両方の免疫応答を誘起する。
【0044】
本発明のさらに別の実施形態において、製剤は、適切な公知の免疫原を使用して、ヒト又は動物の体において、任意の疾患に対する長期間にわたる保護効果を示す。
【0045】
本発明のさらに別の実施形態において、免疫応答を誘起する方法であって、この方法は、式Iのカチオン性両親媒性化合物、共脂質及びポリアニオン性化合物を生理学的に許容可能な添加剤と共に含む製剤を投与することを含む。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態において、免疫応答を生じさせる方法であって、この方法は、免疫原をコードするポリヌクレオチドと共に製剤を少なくとも1匹のマウスに投与することで少なくとも1匹の免疫化マウスを生み出すことを含む。
【0047】
本発明の重要な実施形態は、抗原提示細胞への遺伝子の送達における、これらの新規なカチオン性両親媒性物質のマンノース受容体選択効率を評価することである。
【0048】
本発明の別の重要な実施形態は、本明細書で開示の製剤がマウスにおいて引き出す細胞性及び体液性の両方の免疫応答の評価である。
【0049】
本発明の最も重要な実施形態は、メラノーマ腫瘍関連抗原(gp−100及びチロシナーゼ)をコードしているプラスミドDNAと、マンノース模倣シキモイル頭部基を有する新規なリシニル化カチオン性両親媒性物質のリポソームとの静電複合体(リポプレックス)で免疫化した同系マウスにおける、侵襲性メラノーマ腫瘍に対する長期間(腫瘍チャレンジから100日)にわたる抗腫瘍効果の評価である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
スキーム1は、マンノース模倣シキモイル頭部基を有するカチオン性両親媒性物質の調製に用いる合成手順の概略図である。
スキーム2は、マンノース模倣キノイル頭部基を有するカチオン性両親媒性物質の調製に用いる合成手順の概略図である。
スキーム3は、マンノシル頭部基を有するカチオン性両親媒性物質3の調製に用いる合成手順の概略図である。
図1】単離したmbmDCにおける細胞表面MHC II、全MHC II、マンノース受容体、CD11c、CD80、HKb、CD86及びCD40を含めたDC表面マーカーの存在をフローサイトメトリにより確認している。約5x10個のmbmDCを、細胞表面MHC II、全MHC II(表面及び細胞内MHC IIの全て)に特異的な非抱合型モノクローナル抗体、マンノース受容体に対するフィコエリトリン(PE)抱合型モノクローナル抗体並びにCD11c、CD80、Hkb、CD86及びCD40に対するFITC抱合型モノクローナル抗体で染色した。MHC−IIマーカープロファイルを測定するために、抗MHC−IIモノクローナル抗体での染色後、mbmDCをFITC抱合型二次抗体で染色した。各実験を3回繰り返し、各回で同様のマーカープロファイルが観察された。
図2】1、2のmbm−DCトランスフェクション効率がマンノース受容体により媒介され、またそのマンノシル類似体3のものより高いことを示す。脂質1〜3とα5−GFPプラスミドとのリポプレックスをトランスフェクトしたmbmDCにおけるGFP発現の程度を、フローサイトメトリで測定した。(A)mbmDCにおけるトランスフェクション効率。(B)マンナン(1mg/mL)で事前に飽和させたmbmDCにおけるトランスフェクション効率。これらのトランスフェクション実験のそれぞれにおいて、約5x10個の細胞を使用し、細胞に、脂質:DNA電荷比が8:1のリポプレックスをトランスフェクトした。比較のために、各ケースにおけるトランスフェクション効率を、市販のリポソームトランスフェクションキットLipofectAmine 2000(セクションA、Bの最右のパネルに示す)のGFPリポプレックスを使用しても測定した。各実験を3回繰り返し、各回で同様のトランスフェクションプロファイルが観察された。
図3】1、2、3とモデル遺伝子ワクチンとしてのp−CMV−β−galとのリポプレックスを皮下投与した際のC57BL/6Jマウスにおける体液性及び細胞性免疫応答をまとめたものである。(A)生後6〜8週間のメスのC57BL/6マウス(それぞれ体重は20〜22g、n=4)を、1、2、3とモデル遺伝子ワクチンとしてのp−CMV−β−galとのリポプレックス(5%グルコース溶液中150μl、15μgのDNA、4:1の脂質:DNA比、7日間隔で3回)で皮下的に免疫化した。3回目の免疫化から2週間後、マウスから血清サンプルを採取し、β−gal抗体についてELISAでアッセイした。Y軸は、血清を1:200で希釈した場合に得られる吸光度を表す(カチオン性両親媒性物質1、2、3に関してP<0.005。処置していないマウスの場合の値と比較)。(B)2回目の免疫化から2週間後、脾細胞を採取し、(インビトロで再刺激することなく)速やかにELISAによるT細胞(細胞)応答に使用した(カチオン性両親媒性物質1、2、3に関してP<0.005。処置していないマウスの場合の値と比較)。
図4】p−CMV−チロシナーゼ及びp−CMV−gp100と脂質1とのリポプレックスで免疫化した同系マウスにおける長期間にわたる抗腫瘍効果を示す。(A、C)生後6〜8週間のメスの同系C57BL/6マウス(それぞれ体重は20〜22g、n=6)を、脂質1とp−CMV−チロシナーゼとのリポプレックス(A)、脂質1とp−CMV−gp100とのリポプレックス(C)、脂質1とp−CMV−β−galとのリポプレックス(15μgのDNAを含有する150μLの5%グルコース溶液を使用。4:1の脂質:DNA比、7日間隔で3回)で免疫化(皮下)した。3回目の免疫化から2週間後、約1x10個のB16F10細胞を皮下注射することでマウスを致死性メラノーマ腫瘍に曝露した。腫瘍の体積(V=1/2abであり、a=腫瘍の最大長さ、b=互いに直角で測定した腫瘍の最小長さ)を、最大29日間にわたってノギスで測定した。結果は、n=5の腫瘍の場合の平均±SDである(P<0.005対脂質1とp−CMV−β−galとのリポプレックスの場合の腫瘍サイズ)。(B、D)脂質1とp−CMV−チロシナーゼとのリポプレックス(B)、脂質1とp−CMV−Gp−100とのリポプレックス(D)、脂質1とp−CMV−β−galとのリポプレックスで免疫化(皮下)し、続いて上述したようにメラノーマ腫瘍に曝露した無腫瘍マウスの割合。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、マンノース受容体選択的リシニル化カチオン性両親媒性物質及びその調製方法を提供する。
【0052】
本発明はさらに、グアニジン、またマンノース模倣シキモイル及びキノイル頭部基の両方を有する式Iの一連の新規なリシニル化カチオン性両親媒化合物、その合成方法、抗原提示細胞におけるそのマンノース受容体特異的遺伝子導入特性の評価並びに本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質から調製したリポソームとモデルDNAワクチンとの複合体の皮下投与により引き出されるマウスにおける細胞性及び体液性の両方の免疫応答の評価に関する。
【0053】
本発明はまた、マンノース模倣シキモイル頭部基を有するカチオン性両親媒性物質が、マンノシル頭部基を有する対応するカチオン性両親媒性物質、またマンノース模倣キノイル頭部基領域を有するカチオン性両親媒性物質より、マウスにおける樹状細胞をベースとした遺伝子免疫化において細胞性及び体液性の両方の免疫応答を引き出すのにより効果的であることを開示する。最も重要なことに、ここで発明者らは、メラノーマ腫瘍関連抗原(gp100及びチロシナーゼ)をコードしているプラスミドDNAとマンノース模倣シキモイル頭部基を有する新規なリシニル化カチオン性両親媒性物質のリポソームとの静電複合体(リポプレックス)でのマウスの皮下免疫化により、免疫化マウスにおいて、長期間にわたる(腫瘍チャレンジから100日)抗腫瘍効果が侵襲性メラノーマ腫瘍に対して得られることを示す。
【0054】
マンノース受容体は、シスチンリッチアミノ末端、フィブロネクチンタイプII反復領域、8個の糖鎖認識ドメイン(CRD)、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの5種のドメインから成る180kDaの膜貫通タンパク質である。マンノース受容体は、マンノース、フコース、N−アセチルグルコサミン、グルコース等の糖をその表面に担持している分子又は微生物に8個のCRDドメインを介して選択的に結合する(Apostolopoulos,V.et al.Curr.Mol.Med.2001;1:469−474)。受容体タンパク質のD−マンノース、カルシウムイオン、2つのアスパラギン及び2つのグルタミン酸残基における水素結合及び2つのエクアトリアル、ビシナル水酸基(3位、4位)間での配位結合の広範囲にわたるネットワークがこの結合に大きく貢献している(Weis,W.I.et al.Nature 1992;360:127−134、Drickamer,K.Nature 1992;360:183−186)。このため、マンノース受容体は、細胞壁上でマンノースを発現している抗原微生物の宿主に対する防御免疫の付与において重要な役割を果たす。樹状細胞及びマクロファージの両方(抗原提示細胞(APC))がその細胞表面上で主にエンドサイトーシスマンノース受容体を発現するため(Apostolopoulos,V.et al.Curr.Mol.Med.2001;1:469−474)、カチオン性脂質:DNA複合体(リポプレックス)のAPCによる選択的な取り込みは、原則として、APC特異的リガンドでのリポソーム表面の共有結合性修飾により強化されるはずである。
