特許第6360897号(P6360897)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6360897-ポリカーボネートジオール 図000021
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360897
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオール
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20180709BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20180709BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20180709BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20180709BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   C08G64/02
   C08G18/10
   C08G18/44
   C09D175/04
   C09D5/02
【請求項の数】12
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-542512(P2016-542512)
(86)(22)【出願日】2015年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2015064296
(87)【国際公開番号】WO2016024426
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2016年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-164969(P2014-164969)
(32)【優先日】2014年8月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 英三郎
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−010950(JP,A)
【文献】 特開2016−027111(JP,A)
【文献】 特開2000−095855(JP,A)
【文献】 特開2012−077280(JP,A)
【文献】 特開2013−136731(JP,A)
【文献】 特開2013−166852(JP,A)
【文献】 特開2013−082863(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/063767(WO,A1)
【文献】 国際公開第2002/070584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00− 64/42
C08G 18/10− 18/87
C09D 5/00− 5/46
C09D 175/00−175/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを含み、
重水素化クロロホルムを溶媒にテトラメチルシランを基準物質に用いて測定した1H−NMRにおいて、3.90〜4.45ppmのシグナルの積分値を1000とした場合、3.33〜3.43ppmの積分値が0.1〜10.0であり、
常温で液状であり、
水分量が10〜500ppmである、ポリカーボネートジオール。
【化1】
(式(A)中、Rは、炭素数3〜15の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表し、全繰り返し単位において1種又は2種以上選択することができる。)
【請求項2】
前記式(A)中、Rが炭素数4〜9の二価の脂肪族炭化水素である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項3】
前記式(A)で表される繰り返し単位の90〜100%が、下記式(B)〜(D)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単位である、請求項1又は2に記載のポリカーボネートジオール。
【化2】
【化3】
【化4】
【請求項4】
末端OH基割合が95.0〜99.9%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項5】
ICPにより測定した際の、チタン、イッテルビウム、スズ、及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の含有量が、0.0001〜0.05重量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項6】
ICPにより測定した際の、チタン、イッテルビウム、スズ及びジルコニウムの総含有量が0.0001〜0.05重量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項7】
ICPにより測定した際のPの含有量が0.0001〜0.05重量%である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを含む、コーティング組成物。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、該ウレタンプレポリマーが末端イソシアネート基を持つ、コーティング組成物。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、コーティング組成物。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、水系コーティング組成物。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを用いて得られる熱可塑性ポリウレタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートジオールに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタンや熱可塑性エラストマーなどのソフトセグメントとして、耐加水分解性、耐光性、耐酸化劣化性、耐熱性などに優れた素材として知られている。しかしながら、ポリカーボネートジオールを塗料組成物に用いる場合、粘度が高く多量の溶剤を必要とする。さらに、ポリカーボネートジオールは、分子間の相互作用が強いため、顔料などの添加物の分散安定性に劣るという問題がある。
【0003】
このような不都合を解決するため、種々の液状ポリカーボネートジオールが開示されている。例えば、相溶性に優れ、粘度が低く、貧溶媒に可溶な塗料用ポリカーボネートジオールが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、低粘度化されたポリカーボネート/ポリエーテルブロック共重合体が開示されている(例えば、特許文献2参照)。一方、高硬度で耐擦性に優れるとともに、色調及び熱安定性、親水性に優れる、塗料、コーティング剤に有用なポリカーボネートジオールが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−179787号公報
【特許文献2】特開2006−124485号公報
【特許文献3】特開2013−10949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の技術は、ポリカーボネートジオール分子中にポリエーテル構造を有するため、耐熱性や耐薬品性が不充分な場合がある。
【0006】
また、特許文献3に記載の技術は、原料のジヒドロキシ化合物として、分子内にエーテル性酸素原子を有する化合物を含むため、耐薬品性が不充分な場合がある。
【0007】
このように、これまでの技術では、顔料の分散安定性に優れるとともに、耐熱性や耐薬品性を有する塗膜が得られるポリカーボネートジオールは開発されていない。
【0008】
そこで、本発明は、例えば、塗料や接着剤の構成材料として、さらにはポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどの原料として適したポリカーボネートジオールを提供することを目的とする。さらに詳しくは、本発明は、塗料の構成材料として用いた場合、顔料の分散安定性に優れるとともに、耐熱性や耐薬品性を有する塗膜が得られるポリカーボネートジオールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有するポリカーボネートジオールが、特定の構造を有することで目的を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明の構成は以下のとおりである。
[1]
下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを含み、
重水素化クロロホルムを溶媒にテトラメチルシランを基準物質に用いて測定したH−NMRにおいて、3.90〜4.45ppmのシグナルの積分値を1000とした場合、3.33〜3.43ppmの積分値が0.1〜10.0である、ポリカーボネートジオール。
【化1】
(式(A)中、Rは、炭素数3〜15の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表し、全繰り返し単位において1種又は2種以上選択することができる。)
[2]
前記式(A)で表される繰り返し単位の90〜100%が、下記式(B)〜(D)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単位である、上記[1]に記載のポリカーボネートジオール。
【化2】
【化3】
【化4】
[3]
末端OH基割合が95.0〜99.9%である、上記[1]又は[2]に記載のポリカーボネートジオール。
[4]
ICPにより測定した際の、チタン、イッテルビウム、スズ、及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の含有量が、0.0001〜0.05重量%である、上記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール。
