(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本発明は、貯留層シミュレーションにおける坑井のモデリングに関し、より詳細には、複雑な内部境界を含む領域における非拘束ボロノイ格子の生成に関する。
貯留層シミュレーションは、地下炭化水素貯留層の計画および開発のために石油産業で用いられる主要な手段である。掘削技術の進歩と共に、これらの貯留層において生産プロセスおよび圧入プロセスを強化するために、複数の分枝を有し複雑な幾何形状の坑井が、多く配置されている。
【0003】
上記の本出願人による関連する先の同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書は、複雑な坑井に関して坑井付近の流動を正確にモデリングして、これらの坑井の挙動予測を強化することに関する。このモデリングによって、貯留層アナリストおよびエンジニアは、利用可能な資源を採掘するための意思決定プロセスのための坑井および貯留層に関する改善されたデータを得ることができる。
【0004】
コーナーポイント型すなわちCPG格子は、既知、かつ貯留層シミュレーションモデルにおいて断層を表現するためにしばしば使用される格子である。CPG格子の例を
図2のGに示す。CPG格子は、柔軟な構造格子であり、ここで、それぞれの有限体積のセルは、その8つの角の座標によって画定される六面体である。著しく断層のあるモデルでは、格子は著しく歪んで非直交になる。通常、離散化精度を維持するためには多点流束近似(MPFA)技法が必要とされる。しかし、この方法で離散化を用いて多相流問題を解く場合、反復線形ソルバでは数値的な困難が生じる可能性がある。実際には、主要な断層のみを表現して、格子が過度に歪まないようにする。
【0005】
内部境界周辺の非構造格子化も行われてきた。現在のところ、非構造格子化の多くはドロネー三角形分割を用い、ボロノイ格子を生成三角形メッシュの双対格子としてきた。
【0006】
従来、内部境界の幾何形状を保持するためには、拘束ドロネー三角形分割を適用し、生成三角形の辺として内部境界線を尊重する必要があった。この技法は、米国特許第8,212,814号明細書、Branetsらによる、「Generation of a Constrained Voronoi Grid in a Plane」に説明されている。拘束ドロネー三角形分割では、非構造格子点を調整、再配置、除去、または新格子点を内部境界付近に明示的に挿入し、生成した内部境界付近の三角形が内部境界上に辺を有するよう拘束条件を満たさなければならない。このような格子点の調整手順を格子の平滑化と呼ぶ。格子の平滑化は通常、計算コストが高く、大規模なシミュレーションモデルでは特に計算コストが高くなる。加えて、境界を満たすため格子領域が密になり、貯留層シミュレーションの低離散化を招き、収束が不十分となる。
【0007】
従来技術では、交差領域付近でドロネー三角形分割を行うと、各内部境界格子点は保持されるが、小さな角度を含む多くの不良な三角形を作ることがあった。このことは、Heinemann,et al.,「Modeling Heavily Faulted Reservoirs」,米国石油技術者協会(SPE) paper 48998,SPE Annual Technical Conference and Exhibition,New Orleans,Louisiana,USA,Sept.27−30,1998で説明されている。結果として、不良な三角形のためモデリングが複雑になり、数値誤差を招き、ついには、離散化が不十分になり、流動シミュレーションの計算効率の低下につながった。
【0008】
従来技術の拘束ボロノイ格子生成は、生成したボロノイセル辺を格子平滑化等の拘束法で内部境界の幾何形状に強制的に一致させるものであった。格子平滑化で三角形の辺の置き換え、格子点の再配置、または新しい点の挿入をして内部境界の幾何形状構造を保持する必要があった。
【発明を実施するための形態】
【0031】
地下貯留層には、不規則に交差する幾何形状の複雑な内部境界が複数存在することがあり、典型的には、数個存在する。貯留層シミュレーションでこのような内部境界をまたぐ流体の流動および輸送を正確にモデリングすることが重要である。本発明の特許は、生成されたボロノイセル辺が内部境界の幾何形状に一致する、非拘束ボロノイ格子を構築するための方法論を提供する。
【0032】
図1Aは、境界格子20のボロノイセル
