特許第6360080号(P6360080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360080
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】車両用開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/655 20150101AFI20180712BHJP
   E05F 15/643 20150101ALI20180712BHJP
   B60J 5/06 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   E05F15/655
   E05F15/643
   B60J5/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-559927(P2015-559927)
(86)(22)【出願日】2015年1月26日
(86)【国際出願番号】JP2015051998
(87)【国際公開番号】WO2015115358
(87)【国際公開日】20150806
【審査請求日】2016年5月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-12887(P2014-12887)
(32)【優先日】2014年1月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦野 吉隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 靖
(72)【発明者】
【氏名】関根 義隆
(72)【発明者】
【氏名】毒島 順一
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−275460(JP,A)
【文献】 特開2011−094426(JP,A)
【文献】 特開2008−303706(JP,A)
【文献】 特表2009−523983(JP,A)
【文献】 特開2006−194023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00 − 15/79
B60J 5/06
F16H 1/28
E05F 11/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けた開閉体を開閉する車両用開閉装置であって、
前記開閉体に接続されたケーブルが巻かれ、かつ、回転中心線を中心として回転可能に支持されているドラムと、
前記ドラムに伝達する動力を発生し、かつ、前記回転中心線を中心として回転する電動モータと、
前記電動モータから前記ドラムに至る動力伝達経路に設けた遊星歯車機構と、
前記ドラムが配置された第1空間を形成するドライブケースと、
前記ドライブケースに仕切り壁を介在させて取り付けられ、かつ、前記電動モータを設けた第2空間を形成するモータカバーと、
を有し、
前記遊星歯車機構は、前記仕切り壁と前記ドラムとの間に設けられ、
前記第1空間と前記第2空間とが、前記回転中心線に沿った方向で異なる位置に配置され、
前記遊星歯車機構の要素のうち前記ドラムの外径よりも大きい外径の回転要素の外周に、前記回転中心線に沿った方向で前記ドラムと前記仕切り壁との間に位置する仕切り部が設けられ、
前記ドライブケースは、前記回転中心線に対して交差する方向に延ばされた内向きフランジを有し、
前記内向きフランジは、前記回転中心線に沿った方向で、前記ドラムと前記仕切り部との間に配置され、
前記内向きフランジと前記仕切り部との間に第1の隙間が形成され、
前記内向きフランジと前記ドラムとの間に第2の隙間が形成され、
前記第1の隙間は、前記第2の隙間を介して前記第1空間につながっている、車両用開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用開閉装置において、
前記遊星歯車機構の要素は、
前記電動モータの動力が伝達されるサンギヤと、
前記サンギヤと同軸に配置されたリングギヤと、
前記ドラムと動力伝達可能に接続され、かつ、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合うピニオンギヤを支持するキャリヤと、
を含み、
前記ドラムの外径よりも大きい外径の回転要素は、前記キャリヤであり、