【0055】
DNAワクチン接種の有効性を高めるのに有望なアプローチは、APCに対する、その細胞表面で発現する180kDaでマルチドメインの独特な膜貫通受容体であるマンノース受容体を介したDNAワクチンのターゲティングをベースとしている(Sallusto,F.et al.J.Exp.Med.1995;182:389−400)。モデルDNAワクチンとしてp−CMV−β−gal(β−ガラクトシダーゼ酵素をコード)を使用して、本発明は、p−CMV−β−galと、グアニジン及びマンノース模倣シキモイル頭部基の両方を有する本明細書に記載のマンノース受容体選択的リシニル化カチオン性両親媒性物質のリポソームとの静電複合体のマウスにおける直接インビボ投与(すなわち、自家DCの単離が不要)が、β−gal抗原に対する細胞性及び体液性の両方の免疫応答を引き出すのに極めて効率的であることを開示する。本発明は、グアニジン及びマンノース模倣シキモイル頭部基の両方を有する本明細書に記載のリシニル化カチオン性両親媒性物質の、ヒト悪性メラノーマの大部分で発現する2種のヒトメラニン形成細胞系列特異的抗原であるGp100及びチロシナーゼをコードしているDNAワクチンを使用した遺伝子免疫化における応用例も開示する(Coulie P.G.et al.J Exp Med 1994;180:35−42、Kawakami Y.et al.Proc Natl Acad Sci USA 1994;91:3515−9、Topalian S.L.et al.Proc Natl Acad Sci U S A.1994;91:9461−9465、Brichard V.et al.J.Exp Med.1993;178:489−95)。これらの抗原は、そのマウスカウンターパートとアミノ酸配列同一性をそれぞれ77%、82%共有している(Zhai Y et al.J Immunother 1997;20:15−25、Colella A.T.et al.J.Exp Med.2000;191:1221−1231)。本発明は、DNAワクチンであるp−CMV−gp100及びp−CMV−チロシナーゼ(それぞれメラノーマ抗原gp−100及びチロシナーゼをコード)とグアニジン及びマンノース模倣シキミ酸頭部基の両方を有する本明細書に記載のリシニル化カチオン性両親媒性物質のリポソームとの静電複合体(リポプレックス)での直接インビボ免疫化により、免疫化マウスにおいて、長期間(腫瘍チャレンジから100日)にわたる抗腫瘍効果が侵襲性メラノーマ腫瘍による攻撃に対して得られることを開示する。本明細書に記載の単純で非ウイルス性のインビボDCターゲティング系は、遺伝子免疫化において、長期間にわたる免疫応答の誘起に将来、利用し得る。本発明は、マンノース模倣頭部基を有する新規なカチオン性両親媒性物質系列の調製方法、またそのマンノシル化類似体の合成方法にも関する。加えて、本発明は、抗原提示細胞(APC)であるマウス骨髄由来樹状細胞(mbmDC)における、本明細書で開示のカチオン性両親媒性物質のマンノース受容体媒介遺伝子導入特性も開示する。マンノース模倣シキミ酸及びキナ酸頭部基を有する新規なカチオン性両親媒性物質は、治療用抗原をコードしている遺伝子材料をマンノース受容体を過剰発現する抗原提示細胞に送達するのに潜在的に有用である。
【0056】
本発明で開示のマンノース模倣頭部基を有するカチオン性両親媒性物質に共通する、他とは異なる新規な構造的特徴には(1)正に帯電した窒素原子に直接結合している疎水性基の存在、(2)リシン官能性を通じて正に帯電した四級化窒素原子に共有結合したマンノース受容体結合極性キナ酸頭部基の存在及び(3)リシン側鎖アミノ基に直接結合したグアニジン頭部基の存在が含まれる。これらの独特な構造的特徴が、マンノース模倣頭部基を有する本明細書で開示のカチオン性両親媒性物質のマンノース受容体媒介遺伝子導入効率に大きく貢献していると考えられる。本発明の恩恵を最も享受する可能性がある科学の領域は、遺伝子免疫化又はDNAワクチン接種の分野である。本発明の実践において、「カチオン性」とは、正電荷が四級化窒素又はプロトン化窒素原子上にあることを意味する。本発明の両親媒性物質のカチオン性は、両親媒性物質と生物学的に活性な分子、例えば核酸及び/又は細胞成分、例えば細胞膜糖タンパク質との相互作用の強化に貢献し得る。カチオン性両親媒性物質、治療的に活性な生体高分子及び/又は細胞膜成分間でのそのような高い相互作用が、治療用分子を細胞内に成功裡に輸送するにあたって重要な役割を果たし得る。
【0057】
マンノース模倣シキモイル及びキノイル頭部基を有する本発明の脂質は、ある共通の構造及び官能基を有する。そのため、このカチオン性両親媒性物質は、以下の式(I):
【0058】
【化6】
【0059】
により表され、式中、Rは、シキモイル、キノシル及びマンノシル基から成る群から選択され、R及びRはそれぞれ独立して水素又は親油部分であり、R及びRは同時に水素ではなく、
は独立して水素又はC〜Cアルキル、C〜Cヒドロキシ及びC〜Cアミノであり、
グアニジン頭部基はリシンの側鎖アミノ基に直接結合され、
Xは任意で塩素又は臭素から選択され、
親油部分はC8〜24アルキル、モノ−、ジ−及びトリ不飽和アルケニルから成る群から選択される。
【0060】
本発明の好ましい実施形態において、開示のカチオン性脂質は、R=R=n−ヘキサデシル、R=メチルであり、Xが塩化物であり、シキモイル基がマンノース模倣頭部基であるカチオン性両親媒性物質1である。
【0061】
本発明の別の第2の好ましい実施形態において、開示のカチオン性脂質は、R=R=n−ヘキサデシル、R=メチルであり、Xが塩化物イオンであり、キナ酸がマンノース模倣頭部基であるカチオン性両親媒性物質2である。
【0062】
本発明の別の好ましい実施形態において、開示のカチオン性脂質は、R=R=n−ヘキサデシル、R=メチルであり、Xが塩化物イオンであり、マンノースがマンノース模倣頭部基であるカチオン性両親媒性物質3である。
【0063】
本発明のカチオン性両親媒性物質は、水溶液中での脂質複合体又は凝集体の形成を促進する親油性ドメインを有する。疎水性ドメインの親油性及び極性キナ酸頭部基ドメインの親水性は、カチオン性脂質が水溶液に直面した場合に脂質凝集体が第2化合物の存在又は不在下で形成されるようなものである。例示的な親油性R及びR基には、(1)飽和C−C24アルキル基及び(2)1、2又は3個の二重結合を有する不飽和C−C24アルケニル基が含まれる。
【0064】
マンノース模倣シキモイル頭部基を有する本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質(X)の調製に用いる合成法を下のスキーム1において概略的に描く。シキモイル頭部基を有するカチオン性両親媒性物質(X、スキーム1)を、スキーム1に示す、開始時混合三級−一級アミン(式IIの化合物)(Kumar,V.V.らがGene.Ther.2003;10:1206−1215で過去に報告しているように、N,N−ジ−n−テトラデシルアミンをN−tert−ブチルオキシカルボニル保護2−ブロモエチルアミンとエチルアセテート中、無水炭酸カリウムの存在下で反応させ、続いて脱保護及び中和することで調製)を適当に保護したリシン誘導体(保護された側鎖及び保護されたα−アミン基を有する)とペプチド結合させることで合成した。結合後の生成物(中間体III、スキーム1)を脱保護し、得られたアミノ化合物(中間体IV、スキーム1)をトリ−O−アセチルシキミ酸誘導体とペプチド結合させると中間体V(スキーム1)が得られた。結合後の生成物(中間体V、スキーム1)を脱保護し、得られたアミノ化合物(中間体VI、スキーム1)をジ−Boc−チオウレアと塩化第二水銀の存在下で結合させると中間体VII(スキーム1)が得られた。中間体VIIを超過剰量のヨウ化メチルで四級化すると四級化中間体VIII(スキーム1)が得られ、メタノール性ナトリウムメトキシドとの反応とそれに続くAmberlyst A−26塩化物イオン交換樹脂での塩化物イオン交換によりターゲットであるカチオン性両親媒性物質X(スキーム1)が得られた。シキミ酸頭部基を有するカチオン性両親媒性物質Xの合成手順の詳細は、(代表例としての)カチオン性両親媒性物質1の合成に関する実施例1において後述する。シキミ酸頭部基を有するカチオン性両親媒性物質Xの合成(スキーム1)で採用したものと同じ合成法をマンノース模倣キナ酸頭部基を有するカチオン性両親媒性物質(Y、スキーム2)の調製に用いた。ただし、シキミ酸のトリ−O−アセチル誘導体を使用する代わりにキナ酸のO−テトラアセチル誘導体を使用した。キナ酸頭部基を有するカチオン性両親媒性物質Yの合成手順の詳細は、(代表例としての)カチオン性両親媒性物質2の合成に関する実施例2において後述する。本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質のマンノシル類似体(3)の調製で辿った合成経路を概略的にスキーム3に示す。また、カチオン性両親媒性物質3の調製に関する合成の詳細を実施例3において後述する。スキーム1〜3に示す全ての合成中間体及びターゲットであるカチオン性両親媒性物質の構造をH NMR及びESI質量分析により確認し、ターゲットであるカチオン性両親媒性物質全ての純度を、2つの異なる移動相を使用した逆相分析HPLCにより確認した。
【0065】
【化7】
【0066】
【化8】
【0067】
【化9】
【0068】
製剤
