(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有する、グラファイトシートおよび接着層が、上記表面を重ねた状態にて、上記表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって交互に積層されてなるグラファイト積層体であって、
上記グラファイト積層体は、当該グラファイト積層体の少なくとも2つ以上の屈曲部において折れ曲げられた形状を有しており、
上記接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものであり、かつ、吸水率が2%以下のものであり、
上記屈曲部の各々は、以下の(a)〜(c)の何れかであることを特徴とする、グラファイト積層体:
(a)上記グラファイト積層体を、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲させた第1の屈曲部、
(b)上記グラファイト積層体を、上記Z軸の方向に向かって屈曲させた第2の屈曲部、
(c)上記グラファイト積層体を、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲させ、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲させた第3の屈曲部。
X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有する、グラファイトシートおよび接着層が、上記表面を重ねた状態にて、上記表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって交互に積層されてなるグラファイト積層体であって、
上記グラファイト積層体は、当該グラファイト積層体の少なくとも1つ以上の屈曲部において折れ曲げられた形状を有しており、
上記接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものであり、かつ、吸水率が2%以下のものであり、
上記屈曲部の各々は、以下の(c)であることを特徴とする、グラファイト積層体:
(c)上記グラファイト積層体を、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲させ、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲させた第3の屈曲部。
上記グラファイト積層体は、上記グラファイト積層体が地面に対して水平になるように上記グラファイト積層体の一方の端部を固定した後、固定した上記端部から4cm離れた位置における上記グラファイト積層体の断面に対して、当該断面1mm2あたり0.7gの荷重をかけたときに、上記断面の変位が15mm以下のものであることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載のグラファイト積層体。
上記接着工程は、上記グラファイト積層体を折り曲げる少なくとも1つ以上の屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する屈曲部形成工程を包含することを特徴とする、請求項13〜15の何れか1項に記載のグラファイト積層体の製造方法。
上記積層工程は、X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有する、上記グラファイトシートおよび上記接着層を、上記表面を重ねた状態にて、上記表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって交互に積層させて上記積層物を形成する工程を包含し、
上記屈曲部形成工程は、2つ以上の屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する、以下の(d)〜(h)の屈曲部形成工程の少なくとも1つを包含することを特徴とする、請求項16に記載のグラファイト積層体の製造方法:
(d)加熱および加圧された上記積層物を上記Z軸の方向に切断して、上記積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲した第1の屈曲部を形成する、第1の屈曲部形成工程、
(e)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧することにより、上記グラファイト積層体に、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第2の屈曲部を形成する、第2の屈曲部形成工程、
(f)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧して、当該積層物をZ軸の方向に向かって屈曲させた後で、当該積層物を上記Z軸の方向に切断して、当該積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第2の屈曲部を形成する、第3の屈曲部形成工程、
(g)加熱および加圧された上記積層物を上記Z軸の方向に切断して、上記積層物から、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲したグラファイト積層体の前駆体を切り出した後で、屈曲した形状を有する加圧治具によって、当該グラファイト積層体の前駆体を加圧することにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成する、第4の屈曲部形成工程、
(h)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧して、当該積層物をZ軸の方向に向かって屈曲させた後で、当該積層物を上記Z軸の方向に対して斜めに切断して、当該積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成する、第5の屈曲部形成工程。
上記積層工程は、X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有する、上記グラファイトシートおよび上記接着層を、上記表面を重ねた状態にて、上記表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって交互に積層させて上記積層物を形成する工程を包含し、
上記屈曲部形成工程は、1つ以上の屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する、以下の(g)および(h)の屈曲部形成工程の少なくとも1つを包含することを特徴とする、請求項16に記載のグラファイト積層体の製造方法:
(g)加熱および加圧された上記積層物を上記Z軸の方向に切断して、上記積層物から、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲したグラファイト積層体の前駆体を切り出した後で、屈曲した形状を有する加圧治具によって、当該グラファイト積層体の前駆体を加圧することにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成する、第4の屈曲部形成工程、
(h)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧して、当該積層物をZ軸の方向に向かって屈曲させた後で、当該積層物を上記Z軸の方向に対して斜めに切断して、当該積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成する、第5の屈曲部形成工程。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献及び特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上B以下」を意図する。
【0056】
上述した第1の発明については、後述する〔実施の形態A〕および<実施例A>にて説明し、上述した第2の発明については、後述する〔実施の形態B〕および<実施例B>にて説明し、上述した第3の発明については、後述する〔実施の形態C〕および<実施例C>にて説明する。また、後述する〔実施の形態D〕は、第1の発明、第2の発明、および、第3の発明の全てに包含される実施形態である。
【0057】
〔実施の形態A〕
本発明は、ロッド状の熱輸送体であって、該ロッド状の熱輸送体は、熱輸送体の一方の端部を高温部位に接触させ、かつ他方の端部を20℃に保たれた低温部位に接触させて測定される熱伝導率において、式(1)の関係を満足するロッド状の熱輸送体である。
λ
a/λ
b>0.7 式(1)
式(1)において、λ
aは高温部位の温度が100℃であるときの熱伝導率、λ
bは高温部位の温度が50℃であるときの熱伝導率を表す。
【0058】
スマートフォンやタブレットなどの、小型化および高出力化された電子機器では、CPUでの発熱量が大きく、この熱をCPUからできるだけ離れた部位へ効果的に移動させる手段として、ヒートパイプが使用されている。ヒートパイプは、電子機器の高温部位(CPU等の発熱部または発熱部近傍)と電子機器の低温部位(高温部位よりも低温の部位)とを直結して熱を輸送できるため、電子機器に内臓されるサーマルハイウエイとして使用されている。サーマルハイウエイとしてヒートパイプを使用する場合の問題は、CPUの発熱量が急激に大きくなって、電子機器の温度が急激に上昇すると、ヒートパイプの空洞部にある作動液が蒸発して無くなるために、電子機器を冷却できなくなることである。これはドライアウトと呼ばれ、ヒートパイプを熱輸送に使用する限り、避けることができない問題である。
【0059】
そこで本発明者らは、作動液を必要としない、異なる原理のサーマルハイウエイを提供すれば、ドライアウトの問題が回避できると考えた。空洞部や作動液を有さないロッド状の材料をサーマルハイウエイとして使用すれば、ドライアウトの問題は回避できる。また、ロッド状の材料は、ロッド状の材料そのものに熱を輸送できる能力が供わっていることも必要である。そこで、本発明者らは、グラファイト材料に着目し、これをロッド状に成型し、ヒートパイプの代替としてのサーマルハイウエイとし使用して熱輸送能力を評価したところ、ドライアウトが回避されるだけではなく、熱輸送能力にも優れることを見出した。
【0060】
グラファイト材料は、リチウムイオン電池の負極材や潤滑剤として使用されている。また、グラファイト材料は、電子機器の放熱シートとして使用されている。放熱シートとして使用されるグラファイト材料は、薄くてスティフネスが小さい。本発明者らは、放熱材としてそのまま使用されるこの薄くてしなやかな放熱シートを、敢えて複数積層(層状構造)した。そして、当該積層体を、サーマルハイウエイとして使用するのに適当だと考えられるさまざまな形状、固さ、大きさのロッドに成型し、当該ロッドの熱輸送能力を評価した。その結果、本発明者らは、上記ロッドが、極めて優れた熱輸送能力を示すと同時に、ドライアウトを全く生じず、サーマルハイウエイとして使用すれば発熱部の温度によらず、常に一定の熱輸送ができることを見出した。この知見から、サーマルハイウエイの材料として、グラファイトが好適に使用できることがわかった。
【0061】
本発明の熱輸送体は、
図24に示す例のように、電子機器のサーマルハイウエイとして用いることができるため、本発明の熱輸送体によって、上述のようにCPUのような高温部位と、この熱を逃がすための低温部位とを直結して、効率よく熱を輸送することができる。
図24は、スマートフォンのケース304の内部のプレート303上に、本発明のロッド状の熱輸送体301を配置してサーマルハイウエイとして用いた図である。ロッド状の熱輸送体301をサーマルハイウエイとして使用する場合、第1CPU302などの発熱部の発する熱が、耐熱性の小さい第2CPU305に伝わることを回避でき、かつ、発熱体から低温部へ熱を直輸送できるように、所望の形状および大きさにロッドを成型することによって、電子機器内のチップなど他の部品の劣化を防ぐことができるという利点を有する。そのため、本発明の熱輸送体はロッド状であることが必要である。ロッド状とは、いわゆる一軸方向に細長い棒状の形状であり、棒の断面の形状は特に限定されず、例えば長方形、円形、楕円形、または、多角形でもかまわない。
【0062】
本発明の熱輸送体は、サーマルハイウエイとして使用できるロッド状であることをより具体的に説明するため、好ましいロッドの断面(ロッドの長軸方向に対して垂直となる断面)の大きさ(長軸と短軸との比)、ロッドの長さについて以下に説明する。
【0063】
図29(a)は、ロッド状の熱輸送体601の側面図であり、
図29(b)は、
図29(a)の破線の箇所における、ロッド状の熱輸送体601の断面図である。
図29(a)に示すように、ロッド状の熱輸送体601は、長軸方向に向かって長さがLである。また、
図29(b)に示すように、ロッド状の熱輸送体601の断面は、短軸の長さがaであり、長軸の長さがbである。
【0064】
ロッドの断面の短軸をa、長軸をbとした場合に、a/bが1/500以上であることが好ましい。a/bは、1/200以上であることが、ロッドの断面内の任意の地点の間における温度の差が小さくなり、熱輸送の効率が上がる点からさらに好ましく、1/100以上であることがさらに好ましい。なお、断面の大きさが長手方向で変化する場合には、aとbとの差が最も大きい点で、a/bを規定する。ロッドの長さLは、4cm以上であることが好ましい。ロッドの長さは、使用されるスマートフォンやタブレットの大きさにもよるが、発熱部からより遠くへ熱を運ぶことが熱輸送の点からは好ましいので、使用される電子機器内において、発熱部から十分離れた低温部を直結できるに十分な長さであることが好ましい。
【0065】
また、長軸bとロッドの長さLとの比L/bは、熱を特定の場所(例えば、電子機器(例えば、ノートパソコン)中のグラファイトシート、金属、または、ヒートシンク)に運びたい場合や、ロッド状の熱輸送体をグラファイトシートや金属板などと併用する場合、5以上であることが好ましい。L/bは、10以上であることがヒートパイプによる電子機器内の占有領域を狭くできる点からさらに好ましく、20以上であることがさらに好ましい。L/bの上限値は、特に限定されないが、スマートフォンやタブレット端末のように熱を面で拡散させて空気などに逃したい場合には、100以下(より具体的には1〜100)であることが好ましく、10以下(より具体的には1〜10)であることがより好ましく、5以下(より具体的には1.2〜5)であることが更に好ましい。長軸bの長さは、特に限定されないが、熱源の短辺の長さと同じか、熱源の短辺の長さよりも長いことが好ましい。当該構成であれば、効率よく熱源から熱を輸送することができる。
【0066】
また、本発明の熱輸送体がシートとは異なるロッド状であることを具体的に示すために、変形のし難さ(変形率)で、本発明の熱輸送体を表すことができる。変形率は、以下の方法で測定する。
図26(1)に示すように、ロッド状の熱輸送体301が地面に平行(水平)となるようにして、ロッド状の熱輸送体301の両端部を第1クランプ312、第2クランプ313でそれぞれ保持した後、
図26(2)に示すように、第2クランプ313の保持を外した。保持を外す前と外した後とで、ロッド状の熱輸送体301の端部の中心が垂れ下がった垂直距離をx、ロッド状の熱輸送体301の長さLをしたとき、x/Lで、ロッド状の熱輸送体301の変形率が定義される。本発明のロッド状の熱輸送体の変形率は10%以下であり、本発明のロッド状の熱輸送体は硬いものである。このように、本発明のロッド状の熱輸送体が、硬い棒状であることは、熱輸送体そのものの強度を確保できるという点からも好ましい。
【0067】
本発明者らが発明したロッド状の熱輸送体は、従来のヒートパイプと異なり、ドライアウトしない。そこで、このことを熱輸送体の熱伝導率で表すことができる。すなわち、本発明のロッド状の熱輸送体は、熱輸送体の一方の端部を高温部位に接触させ、かつ他方の端部を20℃に保たれた低温部位に接触させて測定される熱伝導率において、式(1)の関係を満足するロッド状の熱輸送体である。
【0068】
λ
a/λ
b>0.7 式(1)
式(1)において、λ
aは前記高温部位の温度が100℃であるときの熱伝導率を表し、λ
bは前記高温部位の温度が50℃であるときの熱伝導率を表す。
【0069】
熱伝導率の測定は、
図23に示すような測定装置で行うことができる。
図23において、
1)ロッド状の熱輸送体301の端部328を流水323(低温部位)と接触させて、端部328の温度を20℃に保つ。
2)ロッド状の熱輸送体301の端部327にヒーター322(高温部位)を取り付ける(換言すれば、端部327をヒーター322(高温部位)と接触させる)。熱電対325を、端部327とロッド状の熱輸送体301とが接するところに取り付け、熱電対326を、流水323と端部328とが接するところに取り付ける。熱電対325で測定される温度が高温部位の温度Tであり、熱電対326で測定される温度が、低温部位の温度(20℃)である。
3)ロッド状の熱輸送体301の低温部分以外を断熱材324で覆う。
4)高温部位が一定温度となるように、ヒーター322の出力Qを調整する。
このとき、熱伝導率λは、断面Sと軸方向の長さLとを用いて、
λ=Q×L/[S(T−20℃)]
と算出することができる。
【0070】
高温部位が100℃となるように調整したヒーター322の出力Q、および、高温部位が50℃となるように調整したヒーター322の出力Qを各々求め、高温部位が100℃のときのλ
a、および、高温部位が50℃のときのλ
bを求める。100℃であるときの熱伝導率λ
aを用いた理由は、従来のヒートパイプであると、高温部が100℃となるようにヒーター出力を調整した場合、作動液が沸点近くにまで加熱されて高温部位でドライアウトを起こしやすくなり、急激に熱輸送量が低下する現象が見られるからである。一方、高温部位の温度が50℃であるときの熱伝導率λ
bを用いた理由は、従来のヒートパイプであると、高温部位が50℃となるようにヒーター出力を調整した場合には、ドライアウトを起さないからである。
【0071】
このようにして測定した熱伝導率の比、λ
a/λ
bが、λ
a/λ
b>0.7となっている。本発明の熱輸送体は、ドライアウトを起さない。言い換えると、本発明の熱輸送体は、ヒーター出力によらず一定に熱輸送できるものであるが、ドライアウトとは別の要因による若干の熱輸送能力の低下を考慮して、λ
a/λ
bを規定することが好ましい。λ
a/λ
b>0.8であればより好ましく、λ
a/λ
b>0.9であれば更に好ましい。λ
a/λ
b>0.8であれば、高温となる高出力のCPUの熱輸送に用いることができるため好ましい。
【0072】
本発明の熱輸送体のλ
aは、320W/mK以上が好ましく、400W/mK以上がより好ましい。熱輸送体のλ
bは、400W/mK以上が好ましく、500W/mK以上がより好ましい。
【0073】
前記式(1)の関係を満足するロッド状の熱輸送体を得る方法としては、その材料としてグラファイト(グラファイト成分)を使用する方法が挙げられる。グラファイト材料を用いてロッド状に成型する方法としては、例えば、
a)グラファイトシートを粉砕し、金型に充填した後、プレス加工する方法、
b)グラファイトシートと、必要に応じて接着層とを任意形状に折り曲げながら、箱形に押し込んだ後、プレスする方法、
c)グラファイトシートと接着層とを交互に積層し、加熱および/または加圧などを行い、グラファイトシートと接着層とを接着させ、当該積層体をロッド状になるように切断する方法、などが挙げられるが、これに限定されない。この中でも、ロッドの大きさや形状を自由に設計でき、かつ熱伝導率に優れたロッド状の熱輸送体を容易に得ることができるという点から、c)の方法が好ましい。c)の方法により、層状構造となったロッド状熱輸送体を得ることができる。
【0074】
以下、c)の方法によってロッド状の熱輸送体を製造する方法を詳述する。使用するグラファイトシートとしては、特に限定されず、高分子系グラファイトシート、または、原料である天然黒鉛をエキスパンドして得られるグラファイトシート、等を用いることができる。高分子系グラファイトシートは、強度が高く、かつ、高い熱伝導性を有しているので、ロッド状の熱輸送体におけるより高い強度、および、より高い熱輸送能力を実現することができるため、好ましい。
【0075】
本発明におけるグラファイトシートの製造方法は、特に限定されない。本発明におけるグラファイトシートの第一の製造方法として、原料である天然黒鉛をエキスパンドする方法が挙げられる。具体的には、グラファイト粉末を酸(例えば、硫酸)に浸漬してグラファイト層間化合物を作製した後、当該グラファイト層間化合物を熱処理および発泡させて、グラファイト層を剥離させる。グラファイト層を剥離させた後、当該グラファイト層を洗浄して酸を除去し、グラファイト粉末によって形成された薄膜を得る。この様な方法で得られた薄膜を、さらに圧延ロール成型することでグラファイトシートを得ることができる。
【0076】
本発明におけるグラファイトシートの第二の製造方法として、高分子フィルム(例えば、ポリイミド樹脂)を熱処理することによって、高分子系グラファイトシートを作製する方法が挙げられる。具体的には、まず、出発物質である高分子フィルムを減圧下または不活性ガス雰囲気下で1000℃程度の温度に予備加熱処理して炭素化させることで、炭素化フィルムを形成する。その後、当該炭素化フィルムを不活性ガス雰囲気下で2800℃以上の温度にて熱処理してグラファイト化させることで、良好なグラファイト結晶構造を有し、かつ、熱伝導性に優れたグラファイトシートを得ることができる。
【0077】
本発明におけるグラファイトシートの面方向の熱伝導率は、1000W/(m・K)以上であることが好ましく、1100W/(m・K)以上であることがより好ましく、1200W/(m・K)以上であることがさらに好ましく、1300W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。
【0078】
面方向の熱伝導率が1000W/(m・K)以上のグラファイトシートを用いれば、より高い熱輸送能力を有するロッド状の熱輸送体を得ることができる。
【0079】
次に、接着層は、熱硬化性樹脂、または、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0080】
熱硬化性樹脂としては、〔実施の形態B〕の(接着層の種類)の欄に記載の熱硬化性樹脂と同じものを採用することができる。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、〔実施の形態B〕の(接着層の種類)の欄に記載の熱可塑性樹脂と同じものを採用することができる。