前記仕切り部は、前記キャリヤに設けられている、車両用開閉装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両用開閉装置において、
前記第1空間と前記ドライブケースの外部とに通じる排出口が設けられている、車両用開閉装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項記載の車両用開閉装置において、
前記遊星歯車機構は、前記回転中心線に沿った方向で、前記第1空間と前記第2空間との間に配置されている、車両用開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられる開閉体を自動的に開閉する車両用開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ワゴン車やワンボックス車の車両では、その車体側部に車両前後方向にスライド式に開閉するスライドドアを設け、車両側方からの乗降や荷物の積み下ろしなどを容易に行い得るようにしている。このようなスライドドアを、動力源の動力で自動的に開閉する開閉装置が知られている。
【0003】
このような開閉装置として、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された開閉装置は、車体に設けられた駆動ユニットと、2本のケーブルと、を備えている。駆動ユニットは、2本のケーブルが巻かれたドラムと、ドラムを収容した第1収容室と、動力源としての電動モータと、電動モータを収容する第2収容室と、第2収容室が形成されたモータケースと、モータケースが固定されるベースブラケットと、第1収容室が形成され、かつ、ベースブラケットに固定されたハウジングと、を有する。
【0004】
一方、スライドドアには第1アーム及び第2アームが取り付けられており、第1ケーブルの一端は第1アームに連結され、第1ケーブルの他端はドラムに連結されている。第2ケーブルの一端は第2アームに連結され、第2ケーブルの他端はドラムに連結されている。ドラムに対する第1ケーブルの巻き掛け向きと、ドラムに対する第2ケーブルの巻き掛け向きとが逆である。
【0005】
また、ハウジングに第1開口部及び第2開口部が設けられており、第1開口部には筒状の第1アウタケースが設けられ、第2開口部には、筒状の第2アウタケースが設けられている。第1ケーブルは第1アウタケースに挿入されており、第2ケーブルは第2アウタケースに挿入されている。つまり、第1ケーブル及び第2ケーブルは、ハウジングの内部及びハウジングの外部に亘って配置されている。モータケースに第1軸孔が設けられ、ベースブラケットに第2軸孔が設けられている。電動モータの出力軸は、第1軸孔と第2軸孔とハウジングの内部とに亘り、配置されている。ハウジングの内部には、出力軸のトルクをドラムに伝達する減速機構が設けられている。
【0006】
減速機構は、遊星歯車機構による構成されている。遊星歯車機構は、出力軸の外周に形成されたサンギヤと、サンギヤに噛み合う大径ピニオンギヤと、大径ピニオンギヤと同軸であり、大径ピニオンギヤと一体に回転する小径ピニオンギヤと、ドラムに設けられたリングギヤとを備えている。ベースブラケットに支持軸が設けられており、大径ピニオンギヤ及び小径ピニオンギヤは、支持軸により自転可能に支持されている。大径ピニオンギヤはサンギヤに噛み合い、小径ピニオンギヤはリングギヤに噛み合っている。
【0007】
出力軸のトルクが減速機構を経由してドラムに伝達される際に、サンギヤが入力要素として作用し、ベースブラケットが反力要素として作用し、小径ピニオンギヤが出力要素として作用することで、出力軸の回転速度に対してドラムの回転速度が減速され、電動モータからドラムに伝達されるトルクが増幅される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−90653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された開閉装置は、ハウジングの外部に存在する異物が、第1アウタケースまたは第2アウタケースの少なくとも一方を経由してハウジングの内部に侵入すると、その異物がベースブラケットの第2軸孔を通り、第2収容室に侵入する可能性があった。
【0010】
