特許第6361006号(P6361006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361006
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】消泡剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20180712BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20180712BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B01D19/04 A
   C08K3/36
   C08L71/02
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-50102(P2014-50102)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174002(P2015-174002A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】永松 泰成
(72)【発明者】
【氏名】松村 陽平
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/134651(WO,A1)
【文献】 特開平08−323108(JP,A)
【文献】 特開2011−078942(JP,A)
【文献】 特開2011−078943(JP,A)
【文献】 特公昭50−001475(JP,B1)
【文献】 特開昭51−071886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/04
C08K 3/36
C08L 71/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒュームドシリカ(A)とポリエーテル化合物(B)からなり、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、ヒュームドシリカ(A)の含有量が0.3〜15重量%、ポリエーテル化合物(B)の含有量が85〜99.7重量%であり、
ヒュームドシリカ(A)のメタノール湿潤性(M値)が35〜75であり、
ヒュームドシリカ(A)の数平均一次粒子径が5〜30nmであり、
ポリエーテル化合物(B)が、一般式(1)で表されるポリエーテル化合物(B1)、一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(B2)、一般式(3)で表されるポリエーテル化合物(B3)、一般式(4)で表されるポリエーテル化合物(B4)及び一般式(5)で表されるポリエーテル化合物(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする消泡剤(線状シリコーンを含むものを除く。繰り返しエーテル単位が少なくとも3個の炭素原子を有するポリエーテル(ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はポリテトラメチレンオキシド)を含むものを除く。)。
【化1】
は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、R及びRは炭素数1〜24の1価の有機基、Rは炭素数1〜24の2価の有機基、Rは水酸基又は炭素数1〜24の1価の有機基、AO及びOAは炭素数2〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基を表し、(AO)nのうち、オキシエチレン基の占める割合は0〜20重量%であり、nは1〜100の整数で一分子中に複数のnが存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよく、sは1〜10の整数、pは0〜10の整数、qは0〜9の整数、rは0〜9の整数、mは0〜9の整数、p+rは1〜10の整数、p+q+rは1〜10の整数、p+q+r+mは2〜10である。
【請求項2】
さらに水(C)を含み水(C)の含有量がヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、1〜10重量%である請求項に記載の消泡剤。
【請求項3】
ラテックスの重合分散液に請求項1又は2に記載の消泡剤を添加して、未反応モノマーを減圧留去する脱モノマー工程を含むことを特徴とするラテックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消泡剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、「(A)下記一般式(1)(式中、R、Rは各々独立に直鎖あるいは分岐鎖の炭素数6〜22のアルキル基、アルケニル基を表し、X、Zは各々独立にアシル基、エーテル基を表し、Yはポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を表し、ポリオキシエチレン基がY中で50モル%以下である。)で表されたポリオキシアルキレン化合物と、
−X−(Y)−Z−R (1)
(B)オルガノポリシロキサンと、(C)疎水性シリカを含んでなることを特徴とする消泡剤組成物」が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−057872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の消泡剤では、十分な消泡性(破泡、抑泡効果)が得られないという問題がある。特に経日的に消泡性が低下するという問題がある。