本発明は、最適量の本明細書で開示のマンノース模倣頭部基を有する式Iのカチオン性両親媒性化合物、生体高分子及び共脂質を含む新規な製剤も提供する。1種以上の追加の生理学的に許容可能な物質を本発明の医薬製剤に含めることで貯蔵用に製剤を安定させ得る又は生物学的に活性な分子を細胞内に成功裡に送達するのを促進し得る。本発明の実践における共脂質は、糖模倣(glycomimicking)両親媒性物質の1種以上との混合において有用である。コレステロールは、本明細書に記載の両親媒性物質と組み合わせて使用することで生物学的に活性な分子全般、特にはDNAワクチンをAPCに成功裡に送達するのを促進する優れた共脂質である。カチオン性両親媒性物質対共脂質の好ましいモル比範囲は1:1である。そのため、この範囲を極めて広く変化させることは当該技術分野の範囲内にある。典型的には、適当なモル比にあるカチオン性両親媒性物質及び共脂質(コレステロール又はDOPE)をガラスバイアル内のメタノールとクロロホルムとの混合物に溶解させることでリポソームを調製した。水分非含有窒素ガスを薄く流すことで溶媒を除去し、次に乾燥させた脂質膜を高真空下で8時間にわたって維持した。乾燥させた脂質膜を総体積1mlの滅菌脱イオン水中、カチオン性脂質濃度1mMで最低12時間にわたって水和させた。リポソームを1〜2分間にわたってボルテックスすることで付着している脂質膜を除去し、バスソニケータ(ULTRAsonik 28X)により2〜3分間にわたって室温で超音波処理することで多重膜ベシクル(MLV)を得た。次に、MLVをTiプローブ(Branson 450 Sonifierをデューティサイクル100%、出力25Wで使用)で1〜2分間にわたって超音波処理することで、きれいな半透明の溶液の形成により示されるように、小さな単層膜ベシクル(SUV)が得られた。本発明のカチオン性両親媒性物質を使用して細胞内に治療量で投与することができる生物学的に活性な分子には、治療的に重要な抗原又はタンパク質をコードするリボソームRNA、RNA又はDNAのアンチセンスポリヌクレオチド、ゲノムDNA、cDNA又はmRNAのポリヌクレオチドが含まれる。本明細書で開示のマンノース模倣頭部基を有するカチオン性両親媒性物質は、その代表例の1種以上を組み合わせて使用することで生物学的に活性な分子の細胞/組織への進入を促進するようにブレンドし得る。
【0069】
さらなる実施形態において、本発明で開示のカチオン性両親媒性物質は純粋な形態又は他の脂質若しくはヘルパー脂質、例えばコレステロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール等と組み合わせて使用し得る。この治療製剤は、生物学的に活性な治療用分子と複合体を形成するまで0〜4°で貯蔵し得る。細菌増殖を防止し、貯蔵寿命を延ばす薬剤を、調製物を安定化する試薬、例えば低濃度のグリセロールと共に含め得る。凍結/解凍サイクルは製剤の効率における損失を引き起こし得ることが特に注意喚起される。
【0070】
さらに別の実施形態において、本明細書で開示のカチオン性両親媒性物質、共脂質(コレステロール又はDOPE)及び生物学的に活性な治療用分子の製剤は、他の経路、例えば皮下、筋肉内、腹腔内に加えて静脈内投与し得る。さらに、製剤を細胞に、インビトロの系において0.1〜0.5マイクログラムのDNA:50000個の細胞の比で投与し得る。カチオン性両親媒性物質の量は、1つのカチオン性両親媒性物質について2の正電荷、1つのヌクレオチド塩基は1の負電荷であるとして、カチオン性両親媒性物質対DNA電荷比0.3:1〜9:1内で変動し得る。
【0071】
本発明はさらにこの製剤の調製方法を提供し、製剤方法は、本発明で開示のカチオン性両親媒性物質の分散物を調製するステップと、この分散物を生物学的に活性な分子と接触させることでカチオン性両親媒性物質と生物学的に活性な分子との複合体を形成するステップと、細胞をこの複合体と接触させることで生物学的に活性な分子の細胞への導入を促進するステップとを含む。本発明は、生物学的に活性な分子の細胞内送達を促進する様々な製剤も提供する。
【0072】
マンノース受容体を介した樹状細胞(DC)のトランスフェクション:
各種APCの中でも、DCは最も強力な抗原提示細胞であり、ナイーブT細胞に対して効果的に抗原を提示可能である(Romini N,et al.J Exp Med.1994;180:83−93)。DNAワクチン接種の分野において、トランスフェクトしたDCは、効率的な細胞障害性Tリンパ球(CTL)応答におけるキープレーヤーである(Denis−Mize KS,et al.Gene Ther.2000;24:2105−112、Condon C,et al.Nat Med.1996;10:1122−1128、Akbari O,et al.J Exp Med.1999;189:169−178、Coombes B.K.et al.Immunol Lett.2001;78:103−111、Porgador A,et al.J Exp Med.1998;188:1075−1082、Timares L,et al.J Immunol.2003;170:5483−5490、Sbai H,et al.Vaccine.2002;20:3137−3147、Irvine AS,et al.Nat Biotechnol.2000;18:1273−1278)。DNAワクチン接種及びDCによる抗原提示を成功させるにあたって、DNAのインターナリゼーション又はDCにDNAを担持させるだけでは不十分である。それぞれの抗原を発現させるためには、抗原をコードしているDNAワクチンを樹状細胞の核に送達する必要がある。次に、抗原のプロセシングを行い、活性化させたDCのMHCクラスI及びクラスII分子上に提示させる(Samantha J,et al.Advanced Drug Delivery Reviews 2005;57:377−390)。DCへの効果的なトランスフェクションは、核へと輸送される前の、インターナリゼーション後のDNAのリソソーム又はファゴソームによる分解により制限される。これがDCのトランスフェクションが困難である理由である。トランスフェクション率はグループ毎に大きく異なり、トランスフェクション効率は0〜10%である(Alijagic S,et al.Eur J Immunol.1995;25:3100−3107、Arthur J.F.et al.Cancer Gene Ther.1997;1:17−25、Lohmann S,et al.Cancer Gene Ther.2000;4:605−14、Strobel I,et al.Gene Ther.2000;23:2028−35)。未熟DCの表面で発現したマンノース受容体(MR)はエンドサイトーシス及びファゴサイトーシスに関与する(Ezekowitz,RAB,et al.J.Exp.Med.1990;172:1785−1794)。まず、カチオン性両親媒性物質1、2、3のトランスフェクション効率を、マウス骨髄由来樹状細胞において評価した。これを目的として、未熟樹状細胞をC57BL/6Jマウスの骨髄から、過去に記載のプロトコルにしたがってGM−CSF及びIL−4との培養により単離した(Inaba K,et al.J Exp Med 1992;176:1693−1702)。まず、単離したmbmDCにおける各種DCマーカーの存在を蛍光サイトメトリ分析(fluorocytometric analysis)により確認した。新たに単離したmbmDCを、各種DCマーカー用のFITC/PE抱合型モノクローナル抗体で処理し、FACSプロファイルをモニタした。フローサイトメトリにおける発見により、未熟DCが高い細胞内MHCクラスII分子レベル、低いCD86、高いCD11c、CD40及びマンノース受容体レベルを有する特徴が確認された(図1)。
【0073】
単離したDC表面上に期待されるDCマーカーの存在を確認した後(図1)、mbmDCに、1〜3のリポソーム(共脂質としての等モルの1,2−ジ−オレイオル(oleyol)−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、DOPEと組み合わせて調製)と複合体を形成したGFPプラスミドをマンノース受容体の天然リガンドであるマンナンの存在下及び不在下の両方でトランスフェクトし、トランスフェクション効率をフローサイトメトリで評価した。1、2のリポプレックスは、mbmDCのトランスフェクションにおいて、コントロール用のマンノシル類似体3のリポプレックスより約4倍及び2.5倍効率がよかった(1のリポプレックスの場合は約20%、2のリポプレックスの場合は10〜12%。それに対して3のリポプレックスの場合は4〜5%)(図2、上方のパネル)。mbmDCはトランスフェクションが困難である。広く使用されている市販のリポソームトランスフェクションキットであるLipofectAmine2000はmbmDCのトランスフェクションにおいて本質的に役に立たなかった(図2)。mbmDCをマンノース受容体の天然リガンドであるマンナンとプレインキュベートすると、mbmDCのトランスフェクションにおける3種の脂質1〜3全ての効率が悪化した(図2、下方のパネル)。これらを考え合わせると、脂質1〜3のトランスフェクションプロファイル(図2)は、樹状細胞の細胞表面で発現したマンノース受容体により媒介される脂質1〜3のリポプレックスによるmbmDCトランスフェクションと一致する。
【0074】
マウスにおける皮下遺伝子免疫化時の体液性免疫応答:
