特許第6360079号(P6360079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360079
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/662 20150101AFI20180712BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20180712BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20180712BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   E05F15/662
   E05F15/643
   B60J5/06 A
   B60J5/04 C
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-559144(P2015-559144)
(86)(22)【出願日】2015年1月23日
(86)【国際出願番号】JP2015051901
(87)【国際公開番号】WO2015111719
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年8月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-12491(P2014-12491)
(32)【優先日】2014年1月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖
(72)【発明者】
【氏名】関根 義隆
【審査官】 小澤 尚由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−97486(JP,A)
【文献】 実開昭63−5182(JP,U)
【文献】 実開昭60−9178(JP,U)
【文献】 実公平5−2758(JP,Y2)
【文献】 実開昭62−131578(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/79
B60J 5/04
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される開閉体を開閉する駆動ユニットであって、
内部に回転軸が回転自在に収容されるケーシングと、
前記ケーシングに固定されるリングギヤを備えた遊星歯車減速機と、
前記ケーシングに装着され、前記車両に固定される車両固定部材と、
前記ケーシングと前記車両固定部材との間に設けられる緩衝部材と、
を有し、
前記車両固定部材は、前記ケーシングからの脱落を防止する抜け止め爪を備え、
前記ケーシングは、前記抜け止め爪が入り込む引っ掛け凹部を備えている、
駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1記載の駆動ユニットにおいて、
前記ケーシングは、
前記回転軸を回転させる電動モータが収容される第1ケーシングと、
前記車両固定部材が装着される第2ケーシングと、
を備え、
前記リングギヤは前記第1ケーシングに固定され、
前記第2ケーシングには前記リングギヤと当接する当接部が設けられる、駆動ユニット。
【請求項3】
請求項1記載の駆動ユニットにおいて、
前記ケーシングは、
前記回転軸を回転させる電動モータが収容される第1ケーシングと、
前記車両固定部材が装着される第2ケーシングと、
を備え、
前記リングギヤは前記第2ケーシングに固定される、駆動ユニット。
【請求項4】
請求項1記載の駆動ユニットにおいて、
前記緩衝部材は、
前記抜け止め爪が挿通される長穴を備えている、駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される開閉体を開閉する駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワゴン車やワンボックス車等の車両の側部には、乗員の乗降や荷物の出し入れを容易にするために、比較的大きな出入口が形成されている。この出入口は、ローラアッシーを備えたスライドドア(開閉体)により開閉されるようになっている。スライドドアは重量が嵩むため、当該スライドドアを備えた車両には、スライドドアを自動的に開閉し得るスライドドア開閉機構が搭載されている。
【0003】
スライドドア開閉機構は、スライドドアを開方向および閉方向に移動させる開側ケーブルおよび閉側ケーブルを牽引する駆動ユニットを備えている。この駆動ユニットは、開側ケーブルおよび閉側ケーブルが互いに逆向きに巻掛けられたドラムを有し、当該ドラムを正転または逆転させることにより、開側ケーブルまたは閉側ケーブルが牽引され、ひいてはスライドドアが開方向または閉方向に移動される。
【0004】
駆動ユニットは、車両の比較的狭いスペースに搭載され、さらには重量が嵩むスライドドアを駆動するため、小型かつ高出力とする必要がある。そこで、駆動ユニットの駆動源(電動モータ)とドラムとの間に、減速機構を設けるようにしている。このような減速機構を備えた駆動ユニットとしては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0005】
特許文献1に記載されたスライドアクチュエータ(駆動ユニット)は、駆動源であるモータ(電動モータ)と、ワイヤ(ケーブル)が巻掛けられたドラムとを備えている。また、モータとドラムとの間には、直径寸法が異なる複数のギヤ(平歯車)を噛み合わせて形成された減速機構が設けられている。この減速機構は、所謂スパー減速機であってウォーム減速機に比して減速比が小さいため、モータとしては低速かつ高トルク型のモータを採用する必要がある。なお、ウォーム減速機を駆動するモータの仕様としては、定格回転数が3000rpm以上の高速型を採用することが多い。