本発明の目的は、異物が第1収容室から第2収容室に侵入することを抑制できる、車両用開閉装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、車体に設けた開閉体を開閉する車両用開閉装置であって、前記開閉体に接続されたケーブルが巻かれ、かつ、回転中心線を中心として回転可能に支持されているドラムと、前記ドラムに伝達する動力を発生し、かつ、前記回転中心線を中心として回転する電動モータと、前記電動モータから前記ドラムに至る動力伝達経路に設けた遊星歯車機構と、前記ドラムが配置された第1空間を形成するドライブケースと、前記ドライブケースに仕切り壁を介在させて取り付けられ、かつ、前記電動モータを設けた第2空間を形成するモータカバーと、を有し、前記遊星歯車機構は、前記仕切り壁と前記ドラムとの間に設けられ、前記第1空間と前記第2空間とが、前記回転中心線に沿った方向で異なる位置に配置され、前記遊星歯車機構の要素のうち前記ドラムの外径よりも大きい外径の回転要素の外周に、前記回転中心線に沿った方向で、前記ドラムと前記仕切り壁との間に位置する仕切り部が設けられ、前記ドライブケースは、前記回転中心線に対して交差する方向に延ばされた内向きフランジを有し、前記内向きフランジは、前記回転中心線に沿った方向で、前記ドラムと前記仕切り部との間に配置され、前記内向きフランジと前記仕切り部との間に第1の隙間が形成され、前記内向きフランジと前記ドラムとの間に第2の隙間が形成され、前記第1の隙間は、前記第2の隙間を介して前記第1空間につながっている。
【0012】
本発明における前記遊星歯車機構の要素は、前記電動モータの動力が伝達されるサンギヤと、前記サンギヤと同軸に配置されたリングギヤと、前記ドラムと動力伝達可能に接続され、かつ、前記サンギヤ及び前記リングギヤに噛み合うピニオンギヤを支持するキャリヤと、を含み、前記ドラムの外径よりも大きい外径の回転要素は、前記キャリヤであり、前記仕切り部は、前記キャリヤに設けられている。
【0016】
本発明は、前記第1空間と前記ケーシングの外部とに通じる排出口が設けられている。
【0017】
本発明は、前記遊星歯車機構が、前記回転中心線に沿った方向で、前記第1空間と前記第2空間との間に配置されている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、異物が第1収容室から第2収容室に侵入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】スライドドアを備えた車両の側面図である。
図2図1に示すスライドドアを動作させる開閉装置を模式的に示す平面図である。
図3図2に示す開閉装置の一部である駆動ユニットの外観図である。
図4図3に示す駆動ユニットの断面図である。
図5図4に示す駆動ユニットの拡大断面図である。
図6図2に示す開閉装置の一部である駆動ユニットの外観図である。
図7図3に示す駆動ユニットの一部を変更した例の拡大断面図である。
図8図5に示す駆動ユニットの構造を変更した拡大断面図である。
図9図7に示す駆動ユニットの構造を変更した拡大断面図である。
図10図9の駆動ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示す車両11はワンボックスタイプの乗用車であり、車両11の一部である車体12の側部に開口部12aが設けられている。また、車両11には、開口部12aを開閉するスライドドア13が設けられている。図2に示すように、このスライドドア13はローラアッシー14を備え、このローラアッシー14は車体12の側部に固定されたガイドレール15に取り付けられている。ガイドレール15は、略水平方向に設けられており、ローラアッシー14はガイドレール15に沿って移動可能である。
【0021】
ローラアッシー14がガイドレール15に沿って移動すると、スライドドア13は車体12の側部に沿って、図1中に実線で示す全閉位置と、2点鎖線で示す全開位置と、の間で車両11の前後方向に移動する。
【0022】
車両11には、スライドドア13を動力源の動力で開閉するために、車両用開閉装置16が設けられている。車両用開閉装置16を、以下、「開閉装置16」と記載する。開閉装置16は、車体12に設けられた駆動ユニット17と、駆動ユニット17の動力をスライドドア13に伝達する第1ケーブル18及び第2ケーブル19と、車体12に設けた2個の反転プーリ20,21と、を備えている。反転プーリ20は、車両11の前後方向で反転プーリ21よりも前方に配置されている。駆動ユニット17は、車両11の前後方向で反転プーリ20と反転プーリ21との間に配置されている。
【0023】
