特許第6361038号(P6361038)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6361038アクティブグリルシャッターシステム用のばね作動式バックアップ/フェールセーフモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6361038
(24)【登録日】2018年7月6日
(45)【発行日】2018年7月25日
(54)【発明の名称】アクティブグリルシャッターシステム用のばね作動式バックアップ/フェールセーフモジュール
(51)【国際特許分類】
   B60K 11/04 20060101AFI20180712BHJP
   F16D 43/202 20060101ALI20180712BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20180712BHJP
   B60K 11/08 20060101ALI20180712BHJP
【FI】
   B60K11/04 J
   F16D43/202
   F16D7/02 F
   B60K11/08
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-535122(P2015-535122)
(86)(22)【出願日】2013年10月3日
(65)【公表番号】特表2015-535776(P2015-535776A)
(43)【公表日】2015年12月17日
(86)【国際出願番号】IB2013003048
(87)【国際公開番号】WO2014083430
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年8月4日
(31)【優先権主張番号】13/644,235
(32)【優先日】2012年10月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501241575
【氏名又は名称】マグナ インターナショナル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157185
【弁理士】
【氏名又は名称】吉野 亮平
(72)【発明者】
【氏名】マンハイアー ジェフリー ビー
(72)【発明者】
【氏名】ポヴィネリ アンソニー ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ マーティン アール
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−25175(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067502(WO,A1)
【文献】 特公昭48−36853(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0001454(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04,11/08
F16D 7/02
F16D 43/202
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクティブグリルシステム用のフェールセーフモジュール装置であって、
開き位置と閉じ位置との間で動くことができる少なくとも1枚の従動ベーンを有するアクティブグリルと、
前記少なくとも1枚の従動ベーン連結可能であり且つ前記少なくとも1枚の従動ベーンを前記閉じ位置と前記開き位置との間で駆動する動力を提供するよう構成された電気駆動式アクチュエータと、
前記少なくとも1枚の従動ベーンと前記電気駆動式アクチュエータとの間に連結されたフェールセーフモジュールとを有し、前記フェールセーフモジュールは、前記少なくとも1枚の従動ベーンに前記開き位置を選択的に提供し、前記フェールセーフモジュールは、前記フェールセーフモジュール、前記電気駆動式アクチュエータ及び前記少なくとも1枚の従動ベーンが前記電気駆動式アクチュエータによって提供された前記動力に応答して一緒に動くロック位置及び前記フェールセーフモジュールが前記少なくとも1枚の従動ベーンを前記電気駆動式アクチュエータから係合解除して前記少なくとも1枚の従動ベーンを前記開き位置に動かすロック解除位置を有し、
前記フェールセーフモジュールは、
前記電気駆動式アクチュエータに連結された入力ディスクと、
前記少なくとも1枚の従動ベーンに連結された出力ディスクと、
前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にある時期及び前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にある時期を制御する結合機構体とを更に有し、
前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、前記入力ディスクと前記出力ディスクを互いに係合させて前記入力ディスクと前記出力ディスクが一緒に動くようにし、前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、前記出力ディスクと前記入力ディスクを互いに係合解除し、それにより前記出力ディスクが前記入力ディスクとは独立して動くことができるようにし、