【0006】
その一方で、特許文献1に記載されたスライドアクチュエータは、単純な平歯車の組み合わせによって減速機構を形成できるため、スライドアクチュエータを小型化(薄型化)することが可能であり、さらには低速型のモータの採用によりスライドアクチュエータの静音化を実現できるといったメリットを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−131612号公報(図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、特許文献1に記載された駆動ユニットにおいては、当該駆動ユニットの小型化や静音化には有利な構造であるため、現在の主流のモデルとなってきている。しかしながら、駆動ユニットに設けられる減速機が平歯車の組み合わせによって形成され、さらには駆動ユニットのモータが低速型のモータであることに起因して、駆動ユニットからは低周波振動が発生される。そして、駆動ユニットが発生する低周波振動は、駆動ユニットの車体固定部材から、車両側の取り付け部である車体パネルに伝搬される。このとき、固有振動数の低い車体パネルが、駆動ユニットから伝搬される低周波振動によって共振し、ひいては当該共振に伴う騒音が車内に伝搬され、乗員に不快感を与える等の問題を生じていた。
【0009】
本発明の目的は、平歯車を組み合わせて形成される減速機を備えた駆動ユニットとしても、低周波振動による騒音の発生を抑制することができる駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様では、車両に搭載される開閉体を開閉する駆動ユニットであって、内部に回転軸が回転自在に収容されるケーシングと、前記ケーシングに固定されるリングギヤを備えた遊星歯車減速機と、前記ケーシングに装着され、前記車両に固定される車両固定部材と、前記ケーシングと前記車両固定部材との間に設けられる緩衝部材と、を有し、前記車両固定部材は、前記ケーシングからの脱落を防止する抜け止め爪を備え、前記ケーシングは、前記 抜け止め爪が入り込む引っ掛け凹部を備えている。
【0011】
本発明の他の態様では、前記ケーシングは、前記回転軸を回転させる電動モータが収容される第1ケーシングと、前記車両固定部材が装着される第2ケーシングと、を備え、前記リングギヤは前記第1ケーシングに固定され、前記第2ケーシングには前記リングギヤと当接する当接部が設けられる。
【0012】
本発明の他の態様では、前記ケーシングは、前記回転軸を回転させる電動モータが収容される第1ケーシングと、前記車両固定部材が装着される第2ケーシングと、を備え、前記リングギヤは前記第2ケーシングに固定される。本発明の他の態様では、前記緩衝部材は、前記抜け止め爪が挿通される長穴を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、遊星歯車減速機のリングギヤがケーシングに固定され、当該ケーシングには、緩衝部材を介して車両に固定される車両固定部材が設けられている。したがって、平歯車で形成し得る遊星歯車減速機の採用による小型化はもちろんのこと、遊星歯車減速機からの低周波振動が緩衝部材によって車両に伝搬されるのを抑制することができる。これにより、固有振動数の低い車両の車体パネルが共振するのを防止できる。よって、車体パネルの共振に伴う騒音が車内に伝搬され、乗員に不快感を与えることを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態1に係る駆動ユニットを搭載した車両を示す側面図である。
図2】スライドドアの取り付け構造を示す平面図である。
図3】駆動ユニットの詳細構造を示す平面図である。
図4図3のA−A線に沿う部分断面図である。
図5】モータケース蓋に対するリングギヤの固定構造を説明する分解斜視図である。
図6】リングギヤに対するドラム収容ケースの支持構造を説明する分解斜視図である。
図7図4の破線円B部分を示す拡大断面図である。
図8】(a),(b)は、取付ブッシュの詳細構造を説明する斜視図である。
図9】取付ブッシュのドラム収容ケースへの取り付け手順を説明する説明図である。
図10】実施の形態2に係る駆動ユニットの図4に対応した部分断面図である。
図11】ドラム収容ケースに対するリングギヤの固定構造を説明する分解斜視図である。
図12】リングギヤに対するモータケース蓋の支持構造を説明する分解斜視図である。
図13図10の破線円D部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1は実施の形態1に係る駆動ユニットを搭載した車両を示す側面図を、図2はスライドドアの取り付け構造を示す平面図を、図3は駆動ユニットの詳細構造を示す平面図を、図4図3のA−A線に沿う部分断面図を、図5はモータケース蓋に対するリングギヤの固定構造を説明する分解斜視図を、図6はリングギヤに対するドラム収容ケースの支持構造を説明する分解斜視図を、図7図4の破線円B部分を示す拡大断面図を、図8(a),(b)は取付ブッシュの詳細構造を説明する斜視図を、図9は取付ブッシュのドラム収容ケースへの取り付け手順を説明する説明図をそれぞれ示している。
【0017】
図1に示す車両10は、例えば8人乗車が可能なワゴン車であり、車両10の車体11における側部には、比較的大きな出入口12が形成されている。出入口12は、車両10に搭載されたスライドドア(開閉体)13により開閉され、スライドドア13は車体11の側部に固定されたガイドレール14に案内され、全閉位置と全開位置との間で車両10の前後方向にスライドするようになっている。そして、スライドドア13を全開位置に向けてスライドさせることで出入口12が開き、乗員の乗降や荷物の積み下ろし等を容易に行うことができる。
【0018】
