特許第6361011号(P6361011)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361011
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】カートリッジ式内容物押出容器
(51)【国際特許分類】
   A45D 34/04 20060101AFI20180712BHJP
   A45D 40/20 20060101ALI20180712BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20180712BHJP
   B05C 17/10 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   A45D34/04 525Z
   A45D40/20 E
   B65D83/00 J
   B05C17/10
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-63267(P2014-63267)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-181862(P2015-181862A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】591147339
【氏名又は名称】株式会社トキワ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】尾花 敬和
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−235885(JP,A)
【文献】 特開2000−033977(JP,A)
【文献】 特開2012−012060(JP,A)
【文献】 実開平02−142674(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 34/04
A45D 40/20
B05C 17/10
B65D 83/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容したカートリッジが、前記内容物を押し出すための機構を収容した本体容器に着脱可能に装着されるカートリッジ式内容物押出容器において、
前記カートリッジは、
前記内容物を収容可能な収容室と、
前記収容室内を摺動可能とされ前記内容物を押し出すためのピストンと、
前記ピストンにより押し出される前記内容物を外部へ出すための第1の開口と、を備え、
前記本体容器は、
前記カートリッジが挿入可能な第2の開口と、
基端が支持されることで径方向に弾性を有する弾性部を備えると共に、前記弾性部の内面に雌螺子が設けられた雌螺子部材と、
前記雌螺子と螺合する雄螺子が外面に設けられ当該雄螺子と前記雌螺子の相対回転により前進し前記ピストンを押し出す移動体と、
前記移動体を軸線方向前方へ押圧する第1の弾性体と、
前記カートリッジが前記本体容器から抜き出されるのに連動して軸線方向前方に移動し、前記雌螺子部材の前記弾性部を径方向に強制的に広げ、前記雌螺子と前記雄螺子の螺合を解除させる螺合解除部材と、を備え、
前記カートリッジが前記本体容器に挿入されると、前記移動体は前記ピストンに当接し前記第1の弾性体の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻され、
前記カートリッジが前記本体容器に装着されるのに連動して、前記雌螺子と前記雄螺子の螺合が行われることを特徴とするカートリッジ式内容物押出容器。
【請求項2】
前記螺合解除部材を軸線方向前方へ押圧し、前記カートリッジが前記本体容器から抜き出されるのに連動して、前記螺合解除部材を軸線方向前方に移動させる第2の弾性体を備えたことを特徴とする請求項1記載のカートリッジ式内容物押出容器。
【請求項3】