[5]
ICPにより測定した際の、チタン、イッテルビウム、スズ及びジルコニウムの総含有量が0.0001〜0.05重量%である、上記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール。
[6]
ICPにより測定した際のPの含有量が0.0001〜0.05重量%である、上記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール。
[7]
水分量が10〜500ppmである、上記[1]〜[6]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール。
[8]
上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを含む、コーティング組成物。
[9]
上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、該ウレタンプレポリマーが末端イソシアネート基を持つ、コーティング組成物。
[10]
上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、コーティング組成物。
[11]
上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、水系コーティング組成物。
[12]
上記[1]〜[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを用いて得られる熱可塑性ポリウレタン。
【発明の効果】
【0011】
本発明のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いた場合、顔料の分散安定性に優れるとともに、耐熱性や耐薬品性を有する塗膜が得られる。これらの特性を有することから、本発明のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例4で得られたポリカーボネートジオールのH−NMR分析チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」と略記する。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0014】
<ポリカーボネートジオール>
本実施形態のポリカーボネートジオールは、下記式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを含む。
【化5】
【0015】
式(A)中、Rは、炭素数3〜15の二価の脂肪族又は脂環族炭化水素を表し、全繰り返し単位において1種又は2種以上を選択することができる。式(A)中、Rが側鎖を持たない二価の脂肪族炭化水素の場合、ポリウレタンの耐薬品性や機械的強度が高くなるので好ましく、Rが炭素数4〜9の二価の脂肪族炭化水素の場合、より好ましい。
【0016】
また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、上記式(A)で表される繰り返し単位の90〜100%が、下記式(B)〜(D)で表される繰り返し単位からなる群より選ばれる少なくとも1つの単位である場合、耐薬品性と機械的強度とのバランスが良い塗膜が得られるので好ましい。さらに、本実施形態のポリカーボネートジオールは、上記式(A)で表される繰り返し単位の90〜100%が、下記式(C)で表される繰り返し単位及び下記式(D)で表される繰り返し単位である場合、−5℃の低温でも液状となるため、より好ましい。
【化6】
【化7】
【化8】
【0017】
なお、本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、式(A)で表される繰り返し単位の割合は、耐熱性や耐加水分解性の観点から好ましくは95モル%以上100モル%以下、より好ましくは97モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは99モル%以上100モル%以下である。
【0018】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、常温で液状であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料の構成成分として用いる場合、透明な塗料に用いても白濁することが少ないため、用途が制限されることが少ない。なお、本実施形態において、液状とは、80℃に加熱したポリカーボネートジオールを透明なサンプル瓶に入れ、室温まで冷えた状態を目視で観察し透明で、サンプル瓶を傾けた時に僅かでも流動性がある状態をいう。
【0019】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、重水素化クロロホルムを溶媒にテトラメチルシラン(TMS)を基準物質に用いて測定したH−NMRスペクトルにおいて、3.90〜4.45ppmのシグナルの積分値を1000とした場合、3.33〜3.43ppmのシグナルの積分値(以降「積分値比」とも略す。)が、0.1〜10.0である。前記H−NMRスペクトルにおいて、3.90〜4.45ppmのシグナルはカーボネートに結合したメチレンのシグナルであり、3.33〜3.43ppmのシグナルはエーテルの酸素に結合したメチレンのシグナルと推定される。よって、本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、該積分値比は、一定の繰り返し単位に含まれる特定のエーテルと推定される構造の存在量を表す指標となる。本実施形態のポリカーボネートジオールは、該積分値比が0.1以上であれば、塗料の構成成分として用いた場合、顔料などの添加剤の分散安定性を向上させ、該積分値比が10.0以下であれば、耐熱性や耐薬品性を有する塗膜を得ることができる。さらに、本実施形態のポリカーボネートジオールは、該積分値比が0.3〜8.0であることが好ましく、0.5〜5.0であることがより好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、該積分値比が前記範囲内であると、塗料の構成成分として用いる場合、より一層顔料の分散安定性を向上させ、高い耐熱性、耐薬品性、平滑性を有する塗膜を得ることができる。一方、例えばカーボネート原料としてエチレンカーボネートを用い、ジオール原料に対して過剰にエチレンカーボネートが存在する条件で200℃以上の高温で反応を行った場合、分子内にエチレンカーボネート由来のエーテル構造を有するポリカーボネートジオールが得られる。当該ポリカーボネートジオールのH−NMRスペクトルでは、エーテル構造に由来すると推定されるシグナルが3.45〜3.48ppmに現れる。これは、本実施形態において積分値比を計算するために用いるピークとは異なる。また、一般的に、当該ポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを重合した場合、耐熱性や耐候性が低下する。
【0020】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、末端OH基割合が95.0〜99.9%であることが好ましい。該末端OH基割合が99.9%以下であれば、微細な高分子量ゲルなどを生成し塗膜表面の平滑性が低下することがなく、該末端OH基割合が95.0%以上であれば塗膜の硬化が進み、塗膜表面にぬめり感が残ることもないので好ましい。該末端OH基割合は97.0〜99.9%がより好ましく、98.0〜99.9%がさらに好ましい。
【0021】
なお、本実施形態において、末端OH基割合は、以下のように定義される。70g〜100gのポリカーボネートジオールを、0.4kPa以下の圧力下、160℃〜200℃の温度に加熱、攪拌して、該ポリカーボネートジオールの約1〜2重量%に相当する留分、即ち約1g(0.7〜2g)の初期留分を得る。得られた留分を約100g(95〜105g)のエタノールに溶解させて溶液として回収する。回収した溶液をガスクロマトグラフィー分析(以下「GC分析」とも称す。)して、得られるクロマトグラフのピーク面積の値から、下記式(1)により計算した末端OH基割合を言う。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィー6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃から10℃/minで250℃まで昇温した後、その温度で15分間保持するプロファイルとする。GC分析における各ピークの同定は、下記GC−MS装置を用いて行った。GC装置は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)を付けた6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用いた。GC装置において、初期温度40℃から昇温速度10℃/minで220℃まで昇温した。MS装置は、Auto−massSUN(日本JEOL製)を用いた。MS装置において、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10〜500、フォトマルゲイン450Vで測定を行う。
【0022】
末端OH基割合(%)=B÷A×100 (1)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
B:ジオールのピーク面積の総和
【0023】
末端OH基割合は、ポリカーボネートジオールの全末端基に占めるOH基の割合に対応する。即ち、上記に示すように、ポリカーボネートジオールを0.4kPa以下の圧力下、160℃〜200℃の温度に加熱すると、ポリカーボネートジオールの末端部分がアルコール類として留出する(下記式(a)を参照)。留出するアルコール類としては、特に限定されないが、例えば、原料に用いたジオール、シクロヘキサンジオールや1,5−ヘキサンジオールなどの原料に含まれる不純物、メタノールなどの原料のカーボネート化合物に由来するモノアルコール、重合中の副反応で生成する不飽和炭化水素を有するモノアルコールが挙げられる。
【化9】
(式(a)中、Xは−R−OHまたは−Rであり、R及びRは炭化水素を表す。)