図2に示すように、スライドドア13の車両後方側で、かつスライドドア13の上下方向中央部には、ローラアッシー15が設けられている。ローラアッシー15はガイドレール14に案内され、これによりスライドドア13は車体11の側部に沿って車両10の前後方向に移動される。ガイドレール14の車両前方側には、車室内側(図中上側)に湾曲した湾曲部14aが設けられ、ローラアッシー15が湾曲部14aに案内されると、スライドドア13は、図中二点鎖線で示すように車体11の側面と略同一面となるよう車体11の内側に引き込まれて全閉位置の状態となる。
【0019】
ここで、スライドドア13の上下方向中央部に設けたローラアッシー15に加え、スライドドア13の車両前方側でかつ上下部分にもそれぞれローラアッシー(図示せず)が設けられている。また、上下部分のローラアッシーに対応して、車体11の出入口12の上下部分にもガイドレール(図示せず)がそれぞれ設けられている。このように、スライドドア13は車体11に対して計3箇所で支持され、これにより車体11に対して安定した開閉動作が可能となっている。
【0020】
車両10の車体11における側部には、スライドドア13を開閉駆動するためのスライドドア開閉機構20が設けられている。スライドドア開閉機構20は、駆動ユニット30を備えており、当該駆動ユニット30は、ガイドレール14の前後方向における略中央部に隣接して、車体11の内部に設けられた車体パネル11aに固定されている。ここで、車体パネル11aは、車体11の骨格を形成するものであって、鋼板をプレス加工等することにより所定形状に形成されている。
【0021】
スライドドア開閉機構20は、ガイドレール14の車両後方側に設けられる反転プーリ21,ガイドレール14の車両前方側に設けられる反転プーリ22,スライドドア13を全開位置に向けて引っ張る開側ケーブル23,スライドドア13を全閉位置に向けて引っ張る閉側ケーブル24を備えている。各ケーブル23,24の一端側は、駆動ユニット30に延ばされている。一方、各ケーブル23,24の他端側は、各反転プーリ21,22を介して、車両後方側および車両前方側からそれぞれローラアッシー15(スライドドア13)に接続されている。
【0022】
そして、駆動ユニット30を正転駆動(図3の反時計回り方向を参照)することで、開側ケーブル23が牽引されてスライドドア13は開方向に駆動される。一方、駆動ユニット30を逆転駆動(図3の時計回り方向を参照)することで、閉側ケーブル24が牽引されてスライドドア13は閉方向に駆動される。
【0023】
なお、各ケーブル23,24の車体11の外部に配置される部分は、ガイドレール14の内部の案内溝(図示せず)に隠されている。これにより各ケーブル23,24は外部に露出されることが無い。よって、車両10の見栄えを良好にでき、各ケーブル23,24を雨水や埃等から保護できる。
【0024】
また、各反転プーリ21,22と駆動ユニット30との間には、各ケーブル23,24の周囲を覆い、各ケーブル23,24を摺動自在に保持するアウターケーシング25,26がそれぞれ設けられている。各アウターケーシング25,26は可撓性を有し、その内側には所定の粘度を有するグリス(図示せず)が塗布されている。これにより、各ケーブル23,24を保護しつつ、各ケーブル23,24の各アウターケーシング25,26に対するスムーズな摺動が確保されている。
【0025】
図3および図4に示すように、駆動ユニット30はケーシング31を備えており、ケーシング31は、モータケース部40とドラムケース部60とから形成されている。モータケース部40は、有底のモータ収容ケース42と、当該モータ収容ケース42の開口部分(図4中下側)を閉塞する略平板状に形成されたモータケース蓋41とを備えている。
【0026】
ドラムケース部60は、ドラム収容ケース61とドラムケース蓋62とを備えている。ドラム収容ケース61は、ドラム63を収容するドラム収容部61aと、一対のテンショナ機構70をそれぞれ収容する一対のテンショナ収容部61bとを備えている。ドラムケース蓋62においても略平板状に形成され、当該ドラムケース蓋62は、ドラム収容ケース61のドラム収容部61aおよび各テンショナ収容部61bの双方を閉塞するようになっている。
【0027】
図4に示すように、モータ収容ケース42,モータケース蓋41,ドラム収容ケース61およびドラムケース蓋62は、図示しないシール部材を介して互いに密閉状態となるよう接続されている。これにより、駆動ユニット30の内部に雨水や埃等が進入するのを防止している。ここで、図3においては、ケーシング31の内部構造を分かり易くするために、ドラムケース蓋62を省略した状態を表している。
【0028】
なお、モータ収容ケース42,モータケース蓋41,ドラム収容ケース61およびドラムケース蓋62は、本発明におけるケーシングを構成している。また、モータ収容ケース42およびモータケース蓋41は、本発明における第1ケーシングを構成し、ドラム収容ケース61およびドラムケース蓋62は、本発明における第2ケーシングを構成している。
【0029】
図4に示すように、モータケース部40の内部には、低速かつ高トルク型の電動モータ(駆動源)43が収容されており、当該電動モータ43の定格回転数は、2000rpm以下の低速に設定されている。電動モータ43は、U相,V相,W相のコイル44を備えた三相ブラシレスモータで形成され、モータ収容ケース42に固定された略円盤形状のステータコア(固定子)45を備えている。そして、ステータコア45には、三相のコイル44が所定の巻き方および巻き数で巻装されている。ステータコア45の径方向内側には、所定の微小隙間(エアギャップ)を介してロータ(回転子)46が回転自在に設けられている。このように、駆動ユニット30は、インナーロータ型の三相ブラシレスモータを駆動源としている。
【0030】
