(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準媒体は、a)熱アブレーション装置が前記基準媒体内に存在しない場合、均質であり、 又はb)前記機器が前記基準媒体内に存在する場合、前記機器を除いて均質である、請求項1に記載の装置。
【背景技術】
【0003】
大手術に代わりとして熱アブレーション技術は、針(高周波(RF)、凍結療法及びマイクロ波アブレーション)のみ又は高強度集束超音波(HIFU)を使用するような非侵襲性熱源を必要とする最小侵襲性である。ほとんどの処置において、癌組織は55℃より高くまで加熱され、凝固される。
【0004】
RFアブレーション(RFA)は、現在米国で唯一のFDA認可の熱アブレーション療法である。これは、460-500kHzの交流電流が導通される活性電極チップを有するプローブを使用する。電流は、イオンの振動及び摩擦加熱を引き起こす。熱は熱伝導によって放散され、腫瘍をアブレーションする。 RFAは肝臓癌を治療するためによく使用される。西洋の転移性肝癌の新規症例は約50万件あり、世界の原発性肝癌の新規症例は約百万件(83%が発展途上国)である。多数の肝臓癌が報告されているため(例えば、中国のみでは2009年に433,000件の新規症例)、RFA及びマイクロ波アブレーション療法は発展途上国で人気が高まっている。現在の治療プロトコルは、デバイス製造業者の仕様書から予測される単純な球状アブレーションボリュームを使用する。実際の治療ボリュームは予測から大きく逸脱し、再発率(約35%)が高くなる。
【0005】
RFAは、通常、画像ガイダンス及びモニタリング下で実行される。高い再発率の一般的な理由の1つは、腫瘍細胞を適切に死滅させるためにアブレーションサイズをモニタリングし制御することができないことである。従って、臨床医にリアルタイムのフィードバックを提供することが不可欠である。これは現在、磁気共鳴(MR)に基づく温度イメージングを用いて妥当な精度で実現されることができる。しかしながら、MRイメージング(MRI)は高価であり、容易に入手できない可能性がある。代替のモダリティのモニタリングとして、超音波は、針の配置中の画像ガイダンスのために一般的に使用される。使いやすさ及び幅広い入手可能性のために、病変をモニタリングするための潜在的に好ましい方法である。しかしながら、それが治療をモニタリングするために現在使用されている唯一の方法は、Bモード画像上の高エコー病変を視覚化することによるものである。ほとんどの場合、過形成は、一時的な効果であり、病変境界との相関が低いRFA中の微小気泡の形成に起因する。したがって、そのような視覚化は近似的であり、治療効果の良好な指標ではない。
【0006】
肝臓病変に適用される剪断波エラストグラフィに超音波が使用されている(Guibal、A: "超音波に関する局所肝病巣の特徴付けのための剪断波エラストグラフィの評価"、欧州放射線学会、23:1138-1149(2013))。Guibalの研究は、組織の硬さのリアルタイムの2次元定量化可能な画像を提供するという利点を挙げている。
【0007】
熱アブレーション中に組織の硬さが変化することも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
温度上昇組織の弾性の変化が非常に大きいため、超音波弾性イメージングはアブレーションモニタリングにおいて大きな可能性を有する。組織壊死閾値に達すると、組織は硬化し始め、熱暴露の増加に伴って組織が硬化し続ける。この変化をトラッキングすることによって、治療の進行が評価され、終点は決定されることができる。組織硬さは、剪断波イメージングを用いて測定されることができる。これは、変位及び剪断波を発生させるための音響放射力の使用を必要とし、それはその後、硬さ情報を抽出するようにトラッキングされる。剪断波は、より硬い体組織においてより低い変位でより速く進行する。
【0009】
空間弾性マッピングのための剪断波イメージング(SWI)は、熱アブレーション治療のモニタリングにおいて大きな可能性を有する。
【0010】
しかしながら、超音波ベースのエラストグラフィで使用される既知のSWIモードは、針の電極から延在するタイン又はアブレーション針のような硬い医療器具の近傍のアブレーションされる組織境界部分を正確に検出するほど十分に感度が高くない。第1に、器具の硬さは、針を囲むアブレーションされる組織の剪断波変位を制限する。第2に、弾性の測定、例えば剪断弾性率は、低い信号対雑音比(S / N)の影響を受ける。さらに、低周波トランスデューサがイメージングのために利用される場合、SWI感度は、小さな、深い病変に対して、更に低下する。低周波イメージングは低空間分解能の影響を受けるが、より高い周波数はイメージング深度浸透度に関して制限される。この制限は、アブレーションから保護される必要があるクリティカルな構造(例えば、神経又は血管)の近くに位置される、深さが40ミリメートル(mm)を超え、直径が15ミリメートル未満の病変のアブレーションにとって特に深刻である。そのような構造は、本明細書では以下、保護構造と称される。また、初期の腫瘍輪郭に関して拡大する熱病変境界を描写することは困難であろう。