図18を示すものであり、前述の本出願人による同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書に従って、複雑な坑井22のモデルが形成されている。かかる出願によれば、坑井22は貯留層の内部境界とみなされ、ボロノイセル24は、坑井軌道経路28上にセルの中心26の位置を合わせることによって生成される。本出願人による同時係属中の米国特許出願による内部境界は、本発明では種類1の境界と呼ばれる。
【0033】
本発明によれば、新規かつ改良されたコンピュータ実施可能な方法論が提供され、別種の内部境界を正確にモデリングすることができる。貯留層シミュレーションモデルでこの内部境界は、モデル内の断層面または別種の不連続部分である。本発明の別の種類の不連続部分、すなわち内部境界とは、種類例えばフラクチャや、相、油圧ユニットの境界などの他形態の事実上の不連続部分が挙げられ得る。
【0034】
本発明は、内部境界の両側にセルの中心を配置してボロノイセルを生成し、非拘束ボロノイ格子法を用いて内部境界にセル辺の位置を合わせる。
図1Bは、本発明の典型的なボロノイセル
図30であり、内部の不連続部分を内部境界34、境界格子32で示す。本発明では、本発明による内部境界を種類2の境界と呼ぶ。
【0035】
本発明は、本出願人による先の同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書の非構造坑井付近モデリングの性能を強化し、非構造格子貯留層シミュレーションの枠組みに、断層や他の不連続部分などの複雑な内部境界を含めるものである。非構造格子化は改善され、内部境界付近の正確なモデリング能力を有する統合されたシステムとなり、複雑な坑井、断層、フラクチャの組み合わせを算入できる。
【0036】
本出願はさらに非拘束手法により、複雑な格子平滑化工程を省き、拘束条件を適用することなく境界に一致した高品質な格子を作成できる。
【0037】
本発明では、本明細書と同日に出願の本出願人による随伴する米国特許仮出願の衝突点の除去方法が改善され、内部境界格子点を含むことができる。非拘束ボロノイ格子化の際、領域内のすべての内部境界格子点に、重み付けした値を割り当てる。次に点最適化手順を行い、互いに近すぎる衝突内部境界格子点を除去する。内部境界付近の格子密度要件に適合する内部境界格子点の方を高い優先順位とし、格子密度要件と内部境界モデリング要件の両方を同時に満足できる。その結果、内部境界格子点の間隔を最適に維持し、所望の角度および形状の三角形を生成することにより、貯留層シミュレーションの近似が向上する。
【0038】
さらに本発明では、非拘束ドロネー三角形分割法により複雑な格子平滑化を回避できる。内部境界格子点をインテリジェントに配置し、ボロノイセル辺を不規則な内部境界の幾何形状に幾何学的に確実に一致させる。
【0039】
貯留層シミュレーションでは、上述のように、内部境界は断層、フラクチャまたは地質学的な相や油圧ユニットの境界などの任意の他の形態の事実上の不連続部分であり得る。本発明の方法論を用いれば、従来技術のドロネー三角形分割で必要な格子平滑化工程は不要である。
【0040】
例えば、前述の米国特許第8,212,814号明細書は、辺の置き換え、新格子点挿入、格子点除去などの格子平滑化で三角形の辺を再配置している。格子平滑化は、内部境界付近の三角形の辺の位置を内部境界に合わせ、内部境界の幾何形状を保持できるよう必要とされている。
【0041】
本発明は、本出願人による前述の同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書の非構造格子化処理を改善し、任意の好適な数の内部境界を非構造格子化ワークフローに統合する。これにより、交差する内部境界等の複数の内部境界を、領域内で同時にモデリングできる。内部境界が別の内部境界と密接または交差している場合、非構造格子化処理では、本出願人による前述の同時係属中の出願の優先順位付け処理に内部境界格子点を算入し、係る処理を改善する。内部境界点を優先順付けする手法により、内部境界付近の格子密度要件と、内部境界の不規則な幾何形状を保持する必要性とのバランスが最適となる。
【0042】
本発明は、境界拘束要件および格子密度要件を満たす事前工程により内部境界を尊重する。本発明は、非拘束ドロネー三角形分割法を使用できる。内部境界は、ボロノイ双対格子の辺で正確にモデリングされ、煩雑な格子平滑化を伴わない。平滑化はドロネー三角形分割を拘束し、特定の境界を尊重するものであり、コスト高の後処理工程である。内部境界交差領域付近の衝突内部境界点は、格子化条件による位置評価の後、最適にマージされる。
