【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年度第3回光超音波画像研究会抄録集(平成28年11月12日:浜松市)第37回超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム講演論文集(平成28年11月16日:Busan,Korea) 第5回日米音響学会ジョイントミーティングAbstract(平成28年11月28日:アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル市) 文部科学省研究大学強化推進事業 豊橋技術科学大学シンポジウムポスター(平成29年2月14日:豊橋市) 平成29年電気学会全国大会講演論文集(平成29年3月15日:富山市) 日本超音波医学会第90回学術集会講演予稿集(平成29年5月2日:ホームページ)
【文献】
C. M. W Daft, et al,Frequency dependence of tissue attenuationmeasured by acoustic microscopy,J. Acoust. Soc. Am.,米国,Acoust. Soc. Am.,,1989年 5月,85(5),p.2194-2201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
既知の音響物性を有する基体に測定対象物及び既知の音響物性を有する参照物質を接して配置した状態で超音波を送信し、前記基体を介して前記測定対象物及び前記参照物質に超音波を入射させるとともに、前記測定対象物及び前記参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する送受信ステップと、
前記参照物質に入射した超音波波形のインパルス応答情報及び前記測定対象物に入射した超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づいて、奥行方向の音響インピーダンス分布を多重反射の影響を考慮して推定する演算を行うとともに、その際に、前記測定対象物内において異なる音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の音響インピーダンスを推定する演算ステップと、
得られた奥行方向の音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップと
を有することを特徴とする超音波画像構築方法。
前記基体において前記測定対象物が配置される面上には、前記基体とは異なる既知の音響物性を有する前記参照物質があらかじめ設置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の超音波画像構築方法。
前記送受信ステップでは、前記測定対象物に対して超音波を一次元または二次元方向に相対的に走査しながら入射させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の超音波画像構築方法。
既知の音響物性を有する基体に測定対象物である皮膚及び既知の音響物性を有する参照物質を接して配置した状態で超音波を送信し、前記基体を介して前記測定対象物及び前記参照物質に超音波を入射させるとともに、前記皮膚及び前記参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する送受信ステップと、
前記参照物質に入射した超音波波形のインパルス応答情報及び前記皮膚に入射した超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づいて、奥行方向の音響インピーダンス分布を多重反射の影響を考慮して推定する演算を行うとともに、その際に、前記皮膚内において異なる音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の音響インピーダンスを推定する演算ステップと、
得られた奥行方向の音響インピーダンス分布に基づいて、前記皮膚を構成する複数の層のうちの少なくとも1つの層の厚みを算出する厚み算出ステップと、
算出された前記層の厚みに基づいて、前記皮膚の状態を評価する評価ステップと
を有することを特徴とする、美容目的での皮膚の評価方法。
得られた奥行方向の音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップをさらに有することを特徴とする請求項10または11に記載の、美容目的での皮膚の評価方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1の実施形態]
以下、本発明の超音波画像構築方法及び装置を具体化した第1の実施形態の超音波皮膚状態評価装置を
図1〜
図15に基づき詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1を示す概略構成図である。
図1に示されるように、本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1は、パルス励起型超音波顕微鏡2と、パーソナルコンピュータ(PC)3とを備える。
【0015】
パルス励起型超音波顕微鏡2は、ステージ4を有する顕微鏡本体5と、ステージ4の下方に設置された超音波プローブ6とを備える。パルス励起型超音波顕微鏡2の超音波プローブ6は、PC3と電気的に接続されている。
【0016】