【0011】
剪断弾性率に基づく弾性画像は、タイム ツー ピーク(TTP)又はタイム ツー ピークスロープ(TTPS)などの剪断波伝播時間から更に決定されるローカルな剪断波速度に基づいて生成されている。アブレーションの剪断弾性率に基づくリアルタイムモニタリングにおける効率的な弾性評価の障害のいくつかは以下となる。(1)非常に低い変位の剪断波のピークがどこにあるかを判断することは難しい。(2)また二つの隣接する点の間で非常に速い剪断波のピークを区別することは困難である。 (3)アブレーションニードルがアブレーション中に存在する場合、アブレーションされる組織に対するより少ない変位がある。 (4)アブレーション針からの剪断波の反射は、一つよりも多くのピークを有する剪断波プロファイルを複雑にする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書で提案されるアプローチは、剪断波が硬い病変境界を横切るまで「正常組織における剪断波伝播」を解析することによって病変境界を検出する。
【0013】
更なる問題は、超音波プッシュフィールドはすべての深さにわたって均質な振幅で超音波フィールドが生成されることができない(一方で単一の深さにしか集中されることができない)ため、SWI内の超音波プッシュフィールドが弾性測定に悪影響を及ぼすことにある。
【0014】
本明細書で提案されているものによれば、測定の近傍の剛性器具によって引き起こされる剪断波測定の歪み及び/又は超音波フィールド効果は、空間弾性を表すマップの差分によって除去又は最小化される。使用される特定のトランスデューサ/イメージャからもたらされる何れかの差に対する堅牢性は他の利点である。特定の患者の組織弾性特性についても同じことが言える。一実施形態では、検査される媒体の異質性に起因する僅かな誤差であっても、差分マップの使用を介して取り消されることができる。
【0015】
従来、弾性マップは剪断弾性率分布を提供している。弾性の典型的な指標である剪断弾性率は、剪断波伝播速度の二乗に比例する。本明細書で提案されるものでは、ダイナミックモニタリングは、正確に測定するために小さく厳密に分割する必要性を回避し、それによってS / N比を更に高める。特に伝播速度は、剪断弾性率を計算する際の使用のための中間値として計算される必要がない。
【0016】
また、複雑な高次マルチラインビームフォーマは、熱アブレーション病変のアウトラインを効果的にマッピングする際の、提案される方法のために必要とされないが、本技術は、平行なトラッキングビームの限定されるセットのみを有するか、又はトラッキングビームをシリアルに送出する、より経済的な超音波スキャナに対しても非常に適していることは留意されるべきである。
【0017】
より具体的には、これらのハイライトに関して、一態様では、関心媒体が超音波エラストグラフィイメージングに従ってインテロゲートされ、インテロゲートの結果に基づいて、予備弾性空間マップが形成される。このマップは、異なる弾性値のアレイを含む基準弾性 - 空間マップに対して較正される。基準マップは、基準媒体の超音波剪断波イメージングを反映するように形成される。基準媒体は関心媒体ではなく、関心媒体に位置されない。
【0018】
特定の副態様では、基準媒体は、a)熱アブレーション装置が、例えばアブレーション方法としての高強度集束超音波(HIFU)の使用のように、基準媒体内に存在しない場合に均質であり、又は b)機器が基準媒体内にある場合、機器を除いて均質である。
【0019】
別の態様では、媒質中を伝播している剪断波は、媒体をインテロゲートすることによってトラッキングされる。アブレーションされる組織境界の反対側のトラッキング位置から、媒体中の剪断波及び他の剪断波の伝播遅延が測定される。 二つの剪断波は、別個に送出される各々異なるプッシュから生じる。プロセッサは、二つの遅延の関数に基づいて、境界が二つの位置の間で交差(クロス)することを決定する。 1つの態様でも、媒体は動的にインテロゲートされる。媒体の弾性 - 空間マップは動的に生成される。マップと媒体の以前に形成される弾性 - 空間マップとの間の差が動的に生成され、それによって空間的位置による剪断波伝播遅延差分空間的位置をエントリとして有する弾性差分マップを動的に形成する。差分マップ及び/又はそれから導出されるマップは動的に視覚化され、及び/又は差分マップからアブレーションされる組織境界が動的に規定される。
【0020】
これらの態様は、機械、方法、及びソフトウェアの形態で効果的に実現可能である。
【0021】
