(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
飛しょう体の運用においては、ターゲット接近時に終末誘導の高機動性を確保する手段として、ロケットモータをマルチパルス化して飛しょう体を再加速する方法と、スラスタにより飛しょう体の軌道修正を行う方法とを同時に求められる場合がある。
【0003】
ここで、スラスタとは、燃焼ガス噴射孔を有するノズルと、ノズルに対し燃焼ガスを遮断または供給する駆動部とを備え、ノズルは任意の方向に複数個配置されており、燃焼ガスを任意のノズルから任意の流量噴射することにより機体の軌道修正や姿勢制御を行う推進器である。なお、スラスタを飛しょう体に搭載する形態としては、ガスジェネレータと呼ばれる燃焼ガス発生器に取り付けて搭載する形態と、ロケットモータに直接取り付けて搭載する形態の2形態(仮に前者をスラスタ分離型、後者をスラスタ非分離型と呼ぶ)が考えられる。
【0004】
上記に関連して、特許文献1(特許第4719182号)には、2パルスロケットモータが開示されている。この2パルスロケットモータは、圧力容器の内周面に装填された第2推進薬と、第2推進薬の端面に配置された第2点火装置と、第2推進薬の初期燃焼面全体と第2点火装置を覆う隔膜と、初期燃焼面全体と第2点火装置を覆う隔膜の全体を覆うように装填された第1推進薬とを備える。第1推進薬及び第2推進薬は、共に内面燃焼型または内端面燃焼型(ここで、内端面燃焼型とは、内面燃焼と端面燃焼とが併用される燃焼型を意味する。)の推進薬形状である。隔膜は、前記第2推進薬の内周面を覆う内側隔膜と第2推進薬の後面を覆う後側隔膜とにより構成される。後側隔膜と内側隔膜が会合する端部は、全周囲に亘って接合されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2013-24034号)には、燃焼ガス供給制御機構が開示されている。この燃焼ガス供給制御機構は、スラスタ非分離型のマルチパルスロケットモータ等において、必要なタイミングに燃焼ガスを所定の燃焼ガス噴射孔へ供給する機構であり、圧力容器と、圧力容器の内部に配置され第1段パルス時に燃焼する第1推進薬と、圧力容器の内部に配置され第1段パルスに続く第2段パルス時に燃焼する第2推進薬と、圧力容器の前方に取り付けられ燃焼ガス噴射孔を有する前部鏡板と、圧力容器の後方に取り付けられ、燃焼ガス噴射孔を有する後部鏡板と、を備えた燃焼ガス発生器において、第1段パルス時に第1推進薬の燃焼ガスが前部鏡板の燃焼ガス噴射孔に流入することを遮断し、第2段パルス時に第2推進薬の燃焼ガスを前部鏡板の燃焼ガス噴射孔に供給する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の2パルスロケットモータによれば、ターゲット接近時に飛しょう体を再加速することにより終末誘導時の高機動性を確保することができる。また、特許文献2に記載の燃焼ガス供給制御機構を備えた2パルスロケットモータによれば、ターゲット接近時に飛しょう体を再加速するとともにスラスタにより飛しょう体の軌道修正を行うことができ、終末誘導時に高性能な制御を行うことができる。一方で、スラスタを分離型にしてガスジェネレータの2パルス化を実現できれば、2パルスロケットモータと併用することにより、ロケットモータのパルス間やパルス発生時、また、ロケットモータの燃焼終了後にスラスタにより姿勢制御や軌道修正を行うことができ、終末誘導時に高性能な制御を行えるだけでなく、飛しょう体の運用領域(射程、高度)も拡大することができる。
【0008】
スラスタ分離型を採用する場合、ガスジェネレータとロケットモータとの併用により圧力容器を2つ持つことになるため、構造重量や寸法が大きくなり飛しょう体の加速性能が悪くなる。また、スラスタ分離型を採用して飛しょう体
の運用領域(射程、高度)を拡大するためには、空気の薄い高高度において長時間小さな推力で飛しょう体の姿勢制御を行い、ターゲット接近時に短時間大きな推力で飛しょう体を再加速する制御が望ましいが、シングルパルスのガスジェネレータを用いてのスラスタのノズルの開度制御だけでその両極端な推力パターンを実現することは困難であり、ガスジェネレータを2パルス化してそれぞれのスラストパターンに適した形状や燃焼特性を有する推進薬を装填する必要がある。
【0009】
本発明の目的は、コンパクトな構造で長時間小推力と短時間大推力の両極端な推力パターンを実現できる2パルスガスジェネレータを提供することにある。
【0010】