【0043】
[処理方法論]
図3のフローチャートFは、本発明の内部境界付近の非構造ボロノイ格子化を実現するため、データ処理システムP(
図12参照)が実行する基本的なコンピュータ処理シーケンスであり、本発明の内部境界非構造格子化の典型的な実施形態で実施される計算方法論を示している。
【0044】
工程100では、内部境界記述を非構造格子ビルダに読み込む。本発明の非構造格子ビルダは、地質学的モデルを構築する市販の貯留層シミュレーション前処理ソフトウェアと互換性がある。PETRELやGoCADといった市販のソフトウェアで生成された内部境界表現データは、通常コーナーポイント型CPGフォーマットで出力されるが、このような内部境界表現データを非構造格子ビルダにロードする。
【0045】
工程102で非構造格子ビルダは、地質学的モデルに対してロードした内部境界記述を解釈する。次いで、内部境界の幾何形状データを生成する。内部境界の幾何形状データは、内部境界記述の初期入力時のコーナーポイント型格子セルを3次元座標の頂点にしたもので構成される。
【0046】
工程104では、工程102で得た内部境界幾何形状の点をサンプリングし、内部境界付近領域の格子密度要件に基づき細分化する。内部境界幾何形状点のうち、隣接する選択点の間隔が内部境界付近の格子間隔要件を満たす、部分的な点集合を選択する。境界格子の間隔を選択して、内部境界の形状表現、境界付近の流動モデリングの格子分解能、シミュレーション実行に必要な計算資源のバランスをとる。内部境界は、交差していてもよい。
【0047】
本発明は、選択された内部境界幾何形状の点集合を最適化する方法論を提供する。入力点集合の第1点を、常に選択する。次に、データ集合の第1点と第2点の距離を、要求される内部境界付近の格子密度間隔と比較する。比較結果は次の3種類である。(1)第1点と第2点の距離が格子密度間隔と等しい場合、第2点は別の最適化点として保持される。次に第2点と第3点の距離を比較し、第3点が最適化点に適するかを評価する。(2)第1点と第2点の距離が格子密度間隔より短い場合、第2点をスキップし、第1点と第3点の距離を比較する。(3)第1点と第2点の距離が格子密度間隔よりも長い場合、最初の点集合の第1点と第2点の間に補間点を加え、第1点と新しい点の距離が格子間隔と等しくなるようにする。この補間工程は、存在する点が格子密度要件および内部境界の幾何形状表現の両方を局所的に満たさない場合に必要である。例えば、要求される格子密度間隔がCPGセルの辺幅よりも短い場合、要求された格子密度に関して局所的な幾何形状を詳細に表現できないため、補間点を挿入して格子密度要件を満足させる。この補間点により内部境界の幾何形状のモデリングを局所的に向上させることができる。工程104で細分化された内部境界の幾何形状データは最適な点集合となり、内部境界付近の非構造格子化を成功させるために極めて重要な精度となる。この点集合は、内部境界付近領域の格子密度要件を満すと同時に不規則な内部境界の幾何形状を幾何学的に表現する。
【0048】
細分化された内部境界幾何形状点を作成後、工程106では、細分化点集合の各直近点のペアを直線で連結する。結果として
図4Aの40および42に示すような線分の集合が得られ、線分の長さは内部境界付近領域で要求される格子サイズとなる。また線分集合は幾何学的表現となり、初期内部境界記述の内部境界構造をモデリングする。
図4Aは、工程106でデータ処理システムPが形成した線分の概略表現である。
図4Aの線分40および42は、本発明の処理において、格子サイズに従い内部境界構造を定義するデータ値を説明する図例である。
【0049】
工程108では、各内部境界点に円を形成後、データ処理システムPは交差円44(
図4B)を構築する。
図4Bに示すように、各内部境界点の円は、工程104で形成した内部境界点を中心に形成される。
図4Bの円44は、本発明による処理で貯留層格子データに実行した幾何学的分析の説明図である。各交差円の半径は、工程106で形成した対応する線分の半分より長く、全長より短くなるよう選択する。これにより
図4Cに示すように、隣接する円と交差する円および交差点を、線分から所望の距離に形成できる。
【0050】
本発明では、工程108の半径の長さは線分の長さの0.6の割合が望ましいと見出した。しかし、本発明による比率として、0.6以外の比率または割合を用いてもよいことが理解されるべきである。ただし、後続の2つの工程で説明するように、選択する半径の長さで線分に対する交差点の距離が決まり、この距離がボロノイ格子セルの形状に重要であることに留意されたい。