本実施形態のステージ4は、ユーザの手動操作により、水平方向(即ちX方向及びY方向)に移動できるように構成されている。このステージ4には、測定対象物であるヒトの皮膚(生体組織)8を接触配置するための樹脂プレート9が固定されている。なお、ヒトの皮膚8は必ずしも組織切片としなくてもよく、本実施形態においてはヒトの頬を樹脂プレート9に直接押し付けることにより測定等を行っている。また、既知の音響物性を有する基体としての樹脂プレート9は、超音波を透過させることができる平板状部材であって、測定対象物である皮膚8よりも硬い材料からなる。このような形状及び硬さの部材を基体として用いた場合、測定対象物である皮膚8を確実に密着配置することが可能となり、奥行方向の音響インピーダンス分布を正確に推定可能となる結果、ひいては画像構築の精度が向上する。なお、本実施形態では厚さ1.4mmのポリスチレン板が用いられている。勿論、ポリスチレン以外の樹脂からなる板材などを用いることも許容される。
【0017】
この樹脂プレート9において皮膚8が接触配置される側である上面には、リファレンス部材10(参照物質)があらかじめ設置されている。リファレンス部材10は、樹脂プレート9とは異なる既知の音響物性を有している。本実施形態では例えばアクリル樹脂(アクリル接着剤)を付着させることによりリファレンス部材10としているが、勿論これに限定されるわけではない。リファレンス部材10に対して密着させることが可能なものであれば、樹脂材以外のもの(例えばガラス材、金属材、セラミック材など)をリファレンス部材10としてもよい。あるいは、このようなリファレンス部材10を設置する代わりに、例えば樹脂プレート9の上面に接するように水等を存在させておき、これを参照物質として用いてもよい。なお、樹脂プレート9にリファレンス部材10をあらかじめ設置しておくことにより、装置が置かれる環境の変化等に依存せず、リファレンス部材10に入射した超音波波形のインパルス応答情報を正確にかつ安定的に取得することができる。
【0018】
超音波プローブ6は、水などの超音波伝達媒体Wを貯留可能な貯留部11をその先端部に有するプローブ本体12と、プローブ本体12の略中心部に配置される超音波トランスデューサ13(超音波振動子)と、プローブ本体12を前記ステージ4の面方向に沿って二次元的に走査するためのX−Yステージ14とを備える。プローブ本体12の貯留部11は上部が開口しており、その貯留部11の開口側を上向きにした状態で超音波プローブ6がステージ4の下方に設置されている。
【0019】
超音波トランスデューサ13は、例えば酸化亜鉛の薄膜圧電素子16とサファイアロッドの音響レンズ17とによって構成される。この超音波トランスデューサ13は、パルス励起されることで樹脂プレート9の下面側から皮膚8及びリファレンス部材10に対して超音波を照射する。超音波トランスデューサ13が照射する超音波は、貯留部11の超音波伝達媒体Wを介して円錐状に収束されて樹脂プレート9の上面(皮膚8の表面付近)で焦点を結ぶようになっている。なお本実施形態では、超音波トランスデューサ13として、口径1.2mm、焦点距離1.5mm、中心周波数80MHz、帯域幅50〜105MHz(−6dB)の仕様のものを用いている。
【0020】
図2は、本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
【0021】
図2に示されるように、超音波プローブ6は、超音波トランスデューサ13、X−Yステージ14、パルス発生回路21、受信回路22、送受波分離回路23、検波回路24、A/D変換回路25、エンコーダ26、コントローラ27を備える。
【0022】
走査手段としてのX−Yステージ14は、超音波の照射点を二次元的に走査させるためのXステージ14X及びYステージ14Yを備えるとともに、それぞれのステージ14X,14Yを駆動するモータ28X,28Yを備えている。これらのモータ28X,28Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0023】
各モータ28X,28Yにはコントローラ27が接続されており、該コントローラ27の駆動信号に応答してモータ28X,28Yが駆動される。これらモータ28X,28Yの駆動により、Xステージ14Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ14Yを間欠送りとなるよう制御することで、X−Yステージ14の高速走査が可能となっている。
【0024】
また、本実施形態においては、Xステージ14Xに対応してエンコーダ26が設けられ、エンコーダ26によりXステージ14Xの走査位置が検出される。具体的には、走査範囲を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ26によって検出されPC3に取り込まれる。PC3はそのエンコーダ26の出力に同期して駆動制御信号を生成し、その駆動制御信号をコントローラ27に供給する。コントローラ27は、この駆動制御信号に基づいてモータ28Xを駆動する。また、コントローラ27は、エンコーダ26の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ28Yを駆動して、Yステージ14YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0025】