この発明のこれらの目的とそれ以外の目的と利益とは以下の説明と添付図面とによって容易に確認することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0012】
本発明の1つの観点において、ガスジェネレータ(1)は、圧力容器(2)と、外側推進薬(4)と、内側推進薬(3)と、隔膜(5)とを備える。前記外側推進薬(4)は、前記圧力容器(2)内に配置され、筒状である。前記内側推進薬(3)は、前記外側推進薬(4)の内側に配置され、柱状である。前記隔膜(5)は、前記外側推進薬(4)と前記内側推進薬(3)とを隔離する。また、前記内側推進薬(3)は、前記燃焼空間(6)に面する前方側の第1端面すなわち前方端面(F1)と側面(F2)とを備える。前記内側推進薬(3)の前記側面(F2)は、前記燃焼空間(6)から隔離されている。
【0013】
上記ガスジェネレータ(1)において、前記内側推進薬(3)の前記側面(F2)の全体が、前記隔膜(5)によって覆われていてもよい。
【0014】
上記ガスジェネレータ(1)において、前記内側推進薬(3)は、前記外側推進薬(4)よりも後方側に突出する突出部(32)を備えていてもよい。
【0015】
上記ガスジェネレータ(1)において、前記隔膜(5)は、第1隔膜(52)と第2隔膜(54)とを備えていてもよい。前記第1隔膜(52)は、前記外側推進薬(4)の前方端面(F4)と接してもよい。前記第2隔膜(54)は、脆弱部(56)を介して前記第1隔膜(52)と接続されてもよい。また、前記第2隔膜(54)は、前記外側推進薬(4)の内周面(F5)と接してもよい。
【0016】
上記ガスジェネレータ(1)において、前記第2隔膜(54)は、前記外側推進薬(4)の前記前方端面(F4)及び前記内周面(F5)に接してもよい。また、前記脆弱部(56)は、前記外側推進薬(4)の前記前方端面(F4)に面して配置されてもよい。前記第1隔膜と前記第2隔膜が会合する端部は、全周囲に亘って接合されていてもよい。
【0017】
上記ガスジェネレータ(1)において、前記外側推進薬(4)は、前記内側推進薬(3)よりも燃焼速度の速い推進薬であってもよい。
【0018】
上記ガスジェネレータ(1)において、前記内側推進薬に点火する第1点火装置(7)と、前記外側推進薬に点火する第2点火装置(8)とを備えてもよい。前記第2点火装置(8)は、エネルギー伝達部(840、88、860)を備えてもよい。前記エネルギー伝達部(840、88、860)は、前記外側推進薬(4)の内周面(F5)にエネルギーを伝達するように構成されてもよい。
【0019】
本発明の他の1つの観点において、ガスジェネレータの動作方法は、上記段落のいずれかに記載のガスジェネレータの動作方法である。ガスジェネレータの動作方法は、前記内側推進薬(3)の前記前方端面(F1)に着火するステップと、前記内側推進薬(3)の側面燃焼を防止しつつ、前記内側推進薬(3)の端面燃焼を進行させるステップと、前記外側推進薬(4)に着火するステップと、前記隔膜(5)を破断させるステップと、前記外側推進薬(4)の内周面燃焼と、前記外側推進薬(4)の端面燃焼とを同時進行させるステップとを備える。
【0020】
本発明の他の1つの観点において、ガスジェネレータの動作方法は、上記段落のいずれかに記載のガスジェネレータの動作方法である。ガスジェネレータの動作方法は、前記内側推進薬(3)の前記前方端面(F1)に着火するステップと、前記内側推進薬(3)の側面燃焼を防止しつつ、前記内側推進薬(3)の端面燃焼を進行させるステップと、前記外側推進薬(4)に着火するステップであって、前記内側推進薬(3)の前記突出部(32)の燃焼中に前記外側推進薬(4)に着火するステップと、前記隔膜(5)を破断させるステップと、前記外側推進薬(4)の内周面燃焼と、前記外側推進薬(4)の端面燃焼とを同時進行させるステップとを備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、コンパクトな構造で長時間小推力と短時間大推力の両極端な推力パターンを実現できる2パルスガスジェネレータを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、実施形態の説明を行う。
【0024】
(方向の定義)