DNAワクチンキャリアとしての本明細書に記載の糖模倣カチオン性両親媒性物質の治療可能性を、C57BL/6Jマウスを15μgの(モデル抗原コードDNAとしての)pCMV−SPORT−β−galと脂質:DNA電荷比4:1で複合体化した脂質1〜3のリポプレックスで皮下免疫化(3回、7日間隔)することで評価した。pCMV−SPORT−β−galと脂質1〜3とのリポプレックスを事前にトランスフェクトしたmbmDCでC57BL/6Jマウスを皮下免疫化してから2週間後、INF−γ及び抗β−gal抗体(それぞれ細胞性及び体液性免疫応答についてのシグネチャーサイトカイン)の両方を測定するために脾細胞及び血清を採取した。無処置のマウスをコントロールとして使用した。免疫化したマウスの脾細胞からのINF−γの量及び血清からのβ−gal抗体の量は、無処置のマウスで免疫化したマウスのものより有意に高いと判明した(図3)。
【0075】
マウスにおける皮下遺伝子免疫化時の同系マウスにおける長期間にわたる抗腫瘍作用:
メラノーマ抗原gp100及びチロシナーゼをコードしているDNAワクチンp−CMV−Gp−100及びp−CMV−チロシナーゼの本明細書に記載のリポプレックスの直接皮下投与後の免疫応答を評価するために、C57BL/6J同系マウスを、脂質1のリポプレックスで免疫化した(5%グルコース溶液中150μl、15μgのDNA、4:1の脂質:DNA比、3回、7日間隔)。免疫化したマウス(n=5)を続いて致死量のメラノーマ腫瘍(〜1x10個のB16F10細胞)に曝露した。腫瘍の増殖を29日間にわたってモニタしたが、これは脂質1で免疫化したコントロールのマウス群を研究のその時点で屠殺しなくてはならなかったからである(腫瘍サイズは極めて大きくなった。図4A、C)。脂質1とp−CMV−Gp−100とのリポプレックス及び脂質1とp−CMV−チロシナーゼとのリポプレックスで免疫化したマウス全てが、29日間にわたる腫瘍増殖阻害研究中、腫瘍チャレンジ後も腫瘍を発生させることなく生存した(図4A、C)。重要なことに、著しく長期間にわたる(腫瘍チャレンジから100日)抗メラノーマ防御免疫が、腫瘍チャレンジから100日間、脂質1とp−CMV−Gp−100とのリポプレックス及び脂質1とp−CMV−チロシナーゼとのリポプレックスで免疫化したマウスの全て(n=5)において観察された(図4B、D)。このため、図4A〜Dにまとめた発見は、インビボ環境下での遺伝子免疫化におけるマンノース模倣シキモイル末端基を有するカチオン性両親媒性物質の全身に対する高い潜在能力を説得力高く実証した。重要なことに、マウスを脂質1とp−CMV−β−galとのリポプレックス、酵素β−ガラクトシダーゼをコードしている無関係のコントロール用プラスミドで免疫化した場合、全てのマウスが30日以内に死亡した(図4A、C)。これらの発見は、今回観察された遺伝子免疫化における著しく長い防御免疫応答が抗原特異的であることを実証した。
【0076】
以下の実施例は本発明を説明する目的で挙げたものであるため、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例1】
【0077】
実施例1:
カチオン性両親媒性物質1の合成(スキーム1、X、n=13)
ステップ(i):固形HOBt(0.28g、2mmol)及びEDCI(0.4g、2mmol)を連続的に、5mLのドライDCM/ドライDMF(9:1、v/v)中のNα−Z−Nε−BOC−L−リシン(0.76g、2mmol)の氷冷撹拌溶液に窒素雰囲気下で添加した。30分後、ドライDCMに溶解させたN−2アミノエチル−N,N−ジ−n−ヘキサデシルアミン(0.8g、1.5mmol)を反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、過剰量のDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(約2x50mL)及び水(約2x50mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発で除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてジクロロメタン中の1〜1.5%メタノール(v/v)を使用)、1.1g(収率80%)の純粋な中間体IIIが得られた(R=0.5、ジクロロメタン中の5%メタノール、v/v)。
【0078】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,C−(CH13−];1.2−1.9[m,54H,−C(C13−;9H,CO−O−C(C;6H,LysCγ,LysCδ,LysCβ];2.4−2.7[m,4H,−N(−C−CH−);2H,−N−C−CH−NH−CO]3.0−3.1[m,2H,LysCω];3.3−3.4[m,2H,−N−CH−C−NH−CO];4.0[m,1H,BOC−N];4.5[m,1H,LysCα];5.0[d,2H,−O−C−C];5.5[m,1H,−N−Z];7.2−7.5[m,5H,O−CH−C
【0079】
ステップ(ii):上のステップで調製した中間体III(1.1g、1.2mmol)を8mLのメタノール及び2滴の2N塩酸に溶解させた。Pd(OH)/C(0.3g)を反応混合物に添加し、空気を除去した。得られた反応混合物を室温で14時間にわたって水素雰囲気下(2気圧)で撹拌した。反応混合物をセライトを使用して濾過し、濾液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾液の溶媒を回転蒸発により除去すると0.9g(収率90%)の純粋な中間体IVが得られた(R=約0.4、10%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0080】
ステップ(iii):固形HOBt(0.1g、1.4mmol)及びEDCI(0.15g、1.4mmol)を連続的に、5mLのドライDCM/ドライDMF(9:1、v/v)中の3,4,5−トリアセトキシシクロヘキシ−1−エンカルボン酸(0.23g、1.4mmol)の氷冷撹拌溶液に添加した。30分後、上のステップで調製した中間体IV(0.4g、0.54mmol)を4mLのドライDCM(0.4mLのトリエチレンアミンで中和)に溶解させ、反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、過剰量のDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(約2x40mL)及び水(約2x40mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発で除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてジクロロメタン中の1.5〜2%メタノール(v/v)を使用)、0.4g(収率72%)の純粋な中間体Vが得られた(R=0.5、ジクロロメタン中の5%メタノール、v/v)。
【0081】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,C−(C13−];1.2−1.5[m,54H,2x−C(CH13−;9H,CO−O−C(C];1.6−1.9[m,6H,LysCγ,LysCδ,LysCβ];2.0−2.1[3s,9H,3x−COC];2.2−2.4[dd,2H,shik6−H,H'];2.7−3.2[m,4H,−N(−C−CH−);2H,−N−C−CH−NH−CO;2H,LysCω];3.4−3.5[m,2H,−N−CH−C−NH−CO];4.3−4.4[m,1H,LysCα];4.7[m,1H,BOC−N];5.1−5.3[m,2H,shik−4−H,shik−5−H];5.6−5.7[m,1H,shik−3−H];6.4[d,1H,shik−2−H];7.1[m,1H,CO−N
ES−MS:m/z=C5810610の場合、1020[M+1]
【0082】
ステップ(IV):上のステップで調製した中間体V(0.5g、0.5mmol)をドライDCM(4mL)に溶解させ、TFA(2mL)を0℃で添加した。得られた溶液を0℃で3時間にわたって撹拌することで完全に脱保護した。過剰量のTFAを窒素フラッシングにより除去した。得られた化合物をクロロホルム(80mL)に溶解させ、水性飽和NaHCO(3x90mL)、ブライン(1x70mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去すると、0.41g(収率91%)の遊離アミンが中間体VIとして得られた。
【0083】
ステップ(V):塩化第二水銀(0.28g、1.0mmol)を、ドライN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、2mL)、トリエチルアミン(1mL)及びドライジクロロメタン(DCM、5mL)に溶解させた中間体VI(ステップIVで調製。0.4g、0.4mmol)、ビス−N−Boc−チオウレア(0.2g、0.7mmol)の混合物に0℃で、継続的に撹拌しながら添加した。得られた混合物を0℃、窒素下で40分間にわたって撹拌し、エチルアセテート(20mL)で希釈し、セライトのパッドで濾過した。濾液を水(2x50mL)及びブライン溶液(2x50mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液として2〜2.5%のメタノール/ジクロロメタン(v/v)を使用)、0.41gの純粋な中間体VIIが得られた(71%、Rf−0.5、5%メタノール/ジクロロメタン、v/v)。