図2に示すように、第1ケーブル18は、駆動ユニット17から車両11の前方に向けて配索され、かつ、反転プーリ20で方向が変換されて、ガイドレール15に沿って車両11の前側から車両11の後方に向けて配索されるとともに第1ケーブル18の一端がローラアッシー14に連結されている。第2ケーブル19は、駆動ユニット17から車両11の後方に向けて配索され、かつ、反転プーリ21で向きが変換されて、ガイドレール15に沿って車両11の後側から車両11の前方に向けて配索されるとともに、第2ケーブル19の一端がローラアッシー14に連結されている。
【0024】
第1ケーブル18の他端及び第2ケーブル19の他端は、それぞれ駆動ユニット17に導かれており、駆動ユニット17の動力で第1ケーブル18が引かれると、スライドドア13は車両11の前方に向けて動作する。これに対して、駆動ユニット17の動力で第2ケーブル19が引かれると、スライドドア13は車両11の後方に向けて動作する。
【0025】
駆動ユニット17の構造を、図3図6に基づいて説明する。駆動ユニット17は、ドライブケース22と、ドライブケース22の一方の開口部に取り付けたドライブカバー23と、ドライブケース22の他方の開口部に、仕切り壁24を介在させて取り付けたモータカバー25と、を備えている。ドライブケース22、ドライブカバー23、仕切り壁24、モータカバー25により、ケーシング55が形成されている。また、ドライブケース22の他方の開口部には、コントロールカバー26及びコントロールケース27が取り付けられている。
【0026】
ドライブケース22の内部にドラム収容室28が形成されており、ドラム収容室28に環状のドラム29が設けられている。ドラム29には、ドラム29の径方向中心位置を貫通して形成された支持孔29aと、ドラム29におけるドライブカバー23とは反対側の端部に形成された凹部29bと、複数の係合突起56と、が設けられている。複数の係合突起56は、ドラム29における仕切り壁24に近い方の端面から、回転中心線A1に沿った方向に突出している。複数の係合突起56は、回転中心線A1を中心とする同一円周上に、等間隔で配置されている。複数の係合突起56は、例えば3個設けられている。
【0027】
凹部29bは、支持孔29aと同軸であり、図5に示す回転中心線A1に対して垂直な平面内で、凹部29bの内周面形状は円筒形である。ドライブケース22の外壁に開口部30,31が設けられており、開口部30にアウタケース32が配置され、開口部31にアウタケース33が配置されている。アウタケース32,33は、それぞれ筒形状であり、アウタケース32,33はそれぞれガイド孔を有する。
【0028】
アウタケース32のガイド孔に第1ケーブル18が通され、アウタケース33のガイド孔に第2ケーブル19が通されている。ドラム29の外周面には、第1ケーブル18および第2ケーブル19を巻き取る際に、第1ケーブル18及び第2ケーブル19をガイドするための巻き取り溝が螺旋状に設けられており、第1ケーブル18の端部及び第2ケーブル19の端部は、それぞれドラム29に接続されている。
【0029】
また、ドライブケース22とドライブカバー23との間には、テンショナ収容室D1が設けられている。テンショナ収容室D1は、ドラム収容室28とつながっている。そして、テンショナ収容室D1には、第1ケーブル18に張力を与えるテンショナ機構34と、第2ケーブル19に張力を与えるテンショナ機構35が設けられている。テンショナ機構34は、第1ケーブル18の移動方向を変換するプーリ34a、プーリ34aを押す弾性部材、弾性部材を支持するストッパ34bを備えている。テンショナ機構35は、第2ケーブル19の移動方向を変換するプーリ35a、プーリ35aを押す弾性部材、弾性部材を支持するストッパ35bを備えている。
【0030】
第1ケーブル18は、アウタケース32とドラム29との間でプーリ34aに掛けられており、第2ケーブル19は、アウタケース33とドラム29との間でプーリ35aに掛けられている。
【0031】
仕切り壁24とモータカバー25との間には、モータ収容室36が形成されている。モータ収容室36内には、電動モータ37が設けられている。電動モータ37は、ドラム29に伝達する動力を発生する動力源である。電動モータ37は、モータ収容室36内に固定して設けられたステータ38と、モータ収容室36内に回転可能に設けられたロータ39とを有する。ステータ38は、鋼板を複数積層し、積層された鋼板に電線を巻いてある。ロータ39は環状であり、ロータ39の外周面には永久磁石40が取り付けられている。また、ロータ39の中心には、ロータ39と一体に回転する出力軸43が設けられている。