これらの態様の詳細は、寸法通りに描かれていない以下の図面を用いて以下に述べられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、例示的で非限定的な例として、リアルタイム熱アブレーションモニタリングエラストグラフィ装置100を示す。装置100は、アブレーション装置102と、エネルギー源104と、イメージング装置106と、表示装置108と、ユーザ制御装置110と、マイクロプロセッサ112又は他のプロセッサ、例えば、剪断波エラストグラフィ計算ユニットとを含む。マイクロプロセッサ機能は、一つ又はそれより多くの集積回路で実現可能である。しかしながら、ソフトウェア、ファームウェア、及びハードウェアの何れかの組み合わせで実装されることができる。
【0024】
アブレーション装置102は、アブレーション器具の一種として、アブレーションニードル114を含む。後者は、アブレーションのために熱を加えるために体組織内に伸長可能な一つ又はそれより多くのタイン118を含む高周波(RF)電極116を含む。主電流のようなエネルギー源104は、加熱のためのエネルギーを提供する。アブレーションニードル114は代わりに、代わりの対応する構成を備える、凍結療法又はマイクロ波アブレーションに使用されるものであってもよい。随意に、アブレーションは、高強度集束超音波(HIFU)によって行われることができ、この場合、アブレーションニードルの代わりにHIFUトランスデューサが提供される。
【0025】
イメージング装置106は、SWIモジュール120と、超音波Bモードイメージングモジュール122と、ビーム形成器123とを含む。Bモード画像は、アブレーションプロセスの異なるステージで弾性読取値を空間的にレジストレーションするために、繰り返し取得されることができる。このような位置合わせの必要性は、
図2に関連して以下に更に説明されるオフサイト弾性 - 空間マップ較正の実施形態では軽減される。 Bモード画像はまた、色分けされ、又は他でコード化される弾性空間マップ(以下、単に「弾性マップ」とも称される)が重ね合わされることができる基礎描写としての役割も果たす。
【0026】
イメージング装置106は、更に、一つ又はそれより多くの超音波トランスデューサ124を含む。各トランスデューサは、トランスデューサアレイ、すなわちトランスデューサ素子のアレイとして実現されてもよい。本明細書で提案されているものは、プッシング及びイメージングのための別個のトランスデューサに限定されないが、これらの二つの機能のための別個のトランスデューサは、プッシュの結果のトラッキングがプッシュ直後に密接に追従することを可能にし、それによってより正確な結果をもたらすことを可能にする。
【0027】
プローブ126は、プッシング及びトラッキングするためのイメージングトランスデューサ124を含むことができる。随意に、HIFU療法トランスデューサを含むこともでき、別個のプローブに収容されることができる。剪断波を生成するために、プッシングトランスデューサは、音響放射力プッシングパルス128を送出するように操作される。パルスは、所望の剪断波イメージング深さ、すなわちプッシュ深さにフォーカスされる。焦点は、複数のイメージング深度でのトラッキングに対応するために、小さく狭くなるように設計されているが、プッシュは、全方向にボリュメトリックに伝播する剪断波を生成する。剪断波が体組織を通じて伝播すると、それは体組織を伝播の方向に対して横方向に変位させる。この変位は、位置に向けられたトラッキングパルス139-142によって所与のトラッキング位置130-137で検出されることができる。例えば、位置130,134に向けられるトラッキングパルス139は、戻りエコーがA線143に従って測定されることを可能にする。これは、A線143に沿って組織の動きをトラッキングするために繰り返し行われる。剪断波のピークが、波伝播中にA線143に到達すると、同じ方向から得られたA線143の反復相互相関によって、両方の位置130,134の最大変位がそれぞれ検出可能である。プッシュと、モニタリングされる位置130におけるピークのそれぞれの到着との間の時間は、ピークツータイム(TTP)として知られている。現在のイメージング面に沿った複数のイメージング深度におけるトラッキング位置130乃至137はモニタリングされることができる。このモニタリングから、各位置130乃至137に対するTTPが測定可能である。トラッキング位置までの伝播距離は既知である。時間で割った距離は速度に等しいので、モニタリングされる位置130に関して剪断波の伝播速度が決定されることができる。これは、イメージング平面内の様々な他の位置に対して同時に行われる。したがって、位置間速度差はローカル速度を決定するために計算されることができる。しかしながら、代わりに伝播時間差がここに提案されるものに従って計算される。更に、この比較は、本方法によれば、位置間だけでなく、基準マップとなされる。典型的には、