図1、4に示されるように、ガスジェネレータ1の基軸Cに沿って、内側推進薬3から燃焼空間6に向かう方向を「第1方向」、燃焼空間6から内側推進薬3に向かう方向を「第2方向」と定義する。「第2方向」は、「第1方向」と反対の方向である。なお、本明細書において、便宜的に、「第1方向」を「前方」、「第2方向」を「後方」という。しかし、ガスジェネレータの種類等によっては、第1方向が後方であり、第2方向が前方である場合もあり得る。この場合、明細書における「前方」の表現は、「後方」に読み替えられるべきであり、明細書における「後方」の表現は、「前方」に読み替えられるべきである。
【0025】
(ガスジェネレータの概略構成)
図1は、実施形態に係るガスジェネレータを示す概略断面図である。
図1は、推進薬の燃焼前の状態を示す。
【0026】
図1を参照して、ガスジェネレータの概略構成について説明する。本実施形態において、ガスジェネレータは、2パルスガスジェネレータ1である。2パルスガスジェネレータ1は、圧力容器2、内側推進薬3、外側推進薬4、隔膜5、及び、燃焼空間6を有している。
【0027】
圧力容器2内には、内側推進薬3、外側推進薬4、隔膜5、及び、燃焼空間6が配置される。外側推進薬4の形状は、筒状である。筒状には、例えば、円筒形状が含まれる。内側推進薬3は、外側推進薬4の内側に配置される。内側推進薬3の形状は、柱状である。柱状には、例えば、円柱形状が含まれる。内側推進薬3は、燃焼前の状態において、前方端面F1(第1端面F1)及び側面F2を備える。外側推進薬4と内側推進薬3とは、隔膜5によって隔離されて配置されている。外側推進薬4と燃焼空間6とは、隔膜5によって隔離されている。内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)は、燃焼空間6と面している。換言すれば、内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)は、燃焼空間6と接している。他方、内側推進薬3の側面F2は、隔膜5によって覆われている。このため、内側推進薬3の側面F2は、燃焼空間6に面していない。換言すれば、内側推進薬3の側面F2は、燃焼空間6から隔離されている。
【0028】
(ガスジェネレータの動作方法の概略)
次に、
図1〜3を参照して、2パルスガスジェネレータ1の動作方法について概略説明する。
図2は、ガスジェネレータの動作手順を示すフローチャートである。第1のステップS1において、内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)に着火させる。内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)は、内側推進薬3の初期燃焼面である。第2のステップS2において、内側推進薬3の端面燃焼が進行し、燃焼ガスが生成される。なお、内側推進薬3の側面F2は、隔膜5によって覆われているため、内側推進薬3の側面燃焼は防止される。第3のステップS3において、外側推進薬4に着火させる。外側推進薬4の着火により、燃焼ガスが発生する。発生した燃焼ガスによって、隔膜5と外側推進薬4との間に空間が形成される。当該空間内の圧力は、燃焼ガスの生成に伴い上昇する。第4のステップS4において、前記空間内の圧力の上昇に起因して、隔膜5は破断する。なお、隔膜5を予め決められた位置で破断させたい場合には、隔膜5に脆弱部を設けておけばよい。
図3は、隔膜5の破断後の2パルスガスジェネレータ1を示す概略断面図である。
図3において、内側推進薬3の端面燃焼の進行に伴い、内側推進薬3の前方側の端面は、前方端面F1’となっている。隔膜5の破断後、外側推進薬4の内周面を覆っていた隔膜5は、内側(すなわち、内側推進薬3の消失によって形成された空間の側)に向かって移動又は変形する。また、外側推進薬4の前方端面を覆っていた隔離部材5は、前方側に向かって移動又は変形する。このため隔離部材5の破断後、外側推進薬4の内周面及び前方端面は、燃焼空間6に面することとなる。第5のステップにおいて、外側推進薬4は、燃焼空間6に面する内周面及び前方端面から燃焼が進行する。すなわち、第5のステップにおいては、外側推進薬4の内周面燃焼と、外側推進薬4の端面燃焼とが同時進行する。外側推進薬4の内周面燃焼及び端面燃焼の進行により、燃焼ガスが生成される。
【0029】