本発明の目的は、長期保管しても、優れた消泡性(破泡、抑泡効果)を発揮する消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の消泡剤の特徴は、ヒュームドシリカ(A)とポリエーテル化合物(B)からなり、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、ヒュームドシリカ(A)の含有量が0.3〜15重量%、ポリエーテル化合物(B)の含有量が85〜99.7重量%であり、
ヒュームドシリカ(A)のメタノール湿潤性(M値)が35〜75であり、
ヒュームドシリカ(A)の数平均一次粒子径が5〜30nmであり、
ポリエーテル化合物(B)が、一般式(1)で表されるポリエーテル化合物(B1)、一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(B2)、一般式(3)で表されるポリエーテル化合物(B3)、一般式(4)で表されるポリエーテル化合物(B4)及び一般式(5)で表されるポリエーテル化合物(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である点(線状シリコーンを含むものを除く。繰り返しエーテル単位が少なくとも3個の炭素原子を有するポリエーテル(ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はポリテトラメチレンオキシド)を含むものを除く。)を要旨とする。
【化1】
は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、R及びRは炭素数1〜24の1価の有機基、Rは炭素数1〜24の2価の有機基、Rは水酸基又は炭素数1〜24の1価の有機基、AO及びOAは炭素数2〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基を表し、(AO)nのうち、オキシエチレン基の占める割合は0〜20重量%であり、nは1〜100の整数で一分子中に複数のnが存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよく、sは1〜10の整数、pは0〜10の整数、qは0〜9の整数、rは0〜9の整数、mは0〜9の整数、p+rは1〜10の整数、p+q+rは1〜10の整数、p+q+r+mは2〜10である。
【0006】
本発明のラテックスの製造方法の特徴は、ラテックスの重合分散液に上記の消泡剤を添加して、未反応モノマーを減圧留去する脱モノマー工程を含む点を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の消泡剤は、長期保管しても、優れた消泡性(破泡、抑泡効果)を発揮する。
【0008】
本発明のラテックスの製造方法によると、上記の消泡剤を使用するので、長期保管した消泡剤であっても、優れた消泡性(破泡、抑泡効果)を発揮する。したがって、ラテックスの生産性が一段と向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ヒュームドシリカ(A)としては、親水性ヒュームドシリカ及び疎水性ヒュームドシリカが使用できる。これらのうち、消泡性の観点から、疎水性ヒュームドシリカが好ましい。
【0010】
ヒュームドシリカ(A)は、市場から容易に入手できる。疎水性ヒュームドシリカの商品名としては、AEROSILシリーズ(R972、RX200、RY200、R202及びR805等、日本アエロジル株式会社、「AEROSIL」はエボニック デグサ ゲーエムベーハーの登録商標である。以下、同様である。);REOLOSILシリーズ(MT−10、DM−10及びDM−20S等、株式会社トクヤマ、「REOLOSIL」は同社の登録商標である。以下、同様である。);HDKシリーズ(HDKH15及びHDKH18等、旭化成ワッカーシリコーン株式会社、「HDK」はWacker Chemie AGの登録商標である。以下、同様である。);並びにCAB−O−SILシリーズ(TS−720、TS−622及びTS−382等、キャボットカーボン社、「CAB−O−SIL」はキヤボツト コ−パレイシヤンの登録商標である。以下、同様である。)等が挙げられる。
【0011】
親水性ヒュームドシリカの商品名としては、AEROSILシリーズ(50、130、200、300及びR812等);REOLOSILシリーズ(QS−10、QS−30、QS−40及びS−102等、株式会社トクヤマ);HDKシリーズ(HDKN20及びHDKS13等、旭化成ワッカーシリコーン株式会社)CAB−O−SILシリーズ(EH−5及びS−5等、キャボットカーボン社)等が挙げられる。
【0012】
ヒュームドシリカ(A)のメタノール湿潤性(M値)は、35〜75が好ましく、さらに好ましくは40〜70である。
【0013】
M値は、疎水化の度合いを表す指標であり、濃度の相違するいくつかの水/メタノール混合溶液のうち、メタノール濃度が最も小さい均一分散液の容量%を意味し、以下のようにして測定される値である。この値が高い程、疎水性が高いといえる。
【0014】
<メタノール湿潤性(M値)の測定方法>
メタノール濃度を5容量%の間隔で変化させた水/メタノール混合溶液を調製し、これを容積10mlの試験管に5ml入れる。次いで測定試料0.2gを入れ、試験管にふたをして、20回上下転倒してから1〜2分間静置した後、凝集物を観察して、凝集物がなく、測定試料の全部が湿潤して均一分散した分散液のうち、メタノール濃度が最も小さい分散液のメタノールの濃度(容量%)をM値とする。