前記螺合解除部材は、前記カートリッジが前記本体容器に挿入されると、前記カートリッジに当接して軸線方向後方へ移動し、前記雌螺子部材の前記弾性部を径方向に強制的に狭め、前記雌螺子と前記雄螺子を螺合させることを特徴とする請求項1又は2記載のカートリッジ式内容物押出容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カートリッジ式内容物押出容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カートリッジ式内容物押出容器として、以下の特許文献1に記載のカートリッジ式化粧料加圧容器が知られている。このカートリッジ式化粧料加圧容器は、本体容器であるホルダーにカートリッジを着脱可能に装着して成るものであり、カートリッジは、化粧料を収容した化粧料収容室と、化粧料収容室の化粧料を押し出すためのピストンと、その内周に雌螺子が設けられると共に後端に対向する割り溝を一対設けることにより形成された一対の弾力性円弧状切片と、を備える。また、ホルダー内には、上記雌螺子に螺合する雄螺子を外周に有する螺子棒が、押しバネを介して配置されると共に、螺子棒を引き戻すための戻しバネが配置される。
【0003】
そして、このカートリッジ式化粧料加圧容器にあっては、カートリッジをホルダーに装着すると、弾力性円弧状切片がホルダーの内筒の内周面に当たって弾性的に径内方へ撓み、これにより、当該円弧状切片の雌螺子と螺子棒の雄螺子が螺合し、使用者による螺子棒の繰り出し回転操作となるカートリッジとホルダーとの相対回転により、雌螺子と雄螺子が相対回転して螺子棒が前進し化粧料が押し出されるようになっている。一方、カートリッジをホルダーから抜き出す際には、円弧状切片が径外方へ弾性復帰し、上記螺合が解除されると共に、この螺合解除より、螺子棒がホルダー内の初期位置に引き戻されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2786592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1にあっては、カートリッジを、未使用の化粧料で満たされた新品と交換する場合、螺子棒がホルダー内の初期位置に引き戻されていても、新品のカートリッジ内のピストンは後退限にあるため、使用者が繰り出し回転操作すると、螺子棒がピストンを素早く押し出し始めることができるが、例えば、異色の化粧料を収容したカートリッジを複数所有し、先に使用していてピストンが初期位置から一定量前進した位置にある別の色のカートリッジに交換した場合(差し替えた場合)、初期位置に引き戻されている螺子棒と初期位置から前進しているピストンとの間には距離があるため、螺子棒がピストンを押し出し始めるまでに多数回転を要し、化粧料が出るまでにタイムラグを生じるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、カートリッジ交換後の使用者による繰り出し回転操作に際し、タイムラグなく内容物を押し出すことができるカートリッジ式内容物押出容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるカートリッジ式内容物押出容器は、内容物を収容したカートリッジが、内容物を押し出すための機構を収容した本体容器に着脱可能に装着されるカートリッジ式内容物押出容器において、カートリッジは、内容物を収容可能な収容室と、収容室内を摺動可能とされ内容物を押し出すためのピストンと、ピストンにより押し出される内容物を外部へ出すための第1の開口と、を備え、本体容器は、カートリッジが挿入可能な第2の開口と、基端が支持されることで径方向に弾性を有する弾性部を備えると共に、弾性部の内面に雌螺子が設けられた雌螺子部材と、雌螺子と螺合する雄螺子が外面に設けられ当該雄螺子と雌螺子の相対回転により前進しピストンを押し出す移動体と、移動体を軸線方向前方へ押圧する第1の弾性体と、カートリッジが本体容器から抜き出されるのに連動して軸線方向前方に移動し、雌螺子部材の弾性部を径方向に強制的に広げ、雌螺子と雄螺子の螺合を解除させる螺合解除部材と、を備え、カートリッジが本体容器に挿入されると、移動体はピストンに当接し第1の弾性体の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻され、カートリッジが本体容器に装着されるのに連動して、雌螺子と雄螺子の螺合が行われることを特徴としている。
【0008】
