(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361037
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】イムノクロマト法で血漿タンパクを測定する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20180712BHJP
G01N 33/553 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/553
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-559679(P2014-559679)
(86)(22)【出願日】2014年1月28日
(86)【国際出願番号】JP2014051772
(87)【国際公開番号】WO2014119544
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2013-14804(P2013-14804)
(32)【優先日】2013年1月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】登 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 心平
(72)【発明者】
【氏名】木下 良治
【審査官】
海野 佳子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−258777(JP,A)
【文献】
特表2011−522228(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0241882(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0284857(US,A1)
【文献】
国際公開第2011/016326(WO,A1)
【文献】
国際公開第2011/125877(WO,A1)
【文献】
特開2009−236685(JP,A)
【文献】
特表2008−544289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イムノクロマト法でプレアルブミンを測定する方法であって、
ヒトから採取された血液を100〜10000倍に希釈する工程;
希釈した血液をイムノクロマトテストストリップに展開する工程;
希釈した血液が展開されたイムノクロマトテストストリップの発色を分析する工程;
を含み、
上記血液は、全血を血漿または血清と血球成分に分離しないものであり、
上記イムノクロマトテストストリップは、赤血球が毛細管現象により移動可能な展開膜と、上記プレアルブミンと結合可能なポリクローナル標識抗体を有するコンジュゲートパッドと、を具備しており、
上記展開膜は、上記プレアルブミンと結合可能なキャプチャー抗体で形成されたテストラインと、上記プレアルブミンが結合していない上記標識抗体と結合可能な物質で形成されたコントロールラインと、が設けられており、
上記希釈した血液を上記イムノクロマトテストストリップに展開する工程は、
上記展開膜において上記コンジュゲートパッドと上記テストラインとの間から上記希釈した血液を展開して、上記プレアルブミンを上記キャプチャー抗体に結合させる工程と、
展開液を上記コンジュゲートパッドに通過させることによって、上記展開膜に上記標識抗体を展開して、上記キャプチャー抗体と結合した上記プレアルブミンに上記標識抗体を結合させる工程と、を含むプレアルブミンの測定方法。
【請求項2】
上記展開膜が、孔径5〜100μmを有するものである請求項1に記載のプレアルブミンの測定方法。
【請求項3】
上記標識抗体が、金属コロイド修飾抗体である請求項1又は2に記載のプレアルブミンの測定方法。
【請求項4】
上記金属コロイド修飾抗体が、金コロイド修飾抗体である請求項3に記載のプレアルブミンの測定方法。
【請求項5】
イムノクロマトリーダを用いて上記イムノクロマトテストストリップの発色を分析する請求項1から4のいずれかに記載のプレアルブミンの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト法で血漿タンパクを測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イムノクロマト法は、医療現場においては、インフルエンザや妊娠の迅速検査に用いられている。
【0003】
しかし、イムノクロマト法は全血中の血漿タンパクの測定には好適には用いられていない。これは全血に含まれる血漿タンパク濃度が高いため、赤血球の赤色が標識抗体の集積による発色を判別しにくくするためである。