さらに、コントローラ27は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路21に供給する。これにより、パルス発生回路21において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路23を介して超音波トランスデューサ13に供給される結果、超音波トランスデューサ13から超音波が照射される。
【0026】
図3は、X−Yステージ14の移動に伴う超音波の走査範囲R1の一例を示している。この例では、皮膚8を接触配置させる領域を包囲するようにリファレンス部材10が設けられている。そして、ヒトが頬の皮膚8を当該領域に押し付けた状態で、リファレンス部材10がある位置から走査が開始される。そして、矢印で示すように、皮膚8の表面に沿ってX方向及びY方向に二次元的に走査が順次行われる。
【0027】
超音波トランスデューサ13の薄膜圧電素子16は、送受波兼用の超音波振動子であり、皮膚8で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その反射波の信号は、送受波分離回路23を介して受信回路22に供給される。受信回路22は、信号増幅回路を含んで構成されていて、反射波の信号を増幅して検波回路24に出力する。
【0028】
検波回路24は、皮膚8からの反射波信号を検出するための回路であり、図示しないゲート回路を含む。本実施形態の検波回路24は、超音波トランスデューサ13で受信した反射波信号のなかから、皮膚8からの反射波信号やリファレンス部材10からの反射波信号を抽出する。そして、検波回路24で抽出された反射波信号は、A/D変換回路25に供給されてA/D変換された後、PC3に転送される。
【0029】
PC3は、CPU31(中央処理装置)、I/F回路32、メモリ33、記憶装置34、入力装置35、及び表示装置36を備え、それらはバス37を介して相互に接続されている。
【0030】
CPU31は、メモリ33を利用して制御プログラムを実行し、システム全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X−Yステージ14による二次元走査を制御するためのプログラム、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列のデータを音響インピーダンス像へ変換するためのプログラム、音響インピーダンス像を表示するためのプログラムなどを含む。なお、CPU31とは別に例えばDSP(Digital Signal Processor:デジタル信号プロセッサ)を設けて、そこでCPU31が行っている信号処理の一部を行わせてもよい。
【0031】
I/F回路32は、超音波プローブ6との間で信号の授受を行うためのインターフェース(具体的には、USBインターフェース)である。I/F回路32は、超音波プローブ6に制御信号(コントローラ27への駆動制御信号)を出力したり、超音波プローブ6からの転送データ(A/D変換回路25から転送されるデータなど)を入力したりする役割を果たすものである。なお、超音波プローブ6との間で信号の授受を行う場合には、上記のような物理的なインターフェースに限定されることはなく、無線インターフェースを用いてもよい。
【0032】
表示装置36は、例えば、液晶、プラズマ、有機EL(electroluminescence)等のモニタディスプレイである。表示装置36は、カラー表示、モノクロ表示を問わずに使用できるが、カラー表示であることが望ましい。この表示装置36は、皮膚8の表層の音響インピーダンス像を表示したり、各種設定の入力画面を表示したりするために用いられる。
【0033】
入力装置35は、タッチパネル、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等の入力ユーザインタフェースであって、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0034】
記憶装置34は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などのハードディスクドライブであり、各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶している。メモリ33は、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)を含み、超音波測定のためにあらかじめ取得されたリファレンス部材10の反射波形とその音響インピーダンスとを保存する。CPU31は、入力装置35による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置34からメモリ33へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU31が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置34にインストールして利用する。
【0035】
次に、本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1において、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列から音響インピーダンス像を構築する手法について説明する。
【0036】