【0024】
この留分中の全アルコール類におけるジオールの比率が末端OH基割合である。
【0025】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法は、上記積分値比を特定の範囲内に制御する方法以外は、特に限定されない。
例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9〜20(1994年)に記載される種々の方法が挙げられる。なお、上記積分値比を特定の範囲内に制御する方法は後述する。
【0026】
本実施形態のポリカーボネートジオールの数平均分子量は、300〜5000であることが好ましい。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が300以上であれば、得られるポリウレタンの低温特性が良好となる。ポリカーボネートジオールの数平均分子量が5000以下であれば、塗料の構成材料として用いる場合、塗料固形分濃度などが制限されることもなく、また得られるポリウレタンの成型加工性も低下することがないので好ましい。ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、450〜3000であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0028】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、ジオールとカーボネート化合物とを原料として製造する場合、上述したとおり、例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9〜20(1994年)に記載される種々の方法で製造することができる。
【0029】
原料として用いるジオールは、特に限定されないが、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ペンタデカンジオールなどの側鎖を持たないジオール;2−メチル−1、8−オクタンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−1,5−ペンタンジオール、2,4−ジエチルー1、5−ペンタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどの側鎖を持ったジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、1,4−シクロヘキサンジオールなどの環状ジオールが挙げられる。当該ジオールは1種類又は2種類以上をポリカーボネートジオールの原料として用いてもよい。側鎖を持たないジオールから1種類又は2種類以上のジオールをポリカーボネートジオールの原料として用いて用いた場合、塗膜の耐薬品性や機械的強度が高くなるので好ましく、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオールから1種類又は2種類以上をポリカーボネートジオールの原料として用いた場合、より好ましい。1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールから選ばれる2種類のジオールをポリカーボネートジオールの原料として用いた場合、さらに好ましい。1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールをポリカーボネートジオールの原料として用いた場合、特に好ましい。
【0030】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造において、2種類以上のジオールを原料として用いる場合、それら原料の比は特に限定されないが、得られるポリカーボネートジオールが常温で液状となるように使用する原料の比を設定することが好ましい。2種のジオールを原料として用いる場合、モル比で20/80〜80/20の間で仕込み量を設定することが好ましい。この範囲であれば、得られるポリカーボネートジオールが液状となる。30/70〜70/30とすればさらに好ましく、40/60〜60/40とすれば、0℃以下でも液状となるのでより好ましい。
【0031】
さらに、本実施形態のポリカーボネートジオールの性能を損なわない範囲で、1分子に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどをポリカーボネートジオールの原料として用いることもできる。この1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料としてあまり多く用いると、ポリカーボネートの重合反応中に架橋してゲル化が起きてしまう。したがって、1分子中に3以上のヒドロキシル基を持つ化合物をポリカーボネートジオールの原料として用いる場合であっても、当該化合物は、ポリカーボネートジオールの原料として用いるジオールのモル数に対し、0.1〜5モル%にするのが好ましい。この割合は0.1〜1モル%であることが、より好ましい。
【0032】
本実施形態のポリカーボネートジオールの原料となるカーボネートの例として、特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなどのジアルキルカーボネート;ジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネート;エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート、1,3−ブチレンカーボネート、1,2−ペンチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネートなどが挙げられる。これらの内から1種又は2種以上のカーボネートをポリカーボネートジオールの原料として用いることができる。入手のしやすさや重合反応の条件設定のしやすさの観点より、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネートを用いることが好ましい。
【0033】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造では、触媒を添加することが好ましい。該触媒としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属のアルコラート、水素化物、オキシド、アミド、炭酸塩、水酸化物、窒素含有ホウ酸塩、さらに有機酸の塩基性アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。また、前記触媒として、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、インジウム、スズ、アンチモン、タングステン、レニウム、オスミニウム、イリジウム、白金、金、タリウム、鉛、ビスマス、イッテルビウム、の金属、塩、アルコキシド、有機化合物が挙げられる。それらから1つ又は複数の触媒を選択し使用することができる。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カリウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛、イッテルビウムの金属、塩、アルコキシド、有機化合物から1つ又は複数の触媒を用いた場合、ポリカーボネートジオールの重合が良好に行われ、得られるポリカーボネートジオールを用いたウレタン反応に対する影響も少ないので好ましい。前記触媒として、チタン、イッテルビウム、スズ、ジルコニウムを用いた場合、さらに好ましい。
【0034】
本実施形態のポリカーボネートジオールには、上記触媒を含んでいてもよい。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、該触媒の含有量は、ICPを用い測定した金属元素の量として、0.0001〜0.05重量%であることが好ましい。該触媒の含有量が前記範囲であれば、ポリカーボネートジオールの重合が良好に行われ、得られたポリカーボネートジオールを用いたウレタン反応に対する影響も少ない。該触媒の含有量は、ICPを用い測定した金属元素の量として、0.0005〜0.02重量%であることがより好ましい。
【0035】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、ICPにより測定した際の、チタン、イッテルビウム、スズ、及びジルコニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素の含有量が、0.0001〜0.05重量%であることが好ましく、0.0005〜0.02重量%であることがより好ましい。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、ICPにより測定した際の、チタン、イッテルビウム、スズ及びジルコニウムの総含有量が、0.0001〜0.05重量%であることが好ましく、0.0005〜0.02重量%であることがより好ましい。
【0036】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオール中の金属元素の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0037】
