特許第6360904号(P6360904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • 6360904-電子機器 図000002
  • 6360904-電子機器 図000003
  • 6360904-電子機器 図000004
  • 6360904-電子機器 図000005
  • 6360904-電子機器 図000006
  • 6360904-電子機器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360904
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/04 20060101AFI20180709BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20180709BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20180709BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20180709BHJP
   B06B 1/06 20060101ALI20180709BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20180709BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20180709BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   H04R7/04
   H04R17/00
   H04R1/02 102Z
   H04R1/00 317
   B06B1/06 Z
   H01L41/09
   H04M1/02 C
   H05K5/02 A
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-553090(P2016-553090)
(86)(22)【出願日】2015年10月5日
(86)【国際出願番号】JP2015078171
(87)【国際公開番号】WO2016056500
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2016年10月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-208934(P2014-208934)
(32)【優先日】2014年10月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】特許業務法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 啓一
(72)【発明者】
【氏名】松井 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文久
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
【審査官】 渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−192119(JP,A)
【文献】 特開2005−175553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B06B 1/06
H01L 41/00−41/47
H04M 1/00
H04M 1/02− 1/23
H04M 1/24− 1/82
H04M 99/00
H04R 1/00− 1/08
H04R 1/12− 1/14
H04R 1/42− 1/46
H04R 7/00− 7/26
H04R 17/00−17/02
H04R 17/10
H04R 31/00
H05K 5/00− 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形のパネルと、該パネルを保持する筐体と、前記パネルの裏面側に付設された圧電素子とを備えた電子機器において、
前記パネルは縁部を筐体に支持された状態で筐体に接着されており、且つ、筐体と非接着となっている辺(非接着辺)を少なくとも1つ有し
前記圧電素子の駆動によるパネルの振動振幅は、該圧電素子の付設位置よりもパネルの長手方向の中央側において最大となる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記圧電素子は、パネルの前記非接着辺の近傍に付設されている
ことを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記圧電素子は略直方体形状をなし、長手方向が前記非接着辺と平行となるようにパネルに付設されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電子機器。
【請求項4】
前記非接着辺はパネルの短辺である
ことを特徴とする請求項1乃至3何れか1項記載の電子機器。
【請求項5】
筐体と接着されている辺(接着辺)には、筐体と非接着となっている非接着領域が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至4何れか1項記載の電子機器。
【請求項6】
前記接着辺の長手方向中央部に非接着領域が形成されている
ことを特徴とする請求項5記載の電子機器。
【請求項7】
前記非接着領域は非接着辺と隣接している
ことを特徴とする請求項5又は6何れか1項記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やスマートフォンと呼ばれる多機能携帯通信端末などの電子機器では、音声出力用の発音素子として圧電スピーカと呼ばれる圧電素子が用いられている。従来の電子機器では、筐体内に圧電素子を配置するとともに、筐体には音声を気導音として外部に伝えるための通音孔が設けられている。一方、近年では筐体の主面に配置されたパネルの裏面に圧電素子を付設し、パネルを振動させることにより音声を伝える技術が提案されている。このような技術は、防水性を高めるために通音孔を廃止したいという要望や、空気を媒介とした気導音だけでなく骨伝導音として音声を伝えたいという要望や、パネル振動を利用者の触覚として伝えるハプティクス技術を実装したいという要望等から提案されているものである。なお、ここでパネルとは表示機能は含まずタッチ機能のみを有するタッチパネルや、表示機能及びタッチ機能を有するタッチパネルのほか、液晶表示装置など別途設けられた表示装置を保護する保護パネルも含むものとする。