【0015】
ヒュームドシリカ(A)の数平均一次粒子径(nm)は、5〜30が好ましく、さらに好ましくは12〜16である。
【0016】
数平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡像上で、測定試料から無作為に少なくとも2500個の粒子の粒子径を測定し、個数平均により平均一次粒子径を求める。
【0017】
ポリエーテル化合物(B)としては、複数のエーテル結合を分子内に有する化合物であり、25℃で液状であるものが使用でき、ポリオキシアルキレン化合物が好ましく例示できる。
【0018】
ポリエーテル化合物(B)としては、炭素数2〜18のオキシアルキレン基を単位とする重合体が含まれ、一般式(1)で表されるポリエーテル化合物(B1)、一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(B2)、一般式(3)で表されるポリエーテル化合物(B3)、一般式(4)で表されるポリエーテル化合物(B4)及び一般式(5)で表されるポリエーテル化合物(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく例示できる。
【0019】
【化1】
【0020】
は炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基、R及びRは炭素数1〜24の1価の有機基、Rは炭素数1〜24の2価の有機基、Rは水酸基又は炭素数1〜24の1価の有機基、AO及びOAは炭素数2〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基を表し、(AO)nのうち、オキシエチレン基の占める割合は0〜20重量%であり、nは1〜100の整数で一分子中に複数のnが存在する場合、それぞれ同じでも異なっていてもよく、sは1〜10の整数、pは0〜10の整数、qは0〜9の整数、rは0〜9の整数、mは0〜9の整数、p+rは1〜10の整数、p+q+rは1〜10の整数、p+q+r+mは2〜10である。
【0021】
炭素数1〜25の活性水素化合物の反応残基(R)は、炭素数1〜25の活性水素化合物から活性水素を除いた反応残基を意味する。
炭素数1〜25の活性水素含有化合物としては、水酸基(−OH)、イミノ基(−NH−)、アミノ基(−NH)及び/又はカルボキシル基(−COOH)を少なくとも1個含む化合物が含まれ、アルコール、アミド、アミン、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸及びアミノカルボン酸が含まれる。
【0022】
アルコールとしては、モノオール(メタノール、ブタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール及びイソステアリルアルコール等)及びポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、テトラグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジヒドロキシアセトン、フルクトース、グルコース、マンノース、ガラクトース、スクロース、ラクトース及びトレハロース等)等が挙げられる。
【0023】
アミドとしては、モノアミド(ギ酸アミド、プロピオン酸アミド及びステアリルアミド等)及びポリアミド(マロン酸ジアミド及びエチレンビスオクチルアミド等)等が挙げられる。
【0024】
アミンとしては、モノアミン(ジメチルアミン、エチルアミン、アニリン及びステアリルアミン等)及びポリアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン及びトリエチレンテトラミン等)等が挙げられる。
【0025】
カルボン酸としては、モノカルボン酸(酢酸、ステアリン酸、オレイン酸及び安息香酸等)及びポリカルボン酸(マレイン酸及びヘキサン二酸等)等が挙げられる。
【0026】
ヒドロキシカルボン酸としては、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸及び12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0027】
アミノカルボン酸としては、グリシン、4−アミノ酪酸、6−アミノヘキサン酸及び12−アミノラウリン酸等が挙げられる。
【0028】
炭素数1〜24の1価の有機基(R、R)としては、アルキル基(R)、アルケニル基(R’)、アシル基(−COR)、アロイル基(−COR’)、N−アルキルカルバモイル基(−CONHR)、N−アルケニルカルバモイル基(−CONHR’)、アルキルカルボニルアミノ基(−NHCOR)、アルケニルカルボニルアミノ基(−NHCOR’)、アルキルカルボキシアミノ基(アルキルカーバメート基、−NHCOOR)及びアルケニルカルボキシアミノ基(アルケニルカーバメート基、−NHCOOR’)が含まれる。
【0029】
アルキル基(R)としては、メチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル及びオクタデシル等が挙げられる。
【0030】
アルケニル基(R’)としては、ビニル、プロペニル、ヘキセニル、イソオクテニル、ドデセニル及びオクタデセニル等が挙げられる。
【0031】
水酸基又は炭素数1〜24の1価の有機基(R)のうち、炭素数1〜24の1価の有機基は、上記と同様の有機基が含まれる。
【0032】