【0084】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,C−(CH13−];1.2−1.5[m,54H,2x−C(C13−;18H,CO−O−C(C];1.6−1.9[m,6H,LysCγ,LysCδ,LysCβ];2.0−2.1[3s,9H,3x−COC];2.2−2.4[dd,2H,shik6−H,H'];2.7−3.2[m,4H,−N(−C−CH−);2H,−N−C−CH−NH−CO;2H,LysCω];3.4−3.5[m,2H,−N−CH−C−NH−CO];4.3−4.4[m,1H,LysCα];4.7[m,1H,BOC−N];5.1−5.3[m,2H,shik−4−H,shik−5−H];5.6−5.7[m,1H,shik−3−H];6.4[d,1H,shik−2−H];7.1[m,1H,CO−N
ES−MS:m/z=C6411712の場合、1162[M+1]
【0085】
ステップ(vi):上のステップで調製した中間体VII(0.4g、0.35mmol)を2mLのクロロホルム/メタノール(1:1、v/v)に溶解させ、5mLのヨウ化メチルを溶液に添加した。反応混合物を室温で6時間にわたって撹拌し、溶媒をロータリーエバポレータで除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(シリカゲル、60〜120メッシュサイズ、溶離液としてジクロロメタン中の2〜2.5%メタノール(v/v)を使用)、0.35g(収率82%)の純粋な中間体VIIIが得られた(R=0.45、ジクロロメタン中の5%メタノール、v/v)。
【0086】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,C−(CH13−];1.2−1.6[m,52H,2x−(C13−,4H,LysCγ,18H,CO−O−C(C3].];1.65−2.0[m,4H,−N(−CH−C−),4H,Lysδ,LysCβ];2.0−2.15[3s,9H,3x−COC];2.3−2.5[dd,1H,shik6−H,H'];3.0−3.1[m,2H,LysCω];3.3[s,3H,−N];3.4−3.5[m,4H,−N(−C−CH−)];3.7−3.8[m,4H,−N−C−C−NH−CO];4.4[m,1H,LysCα];4.8[m,1H,BOC−N]5.1−5.3[m,2H,shik−4−H,shik−5−H];5.7[t,1H,shik−3−H];6.5−6.6[d,1H,shik−2−H]
ES−MS:m/z=C6512012の場合、1177M
【0087】
ステップ(vii):上のステップで調製した中間体VIII(0.35g、0.3mmol)を2mLのメタノールに溶解させ、KCO(0.2g、1.5mmol)を反応混合物に添加することでpHを約9に上昇させた。反応混合物を室温で30分間にわたって撹拌し、Amberlite IR120(H)で中和し、濾過し、濾液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ロータリーエバポレータ上で濃縮すると0.25g(収率80%)の中間体IXが得られた(R=約0.6、20%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0088】
ステップ(viii):上のステップで調製した中間体IX(0.25g、0.27mmol)を2mLのドライDCMに溶解させた氷冷溶液に、0.6mlのTFAを添加し、混合物を3〜4時間にわたって撹拌した。TFAを窒素の適用により除去し、続いて塩化物イオン交換クロマトグラフィ(amberlyst A−26塩化物イオン交換樹脂を使用)を行った。最終的な化合物をMeOH及びアセトンを使用して再結晶化すると0.15g(収率67%)の純粋なターゲット化合物X(脂質1)が白色の固形物として得られた(R=約0.3、10%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0089】
H NMR:(600MHz,CDOD+CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(CH13−];1.2−1.5[m,52H,2x−CH(C13−];1.6−2.0[m,6H,LysCγ,LysCδ,LysCβ,4H,−N(−CH−C−),2H,];2.2[dd,1H,shik6−H];2.8[dd,1H,shik−6−H'];2.9−3.2[m,2H,LysCω,4H,−N(−C−CH−)];3.3−3.5[m,3H,−N;2H,−N−C−CH−NH−CO];3.5−3.7[m,1H,shik4−H,2H,−N−CH−C−NH−CO];4.0−4.1[m,1H,shik−5−H];4.3−4.5[m,1H,LysCα,1H,shik3−H];6.5[s,1H,shik2−H]
ES−MS:m/z=C4998の場合、850[M]及び425[M/2]
【0090】
実施例2:
カチオン性両親媒性物質2の合成(スキーム2、Y、n=13)
ステップ(i):固形HOBt(0.09g、0.67mmol)及びEDCI(0.13g、0.67mmol)を、5mLのドライDCM/ドライDMF(9:1、v/v)中の1,3,4,5−テトラアセトキシシクロヘキサンカルボン酸(0.24g、0.67mmol)の氷冷撹拌溶液に窒素雰囲気下、連続的に添加した。30分後、スキーム1通りに調製した中間体IV(0.38g、0.51mmol)をドライDCMに溶解させ、反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、過剰量のDCMで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(約3x50mL)及び水(約3x50mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてジクロロメタン中の1.5〜2%メタノール(v/v)を使用)、0.31g(収率56%)の純粋な中間体Vが得られた(R=0.5、ジクロロメタン中の5%メタノール、v/v)。
【0091】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(CH13−];1.2−1.7[m,56H,2x−C(C13−;9H,CO−O−C(C;4H,LysCγ,LysCδ];1.8−2.2[m,2H,LysCβ;12H,4xC];2.3−2.8[m,4H,qui6−H,H',qui2−H,H',4H,−N(−C−CH−),2H,−N−C−CH−NHCO];3.0−3.3[m,2H,LysCω,2H,−N−C−CH−NH−CO];4.4[m,1H,LysCα];4.7[m,1H,BOC−N]];4.9−5.1[dd,1H,qui4−H];5.3−5.45[ddd,1H,qui5−H];5.5−5.6[m,1H,qui3−H]
ES−MS:m/z:C6011012の場合、1080[M+1]
【0092】
ステップ(II):上のステップで調製した中間体V(0.5g、0.5mmol)をドライDCM(4mL)に溶解させ、TFA(2mL)を0℃で添加した。得られた溶液を0℃で3時間にわたって撹拌することで完全に脱保護した。過剰量のTFAを窒素フラッシングにより除去した。得られた化合物をクロロホルム(80mL)に溶解させ、水性飽和NaHCO(3x90mL)、ブライン(1x70mL)で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去すると、0.41g(収率91%)の遊離アミンが中間体VIとして得られた。
【0093】
ステップ(III):塩化第二水銀(0.28g、1.0mmol)を、ドライN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、2mL)、トリエチルアミン(1mL)及びドライジクロロメタン(DCM、5mL)に溶解させた中間体VI(ステップIIで調製。0.4g、0.4mmol)、ビス−N−Boc−チオウレア(0.2g、0.7mmol)の混合物に0℃で継続的に撹拌しながら添加した。得られた混合物を0℃、窒素下で40分間にわたって撹拌し、エチルアセテート(20mL)で希釈し、セライトのパッドで濾過した。濾液を水(2x50mL)及びブライン溶液(2x50mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液として2〜2.5%メタノール/ジクロロメタン(v/v)を使用)、0.41gの純粋な中間体VIIが得られた(71%、Rf−0.5、5%メタノール/ジクロロメタン、v/v)。
【0094】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(C13−];1.2−1.7[m,56H,2x−C(CH13−;18H,CO−O−C(C;4H,LysCγ,LysCδ];1.8−2.2[m,2H,LysCβ;12H,4xC];2.3−2.8[m,4H,qui6−H,H',qui2−H,H',4H,−N(−C−CH−),2H,−N−C−CH−NHCO];3.0−3.3[m,2H,LysCω,2H,−N−CH−C−NH−CO];4.4[m,1H,Lysα];4.7[m,1H,BOC−N]];4.9−5.1[dd,1H,qui4−H];5.3−5.45[ddd,1H,qui5−H];5.5−5.6[m,1H,qui3−H]
ES−MS:m/z=C6612113の場合、1221[M+1]