前記結合機構体は、
ロック用ピンに連結されたばねを更に含み、前記ロック用ピンは、前記ロック用ピンを前記出力ディスクに形成された孔の方へ付勢するよう構成され、
前記結合機構体が前記ロック位置から前記ロック解除位置に選択的に動いたときに前記ロック用ピンに接触して前記ロック用ピンを選択的に動かして前記ロック用ピンを前記孔から離脱させ、それにより前記ロック用ピンを前記孔内の位置から前記孔外の位置に動かすフェールセーフアクチュエータを更に含む、
ことを特徴とするフェールセーフモジュール装置。
【請求項2】
前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に連結されたトーションばねを更に有し、前記トーションばねは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、張力を受けて巻かれ、前記トーションばねは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、巻きが戻って張力を解除し、それにより前記出力ディスクを回転させる、
請求項1記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項3】
前記フェールセーフモジュールのハウジングを更に有し、前記ハウジングは、前記出力ディスクが前記ロック位置及び前記ロック解除位置を越えて動くのを阻止する2つ又は3つ以上の停止部を有する、
請求項1記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項4】
前記フェールセーフモジュールは、前記電気駆動式アクチュエータへの電力が遮断された場合、前記フェールセーフモジュールを作動させることができる独立電源を有する、
請求項1記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項5】
前記フェールセーフモジュールの前記結合機構体は、
前記入力ディスク又は前記出力ディスクのうちの一方に設けられた溝を更に含み、
前記溝の一端のところに設けられた孔を更に含み、
前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、前記孔中に滑り込むよう構成されているヘッド部分を備えたロック用ピンを更に含み、前記ロック用ピンは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、前記溝内で自由に摺動し、
前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置から前記ロック解除位置に変化したとき、前記ロック用ピンの前記ヘッド部分を動かして前記ヘッド部分を前記孔から離脱させるよう作動可能に位置合わせされたフェールセーフアクチュエータを更に含む、
請求項1記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項6】
前記フェールセーフモジュールの前記フェールセーフアクチュエータは、前記フェールセーフアクチュエータへの電力が遮断された場合、前記フェールセーフアクチュエータを作動させることができる独立電源を有する、
請求項5記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項7】
前記フェールセーフアクチュエータは、ソレノイド、圧電アクチュエータ、磁石及びウォーム駆動装置を含む群から選択された要素を含む、
請求項5記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項8】
アクティブグリルシステム用のフェールセーフモジュール装置であって、
開き位置と閉じ位置との間で動くことができる2枚又は3枚以上のベーンを備えたアクティブグリルを有し、前記2枚又は3枚以上のベーンは、少なくとも1枚の従動ベーンを含み、
前記アクティブグリルに連結可能であり且つ前記少なくとも1枚の従動ベーンを前記開き位置と前記閉じ位置との間で駆動する動力を提供するよう構成された電気駆動式アクチュエータを有し、
前記少なくとも1枚の従動ベーンと前記電気駆動式アクチュエータとの間に連結されたフェールセーフモジュールを有し、前記フェールセーフモジュールは、前記フェールセーフモジュール、前記電気駆動式アクチュエータ及び前記2枚又は3枚以上のベーンが前記電気駆動式アクチュエータによって提供された前記動力に応答して一緒に動くロック位置及び前記フェールセーフモジュールが前記2枚又は3枚以上のベーンを前記電気駆動式アクチュエータから係合解除して前記2枚又は3枚以上のベーンをフェールセーフ動力を用い前記開き位置に動かすロック解除位置を有し、
前記2枚又は3枚以上のベーンのうちの前記少なくとも1枚の従動ベーンと他の全てのベーンとの間に連結されたリンクバーを有し、前記リンクバーは、前記電気駆動式アクチュエータと前記フェールセーフモジュールの両方からの前記動力及び前記フェールセーフ動力を前記2枚又は3枚以上のベーンのうちの前記少なくとも1枚の従動ベーンから他の全てのベーンに伝達し
