特許第6360512号(P6360512)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6360512磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク用基板の製造方法、円板状基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360512
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク用基板の製造方法、円板状基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/73 20060101AFI20180709BHJP
   G11B 5/82 20060101ALI20180709BHJP
   G11B 5/84 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G11B5/73
   G11B5/82
   G11B5/84 A
   G11B5/84 C
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-68328(P2016-68328)
(22)【出願日】2016年3月30日
(62)【分割の表示】特願2015-524129(P2015-524129)の分割
【原出願日】2014年6月27日
(65)【公開番号】特開2016-146231(P2016-146231A)
(43)【公開日】2016年8月12日
【審査請求日】2017年5月1日
(31)【優先権主張番号】特願2013-135380(P2013-135380)
(32)【優先日】2013年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】グローバル・アイピー東京特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 隆一
【審査官】 中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−157968(JP,A)
【文献】 特開2012−113801(JP,A)
【文献】 特開2004−079009(JP,A)
【文献】 特開平07−230621(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/034251(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/029857(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/73
G11B 5/82
G11B 5/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の主表面を備える磁気ディスク用基板であって、
前記基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、
前記基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、
1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、
前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下であることを特徴とする、磁気ディスク用基板。
【請求項2】
一対の主表面を備える磁気ディスク用基板であって、
前記基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、
前記基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、
1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、
前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下であり、
外周端面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.02μm以下であることを特徴とする、磁気ディスク用基板。
【請求項3】
前記磁気ディスク用基板の外周端面には、側壁面と、前記一対の主表面と当該側壁面との間に配置された一対の面取面とが形成されており、
前記主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下であり、
前記側壁面又は前記面取面の表面粗さは算術平均粗さRaで0.02μm以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載された磁気ディスク用基板。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された磁気ディスク用基板の主表面上に磁性層が形成されていることを特徴とする、磁気ディスク。
【請求項5】
円板状基板をキャリアで保持しながら、前記円板状基板の主表面を研磨する主表面研磨処理を備えた磁気ディスク用基板の製造方法であって、
前記円板状基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、
前記円板状基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、
1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、
前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下であることを特徴とする、
磁気ディスク用基板の製造方法。
【請求項6】