【0082】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、ガラス転移点が50℃以上のものであることが好ましく、60℃以上のものであることがより好ましく、70℃以上のものであることがより好ましく、80℃以上のものであることがより好ましい。ガラス転移点が50℃以上であれば、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを、より良く防ぐことができる。また、アクリル粘着やゴムシートのようなガラス転移点が50℃以上の材料を用いると、接着層の強度が強く、かつ、接着層の特性にバラツキが生じ難くなる傾向を示すので、好ましい。このようなガラス転移温度を有する材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)およびPC(ポリカーボネート)などが挙げられる。上述のようなグラファイトシートおよび接着層を用いて、交互に表面を重ねた状態にする。具体的な方法としては、(i)グラファイトシートと接着層とを交互に積層する方法、(ii)グラファイトシートの少なくとも片面の上に接着層を形成してグラファイト接着シートを作製した後、当該グラファイト接着シートを多層に積層する方法、を挙げることができる。
【0083】
上述した(ii)の方法としては、まず、グラファイト接着シートを作製する。グラファイト接着シートは、接着樹脂の塗工、または、接着フィルムのラミネート、によって作製することができる。
【0084】
グラファイトシート上に接着層材料(ワニス)を塗布する方法を採用する場合、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを防止するという観点から、接着層材料(ワニス)は、塗布後にタック性が無いものであることが好ましい。一方、接着層とグラファイトシートとを交互に積層する方法を採用する場合、接着層の誘電率が低ければ、接着層が帯電し難いので、静電気力によって、接着層を安定して搬送機に固定できる。接着層の誘電率は、特に限定されないが、1.0〜5.0が好ましく、2.0〜4.0がより好ましく、2.5〜3.6がより好ましい。接着層の誘電率が1.0〜5.0であれば、静電気によって接着層が反発し、離れ易くなるので、サーマルハイウエイとして好ましい。
【0085】
また、グラファイトシートの電気伝導性が高ければ、グラファイトシートと接着層とが密着した際に、接着層の静電気がグラファイトシートへ逃げ、グラファイトシートと接着層との間の滑りが良くなり、接着層のしわが発生し難くなる。本発明におけるグラファイトシートの電気伝導率は、特に限定されないが、1000〜25000S/cmが好ましく、2000〜20000S/cmがより好ましく、5000〜18000S/cmがより好ましく、10000〜17000S/cmがより好ましい。グラファイトシートの電気伝導率が1000〜25000S/cmであれば、グラファイトシートと接着層との間で、適度な密着性と適度な滑り性とを確保でき、接着層とグラファイトシートとの重ね合わせ(特に、薄い接着層との重ね合わせ)に優れるので、サーマルハイウエイとして好ましい。
【0086】
このよう被積層物を重ね合わせた後、加熱および加圧(換言すれば、圧縮)することによって、グラファイトシートと接着層とを接着させてグラファイト積層体を形成する。加熱・加圧の具体的な方法としては、ラミネートおよびプレスなどが挙げられるが、本発明においては、プレスによる接着が好適である。プレスであれば、10層以上といった多層の積層物であっても一括して接着できる。また、加熱しながら数秒以上の加圧を行えば、接着層の軟化、および、加圧の効果によって、グラファイト積層体内に空気が噛み込むことを抑制することができ、これによって、グラファイトシート同士の間の接触熱抵抗を低減できる。
【0087】
加熱温度および加圧圧力としては、特に限定されず、接着層を構成する材料に応じて適宜選択することができる。
【0088】
加熱・加圧による積層体の圧縮割合は、特に限定されないが、1よりも小さいことが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.96以下であることがより好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることがより好ましい。圧縮割合(グラファイト積層体の厚さ/原料となる積層物の厚さ)が1よりも小さいと、積層時に接着層が変形しているため、グラファイトシート同士が接触しやすくなり、理論熱伝導に近いグラファイト積層体を得ることができる。
【0089】
グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの積層数は、3層以上500層以下であり、5層以上400層以下が好ましい。
【0090】
なお、本発明において使用されるグラファイト積層体は、特許文献1に記載のような、1000層以上ものグラファイトシートを積層し、これを縦方向にスライスして、再度シート状のグラファイトを得る、という技術とは異なる。本発明においてこのような積層体を一旦製造する目的は、面内の所望の方向に熱を輸送するために必要な形状、強度および大きさを備えたロッド状の熱輸送体を得ることにある。従って、本発明において使用されるグラファイト積層体は、上下方向の配向を意図した特許文献1に記載の技術とは異なる。更に、本発明において使用されるグラファイト積層体は、最終的に得るものがシートである特許文献1に記載の技術のように、グラファイトシートの過度な積層枚数を必要としない。
【0091】
次に、この積層体からロッド状に熱輸送体を、サーマルハイウエイとして使用するに適した所望の形状・大きさに切断する。この方法は、後述する屈曲部を有したロッドを容易に形成することができる。すなわち、得られた積層体から屈曲部を有するロッド状に打ち抜くことで製造することが可能である。切断は、カッター、外周刃などのブレードソー、レーザー、ウォータージェット、ワイヤーソーなどを用いて行うことができる。
【0092】
あるいは別の方法として、被積層物を加熱・加圧して得られたグラファイト積層体を、凸部材と凹部材とが対をなす加圧治具を用いて、部材の間に配置した後、加圧することによって、屈曲部を有するグラファイト積層体を得、その後、ロッド状に切断することにより製造することもできる。
【0093】
本発明のロッド状の熱輸送体は、少なくとも一つの屈曲部を有する折れ曲げられた形状であってもよい。屈曲部を有すると、電子機器の内部で発熱体から発生した熱を、熱の輸送先となる低温部に直接、効率よく輸送するようなロッド形状にすることができ、ロッドの形状設計の自由度が増す。これは、電子機器の仕様上、温度の低い部分と熱源とを、直線的に接続できるとは限らない場合に、特に有効である。つまり、熱源と、より温度の低い部分との配置関係の自由度を、上げることができる。
【0094】
このように、熱輸送体の材料としてグラファイトを用いると、熱輸送体を、サーマルハイウエイに適したロッド形状に自由に設計できるという利点がある。
【0095】
ロッド状の熱輸送体に形成される屈曲部の数は、特に限定されず、所望の数だけ形成され得る。
【0096】
屈曲部が曲がる角度は、特に限定されない。屈曲部は、2mm以上の曲率半径、5mm以上の曲率半径、8mm以上の曲率半径、10mm以上の曲率半径、20mm以上の曲率半径にて曲がるものであってもよい。なお、曲率半径の最大値は、特に限定されず、例えば、100mm、90mm、80mm、70mm、60mm、50mm、40mm、30mm、または、20mmであってもよい。勿論、曲率半径の最大値は、100mmよりも大きな値であってもよい。
【0097】
ロッド状の熱輸送体は、樹脂(例えば、PET(polyethylene terephthalate)、PE(polyethylene)またはPI(polyimide)など)、または、金属(例えば、銅、ニッケルまたは金など)で被覆されたものであることが好ましい。グラファイトシートは、層状化合物であるために、擦れなどによって粉落ちが発生しやすい。そして、グラファイトシートは電気伝導性を有するため、粉落ちが発生すると、電子機器のショートを発生させる。
【0098】
それ故に、ロッド状の熱輸送体を被覆することで、グラファイトシートからの粉落ちを抑制することができ、これによって、電気機器のショートの発生を防ぐことができる。また、ロッド状の熱輸送体を被覆することで、ロッド状の熱輸送体の強度が向上し、層間剥離の発生も抑制することができる。
【0099】
被覆する材料としては、熱伝導性の向上や強度の向上の観点から、金属が好ましい。金属によってロッド状の熱輸送体を被覆する方法としては、特に限定されず、蒸着、スパッタ、または、めっき処理、などが挙げられるが、より高い密着性を有する金属層を形成する観点から、めっき処理が好ましい。
【0100】
ロッド状の熱輸送体を被覆する被覆膜の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上15μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましい。被覆膜の厚さが0.5μm以上であれば、ロッド状の熱輸送体の保護性が向上し、ロッド状の熱輸送体が、機械的な引っ掻きや擦れなどに対して強くなる。また、被覆膜の厚さが15μm以下であれば、ロッド状の熱輸送体の熱伝導性を高くすることができる。
【0101】
本発明の熱輸送体は、従来のヒートパイプ代替品として使用でき、電子機器内のサーマルハイウエイとして用いることが可能である。CPUなどの発熱体にロッド状熱輸送体の一端を接続し、他端を冷却部に接続する。本発明で発熱体と表現するとき、CPUなどの発熱する本体だけでなく、その近傍も、CPUが発する熱の影響を受ける部位であるので、発熱体に含まれる。低温部位は、上述した高温部位よりも温度が低い部位である。より発熱体から離れた場所へ熱を輸送すること、換言すれば、低温部位は、高温部位から離れた位置に存在することが好ましい。
【0102】
このようにして、本発明の熱輸送体は、熱を同一平面内のある地点から他の地点へと輸送するために好適に使用され得る。
【0103】
本実施のロッド状熱輸送体は、発熱体の温度変化によらず、輸送できる熱量が一定のため、熱輸送の安定性に優れ、使用される温度環境の制限を受けないという効果がある。また、一度に輸送できる熱量が大きいため、低温部位に集中的に熱を伝え、冷却効果が高い。従って、本実施のロッド状熱輸送体は、小型化、高性能化によってCPUの発熱量がより大きい、スマートフォン、タブレット、ファンレスのノートパソコンなどに使用される熱輸送体として、好適に用いることができる。また、本実施のロッド状熱輸送体は、従来のヒートパイプの代替品として使用しても、熱輸送能力に優れるだけでなく、使用条件の変更によるドライアウトが発生しない。
【0104】
〔実施の形態B〕
〔B−1.グラファイト積層体〕
本実施の形態のグラファイト積層体は、交互に積層されているグラファイトシートと接着層とを含むグラファイト積層体(または、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体)である。上記接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものであってもよい。更に、上記接着層は、吸水率が2%以下のものであり、かつ、厚さが15μm未満のものであってもよい。上記グラファイト積層体に含まれる上記グラファイトシートの積層数は、3層以上であり得る。当該グラファイト積層体は、更に、上記グラファイトシートと上記接着層とが交互に積層された積層物を圧縮して得られるものであってもよい。なお、上述した接着層の厚さは、完成品であるグラファイト積層体の中に組み込まれている状態の接着層の厚さを意図し、完成品であるグラファイト積層体の中に組み込まれる前の接着層の厚さを意図するものではない。但し、完成品であるグラファイト積層体の中に組み込まれている状態の接着層の厚さと、完成品であるグラファイト積層体の中に組み込まれる前の接着層の厚さとは、略同一である。
【0105】
また、本実施の形態のグラファイト積層体は、交互に積層されているグラファイトシートと接着層とを含むグラファイト積層体(または、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体)である。上記接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものであってもよい。更に、上記接着層は、吸水率が2%以下のものであってもよい。上記グラファイト積層体は、上記グラファイトシートと上記接着層とが交互に積層された積層物を圧縮して得られるものであってもよい。上記グラファイト積層体に含まれる上記グラファイトシートの積層数は、3層以上であり得る。当該グラファイト積層体では、更に、上記接着層が、厚さが15μm未満のものであってもよい。
【0106】
また、本実施の形態のグラファイト積層体は、交互に積層されているグラファイトシートと接着層とを含むグラファイト積層体(または、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体)である。上記接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものであってもよい。更に、上記接着層は、厚さが15μm未満のものであってもよい。上記グラファイト積層体に含まれる上記グラファイトシートの積層数が、3層以上であり得る。上記グラファイト積層体の吸水率は、0.25%以下(好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下)であり得る。
【0107】
ここで、「圧縮して得られるもの」とは、圧縮前の材料の厚さの合計よりも、圧縮後の材料の厚さの合計が薄くなっているものを意図する。このとき、グラファイトシートの表面に接着層の成分が浸潤しているものも、「圧縮して得られるもの」に包含される。なお、グラファイト積層体が圧縮して得られたものであるか否かは、i)圧縮処理の前後におけるグラファイト積層体の厚さの比較、または、ii)SEM(scanning electron microscope)によるグラファイト積層体内の層間の界面の観察、等によって確認することができる。例えば、上記ii)の方法の場合、SEMによってグラファイト積層体におけるグラファイトシートと接着層との層間の界面を観察し、当該界面が直線でなければ、当該グラファイト積層体は、圧縮して得られたものであると判定することができる。
【0108】
また、本発明のグラファイト積層体は、少なくとも1つ以上の屈曲部において折れ曲げられた形状を有するものであり得る。つまり、本発明のグラファイト積層体は、屈曲前の本発明のグラファイト積層体を屈曲部にて折り曲げたものであり得る。
【0109】
以下に、グラファイト積層体、並びに、当該グラファイト積層体を構成するグラファイトシートおよび接着層について説明する。
【0110】
〔B−1−1.グラファイト積層体〕
(グラファイト積層体の基本構造)
グラファイト積層体は、グラファイトシートと、接着層とが、交互に積層されてなるものである。なお、グラファイトシートと接着層との間には、他の構成が挟まれていてもよいし、他の構成が挟まれていなくてもよい。
【0111】
図1は、グラファイト積層体の基本構造を示す図である。
図1に示すように、グラファイト積層体1を構成するグラファイトシート5および接着層6の各々は、X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有している。そして、当該表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって、当該表面が重なった状態にて、グラファイトシート5と接着層6とが交互に積層され、これによって、グラファイト積層体1が形成されている。上述したように、X軸とY軸とが交わる角度は、90°である。
【0112】
本明細書において「表面が重なった状態」とは、
図1のように、積層体1をZ軸方向に見た時に、グラファイトシート5の表面の少なくとも一部と、接着層6の表面の少なくとも一部とが、重なっている状態を意図する。
【0113】
グラファイトシート5の上記表面の形状と、接着層6の上記表面の形状とは、同じであってもよいし、異なっていてもよいが、より良く所望の効果を実現するという観点からは、グラファイトシート5の上記表面の形状と、接着層6の上記表面の形状とは、同じであることが好ましい。
【0114】
例えば、グラファイトシート5の表面の形状と接着層6の表面の形状とは、正方形であってもよい。この場合、当該表面を規定する1つの辺が伸びる方向をX軸の方向とし、当該辺と交わる別の辺が伸びる方向をY軸の方向とすることができる。
【0115】
また、グラファイトシート5の表面の形状と接着層6の表面の形状とは、長方形であってもよい。この場合、当該長方形の短辺が伸びる方向をX軸の方向とし、当該長方形の長辺が伸びる方向をY軸の方向とすることができる。
【0116】
また、グラファイトシート5の表面の形状と接着層6の表面の形状とは、正方形や長方形以外の形状であってもよい。この場合、当該表面の最も長手方向をY軸の方向とし、当該Y軸に直交する方向をX軸の方向とすることができる。
【0117】
グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの積層数は、3層以上であり得るが、5層以上であることがより好ましく、10層以上であることがより好ましく、15層以上であることがより好ましく、20層以上であることがより好ましい。積層数の上限値は、特に限定されないが、1000層以下、500層以下、200層以下、100層以下、80層以下または50層以下であり得る。
【0118】
積層数が3層以上であれば、熱輸送能力が高く、かつ、機械的強度に優れたグラファイト積層体を得ることができるので好ましい。
【0119】
グラファイト積層体に含まれる接着層の積層数は、特に限定されず、グラファイトシートの積層数に合わせて、適宜設定することができる。例えば、グラファイト積層体では、(i)隣接するグラファイトシート間に、1枚の接着層は勿論のこと、2枚以上の接着層が配置されていてもよく、(ii)グラファイトシートが、グラファイト積層体の最上面のみに配置、グラファイト積層体の最下面のみに配置、または、グラファイト積層体の最上面および最下面の両方に配置されていてもよく、(iii)接着層が、グラファイト積層体の最上面のみに配置、グラファイト積層体の最下面のみに配置、または、グラファイト積層体の最上面および最下面の両方に配置されていてもよい。なお、本明細書における「グラファイトシートと接着層とが交互に積層」には、(a)隣接するグラファイトシート間に1枚の接着層が配置される場合、および、(b)隣接するグラファイトシート間に2枚以上の接着層が配置される場合、の両方が包含される。つまり、本発明では、接着層は、複数の接着層が積層されたものであってもよい。
【0120】
(グラファイト積層体の厚さ)
グラファイト積層体の厚さ(換言すれば、
図1のZ軸の方向の長さ)は、特に限定されないが、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることがより好ましく、0.8mm以上であることがより好ましい。グラファイト積層体の厚さが0.5mm以上であれば、輸送できる熱量が多くなり、発熱量が大きな電子機器にも適用することができる。グラファイト積層体の厚さの上限値は、特に限定されないが、電子機器の薄型化という観点からは、10mm以下であってもよいし、7.5mm以下であってもよいし、5mm以下であってもよいし、2.5mm以下であってもよいし、1mm以下であってもよい。
【0121】
更に、グラファイトシートの各々の厚さの合計(Tg)を接着層の各々の厚さの合計(Ta)で割った値(Tg/Ta)が、4.1以上40以下(更に好ましくは、8.0以上40以下、4.1以上27以下、または、8.0以上27以下)であり、かつ、グラファイト積層体の厚さが、0.5mm以上であることが好ましい。グラファイトシートは高い熱伝導性を有するが、厚さが80μm以下程度と薄く、一度に輸送できる熱量が多くない。そのため、一度に大きな熱量を輸送するためには、グラファイトシートを積層し、熱輸送能力を向上させることが好ましい。グラファイトシートの積層方法としては、グラファイトシートの表面の凹凸を吸収し、かつ、グラファイトシート同士の間の接触熱抵抗を低減させるために、接着層を介した積層が効果的である。
【0122】
Tg/Taは、4.1以上であることが好ましく、8.0以上であることがより好ましい。Tg/Taが4.1以上であれば、グラファイトシートに比べて熱伝導率の低い接着層のグラファイト積層体内における存在比率が抑制され、グラファイト積層体の高い熱伝導性を実現すことができる。
【0123】
Tg/Taは、40以下であることが好ましく、27以下であることがより好ましい。Tg/Taが40以下であれば、グラファイトシートの表面の凹凸を接着層によって吸収することができるため、グラファイトシート同士の間の接触熱抵抗を低減することができ、グラファイト積層体の高い熱伝導性を実現することができる。更に、Tg/Taが40以下であれば、グラファイトシート同士の間の接着力が良好になるため、切断や屈曲などの加工にも耐え得るグラファイト積層体を得ることができる。
【0124】
また、切断中の力を接着層に適度に分散させて、切断箇所の厚さのばらつきを押さえるという観点からは、Tg/Taが、1以上50以下の範囲内であることが好ましい。
【0125】
(屈曲部)
グラファイト積層体は、当該グラファイト積層体に設けられた少なくとも1つ(例えば、1つ以上、または、2つ以上)の屈曲部において折れ曲げられた形状を有し得る。つまり、本実施の形態のグラファイト積層体は、屈曲前のグラファイト積層体を屈曲部にて折り曲げたものであり得る。電子機器の内部では、熱源にて発生した熱を温度の低い部分に移動させることで、熱輸送が可能になる。しかしながら、温度の低い部分と熱源とを、直線的に接続できるとは限らない。そこで、グラファイト積層体に屈曲部を形成しておくことで、熱源にて発生した熱をより温度の低い部分に容易に移動させることができ、これによって、熱輸送能力を更に向上させることができる。つまり、熱源と、より温度の低い部分との配置関係の自由度を、上げることができる。
【0126】
グラファイト積層体に形成される屈曲部の数は、特に限定されず、所望の数だけ形成され得る。
【0127】
上記屈曲部には、継ぎ目がないことが好ましい。屈曲部に継ぎ目を形成しないことで、熱の移動が良好になり、グラファイト積層体の熱輸送能力を向上させることができる。なお、本明細書における「継ぎ目」とは、1枚のグラファイトシートの構造上の連続性を分断する継ぎ目のことである。一方、接着層を挟んだ、グラファイトシートと当該グラファイトシートに隣接する別のグラファイトシートとの間に生じ得る分断は、本明細書における「継ぎ目」に該当しない。
【0128】
屈曲部の具体的な形状は、特に限定されないが、例えば、以下の(a)〜(c)の何れかであり得る:
(a)上記グラファイト積層体を、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲させた第1の屈曲部、
(b)上記グラファイト積層体を、上記Z軸の方向に向かって屈曲させた第2の屈曲部、
(c)上記グラファイト積層体を、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲させ、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲させた第3の屈曲部。
【0129】
より具体的に、本実施の形態のグラファイト積層体は、(i)2つ以上の屈曲部が形成され、当該屈曲部の各々が、上述した第1の屈曲部、第2の屈曲部または第3の屈曲部の何れかであってもよいし、(ii)1つ以上の屈曲部が形成され、当該屈曲部の各々が、上述した第3の屈曲部であってもよい。勿論、本実施の形態のグラファイト積層体の構成は、(i)や(ii)に限定されない。