炭素数1〜24の2価の有機基(R)としては、アルキレン基(T)、アルケニレン基(T’)、1−オキサアルキレン基(−OT−)、1−オキサアルケニレン基(−OT’−)、1−オキソアルキレン基(−COT−)、1−オキソアルケニレン基(−COT’−)、1−アザ−2−オキソアルキレン基(−NHCOT−)、1−アザ−2−オキソアルケニレン基(−NHCOT’−)、1−オキソ−2−アザアルキレン基(−CONHT−)、1−オキソ−2−アザアルケニレン基(−CONHT’−)、1−アザ−2−オキソ−3−オキサアルキレン基(−NHCOOT−)及び1−アザ−2−オキソ−3−オキサアルケニレン基(−NHCOOT’−)が含まれる。
【0033】
アルキレン基(T)としては、メチレン、エチレン、イソブチレン、1,10−デシレン、1,2−デシレン、1,12−ドデシレン、1,2−ドデシレン及び1,2−オクタデシレン等が挙げられる。
【0034】
アルケニレン基(T’)としては、エチニレン、イソブチニレン、1,10−デシニレン、1−オクチルエチニレン、1−オクテニルエチレン、1,12−ドデシニレン及び1−オクタデセニルエチレン等が挙げられる。
【0035】
炭素数2〜18のオキシアルキレン基又は、グリシドール、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテル若しくはアルケニルグリシジルエーテルの反応残基(AO、OA)のうち、炭素数2〜18のオキシアルキレン基としてはオキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシイソブチレン、オキシ−1,2−デシレン、オキシ−1,12−ドデシレン、オキシ−1,2−ドデシレン及びオキシ−1,2−オクタデシレン等が挙げられる。
【0036】
また、(AO、OA)のうち、炭素数4〜18のアルキルグリシジルエーテルとしては、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、ドデシルグリシジルエーテル及びオクタデシルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0037】
また、(AO、OA)のうち、炭素数5〜18のアルケニルグリシジルエーテルとしては、ビニルグリシジルエーテル、ブテニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキセニルグリシジルエーテル、ドデセニルグリシジルエーテル及びオクタデセニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0038】
(AO)nのうち、オキシエチレン基の占める割合は、すべての(AO)nの重量に基づいて、0〜20重量%であり、好ましくは0〜18重量%、さらに好ましくは0〜15重量%である。なお、オキシエチレン基を含む場合、オキシエチレン基の占める割合の下限は、すべての(AO)nの重量に基づいて、3重量%が好ましく、さらに好ましくは5重量%、特に好ましくは8重量%である。
【0039】
nは、1〜100の整数であり、好ましくは2〜75の整数、さらに好ましくは3〜50の整数である。
【0040】
一般式(1)で表されるポリエーテル化合物(B1)としては、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテル、テトラデシルアルコールのプロピレンオキシドエチレンオキシドブロック付加体、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシドエチレンオキシドブロック付加体、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ブロック付加)、グリセリンのプロピレンオキシド付加体、グリセリンのエチレンオキシドプロピレンオキシドブロック付加体、モノドデシルアミンのプロピレンオキシド付加体、ポリオキシプロピレングリコールのモノオレート、グリセリンのプロピレンオキシド2−エチルヘキシルグリシジルブロック付加体、蔗糖のプロピレンオキシドブチレンオキシドブロック付加体及びペンタエリスリトールのエチレンオキシドプロピレンオキシドブロック付加体等が挙げられる。
【0041】
一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(B2)としては、ポリオキシプロピレンモノブチルエーテルモノオレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ブロック付加)のジステアレート、グリセリンのプロピレンオキシド付加体のモノステアレート、マレイン酸のエチレンオキシドプロピレンオキシドブロック付加体のモノメチルエーテル及び蔗糖のプロピレンオキシド付加体のモノN−ヘキシルカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0042】
一般式(3)で表されるポリエーテル化合物(B3)としては、エチレンビスステアリルアミドのプロピレンオキシド付加体、グリセリンモノステアリルエステルのプロピレンオキシド付加体及び蔗糖モノ(2−エチルヘキシルグリシジル)エーテルのプロピレンオキシド付加体のモノN−デシルカルバミン酸エステル等が挙げられる。
【0043】
一般式(4)で表されるポリエーテル化合物(B4)としては、ひまし油のプロピレンオキシド付加体のモノオレート及びグリセリンビス(12−ヒドロキシステアレート)のプロピレンオキシド付加体等が挙げられる。
【0044】
