特許第6360946号(P6360946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6360946
(24)【登録日】2018年6月29日
(45)【発行日】2018年7月18日
(54)【発明の名称】広視野の仮想画像プロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20180709BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20180709BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20180709BHJP
   G02B 27/02 20060101ALI20180709BHJP
【FI】
   G02B5/18
   G09F9/00 357
   G02B6/00 301
   G02B27/02 Z
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-106561(P2017-106561)
(22)【出願日】2017年5月30日
(62)【分割の表示】特願2015-517278(P2015-517278)の分割
【原出願日】2013年5月28日
(65)【公開番号】特開2017-194693(P2017-194693A)
(43)【公開日】2017年10月26日
【審査請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】13/494,722
(32)【優先日】2012年6月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314015767
【氏名又は名称】マイクロソフト テクノロジー ライセンシング,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス,エイドリアン
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特許第6253117(JP,B2)
【文献】 米国特許第07119965(US,B1)
【文献】 特開2000−056259(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02381290(EP,A1)
【文献】 特開平03−198023(JP,A)
【文献】 特開平02−001802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B 6/00、6/34
G02B 27/02
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想画像に対応するデータを受信するステップと;
第1の光線を第1の角度の範囲でロッドライトガイドの外に回折してスラブライトガイドに入れるのに効果的であるように、前記第1の光線を前記ロッドライトガイドの第1の回折格子へ入れるよう、イルミネータを制御するステップと;
第2の光線を第2の角度の範囲で前記ロッドライトガイドの外に回折して前記スラブライトガイドに入れるのに効果的であるように、前記第2の光線を前記ロッドライトガイドの第2の回折格子へ入れるよう、前記イルミネータを制御するステップであって、前記第1の回折格子は、前記ロッドライトガイドの第1の面上にあり、前記ロッドライトガイドの前記第1の面上の第2の回折格子と実質的に平行であり、前記スラブライトガイドは、前記第1の回折格子及び前記第2の回折格子に概ね直交するよう第3の回折格子が浮き出しにされ、前記スラブライトガイドは前記仮想画像を生成するよう構成される、ステップと;
を具備する、方法。
【請求項2】
前記スラブライトガイドは、前記第1の角度の範囲と前記第2の角度の範囲の合計に等しい視野を有する前記仮想画像を生成するように構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の角度の範囲は、前記第2の角度の範囲と異なる、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第3の光線が第3の角度の範囲で前記ロッドライトガイドの外に回折して前記スラブライトガイドに入るのに効果的であるように、前記第3の光線を前記ロッドライトガイドの第3の回折格子へ入れるよう、前記イルミネータを制御するステップ、を更に備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第4の光線が第4の角度の範囲で前記ロッドライトガイドの外に回折して前記スラブライトガイドに入るのに効果的であるように、前記第4の光線を前記ロッドライトガイドの第4の回折格子へ入れるよう、前記イルミネータを制御するステップ、を更に備える、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スラブライトガイドは、前記第1の角度の範囲、前記第2の角度の範囲、前記第3の角度の範囲及び前記第4の角度の範囲の合計に等しい視野を有する前記仮想画像を生成するように構成される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の角度の範囲は約−60度から−30度であり、前記第2の角度の範囲は約−30度から0度であり、前記第3の角度の範囲は約0度から30度であり、前記第4の角度の範囲は約30度から60度である、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記スラブライトガイドは、約120度の視野を有する前記仮想画像を生成するように構成される、
請求項1に記載方法。
【請求項9】
前記第3の回折格子は、前記回折された第1の光線及び前記回折された第2の光線を前記スラブライトガイドの外に投影させて、前記仮想画像を生成させるように構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の回折格子は、前記第2の回折格子の第2の空間周波数と異なる第1の空間周波数を有し、該第1の空間周波数は、前記第1の回折格子に、前記回折された第1の光線を前記第1の角度の範囲で投影させ、前記第2の空間周波数は、前記第2の回折格子に、前記回折された第2の光線を前記第2の角度の範囲で投影させる、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スラブライトガイドは、前記回折された第1の光線及び前記回折された第2の光線の各々の一部分を反射し、別の部分を伝送するように構成される部分反射鏡とともに構成される、
請求項1に記載の方法。
【請求項12】
1つ以上のプロセッサによる実行に応答して、該1つ以上のプロセッサに:
仮想画像に対応するデータを受信するステップと;
第1の光線を第1の角度の範囲でロッドライトガイドの外に回折してスラブライトガイドに入れるのに効果的であるように、前記第1の光線を前記ロッドライトガイドの第1の回折格子へ入れるよう、イルミネータを制御するステップと;
第2の光線を第2の角度の範囲で前記ロッドライトガイドの外に回折して前記スラブライトガイドに入れるのに効果的であるように、前記第2の光線を前記ロッドライトガイドの第2の回折格子へ入れるよう、前記イルミネータを制御するステップであって、前記第1の回折格子は、前記ロッドライトガイドの第1の面上にあり、前記ロッドライトガイドの前記第1の面上の第2の回折格子と実質的に平行であり、前記スラブライトガイドは、前記第1の回折格子及び前記第2の回折格子に概ね直交するよう第3の回折格子が浮き出しにされ、前記スラブライトガイドは前記仮想画像を生成するよう構成される、ステップと;
を具備する動作を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項13】
前記スラブライトガイドは、前記第1の角度の範囲と前記第2の角度の範囲の合計に等しい視野を有する前記仮想画像を生成するように構成される、
請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項14】
前記第1の角度の範囲は、前記第2の角度の範囲と異なる、
請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項15】
前記動作は、第3の光線が第3の角度の範囲で前記ロッドライトガイドの外に回折して前記スラブライトガイドに入るのに効果的であるように、前記第3の光線を前記ロッドライトガイドの第3の回折格子へ入れるよう、前記イルミネータを制御するステップ、を更に備える、
請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項16】
前記動作は、第4の光線が第4の角度の範囲で前記ロッドライトガイドの外に回折して前記スラブライトガイドに入るのに効果的であるように、前記第4の光線を前記ロッドライトガイドの第4の回折格子へ入れるよう、前記イルミネータを制御するステップ、を更に備える、
請求項15に記載のコンピュータプログラム。
【請求項17】
前記スラブライトガイドは、前記第1の角度の範囲、前記第2の角度の範囲、前記第3の角度の範囲及び前記第4の角度の範囲の合計に等しい視野を有する前記仮想画像を生成するように構成される、