本実施形態のポリカーボネートジオールは、例えば、ポリウレタンの原料として用いる場合、ポリカーボネートジオールの製造で用いた触媒を、リン化合物で処理することが好ましい。リン化合物としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジル・ジフェニルホスフェートなどのリン酸トリエステル;メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、プロピルアシッドホスフェート、イソプロピルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、2−エチルへキシルアシッドホスフェート、イソデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、アチレングルコールアシッドホスフェート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノイソデシルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)ホスフェートなどの酸性リン酸エステル;トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニル(モノデシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ビス(2−エチルヘキシル)ハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、ビス(デシル)ペンタエリスルトールジホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどの亜リン酸エステル類;さらに、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸などが挙げられる。
【0038】
本実施形態のポリカーボネートジオールには、リン化合物を含んでいてもよい。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、リン化合物の含有量は、ICPを用い測定したリン元素(P)の含有量として、0.0001〜0.05重量%であることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、リン化合物の含有量が前記範囲であれば、例えば、ポリウレタンの原料として用いた場合、該ポリウレタンの製造反応において、ポリカーボネートジオール製造で用いた触媒の影響を殆どなくすることが可能であり、さらに、リン化合物がポリウレタンの製造反応や反応生成物の物性に影響することも少ない。本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、ICPにより測定した際のリン元素(P)の含有量は、0.0005〜0.02重量%であることがより好ましい。
【0039】
本実施形態のポリカーボネートジオールにおいて、水分量は、10〜500ppmであることが好ましい。本実施形態のポリカーボネートジオールは、水分量が500ppm以下であれば、水とイソシアネートとの反応により白濁することがなく好ましい。また、本実施形態のポリカーボネートジオールは、水分量が10ppm以上であれば、透明性の高い塗膜が得られるので好ましい。これは、本願で規定する特定のエーテル構造と推定される部分と水分子とがある種の結合体を形成することで、溶剤との相溶性が向上し、溶剤中にポリカーボネートジオールが均一に存在するためと推定される。該水分量が、10〜250ppmであれば、その効果はさらに顕著になり、15〜150ppmであれば、さらに好ましい。
【0040】
なお、本実施形態において、ポリカーボネートジオールの水分量は、後述の実施例に記載する方法で求めることができる。
【0041】
本実施形態のポリカーボネートジオールの製造方法の具体例を以下に示す。本実施形態のポリカーボネートジオールの製造は、特に限定されないが、例えば、2段階に分けて行うことができる。ジオールとカーボネートとをモル比(ジオール:カーボネート)で、例えば、20:1〜1:10の割合で混和し、常圧又は減圧下、100〜250℃で1段目の反応を行う。カーボネートとしてジメチルカーボネートを用いる場合、生成するメタノールをジメチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。カーボネートとしてジエチルカーボネートを用いる場合、生成するエタノールをジエチルカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。また、カーボネートとしてエチレンカーボネートを用いる場合、生成するエチレングリコールをエチレンカーボネートとの混合物として除去して低分子量ポリカーボネートジオールを得ることができる。次いで、2段目の反応は、前記1段目の反応生成物を、減圧下、160〜250℃で加熱して、未反応のジオールとカーボネートを除去するとともに、低分子量ポリカーボネートジオールを縮合させて、所定の分子量のポリカーボネートジオールを得る反応である。
【0042】
本実施形態において、積分値比を前記範囲内に制御する方法としては、例えば、前記1段目の反応において、ジオールのモル比を多くするとともに、反応温度を高くすることが好ましい。ジオールとカーボネートとのモル比(ジオール:カーボネート)は、より好ましくは81:19〜68:32、さらに好ましくは78:22〜73:27である。反応温度は、好ましくは150〜250℃、より好ましくは180〜250℃である。前記1段目の反応時間の80%以上を上記の反応温度で行うことが好ましく、90%以上を上記の温度で行えばさらに好ましい。
【0043】
さらに、原料ジオールとして、下記式(E)で表されるエーテルジオール化合物を添加しても構わない。式(E)中、n及びmは3〜12の整数であり、n=mでもよく、n≠mでもよい。n及びmが4〜12の整数である場合、耐熱性や耐薬品性を有する塗膜が得られるので好ましく、n及びmが4〜6の整数である場合は顔料の分散安定性に優れるのでさらに好ましい。
【化10】
【0044】
ジオールとカーボネートとともに該エーテルジオール化合物を仕込んでポリカーボネートジオールを製造することもできるし、ポリカーボネートジオールに該エーテルジオール化合物を添加し、ポリカーボネートジオール中にエーテル構造をエステル交換反応で導入しても構わない。ポリカーボネートジオールに該エーテルジオール化合物を添加する場合は、添加後に100〜250℃の温度でさらに加熱処理することが好ましい。
【0045】
また、本実施形態に用いるポリカーボネートジオールの末端OH基割合は、原料中の不純物、温度や時間などの製造条件、さらに、原料であるカーボネートとしてジアルキルカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを用いる場合は、原料中のジオールとカーボネートとの仕込み比などの条件より、1つの方法を選択して、または適宜組み合わせることにより調整できる。原料であるカーボネートとして、ジアルキルカーボネート及び/又はジアリールカーボネートを用いた場合、目的とするポリカーボネートジオールの分子量に対応させて、原料であるジオールとカーボネートとを化学量論量又はそれに近い割合で仕込んで反応させると、ポリカーボネートジオールの末端にカーボネートに由来するアルキル基やアリール基が残存することが多い。そこで、原料中のカーボネートに対するジオールの量を、例えば、化学量論量の1.01〜10倍とすることで、ポリカーボネートジオールは、末端アルキル基や末端アリール基が減り、末端ヒドロキシル基を多くすることができる。さらに、副反応により、ポリカーボネートジオールの末端がビニル基になったり、例えばカーボネートとしてジメチルカーボネートを用いた場合、メチルエステルやメチルエーテルになったりする。一般的に、副反応は、反応温度が高いほど、反応時間が長いほど起きやすくなる。
【0046】
<用途>
本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料や接着剤の構成材料として、またポリウレタンや熱可塑性エラストマーの原料として、さらにはポリエステルやポリイミドの改質剤などの用途に用いることができる。特に、本実施形態のポリカーボネートジオールは、塗料の構成材料として用いる場合、顔料などの添加材の分散安定性が良好であり、耐熱性と耐薬品性とに優れた塗料が得られる。
【0047】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンは、上述のポリカーボネートジオールとポリイソシアネートとを用いて得ることができる。
【0048】
本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを含む。
【0049】
また、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタンプレポリマーを含み、該ウレタンプレポリマーが末端イソシアネート基を持つことが好ましい。
【0050】
さらに、本実施形態のコーティング組成物は、上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含むことがより好ましく、上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂を含む、水系コーティング組成物であることがさらに好ましい。
【0051】
使用される有機ポリイソシアネートとしては、特に限定されないが、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、及びその混合物(TDI)、粗製TDI、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、粗製MDI、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート(NDI)、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、フェニレンジイソシアネート等の公知の芳香族ジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート(水添MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキサンジイソシアネート(水添XDI)等の公知の脂肪族ジイソシアネート、及びこれらのイソシアネート類のイソシアヌレート化変性品、カルボジイミド化変性品、ビウレット化変性品等が挙げられる。これらの有機ポリイソシアネートは、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても構わない。またこれらの有機ポリイソシアネートは、ブロック剤でイソシアネート基をマスクして用いてもよい。
【0052】