このようなカートリッジ式内容物押出容器によれば、カートリッジが本体容器から抜き出されるのに連動して、雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子の螺合が解除され、移動体は第1の弾性体により軸線方向前方へ押圧され前進限まで移動する。ここで、例えば、新品のカートリッジや、色違いの内容物を収容し前回使用したことがある別のカートリッジが本体容器に挿入されると、移動体はカートリッジ内のピストンに当接し第1の弾性体の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻され、新品のカートリッジの場合には後退限、前回使用したことがある別のカートリッジの場合には前回の位置までピストンに当接しながら戻される。そして、カートリッジが本体容器に装着されるのに連動して、雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子の螺合が行われ、雌螺子と雄螺子の相対回転による移動体の前進が可能となる。この状態では、ピストンと移動体は当接しているため、カートリッジ交換後の使用者による繰り出し回転操作に際し、タイムラグなく内容物を押し出すことができる。また、カートリッジが本体容器から抜き出されるのに連動して軸線方向前方へ移動する螺合解除部材によって、雌螺子部材の弾性部が径方向に強制的に広げられ、雌螺子と雄螺子の螺合が解除されるため、螺合解除を確実に行うことがでできる。
【0009】
ここで、螺合解除部材を軸線方向前方へ押圧し、カートリッジが本体容器から抜き出されるのに連動して、螺合解除部材を軸線方向前方に移動させる第2の弾性体を備えているのが好ましい。このような構成を採用した場合、弾性体という簡易な構成により、螺合解除部材を軸線方向前方へ確実に移動させることができる。
【0010】
また、螺合解除部材は、カートリッジが本体容器に挿入されると、カートリッジに当接して軸線方向後方へ移動し、雌螺子部材の弾性部を径方向に強制的に狭め、雌螺子と雄螺子を螺合させる構成であると、カートリッジを本体容器に挿入し装着する際に、雌螺子と雄螺子の螺合を確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明によれば、カートリッジ交換後の使用者による繰り出し回転操作に際し、タイムラグなく内容物を押し出すことができると共に、雌螺子と雄螺子の螺合解除を確実に行うことができるカートリッジ式内容物押出容器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るカートリッジ式内容物押出容器の初期状態を示す縦断面図である。
図2図1中の押出機構を拡大して示す縦断面図である。
図3図1の状態から使用者の操作により移動体及びピストンが前進限に達したときの縦断面図である。
図4】カートリッジ交換時の様子を示す縦断面図である。
図5図4中の要部の斜視図であり、前方に移動する螺合解除部材により雌螺子部材の弾性部が径方向に広げられ雌螺子部材の雌螺子と移動体の雄螺子の螺合が解除される様子を説明するための斜視図である。
図6図1図4中の本体筒を示す縦断面図である。
図7図1図5中の操作筒を示す斜視図である。
図8図1図5中の雌螺子部材を前方側から見た斜視図である。
図9図8に示す雌螺子部材を後方側から見た斜視図である。
図10図1図5中の螺合解除部材を後方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明によるカートリッジ式内容物押出容器の好適な実施形態について図1図10を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカートリッジ式内容物押出容器の初期状態を示す縦断面図、図2は、図1中の押出機構の拡大図、図3は、図1の状態から移動体及びピストンが前進限に達したときの縦断面図、図4は、カートリッジ交換時の様子を示す縦断面図、図5は、図4中の要部の斜視図、図6は、本体筒の縦断面図、図7は、操作筒の斜視図、図8及び図9は、雌螺子部材の各斜視図、図10は、螺合解除部材の斜視図である。
【0014】
図1に示すように、カートリッジ式内容物押出容器100は、全体形状が筆記具の如き細長い丸棒状(スティック状)を成し良好な外観を呈するもので、内容物を収容したカートリッジ1と、その先端側にカートリッジ1を着脱可能に装着する本体筒2と、本体筒2の後端部に相対回転可能に装着された操作筒3と、を外形構成として具備し、以下、内容物を押し出すための押出機構として、本体筒2及び操作筒3(本体容器)内に、本体筒2又はカートリッジ1と操作筒3とが使用者により相対回転操作されると前進する移動体4と、この相対回転による移動体4の移動を可能とする螺合機構としての雌螺子部材5と、カートリッジ1の抜き出し時に雌螺子部材5の雌螺子7の螺合解除を強制する螺合解除部材6と、を概略備える。なお、この螺合解除部材6は、カートリッジ1の装着時には、雌螺子部材5の雌螺子7の螺合を強制するようにも機能する(詳しくは後述)。