請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項18】
前記第1の角度の範囲は約−60度から−30度であり、前記第2の角度の範囲は約−30度から0度であり、前記第3の角度の範囲は約0度から30度であり、前記第4の角度の範囲は約30度から60度である、
請求項16に記載のコンピュータプログラム。
【請求項19】
前記第3の回折格子は、前記回折された第1の光線及び前記回折された第2の光線を前記スラブライトガイドの外に投影させて、前記仮想画像を生成させるように構成される、
請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【請求項20】
前記第1の回折格子は、前記第2の回折格子の第2の空間周波数と異なる第1の空間周波数を有し、該第1の空間周波数は、前記第1の回折格子に、前記回折された第1の光線を前記第1の角度の範囲で投影させ、前記第2の空間周波数は、前記第2の回折格子に、前記回折された第2の光線を前記第2の角度の範囲で投影させる、
請求項12に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、広視野の仮想画像プロジェクタに関する。
仮想画像は、ビデオプロジェクタを、格子が浮き出しにされたライトガイドに向けて、ライトガイドの表面から仮想画像を投影することによって、作成され得る。眼鏡が仮想画像プロジェクタを含むことが可能であり、仮想画像をその眼鏡の着用者の目の前に投影する。仮想画像プロジェクタは、眼鏡に配置するには十分に小さいが、典型的には狭視野の仮想画像を投影する。
【発明の概要】
【0002】
本明細書は、広視野の仮想画像プロジェクタを実装するための技術及び装置を説明する。広視野の仮想画像プロジェクタは、少なくとも第1の回折格子と、該第1の回折格子と概ね平行の第2の回折格子とが浮き出しにされた、ロッド(rod)ライトガイドを含む。第1の回折格子は、第1の光線を受信し、第1の回折光線を、ロッドライトガイドから第1の角度の範囲で投影するように構成される。第2の回折格子は、第2の光線を受信し、第2の回折光線をロッドライトガイドから第2の角度の範囲で投影する。仮想画像プロジェクタは更にスラブライトガイドを含む。スラブライトガイドは、第1の回折光線及び第2の回折光線を受信し、第1の回折光線及び第2の回折光線を、当該スラブライトガイドの外へ回折して、広視野の仮想画像を生成するように構成される。
【0003】
この発明の概要の欄における記載は、下記の発明を実施するための形態において更に説明される簡略化された概念を簡略化された形式で紹介するために提供される。この発明の概要における記載は、特許請求に係る主題の主要な特徴を特定するようには意図されておらず、また特許請求に係る主題の範囲を決定する際に用いられるようにも意図されていない。
広視野の仮想画像プロジェクタを実装するための技術及び装置の実施形態は、図面との関連で説明される。図面を通して、同じ番号を使用して類似の機能又は構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】広視野の仮想画像プロジェクタを実装することができる例示の環境を示す図である。
図2】単一の回折格子が浮き出しにされた例示のライトガイドを示す図である。
図3】単一の回折格子が浮き出しにされたライトガイドの視野の例を示す図である。
図4】仮想画像プロジェクタのロッドライトガイドのより詳細な例を示す図である。
図5】仮想画像プロジェクタのロッドライトガイド及びスラブライトガイドのより詳細な例を示す図である。
図6】仮想画像プロジェクタのスラブライトガイドのより詳細な例を示す図である。
図7】広視野の仮想画像プロジェクタを制御する例示の方法を示す図である。
図8】広視野の仮想画像プロジェクタの技術を実装することができる例示のデバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
<概要>
仮想画像は、ビデオプロジェクタを、格子が浮き出しにされたライトガイドに向けて、ライトガイドの表面から仮想画像を投影することによって、作成され得る。眼鏡が仮想画像プロジェクタを含むことが可能であり、仮想画像をその眼鏡の着用者の目の前に投影する。典型的な仮想画像プロジェクタは、眼鏡に配置するには十分に小さいが、仮想画像をわずか30度の水平視野で投影する。
【0006】