一般式(5)で表されるポリエーテル化合物(B5)としては、ポリオキシプロピレンモノラウリルエーテルとポリオキシプロピレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応体及びポリオキシプロピレンモノステアリルエーテルとポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ブロック付加)とキシレンジイソシアネートとの反応体等が挙げられる。
【0045】
これらのうち、消泡性等の観点から、一般式(1)で表されるポリエーテル化合物(B1)及び一般式(2)で表されるポリエーテル化合物(B2)が好ましい。
【0046】
ヒュームドシリカ(A)の含有量(重量%)は、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、0.3〜15が好ましく、さらに好ましくは1〜10、特に好ましくは1.5〜8である。ポリエーテル化合物(B)の含有量(重量%)は、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、85〜99.7が好ましく、さらに好ましくは90〜99、特に好ましくは92〜98.5である。これらの範囲であると、消泡性及び取り扱い性がさらに良好となる。
【0047】
本発明の消泡剤には、さらに水(C)を含むことができる。水を含有させることにより、水系発泡液への初期拡散性を高めることができ、初期破泡性を著しく向上させることができる。また、引火危険性を低減させ取扱上の安全性を高める効果がある。水としては、蒸留水、イオン交換水、水道水、工業用水、井戸水、湧き水及び河川水等が使用できる。これらのうち、水道水、工業用水、イオン交換水及び蒸留水が好ましく、さらに好ましくはイオン交換水及び蒸留水である。
【0048】
水(C)を含有する場合、水(C)の含有量(重量%)は、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、1〜10が好ましく、さらに好ましくは1〜6、特に好ましくは2〜4である。
【0049】
本発明の消泡剤には、さらに、金属石鹸(D)、合成樹脂(E)、アミド(F)及びワックス(G)からなる群より選ばれる少なくとも1種の分散質を含有してもよい。しかし、長期保管した場合でも優れた消泡性を発揮させるためにはこのような分散質を含有しないことが好ましい。
【0050】
金属石鹸(D)としては、炭素数12〜22の脂肪酸と金属(アルカリ土類金属、アルミニウム、マンガン、コバルト、鉛、クロム、銅、鉄及びニッケル等)との塩が含まれ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛及びベヘニン酸マグネシウム等が挙げられる。
【0051】
合成樹脂(E)としては、エチレン性不飽和モノマーの(共)重合体(ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル及びスチレン/アクリロニトリル共重合物等)及び重縮合モノマーの重合体(ポリウレタン、ポリエステル及びポリアミド等)が含まれる。
【0052】
合成樹脂(E)は、乳化重合等の手法によって得られる合成樹脂を用いてもよいし、ポリエーテル化合物(B)中で、モノマーを重合させて合成樹脂(E)を調製してもよい。
【0053】
アミド(F)としては、モノアミド及びビスアミドが含まれる。ビスアミドとしては、炭素数1〜6のアルキレンジアミンと炭素数10〜22の脂肪酸との反応物が含まれ、エチレンビスステアリルアミド、エチレンビスパルミチルアミド、エチレンビスミリスチルアミド、エチレンビスラウリルアミド、エチレンビスオレイルアミド、メチレンビスステアリルアミド、ヘキサメチレンビスステアリルアミド、エチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド及びヘキサメチレン−ビス−12−ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。
【0054】
モノアミドとしては、炭素数10〜22の脂肪酸アミドが含まれ、ステアリルアミド、N−ステアリルステアリルアミド及びN−メチルステアリルアミド等が挙げられる。
【0055】
ワックス(G)としては、少なくとも50℃(好ましくは70〜160℃)の融点を持ち、ポリエーテル化合物に溶解せず、分散できるワックス様物質(天然ワックス、合成ワックス及び油脂等)が含まれ、70〜160℃の温度範囲に融点を持ち、(A1)石油ワックス、(A2)合成ワックス、(A3)植物ワックス及び(A4)これらのワックスを変性した変性ワックスからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく例示できる。
【0056】
(A1)石油ワックスとしては、マイクロクリスタリンワックス及びパラフィンワックス等が挙げられる。
【0057】
(A2)合成ワックスとしては、フィッシャートロプシュワックス及びポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0058】
(A3)植物ワックスとしては、カルナウバワックス及び木蝋等が挙げられる。
【0059】
(A4)これらのワックスを変性した変性ワックスとしては、マレイン酸変性酸化ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0060】
分散質を含有する場合、分散質の粒子径(μm)は、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.12〜9、特に好ましくは0.15〜8である。
【0061】