【0015】
内容物は、ここでは、例えばアイライナーやリップライナー等の液状化粧料Lとされ、カートリッジ式内容物押出容器100は、液状化粧料Lを例えば肌等の被塗布部に塗布するものとされている。
【0016】
本体筒2は、円筒状に構成され、図6に示すように、その後端部の内周面に、円弧状凸部10を、操作筒3を軸線方向に係合するためのものとして周方向に沿って複数備える。この本体筒2には、円弧状凸部10より前側の内周面に、円弧状凸部11が、雌螺子部材5を軸線方向に係合するためのものとして周方向に沿って複数設けられると共に、円弧状凸部11より前側の内周面に、周方向に多数の凹凸部が並設されて当該凹凸部が軸線方向に所定長延びるローレット12が、雌螺子部材5を周方向に係合するためのものとして設けられる。また、図4及び図6に示すように、本体筒2の先端側の開口59は、カートリッジ1を挿入するための開口であり、先端側の内周面には、雌螺子27が、カートリッジ1を着脱可能に装着するためのものとして設けられる。
【0017】
操作筒3は、図1及び図7に示すように、有底円筒状に構成された本体部13を備え、この本体部13の底部中央に、軸体14が前方へ向かうように立設される。
【0018】
本体部13は、図7に示すように、その先端部の外周面に、本体筒2の円弧状凸部10に軸線方向に係合する円環状凹部90を備える。この本体部13の内周面には、底部から先端側に向かって延びる突条15が周方向に沿って複数設けられ、突条15の先端部にラチェット機構を構成するラチェット歯16がそれぞれ設けられる。ラチェット歯16は、一方向のみの回転を許容すべく側面視において鋸歯形状を成し、周方向に連なるように設けられる。
【0019】
軸体14は、横断面が例えば矩形等の非円形形状とされ、この非円形形状が移動体4の回り止めとされる。
【0020】
そして、操作筒3は、図1に示すように、その前半部が、本体筒2の後端側に内挿され、図2に示すように、その円環状凹部90が、本体筒2の円弧状凸部10に軸線方向に係合することにより、本体筒2に回転可能且つ軸線方向移動不能に装着される。
【0021】
移動体4は、軸線方向に延びる筒状に構成され、その内周面が、操作筒3の軸体14の外周面に合致する非円形形状とされる。この移動体4の外周面には、螺合機構を構成する雄螺子17が軸線方向に沿って設けられる。
【0022】
そして、移動体4は、操作筒3の軸体14に外挿され、非円形形状同士が合わさることにより移動体4の回り止めが構成されて、操作筒3に回転不能且つ軸線方向移動可能に装着される。この状態で、図1及び図2に示すように、操作筒3の本体部13の底部と移動体4の後部の鍔部8との間には、移動体4を軸線方向前方へ押圧するための第1のコイルバネ(第1の弾性体)19が、軸体14を囲繞するようにして介装される。
【0023】
雌螺子部材5は、例えばPOM等の樹脂より一体成形されたものであり、図8及び図9に示すように、全体が略円筒状に構成され、その後端側から先端側に向かって、ラチェット機構を構成するラチェット歯24、第1の樹脂バネ部18、第1の中間部20、第2の樹脂バネ部21、第2の中間部22、一対の対向する弾性円弧部(弾性部)23,23をこの順に具備している。
【0024】
ラチェット歯24は、操作筒3のラチェット歯16に噛み合うものであり、第1の樹脂バネ部18の後端面に、周方向に沿って並設される。
【0025】
第1の樹脂バネ部18は、ラチェット歯16,24によるラチェット動作の際に軸線方向に伸縮するバネである。
【0026】
第1の中間部20は、第1の樹脂バネ部18と第2の樹脂バネ部21とを繋ぐ短尺円筒部である。この第1の中間部20は、その後側の外周面に、本体筒2の円弧状凸部11に軸線方向に係合する円環状凹部25を備えると共に、その前側の外周面に、本体筒2のローレット12に周方向に係合する突条26を、周方向に沿って複数備える。
【0027】
第2の樹脂バネ部21は、カートリッジ長が設計値より多少長い場合に、その長さ分を吸収するように縮む緩衝用バネである。
【0028】
第2の中間部22は、第2の樹脂バネ部21と弾性円弧部23とを繋ぐ短尺円筒部である。この第2の中間部22の外周面には、鍔部33が円環状に突設され、この鍔部33の外周面において第1の中間部20の突条26の前方の位置に、当該突条26と同様な突条26が、本体筒2のローレット12に周方向に係合するためのものとして設けられる。