【0051】
工程108で形成された隣接円44は、
図4Cに示すような交点A、B、C、Dを工程110で生成する。
図4Cに示す円44および交点A、B、C、Dは、本発明の処理で貯留層格子データに実行した幾何学的分析を説明する図例である。線分の端点、P1およびP2が円44の中心点であるため、線分40すなわちP1P2は、線分ABに対して垂直であり、線分ABの中点を通過する。本発明による内部境界の非構造格子化で交点A、Bは、内部境界付近の格子セル点となる。同様に、交点C、Dも内部境界付近の格子セル点となる。これらの内部境界付近の格子セル点は、ドロネー三角形の頂点になる。
【0052】
内部境界付近の格子セル点は工程112で、衝突する可能性のある全格子点に優先順位を付け、最適に管理する。この最適化および優先順位付けは、前述の、参照により本明細書に援用される、本出願人による先の同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書に従い行う。複数の内部境界が密接または交差し、
図11Aの従来技術で例示のように、最終的な格子に高密度の格子セル点が現れる可能性がある場合に、最適化工程が必要となる。最適化工程後の格子点は、全内部境界に最適な点集合となり、これに対応するボロノイセルは、要求される格子密度要件を満たし、複雑な内部境界構造を維持することができる。
【0053】
工程112で得られた
図4Cの点A、B、C、Dなどの内部境界付近の最適格子セル点に、ドロネー三角形分割を工程114で適用する。ドロネー三角形分割は、前述の、参照により本明細書に援用される、本出願人による先の同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書に従い行う。ドロネー三角形分割は三角形の集合で出力され、ABおよびCDを辺に持つ三角形の垂直二等分による双対格子の辺が、
図4Cの内部境界の線分P1P2およびP2P3である。
【0054】
工程116では、三角形の辺を垂直二等分する方法で、ドロネー三角形分割の双対格子またはボロノイ格子を生成する。概略的に示す通り、
図4Cの線分ABが三角形の辺であり、三角形の辺の垂直二等分線がボロノイセル辺となる。よって、三角形の辺ABはボロノイセル辺を生成し、ボロノイセル辺は
図4Cの線分P1P2で概略的に示す。同様に三角形の辺CDは、
図4Cの線分P2P3で概略的に示すボロノイセル辺を生成する。
【0055】
内部境界の線分をボロノイセル辺にする拘束条件を設定せずとも、本発明のボロノイセル生成の方法論は規定の内部境界の線分を確実に尊重する。結果として、
図4Cに示すボロノイセル辺の交点、すなわちP1、P2、P3は、ボロノイセル頂点となり、円の交点A、B、C、Dは、ボロノイセルの中心となる。
【0056】
工程118では、工程116で生成した格子幾何形状データを出力として提供し、貯留層シミュレーションや分析もしくは可視化などの他の目的でデータ処理システムPが使用する。
図5に、本発明で生成された典型的な内部境界付近のボロノイセル
図50を示す。
図5および
図1Bは、同じ内部境界の非構造格子化の結果に基づいている。
図1Bにはボロノイセルの中心が示されているが、
図5には示されていない。両図とも、所与の内部境界に関して生成されたボロノイセルを例証しており、本発明により適切な格子密度間隔を選択し、格子密度要件と内部境界の幾何形状表現との両方を満足している。生成された格子幾何形状データは、本出願人による米国特許第8,463,586号明細書によるデータと、本出願と同日に出願された「Modeling Intersecting Faults and Complex Wellbores in Reservoir Simulation」と題する本出願人による関連する米国特許出願第14/215,766号明細書の数値シミュレーションを容易にするための断層記述用追加データとで構成される。追加データは例えば、領域定義(フィールド領域および貯留層領域の多角形)、領域の格子サイズ、断層のデータ記述、断層の格子サイズ、坑井データロケーション、地質学的モデルファイル、ならびに将来の坑井データや局所的格子細分化(LGR)条件といった他の任意の入力等の格子化諸元を含んでもよい。
【0057】