【0004】
全血中の血漿タンパクを測定する方法として、予め全血を遠心分離する方法や、血漿/血清分離パッドが設けられたイムノクロマトストリップを用いる方法が公知である(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−214236号公報
【特許文献2】特開2002−350428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述された従来の方法は、遠心分離機が必要であったり、血漿/血清分離パッドを設ける必要があったりするため、より安価かつ簡易に全血中の血漿蛋白を測定する方法が望まれる。
【0007】
本発明は、安価かつ簡易的にイムノクロマトテストストリップを用いて全血中の血漿タンパクを測定する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、全血を希釈することと、特定の展開膜を用いることで、イムノクロマト法で血漿タンパクも測定できることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、イムノクロマト法で血漿タンパクを測定する方法であって、
ヒトから採取された血液を100〜10000倍に希釈する工程;
該希釈した血液をイムノクロマトテストストリップに展開する工程;
該希釈した血液が展開されたイムノクロマトテストストリップの発色を分析する工程;を含み、全血を血漿または血清と血球成分に分離しないものである。
上記イムノクロマトテストストリップは、赤血球が毛細管現象により移動可能な展開膜と、サンプルパッドと、血漿タンパクと結合可能な標識抗体を有するコンジュゲートパッドと、を具備する。上記展開膜に、上記標識抗体と結合した血漿タンパクと結合可能なキャプチャー抗体で形成したテストラインと、血漿タンパクが結合していない上記標識抗体と結合可能な物質で形成したコントロールラインが設けられている。
【0010】
上記血漿タンパクは、アルブミン、プレアルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン、アンチトロンビン、トランスフェリン、セルロプラスミンまたはC反応性蛋白(CRP)のうち、少なくともいずれか1つを含むことが好適であり、最も好適な上記血漿タンパクは、プレアルブミンである。
【0011】
上記展開膜は、孔径5〜100μmを有する展開膜であってもよい。
【0012】
上記標識抗体は、金属コロイド修飾抗体が好適であり、特に金コロイド修飾抗体が好適である。
【0013】
前記希釈した血液が展開されたイムノクロマトテストストリップの発色を分析する工程において、イムノクロマトリーダーが用いられることが好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価かつ簡易的にイムノクロマトテストストリップを用いて全血中の血漿タンパクを測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係るイムノクロマトテストストリップ10の長手方向に対して平行な断面を示す断面図である。
【
図2】
図2は、同一サンプルにて実施例1における測定方法の結果と免疫比濁法により測定した結果との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面が参照されつつ本発明の実施形態が説明される。なお、本実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨が変更されない範囲において、本実施形態が適宜変更されてもよいことは言うまでもない。
【0017】
本実施形態は、イムノクロマト法により血漿タンパクを測定する方法である。イムノクロマト法とは、免疫測定法の1つである。その原理は、毛細管現象によって展開膜中を流れる検体中の目的物質が、展開膜におけるテストラインに固定されたキャプチャー抗体によって捕捉されることによってテストラインが発色するものである。テストラインの発色が、定性的、好適には定量的に測定されることにより、検体中の目的物質の測定が行われる。
【0018】
[イムノクロマトテストストリップ10]
図1に示されるように、イムノクロマトテストストリップ10は、展開膜11と、サンプルパッド12と、目的物質(本実施形態では、血漿タンパク)と結合可能な標識抗体が設けられたコンジュゲートパッド13と、を有する。また、イムノクロマトテストストリップ10は、余剰の液体を吸収する吸収パッド16と、展開膜11に直接皮膚が触れることを防止するベース素材17と、を有する。なお、吸収パッド16やベース素材17は、必要に応じて適宜設けられる部材であり、必ずしもイムノクロマトテストストリップ10に設けられていなくてもよい。また、イムノクロマトテストストリップ10には、血漿/血清分離パッドは設けられていない。