【0130】
なお、第1の屈曲部および第2の屈曲部は、屈曲前のグラファイト積層体を平面的(換言すれば、二次元)に、所望の角度に屈曲させるものであり、第3の屈曲部は、屈曲前のグラファイト積層体を立体的に(換言すれば、三次元的に)所望の角度に屈曲させるものである。
【0131】
図2に、第1の屈曲部を有するグラファイト積層体の例を示す。
図2に示すグラファイト積層体1では、屈曲部10(第1の屈曲部)にて、グラファイト積層体1が、X軸および/またはY軸の方向に向かって屈曲している。なお、グラファイト積層体1が屈曲する角度は、限定されず、所望の角度に屈曲することができる。
【0132】
図3に、第2の屈曲部を有するグラファイト積層体の例を示す。
図3に示すグラファイト積層体1では、屈曲部11(第2の屈曲部)にて、グラファイト積層体1が、Z軸の方向に向かって屈曲している。なお、グラファイト積層体1が屈曲する角度は、限定されず、所望の角度に屈曲することができる。
【0133】
図4に、第3の屈曲部を有するグラファイト積層体の例を示す。
図4に示すグラファイト積層体1では、屈曲部12(第3の屈曲部)にて、グラファイト積層体1が、X軸および/またはY軸の方向に向かって屈曲し、かつ、Z軸の方向に向かって屈曲している。なお、グラファイト積層体1が屈曲する角度は、限定されず、所望の角度に屈曲することができる。
【0134】
図5に、複数の屈曲部を有するグラファイト積層体の例を示す。
図5に示すグラファイト積層体1では、屈曲部11(第2の屈曲部)にて、グラファイト積層体1が、Z軸の方向に向かって屈曲し、更に、屈曲部10(第1の屈曲部)にて、グラファイト積層体1が、X軸の方向に向かって屈曲している。より具体的に、
図5に示すグラファイト積層体は、Y軸方向へ向かって伸びる領域15と、Z軸方向へ向かって伸びる領域16と、X軸方向へ向かって伸びる領域17と、を備えている。このとき、領域15と領域16との境界には第2の屈曲部が設けられ、領域16と領域17との境界には第1の屈曲部が設けられている。なお、グラファイト積層体1が屈曲する角度は、限定されず、所望の角度に屈曲することができる。なお、
図5では、X軸、Y軸およびZ軸は、曲げる前の平面状のグラファイト積層体を基準に規定されている。グラファイト積層体を曲げた後でも、最初に規定したX軸、Y軸およびZ軸は曲げる前と同様に考えることが可能である。つまり、グラファイトシートが積層される方向をZ軸と考えればよい。例えば、領域16では、
図5に「Y軸」として記載されている軸が、グラファイトシートが積層される方向であるZ軸に対応し、領域17でも、
図5に「Y軸」として記載されている軸が、グラファイトシートが積層される方向であるZ軸に対応する。
【0135】
なお、本明細書において、「X軸の方向に向かって屈曲」とは、X−Y平面内に広がる屈曲前の平面的なグラファイト積層体が、X−Y平面内で、所望の角度にてX軸の方向へ曲がることを意図し、「Y軸の方向へ向かって屈曲」とは、X−Y平面内に広がる屈曲前の平面的なグラファイト積層体が、X−Y平面内で、所望の角度にてY軸の方向へ曲がることを意図し、「Z軸の方向へ向かって屈曲」とは、X−Y平面内に広がる屈曲前の平面的なグラファイト積層体が、所望の角度にて、X−Y平面と直交するZ軸の方向へ曲がることを意図し、「X軸の方向またはY軸の方向に向かって屈曲し、かつ、Z軸の方向に向かって屈曲」とは、X−Y平面内に広がる屈曲前の平面的なグラファイト積層体が、X−Y平面内で、所望の角度にてX軸の方向またはY軸の方向へ曲がり、更に、当該X−Y平面内に広がる屈曲している平面的なグラファイト積層体が、所望の角度にて、X−Y平面と直交するZ軸の方向へも曲がることを意図する。
【0136】
第1の屈曲部、第2の屈曲部、および、第3の屈曲部には、隣接するグラファイトシート同士が接着層で接着されていない未接着部が形成されていてもよい。当該未接着部の詳細については、後述する。
【0137】
屈曲部が曲がる角度は、特に限定されない。屈曲部は、2mm以上の曲率半径、5mm以上の曲率半径、8mm以上の曲率半径、10mm以上の曲率半径、20mm以上の曲率半径にて曲がるものであってもよい。なお、曲率半径の最大値は、特に限定されず、例えば、100mm、90mm、80mm、70mm、60mm、50mm、40mm、30mm、または、20mmであってもよい。勿論、曲率半径の最大値は、100mmよりも大きな値であってもよい。
【0138】
(グラファイト積層体の被覆)
グラファイト積層体は、樹脂(例えば、PET(polyethylene terephthalate)、PE(polyethylene)またはPI(polyimide)など)、または、金属(例えば、銅、ニッケルまたは金など)で被覆されたものであることが好ましい。グラファイトシートは、層状化合物であるために、擦れなどによって粉落ちが発生しやすい。そして、グラファイトシートは電気伝導性を有するため、粉落ちが発生すると、電子機器のショートを発生させる。
【0139】
それ故に、グラファイト積層体を被覆することで、グラファイトシートからの粉落ちを抑制することができ、これによって、電気機器のショートの発生を防ぐことができる。また、グラファイト積層体を被覆することで、グラファイト積層体の強度が向上し、層間剥離の発生も抑制することができる。
【0140】
被覆する材料としては、熱伝導性の向上や強度の向上の観点から、金属が好ましい。金属によってグラファイト積層体を被覆する方法としては、特に限定されず、蒸着、スパッタ、または、めっき処理、などが挙げられるが、より高い密着性を有する金属層を形成する観点から、めっき処理が好ましい。
【0141】
グラファイト積層体を被覆する被覆膜の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上15μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下であることがより好ましく、2μm以上7μm以下であることがより好ましい。被覆膜の厚さが0.5μm以上であれば、グラファイト積層体の保護性が向上し、グラファイト積層体が、機械的な引っ掻きや擦れなどに対して強くなる。また、被覆膜の厚さが15μm以下であれば、グラファイト積層体の熱伝導性を高くすることができる。
【0142】
(グラファイト積層体の吸水率)
グラファイト積層体の吸水率は、特に限定されないが、0.25%以下であることが好ましく、0.20%以下であることが更に好ましく、0.10%以下であることが最も好ましい。グラファイト積層体の吸水率が0.25%以下であれば、グラファイト積層体の製造時や、グラファイト積層体を熱輸送機構として使用している時に、グラファイト積層体内の水が気化して発生するガス(アウトガス)の量が少ないので、グラファイト積層体の内部に空隙が生じることを防ぐことができる。なお、グラファイト積層体の吸水率は、以下の式にて算出することができる。つまり、
(グラファイト積層体の吸水率)=(接着層の吸水率)×(接着層の厚さ)/[(接着層の厚さ)+(グラファイトシートの厚さ)] ・・・・・(式)。
【0143】
(グラファイト積層体の固さ)
グラファイト積層体は、グラファイト積層体が地面に対して水平になるように上記グラファイト積層体の一方の端部を固定した後、固定した上記端部から4cm離れた位置におけるグラファイト積層体の断面に対して、当該断面1mm
2あたり0.7gの荷重をかけたときに、上記断面の変位が15mm以下、好ましくは14mm以下、より好ましくは13mm以下、より好ましくは12mm以下、より好ましくは11mm以下、より好ましくは10mm以下、より好ましくは9mm以下、より好ましくは8mm以下、より好ましくは7mm以下、より好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下、より好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下、最も好ましくは1mm以下のものである。グラファイト積層体が固いほど、換言すれば、グラファイト積層体の形状変化が少ないほど、グラファイト積層体の取り扱いが容易となり、好ましい。
【0144】
〔B−1−2.グラファイトシート〕
(グラファイトシートの種類)
本発明におけるグラファイトシートは、特に限定されず、高分子系グラファイトシート、または、原料である天然黒鉛をエキスパンドして得られるグラファイトシート、等を用いることができる。高分子系グラファイトシートは、強度が高く、かつ、高い熱伝導性を有しているので、グラファイト積層体におけるより高い強度、および、より高い熱輸送能力を実現することができるため、好ましい。
【0145】
(グラファイトシートの製造方法)
本発明におけるグラファイトシートの製造方法は、特に限定されない。
【0146】
本発明におけるグラファイトシートの第一の製造方法として、原料である天然黒鉛をエキスパンドする方法が挙げられる。具体的には、グラファイト粉末を酸(例えば、硫酸)に浸漬してグラファイト層間化合物を作製した後、当該グラファイト層間化合物を熱処理および発泡させて、グラファイト層を剥離させる。グラファイト層を剥離させた後、当該グラファイト層を洗浄して酸を除去し、グラファイト粉末によって形成された薄膜を得る。この様な方法で得られた薄膜を、さらに圧延ロール成型することでグラファイトシートを得ることができる。
【0147】
本発明におけるグラファイトシートの第二の製造方法として、高分子フィルム(例えば、ポリイミド樹脂)を熱処理することによって、高分子系グラファイトシートを作製する方法が挙げられる。具体的には、まず、出発物質である高分子フィルムを減圧下または不活性ガス雰囲気下で1000℃程度の温度に予備加熱処理して炭素化させることで、炭素化フィルムを形成する。その後、当該炭素化フィルムを不活性ガス雰囲気下で2800℃以上の温度にて熱処理してグラファイト化させることで、良好なグラファイト結晶構造を有し、かつ、熱伝導性に優れたグラファイトシートを得ることができる。
【0148】
(グラファイトシートの面方向の熱伝導率)
本発明におけるグラファイトシートの面方向の熱伝導率は、1000W/(m・K)以上であることが好ましく、1100W/(m・K)以上であることがより好ましく、1200W/(m・K)以上であることがさらに好ましく、1300W/(m・K)以上であることがさらに好ましい。
【0149】
面方向の熱伝導率が1000W/(m・K)以上のグラファイトシートを用いれば、より高い熱輸送能力を有するグラファイト積層体を得ることができる。また、面方向の熱伝導率が1000W/(m・K)以上のグラファイトシートは、金属材料(例えば、銅、アルミなど)に対して、3倍以上の熱伝導性を有することになる。それ故に、銅やアルミなどを用いた構成と同等の熱輸送能力になるように、グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの枚数を設定した場合、グラファイト積層体の重量を大幅に減少させることができ、その結果、電子機器の軽量化にも貢献することができる。
【0150】
グラファイトシートの面方向の熱伝導率の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0151】
(グラファイトシートの厚さ)
本発明におけるグラファイトシートの厚さは、特に限定されないが、好ましくは10μm以上200μm以下であり、より好ましくは12μm以上150μm以下であり、より好ましくは15μm以上100μm以下であり、より好ましくは20μm以上80μm以下である。グラファイトシートの厚さが10μm以上であれば、グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの積層枚数を削減することができ、熱伝導率の低い接着層の積層枚数を減らすことができる。また、グラファイトシートの厚さが、200μm以下であれば、グラファイト積層体の高い熱伝導率を実現することができる。
【0152】
グラファイトシートの厚さの算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0153】
(グラファイトシートの電気伝導率)
本発明におけるグラファイトシートの電気伝導率は、特に限定されないが、1000〜25000S/cmが好ましく、2000〜20000S/cmがより好ましく、5000〜18000S/cmがより好ましく、10000〜17000S/cmがより好ましい。グラファイトシートの電気伝導率が1000〜25000S/cmであれば、グラファイトシートと接着層との間で、適度な密着性と適度な滑り性とを確保でき、接着層とグラファイトシートとの重ね合わせ(特に、薄い接着層との重ね合わせ)に優れるので好ましい。
【0154】
グラファイトシートの電気伝導率の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0155】
(グラファイトシートの密度)
本発明におけるグラファイトシートの密度は、特に限定されないが、0.8g/cm
3以上が好ましく、1.0g/cm
3以上が好ましく、1.5g/cm
3以上がより好ましく、2.0g/cm
3以上がより好ましく、2.5g/cm
3以上がより好ましい。グラファイトシートの密度が0.8g/cm
3以上であれば、グラファイトシート自体の自己支持性に優れるので好ましい。
【0156】
グラファイトシートの密度の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0157】
(グラファイトシートの表面粗さ)
本発明におけるグラファイトシートの表面粗さは、特に限定されないが、5μm以下が好ましく、2.0μm未満がより好ましく、1.5μm以下がより好ましく、1.0μm未満がより好ましい。グラファイトシートの表面粗さが5μm以下であれば、グラファイトシートと接着層との間で、適度な密着性と適度な滑り性とを確保でき、接着層とグラファイトシートとの重ね合わせ(特に、薄い接着層との重ね合わせ)に優れるので好ましい。
【0158】
グラファイトシートの表面粗さの算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0159】
(グラファイトシートの孔)
グラファイトシートを10層以上といった多層に積層する場合や、100mm角以上といった大面積のグラファイトシートを積層する場合、加熱および加圧を伴う接着では、接着層からわずかに発生するガスや各層間に僅かに巻き込んだ空気が膨張し、部分的に膨れが発生してしまう場合がある。これは、グラファイトシートの高いガスバリア性によるものである。
【0160】
それ故に、グラファイトシートに、ガスを通過させる孔を形成しておくことが好ましい。孔の形成割合としては、グラファイトシートの表面積の0.5%以上に孔が形成されていることが好ましく、1%以上に孔が形成されていることがより好ましい。孔の形状は、特に限定されず、真円、楕円、三角形、四角形など適宜選択することができる。
【0161】
〔B−1−3.接着層〕
(接着層の種類)
本発明における接着層は、熱硬化性樹脂、または、熱可塑性樹脂を用いることができる。なお、接着層の材料としては、フィルム状のものを用いることも可能であるし、ワニス状のものを用いることも可能である。
【0162】
熱硬化性樹脂としては、PU(ポリウレタン)、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン系樹脂、グアナミン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル、オリゴエステルアクリレート、ジアリルフタレート、DKF樹脂(レゾルシノール系樹脂の一種)、キシレン樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、PI(ポリイミド系)樹脂、PEI(ポリエーテルイミド)樹脂、PAI(ポリアミドイミド)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)が、材料選択の幅が広く、グラファイトシートとの密着性が優れるために好ましい。
【0163】
熱可塑性樹脂としては、アクリル、アイオノマー、イソブチレン無水マレイン酸コポリマー、AAS(アクリロニトリル−アクリル−スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ACS(アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体)、MBS(メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン共重合体)、エチレン−塩化ビニル共重合体、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)、EVA系(エチレン−酢酸ビニル共重合体系)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)、ポリ酢酸ビニル、塩素化塩化ビニール、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、カルボキシビニルポリマー、ケトン樹脂、ノルボルネン樹脂、プロピオン酸ビニル、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、TPX(ポリメチルペンテン)、ポリブタジエン、PS(ポリスチレン)、スチレン無水マレイン酸共重合体、メタクリル、EMAA(エチレン−メタクリル酸共重合体)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PVC(ポリ塩化ビニール)、ポリ塩化ビニリデン、PVA(ポリビニルアルコール)、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、セルロース系、ナイロン6、ナイロン6共重合体、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、共重合ナイロン、ナイロンMXD、ナイロン46、メトキシメチル化ナイロン、アラミド、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、POM(ポリアセタール)、ポリエチレンオキシド、PPE(ポリフェニレンエーテル)、変性PPE(ポリフェニレンエーテル)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PES(ポリエーテルサルフォン)、PSO(ポリサルフォン)、ポリアミンサルフォン、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、PAR(ポリアリレート)、ポリパラビニールフェノール、ポリパラメチレンスチレン、ポリアリルアミン、芳香族ポリエステル、液晶ポリマー、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、EPE(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン共重合体)、ECTFE(エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド系)、PVF(ポリビニルフルオライド)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
【0164】
接着層としては、芳香族を含む材料(例えば、ポリエステル接着剤、および、ポリエチレンテレフタレートなど)を用いることが好ましい。当該構成であれば、接着層を積層した時に、グラファイトシートの平面と略平行に接着層が整列し、積層時にグラファイトシートの層が乱されにくく、理論値に近い熱伝導率を有するグラファイト積層体を得ることができる。
【0165】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、ガラス転移点が50℃以上のものであることが好ましく、60℃以上のものであることがより好ましく、70℃以上のものであることがより好ましく、80℃以上のものであることがより好ましい。ガラス転移点が50℃以上であれば、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを、より良く防ぐことができる。また、アクリル粘着やゴムシートのようなガラス転移点が50℃以上の材料を用いると、接着層の強度が強く、かつ、接着層の特性にバラツキが生じ難くなる傾向を示すので、好ましい。このようなガラス転移温度を有する材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)およびPC(ポリカーボネート)などが挙げられる。
【0166】
接着層のガラス転移点の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0167】
接着層の弾性率は、特に限定されないが、切断時の厚さのバラツキを抑えるという観点から、高い(例えば、弾性率が、100MPa以上)ことが好ましい。
【0168】
(接着層の厚さ)
本発明における接着層の厚さは、15μm未満であり得る。具体的に、本発明における接着層の厚さは、0.1μm以上15μm未満が好ましく、1μm以上15μm未満がより好ましい。更に具体的に、本発明における接着層の厚さは、0.1μm以上10μm未満が好ましく、1μm以上10μm未満がより好ましく、1μ以上9μm以下がより好ましく、1μm以上7μm以下がより好ましい。接着層の厚さが15μm未満(より好ましくは、10μm未満)であれば、接着層の熱伝導率は、グラファイトシートの熱伝導率に比べて、はるかに小さくなる。そのため、接着層の厚さを15μm未満(より好ましくは、10μm未満)に制御することで、グラファイトシート同士の間の伝熱を阻害することなく良好に熱を伝達することができる。接着層の厚さが1μm以上であれば、接着層によってグラファイトシート表面の凹凸を吸収し、グラファイトシートと接着層との間の接触熱抵抗を低減することができ、効率的に熱を伝達することができる。また、接着層が1μm以上あれば、接着層が良好な接着性を示すことができる。また、上述した接着層の厚さであれば、グラファイト積層体の熱伝導率を、理論値に近い値にすることができる。
【0169】
接着層の厚さの算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0170】
(接着層の吸水率・アウトガス)
本発明における接着層の吸水率は、2%以下であり得る。更に具体的に、本発明における接着層の吸水率は、1.5%以下がより好ましく、1.0%以下がより好ましく、0.4%以下がより好ましく、0.1%以下がより好ましい。接着層の吸水率が2%以下であれば、グラファイト積層体の製造時や、グラファイト積層体を熱輸送機構として使用している時に、接着層に含まれる水が気化してガス(アウトガス)が発生する量が少ないので、グラファイト積層体の内部に空隙が生じることを防ぐことができる。
【0171】
接着層の吸水率の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0172】