本発明を用いて、2つの貯留層に21個の複雑な内部境界を含む全フィールドモデルに関する予備試験を行った。試験の結果、本発明の非拘束ボロノイ格子法から生成された非構造格子は、21個の複雑な内部境界の不規則な形状を保持し、ボロノイセル辺を内部境界の幾何形状に正確に一致させることがわかった。
【0058】
同じ非拘束ボロノイ格子化法を用いて、非構造格子を2つ形成した。しかし、
図6Aに示すように、第1格子化
図60は、内部境界に本発明の方法論を適用しない場合の格子化の結果を示す。
図6Aの内部境界付近の領域から分かる通り、内部境界付近の格子が内部境界の幾何形状の存在に影響されておらず、部境界付近のボロノイセル辺が、内部境界の幾何形状に一致していない。
【0059】
図6Bは、本発明の方法論を使用した場合の格子化の結果を示す。
図6Bの格子化
図62は、フィールドにおけるすべての内部境界を示している。
図6Aとは対照的に、交差した内部境界を含むすべての内部境界に対して非拘束ボロノイ格子生成法を適用し、最適に生成した非構造格子セルですべての内部境界の幾何形状を尊重していることが明確である。内部境界の不規則な幾何形状構造が、正確に保持されている。
図6Bの
図62の内部境界付近の格子から明らかなように、ボロノイセル辺が不規則な内部境界の幾何形状に一致している。
【0060】
図7Aおよび
図7Bは、
図6Aおよび
図6Bの貯留層格子化の一部拡大図であり、予備試験を行った2つの貯留層のうち第1貯留層を示す。
図7Aおよび
図7Bの拡大図では、
図7Bのボロノイ格子が、内部境界付近を明確に例証している。ボロノイセル辺が内部境界の幾何形状と一致して内部境界の幾何形状を尊重し、本方法により内部境界が保持されている。一方
図7Aは、本方法を適用していないため、そのようなボロノイ格子は内部境界付近に存在しない。同様に、
図8Aおよび
図8Bは、検討中の2つの貯留層の第2貯留層を示しており、それぞれ
図6Aおよび
図6Bの貯留層格子化の一部拡大図である。
図8Aおよび
図8Bの内部境界付近の領域について、
図8Bのボロノイセルは、本方法を適用したため内部境界付近に明確に示されている。
図8Aは本方法を適用していないため、このようなボロノイセルが存在していない。
【0061】
図9Aは
図7Bの局所的領域72の拡大図である。2つの貯留層の局所的領域72のボロノイセルが領域92でどのように表示されるかを示し、本発明の利点を説明する。同様に
図9Bは
図8Bの局所的領域82の拡大図である。領域94で示す通り、本発明の利点を説明する。また内部境界に交差部分がある場合、最適に配置された内部境界格子点が、内部境界付近の領域の格子密度の要件と内部境界の幾何形状とのバランスをとることを
図9Aおよび
図9Bは例証する。
【0062】
図10Aおよび
図10Bは、ボロノイセルを3次元で表示し、比較するものである。貯留層シミュレーションの対象となる内部境界、この場合は貯留層の断層のセル頂点を示す。
図7Bの内部境界74に本発明による処理を適用すると、
図10Bに間隙で示す領域152のような深さを有するのがわかる。一方、本発明の方法論を適用しない
図10Aでは、内部境界は正確にモデリングされていない。
図10Bの領域152の間隙で示すような内部境界にわたるセル頂点の深さの差が、内部境界の格子化における本発明の価値を実証するものである。このように、本発明は不連続部分や内部境界付近の岩塊の変位といった不連続部分を正確にモデリングする。この例で不連続部分は断層である。
【0063】
図11Aおよび
図11Bは交差した内部境界のボロノイセルを比較できるよう示した図である。
図11Aは、先に言及したHeinemannらによるSPE Paper 48998の技法で形成された交差内部境界のボロノイセルを示す図である。
図11Aに示すように、SPE Paper 48998に開示の技法では、複数の内部境界が交差する場合に、内部境界の交差領域96に生成されるボロノイ格子が、計算目的には不十分である。SPE Paperの技法では最適化を行わず、すべての内部境界格子点を保持する。その結果、内部境界付近領域の格子密度要件が維持されず、内部境界付近の領域96で格子点の密集が見られる。格子点が密集すると、角度が小さく不良な形の三角形となり、最終的に小さいボロノイセルを多数生成することになる。
【0064】
図11Bは、本発明により形成した交差内部境界ボロノイセルの表示図である。
図11Bからわかるように、本発明は、衝突する内部境界格子点の除去戦略により、格子密度や格子点位置に基づき衝突点を最適に管理する。その結果、最適な格子点間隔を維持し、所望の角度および形状の三角形を生成し、より良好なボロノイセル分布を得られる。