前記主表面研磨処理は、コロイダルシリカの遊離砥粒を用いて行われることを特徴とする、請求項5に記載された磁気ディスク用基板の製造方法。
【請求項7】
前記主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下となるように前記主表面研磨処理を行うことを特徴とする、請求項5に記載された磁気ディスク用基板の製造方法。
【請求項8】
円孔が形成された基板の外周端面を、研磨ブラシを用いて研磨する端面研磨処理を備えた円板状基板の製造方法であって、
前記端面研磨処理では、
前記円板状基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、
前記円板状基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、
1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、
前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下となるように外周端面を研磨することを特徴とする、
円板状基板の製造方法。
【請求項9】
円孔が形成された基板の少なくとも外周側端面には、側壁面と、一対の主表面と当該側壁面との間に配置された一対の面取面とが形成されており、
前記側壁面又は前記面取面の表面粗さは算術平均粗さRaで0.02μm以下となるように前記端面研磨処理を行うことを特徴とする、請求項8に記載された円板状基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク用基板の製造方法、円板状基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、パーソナルコンピュータ、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)が内蔵されている。特に、ノート型パーソナルコンピュータ等の可搬性を前提とした機器に用いられるハードディスク装置では、ガラス基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられ、磁気ディスクの面上を僅かに浮上させた磁気ヘッドで磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板として、金属基板(アルミニウム基板)等に比べて塑性変形し難い性質を持つことから、ガラス基板が好適に用いられる。
【0003】
また、ハードディスク装置における記憶容量の増大の要請を受けて、磁気記録の高密度化が図られている。例えば、磁性層における磁化方向を基板の面に対して垂直方向にする垂直磁気記録方式を用いて、磁気記録情報エリア(記録ビット)の微細化が行われている。これにより、1枚のディスク基板における記憶容量を増大させることができる。さらに、記憶容量の一層の増大化のために、磁気ヘッドの記録再生素子部をさらに突き出すことによって磁気記録層との距離を極めて短くして、情報の記録再生の精度をより高める(S/N比を向上させる)ことも行われている。なお、このような磁気ヘッドの記録再生素子部の制御はDFH(Dynamic Flying Height)制御機構と呼ばれ、この制御機構を搭載した磁気ヘッドはDFHヘッドと呼ばれている。このようなDFHヘッドと組み合わされてHDDに用いられる磁気ディスク用ガラス基板の主表面は、磁気ヘッドやそこからさらに突き出された記録再生素子部との衝突や接触を避けるために、極めて平滑な表面となるように作製されている。
【0004】
磁気ディスクには、磁気ヘッドをデータトラックに位置決めするために用いられるサーボ情報が記録されている。従来、磁気ディスクの外周側の端面(以下、「外周端面」ともいう。)の真円度を低減させると、磁気ヘッドの浮上が安定して、サーボ情報の読み取りが良好に行われ、磁気ヘッドによる読み書きが安定することが知られている。例えば、以下の特許文献1に記載の技術では、ガラス基板の外周側の端部を形成するフォーミング工程において、異なる波長の2つのうねりをそれぞれ形成する2条件によって加工を行うことが記載されている。それによって、ガラス基板の外周端面のうねりを解消して高い真円度を得ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−157968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、磁気ディスク用ガラス基板に磁気記録層を成膜して磁気ディスクを作製するときに、磁気ディスク用ガラス基板に由来すると考えられる極めて微小なガラス成分の異物が付着している場合があることがわかった。このような異物が磁気ディスク用ガラス基板に付着した状態で磁気ディスクを製造されると、その異物に起因してヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害等の不具合が生じやすくなる。
そこで、本発明は、磁気ディスク用基板を製造する過程において異物が発生することを抑制した磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク用基板の製造方法、円板状基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者は、磁気ディスク用ガラス基板を製造する過程において極めて微小なガラス成分の異物の発生原因を究明するために鋭意検討した。その結果、ガラス基板の外周端面の全周にドット状あるいはライン状のダメージが生ずる場合があり、上記異物は上記ダメージが発生したときに発生したものと推定された。なお、ガラス基板の外周端面のダメージはレーザ顕微鏡の倍率をかなり大きく設定しても発見し難い場合があり、従来想定されていたダメージより微小なものであった。