この明細書では、広視野の仮想画像プロジェクタを実装するための技術及び装置を説明する。広視野の仮想画像プロジェクタは、少なくとも第1の回折格子と該第1の回折格子と概ね平行の第2の回折格子とが浮き出しにされたロッドライトガイドを含む。第1の回折格子は、第1の光線を受信し、第1の回折光線をロッドライトガイドから第1の角度の範囲で投影する。第2の回折格子は、第2の光線を受信し、第2の回折光線をロッドライトガイドから第2の角度の範囲で投影する。仮想画像プロジェクタは更にスラブライトガイドを含む。スラブライトガイドは、第1の回折光線及び第2の回折光線を受信して、第1の回折光線及び第2の回折光線を当該スラブライトガイドの外へと回折して、広視野の仮想画像を生成するように構成される。
【0007】
一部の実施形態において、仮想画像プロジェクタは、眼鏡と結合されて該眼鏡のレンズの前に広視野の仮想画像を生成し、これにより、眼鏡のレンズを通して見る眼鏡の着用者が、仮想画像を見る。
【0008】
<例示の環境>
図1は、広視野の仮想画像プロジェクタ(ここでは「仮想画像プロジェクタ」)を実装することができる例示の環境100の図である。環境100を、仮想画像ディスプレイデバイス102において実装することができる。仮想画像ディスプレイデバイス102は、限定ではなく例として、頭部装着型ディスプレイデバイス104又はフラットパネル型ディスプレイデバイス106として図示されている。頭部装着型ディスプレイデバイス104は、眼鏡、サングラス、ゴーグル又は任意の他のタイプの頭部装着型ディスプレイデバイスを含むことができる。フラットパネル型ディスプレイデバイス106は、テレビジョン、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、モバイルコンピューティングデバイス又はタブレットコンピューティングデバイスのような、仮想、3次元(3D)及び/又はマルチビュー画像を生成することができる任意のタイプのフラットパネルのディスプレイデバイスを含み得る。
【0009】
仮想画像ディスプレイデバイス102は、プロセッサ108及びコンピュータ読取可能媒体110を含み、コンピュータ読取可能媒体110は、メモリ媒体112及び記憶媒体114を含む。コンピュータ読取可能媒体110は、コントローラ116も含む。コントローラ116をどのように実装及び使用するかは、多様であり、以下で検討される方法の一部として説明される。
【0010】
仮想画像ディスプレイデバイス102は、仮想画像プロジェクタ118も含み、該仮想画像プロジェクタ118を、コントローラ116によって制御して広視野の仮想画像を生成することができる。デバイス102が頭部装着型ディスプレイデバイス104として実装されるとき、仮想画像プロジェクタ118を制御して、本明細書では「ビューア」と呼ばれる頭部装着型ディスプレイデバイスの着用者が見ることができる、広視野の仮想画像を生成することができる。例えば仮想画像プロジェクタ118は、眼鏡のレンズに結合されて、非常に遠くの物体の仮想画像を直接ビューアの目の前に生成し、これにより、ビューアの目のレンズを、無限又はほぼ無限の焦点距離に対して調整させて、物体に焦点を合わせる。仮想画像プロジェクタ118は、ビューアが頭部装着型ディスプレイデバイス104のレンズを通して見るときに外部の物体も仮想画像も見ることができるように、少なくとも部分的に透明であってよい。加えて、仮想画像プロジェクタ118は、一部の実施形態では、眼鏡を着用しているユーザが気づくことなく眼鏡のレンズに適合するよう、十分に小さいものとすることができる。
【0011】
一部の場合において、仮想画像プロジェクタ118を、2つのプロジェクタとして実装して、ビューアのそれぞれの目の前で仮想画像を生成することができる。2つのプロジェクタを使用するとき、各仮想画像プロジェクタ118は、ビューアの右目と左目が同じ時に同じ画像を受信するように、同じ仮想画像を同時に投影することができる。あるいは、プロジェクタは、ビューアが立体画像(例えば3次元画像)を受信するように、わずかに異なる画像を同時に投影してもよい。しかしながら、この議論の目的のために、仮想画像プロジェクタ118を、単一の仮想画像を生成する単一のプロジェクタとして説明することにする。
【0012】
仮想画像プロジェクタ118は、イルミネータ120、ロッドライトガイド122及びスラブライトガイド124を含む。一部の実施形態において、ロッドライトガイド122及びスラブライトガイド124は、全内部反射によって光を伝達する多面体の導波管である。ロッドライトガイド122の長さは、スラブライトガイド124の長さと概ね等しい。しかしながら、スラブライトガイド124の高さは、ロッドライトガイド122の高さよりもかなり高い。しかしながら、ロッドライトガイド122及びスラブライトガイド124は、いずれの具体的なサイズ又は形状にも限定されないことが認識されよう。
【0013】