内側推進薬3の燃焼は、端面燃焼である。端面燃焼は、端面燃焼と側面燃焼とが同時進行する場合と比較して、燃焼面積が小さく、燃焼時間が長い。このため、内側推進薬3の燃焼は、低推力で長期間の燃焼である。これに対し、外側推進薬4の燃焼は、内周面燃焼及び端面燃焼である。内周面燃焼及び端面燃焼は、端面燃焼単独の場合と比較して、燃焼面積が大きく、燃焼時間が短い。このため、外側推進薬4の燃焼は、高推力で短時間の燃焼である。以上のとおり、本実施形態のガスジェネレータ及びガスジェネレータの動作方法によれば、低推力長期間の第1パルスと、高推力短時間の第2パルスとを実現することができる。また、本実施形態では、外側推進薬4の内側に内側推進薬3が配置されているので、ガスジェネレータの大きさをコンパクトにすることが可能である。さらに、隔膜5の破断後、外側推進薬4の内周面を覆っていた隔膜5は、内側推進薬3の消失によって形成された空間の側に移動又は変形するため、隔膜5が、外側推進薬4の内周面燃焼の邪魔になることがない。
【0030】
(ガスジェネレータの詳細構成)
図4は、実施形態に係るガスジェネレータを示す概略断面図である。
図4は、推進薬の燃焼前の状態を示す。
【0031】
図1で説明した部材については、
図4において、同じ図番を用いている。すなわち、
図4における2パルスガスジェネレータ1、圧力容器2、内側推進薬3、外側推進薬4、隔膜5、燃焼空間6、燃焼前の内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)、内側推進薬3の側面F2、基軸Cは、
図1における2パルスガスジェネレータ1、圧力容器2、内側推進薬3、外側推進薬4、隔膜5、燃焼空間6、燃焼前の内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)、内側推進薬3の側面F2、基軸Cと、同じ部材である。
【0032】
(圧力容器)
圧力容器2は、容器部22及び蓋部24を含む。容器部22及び蓋部24は、ボルト26によって連結される。容器部22、蓋部24、及び、ボルト26は、内側推進薬3及び外側推進薬4の燃焼時に発生する圧力に耐えることのできるような材料により、構成される。
【0033】
容器部22は、概略円筒形状の側壁と、底部とを含む。容器部22の底部の形状は、部分球殻形状としてもよい。容器部22の底部の形状を部分球殻形状とすることで、圧力容器2の耐圧性能が向上する。ここで、部分球殻形状とは、球殻を平面で切断してできる2つの部分球殻のうちの小さい方の部分球殻の形状、及び、当該小さい方の部分球殻の形状に類似する形状と定義される。容器部22の底部の内側に、金属板23を設けてもよい。当該金属板23に隔膜5を接着すれば、隔膜5を安定的に保持することができる。
【0034】
蓋部24の形状は、部分球殻形状としてもよい。蓋部24の形状を部分球殻形状とすることで、蓋部24の耐圧性能が向上する。蓋部24の内面には、蓋部24の耐熱保護のために保護膜25を配置してもよい。保護膜25の材料としては、例えば、隔膜5と同じ材料を用いることができる。また、蓋部24には、他の装置(後述のスラスタ又はノズル部等)と接続するための第1接続部材27が設けられている。蓋部24、保護膜25、及び、第1接続部材27には、内側推進薬3及び外側推進薬4の燃焼によって生成される燃焼ガスを圧力容器2の外部に放出するために、1又は複数の燃焼ガス噴射孔9が設けられている。
【0035】
なお、蓋部24、及び、容器部22の底部の形状は、設計上の制約等に応じて、部分球殻形状以外の形状を採用することも可能である。
【0036】
(内側推進薬)
内側推進薬3の形状は、柱状である。内側推進薬3の形状は、例えば、中実の柱状である。ここで、中実には、厳密な意味での中実の他に、実質的に中実であることが包含される。例えば、内側推進薬3の内部に多少のボイドが含まれていたとしても、内側推進薬3の主たる燃焼モードが端面燃焼であると言える場合には、当該内側推進薬3の形状は、中実形状に属するものとする。なお、内側推進薬3の形状として、中実の円柱形状を採用した場合には、内側推進薬3の側面F2を覆う隔膜5の面積を最小化することができる。内側推進薬3は、前方端面F1(第1端面F1)と側面F2の他に、後方側の端面である後方端面F3(第2端面F3)を備える。
【0037】
内側推進薬3の側面F2及び後方端面F3は、隔膜5の内面に接着され、隔膜5を介して、外側推進薬4及び金属板23によって支持される。内側推進薬3と隔膜5との接着は、接着剤による接着であってもよい。
【0038】
内側推進薬3に関し、長秒時の燃焼(すなわち、相対的に長い時間の燃焼)を可能とするために、内側推進薬に添加する添加剤等の種類又は量が調整されていてもよい。
【0039】
(外側推進薬)
外側推進薬4の形状は、筒状である。筒状には、円筒状が含まれる。外側推進薬4は、燃焼前の状態において、前方端面F4、内周面F5、及び、後方端面F6を備える。外側推進薬4は、その外周面において、圧力容器2によって支持されている。例えば、外側推進薬4の外周面は、接着剤を介して、圧力容器2の内面に接着されている。外側推進薬4の前方端面F4及び内周面F5は、隔膜5の外面に接着している。外側推進薬4と隔膜5との接着は、接着剤による接着であってもよい。