また、ポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとの反応において、所望により共重合成分として鎖伸長剤を用いることができる。鎖伸長剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタン業界における常用の鎖伸長剤、すなわち、水、低分子ポリオール、ポリアミン等が使用できる。鎖伸長剤の例として、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,10−デカンジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン等の低分子ポリオール、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン等のポリアミンが挙げられる。これらの鎖伸長剤は、単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いても構わない。
【0053】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)を製造する方法としては、業界で公知の製造方法が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオールから得られる塗料主剤と有機ポリイソシアネートからなる硬化剤とを塗工直前に混合する2液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られるイソシアネート末端基を持つウレタンプレポリマーからなる1液型溶剤系コーティング組成物;上述のポリカーボネートジオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を反応させて得られるポリウレタン樹脂からなる1液型溶剤系コーティング組成物;あるいは1液型水系コーティング組成物を製造することができる。
【0054】
本実施形態のコーティング組成物(塗料)には、例えば、各種用途に応じて硬化促進剤(触媒)、充填剤、分散剤、難燃剤、染料、有機又は無機顔料、離型剤、流動性調整剤、可塑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、レベリング剤、着色剤、溶剤等を添加することができる。
【0055】
顔料としては、特に限定されないが、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黄鉛、クレー、タルク、カーボンブラックなどの無機顔料、アゾ系、ジアゾ系、縮合アゾ系、チオインジゴ系、インダンスロン系、アントラキノン系、ベンゾイミダゾル系、フタロシアニン系、イソインドリノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジオキサン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料が挙げられる。
【0056】
硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクチテート、ジブチル錫ジラウレート、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリシレート系、蓚酸アニリド系を挙げることができる。紫外線安定剤としては、ヒンダードアミン系化合物を挙げることができる。
【0058】
塗料の溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルセロソルブ、酢酸エチル、酢酸ブチル、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、水などを挙げることができる。これらの溶剤は1種類又は複数種を混合して使用することができる。
【0059】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンを製造する方法としては、特に限定されず、ポリウレタン業界で公知のポリウレタン化反応の技術が用いられる。例えば、上述のポリカーボネートジオールと有機ポリイソシアネートとを大気圧下に常温から200℃で反応させることにより、熱可塑性ポリウレタンを製造することができる。鎖延長剤を用いる場合は、反応の最初から加えておいてもよいし、反応の途中から加えてもよい。本実施形態の熱可塑性ポリウレタンの製造方法については、例えば、米国特許第5,070,173号を参照できる。
【0060】
ポリウレタン化反応においては、公知の重合触媒や溶媒を用いてもよい。用いられる重合触媒は、特に限定されないが、例えばジブチルスズジラウレートが挙げられる。
【0061】
本実施形態の熱可塑性ポリウレタンには、熱安定剤(例えば酸化防止剤)や光安定剤などの安定剤を添加することが好ましい。また、可塑剤、無機充填剤、滑剤、着色剤、シリコンオイル、発泡剤、難燃剤等を添加してもよい。
【実施例】
【0062】
次に、実施例及び比較例によって、本発明を説明する。
以下の実施例は、本発明を例示するために記載するものであって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0063】
以下の実施例及び比較例において示す物性値は、下記の方法で測定した。
【0064】
1.ポリカーボネートジオールの積分値比の決定(H−NMR)
ポリカーボネートジオールにおける積分値比を以下のとおり決定した。
まず、サンプルを重水素クロロホルム(アルドリッチ製)に溶解し、3重量/vol%の溶液を得た。該溶液に化学シフト基準としてテトラメチルシラン(TMS)を加えて、得られた溶液についてBruker社製、BioSpin Avance600を用いてH−NMRを測定した。該測定において、共鳴周波数:600.13MHz、パルス幅:30°、待ち時間:3秒、積算回数:128回とし、TMSシグナルを0ppmとしてH−NMRスペクトルを得た。ポリカーボネートジオールにおける積分値比は、前記測定したH−NMRにおいて得られた、3.90〜4.45ppmのシグナルの積分値と3.33〜3.43ppmのシグナルの積分値とを用いて、下記式(2)で求めた。
【0065】
積分値比=E/D×1000 (2)
D:3.90〜4.45ppmのシグナルの積分値
E:3.33〜3.43ppmのシグナルの積分値
【0066】
2.ポリカーボネートジオール中の含有成分の分析(ICP)
ポリカーボネートジオール中に含有する各成分を以下のとおり分析した。まず、サンプルをテフロン(登録商標)製分解容器に秤取り、高純度硝酸(関東化学製)を加えてマイクロウエーブ分解装置(マイルストーンゼネラル社製、ETHOS TC)を用いて分解した。サンプルは完全に分解され、得られた分解液は無色透明となった。分解液に純水を加えて検液とした。得られた検液について誘電結合プラズマ分析装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、iCAP6300 Duo)を用い、各元素の標準液を元に定量を行った。
【0067】
3.ポリカーボネートジオールのOH末端基割合の決定
ポリカーボネートジオールにおける末端OH基割合を以下のとおり決定した。まず、70g〜100gのポリカーボネートジオールを300mlのナスフラスコに測り取った。留分回収用のトラップ球を接続したロータリーエバポレーターを用いて、前記ナスフラスコ中のポリカーボネートジオールを、0.4kPa以下の圧力下、約180℃の加熱浴で加熱し、攪拌して、トラップ球に該ポリカーボネートジオールの約1〜2重量%に相当する留分、即ち約1g(0.7〜2g)の初期留分を得た。得られた留分を約100g(95〜105g)のエタノールに溶解させ溶液として回収した。回収した溶液をガスクロマトグラフィー分析(以下「GC分析」とも称す。)して、得られたクロマトグラフのピーク面積の値をから、下記式(1)によりポリカーボネートジオールにおける末端OH基割合を計算した。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィー6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃から10℃/minで250℃まで昇温した後、その温度で15分間保持するプロファイルとした。GC分析における各ピークの同定は、下記GC−MS装置を用いて行った。GC装置は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)を付けた6890(米国ヒューレット・パッカード製)を用いた。GC装置において、初期温度40℃から昇温速度10℃/minで220℃まで昇温した。MS装置は、Auto−massSUN(日本JEOL製)を用いた。MS装置において、イオン化電圧70eV、スキャン範囲m/z=10〜500、フォトマルゲイン450Vで測定を行った。
【0068】
末端OH基割合(%)=B÷A×100 (1)
A:ジオールを含むアルコール類(エタノールを除く)のピーク面積の総和
B:ジオールのピーク面積の総和
【0069】
4.ポリカーボネートジオールの組成の決定
ポリカーボネートジオールの組成を以下のとおり決定した。まず、100mlのナスフラスコに、サンプルを1g測り取り、エタノール30g、水酸化カリウム4gを入れて、混合物を得た。得られた混合物を100℃のオイルバスで1時間加熱した。前記混合物を室温まで冷却後、指示薬としてフェノールフタレインを前記混合物に1〜2滴添加し、塩酸で中和した。その後、前記混合物を冷蔵庫で3時間冷却し、沈殿した塩を濾過で除去した後、濾液をガスクロマトグラフィー(GC)分析した。なお、GC分析は、カラムとしてDB−WAX(米国J&W社製)30m、膜厚0.25μmを付けたガスクロマトグラフィーGC14B(島津製作所製)を用い、ジエチレングリコールジエチルエステルを内部標準として用い、検出器に水素炎イオン化検出器(FID)を用いて行った。カラムの昇温プロファイルは、60℃で5分保持した後、10℃/minで250℃まで昇温するプロファイルとした。GC分析により得られたジオールの面積値を元に、ポリカーボネートジオールの組成を決定した。
【0070】
5.ポリカーボネートジオールの数平均分子量の決定
ポリカーボネートジオールの数平均分子量は、無水酢酸とピリジンとを用い、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定する「中和滴定法(JIS K0070−1992)」によって水酸基価(OH価)を決定し、下記式(3)を用いて計算した。
【0071】
数平均分子量=2/(OH価×10−3/56.1) (3)
【0072】
6.ポリカーボネートジオールの性状の確認