ロータ46は、鋼板等をプレス加工することにより略環状に形成され、その断面形状は略U字形状となっている。ロータ46の径方向外側には、ロータ46の軸方向に延びるようにして外周壁部46aが設けられ、ロータ46の径方向内側には、ロータ46の軸方向に延びるようにして内周壁部46bが設けられている。なお、外周壁部46aの長さの方が、内周壁部46bの長さよりも長く設定されている。
【0031】
外周壁部46aの径方向外側には、ロータ46の周方向に沿って複数極に着磁された筒状の永久磁石47が固定されている。この永久磁石47は、ステータコア45の径方向内側と対向しており、これにより三相のコイル44に順次駆動電流を供給することにより、ステータコア45が発生する電磁力(吸引力)によって、ロータ46が所定の回転方向に所定の駆動トルクで回転するようになっている。
【0032】
内周壁部46bの径方向内側には、回転軸としてのロータシャフト48の基端側が圧入により固定されている。ロータシャフト48は、ケーシング31の内部に回転自在に収容され、中実の丸綱棒を切削加工等することにより略段付き円柱形状に形成されている。そして、ロータシャフト48は、第1円柱部48a,第2円柱部48b,第3円柱部48cおよび第4円柱部48dを備え、第1円柱部48aから第4円柱部48dに向けて徐々に小径となり、最も大径となった第1円柱部48aがロータ46に固定されている。
【0033】
ロータシャフト48の最も小径となった第4円柱部48d、つまりロータシャフト48の先端側は、ドラムケース部60の内部に設けられている。そして、ロータシャフト48の第4円柱部48dは、ドラム収容部61aの内部の略中心部分に回転自在に配置され、ドラム63の軸方向一側(図4中下側)を回転自在に支持するようになっている。
【0034】
ロータシャフト48の第2円柱部48bは、第1,第2ボールベアリング(軸受)49a,49bにより回転自在に支持されている。各ボールベアリング49a,49bは、モータ収容ケース42の略中央部分に設けられた装着筒部42aの径方向内側にそれぞれ装着されている。そして、各ボールベアリング49a,49bは同軸上に配置され、これによりロータシャフト48は軸心Cを中心として、ロータ46の回転に伴い回転するようになっている。つまり、電動モータ43は、ロータシャフト48と同軸上に設けられ、ロータシャフト48を回転させるようになっている。
【0035】
ただし、図示のように、インナーレース,アウターレースおよびボールを有する玉軸受である、第1,第2ボールベアリング49a,49bに限らず、例えば、円筒鋼管の内側にフッ素樹脂層が形成された、所謂メタル軸受(すべり軸受)を採用することもできる。
【0036】
モータケース部40の内部には、電動モータ43に加えて、センサ基板50が収容されており、当該センサ基板50は、モータ収容ケース42の円板状本体部42bに固定されている。センサ基板50には、ロータ46の回転状態、つまりロータ46の回転数や回転位置を検出する回転センサ51が実装されている。回転センサ51は、ロータシャフト48の軸方向に沿って、永久磁石47と対向されている。これにより、回転センサ51は永久磁石47の磁極の変化を検出、すなわちロータ46のステータコア45に対する回転状態を検出するようになっている。
【0037】
なお、回転センサ51は車載コントローラ(図示せず)に電気的に接続されており、回転センサ51の検出信号は車載コントローラに送出されるようになっている。そして、車載コントローラは、回転センサ51からの検出信号に基づいて、単位時間当たりの磁極の変化が速い場合にはロータ46の回転数が速いことを認識し、磁極の変化をカウントすることでロータ46の回転位置を認識するようになっている。
【0038】
ドラムケース部60の内部には、ドラム63が回転自在に収容されている。具体的にはドラム63は、ドラム収容ケース61のドラム収容部61aの内部に回転自在に収容されている。ドラム収容部61aは略円筒形状に形成されており、当該ドラム収容部61aの径方向内側と、ドラム63の外周部分との間には、微小隙間Sが形成されている。
【0039】
ここで、ドラム63の軸方向一側を、ロータシャフト48の第4円柱部48dに回転自在に支持させ、ドラム63の軸方向他側を、ドラムケース蓋62に一体成形された蓋側円筒部62aに回動自在に支持させている。これにより、駆動ユニット30の作動時等において、ドラム63が傾斜されるのを防止している。したがって、ドラム収容部61aの径方向内側とドラム63の外周部分との間の隙間を微小隙間Sにでき、ドラムケース部60のドラム63の径方向に沿う寸法(幅寸法)を詰められるようにしている。このように、ドラム63においても、電動モータ43と同様にロータシャフト48と同軸上に設けられている。
【0040】
ドラム63の外周部分には、各ケーブル23,24が入り込む螺旋状のケーブル溝63aが形成されている。このケーブル溝63aは、各ケーブル23,24の一端側の巻掛けを案内するもので、当該ケーブル溝63aには、各ケーブル23,24の一端側が複数回巻掛けられている。そして、ドラム63の正転駆動により開側ケーブル23がケーブル溝63aに巻掛けられ、ドラム63の逆転駆動により閉側ケーブル24がケーブル溝63aに巻掛けられる。このようにドラム63を正逆方向に回転駆動することで、各ケーブル23,24の一部がケーシング31内に出入りするようになっている。
【0041】
ドラム63の内周部分には、当該ドラム63の軸方向に貫通する貫通孔63bが形成されている。この貫通孔63bの軸方向一側には、当該貫通孔63bよりも大径となった第1軸受固定部63cが形成され、貫通孔63bの軸方向他側には、第1軸受固定部63cと同じ直径寸法の第2軸受固定部63dが形成されている。そして、各軸受固定部63c,63dには、第3,第4ボールベアリング(軸受)64a,64bが圧入によりそれぞれ固定されている。
【0042】