図1に示されるよりも多くの位置130乃至137及びA線143が存在するであろう。随意に、例えば相互に平行な多数のイメージング面は3次元(3D)動的イメージングのために同時にモニタリングされることができる。剪断波の速度は、組織弾性の目安である剪断弾性率に関係する。本明細書で提案されているものによれば、伝播時間差が計算され、既知のジオミトリのトラッキング位置システムにおける組織弾性の指標として利用される。例えば、トラッキング位置130乃至137は、等間隔の格子内に配置されてもよい。
【0028】
高周波アブレーション(RFA)では、例えば、タイン144又は複数のタインが腫瘍内に展開される。
【0029】
タイン144で生成される熱は、組織をアブレーションし、それにより、アブレーションされる組織境界146を生成する。
【0030】
アブレーションの有害な熱的影響から保護されるべき血管又は他の保護される構造148は、アブレーションされる組織の境界線146の近傍にあり得る。保護される構造148に局所的な境界146の部分は、それに従ってアブレーションの間、動的にモニタリングされる。治療プロシージャ中のアブレーション拡張の評価のためのリアルタイム技術は、最初に計画される範囲からの、進展している境界146の不所望の偏差を補償するために、臨床医が治療を適応することを可能にする。これは、過小治療による腫瘍再発の可能性ならびに健康な組織への不所望の損傷の可能性を低減する。
【0031】
境界146の反対側の位置131,132の対のモニタリングに基づいて、マイクロプロセッサ112は境界が二つの位置の間で交差することを決定することができる。
【0032】
本明細書で提案される堅牢で例示的な技術によれば、この決定は、所与のイメージング深度での複数の位置のモニタリング及び基準値との比較に基づいている。所与のイメージング深度における位置は、対になって検査され、二つの位置は隣接している。 二つの位置のそれぞれについての基準トラッキングは、プレアブレーションのようなより早期のアブレーションステージで生じてもよく、又は組織模倣ファントムのようにオフサイトで行われてもよい。現在のトラッキングと同様に、基準トラッキングは、プッシュ128と、対の第1の位置131における剪断波152のピーク150の到着との間のタイムラグの評価基準をもたらす。このタイムラグはタイムツーピーク(TTP)154として知られている。ピークツースロープ(TTPS)及び質量中心(COM)などの他の代わりの伝播遅延値が使用可能である。基準トラッキング値から現在トラッキング値を引いたものをΔTTP
iと呼ぶ。対の次の位置132に対して、基準トラッキング値から現在のトラッキング値を引いたものをΔTTP
i+ 1と呼ぶ。境界146が二つの位置i及びi + 1、ここでは131と132との間を通過する場合、関数155の値は正であると予想される。それは関数f(x
i、x
i + 1)=ΔTTP
i+ 1 - ΔTTP
iである。更に、現在のイメージング深度における全てのf(x
i、x
i + 1)に対する最大値、又は「最大関数」156が
図1にf
maxとして示されている。f
maxが正の場合、それは境界146が通過する位置に空間的に対応する。これは境界146のための"B"によって
図1に示されている。マイクロプロセッサ112は、f
maxが正であるかに基づいてこの決定を行うことができる。これらの位置は、境界146を空間的に規定するために、複数のイメージング深度で見つけられることができる。
【0033】
弾性マップ160のエントリ158は、位置ごとに、遅延値162、例えばTTP154になる。イメージング面については、マップ160は2次元である。しかしながら、マップ160は、境界146の3Dモニタリングのために3次元であってもよい。基準弾性マップは、アブレーション媒体のモニタリングからプレアブレーションで形成されてもよく、又はアブレーション媒体をシミュレーションする他の媒体のオフサイトモニタリングから形成されてもよい。予備弾性マップは、アブレーション媒体の現在のモニタリングから形成される。基準マップ及び予備マップは同様に遅延値のアレイ162である。
【0034】
差分マップ又は「D-マップ」は、基準マップと予備マップとの間の差、例えば基準マップから予備マップを差し引いたものとして形成されることができる。したがって、Dマップのエントリは、ΔTTP
i、ΔTTP
i+ 1などである。
【0035】