(接着層の誘電率)
本発明における接着層の誘電率は、特に限定されないが、1.0〜5.0が好ましく、2.0〜4.0がより好ましく、2.5〜3.6がより好ましい。接着層の誘電率が1.0〜5.0であれば、静電気によって接着層が反発し、離れ易くなるので好ましい。
【0173】
接着層の誘電率の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0174】
(接着層の接着力)
接着層は、加熱によって接着性を発現し、接着工程において、接着性を有しているものが好ましい。よって、接着層としては、粘着剤、接着剤、または、高分子フィルムなどを用いることができるが、25℃での接着力が1N/25mm以下のものが好ましく、25℃での接着力が0.5N/25mm以下のものがより好ましく、更に具体的に、接着層は、25℃での接着力が1N/25mm以下のもの、または、25℃での接着力が0.5N/25mm以下のものであり、かつ、加熱により接着性を発現するものが好ましい。
【0175】
グラファイトシートを多層に積層する場合、各層に空気の噛み込みやシワが発生するリスクが高くなる。そのため、室温における接着層の接着性を略無くしておくことで、シワを生じること無く一度に多数のグラファイトシートを重ねることができ、その後、加熱によって接着層を溶融させ、更に、加圧によってグラファイトシートの凹凸に樹脂を浸透させることで、空気の噛み込みが抑制されたグラファイト積層体を作製することができる。
【0176】
接着層の接着力の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0177】
(接着層の破断強度)
本発明における接着層の破断強度は、特に限定されないが、0.1〜10GPaが好ましく、0.2〜5.0GPaがより好ましく、0.2〜4.7GPaがより好ましく、1.0〜4.7GPaがより好ましい。接着層の破断強度が0.1GPa以上であれば、フィルムの積層時に破れ難いので好ましい。
【0178】
接着層の破断強度の算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0179】
〔B−2.グラファイト積層体の製造方法〕
(グラファイト積層体の製造方法の基本構成)
グラファイト積層体の積層方向の厚さが厚くなると(例えば、0.5mm以上)、グラファイト積層体の柔軟性が低下し、グラファイト積層体を形成した後で、当該グラファイト積層体を曲げることが難しくなる。
【0180】
そのため、グラファイト積層体の製造方法の一例として、予め屈曲部が形成されたグラファイト積層体を形成する方法を挙げることができる。グラファイト積層体の作製工程において、予め、屈曲部を形成したグラファイト積層体を形成することで、当該グラファイト積層体を、より温度の低い箇所に接続可能となり、熱輸送能力を向上させることができる。
【0181】
グラファイト積層体の製造方法の別の例として、グラファイトシート同士の間の一部分が接着層で接着されていない未接着部が形成されたグラファイト積層体を作製した後で、当該グラファイト積層体を未接着部において屈曲させる方法を挙げることができる。接着層によってグラファイトシート同士が接着されていないことで、グラファイト積層体が柔軟性を保持することができる。
【0182】
尚、未接着部を形成する場合は、発熱源が発する熱によって昇温する部位である高温部位、および、高温部位よりも温度が低い部位である低温部位、と、グラファイト積層体との接続部では、グラファイト積層体において、接着層によってグラファイトシート同士が接着されている必要がある。それ故に、未接着部は、高温部位および低温部位への接続部となる、グラファイト積層体の両端部以外(例えば、長手方向の両端部以外)に形成されることが好ましい。また、未接着層を形成すれば、グラファイトシート同士の間に僅かに隙間が形成され、当該隙間の中で空気の対流が発生して、未接着部がヒートシンクの役割を果たし、その結果、グラファイト積層体の冷却性能を向上させることができる。なお、接続部とは、高温部位または低温部位とグラファイト積層体とが接触している、グラファイト積層体内の部分を意図する。
【0183】
以上を考慮して、本実施の形態のグラファイト積層体の製造方法は、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体の製造方法であって、グラファイトシートと接着層とを交互に積層して積層物を形成する積層工程と、積層物を加熱および加圧することによって、グラファイトシートと接着層とを接着させてグラファイト積層体を形成する接着工程と、を有している。そして、上記接着工程は、少なくとも1つの屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する屈曲部形成工程を包含していてもよい。
【0185】
(積層工程)
積層工程は、グラファイトシートと接着層とを交互に積層して積層物を形成する工程である。
【0186】
更に具体的に、積層工程は、X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有する、グラファイトシートおよび接着層を、表面を重ねた状態にて、上記表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって交互に積層させて積層物を形成する工程である。
【0187】
積層工程の具体的な方法としては、(i)グラファイトシートと高分子フィルムとを交互に積層する方法、(ii)グラファイトシートの少なくとも片面の上に接着層を形成してグラファイト接着シートを作製した後、当該グラファイト接着シートを多層に積層する方法、を挙げることができる。
【0188】
上述した(i)の方法としては、グラファイトシートと高分子フィルムとを1枚ずつ交互に積層する方法、および、グラファイトシートと高分子フィルムとを同時に芯に巻き取ってロールを形成した後、当該ロールを切断および開裂させることで、グラファイトシートと高分子フィルムとの積層体を得る方法、を挙げることができる。
【0189】
上述した(ii)の方法としては、まず、グラファイト接着シートを作製する。グラファイト接着シートは、ワニスの塗工、または、接着フィルムのラミネート、によって作製することができる。グラファイトシートと高分子フィルムとを積層する方法としては、作製したグラファイト接着シートを単板状にカットしてから、当該グラファイト接着シートを多層に積層する方法、および、作製したグラファイト接着シートを芯に巻きつけてロールを形成した後、当該ロールを切断および開裂させる方法、を挙げることができる。
【0190】
接着層の形成方法としては、グラファイトシート上にワニスを塗布する方法、および、フィルム状の接着層とグラファイトシートとを交互に積層する方法、が挙げられる。グラファイトシート上にワニスを塗布する方法を採用する場合、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを防止するという観点から、ワニスは、塗布後にタック性が無いものであることが好ましい。一方、フィルム状の接着層とグラファイトシートとを交互に積層する方法を採用する場合、フィルム状の接着層の誘電率が低ければ、フィルム状の接着層が帯電し難いので、静電気力によって、フィルム状の接着層を安定して搬送機に固定できる。また、グラファイトシートの電気伝導性が高ければ、グラファイトシートとフィルム状の接着層とが密着した際に、当該接着層の静電気がグラファイトシートへ逃げ、グラファイトシートとフィルム状の接着層との間の滑りが良くなり、当該接着層のしわが発生し難くなる。
【0191】
(接着工程)
接着工程は、積層工程にて形成された積層物を(i)加圧(換言すれば、圧縮)、好ましくは、(ii)加熱および加圧(換言すれば、圧縮)することによって、グラファイトシートと接着層とを接着させてグラファイト積層体を形成する工程である。
【0192】
接着工程の具体的な方法としては、ラミネートおよびプレスなどが挙げられるが、本発明においては、プレスによる接着が好適である。プレスであれば、10層以上といった多層の積層物であっても一括して接着できる。また、加熱しながら数秒以上の加圧を行えば、接着層の軟化、および、加圧の効果によって、グラファイト積層体内に空気が噛み込むことを抑制することができ、これによって、グラファイトシート同士の間の接触熱抵抗を低減できる。
【0193】
加熱温度および加圧圧力としては、特に限定されず、接着層を構成する材料に応じて適宜選択することができる。
【0194】
上述したように、接着工程では、積層工程にて形成された積層物を加熱および加圧(換言すれば、圧縮)する。このとき、積層物の圧縮割合は、特に限定されないが、1よりも小さいことが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.96以下であることがより好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることがより好ましい。圧縮割合(グラファイト積層体の厚さ/原料となる積層物の厚さ)が1よりも小さいと、積層時に接着層が変形しているため、グラファイトシート同士が接触しやすくなり、理論熱伝導に近いグラファイト積層体を得ることができる。
【0195】
(屈曲部形成工程)
屈曲部は、グラファイト積層体を製造する過程で、グラファイト積層体の前駆体を折り曲げることによって形成されてもよいし、グラファイト積層体を製造した後、当該グラファイト積層体を折り曲げることによって形成されてもよい。例えば、グラファイトシートと接着層とを積層した後、当該積層物に対して加熱および加圧して、当該加圧によって、形成途中のグラファイト積層体(換言すれば、グラファイト積層体の前駆体)を折り曲げ、これによって屈曲部を形成してもよい。または、グラファイトシートと接着層とを積層した後、当該積層物に対して加熱および加圧してグラファイト積層体を形成する。形成されたグラファイト積層体に対して別途加圧して、形成されたグラファイト積層体を折り曲げ、これによって屈曲部を形成してもよい。
【0196】
屈曲部形成工程は、少なくとも1つ(例えば、1つ以上、または、2つ以上)の屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する、以下の(d)〜(h)の屈曲部形成工程の少なくとも1つを包含していてもよい:
(d)加熱および加圧された上記積層物を上記Z軸の方向に切断して、上記積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲した第1の屈曲部を形成する、第1の屈曲部形成工程、
(e)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧することにより、上記グラファイト積層体に、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第2の屈曲部を形成する、第2の屈曲部形成工程、
(f)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧して、当該積層物をZ軸の方向に向かって屈曲させた後で、当該積層物を上記Z軸の方向に切断して、当該積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第2の屈曲部を形成する、第3の屈曲部形成工程、
(g)加熱および加圧された上記積層物を上記Z軸の方向に切断して、上記積層物から、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲したグラファイト積層体の前駆体を切り出した後で、屈曲した形状を有する加圧治具によって、当該グラファイト積層体の前駆体を加圧することにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成する、第4の屈曲部形成工程、
(h)屈曲した形状を有する加圧治具によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧して、当該積層物をZ軸の方向に向かって屈曲させた後で、当該積層物を上記Z軸の方向に対して斜めに切断して、当該積層物から上記グラファイト積層体を切り出すことにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成する、第5の屈曲部形成工程。
【0197】
上述した(e)の屈曲部形成工程は、更に具体的に、下記の(e’)の屈曲部形成工程であってもよい:
(e’)2カ所が屈曲した形状を有する加圧治具(換言すれば、階段状に屈曲した形状を有する加圧治具)によって、加熱および加圧された上記積層物を加圧することにより、上記グラファイト積層体に、上記Z軸の方向に向かって屈曲した、2つの第2の屈曲部(換言すれば、逆方向に折れ曲がった、2つの第2の屈曲部)を形成する、第6の屈曲部形成工程。
【0198】
上述した(e)の屈曲部形成工程を経て形成されるグラファイト積層体は、階段状に折れ曲がった形状を有する(例えば、
図28(a)参照)。当該グラファイト積層体は、階段状に折れ曲がった形状を有する構成に対しても密着して配置することができ、熱を効率的に運ぶことができるので好ましい。階段形状を有するグラファイト積層体の段差の高さは、特に限定されないが、0.05mm〜5.0mmが好ましく、0.10mm〜3.0mmがより好ましく、0.20mm〜1.0mmが最も好ましい。
【0199】
より具体的に、上記屈曲部形成工程は、(i)2つ以上の屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する場合には、上述した第1の屈曲部形成工程、第2の屈曲部形成工程、第3の屈曲部形成工程、第4の屈曲部形成工程および第5の屈曲部形成工程の少なくとも1つを包含していてもよいし、(ii)1つ以上の屈曲部を有するグラファイト積層体を形成する場合には、第4の屈曲部形成工程および第5の屈曲部形成工程の少なくとも1つを包含していてもよい。勿論、本発明は、これら(i)や(ii)に限定されない。
【0200】
簡単に言えば、屈曲部形成工程では、切断処理、および/または、加圧処理、が行われ得る。
【0201】
上述した屈曲部形成工程の2つの処理(切断処理、加圧処理)は、何れも、積層体中の各層の間の接着を剥離させる力が生じ難い処理である。それ故に、上述した2つの処理であれば、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを防ぐことができ、その結果、熱伝導率が高く、かつ、内部に空隙が無いグラファイト積層体を容易に作製することができる。
【0202】
図6に、加圧処理の例を示す。
図6に示すように、凸部材と凹部材とが対をなす加圧治具30で加圧することによって、屈曲部11にてZ軸の方向に向かって屈曲しているグラファイト積層体1を作製することができる。カッターや金型などを用いてグラファイト積層体を切り出すと、切断時に材料のロスが生じる。一方、当該方法であれば、材料のロスが発生することを抑制することができる。
【0203】
図7に、切断処理の例を示す。
図7に示すように、点線35に沿ったZ軸の方向への切断によって、屈曲部10にてX軸(または、Y軸)の方向に向かって屈曲しているグラファイト積層体1を作製することができる。切断処理は、カッター、外周刃などのブレードソー、レーザー、ウォータージェット、ワイヤーソーなどを用いて行うことができるが、グラファイト積層体の層間剥離の防止、一度に大量に切断すること、生産性の向上の観点から、ワイヤーソーを用いて行うことが好ましい。切断処理であれば、グラファイト積層体1を、鋭利な角度(例えば、直角)にて屈曲させることができる。
【0204】
図8に、加圧処理を行った後で、切断処理を行う例を示す。
図8では、まず、凸部材と凹部材とが対をなす加圧治具(図示せず)で加圧することによって、Z軸の方向に向かって屈曲する屈曲部11を形成する。次いで、点線35に沿ったZ軸の方向への切断によって、屈曲部11にてZ軸の方向に向かって屈曲しているグラファイト積層体1を作製することができる。当該方法であれば、薄いグラファイト積層体を得ることができる。また、このようにして得られたグラファイト積層体は、熱輸送能力に優れている。加圧処理であれば、グラファイト積層体を、丸く屈曲させることができる(例えば、好ましくは、曲率半径が、8mm以上)。
【0205】
なお、
図8では、Y軸の方向へ直線状に点線35が設定されており、当該点線35に沿って切断することにより、上記グラファイト積層体に、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第2の屈曲部を形成できる(第3の屈曲部形成工程に対応)。
【0206】
一方、
図19では、点線35は、グラファイト積層体1の一部分であって、Z軸の方向に向かって屈曲している一部分において、Z軸の方向に対して斜めに設定されている。なお、Z軸の方向と点線35とが交わる角度は限定されず、所望の角度に設定され得る。当該点線35に沿って切断することにより、上記グラファイト積層体に、上記X軸の方向または上記Y軸の方向に向かって屈曲し、かつ、上記Z軸の方向に向かって屈曲した第3の屈曲部を形成できる(第5の屈曲部形成工程に対応)。
【0207】
図7に示す方法によって、屈曲部10にてX軸(または、Y軸)の方向に向かって屈曲しているグラファイト積層体1を作製し、次いで、
図6に示す方法によって、屈曲部10の部分を折り曲げれば、
図4に示すような、グラファイト積層体1に、
図4に示すような、X軸の方向またはY軸の方向に向かって屈曲し、かつ、Z軸の方向に向かって屈曲した屈曲部12を形成できることは、本明細書から、当業者であれば容易に理解できるであろう。
【0208】
上述した第1の屈曲部、第2の屈曲部、および、第3の屈曲部には、隣接するグラファイトシート同士が接着層で接着されていない未接着部が形成されていてもよい。当該構成であれば、容易にグラファイト積層体を屈曲させることができる。
【0209】
以下に未接着部の好適な形成方法を2つ例示するが、本発明は、これらに限定されない。
【0210】
第一の方法は、未接着部となる部分には接着層を配置せず、接着部となる部分にのみ接着層を配置して、グラファイトシートと接着層とを重ねた後、当該積層体の全面を加圧する方法である。
【0211】
当該方法であれば、
図9に示すように、接着層6が形成された部分が接着部50となり、接着層6が形成されていない部分が未接着部51となるため、未接着部51を有するグラファイト積層体を容易に得ることができる。
【0212】
また、未接着部51には接着層6が配置されていないので、グラファイトシート5同士の間に隙間が形成され、そこを空気の流れが発生するためにヒートシンクのような効果を発揮し、冷却性能を上げることができる。さらに未接着部51に接着層6が形成されていないことで、屈曲部の柔軟性が向上する。
【0213】
第二の方法は、接着層をグラファイトシートの全面に配置して多層重ねた後、この積層体の一部を加圧し(好ましくは、この積層体の一部を加熱および加圧し)、一部の接着層によってグラファイトシート同士を接着させる方法である。具体的には、接着部となる部分のみを治具などで加圧(好ましくは、接着部となる部分のみを、加熱しながら治具などで加圧)することで、接着部と未接着部とを有するグラファイト積層体を得ることができる。
【0214】
当該方法であれば、
図10に示すように、未接着部51にも、グラファイトシート5同士を接着させていないものの、接着層6が配置されているため、屈曲部の強度を向上させることができる。そして、繰り返しの屈曲にも強いグラファイト積層体を得ることができる。なお、
図10の未接着部51の点線にて示す箇所は、グラファイトシート5と接着層6とが接着していない箇所、換言すれば、ラファイトシート5同士が接着していない箇所を示している。
【0215】
〔B−3.熱輸送用構造物〕
(熱輸送用構造物の基本構成)
上述した本発明のグラファイト積層体は、主に電子機器の熱輸送用材料として用いることができる。
【0216】
具体的に、本実施の形態の熱輸送用構造物は、本発明のグラファイト積層体と、発熱素子と、を備えている熱輸送用構造物であって、グラファイト積層体は、発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位と、高温部位よりも温度が低い部位である低温部位とに接続されている。
【0217】
本明細書中で「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」とは、発熱素子が発する熱の影響を受ける部位を指す。例えば、
図11のように、発熱素子100は、グラファイト積層体1に接するように配置され得る。なお、
図11は、発熱素子100とグラファイト積層体1との複合体を、側面
図110および上面
図120にて示している。このとき、発熱素子100の表面やその近傍であって、グラファイト積層体1に接している発熱素子100の表面やその近傍は、「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」に含まれる。発熱素子100とグラファイト積層体100との間には、他の構成を配置したり、中空の空間を配置したりすることが可能である。上述した「近傍」には、他の構成、および、中空の空間が含まれ得る。
【0218】
発熱素子が接する箇所やその近傍も、発熱素子が発する熱の影響を受ける部位である限り、「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」に含まれる。例えば、
図12のように、グラファイト積層体1の上に金属板101が配置され、発熱素子100は、金属板101に接するように配置され得る。
図12のように、グラファイト積層体1と発熱素子100との間に金属板101等が設けられている場合は、金属板101の表面やその近傍であって、発熱素子100に接している表面やその近傍は、「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」に含まれる。なお、金属板101を構成する金属としては、特に限定されず、例えば銅、アルミニウムおよびニッケルなどを挙げることができる。
【0219】
発熱素子が接する箇所やその近傍以外であっても、発熱素子が発する熱の影響を受ける部位である限り、「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」に含まれる。すなわち「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」は、発熱素子が接する箇所やその近傍のみに限られず、発熱素子が発する熱が集中的に溜まる箇所そのものにも限られない。
図13のように、グラファイト積層体1の上に金属板101が配置され、当該金属板101の上に伝熱材料102(例えば、グラファイトシート、銅などの金属、ヒートパイプ)が配置され、発熱素子100は、伝熱材料102に接するように配置され得る。この場合も、金属板101の表面やその近傍であって、発熱素子100が発する熱の影響を受ける表面やその近傍は、「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」に含まれる。
【0220】