【0040】
外側推進薬4に関し、短秒時の燃焼(すなわち、相対的に短い時間の燃焼)を可能とするために、外側推進薬に添加する添加剤等の種類又は量が調整されていてもよい。
【0041】
(隔膜)
隔膜5は、外側推進薬4及び後述の第2点火装置8の耐熱保護などを目的として設けられている。隔膜5の材料としては、例えば、弾性体が用いられる。例えば、隔膜5として、EPDMゴム、シリコーンゴム、及びケブラ繊維などの無機繊維を含有するシリコーンゴムなどが用いられる。隔膜5として、弾性体を用いることにより、隔膜5の破断後の隔膜5の変形が容易となる。
【0042】
隔膜5は、第1隔膜52及び第2隔膜54を備えるようにしてもよい。第1隔膜52は、外側推進薬4の前方端面F4に接して配置される。第2隔膜54は、外側推進薬4の前方端面F4及び内周面F5に接して配置される。第1隔膜52と第2隔膜54とは、脆弱部56を介して接続される。脆弱部56は、第1隔膜52と第2隔膜54とを接着する接着剤により構成されてもよいし、切欠き溝等によって構成されてもよい。代替的に、あるいは、付加的に、脆弱部56は、接着剤による接着と切欠き溝との併用によって構成されてもよいし、接着剤に切欠きを入れることによって構成されてもよい。脆弱部56は、燃焼空間6に面する位置に配置される。また、脆弱部56は、燃焼空間6に面するとともに、第1隔膜52と第2隔膜54との境界に配置される環状の脆弱部であってもよい。第1隔膜52と第2隔膜54とが会合する端部は、全周囲に亘って接合されている。そして、全周囲に亘っての接合は、環状の脆弱部を介した接合であってもよい。なお、
図4に示される実施形態では、脆弱部56は、外側推進薬4の前方端面F4に面して配置されているが、代替的に、外側推進薬4の内周面F5に面して配置されてもよい。また、
図4に示される実施形態では、内側推進薬3の側面F2の全体、及び、後方端面F3の全体が第2隔膜54によって覆われている。
【0043】
(燃焼空間)
燃焼空間6は、内側推進薬3の燃焼前の状態では、蓋部24(又は、保護膜25)と、隔膜5と、内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)とによって規定される空間である。内側推進薬3が端面燃焼するにつれて、内側推進薬3の第1端面F1(すなわち、前方端面)は後方に後退する。この場合、燃焼空間6は、蓋部24(又は、保護膜25)と、隔膜5と、内側推進薬3の前方端面F1’(必要であれば、
図10を参照。)と、によって規定される。外側推進薬4への着火により隔膜5が脆弱部56において破断された後は、内側推進薬3の前方端面F1’に加えて、外側推進薬4の前方端面F4及び内周面F5が、燃焼空間6に対して露出することとなる。外側推進薬4の前方端面F4及び内周面F5は、外側推進薬4の初期燃焼面である。
【0044】
(内側推進薬と外側推進薬の位置関係)
内側推進薬3は、外側推進薬4よりも内側に配置される。すなわち、内側推進薬3の外側側面である側面F2と基軸Cとの間の距離は、外側推進薬4の内周面F5と基軸Cとの間の距離より小さい。内側推進薬3が、外側推進薬4よりも内側に配置されることによって、2パルスガスジェネレータ1のサイズをコンパクトにすることができる。
【0045】
内側推進薬3は、オーバーラップ部30と突出部32とを備える。内側推進薬3と外側推進薬4とは、オーバーラップ部30において、基軸C方向に沿ってオーバーラップしている。内側推進薬3と外側推進薬4とのオーバーラップ長さは、L1である。内側推進薬3のオーバーラップ部30の燃焼が終了し、かつ、隔膜5の脆弱部56が破断されると、第2隔膜54は内側に向かって移動又は変形可能となる。第2隔膜54が、内側に向かって移動又は変形することにより、外側推進薬4の内周面F5は、燃焼空間6に面することとなる。
【0046】
内側推進薬3の突出部32は、外側推進薬4よりも後方側に突出する。後方とは、燃焼空間6から内側推進薬3に向かう方向、すなわち、内側推進薬3の燃焼が進行する方向を意味する。突出部32の基軸C方向に沿った長さは、L2である。換言すれば、内側推進薬3の後方端面F3(第2端面)F3は、外側推進薬4の後方端面F6よりも、距離L2だけ後方側に位置している。突出部32が存在することにより、内側推進薬3の突出部32の燃焼中に、外側推進薬4に着火させて脆弱部56を破断させ、隔膜5を内側に向かって移動又は変形させることが可能となる。このため、内側推進薬3の燃焼による燃焼ガス生成中に、外側推進薬4の燃焼による燃焼ガスを生成させることができ、燃焼ガス生成パターン設計の自由度が向上する。