【0032】
仕切り壁24には軸孔41が設けられており、軸孔41に配置した軸受42により、出力軸43が回転可能に支持されている。ここで、駆動ユニット17が車体12に取り付けられた状態で、回転中心線A1は略水平であり、モータ収容室36とドラム収容室28とが、回転中心線A1に沿った方向で異なる位置に配置されている。
【0033】
そして、出力軸43の長さ方向の一端は、軸孔41からモータ収容室36に突出して配置され、出力軸43はモータ収容室36の内部でロータ39と一体回転可能に固定されるとともに、出力軸43の長さ方向の他端は、軸孔41からドラム収容室28に突出して配置され、出力軸43の他端側には、後述するサンギヤ48が一体に形成されている。
【0034】
また、ドライブカバー23の内面から、ドラム収容室28に向けて突出した支持軸44が設けられている。支持軸44及び出力軸43は同軸に配置されており、回転中心線A1を中心とする円の半径方向で、支持軸44及び出力軸43の外側にドラム29が配置されている。
【0035】
そして、回転中心線A1を中心とする円の半径方向で、支持軸44とドラム29との間に軸受45が設けられ、出力軸43とドラム29との間に軸受46が設けられている。軸受45,46は支持孔29aに配置されている。つまり、ドラム29は、軸受45,46により、回転中心線A1を中心として回転可能に支持されている。また、ドラム29と出力軸43とは相対回転可能である。
【0036】
仕切り壁24は、回転中心線A1に沿った方向で、モータカバー25とドライブカバー23との間に配置されている。また、ドラム29は、回転中心線A1に沿った方向で、仕切り壁24とドライブカバー23との間に配置されている。さらに、回転中心線A1に沿った方向で、仕切り壁24とドラム29との間に、減速機構47が設けられている。減速機構47は、出力軸43からドラム29に至る動力伝達経路に配置されている。
【0037】
減速機構47は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。減速機構47は、出力軸43の外周面に形成されたサンギヤ48と、サンギヤ48と同軸に設けられたリングギヤ49と、サンギヤ48及びリングギヤ49に噛み合う複数のピニオンギヤ50を支持するキャリヤ51と、を備えている。リングギヤ49は、ドライブケース22に固定されている。キャリヤ51は、複数のピニオンピン52を介して、複数のピニオンギヤ50をそれぞれ自転可能に支持している。
【0038】
また、キャリヤ51は金属板を環状に成形したものであり、キャリヤ51はドラム29と一体回転するように連結されている。また、出力軸43のうちドラム収容室28に配置され、かつ、サンギヤ48が形成された箇所よりも他端側の外周面と、キャリヤ51の内周面と、の間に軸受53が配置されており、キャリヤ51は、軸受53により回転中心線A1を中心として回転可能に支持されている。キャリヤ51は、回転中心線A1に沿った方向で、ドラム29と仕切り壁24との間に設けられている。
【0039】
キャリヤ51は、回転中心線A1に対して垂直に延ばされたプレート部51bと、プレート部51bの外周端に連続して設けた傾斜部51aと、プレート部51bの内周端に連続して設けた筒部51cとを有する。プレート部51bは平板状に形成されており、プレート部51bには、回転中心線A1を中心とする周方向に、等間隔で複数のピニオンピン52が固定されている。複数のピニオンピン52は、回転中心線A1を中心とする円周上で、複数の係合突起56とは異なる位置に配置されている。複数のピニオンピン52は、ピニオンギヤ50をそれぞれ自転可能に支持している。
【0040】
また、プレート部51bには複数の係合孔57が設けられている。複数の係合孔57は、回転中心線A1を中心とする同一円周上に3個等間隔に配置されている。3個の係合孔57に3個の係合突起56が別個に係合することで、キャリヤ51とドラム29とが動力伝達可能に接続される。ピニオンピン52と係合孔57とは、キャリヤ51の回転方向に沿って交互に配置され、かつ、同一円周上に配置されている。しかし、図5では、ピニオンピン52と係合孔57とを、便宜上、径方向に並べて示してある。傾斜部51aは、プレート部51bに対して、ピニオンギヤ50から離れる向きで傾斜している。つまり、キャリヤ51は、回転中心線A1に沿った方向に屈曲されている。筒部51cは回転中心線A1の外周側に配置されており、回転中心線A1に対して垂直な平面内である。