【0065】
[データ処理システム]
図12に示すように、データ処理システムPは、マスターノードプロセッサ122と、プロセッサ122に接続されて、動作命令、制御情報およびデータベースレコードをその中に記憶するメモリ124とを有する、コンピュータ120を備える。データ処理システムPは、インテルもしくはアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)製などのノードを有するマルチコアプロセッサ、またはリナックスHPCクラスタコンピュータであることが好ましい。データ処理システムPはまた、ニューヨーク州アーモンクのアイビーエム(IBM)または他の製造元から入手し得るものなど、好適な処理能力を有する任意の従来型メインフレームコンピュータであってもよい。場合により、データ処理システムPはまた、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、または任意の他の好適な処理装置など、好適な処理能力を有する任意の従来型種類コンピュータであってもよい。すなわちこの目的のために、多数の市販のデータ処理システムおよび各種コンピュータを使用してもよいことが理解されるべきである。
【0066】
オペレータやユーザは、ユーザインターフェース126を通じてプロセッサ122にアクセスでき、プロセッサ122は本発明により得られた処理結果の出力データまたはレコードを出力グラフィックユーザディスプレイ126で表示する。出力ディスプレイ126にはプリンタや出力表示画面といったコンポーネントが含まれ、グラフ、データシート、グラフィック画像、データプロットなどの形態で、印刷出力情報や可視表示を出力レコードや画像として提供する。
【0067】
コンピュータ120のユーザインターフェース126はさらに、好適なユーザ入力装置または入出力制御ユニット130を備え、ユーザが情報やデータベースレコードに対し制御またはアクセスし、コンピュータ120を操作できるようにする。データ処理システムPはデータベース132をさらに含み、そこにおいて格子座標データと内部境界記述データはコンピュータメモリに記憶されている。コンピュータメモリは、内部メモリ124であってもよく、係るデータベースサーバ140の符号136で示されるとおり、外部メモリやネットワークで接続されたメモリまたはネットワークに非接続のメモリであってもよい。
【0068】
データ処理システムPは、コンピュータ120の非一時的メモリ124に格納したプログラムコード142を備える。本発明のプログラムコード142はコンピュータで実行可能な命令の形態であり、複雑な内部境界を含む領域や貯留層において上述の本発明による方法でデータプロセッサ122が非拘束ボロノイ格子を生成できるようにする。
【0069】
コンピュータメモリ124はまた、貯留層シミュレータモジュールR、本出願人による先の同時係属中の米国特許出願による非構造格子化モジュールU、さらにプロセッサ122で操作および処理するデータベース132からのデータのコンピュータ動作命令を非一時的な形態で格納する。
【0070】
プログラムコード142は、マイクロコード、プログラム、ルーチン、またはコンピュータ実行可能記号言語の形態であってもよく、データ処理システムPの機能を制御し、その動作を命令する、順序付動作の特定セットを提供することに留意すべきである。プログラムコード142の命令は、データ処理システムPのメモリ124に記憶されてもよいし、フロッピーディスク、磁気テープ、従来のハードディスクドライブ、電子読み出し専用メモリ、光学記憶装置、またはコンピュータ利用可能非一時的媒体を格納した他の適切なデータ記憶装置に記憶されてもよい。プログラムコード142はまた、図示のように、サーバ140などのデータ記憶装置上に非一時的コンピュータ可読媒体として含まれてもよい。
【0071】
プログラムコード142は、本出願人による先の同時係属中の米国特許出願の複雑な坑井のための非構造格子化方法論Uに、断層の格子化を提供するコンポーネントであり、貯留層シミュレータR、好ましくは本出願人の超並列貯留層シミュレータGigaPOWERSの格子生成プログラムとして機能する。本発明によれば、断層や複雑な坑井などの複雑な内部境界を有するモデルに関して、シミュレータRは大規模非構造格子シミュレーションが可能である。
【0072】
データ処理システムPは、単一のCPUから構成されていてもよく、またはコンピュータメモリや、データ処理して入力データから出力データを得る他のハードウェアといった