ここで、各ボールベアリング64a,64bの内径寸法は、貫通孔63bの内径寸法よりも若干小さい内径寸法(詳細図示せず)に設定されている。これにより、第3ボールベアリング64aに、ロータシャフト48の第4円柱部48dを貫通させて装着した状態(図4の状態)のもとで、第4円柱部48dと貫通孔63bとが接触しないようになっている。これにより、第4円柱部48dとドラム63とが、略抵抗無くスムーズに相対回転可能となっている。
【0043】
また、第4ボールベアリング64bに、ドラムケース蓋62の蓋側円筒部62aを貫通させて装着した状態(図4の状態)のもとで、蓋側円筒部62aと貫通孔63bとが接触しないようになっている。これにより、蓋側円筒部62aとドラム63とが、略抵抗無くスムーズに相対回転可能となっている。
【0044】
ここで、第3,第4ボールベアリング64a,64bにおいても、図示のように、インナーレース,アウターレースおよびボールを有する玉軸受に限らず、例えば、円筒鋼管の内側にフッ素樹脂層が形成された、所謂メタル軸受(すべり軸受)を採用することもできる。
【0045】
図3に示すように、ドラム収容ケース61の図中左右側には、ドラム収容部61aを挟むようにして、一対のテンショナ収容部61bが対向配置されている。各テンショナ収容部61bは、開側ケーブル23および閉側ケーブル24のそれぞれに対応して設けられている。テンショナ収容部61bは、略長方形形状に形成され、内部にはテンショナ機構70が収容されている。
【0046】
テンショナ機構70は、テンショナプーリ71とコイルスプリング72とを備えており、テンショナプーリ71には、各ケーブル23,24が巻掛けられている。コイルスプリング72は、テンショナプーリ71を、図中矢印M方向に常時押圧しており、これにより各ケーブル23,24の長期使用等による弛み(伸び)が取り除かれる。よって、スライドドア13(図1および図2参照)の駆動時におけるガタつきの発生を防止することができる。
【0047】
図4に示すように、ロータシャフト48の軸方向に沿う電動モータ43とドラム63との間には、遊星歯車機構よりなる減速機構80が設けられている。この減速機構80は、ロータシャフト48とドラム63との間に動力伝達可能に設けられ、本発明における遊星歯車減速機を構成している。減速機構80は、サンギヤ81,リングギヤ82,3つのプラネタリギヤ83(図示では1つのみを示す)およびキャリア84を備えており、各ギヤ81,82,83は平歯車となっている。ここで、減速機構80の減速比は、約30:1以下の低減速比に設定されている。このように、減速機構80においても、電動モータ43と同様にロータシャフト48と同軸上に設けられている。したがって、電動モータ43,ドラム63および減速機構80は、ロータシャフト48を軸心としてそれぞれ同軸上に配置されている。
【0048】
サンギヤ81は、ロータシャフト48の第3円柱部48cに固定されており、ロータシャフト48と一体回転するようになっている。リングギヤ82は、サンギヤ81の周囲に所定間隔を空けて配置され、ケーシング31に固定されている。各プラネタリギヤ83は、減速機構80の径方向に沿うサンギヤ81とリングギヤ82との間に配置され、各プラネタリギヤ83は、サンギヤ81およびリングギヤ82の双方に噛み合わされて、両者間で転動するようになっている。このように、各ギヤ81,82,83を横並びに配置しているため、従前のように軸方向に複数のギヤを積層した減速機に比して、駆動ユニット30をより薄型化できるようになっている。
【0049】
キャリア84は、3つのプラネタリギヤ83を等間隔(120度間隔)で回転自在に支持し、キャリア84の径方向内側は、第5ボールベアリング85を介してロータシャフト48の第4円柱部48dに回動自在に支持されている。ここで、第5ボールベアリング85においても、図示のように、インナーレース,アウターレースおよびボールを有する玉軸受に限らず、例えば、円筒鋼管の内側にフッ素樹脂層が形成された、所謂メタル軸受(すべり軸受)を採用することもできる。
【0050】
キャリア84は、ドラム63に一体に設けられた突出ピン63eに連結されており、これによりドラム63はキャリア84と一体回転するようになっている。そして、サンギヤ81の回転速度は所定の回転速度にまで減速されて高トルク化され、当該高トルク化された回転力が、キャリア84を介してドラム63に伝達されるようになっている。
【0051】
ここで、電動モータ43とドラム63との間には、減速機構80のみが設けられている。つまり、電動モータ43とドラム63との間の動力伝達を遮断し得る電磁クラッチ等が設けられていない。これにより、駆動ユニット30の小型軽量化を実現しつつ、駆動ユニット30の制御ロジックを簡素化できるようにしている。
【0052】
そして、電動モータ43,ドラム63および減速機構80は、ロータシャフト48を軸心としてそれぞれ同軸上に配置され、かつ電動モータ43は、三相ブラシレスモータとなっている。そのため、スライドドア13を手動で開閉するときには、減速機構80によって電動モータ43が増速されて回転するが、比較的軽い力で容易に電動モータ43を供回りさせることができる。したがって、スライドドア13を、手動であってもスムーズに開閉することができる。
【0053】
また、スライドドア13が手動で全開位置および全閉位置に到達したときには、電動モータ43には慣性力が作用する。そのため、本来であれば電動モータ43を大きな慣性力に耐え得る強固な構造とする必要がある。しかしながら、本実施の形態においては、電動モータ43をインナーロータ型の三相ブラシレスモータとしており、よって慣性質量(ロータ質量)が小さくなっている。そのため、電動モータ43に作用する慣性力はそれほど大きく無く、当該電動モータ43をそれほど強固な構造とする必要が無い。
【0054】