【0029】
弾性円弧部23は、軸線方向視において円弧状を成し基端が支持されることで径方向に弾性を有するものであり、軸線方向視において半円より多少短い円弧とされた先端部28と、先端部28の後端面に連設され、軸線方向視において先端部28の円弧より短い円弧状を成して後方に延び、第2の中間部22に連設される腕部32とを、備える。すなわち、弾性円弧部23は、先端部28が、腕部32と第2の中間部22との連結部分を支点として片持ち支持状態で径方向に撓むことが可能とされている。
【0030】
円弧状を成す先端部28は、その内周面に、螺合機構を構成し雄螺子17に螺合する雌螺子7を円弧状に備える。この先端部28は、さらにその先端に、前方へ向かって小径となるように傾斜する傾斜面29を備え、この傾斜面29の先端に、小径の円弧状を成し前方へ向かって突出する小径円弧部30を有する。傾斜面29は、カートリッジ1が本体筒2に挿入され、螺合解除部材6の後述の凹部36の周縁97(図2及び図10参照)に当接したときに、先端部28のうちの傾斜面29より後側の部分(以下、進入円弧部と呼ぶ)34を凹部36内に案内し進入しやすくするものである(図2参照)。
【0031】
そして、図2に示すように、雌螺子部材5は、本体筒2に内挿され、その第1の中間部20の円環状凹部25が、本体筒2の円弧状凸部11に軸線方向に係合すると共に、その第1、第2の中間部20,22の突条26,26が、本体筒2のローレット12に周方向に係合することにより、本体筒2に軸線方向移動不能且つ回転不能に装着される。この状態で、雌螺子部材5のラチェット歯24が操作筒3のラチェット歯16と噛み合うと共に、ラチェット歯16,24によるラチェット動作の際に、第1の樹脂バネ部18が軸線方向に伸縮可能とされている。
【0032】
また、本体筒2の内周面と雌螺子部材5の外周面との間で、雌螺子部材5の鍔部33と螺合解除部材6の後述するバネ当接部42(図5参照)との間には、螺合解除部材6を軸線方向前方へ押圧するための第2のコイルバネ(第2の弾性体)31が介装されている。
【0033】
螺合解除部材6は、図2及び図10に示すように、短尺を成し移動体4が通過する筒孔を有する円筒部35と、この円筒部35の後端面に前方にへこむように設けられた凹部36と、円筒部35の後端面で凹部36を除く円環状の後端面から後方へ延び対向する一対の腕部37,37と、を備える。
【0034】
円筒部35の凹部36は、弾性円弧部23の先端部28の進入円弧部34を収容することで、弾性円弧部23,23(特に先端部28,28)を径方向に強制的に狭め縮径するものである。
【0035】
腕部37は、雌螺子部材5の円弧状を成す先端部28,28の周方向の端面同士の間に進入する進入部38(図5参照)と、図10に示すように、進入部38の後端に連設され進入部38より広がっていく傾斜面39を前側に備えた段部40と、を備える。傾斜面39を含む段部40は、螺合解除部材6が前進すると、雌螺子部材5の円弧状の先端部28の後端面側の両端部98(以下、乗り上げ端部と呼ぶ;図5図8及び図9参照)が乗り上げるものであり、弾性円弧部23,23(特に先端部28,28)を径方向に強制的に広げ拡径するものである。
【0036】
また、腕部37の段部40より後方には、螺合解除部材6が前進すると、雌螺子部材5の先端部28の乗り上げ端部98が当接し螺合解除部材6のそれ以上の前進を阻止するためのストッパー段部41が設けられる。また、腕部37のストッパー段部41の外側の面には、第2のコイルバネ31の先端側を当接させるバネ当接部42が設けられ、腕部37のストッパー段部41より後側には、第2のコイルバネ31の先端側をバネ当接部42に当接させるのを内側からガイドするガイド部60が設けられる。
【0037】
そして、螺合解除部材6は、図2に示すように、本体筒2に内挿され、その凹部36内に、進入円弧部34が進入して弾性円弧部23が径方向に狭められ、この状態で、雌螺子部材5の先端部28の雌螺子7は、移動体4の雄螺子17と螺合し、この状態で、螺合解除部材6は、カートリッジ1により前方への移動が阻止された状態で(詳しくは後述)、第2のコイルバネ31により軸線方向前方へ押圧されている。なお、この状態では、雌螺子部材5の先端部28は、図10に示す螺合解除部材6の傾斜面39を含む段部40に乗り上げておらず、傾斜面39より前側に位置している。