図12に示すようなコンピュータクラスタから構成されてもよい。クラスタとは、ネットワーク接続したノードと呼ぶコンピュータの集まりである。通常クラスタは、1つまたは2つのヘッドノードまたはマスターノード122を有するものであり、これは、処理ノード144と呼ぶ他のノードのアクティビティを同期するために使用する。すべての処理ノード144は同じコンピュータプログラムを実行し、貯留層を表す格子の異なるセグメントに独立して機能する。
【0073】
したがって、本発明による貯留層シミュレーションのモデリングでは、内部境界の記述データを最初に用意し、処理準備を整える。貯留層シミュレーションでこの記述データは、地質学的モデルを構築する貯留層シミュレーション前処理ソフトウェアからの出力であり得る。
【0074】
内部境界の記述データをデータ処理システムPにロードし、非構造格子構築物を生成する。内部境界の記述データを解釈し、貯留層の地質学的モデル構造に基づき3次元座標付きの幾何形状の点に変換する。
【0075】
内部境界付近の格子密度要件と内部境界の幾何形状の正確なモデリングとのバランスをとり、初期内部境界記述に対応する幾何形状点を細分化する。2つの要件を満たすため新しい点が幾何学的に必要だが既存の点集合に存在しない場合、補間を適用して初期の点集合に新しい点を挿入することができる。
【0076】
細分化した点集合の点を接続して線分を構築し、初期記述で表現された内部境界を近似する。線分の各端点を中心に、線分の長さを基にした半径を用いて各端点に円を構築する。円の交点に最適に優先順位を付け、衝突点を除去する。最適な点集合から得られた交点を三角形の頂点とし、非拘束ドロネー三角形分割手順を適用する。次にドロネー三角形分割の双対格子を生成し、垂直二等分線でボロノイセルを得る。
【0077】
よって本発明は、領域の内部境界数がいくつであれ拘束せずにボロノイセルを生成する。この技法は、断層などの内部境界付近の正確な流動シミュレーションに容易に適用することができる。断層表面は密閉性、部分的に密閉性、あるいは浸透性であってもよい。
【0078】
本発明はまた、断層線(または他の媒質不連続部分)の両側に内部境界付近の格子点を生成し、断層の軌跡が非拘束ドロネー三角形分割の三角形の辺を形成することを保証する。複数の境界の軌跡が互いに交差していてもよい。本発明は、優れた間隔および内部境界の幾何形状表現を同時に最適化して、格子の密集や滑落、細い三角形が生じないようにする。
【0079】
本出願人による先の同時係属中の米国特許出願第14/171,815号明細書では、非構造格子化を用いた正確な坑井付近のモデリング技術を提供する。坑井に関しては、ボロノイセルの中心を使用して坑井軌跡をたどる。本発明では、ボロノイセル辺で内部境界をモデリングするといった処理能力を提供する。これらの内部境界は、断層または油圧ユニットの境界であってもよい。このモデリング能力を構造格子化処理に組み込むことにより、内部境界に一致する正確な非構造格子を生成できる。結果として得られる非構造格子は、並列貯留層シミュレーションで容易に使用することができる。
【0080】
従来技術の貯留層シミュレーション実施では、典型的にコーナーポイント型格子を使用して断層を表現する。CPG格子化による貯留層シミュレーションでは、過度の数値誤差や収束の遅延が生じた。多くの貯留層は複数の不連続部分を含む。内部境界として断層を正確に含むことは、流動シミュレーションにおいて優れた実践である。シミュレーションはより良い結果を生み、貯留層シミュレーション実施の価値が高まる。本発明は、追加的な内部境界モデリング能力を提供する。坑井付近の格子化に加えて、複雑な坑井や断層などの不規則な内部境界の両方を有する貯留層を貯留層シミュレータで正確にモデリングできる。
【0081】
当業者であれば本明細書における本発明で言及した結果を再現および取得し得るように、本発明を十分に説明してきたとはいえ、本明細書における本発明の主題の技術分野の当業者であれば、本明細書における請求において記載されていない、以下の特許請求の範囲に記載した事項を必要とする、修正を実行して、これらの修正を既定の方法論もしくはその性能および利用に適用し得るものであり、そのような構造は、本発明の範囲内に包含されるものとする。
【0082】
添付の特許請求の範囲において説明する本発明の趣旨または範囲から逸脱することなしに、上に詳細に説明した本発明に改良および修正がなされ得ることが留意および理解されるべきである。