これらの分散質を含有する場合、これらの含有量(重量%)は、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、0.1〜10が好ましく、さらに好ましくは0.15〜9、特に好ましくは0.2〜8、最も好ましくは0.3〜7.5である。
【0062】
本発明の消泡剤には、さらに、オルガノポリシロキサン(H)を含有してもよい。しかし、長期保管した場合でも優れた消泡性を発揮させるためにはこのようなオルガノポリシロキサンを含有しないことが好ましい。
【0063】
ポリオルガノシロキサン(H)としては、ポリジメチルシロキサン及び変性ポリオルガノシロキサンが含まれる。
ポリジメチルシロキサンとしては、動粘度5〜10000(mm/s、25℃)のポリジメチルシロキサン等が挙げられ、シクロオクタメチルテトラシロキサン等も含まれる。
変性ポリオルガノシロキサンとしては、上記のポリジメチルシロキサンのメチル基の一部を炭素数2〜6のアルキル基、炭素数2〜4のアルコキシル基、フェニル基、水素原子、ハロゲン(塩素及び臭素等)原子、アルコキシポリオキシアルキレンオキシプロピル基(アルコキシの炭素数1〜6、アルキレンの炭素数2〜3)、アルコキシポリオキシアルキレン基(アルコキシの炭素数1〜6、アルキレンの炭素数2〜3)及び/又は炭素数2〜6のアミノアルキル基等に置き換えたものが含まれる。
【0064】
オルガノポリシロキサン(H)を含有する場合、オルガノポリシロキサン(H)の含有量(重量%)は、ヒュームドシリカ(A)及びポリエーテル化合物(B)の重量に基づいて、0.01〜0.1が好ましい。
【0065】
本発明の消泡剤は、水系発泡液{たとえば、排水、抄紙工程白水、水系塗料等}に対して効果的であるが、ラテックスの重合分散液に対して特に効果を発揮し得る。ラテックスの重合分散液のなかでも、特に未反応モノマーを減圧留去する脱モノマー工程の分散液に対して効果的である。
【0066】
すなわち、本発明の消泡剤は、ラテックスの重合分散液に上記の消泡剤を添加して、未反応モノマーを減圧留去する脱モノマー工程を含むラテックスの製造方法に適している。
【0067】
本発明の消泡剤は、一括添加法、連続添加方法、断続添加方法又は泡測定器と消泡剤添加装置とを連動させた方法等により、発泡液に添加することができる。また、1カ所添加及び多点添加のいずれでもよい。また、添加に際しては適当な希釈溶媒又は水などで希釈してもよい。
【0068】
本発明の消泡剤の使用量は発泡液の種類、発泡状態に応じて適宜決定できる。たとえば、脱モノマー工程に適用する場合、ラテックスの重量に基づいて0.005〜0.2重量%程度である。
【実施例】
【0069】
次に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下、特記しない限り部は重量部を、%は重量%を意味する。
【0070】
ヒュームドシリカ(A)として、以下の商品(a1)〜(a3)を使用した。
ヒュームドシリカ(a1)[M値50、数平均一次粒子径16nm]
ヒュームドシリカ(a2)[M値40、数平均一次粒子径16nm]
ヒュームドシリカ(a3)[M値70、数平均一次粒子径12nm]
【0071】
水(C)として、イオン交換水(c1)、蒸留水(c2)を使用した。
【0072】
<実施例1>
攪拌の可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a1)15部、ポリエーテル化合物(b1){ニューポールPE−61、三洋化成工業株式会社、ポリオキシエチレン(5モル)ポリオキシプロピレン(30モル)ブロックポリマー;「ニューポール」は同社の登録商標である。}835部及びポリエーテル化合物(b2){ニューポールTL−4500N、三洋化成工業株式会社、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド(10モル)/プロピレンオキシド(68モル)ブロック付加体}150部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(1)を得た。
【0073】
<実施例2>
攪拌の可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a2)78部、ポリエーテル化合物(b3){ニューポールLB−1715(ポリオキシプロピレン(40モル)グリコールモノブチルエーテル)のオレイン酸エステル}922部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(2)を得た。
【0074】
<実施例3>
攪拌の可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a3)80部、ポリエーテル化合物(b4){ニューポールLB−1715、三洋化成工業株式会社、ポリオキシプロピレン(40モル)モノブチルエーテル}920部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(3)を得た。
【0075】
<実施例4>
攪拌可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a2)25部、ポリエーテル化合物(b5){サンニックスGP−3000、三洋化成工業株式会社、グリセリンのプロピレンオキシド(43モル)付加体}925部、ポリエーテル化合物(b6){ひまし油のプロピレンオキシド(30モル)付加体のオレイン酸エステル}50部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(4)を得た。
【0076】
<実施例5>