【0038】
カートリッジ1は、図1に示すように、液状化粧料Lを収容するカートリッジ筒43と、カートリッジ筒43の先端部の内周面に装着され前方へ延びる外スリーブ44と、外スリーブ44の後端部の内周面に装着され前方へ延びる内スリーブ45と、カートリッジ1の先端を構成する塗布体46と、を概略備える。
【0039】
カートリッジ筒43は、略円筒形状に構成され、その後端内には、弾性体より成るピストン48が圧入される。そして、カートリッジ筒43内のピストン48より前側の空間が、液状化粧料Lを収容する収容室49とされる。ピストン48は、液状化粧料Lを先端側へ押し出すためのものであり、収容室49内を摺動可能とされる。また、カートリッジ筒43の鍔部53より後側の外周面には、本体筒2の雌螺子27に螺合する雄螺子52が設けられる。
【0040】
内スリーブ45は、その後端部の筒孔が、カートリッジ筒43内の収容室49と連通し、その先端側に、内スリーブ45の筒孔に連通するパイプ部材50が前方へ延びるように設けられる。このパイプ部材50の先端側を囲繞するようにして塗布体46が装着される。塗布体46は、ここでは、毛筆とされ、前方へ延びている。そして、パイプ部材50の先端の開口51が、ピストン48により押し出される液状化粧料Lを外部へ出すための開口とされる。
【0041】
外スリーブ44は、その後端側が、円筒状に構成されてカートリッジ筒43に装着され、これより前側の部分が、先端に行くに従い内外径共に徐々に細くなる先細りの円錐台状筒体とされる。そして、外スリーブ44の先端の円形の開口に対して毛筆46が通過して前方へ突出し、この外スリーブ44の先端により毛筆46が束ねられ、毛筆46の先端が縮径された先鋭形状とされる。
【0042】
そして、カートリッジ1は、その鍔部53より後側が本体筒2に内挿され、その雄螺子52が、本体筒2の雌螺子27に螺合することにより、本体筒2に装着され、このとき、カートリッジ1の後端面(カートリッジ筒43の後端面)が、螺合解除部材6の先端面に当接し、当該螺合解除部材6を後方へ押圧した状態となる。
【0043】
なお、カートリッジ1に対しては、毛筆46を保護するためのキャップ54が着脱可能に装着される。
【0044】
このように構成されたカートリッジ式内容物押出容器100によれば、使用者により本体筒2又はカートリッジ1と操作筒3とが相対回転されると、前述した螺合機構及び回り止め及びラチェット機構により、クリック感を伴いながら移動体4が前進し、液状化粧料Lはピストン48により押し出されて開口51から吐出され、毛筆46による塗布に供される。
【0045】
次に、図4に実線で示すように、ピストン48が使用により軸線方向の途中位置まで前進した状態のカートリッジを、未使用で例えば色違いの液状化粧料で満たされた新品のカートリッジと交換する場合について説明する。
【0046】
カートリッジ1を本体筒2から抜き出すと、第2のコイルバネ31により前方へ押圧されている螺合解除部材6は、図2に示す状態から軸線方向前方へ移動し、図4及び図5に示すように、雌螺子部材5の先端部28の進入円弧部34が、螺合解除部材6の凹部36から抜けると同時に、図5に示すように、雌螺子部材5の先端部28の乗り上げ端部98が、螺合解除部材6の傾斜面39に案内されて段部40に乗り上げ、基端を支点として弾性円弧部23が径方向に広げられる。
【0047】
この弾性円弧部23の径方向への広がりにより、雌螺子部材5の雌螺子7と移動体4の雄螺子17の螺合が解除される。このとき、螺合解除部材6のストッパー段部41(図10参照)が、雌螺子部材5の先端部28の乗り上げ端部98(図8及び図9参照)に当接し、螺合解除部材6のそれ以上の前進が阻止される。
【0048】
また、移動体4は、カートリッジ1がないため、図4に示すように、第1のコイルバネ19により軸線方向前方へ押圧されて前進限まで移動する。
【0049】
そして、新品のカートリッジ1が本体筒2内に挿入されると、新品のカートリッジ1内のピストン48は、図4に仮想線で示すように、後退限にあるため、この後退限のピストン48が、前進限にある移動体4の先端に直ぐに当接する。
【0050】
ここで、ピストン48のカートリッジ筒43の内壁に対する摩擦力は、第1のコイルバネ19の押圧力(付勢力)より大きく設定されている。このため、移動体4は、ピストン48により第1のコイルバネ19の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻され、後退限へ押し戻される。