80℃に加熱したポリカーボネートジオールを透明なサンプル瓶に入れ、室温まで冷えた状態を目視で観察した。透明であり、かつサンプル瓶を傾けた時に僅かでも流動性がある場合を液状と、不透明又はサンプル瓶を傾けても状態が変化しない何れかの場合及び双方の場合を固体として表した。
【0073】
7.分散安定性
ポリカーボネートジオールから得られる塗布液及びポリウレタンディスパージョンを用い、JIS K5600−2−5に従い、分散安定性を評価した。なお、塗布液は、調整した後25℃で3時間放置し評価した。
【0074】
8.塗膜の耐アルコール性
ポリカーボネートジオールから得られた塗膜を用い、50%エタノール(EtOH)水溶液を付着させ、20℃で4時間放置し、塗膜の外観を目視で評価した。JISK5600−8−1に準じて欠陥の程度及び量を等級0〜5で表し、塗膜の耐アルコール性とした。
【0075】
9.塗膜の耐酸性
ポリカーボネートジオールから得られた塗膜について、0.1mol/LのHSO水溶液に24時間室温で浸漬後の塗膜外観を目視で評価した。JIS K5600−8−1に準じて欠陥の程度及び量を等級0〜5で表し、塗膜の耐酸性とした。
【0076】
10.フィルムの平滑性
ポリカーボネートジオールを用いて得られたポリウレタンフィルムについて、レーザー顕微鏡(オリンパス製、OLS4100)を用いて表面の凸凹の振幅(μm)を求めた。
【0077】
11.ポリウレタンの機械的物性
ポリカーボネートジオールを用いて得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取り、23℃、50%RHの恒温室で3日間養生したものを試験体とした。該試験体についてテンシロン引張試験器(ORIENTEC製、RTC−1250A)を用い、チェック間距離50mm、引張速度100mm/分で、破断強度(単位:MPa)及び破断伸度(単位:%)を測定した。
【0078】
12.ポリウレタンの耐熱性
ポリカーボネートジオールを用いて得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取り、120℃の熱風乾燥器に5日間放置したものを試験体とした。その後、該試験体について上記のポリウレタンの機械的物性に示す方法で破断強度(単位:MPa)を測定した。下記式(4)で強度保持率を求め、ポリウレタンの耐熱性の指標とした。
【0079】
強度保持率(%)=E/D×100 (4)
E:耐熱性試験後の破断強度(MPa)
D:耐熱性試験前の破断強度(MPa)
【0080】
13.ポリウレタンフィルムの耐油性
ポリカーボネートジオールを用いて得られたポリウレタンフィルムを10mm×80mmの短冊型に切り取った試験体に、0.1gのオレイン酸を付着させ、20℃で4時間放置し、試験体の外観を目視で評価した。JISK5600−8−1に準じて欠陥の程度及び量を等級0〜5で表し、耐油性とした。
【0081】
14.ポリカーボネートジオール中の水分量の測定
水分測定装置(KF−100型、三菱化学アナリテック製)を用い、JIS K0068に準じ、容量分析法でポリカーボネートジオール中の水分量を測定した。
【0082】
15.塗膜の透明性
ポリカーボネートジオールから得られた塗膜を、90℃の蒸留水に1週間浸漬した。その後、塗膜から水分を拭き取り、23℃、50%RHの恒温室で塗膜を3日間養生した。JIS K 7105に準じて、浸漬前後の塗膜の全光線透過率を求め、下記式(5)から塗膜の透明性を求めた。
【0083】
透明性=F/G×100 (5)
G:浸漬前の塗膜の全光線透過率(%)
F:浸漬後の塗膜の全光線透過率(%)
【0084】
[実施例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを275g(3.1mol)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.2gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。反応温度を190℃とし、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−1と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。また、PC−1中の水分量を測定したところ82ppmであった。
【0085】
[実施例2]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを310g(3.4mol)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.2gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、反応温度を160℃として2時間反応を行った後、反応温度を190℃に上げてさらに12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−2と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0086】
[実施例3]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを350g(3.9mol)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.2gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、反応温度を150℃として3時間反応を行った後、反応温度を190℃に上げてさらに12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−3と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0087】
[比較例1]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを420g(4.7mol)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.2gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、反応温度を140℃として10時間反応を行った後、反応温度を190℃に上げてさらに10時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−21と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0088】
[実施例4]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを245g(2.8mol)、1,5−ペンタンジオールを450g(4.3mol)、1,6−ヘキサンジオールを520g(4.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.35gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、165℃で3時間反応を行った後、反応温度を185℃に上げてさらに12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。また、得られたポリカーボネートジオールのH−NMR分析チャートを図1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−4と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。また、PC−4中の水分量を測定したところ117ppmであった。
【0089】
[実施例5]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを215g(2.4mol)、1,5−ペンタンジオールを450g(4.3mol)、1,6−ヘキサンジオールを520g(4.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.35gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、165℃で1時間反応を行った後、反応温度を185℃に上げてさらに14時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−5と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0090】
[実施例6]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを190g(2.2mol)、1,5−ペンタンジオールを450g(4.3mol)、1,6−ヘキサンジオールを520g(4.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.35gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、190℃で12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−6と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0091】
[比較例2]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを180g(2.1mol)、1,5−ペンタンジオールを450g(4.3mol)、1,6−ヘキサンジオールを520g(4.4mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.35gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、195℃で12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.39g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−22と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0092】