Dマップを1つのトラッキング位置によってオフセット又はシフトし、DマップとシフトされるDマップとの間の差をとることによって、D2マップの最大値が、正の場合、境界146の一部を空間的に規定するように、位置差又は「D2」マップが導出される。D2マップは、マップが表示又はプリントされるときに境界の視認性を強調するために色分けされてもよい。このようにして、アブレーションが、後続するモニタリングを通じて開始されると、イメージングにおける境界146の全長は動的に規定されることができる。代わりに、フレームレートは、保護される構造148の近傍の境界146の部分のみにモニタリングを局所的に限定することによって増加されることができる。オンサイト較正の場合、すなわち異なる時間又はステージの同じ物理位置のモニタリングの場合、Bモードイメージングは、Dマップのコンポーネント弾性マップを空間的にレジストレーションするために使用される。アブレーション前のいくつかの2D Bモード画像(又は3D画像)は、表示されるランドマーク(特に、タイン144)で撮られる。アブレーション中又はアブレーション後にとられるBモード画像は、(強い加熱ゾーンの外側の)近接場におけるRFデータの最良のマッチングのために、プレアブレーション画像と(例えば、相互相関を介して)比較される。Bモード画像は、トラッキングビームから単純に形成されることもできるし、弾性イメージングのための背景画像として追加されることもできる。他方で、組織模倣ファントムを使用するオフサイト較正は、互いに異なる弾性マップを空間的にレジストレーションするためにBモードイメージングを使用せずにモニタリングすることを可能にする。オンサイトモニタリングの場合、本発明者らは、D-マップが、B-モードベースのレジストレーションの余分なステップさえ必要とせずに、一般に二つの構成マップの僅かな空間的ミスマッチに対してロバストであることを見つけた。
【0036】
オフサイト弾性マップ較正は、
図2の例に見られるように、組織模倣ファントム204を使用する。ファントム204が構成されている材料は、 "(H)" シンボル206によって
図2に表されるように均質である。ファントムの特性は、目標器官の正常組織の特性と類似するように設計されている。エラストグラフィ装置100は、アブレーション装置102を除いて、続く臨床プロシージャにおいて関心媒体(MOI)208に適用されるように、ファントム204上に同じプッシング及びトラッキングシーケンスを適用する。
【0037】
したがって、ファントム204は、MOI208を使用して実行されるべきイメージングのシミュレーションを提供する。
【0038】
ファントム204上のモニタリングからの結果をMOI208上のモニタリングからの結果と比較することによって、モニタリングからの超音波フィールド効果(「UFE」)は取り除かれることができる。プッシュビームはその焦点において狭いが、近視野方向及び遠視野方向に徐々に広がる。理想的には、剪断波は、(プッシング方向に平行)各トラッキング方向に沿う異なる深度におけるすべてのトラッキング位置に同時に到達するように、外向きの円筒波のような形状にされるべきである。超音波ビームは、理想的には「狭い」シリンダのように形成されていないので、不完全な剪断波源、すなわちプッシングビームの効果は、補正又は補償を保証する。この歪曲効果は、取り消されるUFEの主要な部分である。
【0039】
硬い医療器具の存在によって引き起こされる剪断波の影響における歪みを更になくすために、ファントム204は、一つ又はそれより多くのタイン118を備え、臨床治療計画として位置付けられ、展開される。ファントム204は、MOI208が配置されている体器官216と同じ実質212で形成される。 RFAの場合、体器官は、多くの場合、肝臓又は体組織220内の他の器官である。矢印224及びMOI208の上の点線アウトラインは、時間順を表しており、ファントム204は、臨床アブレーションプロシージャ中の動的モニタリングにおいて後に使用される情報を集めるために、最初にモニタリングされる。
【0040】
図2のファントム204の下に描かれているように、それぞれの弾性マップ228、すなわち基準弾性マップが形成されている。それは"ファントム"を表す"P"でラベル付けされている(A
P)。基準弾性マップ228は、それらが「オフサイト」モニタリング、すなわちファントム204から導出されたことを除いて、上述のように、せん断波伝播遅延162である弾性値236のアレイ232を規定する。臨床モニタリングのファントムベースの較正によって取り消される影響により、「等しくない」サインによって表されるように、弾性値240は異なる。
【0041】
図2のMOI208の下に描かれているように、それぞれの弾性マップ、すなわち予備弾性マップ244が形成されている。
【0042】
較正弾性マップ248は、基準及び予備マップ228, 244マップから計算されるDマップである。
【0043】
RFAの代わりに、HIFUがアブレーション法であってもよいことは留意される。これはHIFUビーム252によって
図2に示されている。ファントム256内には、熱アブレーション装置は必要ない。この場合、ファントム内に存在する熱アブレーション装置を除いて均質ではないが、ファントム256は均質である。
【0044】