より具体的には、推定された発生原因は以下の通りである。磁気ディスク用ガラス基板を製造するときには、磁気ディスク用ガラス基板を製造するための元となる円板状のガラス基板(磁気ディスク用ガラス基板を得るための円板状ガラス基板)を、キャリアに保持させた状態でガラス基板の一対の主表面を研磨パッドに押圧して研磨する主表面研磨処理が行われる。この主表面研磨処理において、ガラス基板をキャリアへ収容させやすくするためにキャリアの内孔の径がガラス基板の外径よりも若干大きく設定されているため、研磨中においてガラス基板は、キャリア内においてキャリアに対して相対移動可能な状態となっている。そのため、ガラス基板の外周端面は、研磨中にキャリアの内孔の端面に押し当てられることになる。このとき、ガラス基板の外周端面において凹凸が深く存在する場合には、その凸部がキャリアの内孔の端面に押し当てられることで削り取られ、ガラス基板の外周端面にダメージが生ずるとともにガラス成分の微小な異物が発生すると考えられた。この発生原因は、ドット状のダメージが外周端面に発生したガラス基板について、観測されたドットの周期と、研磨前に取得したガラス基板の外周端面の輪郭線における凸部の周期が概ね一致することからも裏付けられた。
なお、外周端面のダメージは、上述した主表面研磨処理だけでなく、磁気ディスク用ガラス基板に対して成膜を行うときに磁気ディスク用ガラス基板の外周端面を把持するときに生ずる場合も考えられる。つまり、磁気ディスク用ガラス基板の外周端面において凹凸が深く残存している場合には、成膜のためにガラス基板の外周端面を治具で把持するときに、治具の押圧によって外周端面の凸部が削り取られ、ガラス成分の微小な異物が発生することも考えられる。
【0008】
ガラス基板の外周端面の真円度が小さいほど外周端面の凹凸の高さが小さくなる傾向にあるため、上記ダメージの発生は少なくなると考えられるが、発明者が鋭意研究を推し進めたところ、主表面研磨処理を行う前の時点において同じ真円度を備えた複数のガラス基板に対し、主表面研磨処理の後のガラス基板の外周端面のダメージの発生の程度が異なる場合があることがわかった。具体的には、主表面研磨処理前において、(a) 外周端部の全周に亘って深い凹凸が発生しているガラス基板、(b)外周端部の一部にのみ深い凹凸が発生しているガラス基板、および(c)外周端部に深い凹凸はないが全体的に楕円状となっているガラス基板、について、主表面研磨処理後にガラス基板の外周端面を観測したところ、(a)のガラス基板についてのみ深いドット状のダメージが認められた。さらに、真円度の測定は、上記輪郭線に対して非常に強いローパスフィルタ(例えば、1周あたりの山の数が50個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタ)を掛けたものに対して行っているため、真円度自体はガラス基板の生の輪郭線における凹凸の数や深さが測定結果に適切に反映される指標ではない。そこで、外周端面に発生するダメージの程度は、真円度の絶対値だけではなく、外周端面の輪郭線の特性にも依存すると考えられた。
上述した点を鑑み、本願発明者は、磁気ディスク用ガラス基板を得るための円板状ガラス基板が主表面研磨処理においてダメージを抑制するようにした、主表面の研磨処理を行われる前の外周端面の真円度、および外周端面の輪郭線の特性を考案し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の第1の観点は、一対の主表面を備える磁気ディスク用基板であって、前記基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、前記基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下であり、前記主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下であり、
外周端面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.02μm以下であることを特徴とする、磁気ディスク用基板である。
【0010】
前記磁気ディスク用基板の外周端面には、側壁面と、前記一対の主表面と当該側壁面との間に配置された一対の面取面とが形成されており、前記側壁面又は前記面取面の表面粗さは算術平均粗さRaで0.02μm以下であってもよい。
【0011】
本発明の第2の観点は、上記磁気ディスク用基板の主表面上に磁性層が形成されていることを特徴とする、磁気ディスクである。
【0012】
本発明の第3の観点は、円板状基板をキャリアで保持しながら、前記円板状基板の主表面を研磨する主表面研磨処理を備えた磁気ディスク用基板の製造方法であって、前記円板状基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、前記円板状基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下であることを特徴とする、磁気ディスク用基板の製造方法である。
【0013】
前記主表面研磨処理は、コロイダルシリカの遊離砥粒を用いて行われてもよい。
【0014】
前記主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下となるように前記主表面研磨処理を行ってもよい。
【0015】
本発明の第4の観点は、円孔が形成された基板の外周端面を、研磨ブラシを用いて研磨する端面研磨処理を備えた円板状基板の製造方法であって、前記端面研磨処理では、前記円板状基板の外周の真円度は1.3μm以下であり、前記円板状基板の外周の1周分の形状である第1の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第1の輪郭線の山の数を第1のピークカウント値とし、1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタを前記第1の輪郭線にかけて得られる第2の輪郭線から最小二乗法を用いて得られる基準円を求め、当該基準円より半径方向外側に突出した前記第2の輪郭線の山の数を第2のピークカウント値としたときに、前記第2のピークカウント値の前記第1のピークカウント値に対する比が0.2以下となるように外周端面を研磨することを特徴とする、円板状基板の製造方法である。