前記フェールセーフモジュールは、
前記電気駆動式アクチュエータに連結された入力ディスクと、
前記少なくとも1枚の従動ベーンに連結された出力ディスクと、
前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にある時期及び前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にある時期を制御する結合機構体とを更に有し、前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、前記入力ディスクと前記出力ディスクを互いに係合させて前記入力ディスクと前記出力ディスクが一緒に動くようにし、前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、前記出力ディスクと前記入力ディスクを互いに係合解除し、それにより前記出力ディスクが前記入力ディスクとは独立して動くことができるようにし、
前記結合機構体は、
ロック用ピンに連結されたばねを更に含み、前記ロック用ピンは、前記ロック用ピンを前記出力ディスクに形成された孔の方へ付勢するよう構成され、
前記結合機構体が前記ロック位置から前記ロック解除位置に選択的に動くときに前記ロック用ピンに接触して前記ロック用ピンを選択的に動かして前記ロック用ピンを前記孔から離脱させ、それにより前記ロック用ピンを前記孔内の位置から前記孔外の位置に動かすフェールセーフアクチュエータを更に含む、
ことを特徴とするフェールセーフモジュール装置。
【請求項9】
前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に連結されたトーションばねを更に有し、前記トーションばねは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、張力を受けて巻かれ、前記トーションばねは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、巻きが戻って張力を解除し、それにより前記出力ディスクを回転させる、
請求項8記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項10】
前記フェールセーフモジュールのハウジングを更に有し、前記ハウジングは、前記出力ディスクが前記ロック位置及び前記ロック解除位置を越えて動くのを阻止する2つ又は3つ以上の停止部を有する、
請求項8記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項11】
前記フェールセーフモジュールは、前記電気駆動式アクチュエータへの電力が遮断された場合、前記フェールセーフモジュールを作動させることができる独立電源を有する、
請求項8記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項12】
前記フェールセーフモジュールの前記結合機構体は、
前記入力ディスク又は前記出力ディスクのうちの一方に設けられた溝を更に含み、
前記溝の一端のところに設けられた孔を更に含み、
前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、前記孔中に滑り込むよう構成されているヘッド部分を備えたロック用ピンを更に含み、前記ロック用ピンは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、前記溝内で自由に摺動し、
前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置から前記ロック解除位置に変化したとき、前記ロック用ピンの前記ヘッド部分を動かして前記ヘッド部分を前記孔から離脱させるよう作動可能に位置合わせされるフェールセーフアクチュエータを更に含む、
請求項8記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項13】
前記フェールセーフモジュールの前記フェールセーフアクチュエータは、前記フェールセーフアクチュエータへの電力が遮断された場合、前記フェールセーフアクチュエータを作動させることができる独立電源を有する、
請求項12記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項14】
前記フェールセーフアクチュエータは、ソレノイド、圧電アクチュエータ、磁石及びウォーム駆動装置を含む群から選択された要素を有する、
請求項12記載のフェールセーフモジュール装置。
【請求項15】
アクティブグリルシステム用のフェールセーフモジュール装置であって、
開き位置と閉じ位置との間で動くことができる2枚又は3枚以上のベーンを備えたアクティブグリルを有し、前記2枚又は3枚以上のベーンは、少なくとも1枚の従動ベーンを含み、
前記アクティブグリルに連結可能であり且つ前記少なくとも1枚の従動ベーンを前記開き位置と前記閉じ位置との間で駆動する動力を提供するよう構成された電気駆動式アクチュエータを有し、