イルミネータ120は、赤色レーザ、緑色レーザ及び青色レーザを含むことができる。赤、緑、青のレーザは、低電力のダイオードレーザや任意の他の適切なレーザのような半導体レーザであってよい。赤、緑、青のレーザは、コントローラ116によって独立にバイアスされ、調整され得る。イルミネータ120は、レーザのそれぞれからのモノクロの発光をマージして、光のビーム又は光の線を形成するように構成される、マージ光学素子(merging optics)も含んでよい。本明細書で説明されるとき、「光線(light ray)」という用語は、イルミネータ120によって放出される光の「ビーム」又は光の「線」を説明するのに使用されることがある。
【0014】
図2は、単一の回折格子が浮き出しにされたライトガイド202の例200を図示している。この例において、ライトガイド202の端面204は、イルミネータ206に隣接して位置しており、光線208をイルミネータ206から受信するように構成される。光線208は、ライトガイド202を通過して、反対の端面210へ進み、ここでリダイレクト光学素子(redirection optic)212に当たる。リダイレクト光学素子212は、鏡又は屈折構造として実装されることができ、光線がライトガイド202へ入る角度を変化させるように構成される。この例において、リダイレクト光学素子212は、光線208を、全内部反射の臨界角よりも大きな角度でライトガイド202へ戻すように反射する。リダイレクト光学素子212で反射した後、光線208は、全内部反射によって反対の端面210から離れるよう伝播する。しかしながら、光線208が回折格子214に当たる度に、光線208の一部は、ライトガイド202の外に回折されて、平行な回折光線216を形成する。
【0015】
ライトガイド202は、水平面において狭視野の回折光線を投影する。というのも、このライトガイド202には単一の回折格子が備えられているためである。例えば単一の回折格子214が浮き出しにされた視野のライトガイド202の例300を図示している図3を検討する。図3では、第1の光線302は、回折格子214に当たると、この光線が臨界角を越える場合に、ライトガイド202を出る。臨界角は約45度である。加えて、75度より大きい角度で伝播している第2の光線304も、回折格子214に当たるとき、ライトガイド202を出ることがある。ライトガイド202の単一の回折格子214が光線を投影する角度の範囲は、したがって約30度である。この角度の範囲は、概ねライトガイド202の視野に等しい。よって、様々な実施形態によると、ロッドライトガイド122は、仮想画像プロジェクタ118が水平方向において広視野の仮想画像を生成するのを可能にする、少なくとも2つの回折格子を用いて構成される。
【0016】
図4は、仮想画像プロジェクタ118のロッドライトガイド122の詳細な例を図示している。この例において、ロッドライトガイド122は、回折格子402、404、406及び408が浮き出しにされている。しかしながら、ロッドライトガイド122は、4つの異なる回折格子より少ない又は多くの格子が浮き出しにされてもよいことが認識されよう。一実施形態において、例えばロッドライトガイド122には2つの回折格子が浮き出しにされる。格子402、404、406及び408は、概ね相互に平行に方向づけられており、それぞれロッドライトガイド122の端面418の410、412、414及び416においてイルミネータ120(図示せず)から別個の光線を受信するようにそれぞれ構成される。ある実施形態において、ロッドライトガイド122は単一のロッドライトガイドである(例えば一片のガラス(glass))。例えば回折格子402、404、406及び408を単一のロッドライトガイド上に浮き出しにすることができる。あるいは、ロッドライトガイド122は、並べて重ねられた複数のロッドライトガイドを含んでもよく、この場合、各ロッドに異なる回折格子が浮き出しにされる。例えば回折格子402が浮き出しにされたロッドライトガイドを、回折格子404が浮き出しにされたロッドライトガイドの隣に並べることができる。
【0017】
格子402、404、406及び408の各々は、図2に図示されるライトガイド202の回折格子214と同様に動作する。例えば端面418の410において受信される光線は、ロッドライトガイド122を通過して反対の端面420へと進み、ここで、第1のリダイレクト光学素子(図示せず)に当たる。図2のリダイレクト光学素子212と同様に、第1のリダイレクト光学素子を、反射鏡又は反射構造として実装することができ、該第1のリダイレクト光学素子は、光線がロッドライトガイド122に入る角度を変化させるように構成される。この例において、第1のリダイレクト光学素子は、全内部反射の臨界角よりも大きい角度で、光線を反射してロッドライトガイド122へ戻す。第1のリダイレクト光学素子で反射した後、光線は、全内部反射によって反対の端面420から離れるように伝播する。光線は、回折格子402が浮き出しにされた面及び回折格子402の反対の面で反射しつつ、ロッドライトガイド122の横に平行に進む。しかしながら、光線が回折格子402に当たる度に、光線の一部がロッドライトガイド122の外に回折されて、図2に示されるような平行の回折光線を形成する。同様に、412、414又は416で入った光線が、それぞれ回折格子404、406又は408とそれぞれ当たる度に、光線の一部がロッドライトガイド122の外に回折されて、図2に示されるような平行の回折光線を形成する。
