【文献】
MITSUI Y. et al.,Cancer Res., 2006, 66(20), pp.9913-9920
【文献】
MOCHIZUKI S. et al.,J. Natl. Cancer Inst., 2012, 104(12), pp.906-922, Epub 2012 May 25
【文献】
KURODA H. et al.,Int. J. Cancer, 2010, 127(8), pp.1844-1856
【文献】
MOCHIZUKI S. et al.,Biochem. Biophys. Res. Commun., 2010, 402(4), pp.651-657
【文献】
OHTSUKA T. et al.,Int. J. Cancer, 2006, 118(2), pp.263-273
【文献】
ROTHE C. et al.,J. Mol. Biol., 2008, 376(4), pp.1182-1200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ヒトショート分泌型ADAM28に配列番号22で表されるアミノ酸配列を含むエピトープにおいて特異的に結合し、且つヒトショート分泌型ADAM28の酵素活性を阻害する活性を有する、抗体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、癌の予防又は治療、或いは癌転移阻害に有用な抗ヒトADAM28抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため、ヒトADAM28に結合する抗ADAM28抗体を複数作製した。その結果、作製した抗ヒトADAM28抗体がADAM28の酵素活性を阻害し、インビボモデルにおいて、優れた癌細胞の増殖抑制効果及び癌転移阻害効果を示すことを見出した。以上の知見に基づき、更に検討を加え、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は以下に関する。
[1]ヒトADAM28に特異的に結合し、且つヒトADAM28の酵素活性を阻害する活性を有する、抗体。
[2]配列番号21、22又は23で表されるアミノ酸配列を含むエピトープにおいて、ヒトADAM28に結合する、[1]に記載の抗体。
[3]軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
(1)該軽鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む;
(2)該軽鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
(但し、配列番号5、6及び7で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号8、9及び10で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している);
(3)該軽鎖可変領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む;
(4)該軽鎖可変領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
(但し、配列番号11、12及び13で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号14、15及び16で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している);
(5)該軽鎖可変領域が、配列番号24で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号25で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号27で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号28で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号29で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む;又は
(6)該軽鎖可変領域が、配列番号24で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号25で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号27で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号28で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号29で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む
(但し、配列番号24、25及び26で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号27、28及び29で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している);
ことを特徴とする[1]に記載の抗体。
[4](1’)該軽鎖可変領域が配列番号17で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む;
(3’)該軽鎖可変領域が配列番号19で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む、又は
(5’)該軽鎖可変領域が配列番号30で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号31で表されるアミノ酸配列を含む、[3]に記載の抗体。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体を含む医薬組成物。
[6][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体を含む、癌の予防又は治療剤。
[7][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体を含む、癌転移阻害剤。
[8]哺乳動物へ有効量の[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体を投与することを含む、該哺乳動物における癌の予防又は治療方法。
[9]哺乳動物がヒトである、[8]記載の方法。
[10]哺乳動物へ有効量の[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体を投与することを含む、該哺乳動物における癌転移阻害方法。
[11]哺乳動物がヒトである、[10]記載の方法。
[12]癌の予防又は治療において使用するための、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体。
[13]癌転移阻害において使用するための、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体。
[14]癌の予防又は治療剤の製造のための、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体の使用。
[15]癌転移阻害剤の製造のための、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗体の使用。
[16][1]〜[4]のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
[17][16]に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
[18][17]に記載のベクターを含む形質転換体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、癌の予防又は治療、或いは癌転移阻害に有用な抗ヒトADAM28抗体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ヒトADAM28に対する特異的結合活性を有し、且つヒトADAM28の酵素活性を阻害する活性を有する抗体を提供する。
【0011】