この超音波皮膚状態評価装置1では、参照物質であるリファレンス部材10に入射した超音波波形のインパルス応答情報、及び測定対象物である皮膚8に入射した超音波波形のインパルス応答情報から、規格化されたインパルス応答情報を得て、その規格化されたインパルス応答情報に基づいて奥行方向の音響物性分布を多重反射の影響を考慮して推定するようになっている。また、このような推定を行うために、本実施形態では、測定対象物内において、異なる音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路51が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の微小伝送路51の音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する微小伝送路51の音響インピーダンスを推定する処理を順次繰り返すことにより、伝送路の奥行方向の音響物性分布(ここでは音響インピーダンス分布)を推定する演算を行うようになっている。このような演算は、メモリ33内に格納された所定のアルゴリズムに基づいて実行される。
【0037】
このアルゴリズムは、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を用いることによって、奥行方向の音響インピーダンスの分布の推定を行うアルゴリズムである。このアルゴリズムは、時間領域反射測定法(TDR法:Time Domain Reflectometry法)の原理を参考とするものであって、皮膚組織内部での多重反射を考慮した時間−周波数領域における解析を通じて、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の音響インピーダンス像に変換するアルゴリズムである。以下、これについて具体的に説明する。
【0038】
図4(a)は、実際に測定を行ったときにおける測定対象物からの反射波形の取得について説明する図であり、
図4(b)は、測定対象物を微小伝送路51に見立てたときにおける反射波形の取得について説明する図である。
図5(a)は、実際に測定を行ったときにおける参照物質からの反射波形の取得について説明する図であり、
図5(b)は、参照物質を微小伝送路51に見立てたときにおける反射波形の取得について説明する図である。
【0039】
まず、
図4(a)に示すように、超音波トランスデューサ13を作動させ、基体としての樹脂プレート9を介して、測定対象物にとって十分な焦点深度を持った超音波の収束ビームを送信する。そして、測定対象物である皮膚8に超音波の収束ビームを入射させ、そこからの反射波形を取得する。その時のインパルス応答Γ
0(ω)は、フーリエ変換を用いて、入射波S
0と皮膚8からの反射波S
tgt(ω)とから次式1のように表される。
【数1】
【0040】
この場合、音響インピーダンスが既知かつ均一であって、測定対象物に比べて十分な厚さを有するリファレンス部材10からの反射波形も取得する必要がある。リファレンス部材10からの反射波S
ref(ω)は、リファレンス部材10の音響インピーダンスZ
refと樹脂プレート9の音響インピーダンスZ
0とを用いて、次式2のように表される。
【数2】
【0041】
また、測定対象物である皮膚8からのインパルス応答Γ
0(ω)は次式3で表される。ただし、このインパルス応答Γ
0(ω)には皮膚8の組織の奥の複数の界面から発生する反射が含まれているため、インパルス応答Γ
0(ω)は周波数特性を持ったものとなる。なお、ここまでの式により、参照物質に入射した超音波波形のインパルス応答情報及び測定対象物に入射した超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報が求められる。
【数3】
【0042】
ここで、
図6は、樹脂プレート9に接する微小伝送路51から順に、各微小伝送路51の特性インピーダンスZ
1、Z
2…Z
nを推定していく様子を概念的に示した図である。この図に示されるように、各微小伝送路51の特性インピーダンスZ
1、Z
2…Z
nを、樹脂プレート9に接している微小伝送路51から奥行方向に向かって順に推定していく。
【0043】
図7は、多重反射の影響について概念的に示した図である。次式4は、インパルス応答Γ
0(ω)を逆フーリエ変換したg
0(t)を表したものであるが、その第1項は多重反射の影響を受けない(
図7参照)。従って、この第1項の値から樹脂プレート9に接する微小伝送路51の特性インピーダンスZ1を、次式5のように推定することができる。
【数4】
【数5】
【0044】
周波数領域の皮膚8の音響インピーダンスZ
x0は、Γ
0を用いると次式6のように表される。
【数6】
【0045】
また、Z
x0はさらに奥からのインパルス応答Γ
1を用いて次式7のようにも表される。
【数7】
【0046】
ここで、次式8、9にて表すように、γは伝播定数、αは減衰定数、βは位相定数、fは周波数であるが、本実施形態の変換アルゴリズムではα=0、及び皮膚8の全微小伝送路51の音速をc=1600(m/s)と仮定している。
【数8】
【数9】
【0047】
また、各微小伝送路51の距離Δlは次式10のように表され、ここでも音速をc=1600(m/s)と仮定している。Δtは皮膚8からの反射波形のサンプリング間隔の1ポイントに相当する(本実施形態ではΔt=2(ns))。
【数10】
【0048】
そして、上記の式をもとに、さらに奥にある微小伝送路51からのインパルス応答Γ
1を求めることができる(次式11)。即ち、Z
x0及びZ
1の値をもとに、Z
1の終点におけるΓ
1の値を推定することができる。
【数11】
【0049】
次式12は、インパルス応答Γ