円孔が形成された基板の少なくとも外周側端面には、側壁面と、前記一対の主表面と当該側壁面との間に配置された一対の面取面とが形成されており、前記側壁面又は前記面取面の表面粗さは算術平均粗さRaで0.02μm以下となるように前記端面研磨処理を行ってもよい。
【発明の効果】
【0016】
上述した磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク用基板の製造方法、円板状基板の製造方法によれば、磁気ディスク用基板を製造する過程において異物が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の外観形状を示す図。
図1B】実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の外周側の端部の拡大断面図。
図2】ガラス基板の外周端面について、設定されるフィルタの値に応じた輪郭線を例示する図。
図3A】実施形態の研磨ブラシの構造を説明するための図。
図3B】実施形態の研磨ブラシの構造を説明するための図。
図4】実施形態において研磨ブラシを用いた外周端面の端面研磨処理を示す図。
図5】主表面研磨処理においてガラス基板がキャリアに収容されたときの状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
[磁気ディスク用ガラス基板]
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦度および基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0020】
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板に用いられるガラス材料の組成を限定するものではないが、本実施形態のガラス基板は好ましくは、必須成分として、SiO、LiO、NaO、ならびに、MgO、CaO、SrOおよびBaOからなる群から選ばれる一種以上のアルカリ土類金属酸化物を含み、MgO、CaO、SrOおよびBaOの合計含有量に対するCaOの含有量のモル比(CaO/(MgO+CaO+SrO+BaO))が0.20以下であって、ガラス転移温度が650℃以上であるアモルファスのアルミノシリケートガラスであってもよい。
また、酸化物基準の質量%で、SiO:45.60〜60%、およびAl:7〜20%、およびB:1.00〜8%未満、およびP:0.50〜7%、およびTiO:1〜15%、およびROの合計量:5〜35%(ただしRはZnおよびMg)の各成分を含有し、CaOの含有量が3.00%以下、BaOの含有量が4%以下であり、PbO成分、As成分およびSb成分およびCl、NO、SO2−、F成分を含有せず、主結晶相としてRAl、RTiO、(ただしRはZn、Mgから選択される1種類以上)から選ばれる一種以上を含有し、主結晶相の結晶粒径が0.5nm〜20nmの範囲であり、結晶化度が15%以下であり、比重が2.95以下であることを特徴とする結晶化ガラスであってもよい。
【0021】
図1Aに、実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の外観形状を示す。図1Aに示すように、本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板は、内孔2が形成された、ドーナツ型の薄板のガラス基板である。磁気ディスク用ガラス基板のサイズは問わないが、例えば、公称直径2.5インチの磁気ディスク用ガラス基板として好適である。
図1Bは、実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の外周側の端部の断面を拡大して示す図である。図1Bに示すように、磁気ディスク用ガラス基板は、一対の主表面1pと、一対の主表面1pに対して直交する方向に沿って配置された側壁面1tと、一対の主表面1pと側壁面1tとの間に配置された一対の面取面1cとを有する。図示しないが、磁気ディスク用ガラス基板の内周側の端部についても同様に、側壁面と面取面が形成されている。側壁面1tを基準として各面取面1cのなす角度(面取り角)は例えば40〜50度であり、典型的には45度である。なお、面取面は、断面視において円弧状に形成されていてもよい。
【0022】
[磁気ディスク用ガラス基板の製造方法]
以下、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について、処理毎に説明する。ただし、各処理の順番は適宜入れ替えてもよい。
【0023】
(1)板状ガラスの成形および粗研削処理
例えばフロート法によって板状ガラスを形成した後、この板状ガラスから、磁気ディスク用ガラス基板の元となる所定形状のガラス素板が切り出される。フロート法の代わりに、例えば上型と下型を用いたプレス成形によってガラス素板を成形してもよい。なお、ガラス素板は、これらの方法に限らず、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法などの公知の製造方法を用いて製造することもできる。
なお、ガラス素板の両主表面に対して、必要に応じて、粗研削加工を行ってもよい。
【0024】
(2)形状加工処理
次に、形状加工処理が行われる。形状加工処理では、ガラスブランクの成形処理後、公知の加工方法を用いて円孔を形成することにより、円孔があいた円板状のガラス基板を得る。その後、例えば総型砥石を用いてガラス基板の端面の面取りを実施する。これにより、ガラス基板の端面には、主表面と直交している側壁面と、側壁面と主表面を繋ぐ面取面が形成される。