【0018】
一部の実施形態において、仮想画像プロジェクタ118は、第2のリダイレクト光学素子(図示せず)も含み、該第2のリダイレクト光学素子は、回折格子が浮き出しにされたロッドライトガイド122の表面をオーバレイする。第2のリダイレクト光学素子は、ロッドライトガイド122へ戻ってロッドライトガイド122の回折格子の反対の面から出るように、回折光線を反射する。格子402、404、406及び408は弱いので、これらの格子が、ロッドライトガイド122に戻るように反射された回折光線を変えることはないことに留意されたい。以下でより詳細に説明されるように、第2のリダイレクト光学素子は、回折光線をスラブライトガイド124へと方向づける。
【0019】
様々な実施形態によると、回折格子402、404、406及び408の空間周波数は異なるので、各回折格子から投影される回折光線は、異なる角度の範囲で投影される。この例において、格子408は、回折光線を、面法線に対して30度と60度の間の角度の範囲で投影するのに十分短いピッチを有する。これに対して、格子402は、回折光線を−60度と−30度との間の角度の範囲で投影するのに十分長いピッチを有する。同様に、格子406は、回折光線を0度と30度との間の角度の範囲で投影するように構成され、格子404は、回折光線を−30度と0度との間の角度の範囲で投影するように構成される。異なる角度の範囲を一緒に組み合わせて、水平方向において広い視野を形成する。図4では、例えば各回折格子は、光を30度に等しい角度の範囲で投影する。したがって、4つの回折格子を使用することにより、合計の角度の範囲は、120度に等しくなる。これは、ロッドライトガイド122が、光を、水平方向において120度に等しい広視野で投影するのを可能にする。諸実施形態において、範囲は、全ての不連続性を排除するよう重複してもよい。
【0020】
一部の実施形態において、広視野の仮想画像を生成するために、ロッドライトガイド122からの出力がスラブライトガイド124に入る。図5は、仮想画像ディスプレイデバイス102のロッドライトガイド122とスラブライトガイド124のより詳細な例を図示している。ある実施形態において、ロッドライトガイド122とスラブライトガイド124は、一片のガラスであってよい。しかしながら、他の実施形態では、ロッドライトガイド122及びスラブライトガイド124はそれぞれ別個のライトガイドである。図5に図示されるように、ロッドライトガイド122の長さは、スラブライトガイド124の長さに概ね等しい。しかしながら、スラブライトガイド124の高さは、ロッドライトガイド122の高さよりかなり高い。この例において、ロッドライトガイド122の回折格子の反対の面は、スラブライトガイド124の入力面の方に向けられている。スラブライトガイド124には、ロッドライトガイド122の回折格子402、404、406及び408に対して概ね直交する回折格子502が浮き出しにされている。上述のように、第2のリダイレクト光学素子504は、ロッドライトガイド122からの回折光線をスラブライトガイド124へと反射するように構成される。第2のリダイレクト光学素子504は、図5では部分的に切り取られているが、第2のリダイレクト光学素子504は、ロッドライトガイド122の長さ全体に作用することが認識されよう。スラブライトガイド124は、回折光線をロッドライトガイド122から受信し、広視野の仮想画像を形成するよう光線を投影する。
【0021】
スラブライトガイド124は、ロッドライトガイド122からの光を、この光が第2のリダイレクト光学素子504で反射された後に、全て受け取るように十分に薄いことに留意されたい。しかしながら、ロッドライトガイド122のいずれか1つの格子からの光は、スラブのピューピル(pupil)を部分的にしか満たさない。したがって、光線がスラブライトガイド124に入ると、これらの光線は、回折格子502と断続的に対話するので、その回折格子を、間隔を置いて照らす。一部の実施形態では、したがって、スラブライトガイド124は更に、部分反射鏡506として構成される。この例において、部分反射鏡506は、回折格子502が浮き出しにされた面と概ね平行のスラブライトガイド124の平面へ挿入される。部分反射鏡506は、該部分反射鏡と接触した各光線の一部分を反射し、別の部分は伝送するように構成される。