ADAM28は公知のタンパク質であり、そのアミノ酸配列やcDNA配列も公知である。ADAM28には、プロトタイプ膜アンカー型(ADAM28m)と、ショート分泌型(ADAM28s)の2種類が存在し、いずれも本発明におけるADAM28に包含される。ヒトADAM28mの代表的なアミノ酸配列を配列番号2に、ヒトADAM28mの代表的なcDNA配列を配列番号1に、ヒトADAM28sの代表的なアミノ酸配列を配列番号4に、ヒトADAM28sの代表的なcDNA配列を配列番号3に、それぞれ示す。
【0012】
本発明の抗体は、ヒトADAM28に対する特異的結合活性を有する。
【0013】
「ヒトADAM28」とは、ADAM28のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が、ヒトにおいて天然に発現しているADAM28のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列を有することを意味する。「実質的に同一」とは、着目したアミノ酸配列又はヌクレオチド配列が、ヒトにおいて天然に発現しているADAM28のアミノ酸配列又はヌクレオチド配列と70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、最も好ましくは99%以上)の同一性を有しており、且つヒトADAM28の機能を有することを意味する。ヒト以外の生物種や、ADAM28以外のタンパク質、遺伝子、それらの断片についても同様に解釈する。
【0014】
抗体による抗原Xへの「特異的結合」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Xに対する結合親和性が、非特異的な抗原(例、牛血清アルブミン(BSA))に対する結合親和性よりも高いことを意味する。
【0015】
本発明の抗体は、ヒトADAM28の酵素活性を阻害する活性を有する。ヒトADAM28の酵素活性とは、具体的にはヒトADAM28がヒトIGFBP-3(Insulin-like Growth Factor Binding Protein-3)を切断する活性を意味する。ヒトADAM28がヒトIGFBP-3を切断する活性は、例えばCancer Res 2006; 66(20):9913-9920に記載されたザイモグラフィー解析により評価することができる。
【0016】
本明細書において、「抗体」は、全長抗体及びそのいかなる抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はその一重鎖を含むものとして使用する。「抗体」は、ジスルフィド結合で連結された少なくとも2個の重鎖(H)と2個の軽鎖(L)を含む糖タンパク質またはその抗原結合部分を称する。各重鎖は、重鎖可変領域(本文においてV
Hと略す。)と重鎖定常領域とから構成されている。重鎖定常領域は、3個のドメインC
H1、C
H2およびC
H3から構成されている。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本文においてV
Lと略す。)と軽鎖定常領域から構成されている。軽鎖定常領域は、1個のドメインC
Lで構成されている。V
HおよびV
L領域は、更に、相補性決定領域(CDR)と称される変異性の高い領域に小分割され、それらには、フレームワーク領域(FR)と称され、より保存性の高い領域が散在している。各V
HおよびV
Lは、3個のCDRと4個のFRで構成され、下記の順序、すなわち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4でアミノ末端からカルボキシ末端へ配置されている。当該重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含んでいる。抗体の定常領域は、イムノグロブリンの宿主組織または因子への結合を媒介でき、それらには、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および旧来の補体系の第1成分(C1q)が含まれる。
【0017】
本明細書において、抗体の「抗原結合部分」とは、特異的に抗原(例えば、ヒトADAM28)に結合する能力を保持する抗体の1個以上の断片を称するものとして使用する。抗体の抗原結合機能は全長抗体の断片によって行われることが明らかとなっている。抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれる結合断片の例として、(i)V
L、V
H、C
LおよびC
H1ドメインから構成される1価の断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域中ジスルフィド架橋で結合した2個のFab断片を含む2価の断片であるF(ab’)
2断片、(iii)ヒンジ領域の部分を持つ本来的FabであるFab’断片(FUNDAMENTAL IMMUNOLOGY(Paul ed.,3.sup.rd ed.1993参照)、(iv)V
HおよびC
H1ドメインから構成されるFd断片、(v)抗体のシングルアームのV
LおよびV
Hドメインで構成されるFv断片、(vi)V
Hドメインから構成されるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544−546)、(vii)単離相補性決定領域(CDR)および(viii)単一可変ドメインと二つの定常領域を含む重鎖可変領域であるナノボディを含む。更に、Fv断片の2個のドメインであるV
LおよびV
Hは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え技術を用いてそれらを単一タンパク質鎖として作製できる合成リンカーにより連結でき、この鎖中では、V
LおよびV
H領域が対となって1価の分子を形成する(単一鎖のFv(scFv)として知られている;例えば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)。このような単一鎖の抗体も、抗体の「抗原結合部分」に包含される。これらの抗体断片は、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ、当該断片について、未改変抗体の場合と同様に有用性を求めてスクリーニングされる。
【0018】
本発明の抗体は、好ましくはモノクローナル抗体である。「モノクローナル抗体」とは、単一分子組成物の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対して単一結合特異性と親和性を示す。
【0019】
本発明の抗体は、好ましくはヒト抗体又はヒト化抗体である。「ヒト抗体」とは、フレームワークとCDR領域の両方ともにヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体をいう。更に、抗体が定常領域を含む場合には、この定常領域もヒト生殖細胞系列イムノグロブリン配列に由来する。本明細書において、「ヒト抗体」は、ヒト生殖細胞系列イムノグロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロにおけるランダムまたは部位特異的変異誘発またはインビボにおける体細胞変異により導入される変異)を含む態様をも包含する。また、本明細書において、「ヒト化抗体」とは、マウスのようなヒト以外の動物種の生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列上に融合させた抗体をいう。
【0020】
本明細書において、ヒト抗体には「再構成ヒト抗体」が包含される。再構成ヒト抗体とは、第1のヒトドナー抗体に含まれる少なくとも1つのCDRが、第2のヒトアクセプター抗体において、第2のヒトアクセプター抗体のCDRの代わりに用いられる改変型抗体をいう。好ましくは、6つのCDR全てが置換される。より好ましくは、第1のヒトドナー抗体の抗原結合領域(例えば、Fv、FabまたはF(ab')2)全体が第2のヒトアクセプター抗体における対応領域の代わりに用いられる。より好ましくは、第1のヒトドナー抗体のFab領域が第2のヒトアクセプター抗体の適切な定常領域と機能可能なように連結して全長抗体を形成する。
【0021】