【0051】
カートリッジ1が本体筒2に装着される際にあっては、カートリッジ1の後端部により螺合解除部材6が、図4に示す状態から後方へ押圧され、図2に示すように、雌螺子部材5の先端部28の進入円弧部34が、螺合解除部材6の凹部36に進入するのと同時に、雌螺子部材5の先端部28の乗り上げ端部98(図8及び図9参照)が、螺合解除部材6の傾斜面39(図5参照)より前側に位置し、弾性円弧部23が径方向に狭められる。これにより、雌螺子部材5の雌螺子7と移動体4の雄螺子17の螺合が行われて図1に示す初期状態となり、雌螺子7と雄螺子17の相対回転による移動体4の前進が可能となる。この状態では、ピストン48と移動体4は当接しているため、カートリッジ交換後の使用者による繰り出し回転操作に際し、タイムラグなく液状化粧料Lを押し出すことができる。
【0052】
なお、カートリッジ長が設計値より多少長く、雌螺子7と雄螺子17の螺合後もカートリッジ1の挿入に従い雌螺子部材5が軸線方向後方へ押圧される場合には、その押圧に対応した分が第2の樹脂バネ部21で吸収され、カートリッジ1をさらに挿入でき本体筒2に完全に装着できる。
【0053】
また、使用しているカートリッジを、例えば色違いの液状化粧料を収容し前回使用したことがある別のカートリッジと交換する場合には、カートリッジ1が本体筒2から抜き出されるのに従い、雌螺子7と雄螺子17の螺合が解除されて移動体4が前進限まで移動し、前回使用したことがある別のカートリッジ1が本体筒2に挿入されるのに従い、前回の使用により前進しているピストン48に、前進限まで移動した移動体4が当接し、移動体4は、前回の位置にあるピストン48により第1のコイルバネ19の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻されて前回の位置まで移動し、雌螺子7と雄螺子17が螺合する。この状態では、ピストン48と移動体4は当接しているため、新品のカートリッジ1の場合と同様に、タイムラグなく液状化粧料Lを押し出すことができる。
【0054】
また、図3に示すように、移動体4が前進限まで押し出され液状化粧料Lを使い切ったカートリッジを、新品のカートリッジ、又は、前回使用したことがある別のカートリッジと交換する場合には、カートリッジ1が本体筒2から抜き出されるのに従い、雌螺子7と雄螺子17の螺合が解除され、新品のカートリッジ1、又は、前回使用したことがある別のカートリッジ1が本体筒2に挿入されるのに従い、液状化粧料Lの使い切りにより前進限まで移動した移動体4は、ピストン48により第1のコイルバネ19の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻され、新品のカートリッジ1の場合には後退限、前回使用したことがある別のカートリッジの場合には前回の位置まで移動し、雌螺子7と雄螺子17が螺合する。この状態では、ピストン48と移動体4は当接しているため、タイムラグなく液状化粧料Lを押し出すことができる。
【0055】
このように、本実施形態においては、カートリッジ1が本体容器を構成する本体筒2から抜き出されるのに連動して、雌螺子部材5の雌螺子7と移動体4の雄螺子17の螺合が解除され、移動体4は第1のコイルバネ19により軸線方向前方へ押圧され前進限まで移動するため、例えば、新品のカートリッジ1や、前回使用したことがある別のカートリッジ1が本体筒2に挿入されると、移動体4はカートリッジ1内のピストン48に当接し第1のコイルバネ19の押圧力に抗して軸線方向後方へ押し戻され、カートリッジ1が本体筒2に装着されるのに連動して、雌螺子部材5の雌螺子7と移動体4の雄螺子17の螺合が行われ、雌螺子7と雄螺子17の相対回転による移動体4の前進が可能となり、この状態で、ピストン48と移動体4は当接しているため、カートリッジ交換後の使用者による繰り出し回転操作に際し、タイムラグなく液状化粧料Lを押し出すことができる。また、カートリッジ1が本体筒2から抜き出されるのに連動して軸線方向前方へ移動する螺合解除部材6によって、雌螺子部材5の弾性円弧部23が径方向に強制的に広げられ、雌螺子7と雄螺子17の螺合が解除されるため、螺合解除を確実に行うことがでできる。
【0056】