【0022】
各光線の一部分を反射し、別の部分は伝送することによって、部分反射鏡506は、単一の光線を複数の光線へと変化させて、スラブライトガイド124によって投影される光が、確実にその表面にわたって均一になるようにする。例えばスラブライトガイド124の別のビューを図示している図6を検討する。この例では、スラブライトガイド124に入った光線602が、604において部分反射鏡506に当たる。これが起こると、部分反射鏡506は、光線602の一部を、光線606として、回折格子502が浮き出しにされた面に向けて反射し、光線602の別の部分を、光線608として、回折格子502と反対の面に向けて送る。その後、光線606が回折格子502に接触すると、光線606の一部が、回折光線610としてスラブライトガイド124から投影される。このプロセスは継続し、光線が部分反射鏡506に当たる度に、その一部分が反射され、別の部分が伝送される。したがって、図6によって図示されるように、部分反射鏡506は、スラブライトガイド124が、1つの光線を複数の光線に変えて、広視野の仮想画像を投影するのを可能にする。
【0023】
<例示の方法>
図7は、仮想画像プロジェクタを制御して広視野の仮想画像を生成する、例示の方法700を示すフロー図である。ブロック702において、仮想画像に対応するデータ(例えば映画又はテレビ番組に対応するビデオデータ)を受信する。例えばコントローラ116(図1)は、仮想画像に対応するデータを受信する。
【0024】
ブロック704において、第1の光線を第1の角度の範囲でロッドライトガイドの外へ回折してスラブライトガイドに入れて、広視野の仮想画像を生成するのに効果的であるように、イルミネータを制御して第1の光線をロッドライトガイドの第1の回折格子に入れる。例えばコントローラ116は、第1の光線を第1の角度の範囲でロッドライトガイド122の外に回折してスラブライトガイド124に入れて、広範囲の仮想画像を生成するのに効果的であるように、イルミネータ120を制御して、第1の光線をロッドライトガイド122の第1の回折格子402(図5)へ入れる。
【0025】
ブロック706では、第2の光線を第2の角度の範囲でロッドライトガイドの外へ回折してスラブライトガイドに入れて、広視野の仮想画像を生成するのに効果的であるように、イルミネータを制御して、第2の光線をロッドライトガイドの第2の回折格子に入れる。例えばコントローラ116は、第2の光線を第2の角度の範囲でロッドライトガイド122の外に回折してスラブライトガイド124に入れ、広範囲の仮想画像を生成するのに効果的であるように、イルミネータ120を制御して、第2の光線をロッドライトガイド122の第2の回折格子404(図5)へ入れる。様々な実施形態において、仮想画像の広い視野は、第1の角度の範囲と第2の角度の範囲の合計に等しい。
【0026】
<例示のデバイス>
図8は、図1図7に関して前述したような、広視野の仮想画像プロジェクタを可能にする技術を実装する任意のタイプのクライアント、サーバ及び/又はディスプレイデバイスとして実装可能な例示のデバイス800の様々な構成要素を図示している。諸実施形態において、デバイス800を、有線及び/又は無線のデバイス、頭部装着型ディスプレイデバイス(例えば眼鏡、サングラス等)、フラットパネル型ディスプレイの形式として、テレビジョンクライアントデバイス(例えばテレビジョンセットトップボックス、デジタルビデオレコーダ(DVR)等)、消費者デバイス、コンピュータデバイス、サーバデバイス、ポータブルコンピュータデバイス、ユーザデバイス、通信デバイス、ビデオ処理及び/又はレンダリングデバイス、アプライアンスデバイス、ゲームデバイス、電気デバイスの1つ又は組合せとして及び/又は別のタイプのデバイスとして実装することができる。デバイス800を、デバイスが、ユーザ、ソフトウェア、ファームウェア及び/又はデバイスの組合せを含む論理デバイスを記述するように、デバイスを操作するビューア(例えば人又はユーザ)及び/又はエンティティと関連付けてもよい。
【0027】