1(ω)を逆フーリエ変換したg
1(t)を表したものであって、その第1項は多重反射の影響を受けない。従って、この第1項の値から当該微小伝送路51に隣接するさらに奥側の微小伝送路51の特性インピーダンスZ
2を推定することができ、同様にZ
x1、Γ
2(ω)も推定することができる(次式13,14,15)。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【0050】
この工程を繰り返すことによって、各微小伝送路51の特性インピーダンス(音響インピーダンス)Z
1、Z
2…Z
nを推定することができる。そして、この推定結果に基づき、伝送路の奥行方向の音響インピーダンス分布を推定し、最終的にはBモードエコー像の元となる反射信号列を音響インピーダンス像に変換する。
【0051】
次に、本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1において音響インピーダンス画像を構築するために、プロセッサであるCPU31が実行する演算処理について、
図8のフローチャートを用いて説明する。
【0052】
まず、測定対象物であるヒトの頬の皮膚8を樹脂プレート9の上面に押し付けるようにして接触配置させる。この状態で、まず超音波プローブ6に初期動作を行わせる。即ち、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27を作動させることにより、モータ28X,28Yを駆動し、リファレンス部材10がある位置にて超音波照射が行われるようにX−Yステージ14を移動させる。
【0053】
またこのとき、CPU31からの指示に基づいて励起パルスがトランスデューサ13に供給されると、
図5(a)に示すように、リファレンス部材10に超音波S
oが照射され、その反射波S
ref(ω)が受信回路22を経て検波回路24で検出される。そして、反射波取得手段としてのCPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータをリファレンス部材10からの超音波波形のインパルス応答のデータとしてメモリ33に記憶する(ステップS100)。
【0054】
その後、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27によりモータ28X,28Yが駆動され、X−Yステージ14による二次元走査が開始される。CPU31は、エンコーダ26の出力に基づいて測定点の座標データを取得する(ステップS110)。
【0055】
そして、
図4(a)に示すように、CPU31からの指示に基づいて励起パルスがトランスデューサ13に供給されることにより、頬の皮膚8に超音波S
oが照射され、その反射波S
tgt(ω)が受信回路22を経て検波回路24で検出される。反射波取得手段としてのCPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータを頬の皮膚8からの超音波波形のインパルス応答のデータとして座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップS120)。
【0056】
次いで、演算手段としてのCPU31は、取得したインパルス応答信号のデータを用いて、TDR法の原理を参考とした上記の変換アルゴリズムに基づく所定の演算を実行する。そしてCPU31は、その演算により頬の皮膚8における測定点での奥行方向の音響インピーダンス分布を推定し、その推定結果を座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップS130)。
【0057】
その後、画像構築手段としてのCPU31は、音響インピーダンス分布の推定結果に基づいて、音響インピーダンス像(断層像)を構築するための画像処理を行う(ステップS140)。詳しくは、CPU31は、音響インピーダンス分布の推定結果に基づいてカラー変調処理を行い、音響インピーダンスの大きさに応じて色分けして表示した画像データを構築し、該画像データをメモリ33に記憶する。
【0058】
次いで、CPU31は、全ての測定点での処理が終了して、全ての測定点で画像データが取得されたか否かを判断する(ステップS150)。ここで、全データが取得されていない場合には(ステップS150:NO)、CPU31は、ステップS110に戻って、ステップS110〜S140の処理を繰り返して実行する。全データが取得された場合には(ステップS150:YES)、CPU31は、次ステップS160に移行する。
【0059】
そして、CPU31は、該データを表示装置36に転送し、あらかじめ定めた直線上における音響インピーダンス像(断層像)を表示させた後(ステップS160)、
図8の処理を終了するようになっている。このような一連の処理により、頬の皮膚8での音響インピーダンスの大きさに応じて色分けされた音響インピーダンス像(断層像)が表示されることから、例えばそれを目視観察することで頬の皮膚8の状態を評価することが可能となる。
【0060】
[実施例]
以下、本実施形態をより具体化した実施例を紹介する。この実施例では、20才代から60才代までのヒトを被験者とし、その頬の皮膚8を測定対象物として、収束超音波を照射したときの頬の皮膚8からの反射信号列を、上記の変換アルゴリズムを使用して音響インピーダンス像に変換し、肉眼でその観察を行った。
図9(a)は、変換前の超音波Bモードエコー像を示し、