再構成ヒト抗体は、例えば、EP125023、WO96/02576、上記文献16等に開示された、一般的な遺伝子組換え手法を用いて製造することができる。具体的には、例えばドナーヒト抗体中の目的のCDRとアクセプターヒト抗体中の目的のフレームワーク領域(FR)とを連結するように設計したDNA配列を、CDRおよびFR両方の末端領域にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドをプライマーとして用いてPCR法により合成する(WO98/13388に記載の方法を参照)。得られたDNAをヒト抗体定常領域もしくはヒト抗体定常領域改変体をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより再構成ヒト抗体を得ることができる(EP125023、WO96/02576参照)。
【0022】
また本明細書において、ヒト抗体には「人工ヒト抗体」が包含される。人工ヒト抗体は、例えば、上記文献16等に開示された、一般的な遺伝子組換え手法を用いて製造することができる。
【0023】
本発明の抗体には、上述の抗体と他のペプチド又はタンパク質とが融合した融合タンパク質も含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと他のペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチドをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明の抗体との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204−1210)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、ヒトc−mycの断片、VSV−GPの断片、p18HIVの断片、T7−tag、HSV−tag、E−tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α−tubulinの断片、B−tag、Protein Cの断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明の抗体との融合に付される他のポリペプチドとしては、例えば、GST(グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。市販されているこれらペプチドまたはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを、本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドと融合させ、これにより調製された融合ポリヌクレオチドを発現させることにより、融合ポリペプチドを調製することができる。
【0024】
また本発明の抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)やヒアルロン酸などの高分子物質、放射性物質、蛍光物質、発光物質、酵素、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。尚、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている(例えば、US5057313、US5156840)。
【0025】
本発明の抗体は単離又は精製されていることが好ましい。「単離又は精製」とは、天然に存在する状態から、目的とする成分以外の成分を除去する操作が施されていることを意味する。単離又は精製された本発明の抗体の純度(全タンパク質重量に対する、本発明の抗体の重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0026】
好ましい態様において、本発明の抗体は、配列番号21、22又は23で表されるアミノ酸配列を含むエピトープにおいて、ヒトADAM28と結合する。
【0027】
配列番号21で表されるアミノ酸配列(ENFSKWRGS: hADAM28s 274-282)を含むエピトープとしては、配列番号4で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号21で表されるアミノ酸配列を含み、好ましくは20アミノ酸長以下、より好ましくは12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープを挙げることができる。配列番号21で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、具体的には、配列番号21で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ、配列番号32で表されるアミノ酸配列(FTLENFSKWRGS)からなるエピトープ、及び配列番号33で表されるアミノ酸配列(ENFSKWRGSVLS)からなるエピトープを挙げることができる。
【0028】
配列番号22で表されるアミノ酸配列(TELWGPGRRT: hADAM28s 517-526)を含むエピトープとしては、配列番号4で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号22で表されるアミノ酸配列を含み、好ましくは20アミノ酸長以下、より好ましくは12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープを挙げることができる。配列番号22で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、具体的には、配列番号22で表されるアミノ酸配列からなるエピトープを挙げることができる。
【0029】
配列番号23で表されるアミノ酸配列(LFNAPLPT: hADAM28s 395-402)を含むエピトープとしては、配列番号4で表されるアミノ酸配列の連続する部分配列であって、配列番号23で表されるアミノ酸配列を含み、好ましくは20アミノ酸長以下、より好ましくは12アミノ酸長以下の部分配列からなるエピトープを挙げることができる。配列番号23で表されるアミノ酸配列を含むエピトープとしては、具体的には、配列番号23で表されるアミノ酸配列からなるエピトープ、配列番号34で表されるアミノ酸配列(LSNCLFNAPLPT)からなるエピトープ、及び配列番号35で表されるアミノ酸配列(CLFNAPLPTDII)からなるエピトープを挙げることができる。
【0030】
本発明の抗体の好ましい態様としては、以下の(1)〜(4)に記載の抗体を挙げることができる:
(1)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体;
(2)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号5で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号6で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号7で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号9で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号10で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号5、6及び7で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号8、9及び10で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している)。
(3)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体;
(4)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号11、12及び13で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号14、15及び16で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している);