さらに、遊星歯車機構よりなる減速機構80においては、慣性力を生じさせる部品がサンギヤ81および各プラネタリギヤ83(キャリア84)となっている。そのため、最も外周部分に配置され、かつ最も重量が嵩む部品であるリングギヤ82が、慣性質量とならない。よって、減速機構80においても慣性質量が小さく、さらにはリングギヤ82の回転に起因する減速機構80の「振れ」も抑制される。そのため、減速機構80の急停止時に発生する衝撃が抑制され、かつ振動や騒音の発生等についても効果的に抑制される。
【0055】
図5および図6に示すように、減速機構80を形成するリングギヤ82の外周部分には、3つの係合突起82aが一体に設けられている。これらの係合突起82aは、リングギヤ82の径方向外側にそれぞれ突出されており、リングギヤ82の周方向に略等間隔(120°間隔)で配置されている。
【0056】
図4および図5に示すように、リングギヤ82は、モータ収容ケース42のドラム収容ケース61側に固定されるようになっている。具体的には、リングギヤ82は、モータ収容ケース42の円板状本体部42bの周囲に一体に設けられたリングギヤ装着部42cに固定されるようになっている。
【0057】
リングギヤ装着部42cは、リングギヤ82の径方向への移動(軸心Cからのズレ)を規制する環状壁部42dと、リングギヤ82の各係合突起82aがそれぞれ入り込んで係合される3つの係合凹部42e(図示では2つのみ示す)とを備えている。このように、各係合突起82aを各係合凹部42eに係合させることで、リングギヤ82が周方向に空転されるのを防止している。
【0058】
また、図6に示すように、ドラム収容ケース61のモータ収容ケース42側には、リングギヤ装着部42cに装着されたリングギヤ82を軸方向から支持するリングギヤ支持部61cが一体に設けられている。このリングギヤ支持部61cは環状に形成され、モータ収容ケース42側に向けて突出されている。そして、リングギヤ支持部61cは、駆動ユニット30を組み立てた状態(図4参照)のもとで、リングギヤ装着部42cの環状壁部42dに嵌合されるとともに、リングギヤ82に当接されるようになっている。
【0059】
このように、リングギヤ支持部61cによりリングギヤ82を軸方向から支持させることで、リングギヤ82の軸方向への移動が規制される。つまり、リングギヤ82は、その径方向,軸方向および周方向に移動または回転されること無くケーシング31に固定されている。ここで、リングギヤ支持部61cは、本発明における当接部を構成している。
【0060】
また、リングギヤ82はモータ収容ケース42に固定され、かつロータシャフト48は各ボールベアリング49a,49bを介してモータ収容ケース42に回転自在に支持されている。このように、リングギヤ82およびロータシャフト48のいずれもがモータ収容ケース42に固定あるいは支持されている。そのため、ロータシャフト48の第3円柱部48cに固定されたサンギヤ81と、リングギヤ82との同軸度が精度良く保たれて、この点からも減速機構80の振動や騒音の発生等が効果的に抑制される。
【0061】
図4および図6に示すように、ドラム収容ケース61には、ドラム63と減速機構80のキャリア84との間に入り込む、円板状の介在部材61dが一体に設けられている。この介在部材61dは、ドラム収容部61aよりも径方向内側に突出して薄肉に形成されている。このように、介在部材61dを、ドラム63とキャリア84との間に介在させることにより、ドラムケース部60とモータケース部40との間に迷路状(ラビリンス状)の屈曲通路Gを形成している。
【0062】
これにより、各ケーブル23,24を介してドラムケース部60の内部に入ってしまった雨水や埃等が、減速機構80の各ギヤ81,82,83の噛み合い部分や、電動モータ43,センサ基板50等に到達されるのを防止している。したがって、駆動ユニット30の長寿命化およびメンテナンス性の向上を図ることが可能となっている。
【0063】
図7に示すように、ドラム収容ケース61には、ブッシュ取付部61eが一体に設けられている。このブッシュ取付部61eは、ドラム収容ケース61の周囲に4箇所設けられている(図3参照)。ブッシュ取付部61eは、図9に示すように略C字形状に形成されており、ブッシュ取付部61eの先端側の開口部分から、図8に示す取付ブッシュ90が差し込み固定(装着)されるようになっている。
【0064】
ブッシュ取付部61eの基端側には、図7に示すように、当該ブッシュ取付部61eの肉厚方向に窪むようにして形成された引っ掛け凹部61fが設けられている。この引っ掛け凹部61fには、取付ブッシュ90をブッシュ取付部61eに固定した状態のもとで、取付ブッシュ90を形成する抜け止め爪91eが入り込むようになっている。
【0065】
図8に示すように、取付ブッシュ90は、駆動ユニット30を車体パネル11a(図2参照)に固定するために用いられるもので、芯金部材91とゴムダンパ92とを備えている。芯金部材91は、車体パネル11a(車両10)に固定され、ゴムダンパ92は、駆動ユニット30のドラム収容ケース61に固定されるようになっている。
【0066】
ここで、芯金部材91は、本発明における車両固定部材を構成しており、当該芯金部材91は、ゴムダンパ92を介してドラム収容ケース61に装着されるようになっている。また、ゴムダンパ92は、本発明における緩衝部材を構成しており、当該ゴムダンパ92は、車両固定部材としての芯金部材91と、ケーシングとしてのドラム収容ケース61との間に設けられるようになっている。
【0067】
芯金部材91は、図7に示すように、小径筒部91aと、当該小径筒部91aよりも大径となった大径筒部91bとを備えている。小径筒部91aと大径筒部91bとは一体化されており、その端部には、径方向外側に拡開された第1フランジ部91cおよび第2フランジ部91dが一体に設けられている。
【0068】