【0047】
なお、オーバーラップ部30の基軸Cに垂直な断面の断面積は、基軸Cに沿って一定としてもよい。オーバーラップ部30の断面積を基軸Cに沿って一定とすることで、オーバーラップ部30の燃焼時の推力を一定とすることができる。また、突出部32の基軸Cに垂直な断面の断面積は、基軸Cに沿って一定としてもよい。突出部32の断面積を基軸Cに沿って一定とすることで、突出部32の燃焼時の推力を一定とすることができる。さらに、オーバーラップ部30の基軸Cに垂直な断面の断面積と、突出部32の基軸Cに垂直な断面の断面積とを等しくしてもよい。オーバーラップ部30の断面積と突出部32の断面積とを等しくすることで、オーバーラップ部30の燃焼時の推力と、突出部32の燃焼時の推力とを等しくすることができる。
【0048】
(第1点火装置)
第1点火装置7は、内側推進薬3を燃焼させる為のエネルギーを生成するために設けられる。第1点火装置は、2パルスガスジェネレータ1の前方側に設けられる。好ましくは、第1点火装置7は、蓋部24に取り付けられる。第1点火装置7は、基軸C上に設けられると、内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)に正対することとなり、前方端面F1(第1端面F1)への着火の観点からみて有利な配置となる。第1点火装置7としては、例えば、点火用のガスを発生させるイグモータ(パイロゲン型点火器)、レーザーダイオードなどを用いることができる。
【0049】
(第2点火装置)
第2点火装置8は、外側推進薬4を燃焼させる為のエネルギーを生成するために設けられる。
図5〜
図7に、第2点火装置の詳細を示す。
図5は、実施形態に係るガスジェネレータを示す概略断面図である。
図5は、第2点火装置8の作動によって、隔膜5が破断した後の状態を示す。なお、
図5において、第2点火装置8を構成する部材以外のいくつかの部材については、図番を省略して記載している。
図6は、
図5のA−A矢視断面図であり、
図7は、
図5のB−B矢視断面図である。
【0050】
第2点火装置8は、2パルスガスジェネレータ1の後方側に設けられる。第2点火装置8は、点火器82(例えば、点火用のガスを発生させるイグモータ、すなわち、パイロゲン型点火器)、第1リング部材84、及び、第2リング部材86を備える。第1リング部材84には、第1通路840が設けられ、第2リング部材86には、複数の第2通路860が設けられる。また、第1リング部材84と第2リング部材86との間には、環状空間88が形成される。第1通路840と、環状空間88と、第2通路860とは、点火器82で発生したエネルギーを後述の着火ポイントに伝達するエネルギー伝達部を構成する。第1リング部材84の第1通路840は、点火器82によって生成された点火用ガスを、第1リング部材84と第2リング部材86の間の環状空間88に導くように構成される。第2リング部材86は、リングの周方向に垂直な断面が、略L字形状のリング部材である。第2リング部材86の複数の第2通路860は、リングの周方向に等間隔に設けられる。そして、複数の第2通路860は、環状空間88に導かれた点火用ガスを、外側推進薬4の着火ポイントに導く。ここで、着火ポイントは、好ましくは、外側推進薬4の内周面F5である。なお、外側推進薬4の内周面F5には、外側推進薬4の後方端面F6と、外側推進薬4の内周面F5との境界部(換言すれば、会合部)が包含される。内周面F5(会合部を含む)に点火用ガスを導き、内周面F5から外側推進薬4の燃焼を開始させることによって、外側推進薬4と隔膜5との剥離が確実に行われる。なお、外側推進薬4の前記会合部は、点火用ガスの導入を促進するために、面取り等がされていてもよい。面取りに代えて、あるいは、面取りに加えて、会合部に溝を形成してもよい。
【0051】
(ガスジェネレータの動作方法の詳細)
次に、
図8〜12を参照して、2パルスガスジェネレータの動作方法について詳細説明する。
図8は、ガスジェネレータの動作手順を示すフローチャートである。また、
図9〜12は、作動中のガスジェネレータの概略断面図を示す。
【0052】