【0019】
展開膜11は、
図1における左右方向に細長な短冊形状の膜であり、その一方端(
図1における左側)に、サンプルパッド12及びコンジュゲートパッド13が、サンプルパッド12を上側として、展開膜11に順次積層されている。展開膜11の他方端(
図1における右側)には、吸収パッド16が積層されている。
【0020】
展開膜11は、赤血球が毛細管現象で移動可能なものである。赤血球が毛細管現象で移動可能な展開膜11とは、一般的には孔径5〜100μmを有する展開膜11が該当する。換言すれば、展開膜11は、赤血球により目詰まりしないものである。このような展開膜11の材料としては、綿、麻、絹、セルロース、ロックウール、獣毛、ニトロセルロース、セルロースアセテート、ガラス繊維、カーボン繊維、ボロン繊維、ポリアミド、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、レーヨン、ポリエステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびポリ塩化ビニリデンなどが挙げられる。このような展開膜11は、メルク株式会社および日本ポール株式会社などが販売している。なお、市販されている展開膜11の中には孔径が公表されていないものもあるが、赤血球が毛細管現象で移動可能か否かの判別は、実際に血液を展開膜11に展開した場合に、赤血球の赤色の色の浸透具合を観察することにより容易に判別することができる。
【0021】
展開膜11における長手方向(
図1における左右方向)の中央より吸収パッド16側には、テストライン14及びコントロールライン15が長手方向に隔てられて設けられている。コントロールライン15は、テストライン14より吸収パッド16側に配置されている。テストライン14は、目的物質と結合可能なキャプチャー抗体が展開膜11の幅方向(
図1における紙面と垂直な方向)に渡って固定されることにより形成されたものである。コントロールライン15は、目的物質が結合していない標識抗体と結合可能な物質が展開膜11の幅方向(
図1における紙面と垂直な方向)に渡って固定されることにより形成されたものである。テストライン14及びコントロールライン15は、コンジュゲートパッド13に設けられた標識抗体が結合していない状態においては、着色が無く目視は困難である。
【0022】
コンジュゲートパッド13に設けられた標識抗体は、抗体と標識物が結合されたものである。標識抗体における抗体は、血漿タンパクと結合可能なものであれば特に限定されるものではない。例えば、血漿タンパクがプレアルブミンである場合は、ヤギ由来抗プレアルブミン抗体およびウサギ由来抗プレアルブミン抗体などが挙げられる。
【0023】
標識抗体における標識物も、一般的にイムノクロマトに用いられるものが選択され、限定されるものではない。例えば、標識物としては、金コロイド、白金コロイドおよびパラジウムコロイドなどの金属コロイドが挙げられ、測定感度が高い観点から金コロイドが好適に用いられる。
【0024】
コントロールライン15として固定される、血漿タンパクと結合していない標識抗体と結合可能な物質としては、標識抗体における抗体と結合可能な血漿タンパクとは別の抗原または二次抗体が挙げられる。例えば、血漿タンパクとしてプレアルブミンを、標識抗体として金コロイド標識ヤギ由来抗プレアルブミン抗体を用いた場合、血漿タンパクと結合していない標識抗体と結合可能な物質としては、ウサギ由来抗ヤギIgG抗体を好適に用いることができる。
【0025】
[測定方法]
イムノクロマトテストストリップ10により目的物質を測定する方法は、次の工程に大別される。
(1)ヒトから採取された血液を100〜10000倍に希釈する工程。
(2)希釈された血液をイムノクロマトテストストリップ10に展開する工程。
(3)希釈された血液が展開されたイムノクロマトテストストリップ10の発色を分析する工程。
【0026】
イムノクロマトテストストリップ10により測定される目的物質は、血漿蛋白である。血漿タンパクとは、血漿の約7%を占めるタンパクをいい、例えば、アルブミン、プレアルブミン、グロブリン、フィブリノーゲン、アンチトロンビン、トランスフェリン、セルロプラスミンおよびC反応性蛋白(CRP)などが挙げられる。なお、本発明においては、血漿タンパクの中でも、ヒトの栄養状態の指標として注目されているプレアルブミンが好適に選択されるが、本発明はプレアルブミンを測定する方法に限定されるものではない。
【0027】
検体は、ヒトから採取された血液である。採取された血液は、イムノクロマトテストストリップ10のサンプルパッド12に滴下される前に、希釈液にて100〜10000倍に希釈される。