第2フランジ部91dは、第1フランジ部91cよりも大径に設定され、第2フランジ部91dには、大径筒部91b側(図7中上側)に折り返された平板状の抜け止め爪91eが一体に設けられている。この抜け止め爪91eの先端部分は、ブッシュ取付部61eの引っ掛け凹部61fに入り込むようになっており、これにより、例えば、駆動ユニット30を単体で搬送する際に、取付ブッシュ90がブッシュ取付部61eから脱落するのを防止できる。
【0069】
ここで、第1フランジ部91cを第2フランジ部91dよりも小径に設定することで、当該第1フランジ部91c側からゴムダンパ92を弾性変形させつつ容易に装着できるようにしている。これにより、取付ブッシュ90の組み立て性を向上させている。
【0070】
ゴムダンパ92は、天然ゴム材料により横断面形状が略四角形形状となるよう形成されている。ゴムダンパ92の内側には貫通孔92aが形成されており、貫通孔92aの軸方向一側(図7中上側)には、第1フランジ部91cが配置され、貫通孔92aの軸方向他側(図7中下側)には、第2フランジ部91dが配置されている。なお、第1フランジ部91cは、ゴムダンパ92の内側に配置され(図8(a)参照)、第2フランジ部91dは、ゴムダンパ92の外側に配置されている(図8(b)参照)。これにより、芯金部材91およびゴムダンパ92の組み付け状態(差し込み量)の良否を容易に確認することができる。
【0071】
ゴムダンパ92の軸方向に沿う第2フランジ部91d側には、長穴92bが形成された延在部92cが一体に設けられている。この延在部92cは、ゴムダンパ92の軸方向に沿う第1フランジ部91c側よりも、芯金部材91の径方向外側に延在されており、長穴92bには抜け止め爪91eが挿通されている。
【0072】
ゴムダンパ92の軸方向に沿う略中央部分には、横断面形状が略円形形状に形成された固定本体92dが設けられている。固定本体92dは、ブッシュ取付部61eの開口部分から差し込み固定され、当該固定本体92dの軸方向寸法は、ブッシュ取付部61eの肉厚寸法と略同じ寸法に設定されている。これにより、取付ブッシュ90は、ブッシュ取付部61eにガタつくこと無く固定される。
【0073】
このように取付ブッシュ90を形成することで、取付ブッシュ90をブッシュ取付部61eに装着した状態のもとで、車体パネル11aに固定される芯金部材91と、駆動ユニット30のドラム収容ケース61に固定されるゴムダンパ92との間には、ゴムダンパ92が配置されることになる。これにより、図7の太破線矢印に示すように、減速機構80のリングギヤ82から伝搬される低周波振動が、ドラム収容ケース61のリングギヤ支持部61cおよびブッシュ取付部61eを介してゴムダンパ92に伝搬され、当該ゴムダンパ92に吸収される。よって、リングギヤ82からの低周波振動が、芯金部材91、つまり車体パネル11a(車両10)に伝搬されることが無い。
【0074】
これとは逆に、車体パネル11a側から伝搬される種々の振動においても、ゴムダンパ92に吸収されるため、車体パネル11a側から駆動ユニット30に種々の振動が伝搬されるのを防止することができる。よって、駆動ユニット30の長寿命化を図ることができる。
【0075】
図7に示すように、芯金部材91の大径筒部91bには、電動モータ43(図4参照)の周囲に配置された電子部品(図示せず)等を接地するための、アース端子ETが電気的に接続されている。一方、芯金部材91の小径筒部91aには、車体パネル11aに設けられた鋼材製の差し込みピン(図示せず)が、差し込まれて嵌合するようになっている。
【0076】
これにより、図7に示すように電動モータ43等で発生したモータノイズを、車体パネル11aに逃がす、つまりボディアースすることができ、ひいては回転センサ51(図4参照)の検出誤差を無くして、駆動ユニット30を精度良く駆動することが可能となる。
【0077】
なお、車体パネル11aに対する駆動ユニット30の固定を差し込みピンのみで行うと、走行振動等により駆動ユニット30が車体パネル11aから脱落する虞がある。そのため、4つある取付ブッシュ90(図3参照)のうちの、上述したもの以外の他の3つについては、ボルト−ナット(図示せず)等の固定手段によって、車体パネル11aに固定される。
【0078】
以上のように形成された取付ブッシュ90は、図9に示す取り付け手順によって、ブッシュ取付部61eに装着される。
【0079】
まず、図9の破線矢印(1)に示すように、芯金部材91の第1フランジ部91c側を、ゴムダンパ92の延在部92c側に臨ませて、両者を近接するよう移動させる。このとき、ゴムダンパ92の長穴92bと、芯金部材91の抜け止め爪91eとを整合させるようにする。そして、芯金部材91をゴムダンパ92の貫通孔92aに差し込んでいく。ここで、第1フランジ部91cは小径であるため、ゴムダンパ92を若干弾性変形させるだけで、容易に差し込めるようになっている。その後、長穴92bに抜け止め爪91eを挿通させ、芯金部材91の第2フランジ部91dをゴムダンパ92に当接させることで、取付ブッシュ90が完成する。
【0080】
次いで、図9の破線矢印(2)に示すように、完成した取付ブッシュ90の抜け止め爪91e側を、ブッシュ取付部61eの開口部分に臨ませて、固定本体92d(図8参照)を押し込んでブッシュ取付部61eに嵌合させる。このとき、ゴムダンパ92を弾性変形させつつ、ブッシュ取付部61eに対して取付ブッシュ90を若干傾斜させるようにする。これにより、抜け止め爪91eの先端部分が、ブッシュ取付部61eの引っ掛け凹部61f(図7参照)に入り込み、取付ブッシュ90のブッシュ取付部61eへの取り付けが完了する。
【0081】
以上詳述したように、実施の形態1に係る駆動ユニット30によれば、減速機構80のリングギヤ82がケーシング31に固定され、当該ケーシング31には、ゴムダンパ92を介して車体パネル11aに固定される芯金部材91が設けられている。したがって、平歯車よりなる各ギヤ81,82,83で形成された減速機構80の採用による小型化はもちろんのこと、減速機構80からの低周波振動がゴムダンパ92によって車体パネル11aに伝搬されるのを抑制することができる。