(5)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号24で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号25で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号27で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号28で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号29で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体;及び
(6)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、
該軽鎖可変領域が、配列番号24で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号25で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号26で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含み、且つ
該重鎖可変領域が、配列番号27で表されるアミノ酸配列を有するCDR1、配列番号28で表されるアミノ酸配列を有するCDR2及び配列番号29で表されるアミノ酸配列を有するCDR3を含む、抗体
(但し、配列番号24、25及び26で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加しており、且つ/或いは、
配列番号27、28及び29で表されるアミノ酸配列からなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列において、1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している)。
【0031】
(2)、(4)及び(6)の態様においては、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されるアミノ酸の数は、抗体がヒトADAM28に対する特異的結合活性を有し、且つヒトADAM28の酵素活性を阻害する活性を有する限り特に限定されないが、1つのCDR配列につき、好ましくは2アミノ酸以内、より好ましくは1アミノ酸である。また、アミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加するCDR配列の数は、抗体がヒトADAM28に対する特異的結合活性を有し、且つヒトADAM28の酵素活性を阻害する活性を有する限り特に限定されないが、1つの軽鎖可変領域につき、好ましくは2つ以内、より好ましくは1つであり、1つの重鎖可変領域につき、好ましくは2つ以内、より好ましくは1つである。アミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/又は付加は、軽鎖可変領域と重鎖可変領域の両方において行われてもよいし、いずれか一方のみにおいて行われてもよい。
【0032】
(2)、(4)及び(6)の態様においては、好ましくは、軽鎖可変領域のCDR3のアミノ酸配列においてのみ、1〜3個(好ましくは1又は2個、より好ましくは1個)のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/又は付加している。
【0033】
1又は複数のアミノ酸残基を目的の他のアミノ酸に置換する方法としては、例えば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto−Gotoh, T, Mizuno, T, Ogasahara, Y, and Nakagawa, M. (1995) An oligodeoxyribonucleotide−directed dual amber method for site−directed mutagenesis. Gene 152, 271−275、Zoller, MJ, and Smith, M.(1983) Oligonucleotide−directed mutagenesis of DNA fragments cloned into M13 vectors.Methods Enzymol. 100, 468−500、Kramer,W, Drutsa,V, Jansen,HW, Kramer,B, Pflugfelder,M, and Fritz,HJ(1984) The gapped duplex DNA approach to oligonucleotide−directed mutation construction. Nucleic Acids Res. 12, 9441−9456、Kramer W, and Fritz HJ(1987) Oligonucleotide−directed construction of mutations via gapped duplex DNA Methods. Enzymol. 154, 350−367、Kunkel,TA(1985) Rapid and efficient site−specific mutagenesis without phenotypic selection.Proc Natl Acad Sci U S A. 82, 488−492)が挙げられる。該方法を用いて、抗体の所望のアミノ酸を目的の他のアミノ酸に置換することができる。又、フレームワークシャッフリング(Mol Immunol. 2007 Apr;44(11):3049−60)およびCDR修復(US2006/0122377)等のライブラリー技術を用いることにより、フレームワークおよびCDRにおけるアミノ酸を適切な他のアミノ酸に置換することも可能である。
【0034】
本発明の抗体において、CDRと連結される抗体のフレームワーク領域(FR)は、CDRが良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。本発明の抗体に用いられるFRは特に限定されず、如何なるFRが用いられていてもよいが、ヒト抗体のFRが用いられることが好ましい。ヒト抗体のFRは天然配列を有するFRが用いられてもよいし、必要に応じ、CDRが適切な抗原結合部位を形成するように、天然配列を有するフレームワーク領域の1又は複数のアミノ酸を置換、欠失、付加及び/又は挿入等してもよい。例えば、アミノ酸を置換したFRを用いた抗体の抗原への結合活性を測定し評価することによって、所望の性質を有する変異FR配列が選択できる(Sato, K. et al.,Cancer Res.(1993)53, 851−856)。
【0035】
(1)及び(2)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のVk1(Kabat database)のFRが、重鎖については、好ましくはヒト抗体のVH5(Kabat database)のFRが用いられる。
(3)及び(4)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のVk2(Kabat database)のFRが、重鎖については、好ましくはヒト抗体のVH6(Kabat database)のFRが用いられる。
(5)及び(6)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のVk2(Kabat database)のFRが、重鎖については、好ましくはヒト抗体のVH3(Kabat database)のFRが用いられる。
【0036】
本発明の抗体で用いられる定常領域は特に限定されず、如何なる定常領域が用いられてもよい。本発明の抗体で用いられる定常領域の好ましい例としては、ヒト抗体の定常領域(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgM由来の定常領域など)を挙げることができる。例えばH鎖では、Cγ1、Cγ2、Cγ3、Cγ4、Cμ、Cδ、Cα1、Cα2、Cεを、L鎖ではCκ、Cλを使用することができる。
【0037】
(1)〜(4)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のCκの定常領域が、重鎖については、好ましくはヒト抗体のCγ1の定常領域が用いられる。
(5)及び(6)の抗体においては、軽鎖については、好ましくはヒト抗体のCκの定常領域が、重鎖については、好ましくはヒト抗体のCγ1の定常領域が用いられる。
【0038】
本発明の好ましい抗体として以下のものを挙げることができる:
(1’)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域が配列番号17で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号18で表されるアミノ酸配列を含む、抗体;
(3’)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域が配列番号19で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号20で表されるアミノ酸配列を含む、抗体;及び
(5’)軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含み、該軽鎖可変領域が配列番号30で表されるアミノ酸配列を含み、且つ、該重鎖可変領域が配列番号31で表されるアミノ酸配列を含む、抗体。
【0039】
上記(1’)の抗体は、上記(1)の抗体の好ましい態様に、上記(3’)の抗体は、上記(3)の抗体の好ましい態様に、それぞれ相当する。上記(5’)の抗体は、上記(5)の抗体の好ましい態様に、それぞれ相当する。
【0040】
また、本発明は上記本発明の抗体をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを提供するものである。該ポリヌクレオチドは、DNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。
【0041】
尚、本発明のポリヌクレオチドには、本発明の抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、及び重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドと、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドとの組み合わせが包含される。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体のアミノ酸配列情報、公知の配列情報や本明細書の配列表に記載された配列情報に基づき、公知の遺伝子組換え技術を利用することにより容易に製造することができる。例えば、配列情報に基づき適当なプライマーを設計し、本発明の抗体を構成する構成要素をコードするDNAをPCR反応によって増幅し、DNAフラグメントをリガーゼなどの適切な酵素を用いて連結することにより、本発明のポリヌクレオチドを製造することができる。或いは、本発明の抗体のアミノ酸配列情報に基づいて、ポリヌクレオチド合成装置により各構成要素をコードするポリヌクレオチドを合成してもよい。
【0043】
取得された本発明の抗体をコードするポリヌクレオチドは、目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化するか、リンカーを付加した後に、使用することができる。該ポリヌクレオチドはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することができる。
【0044】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離又は精製されている。単離又は精製された本発明のポリヌクレオチドの純度(全ポリヌクレオチド重量に対する、本発明のポリヌクレオチドの重量の割合)は、通常50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上(例えば実質的に100%)である。
【0045】
本発明は、上記本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを提供するものである。本発明のベクターには、本発明の抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクター、及び重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターと、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含むベクターとの組み合わせが包含される。該ベクターは好ましくは単離又は精製されている。ベクターとしては発現ベクター、クローニングベクター等を挙げることができ、目的に応じて選択することが可能であるが、好ましくは、ベクターは発現ベクターである。該発現ベクターは、本発明の抗体を発現し得る。該発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドを適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に機能的に連結することにより製造することができる。ベクターの種類としては、プラスミドベクター、ウイルスベクター等を挙げることができ、用いる宿主に応じて適宜選択することができる。
【0046】
宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌(エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等)、バチルス属菌(バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)等)、酵母(サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等)、昆虫細胞(夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)等)、昆虫(カイコの幼虫等)、哺乳動物細胞(ラット神経細胞、サル細胞(COS−7等)、チャイニーズハムスター細胞(CHO細胞等)等)などが用いられる。
【0047】
哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ、ミンク等の家畜、イヌ、ネコ等のペット、ヒト、サル、カニクイザル、アカゲザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
プラスミドベクターとしては、大腸菌由来のプラスミドベクター(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミドベクター(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミドベクター(例、pSH19,pSH15)等を挙げることができ、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することができる。
【0049】
ウイルスベクターの種類は、用いる宿主の種類や使用目的に応じて適宜選択することができる。例えば、宿主として昆虫細胞を用いる場合には、バキュロウイルスベクター等を用いることができる。また、宿主として哺乳動物細胞を用いる場合には、モロニーマウス白血病ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、シンドビスウイルスベクター等のレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、パルボウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、センダイウイルスベクター等を用いることができる。
【0050】
また、プロモーターは、用いる宿主の種類に対応して、該宿主内で転写を開始可能なものを選択することができる。例えば、宿主がエシェリヒア属菌である場合、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーターなどが好ましい。宿主がバチルス属菌である場合、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが好ましい。宿主が酵母である場合、PHO5プロモーター、PGKプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。宿主が哺乳動物細胞である場合、サブゲノミック(26S)プロモーター、CMVプロモーター、SRαプロモーターなどが好ましい。
【0051】
本発明のベクターには、抗体分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。抗体分泌のためのシグナル配列としては、大腸菌のペリプラズムに産生させる場合、pelBシグナル配列(Lei, S. P. et al J. Bacteriol. (1987) 169, 4379)を使用すればよい。