【0095】
ステップ(iv):上のステップで調製した中間体VII(0.3g、0.29mmol)を2mLのクロロホルム/メタノール(1:1、v/v)に溶解させ、5mLのヨウ化メチルを溶液に添加した。反応混合物を室温で6時間にわたって撹拌し、溶媒をロータリーエバポレータで除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(シリカゲル、60〜120メッシュサイズ、溶離液としてジクロロメタン中の2〜2.5%メタノール(v/v)を使用)、0.18g(収率58%)の純粋な中間体VIIIが得られた(R=0.45、ジクロロメタン中の5%メタノール、v/v)。
【0096】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(C13−];1.2−1.5[m,52H,2x−CH(C13−;18H,CO−O−C(C];1.6−1.9[4H,−N(−CH−C−);6H,LysCγ,LysCδ,LysCβ];2.0−2.3[4s,12H,4xCH];2.4−2.7[dd,2H,qui6−H,H';dd,2H,qui2−H,H'];3.1[d,2H,LysCω];3.2[s,3H,NCH];3.3−3.4[m,4H,−N(−C−CH−)];3.6−3.8[m,4H,−N−C−C−NHCO];4.3−4.4[m,1H,LysCα];4.9−5.1[m,1H,BOC−N;1H,qui4−H];5.3−5.45[ddd,1H,qui5−H];5.5−5.6[d,1H,qui3−H]
ES−MS:m/z:C6712413の場合、1236[M]
【0097】
ステップ(v):上のステップで調製した中間体VIII(0.18g、0.2mmol)を2mLのメタノールに溶解させ、KCO(0.1g、1.5mmol)を反応混合物に添加することでpHを約9に上昇させた。反応混合物を室温で30分間にわたって撹拌し、Amberlite IR120(H)で中和し、濾過し、濾液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレータで除去すると、0.11g(収率72%)の中間体IXが得られた(R=約0.6、20%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0098】
ステップ(vi)、(vii):2mLのドライDCMに溶解させた上のステップで調製した中間体IX(0.1g、0.06mmol)の氷冷溶液に、0.6mlのTFAを添加し、混合物を3〜4時間にわたって撹拌した。TFAを窒素の適用により除去し、続いて塩化物イオン交換クロマトグラフィを行った(amberlyst A−26塩化物イオン交換樹脂を使用)。最終的な化合物をMeOH及びアセトンを使用して再結晶化すると0.08g(収率75%)の純粋なターゲット化合物Yが白色の固形物として得られた(R=約0.3、10%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0099】
H NMR:(600MHz,CDOD+CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,C−(CH13−];1.2−1.5[m,52H,{−CH(C13−};2H,LysCδ];1.65−2.2[m,4H,−N(−CH−C−);2H,LysCβ,LysCγ;2H,qui6−H,H';2H,qui2−H,H'];2.9−3.7[m,4H,−N(−C−CH−);3H,−NCH;2H,LysCω;4H,−N−C−C−NH−CO;1H,qui4−H];4.0−4.2[m,2H,qui−3H,qui−5H];4.4[m,1H,LysCα
ES−MS:m/z:C49100の場合、868[M] 434[M/2]
【0100】
実施例3:
コントロール用マンノシル化脂質3の合成(スキーム3):
ステップ(i):固形HOBt(0.36g、2.3mmol)及びEDCI(0.45g、2.3mmol)を、5mLのドライDCM/ドライDMF(9:1、v/v)中の2−(tert−ブチルジフェニルシリルオキシ)酢酸(0.74g、2.3mmol)の氷冷撹拌溶液に窒素雰囲気下、連続的に添加した。30分後、中間体N−2−[(Nε−Z−L−リシル)]アミノエチル−N,N−ジ−n−ヘキサデシルアミン(1.2g、1.5mmol。Pramanik,D.et al.J Med Chem.2008;51:7298−7302に記載される通りに調製)をドライDCMに溶解させ、反応混合物に添加した。得られた溶液を室温で一晩撹拌し、過剰量のクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(約3x50mL)及び水(約3x50mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてクロロホルム中の1〜1.5%メタノール(v/v)を使用)、1.6g(収率73%)の純粋な中間体IIIが得られた(R=0.5、ジクロロメタン中の5%メタノール、v/v)。
【0101】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(CH13−];1.0−1.1[m,9H,−C(C];1.2−1.5[m,52H,2x−(C13;4H,−N(−CH−C−);4H,LysCγ,LysCδ];1.8−1.9[m,2H,LysCβ];2.4−2.5[t,4H,−N(−C−CH−)];2.5−2.6[t,2H,−N−C−CH−NH−CO];3.0−3.2[m,2H,LysCω];3.25−3.4[m,2H,−N−CH−C−NH−CO];4.0−4.1[s,2H,−C−O−Si−];4.3−4.4[m,1H,LysCα];4.9−5.0[m,−C−C;−C−O−Si−];7.2−7.7[m,15H,−(C
ES−MS:m/z:C66110Siの場合、1069[M+2]
【0102】
ステップ(ii):上のステップで調製した中間体III(1.2g、1.5mmol)をドライTHFに溶解させ、三級ブチルアンモニウムフルオリド(0.6g、2.3mmol)をゆっくりと0℃で添加した。得られた溶液を室温で2時間にわたって撹拌し、過剰量のクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(約3x50mL)及び水(約3x50mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液としてクロロホルム中の1.5〜2%メタノール(v/v)を使用)、1g(収率80%)の純粋な中間体IVが得られた(R=0.3、クロロホルム中の5%メタノール、v/v)。
【0103】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,C−(CH11−];1.0−2.0[m,52H,−(C13;4H,−N(−CH−C−);6H,LysCγ,LysCδ,LysCβ];2.9−3.1[m,4H,−N(−C−CH−);2H,LysCω;2H,−N−C−CH−NH−CO];3.4−3.6[m,2H,−N−CH−C−NH−CO];3.9−4.3[m,2H,−C−O−Si−;1H,LysCα];5.0−5.2[m,−C−C;−NZ];7.2−7.7[m,15H,−(C
ES−MS:m/z:C5092の場合、830[M+1]
【0104】
ステップ(iii):上のステップで調製した中間体IV(0.9g、0.93mmol)及びマンノースから調製した中間体(0.7g、1.4mmol。Srinivas,R.et al J.Med.Chem.2010;317:992−999の通りに調製)をドライDCMに窒素雰囲気下で溶解させ、ホウ素トリフルオリドエチルエーテラート(0.2g、1.4mmol)を−20℃で添加した。得られた溶液を−20℃で2時間にわたって撹拌し、過剰量のクロロホルムで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム(約3x50mL)及び水(約3x50mL)で連続的に洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(100〜200メッシュシリカゲル、溶離液としてクロロホルム中の1〜1.5%メタノール(v/v)を使用)、0.5g(収率51%)の純粋な中間体Vが得られた(R=0.5、クロロホルム中の5%メタノール、v/v)。
【0105】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,(C−(CH13−)];1.2−1.9[m,52H,−(C13;4H,−N(−CH−C−);6H,LysCδ,LysCβ,LysCγ];2.0−2.2[4s,12H,4x−CO−C];2.5−2.8[m,4H,−N(−C−CH−);2H,−N−C−CH−NH−CO];3.1−3.4[m,2H,LysCω;2H,−N−CH−C−NH−CO;3H,5−H];4.0−4.4[m,2H,−NH−CO−C−O−;2H,−C−OCOCH,1H,LysCα];4.8[s,1H,1−H];5.0[s,−C−C];5.2−5.4[m,3H,2−H,3−H,4−H];7.2−7.7[m,5H,−(C)]
ES−MS:m/z:C6411014の場合、1160[M+1]
【0106】