デバイス800は、デバイスデータ804(例えば受信したデータ、受信中のデータ、放送用にスケジュールされたデータ、データのデータパケット等)の有線及び/又は無線通信を可能にする通信デバイス802を含む。デバイスデータ804又は他のデバイスコンテンツは、デバイスの構成設定、デバイスに格納されたメディアコンテンツ及び/又はデバイスのユーザに関連付けられた情報を含むことができる。デバイス800に格納されるメディアコンテンツは、任意のタイプのオーディオ、ビデオ及び/又は画像データを含むことができる。デバイス800は、ユーザ選択可能な入力、メッセージ、音楽、テレビメディアコンテンツ、記録されたビデオコンテンツ及び任意の他のタイプのオーディオ、ビデオ及び/又は任意のコンテンツ及び/又はデータソースから受信した画像データのような、任意のタイプのデータ、メディアコンテンツ及び/又は入力を受信することができる1つ若しくは複数のデータ入力部を含む。
【0028】
デバイス800は、通信インタフェース808も含み、該通信インタフェース808を、シリアル及び/又はパラレルインタフェース、無線インタフェース、任意のタイプのネットワークインタフェース、モデムのうちのいずれか1つ若しくは複数として、及び任意の他のタイプの通信インタフェースとして実装することができる。通信インタフェース808は、デバイス800と通信ネットワークとの間の接続及び/又は通信リンクを提供し、この接続及び/又は通信リンクによって、他の電気デバイス、コンピューティングデバイス及び通信デバイスがデータをデバイス800に通信する。
【0029】
デバイス800は、1つ又は複数のプロセッサ810(例えばマイクロプロセッサ、コントローラ等のいずれか)を含み、1つ又は複数のプロセッサ810は、様々なコンピュータ実行可能命令を処理して、デバイス800の動作を制御し、広視野の仮想画像プロジェクタを実装するための技術を可能にする。あるいはまた、デバイス800は、ハードウェア、ファームウェア、システムオンチップ(SoC)、あるいは812で一般に特定される処理及び制御回路と関連して実装される固定の論理回路、とのうちのいずれか1つ又は組合せにより実装され得る。図示されていないが、デバイス800は、該デバイス内の様々な構成要素を結合するシステムバス又はデータ伝送システムを含むことができる。システムバスは、メモリバス若しくはメモリコントローラ、周辺バス、ユニバーサルシリアルバス及び/又は様々なバスアーキテクチャのいずれかを用いるプロセッサ若しくはローカルバスのような、異なるバス構造のいずれか1つ又は組合せを含むことができる。
【0030】
デバイス800は、持続的及び/又は非一時的データ記憶を可能にする1つ又は複数のメモリデバイスのような、コンピュータ読取可能記憶媒体814も含み、このような媒体の例には、ランダムアクセスメモリ(RAM)、不揮発性メモリ(例えば読み取り専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等のいずれか1つ又は複数)及びディスク記憶デバイスが含まれる。ディスク記憶デバイスは、ハードディスクドライブ、記録可能及び/若しくは書き込み可能コンパクトディスク(CD)、任意のタイプのデジタル多用途ディスク(DVD)等のような、任意のタイプの磁気又は光記憶媒体として実装され得る。デバイス800は、大容量記憶媒体デバイス816も含むことができる。
【0031】
コンピュータ読取可能記憶媒体814は、デバイスデータ804並びに様々なデバイスアプリケーション818及びデバイス800の動作態様に関する任意の他のタイプの情報及び/又はデータを格納するデータ記憶機構を提供する。例えばオペレーティングシステム820を、コンピュータアプリケーションとして、コンピュータ読取可能記憶媒体814により保持し、プロセッサ810において実行することができる。デバイスアプリケーション818は、任意の形式の制御アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、信号処理及び制御モジュール、特定のデバイスにネイティブのコード、特定のデバイス用のハードウェア抽象化レイヤ等のような任意の形式のデバイスマネージャを含んでよい。
【0032】
デバイスアプリケーション818は、広視野の仮想画像プロジェクタを使用するか有効にする技術を実装する、全てのシステムコンポーネント又はモジュールも含む。この例では、デバイスアプリケーション818は、広視野の仮想画像プロジェクタを制御するためのコントローラ116を含むことができる。
【0033】
<結論>
本明細書は、広視野の仮想画像プロジェクタを実装するための様々な装置及び技術を説明している。本発明は、構造的特徴及び/又は方法論的動作に特有の言語で説明されているが、特許請求の範囲において定義される本発明は、必ずしも、説明された具体的な特徴又は動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、具体的な特徴及び動作は、特許請求に係る発明を実装する例示の形式として開示される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8