逆に、発熱素子100が接する箇所やその近傍であっても、熱的に隔離されている等の理由で発熱素子100が発する熱の影響を受けない部位は、「発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位」に含まれない。
【0221】
低温部位は、上述した高温部位よりも温度が低い部位である。その具体的な構成は、特に限定されず、高温部位よりも温度が低い部位であれば、如何なる部位であってもよい。
【0222】
本実施の形態の熱輸送用構造物は、本発明のグラファイト積層体が有する高い熱伝導性を活かして、発熱素子が発する熱を広範囲に拡散させることができる。更に、本実施の形態の熱輸送用構造物は、積層体である本発明のグラファイト積層体を用いることで、一度に輸送できる熱量が大きいため、低温部位に集中的に熱を伝え、冷却する効果が高い。
【0223】
(高温部位に対するグラファイト積層体の配置)
高温部位に対するグラファイト積層体の配置について説明する。
【0224】
高温部位に対するグラファイト積層体の配置としては、(i)
図14のように、グラファイト積層体1の表面が高温部位に対向する配置、および、(ii)
図15または16のように、グラファイト積層体1の積層面が高温部位に対向する配置、が挙げられるが、グラファイト積層体1の積層面が高温部位に対向する配置が好ましい。
【0225】
図15および16に積層面7を示す。本明細書において「積層面」とは、グラファイトシート5と接着層6とがストライプ状に並んだ状態でグラファイト積層体1の表面に露出して形成されている面を意図する。なお、
図15および16では、Y−Z平面に広がった面を積層面として示しているが、X−Z平面に広がった面も積層面に包含され得る。
【0226】
グラファイトシートは、厚さ方向の熱伝導率が5W/(m・K)であって、厚さ方向の熱伝導率が、面方向の熱伝導率に比べて低い。特に、グラファイト積層体の場合は、熱伝導率がより低い接着層(具体的には、1W/(m・K))を介してグラファイトシートを積層するため、積層方向の熱伝導率は、5W/(m・K)以下となる。更に、グラファイト積層体の場合は、グラファイトシートを多層に積層しており、積層方向への厚さが厚いため、発熱素子が発する熱をグラファイト積層体の受熱面とは反対側の面へも十分に伝え、グラファイト積層体全体を効率的に使って低温部位に伝熱することが重要になる。
【0227】
グラファイトシートは、面方向の熱伝導率が1500W/(m・K)という高い値であるので、グラファイト積層体の積層面を高温部位に対向させることで、グラファイト積層体の受熱面とは反対側の面へも十分に熱を伝えることができ、かつ、グラファイト積層体全体を効率的に使って低温部位に伝熱することができるために良い。
【0228】
(積層面を高温部位に対向させた場合のグラファイト積層体の形態)
グラファイト積層体の積層面を高温部位に対向させる場合、グラファイト積層体の積層方向の長さが、グラファイト積層体の積層方向と垂直な面(当該面の形状は、例えば、長方形)の短辺の長さよりも長いことが好ましい。より具体的に、
図15および16において、グラファイト積層体1のZ軸の方向の長さは、グラファイト積層体1のX軸方向の長さよりも厚いことが好ましい。積層方向の長さを、積層方向と垂直な面の短辺の長さよりも長くすることで、グラファイト積層体の受熱面から、当該受熱面の反対側の面への熱移動を良好にすることができ、これによって、低温部位への熱輸送をより効果的に行うことができる。
【0229】
また、グラファイト積層体の積層面を高温部位に対向させる場合、グラファイト積層体の積層方向の長さは、2mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。積層方向の長さを2mm以上とすることで、発熱素子に対するグラファイト積層体の受熱面を大きくすることができ、グラファイト積層体が、より効率的に受熱できる。
【0230】
更に、グラファイト積層体の積層面を高温部位に対向させる場合、グラファイト積層体の表面を高温部位に対向させる場合と同様に、
図16のように、グラファイト積層体1には屈曲部が設けられていることが好ましい。このように、積層面を高温部位に対向させることで、グラファイト積層体1の受熱の効率をより良好にし、更に屈曲部を設けることで、より温度の低い低温部位へのグラファイト積層体1の接続が可能となり、その結果、熱輸送用構造物の高い熱輸送能力を実現することができる。
【0231】
図17および
図18に、グラファイト積層体の寸法の一例を示すが、本発明は、これらの構成に限定されない。
【0232】
本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0233】
<1>グラファイトシートと接着層とが交互に複数枚積層されたグラファイト積層体であって、
上記接着層は、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含み、
上記接着層は、吸水率が2%以下であり、かつ、厚さが10μm未満であり、
上記グラファイトシートの積層数が、5層以上であることを特徴とする、グラファイト積層体。
【0234】
<2>グラファイトシートと接着層とが交互に複数枚積層されたグラファイト積層体であって、
上記接着層は、熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂を含み、
上記接着層は、吸水率が2%以下であり、
上記グラファイト積層体の厚さは、グラファイトシートの原料シートの厚さと、接着層の厚さとの合計よりも小さく、
上記グラファイトシートの積層数が、5層以上であることを特徴とする、グラファイト積層体。
【0235】
<3>上記熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂のガラス転移点が、50℃以上であることを特徴とする、<2>または<3>に記載のグラファイト積層体。
【0236】
<4>上記グラファイトシートの面方向の熱伝導率が、1000W/(m・K)以上であることを特徴とする、<1>〜<3>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0237】
<5>上記グラファイトシートの各々の厚さの合計(Tg)を上記接着層の各々の厚さの合計(Ta)で割った値(Tg/Ta)が、4.1以上40以下であり、かつ、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)の長さが、0.5mm以上であることを特徴とする、<1>〜<4>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0238】
<6>上記グラファイト積層体の、積層方向(具体的には、Z軸の方向)に対して垂直な面(具体的には、X軸と当該X軸に交わるY軸とによって規定される、グラファイト積層体の表面)の長辺の長さが短辺の長さの5倍以上であることを特徴とする、<1>〜<5>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0239】
<7>上記グラファイト積層体は、少なくとも1つの屈曲部を有していることを特徴とする、<1>〜<6>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0240】
<8>上記屈曲部には、継ぎ目がないことを特徴とする、<7>に記載のグラファイト積層体。
【0241】
<9>上記屈曲部の少なくとも1つが、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)に対して垂直な方向(具体的には、X軸の方向またはY軸の方向)に曲がっていることを特徴とする、<7>または<8>に記載のグラファイト積層体。
【0242】
<10>上記屈曲部の少なくとも1つが、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)に曲がっていることを特徴とする、<7>または<8>に記載のグラファイト積層体。
【0243】
<11>上記屈曲部の少なくとも1つが、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)に対して垂直な方向(具体的には、X軸の方向またはY軸の方向)に曲がっており、かつ、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)に曲がっていることを特徴とする、<7>または<8>に記載のグラファイト積層体。
【0244】
<12>上記グラファイト積層体は、上記グラファイトシート同士が上記接着層によって接着されていない未接着部を有し、
上記未接着部は、上記グラファイト積層体の長手方向の両端部以外に形成されていることを特徴とする、<7>〜<11>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0245】
<13>上記未接着部は、上記屈曲部に形成されていることを特徴とする、<12>に記載のグラファイト積層体。
【0246】
<14>上記グラファイト積層体は、樹脂または金属で被服されたものであることを特徴とする、<1>〜<13>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0247】
<15>上記グラファイト積層体は、積層方向(具体的には、Z軸の方向)の長さが、積層方向に対して垂直な面(具体的には、X軸と当該X軸に交わるY軸とによって規定される、グラファイト積層体の表面)の短辺の長さよりも長いものであることを特徴とする、<1>〜<14>の何れかに記載のグラファイト積層体。
【0248】
<16>上記グラファイト積層体は、積層方向(具体的には、Z軸の方向)の長さが、2mm以上であることを特徴とする、<15>に記載のグラファイト積層体。
【0249】
<17>上記<1>〜<16>の何れかに記載のグラファイト積層体と、発熱素子と、を備えている構造物であって、
上記グラファイト積層体の一方の端部は、上記発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位に配置されており、
上記グラファイト積層体の他方の端部は、上記高温部位よりも温度が低い部位である低温部位に配置されていることを特徴とする、放熱構造物。
【0250】
<18>上記グラファイト積層体の積層面(具体的には、Z軸の方向に対して平行な、グラファイト積層体の表面)が、上記高温部位に対向するように配置されていることを特徴とする、<17>に記載の放熱構造物。
【0251】
<19>グラファイトシートと接着層とを交互に積層する積層工程と、
各層を、加熱と加圧とにより接着させる接着工程と、を有することを特徴とするグラファイト積層体の製造方法。
【0252】
<20>上記接着層は、加熱により接着性を発現するものであり、
上記接着工程では、加熱と加圧とにより、各層を一括して接着させることを特徴とする、<19>に記載のグラファイト積層体の製造方法。
【0253】
<21>上記接着層は、25℃での接着力が1N/25mm以下のものであることを特徴とする、<19>または<20>に記載のグラファイト積層体の製造方法。
【0254】
<22>上記接着工程では、屈曲した形状を有する加圧治具によって加圧することによって、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)に当該グラファイト積層体を屈曲させることを特徴とする、<19>〜<21>の何れかに記載のグラファイト積層体の製造方法。
【0255】
<23>上記接着工程では、グラファイト積層体の前駆体を積層方向(具体的には、Z軸の方向)に切断して、上記グラファイト積層体を切り出すことを特徴とする、<19>〜<21>の何れかに記載のグラファイト積層体の製造方法。
【0256】
<24>上記接着工程では、屈曲した形状を有する加圧治具によって加圧することによって、上記グラファイト積層体の積層方向(具体的には、Z軸の方向)に当該グラファイト積層体を屈曲させた後、当該グラファイト積層体を積層方向(具体的には、Z軸の方向)に切断することを特徴とする、<19>〜<21>の何れかに記載のグラファイト積層体の製造方法。
【0257】
更に、本発明は、以下のように構成することも可能である。
【0258】
<25>本発明のグラファイト積層体は、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体であって、上記接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものであり、上記接着層は、吸水率が2%以下のものであり、上記グラファイト積層体は、上記グラファイトシートと上記接着層とが交互に積層された積層物を圧縮して得られるものであり、上記グラファイト積層体に含まれる上記グラファイトシートの積層数が、3層以上(または、5層以上)であることを特徴としている。
【0259】
〔実施の形態C〕
〔C−1.グラファイト積層体〕
本実施の形態のグラファイト積層体は、交互に積層されているグラファイトシートと接着層とを含むグラファイト積層体(または、グラファイトシートと接着層とが交互に積層されてなるグラファイト積層体)であって、接着層の材料である接着層材料、または、接着層は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のうちの少なくとも1つの樹脂を含むものである。
【0260】
グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの積層数は、3層以上である。グラファイト積層体は、後述するように、グラファイトシートと接着層材料とが交互に積層された積層物を加熱および加圧して得られる。
【0261】
また、本発明のグラファイト積層体は、グラファイト積層体の少なくとも1つ以上の屈曲部において折れ曲げられた形状を有するものであってもよい。このグラファイト積層体は、積層物を折り曲げて形成されてもよいし、グラファイト積層体を折り曲げて形成されてもよい。
【0262】
以下に、グラファイト積層体、並びに、当該グラファイト積層体を構成するグラファイトシートおよび接着層について説明する。
【0263】
〔C−1−1.グラファイト積層体〕
(グラファイト積層体の基本構造)
グラファイト積層体は、グラファイトシートと、接着層とが、交互に積層されてなるものである。なお、グラファイトシートと接着層との間には、他の構成が挟まれていてもよいし、他の構成が挟まれていなくてもよい。
【0264】
図20は、グラファイト積層体の基本構造を示す図である。
図20に示すように、グラファイト積層体201を構成するグラファイトシート205および接着層206の各々は、X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有している。そして、当該表面が重なった状態にて、当該表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって、グラファイトシート205と接着層206とが交互に積層され、これによって、グラファイト積層体201が形成されている。上述したように、X軸とY軸とが交わる角度は、90°である。
【0265】
グラファイトシートと接着層とは、界面の50%以上において、互いに密着(例えば、熱融着)している。グラファイトシートと接着層とは、接着熱抵抗(熱の伝わり易さ)の点から、界面の70%以上において密着していることが好ましく、界面の80%以上において密着していることがより好ましく、界面の95%以上において密着していることがさらに好ましい。熱の伝わり易さは、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0266】
本明細書の「表面が重なった状態」とは、
図20において、積層体201をZ軸方向から見た時、グラファイトシート205の少なくとも一部と、接着層206の少なくとも一部とが重なっている状態を指す。
【0267】
グラファイトシート205と接着層206とは、形状およびサイズが同じであってもよいし、異なっていてもよい。より良く所望の効果を実現するという点から、グラファイトシート205の形状と接着層206とは、形状およびサイズが同じであることが好ましい。
【0268】
例えば、グラファイトシート205の形状および接着層206の形状は、正方形であってもよい。この場合、当該正方形の1つの辺が伸びる方向をX軸の方向とし、当該辺と交わる別の辺が伸びる方向をY軸の方向とすることができる。
【0269】
また、グラファイトシート205の形状および接着層206の形状は、長方形であってもよい。この場合、当該長方形の短辺が伸びる方向をX軸の方向とし、当該長方形の長辺が伸びる方向をY軸の方向とすることができる。
【0270】
また、グラファイトシート205と接着層206とは、正方形や長方形以外の形状であってもよい。この場合、グラファイトシート205および接着層206の最も長手方向をY軸の方向とし、当該Y軸に直交する方向をX軸の方向とすることができる。
【0271】
グラファイト積層体に含まれるグラファイトシートの積層数は、3層以上であり得るが、熱容量の点から、5層以上であることがより好ましく、10層以上であることがより好ましく、15層以上であることがより好ましく、20層以上であることがより好ましい。積層数の上限値は、特に限定されず、1000層以下、500層以下、200層以下、100層以下、80層以下または50層以下であり得る。
【0272】
グラファイトシートの積層数が3層以上であれば、熱輸送能力が高く、かつ、機械的強度に優れたグラファイト積層体を得ることができるので好ましい。
【0273】
グラファイト積層体に含まれる接着層の積層数は、特に限定されず、グラファイトシートの積層数に合わせて、適宜設定することができる。例えば、グラファイト積層体では、(i)隣接するグラファイトシート間に、1枚の接着層は勿論のこと、2枚以上の接着層が配置されていてもよく、(ii)グラファイトシートが、グラファイト積層体の最上面のみに配置、グラファイト積層体の最下面のみに配置、または、グラファイト積層体の最上面および最下面の両方に配置されていてもよく、(iii)接着層が、グラファイト積層体の最上面のみに配置、グラファイト積層体の最下面のみに配置、または、グラファイト積層体の最上面および最下面の両方に配置されていてもよい。なお、本明細書における「グラファイトシートと接着層とが交互に積層」には、(a)隣接するグラファイトシート間に1枚の接着層が配置される場合、および、(b)隣接するグラファイトシート間に2枚以上の接着層が配置される場合、の両方が包含される。つまり、本発明では、接着層は、複数の接着層が積層されたものであってもよい。
【0274】
(グラファイト積層体の厚み)
グラファイト積層体の厚み(換言すれば、
図20のZ軸の方向の長さ)は、特に限定されず、0.1mm以上であることが好ましく、0.4mm以上であることがより好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、0.8mm以上であることがより好ましい。グラファイト積層体の厚みが0.1mm以上であれば、輸送できる熱量が多くなり、発熱量が大きな電子機器にも適用することができる。グラファイト積層体の厚みの上限値は、特に限定されず、電子機器の薄型化という観点からは、10mm以下であってもよいし、7.5mm以下であってもよいし、5mm以下であってもよいし、2.5mm以下であってもよいし、1mm以下であってもよい。
【0275】
グラファイトシートの積層方法としては、グラファイトシートの表面の凹凸を吸収し、かつ、グラファイトシート同士の間の接触熱抵抗を低減させるために、接着層を介した積層が効果的である。
【0276】
(屈曲部)
グラファイト積層体は、当該グラファイト積層体に設けられた少なくとも1つ(例えば、1つ以上、または、2つ以上)の屈曲部において折れ曲げられた形状を有していてもよい。つまり、グラファイト積層体は、屈曲前のグラファイト積層体を屈曲部にて折り曲げたものであり得る。電子機器の内部では、熱源にて発生した熱を温度の低い部分に移動させることで、温度上昇の防止が可能になる。しかしながら、温度の低い部分と熱源とを、直線的に接続できるとは限らない。そこで、グラファイト積層体に屈曲部を形成しておくことで、熱源にて発生した熱をより温度の低い部分に移動させることができ、これによって、熱輸送能力を更に向上させることができる。つまり、熱源と、より温度の低い部分との配置関係の自由度を、上げることができる。なお、屈曲部の具体的な構成としては、実施の形態Bにて説明した屈曲部の構成を採用することができる。
【0277】
屈曲部が曲がる角度は、特に限定されない。屈曲部は、2mm以上の曲率半径、5mm以上の曲率半径、8mm以上の曲率半径、10mm以上の曲率半径、20mm以上の曲率半径にて曲がるものであってもよい。なお、曲率半径の最大値は、特に限定されず、例えば、100mm、90mm、80mm、70mm、60mm、50mm、40mm、30mm、または、20mmであってもよい。勿論、曲率半径の最大値は、100mmよりも大きな値であってもよい。
【0278】
(グラファイト積層体の被覆)
〔実施の形態C〕のグラファイト積層体の被覆に関しては、〔実施の形態B〕の(グラファイト積層体の被覆)の欄に記載の構成と同じ構成を採用することができる。
【0279】
(グラファイト複合品)
グラファイト複合品は、グラファイト積層体の少なくとも片面に、少なくとも粘着材または接着材を有するシートが貼り合わせられたものである。この粘着材または接着材を有するシートによって、コンピュータなどの各種電子・電気機器に搭載されている半導体素子や他の発熱部品などに、熱輸送のためのグラファイト積層体を取り付けることができる。
【0280】
粘着材を有するシートの構成は、特に限定されず、例えば、粘着材からなるシート、粘着材/基材の二層構造を含むシート、粘着材/基材/粘着材の三層構造を含むシートなどを挙げることができる。粘着材としては、特に限定されず、シリコーン系粘着材、アクリル系粘着材、または、合成ゴム系粘着材などを用いることができる。基材としては、特に限定されず、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、金属シート(例えば、アルミ箔や銅箔など)などを用いることができる。
【0281】
接着材を有するシートの構成は、特に限定されず、例えば、接着材からなるフィルム、接着材/基材の二層構造を含むシート、接着層/基材/接着層の三層構造を含むシートなどを挙げることができる。接着材としては、特に限定されず、ポリイミド系、または、エポキシ系などの熱硬化型の樹脂接着材を用いることができる。また接着材として、溶融状態で接着させる熱可塑性樹脂なども用いることができる。基材としては、特に限定されず、ポリイミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)系樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)系樹脂、ポリエステル系樹脂、金属シート(例えば、アルミ箔、銅箔など)、CFRP(カーボンファイバー強化材料)、炭素繊維フェルト、または、他の炭素材料などを用いることができる。
【0282】
(熱輸送用構造物)