【0028】
血液をヒトから採取する方法は特に限定されるものではなく、医師または看護師による採血、自己による採血のいずれであってもよい。医師または看護師による採血は、採血管またはシリンジを用いた採血などが挙げられ、自己による採血は、例えば、自己血糖測定(SMBG)分野で用いられている穿刺器具を用いた採血などが挙げられる。
【0029】
採取された血液を100〜10000倍に希釈する方法もまた特に限定されるものではないが、一般的には、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)およびトリス緩衝生理食塩水(TBS)などの、通常イムノクロマトテストストリップに展開される液体が希釈液として用いられる。希釈倍率が100より低いと、赤血球の色により後述する発色を判別することが困難になり、10000より高いと、今度は後述する発色自体が判別しにくくなる。
【0030】
希釈された血液は、イムノクロマトテストストリップ10のサンプルパッド12に滴下されることによって、展開膜11に展開される。
【0031】
希釈した血液のイムノクロマトテストストリップ10への展開は、イムノクロマトテストストリップ10のサンプルパッド12に希釈した血液(以下、「希釈血液」と略すこともある)を塗布または滴下することにより実施される。サンプルパッド12に塗布または滴下した希釈血液は、コンジュゲートパッド13を通過して、展開膜11において長手方向(
図1における左右方向)へ展開される。希釈した血液がコンジュゲートパッド13を通過する際、希釈血液中に存在する血漿タンパクは、コンジュゲートパッド13に設けられた標識抗体と結合する。
【0032】
展開膜11に展開された希釈血液(血漿タンパクと結合した標識抗体を含む)は、毛細管現象により展開膜11中を移動する。展開膜11においては、赤血球が毛細管現象で移動可能である。このような展開膜11が用いられることにより、希釈血液は、展開膜11におけるテストライン14に到達することができ、希釈血液中に存在する血漿タンパクと結合した標識抗体は、テストライン14におけるキャプチャー抗体と結合することができる。これによりテストライン14が発色する。
【0033】
希釈血液が展開膜11におけるコントロールライン15に到達すると、希釈血液中に存在する血漿タンパクと結合していない標識抗体は、コントロールライン15における血漿タンパクと結合していない標識抗体と結合可能な物質と結合することができる。これによりコントロールライン15が発色する。
【0034】
なお、標識抗体がポリクローナル抗体である場合、または血漿タンパクのエピトープが複数ある多価抗原である場合には、血漿タンパクのエピトープの大半に標識抗体が結合することによって、テストライン14において、キャプチャー抗体が血漿タンパクを捕捉し難くなることがあり得る。この場合、希釈血液は、サンプルパッドではなく、イムノクロマトテストストリップ10の展開膜における、コンジュゲートパッド13とテストライン14との間の位置へ直接塗布または滴下する方法が採用される。展開膜11に直接塗布または滴下された希釈血液は、展開膜11において長手方向(
図1における左右方向)へ展開される。
【0035】
展開膜11に展開された希釈血液は、毛細管現象によって展開膜11を移動する。希釈血液中に存在する血漿タンパクは、テストライン14においてキャプチャー抗体と結合する。
【0036】
血漿タンパクがキャプチャー抗体と結合するのみでは、テストライン14は発色しないので、コンジュゲートパッド13に含まれる標識抗体がテストライン14及びコントロールライン15へ到達させる操作が必要となる。このため、希釈血液が展開膜11に展開された後、サンプルパッド12に展開液が滴下される。展開液は特に限定されるものではなく、リン酸緩衝液やホウ酸緩衝液、トリス緩衝液などの緩衝液が用いられる。サンプルパッド12に滴下された展開液は、コンジュゲートパッド13を通過して、展開膜11において長手方向(
図1における左右方向)へ展開される。展開液がコンジュゲートパッド13を通過する際、コンジュゲートパッド13に設けられた標識抗体が展開液中に溶出して、展開膜11において長手方向(
図1における左右方向)へ展開される。
【0037】
標識抗体を含む展開液は、展開膜11に展開された後、毛細管現象により展開膜11中を希釈血液と混ざりつつ移動する。そして、テストライン14へ到達すると、標識抗体は、キャプチャー抗体と結合した血漿タンパクと結合する。これにより、テストライン14が発色する。
【0038】