[実施例7]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジエチルカーボネートを375g(3.2mol)、1,5−ペンタンジオールを460g(4.4mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.15gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。190℃で生成するエタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を14kPaまで減圧し、ジオールとジエチルカーボネートとの混合物を留去しながら、200℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.17g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−7と略す。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0093】
[実施例8]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジエチルカーボネートを375g(3.2mol)、1,5−ペンタンジオールを460g(4.4mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.15gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。190℃で生成するエタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を14kPaまで減圧し、ジオールとジエチルカーボネートとの混合物を留去しながら、210℃でさらに4時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.17g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールを分析した結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−8と略す。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0094】
[実施例9]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを220g(2.5mol)、1,4−ブタンジオールを300g(3.3モル)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.2gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、165℃で3時間反応を行った後、反応温度を185℃に上げてさらに12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−9と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0095】
[実施例10]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを245g(2.8mol)、1,4−ブタンジオールを620g(6.9モル)、1,6−ヘキサンジオールを240g(2.0mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.2gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、165℃で3時間反応を行った後、反応温度を185℃に上げてさらに12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.22g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−10と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0096】
参考例1
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを250g(2.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを1100g(9.3mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.3gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、165℃で3時間反応を行った後、反応温度を185℃に上げてさらに12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.33g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−11と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0097】
[実施例12]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを235g(2.6mol)、1,5−ペンタンジオールを400g(3.9mol)、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを450g(3.8mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.05gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。反応温度を190℃として、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.06g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−12と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0098】
参考例2
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを190g(2.1mol)、1,9−ノナンジオールを1000g(6.2mol)仕込んだ。前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.3gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。反応温度を190℃として、生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら12時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.33g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−13と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0099】
[エーテルジオール化合物の合成1]
攪拌機、分液ロート、温度計及び冷却管を備えた500mlのガラス製四つ口フラスコに、水酸化カリウム(試薬特級、純度85%、和光純薬工業製)26.4g(0.4mol)と1,6−ヘキサンジオール(アルドリッチ製)118.0g(1.0mol)とを仕込み、120℃のオイルバスで30分撹拌した。フラスコ内の温度が100℃となるようにオイルバスを設定後、分液ロートに6−ブロモ−1−ヘキサノール72.4g(0.4mol)を入れ、少量ずつ10分間で滴下した。滴下終了後、オイルバスの温度を140℃に上げて、さらに2時間反応した。室温まで冷却後、フラスコにエタノール(試薬特級、和光純薬工業製)を200ml加え5分撹拌した。フラスコの内容物を濾過後、濾液を500mlのナス型フラスコに移し、エバポレーターでエタノールを除去した後、規則充填物を充填した精留塔を取り付け、蒸留精製することで6(6−ヒドロキシヘキサオキシ)−1−ヘキサノール(上記式(E)においてm=n=6、純度92%)18.2gを得た。このエーテルジオール化合物を、EC−1と略す。
【0100】
[エーテルジオール化合物の合成2]
エーテルジオール化合物の合成1において、1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオール(アルドリッチ製)104.0g(1.0mol)とした以外は同じ方法で反応を行い、6(5−ヒドロキシペンタオキシ)−1−ヘキサノール(上記式(E)においてm=6、n=5、純度90%)15.7gを得た。このエーテルジオール化合物を、EC−2と略す。
【0101】
[エーテルジオール化合物の合成3]
エーテルジオール化合物の合成1において、1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオール(アルドリッチ製)104.0g(1.0mol)とし、6−ブロモ−1−ヘキサノールを5−ブロモ−1−ペンタノールを66.8g(0.4mol)とした以外は同じ方法で反応を行い、5(5−ヒドロキシペンタオキシ)−1−ペンタノール(上記式(E)においてm=n=5、純度94%)12.6gを得た。このエーテルジオール化合物を、EC−3と略す。
【0102】
[実施例14]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを770g(8.8mol)、1,5−ペンタンジオールを450g(4.3mol)、1,6−ヘキサンジオールを520g(4.4mol)、EC−1を1.61g(0.007mol)、EC−3を1.38g(0.007mol)仕込んだ。
前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.8gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、170℃で15時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.89g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−14と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0103】