【0025】
(3)端面研磨処理
次にガラス基板の端面研磨処理が行われる。端面研磨処理は、研磨ブラシとガラス基板の端面との間に遊離砥粒を含む研磨液を供給して研磨ブラシとガラス基板とを相対的に移動させることにより研磨を行う処理である。端面研磨では、ガラス基板の内周側端面および外周側端面を研磨対象とし、内周側端面および外周側端面を鏡面状態にする。このとき、例えば酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含む研磨液が用いられる。端面研磨を行うことにより、ガラス基板の端面での塵等の異物粒子が付着した汚染、ダメージあるいはキズ等の損傷の除去を行うことができる。これにより、このガラス基板を用いて磁気ディスクを製造した場合であっても、サーマルアスペリティの発生を防止することができる。端面研磨後の側壁面及び/又は面取面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.02μm以下とすると好ましい。さらに、最大谷深さRvで0.3μm以下とするとなお好ましい。RaやRvをこのような範囲とすることで、後述する研磨処理においてガラス基板の外周端面とキャリアとの接触によるダメージを減らすことができる。なお、これにより、キャリア側へのダメージも減るため、キャリアの使用回数を長くすることが可能となる。
【0026】
本実施形態の端面研磨後のガラス基板は、以下の特性を備えている。
(A)外周端面の真円度が1.3μm以下である。
(B)外周端面における円周方向の輪郭線として、生の(つまり、フィルタなしの場合の)第1の輪郭線と、1周あたりの山の数が150個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタ(以下、「150山/回転のローパスフィルタ」という。)を施した第2の輪郭線とを取得したときに、第2の輪郭線のピークカウント値(第2のピークカウント値)の第1の輪郭線のピークカウント値(第1のピークカウント値)に対する比が0.2以下である。ピークカウント値は、1周分の輪郭線についてピーク(山)の数を計数したときの値である。より詳細には、ピークカウントは、外周端面の輪郭線のデータから最小二乗法を用いて得られる基準円(真円)を求め、基準円より大きい(つまり、半径方向で外側に突出した)輪郭線の山の数とする。但し、輪郭線において基準円より大きくなる位置から基準円より小さくなる位置までを1つの山としてカウントする。
【0027】
図2は、端面研磨後のガラス基板の外周端面の生の輪郭線に対してフィルタリングを施したときの、フィルタ後の輪郭線の違いについて説明するための図である。図2において、F0は生の輪郭線(第1の輪郭線の一例)、F1は生の輪郭線に対して150山/回転のローパスフィルタを施した後の輪郭線(第2の輪郭線の一例)、F2は生の輪郭線に対して50山/回転のローパスフィルタ(1周あたりの山の数が50個となる周期をカットオフ値とするローパスフィルタ)を施した後の輪郭線、をそれぞれ示している。図2に示すように、強いフィルタ特性とするほど、輪郭線の凹凸が滑らかとなり、山の数(ピークカウント)が小さくなることがわかる。
外周端面の真円度は、F2の50山/回転のローパスフィルタを施した後の輪郭線に基づいて算出される。
【0028】
後述する主表面研磨処理では、ガラス基板は、キャリアに収容された状態でキャリアに対して相対移動させられる。そのため、端面研磨後のガラス基板の外周端面が、深い凹凸が多く含まれる表面性状である場合、その凹凸の凸部がキャリアの内周端面に押し当てられて削り取られることによって、ガラス基板がダメージを受けるとともに微小なガラス成分の異物が発生する。発明者が鋭意研究した結果、外周端面が上記(A)、(B)の特性を満足させることによって、上記ダメージおよび異物の発生を抑制することができることを見出した。
第1に、(A)に示すように良好な真円度を備えるようにすることで、比較的大きな波長のうねりの高さが小さくなるため、ガラス基板の外周端面がキャリアの内周端面に押し当てられるときに面接触となりやすくなり、外周端面の個々の凹凸によるダメージの発生が抑制される。
第2に、(B)に示したように、上記第1の輪郭線のピークカウント値(第1のピークカウント値)をPC1、上記第2の輪郭線のピークカウント値(第2のピークカウント値)をPC2、としたときの、PC2/PC1(以下、「ピークカウント比」という。)を0.2以下とすることで、外周端面の個々の凹凸によるダメージの発生がさらに抑制される。その理由は以下の通りである。このピークカウント比は、生の輪郭線における深い凹凸の数、ひいてはガラス基板の外周端面のダメージが発生する部位の数と相関があると考えられる。すなわち、外周端面のダメージが大きい場合、つまり、生の輪郭線における深い凹凸の数が多い場合には、150山/回転の比較的強いフィルタを掛けても輪郭線に山が多く残存し、ピークカウント比が大きくなる。一方、外周端面のダメージが発生する部位が少ない場合、つまり、生の輪郭線における深い凹凸の数が少ない場合には、150山/回転の比較的強いフィルタを掛けた場合の輪郭線に残存する山が少なくなり、ピークカウント比が小さくなる。そのため、(B)に示した特性を満足させることで、外周端面のダメージの発生を抑制することができる。
【0029】
なお、発明者の研究によれば、上記第2の輪郭線を、150山/回転のローパスフィルタを施した輪郭線に代えて、50山/回転のローパスフィルタを施した輪郭線としてみたところ、ピークカウント比の大小によって外周端面のダメージに有意な差が認められなかった。これは、50山/回転のフィルタでは強すぎるために、50山/回転のフィルタ後の輪郭線のピークカウントにおいて個々のガラス基板の間に有意な差が生じないためであると考えられる。
【0030】