図9(b)は、変換後の音響インピーダンス像を示すものである。なお、本実施例においては、測定範囲を2.4mm×2.4mmとし、測定点を300(X方向)×150(Y方向)×200(Z方向;奥行方向)とし、各測定点におけるサンプリングタイムを2nsとして、測定を行った。
【0061】
ここで、
図10はヒトの頬の皮膚8の層構造を示す概略断面図である。皮膚8は、表皮61と真皮62と皮下組織(図示せず)とによって形成されている。表皮61の最表層には角層63が位置しており、角層63から深層に向かって表皮層64、基底層65が位置している。真皮62は、基底層65に接している(真皮)乳頭層66と真皮網状層67とを有している。
【0062】
図9(a)の超音波Bモードエコー像と、
図9(b)の音響インピーダンス像とを比較すると、前者では、多重反射の影響によりスペックルノイズが発生しており、画像がかなり乱れていた。これに対して、後者では、前者の画像よりも定量的なものとなっており、多重反射の影響が低減された画像となっていることがわかった。また
図9(b)に示すように、変換後の音響インピーダンス像を観察したところ、ヒトの頬の解剖学的特徴を顕著に表している断層像が得られる結果となった。その中で、特に音響インピーダンスが低くなっている層が確認された。さらに、この層の厚みは、被験者ごとに異なり、加齢に伴って薄くなるように見えたため、この層を「乳頭層66」と仮定し、厚みの解析を行った。なお、
図11(a)は20代の被験者の頬の音響インピーダンス像、
図11(b)は40代の被験者の頬の音響インピーダンス像、
図11(c)は60代の被験者の頬の音響インピーダンス像を示す。
【0063】
乳頭層66の厚みの算出には、
図12に示すように、音響インピーダンスのプロファイルの微分値を用いた。この微分値より音響インピーダンスのプロファイルの最急勾配の位置を検出し(
図12ではグラフ中央にある破線上の位置)、その値と等しい値となる点(
図12ではグラフ左寄りにある破線上の位置)までを乳頭層66の厚みとした。
図13は、この方法によって検出した乳頭層66の位置をプロットした画像を示している。
【0064】
この手法を用いて、
図14に示すように1人の被験者から任意の3枚の音響インピーダンス像を選択し、これらの乳頭層66の部分の平均厚みを算出した。
【0065】
そして、上記の方法により、20才代から60才代までの被験者の計25名について、年代ごとに乳頭層66の部分の平均厚みを比較した。その結果を
図15のグラフに示す。
【0066】
これによると、乳頭層66と考えられる部分の平均厚み及びその個人差(厚みばらつき)は、加齢とともに低下するという傾向が確認された。
【0067】
この結果から以下のように考察した。即ち、乳頭層66には、毛細血管、末端神経が集中しており、この層からその上の表皮61に栄養が補給される。そのため、乳頭層66は肌のキメの状態に影響を与える重要な部分であると言われている。乳頭層66は加齢に伴って扁平化するといった知見が過去に報告されており、この点において、今回の乳頭層66部分の平均厚みの解析結果と一致する結果となった。なお、20才代や30才代などの若い被験者でも、薄くなった乳頭層66が見られた。その理由については、皮膚の老化には日焼けに伴う老化と加齢に伴う老化との2種類があり、若い世代でも日焼けによって乳頭層66の扁平化が見られると推定された。また、乳頭層66と仮定した部分で音響インピーダンスが低くなり、さらに奥の部分に行くと音響インピーダンスが高くなった。その理由については、真皮乳頭層66のコラーゲンは、真皮網状層67とは異なり、細くて低配向の線維であるため、真皮網状層67よりも音速が低くなるからであると推察した。以上の結果、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列から、奥行方向の音響インピーダンス分布を推定し、それによる断層像を構築することによって、乳頭層66を確認することが可能になると結論付けられた。
【0068】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0069】
(1)本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1では、リファレンス部材10に入射した超音波波形のインパルス応答情報、及び皮膚8に入射した超音波波形のインパルス応答情報から、規格化されたインパルス応答情報、つまり装置に依存しないインパルス応答情報を得るようにしている。そして、この規格化されたインパルス応答情報に基づいて、奥行方向の音響物性分布を多重反射の影響を考慮して推定する演算を行うようにしている。以上の結果、層構造を有する非常に薄い皮膚8の超音波断層像を、感覚的に層構造が理解しやすい音響インピーダンス像として比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる。なお、この装置1により得られる音響インピーダンス像は、測定対象物を切断することなく(即ち非侵襲で)、層ごとの力学特性の断面分布(深さ分布)情報を、推定した音響インピーダンスの絶対値ごとに色分けして画像化したものである。それゆえ、この像は感覚的に層構造が理解しやすいものなっている。
【0070】