【0052】
本発明のベクターは、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、SV40oriと略称する場合がある)などを、それぞれ機能可能な態様で含有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfrと略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(Amp
rと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子(Neo
rと略称する場合がある、G418耐性)等が挙げられる。
【0053】
上記本発明のベクターを、自体公知の遺伝子導入法(例えば、リポフェクション法、リン酸カルシウム法、マイクロインジェクション法、プロプラスト融合法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、Gene Gunによる遺伝子導入法等)に従って上記宿主へ導入することにより、該ベクターが導入された形質転換体(本発明の形質転換体)を製造することができる。導入されるベクターとして発現ベクターを使用することにより、該形質転換体は本発明の抗体を発現し得る。本発明の形質転換体は、本発明の抗体の製造等に有用である。
【0054】
本発明の形質転換体を、宿主の種類に応じて、自体公知の方法で培養し、培養物から本発明の抗体を単離することにより、本発明の抗体を製造することができる。宿主がエシェリヒア属菌である形質転換体の培養は、LB培地やM9培地等の適切な培地中、通常約15〜43℃で、約3〜24時間行なわれる。宿主がバチルス属菌である形質転換体の培養は、適切な培地中、通常約30〜40℃で、約6〜24時間行なわれる。宿主が酵母である形質転換体の培養は、バークホールダー培地等の適切な培地中、通常約20℃〜35℃で、約24〜72時間行なわれる。宿主が昆虫細胞または昆虫である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたGrace’s Insect medium等の適切な培地中、通常約27℃で、約3〜5日間行なわれる。宿主が動物細胞である形質転換体の培養は、約10%のウシ血清が添加されたMEM培地等の適切な培地中、通常約30℃〜40℃で、約15〜60時間行なわれる。いずれの培養においても、必要に応じて通気や撹拌を行ってもよい。
【0055】
尚、遺伝子工学的に抗体を製造する方法については、例えば、Co, M. S. et al., J. Immunol. (1994) 152, 2968−2976 ; Better, M. and Horwitz, A. H., Methods Enzymol. (1989) 178, 476−496 ; Pluckthun, A. and Skerra, A., Methods Enzymol. (1989) 178, 497−515 ; Lamoyi, E., Methods Enzymol. (1986) 121, 652−663 ; Rousseaux, J. et al., Methods Enzymol. (1986) 121, 663−669 ; Bird, R. E. and Walker, B. W., Trends Biotechnol. (1991) 9, 132−137等を参照のこと。
【0056】
培養物からの本発明の抗体の分離、精製は、通常の抗体の精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えば、クロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせれば抗体を分離、精製することができる。
【0057】
クロマトグラフィーとしては、例えばアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed Daniel R. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。これらのクロマトグラフィーは、液相クロマトグラフィー、例えばHPLC、FPLC等の液相クロマトグラフィーを用いて行うことができる。アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プロテインGカラムが挙げられる。例えば、プロテインAを用いたカラムとして、Hyper D, POROS, Sepharose FF(GE Amersham Biosciences社製)等が挙げられる。本発明は、これらの精製方法を用い、高度に精製された抗体も包含する。
【0058】
また本発明は、上記本発明の抗体を有効成分として含有する医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は癌の予防又は治療剤;癌の増殖阻害剤;癌転移阻害剤等として有用である。癌の種類としては、本発明の抗体による癌の予防又は治療効果;癌の増殖阻害効果;又は癌転移阻害効果を達成し得る限り特に限定されないが、肝癌、大腸癌、腎臓癌、黒色腫、膵癌、甲状腺癌、胃癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌)、脳腫瘍、子宮癌、乳癌、多発性骨肉腫、卵巣癌、慢性白血病、前立腺癌、急性リンパ性白血病、胚細胞腫、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、繊毛癌、小児悪性腫瘍、胆嚢・胆管癌等が挙げられる。好ましい態様において、本発明の抗体の適用対象となる癌はヒトADAM28を発現する癌である。癌がヒトADAM28を発現するか否かは、ウェスタンブロッティング、RT−PCR等により評価することができる。
【0059】
理論には拘束されないが、ADAM28はIGFBP-3を分解することにより、IGF-1/IGFBP-3複合体の形成を阻害し、IGF-1による癌細胞の増殖を促進する。本発明の抗体はこのADAM28によるIGFBP-3の分解を阻害することにより、IGF-1による癌細胞の増殖を抑制する。従って、一態様において、本発明の抗体の適用対象となる癌は、IGF-1感受性の癌(即ち、IGF-1依存的な増殖促進を示す癌)である。癌がIGF-1感受性であるか否かは、癌におけるIGF-1受容体の発現をウェスタンブロッティング、RT−PCR等により解析することにより評価することができる。
【0060】
理論には拘束されないが、ADAM28はvon Willebrand factor (vWF)を分解することにより、vWFによる癌細胞のアポトーシス誘導を阻害する。本発明の抗体はこのADAM28によるvWFの分解を阻害することにより、vWFによる癌細胞のアポトーシス誘導を促進し、その結果として癌の増殖や転移を抑制する。従って、一態様において、本発明の適用対象となる癌は、vWF感受性の癌(即ち、vWFによりアポトーシスが誘導される癌)である。癌がvWF感受性であるか否かは、例えば、J Natl Cancer Inst 2012;104:906-922に記載された方法により、vWFでコートしたプレート上で癌細胞を培養し、DNAの断片化を解析することにより評価することができる。
【0061】
本発明の抗体を「有効成分として含有する」とは、本発明の抗体を活性成分の少なくとも1つとして含むという意味であり、その含有率を制限するものではない。また、本発明の医薬組成物は、本発明の抗体と合わせて他の有効成分を含有してもよい。
【0062】