以下、図3A図3Bおよび図4を参照して、外周端面の端面研磨方法について説明する。図3A図3Bはそれぞれ、端面研磨に使用される研磨ブラシの構造を説明するための図である。図3Aはチャンネルブラシ(ブラシ列)を軸芯に巻き付けた状態の研磨ブラシ20の斜視図である。)図3Bは研磨ブラシの側面図である。図4は研磨ブラシを用いた外周端面の端面研磨処理を示す図である。
【0031】
図3A図3Bに示すように、研磨ブラシ20は、軸芯21の周囲にチャンネルブラシ22を所定の間隔で所定の進み角θで螺旋状に巻き付けて固定して形成されるチャンネルロールブラシである。チャンネルブラシ22の毛材25は、基部金具24内の芯線23に固定され、基部金具24の開口端から毛先に向かって延びている。つまり、軸芯21にチャンネルブラシ22が巻き付けられた状態では、毛材25は、その毛先が軸芯21に対して放射状に延びた状態で植毛された状態である。進み角θが大きくなると、巻きつけたチャンネルブラシの間隔が広がる場合があるが、そのような場合は複数のチャンネルブラシを並列に巻きつけることが好ましい。毛材25としては、例えば、ポリアミド合成繊維、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、ナイロン等が挙げられる。毛材25の線径は研磨後の表面粗さと研磨レートの観点から0.05〜0.5mmとすることが好ましいが、0.03mm以上とすると毛材の剛性が高まり、外周端面における上記第2の輪郭線のピークカウントを低減しやすくなるのでさらに好ましい。また、毛材25の長さは、1〜30mmとすることができるが、剛性を高めるためには、10mm以下、さらには5mm以下とすることが好ましい。また、ガラス基板の端面にブラシを押し付ける圧力を多段階に分けて、最後の段階で最も低い圧力の仕上げ研磨を行うようにすることも好ましい。本願では、上記パラメータを適宜調節及び組み合わせてブラシ研磨を実施する。
【0032】
図4に示す例では、ワークとしてのガラス基板を複数枚含む積層ワークLに対して、研磨ブラシ20を用いて複数枚のガラス基板の外周端面(側壁面Gtおよび面取面Gc)を同時に研磨する場合の例が示されている。なお、図4は一例に過ぎず、ガラス基板の外周端面を1枚ごとに研磨する枚葉方式によって研磨してもよい。
図4の積層ワークLでは、隣接するガラス基板Gの間にスペーサ100が挿入される。これによって、各ガラス基板Gの面取面Gcに研磨ブラシの毛先が入り込み、面取面Gcを十分に研磨することができる。スペーサ100の材料は問わないが、例えば樹脂材料、繊維材料、ゴム材料、金属材料、セラミック材料の薄厚のスペーサを使用しうる。
なお、積層ワークに対して研磨ブラシを用いて研磨する場合、研磨ブラシの毛材が太いと面取面Gcが研磨されにくい場合がある。そのような場合は、面取面Gcの研磨処理を別途設ければよい。
図3に示した研磨ブラシ20の進み角θを45度以上とし、研磨ブラシ20のガラス基板の外周端面に対する押し当て圧力を適宜調整することによって、上記特性(A),(B)を満足するガラス基板を作製することができる。
【0033】
(4)精研削処理
精研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて円板状のガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間に、キャリアに装着された円板状のガラス基板が狭持される。そして、ガラス基板と定盤との間にクーラントを供給して、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作することにより、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることで、ガラス基板の両主表面を研削することができる。定盤には、例えば、ダイヤモンドの固定砥粒を貼り付けたものを使用することができる。
【0034】
(5)第1研磨(主表面研磨)処理
次に、ガラス基板の主表面に第1研磨処理が施される。具体的には、ガラス基板の外周側端面を、上述した両面研削装置と同様の構成の両面研磨装置の保持部材(キャリア)に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第1研磨処理では、遊離砥粒を含む研磨液と、研磨パッドが用いられる。第1研磨に用いる遊離砥粒は特に制限されないが、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒などが用いられる。砥粒の平均粒径(D50)は、0.1μm〜5μmとすることが好ましい。研磨パッドの種類は特に制限されないが、例えば、発泡ウレタン製の樹脂ポリッシャが用いられる。このとき、研磨パッドの硬度はアスカーC硬度で60〜90とすることが好ましい。
【0035】
第1研磨処理では、ガラス基板の主表面と研磨パッドとの間に研磨液を供給し、ガラス基板と研磨パッドとを相対的に移動させることにより、ガラス基板を研磨する。このとき、図5に示すように、ガラス基板Gは、遊星歯車機構を備えた両面研磨装置の円形のキャリア30に収容される。
ガラス基板Gをキャリア30へ収容させやすくするためにキャリア30の内孔の径D2がガラス基板の外径D1よりも若干大きく設定されているため、研磨中においてガラス基板Gは、キャリア30内においてキャリア30に対して相対移動可能な状態となっている。そのため、ガラス基板Gの外周端面(側壁面Gt)は、主表面研磨中にキャリア30の内孔の端面に押し当てられることになる。このとき、ガラス基板Gの外周端面において凹凸が深く存在する場合には、その凸部がキャリア30の内孔の端面に押し当てられることで削り取られ、ガラス基板Gの外周端面にダメージが生ずるとともにガラス成分の微小な異物が発生することが懸念される。