図8、9に示されるように、第1のステップS1において、第1点火装置7を作動させる。第1点火装置7により生成される点火エネルギーは、燃焼空間6中を伝播し、内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)に到達する。点火エネルギーの到達によって、内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)は、着火される。すなわち、内側推進薬3の初期燃焼面は、前方端面F1(第1端面F1)である。内側推進薬3の前方端面F1(第1端面F1)は、燃焼空間6に接しているため、第1点火装置7による着火は、円滑に行われる。
【0053】
図8、10に示されるように、第2のステップS2において、内側推進薬3の端面燃焼が進行し、燃焼ガスが生成される。端面燃焼は、概ね一定速度で進行し、内側推進薬3の前方端面F1’は、概ね一定速度で、後方側に移動することとなる。内側推進薬3の側面F2は、隔膜5によって覆われているため、内側推進薬3の側面燃焼は防止される。また、外側推進薬4は、隔膜5を介して、燃焼空間6から隔離されているため、外側推進薬4の燃焼は防止される。
【0054】
第2のステップS2において、内側推進薬3のオーバーラップ部30の燃焼終了に続いて、内側推進薬3の突出部32の端面燃焼が進行する。オーバーラップ部30及び突出部32の端面燃焼により発生する燃焼ガスは、燃焼ガス噴射孔9を介してガスジェネレータの外部に放出される。
【0055】
第2のステップS2における内側推進薬3の燃焼は、長秒時継続する(すなわち、相対的に長い時間継続する)。内側推進薬3の燃焼が、燃焼面積が相対的に小さい端面燃焼であるため、長秒時燃焼が可能となる。なお、内側推進薬3の材料を、燃焼速度の遅い推進薬とすれば、内側推進薬3の燃焼時間を、更に長期化させることが可能である。また、第2のステップにおいて、内側推進薬3の燃焼により、単位時間当たりに発生する燃焼ガスの量は、後述の外側推進薬4の燃焼により、単位時間当たりに発生する燃焼ガスの量よりも小さい(換言すれば、内側推進薬3の燃焼による推力は、外側推進薬4の燃焼による推力よりも小さい)。
【0056】
図8に示されるように、第3のステップS3において、突出部32の燃焼中に、第2点火装置8を作動させる。第2点火装置8の作動により、外側推進薬4の内周面F5に、点火用ガスが供給される。点火用ガスの供給によって、外側推進薬4の内周面F5は、着火される。外側推進薬4の着火により、燃焼ガスが発生する。発生した燃焼ガスによって、隔膜5と外側推進薬4の内周面F5との間に空間が形成される。当該空間内の圧力は、燃焼ガスの生成に伴い上昇する。
【0057】
図8、11に示されるように、第4のステップS4において、前記空間(隔膜5と外側推進薬4の内周面F5との間の空間)内の圧力の上昇に起因して、隔膜5の脆弱部56は破断する。脆弱部56の破断によって、隔膜5は、第1隔膜52と第2隔膜54とに分離される。脆弱部56の破断によって、外側推進薬4の前方端面F4及び内周面F5は、燃焼空間6に面することとなる。なお、外側推進薬4の前方端面F4及び内周面F5は、初期燃焼面として機能する。
【0058】
なお、脆弱部56を、外側推進薬4の前方端面F4に面して配置した場合には、脆弱部56を、外側推進薬4の前方端面F4と内周面F5との間のコーナー部に配置した場合と比較して、第1隔膜52の外周端から第1隔膜52の内周端までの距離が短くなる。また、脆弱部56を、外側推進薬4の前方端面F4に面して配置した場合には、脆弱部56を、外側推進薬4の内周面F5に面して配置した場合と比較して、第1隔膜52の外周端から第1隔膜52の内周端までの距離が短くなる。このため、脆弱部56の破断後に、第1隔膜52の内周端が前方に向かってバタつく場合であっても、第1隔膜52の内周端が燃焼ガス噴射孔9と干渉する等の問題が発生しにくい。また、第1隔膜52と第2隔膜54とが環状の脆弱部56を介して接合されている場合には、脆弱部56の破断後に、前記第1隔膜52は、リング形状の隔膜となる。リング形状の隔膜は、その内周端が振動すること、あるいははためくことが少ない。よって、第1隔膜52の内周端が燃焼ガス噴射孔9と干渉する等の問題が発生しにくい。
【0059】
図8、12に示されるように、第5のステップS5において、外側推進薬4の内周面燃焼と、外側推進薬4の端面燃焼とが同時進行する。また、外側推進薬4の燃焼初期においては、内側推進薬3の突出部の端面燃焼も同時進行している。すなわち、内側推進薬3の燃焼終了の前に、外側推進薬4の燃焼が開始される。このため、内側推進薬3の燃焼終了後に、一時的に燃焼ガスの発生が停止する現象(内側推進薬3の燃焼終了後に、一時的に推力が低下する現象)を防止することができる。なお、内側推進薬3の燃焼終了と、外側推進薬4の燃焼終了のタイミングは、内側推進薬3の燃焼終了が先であってもよいし、外側推進薬4の燃焼終了が先であってもよい。内側推進薬3の端面燃焼により発生する燃焼ガス、並びに、外側推進薬4の内周面燃焼及び端面燃焼により発生する燃焼ガスは、燃焼ガス噴射孔9を介してガスジェネレータの外部に放出される。