【0003】
このような技術を採用した従来の電子機器としては特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1に記載のものは、筐体と、縁部を筐体に支持された略矩形のパネルと、パネルの裏面に付設された略直方体形状の圧電素子とを備えている。圧電素子は、長手方向がパネルの長手方向と直交する向きで付設されており、特に、圧電素子の付設位置においてパネルの振動振幅が最大となるような位置に付設されている。具体的な圧電素子の付設位置は、パネルの長手方向の一方の端部付近である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5255142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1に記載のものでは、圧電素子がパネルの端部付近において、該付設位置でのパネルの振動振幅が最大となるように付設されているので、結果として気導音の音圧が高いポイントがパネル端部付近のみに集中し、特に中央部付近での音圧が小さくなる。このため、電話機のように耳に当てての利用を考慮した場合、耳を正確な位置に当てないと聞き取りづらいという問題がある。また、電子機器に耳を当てるのではなく、オーディオスピーカのように耳から離れた位置で使う場合には、音質が安定しないという問題もある。さらに、ハプティクス技術として圧電素子を用いる場合、パネルの端部と中央部では振動量が大きく異なるので、利用者に提供する触感が位置によって安定しないという問題もある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、パネル全体で安定した振動を生じさせることができる電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明は、略矩形のパネルと、該パネルを保持する筐体と、前記パネルの裏面側に付設された圧電素子とを備えた電子機器において、前記パネルは縁部を筐体に支持された状態で筐体に接着されており、且つ、筐体と非接着となっている辺(非接着辺)を少なくとも1つ有し、前記圧電素子の駆動によるパネルの振動振幅は、該圧電素子の付設位置よりもパネルの長手方向の中央側において最大となることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、圧電素子の付設位置よりも中央部側においてパネルの振動振幅が最大となるので、パネル全体で安定した振動を生じさせることができる。
【0009】
本発明の好適な態様の一例としては、前記圧電素子は、パネルの前記非接着辺の近傍に付設されていることを特徴とするものが挙げられる。また、本発明の好適な態様の他の例としては、前記圧電素子は略直方体形状をなし、長手方向が前記非接着辺と平行となるようにパネルに付設されていることを特徴とするものが挙げられる。また、本発明の好適な態様の他の例としては、前記非接着辺はパネルの短辺であることを特徴とするものが挙げられる。また、本発明の好適な態様の他の例としては、筐体と接着されている辺(接着辺)には、筐体と非接着となっている非接着領域が形成されていることを特徴とするものが挙げられる。また、本発明の好適な態様の他の例としては、前記接着辺の長手方向中央部に非接着領域が形成されていることを特徴とするものが挙げられる。本発明の好適な態様の他の例としては、前記非接着領域は非接着辺と隣接していることを特徴とするもの挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように本発明によれば、圧電素子の付設位置よりも中央部側においてパネルの振動振幅が最大となるので、パネル全体で安定した振動を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電子機器の概略上面図
図2】パネルを取り除いた電子機器の概略上面図
図3】電子機器の断面図
図4】電子機器のパネルの振動振幅を測定したグラフ
図5】パネルを取り除いた他の例に係る電子機器の概略上面図
図6】パネルを取り除いた他の例に係る電子機器の概略上面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施の形態に係る電子機器について図面を参照して説明する。図1は電子機器の概略上面図、図2はパネルを取り除いた電子機器の概略上面図、図3は電子機器の断面図である。本実施の形態では電子機器の一例としていわゆるスマートフォンと呼ばれる多機能携帯通信端末について説明する。
【0013】
電子機器1は、図1図3に示すように、上面開口の薄型箱状の筐体10と、筐体10の上面開口を閉鎖するパネル20と、パネル20の裏面すなわち筐体10の内側に付設した圧電素子30とを備えている。
【0014】
筐体10は、底板11と該底板11の縁部を囲む枠体12とからなる上面開口の薄型箱状をなしている。図2及び図3に示すように、枠体12の上部内側には、パネル20の縁部を保持する段差13が形成されている。段差13の深さはパネル20の上面と枠体12の上面が面一となるように、パネル20の厚みと後述する接着部材の厚みの和にほぼ等しい。
【0015】
パネル20は、接触を検出するタッチ機能のみを内蔵するタッチパネル、タッチ機能及び液晶表示機能などの表示機能を内蔵する液晶タッチパネル、或いは、タッチ機能を内蔵せず筐体10内に配置した液晶表示装置などの表示装置を保護する保護パネルである。パネル20は、矩形の板状部材を主構成要素として有している。パネル20の平面形状は、枠体12の内面形状と同一或いはやや小さい矩形である。パネル20の主材料は、ガラスやアクリルなど種々のものを用いることができる。パネル20の前面は平面であってもよく、湾曲したものであってもよい。