しかし本実施形態では、前処理の端面研磨処理において外周端面が深い凹凸が少なくなるようにブラシ研磨されているため、第1研磨処理時に図5に示すように外周端面がキャリア30の内孔の端面に押し当てられた状態でも、各凹凸がキャリアに点接触するよりは面接触するようになり、外周端面のダメージが生じ難く、かつ外周端面の凸部が削り取られることが少ないために異物の発生が抑制される。なお、上記の現象は、キャリアを用いる他の処理(精研削や第2研磨)でも発生しうる。
【0036】
なお、図5に示したように、ガラス基板の外周端面のダメージは、主表面研磨中に外周端面がキャリア30の内孔の端面に押し当てられることにより生ずるため、ガラス基板の外径が大きいほど、キャリアに当接する外周端面の面積が大きくなるので(つまり、輪郭線が大きくなる分、深い凹凸の数が相対的に多くなるために)、ダメージが多く発生しやすい傾向にある。しかし、本実施形態のガラス基板は、前処理の端面研磨処理において外周端面が深い凹凸が少なくなるように研磨されているため、外径が大きいガラス基板に対しても、外周端面のダメージが生じ難いようになっている。そのため、ガラス基板の外径のサイズが大きいほど、本発明の効果をより発揮できる点で好ましい。本実施形態では、公称2.5インチサイズ(外径約65mm)の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について例示しているが、例えば、公称3インチや3.5インチサイズなどの、公称2.5インチサイズの磁気ディスク用ガラス基板よりも大きい外径のガラス基板とすることが本発明の効果をより発揮できる点で好ましい。一般的に、公称2.5インチサイズは例えば直径約65mm、公称3インチサイズは例えば直径約84mm、公称3.5インチサイズは例えば直径約95mm、である。
【0037】
(6)化学強化処理
ガラス基板は適宜化学強化することができる。化学強化液として、例えば硝酸カリウム,硝酸ナトリウム、またはそれらの混合物を加熱して得られる溶融液を用いることができる。そして、ガラス基板を化学強化液に浸漬することによって、ガラス基板の表層にあるガラス組成中のリチウムイオンやナトリウムイオンが、それぞれ化学強化液中のイオン半径が相対的に大きいナトリウムイオンやカリウムイオンにそれぞれ置換されることで表層部分に圧縮応力層が形成され、ガラス基板が強化される。
化学強化処理を行うタイミングは、適宜決定することができるが、化学強化処理の後に研磨処理を行うようにすると、表面の平滑化とともに化学強化処理によってガラス基板の表面に固着した異物を取り除くことができるので特に好ましい。また、化学強化処理は、必要に応じて行われればよく、行われなくてもよい。
【0038】
(7)第2研磨(最終研磨)処理
次に、化学強化処理後のガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。第2研磨処理では、第1研磨処理よりも、遊離砥粒の粒子サイズと研磨パッドの樹脂ポリッシャの硬度を小さくすることが好ましい。このようにすることで、ガラス基板の表面粗さを極めて小さくすることができる。
【0039】
第2研磨処理に用いる遊離砥粒として、例えば平均粒径(D50)が10〜50nmのコロイダルシリカ等の微粒子が用いられる。また、研磨パッドは発泡ポリウレタン製のスウェードタイプの軟質ポリシャを用いることが好ましい。このとき、研磨パッドの硬度はアスカーC硬度で50〜80とすることが好ましい。
第2研磨処理は、必ずしも必須な処理ではないが、ガラス基板の主表面の表面凹凸のレベルをさらに良好なものとすることができる点で実施することが好ましい。この後、適宜洗浄を行うことによって、磁気ディスク用ガラス基板となる。
なお、第2研磨処理後のガラス基板の表面粗さの算術平均粗さRaが0.15nm以下となるようにガラス基板が研磨されることが、表面粗さの小さい磁気ディスク用ガラス基板を作製する点で好ましい。表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて1μm×1μmの領域を256×256ピクセルの解像度で測定したときに得られる表面形状から算出できる。
【0040】
なお、結晶化ガラスからなる磁気ディスク用ガラス基板を作製する場合には、上述した各処理の途中で結晶化処理を行う。例えば、結晶化処理では、ガラス基板のそれぞれのガラス基板間にディスク状のセッターと呼ばれる板を挟んで、加熱炉に入れて熱処理を行う。セッターはセラミックス製とすることができる。熱処理では、核形成温度と、その後の結晶成長温度を適宜調節することによりガラス基板を結晶化させる。核形成温度および結晶成長温度は、ガラス基板のガラス組成によって適宜調節することが好ましい。加熱後の冷却では、ガラス基板に歪みや撓みが発生しないように、徐冷速度を調整することが好ましい。
結晶化ガラスを用いたガラス基板は、非晶質のガラスを用いた従来のガラス基板に比べて線膨張係数が小さく、熱処理を加えても歪みや撓みを発生し難い。したがって、本実施形態のガラス基板は、磁性層を形成するときに例えば700〜800℃に加熱して磁性層の成分をアニールするような場合があっても、熱による撓みが発生し難いことから、エネルギーアシスト用の磁気ディスク用ガラス基板として好適に用いることができる。
【0041】
[磁気ディスク]
磁気ディスクは、磁気ディスク用ガラス基板を用いて以下のようにして得られる。
磁気ディスクは、例えば磁気ディスク用ガラス基板(以下、単に「基板」という。)の主表面上に、主表面に近いほうから順に、少なくとも付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層が積層された構成になっている。
例えば基板を、真空引きを行った成膜装置内に導入し、DCマグネトロンスパッタリング法にてAr雰囲気中で、基板の主表面上に付着層から磁性層まで順次成膜する。付着層としては例えばCrTi、下地層としては例えばCrRuを用いることができる。磁性層としては、例えばCoPt系合金を用いることができる。また、L10規則構造のCoPt系合金やFePt系合金を形成して熱アシスト磁気記録用の磁性層とすることもできる。上記成膜後、例えばCVD法によりCを用いて保護層を成膜し、続いて表面に窒素を導入する窒化処理を行うことにより、磁気記録媒体を形成することができる。その後、例えばPFPE(パーフルオロポリエーテル)をディップコート法により保護層上に塗布することにより、潤滑層を形成することができる。