上述した本発明のグラファイト積層体およびグラファイト複合品は、主に電子機器の熱輸送用材料として、熱輸送用構造物に用いることができる。熱輸送用構造物とは、グラファイト積層体又はグラファイト複合品と、発熱素子と、を備え、グラファイト積層体又はグラファイト複合品は、発熱素子が発する熱によって昇温する部位である高温部位と、高温部位よりも温度が低い部位である低温部位とに接続されたものである。
【0283】
〔C−1−2.グラファイトシート〕
(グラファイトシートの種類)
〔実施の形態C〕のグラファイトシートの種類に関しては、〔実施の形態B〕の(グラファイトシートの種類)の欄に記載の構成と同じ構成を採用することができる。
【0284】
(グラファイトシートの製造方法)
〔実施の形態C〕のグラファイトシートの製造方法に関しては、〔実施の形態B〕の(グラファイトシートの製造方法)の欄に記載の構成と同じ構成を採用することができる。
【0285】
(グラファイトシートの面方向の熱伝導率)
〔実施の形態C〕のグラファイトシートの面方向の熱伝導率に関しては、〔実施の形態B〕の(グラファイトシートの面方向の熱伝導率)の欄に記載の構成と同じ構成を採用することができる。
【0286】
(グラファイトシートの熱伝導率)
グラファイトシートの面方向の熱伝導率は、次式(1)によって算出した。
【0287】
A=α×d×Cp ・・・・(1)
ここで、Aは、グラファイトシートの熱伝導率、αは、グラファイトシートの熱拡散率、dは、グラファイトシートの密度、Cpは、グラファイトシートの比熱容量をそれぞれ表わしている。なお、グラファイトシートの熱拡散率、密度、および比熱容量は、以下に述べる方法で求めた。
【0288】
グラファイトシートの熱拡散率は、光交流法に基づく熱拡散率測定装置(例えば、アルバック理工(株)社の「LaserPit」)を用い、4mm×40mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、20℃の雰囲気下で10Hzの交流条件下で測定した。
【0289】
(グラファイトシートの厚さ)
〔実施の形態C〕のグラファイトシートの厚さに関しては、〔実施の形態B〕の(グラファイトシートの厚さ)の欄に記載の構成と同じ構成を採用することができる。
【0290】
〔C−1−3.接着層〕
(接着層材料の種類)
本発明における接着層の材料である接着層材料は、加熱によって接着性を発現するものが好ましく、熱硬化性樹脂、または、熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0291】
熱硬化性樹脂としては、〔実施の形態B〕の(接着層の種類)の欄に記載の熱硬化性樹脂と同じものを採用することができる。
【0292】
熱可塑性樹脂としては、〔実施の形態B〕の(接着層の種類)の欄に記載の熱可塑性樹脂と同じものを採用することができる。
【0293】
接着層材料としては、芳香族を含む材料(例えば、ポリエステル接着剤、および、ポリエチレンテレフタレートなど)を用いることが好ましい。当該構成であれば、接着層を積層した時に、グラファイトシートと略平行に接着層が整列し、積層時にグラファイトシートの層の構造が乱されにくく、理論値に近い熱伝導率を有するグラファイト積層体を得ることができる。
【0294】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂は、融解温度が50℃以上のものであることが好ましく、60℃以上のものであることがより好ましく、70℃以上のものであることがより好ましく、80℃以上のものであることがより好ましい。融解温度が50℃以上であれば、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを、より良く防ぐことができる。また、アクリル粘着やゴムシートのような融解温度が50℃以上の材料を用いると、接着層の強度が強く、かつ、接着層の特性にバラツキが生じ難くなる傾向を示すので、好ましい。このような融解温度を有する材料としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)およびPC(ポリカーボネート)などが挙げられる。
【0295】
接着層材料の融解温度は、JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量分析装置(島津製作所製DSC−50)によって測定され得る。
【0296】
接着層材料の弾性率は、特に限定されないが、グラファイト積層体を切断した時の接着層の厚みのバラツキを抑えるという観点から、高い(例えば、弾性率が、100MPa以上)ことが好ましい。
【0297】
(接着層材料の厚み)
本発明における接着層材料の厚みは、特に限定されず、10μm未満が好ましい。更に具体的に、接着層材料の厚みは、0.1μm以上10μm未満が好ましく、1μm以上10μm未満がより好ましく、1μ以上9μm以下がより好ましく、1μm以上7μm以下がより好ましい。接着層材料の厚みが10μm未満であれば、接着層の熱伝導率は、グラファイトシートの熱伝導率に比べて、はるかに小さくなる。そのため、接着層材料の厚みを10μm未満に制御することで、グラファイトシート同士の間の伝熱を接着層によって阻害することなく良好に熱を伝達することができる。接着層材料の厚みが0.1μm以上(より好ましくは、1μm以上)であれば、接着層がグラファイトシート表面の凹凸を吸収しやすくなり、グラファイトシートと接着層との間の接触熱抵抗を低減することができ、効率的に熱を伝達することができる。また、接着層材料の厚みが0.1μm以上(より好ましくは、1μm以上)であれば、接着層が良好な接着性を示すことができる。また、上述した接着層材料の厚みであれば、グラファイト積層体の熱伝導率を、理論値に近い値にすることができる。接着層材料の厚みの算出方法は、後述する実施例にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0298】
(接着層の厚み)
本発明における接着層の厚みは、接着層材料の厚みに比べて同じか、または、薄い。接着層が接着層材料よりも薄い場合、グラファイトシートの表面に接着層材料が浸潤している(グラファイトシート表面の凹凸を吸収している)と考えられる。具体的な接着層の厚みは、特に限定されず、10μm未満が好ましい。更に具体的に、接着層の厚みは、0.1μm以上10μm未満が好ましく、1μm以上10μm未満がより好ましく、1μ以上9μm以下がより好ましく、1μm以上7μm以下がより好ましい。接着層の厚みが10μm未満であれば、接着層の熱伝導率は、グラファイトシートの熱伝導率に比べて、はるかに小さくなる。そのため、接着層の厚みを10μm未満に制御することで、グラファイトシート同士の間の伝熱を接着層によって阻害することなく良好に熱を伝達することができる。接着層の厚みが0.1μm以上(より好ましくは、1μm以上)であれば、接着層がグラファイトシート表面の凹凸を吸収しやすくなり、グラファイトシートと接着層との間の接触熱抵抗を低減することができ、効率的に熱を伝達することができる。また、接着層が0.1μm以上(より好ましくは、1μm以上)あれば、良好な接着性を示すことができる。また、上述した接着層の厚みであれば、グラファイト積層体の熱伝導率を、理論値に近い値にすることができる。
【0299】
接着層の厚みの算出方法としては、後述する方法を挙げることができ、具体的には、SEM画像で任意の接着層の断面を観察し、任意の9点における接着層の厚みを測定し、当該測定値の平均値を接着層の厚みとして算出すればよい。
【0300】
〔C−2.グラファイト積層体の製造方法〕
(グラファイト積層体の製造方法の基本構成)
本発明のグラファイト積層体の製造方法は、グラファイトシートと接着層材料とを交互に積層して積層物を形成する積層工程と、積層物を加熱することによって、グラファイトシートと接着層とを熱融着させてグラファイト積層体を形成する接着工程と、を有する。さらに、グラファイト積層体の製造方法は、グラファイト積層体を切断処理する切断工程を有していてもよい。なお、本明細書において「熱融着」とは、樹脂またはワックスが加熱によって軟化して他の物質に接着することを意図する。
【0302】
(積層工程)
積層工程は、接着層の材料である接着層材料と、グラファイトシートとを交互に複数積層して積層物を形成する工程である。
【0303】
更に具体的に、積層工程は、X軸と当該X軸に直交するY軸とによって規定される表面を有する、グラファイトシートおよび接着層材料を、表面を重ねた状態にて、上表面と垂直に交わるZ軸の方向に向かって交互に積層させて積層物を形成する工程である。
【0304】
積層工程の具体的な方法としては、(i)グラファイトシートと接着層材料とを交互に積層する方法、(ii)グラファイトシートの少なくとも片面の上に接着層材料を配置してグラファイト接着シートを作製した後、当該グラファイト接着シートを多層に積層する方法、を挙げることができる。
【0305】
上述した(i)の方法としては、グラファイトシートと接着層材料とを1枚ずつ交互に積層する方法、および、グラファイトシートと接着層材料とを同時に芯に巻き取ってロールを形成した後、当該ロールを切断および開裂させることで、グラファイトシートと接着層材料との積層体を得る方法、を挙げることができる。
【0306】
上述した(ii)の方法としては、まず、グラファイト接着シートを作製する。グラファイト接着シートは、グラファイトシートに対する、接着層材料(例えば、接着樹脂シートなど)の塗工、または、接着層材料(例えば、接着フィルムなど)のラミネート、によって作製することができる。グラファイトシートと接着層材料とを積層する方法としては、作製したグラファイト接着シートを単板状にカットしてから、当該グラファイト接着シートを多層に積層する方法、および、作製したグラファイト接着シートを芯に巻きつけてロールを形成した後、当該ロールを切断および開裂させる方法などを挙げることができる。
【0307】
グラファイトシート上に接着層材料を塗工する場合、グラファイト積層体の中に空気が入り込むことを防止する点から、接着層材料は、塗布後にタック性が無いものが好ましい。
【0308】
接着層材料とグラファイトシートとを交互に積層する場合、または、接着層材料をグラファイトシートにラミネートする場合、接着層材料の誘電率が低ければ、接着層材料が帯電し難いので、静電気力によって、接着層材料を安定して搬送機に固定できる。また、グラファイトシートの電気伝導性が高ければ、グラファイトシートと接着層材料とが密着した際に、接着層材料の静電気がグラファイトシートへ逃げ、グラファイトシートと接着層材料との間の滑りが良くなり、接着層材料のしわが発生し難くなる。
【0309】
熱融着後にグラファイト積層体同士を剥がすことができ、複数のグラファイト積層体を同時に生産することができる点から、積層工程では、積層物を複数積層させることが好ましい。積層物の積層段数は、量産性の点から、100段以上が好ましく、200段以上がより好ましい。積層物の積層段数の上限値は、特に限定されず、例えば1000段、900段、800段、700段、600段、500段、400段、または、300段であってもよい。本発明の製造方法であれば、積層物を多段で積層して接着工程を行った場合、1バッチ中の積層位置が上部、中部、下部であるいずれのグラファイト積層体も接着割合の値が良好となる。
【0310】
(接着工程)
接着工程は、積層工程にて形成された積層物を加熱することによって、接着層材料をグラファイトシートに熱融着させ、接着層と当該グラファイトシートとが交互に積層されたグラファイト積層体を得る工程である。加熱温度は、特に限定されず、接着層材料に応じて適宜選択できる。本工程中に、第1の加圧および第2の加圧を行う。第1の加圧および第2の加圧という2段階の加圧によって、積層物中のガスがよく抜けるので、平滑性とピール強度が高いグラファイト積層体を得ることができる。加熱温度、第1の加圧の圧力、第2の加圧の圧力としては、特に限定されず、接着層材料に応じて適宜選択することができる。なお、接着工程では、第2の加圧後に、第3の加圧、第4の加圧などの加圧をさらに1回以上行っても良い。また、接着工程では、第1の加圧と第2の加圧との間で、第3の加圧、第4の加圧などの加圧をさらに1回以上行っても良い。また、接着工程では、第1の加圧の前に、1回以上の予備加圧を行っても良い。但し、当該予備加圧にて積層物に加えられる圧力は、第1の加圧にて積層物に加える圧力、および、第2の加圧にて積層物に加える圧力よりも、低い圧力であることが好ましい。当該構成であれば、積層物中のガスが、更に良く抜ける。なお、第3の加圧、第4の加圧、および、予備加圧は、接着工程以外の工程で行うことも可能である。
【0311】
第1の加圧とは、加熱されている接着層材料の温度が[(接着層材料の融解温度)−20℃]に到達するまでに少なくとも、積層物に加圧することをいう。[(接着層材料の融解温度)−20℃]とは、積層物に熱電対を接触させた状態で接着層材料の温度を測定し、測定した温度が接着層材料の融解よりも20℃低い温度に到達したときをいう。つまり、本実施の形態では、積層物に熱電対を接触させた状態で接着層材料の温度を測定し、測定した温度が接着層材料の融解よりも20℃低い温度に到達するまでに、第1の加圧が行われ得る。第1の加圧は、接着層材料がグラファイトシートに熱融着しないようにして加圧する圧力であれば特に限定されず、接着層材料に応じて適宜選択できる。第1の加圧時間は、特に限定されないが、平滑性とピール強度とがより高いグラファイト積層体を得ることができる点から、接着工程の開始から第1の加圧を行うことが好ましい。
【0312】
第2の加圧とは、加熱されている接着層材料の温度が[(接着層材料の融解温度)−20℃]以上になった後に少なくとも、積層物に加圧することをいう。「[(接着層材料の融解温度)−20℃]以上になった後」とは、積層物に熱電対を接触させた状態で接着層材料の温度を測定し、測定した温度が[(接着層材料の融解温度)−20℃]以上になったときから後をいう。つまり、本実施の形態では、積層物に熱電対を接触させた状態で接着層材料の温度を測定し、測定した温度が[(接着層材料の融解温度)−20℃]以上になったときから後で、第2の加圧が行われ得る。第2の加圧は、接着層材料がグラファイトシートに熱融着するようにして加圧する圧力であれば特に限定されず、接着層材料に応じて適宜選択できる。第2の加圧時間は、特に限定されないが、グラファイトシートと接着層との密着性を向上させる点から、1分以上10分以下が好ましく、3分以上8分以下がさらに好ましく、4分以上6分以下が特に好ましい。
【0313】
第2の加圧は、第1の加圧後に連続して行うことが好ましい。この場合、(i)第2の加圧では、第1の加圧よりも、高い圧力で積層物を加圧してもよいし、(ii)第2の加圧では、第1の加圧よりも、高い圧力および高い温度で積層物を加圧してもよいし、(iii)第1の加圧において、積層物へ加える圧力を徐々に上昇させてもよいし、(iv)第2の加圧において、積層物へ加える圧力を徐々に上昇させてもよいし、(v)第1の加圧において、積層物へ加える圧力を徐々に上昇させた後、第2の加圧においても、積層物へ加える圧力を徐々に上昇させてもよい。グラファイトシートの表面には凹凸が存在し、かつ、グラファイトシートが変形しやすいため、積層物へ加える圧力を順次上げていくことによって、接着層がグラファイトシートの表面の凹凸の形状に合うように変形するタイミングと、グラファイトシートが変形するタイミングとを調整することができるため、グラファイトシートと接着層との間の接着強度を向上させることができる。
【0314】
接着工程の具体的な方法としては、ラミネートおよびプレスなどが挙げられるが、本発明においては、プレスによる接着が好適である。プレスであれば、10層以上といった多層の積層物であっても、積層物中の各層同士を一括して接着できる。また、積層物を加熱しながら、当該積層物に数秒以上の加圧を行えば、接着層の軟化、および、加圧の効果によって、グラファイト積層体内に空気が噛み込むことを抑制することができ、これによって、グラファイトシート同士の間の接触熱抵抗を低減できる。
【0315】
上述したように、接着工程では、積層工程にて形成された積層物を加熱および加圧(換言すれば、圧縮)する。このとき、積層物の圧縮割合は、特に限定されず、1よりも小さいことが好ましく、0.97以下であることがより好ましく、0.96以下であることがより好ましく、0.95以下であることがより好ましく、0.92以下であることがより好ましく、0.90以下であることがより好ましい。圧縮割合(グラファイト積層体の厚み/原料となる積層物の厚み)が1よりも小さいと、積層された接着層が変形しているため、グラファイトシート同士が接触しやすくなり、理論熱伝導に近いグラファイト積層体を得ることができる。
【0316】
図21に、切断処理の例を示す。
図21に示すように、点線で図示される切断箇所235に沿ったZ軸の方向への切断によって、屈曲部210にてX軸(または、Y軸)の方向に向かって屈曲しているグラファイト積層体201を作製することができる。切断処理は、カッター、外周刃などのブレードソー、レーザー、ウォータージェット、ワイヤーソーなどを用いて行うことができるが、グラファイト積層体の層間剥離の防止、一度に大量に切断すること、生産性の向上の観点から、ワイヤーソーを用いて行うことが好ましい。切断処理であれば、グラファイト積層体201を、鋭利な角度(例えば、直角)にて屈曲させることができる。
【0317】
〔実施の形態D〕
実施の形態A〜実施の形態Cにて説明したグラファイト積層体は、グラファイト積層体、保護層、粘着層から構成されるグラファイト複合フィルムとして構成することも可能である。
【0318】
この場合、グラファイト複合フィルムは、グラファイト積層体、保護層、および、粘着層から構成されるグラファイト複合フィルムであって、グラファイト積層体の端部の少なくとも一部分が保護層と粘着層とで被覆されていることが好ましい。
【0319】
グラファイト複合フィルムは、日本国公開特許公報「特開2008−80672号(2008年4月10日公開)」にしたがって構成することが可能である。なお、当該日本国公開特許公報は、本明細書中において参考文献として援用される。以下に、グラファイト複合フィルムについて、具体的に説明する。
【0320】
上記グラファイト複合フィルムは、グラファイト積層体の端部の少なくとも一部分が保護層と粘着層とで被覆されていることが好ましい。より具体的に、上記グラファイト複合フィルムは、(i)グラファイト積層体の端部の全てが保護層と粘着層で被覆された構造、(ii)グラファイト積層体の端部の一部分が保護層と粘着層で被覆された構造、または、(iii)グラファイト積層体の全体が保護層と粘着層で被覆された構造、を有し得る。
【0321】
グラファイト積層体の端部の少なくとも一部分が保護層と粘着層とで被覆されたグラファイト複合フィルムであれば、グラファイト複合フィルムを剥離ライナーから引き剥がしたり、リワークしたりする際にグラファイト層間で凝集破壊することを防止することが可能になる。さらに、携帯電話、ノートPC、ハンディカムコーダ、自動車ヘッドランプ等の小型電子機器においては、機器内部のスペースが小さくなる結果、放熱スペースが少なくなっている。そのため、熱輸送用フィルムをヒンジ部やフレキシブル基板等の可動部に貼り付けたり、機器内で熱輸送用フィルムを湾曲させたりする場合が急増している。このようにグラファイト複合フィルムを折り曲げた状態や繰り返し曲げた状態で使用しても、本発明のグラファイト複合フィルムは、端部から層間剥離を起こしたり、保護層とグラファイト積層体の界面や粘着層とグラファイトフィルムの界面から界面剥離を起こしたりせず、折り曲げや繰り返し曲げに耐えうる熱輸送用フィルムになる。
【0322】
<保護層のはみ出し幅>
グラファイト積層体の周辺端部を保護層および粘着層で被覆した場合、保護層および粘着層が、グラファイト積層体からはみ出した構造となる。保護層のはみ出し幅は、2mm以下、好ましくは1mm以下である。はみ出し幅が2mm以下であれば、グラファイト積層体周辺の熱拡散に寄与しないはみ出し部分を小さくでき、省スペースの電子機器において、グラファイト積層体の面積を大きくする設計が可能となり、放熱特性に優れた電子機器を実現することができる。
【0323】
<はみ出し面積の割合>
(保護層の面積−グラファイト積層体の面積)/(グラファイト積層体の面積)で定義されるはみ出し面積の割合は50%以下、好ましくは30%以下、さらに好ましくは10%以下である。はみ出し面積の割合が50%以下であれば、グラファイト積層体周辺の熱拡散に寄与しないはみ出し部分を小さくでき、省スペースの電子機器において、グラファイト積層体の面積を大きくする設計が可能となり、放熱特性に優れた電子機器を実現することができる。
【0324】
<被覆割合>
(グラファイト積層体の端部が被覆されている長さ)/(グラファイト積層体の端部長さ)で定義される被覆割合は10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。グラファイト積層体の端部の少なくとも一部分が保護層と粘着層とで被覆割合10%以上で被覆されたグラファイト複合フィルムであれば、グラファイト複合フィルムを剥離ライナーから引き剥がしたり、リワークしたりする際にグラファイト層間で凝集破壊することを防止することが可能になる。また、グラファイト複合フィルムを折り曲げた状態や繰り返し曲げた状態で使用しても、グラファイト複合フィルムの端部から層間剥離を起こしたり、保護層や粘着層とグラファイト積層体の界面から界面剥離を起こしたりせず、折り曲げや繰り返し曲げに耐えうる熱輸送用フィルムなる。
【0325】
<グラファイト複合フィルムの厚み>
グラファイト複合フィルムの厚みは、100μm以下、好ましくは90μm、さらに好ましくは80μm以下である。厚み100μm以下のグラファイトフ複合フィルムであれば、グラファイト複合フィルムを引き剥がしたり、リワークしたり、折り曲げや繰り返し曲げ部に使用したりして、グラファイト複合フィルムに急な曲率で曲げの力が加わった場合でも、グラファイト層に余分な力が加わりにくくなり、グラファイトの層剥離がおこりにくくなる。
【0326】
<グラファイト複合フィルムの熱伝導率>
グラファイト複合フィルムの熱伝導率は、400W/m・K以上、好ましくは500W/m・K以上、さらに好ましくは600W/m・K以上である。熱伝導率が400W/m・K以上になると、熱伝導性が高いために、発熱機器から熱を逃がしやすくなり、発熱機器の温度上昇を抑えることが可能となる。ここで言う熱伝導率は、熱拡散率と熱容量と密度の積から算出した値である。
【0327】
<グラファイト複合フィルムのMIT(R1mm)>
グラファイト複合フィルムのMIT(R1mm)は、100,000回以上、好ましくは200,000回以上、さらに好ましくは300,000回以上である。MIT(R1mm)が100,000回以上になると、グラファイト複合フィルムを、携帯電話のヒンジや小型電子機器の折り曲げ部分として好適に使用することができる。
【0328】
MITの測定では、折り曲げ角度を選択することが可能であり、Rが5mm、2mm、1mm等が選択することができる。Rが小さいほど、急角度で折り曲げられ、厳しい試験となる。特に、携帯電話、ゲーム機、液晶テレビ、PDP等のスペース小さい電子機器においては、R1mmにおいて、折り曲げ性が優れることは、機器の省スペース設計が可能となり、非常に重要である。なお、MIT(R1mm)の測定方法は、日本国公開特許公報「特開2008−80672号(2008年4月10日公開)」に記載の測定方法に従えばよい。