前記少なくとも1枚の従動ベーンと前記電気駆動式アクチュエータとの間に連結されたフェールセーフモジュールを有し、前記フェールセーフモジュールは、前記フェールセーフモジュール、前記電気駆動式アクチュエータ及び前記2枚又は3枚以上のベーンが前記電気駆動式アクチュエータによって提供された前記動力に応答して一緒に動くロック位置及び前記フェールセーフモジュールが前記2枚又は3枚以上のベーンを前記電気駆動式アクチュエータから係合解除して前記2枚又は3枚以上のベーンをフェールセーフ動力を用い前記開き位置に動かすロック解除位置を有し、前記フェールセーフモジュールは、前記電気駆動式アクチュエータに連結された入力駆動ディスクと、前記少なくとも1枚の従動ベーンに連結された出力駆動ディスクと、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にある時期及び前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にある時期を制御する結合機構体とを有し、
前記2枚又は3枚以上のベーンのうちの前記少なくとも1枚の従動ベーンと他の全てのベーンとの間に連結されたリンクバーを有し、前記リンクバーは、前記電気駆動式アクチュエータと前記フェールセーフモジュールの両方からの前記動力及び前記フェールセーフ動力を前記2枚又は3枚以上のベーンのうちの前記少なくとも1枚の従動ベーンから他の全てのベーンに伝達し、
前記フェールセーフモジュールのハウジングを更に有し、前記ハウジングは、前記入力駆動ディスク及び前記出力駆動ディスクが前記ロック位置及び前記ロック解除位置を越えて動くのを阻止する2つ又は3つ以上の停止部を有し、
前記入力駆動ディスクと前記出力駆動ディスクとの間に連結されたトーションばねを更に有し、前記トーションばねは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、張力を受けて巻かれ、前記トーションばねは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、巻きが戻って張力を解除し、それにより前記出力駆動ディスクを回転させ、
前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、前記入力駆動ディスクと前記出力駆動ディスクを互いに係合させて前記入力駆動ディスクと前記出力駆動ディスクが一緒に動くようにし、前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、前記出力駆動ディスクと前記入力駆動ディスクを互いに係合解除し、それにより前記出力駆動ディスクが前記入力駆動ディスクとは独立して動くことができるようにし、前記結合機構体は、前記入力駆動ディスク又は前記出力駆動ディスクのうちの一方に設けられた溝と、前記溝の一端のところに設けられた孔と、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置にあるとき、前記孔中に滑り込むよう構成されているヘッド部分を備えたロック用ピンとを含み、前記ロック用ピンは、前記フェールセーフモジュールが前記ロック解除位置にあるとき、前記溝内で自由に摺動し、前記結合機構体は、前記フェールセーフモジュールが前記ロック位置から前記ロック解除位置に変化したとき、前記ロック用ピンの前記ヘッド部分を動かして前記ヘッド部分を前記孔から離脱させるよう前記孔と位置合わせされるアクチュエータを更に含む、
ことを特徴とするフェールセーフモジュール装置。
【請求項16】
前記フェールセーフモジュールの前記アクチュエータは、前記アクチュエータへの電力が遮断された場合、前記アクチュエータを作動させることができる独立電源を有する、
請求項15記載のフェールセーフモジュール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のアクティブグリルシステムに用いられるフェールセーフモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の自動車部品の冷却を最適化するための種々の試みが行われている。開発された種々の装置のうちの幾つかは、自動車のエンジンコンパートメント(エンジン室)内全体にわたる空気の流れを制御して所望量の熱が熱を発生させるエンジン、変速装置及び他のコンポーネントから取り去られて最適作動温度を維持するよう設計されている。また、エンジンが周囲環境と実質的に同じ温度状態にあるとき、エンジン始動後、エンジンを通常の作動温度までできるだけ迅速に至らせることが望ましい。この初期始動期間の間、エンジンは、特に始動の際に周囲環境の温度が極めて低い場合には燃料効率が最も低い。燃料効率の低下の理由は、エンジンを最適作動温度まで極めて迅速に至らせることが望ましいと考えられていることにある。これら条件下において、熱をエンジン及びエンジンの周りの種々のコンポーネントから奪うことは望ましくはなく、したがって、エンジン周りの空気流を制御するよう設計された装置は、これら装置が始動時にエンジンから熱を奪わない場合に有益に用いられる。
【0003】