本発明の抗体は、常法に従って製剤化することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton, U.S.A)。更に、必要に応じ、医薬的に許容される担体及び/または添加物を含んでもよい。例えば、界面活性剤(PEG、Tween等)、賦形剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、着色料、着香料、保存料、安定剤、緩衝剤(リン酸、クエン酸、他の有機酸等)、キレート剤(EDTA等)、懸濁剤、等張化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動性促進剤、矯味剤等を含むことができる。しかしながら、本発明の医薬組成物は、これらに制限されず、その他常用の担体を適宜含んでいてもよい。具体的には、軽質無水ケイ酸、乳糖、結晶セルロース、マンニトール、デンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、中鎖脂肪酸トリグリセライド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、白糖、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン及び免疫グロブリン等のタンパク質、並びに、アミノ酸を含んでいてもよい。注射用の水溶液とする場合には、本発明の抗体を、例えば、生理食塩水、ブドウ糖またはその他の補助薬を含む等張液に溶解する。補助薬としては、例えば、D−ソルビトール、D−マンノース、D−マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、更に、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、HCO−50)等と併用してもよい。
【0063】
また、必要に応じポリペプチドをマイクロカプセル(ヒドロキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリ[メチルメタクリル酸]等のマイクロカプセル)に封入したり、コロイドドラッグデリバリーシステム(リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル等)とすることもできる(Remington’s Pharmaceutical Science 16th edition &, Oslo Ed. (1980)等参照)。更に、薬剤を徐放性の薬剤とする方法も公知であり、ポリペプチドに適用し得る(Langer et al., J.Biomed.Mater.Res.(1981) 15: 167−277; Langer, Chem. Tech. (1982)12: 98−105;米国特許第3,773,919号;欧州特許出願公開(EP)第58,481号; Sidman et al., Biopolymers(1983)22:547−56;EP第133,988号)。更に、本剤にヒアルロニダーゼを添加あるいは混合することで皮下に投与する液量を増加させることも可能である(例えば、WO2004/078140等)。
【0064】
医薬組成物中の本発明の抗体の含有量は、例えば、医薬組成物全体の約0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜99.9%である。
【0065】
本発明の医薬組成物は、経口又は非経口のいずれでも投与可能であるが、好ましくは非経口投与される。具体的には、注射及び経皮投与により患者に投与される。注射剤型の例としては、例えば、静脈内注射、筋肉内注射または皮下注射等により全身又は局所的に投与することができる。治療部位又はその周辺に局所注入、特に筋肉内注射してもよい。経皮投与剤型の例としては、例えば、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、湿布剤、および貼付剤等があげられ、全身又は局所的に投与することができる。また、患者の年齢、症状により適宜投与方法を選択することができる。投与量としては、例えば、1回につき体重1kgあたり本発明の抗体として0.5mg〜10mgの範囲で選ぶことが可能である。しかしながら、本発明の医薬組成物は、これらの投与量に制限されるものではない。
【0066】
刊行物、特許文献等を含む、本明細書に引用されたすべての参考文献は、引用により、それらが個々に具体的に参考として援用されかつその内容全体が具体的に記載されているのと同程度まで、本明細書に援用される。
【実施例】
【0067】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。尚、実施例における各種遺伝子操作は、Molecular cloning third. ed. (Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)に記載の方法に従った。
【0068】
[実施例1]
抗原および抗体作製
(1)ヒトADAM28組み換えタンパク質(rhADAM28)の作製
完全長rhADAM28は、Biochem Biophys Res Commun. 2004; 315: 79-84に記載の方法にしたがって、作製および精製された。
【0069】
(2)rhADAM28のビオチン化
精製したrhADAM28は、EZ−Link NHS−PEO
4−Biotin(Thermo Scientific)の標準プロトコールに従ってビオチン化し、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて濃度を決定した。
【0070】
(3)ファージディスプレイ法による抗ヒトADMA28ヒト抗体クローンの選択
ビオチン化したrhADAM28は、ストレプトアビジンコート磁性体ビーズ(Dynabeads MyOne Streptavidin T1 磁性体ビーズ、Invitrogen社製)100μlに4℃、1時間固相化し、1mlのPBST(0.05% Tween 20含有PBS)で5回洗浄した。ヒト抗体ファージライブラリーにはHuCAL GOLD(MorphoSys社製)を用い、WO2007/042309及びWO2006/122797等に記載された方法に従って抗体選択を行った。ファージライブラリーにrhADAM28固相化ビーズを加えて抗原特異的抗体を結合させた。磁性体ビーズを回収し、数回洗浄を行った後、ファージを磁性体ビーズから溶出させた。溶出したファージは、大腸菌に感染させ、37℃で一晩培養した。尚、ファージ感染大腸菌からのファージレスキュー操作は一般的な方法に従った(Molecular cloning third. Ed. Cold Spring Harbor Lab. Press, 2001)。以上に記載した選択ラウンドを複数回繰り返して抗原特異的抗体を提示するファージの濃縮操作を行った。
【0071】
(4)ELISAによる抗ヒトADMA28ヒト抗体のスクリーニング
濃縮操作後に得られたFab遺伝子のプールを大腸菌発現ベクターにサブクローニングした。WO2006/122797等に記載の手法に従って、Fab抗体を発現させ、ELISA法により抗原特異的抗体のスクリーニングを行った。Fab抗体は大腸菌破砕液の可溶性画分よりStrep−Tactinカラム(IBA社製)の標準法に従い精製を行った。また、SDS−PAGEによって精製抗体の純度を確認し、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて濃度を決定した。
【0072】
(5)抗ヒトADAM28ヒト抗体クローンの塩基配列解析
得られた2クローン(211−12、211−14)の大腸菌を培養し、プラスミドを回収(QIAprep Spin MiniPrep kit:QIAGEN社製)して塩基配列解析に使用した。表1に、それぞれのクローンのCDR(相補性決定領域)のアミノ酸配列を示す。また、各クローンの可変領域の全長アミノ酸配列を配列番号17〜20に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
(6)抗ヒトADAM28ヒト抗体クローンのIgG抗体作製
得られた2クローンのFab抗体遺伝子をサブクローニングすることでIgG発現ベクター(重鎖の定常領域はIgG1)を構築した。これらの発現ベクターをLipofectamine(Invitrogen社製)の標準方法に従ってHEK293T細胞にトランスフェクションし、72時間培養後の培養上清を回収した。尚、培地にはUltra Low IgG FBS(Invitrogen社製)を10%で添加したDMEM(Sigma)を用いた。この培養上清からrProteinA Sepharose Fast Flow(GE healthcare社製)を用いた標準方法によってIgG抗体を精製した。精製後のタンパク質はSDS−PAGEによって単一バンドであることを確認し、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いて濃度を決定した。
【0075】
(7)抗ヒトADAM28マウスモノクローナル抗体の作製
精製したrhADAM28を抗原として用いて、ヒトADAM28タンパク質に対するモノクローナル抗体を樹立した。rhADAM28を用いたELISAによりまず5つのクローン選抜し、クローン297-2F3をヒトADAM28に対する抗体の候補として選択した。モノクローナル抗体(297-2F3)の単一反応性を、組み換え型ヒトADAM28のイムノブロッティングにより決定した。