【0329】
<保護層・粘着層>
保護層は、グラファイト積層体を取り扱ったり、電子機器に取り付けたりする際に、表面に傷や皺が入るのを保護するものである。またグラファイトは表面から黒鉛粉末が剥がれ落ちる場合があり、その粉落ちを防止するために、保護層を形成する。また、粘着層は、グラファイト積層体と、発熱部品、放熱部品、または、筐体等との密着をとるために使用され得る。
【0330】
<保護層・粘着層の厚み>
保護層および粘着層の各々の厚みは、40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。保護層および粘着層に、各々、厚み40μm以下の保護層および粘着層を用いると、グラファイト複合フィルムを引き剥がしたり、リワークしたり、折り曲げや繰り返し曲げ部に使用したりして、グラファイト複合フィルムに急な曲率で曲げの力が加わった場合でも、グラファイト層に余分な力が加わりにくくなり、フィルムの層剥離がおこり難くなる。
【0331】
<保護層>
保護層の具体例としては、絶縁層、および、導電層が挙げられる。絶縁層の材料としては、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、および、エポキシ等が挙げられ、これらの材料は、耐熱性に優れ、グラファイト複合フィルムを発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な長期信頼性が得られる。
【0332】
絶縁層の厚みは、40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。厚みが40μm以下になると、グラファイト積層体と複合化した際に、グラファイト積層体が有する優れた熱伝導性を発揮することが可能となる。また、絶縁層の厚みは、10μm以上であるとよい。10μm以上であると、グラファイト複合フィルムを発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な粘着性を保持することが出来、長期信頼性にも優れる。
【0333】
これらの絶縁層は、グラファイト積層体上に、塗布、印刷、浸漬、または、蒸着等により直接形成しても良いし、粘着材や接着材を介して形成しても良い。
【0334】
<導電層>
導電層の材料としては、銅、および、アルミニウム等が挙げられ、これら材料は、耐熱性に優れ、グラファイト複合フィルムを発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な長期信頼性が得られる。
【0335】
導電層の厚みは、40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。厚みが40μm以下になると、グラファイト積層体と複合化した際に、グラファイト積層体が有する優れた熱伝導性を発揮することが可能となる。また、導電層の厚みは、10μm以上であるとよい。10μm以上であると、グラファイト複合フィルムを発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な粘着性を保持することが出来、長期信頼性にも優れるものとなる。
【0336】
これらの導電層は、グラファイト積層体上に、塗布、メッキ、スパッタ、または、蒸着等により直接形成しても良いし、粘着材や接着材を介して形成しても良い。
【0337】
<粘着層>
粘着層の材料としては、アクリル系粘着材、および、シリコーン系粘着材等が挙げられ、これら材料は、耐熱性に優れ、グラファイト複合フィルムを発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な長期信頼性が得られる。また、取り付け位置の間違いや使用後の修理において、一度取り付けたグラファイト複合フィルムを取り外さなければならない場合がある。アクリル系粘着材、および、シリコーン系粘着材は、繰り返し使用や長期信頼性に優れるため、このような再利用性、および、再剥離性にも優れる。
【0338】
粘着層の厚みは、40μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。厚みが40μm以下になると、グラファイト積層体と複合した際に、グラファイト積層体が有する優れた熱伝導性を発揮することが可能となる。また、粘着層の厚みは、10μm以上であるとよい。10μm以上であると、グラファイト複合フィルムを発熱部品や放熱部品と複合化して使用した場合にも、十分な粘着性を保持することが出来、長期信頼性にも優れるものとなる。
【0339】
また、粘着層は、基材を含む材料であることが好ましい。基材を含むことにより、グラファイト複合フィルムのコシが増え、剥離ライナーを剥がす際や一度取り付けたグラファイト複合フィルムを再剥離する際に、グラファイト積層体が層剥離する事を抑制することができる。特に、非常に結晶性、および、熱拡散性が優れたグラファイト積層体においては、グラファイト積層体を構成する各フィルムが層状に剥離しやすい場合があるが、基材がある事により、剥離性を改善することが可能となる。また基材があることにより、グラファイト複合フィルムの強度が増し、取り付け時、機械的にカシメて固定する時、または、リワーク時に、グラファイト積層体が傷つくのを防止することが可能となる。
【0340】
粘着層の基材としては、ポリイミド、または、ポリエチレンテレフタレートを含む材料であると良い。ポリイミド、および、ポリエチレンテレフタレートは、耐熱性、強度、および、寸法安定性に優れ、グラファイト積層体と複合化した際に、グラファイト積層体の熱伝導性を落とすことなく、剥離性、および、傷つき防止性に優れるグラファイト複合フィルムを実現することができる。
【0341】
基材の厚みは、6μm以下であると良い。基材の厚みが薄いと、グラファイト積層体が有する優れた熱拡散性を損なうことなく、グラファイト複合体と複合化することが可能となる。また、基材の厚みが厚くなると、剥離ライナーを剥がす場合や折り曲げで使用する場合、粘着層の基材に力が加わりやすくなる。一般に基材は伸びに強いため、曲げに追従することが可能であるが、グラファイト積層体は折り曲げに弱いため、基材と同程度に折り曲げをおこなうと、グラファイト積層体に皺が入りやすい。そのため、粘着層の基材よりもグラファイト積層体の方に力が加わるようにすること、すなわち、粘着層の基材を薄くすることで、剥離ライナーを剥がす場合や折り曲げて使用する際に、グラファイト積層体に皺が入ることを抑制することが好ましい。
【0342】
絶縁層は、グラファイトフィルム上に、塗布、印刷、浸漬、または、蒸着等により直接形成しても良いし、ラミネートを使用して転写して形成しても良い。
【0343】
〔本願発明の用途の例〕
上述したように、本発明のグラファイト積層体、熱輸送用構造物およびロッド状の熱輸送体は、曲がった形状を有し得る。当該形状を有していることは、本発明のグラファイト積層体、熱輸送用構造物およびロッド状の熱輸送体を様々な機器(例えば、電子機器または電気機器)に搭載した時に、当該機器の小型化を実現しつつ、かつ、当該機器の効率の良い放熱を実現するという観点から、有利である。この点について、
図28を用いて説明する。
【0344】
図28の(a)および(b)は、様々な機器の内部における、屈曲部を有するグラファイト積層体の配置の一例を示す図であって、グラファイト積層体を備えた機器の側面図である。
【0345】
例えば、
図28(a)では、機器の内部に2つの電子部品550が配置されており、一方の電子部品550の上側に高温部位540が配置され、他方の電子部品550の下側に低温部位541が配置されている。このとき、グラファイト積層体501は階段状の形状を有しているので、グラファイト積層体501、高温部位540、低温部位541および電子部品550を狭い空間内に配置することができるとともに、グラファイト積層体501を介して高温部位540と低温部位541とを確実に接続することができる。
【0346】
グラファイト積層体501と高温部位540とは、互いが密着するように配置されていることが好ましい。更に、グラファイト積層体501と低温部位541とは、互いが密着するように配置されていることが好ましい。上記構成であれば、高温部位540から低温部位541へ、効率良く熱を輸送することができる。
【0347】
グラファイト積層体501と電子部品550とは、互いが密着するように配置されていても良いし、所望の距離を隔てて配置されていてもよい。グラファイト積層体501から電子部品550へ熱が移ることを防止するという観点からは、グラファイト積層体501と電子部品550とが所望の距離を隔てて配置されていることが好ましい。
【0348】
図28(b)では、機器の内部に1つの電子部品550が配置されており、電子部品550の一方の側面の横に高温部位540が配置され、電子部品550の他方の側面の横に、低温部位541が配置されている。このとき、グラファイト積層体501は凹状の形状を有しているので、グラファイト積層体501、高温部位540、低温部位541および電子部品550を狭い空間内に配置することができるとともに、グラファイト積層体501を介して高温部位540と低温部位541とを確実に接続することができる。
【0349】
グラファイト積層体501と高温部位540とは、互いが密着するように配置されていることが好ましい。更に、グラファイト積層体501と低温部位541とは、互いが密着するように配置されていることが好ましい。上記構成であれば、高温部位540から低温部位541へ、効率良く熱を輸送することができる。
【0350】
グラファイト積層体501と電子部品550とは、互いが密着するように配置されていても良いし、所望の距離を隔てて配置されていてもよい。グラファイト積層体501から電子部品550へ熱が移ることを防止するという観点からは、グラファイト積層体501と電子部品550とが所望の距離を隔てて配置されていることが好ましい。
【実施例】
【0351】
<実施例A>
<熱伝導率の測定>
図23に示す測定装置を用いて下記の測定を行い、熱伝導率を算出した。
1)ロッド状の熱輸送体301の端部328を流水323(低温部位)と接触させて、20℃に保った。
2)ロッド状の熱輸送体301の端部327にヒーター322(高温部位)を取り付けた。熱電対325を端部327とロッド状の熱輸送体301とが接するところに取り付け、熱電対326を流水323と端部328とが接するところに取り付けた。熱電対325で測定される温度が高温部位の温度Tであり、熱電対326で測定される温度が、低温部位の温度(20℃)である。
3)ロッド状の熱輸送体301の低温部分以外を断熱材324で覆った。
4)高温部位が一定温度となるようにヒーター322の出力Qを調整した。
このとき、熱伝導率λは、ロッド状の熱輸送体301の断面Sと軸方向の長さLとをもちいて、
λ=Q×L/S(T−20℃)
との式に基づいて算出した。高温部位が100℃となるように調整したヒーター322の出力Qと、高温部位が50℃となるように調整したヒーター322の出力Qとを各々求め、高温部位が100℃のときの熱伝導率であるλ
a、および、高温部位が50℃のときの熱伝導率であるλ
bを求めた。
【0352】
<変形率>
変形率は、下記手法により算出した。
図26(1)に示すように、ロッド状の熱輸送体301が地面に平行となるようにして、ロッド状の熱輸送体301の両端部を第1クランプ312、第2クランプ313でそれぞれ保持した後、
図26(2)に示すように、第2クランプ313の保持を外した。保持を外す前のロッド状の熱輸送体の端部の中心の位置と、保持を外した後で垂れ下がったロッド状の熱輸送体の端部の中心の位置と間の垂直距離x、および、ロッド状の熱輸送体の長さLを測定した。そして、x/Lを、ロッド状の熱輸送体の変形率とした。
【0353】
なお、
図26(1)に示すように、第1クランプ312、および、第2クランプ313によって保持されない、ロッド状の熱輸送体の部分の長さを、ロッド状の輸送体の長さLと規定した。換言すれば、ロッド状の熱輸送体の全長から、第1クランプ312、および、第2クランプ313によって保持される、ロッド状の熱輸送体の部分の長さを引いたものを、ロッド状の輸送体の長さLと規定した。
【0354】
<グラファイトシート>
高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚さ40μm、面方向熱伝導率1450W/mK、密度2.1g/cm
3、電気伝導率14000S/cmのグラファイトシート(GS1と呼ぶ)を使用した。
【0355】
<実施例1A>
200mm×200mmのサイズのグラファイトシートGS1とPETフィルム(厚み5μm、誘電率3.2、融点260℃)とを、交互に20枚積層し、当該積層体に対して、250℃に加熱されたプレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与して、積層体(厚み0.8mm)を得た。この積層体を切断し、2.7×0.8×90mmのロッド状の熱輸送体を作製した。
【0356】
熱伝導率は、λ
a=1100W/m・K、λ
b=1200W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.92であった。変形率は、1%以下であった。
【0357】
<実施例2A>
200mm×200mmのサイズのグラファイトシートGS1とPETフィルム(厚み5μm、誘電率3.2、融点260℃)とを、交互に68枚積層し、当該積層体に対して、250℃に加熱されたプレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与して、積層体(厚み2.7mm)を得た。この積層体を切断し、2.7×0.8×90mmのロッド状の熱輸送体を作製した。
【0358】
熱伝導率はλ
a=1150W/m・K、λ
b=1250W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.92であった。変形率は、1%以下であった。
【0359】
<実施例3A>
200mm×200mmのサイズのグラファイトシートGS1とPETフィルム(厚み5μm、誘電率3.2、融点260℃)とを、交互に68枚積層し、当該積層体に対して、250℃に加熱されたプレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与して、積層体(厚み2.7mm)を得た。この積層体を切断し、2.7×2.7×90mmのロッド状の熱輸送体を作製した。
【0360】
熱伝導率はλ
a=1140W/m・K、λ
b=1240W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.92であった。変形率は、1%以下であった。
【0361】
<実施例4A>
実施例3Aで得られたロッド状の熱輸送体を研磨し、当該熱輸送体の断面を直径2mmの円形(短軸も長軸も2mm)に加工することで、ロッド状の熱輸送体を作製した。
【0362】
熱伝導率はλ
a=1100W/m・K、λ
b=1200W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.92であった。変形率は、1%以下であった。
【0363】
<実施例5A>
200mm×200mmのサイズのグラファイトシートGS1とPETフィルム(厚み5μm、誘電率3.2、融点260℃)とを、交互に20枚積層し、当該積層体に対して、250℃に加熱されたプレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与して、積層体(厚み0.8mm)を得た。この積層体を切断し、2.7×0.8×180mmのロッド状の熱輸送体を作製した。
【0364】
熱伝導率はλ
a=1100W/m・K、λ
b=1200W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.92であった。変形率は、1%以下であった。
【0365】
<実施例6A>
グラファイトシートGS1の片面に、アクリル系両面テープ1(寺岡製作所(株)707:アクリル系13μm/PET4μm/アクリル系13μm)をラミネーターで貼り合せた。得られた粘着剤付きグラファイトフィルムを、同一方向に任意の形状に折り曲げながら、箱型に押し込んで張り合わせていく方法で、複数枚積層させ、プレス機により0.5MPaの圧力を1分間付与することにより、300mm×100mm×100mmのグラファイト直方体ブロックを作製した。この積層体を切断し、2.7×2.7×90mmのロッド状の熱輸送体を作製した。
【0366】
熱伝導率はλ
a=900W/m・K、λ
b=1000W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.90であった。変形率は、1%以下であった。
【0367】
<比較例1A>
NEC製スマートフォンMEDIAS X N−06Eに使用されているヒートパイプ(2.7×0.8×9.0mm)を取り外し、熱伝導率の測定を行った。
【0368】
熱伝導率はλ
a=660W/m・K、λ
b=1100W/m・Kであり、λ
a/λ
b=0.6であった。変形率は、1%以下であった。
【0369】
このことから、本発明のロッド状の熱輸送体は、温度が上昇しても熱伝導率は常におおむね一定であり、ヒートパイプに比べて使用温度範囲が広いことは明らかである。
【0370】
<実施例B>
<B−1.グラファイトシート>
(グラファイトシートの基本構成)
実施例に用いたグラファイトシートの構成を、表1、および、以下に示す。
【0371】
高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚さ40μm、面方向熱伝導率1300W/mK、密度2.0g/cm
3、表面粗さRa=1.5μm、電気伝導率12000S/cmのグラファイトシート(GS1と呼ぶ)を使用した。
【0372】
高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚さ40μm、面方向熱伝導率1450W/mK、密度2.1g/cm
3、表面粗さRa=1.5μm、電気伝導率14000S/cmのグラファイトシート(GS2と呼ぶ)を使用した。
【0373】
高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚さ40μm、面方向熱伝導率1300W/mK、密度2.0g/cm
3、表面粗さRa=0.7μm、電気伝導率12000S/cmのグラファイトシート(GS3と呼ぶ)を使用した。
【0374】
高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚さ40μm、面方向熱伝導率800W/mK、密度1.25g/cm
3、表面粗さRa=1.5μm、電気伝導率7500S/cmのグラファイトシート(GS4と呼ぶ)を使用した。
【0375】
高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚さ100μm、面方向熱伝導率600W/mK、密度1.0g/cm
3、表面粗さRa=1.5μm、電気伝導率5000S/cmのグラファイトシート(GS5と呼ぶ)を、実施例に使用した。
【0376】
厚さ240μm、面方向熱伝導率200W/mK、密度1.0g/cm
3、表面粗さRa=3μm、電気伝導率1500S/cmの天然のグラファイトシート(GS6と呼ぶ)を使用した。
【0377】
(グラファイトシートの厚さ)
厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HElDENH:AIN−CERTO)を用い、50mm×50mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、25℃の恒温室にて任意の10点における厚さを測定し、当該測定値の平均値として、グラファイトシートの厚さを算出した。
【0378】
(グラファイトシートの密度)
グラファイトシートの密度は、100mm×100mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、重量および厚さを測定し、測定された重量の値を、算出された体積の値(100mm×100mm×厚さ)にて割ることにより、算出した。
【0379】
(グラファイトシートの電気伝導率)
グラファイトシートの電気伝導率は、4探針法で定電流を印加(例えば、(株)三菱化学アナリテック製ロレスタGP)することによって測定した。
【0380】
(グラファイトシートの熱伝導率)
グラファイトシートの面方向の熱伝導率は、次式(1)によって算出した。
【0381】
A=α×d×Cp ・・・・(1)
ここで、Aは、グラファイトシートの熱伝導率、αは、グラファイトシートの熱拡散率、dは、グラファイトシートの密度、Cpは、グラファイトシートの比熱容量をそれぞれ表わしている。なお、グラファイトシートの熱拡散率、密度、および比熱容量は、以下に述べる方法で求めた。
【0382】
グラファイトシートの熱拡散率は、光交流法に基づく熱拡散率測定装置(例えば、アルバック理工(株)社の「LaserPit」)を用い、4mm×40mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、20℃の雰囲気下で10Hzの交流条件下で測定した。
【0383】
グラファイトシートの密度は、100mm×100mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、重量および厚さを測定し、測定された重量の値を、算出された体積の値(100mm×100mm×厚さ)にて割ることにより、算出した。
【0384】
グラファイトシートの比熱容量は、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製の熱分析システムである示差走査熱量計DSC220CUを用い、20℃から260℃まで10℃/minの昇温条件下で測定した。
【0385】
(グラファイトシートの表面粗さ)
グラファイトシートの表面粗さは、ミツトヨ製の小型表面粗さ測定器サーフテストSJ−210を用いて測定した。
【0386】
なお、表1では、測定されたRaが1.0μm以上である場合、測定結果を「B」と記載し、測定されたRaが1.0μm未満である場合、測定結果を「A」と記載した。
【0387】
<B−2.接着層>
(接着層の基本構成)
実施例に用いた接着層の構成を、表2、および、以下に示す。
【0388】
接着層としては、ポリエステル系接着剤、PET(polyethylene terephthalate、融点260°)、PE(polyethylene)、アクリル系両面テープ、ポリイミド前駆体、ゴムシートシリコーンの何れかを用いた。各接着層の物性の詳細については、表2に記載する。また、各物性の測定方法を以下に説明する。
【0389】
(接着層のガラス転移点)
接着層のガラス転移点は、示差走査熱量分析(島津製作所製DSC−50、昇温速度1℃/min)によって測定した。
【0390】
(接着層の厚さ)
厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HElDENH:AIN−CERTO)を用い、50mm×50mmの形状に切り取られた接着層のサンプルについて、25℃の恒温室にて任意の10点における厚さを測定し、当該測定値の平均値として、接着層の厚さを算出した。