エンジンコンパートメント中への空気流を選択的に遮断し又は可能にするために開き位置と閉じ位置との間で回転することができる可動ベーンを有するフレームを備えたアクティブグリルシステムが開発された。エンジン始動の際、ベーンを閉じるのが良く、その目的は、少なくともエンジンが最適作動温度に達するまで、外気がエンジンコンパートメント内に流入してエンジンのコンポーネントを冷却するのを阻止することにある。次に、所望のエンジン温度にいったん達すると、ベーンを開き又は調節して空気がエンジンコンパートメント中に流れてエンジンを冷却し、それによりエンジンが高温過ぎる状態になるのを阻止するのを助けるようにするのが良い。
【0004】
アクティブグリルシステムの開発及び使用にあたって、結果的にベーンの位置を制御する能力を失うことになるアクティブグリルシステムのコンポーネントに対する電気的又はアクチュエータの故障が生じた場合、車両コンパートメント中の空気流をどのように制御するかという課題が提起される。動力喪失又はアクチュエータの故障が起きてベーンが閉じ位置にある場合、エンジンコンパートメントは、適当な空気流を受けることがなく、エンジンがオーバーヒートする場合がある。したがって、主要な電気駆動式アクティブグリルシステムアクチュエータに関して動力の喪失又はアクチュエータの故障が生じた場合、ベーンをこれらの開き位置に動かすフェールセーフ装置又はアクチュエータを開発することが望ましい。さらに、車両の残部及び他のアクティブグリルコンポーネントとは独立したそれ自体の電源を備えたフェールセーフモジュールを開発することが望ましい。
【0005】
アクティブグリル用のフェールセーフモジュールは、開き位置と閉じ位置との間で動くことができる2枚又は3枚以上のベーンを有する。電気駆動式アクチュエータがアクティブグリルに連結可能であり、かかる電気駆動式アクチュエータは、ベーンを開き位置と閉じ位置との間で駆動する動力を提供するよう構成されている。電気駆動式アクチュエータの故障が生じた場合、2枚又は3枚以上のベーンのうちの少なくとも1つの従動ベーンと電気駆動式アクチュエータとの間に連結されたフェールセーフモジュールがベーンをフェールセーフ位置に動かす。
【0006】
フェールセーフモジュールは、ロック位置及びロック解除位置を有し、フェールセーフモジュールがロック位置にあるとき、フェールセーフモジュール、電気駆動式アクチュエータ及び2枚又は3枚以上のベーンは、電気駆動式アクチュエータにより提供される動力に応答して一緒に動く。フェールセーフモジュールがロック解除位置にあるとき、フェールセーフモジュールは、2枚又は3枚以上のモジュールを電気駆動式アクチュエータから係合解除してこれら2枚又は3枚以上のベーンをフェールセーフ位置に動かす。
【0007】
リンクバーが少なくとも1枚の従動ベーンと他の全てのベーンとの間に連結されている。リンクバーは、リンクバーは、電気駆動式アクチュエータとフェールセーフモジュールの両方からの動力及びフェールセーフ動力を少なくとも1枚の従動ベーンから他の全てのベーンに伝達して2枚又は3枚以上のベーンを開き位置と閉じ位置との間で動かす。
【0008】
本発明の別の産業上の利用可能性分野は、以下に提供される詳細な説明から明らかになろう。理解されるべきこととして、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているが、例示目的で提供されているに過ぎず、本発明の範囲を限定することが意図されているわけではない。
【0009】
本発明は、詳細な説明及び添付図面からより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】アクティブグリルが取り付けられた車両エンジンコンパートメントの部分破断斜視図である。
図2A】本発明の一実施形態としてのアクティブグリルシステムの部分破断平面図である。
図2B】本発明の変形実施形態においてフェールセーフモジュール及びリンクバーを備えたアクティブグリル装置のベーンの部分破断正面図である。
図3】フェールセーフモジュールの横から見た斜視図である。
図4】本発明の一実施形態としてのフェールセーフモジュールの分解組立て斜視図である。
図5A】本発明の一実施形態としてのフェールセーフモジュールの断面側面図である。
図5B】本発明の一実施形態としてのフェールセーフモジュールの断面側面図である。
図6】本発明の変形実施形態としてのフェールセーフモジュールの断面端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
好ましい実施形態の以下の説明は、性質上例示に過ぎず、本発明、その用途又は使用を限定することを意図しているものではない。
【0012】
今、図1を参照すると、アクティブグリル12が連結された状態の車両エンジンコンパートメント10の部分破断斜視図が示されている。アクティブグリル12は、車両エンジンコンパートメント10への空気流を調節するために開き位置と閉じ位置との間で動くことができる2枚又は3枚以上のベーン14を有する。図1に示されている2枚又は3枚以上のベーン14は、アクティブグリル14の一部として全部で6枚のベーンから成る。しかしながら、特定の用途の要望に応じて単一のベーンを含む任意枚数のベーンを使用することは、本発明の範囲に含まれる。アクティブグリル12は、空気流のための通路を構成すると共に2枚又は3枚以上のベーン14が閉じ位置と開き位置との間で回転可能に取り付けることができる取り付け可能な表面を提供するフレーム16及びセンターバー18を有する。
【0013】