ここで、一般に通常の超音波診断装置で得られる超音波Bモードエコー像では、皮膚8等の生体組織内部の層情報は一応得られるものの、得られる画像は音響インピーダンスがある程度以上の差を有する層同士の界面からの反射像である。即ち、音響インピーダンスの差がある程度小さくなると、組織学的には界面が存在しても検出されず、その構造を反映した画像を形成することが極めて困難となっていた。つまり、一般的な反射像では生体組織の内部構造、微細な層構造が反映された生体組織内部の反射像(音響インピーダンスの違い)を把握するのには不十分であった。これに対して、この超音波皮膚状態評価装置1によると、従来の超音波Bモードによって全く検出することができなかった力学特性分布に基づく皮膚8の層構造を、十分な解像度を持った鮮明な断層像として捉えることができるようになった。また、このような鮮明な断層像は、他の非侵襲可視化装置(光干渉断層撮影装置(OCT)や、in vivo共焦点顕微鏡など)では取得不能であったため、この超音波皮膚状態評価装置1が具現化されたことの意義は大きい。以上のように、本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1によると、皮膚8の状態(皮膚8の層ごとの力学特性に関する状態)を簡便にかつ非侵襲的に評価することができる。
【0071】
(2)本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1では、測定対象物に対して超音波を二次元方向に相対的に走査しながら入射させるようにしている。従って、
図14にて示したように、複数の位置における断層像を確実にかつ比較的簡単に得ることができる。
【0072】
(3)本実施形態の超音波皮膚状態評価装置1では、皮膚組織内部での多重反射を考慮した時間−周波数領域における解析を通じて、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の音響インピーダンス像に変換する手法を採用している。このため、比較的簡単に所定の演算を行うことができる。また本実施形態では、上述した変換アルゴリズムを用いて、手前側の微小伝送路51の音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する微小伝送路51の音響インピーダンスを推定する処理を順次繰り返すことにより、伝送路の奥行方向の音響インピーダンス分布を推定する演算を行うようにしている。従って、この演算によれば、多重反射の影響を最小限にすることができ、奥行方向の音響インピーダンス分布を精度よく推定することができる。
【0073】
[第2の実施形態]
以下、本発明の超音波画像構築方法及び装置を具体化した第2の実施形態の超音波皮膚状態評価装置1を
図16に基づき詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態と共通している構成については、同じ部材番号を付す代わりに詳細な説明を省略する。
【0074】
図16のフローチャートに示すように、この実施形態では、第1の実施形態のフローチャートに加えてさらに以下のステップを追加して行っている。まず、測定対象物であるヒトの頬の皮膚8を樹脂プレート9の上面に接触配置させた状態で、超音波プローブ6に所定の初期動作を行わせる。そして、CPU31は、上記のステップS100〜S160までの処理を順次実行し、頬の皮膚8での音響インピーダンスの大きさに応じて色分けされた音響インピーダンス像(断層像)を表示装置36に表示させる。
【0075】
続いて、CPU31は、得られた奥行方向の音響インピーダンス分布に基づいて、皮膚8を構成する複数の層のうちの少なくとも1つの層の厚みを算出する厚み算出ステップを実行する(ステップS170)。本実施形態では、乳頭層66の平均厚みを算出するようになっている。より具体的にいうと、皮膚8の奥行方向において音響インピーダンスが周囲の組織よりも低くなっている部位を抽出し、これを乳頭層66の部位であると定義したうえで、乳頭層66の平均厚み(及び/または乳頭層66の厚みばらつき)を算出する。そして、CPU31は、厚み算出ステップにて算出した乳頭層66の平均厚み等に基づいて、頬の皮膚8の状態(具体的には老化度(健康度))を評価し、さらにこの評価結果に基づいて評価結果画像データを作成し、これを表示装置36に表示させる(ステップS180)。評価結果の表示後、CPU31は、一連の処理を終了させるようになっている。なお、評価結果については、例えば平均厚みを複数プロットしたグラフとして表示してもよいし、評価結果だけを文章やアイコンで表示するようにしてもよい。
【0076】
このように構成された第2の実施形態の超音波皮膚状態評価装置1によると、最終的に人間が肉眼で目視観察を行って判断しなくても、装置自らが皮膚8の状態の評価を自動的にかつ的確に評価することができる。
【0077】
[第3の実施形態]
以下、本発明の超音波画像構築方法及び装置を具体化した第3の実施形態の超音波皮膚状態評価装置101を
図17〜
図18に基づき詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態と共通している構成については、同じ部材番号を付す代わりに詳細な説明を省略する。
【0078】
図17、
図18に示されるように、この実施形態の超音波皮膚状態評価装置101は、基本的に台などに設置して使用するパルス励起型超音波顕微鏡2の代わりに、作業者の手によって持って使用することが可能な形状及び大きさの把持型プローブ装置106を備えている。この把持型プローブ装置106は、X−Yステージ14やモータ28X,28Yを備えておらず、その代わりにX方向ロータ部114X及びY方向ロータ部114Yからなるロータユニット114を走査手段として備えている。そして、このロータユニット114を駆動することにより、超音波の照射点が二次元的に走査されるようになっている。