【0041】
駆動ユニット17が組み立てられた状態では、筒部51cが凹部29bに配置されている。なお、キャリヤ51の外径は、ドラム29の外径よりも大きい。また、プレート部51bは、筒部51cに連続して設けたフランジである。
【0042】
一方、ドライブケース22には、回転中心線A1を中心とする環状の溝22aが設けられている。溝22aは、回転中心線A1に沿った方向でドラム29とピニオンギヤ50との間に配置されている。つまり、溝22aは、回転中心線A1を中心とする円の半径方向で、ドラム収容室28の外側に配置されている。そして、キャリヤ51の傾斜部51aは溝22a内に配置されている。傾斜部51aはドライブケース22に接触しておらず、回転中心線A1と平行な平面内で、傾斜部51aとドライブケース22との間にU字形状の隙間B1がある。
【0043】
図6のように、ドライブカバー23の外縁23aと、ドライブケース22との間に排出口54が設けられている。排出口54は、ドラム収容室28につながっている。駆動ユニット17が車体12に取り付けられると、排出口54は、開口部30,31及びアウタケース32,33よりも下方に位置する。コントロールカバー26には制御基板が取り付けられており、制御基板に制御部、電気回路、スイッチ等が設けられている。コントロールケース27にコネクタが取り付けられており、コネクタは制御基板の電気回路に接続されている。また、電気回路は、スイッチを介してステータ38のコイルに接続されている。コネクタは、電力供給用のソケット及び電源ケーブルを介して電源に接続される。なお、車両11の室内には、スライドドア13を開閉するために、車両11の乗員が操作する操作部が設けられており、操作部の操作信号が制御部に入力される。
【0044】
次に、スライドドア13の自動開閉動作について説明する。車両11の乗員がスライドドア13を開くために操作部を操作すると、電気回路のスイッチがオンされる。すると、電源の電力が電動モータ37に供給され、回転磁界が形成されてロータ39が第1の向きで回転する。出力軸43はロータ39と共に回転する。出力軸43にトルクが伝達されると、リングギヤ49が反力要素として作用し、キャリヤ51からトルクが出力される。ここで、リングギヤ49は回転しないため、出力軸43の回転速度に対して、キャリヤ51の回転速度が減速される。このように、減速機構47は、出力軸43からキャリヤ51に伝達されるトルクを増幅する。
【0045】
キャリヤ51にトルクが伝達されて、ドラム29が図6で時計方向に回転すると、第2ケーブル19がドラム29に巻き取られ、第1ケーブル18がドラム29から繰り出される。その結果、スライドドア13が車両11の後方に向けて移動し、開口部12aが開かれる。
【0046】
これに対して、スライドドア13を閉じるために操作部が操作されると、ロータ39が第2の向きで回転する。ロータ39が第2の向きで回転すると、ドラム29が図6で反時計方向に回転する。このため、第1ケーブル18がドラム29に巻き取られ、第2ケーブル19がドラム29から繰り出される。その結果、スライドドア13が車両11の前方に向けて移動し、開口部12aが閉じられる。
【0047】
ところで、第1ケーブル18、第2ケーブル19に付着した異物が、ケーシング55の外部からアウタケース32,33のガイド孔、開口部30,31を経由して、ドラム収容室28内に侵入する可能性がある。異物は、水、埃、泥、砂を含む。本実施形態の開閉装置16は、キャリヤ51の傾斜部51aが、ドラム収容室28とモータ収容室36とを隔てている。そして、傾斜部51aとドライブケース22との間に、U字形状の隙間B1がある。この隙間B1は、ドラム収容室28と、ピニオンギヤ50及びリングギヤ49が配置されている空間C1と、をつないでいる。
【0048】
つまり、隙間B1は、ドラム収容室28内の異物が、空間C1へ侵入することを抑制するラビリンスシールとして作用する。空間C1は軸孔41とつながっている。このため、ドラム収容室28内の異物が、空間C1、軸孔41を経由して、モータ収容室36に侵入することを抑制できる。すなわち、駆動ユニット17は、モータ収容室36の防水性、防塵性を確保できる。また、水滴により軸受42を潤滑するグリースが流されること、または、水滴により軸受42を構成する部品が錆びること、を抑制できる。したがって、出力軸43の動力損失を抑制できる。
【0049】