図2Aは、本発明の一実施形態としてのアクティブグリル12の部分破断分解組立て斜視図である。2枚又は3枚以上のベーン14は、電気駆動式アクチュエータ19に連結された少なくとも1枚の従動ベーン16を有する。図2Aに示されている本発明の実施形態は、2枚又は3枚以上のベーン14のうちの単一の少なくとも1枚の従動ベーンを示しているが、特定の用途に追加の従動ベーンが必要な場合、少なくとも1枚の従動ベーン16を2枚以上設けることは、本発明の範囲に含まれる。アクティブグリル12の通常の作動中、電気駆動式アクチュエータ19は、動力を提供して少なくとも1枚の従動ベーン16を駆動してこれを閉じ位置と開き位置との間で動かす。また、フェールセーフモジュール20が少なくとも1枚の従動ベーン16と連結されており、このフェールセーフモジュールは、少なくとも1枚の従動ベーン16と電気駆動式アクチュエータ19との間に連結される。フェールセーフモジュール20は、電気駆動式アクチュエータ19について電力面での故障又は他の問題が生じた場合、少なくとも1枚の従動ベーン16及び他の2枚又は3枚以上のベーン14の全てを電気駆動式アクチュエータ19から切り離すよう機能する。2枚又は3枚以上のベーン14が閉じ位置になく、その結果、アクティブグリル12を通って車両エンジンコンパートメント10に至る空気流が遮断されないようにすることが望ましい。車両エンジンコンパートメント10への空気流を遮断させることが望ましくない場合、例えば、エンジンが既に最適昇温状態にある場合、車両エンジンコンパートメント10への空気流を遮断すると、その結果として、エンジンがオーバーヒートし又は損傷する場合がある。したがって、本発明のフェールセーフモジュール20は、電気駆動式アクチュエータ19の電力面における故障又はアクチュエータの故障が生じた場合、2枚又は3枚以上のベーン14が閉じ位置にある場合に生じる問題に取り組む。
【0014】
フェールセーフモジュール20は、図2Aでは、センターバー18の外側に位置したものとして示されているが、フェールセーフモジュール20を図2Bの変形実施形態で示されているようにセンターバー領域内に収納することは、本発明の範囲に含まれる。さらに、フェールセーフモジュール20をアクティブグリル12内のどこかほかの場所に配置することは、本発明の範囲に含まれる。ただし、フェールセーフモジュールが2枚又は3枚以上のベーンに作用してこれらをフェールセーフ位置に動かすよう構成されていることを条件とする。
【0015】
電気駆動式アクチュエータ19からの動力若しくは駆動力又はフェールセーフモジュール20からのフェールセーフ動力又は力を少なくとも1枚の従動ベーン16から他の2枚又は3枚以上のベーン14の全てに伝達するため、リンクバー22が用いられる。リンクバー22は、リンクバー22と2枚又は3枚以上のベーン14の各々に設けられたフランジ23との間に幾つかの連結部24を有する。2枚又は3枚以上のベーン14の各々は、センターバー18の壁によって回転可能に支持されたベーンバレル26を有する。しかしながら、1つの例外は、少なくとも1枚の従動ベーン16がフェールセーフモジュール20に連結されたベーンバレル26′を有し、このフェールセーフモジュール20がセンターバー18に連結されていることである。
【0016】
フェールセーフモジュール20の細部が図3図4図5A図5B及び図6に示されている。フェールセーフモジュール20は、ハウジング28を有している。ハウジング28内には入力駆動ディスク30及び出力駆動ディスク32が設けられている。入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32は、結合機構体34によって互いに結合されている。結合機構体34は、入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32のいずれに設けられても良い溝36を含む。図面に示されているように、図4図5A及び図5Bの溝は、入力駆動ディスクに設けられ、図6では、溝36は、出力駆動ディスク32に設けられている。かくして、結合機構体34の構成を逆にすることが可能である。溝36は、一端に孔38を有している。ロック用ピン40が、溝36が入力駆動ディスク30に設けられているか出力駆動ディスク32に設けられているかに応じて、溝36に対向して入力駆動ディスク30又は出力駆動ディスク32に設けられる。ロック用ピン40は、ロック用ピンばね42によって溝36に向かって付勢されている。ロック用ピン40は、入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32との間で回転が生じると、溝36内で摺動するノーズ44を有している。ロック用ピン40のノーズ44が孔38に到達すると、ロック用ピンばね42は、ノーズ44をロック位置にある孔38内に押し込む。ノーズ44が孔38内に位置決めされず、溝36内で摺動可能である場合、結合機構体34は、ロック解除位置にある。結合機構体34がロック解除位置にあるとき、入力駆動ディスク30又は出力駆動ディスク32は、互いに別個独立に回転する。結合機構体34がロック位置にあるとき、入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32が互いにロックされて一緒に回転する。以下において、フェールセーフモジュール20の動作原理について詳細に説明する。