希釈血液と混ざった展開液が更に展開膜11におけるコントロールライン15へ到達すると、希釈血液と混ざった添加液中における血漿タンパクと結合していない標識抗体が、コントロール15における、血漿タンパクと結合していない標識抗体と結合可能な物質と結合する。これにより、コントロールライン15が発色する。
【0039】
希釈した血液が展開されたイムノクロマトテストストリップ10のコントロールライン15の発色は、目視またはイムノクロマトリーダーにより分析される。イムノクロマトリーダーにより分析する場合は、イムノクロマトテストストリップ10の発色の発色強度により、定量的に分析することもできる。イムノクロマトリーダーは、市販されているものを用いることができ、例えば、浜松ホトニクス株式会社、大塚電子株式会社、オリエンタルインスツルメンツ株式会社およびニップンエンジニアリング株式会社などが販売している。
【0040】
前述された測定方法について補足すると、全血を血漿または血清と血球成分に分離しないこと、つまり、遠心分離操作を実施するものではなく、イムノクロマトテストストリップ10に血漿/血清分離パッドを設けないことも特徴である。これにより安価な血漿蛋白の方法を提供することができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0042】
(標準物質)
精度管理用血清を生理食塩水で希釈し、プレアルブミン濃度0、10.1、15.6、20.0および31.4mg/dLの溶液を調製した。値付けは免疫比濁法で行った。
【0043】
(イムノクロマトテストストリップ10)
図1に示すイムノクロマトテストストリップ10を製造した。具体的に、展開膜11は、メルク社製のハイフローHF90を、サンプルパッド12はメルク社製のCFSP173000を、コンジュゲートパッド13はメルク社製のGFCP103000をそれぞれ用いた。展開膜11、サンプルパッド12およびコンジュゲートパッド13は、血液の赤色が満遍なく浸透することを予め確認した。コンジュゲートパッド13には、金コロイドで標識したヤギ由来抗プレアルブミンポリクローナル抗体(標識抗体)を含浸した。テストライン14は、ヤギ由来抗プレアルブミンポリクローナル抗体(キャプチャー抗体)のリン酸緩衝液(1.0 mg/mL)を塗布し、自然乾燥することにより形成した。コントロールライン15は、ウサギ由来抗ヤギIgG抗体(血漿タンパクが結合していない標識抗体と結合可能な物質、Rockland Immunochemicals社製)のリン酸緩衝液(0.2 mg/mL)を塗布し、自然乾燥することにより形成した。
【0044】
(検量線)
標準物質を、生理食塩水により1,200倍に希釈し、イムノクロマトテストストリップ10の展開膜11におけるコンジュゲートパッド13とテストライン14との間の位置に10μLを直接展開し、次いで、サンプルパット12に展開液としてのトリス緩衝液1mLを展開した。得られたテストライン14の発色強度をテストストリップリーダーで測定することにより、検量線を作成した。
【0045】
(血液サンプル)
免疫比濁法により、プレアルブミンの濃度が予め判明している血液サンプルを25検体準備した。
【0046】
(実施例1)
血液サンプル25検体を、それぞれ生理食塩水により800倍に希釈した液を調製した。次いで、イムノクロマトテストストリップ10の展開膜11におけるコンジュゲートパッド13とテストライン14との間の位置に10μLを直接展開し、次いで、サンプルパット12に展開液としてのトリス緩衝液1mLを展開した。得られたテストライン14の発色強度をテストストリップリーダーで測定した。得られた発色強度と検量線とを比較することにより、それぞれの血液サンプルの濃度を求めた。求められた濃度と、免疫比濁法により測定された血液サンプルの濃度との相関性を評価した結果を
図2に示す。その結果、
Rの値(相関係数)は0.96であり、本発明の方法により定量的にプレアルブミンの濃度が測定できることが明らかとなった。
【0047】
(比較例1)
生理食塩水による血液サンプルの希釈倍率が80倍であること以外は、実施例1と同様に実施したが、テストライン14の発色が血液の赤色により見えにくく、定性的に判定することは困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、安価かつ簡易的にイムノクロマトテストストリップを用いて全血中の血漿タンパクを測定する方法を提供することができ、血漿タンパクとしてプレアルブミンを選択した場合、ヒトの栄養状態を迅速に診断することができるようになる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・イムノクロマトテストストリップ
11・・・展開膜
12・・・サンプルパッド
13・・・コンジュゲートパッド
14・・・テストライン
15・・・コントロールライン
16・・・吸収パッド
17・・・ベース素材