代わりに、基準マップ228は、ファントムを用いて得られた実験結果に対して較正されるモデル上の数値シミュレーションの周知の方法によって得られることができる。Patmeriらの米国特許第8118744号、表1の前後のパラグラフ、 Cloutierらの米国特許公開第2001/0130660号、実施例1; McAleaveyの米国特許公開第2014/0180091号、段落[0074] 参照。数値シミュレーションのこの場合、基準媒体はMOI208でなく、MOI208に位置されない。
【0045】
一般的に基準マップに関して、オンサイトであろうとオフサイトであろうと、それは(硬い腫瘍又は他の硬い構造の外側の)小さな不均質性を有する正常な(アブレーションされていない)体組織を表す。小さな不均質性は、(アブレーションされる組織又は硬い腫瘍の大きな効果と比較して)剪断波伝播時間の変化に対して比較的小さな効果を有し、大部分は無視されることができる。
【0046】
図3は、弾性マップ較正及びユーザへの弾性マップの提示の例に関連する。
【0047】
オンサイト較正に関して、多数の弾性マップは時系列に形成される。何れかのエネルギー印加に先行し、又は何れかのアブレーションに先行し得る第1のマップは、基準マップ304としての役割を果たす。基準マップ304から、アブレーションの後のステージにおける次の弾性マップ308が減算される。これは、プロシージャの他のステージでの弾性に対するアブレーションプロシージャの一つのステージにおける弾性のそれぞれのメトリック316として、遅延差のアレイを有する第1のD-マップ312をもたらす。基準マップ304は、エネルギー印加が完了されるステージを表す予備マップ320から同様に減算される。減算は、プロシージャの他のステージでの弾性に対するアブレーションプロシージャの一つのステージでの弾性のメトリック328のそれぞれのアレイを有する第2のD-マップ324をもたらす。そのようなDマップ312,324、又はアブレーションの介入ステージのDマップのいずれにおいても、超音波フィールド効果(UFE)332及び剛性器具歪み(SID)336は、発生した差分によって有利に緩和または除去され、緩和/除去はクロスアウトによって
図3に示されている。 さらなる利点として、既存の不均質性(PEI)338も緩和又は排除される。 Dマップ312,324は、アブレーションをモニタリングする際に、ダイナミックディスプレイ又はプリントアウトとして、又は現在のBモード画像に対するオーバーレイ又は並置として有用である。第2のD-マップ324の破線の区分340は、必ずしも提示されているわけではないが、例えば、色分けが、アブレーションされる組織境界146の部分を示唆する箇所を表す。先のマップ312における破線の区分341は、
図3にも示されている。
【0048】
代わりに又は追加的に、一つ又はそれより多くのDマップ312,324から、それぞれのD2マップが形成され、ユーザに提示されることができる。
【0049】
他の改良として、ポストアブレーションをトラッキングし続けることによって、ポストエネルギー印加熱効果はDマップ312,324又はD2マップに組み込まれることができる。アブレーションのためのエネルギー源を切断した後しばらくの間に形成されるマップ342は、区分340を実線344として保持する。破線区分346は、前の破線区分340に対応するが、ポストアブレーションエネルギー源印加期間に発生したアブレーションゾーンのわずかな膨張を示す。他の実線348は、先の破線の区分341を保持する。実線344,348のいずれかは、オーバーレイグラフィックとしてユーザに提示されてもよい。代わりに、プログレッシブマップの統合は、フレームのループとして視覚的に表されることができ、各フレームは、次のステージのDマップ又はD2マップを示す。プログレッシブマップ又は実線344,348は、アブレーション境界拡張の範囲を推定する際に臨床医に対する視覚的補助として、当時のアブレーション時間又は当時のアブレーションステージの他のインジケータで注釈を付けることができる。
【0050】
代わりに又は更に、ボーダー340の位置の自動トラッキングが行われることができる。臨床医は、断続的なリアルタイムBモードイメージングにおいて、境界340と、臨床医によって自動的に識別されるか、又は以前に識別されているクリティカルな構造148との間の距離を、聴覚的に又はオンスクリーンメッセージによって継続的に知らされてもよい。クリティカル構造近接閾値が満たされる場合、アブレーション装置102による熱生成は、アブレーションをモニタリングするマイクロプロセッサ112によって自動的に停止されてもよい。境界からクリティカル構造までの距離は、ポストエネルギー印加熱効果を考慮することによって、すなわち限定される時間の間、境界146の継続的な拡張をモニタリングすることによって、ポスト熱生成と決定され続けることができる。
【0051】