【0060】
第5のステップにおける外側推進薬4の燃焼は、短秒時継続する(すなわち、相対的に短い時間継続する)。外側推進薬4の燃焼が、燃焼面積が相対的に大きい内周面燃焼を含むため、高推力の短秒時燃焼が可能となる。なお、外側推進薬4の材料を、燃焼速度の速い推進薬とすれば、外側推進薬4の燃焼による単位時間当たりの燃焼ガス発生量、すなわち、推力を更に増加させることが可能である。
【0061】
本実施形態では、単位時間当たりの燃焼ガス生成量が長秒時にわたって概ね一定である第1パルスと、高推力を実現可能な多量の燃焼ガス生成が短秒時に行われる第2パルスとを連続して発生させることが可能な、ガスジェネレータを提供することができる。
【0062】
(ガスジェネレータの適用例)
上記で説明した実施形態のガスジェネレータは、燃焼ガス噴射装置に適用することができる。以下において、ガスジェネレータを、燃焼ガス噴射装置の一形態であるスラスタに適用した例と、燃焼ガス噴射装置の一形態であるロケットモータに適用した例とについて、説明する。
【0063】
(スラスタ)
図13は、上記で説明したガスジェネレータをスラスタに適用した例を示す概略断面図である。なお、
図13において、スラスタ部を構成する部材以外のいくつかの部材については、図番を省略して記載している。2パルスガスジェネレータ1の第1接続部材27に、スラスタ部1000が接続される。スラスタ部1000は、ガスジェネレータ1の前方側に配置される。スラスタ部1000は、燃焼ガス噴射孔9の個数に併せて複数配置されてもよい。スラスタ部1000は、例えば、基軸Cの回りに等間隔で配置される。スラスタ部1000は、各燃焼ガス噴射孔9から導入された燃焼ガスを、前後方向に対して直交する方向へ向けて噴射するように構成されている。このスラスタ部1000により、飛しょう体の姿勢制御を行うことができる。本実施形態では、2パルスガスジェネレータ1が、2段階で推進薬を燃焼させることができるので、飛しょう体の姿勢を細かく制御することができる。
【0064】
(ロケットモータ)
図14は、上記で説明したガスジェネレータをロケットモータに適用した例を示す概略断面図である。なお、
図14において、ノズル部を構成する部材以外のいくつかの部材については、図番を省略して記載している。
図14において、ロケットモータの前方が、上記で説明したガスジェネレータの後方に対応し、ロケットモータの後方が、上記で説明したガスジェネレータの前方に対応することに留意されるべきである。2パルスガスジェネレータ1の第1接続部材27にノズル部2000が接続される。ノズル部2000は、2パルスガスジェネレータ1の前方側(ロケットモータの後方側)に配置される。ノズル部2000は、燃焼ガス噴射孔9の個数に併せて複数配置されてもよい。ノズル部2000は、例えば、基軸Cの回りに等間隔で配置される。ノズル部2000は、各燃焼ガス噴射孔9から導入された燃焼ガスを、後方向に噴射するように構成されている。このように、2パルスガスジェネレータ1をロケットモータに適用すれば、2段階で推進力を得ることが可能になる。
【0065】
なお、本開示において、円筒状の用語は、厳密な意味での円筒状に限定されない。長手方向に垂直な断面形状が、概ね円又はリングである物体であれば、その物体の形状は、円筒形状に属する。また、本開示において、筒状とは、貫通孔が設けられた形状を意味する。
【0066】
本発明は上記各実施形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、各実施形態は適宜変形又は変更され得ることは明らかである。例えば、実施形態に係る2パルスガスジェネレータに、別の1パルスを付加して、3パルスガスジェネレータとすることも可能である。また、内側推進薬の形状として円柱形状を採用するのに代えて、円筒形状を採用することも可能である。この場合、円筒の内側側面の全体を内側隔膜で覆うとともに、円筒の外側側面の全体を外側隔膜によって覆うことによって、内側推進薬の側面燃焼を防止することができる。また、各実施形態で用いられる種々の技術は、技術的矛盾が生じない限り、他の実施形態にも適用可能である。