【0082】
これにより、固有振動数の低い車両10の車体パネル11aが共振するのを防止できる。よって、車体パネル11aの共振に伴う騒音が車内(図示せず)に伝搬され、乗員に不快感を与えることを確実に防止できる。
【0083】
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
図10は実施の形態2に係る駆動ユニットの図4に対応した部分断面図を、図11はドラム収容ケースに対するリングギヤの固定構造を説明する分解斜視図を、図12はリングギヤに対するモータケース蓋の支持構造を説明する分解斜視図を、図13図10の破線円D部分を示す拡大断面図をそれぞれ示している。
【0085】
図10ないし図13に示すように、実施の形態2に係る駆動ユニット100は、上述した実施の形態1に係る駆動ユニット30に比して、リングギヤ82の固定構造,迷路状の屈曲通路Gの形状および取付ブッシュ90の取付方向の主に3箇所が異なっている。以下、その相違点について順に説明する。
【0086】
[リングギヤ82の固定構造]
図10および図11に示すように、リングギヤ82は、ドラム収容ケース61のモータ収容ケース42側に固定されるようになっている。具体的には、リングギヤ82は、ドラム収容ケース61のドラム収容部61aよりも径方向外側の部分で、モータ収容ケース42側に一体に設けられたリングギヤ装着部101に固定されている。つまり、実施の形態2においては、第2ケーシングとしてのドラム収容ケース61に、リングギヤ82が固定されている。
【0087】
リングギヤ装着部101は、リングギヤ82の径方向への移動(軸心Cからのズレ)を規制する環状壁部102と、リングギヤ82の各係合突起82aがそれぞれ入り込んで係合される3つの係合凹部103とを備えている。このように、各係合突起82aを各係合凹部103に係合させることで、リングギヤ82が周方向に空転されるのを防止している。
【0088】
また、図12に示すように、モータ収容ケース42のドラム収容ケース61側には、リングギヤ装着部101に装着されたリングギヤ82を支持し、リングギヤ82の脱落を防止するリングギヤ支持部104が一体に設けられている。このリングギヤ支持部104は環状に形成され、ドラム収容ケース61側に向けて突出されている。そして、リングギヤ支持部104は、駆動ユニット100を組み立てた状態(図10参照)のもとで、環状壁部102よりも大径に設定された環状嵌合部105(図11参照)に嵌合されるようになっている。
【0089】
[迷路状の屈曲通路Gの形状]
図10に示すように、キャリア84の外周には、ドラム63側に向けて斜めに屈曲された屈曲介在部106が一体に設けられている。この屈曲介在部106は、ドラム収容ケース61のドラム収容部61aの近傍で、かつモータ収容ケース42側に向けて斜めに開口された環状溝107の内部に介在されるようになっている。
【0090】
このように、屈曲介在部106を環状溝107の内部に介在させることにより、ドラムケース部60とモータケース部40との間に迷路状(ラビリンス状)の屈曲通路Gを形成している。これにより、実施の形態1と同様に、駆動ユニット100の長寿命化およびメンテナンス性の向上が図れるようになっている。
【0091】
[取付ブッシュ90の取付方向]
図13に示すように、ドラム収容ケース61には、ブッシュ取付部108が一体に設けられている。このブッシュ取付部108の基端側には、当該ブッシュ取付部108の肉厚方向に窪むようにして形成された引っ掛け凹部109が設けられている。この引っ掛け凹部109は、上述した実施の形態1とは逆に、モータケース部40側に向けて窪んでいる。つまり、取付ブッシュ90の取付方向が、上述した実施の形態1とは逆となっており、ドラムケース蓋62側(図中上側)から、取付ブッシュ90の抜け止め爪91eが引っ掛け凹部109に入り込むようになっている。
【0092】
なお、図13においては、図7(実施の形態1)に示すようなアース端子ETが無い部分、つまり、ボルト−ナット(図示せず)等の固定手段により車体パネル11a(図2参照)に固定される取付ブッシュ90を示している。
【0093】
以上のように形成された駆動ユニット100においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0094】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態においては、電動モータ43として、三相ブラシレスモータを採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、五相ブラシレスモータやブラシ付き電動モータ等、他の駆動源を採用しても良い。
【0095】
また、上記各実施の形態においては、開閉体として、車両10に搭載されたスライドドア13であるものを示したが、本発明はこれに限らず、車両に搭載されたサンルーフ装置等の他の開閉体にも、本発明の駆動ユニットを適用することができる。
【0096】
さらに、上記各実施の形態においては、緩衝部材として、天然ゴム材料よりなるゴムダンパ92を採用したものを示したが、本発明はこれに限らず、ポリ塩化ビニル(Polyvinyl chloride)やエラストマ(elastomer)等の工業用材料よりなる緩衝部材を採用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
駆動ユニットは車両の車体の側部に搭載され、車体の側部に形成された出入口を開閉するスライドドアを駆動するために用いられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13