オフサイト弾性マップ較正の実行では、類似のマッピングが適用される。弾性マップ349は、アブレーションプロシージャの異なるステージに対して形成される。オンサイトマップ312,324,342は、オフサイトマップ350,352,354に対応する。オンサイト区分340,341,346は、オフサイト区分356,358,366に対応する。オンサイト区分実線344,348は、オフサイト実線362,364に対応する。
【0052】
オフサイト較正に関して動作的に、アブレーションの対象となる体器官216が選択される(メインルーチン400、ステップS402)。選択される臓器216の実質212をシミュレーションする均質な組織模倣ファントム204が作成される(ステップS404)。超音波イメージングにおいて肝臓組織をシミュレーションするために使用されるファントムの材料の例は、COMPUTER IMAGING REFERENCE SYSTEMS,INCのZERDINE
TMである。これは、音速及び減衰係数の点で固体弾性軟組織模倣材料である。 http://www.cirsinc.com/products/new/78/ultrasound-prostate-training-phantom/?details=specs参照。 Ricketsらの米国特許公開第2005/0054930号、
図6(a)-6(c):肝臓ファントムを用いた音波エラストグラフィ画像も参照され、Madsenらの「組織模倣エラストグラフィファントム」と題される米国特許第7,462,488号も参照される(その全体の開示は参照により本明細書に組み込まれる)。これらの準備ステージの後、又は
図4に「A」として示されるように、オンサイト較正のためのエントリポイントとして、アブレーションニードル114は臨床治療深さまでファントム204内に挿入される(ステップS408)。ここでは、RFAは臨床プロシージャであり、アブレーションニードルが利用されることが仮定される。タイン118が展開される(ステップS410)。ビームフォーマ123内の送信機能は、目標プッシュ位置にフォーカスされる(ステップS412)。プッシュパルス128が剪断波を生成するために印加される(ステップS416)。ビームフォーマ123を介した送受信ビームフォーミングは、現在のAライン143の取得のために調整される(ステップS420)。トラッキングパルス136,138が送出される(ステップS422)。 Aライン143が取得される(ステップS424)。他のAライン143が取得される場合(ステップS426)、Aライン取得ステップS420に戻る。一方、他のAライン143は取得されない(ステップS426)が、別のプッシュパルス128が放出される(ステップS430)場合、プッシュフォーカスステップS412に戻る。そうでない場合、送出すべき更なるプッシュパルス128がない場合(ステップS430)、モニタリングは完了する。この例では、シリアルビームフォーミングが引用されているが、代わりにトラッキングはマルチラインビームフォーマを使用して並列に行われてもよい。上述したように、より経済的な超音波システムのシリアル受信ビームフォーミング及び疎な並列処理は、上で提案された上記の効率を考慮して実現可能である。
【0053】
オンサイトモード又は実施において、処理は、プッシングS432、トラッキングS434、及びBモード画像の取得S436の間で、
図4の反対方向の矢印404,408で表されるように交互に行われる。
【0054】
メインルーチン400と同時に、
図5に示されている弾性マップ形成ルーチン510に従って、トラッキングデータが利用可能である場合(ステップS502)、処理は第一のトラッキング位置を指す(ステップS504)。 TTPが計算され、又は記憶装置から検索される(ステップS506)。現在の予備弾性マップを形成するために処理するための次のトラッキング位置がある場合(ステップS508)、TTP計算/検索ステップS506に戻る。そうでなければ、現在の予備弾性マップを形成するための更なるトラッキング位置が存在しない場合(ステップS508)及びアブレーションモニタリングが継続される場合(ステップS510)、ステップS502に戻る。
【0055】
ここでもメインルーチン400と同時に、Dモード形成ルーチン520が実行される。予備弾性マップ244,308,320及びそれぞれの基準弾性マップ228,304が利用可能である場合(ステップS518)、処理はモード又は実施がオフサイトであるかに依存する(ステップS520)。オフサイトである場合(ステップS520)、基準マップと予備マップとに基づくトラッキングデータから形成されるそれぞれのBモード画像は、基準及び予備マップを空間的に共レジストレーションするため、近接場における最良のマッチのために相互相関される(ステップS522)。予備マップ244,308,320は、Dマップを形成するために、基準マップ228,304から減算される(ステップS524)。各トラッキング深度、すなわちDマップの行における最大の正の値は、光強調表示又は動的な提示における他の識別のためにマークされることができる。アブレーションモニタリングが継続する場合(ステップS526)、マップ可否チェックステップS518に戻る。