【0391】
(接着層の誘電率)
接着層の誘電率は、接着層の誘電率は、温度20℃および湿度60%の条件で24時間放置後、安藤電気(株)製AS−4245を用いて、周波数1kHzで測定した。
【0392】
(接着層の吸水率)
接着層の吸水率は、JIS K 7209に準拠し、乾燥状態の接着層の質量と、水に24時間浸漬した後の接着層の質量とを比較することによって測定した。
【0393】
(アウトガス)
接着層のアウトガスの有無は、試料を150℃まで加熱したときのガスをガスクロマトグラフィーで確認することによって確認した。
【0394】
(接着層の破断強度)
TENSILON UTM−2(エー・アンド・デイ社製)を用い、フィルムを3mm×35mmに切り出して、当該フィルムを治具に固定し、チャック間距離20mmになり、かつ、フィルムの中心が引張試験機の中心と重なるように、上記治具を引張試験機にセットし、クロスヘッドスピード8mm/minで引張り試験を行い、接着層の破断強度の測定を行った。
【0395】
(接着層の接着力)
接着層の接着力は、JIS−Z0237記載の方法1の「試験板に対する180度引きはがし粘着力の試験方法」に準じて求めた。JIS−Z0237記載の幅50mm×長さ125mm×厚さ1.1mm、表面粗さRa:50nmのSUS板をメタノールで洗浄した。20mm×300mmの保護層を、環境温度23℃、湿度50%の条件下において、2kgのローラーで洗浄後のSUS板に空気が入らないように2往復加圧貼付した。1時間放置後、SIMAZU製のオートグラフ(型番:AG−10TB)、50Nのロードセル(型番:SBL−50N)を用い、同一の温度湿度条件下で300mm/minの速度で引っ張って、180度引きはがし粘着力を測定した。3回測定した値の平均値を、小数点以下第3位を四捨五入して小数点以下第2位まで、N/25mmの単位で算出した。
【0396】
<3.グラファイト積層体>
(比較例1B、3B、5B、7B、参考例1B、2Bのグラファイト積層体の製造方法)
200mm×300mmのサイズ(厚さは、表1に記載)の表1に記載のグラファイトシートの片面に、表2に記載の接着層を、ラミネーターを用いて貼り合せた。
【0397】
得られた接着層付のグラファイトシートを、表3に記載の数だけ積層し、当該積層体に対して、プレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与し、これによって、二軸方向にグラファイト結晶が配向したグラファイトブロックを得た。
【0398】
得られたグラファイトブロックを、グラファイトの結晶面に対して90°となる角度でチップソーを用いてカットし、表3に記載のグラファイト積層体を得た。なお、本実施例では、リガク社製のX線回折装置によって観察される結晶面を、グラファイトの結晶面とした。
【0399】
(実施例4B、比較例2B、4B、6B、参考例3Bのグラファイト積層体の製造方法)
200mm×300mmのサイズ(厚さは、表1に記載)の表1に記載のグラファイトシートと表2に記載の接着層とを、交互に表3に記載の数だけ積層し、当該積層体に対して、180℃に加熱されたプレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与し、これによって、二軸方向にグラファイト結晶が配向したグラファイトブロックを得た。
【0400】
得られたグラファイトブロックを、グラファイトの結晶面に対して90°となる角度でチップソーを用いてカットし、表3に記載のグラファイト積層体を得た。
【0401】
(実施例1B、5B、7B、9B、11B、13Bのグラファイト積層体の製造方法)
表1に記載のグラファイトシートの片面に、十条ケミカル製ポリエステル系接着剤を、乾燥後の厚さが3μmになるように塗工し、接着層付きグラファイトシートを作製した。
【0402】
得られた接着層付きグラファイトシートを、表3に記載の数だけ積層し、当該積層体に対して、ホットプレス機を用いて100℃、0.5MPaの圧力を10分間付与し、これによって、二軸方向にグラファイト結晶が配向したグラファイトブロックを得た。
【0403】
得られたグラファイトブロックを、グラファイトの結晶面に対して90°となる角度でカットし、表3に記載のグラファイト積層体を得た。
【0404】
(実施例2B、3B、6B、8B、10B、12B、14B〜17Bのグラファイト積層体の製造方法)
表1に記載のグラファイトシートと表2に記載の接着層とを、交互に表3に記載の数だけ積層し、当該積層体に対して、250℃に加熱されたプレス機を用いて0.5MPaの圧力を1分間付与し、これによって、二軸方向にグラファイト結晶が配向したグラファイトブロックを得た。
【0405】
得られたグラファイトブロックを、グラファイトの結晶面に対して90°となる角度でカットし、表3に記載のグラファイト積層体を得た。
【0406】
(参考例4Bのグラファイト積層体の製造方法)
グラファイトフィルムに溶液状のポリイミド前駆体(東レ(株)製トレニース)を10μmの厚さに塗布した。そして、減圧乾燥の後、まだ十分にイミド化が進行していないフィルム20枚を積層し、加熱圧着を行って、グラファイト積層体を得た。加熱圧着において、温度は300℃であり、圧力は10Kg/cm
2であった。
【0407】
(参考例5Bのグラファイト積層体の製造方法)
縦横約50mm、厚さ約0.1mm、面内方向熱伝導率600W/mKのグラファイトシートと、縦横約50mm、厚さ約0.4mmのゴムシート(EPDMからなるゴムシート、弾性率1.7MPa)とを用いて、グラファイト積層体を作製した。
【0408】
具体的には、グラファイトシートの両面にシリコーン系接着剤を約0.5mmの厚さで塗布して、グラファイトシート17枚、ゴムシート18枚を交互に重ねた。当該積層物に対して上下方向(グラファイトシートのシート面に対して略垂直方向)から加圧してシート同士を接着させ、厚さ約10mmの積層体を得た(当該積層体におけるグラファイトシートはグラファイト結晶のa−b面とグラファイトシートのシート面とが略平行)。この積層体を切断して、厚さ1mmのグラファイト積層体を得た。
【0409】
(実施例18Bのグラファイト積層体の製造方法)
実施例2において、熱プレス後の積層体を、NCカッターにて、
図17の形状に切断し、90mm(積層方向に垂直な面の長辺方向)×2.75mm(積層方向に垂直な面の短辺方向)×0.8mm(積層方向)の屈曲部を有するグラファイト積層体を得た。
【0410】
(実施例19Bのグラファイト積層体の製造方法)
実施例2において、熱プレス時に
図6のように屈曲を有する金型を用いて熱プレスをおこなった後、シングルワイヤーソーで積層方向に垂直に切断し、
図18のように、90mm(積層方向に垂直な面の長辺方向)×0.8mm(積層方向に垂直な面の短辺方向)×2.75mm(積層方向)の屈曲部を有するグラファイト積層体を得た。
【0411】
(グラファイト積層体の厚さ)
厚さゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HElDENH:AIN−CERTO)を用い、50mm×50mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、25℃の恒温室にて任意の10点における厚さを測定し、当該測定値の平均値として、グラファイト積層体の厚さを算出した。
【0412】
(グラファイト積層体の圧縮割合)
グラファイト積層体の材料であるグラファイトシートの厚さをA1[μm]とし、積層数をB1[枚]とする。一方、グラファイト積層体の材料である接着層の厚さをA2[μm]とし、積層数をB2[枚]とする。
【0413】
グラファイト積層体の厚さの実測値をX[μm]とし、グラファイト積層体の圧縮割合をYとし:
Y=X÷(A1×B1+A2×B2)
上記の式にしたがって、Yを算出した。
【0414】
(グラファイト積層体の熱伝導率(測定値))
グラファイト積層体の面方向の熱伝導率は、次式(2)によって算出することができる。
【0415】
A
1=α
1×d
1×Cp
1 ・・・・(2)
ここで、A
1は、グラファイト積層体の熱伝導率、α
1は、グラファイト積層体の熱拡散率、d
1は、グラファイト積層体の密度、Cp
1は、グラファイト積層体の比熱容量をそれぞれ表わしている。なお、グラファイト積層体の熱拡散率、密度、および比熱容量は、以下に述べる方法で求めることができる。
【0416】
グラファイト積層体の熱拡散率は、光交流法に基づく熱拡散率測定装置(例えば、アルバック理工(株)社の「LaserPit」)を用い、4mm×40mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、20℃の雰囲気下で10Hzの交流条件下で測定することができる。
【0417】
グラファイト積層体の密度は、100mm×100mmの形状に切り取られたグラファイト積層体のサンプルについて、重量および厚さを測定し、測定された重量の値を、算出された体積の値(100mm×100mm×厚さ)にて割ることにより、算出することができる。
【0418】
グラファイト積層体の比熱容量は、エスアイアイナノテクノロジー株式会社製の熱分析システムである示差走査熱量計DSC220CUを用い、20℃から260℃まで10℃/minの昇温条件下で測定することができる。
【0419】
(グラファイト積層体の熱伝導率(理論値))
グラファイト積層体の熱伝導率(理論値)は、「グラファイトシートの熱伝導率×グラファイトシートの厚みの合計÷積層体の厚み」によって算出した。
【0420】
(グラファイト積層体の熱伝導率(理論値との近さ))
グラファイト積層体の熱伝導率(理論値との近さ)は、「熱伝導率の実測値÷熱伝導率(理論値)」によって算出した。
【0421】
(グラファイト積層体の積層作業性)
グラファイト積層体の積層作業性は、目視にて判定した。
【0422】
グラファイトシートと接着層とを積層したときに接着層の全体に皺が入る場合を「D」と判定し、グラファイトシートと接着層とを積層したときに接着層の一部に皺が入る場合を「C」と判定し、グラファイトシートと接着層とを積層したときに接着層に皺が入り難い場合を「B」と判定し、グラファイトシートと接着層とを積層したときに接着層に皺が入らない場合を「A」と判定した。
【0423】
(グラファイト積層体の泡かみ込み)
グラファイト積層体への泡のかみ込みは、目視にて判定した。
【0424】
泡によってグラファイト積層体が変形している場合を「D」と判定し、グラファイト積層体の内部全体に泡が入っている場合を「C」と判定し、グラファイト積層体の内部の一部に泡が入っている場合を「B」と判定し、グラファイト積層体の内部に泡が入っていない場合を「A」と判定した。
【0425】
(グラファイト積層体の切断性)
グラファイト積層体の切断性は、目視にて判定した。
【0426】
2mm厚さで切断した場合に、グラファイトシート層が剥離する場合を「F」と判定し、グラファイトシート層が部分的に剥離する場合を「E」と判定し、グラファイトシートは剥離しないが、グラファイト積層体が変形する場合を「D」と判定し、グラファイトシートは剥離しないが、グラファイト積層体が少し変形する場合を「C」と判定し、グラファイトシートは剥離せず、かつ、グラファイト積層体が変形しない場合を「B」と判定した。更に、1.5mm厚さで切断した場合に、グラファイトシートは剥離せず、かつ、グラファイト積層体が変形しない場合を「A」と判定した。
【0427】
(グラファイト積層体の固さ)
グラファイト積層体が地面に対して水平になるようにグラファイト積層体の端部の1つを固定した後、固定した端部から4cm離れたグラファイト積層体の表面にマーキングを施した。当該マーキングを施した箇所に対して、マーキングを施した箇所におけるグラファイト積層体の断面1mm
2あたり0.7gの荷重をかけた。荷重をかける前のマーカーの位置と、荷重をかけた後のマーカーの位置との間の距離(変位)を測定した。
【0428】
より具体的に、表面の形状が16mm(短手方向)×65mm(長手方向)の四角形であるサンプルの、長手方向の端部10mmをテープによって固定し、固定した端部から4cm離れた当該サンプルの表面上に、直径20mmの円形の重りを載せた。なお、重りとサンプルとは、テープによって互いを固定して、サンプルから重りが滑り落ちないようにした。また、重りの中心と、サンプルの中心とが重なるように、重りとサンプルとを配置した。
【0429】
上述した重りの重さをW(g)、サンプルの厚さをT(mm)、サンプルの幅をL(mm)とすると、サンプルの幅L(mm)は、上述したサンプルの短手方向の長さ16(mm)となり、サンプルの厚さT(mm)は、表3に記載の「厚さ(mm)」となる。このとき、上述した重りの重さは、以下の式にて算出され得る。つまり、
W(g)=[サンプルの幅(mm)]×[サンプルの厚さ(mm)]×0.7(g)
=16×L×0.7
なお、上記式の「L」には、表3に記載の「厚さ(mm)」の値を代入すればよい。
【0430】
実施例1B〜4Bおよび9B〜19Bでは、12mmの変位が観察された。実施例5Bおよび6Bでは、14mmの変位が観察された。実施例7Bおよび8Bでは、10mmの変位が観察された。一方、比較例1B〜6Bでは、22mmの変位が観察された。比較例7Bでは、18mmの変位が観察された。上述したように、比較例よりも実施例の方が変位の値が小さく、このことは、比較例よりも実施例の方が、グラファイト積層体が固いことを示している。グラファイト積層体が固いほど、グラファイト積層体の取り扱いが容易となり、好ましいといえる。
【0431】
【表1】
【0432】
【表2】
【0433】
【表3】
【0434】
(試験結果)
実施例では、「熱伝導率(理論値との近さ)」、「積層作業性」、「泡かみ込み性」および「切断性」の何れにおいても優れていることが明らかになった。
【0435】
つまり、「熱伝導率(理論値との近さ)」が「1.00」に近いことは、グラファイト積層体の熱伝導率が高いことを示している。
【0436】
また、「積層作業性」、「泡かみ込み性」および「切断性」が優れていることは、グラファイト積層体の製造時において、各層を良好に積層できるとともに、各層を良好に切断でき、その結果、内部に空隙が生じ難いグラファイト積層体を実現できることを示している。
【0437】
また、実施例1B〜実施例19Bは、比較例1B〜比較例7Bと比較して、接着層の吸水率が低く、かつ、接着層のガラス転移点が高いため、泡噛みが少なかった。
【0438】
<実施例C>
<C−1.グラファイトシート>
(グラファイトシートの基本構成)
実施例に用いたグラファイトシートは、高分子フィルム(ポリイミドフィルム)を熱処理して得られた、厚み40μm、幅210mm、長さ260mm、面方向熱伝導率1300W/mKのグラファイトシートであった。
【0439】
(グラファイトシートの厚み)
厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HElDENH:AIN−CERTO)を用い、50mm×50mmの形状に切り取られたグラファイトシートのサンプルについて、25℃の恒温室内にて任意の10点における厚みを測定し、当該測定値の平均値として、グラファイトシートの厚みを算出した。
【0440】
<C−2.接着層>
(接着層の基本構成)
実施例に用いた接着層材料は、PET(polyethylene terephthalate、融点260℃)であった。また、各物性の測定方法を以下に説明する。
【0441】
(接着層材料の融解温度)
接着層の融解温度は、JIS K 7121に準拠し、示差走査熱量分析装置(島津製作所製DSC−50)によって測定した。
【0442】
<C−3.グラファイト積層体>
(実施例1C〜11C、参考例1C〜11Cのグラファイト積層体の製造方法)
グラファイトシートと接着層材料とを、交互に表4に記載の数だけ積層して積層物を作製した。次に、表4に記載の所定の温度のときに所定の圧力を所定の時間、積層物に対して付与し、二軸方向にグラファイト結晶が配向したグラファイト積層体を得た。なお第2の加圧を行う場合は、第1の加圧の後で第2の加圧を行った。
【0443】
(実施例12C〜23C、参考例12C〜22Cのグラファイト積層体の製造方法)
グラファイトシートと接着層材料とを、表5に記載の数だけ交互に積層して積層物を作製した。この積層物を表5に記載の段数だけ積層した。次に、表5に記載の所定の温度のときに所定の圧力を所定の時間、積層物に対して付与し、二軸方向にグラファイト結晶が配向したグラファイト積層体を得た。なお第2の加圧を行う場合は、第1の加圧の後で第2の加圧を行った。
【0444】
表4および表5に記載のように、本実施例では、「20℃〜250℃未満」の温度範囲の間、積層物に対して第1の加圧を付与し続け、「250℃〜260℃」の温度の間、積層物に対して第2の加圧を付与し続けた。接着層材料としてPET(polyethylene terephthalate、融点260℃)を用いた場合、[(接着層材料の融解温度)−20℃]は、240℃となる。この場合、表4および表5の「第1の加圧(℃)」に包含される「240℃〜250℃未満」における加圧は、第1の加圧および第2の加圧以外の加圧(例えば、第3の加圧)と考えることができる。
【0445】
(グラファイト積層体のピール強度)
グラファイト積層体のピール強度を判定するにあたり、まず、刃角が30度のセンター刃であるトムソン刃と50トンプレス機によって、幅210mm、長さ260mmのグラファイト積層体の面内5点(左上、左下、真ん中、右上、右下)で抜き加工し、幅210mm、長さ64mmのグラファイト積層体を5つ得た。得られたグラファイト積層体について、グラファイトシートと接着層との層間での剥がれの有無を目視にて確認した。得られた5つのグラファイト積層体について、全て剥がれが無い場合を「3」、1つから2つ剥がれた場合を「2」、3つ以上剥がれた場合を「1」と判定した。
【0446】
(グラファイト積層体の接着割合)
グラファイト積層体のSEM画像から、接着層とグラファイトシートとの界面の断面を確認し、接着層とグラファイトシートとが接着している部分の長さを、界面全体の長さで割り、接着割合を算出した。SEM画像の観察は、超高分解能走査型電子顕微鏡観察(FE−SEM)で行い、装置としてULTRAplus(CarlZeiss製)を用い、加速電圧が5.0kVの条件で、二次電子検出器SE2で試料を観察した。また、グラファイト積層体を樹脂包埋させた後、当該包埋物をCP(クロスセクションポリッシャー)によって処理することにより、観察対象である断面を有する試料を作製した。
【0447】
積層物を多段で積層した実施例12C〜23C、参考例12C〜22Cにおいては、1バッチ中の積層位置が上部、中部、下部にある積層物に対応するグラファイト積層体をそれぞれ抜き出して、当該グラファイト積層体についてSEM画像の観察を行い、グラファイト積層体の密着性を判定した。上部とは上から1段目の位置の積層物を指し、中部とは中央付近の位置を指し、下部とは下から1段目の位置の積層物を指す。
【0448】
(グラファイト積層体の熱の伝わり易さ)
図22に示す測定装置を用いて下記の測定を行い、熱の伝わり易さ(ヒーター部と冷却部の温度差)を算出した。グラファイト積層体201の端部211を流水203(低温部位)と接触させて、18℃に保った。グラファイト積層体201の端部209にヒーター202(高温部位)を取り付けた。熱電対207を端部209とグラファイト積層体201とが接するところに取り付けた。グラファイト積層体201の低温部分以外を断熱材204で覆った。ヒーター202の出力を2Wに調整した。測定したヒーター部の温度と冷却部の温度との差を確認することで、熱の伝わり易さを算出した。熱の伝わり易さは、その値が低いほど熱が伝わり易いと判断した。
【0449】
(グラファイト積層体の厚みおよび厚み誤差)
厚みゲージ(ハイデンハイン(株)社製、HElDENH:AIN−CERTO)を用い、50mm×50mmの形状に切り取られたグラファイト積層体のサンプルについて、25℃の恒温室内にて任意の9点における厚みを測定し、当該測定値の平均値として、グラファイト積層体の厚みおよび厚み誤差を算出した。
【0450】
(グラファイト積層体の平滑性)
上記の測定した9点の厚みから、厚みの最大値と最小値との平均値を中心値として、中心値とどのくらいの割合で厚みがばらつくのかを算出した。厚み誤差が±5%以内の場合を「5」、厚み誤差が5%以上10%以下の場合を「4」、厚み誤差が10%以上15%以下の場合を「3」、厚み誤差が15%以上20%以下の場合を「2」、厚み誤差が20%以上30%以下の場合を「1」と判定した。
【0451】
(グラファイト積層体の外観)
グラファイト積層体の外観は、グラファイト積層体内への泡のかみ込みを目視にて判定し、その結果に基づいて評価した。泡によってグラファイト積層体が変形している場合を「1」と判定し、グラファイト積層体の内部全体に泡が入っている場合を「2」と判定し、グラファイト積層体の内部の一部に泡が入っている場合を「3」と判定し、グラファイト積層体の内部に泡が入っていない場合を「4」と判定した。
【0452】
【表4】
【0453】
【表5】
【0454】
(試験結果)
グラファイトシートの積層数が同じもの同士を比較すると、実施例は参考例に比べて、「ピール強度」、「熱の伝わり易さ」、「平滑性」および「外観」の何れにおいても優れていた。
【0455】
また、実施例1Cと参考例1Cとを比較すると、実施例1Cでは、第1の加圧で積層体内の空気を抜く工程を行い、第2の加圧を第1の加圧よりも高い圧力で行ってグラファイトシートと接着層との間の接着性を向上させているため、グラファイト積層体内の厚み方向の熱伝導性が良くなり、グラファイト積層体の熱の伝わり易さの点で優れていた。
【0456】
また、同様の理由から、実施例2Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例2Cの方が、実施例3Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例3Cの方が、実施例4Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例4Cの方が、実施例5Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例5Cの方が、実施例6Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例6Cの方が、実施例7Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例7Cの方が、実施例8Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例8Cの方が、実施例9Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例9Cの方が、実施例10Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例10Cの方が、実施例11Cと参考例1Cとを比較した場合には実施例11Cの方が、実施例12Cと参考例12Cとを比較した場合には実施例12Cの方が、グラファイト積層体内の厚み方向の熱伝導性が良くなり、熱の伝わりやすさの点で優れていた。