また、減速機構47のキャリヤ51がシール部材としての役割を果たすため、シール部材を専用で設けずに済む。したがって、駆動ユニット17が回転中心線A1に沿った方向に大型化することを抑制できる。
【0050】
また、キャリヤ51は、金属板を折り曲げ加工して成形されており、プレート部51b及び傾斜部51aを有する。したがって、回転中心線A1に沿った方向でキャリヤ51の曲げ剛性が向上している。このため、駆動ユニット17は、キャリヤ51及びピニオンギヤ50が、回転中心線A1に沿った方向に振動することを抑制でき、減速機構47の振動音を低減できる。
【0051】
また、異物がドラム収容室28内を自重で下方に移動すると、その異物は、テンショナ収容室D1及び排出口54を通り、ケーシング55の外部に排出される。したがって、異物がケーシング55の内部に留まることを抑制できる。
【0052】
一方、駆動ユニット17を組み立てる過程では、ドラム29に第1ケーブル18及び第2ケーブル19を巻き付ける作業を行う。この場合、キャリヤ51がドラム29に接続されていない状態、つまり、キャリヤ51とドラム29とが分離されている状態で、ドラム29に第1ケーブル18及び第2ケーブル19を巻き付ける作業を行うため、ドラム29の回転が阻害されることはない。したがって、ドラム29に第1ケーブル18及び第2ケーブル19を巻き付ける作業の作業性が低下することを抑制できる。そして、ドラム29に第1ケーブル18及び第2ケーブル19を巻き付けた後に、筒部51cを凹部29bに挿入すると、キャリヤ51とドラム29とが一体回転可能に連結される。
【0053】
つぎに、図3図6に示す駆動ユニット17の一部を変更した例を、図7を参照して説明する。図7の構成で、図3図6と同じ構成は、図3図6と同じ符号を付してある。図7に示すキャリヤ51は、図5の傾斜部51aを備えておらず、ドライブケース22は、図5の溝22aを備えていない。図7に示すドライブケース22のうち、ドラム収容室28を形成する内周面に、回転中心線A1と同心状に環状の突出部22bが設けられている。突出部22bは、ドライブケース22の内周面から、回転中心線A1に対して直角な方向に突出している。突出部22bの一部は、回転中心線A1に沿った方向で、ドラム29とプレート部51bとの間に配置されている。
【0054】
そして、突出部22b及びドライブケース22の内周面と、プレート部51bとの間に隙間B2が形成されているとともに、突出部22bとドラム29の端面との間に隙間B3が形成されている。回転中心線A1に沿った方向の平面内で、隙間B2はL字形に屈曲している。隙間B2及び隙間B3は、ドラム収容室28および空間C1につながっている。図7に示す例では、ドラム29に巻回されたケーブルに付着した異物は、隙間B2及び隙間B3がラビリンスシールとして作用するため、ドラム収容室28内の異物は、空間C1に侵入しにくい。
【0055】
したがって、図7に示す例は、図3図6の駆動ユニット17と同様の効果を得ることができる。また、ドラム29とプレート部51bとの間に突出部22bが配置されていることで、モータ駆動時のドラム29がケーブルを巻き取る力によってドラム29に回転中心線A1に対して傾く力が発生した場合、ドラム29またはプレート部51bのいずれか一方が突出部22bに近接する。このため、電動モータ37の駆動時における空間C1への異物の侵入を防ぐことができるという効果を有する。
【0056】
図8は、図5に示す減速機構47の他の例を示す。図8に示す減速機構47のリングギヤ49は、仕切り壁24に取り付けられている。仕切り壁24には、回転中心線A1と同心状に環状のリブ58が設けられている。リブ58は、仕切り壁24の表面から回転中心線A1に沿った方向に突出している。リングギヤ49は、リブ58に対して回転しないように固定されている。リングギヤ49は、リブ58により径方向に位置決めされている。ドライブケース22に突起59が設けられており、リングギヤ49は、突起59と仕切り壁24とにより挟まれて、回転中心線A1に沿った方向に位置決めされている。
【0057】
図8に示す減速機構47のリングギヤ49は、仕切り壁24によって径方向に位置決めされている。また、出力軸43は、軸受42により仕切り壁24に対して径方向に位置決めされている。つまり、リングギヤ49及び出力軸43は、共通の仕切り壁24によって径方向に位置決めされている。したがって、出力軸43に設けたサンギヤ48と、リングギヤ49との位置決め精度が向上する。
【0058】