【0076】
[実施例2]
抗ヒトADAM28抗体のヒトADAM28酵素活性抑制効果
rhADAM28と抗ADAM28抗体を、図中に示す重量比で2時間インキュベート後、IGFBP-3(100ng)を加えて37℃で24時間インキュベートし、5mMのEDTAを含むSDS-sample bufferで反応を終了させた。その後、反応産物をSDS-PAGE(10% アクリルアミドゲル)し、抗IGFBP-3抗体(Santa Cruz Biotechnology, Inc., Santa Cruz, CA)を用いたイムノブロット法によりIGFBP-3分解の程度を検出した(
図1)。211-14及び211-12のいずれの抗体も、ヒトADAM28によるIGFBP-3の分解を抑制した。
【0077】
[実施例3]
乳癌細胞株に対する抗ヒトADAM28抗体の増殖抑制効果
MDA-MB231細胞に対するIGF-Iの細胞分裂促進効果を、製造者の指示書に従い、5-bromo-2’deoxy-uridine (BrdUrd) Labeling and Detection Kit III (Roche Molecular Biochemicals, Basel, Switzerland)を用いて測定した。同期化及び増殖停止の後、細胞を1%FBSを含有するDMEM中の1μg/mlのIGF-1により処理した。6時間後、BrdUrd(10μmol/L)を培地へ添加し、更に42時間培養した。IGF-Iの細胞分裂促進効果へのADAM28活性の寄与を調べるため、細胞をIGF-I処理の30分前に、1又は5μg/mlの抗ADAM28抗体とともにインキュベートし、次に、IGF-Iの存在下で、42時間、BrdUrdと反応させた(
図2)。211-14、211-12及び297-2F3のいずれの抗体もMDA-MB231細胞のインビトロ増殖を抑制した。
【0078】
[実施例4]
抗ヒトADAM28抗体のインビボにおける癌細胞増殖抑制効果
レンチウイルスベクターによりルシフェラーゼを恒常的に発現するADAM28高発現乳癌細胞株MDA-MB231
ffLuc-cp156を作製し、NOD/SCIDマウス(Six-week-old male, Charles River Laboratories International Inc, Washington, MA)の乳房皮下組織に移植(2 x 10e6個)した。移植後、抗ADAM28抗体(2mg/kg/mice)を2日間隔で5回局所注射し、腫瘍増殖の抑制効果を検討した。D-ルシフェリン(150mg/Kg)(Promega Co, Madison, MI)を腹腔内投与後in vivo imaging system (IVIS)-100 (Xenogen Co., Alameda, CA)にて発光を検出した(
図3)。211-14及び211-12のいずれの抗体も、インビボにおけるMDA-MB231
ffLuc-cp156の増殖を抑制した。
【0079】
[実施例5]
抗ヒトADAM28抗体のインビボにおける癌細胞転移抑制効果
雄のNOD/SCIDマウス(6週齢)(Charles River Laboratories International, Inc., Wilmington, MA)の尾静脈中に、PC-9
ffLuc-cp156細胞(300μlのPBS中に、1x10
6個)を注射した。製造者の指示書に従い、肺転移を、ルシフェラーゼ活性の検出のためのIn Vivo Imaging System (IVIS)-100カメラシステム(Xenogen Co., Alameda, CA)を用いた生物発光イメージングによりモニターした。イメージングの間、マウスを、イソフルランで麻酔し、D-ルシフェリン(150 mg/kg; Promega Co., Madison, WI)を腹腔内へ注射し、1分後、動物全身からの光子をカウントした。抗ADAM28中和抗体の、肺転移への効果を調べるため、PC-9
ffLuc-cp156細胞を5μg/mlのマウス抗ヒトADAM28モノクローナル抗体(297-2F3)、又は5μg/mlの非免疫IgGとともに2時間、4℃にてインキュベートし、マウスへ静注した(1群あたりn = 9匹)(
図4)。297-2F3投与によって癌転移が抑制された。
【0080】
[実施例6]
また、実施例4において、癌細胞移植後6週間後のマウスの各臓器から抽出したRNAから、ルシフェラーゼ特異的なプライマーを用いてRT-PCRを行い、腫瘍由来の遺伝子発現の有無を確認し、自然転移の有無を検討した(
図5)。211-14及び211-12のいずれの抗体も、癌細胞の微小転移を抑制した。
【0081】
[実施例7]
上記実施例1(7)において得られた、マウス抗ヒトADAM28モノクローナル抗体297-2F3を産生するハイブリドーマのcDNAより、当該抗体の可変領域をPCR増幅し、クローニングベクターへサブローニングし、当該領域の塩基配列を解析した。表2に、CDR(相補性決定領域)のアミノ酸配列を示す。また、軽鎖及び重鎖可変領域の全長アミノ酸配列を配列番号146及び147にそれぞれ示す。
【0082】
【表2】
【0083】
[実施例8]
次に、WO98/13388に記載の方法を参照しつつ、マウス抗ヒトADAM28モノクローナル抗体297-2F3の各CDRを、ヒト抗体フレームにグラフティングし、ヒト化を行った。この結果得られたヒト化297-2F3の軽鎖及び重鎖可変領域の全長アミノ酸配列を配列番号30及び31にそれぞれ示す。
【0084】
[実施例9]
エピトープの同定(1)
ヒトADAM28sの部分ペプチドを固定化したペプチドアレイを用いて、抗ヒトADAM28抗体211-12及び297-2F3について、エピトープマッピングを行った。具体的には、下記の表のように、ヒトADAM28sのプロテアーゼドメインからC末端までをカバーする配列に対して、残基数が12アミノ酸残基でオフセットが3アミノ酸残基のペプチド群からなるペプチドアレイを作製した。HRP標識した抗ヒトADAM28s抗体をペプチドアレイと反応させた。
【0085】
【表3】
【0086】
その結果、211-12は、上記ペプチド#25及び#26に特異的に結合した。この結果から、211-12のエピトープには、ペプチド#25と#26に共通する配列番号21で表されるアミノ酸配列(ENFSKWRGS)が含まれることが示唆された。
【0087】
297-2F3は、上記ペプチド#65及び#66に特異的に結合した。ペプチド#65と#66に共通するアミノ酸配列(CLFNAPLPT:配列番号145)のうち、システインは、多くの場合抗体に認識されないので、297-2F3のエピトープには、配列番号23で表されるアミノ酸配列(LFNAPLPT)が含まれることが示唆された。MBPのC末端に配列番号23で表されるアミノ酸配列を付加した融合タンパク質を強制発現した大腸菌のライセートを用いたドットブロットにより、297-2F3が、配列番号23をエピトープとして特異的に認識することを確認した。
【0088】
[実施例9]
エピトープの同定(2)
MBPのC末端に、ヒトADAM28s(配列番号4)の以下の領域の部分配列を付加した融合タンパク質を、それぞれ調製した。
399-540、399-497、491-540、491-510、501-520、511-530、521-540、513-522、515-524、517-526、519-528
また、コントロールとして、MBPのC末端に、ヒトADAM28m(配列番号2)の以下の領域の部分配列を付加した融合タンパク質を調製した。
517-526(ヒトADAM28m、コントロールとして)
【0089】
上記融合タンパク質に対する抗ヒトADAM28抗体211-14の反応性を、ウェスタンブロッティングにより評価した。その結果、211-14は、ヒトADAM28sの399-540、491-540、511-530及び517-526の領域の部分配列を含む融合タンパク質へ強く結合した。この結果から、211-14のエピトープには、ヒトADAM28sの517-526の領域(TELWGPGRRT、配列番号22)が含まれることが示唆された。
【0090】
【表4-1】
【0091】
【表4-2】
【0092】
【表5】
【0093】
【表6】
【0094】
【表7】
【0095】
【表8】
【0096】
【表9】
【0097】
【表10】
【0098】
【表11】
【0099】
【表12】
【0100】
【表13】