なお、強制的に螺合を解除させる螺合解除部材6を設けずに、従来技術のように円弧状切片の径外方への弾性復帰のみによって螺合を解除するような場合には、円弧状切片が弾性復帰せずにカートリッジを抜き出せないという問題や、無理抜きをして螺子を破損するという問題が生じる。
【0057】
また、本実施形態においては、螺合解除部材6を軸線方向前方へ押圧し、カートリッジ1が本体筒2から抜き出されるのに連動して、螺合解除部材6を軸線方向前方に移動させる第2のコイルバネ31を備えているため、コイルバネという簡易な構成により、螺合解除部材6を軸線方向前方へ確実に移動させることができる。
【0058】
また、螺合解除部材6は、カートリッジ1が本体筒2に挿入されると、当該カートリッジ1に当接して軸線方向後方へ移動し、雌螺子部材5の弾性円弧部23を径方向に強制的に狭め、雌螺子7と雄螺子17を螺合させる構成も備えているため、カートリッジ1を本体筒2に挿入し装着する際に、螺合を確実に行うことができる。
【0059】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、雌螺子部材5の弾性部としての弾性円弧部23を2個としているが、3個以上であっても良い。また、弾性円弧部を、例えば四角柱状を呈し径方向に弾性を有する弾性部とし、この弾性部を周方向に沿って複数配置すると共に、これらの弾性部の各内面に雌螺子をそれぞれ設ける構成としても良い。また、螺合、螺合解除が支障なく行われ、螺子機能を発揮できれば、弾性部は1個でも良い。因みに、螺合解除部材6の腕部37の個数は、雌螺子部材5の弾性部の個数に対応して変更される。
【0060】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、第2の弾性体である第2のコイルバネ31により螺合解除部材6を前方へ付勢するようにしているが、例えば、カートリッジ1の後端側と螺合解除部材6の前端側に互いに係合する例えば凹凸状の係合部を設け、カートリッジ1が本体筒2に挿入され螺合解除部材6が後方へ押し込まれると、カートリッジ1と螺合解除部材6とが係合部により係合し、カートリッジ1が本体筒2から抜き出されると、螺合解除部材6がカートリッジ1に係合した状態で前方へ移動し、螺合解除部材6のストッパー段部41(図10参照)が、雌螺子部材5の先端部28の乗り上げ端部98(図8及び図9参照)に当接し螺合解除部材6のそれ以上の前進が阻止された状態で、カートリッジ1が本体筒2からさらに抜き出されると、カートリッジ1と螺合解除部材6の係合が解除される構成を採用しても良い。
【0061】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、第1、第2のコイルバネ19,31を用いているが、同様な作用を奏する弾性体であれば良い。
【0062】
また、上記実施形態においては、肌等の被塗布部に塗布するための塗布体を毛筆としているが、カートリッジ1の外スリーブ44の先端面を塗布面とし、この塗布面に、収容室49に連通する開口を液状化粧料Lの吐出口として設け、この吐出口の周囲に例えばチップやコーム等の塗布体を設け使用することもできる。
【0063】
また、上記実施形態においては、特に好ましいとして、内容物を液状化粧料としているが、ジェル状、ゼリー状、泥状等の半固形状や軟質状の化粧料としても良く、また、固形化粧料としても良く、さらには、化粧料以外の例えばインクやスティックのり等とすることもできる。なお、内容物を固形化粧料やスティックのり等とした場合には、塗布体をなくすと共に、ラチェット機構をクリック機構に代えて移動体の後退を可能とし、前述したように、内容物を容器先端の開口から出没させることになる。
【0064】
また、雄螺子、雌螺子は、間欠的に配される突起群、又は、螺旋状且つ間欠的に配される突起群のように螺子と同様な働きをするものであれば良く、さらには、螺子と同様に機能すれば、1個の螺合突起等でも良い。
【符号の説明】
【0065】
1…カートリッジ、2…本体筒(本体容器)、3…操作筒(本体容器)、4…移動体、5…雌螺子部材、6…螺合解除部材、7…雌螺子、17…雄螺子、19…第1のコイルバネ(第1の弾性体)、23…弾性円弧部(弾性部)、31…第2のコイルバネ(第2の弾性体)、48…ピストン、49…収容室、51…カートリッジの開口、59…本体筒の開口、100…カートリッジ式内容物押出容器、L…液状化粧料(内容物)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10