図9及び図10は、図7に示す減速機構47の他の例を示す。図10に示すリングギヤ49の位置決め構造は、図8に示すリングギヤ49の位置決め構造と同じである。また、キャリヤ51は、回転中心線A1に対して垂直な平面視で六角形である。さらに、キャリヤ51の外周形状である六角形の各頂点に対応する外径、つまり、外接円の直径は、突出部22Bの内径よりも大きい。さらに、ピニオンピン52と係合孔57とが、キャリヤ51の回転方向で交互に配置されている。3個のピニオンピン52及び3個の係合孔57は、キャリヤ51の回転方向で、六角形の角部に対応する位置にそれぞれ配置されている。図9及び図10に示す構造において、その他の構造は、図7図8に示す構造と同じである。図9及び図10に示す減速機構47及び電動モータ37において、図7及び図8と同じ構造については、図7及び図8と同様の効果を得られる。
【0059】
さらに、図4図10に示す電動モータ37及び減速機構47を駆動ユニット17に用いると、スライドドア13と、電動モータ37の出力軸43とが、減速機構47、ドラム29、第1ケーブル18、第2ケーブル19を介して連結される。このため、スライドドア13を手動操作するとドラム29の動力は、減速機構47を介して出力軸43に伝達される。ここで、減速機構47では、キャリヤ51の回転速度に対してサンギヤ48の回転速度が増速されて回転する。このように、スライドドア13が手動操作で全開位置または全閉位置に到達するまで移動すると、出力軸43に回転中心線A1の周りで慣性力が働く。
【0060】
スライドドア13が手動操作されて、ドラム29の動力が減速機構47に入力された場合に、出力要素となるサンギヤ48が形成された出力軸43は、外径が小さく慣性質量が小さい。つまり、減速機構47の回転要素のうち、最も外側に配置されているリングギヤ49は反力要素であり、ドライブケース22または仕切り壁24により、回転しないように固定されている。すなわち、サンギヤ48を回転させる場合に生じる慣性力は、リングギヤ49を回転させる構造の慣性力よりも小さい。このため、出力軸43の周りで働く慣性力の増加を抑制できる。したがって、出力軸43が径方向に振動することを抑制するための強固な支持構造を設ける必要がない。
【0061】
本実施形態の構成と、本発明の構成との対応関係を説明すると、ドラム収容室28が、本発明の第1空間に相当し、モータ収容室36が、本発明の第2空間に相当し、キャリヤ51が、本発明の要素に相当し、傾斜部51a、プレート部51bが、本発明の仕切り部に相当し、突出部22bが、本発明の内向きフランジに相当する。
【0062】
本発明の駆動ユニットは前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、減速機構は、シングルピニオン形の遊星歯車機構、ダブルピニオン形の遊星歯車機構を含む。ダブルピニオン形の遊星歯車機構は、サンギヤと、サンギヤと同軸のリングギヤと、サンギヤに噛み合う第1ピニオンギヤと、第1ピニオンギヤ及びリングギヤに噛み合う第2ピニオンギヤと、第1ピニオンギヤ及び第2ピニオンギヤを、自転、かつ、公転可能に支持するキャリヤと、を有する。
【0063】
そして、キャリヤがドライブケースに固定され、リングギヤが回転部材を介してドラムに連結される。回転部材が本発明の要素に相当する。リングギヤは、ドラム収容室内に回転可能に設けられる。サンギヤは出力軸に形成される。ダブルピニオン形の遊星歯車機構は、サンギヤが入力要素として作用し、キャリヤが反力要素として作用し、リングギヤが出力要素として作用する。さらに、回転部材に仕切り部を設け、仕切り部とドライブケースとの間に、ラビリンスシールを形成する隙間を設ける。
【0064】
さらに、本発明の駆動ユニットは、スライドドアに設けることも可能である。この場合、駆動ユニットから繰り出された第1ケーブルの端部を支持する第1支持部と、第2ケーブルの端部を支持する第2支持部とが、車体に設けられる。
【0065】
さらに、ドラムの回転中心線は、水平方向に対して、交差する方向に沿って配置されていてもよい。さらに、本発明の開閉装置は、車両の後部に設けられた開閉体を、水平方向に動作させる機構として用いることもできる。さらに、本発明の開閉装置は、車両のルーフに設けられた開閉体を、水平方向に動作させる機構として用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、車両に設けられる開閉体を自動的に開閉する車両用開閉装置として利用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10