[実施例15]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、エチレンカーボネートを830g(9.4mol)、1,4−ブタンジオールを450g(5.0mol)、1,6−ヘキサンジオールを520g(4.4mol)、EC−1を1.72g(0.008mol)仕込んだ。
前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.8gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するエチレングリコールとエチレンカーボネートとの混合物を留去しながら、170℃で15時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を11kPaまで減圧し、ジオールとエチレンカーボネートとを留去しながら、190℃でさらに7時間反応を行った。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.89g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−15と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0104】
[実施例16]
規則充填物を充填した精留塔と攪拌装置とを備えた2Lのガラス製フラスコに、ジメチルカーボネートを780g(8.7mol)、1,5−ペンタンジオールを500g(4.8mol)、1,6−ヘキサンジオールを490g(4.2mol)仕込んだ。
前記フラスコに触媒としてチタンテトラブトキシド0.5gを加え、前記フラスコ内の混合物を常圧で攪拌及び加熱した。生成するメタノールとジメチルカーボネートとの混合物を留去しながら、反応温度を140℃として10時間反応を行った後、反応温度を190℃に上げてさらに10時間反応を行った。その後、前記フラスコ内の圧力を12kPaまで減圧し、ジオールとジメチルカーボネートとを留去しながら、195℃でさらに5時間反応を行った。温度を80℃とした後、EC−2を2.52g(0.012mol)加え、180℃で10時間撹拌した。その後、前記フラスコにリン化合物として2−エチルヘキシルアシッドホスフェートを0.55g加え、前記フラスコ内の混合物を120℃で5時間加熱することによりポリカーボネートジオールを得た。得られたポリカーボネートジオールの分析結果を、表1に示す。このポリカーボネートジオールをPC−16と略する。得られたポリカーボネートジオールは、式(A)で表される繰り返し単位と末端ヒドロキシル基とを有しており、各繰り返し単位のR及び割合は表1に示すとおりであった。
【0105】
【表1】
【0106】
[応用例1]
ポリカーボネートジオールPC−1を40g、レベリング剤としてBYK−331(BYKケミカル製)を0.75g、顔料としてCR−50(石原産業製、平均粒径0.25μm)を5g、シンナー(キシレン/酢酸ブチル=70/30(重量比))に2重量%となるように溶解したジブチルスズジラウレート溶液を1.25g、並びにシンナーを40g混ぜて撹拌し、塗料主剤を得た。得られた塗料主剤に、硬化剤として有機ポリイソシアネート(デュラネートTPA−100、旭化成ケミカルズ製、イソシアネート(NCO)含量:23.1%)を7.5g加えて、塗布液を調製した。該塗布液を、アクリルニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂板上に塗布し、室温で2時間シンナーを飛ばした後、80℃で2時間加熱硬化させて塗膜を得た。塗布液で分散安定性を評価し、塗膜で耐薬品性を評価し、その結果を表2に示した。
【0107】
[応用例2〜10、12及び14〜16並びに参考応用例1及び2
ポリカーボネートジオールとして、PC−2〜16を用いた以外は、応用例1と同様にして塗布液を調製した。該塗布液を用いた以外は、応用例1と同様にして塗膜を得た。塗布液で分散安定性を評価し、塗膜で耐薬品性を評価し、その結果を表2に示した。
【0108】
[比較応用例1及び2]
ポリカーボネートジオールとして、PC−21及び22を用いた以外は、応用例1と同様にして塗布液を調製した。該塗布液を用いた以外は、応用例1と同様にして塗膜を得た。塗布液で分散安定性を評価し、塗膜で耐薬品性を評価し、その結果を表2に示した。
【0109】
【表2】
【0110】
[応用例17]
還流冷却器、温度計、撹拌装置を備えた反応容器に、ポリカーボネートジオールPC−1を200g、イソホロンジイソシアネートを66.2g、トリエチルアミンで中和したジメチロールプロピオン酸を23.3g、メチルエチルケトン(MEK)を700g入れ、50℃で2時間反応を行い、末端がイソシアネートのウレタンプレポリマーを得た。反応容器内の温度を30℃とした後、撹拌しながら該ウレタンプレポリマーに640gの蒸留水を20g/分の速度で添加して、ウレタンプレポリマー溶液のエマルジョンを得た。さらに、反応容器内に、鎖延長剤として、エチレンジアミンの20重量%水溶液を23.8g、撹拌しながら30分かけて添加した。その後、反応容器内の温度を40℃としさらに30分反応を行った。還流冷却管を単蒸留装置に替えた後、減圧下で3時間かけて反応容器の内温を80℃まで昇温しながら溶媒であるMEKを留去して、固形分が約30重量%の水分散ポリウレタン樹脂を得た。得られた水分散ポリウレタン樹脂100gに顔料として二酸化チタン(CR−50、石原産業製、平均粒径0.25μm)を5g加えて撹拌した。得られた顔料含有水分散ポリウレタン樹脂(ポリウレタンディスパージョン)を用いて、顔料の分散安定性を評価した。評価結果を表3に示した。さらに、水分散ポリウレタン樹脂を40℃で1ヶ月保管した後、ガラス板上で成膜し、24時間室温で放置した後120℃で30分熱処理を行い、厚さ100μm、幅10mm、長さ60mmの試料フィルムを得た。該フィルムを用い、平滑性を評価した。評価結果を表3に示した。
【0111】
[応用例18〜26、28及び30〜32並びに参考応用例3及び4
ポリカーボネートジオールとして、PC−2〜16を用いた以外は、応用例17と同様にして水分散ポリウレタン樹脂及び試料フィルムを得て各評価を行った。該評価結果を表3に示した。
【0112】
[比較応用例3及び4]
ポリカーボネートジオールとして、PC−21及び22を用いた以外は、応用例17と同様にして水分散ポリウレタン樹脂及び試料フィルムを得て各評価を行った。該評価結果を表3に示した。
【0113】
【表3】
【0114】
[応用例33]
攪拌装置、温度計、冷却管の付いた反応器に、実施例1で得たPC−1を200g、ヘキサメチレンジイソシアネート34g、触媒としてジブチルスズジラウレート0.02gを仕込み、70℃で5時間反応させて末端イソシアネート(NCO)基を持つウレタンプレポリマーを得た。該プレポリマーに溶剤としてジメチルホルムアミド600gを加えて溶液を得た。その後、得られた溶液に鎖延長剤としてイソホロンジアミン17gを加えて35℃で1時間撹拌してポリウレタン樹脂溶液を得た。得られたポリウレタン樹脂溶液をガラス板上に流延し、室温で30分間放置して溶剤をとばした後、100℃の乾燥機に2時間入れて乾燥させてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行い、該評価結果を表4に示した。
【0115】
[応用例34〜42、44及び46〜48並びに参考応用例5及び6
ポリカーボネートジオールとして、PC−2〜16を用いた以外は、応用例33と同様にしてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行い、該評価結果を表4に示した。
【0116】
[比較応用例5及び6]
ポリカーボネートジオールとして、PC−21及び22を用い、応用例33と同様にしてポリウレタンフィルムを得た。該ポリウレタンフィルムを用いて物性の評価を行い、該評価結果を表4に示した。
【0117】
【表4】
【0118】
参考例3
実施例1で得られたポリカーボネートジオール100gを500gのマヨネーズ瓶に入れ、蓋をすることなく、23℃、相対湿度50%の恒温室に5日間放置した。当該放置後、マヨネーズ瓶中のポリカーボネートジオールをよく撹拌した後にポリカーボネートジオール中の水分量を測定したところ、630ppmであった。このポリカーボネートジオールをPC−17と略する。
【0119】
参考例4
実施例4で得られたポリカーボネートジオール100gを500gのマヨネーズ瓶に入れ、蓋をすることなく、23℃、相対湿度50%の恒温室に5日間放置した。当該放置後、マヨネーズ瓶中のポリカーボネートジオールを良く撹拌した後にポリカーボネートジオール中の水分量を測定したところ、980ppmであった。このポリカーボネートジオールをPC−18と略する。
【0120】
参考例5
実施例1に記載する方法で重合し、リン化合物を加えて加熱することにより得られたポリカーボネートジオールを、密栓してドライボックスに移し、常温まで冷却した。ドライボックス中でサンプリングを行い、ポリカーボネートジオール中の水分量を測定したところ、8ppmであった。このポリカーボネートジオールをPC−19と略する。
【0121】
参考応用例7〜9
ポリカーボネートジオールとして、PC−17〜19を用いた以外は、応用例1と同様にして塗布液を調製した。該塗布液を用いた以外は、応用例1と同様にして塗膜を得た。塗膜で透明性を評価し、その結果を表5に示した。なお、応用例1及び応用例4で得られた塗膜についても、透明性を評価し、その結果を表5に示した。なお、参考例応用例9では、塗料主剤の調製は、ドライボックス中で行った。
【0122】
【表5】
【0123】
本出願は、2014年8月13日出願の日本特許出願(特願2014−164969号)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のポリカーボネートジオールは、顔料の分散安定性に優れるとともに、耐熱性や耐薬品性を有する塗膜が得られる。これらの特性を有することから、本発明のポリカーボネートジオールは、塗料の構成成分として好適に用いることができる。
図1