【0079】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0080】
・上記実施形態の超音波皮膚状態評価装置1、101では、リファレンス部材10からの反射波を参照波形として用いて演算処理を行ったが、これに限定されるものではない。この参照波形としては、樹脂プレート9の上面において皮膚8が接触していない箇所からの反射波であればよく、例えば、樹脂プレート9の上面において皮膚8もリファレンス部材10もが接触していない箇所(具体的には、リファレンス部材10よりも外側に位置する樹脂プレート表面)での反射波を用いてもよい。
【0081】
・上記実施形態の超音波皮膚状態評価装置1、101では、下方から超音波を照射する倒立型の超音波顕微鏡2を用いて超音波の照射を行ったが、上方から超音波を照射する正立型の超音波顕微鏡を用いてもよい。
【0082】
・上記実施形態では、基本的に疾患を有していない比較的健康な皮膚8を対象として、その状態を評価する目的で超音波皮膚状態評価装置1、101を用いたが、これに限定されない。例えば、皮膚がんなどの疾患に伴う皮膚の異常を早期に検出する目的で超音波皮膚状態評価装置1、101を用いてもよい。
【0083】
・上記実施形態の超音波皮膚状態評価装置1、101では、測定対象物がヒトの頬の皮膚8であったが、頬以外の他の部位における皮膚8であっても勿論よい。また、本発明の超音波画像構築装置1、101の測定対象物は皮膚8でなくてもよく、例えば内臓、筋肉、脳、歯、爪、骨の表層部などであっても勿論よい。さらにいうと、測定対象物は必ずしも生体組織(生物)でなくてもよく、非生物(例えば塗膜など)であってもよい。換言すると、本発明の超音波画像構築装置1、101は医療分野、美容分野、化粧品分野のみに限定されず、例えば工業分野などの分野においても使用されることができる。
【0084】
・上記実施形態の超音波皮膚状態評価装置1、101は、いずれも測定対象物に対して超音波トランスデューサ13を二次元方向に相対的に走査させる走査手段を備えていたが、これに代えて超音波トランスデューサ13を一次元方向にのみ相対的に走査させる走査手段を備えたものとしてもよい。また、走査手段は必須の構成ではないため省略しても勿論よく、この場合には装置を小型化、簡略化、低コスト化することが可能となる。
【0085】
・上記第3の実施形態の超音波皮膚状態評価装置101では、把持型プローブ装置106とPC3とが別体となっていて、PC3が有する表示装置36に音響インピーダンス像を表示させるように構成したが、これに限定されない。例えば、把持型プローブ装置106に小型の表示装置36を設けておき、その小型の表示装置36に音響インピーダンス像を表示させるようにしてもよい。さらには、把持型プローブ装置106自体にPC3の機能を内蔵させたような一体構成とし、かつ把持型プローブ装置106に設けた小型の表示装置36に音響インピーダンス像を表示させるようにしてもよい。
【0086】
・上記実施形態の超音波皮膚状態評価装置1、101では、奥行方向の音響インピーダンス分布の推定結果に基づいて音響インピーダンス像を構築したが、これに限定されない。例えば、奥行方向の音速分布を推定し、その結果に基づいて音速像を構築してもよい。
【0087】
・上記実施形態の超音波皮膚状態評価装置1、101では、超音波Bモードエコー画像の元となる反射信号列から音響インピーダンス像を構築してそれを表示装置36に表示させるように構成したが、音響インピーダンス像ばかりでなく超音波Bモードエコー像も表示できるようにしても勿論よい。また、超音波Bモードエコー像を表示する汎用の超音波診断装置に上記実施形態の変換アルゴリズムを組み込むことで、超音波皮膚状態評価装置として動作させるようにしてもよい。
【0088】
・上記実施形態では、皮膚組織内部での多重反射を考慮した時間−周波数領域における解析を通じて、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の音響インピーダンス像に変換する手法を採用したが、これに限定されない。反射波形から特性インピーダンスの分布を推定するための方法としては、例えば、伝送路内部での多重反射を含む全ての反射経路を想定して時間軸上で随時応答を解析していく手法を採用してもよい。この手法であっても、上記実施形態の手法のときと同様の特性インピーダンス分布の推定結果を得ることができる。
層構造を有する非常に薄い測定対象物の超音波断層像を、感覚的に層構造が理解しやすい態様にて比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる超音波画像構築装置を提供する。
本発明の超音波画像構築装置(1)を構成する超音波振動子(13)は、基体(9)に接して配置された測定対象物(8)及び参照物質(10)に超音波を送信し、基体(9)を介してそれらに超音波を入射させ、超音波波形のインパルス応答を受信する。演算手段(31)は、参照物質(10)に入射した超音波波形のインパルス応答情報及び測定対象物(8)に入射した超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づいて、奥行方向の音響物性分布を多重反射の影響を考慮して推定する演算を行う。画像構築手段(31)は、演算手段(31)により得られた奥行方向の音響物性分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する。