【0017】
入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32は、シャフト46及びブッシュ48を用いて互いに回転可能に連結されている。図5Aに示された本発明の実施形態では、シャフト46は、入力駆動ディスク30上に形成され、ブッシュ48は、出力駆動ディスク32上に形成されている。シャフト46及びブッシュ48を互いに逆の構造体上に配置することは、本発明の範囲に含まれる。トーションばね50が入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32でシャフト46及びブッシュ48周りに位置決めされている。トーションばね50は、結合機構体34がロック位置にあるとき、張力を受けて巻かれ、トーションばね50は、結合機構体34がロック解除位置にあるとき、巻き戻され、その結果、トーションばねにより、出力駆動ディスク32は、結合機構体34がロック解除位置にあるとき、入力駆動ディスク30とは別個独立に回転するようになる。
【0018】
ロック解除位置とロック位置との間における結合機構体34の運動は、フェールセーフアクチュエータ52によって引き起こされ、このフェールセーフアクチュエータは、力をロック用ピン40のノーズ44に加えるよう構成されており、それにより、ノーズ44は、孔38から滑り出て溝36に入る。フェールセーフアクチュエータ52は、ソレノイド、圧電アクチュエータ、磁石又はウォーム駆動装置であるのが良いが、フェールセーフアクチュエータ52は、結合機構体34がロック位置からロック解除位置に動くようにするためにロック用ピン40のノーズ44に選択的に接触することができる適当なアクチュエータであればどのような形式のものであっても良いことは、本発明の範囲に含まれる。
【0019】
動作原理を説明すると、結合機構体34のハウジング28は、結合機構体34を少なくとも1枚の従動ベーン16と電気駆動式アクチュエータ19との間に位置決めする場所でアクティブグリル20に連結されている。入力駆動ディスク30は、電気駆動式アクチュエータ19に連結されていてこれによって駆動される入力ディスクスピンドル54を有する。出力駆動ディスク32は、少なくとも1枚の従動ベーン16に連結された出力ディスクスピンドル56を有している。通常の作動条件では、結合機構体34は、ロック位置にあり、その結果、ロック用ピン40のノーズ44は、孔38内に位置決めされ、それにより、入力駆動ディスク30と出力駆動ディスク32を互いにロックし、その結果、2つのディスクは、一緒に回転すると共に電気駆動式アクチュエータ19によって駆動されるようになる。
【0020】
電気駆動式アクチュエータ19の電気的遮断又は故障が生じた場合、結合機構体34は、ロック位置からロック解除位置に動き、この動きは、フェールセーフアクチュエータ52がロック用ピン40のノーズ44を孔38から押し出してトーションばね50の引っ張り力を解除し、出力駆動ディスク32が入力駆動ディスク30とは別個独立に回転することができるようになった場合に起こる。ロック解除位置では、少なくとも1枚の従動ベーン16は、電気駆動式アクチュエータ19とは独立して動くことができる。フェールセーフアクチュエータ52は、電気駆動式アクチュエータ19に電力供給する電気系統とは独立した独立電源、例えばキャパシタ、バッテリ又は他の電気源を有する。結合機構体34がロック解除位置にあるとき、ロック用ピン40のノーズ44は、孔38から滑り出、次に溝36上で摺動する。結合機構体34がロック解除位置にあるとき、出力駆動ディスク32は、少なくとも1枚の従動ベーン16をデフォルト位置に回転させ、このデフォルト位置は、本発明の一実施形態では、開き位置である。
【0021】
フェールセーフ又は開き位置への少なくとも1枚の従動ベーン16の運動は、リンクバー22を介して他の2枚又は3枚以上のベーン14の全てに伝達される。かくして、トーションばね50の力は、2枚又は3枚以上のベーン14の全てを開き位置に駆動するのに足るほどのものでなければならない。結合機構体34のハウジング28内には停止部55が形成され、これら停止部は、出力駆動ディスク32が所望の角度を超えて回転するのを阻止する。電気駆動式アクチュエータ19に対する修理がいったん行われると、電気駆動式アクチュエータ19は、入力駆動ディスク30を開き位置に向かって回転させ、それにより、ロック用ピン40のノーズ44は、溝36内で摺動し、ついには、ノーズ44は、ロック用ピンばね42によりロック用ピン40に加えられたばね力の結果として孔38内に滑り込む。ノーズ44が孔38内にいったん戻されると、結合機構体34は、ロック位置に戻され、そしてアクティブグリル12は、通常の作動を開始し、2枚又は3枚以上のベーンは、電気駆動式アクチュエータ19により提供される力により開閉する。
【0022】
本発明の説明は、性質上例示に過ぎず、かくして、本発明の要旨から逸脱しない変形例は、本発明の範囲に含まれる。かかる変形例は、本発明の精神及び範囲から逸脱するものとは見なされるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6