ステップ(iv):上のステップで調製した中間体V(0.5g、0.4mmol)を8mLのメタノール及び2滴の2N塩酸に溶解させた。Pd(OH)/C(0.2g)を反応混合物に添加し、空気を除去した。得られた反応混合物を室温で14時間にわたって水素雰囲気(2気圧)下で撹拌した。反応混合物をセライトを使用して濾過し、濾液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾液の溶媒を回転蒸発により除去すると0.4g(収率90%)の純粋な中間体VIが得られた(R=約0.4、10%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0107】
ステップ(V):塩化第二水銀(0.28g、1.0mmol)を、ドライN,N−ジメチルホルムアミド(DMF、2mL)、トリエチルアミン(1mL)及びドライジクロロメタン(DCM、5mL)に溶解させた中間体VI(ステップIVで調製。0.4g、0.45mmol)、ビス−N−Boc−チオウレア(0.2g、0.7mmol)の混合物に0℃で継続的に撹拌しながら添加した。得られた混合物を0℃、窒素下で40分間にわたって撹拌し、エチルアセテート(20mL)で希釈し、セライトのパッドで濾過した。濾液を水(2x50mL)及びブライン溶液(2x50mL)で連続的に洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濾液の溶媒を回転蒸発により除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(60〜120メッシュシリカゲル、溶離液として2〜2.5%のメタノール/ジクロロメタン(v/v)を使用)、0.41gの純粋な中間体VII(71%、Rf=0.5、5%メタノール/ジクロロメタン、v/v)が得られた。
【0108】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,(C−(CH13−)];1.2−1.9[m,52H,−(C13;4H,−N(−CH−C−);6H,LysCδ,LysCβ,LysCγ;18H,CO−O−C(C];2.0−2.2[4s,12H,4x−CO−C];2.5−2.8[m,4H,−N(−C−CH−);2H,−N−C−CH−NH−CO];3.1−3.4[m,2H,LysCω;2H,−N−CH−C−NH−CO;3H,5−H];4.0−4.4[m,2H,−NH−CO−C−O−;2H,−C−OCOC,1H,LysCα];4.8[s,1H,1−H];5.2−5.4[m,3H,2−H,3−H,4−H]
ES−MS:m/z:C6712316の場合、1267[M+1]
【0109】
ステップ(vi):上のステップで調製した中間体VII(0.2g、0.15mmol)を3mLのクロロホルムに溶解させ、10mLのヨウ化メチルを溶液に添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、溶媒をロータリーエバポレータで除去した。残留物をカラムクロマトグラフィで精製すると(シリカゲル、60〜120メッシュサイズ、溶離液としてクロロホルム中の2〜2.5%メタノール(v/v)を使用)、0.15g(収率82%)の純粋な中間体VIIIが得られた(R=0.4、クロロホルム中の5%メタノール、v/v)。
【0110】
H NMR(300MHz,CDCl):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(CH13−];1.2−1.5[m,52H,2x−(C13;2H,LysCγ];1.7−1.9[m,4H,−N(−CH−C−);2H,LysCβ,2H,LysCδ;18H,CO−O−C(C];2.0−2.2[4s,12H,4x−CO−C];3.1−3.5[m,3H,−N−C;2H,LysCω;4H−N(−C−CH−);1H,5−H];3.6−3.8[m,4H,−N−C−C−NH−CO−];4.0−4.4[m,2H,−NH−CO−C−O−;2H,−C−OCOCH];4.5[dd,1H,LysCα];4.8[s,1H,1−H];5.2−5.4[m,3H,2−H,3−H,4−H]
ESI−MS:m/z:C6812616の場合、1282[M]
【0111】
ステップ(vii):上のステップで調製した中間体VIII(0.15g、0.2mmol)を2mLのメタノールに溶解させ、KCO(0.1g、1.5mmol)を反応混合物に添加することでpHを約9まで上昇させた。反応混合物を室温で30分間にわたって撹拌し、Amberlite IR120(H)で中和し、濾過し、濾液を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させた。溶媒をロータリーエバポレータで除去すると0.1g(収率75%)の中間体IXが得られた(R=約0.6、20%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0112】
ステップ(viii):2mLのドライDCMに溶解させた上のステップで調製した中間体IX(0.1g、0.06mmol)の氷冷溶液に0.6mlのTFAを添加し、混合物を3〜4時間にわたって撹拌した。TFAを窒素の適用により除去し、続いて塩化物イオン交換クロマトグラフィを行った(amberlyst A−26塩化物イオン交換樹脂を使用)。最終的な化合物をMeOH及びアセトンを使用して再結晶化すると0.08g(収率75%)の純粋なターゲット化合物3が白色の固形物として得られた(R=約0.2、20%メタノール−クロロホルム、v/v)。
【0113】
H NMR:(600MHz,CDCl+CDOD):δ/ppm=0.9[t,6H,2xC−(CH13−];1.2−1.5[m,52H,2x−(C13];1.5−1.9[4H,−N(−CH−C−);6H,LysCβ,LysCγ,LysCδ];2.9−3.1[m,2H,LysCω;3H,−N−C;4H−N(−C−CH−);2H,−N−C−CH−NH−CO−];3.5−4.0[4H,2−H,3−H,4−H,5−H;2H,−C−OH;2H,−N−CH−C−NH−CO−];4.0−4.4[m,2H,−NH−CO−C−O−;1H,LysCα];4.9[s,1H,1−H]
ES−MS:m/z:C50103の場合、954[M] 457[M/2]
【0114】
実施例4:
樹状細胞におけるカチオン性両親媒性物質1〜3のマンノース受容体特異的遺伝子導入有効性の評価
プラスミドDNAの調製。pCMV−SPORT−β−gal、p−CMV−チロシナーゼ及びp−CMV−gp100をRAS Life Sciences(ハイデラバード、インド)から購入した。プラスミドを、過去に記載されたように、大腸菌(Escherichia coli)のDH5α株で増幅し、アルカリ溶解法で単離し、最後にPEG−8000沈殿により精製した(Karmali PP,et al.J Med Chem.2004;47:2123−2132)。プラスミドの純度をA260/A280比(約1.9)及び1%アガロースゲル電気泳動によりチェックした。
【0115】
リポソームの調製。リポソームを慣用の方法により調製した。簡単に説明すると、適当なモル比の脂質及び共脂質(コレステロール、DOPE、DOPC)をクロロホルムに溶解させた。次に、溶媒を薄い窒素ガス流下で蒸発させ、8時間にわたって真空乾燥させ、脱イオン水中で一晩水和させると、インビトロ実験用の1mM又はインビボ実験用の5mMの最終脂質濃度が得られた。水和させた脂質膜をまず30秒間にわたってボルテックスし、次に清澄になるまでBranson 450 sonifierをデューティサイクル100%、出力25Wで使用して超音波処理した。得られた清澄なリポソーム水溶液をリポプレックスの調製に使用した。
【0116】
樹状細胞の単離。初代mbmDCを過去に記載の手順を用いて単離した(Inaba K,et al.J Exp Med 1992;176:1693−1702)。簡単に説明すると、オスのC57BL/6マウスの脛骨及び腓骨から採取した骨髄をナイロンメッシュに通して骨及びデブリを除去し、完全DC培地(10%のFBS、50μMのβ−メルカプトエタノール、2mMのグルタミン、1%のNEAA、20ng/mLのGM−CSF及び10ng/mLのIL−4、1%の抗生物質溶液を含有するRPMI−1640)に再懸濁させた。2日毎に細胞に新鮮なDC培地を補充した。6日後、凝集した細胞を、RPMIを接着性ストローマ細胞上にやさしくピペッティングすることで移動させた。移動させた細胞をまとめて取りだし、280gで10分間にわたって室温で遠心分離した。上清を廃棄した。まずペレットを完全DC培地に1x10細胞/mLで再懸濁させ、最後に100mm細胞培養ペトリ皿に1x10細胞/皿で置いた(1皿あたり培地は10mL)。24時間後、ペトリ皿をやさしく回し揺らすことで非接着性細胞を回収し、トランスフェクション及びフローサイトメトリ実験に使用した。培養物を、5%COの加湿雰囲気中、37℃で維持した。
【0117】