攪拌可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a1)150部、ポリエーテル化合物(b7){グリセリンのエチレンオキシド(3モル)/2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(6モル)ブロック付加体}800部、ポリエーテル化合物(b8){ポリオキシプロピレン(34モル)グリコール250部と、ポリオキシエチレン(3モル)ポリオキシプロピレン(14モル)ミリスチルエーテル231部と、ヘキサメチレンジイソシアネート16.8部とを反応させて得たポリエーテル化合物}50部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(5)を得た。
【0077】
<実施例6>
攪拌可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a1)20部及びポリエーテル化合物(b9){蔗糖ポリオキシプロピレン50モル付加物}390部、ポリエーテル化合物(b1)490部、ポリエーテル(b10){ペンタエリストールのエチレンオキシド(117モル)/プロピレンオキシド(16モル)ブロック付加体}100部及び水(c1)20部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(6)を得た。
【0078】
<実施例7>
攪拌可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a1)40部及びポリエーテル化合物(b4)890部、ポリエーテル化合物(b9)70部、水(c2)40部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(7)を得た。
【0079】
<実施例8>
攪拌可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a3)80部及びポリエーテル化合物(b12){ポリエーテル化合物(b1)のジステアレート}920部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(8)を得た。
【0080】
<実施例9>
攪拌可能な容器内で、ヒュームドシリカ(a3)60部及びポリエーテル化合物(b13){ポリオキシプロピレン(50モル)モノブチルエーテル}600部、ポリエーテル化合物(b14){ニューポールGP−600、三洋化成工業株式会社、グリセリンのプロピレンオキシド9モル付加体}340部、水(c1)80部を30分間攪拌混合して、本発明の消泡剤(9)を得た。
【0081】
<比較例1〜9>
ヒュームドシリカ(a1)〜(a3)を用いないこと以外、実施例1〜9と同様にして、比較用の消泡剤(I1)〜(I9)を作成した。
【0082】
<比較例10>
攪拌可能な容器内で、疎水性シリカ{ニップシール SS−100、東ソー・シリカ株式会社、湿式沈殿法で合成された疎水性シリカ}50部、ポリエーテル化合物(b5)950部を30分間攪拌混合して、比較用の消泡剤(I10)を得た。
【0083】
<比較例11>
攪拌可能な容器内で、疎水性シリカ{ニップシール G−0251、東ソー・シリカ株式会社、湿式沈殿法で合成された疎水性シリカ}50部、ポリエーテル化合物(b2)950部を30分間攪拌混合して、比較用の消泡剤(I11)を得た。
【0084】
<消泡性の評価(1)>
実施例1〜9及び比較例1〜11で得た消泡剤(1)〜(9)及び(I1)〜(I11)を用いて、以下のようにして消泡性を評価し、評価結果を表1に示した。
【0085】
<発泡試験液の調整>
ステンレスビーカーにSBラテックス[L−1924、旭化成ケミカルズ(株)製]83.2部、イオン交換水16.6部及びアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム[ニューレックスR、日油(株)製]0.2部を投入後、10分間均一撹拌混合を行い、発泡試験液を得た。
【0086】
<消泡性試験方法>
ガラス製500mlメスシリンダー(以下、発泡管と称す)を立てた状態で80℃に温度調節したウォーターバスに発泡管の95mlの目盛りまで浸漬して、この発泡管に、80℃に温度調節した発泡試験液100mlを入れ、デフューザーストーンを発泡管の底部まで挿入し500ml/分で窒素バブリングを行って発泡試験液を泡立てながら、泡及び発泡液の容量が220mLに達した時、マイクロピペットにて消泡剤50μL(発泡試験液に対する濃度として500ppm)を発泡試験液に滴下し、発泡試験液の窒素バブリングを継続しながら、変化する泡及び発泡液の容量を試験開始15秒後、1分後、5分後及び10分後に読み取った。数値の小さい方が消泡性が高いことを意味し好ましい。消泡剤を滴下しないこと以外、上記と同様にして、空試験(ブランク)も行った。
【0087】
【表1】
表中、「−」はメスシリンダーで測定可能な500mlを超えており、測定不能であったことを示す(以下、同じである。)。
【0088】
<消泡性の評価(2)>
実施例1〜9及び比較例1〜11で得た消泡剤(1)〜(9)及び(I1)〜(I11)をガラス製密閉容器に入れて25℃で三ヶ月保管した後<消泡性の評価(1)>と同様にして消泡性を評価し、評価結果を表2に示した。
【0089】
【表2】
【0090】
本発明の消泡剤は、比較用の消泡剤に比べて、長期保管しても優れた消泡性(破泡、抑泡効果)を発揮した。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の消泡剤は、化学工業、食品工業、石油工業、織物工業、紙パルプ工業又は医薬品工業等の分野において、加工工程用及び排水処理工程用として好適である。