【0016】
パネル20は、その縁部を枠体12の段差13の上面に接着部材で接着されている。本願発明の特徴的な点の1つは、パネル20の四辺のうち少なくとも1つの辺の縁部は、段差13には接着されていない、換言すれば非接着状態となっている点にある。本実施の形態では、パネル20の一対の短辺21,22は段差13に接着されていない非接着辺となっている。一方、パネル20の一対の長辺23,24は段差13に接着されている接着辺となっている。
【0017】
ここで、パネル20の長辺23,24は、全ての縁部において段差13に接着されているわけではなく、一部の領域のみが接着され、他の領域は非接着領域となっている。具体的には、図2に示すように、長辺23,24のそれぞれには接着材や両面テープなどからなる2つの接着部材41及び42並びに43及び44が配置されている。接着部材41,43と接着部材42,44とは所定の距離をおいて配置されている。すなわち、長辺23,24において、接着部材41,43と接着部材42,44との間隙領域は非接着領域となっている。この非接着領域は、長辺23,24の中央部に位置する。また、長辺23,24において、各接着部材41〜44の短辺21,22側の領域も非接着領域となっている。したがって、この非接着領域は、短辺21,22における縁部と隣接する。なお、図2及び図3においては、図面の視認性の観点から、接着部材41〜44にハッチングを付している点に留意されたい。
【0018】
圧電素子30は、略直方体形状をなしている。圧電素子30は、バイモルフ型、ユニモルフ型、積層型など種々のものを用いることができる。本実施の形態では、積層型圧電素子を用いた。圧電素子30は、パネル20を振動させて気導音により又は骨伝導音により音声を伝達する用途の他、パネル20の振動を触覚として伝える用途として用いられる。
【0019】
圧電素子30は、パネル20の裏面側において接着剤、両面テープなどの接着部材(図示省略)により接着されている。圧電素子30は、長手方向がパネル20の長手方向と直交し、且つ、長手方向中心位置がパネル20の短手方向中心に位置している。また、本発明では、圧電素子30は、非接着辺である短辺21,22の近傍において、一方の短辺21,22と圧電素子30の一方の長手側面が平行となるように配置されている。本実施の形態では、図2及び図3に示すように、パネル20の一方の短辺21の近傍に配置した。圧電素子30の側面と短辺21との距離(パネル辺と圧電素子のパネル辺と近い側の辺との間の距離)は、0.3〜12mm程度が好ましい。
【0020】
図4に本実施の形態に係る電子機器1のパネル20の振動振幅を測定したグラフを示す。ここでは圧電素子30は、幅6mm、長さ53mm、厚み0.3mmのものを用いた。圧電素子30の側面とパネル20の短辺21までの距離は5mmとした。また、パネル20は、縦64mm、横133mm、厚み0.55mmの強化ガラスを用いた。パネル20の枠体12の段差13の幅は1mmとし、接着部材41〜44の幅も段差13の幅と同一とした。また、図4では、圧電素子30に対して、20Vp−pで1500Hzの正弦波信号と、20Vp−pで3400Hzの正弦波信号を入力した。
【0021】
図4のグラフにおいて、縦軸は振動振幅[nm]、横軸は測定位置を示す。測定位置は、パネル20の短辺21からの距離[mm]をもって示す。測定にはレーザドップラー流速計を用いた。
【0022】
図4に示すように、本実施の形態に係る圧電素子30では、圧電素子30の振動によるパネル20表面の振動振幅が最大となる位置が、圧電素子30の直上ではなく、圧電素子30の付設位置よりもパネル20の長手方向の中心方向に位置していることがわかった。これにより、発音点がパネル20の一部に集中するのではなく、広い範囲から発音するようになるため、パネル全体で安定した振動を生じさせることができることがわかった。
【0023】
以上本発明の実施の形態について詳述したが本発明はこれに限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、長辺23,24には、一部の領域のみが接着され、他の領域は非接着領域となるように、それぞれ接着部材41及び42並びに43及び44が配置されているが、他の形態であってもよい。例えば、図5に示すように、接着部材41及び42並びに43及び44がそれぞれ隣接する短辺21,22までに亘って形成されていてもよい。この場合、接着部材41,43と接着部材42,44との間隙のみが非接着領域となる。または、図6に示すように、長辺23,24に設ける接着部材は41及び43のみとしてもよい。あるいは、長辺23,24のそれぞれに、3つ以上の接着部材を設けるようにしてもよい。あるいは、長辺23,24の全ての領域を接着領域としてもよい。
【0024】
また上記実施の形態では、圧電素子30が隣接してない短辺22も枠体12の段差13と非接着となっているが、該短辺22は段差13に接着するようにしてもよい。この場合、接着部材の形態は、長辺23,24における接着部材と同様に種々の形態を任意に選択できる。すなわち、短辺22の一部の領域のみを接着するようにしてもよいし、全ての領域を接着するようにしてもよい。
【0025】
さらに、上記実施の形態では、パネル20に圧電素子30を1つのみ付設したが、2つ以上付設するように
してもよい。例えば、圧電素子30を2つ付設する場合、一方の圧電素子30は上述した位置に付設し、他方の圧電素子30はパネル20の中心点を基準として前記圧電素子30と対象となる位置に付設すると好適である。
【0026】
さらに上記実施の形態では電子機器の一例としてスマートフォンについて説明したが、タブレット端末、ノートパソコン、携帯電話、腕時計、フォトスタンド、各種機器のリモコンや操作部など種々の電子機器に本願発明を適用できる。
【符号の説明】
【0027】
1…電子機器、10…筐体、11…底板、12…枠体、13…段差、20…パネル、21,22…短辺、23,24…長辺、30…圧電素子、41〜44…接着部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6