【0056】
マップ提示ルーチン530も同時に実行される。 Dマップが利用可能になると(ステップS528)、処理はD2マップがそれから形成されるかに依存する(ステップS530)。 D-2マップが作成される場合(ステップS530)、D-2マップは導出される(ステップS532)。いずれの場合でも、アブレーションされる組織境界146は空間的に規定される(ステップS534)。保護される構造148への近接性がチェックされる(ステップS536)。近接度が所定の閾値未満である場合(ステップS536)、ユーザは通知される(ステップS538)。いずれの場合でも、Dマップ及び/又はD2マップは、アブレーションされる組織の現在の境界146の何れかの光強調表示又は識別(ステップS540)と共に、表示又はプリントされる。一連の一つ又はそれより多くの時間的に前のステージマップが提示される場合(ステップS542)、処理は、ステージがスクリーングラフィックオーバレイとして提示されるかに依存する(ステップS544)。ステージがスクリーングラフィックオーバレイとして提示される場合(ステップS544)、オーバレイはスクリーンに送られる(ステップS546)。そうでなく、ステージがスクリーングラフィックオーバレイとして提示されない場合(ステップS544)、前のステージのDマップ/ D-2マップのループがスクリーン上に提示される(ステップS548)。オフセットDマップが表示される場合、使用可能になったばかりのDマップは1つのAラインだけ横方向にオフセットされ、Dマップとそのオフセットとの差がとられ、結果又は「D2」マップは、視覚的に提示される。時間的に前のステージマップが提示されない場合(ステップS542)、又はステップS546若しくはS548のいずれかの終了時の場合、処理は、アブレーショントラッキングが完了したかに依存する(ステップS550)。アブレーショントラッキングが完了していない場合(ステップS550)、処理はステップS528に分岐する。
【0057】
関心媒体は、超音波エラストグラフィイメージングに従ってインテロゲートされる。予備弾性 - 空間マップが形成される。このマップは、異なる弾性値のアレイを有する基準弾性 - 空間マップに対して較正される。基準マップは、基準媒体の超音波剪断波イメージングを反映するように形成される。基準媒体は、関心媒体ではなく、そこに位置しておらず、均質であってもよい。媒体中を伝播している剪断波は、媒体をインテロゲートすることによってトラッキングされる。アブレーションされる組織境界の反対側のトラッキング位置から、媒体中の剪断波及び他の剪断波の伝播遅延が測定される。 二つの剪断波は、それぞれ別個に送出される異なるプッシュから生じる。プロセッサは、二つの遅延の関数に基づいて、境界が二つの位置の間で交差することを決定する。較正されるマップは動的に更新され、ポストアブレーション境界拡張及び時間注釈付きの前のステージを含むことができる。
【0058】
本発明は、図面及び上述の記載において詳細に図示されると共に記載されているが、このような図面及び記載は例示的であり、限定的なものでないことは考慮されるべきであり、本発明は開示の実施例に限定されるものではない。
【0059】
例えば、小さい、深いアブレーションゾーンのリアルタイムのモニタリングは、保護される構造体に局所的な部分だけではなく、2次元又は3次元の境界全体をモニタリングすることを伴う。
【0060】
開示の実施例に対する他のバリエーションは、図面、開示、及び従属請求項の検討から特許請求の範囲に記載の発明を実施する当業者によって理解され得ると共にもたらされ得る。クレームにおいて、"有する"という語は他の要素若しくはステップを除外せず、不定冠詞"a"若しくは"an"は複数を除外しない。「例示的」という言葉は、本明細書では、「例、事例又は例示として役立つ」を意味するために使用される。 「例示的」と記載される実施形態は、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではなく、及び/又は他の実施形態から特徴を組み込むことを排除するものではない。請求項の参照番号は、これらの請求項の保護範囲を限定するものではない。
【0061】
コンピュータプログラムは、光記憶媒体又は固体媒体などの適切なコンピュータ可読媒体上に一時的に、又はより長い期間にわたって格納することができる。このような媒体は、一時的で伝播する信号ではないという意味でのみ非一時的であるが、レジスタメモリ、プロセッサキャッシュ及びRAMのようなコンピュータ可読媒体の他の形態を含む。
【0062】
単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを示すものではない。