DC−トランスフェクション。まず、脂質1、2、3のトランスフェクション効率をマウス骨髄由来樹状細胞において評価した。これを目的として、上記のプロトコルにしたがって、GM−CSF及びIL−4と共に培養することで、未熟樹状細胞をC57BL/6Jマウスの骨髄から単離した。未熟樹状細胞を、MHCクラスII、CD86、CD11c、CD40及びマンノース受容体を含めた標準的なDCマーカーに関して、DCを、これらのDCマーカー用のFITC/PE抱合型モノクローナル抗体で処理することで特徴付けした。DCマーカーのプロファイルをフローサイトメトリでモニタした。フローサイトメトリでの発見は、高細胞内レベルのMHCクラスII分子、低CD86、高レベルのCD11c、CD40及びマンノース受容体を有する未熟DCの特徴を裏付けた(図1)。単離したDCの表面上でこれらの期待されるDCマーカーの存在を確認した後、カチオン性両親媒性物質1,2、3のトランスフェクション効率をmbmDCで評価した。単離したDCを6ウェルプレートに1x10細胞/ウェルで播種した。緑色蛍光タンパク質をコードしている3μgのプラスミドDNA(pα5GFP)及び8nmolのカチオン性両親媒性物質1、2、3を含有するリポプレックスを細胞に添加し、5%COの無血清培地において4時間にわたって37℃でインキュベートした。4時間のインキュベーション後、培地を完全DC培地と交換し、18時間にわたって37℃、5%COの存在下でインキュベートした。カチオン性両親媒性物質1、2、3のトランスフェクション効率をフローサイトメトリ分析により測定した。図2にまとめた発見は、遺伝子の樹状細胞への送達におけるカチオン性両親媒性物質1、2の有効性がそのマンノシル類似体3のものより優れていることをはっきりと実証している。
【0118】
実施例6:
樹状細胞をベースとした遺伝子免疫化における体液性及び細胞性免疫応答の誘起
マウスの免疫化:生後6〜8週間のメスのC57BL/6マウス(それぞれ体重20〜22g、n=5)を、脂質1〜3とp−CMV−β−gal又は脂質1とp−CMV−Gp−100、1とp−CMV−チロシナーゼ(5%グルコース溶液中150μl、15μgのDNA、4:1の脂質:DNA比)のリポプレックスだけを3回、7日間隔で皮下投与することで免疫化した。3回目の免疫化から2週間後、マウスを屠殺し、血清及び脾臓を免疫応答アッセイのために回収した又はB16F1メラノーマ細胞に曝露した。
【0119】
実施例7:
ELISAアッセイによる抗β−gal抗体の測定(体液性応答)。抗β−gal抗体を、過去に記載されている通りに、酵素結合免疫吸着(ELISA)アッセイを用いて測定した(McKeever,U.et al.Vaccine 2002;20:1524−1531)。簡単に説明すると、96ウェルELISAプレートにβ−galタンパク質(0.3μg/ウェル)をPBSで調製した5μg/mLの原液を使用してコーティングした。プレートをPBS(3x200μL)で洗浄し、PBS中の1%BSAで室温で2時間にわたってブロックした。次に、プレートを0.05%Tween−20(3x200μL)を含有するPBSで洗浄し、マウスの血清(100μL)と共に室温で2時間にわたってインキュベートした。プレートを、0.05%Tween−20を含有するPBSで再度洗浄し(3x200μL)、100μLの希釈(1:1000)ホースラディッシュペルオキシダーゼ抱合型抗マウス抗体を各ウェルに添加した。プレートを室温で2時間にわたってインキュベートし、結合していない抗体−HRP抱合体を、0.05%Tween−20を含有するPBSでプレートを洗浄することで除去した(3x200μL)。次に、プレートを暗所にて各ウェルあたり100μLのABTS(Calbiochem、USA)と共に室温で10分間にわたってインキュベートし、吸光度を405nmでELISAリーダー(Bio−Tek instruments Inc、UK)により測定した。図10のパートAにまとめた発見は、カチオン性両親媒性物質1、2のリポソームを事前にトランスフェクトしたDCの投与が、マンノシル類似体3のリポソームを事前にトランスフェクトしたDCを投与する場合より高い抗β−gal抗体応答を引き出したことを実証している。言い換えると、図10のパートAにまとめた発見は、モデルDNAワクチンと本明細書で開示のカチオン性両親媒性物質のリポソームとの複合体を事前にトランスフェクトしたDCでマウスを免疫化すると、モデルDNAワクチンにコードされた抗原に対する効率的な抗原特異的体液性免疫応答を誘発可能であることを説得力高く実証している。
【0120】
実施例8:
ELISAアッセイによるインシチュIFN−γ(細胞性免疫応答)及びIL−4(体液性免疫応答)。CD4Th細胞は、そのヘルパー機能を分泌サイトカインを介して示す。2つのTh細胞サブセット(Th1及びTh2)間でのサイトカイン分泌パターンの差が、特定の抗原による攻撃に対して開始される免疫応答のタイプを決定する。Th1サブセットは、細胞媒介免疫応答、例えばTc細胞の活性化の開始に関与し、Th2サブセットは体液性応答、例えば抗体産生B細胞の活性化を刺激する。Th1及びTh2細胞が分泌する2種の決定サイトカインはそれぞれインターフェロンガンマ(INF−γ)及びインターロイキン−4(IL−4)である(Rengarajan,J.et al.Immunology Today 2000;21:479−483)。IFN−γ及びIL−4 ELISAアッセイを、過去に記述された通りに行った(McKinney DM,et al.Journal of Immunological Methods 2000;237:105)。最後の免疫化から2週間後、マウスを屠殺し、その脾臓を回収した。脾臓をシリンジプランジャで細かく刻むことで脾細胞を単離し、赤血球を1mLの溶解バッファで溶解した(0.02MトリスHCl中の0.14M塩化アンモニウム、pH7.2)。生存細胞を血球計数器で数え、(インビトロで再刺激することなく)速やかにインターフェロン−γ及びIL−4 ELISAアッセイに使用した。アッセイを、製造業者のプロトコルにしたがって行った(Endogen Mouse IFN−γ Elisaキット、マウスIL−4 Elisaキット、Pierce Biotechnology、USA)。簡単に説明すると、脾細胞を、抗マウスIFN−γ又は抗マウスIL−4抗体を事前にコーティングした96ウェルプレートで、1x10細胞/ウェル、50μLの完全培地でインキュベートした。プレートをカバーし、12時間にわたって37℃、5%COの存在下でインキュベートした。次に、細胞を洗浄バッファ(3x200μL)で洗い流し、50μLのビオチニル化二次抗体を各ウェルに加え、1時間にわたって室温でインキュベートした。プレートを洗浄バッファ(3x200μL)で洗浄し、100μLのストレプトアビジン−HRP溶液と共に30分間にわたってインキュベートした。プレートを洗浄バッファ(3x200μL)で再度洗浄し、100μLのTMB基質溶液で処理し、30分間にわたって暗所でインキュベートした。100μLの停止液を添加することで反応を停止させ、吸光度をマイクロプレートリーダにより450nmで測定した。
【0121】
実施例9:
腫瘍チャレンジ実験。B16F1メラノーマ細胞をT25培養フラスコから1mLの細胞剥離溶液(Sigma、USA)を使用して収穫し、PBSで洗浄し(2x500μL)、5x10細胞/mLでHBSSに再懸濁させた。最後の免疫化から2週間後、200μLのHBSS中の1x10個のB16F1細胞を生後6〜8週間のメスのC57BL6/Jマウス(n=5)に注射した(皮下)。2週間後、目視検査及び触診を行うことで腫瘍の検出を行い、腫瘍があった場合は、直角方向の腫瘍直径の測定を毎日行った。測定値が14を超えているならば、マウスを安楽死させた。
【0122】
本発明の利点
本発明の方法は、マンノース模倣カチオン性両親媒性物質を有するカチオン性両親媒性物質の調製方法、また遺伝子免疫化において生物学的に活性な化合物、例えばDNA、RNA、タンパク質等を抗原提示細胞に送達するのに利用することができる。本発明は、ポリアニオン、ポリペプチド又はヌクレオポリマーを抗原提示細胞にマンノース受容体特異的に送達するのに特に有用である。本発明は、本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質から調製するリポソームと抗原決定因子をコードしているポリヌクレオチドとの複合体の投与を通じて動物において免疫応答を引き出す方法を対象とする。さらに、本発明は、本明細書に記載のカチオン性両親媒性物質と感染性疾患を引き起こすタンパク質をコードしているポリヌクレオチドとの複合体の投与を通じて動物において感染性疾患に対する能動免疫を引き出す方法も対象とする。本発明は、ポリヌクレオチドが感染性疾患を引き起こす免疫原の抗原決定因子をコードしているDNA配列を含む発現ベクターであり且つDNAの転写がプロモータの制御下にある遺伝子免疫化方法にも関する。本発明はさらに、ポリヌクレオチドが感染性免疫原をコードしているRNA分子である遺伝子免疫化を対象とする。特には、マンノース模倣シキミ酸及びキナ酸頭部基を有する本明細書で開示の新規なカチオン性両親媒性物質は、遺伝子免疫化において、感染性免疫原をコードしているDNA又はRNAの送達に将来的に利用できる可能性を秘めている。本発明の別の際立った特徴は、本明細書で開示の新規なカチオン性両親媒性物質の樹状細胞(最もプロフェッショナルな抗原提示細胞)トランスフェクション効率が、Srinivas,R.et al.J.Med.Chem.2010;53:1387−1391で最近開示されたシキミ酸及びキナ酸頭部基を有する第1世代カチオン性両親媒性物質のものより約4〜5倍優れていることである。本発明の最も重要な実施形態は、免疫化マウスを致死量の侵襲性メラノーマ腫瘍に曝露した後の長期間にわたる抗腫瘍効果を引き出すことである。本発明で開示の発見は、(a)骨が折れ且つコストが高くつく自家樹状細胞の単離、(b)単離したDCへのDNAワクチンのエクスビボでのトランスフェクション及び(c)レシピエントの体内へのトランスフェクション後のDCの再移植の必要性を回避するものである。これらをまとめると、本発明により、遺伝子免疫化は単純且つ費用効率が高いものとなる。
図1
図2
図3
図4