また、付着層と磁気記録層との間には、SUL(軟磁性層)、シード層、中間層などを、スパッタ法(DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法などを含む)、真空蒸着法などの公知の成膜方法を用いて形成してもよい。
作製された磁気ディスクは、好ましくは、DFH(Dynamic Flying Height)コントロール機構を搭載した磁気ヘッドとともに、磁気記録再生装置としてのHDD(Hard Disk Drive)に組み込まれる。
【0042】
[実施例、比較例]
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の効果を確認するために、製造したガラス基板から2.5インチの磁気ディスクを作製し、LUL耐久試験を行って、ヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害等の不具合の発生有無を調べた。ガラスの組成は、上述のアモルファスのアルミノシリケートガラスを用いた。
【0043】
[実施例、比較例の円板状ガラス基板の作製]
実施例、比較例の円板状ガラス基板については、上記製造方法の各処理を順序通りに行うことで作製した。ここで、
(1)のガラス素板の成形は、プレス成形方法を用いた。粗研削では、アルミナ系遊離砥粒を用いた。
(2)の形状加工では、ダイヤモンド砥石を用いて、ガラス基板の外周端部および内周端部に面取面を形成した。
(3)の端面研磨では、図3に示した研磨ブラシを円板状ガラス基板の外周端面に押し当てつつ、研磨ブラシ(チャンネルロールブラシ)とガラス基板とを相対的に移動させることにより研磨を行った。研磨ブラシとガラス基板の端面との間に遊離砥粒を含む研磨液を供給して端面研磨を行った。このとき、前述のとおり、研磨ブラシの毛材の径及び長さ、軸芯の周囲にチャンネルブラシの進み角θ(図3参照)、研磨ブラシのガラス基板の外周端面に対する押し当て圧力などを適宜調整することによって、表1に示す実施例、比較例の円板状ガラス基板を作り分けた。表1においてピークカウント比は、ローパスフィルタを施さないときの輪郭線のピークカウント値をPC1、150山/回転のローパスフィルタを施したときの輪郭線のピークカウント値をPC2、としたときのPC2/PC1の値である。また、表1において、真円度は端面研磨後の値であり、50山/回転のローパスフィルタを施したときの輪郭線に基づいて算出した値である。
【0044】
次いで、実施例、比較例の円板状ガラス基板に対して、以下の(4)〜(7)の処理を施して磁気ディスク用ガラス基板を作製した。
(4)の精研削では、ダイヤモンドの固定砥粒を定盤に貼り付けた研削装置を用いて研削した。
(5)の第1研磨では、遊星歯車機構を備えた研磨装置を用いて60分間研磨した。平均粒径が1μmの酸化セリウム砥粒、および研磨パッドとして硬質ウレタンパッドを使用した。
(6)の化学強化では、化学強化液として硝酸カリウムと硝酸ナトリウムの溶融塩を用いて化学強化処理を行った。
(7)の第2研磨は、第1研磨と同様に、遊星歯車機構を備えた研磨装置を用いて行った。ポリシャを発泡ポリウレタン製の軟質ポリシャでスウェードタイプの研磨パッドを用いた。遊離砥粒として平均粒径が20nmのコロイダルシリカを用いた。
【0045】
表1において、実施例、比較例の円板状ガラス基板の評価は、円板状ガラス基板を基に作製した100枚の磁気ディスク用ガラス基板の外周端面を光学顕微鏡及びレーザ顕微鏡で観測して、深いダメージ(キズ)が発生している枚数を計数することで行った。計数の対象となるダメージの深さは、0.25μm以上の深さのダメージである。
【0046】
【表1】
【0047】
表1の各実施例が示すように、端面研磨後の外周端面の真円度が1.3μm以下であって、かつピークカウント比が0.2以下である場合には、その後に主表面研磨処理を経て得られる磁気ディスク用ガラス基板の外周端面のダメージが生じないことが確認された。つまり、端面研磨後の外周端面の真円度が1.3μm以下であって、かつピークカウント比が0.2以下である場合には、微小なガラス成分の異物が生じないため、ガラス成分の異物に起因するヘッドクラッシュ障害やサーマルアスペリティ障害等の不具合が生じないと考えられる。
【0048】
実施例1〜5の円板状ガラス基板を基に作製した磁気ディスク用ガラス基板の外周端面をレーザ顕微鏡で詳細に観察したが、ダメージや異物は見つからなかった。また、いずれの磁気ディスク用ガラス基板についても、主表面の算術平均粗さRaが0.15nm以下であった。
次いで、実施例1〜5の円板状ガラス基板を基に作製した磁気ディスク用ガラス基板の主表面上に、付着層、下地層、磁性層(磁気記録層)、保護層、潤滑層を順次積層させて、磁気ディスクを作製した。磁気ディスクの外周端面についてレーザ顕微鏡で詳細に観察したところ、ダメージや異物は見つからなかった。さらに作製した磁気ディスクをHDDに搭載してLUL耐久性試験(60万回)を行った。LUL耐久試験とは、磁気ディスクを搭載したハードディスクドライブ(HDD)を温度70℃、湿度80%の恒温恒湿層に入れた状態で、ヘッドを、ランプとIDストッパーの間で動きを止めずに往復運動(シーク動作)させ、試験後のヘッドの汚れや磨耗等の異常発生を調査する試験のことである。LUL耐久性試験の結果、ヘッドクラッシュやサーマルアスペリティ等の障害は発生せず良好な結果が得られた。
【0049】
以上、本発明の磁気ディスク用基板、磁気ディスク、磁気ディスク用基板の製造方法、円板状基板の製造方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4
図5